説明

3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法

【課題】本発明は、ターゲットを配置することなく複数の3次元点群データを容易に合成可能な3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法を提供する。
【解決手段】複数の計測箇所において被測定対象物Oの表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面RF1、RF2、RF3を表す3次元点群データPG1、PG2を測定する形状測定装置2と、複数の3次元点群データPG1、PG2について3つの基準面RF1、RF2、RF3をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データCPGを作成する合成装置3と、合成点群データCPGから被測定対象物Oの3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成装置5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー計測装置、多関節3次元測定器、デジタルカメラおよびCCDカメラなどの複数種の3次元形状測定器を、被測定対象である構造物や測定する部分に要求される精度等に応じて選定し、これら複数の3次元形状測定器によって測定した被測定対象に係る3次元点群データを合成処理し、さらに合成処理した3次元点群データから3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法が知られている。この3次元CADデータは、被測定対象である構造物の有限要素構造解析に使用するモデルの作成に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−58508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電所の改造工事や耐震性向上工事などの工事において、工事開始前の現場調査や、工事終了後の据付状態の記録など、現場情報を記録する場合がある。また、文化財などの表面形状を測定して記録する場合がある。これら原子力発電所や文化財などの既設の被測定対象物を現地で効率的に測定するため、例えばレーザー計測装置を使用して被測定対象物の表面形状を表す3次元点群データを取得する。
【0005】
ところで、被測定対象物の表面形状を死角や影のない3次元点群データで表すためには、複数の箇所で測定した個別の3次元点群データを合成する必要がある。従来、この3次元点群データの合成は、被測定対象物の近傍に適宜に配置するターゲットを基準にして相互に異なる3次元点群データを重ね合わせることによって行われている。
【0006】
すなわち、被測定対象物の表面形状を死角や影のない3次元点群データで表すためには、被測定対象物の周囲にターゲットを適宜に配置する作業を要し、現地作業の効率低下を招いていた。
【0007】
他方、レーザー計測装置で測定する3次元点群データは、測定点の数量が数億点から十数億点に達するためデータ量が膨大になる。このような3次元点群データを設計データとして取り扱う場合も、複数の箇所から測定を行って被測定対象物の表面形状を死角あるいは影のない3次元点群データで表すことが重要である。しかるに、死角あるいは影のない3次元点群データは、個々に膨大なデータ量に達する3次元点群データを合成して得るため、さらに膨大なデータ量に達する合成点群データとなる。この合成点群データを視覚的に利用しやすく画像に表示したり、視点や視野を変更して再表示したりする処理は、大容量のメモリ空間や高い演算能力を必要とするため、合成点群データの円滑な利用には困難をともなう。このため、死角あるいは影のある3次元点群データを非合成のまま、測定箇所毎に個別に表示して現場の状況を確認する程度の使用に留まっていた。
【0008】
そこで、本発明は、ターゲットを配置することなく複数の3次元点群データを容易に合成可能な3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法を提供する。また、本発明は、複数の3次元点群データを合成して得る合成点群データを効率よく利用できる3次元CADデータを作成可能な3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る3次元CADデータ作成システムは、複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面を表す3次元点群データを測定する形状測定装置と、複数の前記3次元点群データについて前記3つの基準面をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データを作成する合成装置と、前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る3次元CADデータ作成システムは、複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状を表す3次元点群データを測定する形状測定装置と、前記複数の3次元点群データを合成して合成点群データを作成する合成装置と、前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成するとき、前記合成点群データにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する前記被測定対象物について連続する一体の3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成装置と、を備える。
