説明

4−スルフィニル−ピラゾール誘導体の調製方法

本発明は、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)およびマンガン(II)の水酸化物、酸化物、硫酸塩、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩から選択される触媒の存在下での、トリフルオロ過酢酸およびトリクロロ過酢酸から選択される酸化剤を用いた、式(II)の化合物の酸化による、式(I)(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、ニトロ、シアノ、およびペンタフルオロチオから選択され;R6は、C1〜C4-アルキル、またはC1〜C4-ハロアルキルである)の化合物の新規調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

【0002】
[式中、
R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、ニトロ、シアノ、およびペンタフルオロチオから選択され;
R6は、C1〜C4-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルである]
の化合物の新規調製方法に関し、該方法は、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)およびマンガン(II)の水酸化物、酸化物、硫酸塩、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩から選択される触媒の存在下での、トリフルオロ過酢酸およびトリクロロ過酢酸から選択される酸化剤を用いた、式(II):
【化2】

【0003】
[式中、
R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、式(I)の化合物について定義した通りである]
の化合物の酸化による。
【背景技術】
【0004】
式(I)の4-スルフィニル-ピラゾール誘導体は、重要な農薬である。特に重要な4-スルフィニル-ピラゾール誘導体は、フィプロニルおよびエチプロールである。
【0005】
対応するアルキルチオ化合物、アルケニルチオ化合物もしくはアルキニルチオ化合物からの硫黄元素の酸化による、スルフィニル基またはスルホニル基を担持する一部のフェニルピラゾールの調製は、一般的に、EP-A1 295177に示されている。考えられる酸化剤として、ジクロロメタン、クロロホルム、トリフルオロ酢酸などの溶媒中の過酸化水素、トリフルオロ酢酸無水物および過酸化水素から現場形成されたトリフルオロ過酢酸、トリフルオロ過酢酸無水物または好ましくは3-クロロ過安息香酸が言及されている。あるいは、メタノールもしくは水などの溶媒中の過硫酸水素カリウムまたはカロ酸のカリウム塩が、酸化剤として示されている。
【0006】
多数の文献が、式(I)の化合物、特にフィプロニルの調製のために、式(II)の化合物の酸化を論じている。
【0007】
IPCOM000156770Dには、溶媒としてのジクロロメタン中で、かつトリフルオロ酢酸の存在下での過酸化水素を用いた式(II)の化合物の酸化が記載されている。CN 101250158Aでは、不活性溶媒(モノクロロベンゼン、クロロホルム)中での過酸化水素および硫酸を用いた式(II)の化合物の触媒酸化が言及されているが、触媒の構造は特定されていない。同様に、ジクロロメタン中での過酸化水素を用いた式(II)の化合物の触媒酸化がShanghai Chemical Industry 2007, 7 (32), 17に言及されているが、触媒の構造についての詳細は示されていない。
【0008】
CN 101168529Aには、触媒としての三塩化ルテニウムの存在下でのイオン性液体とアセトニトリルとの溶媒混合物中でのトリクロロイソシアン酸を用いた式(II)の化合物の酸化が教示されている。同様に、Journal of Fluorine Chemistry 2006, 127, 948には、溶媒としてのジクロロメタン中でのトリクロロイソシアン酸を用いた式(II)の化合物の酸化が言及されている。
【0009】
WO 2007/122440には、ジクロロ酢酸またはジクロロメタン中でのトリクロロ酢酸/過酸化水素を用いた式(II)の化合物の酸化が教示されている。
【0010】
WO 2009/077853には、式(II)の化合物の酸化のための多数の薬剤が列挙されている:トリフルオロ酢酸およびオキソン;エタノール中のトリフルオロメタンスルホン酸無水物および過酸化水素;アセトニトリル中のシクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシド、ヨウ化ナトリウムおよび過酸化水素;ジクロロメタン中の臭化セリウムアンモニウム(cerammoniumbromide)、臭素酸ナトリウムおよびシリカゲル;ならびにメタノール中の過酸化水素および触媒量のHAuCl4。
【0011】
式(I)の化合物を得るための上記の式(II)の化合物の酸化方法は、完全に満足のいくものではない。好適な大規模酸化法に対する基準は、以下の通りである:(1)式(I)のスルホキシド生成物への高選択的な酸化(すなわち、少量のスルホン副生成物が生成され、式(I)の化合物のS(=O)R6基がS(=O)2R6基に過酸化される);(2)式(I)の化合物の高収率;(3)酸化中のフッ化水素の現場形成による腐食の阻害;(4)高い酸化反応速度(生産性を決定する)。現在までに、課題(1)、(2)および(3)を解決するための群を抜いて適切な組み合わせがWO01/30760に議論されており、この文献には、腐食阻害化合物の存在下でのトリフルオロ過酢酸を用いた式(II)の化合物の酸化が記載されている。しかしながら、生産性を規定するその方法についての反応速度は、大規模技術法に望ましいほど十分に大きくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP-A1 295177
【特許文献2】CN 101250158A
【特許文献3】CN 101168529A
【特許文献4】WO 2007/122440
