説明

3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法

【課題】 3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを簡便に且つ高収率で、工業的に効率よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】 本発明の3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法は、アクロレインと塩化水素とペンタエリスリトールとの反応により3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを製造する方法であって、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.15モル倍以上に保持しつつ反応させることを特徴とする。この製造方法において、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.17モル倍以上に保持しつつ反応させるのがより好ましい。反応温度は−20℃〜15℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは−10℃〜5℃の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬等の精密化学品等の中間原料として有用な3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンはスピロアセタール骨格を有する化合物であり、種々の二官能性誘導体を合成するための有用な中間原料である。この化合物の製造方法として、アクロレインとペンタエリスリトールをp−トルエンスルホン酸の存在下で反応させて3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを得た後、この化合物と塩化水素とを反応させて3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを得る方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、反応収率が前段と後段各々81.5%及び81%程度であり、一貫収率は66%と低い。
【0003】
特開2003−26685号公報には、アクロレイン、ペンタエリスリトール及び塩化水素を一段階で反応させることを特徴とする3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法が開示されている。この文献の実施例には、反応器にペンタエリスリトール、約33%塩酸、及びトルエンをあらかじめ張り込んでおき、ここに内温を15〜20℃に保ちながらアクロレインを滴下すると目的化合物が収率90%で得られたとの記載が見られる。しかし、一般的な工業試薬を用いた追試においては、目的化合物は得られるものの、収率が低い上、不純物の生成が多いなどの問題が見られ、工業化が困難であるとの知見が得られた。
【0004】
【特許文献1】スペイン特許第324610号
【特許文献2】特開2003−26685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを簡便に且つ高い収率で工業的に効率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.15モル倍以上に保持しつつ反応させると、一般的な工業試薬を用いても目的化合物を高い収率で得ることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、アクロレインと塩化水素とペンタエリスリトールとの反応により3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを製造する方法であって、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.15モル倍以上に保持しつつ反応させることを特徴とする3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法を提供する。
【0008】
この製造方法において、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.17モル倍以上に保持しつつ反応させるのがより好ましい。
【0009】
反応温度は−20℃〜15℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは−10℃〜5℃の範囲である。
【0010】
アクロレインの使用量は、ペンタエリスリトール1モルに対して、例えば1.5〜3.0モル、好ましくは1.9〜2.2モル程度である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反応液中の塩化水素と水の比率を比較的高い値に保ちつつ反応を行うので、好ましくない競争反応が抑制され、目的化合物を高い収率で工業的に効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、アクロレインと塩化水素とペンタエリスリトールとの反応により、下記式(1)
【化1】

で表される3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを製造するに際し、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.15モル倍以上、好ましくは0.17モル倍以上に保持しつつ反応させる。反応液中の塩化水素の量の上限は特にないが、塩酸を用いた場合の上限は、一般に水に対して0.33モル倍(特に0.29モル倍)程度である。
