説明

3軸相対変位計

【課題】 略同一平面上に複数のセンサの配設を可能にして設置費用の低減と省スペースが可能となる。
【解決手段】 一端と他端間とを自在継ぎ手を介して接続するとともにX軸、Y軸およびZ軸の変位を検出する3軸相対変位計において、一端1と他端2間を2個の自在継ぎ手6、13で連結し、前記一端1の自在継ぎ手6を1軸の直線変位としてZ軸変位を1個のセンサ3で検出するとともに、前記他端2の自在継ぎ手13を2軸のX軸、Y軸変位としてリンク11、12を介して2個のセンサ4、5で検出することで、3軸の変位を同時に計測できるように構成したことにより、3軸の変位を1つのユニットで測定できるため、各軸ごとに変位計を設置する必要がなく、設置費用の低減と省スペースが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端と他端間とを自在継ぎ手を介して接続するとともにX軸、Y軸およびZ軸の変位を検出する3軸相対変位計に関する。本発明はまた、3軸方向同時に変位する量を計測する変位計に適用できる。それらの適用分野は、土木、建築あるいは産業分野等あらゆる分野に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物がX、Y、Zの3軸方向に変位する場合には、通常、各軸毎に変位計を設置して測定していた。そのため、変位計の設置に費用が掛かり、測定部位によってはスペース的にも技術的にも設置出来ない場合もあった。そこで、これらの欠点を解決してX、Y、Zの3軸方向に変位する測定対象物に対して、技術的に設置が困難な測定物にも設置できる変位計が提案された(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3062433号公報(段落0006参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示された3軸変位計を図3を用いて簡単に説明する。固定装置101にZ軸用センサ103とZ軸ガイド110を設けて、Z軸センサ103が伸縮のみ自在にされる。次いで、Z軸ガイド110にユニバーサルジョイント107を設ける。続いてユニバーサルジョイント108、109を設けてその中に、X軸センサ104、Y軸センサ105を装着する。X軸センサ104、Y軸センサ105を取り付けるユニバーサルジョイントの直交する軸のそれぞれに、伝達プレート111、112を取り付け、X軸センサ104、Y軸センサ105の軸に伝達駒113、114を取り付ける。この時どちらかのセンサは重力に対して垂直にする。さらに、ユニバーサルジョイント108の最終端に測定位置102を設置する。固定位置101の外周部と測定位置102のの外周部との間に、カバー115を設けて防滴構造とする。
【0004】
このように構成したことにより、X、Y、Zの3軸方向に任意に移動する測定物の計測が、取付金具116の工夫だけの簡単な取付けにより計測ができることとなった。また、カバー115を付加することで、屋外でも簡単に設置して計測できるようになった。ところが、この従来のものでは、X軸、Y軸の計測値が、ユニバーサルジョイント108、109上に設けられた回転伝達駒113、114を介してX軸センサ104、Y軸センサ105にセンサに伝達されるため、X軸、Y軸の2軸のセンサが、同一面上に設置できないことと、ユニバーサルジョイント108、109上に設置しなければならないため、ユニバーサルジョイント108、109が長くなる結果、3軸変位計全体の長さが長くなり、設置スペースに制約を生じる虞れがあった。
【0005】
そこで本発明は、前記従来の3軸変位計の諸課題を解決して、略同一平面上に複数のセンサの配設を可能にして設置費用の低減と省スペースを可能とした3軸相対変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、一端と他端間とを自在継ぎ手を介して接続するとともにX軸、Y軸およびZ軸の変位を検出する3軸相対変位計において、一端と他端間を2個の自在継ぎ手で連結し、前記一端の自在継ぎ手を1軸の直線変位としてZ軸変位を1個のセンサで検出するとともに、前記他端の自在継ぎ手を2軸のX軸、Y軸変位としてリンクを介して2個のセンサで検出することで、3軸の変位を同時に計測できるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記リンクを介して設置されるX軸、Y軸センサは略同一平面上に配設されたことを特徴とする。