3次元骨格構造セラミック多孔体およびセラミック多孔体の製造方法
【課題】表面積が大きくかつ圧力損失が低く、生産性良く製造できるような構造の3次元骨格構造セラミック多孔体を提供する。
【解決手段】3次元骨格構造セラミック多孔体1は、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は前記軸方向の一端から他端まで一定である。
【解決手段】3次元骨格構造セラミック多孔体1は、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は前記軸方向の一端から他端まで一定である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体や、気体・液体などの流体を濾過する流体フィルタなどの用途に用いられるセラミック多孔体、およびセラミック多孔体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、触媒担体として用いられるセラミック多孔体や、気体、液体などの流体を濾過する流体フィルタなどに用いられるセラミック多孔体として、以下のような製造方法のものが知られていた。まず、内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体を液体のセラミックスラリーに浸漬し、セラミックスラリーをこの合成樹脂発泡体の骨格表面に付着させる。これを乾燥、焼成することによって内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体を得る。この基本的な製造方法について特公昭60−17563号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
ここで、触媒機能向上、つまり表面積の拡大や、塵埃捕集性能向上など、触媒担体、流体フィルタとしての性能を向上するために、多孔体の厚みやセル数を増やす技術が一般に採用されている。さらに圧力損失を低減するための技術として、セラミック多孔体の表面積を拡大する方法が提案されている。たとえば、表面積を拡大するために各々セラミック多孔体からなる筒状体と波状体とを一体化した構造のセラミック多孔体が特開2004−223482号公報(特許文献2)に、また表面に凹凸を設けて表面積を拡大したセラミック多孔体が特開2004−322027号公報(特許文献3)に開示されている。
【特許文献1】特公昭60−17563号公報
【特許文献2】特開2004−223482号公報
【特許文献3】特開2004−322027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の触媒担体や流体フィルタなどに用いられるセラミック多孔体においては、これらの用途に使用するにあたって、触媒機能向上、つまり表面積の拡大や、塵埃捕集性能の向上など、各用途に対応する性能向上が求められている。しかしながら、一般に採られる多孔体の厚みやセル数を増やすという手法で一部性能の向上を図った場合には、同時に圧力損失の増大も招く、つまり触媒担体や流体フィルタとしての他の性能を低下させてしまうという問題があった。
【0005】
上述のような問題を解決するために、上記特許文献2では、各々セラミック多孔体よりなる筒状体と波状体を一体化した構造で表面積を拡大したセラミック多孔体が提案されているが、この技術では、濾過面積が増大するために圧力損失を低減することができる一方で、形状が複雑化するため、合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬し、セラミックスラリーを合成樹脂発泡体の骨格に付着させる工程において、付着量を均一に調整することが困難となる。これに伴って合成樹脂発泡体のセルに目づまりが生じやすくなり、圧力損失を所望量に抑えたセラミック多孔体を安定して生産することが困難となる。さらに、特に圧力損失が低いセラミック多孔体を得るために使用される空孔率の高い合成樹脂発泡体の場合は、合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着させた段階で合成樹脂発泡体が自重により変形しやすくなる。そのため、所望の形状を精度よく、ばらつきなく得ることが困難とあるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献3では、表面に凹凸を設けて表面積を拡大したセラミック多孔体が提案されているが、この技術では、厚みが均一でないために圧力損失の面内不均一が生じて、圧力損失が低い、つまり流路が短い部分に流体が集中して流れ、凹凸によって拡大した表面積を充分に活かせないという問題がある。さらに、製造方法に注目すれば、予め合成樹脂発泡体を所望の形状に加工した場合には、上記特許文献2に記載の筒状体と波状体とを一体化した構造のセラミック多孔体の場合と同じく、所望の圧力損失を有したセラミック多孔体を安定して生産することが困難であるという問題があった。さらに、セラミックを付着させた合成樹脂発泡体を加工する場合には、加工の際に生じる振動などによって、骨格に付着したセラミックまたはセラミックスラリー膜の膜厚変化が生じたり、セラミックまたはセラミックスラリー膜の剥離が発生したりして、表面部分の強度が低下するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、表面積が大きくかつ圧力損失が低く、生産性良く製造できるような構造の、3次元骨格構造セラミック多孔体を提供することを目的とする。さらに、そのような3次元骨格構造セラミック多孔体の製造に適用可能なセラミック多孔体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく3次元骨格構造セラミック多孔体は、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は前記軸方向の一端から他端まで一定である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設置面積に比べて表面積が大きくなるので圧力損失が小さくなり、なおかつ、表面積の拡大に伴って触媒担体としての性能も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における3次元骨格構造セラミック多孔体について説明する。
【0011】
図1に示すセラミック多孔体1は、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第1の例に該当する。図2は、セラミック多孔体1のII−II線に関する矢視断面図に相当する。すなわち、図2は軸方向に垂直な面で切った断面図である。この形状を以下「形状1」という。
【0012】
図3に示すセラミック多孔体1hは、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第2の例に該当する。図3は軸方向に垂直な面で切った断面図であり、セラミック多孔体1hの断面形状は、半円部11と直線部12とを含んでいる。この形状を以下「形状2」という。
【0013】
図4に示すセラミック多孔体1iは、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第3の例に該当する。図4は軸方向に垂直な面で切った断面図であり、セラミック多孔体1iの断面形状は、コの字型となっており、直線部12,14と湾曲部13とを含んでいる。この形状を以下「形状3」という。
【0014】
形状1〜3のセラミック多孔体1,1h,1iはいずれも、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、この断面形状は軸方向の一端から他端まで一定である。
【0015】
図5に示すセラミック多孔体1jは、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第4の例に該当する。セラミック多孔体1jを側方から見たところを図6に示す。セラミック多孔体1jは、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に見て複数の区間を有し、軸方向に垂直な断面形状が開曲線であり、この開曲線の断面形状は前記複数の区間のうちの第1の区間21においては一定であり、前記複数の区間のうち前記第1の区間21とは別の第2の区間22においては、第1の区間21での湾曲した板形状に凹凸を設けた形状となっている。この形状を以下「形状4」という。図5、図6では第2の区間22は1ヶ所のみとなっているが、第2の区間22は複数箇所にあってもよい。
【0016】
(作用・効果)