【特許文献5】WO 2009/077853
【特許文献6】WO 01/30760
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】IPCOM000156770D
【非特許文献2】Shanghai Chemical Industry 2007, 7 (32), 17
【非特許文献3】Journal of Fluorine Chemistry 2006, 127, 948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、化合物(II)から化合物(I)への新規かつ改善された酸化法を提供することが、本発明の課題であった。具体的には、改善された(より高い)反応速度を有する化合物(II)から化合物(I)への新規かつ改善された酸化法を提供することが課題であった。好ましい実施形態では、反応生成物から触媒が容易に除去できる(例えば、水洗により)、化合物(II)から化合物(I)への新規かつ改善された触媒酸化法を提供することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
それゆえに、最初に定義した本発明の方法が見出された。驚くべきことに、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、亜鉛およびマンガンの水酸化物、酸化物、硫酸塩、酢酸塩またはトルフルオロ酢酸塩から選択される化合物の添加が、反応速度を顕著に上昇させ、それにより生産性(時間当たりに生成される生成物)を増大させた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ブテンフィプロニル(化合物III)の調製のための中間化合物としてフィプロニルを調製するために用いることができる。ブテンフィプロニルは、CN 3198515に記載されている通り、フィプロニルのアルキル化により得られる。
【化3】

【0017】
置換基は、以下の意味を有する:
ハロゲンとの用語は、それぞれの場合で、フッ素、臭素、塩素またはヨウ素、特にフッ素、塩素または臭素、好ましくは塩素またはフッ素を表す。
【0018】
本明細書中で用いる場合、「C1〜C4-アルキル」との用語は、1〜4個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐鎖炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、および1,1-ジメチルエチルを意味する。
【0019】
本明細書中で用いる場合、「C1〜C4-ハロアルキル」との用語は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和アルキル基(上記の通り)であって、これらの基の水素原子の一部またはすべてが、上記の通りのハロゲン原子により置き換えられていてもよいものを意味し、例えば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチルなどである。
【0020】
本明細書中で用いる場合、「C1〜C4-アルコキシ」との用語は、酸素原子を介して結合している1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和アルキル基(上記の通り)を意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、OCH2-C2H5、OCH(CH3)2、n-ブトキシ、OCH(CH3)-C2H5、OCH2-CH(CH3)2、およびOC(CH3)3が挙げられる。
【0021】
本明細書中で用いる場合、「C1〜C4-ハロアルコキシ」との用語は、水素原子が、フッ素、塩素、臭素および/もしくはヨウ素により部分的または完全に置換されている、上記のC1〜C4-アルコキシ基を意味し、すなわち、例えば、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2-ブロモエトキシ、2-ヨードエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2-フルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、2,2-ジクロロ-2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、2-フルオロプロポキシ、3-フルオロプロポキシ、2,2-ジフルオロプロポキシ、2,3-ジフルオロプロポキシ、2-クロロプロポキシ、3-クロロプロポキシ、2,3-ジクロロプロポキシ、2-ブロモプロポキシ、3-ブロモプロポキシ、3,3,3-トリフルオロプロポキシ、3,3,3-トリクロロプロポキシ、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエトキシ、1-(クロロメチル)-2-クロロエトキシ、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエトキシ、4-フルオロブトキシ、4-クロロブトキシ、4-ブロモブトキシ、ノナフルオロブトキシ、特に、クロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシまたは2,2,2-トリフルオロエトキシである。
【0022】
本発明の方法に関して、式(I)および(II)の化合物の置換基は、好ましくは、以下の意味を有する:
R1およびR5は、好ましくはハロゲンおよびC1〜C4-ハロアルキルから選択され、さらにより好ましくは塩素、フッ素およびトリフルオロメチルから選択され、最も好ましくは塩素から選択される。
【0023】
R2およびR4は、好ましくは水素である。
【0024】
R3は、好ましくは、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキルまたはペンタフルオロチオ、さらにより好ましくはC1〜C4-ハロアルキル、最も好ましくはトリフルオロメチルである。
【0025】
R6は、好ましくは、エチルまたはトリフルオロメチルである。
【0026】
R6は、好ましくは、エチルである。
