説明

4−アルキルレゾルシノールの製造方法

【課題】腐食性の高い物質や、有害または有毒な物質を用いることなく、比較的低温で工業的に有利に4−アルキルレゾルシノールを製造する方法を提供する。
【解決手段】2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドに対し、有機金属化合物を反応させてカルボニル炭素にアルキル基を導入した後、還元して下記一般式(1)の4−アルキルレゾルシノールを製造する。
【化1】


[式中、Rは炭素数1〜12のアルコキシル基、フェニル基、又は複素環で置換されていてもよい炭素数1〜12の鎖状、分岐又は環状アルキル基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アルキルレゾルシノールの製造方法、特に、2,4−ジヒドロベンズアルデヒドを出発原料とし、腐食性の高い物質や、有害または有毒な物質を用いることなく、比較的低温で、工業的に有利に4−アルキルレゾルシノールを製造可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−アルキルレゾルシノールは医薬品や化粧品の成分あるいはその中間体として、また、樹脂の添加剤や原料として、工業的に用いられている。
例えば、4−アルキルレゾルシノールは、ニキビ原因菌に対する抗菌作用(特許文献1)、フケ原因菌に対する抗菌作用(特許文献2)、美白作用(特許文献3〜4)など、医薬品や化粧品において有用な効果を有することが知られており、4−n−ブチルレゾルシノールは美白剤として既に化粧品に実用化されている。また、4−n−へキシルレゾルシノールは回虫や十二指腸虫の駆虫剤として使用されている。
【0003】
4−アルキルレゾルシノールの製造方法としては、例えば特許文献4および特許文献5などに記載されている様に、飽和カルボン酸または飽和カルボン酸ハロゲン化物とレゾルシノールとを、塩化亜鉛または塩化アルミニウム等のルイス酸存在下でフリーデル・クラフツ反応させ、生成した4−アシルレゾルシノールを亜鉛アマルガム/塩酸で還元する方法が広く知られている。
しかしながら、この製造方法では、腐食性の高い塩化亜鉛または塩化アルミニウムをフリーデル・クラフツ反応剤として、また、有害なハロゲン化合物やニトロ化合物を反応溶媒として、さらには、有毒な水銀を還元反応の触媒として用いなければならないという問題がある。
【0004】
特許文献6には、アルミナを触媒とし、レゾルシノールとn−へキサノールとを液相中、200〜400℃で反応させて4−n−へキシルレゾルシノールを直接的に製造する方法が記載されている。
しかし、この方法では、長時間の高温条件が必要であり、副生成物も多い。
【0005】
特許文献7には、特定金属の酸化物および水酸化物から選ばれる一種以上を触媒として用い、アルコールを超臨界状態にしてレゾルシノールと反応させて4−アルキルレゾルシノールを製造する方法が記載されている。
しかし、この方法は超臨界状態とするために、高温・高圧条件(例えば350℃以上、5MPa以上)が必要であり、そのための装置が必要であるとともに危険を伴うという問題がある。
【0006】
特許文献8では、4−シクロアルキルレゾルシノール誘導体を得る方法として、レゾルシノールと、シクロアルキルアルコールとをポリリン酸を触媒として使用して約100〜160℃の高温下で反応させる方法が記載されている。
しかし、この方法ではアルキルアルコールの求電子部位(カチオン)が転移してしまうため、4位のモノ置換体を得たとしても複雑な生成物であったり、転移体しか得られなかったりするなど、目的化合物を単一化合物として得ることは難しい。また、レゾルシノールに複数のアルキル基が導入された多置換体が副生しやすい。そのため、モノ置換体の収率は低く、高くても30%前後である。
【0007】
その他にも、4−アルキルレゾルシノール類の製造方法が多く報告されているが、上記の様な問題があったり、副生成物が多く精製が困難であったり、著しく収率が低いなどの理由から、工業的な製造コストが非常に高くなるという問題がある(特許文献9〜11、非特許文献1〜6)。
【0008】
【特許文献1】特許第2875374号公報
【特許文献2】特許第2801960号公報
【特許文献3】特開平5−4905号公報
【特許文献4】特公平6−51619号公報
【特許文献5】米国特許第2093778号明細書
【特許文献6】英国特許第1581428号明細書
【特許文献7】特開2002−167344号公報
【特許文献8】特許第3591763号公報
【特許文献9】米国特許第1858042号明細書
【特許文献10】米国特許第4093667号明細書
【特許文献11】米国特許第4108909号明細書
【0009】
【非特許文献1】Recl. Trav. Chim Pays-Bas, 50巻, 1931年, 848ページ
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 59巻, 1937年, 104ページ
【非特許文献3】Phytochemistry, 21巻, 7号, 1982年, 1733ページ
【非特許文献4】Tetrahedron Lett., 25巻, 48号, 1984年, 5581ページ
【非特許文献5】Gazz. Chim. Ital., 105巻, 1975年, 1245ページ
【非特許文献6】Tetrahedron, 25巻, 1969年, 1407ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、腐食性の高い物質や、有害または有毒な物質を用いることなく、比較的低温で工業的に有利に4−アルキルレゾルシノールを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドに対し、有機金属化合物を反応させてカルボニル炭素にアルキル基を導入した後、還元することにより目的とする4−アルキルレゾルシノールを工業的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドに対し、有機金属化合物を反応させてカルボニル炭素にアルキル基を導入した後、還元することを特徴とする、下記一般式(1)で表される4−アルキルレゾルシノールの製造方法を提供する。
