説明

4−アミノブタ−2−エノリド類を調製する方法

一般式(I)の4−アミノブタ−2−エノリド化合物を調製する方法が開示されており、ここで、該方法は、一般式(II)の化合物を一般式(III)のアミンと反応させることを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノ−ブタ−2−エノリド類を調製する方法、及び、本発明の調製方法において経由される又は使用される対応する中間体又は出発化合物に関する。本発明は、さらに、当該中間体及び出発化合物を調製する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
特定の置換4−アミノブタ−2−エノリド化合物は、EP 0539588A1から、殺虫活性化合物として知られている。さらに、国際特許出願WO 2007/115644、WO 2007/115643及びWO 2007/115646も、類似した殺虫活性4−アミノブタ−2−エノリド化合物について記載している。
【0003】
一般に、エナミノカルボニル化合物は、下記スキーム1に従って、テトロン酸とアミンから合成される。この手順は、例えば、EP 0539588A1と「Heterocycles Vol.27, No.8, 第1907から1923頁(1988)」に記載されている。
【0004】
【化1】

【0005】
この調製方法の不利点は、特に、出発化合物として無水テトロン酸が必要とされるが、その無水テトロン酸の調製が面倒で費用がかかるということである。
【0006】
例えば、テトロン酸は、一般に、アセト酢酸エチルから出発し、臭素化とそれに続く水素化によって調製される(cf. Synthetic Communication, 11(5), 第385から390頁(1981))。アセト酢酸エチルから出発するテトロン酸の全収率は40%未満である。このことが、該調製方法を工業的観点から比較的魅力のないものとしている。
【0007】
スイス特許第503722号には、テトロン酸を調製するためのさらなる調製方法が記載されている。この調製方法においては、4−クロロアセト酢酸エチルを芳香族アミンと反応させて3−アリールアミノクロトノラクトンを生成させ、次いで、鉱酸で処理することによってテトロン酸を放出させる。この調製方法の不利点は、テトロン酸の単離が高真空昇華によってのみ可能であるということである。このことが、該調製方法を工業的観点から比較的魅力のないものとしている。
【0008】
テトロン酸を調製するためのさらなる方法は、EP 0153615Aに記載されている。この調製方法においては、出発物質は、2,4−ジクロロアセト酢酸エステルである。この同様に段階的で複雑な調製方法では、所望の化合物は、同様に、65%という中程度の全収率でしか得られない。
【0009】
「Tetrahedron Letters, No.31, 第2683頁及び第2684頁(1974)」には、テトロン酸の調製と対応するエナミノカルボニル化合物の調製について記載されている。そこに記載されている合成は、下記スキーム2において再現される。使用される反応体は、アセチレンジカルボン酸ジメチルである。
【0010】
【化2】

【0011】
この調製方法の不利点は、わずかに30%という低い全収率、及び、高価な反応体(例えば、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH))を試薬として使用しなければならないということである。
【0012】
テトロン酸メチルから出発して4−アミノブタ−2−エノリド類を調製する方法も、従来技術において開示されている(J. Heterocyclic Chem., 21, 1753(1984))。この調製方法に関して使用される出発物質は、高価な4−ブロモ−3−メトキシブタ−3−エンカルボン酸エステルである。
【0013】
さらなる調製方法は、4−クロロアセト酢酸エステルから出発し、それをアミンと反応させる(Heterocycles, Vol.27, No.8, 1988, 第1907から1923頁)。該アミノフランを生成させる反応は、一段階で実施される。当該アミンを氷酢酸と一緒に4−クロロアセト酢酸エステルのベンゼン溶液に添加し、得られた混合物を数時間加熱還流する。この合成における4−メチルアミノ−2(5H)−フラノンの収率は、40%しかない。
【0014】
EP 0123095Aには、3−アミノ−4−アセトキシクロトン酸エステルからテトロンアミドを調製する調製方法が開示されている。3−アミノ−4−アセトキシクロトン酸エステルは、高価であり且つ調製するのが面倒である。従って、この調製方法を用いた経済的に実用的な合成は不可能である。
【0015】
マロン酸エステルと塩化クロロアセチルから出発してテトロン酸を調製するさらなる方法も、「J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1(1972), No.9/10, 第1225から1231頁」から知られている。この調製方法では、所望の目標化合物は43%の収率でしか得られない。
【0016】
上記国際特許出願WO 2007/115644には、4−アミノブタ−2−エノリド類の調製、例えば、4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]アミノ]フラン−2(5H)−オンを3−ブロモ−1,1−ジクロロプロプ−1−エンと反応させることによる4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](3,3−ジクロロプロプ−2−エン−1−イル)アミノ]フラン−2(5H)−オンの調製について記載されている(cf. 調製実施例、方法2、実施例(3))。WO 2007/115644には、さらに、4−アミノブタ−2−エノリド類の調製、例えば、4−[[(2−フルオロエチル)アミノ]フラン−2(5H)−オンを2−クロロ−5−クロロメチルピリジンと反応させることによる4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](3,3−ジクロロプロプ−2−エン−1−イル)アミノ]フラン−2(5H)−オンの調製についても記載されている(cf. 調製実施例、方法3、実施例(4))。上記反応は、好ましくは、リチウム又はナトリウムの水素化物を用いて実施する。これらの基体は、一般に、高価であり、また、同時に、安全性の理由によりその取扱いは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0539588号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/115644号
【特許文献3】国際公開第2007/115643号
【特許文献4】国際公開第2007/115646号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0539588号明細書
【特許文献6】スイス特許第503722号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0153615号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0123095号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Heterocycles Vol.27, No.8, 第1907から1923頁(1988)
【非特許文献2】Synthetic Communication, 11(5), 第385から390頁(1981)
【非特許文献3】Tetrahedron Letters, No.31, 第2683頁及び第2684頁(1974)
【非特許文献4】J. Heterocyclic Chem., 21, 1753(1984)
【非特許文献5】J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1(1972), No.9/10, 第1225から1231頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記従来技術から先へ進んで、本発明の目的は、4−アミノブタ−2−エノリド化合物を調製するための好ましくは実施するのが容易で且つ安価である方法を提供することである。この望ましい調製方法によって得ることが可能な4−アミノブタ−2−エノリド化合物は、好ましくは、高収率且つ高純度で得られるべきである。より特定的には、望ましい調製方法は、所望される目標化合物を複雑な精製方法を必要とすることなく得ることができるようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は、一般式(I):
【0021】
【化3】