【0011】
さらに、本発明の実施形態に係る3次元CADデータ作成方法は、複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面を表す3次元点群データを測定し、複数の前記3次元点群データについて前記3つの基準面をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データを作成し、前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成することを特徴とする。
【0012】
さらにまた、本発明の実施形態に係る3次元CADデータ作成方法は、複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状を表す3次元点群データを測定し、前記複数の3次元点群データを合成して合成点群データを作成し、前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成するとき、前記合成点群データにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する前記被測定対象物について連続する一体の3次元CADデータを作成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る3次元CADデータ作成システムを示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの3次元点群データを示す概略図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの合成点群データを示す概略図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る3次元CADデータ作成システムを示すブロック図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの3次元点群データを示す概略図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの3次元CADデータを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明に係る3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法の第1実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る3次元CADデータ作成システムを示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1は、複数の計測箇所において被測定対象物Oの表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面RF1、RF2、RF3を表す3次元点群データPG1、PG2を測定する形状測定装置2と、複数の3次元点群データPG1、PG2について3つの基準面RF1、RF2、RF3をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データCPGを作成する合成装置3と、合成点群データCPGから被測定対象物Oの3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成装置5と、を備える。
【0018】
形状測定装置2は、例えばレーザー計測装置7や複数のデジタルカメラ(図示省略)である。
【0019】
レーザー計測装置7は、所謂レーザースキャナであり、レーザー光を被測定対象物Oに照射し、被測定対象物Oが反射する光(反射光)を受光してレーザー計測装置7と被測定対象物Oとの距離を測定し、同時にレーザー光を照射した方向を加味してレーザー光が反射した箇所(すなわち測定点)の三次元座標値(x,y,z)を取得する。
【0020】
他方、複数のデジタルカメラは、被測定対象物Oを撮影した画像から3次元点群データPG1、PG2のいずれかを作成する光学計測装置、所謂ステレオカメラであり、視差を利用して被測定対象物Oにおける撮影箇所(すなわち測定点)の三次元座標値(x,y,z)を取得する。複数のデジタルカメラは、測定点毎に、取得番号と、三次元座標値(x,y,z)と、輝度とからなるデータを全測定点について取得する。この全測定点のデータが3次元点群データPG1、PG2のいずれかであり、複数のデジタルカメラの撮影箇所毎に異なるインデックスを付して識別する。
【0021】
また、形状測定装置2は、電磁波によって被測定対象物Oを走査し3次元点群データPG1、PG2のいずれかを作成する電磁波計測装置であっても良い。
【0022】
合成装置3は、形状測定装置2、すなわちレーザー計測装置7、複数のデジタルカメラおよび電磁波計測装置の少なくとも1つから3次元点群データPG1、PG2を取得し、記憶するとともに3次元点群データPG1、PG2を同一の座標系に合成し合成点群データCPGを作成する。
【0023】
3次元CADデータ作成装置5は、JIS(Japanese Industrial Standard、日本工業規格)などの各種規格における配管や鋼材、板材などの形状を登録し記憶可能な属性集記憶部11と、属性集記憶部11に記憶される各種形状の他、線(直線、曲線)や面(平面、曲面)などの要素を合成点群データCPGに照合して3次元CADデータを作成する3次元CADデータ変換装置12と、を備える。
【0024】
