説明

5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶及びその製造方法

【課題】不純物が少なく、保存安定性に優れる5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの製造方法を提供する。
【解決手段】2−アミノマロンアミドを、カルボン酸類の存在下、一般式[1]
【化1】



(式中、Rはそれぞれ独立にC1−3アルキル基を示す)で表される化合物と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを得る工程と、得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを酸性化合物と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの酸性塩又はその水和物を得る工程と、得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させる工程とを含む5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド(以下、「化合物A」ともいう)は、制癌剤として有用な化合物である(例えば、特許文献1参照)。
化合物Aは、例えば、2−アミノマロンアミドから製造される(例えば、非特許文献1及び特許文献1、2参照)。
非特許文献1には、2−アミノマロンアミドをエチルホルムイミダートと反応させることによって化合物Aが得られることが記載されている。しかし、この製造方法は、収率が低く、満足できるものではない。
【0003】
特許文献1には、2−アミノマロンアミドのベンゼンスルホン酸塩をベンゼンスルホン酸の存在下、オルトギ酸トリメチルと反応することによって化合物Aのベンゼンスルホン酸塩が得られることが記載されている。さらに、化合物Aのベンゼンスルホン酸塩を炭酸水素ナトリウムで中和することによって化合物Aが得られることが記載されている。
しかし、この製造方法は、遺伝毒性を有するベンゼンスルホン酸エステルが生成すること、大過剰のオルトギ酸トリメチルが必要であること、等の欠点を有する。従ってこの製造方法は、工業的に優れた製造方法とは言い難い。また、得られた化合物Aは、着色し、保存安定性に劣るものである。特許文献1の試験例1及び試験例2には、化合物Aのスルホン酸塩及び化合物Aの塩酸塩は安定であったが、化合物Aは藍色又は青色に変色したことが記載されている。さらに、特許文献1には、保存安定性に優れる化合物Aを得るためには、化合物Aに微量の酸を含有させることが必要であると記載されている。そして、実施例6には、約2.5%の安息香酸を含有する化合物Aが記載されている。しかし、安定性についての具体的な記載はない。
【0004】
特許文献2には、硫酸の存在下、2−アミノマロンアミドをオルトギ酸トリエチルと反応させることによって化合物Aの粗結晶が得られることが記載されている。しかし、この製造方法は、大過剰のオルトギ酸トリエチルが必要であること、大量の活性炭が必要であること、等の欠点を有する。従ってこの製造方法は、工業的に優れた製造方法とは言い難い。さらに、特許文献2には、化合物Aの粗結晶を酸と反応させた後、アンモニアで中和することによって化合物Aが得られることが記載されている。しかし、安定性についての具体的な記載はない。
【0005】
化合物Aの製剤化においては、酸性物質を含有させることにより、青色の着色を防止できることが知られている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3には、「本化合物はそれ自体、酸素、熱、光等によって着色を示す性状を有しており、例えば経口剤に応用した場合、共存する賦形剤の相互作用を受け、さらに複雑な反応経路でより一層顕著な着色を示す傾向が認められる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/035168号パンフレット
【特許文献2】特開昭58−24569号公報
【特許文献3】特開昭60−185727号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)、第74巻、第2892〜2894頁、1952年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまで、化合物Aは、青色に着色し、保存安定性に問題があるとされていた。そして、保存安定性に優れた化合物Aを得るためには、(1)化合物Aの酸性塩の製造、(2)酸性物質の共存、又は、(3)微量の酸性物質の含有、が必要であるとされていた。また、添加物を併用しなくとも保存安定性に優れる化合物Aは、これまで全く知られていない。一方、医薬の原薬は、混合物ではなく、安定な、単一の化合物であることが強く要求されている。
【0009】
本発明は、不純物が少なく、保存前と保存後との色差が小さく、保存安定性に優れる化合物Aの結晶及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような状況下、本発明者らは鋭意研究を行った結果、以下の[1]〜[22]を見出し、本発明を完成させた。前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0011】
[1] 40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後における保存前との色差(ΔE)が6以下であり、酸性化合物の含有率が0.1質量%以下である5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物(以下、「化合物Aの水和物」ともいう)の結晶。
【0012】
[2] 色差(ΔE)が3以下である[1]に記載の化合物Aの水和物の結晶。
【0013】
[3] 色差(ΔE)が3以下であり、酸性化合物の含有率が0.05質量%以下である[1]に記載の化合物Aの水和物の結晶。
【0014】
[4] 40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存する前における化合物Aの水和物の結晶が無色、淡黄色又は黄色である[1]〜[3]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の結晶。
【0015】
[5] 40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存する前における化合物Aの水和物の結晶が無色又はマンセル表色系での色相(H)が1Y〜6Yである[1]〜[3]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の結晶。
【0016】
[6] 2−アミノマロンアミドを、カルボン酸類の存在下、一般式[1]
【0017】
【化1】



