説明

3端子型コンデンサ

【課題】3端子構造の電気的特性を損なうことなく2端子用のパターンが形成された被実装基板への実装を可能にする3端子型コンデンサを提供すること。
【解決手段】実装面の両端に設けられた2つの陽極端子9、9’と、該2つの陽極端子9、9’の間に設けられた陰極端子10、10’とを備えた3端子型コンデンサC1において、2つの陽極端子9、9’が配列する方向をX方向、該X方向に直交する方向をY方向としたとき、2つの陽極端子9、9’の端子面9A、9’AがY方向一方端側領域A1に配置される一方、陰極端子10、10’の端子面10’AがY方向他方端側領域A2に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3端子型コンデンサに関し、特に2端子用のパターンが形成された被実装基板に実装するための3端子型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体電解コンデンサにおけるコンデンサ素子は、アルミニウム、タンタル等の弁作用金属からなる陽極素子の一方側を陽極部とし、他方側の表面に形成した酸化皮膜層を誘電体膜とし、さらに、誘電体膜の表面に固体電解質層、カーボン層、銀層を順次形成して陰極部としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、電子機器の小型・高周波化が進み、固体電解コンデンサに対しても高周波領域での低インピーダンス化が要求されるようになり、高導電率の導電性高分子を固体電解質層に用いた固体電解コンデンサが商品化されている。この固体電解コンデンサは、二酸化マンガンを用いた固体電解コンデンサに比べて低ESR化を実現する事ができることから、様々な分野で使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、コンピュータ等に使用されるCPUの高速化に伴い、固体電解コンデンサからCPUに電荷を供給する際、固体電解コンデンサは高速な充放電を求められるようになり、低ESR、低ESLであることが必須条件となっている。
【0005】
低ESR化を実現するための固体電解コンデンサとして、平板状のコンデンサ素子を複数枚積層した積層型固体電解コンデンサが広く使われている。この積層型固体電解コンデンサの積層構造としては、陽極部と、固体電解質層、カーボン層、銀層からなる陰極部とを備えた平板状のコンデンサ素子を、陽極部は陽極部同士、陰極部は陰極部同士が互いに重なり合うように複数枚積層し、それぞれ陽極端子、陰極端子に接続した2端子の構成のものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献3では素子構造が2端子であるため、ESLが高いという問題が残されていた。そこで、本件出願人は、積層型固体電解コンデンサの積層構造として、平板状のコンデンサ素子を陽極部が陰極部を中心に対向するように交互に積層し、陽極部および陰極部を複数に分岐して引き出し、さらに陽極部間を最短距離で電気的に接続することで磁界を打ち消し、ESLを下げる3端子構造を提案している(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2969692号公報
【特許文献2】特開2003−45753号公報
【特許文献3】特開2000−68158号公報
【特許文献4】特開2007−116064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方で、上記特許文献4に記載の積層型固体電解コンデンサは、実装面の両端に2つの陽極端子が設けられ、この2つの陽極端子間に陰極端子が設けられた3端子構造であるため、この3端子型積層固体電解コンデンサを実装する被実装基板には、3端子用のパターンを形成する必要があった。3端子用のパターンは、2端子用のパターンに比べるとパターンが複雑になり、被実装基板の設計が困難になるという問題があった。
【0009】
上記の問題に鑑みて、本発明は、3端子構造の電気的特性を損なうことなく2端子用のパターンが形成された被実装基板への実装を可能にする3端子型コンデンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る3端子型コンデンサは、実装面の両端に設けられた2つの陽極端子と、該2つの陽極端子の間に設けられた陰極端子とを備えた3端子型コンデンサにおいて、2つの陽極端子が配列する方向をX方向、該X方向に直交する方向をY方向としたとき、2つの陽極端子の端子面がY方向一方端側領域に配置される一方、陰極端子の端子面が前記Y方向他方端側領域に配置されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、2つの陽極端子の端子面がY方向一方端側領域にあり、陰極端子の端子面がY方向他方端側領域にある。これにより、本発明に係る3端子型コンデンサは、3端子型コンデンサの電気特性を損なうことなく、パターン設計が容易な2端子用パターン(陽極パターンおよび陰極パターン)が形成された被実装基板への実装が可能となる。