【0013】
この反応は主に下記の経路により進行するものと考えられる。
【化2】

【0014】
すなわち、アクロレイン[式(2)]と塩化水素(HCl)とが反応して式(3)で表される3−クロロプロパナールが生成し、この3−クロロプロパナールがペンタエリスリトール[式(4)]と脱水縮合して式(1)で表される3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが生成する。なお、後述する一段階で反応させる方法を採用する場合には、アクロレインとペンタエリスリトールとの脱水縮合(アセタール化)の後、二重結合への塩化水素の付加が起こる経路も考えられる。
【0015】
従って、前記反応液中の塩化水素の量(水に対するモル倍)の計算には、アクロレイン等と反応して消費される塩化水素の量、及び3−クロロプロパナール等とペンタエリスリトールとの反応で生成する水の量を考慮する必要がある。反応液中の塩化水素の量(水に対するモル倍)は、仕込み組成でコントロールしてもよいし、反応系中への塩化水素ガスの吹き込みや水分の除去によってコントロールしてもよいが、前者の方法がより簡便である。
【0016】
アクロレインの使用量は、ペンタエリスリトール1モルに対して、例えば1.5〜3.0モル、好ましくは1.9〜2.2モル程度である。アクロレインの使用量が多すぎると、未反応のアクロレイン及び3−クロロプロパナールが反応系に残存するため好ましくない。特に残存した3−クロロプロパナールは式(1)の化合物と同様、分子中に塩素原子を持つので、式(1)の化合物を有用な化合物の合成反応の原料として使用する場合、不純物として3−クロロプロパナールが含まれていると式(1)の化合物と同種の反応(アルキル化等)が起こることが予測され、反応剤の浪費や副生物生成の原因となる。
【0017】
アクロレインと塩化水素とペンタエリスリトールとの反応においては、塩化水素は反応物質であると共に、脱水縮合反応の触媒としても作用する。塩化水素は使用するアクロレインに対して等モル以上必要である。塩化水素源は、乾燥塩化水素ガス、塩酸のどちらでもよい。取扱いの容易さでは塩酸を用いる方が簡便である。塩酸を用いる場合、該塩酸中の塩化水素濃度は、例えば25〜50重量%、好ましくは30〜40重量%、さらに好ましくは32〜38重量%程度である。塩酸中の塩化水素濃度が低すぎると、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.15モル倍以上保持することが困難となる。逆に塩酸中の塩化水素濃度が高すぎると、入手困難になりやすく、取扱性も低下する。塩酸を用いる場合の塩酸の使用量は、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.15モル倍以上保持することが可能な量であればよいが、多すぎると廃酸量が増えるため、経済性、廃酸の除害設備の処理能力などを考慮して判断すればよい。従って、塩酸の使用量は、該塩酸の塩化水素濃度によっても異なるが、通常、使用するアクロレイン100重量部に対して、400〜2000重量部程度、好ましくは500〜1500重量部程度である。
【0018】
目的化合物である3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンは常温で固体であり、かつ水への溶解性が低いことから、塩酸を用いた場合では反応晶析することも可能であるが、結晶中に塩酸を抱き込むことから精製が容易でない。乾燥塩化水素ガス、塩酸のどちらを用いた場合においても、3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが可溶でかつ不活性な溶剤を反応系へ添加することが好ましい。このような溶剤として、例えば、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、石油エーテル、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。反応後の後処理を容易にさせるためには、水に対する溶解性が低い溶剤が適している。これらの溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。溶剤の使用量は、操作性、後処理の容易性、溶剤回収に要するコスト等を考慮して適宜選択できるが、一般には、使用するペンタエリスリトール100重量部に対して、100〜800重量部程度であり、好ましくは120〜600重量部、さらに好ましくは150〜500重量部程度である。
【0019】
原料のアクロレインは熱、酸、アルカリなどで重合が起こるため、それを防止するために、ヒドロキノンなどの多価フェノール等の重合禁止剤を微量添加しておいたほうがよい。
【0020】
反応方法としては、全ての原料(アクロレインと塩化水素とペンタエリスリトール)を1段階で反応させる1段階法でもよく、アクロレインと塩化水素とを反応させて3−クロロプロパナールを製造した後に、生成した3−クロロプロパナールとペンタエリスリトールとを反応させる2段階法でもよい。工程管理が簡単であるという点では前者が望ましいが、アクロレインと塩化水素との反応時の水分量をコントロールするという点では後者が望ましい。
【0021】
1段階法では、例えば、ペンタエリスリトールに塩酸(及び溶剤)または乾燥塩化水素ガスを吸収させた溶剤を加え、この混合物を撹拌しながら、これにアクロレインを除々に添加する。アクロレインには溶剤及び/又は重合禁止剤を予め混合してこれを添加してもよい。また、重合禁止剤はペンタエリスリトールと塩化水素の混合物に添加してもよい。アクロレインの添加に伴って反応が進行する。反応混合物の温度は、例えば−20℃〜15℃、好ましくは−15℃〜10℃、さらに好ましくは−10℃〜5℃に保つのが望ましい。