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、Rは炭素数1〜12のアルコキシル基、フェニル基、又は複素環で置換されていてもよい炭素数1〜12の鎖状、分岐又は環状アルキル基を示す。]
また、本発明は、前記方法において、Rが炭素数3〜12の鎖状、分岐又は環状アルキル基であることを特徴とする4−アルキルレゾルシノールの製造方法を提供する。
また、本発明は、前記方法において、有機金属化合物がグリニャール試薬またはアルキルリチウムであることを特徴とする4−アルキルレゾルシノールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドから腐食性の高い物質や、有害または有毒な物質を用いることなく、比較的低温で、工業的に有利に一般式(1)の4−アルキルレゾルシノールを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の製造方法においては、下記反応式Aのように、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(2)に対し、有機金属化合物を反応させてカルボニル炭素にアルキル基Rを導入した化合物(3)とした後、これを還元することにより、目的とする4−アルキルレゾルシノール(1)を得る。
本発明の方法によれば、出発原料である2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(2)を基準として、目的とする4−アルキルレゾルシノール(1)を70%以上、さらには80%以上の高収率で得ることができる。
【0016】
【化2】

【0017】
反応式Aにおいて、Rは前記一般式(1)における定義の通りであり、炭素数1〜12、好ましくは3〜12の鎖状、分岐又は環状アルキル基を示す。また、Rはその任意の位置において1〜2個の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、炭素数1〜12のアルコキシル基、フェニル基、又は複素環が挙げられる。フェニル基は1〜2個の炭素数1〜12のアルコキシル基で置換されていてもよい。複素環としては、環を構成する元素としてN、S、Oなどのヘテロ原子を1〜3個有する、飽和又は不飽和の5〜6員の複素環が挙げられる。例えば、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、テトラヒドロピラン、オキサチアン、ピリジン、ピペリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、モルホリンなどが挙げられる。Rの定義は以下においても同じである。
【0018】
反応式Aの第1段階のアルキル化反応で用いる有機金属化合物としては、目的化合物に対応したアルキル基Rを有するものを使用することができる。例えば、RMgXで示されるグリニャール試薬(Xはハロゲン原子を表す。Xの定義は以下においても同じである。)、RLiで示されるアルキルリチウム、RCdで示されるジアルキルカドミウム、RAlで示されるトリアルキルアルミニウム等が挙げられる。
【0019】
グリニャール試薬としては、例えば、n−プロピルマグネシウムクロリド、n−プロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド、シクロプロピルマグネシウムクロリド、シクロプロピルマグネシウムブロミド、n−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド、イソブチルマグネシウムクロリド、イソブチルマグネシウムブロミド、sec−ブチルマグネシウムクロリド、sec−ブチルマグネシウムブロミド、tert−ブチルマグネシウムクロリド、tert−ブチルマグネシウムブロミド、n−ペンチルマグネシウムクロリド、n−ペンチルマグネシウムブロミド、シクロペンチルマグネシウムクロリド、シクロペンチルマグネシウムブロミド、2,2−ジメチルプロピルマグネシウムクロリド、2,2−ジメチルプロピルマグネシウムブロミド、1,1−ジメチルプロピルマグネシウムクロリド、1,1−ジメチルプロピルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムクロリド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、シクロヘキシルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマグネシウムブロミド、3,3−ジメチル−1−ブチルマグネシウムクロリド、3,3−ジメチル−1−ブチルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムブロミド、フェネチルマグネシウムクロリド、フェネチルマグネシウムブロミド、n−オクチルマグネシウムクロリド、n−オクチルマグネシウムブロミド、3−フェニル−1−プロピルマグネシウムクロリド、3−フェニル−1−プロピルマグネシウムブロミド、2−メトキシベンジルマグネシウムクロリド、2−メトキシベンジルマグネシウムブロミド、3−メトキシベンジルマグネシウムクロリド、3−メトキシベンジルマグネシウムブロミド、4−メトキシベンジルマグネシウムクロリド、4−メトキシベンジルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
【0020】
アルキルリチウムとして例えば、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、シクロペンチルリチウム、ネオペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、n−オクチルリチウム、2−エチルヘキシルリチウム等が挙げられる。