【0012】
また、上記3端子型コンデンサでは、2つの陽極端子のY方向他方端側領域が絶縁部材で覆われる一方、陰極端子のY方向一方端側領域が絶縁部材で覆われていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、2つの陽極端子の端子面のY方向他方端側領域と、陰極端子の端子面のY方向一方端側領域とが絶縁部材で覆われている。このため、2つの陽極端子および陰極端子を被実装基板上の2端子パターン(陽極パターンと陰極パターン)に跨るように実装しても、陽極端子と陰極パターンとが導通するのを防ぐとともに、陰極端子と陽極パターンとが導通するのを防ぐことができる。
【0014】
さらに、上記構成において、絶縁部材は絶縁性のテープ部材であることが好ましい。この構成によれば、簡易に2つの陽極端子の端子面のY方向他方端側領域および陰極端子の端子面のY方向一方端側領域をそれぞれ陰極パターンおよび陽極パターンから絶縁することができる。しかも、絶縁部材の厚さを均一にすることができ、3端子型コンデンサを安定して被実装基板に実装することができる。
【0015】
また、上記3端子型コンデンサでは、陰極端子をY方向一方端側領域とY方向他方端側領域とに分離した2つのサブ端子から構成すると、2つの陽極端子を電気的に接続する端子構造を採用することが可能になり、3端子型コンデンサの電気的特性を向上させることができる。
【0016】
このような3端子型コンデンサとしては、弁作用金属からなる平板状陽極素子の一方側に陽極部、他方側に陰極部が形成されたコンデンサ素子を、陰極部を中心に陽極部の突出方向が交互に反対になるように複数枚積み重ねて構成した積層体を外装樹脂で封止してなり、積層体の一方側から突出した陽極部と他方側から突出した陽極部とが、それぞれ2つの陽極端子に電気的に接続され、陰極部が陰極端子に電気的に接続されている構成を採用することができる。
【0017】
また、上記3端子型コンデンサでは、実装面のうち2つの陽極端子のY方向他方端側領域が外装樹脂で封止される一方、陰極端子のY方向一方端側領域が外装樹脂で封止されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、3端子構造の良好な電気的特性を損なうことなく2端子用のパターンが形成された被実装基板への実装を可能にする3端子型コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態におけるコンデンサ素子であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における積層体であって、(a)は、平面図、(b)は側面図、(c)は、リードフレーム上に配置した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるリードフレームであって、(a)は平面図、(b)は絶縁体を配置した状態を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態における積層体をリードフレーム上に配置した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)を線Aで切断した断面図、(c)は(a)を線Bで切断した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る3端子型積層固体電解コンデンサであって(a)は底面(実装面)図、(b)は側面図である。
【図7】本発明の別の実施形態におけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。
【図8】本発明の別の実施形態に係る3端子型積層固体電解コンデンサであって(a)は底面(実装面)図、(b)は側面図である。
【図9】比較例1の積層型固体電解コンデンサにおけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。
【図10】比較例2の積層型固体電解コンデンサにおけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。
【図11】従来例の3端子型積層固体電解コンデンサおけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る3端子型コンデンサとして、3端子型積層固体電解コンデンサを例に挙げ、図面を参照して説明する。
【0021】
図1(a)は本発明に係る3端子型積層固体電解コンデンサで使用するコンデンサ素子cの平面図、(b)は断面図である。同図に示すように、コンデンサ素子cは、陽極素子1、誘電体膜2、固体電解質層3、カーボン層4、銀層5、および這い上がり防止材6から構成されている。