の4−アミノブタ−2−エノリド化合物を調製する方法によって達成される。
【0022】
本発明の調製方法は、一般式(II)
【0023】
【化4】

の化合物を一般式(III)
【0024】
【化5】

のアミンと反応させることを特徴とし、ここで、個々の基は、以下のように定義される:
は、水素、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロシクロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロシクロアルキルアルキル又はアリールアルキルであり;
は、アルキル、アリール又はアリールアルキルであり;
Zは、水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり;
Aは、ピリド−2−イル若しくはピリド−4−イルであるか、又は、ピリド−3−イル(6位がフッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで置換されていてもよい。)であるか、又は、ピリダジン−3−イル(6位が塩素又はメチルで置換されていてもよい。)であるか、又は、ピラジン−3−イルであるか、又は、2−クロロピラジン−5−イルであるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(2位が塩素又はメチルで置換されていてもよい。)であり;
又は、
Aは、ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリル又は1,2,5−チアジアゾリル[ここで、これらは、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、C−C−アルキル(フッ素及び/又は塩素で置換されていてもよい。)、C−C−アルキルチオ(フッ素及び/又は塩素で置換されていてもよい。)又はC−C−アルキルスルホニル(フッ素及び/又は塩素で置換されていてもよい。)で置換されていてもよい。]であり、
又は、
Aは、
【0025】
【化6】

