説明

4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法

【課題】4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法の提供。
【解決手段】フラン化合物を、酸の存在下にアルコールと反応させ、得られるアセタール化合物を脱アセタール化し4−オキソ脂肪族アルデヒドとする、比較的安価な原料を用い、安全かつ簡便な操作により製造する方法。例えば、下式のフラン化合物(14)とエチレングリコールの反応から得られる、化合物(15)或いは(16)のアセタール化合物を脱アセタール化して化合物(17)の4−オキソ脂肪族アルデヒド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料として、また医薬・生理活性物質、香料などの中間体などとして有用な4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(1)
【0003】
【化1】

【0004】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を示す]
で表される4−オキソ脂肪族アルデヒドは、それ自体香料として、また医薬・生理活性物質、香料などの中間体として有用な化合物であり、例えば、特許文献1には、式(1)の化合物に包含される4−オキソノナナールが西瓜の香気および香味のキー・フレーバーとして有用であることが開示されている。
【0005】
4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法としては、例えば、4,4−ポリメチレンジオキシブチロニトリルをグリニアール試薬と反応させ、生成する4−オキソ−1,1−ポリメチレンジオキシ化合物に酸触媒を作用させる方法(特許文献2参照)、α−シロキシアリルシランを酸ハライドとルイス酸の存在下に反応させ、次いで加水分解する方法(特許文献3参照)、不飽和ラクトンを有機溶媒中で金属水素化物還元剤を用いて還元する方法(特許文献4参照)、ビニルケトンに対しニトロメタンを塩基の存在下にマイケル付加させ、得られるニトロ化合物に対してNef反応を行う方法(非特許文献1参照)、2−(2−ブロモエチル)−1,3−ジオキサンから調製されるグリニアール試薬を酸ハライドと反応させ、次いで加水分解する方法(非特許文献2参照)、ジクロロシクロプロピルケトンをメタノール中ナトリウムメトキシドと反応させ、得られる2,2−ジメトキシー2,3−ジヒドロフランを水素化アルミニウムリチウムと反応させ、次いで酸加水分解する方法(非特許文献3参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記従来の4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法は、工業的に不向きな原料や試薬の使用、製造操作が煩雑などの問題があり、より効率的な製造方法の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭62−20962号公報
【特許文献2】特公昭61−54772号公報
【特許文献3】特公昭57−5211号公報
【特許文献4】特開平10−45660号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】HELVETICA CHIMICA ACTA,(1978),61,990−997
【非特許文献2】Journal of Organic Chemistry (1976),41(3),560−561
【非特許文献3】Synthesis (1984),(10),886−887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、比較的安価な原料を用いて、安全かつ簡便な操作により4−オキソ脂肪族アルデヒドを工業的な規模で製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、4−オキソ脂肪族アルデヒドの工業的な規模での製造方法について鋭意検討した結果、今回、下記式(2)で表されるフラン化合物を出発物質として酸の存在下にアルコールと反応させ、得られる下記式(3)および/または式(4)のアセタール化合物を脱アセタール化することにより、前記式(1)の4−オキソ脂肪族アルデヒドを好収率かつ高純度で簡便に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は、下記式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を示す]
で表されるフラン化合物を、酸の存在下に、アルコール[ROHまたはHO−R−OH]と反応させ、得られる下記式(3)
【0014】
【化3】

【0015】
および/または下記式(4)
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、Rは前記と同義であり、複数個のRは同一もしくは相異なり、それぞれ、低級アルキル基を示すか、または2個のORは一緒になって下記式(5)
【0018】
【化5】

【0019】
を形成してもよく、Rは水酸基で置換されていても良い低級アルキレン基を示す]
で表されるアセタール化合物を脱アセタール化することを特徴とする下記式(1)
【0020】
【化6】

【0021】
[式中、Rは前記と同義である]
で表される4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、それ自体香料として、また医薬・生理活性物質、香料などの中間体として有用な前記式(1)の4−オキソ脂肪族アルデヒドを好収率かつ高純度で簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の前記式(1)の4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法を、下記の反応経路1に沿ってさらに詳細に説明する。
【0024】
【化7】