3次元CADデータ変換装置12は、属性集記憶部11に記憶される各種形状や線や面などの要素を合成点群データCPGに自動的に照合して3次元CADデータを作成することも可能であり、出力装置13に合成点群データCPGを表示して使用者の目視および操作に従い任意の要素を合成点群データCPGに照合して3次元CADデータを作成することも可能である。
【0025】
次に、3次元CADデータ作成システム1における3次元点群データの合成方法を説明する。
【0026】
先ず、本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1の形状測定装置2は、被測定対象物Oの表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面RF1、RF2、RF3を複数の箇所(図1中の測定箇所AおよびB)から測定する。ここで、測定箇所Aにおける測定結果を3次元点群データPG1とし、測定箇所Bにおける測定結果を3次元点群データPG2とする。
【0027】
被測定対象物Oは、例えば、原子力発電プラントにおける立入制限区域に設置された施設または設備であったり、史跡などの文化財である。
【0028】
3つの基準面RF1、RF2、RF3は被測定対象物Oの表面形状の一部であっても良いし、被測定対象物Oとは異なり、例えば被測定対象物Oを納める建屋101の一部であっても良い。
【0029】
3次元点群データPG1および3次元点群データPG2は、いずれも被測定対象物Oの表面形状を部分的に測定し、死角若しくは影になる部分を有する。なお、3次元点群データPG1の死角若しくは影の部分は、3次元点群データPG2には測定できており、3次元点群データPG2の死角若しくは影の部分は、3次元点群データPG1には測定できている。
【0030】
一方、3次元点群データPG1および3次元点群データPG2は、いずれも3つの基準面RF1、RF2、RF3を測定している。
【0031】
図2は、本発明の第1実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの3次元点群データを示す概略図である。
【0032】
ところで、3次元点群データPG1、PG2の各測定点は、一般に数mmから十数mmの測定誤差を有する。すなわち、基準面RF1、RF2、RF3を表す測定点も相応の誤差を有するため、図2に示すように、本実施形態に係る合成装置3は、3次元点群データPG1、PG2を適宜に平滑化しつつ基準面RF1、RF2、RF3の一部に相当する平面RF1’、RF2’、RF3’を一時的に3次元CADデータ化して3次元点群データPG1、PG2に組み合わせる。ここで、3次元点群データPG1が含む測定点から3次元CADデータ化する平面RF1’、RF2’、RF3’を平面RF1a’、RF2a’、RF3a’とし、3次元点群データPG2が含む測定点から3次元CADデータ化する平面RF1’、RF2’、RF3’を平面RF1b’、RF2b’、RF3b’とする。
【0033】
これら平面RF1a’、RF2a’、RF3a’および平面RF1b’、RF2b’、RF3b’は、それぞれ法線ベクトルの情報を有する。この法線ベクトルの大きさは任意であり単位ベクトルでも良い。また、この法線ベクトルの向きは、平面RF1a’、RF2a’、RF3a’および平面RF1b’、RF2b’、RF3b’それぞれについて各々の基準面RF1、RF2、RF3が臨む空間に向けて延びる。なお、法線ベクトルの方向は、それぞれの基準面RF1、RF2、RF3上で共通していれば良く、例えば、平面RF1a’および平面RF1b’は基準面RF1が臨む空間に向けて延び、平面RF2a’および平面RF2b’は基準面RF2が臨む被測定対象物Oまたは建屋101に向けて延びるように定めても良い。
【0034】
図3は、本発明の第1実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの合成点群データを示す概略図である。
【0035】
図3に示すように、合成装置3は、平面RF1a’と平面RF1b’とが略同一平面に位置し、平面RF2a’と平面RF2b’とが略同一平面に位置し、平面RF3a’と平面RF3b’とが略同一平面に位置するよう、3次元点群データPG1と3次元点群データPG2とを相対的に並進および回転させて相対的な位置関係を調整する。また、合成装置3は、前述の平面の重ね合わせに加え、平面RF1a’の法線ベクトルと平面RF1b’の法線ベクトルとが略同一方向を向き、平面RF2a’の法線ベクトルと平面RF2b’の法線ベクトルとが略同一方向を向き、平面RF3a’の法線ベクトルと平面RF3b’の法線ベクトルとが略同一方向を向くよう、3次元点群データPG1と3次元点群データPG2とを相対的に並進および回転させて相対的な位置関係を調整しても良い。
【0036】
この結果、3次元点群データPG1および3次元点群データPG2は、被測定対象物Oの表面形状を死角あるいは影なく表せるよう重なり合う。合成装置3は、この被測定対象物Oの表面形状を死角あるいは影なく表せるよう重なり合った3次元点群データPG1および3次元点群データPG2を合成して合成点群データCPGを作成する。
【0037】
すなわち、本実施形態に係る3次元CADデータ作成方法は、複数の計測箇所において被測定対象物Oの表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面RF1、RF2、RF3を表す3次元点群データPG1、PG2を測定し、複数の3次元点群データPG1、PG2について3つの基準面RF1、RF2、RF3をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データCPGを作成し、合成点群データCPGから被測定対象物Oの3次元CADデータを作成する方法である。
【0038】