本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体によれば、セラミック多孔体は、その設置面積すなわち真上から見たときに占める面積(以下「正射影面積」という。)に比べて表面積が大きくなるので圧力損失が小さくなり、なおかつ、表面積の拡大に伴って触媒担体としての性能も向上する。
【0017】
また、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体には、特開2005−152760号公報などに開示されている大気プラズマ法によるガス分解処理装置の反応リアクター内への充填物質としての用途もある。この充填物質は、素材をチタン酸バリウム、チタニアなどの誘電体物質、あるいは誘電体物質を含む組成とすることでペレット充填型放電が起こるようにすれば、放電処理部に用いる誘電体部分の圧力損失を低減することができる。また、この充填物質は、セラミック多孔体表面にゼオライトなどのミクロ細孔を有する吸着物質を担持することで触媒界面放電が起こるようにすれば、処理対象のガスを濃縮し、間欠処理となるので消費電力を低減、つまりランニングコストを低減することができる。
【0018】
この反応リアクターの一般的な放電部は円筒形状になるように中心電極、外側電極が配置されている。そのため、円筒形状部内の中心電極−外側電極間にセラミック多孔体を設置することが求められる場合もある。閉曲面となる断面形状を有する従来のセラミック多孔体では、中心電極の端部からしか設置ができなかったのに対して、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体であれば、開曲線となる断面形状を有するので、円筒形状部の端部だけでなく側方からの設置も可能になる。したがって、作業性を大幅に向上することができる。
【0019】
さらに、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の製造方法においては、平板状の合成樹脂発泡体を用いることができるため、生産性を阻害することなく、従来の成形手法を適用することができる。
【0020】
また、形状4を除いて、軸方向に垂直な断面形状が一定となっているため、軸方向に長い焼結体を作成した後で軸方向に見た所望の長さに切断する方法を採用することで、生産性の向上を図ることもできる。さらに焼成工程における対象物の積載効率を向上させることができ、その結果、動力コスト低減を図ることができる。
【0021】
形状4についても、第2の区間となる所定形状の部分を一定間隔で備えた長尺状の焼結体を作成した後に、各部が第2の区間を含むように分割することによって効率良く生産することができる。形状4のように適宜第2の区間を含む形状とすれば、設置場所の形状に合わせた形状とすることができ、設置場所の省スペース化、ひいては装置の小型化を図ることが可能となる。
【0022】
ここでは、形状1〜4の4通りのみ示したが、本発明に基づくセラミック多孔体はこれらの形状に限られるわけではなく、上述の条件にあてはまるものであれば他の形状であってもよい。
【0023】
なお、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体は、厚みが一定であることが好ましい。厚みが一定であればセラミック多孔体としての使用時に生じる圧力損失の面内分布が均一となり、セラミック多孔体の全面を均一に利用することができるようになり、効率化を図ることができる。
【0024】
(製造方法)
上述の各セラミック多孔体を製造するには、以下の製造方法を用いることができる。内部連通空間を有する3次元骨格構造の板材状合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬してセラミックスラリーを付着させ、余剰スラリーを除去して所望量のセラミックスラリーが付着した合成樹脂発泡体(以下、「半成形体」と称する。)を得た後に、半成形体が所望の形状となる状態で乾燥して成形体を得、成形体を焼成する方法を採ればよい。ここで、合成樹脂発泡体としては、内部連通空間を有する3次元骨格構造の板材状合成樹脂発泡体であれば、いずれのものでも使用可能であるが、軟質ポリウレタンフォーム、特にセル膜のない軟質ポリウレタンフォームが好適に使用できる。
【0025】
また、セラミック材料としては、たとえば、アルミナ、ムライト、チタニア、ジルコン、ジルコニア、スピネル、コーディエライト、炭化珪素、窒化珪素などを用いることができるが、焼結により3次元骨格構造を維持できる程度に強度が得られる材料であれば、その他、いずれのセラミック材料であっても使用可能である。
【0026】
(実験)
本実施の形態では、合成樹脂発泡体として、セル膜のない軟質ポリウレタンフォーム(株式会社ブリヂストン製エバーライトSF,商品名:HR−30)を用い、形状1〜4について、各々表1に示す寸法に裁断加工し、上述の製造方法によって、各々コーディエライトセラミック多孔体を得た。表1に示す寸法は、焼結体として出来上がった状態での各セラミック多孔体の占有するスペースを包含する最小の直方体の寸法が同等となるように計算されて設定されたものである。
【0027】
ここで、形状1については、変形例として、図2に示すように断面図で見た場合の左側と右側とで厚さが異なる試料も作成した。これを「形状1−1」、「形状1−2」という。また、比較例1として、同じ材料からなり、厚みおよび正射影の面積が同等の平板についても試料を準備した。
【0028】
得られた各試作品について、圧力損失を測定した。結果を表1に示す。比較例1を含めた各試作品の正射影面積は、いずれも95mm×95mm=9025mm2となって等しくなっている。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示す実験結果から、本発明による内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体は、単なる平板である比較例1に比べて正射影面積当たりの圧力損失が低いことが実証された。
【0031】
(実施の形態2)
(製造方法)
図7〜図10を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるセラミック多孔体の製造方法について説明する。
【0032】
本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法は、内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して前記セラミックスラリーを付着させる工程と、余剰スラリーを除去して前記合成樹脂発泡体に前記セラミックスラリーが所望量だけ付着したものである半成形体を得る工程と、前記半成形体を乾燥して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含む、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体の製造方法において、前記成形工程は、所望の曲面形状の設置面を有する成形型の前記設置面に前記半成形体を設置する工程と、前記半成形体を前記設置面の前記曲面形状に沿わせた状態で乾燥させる乾燥工程とを含む。
【0033】
以下では、実施の形態1で説明した形状1のセラミック多孔体を製造する場合を例にとって説明するが、対象とするセラミック多孔体の形状はこれに限るものではない。本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法の途中段階で得られる半成形体2を図7に示す。この半成形体2は、内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬してセラミックスラリーを付着させる工程を経て、さらに余剰スラリーを除去して合成樹脂発泡体にセラミックスラリーが所望量だけ付着した状態にしたものである。図8に、本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法で使用される成形型3を示す。成形型3は形状1に対応した凹状の曲面からなる設置面31を有する。
【0034】
(実施例)
