説明

4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン化合物の製法

【課題】簡便な方法で製造でき、且つ高収率であり、工業的に好適な4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン化合物の製法の提供。
【解決手段】塩基(例えば、水酸化ナトリウム)とジカルボニル化合物(例えば、グリオキサール)とを混合した後、ジカルボニル化合物1モルに対して、0.8〜1.2モルの尿素化合物(例えば、1,3−ジメチル尿素)を添加して、混合液の液温を15〜45℃に保ちながら反応させる4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン化合物の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物を製造する方法に関する。4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物は、例えば、医薬・農薬等の合成原料や合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物を合成する方法としては、例えば、水酸化ナトリウムの存在下、グリオキサールと、グリオキサールに対して1.5倍モルの1,3-ジメチル尿素とを水中で反応させて、収率60〜70%で4,5-ジヒドロキシ-1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを製造する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、グリオキサールに対して過剰の1,3-ジメチル尿素が存在しているために、分子間反応等により目的物の収率が低下するという問題があった。
【0003】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,30,2179(1965)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、簡便方法にて、高収率で4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物を製造する、工業的に好適な4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物の製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、塩基と一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。)
で示されるジカルボニル化合物とを混合した後、ジカルボニル化合物1モルに対して、0.8〜1.2モルの一般式(2)
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R及びRは、同一又は異なっていても良く、水素原子又は炭化水素基を示す。)
で示される尿素化合物を添加して反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R、R及びRは、前記と同義である。)
で示される4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物の製法によって解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、簡便方法にて、高収率で4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物を製造する、工業的に好適な4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物の製法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の反応において使用するジカルボニル化合物は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Rは、水素原子又はアルキル基であり、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0014】
本発明の反応において使用する尿素化合物は、前記の一般式(2)で示される。その一般式(2)において、R及びRは、同一又は異なっていても良く、水素原子又は炭化水素基を示し、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数7〜12のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0015】
本発明の反応おいて使用する尿素の量は、ジカルボニル化合物1モルに対して、好ましくは0.8〜1.2モル、更に好ましくは0.9〜1.1モルである。
【0016】
本発明の反応おいて使用する塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等の有機塩基が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシドが使用される。なお、これらの塩基は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0017】
前記塩基の使用量は、反応液のpHを、好ましくは7〜14、更に好ましくは8〜13に調整出来る量ならば特に制限されない。
【0018】
本発明の反応は、溶媒の存在下で行うのが望ましく、使用される溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に制限されないが、例えば、水;メタノール、エタノールイソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;1,3-ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、好ましくは水、アルコール類、芳香族炭化水素類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0019】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、尿素化合物1gに対して、好ましくは1〜100g、更に好ましくは2〜50gである。
【0020】
本発明の反応は、例えば、塩基、ジカルボニル化合物及び溶媒を混合した後、ジカルボニル化合物1モルに対して0.8〜1.2モルの尿素化合物を添加して(必要ならば溶媒に溶解させて添加しても良い)、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜300℃、更に好ましくは20〜200℃であり、反応圧力は、特に制限されない。なお、液温を15〜45℃に保ちながら、混合液に尿素化合物を添加するのが好ましい。
【0021】
本発明の縮合反応おいて得られる4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物は、反応終了後、例えば、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、晶析、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0022】
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0023】
実施例1(4,5-ジヒドロキシ-1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンの合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容積1000mlのガラス製容器に、40質量%グリオキサール水溶液203g(1.40mol)及び4mol/l水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合液のpHを9とした。次いで、液温を30〜40℃に保ちながら、1,3-ジメチル尿素123g(1.40mol)を水60mlに溶解させた溶液をゆるやかに加えた後、攪拌しながら20〜30℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液に36質量%塩酸を加えて中和して反応液のpHを6.8とした後、ガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4,5-ジヒドロキシ-1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが193g生成していた(反応収率;94%)。
【0024】
比較例1(4,5-ジヒドロキシ-1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンの合成)
実施例1において、1,3-ジメチル尿素の量を184g(2.09mol)に変えて反応を行うと、4,5-ジヒドロキシ-1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが反応収率60〜70%で得られる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物を製造する方法に関する。4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物は、例えば、医薬・農薬等の合成原料や合成中間体として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基と一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。)
で示されるジカルボニル化合物とを混合した後、ジカルボニル化合物1モルに対して、0.8〜1.2モルの一般式(2)
【化2】

(式中、R及びRは、同一又は異なっていても良く、水素原子又は炭化水素基を示す。)
で示される尿素化合物を添加して反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化3】

(式中、R、R及びRは、前記と同義である。)
で示される4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物の製法。
【請求項2】
混合液の液温を15〜45℃に保ちながら尿素化合物を添加する請求項1記載の4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン化合物の製法。

【公開番号】特開2007−186475(P2007−186475A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7858(P2006−7858)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)