[ここで、
Xは、ハロゲン、アルキル又はハロアルキルであり;
Yは、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アジド又はシアノである。]
である。
【0026】
かくして、本発明は、一般式(I)の所望の4−アミノブタ−2−エノリド化合物を一般式(II)の対応するテトロン酸エステルと一般式(III)のアミンの反応によって調製することを提供する。一般式(I)の所望の4−アミノブタ−2−エノリド化合物は、下記において詳述されている本発明の反応条件及び好ましい反応条件のもとで、良好な収率及び高い純度で得られる。その結果として、本発明の調製方法は、従来技術による調製方法の上記不利点を克服する。所望される化合物は、直接得られた反応生成物の広範囲に及ぶ後処理を一般に必要としない様な純度で得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上記一般式(I)及び一般式(III)の中に示されているA基の好ましい定義、特に好ましい定義及び特に極めて好ましい定義について、以下で説明する。
【0028】
Aは、好ましくは、6−フルオロピリド−3−イル、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−メチルピリド−3−イル、6−トリフルオロメチルピリド−3−イル、6−トリフルオロメトキシピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、6−メチル−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、2−トリフルオロメチルピリミジン−5−イル、5,6−ジフルオロピリド−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリド−3−イル、5−ヨード−6−フルオロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イル、5,6−ジクロロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリド−3−イル、5−ヨード−6−クロロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリド−3−イル、5,6−ジブロモピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ヨードピリド−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリド−3−イル、5−ブロモ−6−ヨードピリド−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリド−3−イル、5−メチル−6−クロロピリド−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリド−3−イル、5−メチル−6−ヨードピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−クロロピリド−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−ブロモピリド−3−イル及び5−ジフルオロメチル−6−ヨードピリド−3−イルからなる群から選択される。
【0029】
Aは、さらに好ましくは、6−フルオロピリド−3−イル、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−クロロピリミジン−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イル、5,6−ジクロロピリド−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリド−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリド−3−イル、5,6−ジブロモピリド−3−イル、5−メチル−6−クロロピリド−3−イル、5−クロロ−6−ヨードピリド−3−イル及び5−ジフルオロメチル−6−クロロピリド−3−イルからなる群から選択される。
【0030】
Aは、最も好ましくは、6−クロロピリド−3−イル、6−ブロモピリド−3−イル、6−クロロ−1,4−ピリダジン−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリド−3−イル及び5−フルオロ−6−ブロモピリド−3−イルからなる群から選択される。
【0031】
上記一般式(II)の中に示されているZ基、R基及びR基の好ましい定義、特に好ましい定義及び特に極めて好ましい定義について、以下で説明する。
【0032】
Zは、好ましくは、アルカリ金属及び水素からなる群から選択される。
【0033】
Zは、さらに好ましくは、水素、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択される。
【0034】
Zは、最も好ましくは、ナトリウム又は水素である。
【0035】
は、好ましくは、水素、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロシクロアルキル、ハロシクロアルキルアルキル及びアルコキシアルキルから選択される。
【0036】
は、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ビニル、アリル、プロパルギル、シクロプロピル、アルコキシアルキル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル及び2−フルオロシクロプロピルからなる群から選択される。
【0037】
は、最も好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、n−プロプ−2−エニル、n−プロプ−2−イニル、シクロプロピル、メトキシエチル、2−フルオロエチル及び2,2−ジフルオロエチルからなる群から選択される。
【0038】
は、好ましくは、C−C12−アルキル、C−アリール及びアラルキルからなる群から選択される。
【0039】
は、さらに好ましくは、C−C12−アルキルからなる群から選択される。
【0040】
は、最も好ましくは、メチル及びエチルからなる群から選択される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の調製方法において、一般式(II)及び(III)〔式中、置換基A、Z、R及びRは、それぞれ、上記好ましい定義を有する。〕の出発化合物が使用される。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の調製方法において、一般式(II)及び(III)〔式中、置換基A、Z、R及びRは、それぞれ、上記特に好ましい定義を有する。〕の出発化合物が使用される。
【0043】
本発明の特に極めて好ましい実施形態では、本発明の調製方法において、一般式(II)及び(III)〔式中、置換基A、Z、R及びRは、それぞれ、上記特に極めて好ましい定義を有する。〕の出発化合物が使用される。
【0044】
本発明に関連して − 上記で記載した好ましい個々の定義、特に好ましい個々の定義及び特に極めて好ましい個々の定義に関わりなく − 個々の場合に使用されている基に対して、以下の定義が一般的に割り当てられる。
【0045】
本発明に関連して、用語「アルキル」は、単独であっても又はさらなる用語と組み合わされていても(例えば、ハロアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロシクロアルキルアルキル及びアリールアルキル)、分枝鎖又は非分枝鎖であり得る1から12個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基の基を意味するものと理解される。C−C12−アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル及びn−ドデシルである。これらのアルキル基の中で、C−C−アルキル基が特に好ましい。C−C−アルキル基が特に好ましく、メチル及びエチルがとりわけ好ましい。
【0046】
本発明によれば、用語「アルケニル」は、少なくとも1の二重結合を有している直鎖又は分枝鎖のC−C12−アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1,3−ペンタジエニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル及び1,4−ヘキサジエニルなどを意味するものと理解される。これらの中で、C−C−アルケニル基が好ましく、C−C−アルケニル基が特に好ましい。
【0047】
本発明によれば、用語「アルキニル」は、少なくとも1の三重結合を有している直鎖又は分枝鎖のC−C12−アルキニル基、例えば、エチニル、1−プロピニル及びプロパルギルなどを意味するものと理解される。これらの中で、C−C−アルキニル基が好ましく、C−C−アルキニル基が特に好ましい。該アルキニル基は、少なくとも1の二重結合も有することができる。
【0048】
本発明によれば、用語「シクロアルキル」は、C−C−シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルなどを意味するものと理解される。これらの中で、C−C−シクロアルキル基が好ましい。
【0049】
本発明によれば、用語「アリール」は、6から14個の炭素原子を有する芳香族基(好ましくは、フェニル)を意味するものと理解される。
【0050】
用語「アリールアルキル」は、本発明に従って定義されている「アリール」基と「アルキル」基の組合せ(ここで、該基は、一般に、該アルキル基を介して結合している。)を意味するものと理解される。それらの例は、ベンジル、フェニルエチル又はα−メチルベンジルであり、ベンジルが特に好ましい。
【0051】
本発明に関連して、ハロゲン置換基(例えば、ハロアルキル)は、1回以上で最大で置換基の可能な最大の数までハロゲン化されている基を意味するものと理解される。ポリハロゲン化の場合、当該ハロゲン原子は、同一であっても又は異なっていてもよい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、特に、フッ素、塩素又は臭素である。
【0052】
用語「アルコキシ」は、単独であっても又はさらなる用語と組み合わされていても(例えば、ハロアルコキシ)、本発明に関連して、O−アルキル基〔ここで、用語「アルキル」は、上記で定義されているとおりである。〕を意味するものと理解される。
【0053】
置換されていてもよい基は、1回以上置換されることが可能であり、多置換の場合は、当該置換基は、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0054】
一般式(II)の化合物は、種々の互変異性体形態:
【0055】
【化7】