より具体的な実施例を以下に説明する。内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体として、セル膜のない軟質ポリウレタンフォーム(株式会社ブリヂストン製エバーライトSF,商品名:HR−30、以下、「ウレタンフォーム」という。)を準備し、アルミナ:94重量%,蛙目粘土:3重量%,タルク:3重量%に調整したセラミックスラリーにこのウレタンフォームを浸漬してセラミックスラリーを付着させた。その後、このウレタンフォームを2本の円筒状ロールで両側から挟んで圧搾し、余剰スラリーを除去した後に、圧縮エアーブローによってウレタンフォームに付着するセラミックスラリーの量を所望量に調整して半成形体2を得た(図7参照)。次いで、半成形体を乾燥させて成形体を得る成形工程を行なった。ただし、この成形工程においては、半成形体2の形成以後、完全に乾燥して成形体となるまでの間、すなわち半成形体2が水分を保有して柔軟に形状を変化させることが可能な間に、予め半円筒状の曲面形状の溝を設置面31として加工しておいた焼成炉用の棚板または敷板に半成形体2を設置した。本実施例の場合、この焼成炉用の棚板または敷板(以下「セッター」という。)が成形型3に相当する(図8参照)。一般に、セッターは成形型の一種である。図9に示すように半成形体2を成形型3の設置面31の曲面形状に沿わせた状態で乾燥工程を行なった。さらに乾燥工程の結果得られた成形体も成形型3から動かすことなく、引き続き、成形体を焼成して焼結体を得る焼成工程を行なった。こうして、半円筒形状を有する3次元骨格構造セラミック多孔体1を得た(図1参照)。
【0035】
(作用・効果)
この製造方法によれば、セラミック多孔体1に曲面形状を形成する際に特に問題となる、半成形体2の状態での合成樹脂発泡体に付着したセラミックスラリー重量による半成形体2の不所望な変形を抑制することができる。また、焼成工程、特に昇温時において、成形体の形状を維持している合成樹脂発泡体が焼失し、なおかつセラミックの焼結がまだ完全に進行していない状態であった場合に生じる自重による変形などを抑制することができる。発明者らの検討によれば、特許文献2に開示される曲面形状を有したセラミック多孔体では、ウレタンフォームで形成した元の形状との寸法差が±5〜10mm程度とならざるを得なかったのに対して、本実施の形態では、±3mm程度となり、形状精度良く半円筒形状を有したセラミック多孔体1を製造することができた。
【0036】
(変形例)
上述の製造方法の変形例として、セッターとして、設置面に予め有機樹脂バインダー膜を形成したものを使用してもよい。以下にこの変形例を説明する。
【0037】
寸法精度を向上すべく、図8に示す成形型3の設置面31にカルボキシメチルセルロースの溶液を塗布して膜厚が0.05mm〜5.0mmとなるように膜を形成し、50℃の恒温槽にて蒸発乾固させた。こうして、図10に示すように各設置面31を有機樹脂バインダー膜4が覆う状態となった。ここで、半成形体2を成形型3の設置面31に形成された有機樹脂バインダー膜4上に、成形型3の設置面31の形状に沿わせる形で設置した。その結果、半成形体2に残る水分によってカルボキシメチルセルロースからなる有機樹脂バインダー膜4が膨潤し、粘着性をもって半成形体2を保持することによって、成形型3と半成形体2と間の密着性が増した。そのまま乾燥工程および焼成工程を行なうことによって、有機バインダー膜4は焼失し、セラミック多孔体1のみが残るため、±1.5mm程度とさらに形状精度の良い半円筒形状を有したセラミック多孔体1を製造することができた。
【0038】
このように、設置面に予め有機樹脂バインダー膜を形成したものを使用することで、有機樹脂バインダー膜は糊剤として作用し、半成形体の成形型への密着性を上げる。その結果、有機樹脂バインダーの粘着力ないし保持力によって、さらに形状精度を高めて曲面形状を有したセラミック多孔体を製造することができる。
【0039】
(実施の形態3)
(製造方法)
図8〜図12を参照し、本発明に基づく実施の形態3におけるセラミック多孔体の製造方法について説明する。本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法は、図8に示したような成形型3の設置面31に半成形体2を設置するところまでは実施の形態2と同様である。成形型3の設置面31には図9に示したように有機樹脂バインダー膜4を予め形成しておいてもよい。
【0040】
本実施の形態では、成形型として、成形型3からなる第1成形型のほかに図11に示すように凸形状の設置面を有する第2成形型5を使用する。成形型3は凹形状の設置面31を有していたが、第2成形型5の設置面は第1成形型3の設置面31に対応するような形状となっている。第2成形型5は図10に示されるように設置された半成形体2を上側から押さえ込むためのものである。本実施の形態では、第1成形型3および第2成形型5は炭化珪素によって形成されている。炭化珪素で形成されたものであれば耐熱温度が高いからである。炭化珪素はセッターを形成するためにも使用可能である。本実施の形態では、第1成形型3および第2成形型5はいずれもセッターである。
【0041】
本実施の形態では、乾燥工程は、図12に示すように、第1成形型3と第2成形型5との間に半成形体2を挟み込んだ状態で行なう。
【0042】
半成形体を乾燥させて成形体を得る成形工程を行なった後、成形体が第1成形型3と第2成形型5との間に挟み込まれたまま引き続き焼成工程を行なう。
【0043】
本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法を実施してみたところ、第1成形型3上に設置された半成形体2の上にさらに第2成形型5を設置することで、第2成形型5の重量により半成形体2に圧力が加わった。そのまま乾燥工程および焼成工程を行なったところ、乾燥・焼成時間ともに第2成形型5を使用しない場合に比べて延びたが、形状精度は実施の形態1の場合よりさらに向上して、おおよそ±1.0mm程度となった。これにより、ほぼ所望の寸法精度を得ることができた。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態では、上からの押し付け力が加わることにより、乾燥工程および焼成工程における半成形体、成形体、焼結体の曲面形状を維持することができ、さらに形状精度良く曲面形状を有したセラミック多孔体を製造することができる。
【0045】
しかし、乾燥・焼成時間が延び、生産性が低下するというデメリットがあったため、次にこの点を改善すべく、焼成炉内での熱伝達(雰囲気温度の空気対流による伝達)を早めるため、乾燥工程終了後に第2成形型5を取り除くこととした。こうして焼成工程は第2成形型5なしで行なうこととしたところ、焼成時間を短縮することができた。
【0046】
焼成工程を第2成形型で上から押さえたままの状態で行なうか、第2成形型を外した状態で行なうかは、焼成時間の短縮と焼結体の形状精度向上のどちらをより優先するかによって適宜決めればよい。
【0047】
なお、ここでは、第1成形型3および第2成形型5はいずれもセッターであるものとしたが、第1成形型3および第2成形型5のうち一方のみがセッターである場合はセッターでない方の成形型を外した状態で焼成工程を行なうこととしてもよい。たとえば、第1成形型3がセッターであって第2成形型5がセッターでない場合、焼成工程は第2成形型5を外した状態で行なうこととしてもよい。
【0048】
なお、焼成工程は、第1成形型および第2成形型を成形体から外し、成形体を第1成形型と同形状の第1セッターおよび第2成形型と同形状の第2セッターの組合せに移し変えた状態、または、前記成形体を前記第1成形型と同形状の第1セッターもしくは前記第2成形型と同形状の第2セッターに移し変えた状態で行なうこととしてもよい。
【0049】
(実施の形態4)
(製造方法)
図13、図14を参照し、本発明に基づく実施の形態4におけるセラミック多孔体の製造方法について説明する。本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法は、図8に示したような成形型3の設置面31に半成形体2を設置するところまでは実施の形態2と同様である。成形型3の設置面31には図9に示したように有機樹脂バインダー膜4を予め形成しておいてもよい。
【0050】
本実施の形態では、半成形体2を下側から支持するためのセッター主部として成形型3を用い、ほかに図13に示す加圧部材6を用いる。加圧部材6は、セッター主部に設置された半成形体2を上から加圧するためのものである。加圧部材6は吸湿性を有するものであることが好ましい。吸湿性を有するものであれば半成形体2の乾燥を早めることができ、乾燥工程の時間を短縮することができるからである。したがって、加圧部材6は、たとえば石膏型であってよい。本実施の形態では、乾燥工程は、図14に示すようにセッター主部としての成形型3と加圧部材6との間に半成形体2を挟み込んだ状態で行なう。乾燥工程によって半成形体2は成形体となる。焼成工程は、加圧部材6を成形体から外し、成形体がセッター主部に支持された状態で行なう。
【0051】
(作用・効果)
加圧部材6として石膏型を用いて本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法を実施してみたところ、実施の形態3とほぼ同じく、±1.0mm程度の形状精度を得ることができた。一方、乾燥工程は実施の形態3に比べて短縮された。
【0052】