【0022】
陽極素子1は、弁作用金属であるアルミニウムを主成分とする幅(w)10mm、長さ(l)15mmの平板状の薄板であり、その一方側は陽極部7を構成している。誘電体膜2は、陽極素子1の他方側の表面に形成された酸化皮膜層である。固体電解質層3は、誘電体膜2の表面に形成された層であり、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)等の導電性高分子を含む電解質の化学重合、電解重合、または含浸によって形成された層である。カーボン層4および銀層5は、固体電解質層3の表面に順次形成された陰極引出層であり、固体電解質層3と併せて陰極部を構成している。這い上がり防止材6は、陽極部7と固体電解質層3との間に設けられ、陽極部7と陰極部とを絶縁隔離するリング状の膜である。
【0023】
なお、コンデンサ素子cは次のように作製される。まず、表面を電気化学的に粗面化した厚さ0.1mmのアルミニウムの薄板からなる陽極素子1を、アジピン酸アンモニウム水溶液中で10Vの電圧を印加して約60分間陽極酸化を行い、陽極素子1の表面に酸化皮膜層である誘電体膜2を形成する。次いで、誘電体膜2が形成された陽極素子1を幅(w)10mm、長さ(l)15mmの寸法に裁断した後、適切な位置に絶縁性樹脂を周方向に巻きつけるように塗布して這い上がり防止材6を形成し、陽極部7になる領域と陰極部になる領域とに区分する。次いで、当該裁断によって陽極素子1が露出した端面部を、再度アジピン酸アンモニウム水溶液中で7Vの電圧を印加して約30分間陽極酸化処理を行い、裁断面にも誘電体膜2を形成する。その後、誘電体膜2の表面に固体電解質層3、カーボン層4、銀層5を順次形成して陰極部を構成することでコンデンサ素子cは完成する。
【0024】
図2(a)(b)は、上記方法で作製された4枚のコンデンサ素子c1〜c4を積層した積層体の平面図および側面図、(c)は、積層体をリードフレーム上に配置した状態の側面図である。
【0025】
積層体は、コンデンサ素子c1〜c4を陽極部7、7’の突出方向が交互に反対になるように積層したものである。コンデンサ素子c1〜c4の陰極部は、導電性接着剤8によりそれぞれ接続されている。積層体の両側の陽極部7、7’と陽極端子9、9’とは抵抗溶接等の方法でそれぞれ接続され、積層体の中央の陰極部と陰極端子10とは導電性接着剤8を介して接合されている。なお、陽極端子9、9’、陰極端子10には銅系合金が使用されている。
【0026】
図3(a)は本発明に係る3端子型積層固体電解コンデンサで使用するリードフレームの平面図、(b)はリードフレーム上に絶縁体を配置した状態の平面図である。図4(a)は積層体をリードフレーム上に配置した状態の平面図、(b)は(a)の線Aで切断した断面図、(c)は(a)の線Bで切断した断面図である。
【0027】
図3(a)に示すように、リードフレームは陽極端子9、9’、陰極端子10、10’、連結部11から構成される。
【0028】
陽極端子9、9’は、積層体の陽極部7、7’と抵抗溶接によりそれぞれ接続されている。陽極端子9、9’間は陽極端子9、9’と同じ材質(例えば銅系合金)の長さ12.6mmの連結部11で接続され、陽極端子9、9’と連結部11とが一体のH形リードフレームになっている。図4(b)、(c)に示すように、H形リードフレームの断面は両端の陽極端子9、9’が厚く、連結部11が薄くなっている。連結部11は外装樹脂(不図示)内に埋設されているため、陽極端子9、9’および連結部11は外装樹脂から抜けにくくなっている。
【0029】
陰極端子10、10’は、連結部11を挟んで線対称に、連結部11から0.5mmの隙間をもって設けられ、コンデンサ素子c1〜c4の陰極部と例えば銀ペーストなどの導電性接着剤8により接続されている。
【0030】
絶縁体12は、少なくとも連結部11の積層体側全面を覆うように設けられ、コンデンサ素子c1〜c4の陰極部と陰極端子10、10’とを導電性接着剤8で接続する際に、導電性接着剤8が連結部11の側面および底面に付着するのを防ぐ。具体的には、絶縁体12として、図3(b)に示すように、長さ12.6mmのポリイミドテープが、連結部11および陰極端子10、10’の積層体側の面上に跨って設けられている。なお、ポリイミドテープからなる絶縁体12の厚さは10μm以下が好ましく、10μmより厚いとコンデンサ素子c1〜c4の陰極部と陰極端子10、10’との接続が弱くなり、ESRが大きくなる等の不具合が発生するおそれがある。
【0031】
次に本発明の実施例について説明する。なお、以下の説明では、陽極端子が配列する方向をX方向、該X方向に直交する方向をY方向とする。
【0032】
(実施例1)
図5は本実施例に係る3端子型積層固体電解コンデンサC1におけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。図6(a)は本実施例に係る3端子型積層固体電解コンデンサC1の底面(実装面)図、(b)は(a)の3端子型積層固体電解コンデンサC1を陰極端子10’側から見た側面図である。