【0021】
アルキルカドミウムとして例えば、ジn−プロピルカドミウム、ジn−ブチルカドミウム等が挙げられ、トリアルキルアルミニウムとしてはトリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリス(tert−ブチル)アルミニウム、トリn−ペンチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリn−デシルアルミニウム等が挙げられる。
【0022】
このうち、n−プロピルマグネシウムクロリド、n−プロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド、シクロプロピルマグネシウムクロリド、シクロプロピルマグネシウムブロミド、n−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド、イソブチルマグネシウムクロリド、イソブチルマグネシウムブロミド、sec−ブチルマグネシウムクロリド、sec−ブチルマグネシウムブロミド、tert−ブチルマグネシウムクロリド、tert−ブチルマグネシウムブロミド、n−ペンチルマグネシウムクロリド、n−ペンチルマグネシウムブロミド、シクロペンチルマグネシウムクロリド、シクロペンチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムクロリド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、シクロヘキシルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマグネシウムブロミド、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、シクロペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウムが好ましい。
【0023】
溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の芳香族類等が用いられるが、使用する原料化合物あるいは有機金属化合物に応じて選択すれば良い。反応温度、反応時間は使用する原料化合物に応じて変化させれば良いが、通常−78℃から溶媒の還流温度の範囲で行われる。
【0024】
第2段階の還元は、触媒として、例えば、パラジウム−炭素、水酸化パラジウムを触媒として用いた接触還元や、金属スズや塩化スズ等のスズ化合物を用いた還元により行うことができる。接触還元は、通常、メタノールやエタノール、酢酸エチル、酢酸のような溶媒中、常圧もしくは加圧下にて行われる。スズ化合物を用いた還元は、通常塩酸等を併用して酸性条件下で行われる。いずれの場合も反応温度、反応時間は使用する原料化合物に応じて変化させれば良い。反応温度は通常、0℃から溶媒の還流温度の範囲で行われる。
なお、上記の反応式において用いられている原料化合物のうち、特に記載のないものは商業上入手可能であるか、あるいは公知の方法を用いて対応する原料から容易に合成することができる。
【0025】
本発明の製造方法において反応終了後の反応混合物には、4−アルキルレゾルシノールのほかに、未反応の原料、副反応による生成物が含まれることもある。各種の用途に必要な純度まで、4−アルキルレゾルシノールを分離することができる。分離の方法は、特に限定されず、蒸留、抽出、晶析等の通常工業的に使用できる方法が適用できる。
【0026】
なお、特開2006−124357号公報および特開2006−124358号公報では、有機金属化合物とそれに続く還元により4−アルキルレゾルシノールを製造する方法が記載されているが、これらはレゾルシノールの4位に1−分岐アルキル基を導入するためにベンゼン環にアルカノイル基(−CO−アルキル)が結合したアシル化合物に対して反応を行うものであり、ベンゼン環にアルデヒド基(−CO−H)が結合した化合物に対する反応については触れられていない。
【実施例】
【0027】
以下、具体例を挙げてさらに本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【0028】
製造例1 4-イソブチルレゾルシノールの製造
(1)4-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)レゾルシノールの製造
イソプロピルマグネシウムブロミド(東京化成製、15%テトラヒドロフラン溶液, 約1 mol/L)(20 ml) に、氷冷下、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(東京化成製、純度>98.0%)(0.69 g, 5.00 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 (5 ml) をゆっくり滴下した。室温で3時間撹拌した後、氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して黄土色固体の4-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)レゾルシノール (1.04 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 0.84 (3H, d, J=6.8 Hz), 1.04 (3H, d, J=6.8 Hz), 2.03 −2.11 (1H, m), 2.48 (1H, brs), 4.46 (1H, d, J=7.3 Hz), 4.80 (1H, brs), 6.31 (1H, dd, J=8.2, 2.4 Hz), 6.36 (1H, d, J=2.4 Hz), 6.75 (1H, d, J=8.2 Hz), 8.09 (1H, brs).
