説明

4−置換テトラヒドロピランの製造方法

【課題】温和な条件下、簡便な方法によって、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸から4-置換テトラヒドロピランを高収率で製造出来る製造方法の提供。
【解決手段】一般式(1)


(式中、Rは、シアノ基又はカルボキシル基を示す。)で示される4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸と有機塩基とを反応させることを特徴とする、式(2)


(式中、Rは、前記と同義である。)で示される4-置換テトラヒドロピランの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸から4-置換テトラヒドロピランを製造する方法に関する。4-置換テトラヒドロピラン(4-シアノテトラヒドロピラン、テトラヒドロピラン-4-カルボン酸)は、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸から4-置換テトラヒドロピランを製造する方法としては、例えば、4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸を180〜200℃に加熱して、単離収率66%で4-シアノテトラヒドロピランを得る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、テトラヒドロピラン-4,4-ジカルボン酸を180℃に加熱して、単離収率85%でテトラヒドロピラン-4-カルボン酸を得る方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、上記いずれの方法においても高い反応温度が必要である上に、収率が低く、4-置換テトラヒドロピランの工業的な製法としては満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.,,2525(1930)
【非特許文献2】Helv.Chim.Acta.,80,1528(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、温和な条件下、簡便な方法によって、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸から4-置換テトラヒドロピランを高収率で製造出来る、工業的に好適な4-置換テトラヒドロピランの製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、温和な条件下、簡便な方法によって、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸から4-置換テトラヒドロピランを高収率で製造出来る、工業的に好適な4-置換テトラヒドロピランの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは、シアノ基又はカルボキシル基を示す。)
で示される4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸と有機アミンとを反応させることを特徴とする、式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは、前記と同義である。)
で示される4-置換テトラヒドロピランの製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、温和な条件下、簡便な方法によって、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸から4-置換テトラヒドロピランを高収率で製造出来る、工業的に好適な4-置換テトラヒドロピランの製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の反応において使用する4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Rは、シアノ基又はカルボキシル基を示す。
【0013】
本発明の反応において使用する有機塩基とは、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジシクロヘプチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリイソペンチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、ジイソヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリイソヘキシルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジイソヘプチルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリイソヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリイソオクチルアミン、ジ-n-ノニルアミン、ジイソノニルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリイソノニルアミン、ジ-n-デシルアミン、ジイソデシルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリイソデシルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、ジアザジシクロ[2,2,2]オクタン等のアルキルアミン類;メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン等のベンジルアミン類;メチルアニリン、ジメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン等のアニリン類;ピリジン、メチルピリジン、ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;キノリン、イソキノリン等のキノリン類が挙げられるが、好ましくはアルキルアミン類、更に好ましくはトリエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミンが使用される。なお、これらの有機塩基は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0014】
前記有機塩基の使用量は、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸1gに対して、好ましくは0.01〜100ml、更に好ましくは0.05〜50ml、特に好ましくは0.1〜5.0mlである。
【0015】
本発明の反応は溶媒中の存在下又は非存在下にて行われる。使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;N,N'-ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコール類;ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、シクロプロピルメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類が挙げられるが、好ましくはアミド類、スルホキシド類、或いはそれらと芳香族炭化水素類又は酢酸エステル類との混合溶媒、更に好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N'-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、或いはそれらとトルエン、酢酸エチル又は酢酸ブチル、水との混合溶媒が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0016】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸1gに対して、好ましくは0〜100ml、更に好ましくは0〜50ml、特に好ましくは0〜10mlである。
【0017】
本発明の反応は、例えば、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸、有機塩基及び溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは50〜150℃、更に好ましくは80〜130℃であり、反応圧力は特に制限されない。なお、最終生成物である4-置換テトラヒドロピランは、例えば、反応終了後、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0018】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0019】
実施例1(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mlのガラス製フラスコに、4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸1.0g(6.445mmol)、トリ-n-ブチルアミン1.0ml及びN,N-ジメチルホルムアミド2.0mlを加え、攪拌しながら120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.702g生成していた(反応収率;97.9%)。
【0020】
実施例2(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mlのガラス製フラスコに、4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸1.0g(6.445mmol)、ジ-n-ブチルアミン1.0ml及びN,N-ジメチルホルムアミド2.0mlを加え、攪拌しながら120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.653g生成していた(反応収率;91.2%)。
【0021】
実施例3(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mlのガラス製フラスコに、4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸1.0g(6.445mmol)、ジ-n-ブチルアミン1.0ml及びN,N-ジメチルホルムアミド2.0mlを加え、攪拌しながら120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.645g生成していた(反応収率;90.0%)。
【0022】
実施例4(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mLのガラス製フラスコに、4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸1.0g(6.445mmol)及びトリ-n-ブチルアミン5.0mlを加え、攪拌しながら120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.642g生成していた(反応収率;89.6%)。
【0023】
実施例5(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mlのガラス製フラスコに、4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸1.0g(6.445mmol)及びトリ-n-オクチルアミン5.0mlを加え、攪拌しながら120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.688g生成していた(反応収率;96.0%)。
【0024】
実施例6(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mlのガラス製フラスコに、4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸1.0g(6.445mmol)、ピリジン1.0ml及びN,N-ジメチルホルムアミド2.0mlを加え、攪拌しながら120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.454g生成していた(反応収率;63.4%)。
【0025】
実施例7(テトラヒドロピラン-4-カルボン酸の合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mlのガラス製フラスコに、テトラヒドロピラン-4,4-ジカルボン酸0.50g(2.871mmol)及びトリ-n-ブチルアミン1.5mlを加え、攪拌しながら100℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、テトラヒドロピラン-4-カルボン酸が0.304g生成していた(反応収率;81.4%)。
【0026】
実施例8(テトラヒドロピラン-4-カルボン酸の合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積25mlのガラス製フラスコに、テトラヒドロピラン-4,4-ジカルボン酸0.50g(2.871mmol)、トリ-n-オクチルアミン0.5ml及びN,N-ジメチルホルムアミド1.0mlを加え、攪拌しながら100℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、テトラヒドロピラン-4-カルボン酸が0.315g生成していた(反応収率;84.2%)。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸から4-置換テトラヒドロピランを製造する方法に関する。4-置換テトラヒドロピラン(4-シアノテトラヒドロピラン、テトラヒドロピラン-4-カルボン酸)は、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、シアノ基又はカルボキシル基を示す。)
で示される4-置換テトラヒドロピラン-4-カルボン酸と有機塩基とを反応させることを特徴とする、式(2)
【化2】

(式中、Rは、前記と同義である。)
で示される4-置換テトラヒドロピランの製造方法。

【公開番号】特開2012−82211(P2012−82211A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269650(P2011−269650)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2006−56196(P2006−56196)の分割
【原出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】