本実施の形態では、乾燥工程において上からの押し付け力が加わることにより、形状精度良く成形体を得ることができ、なおかつ焼成工程においては成形体のセッターに接する面と逆の側は空間となり、焼成雰囲気の熱が成形体に伝わりやすくなるため、焼成エネルギー効率が向上し、生産性が向上する。
【0053】
実施の形態2〜4では、第1成形型と第2成形型あるいはセッター主部と加圧部材が上下から半成形体を挟み込む構造を例示したが、挟み込む方向は上下に限らず、左右、前後、あるいは斜めであってもよい。また、下側に位置する成形型に凹形状の面を設けた例を示したが、下側に位置する成形型に凸形状の面を設けて上側に位置する第2成形型または加圧部材に凹形状の面を設けてもよい。また、ここまで実施の形態2〜4は形状1(図1、図2参照)を前提に説明したが、他の形状であってもよい。対象物が他の形状であれば、成形型や加圧部材に求められる形状はそれぞれ異なる。所望の形状に合わせて成形型や加圧部材の形状を設計すればよい。
【0054】
このように、本発明によるセラミック多孔体の製造方法によれば、従来技術では製造が困難であった、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は軸方向の一端から他端まで一定であるような形状、すなわち実施の形態1で示したような形状の、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体を寸法精度良くかつ効率良く得ることができる。
【0055】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に基づく実施の形態1におけるセラミック多孔体の第1の例(形状1)の斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線に関する矢視断面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1におけるセラミック多孔体の第2の例(形状2)の断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における形状2のセラミック多孔体の第3の例(形状3)の断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における形状2のセラミック多孔体の第4の例(形状4)の斜視図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における形状2のセラミック多孔体の第4の例(形状4)の側面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法の途中段階で得られる半成形体の斜視図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる成形型の斜視図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる成形型に有機樹脂バインダー膜を形成した状態の斜視図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる成形型に半成形体を設置した状態の斜視図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態3におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる第2成形型の斜視図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態3におけるセラミック多孔体の製造方法で行なわれる乾燥工程の説明図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる加圧部材の斜視図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態4におけるセラミック多孔体の製造方法で行なわれる乾燥工程の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1,1h,1i,1j セラミック多孔体、2 半成形体、3 成形型(第1成形型)、4 有機樹脂バインダー膜、5 第2成形型、6 加圧部材、11 半円部、12,14 直線部、13 湾曲部、21 第1の区間、22 第2の区間、31 設置面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体や、気体・液体などの流体を濾過する流体フィルタなどの用途に用いられるセラミック多孔体、およびセラミック多孔体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、触媒担体として用いられるセラミック多孔体や、気体、液体などの流体を濾過する流体フィルタなどに用いられるセラミック多孔体として、以下のような製造方法のものが知られていた。まず、内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体を液体のセラミックスラリーに浸漬し、セラミックスラリーをこの合成樹脂発泡体の骨格表面に付着させる。これを乾燥、焼成することによって内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体を得る。この基本的な製造方法について特公昭60−17563号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
ここで、触媒機能向上、つまり表面積の拡大や、塵埃捕集性能向上など、触媒担体、流体フィルタとしての性能を向上するために、多孔体の厚みやセル数を増やす技術が一般に採用されている。さらに圧力損失を低減するための技術として、セラミック多孔体の表面積を拡大する方法が提案されている。たとえば、表面積を拡大するために各々セラミック多孔体からなる筒状体と波状体とを一体化した構造のセラミック多孔体が特開2004−223482号公報(特許文献2)に、また表面に凹凸を設けて表面積を拡大したセラミック多孔体が特開2004−322027号公報(特許文献3)に開示されている。
【特許文献1】特公昭60−17563号公報
【特許文献2】特開2004−223482号公報
【特許文献3】特開2004−322027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の触媒担体や流体フィルタなどに用いられるセラミック多孔体においては、これらの用途に使用するにあたって、触媒機能向上、つまり表面積の拡大や、塵埃捕集性能の向上など、各用途に対応する性能向上が求められている。しかしながら、一般に採られる多孔体の厚みやセル数を増やすという手法で一部性能の向上を図った場合には、同時に圧力損失の増大も招く、つまり触媒担体や流体フィルタとしての他の性能を低下させてしまうという問題があった。
【0005】
上述のような問題を解決するために、上記特許文献2では、各々セラミック多孔体よりなる筒状体と波状体を一体化した構造で表面積を拡大したセラミック多孔体が提案されているが、この技術では、濾過面積が増大するために圧力損失を低減することができる一方で、形状が複雑化するため、合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬し、セラミックスラリーを合成樹脂発泡体の骨格に付着させる工程において、付着量を均一に調整することが困難となる。これに伴って合成樹脂発泡体のセルに目づまりが生じやすくなり、圧力損失を所望量に抑えたセラミック多孔体を安定して生産することが困難となる。さらに、特に圧力損失が低いセラミック多孔体を得るために使用される空孔率の高い合成樹脂発泡体の場合は、合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着させた段階で合成樹脂発泡体が自重により変形しやすくなる。そのため、所望の形状を精度よく、ばらつきなく得ることが困難とあるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献3では、表面に凹凸を設けて表面積を拡大したセラミック多孔体が提案されているが、この技術では、厚みが均一でないために圧力損失の面内不均一が生じて、圧力損失が低い、つまり流路が短い部分に流体が集中して流れ、凹凸によって拡大した表面積を充分に活かせないという問題がある。さらに、製造方法に注目すれば、予め合成樹脂発泡体を所望の形状に加工した場合には、上記特許文献2に記載の筒状体と波状体とを一体化した構造のセラミック多孔体の場合と同じく、所望の圧力損失を有したセラミック多孔体を安定して生産することが困難であるという問題があった。さらに、セラミックを付着させた合成樹脂発泡体を加工する場合には、加工の際に生じる振動などによって、骨格に付着したセラミックまたはセラミックスラリー膜の膜厚変化が生じたり、セラミックまたはセラミックスラリー膜の剥離が発生したりして、表面部分の強度が低下するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、表面積が大きくかつ圧力損失が低く、生産性良く製造できるような構造の、3次元骨格構造セラミック多孔体を提供することを目的とする。さらに、そのような3次元骨格構造セラミック多孔体の製造に適用可能なセラミック多孔体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく3次元骨格構造セラミック多孔体は、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は前記軸方向の一端から他端まで一定である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設置面積に比べて表面積が大きくなるので圧力損失が小さくなり、なおかつ、表面積の拡大に伴って触媒担体としての性能も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における3次元骨格構造セラミック多孔体について説明する。