【0029】
(2)4-イソブチルレゾルシノールの製造
4-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)レゾルシノール (1.04 g) の酢酸エチル溶液 (10 ml) に20%水酸化パラジウム−炭素(50%含水品)(アルドリッチ製)(0.10 g) を加え、水素ガス雰囲気下、室温で4時間撹拌した。触媒を濾去後、濾液を濃縮し、残渣 (0.94 g) をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル30 g、ヘキサン:酢酸エチル=4:1) に付し、白色固体の4-イソブチルレゾルシノール (0.67 g、収率80.7%) を得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 0.91 (6H, d, J=6.8 Hz), 1.86 (1H, 9重線, J=6.8 Hz), 2.39 (2H,d, J=6.8 Hz), 4.74 (1H, s), 4.77 (1H, s), 6.32 (1H, d, J=2.5 Hz), 6.35 (1H, dd, J=2.5, 8.2 Hz), 6.91 (1H, d, J=8.2 Hz).
【0030】
比較製造例1
前記特許文献8記載の方法に準じ、4-イソブチルレゾルシノールの合成を試みた。具体的には、レゾルシノール (11.01 g) とポリリン酸 (20 ml) の混合物に、2-メチル-1-プロパノール(東京化成製、純度>99.0%)(9.26 ml) を加え、115℃で18時間攪拌した。反応液を酢酸エチルにて希釈し、有機層を1N水酸化ナトリウム水溶液、1N塩酸および飽和食塩水で順次洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、酢酸エチルを濃縮した。残渣 (17.27 g) のうち 1.55 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル30 g、ヘキサン:酢酸エチル=4:1)に付し、薄茶色粘性液体の4-tert-ブチルレゾルシノール (0.21 g) を得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 1.28 (9H, s), 6.11 (1H, dd, J=8.7, 2.4 Hz), 6.25 (1H, d, J=2.4 Hz), 6.87 (1H, d, J=8.7 Hz), 8.81 (1H, s), 8.98 (1H, s).
【0031】
比較製造例1では、目的とする4-イソブチルレゾルシノールを得ることはできなかった。これは、下記のような求電子部位(カチオン)の転移により、目的とする4-イソブチルレゾルシノールではなく、4-tert-ブチルレゾルシノールが生成したものと推察される。
【0032】
【化3】

【0033】
製造例2 4-n-ブチルレゾルシノールの製造
(1)4-(1-ヒドロキシブチル)レゾルシノールの製造
n-プロピルマグネシウムブロミド(東京化成製、27%テトラヒドロフラン溶液, 約2 mol/L)(40 ml) に、氷冷下、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(東京化成製、純度>98.0%)(2.76 g, 20.0 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 (45 ml) をゆっくり滴下した。室温で3時間撹拌した後、氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して淡黄色固体の4-(1-ヒドロキシブチル)レゾルシノール (4.25 g) を得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 0.85 (3H, t, J=7.2 Hz), 1.22 −1.38 (2H, m), 1.50 (2H, q, J=7.2 Hz), 4.70 − 4.75 (2H, m), 6.17 (1H, dd, J=8.2, 2.4 Hz), 6.20 (1H, d, J=2.4 Hz), 7.00 (1H, d, J=8.2 Hz), 8.90 (1H, s), 8.96 (1H, s).
【0034】
(2)4-n-ブチルレゾルシノールの製造
4-(1-ヒドロキシブチル)レゾルシノール (4.25 g) の酢酸エチル溶液 (20 ml) に20%水酸化パラジウム−炭素(50%含水品)(アルドリッチ製)(0.43 g) を加え、水素ガス雰囲気下、室温で4時間撹拌した。触媒を濾去後、濾液を濃縮し、残渣 (3.78 g) をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル80 g、クロロホルム:メタノール=30:1) に付し、淡黄色固体の4-n-ブチルレゾルシノール (2.82 g、収率84.8%) を得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 0.87 (3H, t, J=7.2 Hz), 1.27 (2H, sextet, J=7.2 Hz), 1.45 (2H, quintet, J=7.2 Hz), 2.39 (2H, t, J=7.2 Hz), 6.11 (1H, dd, J=8.2, 2.4 Hz), 6.25 (1H, d, J=2.4 Hz), 6.76 (1H, d, J=8.2 Hz), 8.80 (1H, s), 8.87 (1H, s).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドに対し、有機金属化合物を反応させてカルボニル炭素にアルキル基を導入した後、還元することを特徴とする、下記一般式(1)で表される4−アルキルレゾルシノールの製造方法。
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜12のアルコキシル基、フェニル基、又は複素環で置換されていてもよい炭素数1〜12の鎖状、分岐又は環状アルキル基を示す。]
【請求項2】
請求項1記載の方法において、Rが炭素数3〜12の鎖状、分岐又は環状アルキル基であることを特徴とする4−アルキルレゾルシノールの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、有機金属化合物がグリニャール試薬またはアルキルリチウムであることを特徴とする4−アルキルレゾルシノールの製造方法。

【公開番号】特開2010−132593(P2010−132593A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309284(P2008−309284)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】