【0027】
R6は、最も好ましくは、トリフルオロメチルである。
【0028】
最も好ましくは、式(I)および(II)の化合物の置換基は、以下の意味を有する:
R1およびR5は塩素であり;
R2およびR4は水素であり;
R3はトリフルオロメチルであり;
R6はエチルまたはトリフルオロメチル、好ましくはトリフルオロメチルである。
【0029】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、スキームIの化合物I-1またはI-2を調製するために用いられる。
【化4】

【0030】
最も好ましくは、本発明の方法は、フィプロニルを調製するために用いられる。
【0031】
式(II)の化合物は、WO 01/30760、WO 05/44806、およびEP-A1 295 117などの文献に記載された手順に従って得ることができる。
【0032】
好適な酸化剤は、トリフルオロ過酢酸(例えば、トリフルオロ酢酸および過酸化水素から現場形成される)またはトリクロロ過酢酸(例えば、トリクロロ酢酸および過酸化水素から現場形成される)である。トリフルオロ過酢酸が好ましい。最も好ましくは、トリフルオロ酢酸および過酸化水素から現場形成されたトリフルオロ過酢酸を用いる。過酸化水素は、一般的に、50%w/w水溶液として用いられ、一般的に、式(II)の化合物に対して、約1.0〜約2.0当量、好ましくは約1.2〜1.6当量、より好ましくは約1.30〜1.45当量、さらにより好ましくは約1.35〜1.40当量である。
【0033】
好ましくは、本発明の方法は、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸とモノクロロベンゼンとの混合物またはトリフルオロ酢酸とジクロロメタンとの混合物、およびトリクロロ酢酸と融点降下剤(モノクロロベンゼン、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジクロロエタン、およびジクロロメタンなど)との混合物から選択される溶媒中で行なう。
【0034】
トリクロロ酢酸と融点降下剤との混合物を用いる場合、融点降下剤は、一般的に、トリクロロ酢酸の20%〜30%w/wで用いられる。好ましくは、式(II)の化合物1モル当たり、1.0〜2.0リットルのトリクロロ酢酸を用いる。
【0035】
好ましい溶媒は、トリフルオロ酢酸である。好ましくは、化合物(II)の用いるモル量に対して、約10〜約20モルのトリフルオロ酢酸を用い、より好ましくは、約14〜16モル当量、最も好ましくは約15.2〜15.8モル当量を用いる。
【0036】
本発明の好ましい態様では、溶媒としてトリフルオロ酢酸を用い、反応の完了時に反応混合物にモノクロロベンゼンを添加し、続いて共沸蒸留によりトリフルオロ酢酸を除去する。
【0037】
触媒は、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)およびマンガン(II)の水酸化物、酸化物、硫酸塩、酢酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩から選択される。
【0038】
例は、以下のものである:LiOH(水酸化リチウム)、Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)、Ca(OH)2(水酸化カルシウム)、Sr(OH)2(水酸化ストロンチウム)、Ba(OH)2(水酸化バリウム)、Mn(OH)2(水酸化マンガン(II))、MgOH(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)、BaO(酸化バリウム)、TiO2(二酸化チタン)、ZnO(酸化亜鉛(II))、MnO(酸化マンガン(II))、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸バリウム、トリフルオロ酢酸ストロンチウム、トリフルオロ酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸亜鉛、硫酸マンガン。
【0039】
市販されている上記のリストの触媒が好ましい。
【0040】
金属カチオンは、好ましくは、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)、およびマンガン(II)のカチオンから選択され、最も好ましくは、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよび亜鉛(II)から選択される。特に好ましいカチオンは、亜鉛(II)である。
【0041】
好ましい触媒は、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムの水酸化物、ならびにカルシウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)、およびマンガン(II)の酸化物から選択される。
【0042】
リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウム、特に、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムの水酸化物が好ましい。
【0043】
カルシウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)、およびマンガン(II)の酸化物が好ましい。最も好ましい触媒は、ZnOおよびCaOである。ZnOが特に好ましい、また、CaOも特に好ましい。
【0044】
カルシウムおよび亜鉛(II)のトリフルオロ酢酸塩、特にカルシウムのトリフルオロ酢酸塩が好ましい。
【0045】
カルシウムおよび亜鉛(II)の酢酸塩、特にカルシウムの酢酸塩も好ましい。
【0046】
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、および亜鉛(II)、特にカルシウム、ストロンチウム、およびバリウムの硫酸塩が好ましい。
【0047】