なお、3次元点群データPG1が含む測定点から3次元CADデータ化する平面RF1a’、RF2a’、RF3a’と3次元点群データPG2が含む測定点から3次元CADデータ化する平面RF1b’、RF2b’、RF3b’とは、同一箇所を測定している必要は無く、実体である基準面RF1、RF2、RF3上のいずれの箇所を測定していても良い。すなわち、平面RF1a’、RF2a’、RF3a’と平面RF1b’、RF2b’、RF3b’とは、基準面RF1、RF2、RF3上の異なる箇所を測定したものでも良い。
【0039】
また、図1から図3において、2つの3次元点群データPG1、PG2を合成する方法について説明したが、3つ以上の3次元点群データPG1、PG2、PG3、………、PGnも同様の方法で合成できる。このとき、3つの基準面RF1、RF2、RF3は、3つ以上の3次元点群データPG1、PG2、PG3、………、PGn全てにおいて共通する必要は無く、少なくとも2つの3次元点群データPGs、PGtまたは3次元点群データPGuと合成点群データCPGn(任意の数量の3次元点群データPGs、PGtを合成した点群データ)において共通する3つの基準面RF1、RF2、RF3があれば良い。
【0040】
本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1および3次元CADデータ作成方法は、従来必要としていたターゲットを被測定対象物Oの近傍に配置することなく、複数の計測箇所から被測定対象物Oの表面形状を測定し、測定箇所毎に取得した3次元点群データPG1、PG2、PG3、………、PGnを合成して合成点群データCPGを作成することができる。このことは、3次元点群データPG1、PG2、PG3、………、PGnを取得する際のターゲットの配置を不要にし、現地における作業負担や、作業時間を低減する。現地における作業負担や、作業時間を低減は、例えば、被測定対象物Oが原子力発電プラントの立入制限区域のような作業時間が制限されてしまう環境である場合において、測定作業者の負担を軽減できる。
【0041】
[第2の実施形態]
本発明に係る3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法の第1実施形態について、図4から図6を参照して説明する。
【0042】
図4は、本発明の第2実施形態に係る3次元CADデータ作成システムを示すブロック図である。
【0043】
本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1Aにおいて第1実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
図4に示すように、本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1Aは、複数の計測箇所において被測定対象物Oの表面形状を表す3次元点群データPG1、PG2を測定する形状測定装置2と、複数の3次元点群データPG1、PG2を合成して合成点群データCPGを作成する合成装置3Aと、合成点群データCPGから被測定対象物Oの3次元CADデータを作成するとき、合成点群データCPGにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する被測定対象物Oについて連続する一体の3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成装置5Aと、を備える。
【0045】
合成装置3Aは、形状測定装置2、すなわちレーザー計測装置7や、複数のデジタルカメラから3次元点群データPG1、PG2を取得し、記憶するとともに3次元点群データPG1、PG2を同一の座標系に合成し合成点群データCPGを作成する。合成装置3Aは、合成装置3と同様に、複数の計測箇所において被測定対象物Oの表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面RF1、RF2、RF3を表す3次元点群データPG1、PG2を測定し、複数の3次元点群データPG1、PG2について3つの基準面RF1、RF2、RF3をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データCPGを作成する。また、合成装置3Aは、被測定対象物Oの近傍に適宜に配置する少なくとも3つのターゲット(図示省略)を基準にして相互に異なる3次元点群データPG1、PG2を重ね合わせることによって合成点群データCPGを作成しても良い。
【0046】
3次元CADデータ作成装置5Aは、JIS(Japanese Industrial Standard、日本工業規格)などの各種規格における配管や鋼材、板材などの形状を登録し記憶可能な属性集記憶部11と、属性集記憶部11に記憶される各種形状の他、線(直線、曲線)や面(平面、曲面)などの要素を合成点群データCPGに照合して3次元CADデータを作成する3次元CADデータ変換装置12Aと、を備える。
【0047】
3次元CADデータ変換装置12Aは、属性集記憶部11に記憶される各種形状や線や面などの要素を合成点群データCPGに自動的に照合して3次元CADデータを作成することも可能であり、出力装置13に合成点群データCPGを表示して使用者の目視および操作に従い任意の要素を合成点群データCPGに照合して3次元CADデータを作成することも可能である。
【0048】
次に、3次元CADデータ作成システム1Aにおける3次元CADデータの作成方法を説明する。
【0049】