【0011】
図1に示すセラミック多孔体1は、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第1の例に該当する。図2は、セラミック多孔体1のII−II線に関する矢視断面図に相当する。すなわち、図2は軸方向に垂直な面で切った断面図である。この形状を以下「形状1」という。
【0012】
図3に示すセラミック多孔体1hは、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第2の例に該当する。図3は軸方向に垂直な面で切った断面図であり、セラミック多孔体1hの断面形状は、半円部11と直線部12とを含んでいる。この形状を以下「形状2」という。
【0013】
図4に示すセラミック多孔体1iは、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第3の例に該当する。図4は軸方向に垂直な面で切った断面図であり、セラミック多孔体1iの断面形状は、コの字型となっており、直線部12,14と湾曲部13とを含んでいる。この形状を以下「形状3」という。
【0014】
形状1〜3のセラミック多孔体1,1h,1iはいずれも、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、この断面形状は軸方向の一端から他端まで一定である。
【0015】
図5に示すセラミック多孔体1jは、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の第4の例に該当する。セラミック多孔体1jを側方から見たところを図6に示す。セラミック多孔体1jは、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に見て複数の区間を有し、軸方向に垂直な断面形状が開曲線であり、この開曲線の断面形状は前記複数の区間のうちの第1の区間21においては一定であり、前記複数の区間のうち前記第1の区間21とは別の第2の区間22においては、第1の区間21での湾曲した板形状に凹凸を設けた形状となっている。この形状を以下「形状4」という。図5、図6では第2の区間22は1ヶ所のみとなっているが、第2の区間22は複数箇所にあってもよい。
【0016】
(作用・効果)
本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体によれば、セラミック多孔体は、その設置面積すなわち真上から見たときに占める面積(以下「正射影面積」という。)に比べて表面積が大きくなるので圧力損失が小さくなり、なおかつ、表面積の拡大に伴って触媒担体としての性能も向上する。
【0017】
また、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体には、特開2005−152760号公報などに開示されている大気プラズマ法によるガス分解処理装置の反応リアクター内への充填物質としての用途もある。この充填物質は、素材をチタン酸バリウム、チタニアなどの誘電体物質、あるいは誘電体物質を含む組成とすることでペレット充填型放電が起こるようにすれば、放電処理部に用いる誘電体部分の圧力損失を低減することができる。また、この充填物質は、セラミック多孔体表面にゼオライトなどのミクロ細孔を有する吸着物質を担持することで触媒界面放電が起こるようにすれば、処理対象のガスを濃縮し、間欠処理となるので消費電力を低減、つまりランニングコストを低減することができる。
【0018】
この反応リアクターの一般的な放電部は円筒形状になるように中心電極、外側電極が配置されている。そのため、円筒形状部内の中心電極−外側電極間にセラミック多孔体を設置することが求められる場合もある。閉曲面となる断面形状を有する従来のセラミック多孔体では、中心電極の端部からしか設置ができなかったのに対して、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体であれば、開曲線となる断面形状を有するので、円筒形状部の端部だけでなく側方からの設置も可能になる。したがって、作業性を大幅に向上することができる。
【0019】
さらに、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体の製造方法においては、平板状の合成樹脂発泡体を用いることができるため、生産性を阻害することなく、従来の成形手法を適用することができる。
【0020】
また、形状4を除いて、軸方向に垂直な断面形状が一定となっているため、軸方向に長い焼結体を作成した後で軸方向に見た所望の長さに切断する方法を採用することで、生産性の向上を図ることもできる。さらに焼成工程における対象物の積載効率を向上させることができ、その結果、動力コスト低減を図ることができる。
【0021】
形状4についても、第2の区間となる所定形状の部分を一定間隔で備えた長尺状の焼結体を作成した後に、各部が第2の区間を含むように分割することによって効率良く生産することができる。形状4のように適宜第2の区間を含む形状とすれば、設置場所の形状に合わせた形状とすることができ、設置場所の省スペース化、ひいては装置の小型化を図ることが可能となる。
【0022】
ここでは、形状1〜4の4通りのみ示したが、本発明に基づくセラミック多孔体はこれらの形状に限られるわけではなく、上述の条件にあてはまるものであれば他の形状であってもよい。
【0023】
なお、本実施の形態における3次元骨格構造セラミック多孔体は、厚みが一定であることが好ましい。厚みが一定であればセラミック多孔体としての使用時に生じる圧力損失の面内分布が均一となり、セラミック多孔体の全面を均一に利用することができるようになり、効率化を図ることができる。
【0024】
(製造方法)
上述の各セラミック多孔体を製造するには、以下の製造方法を用いることができる。内部連通空間を有する3次元骨格構造の板材状合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬してセラミックスラリーを付着させ、余剰スラリーを除去して所望量のセラミックスラリーが付着した合成樹脂発泡体(以下、「半成形体」と称する。)を得た後に、半成形体が所望の形状となる状態で乾燥して成形体を得、成形体を焼成する方法を採ればよい。ここで、合成樹脂発泡体としては、内部連通空間を有する3次元骨格構造の板材状合成樹脂発泡体であれば、いずれのものでも使用可能であるが、軟質ポリウレタンフォーム、特にセル膜のない軟質ポリウレタンフォームが好適に使用できる。
【0025】
また、セラミック材料としては、たとえば、アルミナ、ムライト、チタニア、ジルコン、ジルコニア、スピネル、コーディエライト、炭化珪素、窒化珪素などを用いることができるが、焼結により3次元骨格構造を維持できる程度に強度が得られる材料であれば、その他、いずれのセラミック材料であっても使用可能である。
【0026】
(実験)
本実施の形態では、合成樹脂発泡体として、セル膜のない軟質ポリウレタンフォーム(株式会社ブリヂストン製エバーライトSF,商品名:HR−30)を用い、形状1〜4について、各々表1に示す寸法に裁断加工し、上述の製造方法によって、各々コーディエライトセラミック多孔体を得た。表1に示す寸法は、焼結体として出来上がった状態での各セラミック多孔体の占有するスペースを包含する最小の直方体の寸法が同等となるように計算されて設定されたものである。
【0027】