【0018】
(式中、Rはそれぞれ独立にC1−3アルキル基を示す)で表される化合物と反応させて、化合物Aを得る工程と、得られた化合物Aを酸性化合物と反応させて、化合物Aの酸性塩又はその水和物を得る工程と、得られた化合物Aの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させて、化合物Aの水和物を得る工程とを含む化合物Aの水和物の製造方法。
【0019】
[7] 2−アミノマロンアミドを、鉱酸類の不存在下、かつ、スルホン酸類の不存在下、一般式[1]
【0020】
【化2】



【0021】
(式中、Rはそれぞれ独立にC1−3アルキル基を示す)で表される化合物と反応させて、化合物Aを得る工程と、得られた化合物Aを酸性化合物と反応させて、化合物Aの酸性塩又はその水和物を得る工程と、得られた化合物Aの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させて、化合物Aの水和物を得る工程とを含む化合物Aの水和物の製造方法。
【0022】
[8] 化合物Aを得る工程が、カルボン酸類の存在下に行われる[7]に記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0023】
[9] カルボン酸類が、ギ酸又はシュウ酸である[6]又は[8]に記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0024】
[10] カルボン酸類が、シュウ酸である[6]、[8]及び[9]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0025】
[11] カルボン酸類の使用量が、2−アミノマロンアミドに対して0.001倍モル〜0.05倍モルである[6]及び[8]〜[10]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0026】
[12] 酸性化合物が塩酸であり、酸性塩が塩酸塩である[6]〜[11]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0027】
[13] 酸性溶媒が、塩酸である[6]〜[12]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0028】
[14] 酸性溶媒が、0.3mol/L〜0.8mol/L塩酸である[6]〜[13]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0029】
[15] 塩が、カルボン酸の塩である[6]〜[14]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0030】
[16] 塩が、カルボン酸のアルカリ金属塩である[6]〜[15]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0031】
[17] 塩が、第一酸解離定数(pKa1)が2〜4のカルボン酸のアルカリ金属塩である[6]〜[16]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0032】
[18] 塩が、第一酸解離定数(pKa1)が3〜4のカルボン酸のアルカリ金属塩である[6]〜[17]のいずれか1つに記載の化合物Aの水和物の製造方法。
【0033】
[19] [6]〜[18]のいずれか1つに記載の製造方法で得られる化合物Aの水和物。
【0034】
[20] [6]〜[18]のいずれか1つに記載の製造方法で得られ、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後における保存前との色差(ΔE)が6以下であり、酸性化合物の含有率が0.1質量%以下である化合物Aの水和物の結晶。
【0035】
[21] 色差(ΔE)が3以下である[20]に記載の化合物Aの水和物の結晶。
【0036】
[22] 色差(ΔE)が3以下であり、酸性化合物の含有率が0.05質量%以下である[20]に記載の化合物Aの水和物の結晶。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、不純物が少なく、保存前と保存後との色差が小さく、保存安定性に優れる化合物Aの結晶及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】化合物Aの水和物の粉末X線回折パターンの一例を示す図である。
【図2】化合物Aの水和物の赤外吸収スペクトル(ATR法)の一例を示す図である。
【図3】化合物Aの水和物の写真である。
【図4】60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後の化合物Aの水和物の状態を示す写真である。
【図5】参考例2における反応終了時の反応液の状態を示す写真である。
【図6】参考例3の反応終了時の反応液の状態を示す写真である。
【図7】参考例4の反応終了時の反応液の状態を示す写真である。
【図8】比較例1の反応終了時の反応液の状態を示す写真である。
【図9】比較例2の反応終了時の反応液の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明について以下に詳述する。本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0040】
なお、本明細書において以下の用語は、特に断らない限り以下のように定義される。
1−3アルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基を意味する。
ハロゲン化炭化水素類とは、塩化メチレン、クロロホルム又はジクロロエタンを意味する。
アルコール類とは、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール又は2−メチル−2−プロパノールを意味する。
エーテル類とは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールジエチルエーテルを意味する。
ケトン類とは、アセトン、2−ブタノン又は4−メチル−2−ペンタノンを意味する。
エステル類とは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル又は酢酸ブチルを意味する。
アミド類とは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド又は1−メチル−2−ピロリドンを意味する。
アルカリ金属塩とは、リチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩を意味する。
【0041】
マンセル表色系とは、アルバード・H・マンセルが創案した表色系であり、色を色相、明度および彩度の3属性によって表わしたものである。色相(H)は色の種類を表すものであり、マンセル表色系では赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、紫(P)の5つの基本色相と、黄赤(YR)、黄緑(YG)、青緑(BG)、青紫(PB)、赤紫(RP)の5つの中間色相の合計10色相で表わし、さらに10色相の各色相内で等級を最大が10となるように等歩度で表現している。色相(H)は、色彩計又は色差計などの測定装置によって測定することができる。
【0042】
<化合物Aの水和物の結晶>
本発明の化合物Aの水和物の結晶は、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後における保存前との色差(ΔE)が6以下であり、酸性化合物の含有率が0.1質量%以下であることを特徴とする。
【0043】
化合物Aの水和物の結晶は、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後における保存前との色差(ΔE)が6以下であるが、保存安定性の観点から、3以下であることが好ましい。ここで結晶の色差は、分光色差計を用いて反射法で測定される。
【0044】
化合物Aの水和物の結晶は、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存する前において無色、淡黄色又は黄色であることが好ましく、無色又は淡黄色であることがより好ましい。
【0045】
化合物Aの水和物の結晶は、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存する前において無色又はマンセル表色系での色相(H)が1Y〜6Yであることが好ましい。
【0046】
化合物Aの水和物の結晶に含まれる酸性化合物の含有率は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。なお、化合物Aの水和物の結晶に含まれる酸性化合物の含有率は、酸性化合物の種類に応じて適宜選択される通常用いられる分析方法で測定される。例えば、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、イオンクロマトグラフィ、及びガスクロマトグラフィによって測定することができる。例えば、実施例6の水和物の結晶に含まれる酸性化合物の含有率をイオンクロマトグラフィによって測定した結果、酸性化合物の含有率は0.05質量%以下(定量限界以下)であった。
化合物Aの水和物の結晶に含まれる酸性化合物としては、後述する鉱酸類、スルホン酸類及びカルボン酸類を挙げることができる。スルホン酸類及びカルボン酸類であることが好ましい。
【0047】
<化合物Aの水和物の製造方法>
本発明の第一の製造方法は、2−アミノマロンアミドを、カルボン酸類の存在下、一般式[1]
【0048】
【化3】