【0025】
[式中、RおよびRは前記と同義である]
【0026】
本明細書において、「アルキル基」は、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基であり
、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
【0027】
「アルケニル基」は、鎖中に二重結合を含む直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基であり、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチレンプロピル基、2−メチレンプロピル基、1−メチレン−2−プロペニル基、1,2−ジメチル−1−プロペニル基、2−エチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−メチレンプロピル基、1,2−ジメチルー2−プロペニル基、1−エチル−2−プロペニル基、1−ビニル−1−プロペニル基、2−メチル−1−メチレン−2−プロペニル基、1−エチル−2−メチル−1−プロペニル基、1−イソプロピル−1−プロペニル基、1−イソプロピル−2−プロペニル基、1−エチル−2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、3−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、1−メチレンブチル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチレンブチル基、1−メチル−2―ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−1,3−ブタジエニル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、1−メチル−1,3−ブタジエニル基、1−メチレン−3−ブテニル基、2−メチレン−3−ブテニル基、1−メチレン−2−ブテニル基、1,2−ジメチル−1−ブテニル基、1,3−ジメチル−1−ブテニル基、2,3−ジメチル−1−ブテニル基、2−メチル−1−メチレンブチル基、3−メチル−1−メチレンブチル基、1−エチル−1−ブテニル基、3,3−ジメチル−1−ブテニル基、1,2−ジメチル−2−ブテニル基、1,3−ジメチル−2−ブテニル基、2,3−ジメチル−2−ブテニル基、1−メチル−2−メチレンブチル基、1−ビニルブチル基、2−エチル−2−ブテニル基、2,2−ジメチル−2−ブテニル基、1,2−ジメチル−3−ブテニル基、1,3−ジメチル−3−ブテニル基、2,3−ジメチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基、2,2−ジメチル−3−ブテニル基、2−エチル−3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−1−ペンテニル基、2−メチル−1−ペンテニル基、3−メチル−1−ペンテニル基、4−メチル−1−ペンテニル基、1−メチレン−1−ペンチル基、1−メチル−2−ペンテニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、2−メチレンペンチル基、1−メチル−3−ペンテニル基、2−メチル−3−ペンテニル基、3−メチル−3−ペンテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、1−メチル−4−ペンテニル基、2−メチル−4−ペンテニル基、3−メチル−4−ペンテニル基、4−メチル−4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル基、4−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、6−ヘプテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基、3−オクテニル基、4−オクテニル基、5−オクテニル基、6−オクテニル基、7−オクテニル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜6の低級アルケニル基である。
【0028】
「アルキニル基」は、鎖中に三重結合を含む直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基であり、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−エチル−2−プロピニル基、1−プロピル−2−プロピニル基、1−イソプロピル−2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−メチル−1−ブチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、1−メチル−3−ブチニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−エチル−3−ブチニル基、1−エチル−2−ブチニル基、2−エチル−3−ブチニル基、1,2−ジメチル−3−ブチニル基、2−エチル−3−ブチニル基、1,3−ブタジイニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、3−メチル−1−ペンチニル基、4−メチル−1−ペンチニル基、1−メチル−2−ペンチニル基、4−メチル−