【0033】
図5に示すように、3端子型積層固体電解コンデンサC1は、被実装基板に形成された2端子用のパターン(陽極パターン16および陰極パターン17)上に跨って実装されている。3端子型積層固体電解コンデンサC1の実装面は、陽極パターン16に対応するY方向一方端側領域A1と、陰極パターン17に対応するY方向他方端側領域A2とにY方向に2分されている。
【0034】
図6に示すように、3端子型積層固体電解コンデンサC1では、陽極端子9、9’はY方向全体にわたって設けられ、2つのサブ端子からなる陰極端子10、10’はY方向一方端側領域A1およびY方向他方端側領域A2に設けられている。陽極端子9、9’および陰極端子10’の実装面側は外装樹脂13から露出しており、それぞれ端子面9A、9’Aおよび端子面10’Aとなっている。
【0035】
さらに、図5に示すように、Y方向一方端側領域A1における陰極端子10の実装面側には、陰極端子10と陽極パターン16とを絶縁するためのポリイミドテープからなる絶縁部材15が設けられ、Y方向他方端側領域A2における陽極端子9、9’の実装面側には、陽極端子9、9’と陰極パターン17とを絶縁するためのポリイミドテープからなる絶縁部材14、14’が設けられている。このため、陽極端子9、9’はY方向他方端側領域A2に現れることなく、Y方向一方端側領域A1においてのみ実装面に露出している。また、陰極端子10はY方向一方端側領域A1に現れることなく、陰極端子10’がY方向他方端側領域A2においてのみ実装面に露出している。言い換えると、陽極端子9、9’の端子面9A、9’AはY方向一方端側領域A1にのみ配置され、陰極端子10’の端子面10’AはY方向他方端側領域A2にのみ配置されている。
【0036】
なお、3端子型積層固体電解コンデンサC1を陽極パターン16および陰極パターン17が形成された被実装基板に実装するためには、絶縁部材14、14’、15の厚さを10μm以下にすることが好ましい。陽極端子9、9’の端子面9A、9’Aと陽極パターン16および陰極端子10’の端子面10’Aと陰極パターン17とははんだを介して接続されているため、絶縁部材14、14’、15の厚さが10μmより大きいと陽極端子9、9’の端子面9A、9’Aと陽極パターン16および陰極端子10’の端子面10’Aと陰極パターン17との隙間が大きくなりはんだ付け不良が発生するおそれがある。
【0037】
(実施例2)
図7は本実施例に係る3端子型積層固体電解コンデンサC2におけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。図8(a)は本実施例に係る3端子型積層固体電解コンデンサC2の底面(実装面)図、(b)は(a)の3端子型積層固体電解コンデンサC2を陰極端子19側から見た側面図である。
【0038】
図7に示すように、3端子型積層固体電解コンデンサC2は、実施例1と同様に陽極パターン16および陰極パターン17上に跨って実装され、その実装面は、Y方向一方端側領域A1と、Y方向他方端側領域A2とにY方向に2分されている。
【0039】
さらに、3端子型積層固体電解コンデンサC2は、積層体と陽極端子18、18’および陰極端子19とを溶接する前に、Y方向他方端側領域A2の陽極端子18、18’およびY方向一方端側領域A1の陰極端子を切り取ることにより、陽極端子18、18’がY方向一方端側領域A1にのみ設けられ、かつ陰極端子19がY方向他方端側領域A2にのみ設けられた構造となる。なお図8に示すように、陽極端子18、18’および陰極端子が切り取られた部分には、外装樹脂13が回り込んで形成されている。このため、図7に示すように、陽極端子18、18’は、Y方向他方端側領域A2に現れることなく、Y方向一方端側領域A1においてのみ実装面に露出し、陰極端子19は、Y方向一方端側領域A1に現れることなく、Y方向他方端側領域A2においてのみ実装面に露出している。これにより、陽極端子18、18’の実装面側全体および陰極端子19の実装面側全体が、それぞれ端子面18A、18’Aおよび端子面19Aとなる。
【0040】
(比較例1)
図9は比較例1の積層型固体電解コンデンサC3におけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。同図に示すように、積層型固体電解コンデンサC3は、X方向一端に設けられた陽極端子9’がポリイミドテープからなる絶縁部材14で完全に覆われた状態で、陽極パターン20および陰極パターン21上に実装されている。
【0041】
(比較例2)