【0049】
(式中、Rはそれぞれ独立にC1−3アルキル基を示す)で表される化合物と反応させて、化合物Aを得る工程と、得られた化合物Aを酸性化合物と反応させて、化合物Aの酸性塩又はその水和物を得る工程と、得られた化合物Aの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させて、化合物Aの水和物を得る工程とを含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
【0050】
また本発明の第二の製造方法は、2−アミノマロンアミドを、鉱酸類の不存在下、かつ、スルホン酸類の不存在下、一般式[1]
【0051】
【化4】



【0052】
(式中、Rはそれぞれ独立にC1−3アルキル基を示す)で表される化合物と反応させて、化合物Aを得る工程と、得られた化合物Aを酸性化合物と反応させて、化合物Aの酸性塩又はその水和物を得る工程と、得られた化合物Aの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させて、化合物Aの水和物を得る工程とを含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
【0053】
本発明の製造方法によって得られる化合物Aの水和物は、(1)添加物を含有しない、(2)保存前と保存後との色差が小さい、(3)保存安定性が優れる、(4)不純物が少ない、等の特徴を有している。また安定性向上のために、微量の酸を含有させる必要がないため、化合物Aの水和物は、高純度である。さらに、酸の混入量を一定にコントロールする必要がないため、化合物Aの水和物を大量に優れた生産性で製造することが可能である。
さらに本発明の化合物Aの水和物の製造方法は、(5)遺伝毒性を有するベンゼンスルホン酸エステルが生成しない、(6)大過剰のオルトギ酸トリエステルを必要としない、等の特徴を有している。
すなわち、本発明の製造方法は、化合物Aの水和物の工業的な製造方法として有用である。
【0054】
また、別の態様では、本発明の化合物Aの水和物の製造方法は、より低温で均一な結晶形に制御できるという特徴も有している。
本発明の製造方法によって、(1)添加物を含有しない、(2)保存前と保存後との色差が小さい、(3)保存安定性に優れる、(4)不純物が少ない、化合物Aの水和物を製造することが初めて可能になった。
すなわち、本発明の製造方法は、化合物Aの水和物の工業的な製造方法として有用である。
【0055】
本発明の製造方法によって得られる化合物Aの水和物は、無色、淡黄色又は黄色であることが好ましく、無色又は淡黄色であることがより好ましい。
【0056】
本発明の製造方法によって得られる化合物Aの水和物は、無色又はマンセル表色系での色相(H)が1Y〜6Yであることが好ましい。
【0057】
(第一の工程)
化合物Aは、(A)2−アミノマロンアミドに、カルボン酸類の存在下、一般式[1]で表される化合物を反応させること又は(B)2−アミノマロンアミドに、鉱酸類の不存在下、かつ、スルホン酸類の不存在下、一般式[1]で表される化合物を反応させることで製造することができる。なお、式中、Rは前記と同様の意味を有する。
【0058】
【化5】