本発明の方法は、ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸塩、およびシリカから選択されるフッ素腐食阻害剤、好ましくはホウ酸の存在下で行なうことができる。溶媒としてトリフルオロ酢酸を用いる場合、本発明の方法を、フッ素腐食阻害剤の存在下で行なうことが有利である。用いる腐食阻害化合物の量は、一般的に、式(II)の化合物に対して約0.01〜0.99モル当量、好ましくは約0.01〜0.2モル当量、より好ましくは約0.03〜0.15モル当量、最も好ましくは約0.06〜0.1モル当量である。
【0048】
本発明の方法は、好ましくは、-40℃〜80℃、より好ましくは0℃〜60℃、さらにより好ましくは10℃〜30℃、さらにより好ましくは10℃〜20℃の温度で行なう。最も好ましくは、本発明の方法は、10℃〜15℃、有利には12℃で行なう。
【0049】
反応速度は温度に依存し、反応速度の上昇の好ましい効果は、温度範囲全体にわたって観察することができる。本発明の方法に従って(すなわち、触媒の存在下で)実施した場合、反応速度は、触媒の添加なしに同じ温度で実施した反応の速度よりも大きい。
【0050】
酸化反応が完了したと判断した場合、好ましくは、二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、または等価な試薬で反応をクエンチする。溶媒としてトリフルオロ酢酸を用いた場合、好ましくは、モノクロロベンゼンの添加およびそれに続く減圧下での共沸蒸留により、これを除去する。好ましい実施形態では、エタノール、メタノールまたはイソプロパノールなどのアルコールを残渣に添加し、溶液が形成されるまで約80℃に加温し、続いて約40℃まで冷却すると、式(I)の化合物が結晶化する。
【0051】
単離された式(I)の化合物は、必要であれば、クロマトグラフィー、再結晶化などの技術により精製することができる。粗生成物の精製はまた、活性炭もしくはシリカを用いた濾過または水洗により実現することもできる。
【0052】
式(I)の化合物(エチプロールまたはフィプロニルなど、好ましくはフィプロニル)の結晶化は、典型的には、クロロ、フルオロ、シアノ、ニトロ、C1〜C8-アルキル、またはC1〜C8-ハロアルキルなどの非反応性置換基を有する好ましくは芳香族の非極性不活性溶媒中の溶液から行ない、特に、ベンゼン、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、スチレン、i-プロピルベンゼン、n-プロピルベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエン、tert.-ブチルベンゼン、sec.-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、2-ニトロトルエン、3-ニトロトルエン、4-ニトロトルエン、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、メシチレン、トリフルオロメチルベンゼン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、またはtert-ブタノールなど)、またはそれらの混合物中の溶液から行ない、好ましくはモノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、エチルベンゼンまたはトルエン中の溶液から行なう。
【0053】
好ましくは、結晶化は、モノクロロベンゼンから行なう。
【0054】
好ましくは、結晶化は、ジクロロベンゼンから行なう。
【0055】
好ましくは、結晶化は、エチルベンゼンから行なう。
【0056】
好ましくは、結晶化は、トルエンから行なう。
【0057】
約1〜30%の極性溶媒を添加することが有利である場合があり、極性溶媒とは、ケトン、アミド、アルコール、エステルまたはエーテルなど、好ましくはエステル、ケトンまたはエーテルであり、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタン-2-オン、ジエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、3-メチル-ブタン-2-オン、tert-ブチル-メチル-ケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸N-ブチル、酢酸イソブチル、炭酸ジエチル、酢酸2-ブトキシエチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、ニトロエタン、水、エタノール、メタノール、プロパン-1-オール、プロパン-2-オール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、tert-ブタノール、2-メチル-プロパン-1-オール、2-メチル-プロパン-2-オール、ペンタン-3-オール、2-メチルブタン-1-オール、3-メチルブタン-1-オール、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、シクロヘキサノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert.-ブチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、またはそれらの混合物などである。
【実施例】
【0058】
反応は、以下の実施例1、2および比較実施例に記載した手順に従って行なった。すべてのケースで、HPLCにより反応速度を測定し、出発物質から所望のスルホキシドへの変換をモニタリングした。HPLCにより、>97%のスルフィド量および>2%のスルホン量が検出された際に、反応の終了を決定した。
【0059】
HPLCは、Chromolith RP18e、100×3mmカラム(Merck)を装着したHewlett Packard HP 1050, Chemstationを用いて行なった。溶離液:450mL水+330mLアセトニトリル+220mL MeOH+1mLリン酸、流速:1.0ml/分、検出:220nm。
【0060】