2−ペンチニル基、1−メチル−3−ペンチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−メチル−4−ペンチニル基、2−メチル−4−ペンチニル基、3−メチル−4−ペンチニル基、2,4−ペンタジイニル基、1,4−ペンタジイニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、2,5−ヘキサジイニル基、3,5−ヘキサジイニル基、1−ヘプチニル基、2−ヘプチニル基、3−ヘプチニル基、4−ヘプチニル基、5−ヘプチニル基、6−ヘプチニル基、1−オクチニル基、2−オクチニル基、3−オクチニル基、4−オクチニル基、5−オクチニル基、6−オクチニル基、7−オクチニル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜6の低級アルキニル基である。
【0029】
「低級アルキル基」は、炭素数1〜4の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基であり、水酸基で置換されていてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ヒドロキシメチルエチル基などが挙げられる。
【0030】
「低級アルキレン基」は、炭素数1〜4の2価の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基であり、水酸基で置換されていてもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、ヒドロキシメチルエチレン基などが挙げられる。
【0031】
式(1)の4−オキソ脂肪族アルデヒドは、式(2)のフラン化合物を、不活性溶媒中もしくは無溶媒で、酸の存在下に、1価もしくは多価のアルコール[ROHまたはHO−R−OH]と反応させることにより式(3)および/または式(4)のアセタール化合物へと導き、次いで脱アセタール化を行うことにより合成することができる。
【0032】
アルキル側鎖(R)をもつ式(2)のフラン化合物としては、具体的には例えば、2−メチルフラン、2−エチルフラン、2−n−プロピルフラン、2−i−プロピルフラン、2−n−ブチルフラン、2−(2−メチルプロピル)フラン、2−(1−メチルプロピル)フラン、2−t−ブチルフラン、2−n−ペンチルフラン、2−(3−メチルブチル)フラン、2−(2−メチルブチル)フラン、2−(1−メチルブチル)フラン、2−(1−エチルプロピル)フラン、2−(1,1−ジメチルプロピル)フラン、2−(1,2−ジメチルプロピル)フラン、2−(2,2−ジメチルプロピル)フラン、2−n−ヘキシルフラン、2−(4−メチルペンチル)フラン、2−(3−メチルペンチル)フラン、2−(2−メチルペンチル)フラン、2−(1−メチルペンチル)フラン、2−(2−エチルブチル)フラン、2−(1−エチルブチル)フラン、2−(1,2−ジメチルブチル)フラン、2−(1,3−ジメチルブチル)フラン、2−(2,3−ジメチルブチル)フラン、2−(1,1−ジメチルブチル)フラン、2−(2,2−ジメチルブチル)フラン、2−(3,3−ジメチルブチル)フラン、2−(1−エチル−2−メチルプロピル)フラン、2−(1−エチル−2−メチルプロピル)フラン、2−(1,2,2−トリメチルプロピル)フラン、2−(1,1,2−トリメチルプロピル)フランなどが挙げられ、特
に、2−エチルフラン、2−n−ペンチルフランが好適である。また、アルケニルもしくはアルキニル側鎖(R)をもつ式(2)のフラン化合物としては、例えば、2−(3−ヘキセニル)フラン、2−(3−ヘキシニル)フランが挙げられる。
【0033】
また、上記1価もしくは多価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられ、特に、エチレングリコール、プロピレングリコールが好適である。これらアルコールは、式(2)のフラン化合物1モルあたり、通常1〜20当量、好ましくは3〜8当量の範囲内で使用することができる。
【0034】
上記反応に使用し得る溶媒としては、例えば、炭化水素(例:ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(例:ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられ、特に、トルエン、キシレンまたはこれらの混合溶媒が好適である。また、酸としては、無機酸、有機酸、ルイス酸、イオン交換樹脂など化学反応において一般に酸として用いられるものなら何でもよく、具体的には例えば、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジウム p−トルエンスルホン酸、トリフルオロボランなどが挙げられ、特に、塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロボランが好適である。これらの酸は通常触媒量で使用することができる。
【0035】
上記反応は、好ましくは還流条件で、通常1〜48時間、好ましくは4〜10時間程度行うことができる。
【0036】
かくして、用いる反応条件に依存して、式(3)または式(4)のアセタール化合物が単独で、あるいは式(3)の化合物および式(4)のアセタール化合物が混合物の形態で得られる。これらの化合物は単独であっても混合物であっても問題なく次の反応に用いることができる。かかるアセタール化合物の好適例としては、下記式(6)
【0037】
【化8】