先ず、本実施形態に係る被測定対象物Oは、複数の区域103A、103Bを隔てる壁102を有する建屋101と、空調ダクト105および配管106と、空調ダクト105および配管106を区域内に支える支持構造107と、を備える。空調ダクト105は、壁102を貫通して区域103A、103B内に延びる一体品である。配管106も、壁102を貫通して区域103A、103B内に延びる一体品である。
【0050】
ここで、例えば原子力発電プラントを被測定対象物Oとする場合、壁102は立入制限区域(例えば、区域103A)と立入可能な区域(例えば、区域103B)とを隔てる。
【0051】
本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1Aの形状測定装置2は、区域103A、103B内のそれぞれの箇所(図4中の測定箇所AおよびB)から被測定対象物Oを測定する。ここで、測定箇所Aにおける測定結果を3次元点群データPG1とし、測定箇所Bにおける測定結果を3次元点群データPG2とする。
【0052】
例えば原子力発電プラントを被測定対象物Oとする場合、複数の形状測定装置2の一部は、立入制限区域内で3次元点群データPG1を測定することになる。また、複数の形状測定装置2の他の一部は、立入可能な区域内で3次元点群データPG2を測定することになる。
【0053】
3次元点群データPG1および3次元点群データPG2は、互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面RF1、RF2、RF3(図示省略)または被測定対象物Oの近傍に適宜に配置する少なくとも3つのターゲット(図示省略)をともに測定する。合成装置3Aは、基準面RF1、RF2、RF3またはターゲットを基準にして合成点群データCPGを作成する。
【0054】
図5は、本発明の第2実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの3次元点群データを示す概略図である。
【0055】
図6は、本発明の第2実施形態に係る3次元CADデータ作成システムの3次元CADデータを示す概略図である。
【0056】
図5に示すように、本実施形態に係る合成点群データCPGのうち空調ダクト105を表す点群PG105および配管106を表す点群PG106は、壁102や支持構造107による死角や影によって一体に連続することなく分断される。
【0057】
そこで、図6に示すように、3次元CADデータ変換装置12Aは、合成点群データCPGから被測定対象物Oの3次元CADデータを作成するとき、合成点群データCPGにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する被測定対象物Oについて連続する一体の3次元CADデータを作成する。例えば、被測定対象物Oのうち空調ダクト105および配管106に着目すると、3次元CADデータ変換装置12Aは、合成点群データCPGから被測定対象物Oの3次元CADデータを作成するとき、合成点群データCPGにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する空調ダクト105および配管106について連続する一体の3次元CADデータを作成する。
【0058】
また、3次元CADデータ変換装置12Aは、合成点群データCPGにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する被測定対象物Oについて連続する一体の3次元CADデータを作成する際、合成点群データCPGにおいて不連続に表される部分の中央位置で連接する複数の部分からなる3次元CADデータを作成する。換言すると、3次元CADデータの連接部分は、次元点群データPG1、PG2あるいは合成点群データCPGの欠落箇所の中央位置にある。例えば、被測定対象物Oのうち空調ダクト105および配管106に着目すると、3次元CADデータ変換装置12Aは、空調ダクト105および配管106について連続する一体の3次元CADデータを作成する際、壁102や支持構造107によって死角や影になる部分の中央位置で連接する複数の部分(空調ダクト105の部分105a、配管106の部分106a)からなる3次元CADデータを作成する。
【0059】
すなわち、本実施形態に係る3次元CADデータ作成方法は、複数の計測箇所において被測定対象物Oの表面形状を表す3次元点群データPG1、PG2を測定し、複数の3次元点群データPG1、PG2を合成して合成点群データCPGを作成し、合成点群データCPGから被測定対象物Oの3次元CADデータを作成するとき、合成点群データCPGにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する被測定対象物Oについて連続する一体の3次元CADデータを作成する方法である。
【0060】
なお、図4から図6において、2つの3次元点群データPG1、PG2を合成する方法について説明したが、3つ以上の3次元点群データPG1、PG2、PG3、………、PGnも同様の方法で合成できる。
【0061】
本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1Aおよび3次元CADデータ作成方法は、空調ダクト105や配管106のように実体が一体品であるにもかかわらず、壁102や支持構造107に遮られることによって、3次元点群データPG1、PG2あるいは合成点群データCPGが分断されて表れる連続体について、実体を反映した一体の3次元CADデータを作成できる。
【0062】