また本発明は、前記各センサからの信号をパソコン等の演算処理装置を用いて、予め設定した演算式で演算することにより、3軸の変位を計測するように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記いずれかの3軸相対変位計によって計測されるところの地震等による構造物の相対変位が、地震計の出力をトリガとして計測を開始するように構成したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一端と他端間とを自在継ぎ手を介して接続するとともにX軸、Y軸およびZ軸の変位を検出する3軸相対変位計において、一端と他端間を2個の自在継ぎ手で連結し、前記一端の自在継ぎ手を1軸の直線変位としてZ軸変位を1個のセンサで検出するとともに、前記他端の自在継ぎ手を2軸のX軸、Y軸変位としてリンクを介して2個のセンサで検出することで、3軸の変位を同時に計測できるように構成したことにより、3軸の変位を1つのユニットで測定できるため、各軸ごとに変位計を設置する必要がなく、設置費用の低減と省スペースが可能となる。
【0008】
また本発明は、前記リンクを介して設置されるX軸、Y軸センサは略同一平面上に配設された場合は、X軸、Y軸ほ変位を略同一平面内に配設されリンクを介したセンサによる計測できるので、Z軸方向の嵩を効率よく減少させて3軸変位計をコンパクトに構成することができる。さらに、前記各センサからの信号をパソコン等の演算処理装置を用いて、予め設定した演算式で演算することにより、3軸の変位を計測するように構成した場合は、従来、各軸ごとに変位計を設置して各々の出力から、後計算にて移動量を算出していたものを、専用のPC等により、3軸(X、Y、Z)センサから出力を演算することで、3軸の移動量が実時間で計測できる。
【0009】
さらにまた、前記いずれかの3軸相対変位計によって計測されるところの地震等による構造物の相対変位が、地震計の出力をトリガとして計測を開始するように構成した場合は、地震時に計測すべき構造物の相対変位等を、地震計の出力をトリガとして連動させて、確実に計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明に係る3軸相対変位計を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の3軸相対変位計の1つの実施例を示す断面図、図2は本発明の3軸相対変位計からの計測データを接続したパソコン等により処理する状態を示すブロック図である。本発明の3軸相対変位計の基本的な構成は、図1に示すように、一端1と他端2間とを自在継ぎ手6、13を介して接続するとともにX軸、Y軸およびZ軸の変位を検出する3軸相対変位計において、一端1と他端2間を2個の自在継ぎ手6、13で連結し、前記一端1の自在継ぎ手6を1軸の直線変位としてZ軸変位を1個のセンサ3で検出するとともに、前記他端2の自在継ぎ手13を2軸のX軸、Y軸変位としてリンク11、12を介して2個のセンサ4、5で検出することで、3軸の変位を同時に計測できるように構成したことを特徴とする。
【実施例1】
【0011】
本発明の3軸相対変位計は、図1(A)に示すように、相対変位が測定される被測定物を構成する一端1および他端2間に跨設する形態にて設置される。前記一端1には、3軸相対変位計のベース7がアンカーボルト18により取り付けられ、該ベース7にはホルダ8が取付ボルト19により取り付けられる。ホルダ8にはボールジョイント等の自在継ぎ手(ユニバーサルジョイント)6が収納設置される。ボールジョイント6にはZ軸センサ用ロッド9が接続されており、該Z軸センサ用ロッド9はZ軸ポテンショセンサホルダ10内に軸方向相対変位自在に収容される。すなわちボールジョイント6が設置されたホルダ8に対してZ軸ポテンショセンサホルダ10が軸方向に伸縮自在な構造となっている。
【0012】