で存在し得る。
【0056】
特に、Zが水素である場合、該化合物は、ケト−エノール互変異性に基づいて種々の形態で存在する。本発明に関連して − 式(II)の化合物を表す方法に関わりなく − 一般式(II)の全ての互変異性構造が包含される。
【0057】
一般式(II)の化合物は、少なくともその一部分は、従来技術により知られている。例えば、一般式(II)〔式中、Zは水素又はカリウムであり、Rはエチルである。〕の以下の化合物:
【0058】
【化8】

及びそれら化合物の調製については、「J.Chem.Soc., Perkin Trans. 1, 1985, 第1567から1576頁」に記載されている。
【0059】
一般式(II)の化合物の化学修飾された対応する誘導体の合成は、下記スキーム3に従い、例えば、一般式(IV)のマロン酸エステルのカリウム塩から出発して一般式(V)の化合物を経由し、アルコキシド塩基〔例えば、ナトリウムメトキシド NaOCH(R=CH及びZ=Na)〕を用いて、実施することができる。
【0060】
【化9】

【0061】
アルコキシド基の立体的な寸法に応じて、スキーム3におけるナトリウムアルコキシドの場合のように、エステル基の交換が起こり得る(スキーム3においては、一般式(V)の化合物中のエステル基がRと交換されている。)。しかしながら、立体的な要求がさらに厳しい基を選択した場合、当該エステル交換は低減され得るか、又は、抑制されることさえもあり得る。
【0062】
上記合成において、例えば、カリウムtert−ブトキシドを塩基として使用する場合、置換基Rの交換は起こらず、従って、置換基Rは目的化合物の中に残る(スキーム4)。
【0063】
【化10】

【0064】
さらに、一般式(II)〔式中、Z=水素〕の化合物は、従来技術「Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft (1911), 44, 1759−1765」〔一般式(II)の化合物において、ケト形態(即ち、Zは水素である。)が示されている。〕と同様に、下記スキーム5に従って、マロン酸エステルと塩化クロロアセチルから出発して調製される。
【0065】
【化11】

