説明

4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法

【課題】本発明は、工業的に極めて有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールのメタノール付加物をメタノール溶媒中に溶解した溶液を水中に滴下する工程を含むことにより課題が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールは、例えば、レゾルシンおよびシクロヘキサノンをメタノールあるいは酢酸エチル等の溶媒の存在下で反応させ製造されることは公知である(特許文献1〜3)。
【0003】
反応後に、得られた4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールは、使用された溶媒、例えば、メタノールあるいは酢酸エチルとの付加物として分離する。この付加物からメタノールあるいは酢酸エチルといった付加物の成分類を分離する方法としては、通常、減圧下に、メタノールあるいは酢酸エチル等の成分類を分離し留去させる方法が用いられる。しかし、この方法では減圧下、長時間を要すること、メタノールあるいは酢酸エチル等の成分類の分離が不十分で包接率が30%以上となる場合があり、目的物中の成分類を一定値以下に保てない等の欠点を有している。メタノールとの1:1付加物の場合、包接率が24%以下であればメタノール含有量が2%以下となって、工業的な用途において求められているレベルに達することができるため、より工業的に有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得られる製造方法の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開平08−169937号公報
【特許文献2】特開平08−269039号公報
【特許文献3】WO9212205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、工業的に極めて有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等はこれらの欠点を解決するために鋭意検討した結果、レゾルシンおよびシクロヘキサノンから得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法において、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールとの付加物をメタノール溶媒中に溶解した溶液を水中に滴下する工程を含むことにより、メタノールの除去が容易になり工業的に有利に包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールが得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールを工業的に有利に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明はレゾルシンおよびシクロヘキサノンから得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法に関するものであり、該方法は4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールとの付加物をメタノール溶媒中に溶解した溶液を水中に滴下する工程を含むことを特徴としている。
【0009】
本発明において4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールとの付加物をメタノール溶媒中に溶解した溶液を水中に滴下、晶析し、ろ過することにより結晶を得る。得られた結晶物はメタノールの付加物であり、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール1モル当たり0.7〜2.15モルのメタノールを含有している。付加物は好適には4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールが約1:1付加物の形状である。
【0010】
ろ過により取り出した付加物は、通常、20〜100μmの結晶形をしている。これに対し、当該付加物をメタノールに溶解した溶液に水を滴下し、晶析することにより得られる結晶物の結晶形は、通常、200〜300μmの結晶形をしている。しかし、これらの結晶の乾燥に要する時間は、本発明の製造法により得た当該化合物の乾燥時間の方が大幅に短く、メタノール溶媒中に水を滴下し、晶析し、取り出した当該化合物のおよそ3分の1時間と短時間で乾燥する事が出来る。
【0011】
本発明において、付加物の成分類の分離は、通常、付加物を取り出した後、減圧下、40〜100℃で加熱し、乾燥することによりメタノールが水とともに除去される。付加物の乾燥時の加熱温度は通常40〜100℃、好適には50〜90℃、さらに好適には、60〜90℃である。加熱温度が40℃未満であれば、乾燥に要する時間が長くなる傾向がある。100℃より高い温度で行った場合は熱劣化により不純物が増加するので好ましくない。
【0012】
本発明の晶析工程で用いられる水の量は、好適には4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール1モルに対し、15〜600モルで実施され、より好適には30〜100モル、さらに好適には40〜70モルである。この範囲であれば、乾燥効率が特段に向上する。水が15モル未満の場合収率が著しく低下する傾向がある。600モルを超えると容積効率が悪くなり工業的に不利になる。
【0013】
本発明において、乾燥は好ましくは水の存在下に減圧下で実施される。目的物を乾燥するために使用される乾燥機としては、通常、一般的な乾燥器、例えば、板乾燥器、撹拌乾燥器、パドル乾燥器などが使用される。
【0014】
本発明によれば、乾燥時間が大幅に短縮され、包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールが容易に得られ、工業的に極めて有利な方法となる。
【0015】
(実施例)
以下、実施例を挙げさらに本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書中、包接率は、以下の式で求められる。
包接率(%)=メタノールのモル量÷(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)のモル量×100
【実施例1】
【0016】
メタノール包接率100%の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール(水分:10重量%、包接化合物:90重量%)45.8gを、温度計、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗を付けた0.5リットル4つ口丸底フラスコに仕込み、メタノール123.0gを加えて60℃に昇温し溶解した。溶解液を80gのイオン交換水中に滴下して晶析、濾過後、結晶45.0gを得た。得られた結晶の水分は、11.6重量%で、包接率は90%であった。
この結晶を0.5リットルフラスコに仕込み、イオン交換水4.7gを加え、水分20重量%に調整。75℃で40kPaに減圧して、4時間乾燥し、さらに、2kPaに減圧し、同温度で4時間乾燥した。乾燥後の得量は37.2gであった。この乾燥ケーキ(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)の水分は0.3重量%で、この時のメタノールの包接率は3.5%であった。
【0017】
(比較例1)
メタノール包接率100%の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール(水分:10重量%、包接化合物:90重量%)45.8gを、温度計、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗を付けた0.5リットル4つ口丸底フラスコに仕込み、メタノール123.0gを加えて60℃に昇温し、溶解した。溶解液に80gのイオン交換水を滴下して晶析、濾過後、結晶45.0gを得た。得られた結晶の水分は11.6重量%で、包接率は90%であった。
この結晶を0.5 リットルフラスコに仕込み、イオン交換水4.7gを加え、水分20%に調整。75℃で40kPaに減圧して、4時間乾燥し、さらに、2kPaに減圧し、同温度で4時間乾燥した。乾燥後の得量は38.3gであった。この乾燥ケーキ(4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノール)の水分は0.3%で、この時のメタノールの包接率は40%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシンおよびシクロヘキサノンから得られる4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法において、4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールとの付加物をメタノール溶媒中に溶解した溶液を水中に滴下する工程を含むことを特徴とする包接率が24%以下の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法。
【請求項2】
4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールとメタノールとの付加物を水の存在下で乾燥することを特徴とする請求項1記載の4−[1’,2’,3’,4’,4’a,9’a−ヘキサヒドロ−6’−ヒドロキシスピロ(シクロヘキサン−1,9’−キサンテン)−4’a−イル]レゾルシノールの製造方法。

【公開番号】特開2009−149544(P2009−149544A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327637(P2007−327637)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】