【0022】
二段階法では、塩酸(及び溶剤)または乾燥塩化水素ガスを吸収させた溶剤にアクロレインを徐々に添加し3−クロロプロパナールを生成させる。このとき用いる反応器はバッチ式であってもフロー式であってもよい。生成した3−クロロプロパナールとペンタエリスリトールとの反応は、3−クロロプロパナール溶液にペンタエリスリトール又はその溶液を加えてもよいし、その逆でもよい。アクロレインには溶剤及び/又は重合禁止剤を予め混合してこれを添加してもよい。重合禁止剤は塩酸(及び溶剤)または乾燥塩化水素ガスを吸収させた溶剤に添加してもよい。両反応時の温度は、例えば−20℃〜15℃、好ましくは−15℃〜10℃、さらに好ましくは−10℃〜5℃に保つのが望ましい。
【0023】
反応終了後、反応生成物は、分液、液性調節、濾過、洗浄、濃縮、抽出、蒸留、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどに付すことにより、分離精製できる。精製は、これが原料として使用される次の合成反応に要求される純度に応じて実施される。例えば、反応混合液を分液させ(必要に応じて有機溶剤及び/又は水を加えて)、有機層を分離して炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で洗浄した後、濃縮することにより、目的化合物を得ることができる。濃縮前の有機溶剤溶液を次反応に供することもできる。一方、高純度が要求される場合には、溶媒を留去後、さらに減圧蒸留によって単離するか、再結晶することなどにより単離・精製する。再結晶溶媒としては、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノールなどが適しており、特に1−プロパノールは本合成法で生成する不純物を選択的に溶かす上、目的化合物のロスが少ない点で優れている。
【0024】
本発明の製造方法では、特に反応液中の塩化水素と水の比率をコントロールすることにより、高収率、高純度で目的化合物が得られるが、その理由をGC−MS分析によって構造決定した不純物より以下のように推定している。不純物の構造は3−ヒドロキシプロパナールが縮重合したと考えられる不純物が主で、3−クロロプロパナール由来のものはほとんど認められなかった。3−ヒドロキシプロパナールの生成機構はアクロレインと水とのマイケル付加であると考えられ、水の存在する系での生成は避けられないと考えられる。本発明において、塩化水素の存在量を水に対して高くコントロールすることは、アクロレインと塩化水素による3−クロロプロパナール生成反応とアクロレインと水による3−ヒドロキシプロパナール生成反応の2つの競争反応のうち、前者の反応を著しく優先させることになると考えられ、その結果高い収率が達成されたものと推察される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、下記表において、反応終了時(理論)塩化水素/水[mol/mol]の値は、仕込んだアクロレインが100%塩化水素と反応して3−クロロプロパナールとなり、さらにこれが仕込んだペンタエリスリトールと理論上可能な限り反応した時の系内の理論塩化水素量(mol)を理論水分量(mol)で除すことにより算出した値である。
【0026】
比較例1(特開2003−26685号公報の実施例1に相当)
滴下ロート、撹拌機、及び温度計を備えた200ml容の三口フラスコに13.6g(0.10mol)のペンタエリスリトール、濃塩酸(HCl濃度37.2重量%)40ml、及び30mlのトルエンを仕込み、室温で撹拌してペンタエリスリトールを分散させた。この混合物を恒温水槽上で撹拌し、かつ内温を15℃−20℃に保ちながら、これに13.8g(約0.22mol)の試薬アクロレイン(東京化成工業社製、純度90%以上)を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物をそのままの温度に保ちながらさらに2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を静置し、有機層と水層に分離した。水層を30mlのトルエンで2回洗浄した。このトルエン洗浄液を先に分層した有機層に加え、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。トルエン溶液(有機層)を硫酸マグネシウムで乾燥後、ガスクロマトグラフィー(GC)の内部標準法を用いて定量した。3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの収率は53.81%(ペンタエリスリトール基準)であった。なお、反応液は薄黄色を呈していた。結果を表1に示す。
【0027】
実施例1〜6、比較例2(塩化水素と水のモル比)
滴下ロート、撹拌機、及び温度計を備えた200ml容の三口フラスコに13.6g(0.10mol)のペンタエリスリトール、濃塩酸(HCl濃度37.2重量%)(仕込み量は表1に示す)及び50mlのトルエンを仕込み、室温で撹拌してペンタエリスリトールを分散させた。この混合物を恒温水槽上で撹拌し、かつ内温を0℃−5℃に保ちながら、これに12.5g(約0.20mol)の試薬アクロレイン(東京化成工業社製、純度90%以上)を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物をそのままの温度に保ちながらさらに2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を静置し、有機層と水層に分離した。水層を30mlのトルエンで2回洗浄した。このトルエン洗浄液を先に分層した有機層に加え、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。トルエン溶液(有機層)を硫酸マグネシウムで乾燥後、GCの内部標準法を用いて3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを定量した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例7〜11(アクロレインの使用量)