また、本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1Aおよび3次元CADデータ作成方法は、実体を反映して一体の3次元CADデータで表した連続体について、3次元点群データPG1、PG2あるいは合成点群データCPGが分断されて不連続に表されている部分の中央位置で連接する複数の部分からなる3次元CADデータを作成できる。この3次元CADデータの連接部分は、例えば、有限要素構造解析に使用するモデルの作成の際に拘束条件を指定するために利用することが可能であり、解析作業の効率化に寄与できる。
【0063】
したがって、本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1、1Aおよび3次元CADデータ作成方法によれば、ターゲットを配置することなく複数の3次元点群データPG1、PG2、PG3、………、PGnを容易に合成できる。
【0064】
また、本実施形態に係る3次元CADデータ作成システム1、1Aおよび3次元CADデータ作成方法によれば、複数の3次元点群データPG1、PG2、PG3、………、PGnを合成して得る合成点群データCPGを効率よく利用できる3次元CADデータを作成できる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1、1A 3次元CADデータ作成システム
2 形状測定装置
3、3A 合成装置
5、5A 3次元CADデータ作成装置
7 レーザー計測装置
8 デジタルカメラ
11 属性集記憶部
12、12A 3次元CADデータ変換装置
13 出力装置
101 建屋
102 壁
103A、103B 区域
105 空調ダクト
106 配管
107 支持構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面を表す3次元点群データを測定する形状測定装置と、
複数の前記3次元点群データについて前記3つの基準面をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データを作成する合成装置と、
前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成装置と、を備えることを特徴とする3次元CADデータ作成システム。
【請求項2】
複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状を表す3次元点群データを測定する形状測定装置と、
前記複数の3次元点群データを合成して合成点群データを作成する合成装置と、
前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成するとき、前記合成点群データにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する前記被測定対象物について連続する一体の3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成装置と、を備えることを特徴とする3次元CADデータ作成システム。
【請求項3】
前記形状測定装置は、前記被測定対象物を撮影した画像から前記3次元点群データを作成する光学計測装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の3次元CADデータ作成システム。
【請求項4】
前記形状測定装置は、電磁波によって前記被測定対象物を走査し前記3次元点群データを作成する電磁波計測装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の3次元CADデータ作成システム。
【請求項5】
前記被測定対象物は、原子力発電プラントにおける立入制限区域に設置された施設または設備であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の3次元CADデータ作成システム。
【請求項6】
前記複数の形状測定装置の一部は、前記立入制限区域内で前記3次元点群データを測定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の3次元CADデータ作成システム。
【請求項7】
前記複数の形状測定装置の一部は、立入可能な区域内で前記3次元点群データを測定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の3次元CADデータ作成システム。
【請求項8】
複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状および互いに方向の異なる少なくとも3つの基準面を表す3次元点群データを測定し、
複数の前記3次元点群データについて前記3つの基準面をそれぞれ略同一面に配置し合成して合成点群データを作成し、
前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成することを特徴とする3次元CADデータ作成方法。
【請求項9】
複数の計測箇所において被測定対象物の表面形状を表す3次元点群データを測定し、
前記複数の3次元点群データを合成して合成点群データを作成し、
前記合成点群データから前記被測定対象物の3次元CADデータを作成するとき、前記合成点群データにおいて不連続に表される一方、連続する実体を有する前記被測定対象物について連続する一体の3次元CADデータを作成することを特徴とする3次元CADデータ作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58106(P2013−58106A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196464(P2011−196464)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】