【0066】
このスキームにおいて、個々の基が存在している場合、その個々の基は、一般に、以下のように定義される:
は、上記で定義されているとおりであり;
は、エチル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルを除くアルキルであり;
は、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルであり;
及び、
Zは、上記で定義されているとおりである。
【0067】
反応体として使用される一般式(IV)のマロン酸エステルのカリウム塩は、市販されているか、又は、従来技術から知られている調製方法で調製することができる(cf. J.Am.Chem.Soc., 1944, No.66, 第1286頁)。
【0068】
上記従来技術は、一般式(II)のナトリウム塩(Z=Na)も対応するメチルエステル(R=CH)も開示していない。従って、それらは、下記で記載されているように、本発明の合成の中間体として、本発明の対象のさらなる部分を構成する。
【0069】
さらに詳細には、一般式(II)(X=Na)の対応するナトリウム塩は − 従来技術から知られているカリウム塩とは対照的に − カリウムtert−ブトキシド塩基をナトリウムメトキシドで置き換えることによって安価に合成することが可能なので、そのようなナトリウム塩(X=Na)を使用することは、本発明の調製方法において好ましい。
【0070】
本発明は、さらに − 下記に同様に記載されているように − 上記に示されているスキームに従って一般式(II)の対応するナトリウム塩(Z=Na)及び/又はメチルエステル(R=CH)を調製するためのスキーム3において上記されている調製方法も提供する。
【0071】
本発明による反応に必要な一般式(III)のアミンは、市販されているか、又は、文献から知られている調製方法で調製することができる(cf, 例えば, S.Patai “The Chemistry of Amino Group”, Interscience Publishers, New York, 1968)。
【0072】
一般式(II)のエステル化合物と一般式(III)のアミンの反応は、溶媒(希釈剤)の存在下で実施することができる。溶媒は、有利には、その調製方法全体にわたって当該反応混合物が容易に撹拌可能な状態のままであるような量で使用する。本発明の調製方法を実施するのに有用な溶媒には、当該反応条件下において不活性な全ての有機溶媒が包含される。
【0073】
例としては、以下のものを挙げることができる:ハロ炭化水素類、特に、クロロ炭化水素類、例えば、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;エーテル類、例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、メチルn−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテル;メチル−THF並びにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのポリエーテル類;ニトロ炭化水素類、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、クロロニトロベンゼン、o−ニトロトルエン;ニトリル類、例えば、アセトニトリル、メチルニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、フェニルニトリル、m−クロロベンゾニトリル、及び、テトラヒドロチオフェンジオキシドなどの化合物、並びに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ベンジルメチルスルホキシド、ジイソブチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジイソアミルスルホキシド;スルホン類、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジヘキシルスルホン、メチルエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン及びペンタメチレンスルホン;脂肪族、シクロ脂肪族又は芳香族の炭化水素類、例えば、ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン、例えば、ホワイトスピリット、例えば、40℃から250℃の範囲内の沸点を有する成分を含んでいるホワイトスピリット、シメン、70℃から190℃の沸点範囲内にある石油留分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン;エステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル及び酢酸イソブチル、並びに、さらに、炭酸ジメチル、炭酸ジブチル及び炭酸エチレン;アミド類、例えば、ヘキサメチレンホスホルアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジン、オクチルピロリドン、オクチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリンジオン、N−ホルミルピペリジン、N,N’−1,4−ジホルミルピペラジン;並びに、脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール及びn−ブタノール。
【0074】
本発明の反応は、好ましくは、ジオキサン、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、DME、トルエン、メチル−THF、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、n−ヘプタン、イソブタノール、n−ブタノール、エタノール、メチルtert−ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中で実施する。
【0075】
場合によっては、正確な出発化合物に応じて、当該反応をバルクで実施することも可能である。即ち、当該反応を溶媒を添加することなく実施することも可能である。
【0076】
一般式(II)の化合物と一般式(III)のアミンの反応は、好ましくは、ブレンステッド酸の存在下で実施する。
【0077】
有機酸又は無機酸のいずれを使用することも可能である。無機酸、例えば、リン酸(HPO)、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、フッ化水素酸(HF)又は硫酸水素カリウム(KHSO)などを使用するのが好ましい。個々の酸は、無水形態で使用し得るか、又は、含水形態で、例えば、85%リン酸若しくは37%塩酸などの形態で、即ち、より特定的には、市販されている形態で、使用し得る。適切な有機酸の例は、トリフルオロ酢酸、酢酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸である。上記酸の中で、好ましいのは、特に、リン酸、硫酸、硫酸水素カリウム及びトリフルオロ酢酸である。
【0078】
一般式(I)の化合物を調製するための反応は、一般に、減圧下、標準圧力下又は高圧下で実施することができる。使用する温度も、同様に、使用する基体に応じてさまざまであることができ、そして、日常的な試験によって当業者が容易に決定することができる。例えば、一般式(I)の化合物を調製するための反応は、20から200℃の温度、好ましくは、20から150℃の温度で実施することができる。特に好ましくは、当該反応を20から150℃の温度で実施する。
【0079】
使用する一般式(II)と一般式(III)の出発化合物の化学量論は、広い範囲内でさまざまであることができ、一般に、どのような特定の制限も受けない。使用する一般式(II)と一般式(III)の出発化合物の適切な化学量論は、日常的な試験によって当業者が容易に決定することができる。例えば、使用する一般式(II)の化合物と一般式(III)のアミンのモル比は、例えば、0.5から10、特に、1から6、とりわけ、1.05から2であり得る。一般式(III)の化合物のさらに多い量を使用することも原則的に可能であるが、それは、好ましい実施形態とはならず、経済的な理由で不利である。
【0080】
当該反応の終わりの近くに、反応に由来する水を、溶媒の一部を蒸留することにより共沸混合物として除去することができる。高沸点溶媒の場合、これは、減圧下で実施することができる。この操作によって、定量的な変換が一般に達成される。
【0081】
当該反応を溶媒中で実施する場合、その溶媒は、反応終了後に蒸留によって除去することができる。これは、室温又は高温で、標準圧力下又は減圧下で実施することができる。 一般式(I)の所望の化合物は、例えば結晶化によって、単離することも可能である。
【0082】
既に述べたように、一般式(II)の化合物の一部は、従来技術から知られてはいない。本発明による調製方法のための出発化合物として使用されるこれらの新規化合物は、本発明の対象のさらなる部分を構成する。
【0083】
第一のさらなる実施形態では、本発明は、従って、一般式(IIa)
【0084】
【化12】