滴下ロート、撹拌機、及び温度計を備えた200ml容の三口フラスコに13.6g(0.10mol)のペンタエリスリトール、濃塩酸(HCl濃度37.2重量%)120ml、及び50mlのトルエンを仕込み、室温で撹拌してペンタエリスリトールを分散させた。この混合物を恒温水槽上で撹拌し、かつ内温を5℃に保ちながら、これに試薬アクロレイン(東京化成工業社製、純度90%以上)(仕込み量は表2に示す)を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物をそのままの温度に保ちながらさらに2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を静置し、有機層と水層に分離した。水層を30mlのトルエンで2回洗浄した。このトルエン洗浄液を先に分層した有機層に加え、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。トルエン溶液(有機層)を硫酸マグネシウムで乾燥後、GCの内部標準法を用いて3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを定量した。また、3−クロロプロパナールの存在をGCで確認した。結果を表2に示す。前記実施例5の結果も併せて掲載した。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例12〜13(反応温度)
滴下ロート、撹拌機、及び温度計を備えた200ml容三口フラスコに13.6g(0.10mol)のペンタエリスリトール、濃塩酸(HCl濃度37.2重量%)120ml、及びトルエン(仕込み量は表3に示す)を仕込み、室温で撹拌してペンタエリスリトールを分散させた。この混合物を恒温水槽上で撹拌し、かつ内温を一定に保ちながら(反応温度は表3に示す)、12.5g(約0.20mol)の試薬アクロレイン(東京化成工業社製、純度90%以上)を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物をそのままの温度に保ちながらさらに2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を静置し、有機層と水層に分離した。水層を30mlのトルエンで2回洗浄した。このトルエン洗浄液を先に分層した有機層に加え、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。トルエン溶液(有機層)を硫酸マグネシウムで乾燥後、GCの内部標準法を用いて3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを定量した。また、反応液の色相(着色)を目視で判断した。結果を表3に示す。前記実施例5の結果も併せて掲載した。
【0032】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクロレインと塩化水素とペンタエリスリトールとの反応により3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを製造する方法であって、反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.15モル倍以上に保持しつつ反応させることを特徴とする3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法。
【請求項2】
反応液中の塩化水素の量を水に対して終始0.17モル倍以上に保持しつつ反応させる請求項1記載の3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法。
【請求項3】
温度−20℃〜15℃で反応させる請求項1又は2記載の3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法。
【請求項4】
温度−10℃〜5℃で反応させる請求項3記載の3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法。
【請求項5】
アクロレインをペンタエリスリトール1モルに対して1.5〜3.0モル使用する請求項1〜4の何れかの項に記載の3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法。
【請求項6】
アクロレインをペンタエリスリトール1モルに対して1.9〜2.2モル使用する請求項5記載の3,9−ビス(2−クロロエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの製造方法。

【公開番号】特開2008−74756(P2008−74756A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254945(P2006−254945)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】