ここで、形状1については、変形例として、図2に示すように断面図で見た場合の左側と右側とで厚さが異なる試料も作成した。これを「形状1−1」、「形状1−2」という。また、比較例1として、同じ材料からなり、厚みおよび正射影の面積が同等の平板についても試料を準備した。
【0028】
得られた各試作品について、圧力損失を測定した。結果を表1に示す。比較例1を含めた各試作品の正射影面積は、いずれも95mm×95mm=9025mm2となって等しくなっている。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示す実験結果から、本発明による内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体は、単なる平板である比較例1に比べて正射影面積当たりの圧力損失が低いことが実証された。
【0031】
(実施の形態2)
(製造方法)
図7〜図10を参照して、本発明に基づく実施の形態2におけるセラミック多孔体の製造方法について説明する。
【0032】
本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法は、内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して前記セラミックスラリーを付着させる工程と、余剰スラリーを除去して前記合成樹脂発泡体に前記セラミックスラリーが所望量だけ付着したものである半成形体を得る工程と、前記半成形体を乾燥して成形体を得る成形工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含む、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体の製造方法において、前記成形工程は、所望の曲面形状の設置面を有する成形型の前記設置面に前記半成形体を設置する工程と、前記半成形体を前記設置面の前記曲面形状に沿わせた状態で乾燥させる乾燥工程とを含む。
【0033】
以下では、実施の形態1で説明した形状1のセラミック多孔体を製造する場合を例にとって説明するが、対象とするセラミック多孔体の形状はこれに限るものではない。本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法の途中段階で得られる半成形体2を図7に示す。この半成形体2は、内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬してセラミックスラリーを付着させる工程を経て、さらに余剰スラリーを除去して合成樹脂発泡体にセラミックスラリーが所望量だけ付着した状態にしたものである。図8に、本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法で使用される成形型3を示す。成形型3は形状1に対応した凹状の曲面からなる設置面31を有する。
【0034】
(実施例)
より具体的な実施例を以下に説明する。内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体として、セル膜のない軟質ポリウレタンフォーム(株式会社ブリヂストン製エバーライトSF,商品名:HR−30、以下、「ウレタンフォーム」という。)を準備し、アルミナ:94重量%,蛙目粘土:3重量%,タルク:3重量%に調整したセラミックスラリーにこのウレタンフォームを浸漬してセラミックスラリーを付着させた。その後、このウレタンフォームを2本の円筒状ロールで両側から挟んで圧搾し、余剰スラリーを除去した後に、圧縮エアーブローによってウレタンフォームに付着するセラミックスラリーの量を所望量に調整して半成形体2を得た(図7参照)。次いで、半成形体を乾燥させて成形体を得る成形工程を行なった。ただし、この成形工程においては、半成形体2の形成以後、完全に乾燥して成形体となるまでの間、すなわち半成形体2が水分を保有して柔軟に形状を変化させることが可能な間に、予め半円筒状の曲面形状の溝を設置面31として加工しておいた焼成炉用の棚板または敷板に半成形体2を設置した。本実施例の場合、この焼成炉用の棚板または敷板(以下「セッター」という。)が成形型3に相当する(図8参照)。一般に、セッターは成形型の一種である。図9に示すように半成形体2を成形型3の設置面31の曲面形状に沿わせた状態で乾燥工程を行なった。さらに乾燥工程の結果得られた成形体も成形型3から動かすことなく、引き続き、成形体を焼成して焼結体を得る焼成工程を行なった。こうして、半円筒形状を有する3次元骨格構造セラミック多孔体1を得た(図1参照)。
【0035】
(作用・効果)
この製造方法によれば、セラミック多孔体1に曲面形状を形成する際に特に問題となる、半成形体2の状態での合成樹脂発泡体に付着したセラミックスラリー重量による半成形体2の不所望な変形を抑制することができる。また、焼成工程、特に昇温時において、成形体の形状を維持している合成樹脂発泡体が焼失し、なおかつセラミックの焼結がまだ完全に進行していない状態であった場合に生じる自重による変形などを抑制することができる。発明者らの検討によれば、特許文献2に開示される曲面形状を有したセラミック多孔体では、ウレタンフォームで形成した元の形状との寸法差が±5〜10mm程度とならざるを得なかったのに対して、本実施の形態では、±3mm程度となり、形状精度良く半円筒形状を有したセラミック多孔体1を製造することができた。
【0036】
(変形例)
上述の製造方法の変形例として、セッターとして、設置面に予め有機樹脂バインダー膜を形成したものを使用してもよい。以下にこの変形例を説明する。
【0037】
寸法精度を向上すべく、図8に示す成形型3の設置面31にカルボキシメチルセルロースの溶液を塗布して膜厚が0.05mm〜5.0mmとなるように膜を形成し、50℃の恒温槽にて蒸発乾固させた。こうして、図10に示すように各設置面31を有機樹脂バインダー膜4が覆う状態となった。ここで、半成形体2を成形型3の設置面31に形成された有機樹脂バインダー膜4上に、成形型3の設置面31の形状に沿わせる形で設置した。その結果、半成形体2に残る水分によってカルボキシメチルセルロースからなる有機樹脂バインダー膜4が膨潤し、粘着性をもって半成形体2を保持することによって、成形型3と半成形体2と間の密着性が増した。そのまま乾燥工程および焼成工程を行なうことによって、有機バインダー膜4は焼失し、セラミック多孔体1のみが残るため、±1.5mm程度とさらに形状精度の良い半円筒形状を有したセラミック多孔体1を製造することができた。
【0038】
このように、設置面に予め有機樹脂バインダー膜を形成したものを使用することで、有機樹脂バインダー膜は糊剤として作用し、半成形体の成形型への密着性を上げる。その結果、有機樹脂バインダーの粘着力ないし保持力によって、さらに形状精度を高めて曲面形状を有したセラミック多孔体を製造することができる。
【0039】
(実施の形態3)
(製造方法)
図8〜図12を参照し、本発明に基づく実施の形態3におけるセラミック多孔体の製造方法について説明する。本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法は、図8に示したような成形型3の設置面31に半成形体2を設置するところまでは実施の形態2と同様である。成形型3の設置面31には図9に示したように有機樹脂バインダー膜4を予め形成しておいてもよい。
【0040】
本実施の形態では、成形型として、成形型3からなる第1成形型のほかに図11に示すように凸形状の設置面を有する第2成形型5を使用する。成形型3は凹形状の設置面31を有していたが、第2成形型5の設置面は第1成形型3の設置面31に対応するような形状となっている。第2成形型5は図10に示されるように設置された半成形体2を上側から押さえ込むためのものである。本実施の形態では、第1成形型3および第2成形型5は炭化珪素によって形成されている。炭化珪素で形成されたものであれば耐熱温度が高いからである。炭化珪素はセッターを形成するためにも使用可能である。本実施の形態では、第1成形型3および第2成形型5はいずれもセッターである。
【0041】
本実施の形態では、乾燥工程は、図12に示すように、第1成形型3と第2成形型5との間に半成形体2を挟み込んだ状態で行なう。
【0042】
半成形体を乾燥させて成形体を得る成形工程を行なった後、成形体が第1成形型3と第2成形型5との間に挟み込まれたまま引き続き焼成工程を行なう。
【0043】
本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法を実施してみたところ、第1成形型3上に設置された半成形体2の上にさらに第2成形型5を設置することで、第2成形型5の重量により半成形体2に圧力が加わった。そのまま乾燥工程および焼成工程を行なったところ、乾燥・焼成時間ともに第2成形型5を使用しない場合に比べて延びたが、形状精度は実施の形態1の場合よりさらに向上して、おおよそ±1.0mm程度となった。これにより、ほぼ所望の寸法精度を得ることができた。