〔式中、Rは、上記で定義されているとおりである。〕
の化合物にも関する。
【0085】
一般式(IIa)の化合物は、ナトリウム塩の形態で存在している。
【0086】
第二のさらなる実施形態では、本発明は、さらに、一般式(IIb)
【0087】
【化13】

〔式中、Zは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される。〕
の化合物にも関する。
【0088】
一般式(II)の化合物、特に、一般式(IIa)及び一般式(IIb)の化合物は、一般式(IV)の化合物から出発して、環化によって得られる。
【0089】
環化自体のために、任意の望ましい塩基、例えば、カリウムtert−ブトキシド又はナトリウムメトキシドなどを使用することが可能であるが、経済的な理由のために、ナトリウムメトキシドが好ましい。
【0090】
該環化反応に適した溶媒は、例えば、一般式(I)の4−アミノ−ブタ−2−エノリド化合物の本発明による調製に関しても同様に使用される溶媒である。
【0091】
該環化は、一般に、減圧下、標準圧力下又は高圧下で実施することができる。使用する温度も、同様に、使用する基体に応じてさまざまであることができ、そして、日常的な試験によって当業者が容易に決定することができる。例えば、一般式(V)の化合物を調製するための反応は、20から200℃の温度、好ましくは、20から150℃の温度で実施することができる。特に好ましくは、当該反応を標準圧力下20から150℃の温度で実施する。
【0092】
使用する塩基に対する使用する一般式(V)の出発化合物の化学量論は、広い範囲内でさまざまであることができ、一般に、どのような特定の制限も受けない。使用する一般式(V)の出発化合物及び当該塩基の適切な化学量論は、日常的な試験によって当業者が容易に決定することができる。例えば、一般式(V)の化合物と当該塩基のモル比は、例えば、0.9から10、特に、1から5、とりわけ、1から2であり得る。
【0093】
一般式(V)の化合物は、同様に、既知又は市販のマロン酸エステルカリウム塩をハロ酢酸アルキルと反応させることにより調製することができる。一般に、ブロモ酢酸アルキル(特に、ブロモ酢酸エチル)及びクロロ酢酸アルキル(特に、クロロ酢酸エチル)を使用することが可能である。適切な塩素誘導体が特に好ましいが、それは、対応する臭素誘導体がより高価だからである。
【0094】
従って、本発明は、一般式(V)
【0095】
【化14】