図10は比較例2の積層型固体電解コンデンサC4におけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。同図に示すように、積層型固体電解コンデンサC4は、比較例1と同様に、陽極パターン20および陰極パターン21上に実装されている。さらに、積層型固体電解コンデンサC4では、積層体と陽極端子9および陰極端子10、10’とを溶接する前に、X方向一端に設けられた陽極端子を切り取り、この切り取った部分に外装樹脂13を回り込ませて、形成させている。
【0042】
(従来例)
図11は従来例の3端子型積層固体電解コンデンサC5におけるリードフレームとパターンの位置関係を示す平面図である。同図に示すように、3端子型積層固体電解コンデンサC5は、被実装基板に形成された3端子用のパターン(陽極パターン22、22’および陰極パターン23)上に実装されている。
【0043】
なお、実施例1〜2、比較例1〜2、従来例では、それぞれ定格2.5V−1200μF、長さ(L)寸法:16mm、幅(W)寸法:12mm、高さ(H)寸法:2.5mmの3端子型積層固体電解コンデンサC1〜C2、C5および積層型固体電解コンデンサC3〜C4を作製した。
【0044】
表1は、3端子型積層固体電解コンデンサC1〜C2、C5および積層型固体電解コンデンサC3〜C4のインピーダンスを示す表である。なお、このインピーダンスは、3端子型積層固体電解コンデンサC1〜C2、C5および積層型固体電解コンデンサC3〜C4をそれぞれ50個作製し、1MHzで測定したインピーダンスの平均をとったものである。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から分かるように、2端子用のパターン(陽極パターン16および陰極パターン17)に実装した実施例1〜2の3端子型積層固体電解コンデンサC1〜C2のインピーダンスと、3端子用のパターンに実装した従来例の3端子型積層固体電解コンデンサC5のインピーダンスとはほとんど変わらなかった。これは、3端子型積層固体電解コンデンサC1〜C2では、陽極端子9、9’(18、18’)が連結部11で接続されており、2端子用のパターンへの実装であっても3端子構造の良好な電気的特性が損なわれていないためであると考えられる。また、実施例1〜2において若干インピーダンスが上昇している点については、陽極パターン16と陽極端子9、9’(18、18’)の端子面9A、9’A(18A、18’A)との接触面積、および陰極パターン17と陰極端子10’(19)の端子面10’A(19A)の面積との接触面積が小さくなった事が原因であると考えられる。
【0047】
また、実施例1〜2の3端子型積層固体電解コンデンサC1〜C2と比較例1〜2の積層型固体電解コンデンサC3〜C4を比較すると、3端子型積層固体電解コンデンサC1〜C2の方がインピーダンス値が低くなっている。これは、比較例1〜2の積層型固体電解コンデンサC3〜C4では、X方向一端に設けられた陽極端子9’が陽極パターン20に接続しておらず、もしくはX方向一端に設けられた陽極端子が切り取られているため、3端子構造として機能していない事が原因であると考えられる。
【0048】
以上、本発明に係る3端子型コンデンサの好ましい実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0049】
例えば、絶縁部材14、14’を設ける範囲、もしくはY方向他方端側領域A2側の陽極端子18、18’を切り取る範囲は、陽極端子9、9’(18、18’)の端子面9A、9’A(18A、18’A)が陽極パターン16にのみ接続される範囲であれば任意に変更できる。ただし、陽極端子9、9’(18、18’)の端子面9A、9’A(18A、18’A)と陽極パターン16との接触面積が小さくなるにつれインピーダンス特性は悪化するため、図5、図7に示すように、陽極端子9、9’(18、18’)はY方向一方端側領域A1におけるY方向全体にわたって実装面に露出していることが好ましい。
【0050】
また、陽極端子9、9’がY方向他方端側領域A2に現れることなく、Y方向一方端側領域A1においてのみ実装面に露出し、陰極端子10、10’がY方向一方端側領域A1に現れることなく、Y方向他方端側領域A2においてのみ実装面に露出するように、Y方向他方端側領域A2側の陽極端子9、9’およびY方向一方端側領域A1側の陰極端子10の厚さを薄くして外装樹脂13内に埋設させてもよい。この場合、外装樹脂13が絶縁部材14、14’、15としての機能を果たす。
【0051】
さらに、実施例1では、絶縁部材14、14’、15として、ポリイミドテープを使用したが、ガラス繊維入りテープ、ポリプロピレンテープ、ポリエチレンテレフタレートテープ、ポリテトラフルオロエチレンテープ、ポリエステルテープ等のテープ部材、若しくは絶縁性樹脂等の絶縁性のある部材であれば同じ効果が得られる。なお、絶縁体12も上記部材から任意に選択できるため、共通の部材を用いて絶縁部材14、14’、15および絶縁体12を設けることが製造上好ましい。
【0052】
実施例1〜2では、弁作用金属としてアルミニウムを用いたが、タンタルやニオブ箔またはこれら金属粉末の焼結体を用いてもよい。さらに、実施例1〜2では、固体電解質層3として導電性高分子を用いたが、二酸化マンガンを用いてもよい。