【0044】
(作用・効果)
本実施の形態では、上からの押し付け力が加わることにより、乾燥工程および焼成工程における半成形体、成形体、焼結体の曲面形状を維持することができ、さらに形状精度良く曲面形状を有したセラミック多孔体を製造することができる。
【0045】
しかし、乾燥・焼成時間が延び、生産性が低下するというデメリットがあったため、次にこの点を改善すべく、焼成炉内での熱伝達(雰囲気温度の空気対流による伝達)を早めるため、乾燥工程終了後に第2成形型5を取り除くこととした。こうして焼成工程は第2成形型5なしで行なうこととしたところ、焼成時間を短縮することができた。
【0046】
焼成工程を第2成形型で上から押さえたままの状態で行なうか、第2成形型を外した状態で行なうかは、焼成時間の短縮と焼結体の形状精度向上のどちらをより優先するかによって適宜決めればよい。
【0047】
なお、ここでは、第1成形型3および第2成形型5はいずれもセッターであるものとしたが、第1成形型3および第2成形型5のうち一方のみがセッターである場合はセッターでない方の成形型を外した状態で焼成工程を行なうこととしてもよい。たとえば、第1成形型3がセッターであって第2成形型5がセッターでない場合、焼成工程は第2成形型5を外した状態で行なうこととしてもよい。
【0048】
なお、焼成工程は、第1成形型および第2成形型を成形体から外し、成形体を第1成形型と同形状の第1セッターおよび第2成形型と同形状の第2セッターの組合せに移し変えた状態、または、前記成形体を前記第1成形型と同形状の第1セッターもしくは前記第2成形型と同形状の第2セッターに移し変えた状態で行なうこととしてもよい。
【0049】
(実施の形態4)
(製造方法)
図13、図14を参照し、本発明に基づく実施の形態4におけるセラミック多孔体の製造方法について説明する。本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法は、図8に示したような成形型3の設置面31に半成形体2を設置するところまでは実施の形態2と同様である。成形型3の設置面31には図9に示したように有機樹脂バインダー膜4を予め形成しておいてもよい。
【0050】
本実施の形態では、半成形体2を下側から支持するためのセッター主部として成形型3を用い、ほかに図13に示す加圧部材6を用いる。加圧部材6は、セッター主部に設置された半成形体2を上から加圧するためのものである。加圧部材6は吸湿性を有するものであることが好ましい。吸湿性を有するものであれば半成形体2の乾燥を早めることができ、乾燥工程の時間を短縮することができるからである。したがって、加圧部材6は、たとえば石膏型であってよい。本実施の形態では、乾燥工程は、図14に示すようにセッター主部としての成形型3と加圧部材6との間に半成形体2を挟み込んだ状態で行なう。乾燥工程によって半成形体2は成形体となる。焼成工程は、加圧部材6を成形体から外し、成形体がセッター主部に支持された状態で行なう。
【0051】
(作用・効果)
加圧部材6として石膏型を用いて本実施の形態におけるセラミック多孔体の製造方法を実施してみたところ、実施の形態3とほぼ同じく、±1.0mm程度の形状精度を得ることができた。一方、乾燥工程は実施の形態3に比べて短縮された。
【0052】
本実施の形態では、乾燥工程において上からの押し付け力が加わることにより、形状精度良く成形体を得ることができ、なおかつ焼成工程においては成形体のセッターに接する面と逆の側は空間となり、焼成雰囲気の熱が成形体に伝わりやすくなるため、焼成エネルギー効率が向上し、生産性が向上する。
【0053】
実施の形態2〜4では、第1成形型と第2成形型あるいはセッター主部と加圧部材が上下から半成形体を挟み込む構造を例示したが、挟み込む方向は上下に限らず、左右、前後、あるいは斜めであってもよい。また、下側に位置する成形型に凹形状の面を設けた例を示したが、下側に位置する成形型に凸形状の面を設けて上側に位置する第2成形型または加圧部材に凹形状の面を設けてもよい。また、ここまで実施の形態2〜4は形状1(図1、図2参照)を前提に説明したが、他の形状であってもよい。対象物が他の形状であれば、成形型や加圧部材に求められる形状はそれぞれ異なる。所望の形状に合わせて成形型や加圧部材の形状を設計すればよい。
【0054】
このように、本発明によるセラミック多孔体の製造方法によれば、従来技術では製造が困難であった、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は軸方向の一端から他端まで一定であるような形状、すなわち実施の形態1で示したような形状の、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体を寸法精度良くかつ効率良く得ることができる。
【0055】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に基づく実施の形態1におけるセラミック多孔体の第1の例(形状1)の斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線に関する矢視断面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1におけるセラミック多孔体の第2の例(形状2)の断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における形状2のセラミック多孔体の第3の例(形状3)の断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における形状2のセラミック多孔体の第4の例(形状4)の斜視図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における形状2のセラミック多孔体の第4の例(形状4)の側面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法の途中段階で得られる半成形体の斜視図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる成形型の斜視図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる成形型に有機樹脂バインダー膜を形成した状態の斜視図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態2〜4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる成形型に半成形体を設置した状態の斜視図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態3におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる第2成形型の斜視図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態3におけるセラミック多孔体の製造方法で行なわれる乾燥工程の説明図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態4におけるセラミック多孔体の製造方法で用いられる加圧部材の斜視図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態4におけるセラミック多孔体の製造方法で行なわれる乾燥工程の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1,1h,1i,1j セラミック多孔体、2 半成形体、3 成形型(第1成形型)、4 有機樹脂バインダー膜、5 第2成形型、6 加圧部材、11 半円部、12,14 直線部、13 湾曲部、21 第1の区間、22 第2の区間、31 設置面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は前記軸方向の一端から他端まで一定である、3次元骨格構造セラミック多孔体。
【請求項2】
内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に見て複数の区間を有し、前記軸方向に垂直な断面形状が開曲線であり、前記開曲線の断面形状は前記複数の区間のうちの第1の区間においては一定であり、前記複数の区間のうち前記第1の区間とは別の1以上の区間である第2の区間においては、前記第1の区間での湾曲した板形状に凹凸を設けた形状となっている、3次元骨格構造セラミック多孔体。
【請求項3】
厚みが一定である、請求項1または2に記載の3次元骨格構造セラミック多孔体。
【請求項4】