の化合物の調製にも関し、ここで、該調製は、一般式(IV)
【0096】
【化15】

の化合物を一般式(VI)
【0097】
【化16】

のクロロ酢酸アルキル(特に、クロロ酢酸エチル)と反応させることを特徴とし、ここで、個々の置換基R及び置換基Rは、それぞれ、上記で定義されているとおりである。
【0098】
一般式(V)の化合物を生成させるための上記反応は、典型的には、溶媒の中で実施する。
【0099】
適切な溶媒は、例えば、一般式(I)の4−アミノブタ−2−エノリド化合物の本発明による調製に関しても同様に使用される溶媒である。上記溶媒の中で、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0100】
一般式(V)の化合物を調製するための反応は、一般に、減圧下、標準圧力下又は高圧下で実施することができる。使用する温度も、同様に、使用する基体に応じてさまざまであることができ、そして、日常的な試験によって当業者が容易に決定することができる。例えば、一般式(V)の化合物を調製するための反応は、20から200℃の温度、好ましくは、20から150℃の温度で実施することができる。特に好ましくは、当該反応を標準圧力下20から150℃の温度で実施する。
【0101】
使用する一般式(IV)と一般式(VI)の出発化合物の化学量論は、広い範囲内でさまざまであることができ、一般に、どのような特定の制限も受けない。使用する一般式(IV)と一般式(VI)の出発化合物の適切な化学量論は、日常的な試験によって当業者が容易に決定することができる。例えば、使用する一般式(VI)のエステルに対する一般式(IV)の化合物のモル比は、例えば、5から0.8、特に、3から0.9、とりわけ、2から1であり得る。
【0102】
当該反応を溶媒中で実施する場合、その溶媒は、反応終了後に蒸留によって除去することができる。これは、室温又は高温で、標準圧力下又は減圧下で実施することができる。 一般式(V)の所望の化合物は、例えば結晶化によって、単離することも可能である。
【0103】
さらに、一般式(V)の化合物を、一般式(II)の化合物に、直接的に(即ち、より詳細には、精製することなく)変換することも可能である。
【0104】
以下の実施例によって本発明について詳細に説明するが、該実施例は、それらが本発明を限定するようには解釈されるべきではない。
【実施例】
【0105】
調製実施例
実施例1
68mLのブチロニトリル中の10.4gのカリウム4−(エトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オキシドと7.5gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロエチルアミンの懸濁液に、室温で、11.5gの硫酸水素カリウムを添加する。その混合物を90から95℃の温度で3時間撹拌する。次に、その混合物を室温まで冷却し、120mLの水と120mLのジクロロメタンを添加する。有機相を除去し、水相を毎回120mLの塩化メチレンで2回抽出する。有機相を合して濃縮乾固させる。11.4gの4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](2,2−ジフルオロエチル)アミノ]フラン−2(5H)−オンが84%の純度(これは、収率92%に相当する。)で得られる。
【0106】
実施例2
35mLのブチロニトリル中の5gのナトリウム4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オキシドと4.2gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロエチルアミンの懸濁液に、室温で、7.5gの硫酸水素カリウムを添加する。その混合物を90℃の温度で3時間撹拌する。次に、その混合物を室温まで冷却し、60mLの水及び60mLのジクロロメタンと混合させる。有機相を除去し、水相を毎回30mLの塩化メチレンで2回抽出する。有機相を合して濃縮乾固させる。5.95gの4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](2,2−ジフルオロエチル)アミノ]フラン−2(5H)−オンが89%の純度(これは、収率91%に相当する。)で得られる。
【0107】
実施例3
35mLのブチロニトリル中の10gのナトリウム4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オキシドとナトリウム4−(エトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オキシド(比率 77:23)及び3.5gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]メチルアミンの懸濁液に、室温で、7.5gの硫酸水素カリウムを添加する。その混合物を90℃の温度で3時間撹拌する。次に、その混合物を室温まで冷却し、溶媒を完全に除去する。その残渣を50mLの水と混合させ、毎回30mLのジクロロメタンで2回抽出する。有機相を合して濃縮乾固させる。4.7gの4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]メチルアミノ]フラン−2(5H)−オンが95%の純度 (これは、収率82%に相当する。)で得られる。
【0108】
実施例4
500mLのジメチルホルムアミド中の78.9gのモノエチルマロン酸カリウムの懸濁液に、35℃で、55gのクロロ酢酸メチルを滴下して加え、得られた混合物を35℃で8時間撹拌する。減圧下に溶媒を除去し、その残渣を100mLの水及び100mLのトルエンと混合させる。相を分離させ、水相を100mLのトルエンで洗浄する。有機相を合して硫酸マグネシウムで脱水し、減圧下に濃縮する。77.6gの2−メトキシ−2−オキソエチルプロパンジカルボン酸メチルが98%の純度(これは、収率80%に相当する。)で得られる。
H NMR(CDCl,298K)δ: 3.51s(2H),3.77s(3H),3.78s(3H),4.69s(2H)。
【0109】
実施例5
19.6gの2−メトキシ−2−オキソエチルプロパンジカルボン酸メチルに、40℃で、メタノール中の30%ナトリウムメトキシド18gを滴下して加え、得られた混合物を3時間加熱還流する。次に、その混合物を室温まで冷却する。固体を吸引濾過し、20mLのメタノールで洗浄する。生成物を減圧下に50℃で乾燥させる。15.6gのナトリウム4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オキシドが99.9%の純度(これは、収率87%に相当する。)で得られる。
H NMR(DO,298K)δ: 3.73s(3H),4.42s(2H)。
【0110】
実施例6
23.1gの2−エトキシ−2−オキソエチルプロパンジカルボン酸エチルに、40℃で、メタノール中の30%ナトリウムメトキシド18gを滴下して加え、得られた混合物を2時間加熱還流する。次に、その混合物を0℃まで冷却する。固体を吸引濾過し、10mLのメタノールで洗浄する。生成物を減圧下に50℃で乾燥させる。15.7gのナトリウム4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オキシドとナトリウム4−(エトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オキシドの混合物(比率 77:23)が得られる(これは、収率86%に相当する。)。
【0111】
実施例7
70mLのブチロニトリル中の5.2gの4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オールと5gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロエチルアミンの懸濁液に、室温で、4.5gの硫酸水素カリウムを添加する。その混合物を120℃の温度で3時間撹拌する。次に、その混合物を室温まで冷却し、60mLの水及び60mLのジクロロメタンと混合させる。有機相を除去し、水相を毎回30mLの塩化メチレンで2回抽出する。有機相を合して濃縮乾固させる。7.6gの4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](2,2−ジフルオロエチル)アミノ]フラン−2(5H)−オンが85%の純度(これは、収率94%に相当する。)で得られる。
【0112】
実施例8
210mLのブチロニトリル中の18gの4−(メトキシカルボニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロフラン−3−オールと15gのN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]メチルアミンの懸濁液に、室温で、16gの硫酸水素カリウムを添加する。その混合物を115℃の温度で5時間撹拌する。次に、その混合物を室温まで冷却し、150mLの水及び70mLのジクロロメタンと混合させる。有機相を除去し、水相を毎回70mLの塩化メチレンで2回抽出する。有機相を合して濃縮乾固させる。24gの4−[[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル](メチル)アミノ]フラン−2(5H)−オンが88%の純度(これは、収率92%に相当する。)で得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