【0053】
また、連結部11は、陽極端子9、9’と同じ材料を使用し、図3(a)に示すように一体に形成するのが望ましいが、連結部11の材料は銅、アルミニウム、銀、金、ニオブ、タンタル、導電性高分子等の導電性材料等であれば任意に選択できる。
【0054】
さらに、実施例1〜2では、陽極端子9、9’と陰極端子10、10’の下面が同一の高さとなるため、2端子用のパターンが形成されたマザーボードやIC基板等の被実装基板に実装する場合に好都合である。なお、陽極端子および陰極端子の下面を同一の高さに揃えなくてもよい場合は、連結部を陰極端子の下面に沿って設けてもよい。
【0055】
また、陰極端子10、10’間にも連結部を設け、陽極端子9、9’間の連結部11と交差するようにしてもよい。さらに、連結部11は、陰極端子10、10’の中央であっても一方側に寄せてもよく、連結部11の数を2本以上とし、その間に陰極端子を設けてもよい。この場合は、全ての陰極端子と連結部との間に、絶縁体12を設ける必要がある。
【0056】
さらに、陽極端子9、9’(18、18’)および陰極端子10、10’(19)として、リードフレームに代えて、被実装基板と接続される貫通孔(導通端子孔)や導電層が設けられた絶縁基板を用いてもよい。
【0057】
実施例1〜2では、コンデンサ素子cを4枚積層しているが、コンデンサ素子cは積層枚数にかかわらず同じ効果が得られる。
【0058】
また、実施例1〜2では、リードフレームを積層体の下側に設けた例について説明したが、被実装基板に形成されたパターンの位置によっては、積層体の上側にリードフレームを設けてもよい。
【0059】
なお、実施例1〜2では、一方端に陽極部を設けたコンデンサ素子を、陽極部の突出方向が交互に反対になるように積層したが、コンデンサ素子の両端に陽極部、該陽極部間に陰極部を設けたコンデンサ素子を1枚または複数枚積層してもよい。
【符号の説明】
【0060】
c、c1〜c4 コンデンサ素子
1 陽極素子
2 誘電体膜
3 固体電解質層
4 カーボン層
5 銀層
6 這い上がり防止材
7、7’ 陽極部
8 導電性接着剤
9、9’、18、18’ 陽極端子
10、10’、19 陰極端子
11 連結部
12 絶縁体
13 外装樹脂
14、14’、15 絶縁部材
16 陽極パターン
17 陰極パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面の両端に設けられた2つの陽極端子と、該2つの陽極端子の間に設けられた陰極端子とを備えた3端子型コンデンサにおいて、
前記2つの陽極端子が配列する方向をX方向、該X方向に直交する方向をY方向としたとき、
前記2つの陽極端子の端子面が前記Y方向一方端側領域に配置される一方、
前記陰極端子の端子面が前記Y方向他方端側領域に配置されることを特徴とする3端子型コンデンサ。
【請求項2】
前記2つの陽極端子の前記Y方向他方端側領域が絶縁部材で覆われる一方、
前記陰極端子の前記Y方向一方端側領域が絶縁部材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の3端子型コンデンサ。
【請求項3】
前記絶縁部材は、絶縁性のテープ部材であることを特徴とする請求項2に記載の3端子型コンデンサ。
【請求項4】
前記陰極端子は、前記Y方向一方端側領域と前記Y方向他方端側領域とに分離した2つのサブ端子からなり、該2つのサブ端子のうち、前記Y方向一方端側領域に位置するサブ端子が絶縁部材で覆われていることを特徴とする請求項2または3に記載の3端子型コンデンサ。
【請求項5】
弁作用金属からなる平板状陽極素子の一方側に陽極部、他方側に陰極部が形成されたコンデンサ素子を、前記陰極部を中心に前記陽極部の突出方向が交互に反対になるように複数枚積み重ねて構成した積層体を外装樹脂で封止してなり、
前記積層体の一方側から突出した前記陽極部と他方側から突出した前記陽極部とは、それぞれ前記2つの陽極端子に電気的に接続され、前記陰極部は前記陰極端子に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の3端子型コンデンサ。
【請求項6】
前記実装面のうち前記2つの陽極端子の前記Y方向他方端側領域が外装樹脂で封止される一方、前記陰極端子の前記Y方向一方端側領域が外装樹脂で封止されていることを特徴とする請求項1に記載の3端子型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−216570(P2011−216570A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81546(P2010−81546)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)