これらのホルダ8とZ軸ポテンショセンサホルダ10の外周間には蛇腹状の伸縮ブーツ16が水密に被覆して渡設され、屋外での計測時の防水機能が発揮される。Z軸ポテンショセンサホルダ10内のZ軸センサ用ロッド9の移動軌跡に近接してZ軸ポテンショセンサ3が配設される。Z軸ポテンショセンサ3によるZ軸方向の変位計測値はZ軸センサ用ロッド9のZ軸方向の移動量に基づいて計測される。図示の例では、図1(B)に拡大して示すように、Z軸センサ用ロッド9の軸方向移動量を、該Z軸センサ用ロッド9に付設されたラック20に噛合するピニオン21の回転量として取り出して、Z軸ポテンショセンサ3に計測値が付与される。
【0013】
Z軸ポテンショセンサホルダ10と他端2との間にも、ボールジョイント等の自在継ぎ手13が設置される。被測定物を構成する他端2に取り付けられたベース15に、ホルダ14が取付ボルト22により取り付けられる。ホルダ14にはボールジョイント等の自在継ぎ手13が収納設置される。ボールジョイント13からは前記Z軸ポテンショセンサホルダ10に向けてロッド部23が延びて接続される。図1(C)に示すように、前記ロッド部23を球面状かつフォーク状に囲んでジョイスティックのように直交配置される一対のリンク11、12が配設される。X軸リンク11にはX軸ポテンショセンサ4が接続固定され、Y軸リンク12にはY軸ポテンショセンサ5が接続固定される。
【0014】
前記一端1側のボールジョイント6の周囲と同様に、これらのホルダ14とZ軸ポテンショセンサホルダ10の外周間にも蛇腹状の伸縮ブーツ17が水密に被覆して渡設され、屋外での計測時の防水機能が発揮できるように構成される。前記ホルダ14の下端部近傍にはZ軸、X軸、Y軸の各ポテンショセンサ3、4、5からの入出力ケーブル24が設置される。前記Z軸、X軸、Y軸の各ポテンショセンサ3、4、5からの計測値は、図示省略の適宜の信号ケーブル等によりホルダ14における入出力ケーブル24の設置点までもたらされる。また、各ポテンショセンサ3、4、5への電源の供給も入出力ケーブル24によりなされる。
【0015】
このような構成により、地震等の振動によって被測定物の一端1および他端2間が相対変位すると、一端1および他端2間のZ軸方向の伸縮変位は、Z軸ポテンショセンサホルダ10内でのZ軸センサ用ロッド9のZ軸方向の変位量すなわちピニオン21の回転量(正転、逆転いずれか)として取り出されて計測される。一方、一端1および他端2間のX軸(図面で上下)方向の変位量、あるいはY軸(図面に直交)方向の変位量は、ボールジョイント13周りのロッド部23の変位量として取り出され、さらに、ロッド部23にジョイスティック状に密接して配設されたX軸リンク11およびY軸リンク12の変位に変換される。これらのX軸リンク11およびY軸リンク12の変位は、それぞれに接続固定されたX軸ポテンショセンサ4およびY軸ポテンショセンサ5によって計測される。
【0016】
図2は本発明の3軸相対変位計からの計測データを接続したパソコン等により処理する状態を示すブロック図である。前記図1の入出力ケーブル24を介して、Z軸、X軸、Y軸の各ポテンショセンサ3、4、5における計測値の出力信号が、パソコンPCに接続されたシグナルコンディショナを介して調整されて送出される。パソコンPC内では、Z軸、X軸、Y軸の各ポテンショセンサ3、4、5からの出力を予め用意した演算式にて演算することで、3軸(X軸、Y軸、Z軸)の移動量が実時間(リアルタイム)で計測できることになる。3軸相対変位計における計測の開始は、地震計が振動を検知したことを契機としたトリガ信号をシグナルコンディショナに入力して即時に行われる。本発明で使用されるポテンショセンサとしては、可変抵抗、ロータリーエンコーダ、磁気抵抗素子、ホールIC等の機械的変位を電気量に変換できるものなら適宜のセンサが使用可能である。
【0017】
以下に、本発明の3軸相対変位計からの変位出力測定値のパソコン等による演算例を示す。

ΔX=(L±ΔL)*(SQRT(sinΔθy^2*cosΔθx^2/(sinΔθy^2*cosΔθx^2+cosΔθy^2))
ΔY=(L±ΔL)*(SQRT(sinΔθx^2*cosΔθy^2/(sinΔθx^2*cosΔθy^2+cosΔθx^2))
ΔZ=(L±ΔL)*(SQRT(cosΔθx^2*cosΔθy^2/(sinΔθx^2*cosΔθy^2+cosΔθx^2))−L
【0018】
ここで、
ΔX:X軸移動量