の4−アミノブタ−2−エノリド化合物を調製する方法であって、
一般式(II)
【化2】

の化合物を一般式(III)
【化3】

のアミンと反応させることを特徴とする、前記方法〔個々の基は、以下のように定義される:
は、水素、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロシクロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロシクロアルキルアルキル又はアリールアルキルであり;
は、アルキル、アリール又はアリールアルキルであり;
Zは、水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり;
Aは、ピリド−2−イル若しくはピリド−4−イルであるか、又は、ピリド−3−イル(6位がフッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで置換されていてもよい。)であるか、又は、ピリダジン−3−イル(6位が塩素又はメチルで置換されていてもよい。)であるか、又は、ピラジン−3−イルであるか、又は、2−クロロピラジン−5−イルであるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(2位が塩素又はメチルで置換されていてもよい。)であり;
又は、
Aは、ピリミジニル、ピラゾリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−トリアゾリル又は1,2,5−チアジアゾリル[フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、C−C−アルキル(フッ素及び/又は塩素で置換されていてもよい。)、C−C−アルキルチオ(フッ素及び/又は塩素で置換されていてもよい。)又はC−C−アルキルスルホニル(フッ素及び/又は塩素で置換されていてもよい。)で置換されていてもよい。]であり、
又は、
Aは、
【化4】

[ここで、
Xは、ハロゲン、アルキル又はハロアルキルであり;
Yは、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アジド又はシアノである。]
である。〕。
【請求項2】
一般式(II)の化合物が、一般式(V)
【化5】

の化合物を塩基〔特に、アルコキシド塩基〕と反応させることによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(II)の化合物が、一般式(V)の化合物から出発してナトリウムアルコキシドと反応させることによる以下のスキーム
【化6】

〔個々の基は、一般的に以下のように定義される:
は、請求項1で定義されているとおりであり;
は、エチル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルを除くアルキルであり;及び、
は、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルである。〕
によって得られることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(II)の化合物が、一般式(V)の化合物から出発してカリウムtert−ブトキシドと反応させることによる以下のスキーム
【化7】

〔個々の基は、一般的に以下のように定義される:
は、エチル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルを除くアルキルであり;及び、
は、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルである。〕
によって得られることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
一般式(II)の化合物が、マロン酸エステルと塩化クロロアセチルから出発する以下のスキーム
【化8】

〔R基は、請求項1で定義されているとおりである。〕
によって得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一般式(V)
【化9】

の化合物を調製する方法であって、
一般式(IV)
【化10】

の化合物を一般式(VI)
【化11】

のクロロ酢酸アルキル(特に、クロロ酢酸エチル)と反応させることを特徴とする、前記方法〔置換基R及びRは、以下のように定義される:
は、エチル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルを除くアルキルであり;及び、
は、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール又はアリールアルキルである。〕。
【請求項7】
請求項2から4のいずれか一項に記載の調製方法における出発化合物として請求項6に記載の調製方法から得られる一般式(V)の化合物を使用することを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
一般式(IIa)
【化12】

〔式中、置換基Rは、アルキル、アリール又はアリールアルキルからなる群から選択される。〕
の化合物。
【請求項9】
一般式(IIb)
【化13】

〔式中、置換基Zは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる群から選択される。〕
の化合物。

【公表番号】特表2011−500513(P2011−500513A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525229(P2010−525229)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007270
【国際公開番号】WO2009/036899
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】