【0038】
または下記式(7)
【0039】
【化9】

【0040】
[式中、Rは前記と同義である]
で表される化合物が挙げられ、これらの化合物は下記式(8)
【0041】
【化10】

【0042】
または下記式(9)
【0043】
【化11】

【0044】
[式中、Rは前記と同義である]
で表される化合物を含むことができる。
【0045】
化合物式(3)および/または式(4)の化合物の脱アセタール化は、文献(例えば、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,GREENE WUTS,p317−322参照)に記載されているような通常用いられる脱アセタール化の反応条件下で実施することができ、例えば、酸触媒を用いたアセタール交換反応(例えば、ピリジウム p−トルエンスルホン酸−アセトン−水、p−トルエンスルホン酸−アセトン、ホルムアルデヒド−塩酸などとの反応)、酸触媒による加水分解(例えば、塩酸−テトラヒドロフラン、酢酸−水、過塩素酸−水などとの反応)、または酸化(DDQ−アセトニトリル−水などとの反応)などにより行うことができる。
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0047】
実施例1
下記の一連の反応式に従って式(13)の4−オキソヘキサナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0048】
【化12】

【0049】
工程1:式(11)のアセタールの合成
2Lフラスコに、式(10)の2−エチルフラン100.0g(1.04mol)、エチレングリコール322.8g(5.20mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物9.9g(0.00521mol)、ハイドロキノン2.3g(0.00213mol)およびトルエン1000mLを仕込み、脱水しながら7時間還流した。室温まで冷却した後、飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え撹拌した。有機層を分離し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、減圧濃縮を行った。得られた残渣を減圧下蒸留(〜100℃/0.1kPa)し、式(11)のアセタール67.3g(0.333mol,収率32%,式(12)のアセタールを5.5%含有)を得た。
【0050】
工程2:式(13)の4−オキソヘキサナールの合成
200mLフラスコに、式(11)のアセタール20.0g(98.9mmol)、35%ホルムアルデヒド水溶液50.0g(585mmol)および0.2N HCl水溶液10.0gを仕込み、50℃で1.5時間撹拌した。反応溶液を5℃まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および塩を加え撹拌した。酢酸エチルで抽出し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮を行った。得られた残渣を減圧下蒸留(〜69℃/0.6kPa)し、式(13)の4−オキソヘキサナール7.0g(61.3mmol,収率62%)を得た。
【0051】
実施例2
下記の一連の反応式に従って式(17)の4−オキソノナナールを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0052】
【化13】

【0053】
工程1:式(15)のアセタールの合成
2Lフラスコに、式(14)の2−ペンチルフラン22.4g(0.162mol)、エチレングリコール50.3g(0.810mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物1.5g(7.89mmol)、ハイドロキノン0.35g(3.23mmol)およびトルエン220mLを仕込み、脱水しながら10.5時間還流した。室温まで冷却した後、飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え撹拌した。有機層を分離し、水で洗浄して、減圧濃縮を行った。得られた残渣を減圧下蒸留(〜124℃/0.2kPa)し、式(15)のアセタール13.5g(0.0553mol,収率34%,式(16)のアセタールを3.3%含有)を得た。
【0054】
工程2:式(17)の4−オキソノナナールの合成
100mLフラスコに、式(15)のアセタール10.0g(40.9mmol)、35%ホルムアルデヒド水溶液31.5g(368mmol)および0.2N HCl水溶液12.6gを仕込み、60℃で3.5時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え撹拌した。酢酸エチルで抽出し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮を行った。得られた残渣を減圧下蒸留(〜81℃/0.2kPa)し、式(17)の4−オキソノナナール4.7g(30.1mmol,収率74%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を示す]
で表されるフラン化合物を、酸の存在下に、アルコール[ROHまたはHO−R−OH]と反応させ、得られる下記式(3)
【化2】

および/または下記式(4)
【化3】

[式中、Rは前記と同義であり、複数個のRは同一もしくは相異なり、それぞれ、低級アルキル基を示すか、または2個のORは一緒になって下記式(5)
【化4】

を形成してもよく、Rは水酸基で置換されていてもよい低級アルキレン基を示す]
で表されるアセタール化合物を脱アセタール化することを特徴とする下記式(1)
【化5】

[式中、Rは前記と同義である]
で表される4−オキソ脂肪族アルデヒドの製造方法。
【請求項2】
がエチルまたはペンチルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(3)のアセタール化合物が下記式(6)
【化6】

または下記式(7)
【化7】

[式中、Rは請求項1におけると同義である]
で表される化合物である請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2011−12038(P2011−12038A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159889(P2009−159889)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】