各実験を、2回行なった。実施例1および2に記載された手順を用いて、それぞれの改変により異なる触媒および/または異なるモル当量の触媒を用いたさらなる調製実験を行なった。実験の結果を、下記の表Iに列記する。
【0061】
実施例1:触媒としてのZnOの存在下でのフィプロニルの調製
10〜12℃でZnO(4.9g、0.06mol)の存在下でのトリフルオロ酢酸(443.4g、3.89mol)中の過酸化水素の50%w/w水溶液(23.6g、0.35mol)を用いた5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルチオピラゾール(105.3g、0.25mol)の酸化により、フィプロニルを得た。4時間後の反応完了後に(HPLC分析により>97%の変換率)、SO2を用いて反応をクエンチし、その後、モノクロロベンゼンを添加し、減圧下での共沸蒸留により、トリフルオロ酢酸を除去した。残渣を、モノクロロベンゼン/エタノールから結晶化した。減圧下での蒸留によりエタノールを除去し、懸濁液を10℃で濾過した。モノクロロベンゼン、エタノール/水および水での洗浄、ならびに続く真空下での乾燥により、フィプロニルが無色固体として得られた(96〜97g、HPLCにより純度>95重量%)。
【0062】
実施例2:触媒としてのZnOの存在下かつ腐食阻害剤添加でのフィプロニルの調製
10〜12℃でホウ酸(1.3g、0.02mol)およびZnO(4.9g、0.06mol)の存在下でのトリフルオロ酢酸(443.4g、3.89mol)中の過酸化水素の50%w/w水溶液(23.6g、0.35mol)を用いた5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルチオピラゾール(105.3g、0.25mol)の酸化により、フィプロニルを得た。4時間後の反応完了後に(HPLC分析により>97%の変換率)、SO2を用いて反応をクエンチし、その後、モノクロロベンゼンを添加し、減圧下での共沸蒸留により、トリフルオロ酢酸を除去した。残渣を、モノクロロベンゼン/エタノールから結晶化した。減圧下での蒸留によりエタノールを除去し、懸濁液を10℃で濾過した。モノクロロベンゼン、エタノール/水および水での洗浄、ならびに続く真空下での乾燥により、フィプロニルが無色固体として得られた(94〜96g、HPLCにより純度>95重量%)。
【0063】
比較実施例:触媒添加なしでのフィプロニルの調製
触媒を添加せずに、実施例2について記載した通りに、反応を行なった。反応は6.5時間以内に完了した(HPLC分析により変換率97%超)。フィプロニルが、無色固体として得られた(96〜97g、HPLCにより純度>95重量%)。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、ニトロ、シアノ、およびペンタフルオロチオから選択され;
R6は、C1〜C4-アルキル、またはC1〜C4-ハロアルキルである]
の化合物の調製方法であって、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)およびマンガン(II)の水酸化物、酸化物、硫酸塩、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩から選択される触媒の存在下での、トリフルオロ過酢酸およびトリクロロ過酢酸から選択される酸化剤を用いた、式(II):
【化2】

[式中、
R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、式(I)の化合物について定義した通りである]
の化合物の酸化による、上記方法。
【請求項2】
R1およびR5が塩素であり、R2およびR4が水素であり、R3がトリフルオロメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R6がトリフルオロメチルまたはエチルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸とモノクロロベンゼンとの混合物またはトリフルオロ酢酸とジクロロメタンとの混合物、ならびにトリクロロ酢酸とモノクロロベンゼン、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジクロロエタン、およびジクロロメタンなどの融点降下剤との混合物から選択される溶媒中で行なわれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
溶媒としてのトリフルオロ酢酸中で行なわれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属カチオンが、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)、およびマンガン(II)のカチオンから選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムの水酸化物、ならびにカルシウム、バリウム、チタン(IV)、亜鉛(II)、およびマンガン(II)の酸化物の群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
触媒が、ZnOまたはCaOである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸塩、およびシリカから選択されるフッ素腐食阻害剤の存在下で行なわれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
0℃〜40℃の温度で行なわれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−509372(P2013−509372A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535787(P2012−535787)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066162
【国際公開番号】WO2011/051284
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】