内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して前記セラミックスラリーを付着させる工程と、
余剰スラリーを除去して前記合成樹脂発泡体に前記セラミックスラリーが所望量だけ付着したものである半成形体を得る工程と、
前記半成形体を乾燥して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含む、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体の製造方法において、
前記成形工程は、
所望の曲面形状の設置面を有する成形型の前記設置面に前記半成形体を設置する工程と、
前記半成形体を前記設置面の前記曲面形状に沿わせた状態で乾燥させる乾燥工程とを含む、セラミック多孔体の製造方法。
【請求項5】
前記成形型としては、前記設置面に予め有機樹脂バインダー膜を形成したものを使用する、請求項4に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項6】
前記成形型として、凹形状の前記設置面を有する第1成形型と、凸形状の前記設置面を有する第2成形型とを使用し、
前記乾燥工程は、前記第1成形型と前記第2成形型との間に前記半成形体を挟み込んだ状態で行なう、請求項4または5に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項7】
前記第1成形型および前記第2成形型のうちの一方のみがセッターであり、前記焼成工程は、前記第1成形型および前記第2成形型のうちセッターでない一方を前記成形体から外し、セッターである他方は残した状態で行なう、請求項6に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項8】
前記第1成形型および前記第2成形型はいずれもセッターであり、前記焼成工程は、前記第1成形型と前記第2成形型との間に前記成形体を挟み込んだ状態で行なう、請求項6に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項9】
前記焼成工程は、前記第1成形型および前記第2成形型を前記成形体から外し、前記成形体を前記第1成形型と同形状の第1セッターおよび前記第2成形型と同形状の第2セッターの組合せに移し変えた状態、または、前記成形体を前記第1成形型と同形状の第1セッターもしくは前記第2成形型と同形状の第2セッターに移し変えた状態で行なう、請求項6に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項10】
前記成形型として、前記半成形体を下側から支持するためのセッター主部と、前記セッター主部に設置された前記半成形体を上から加圧するための加圧部材とを使用し、
前記乾燥工程は、前記セッター主部と前記加圧部材との間に前記半成形体を挟み込んだ状態で行なう、請求項4または5に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項11】
前記焼成工程は、前記加圧部材を前記成形体から外し、前記成形体が前記セッター主部に支持された状態で行なう、請求項10に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項12】
前記焼成工程は、前記セッター主部および前記加圧部材を前記成形体から外した状態で行なう、請求項10に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項13】
前記加圧部材は石膏型である、請求項10から12のいずれかに記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項1】
内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に垂直な断面形状が曲線部を含む開ループの線形であり、前記断面形状は前記軸方向の一端から他端まで一定である、3次元骨格構造セラミック多孔体。
【請求項2】
内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体であって、湾曲した部分を含む板形状であり、軸方向に見て複数の区間を有し、前記軸方向に垂直な断面形状が開曲線であり、前記開曲線の断面形状は前記複数の区間のうちの第1の区間においては一定であり、前記複数の区間のうち前記第1の区間とは別の1以上の区間である第2の区間においては、前記第1の区間での湾曲した板形状に凹凸を設けた形状となっている、3次元骨格構造セラミック多孔体。
【請求項3】
厚みが一定である、請求項1または2に記載の3次元骨格構造セラミック多孔体。
【請求項4】
内部連通空間を有する3次元骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して前記セラミックスラリーを付着させる工程と、
余剰スラリーを除去して前記合成樹脂発泡体に前記セラミックスラリーが所望量だけ付着したものである半成形体を得る工程と、
前記半成形体を乾燥して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼成して焼結体を得る焼成工程とを含む、内部連通空間を有する3次元骨格構造セラミック多孔体の製造方法において、
前記成形工程は、
所望の曲面形状の設置面を有する成形型の前記設置面に前記半成形体を設置する工程と、
前記半成形体を前記設置面の前記曲面形状に沿わせた状態で乾燥させる乾燥工程とを含む、セラミック多孔体の製造方法。
【請求項5】
前記成形型としては、前記設置面に予め有機樹脂バインダー膜を形成したものを使用する、請求項4に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項6】
前記成形型として、凹形状の前記設置面を有する第1成形型と、凸形状の前記設置面を有する第2成形型とを使用し、
前記乾燥工程は、前記第1成形型と前記第2成形型との間に前記半成形体を挟み込んだ状態で行なう、請求項4または5に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項7】
前記第1成形型および前記第2成形型のうちの一方のみがセッターであり、前記焼成工程は、前記第1成形型および前記第2成形型のうちセッターでない一方を前記成形体から外し、セッターである他方は残した状態で行なう、請求項6に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項8】
前記第1成形型および前記第2成形型はいずれもセッターであり、前記焼成工程は、前記第1成形型と前記第2成形型との間に前記成形体を挟み込んだ状態で行なう、請求項6に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項9】
前記焼成工程は、前記第1成形型および前記第2成形型を前記成形体から外し、前記成形体を前記第1成形型と同形状の第1セッターおよび前記第2成形型と同形状の第2セッターの組合せに移し変えた状態、または、前記成形体を前記第1成形型と同形状の第1セッターもしくは前記第2成形型と同形状の第2セッターに移し変えた状態で行なう、請求項6に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項10】
前記成形型として、前記半成形体を下側から支持するためのセッター主部と、前記セッター主部に設置された前記半成形体を上から加圧するための加圧部材とを使用し、
前記乾燥工程は、前記セッター主部と前記加圧部材との間に前記半成形体を挟み込んだ状態で行なう、請求項4または5に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項11】
前記焼成工程は、前記加圧部材を前記成形体から外し、前記成形体が前記セッター主部に支持された状態で行なう、請求項10に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項12】
前記焼成工程は、前記セッター主部および前記加圧部材を前記成形体から外した状態で行なう、請求項10に記載のセラミック多孔体の製造方法。
【請求項13】
前記加圧部材は石膏型である、請求項10から12のいずれかに記載のセラミック多孔体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−176720(P2007−176720A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374769(P2005−374769)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]