ΔY:Y軸移動量
ΔZ:Z軸移動量
L±ΔL:全長±Z軸ポテンショセンサ変化量
Δθx:X軸ポテンショセンサ変化量
Δθy:Y軸ポテンショセンサ変化量
Δθx、Δθyはポテンショセンサからの出力で角度の変化を表しており、ΔLはポテンショセンサからの出力で長さの変化を表している。これらの変化量を上式に代入することで、三次元のΔX、ΔY、ΔZの変化(長さ)を表すことができる。
【0019】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、一端と他端間とを接続する自在継ぎ手の形状、形式(ボールジョイント、ユニバーサルジョイントの他、球面継ぎ手等適宜のものが採用され得る)、Z軸ポテンショセンサ、X軸ポテンショセンサ、Y軸ポテンショセンサの各形状、形式(可変抵抗、ロータリーエンコーダ、磁気抵抗素子、ホールIC等の機械的変位を電気量に変換できるもの)および配設位置(Z軸方向と直交するX軸、Y軸方向の同一面上に配設されることが好適であるが、僅かにずれて配設されることを妨げるものではない)、X軸、Y軸センサにおけるX軸、Y軸リンクの形状、形式(Z方向の軸を球面状かつフォーク状に囲んでジョイスティックのように直交配置されるが、球面状体のみで軸を囲んでもよい)、パソコン等の演算処理装置の形式、予め準備される演算式の形態、演算処理装置に接続されるシグナルコンディショナの形式、シグナルコンディショナによる信号の調整形態、地震計におけるトリガ信号の選定等については適宜選定できる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の3軸相対変位計の1つの実施例を示す断面図である。
【図2】同、本発明の3軸相対変位計からの計測データを接続したパソコン等により処理する状態を示すブロック図である。
【図3】従来の3軸変位計の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 一端
2 他端
3 Z軸ポテンショセンサ
4 X軸ポテンショセンサ
5 Y軸ポテンショセンサ
6 自在継ぎ手(ボールジョイント等)
7 ベース
8 ホルダ
9 Z軸センサ用ロッド
10 Z軸ポテンショセンサホルダ
11 X軸リンク
12 Y軸リンク
13 自在継ぎ手(ボールジョイント等)
15 ベース
16 伸縮ブーツ
17 伸縮ブーツ
20 ラック
21 ピニオン
23 ロッド部
24 入出力ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端と他端間とを自在継ぎ手を介して接続するとともにX軸、Y軸およびZ軸の変位を検出する3軸相対変位計において、一端と他端間を2個の自在継ぎ手で連結し、前記一端の自在継ぎ手を1軸の直線変位としてZ軸変位を1個のセンサで検出するとともに、前記他端の自在継ぎ手を2軸のX軸、Y軸変位としてリンクを介して2個のセンサで検出することで、3軸の変位を同時に計測できるように構成したことを特徴とする3軸相対変位計。
【請求項2】
前記リンクを介して設置されるX軸、Y軸センサは略同一平面上に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の3軸相対変位計。
【請求項3】
前記各センサからの信号をパソコン等の演算処理装置を用いて、予め設定した演算式で演算することにより、3軸の変位を計測するように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の3軸相対変位計。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれかの3軸相対変位計によって計測されるところの地震等による構造物の相対変位が、地震計の出力をトリガとして計測を開始するように構成したことを特徴とする3軸変位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−309659(P2007−309659A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136076(P2006−136076)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】