【0059】
一般式[1]で表される化合物としては、例えば、オルトギ酸トリメチル及びオルトギ酸トリエチル等が知られている。
【0060】
市販の一般式[1]で表される化合物は、不純物として、トリアジン等の塩基性化合物を含有することがある。この場合、カルボン酸類の存在下で、反応を行うことが好ましい。
一般式[1]で表される化合物が、トリアジン等の塩基性化合物を含有しない場合、この反応は、カルボン酸類を使用せずに実施することができる。
【0061】
この反応は、溶媒の存在下に実施されることが好ましい。使用される溶媒は、通常溶媒として用いられるものであれば特に限定されない。例えば、ハロゲン化炭化水素類;アルコール類;エーテル類;ケトン類;エステル類;アミド類;アセトニトリル及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を混合して使用してもよい。また一般式[1]で表される化合物を溶媒として使用してもよい。
好ましい溶媒としては、アルコール類が挙げられ、エタノール及び2−プロパノールがより好ましく、2−プロパノールがさらに好ましい。
溶媒の使用量は、特に限定されない。2−アミノマロンアミドに対して、1倍量〜100倍量(v/w)が好ましく、10倍量〜30倍量(v/w)がより好ましく、15倍量〜25倍量(v/w)がさらに好ましい。
【0062】
第一の工程においては、Rがメチル基又はエチル基である化合物を用いることが好ましく、エチル基である化合物を用いることがより好ましい。
一般式[1]で表される化合物の使用量は、2−アミノマロンアミドに対して、1倍モル〜10倍モルが好ましく、1倍モル〜5倍モルがより好ましく、2倍モル〜3倍モルがさらに好ましい。
【0063】
鉱酸類としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸及び硫酸が挙げられる。またスルホン酸類としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸が挙げられる。
【0064】
カルボン酸類としては、ギ酸及び酢酸等の脂肪族カルボン酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸等のヒドロキシ酸;安息香酸及びフタル酸等の芳香族カルボン酸;並びにシュウ酸、フマル酸及びマレイン酸等のジカルボン酸等が挙げられる。ギ酸及びシュウ酸が好ましく、シュウ酸がより好ましい。
カルボン酸類の使用量は、2−アミノマロンアミドに対して0.001倍モル〜0.05倍モルが好ましく、0.001倍モル〜0.01倍モルがより好ましく、0.002倍モル〜0.01倍モルがさらに好ましい。
【0065】
反応温度は、0℃〜150℃が好ましく、70℃〜100℃がより好ましく、75℃〜85℃がさらに好ましい。
反応時間は、5時間〜50時間が好ましく、5時間〜10時間がより好ましい。
また反応雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができる。
【0066】
第一の工程で得られる化合物Aは、単離して次の工程に用いることもできるが、単離せずにそのまま次の工程に用いることが好ましい。
第一の工程で得られる化合物Aにおいて、溶媒和物、水和物及び種々の形状の結晶が存在する場合、本発明は、これらを包含する。
【0067】
化合物Aの製造方法は、既に知られている。例えば、特開昭58−24569号公報には、硫酸の存在下、2−アミノマロンアミドをオルトギ酸トリエチルと反応させることによって化合物Aの粗結晶が得られることが記載されている。
本発明者らは、特開昭58−24569号公報に記載の製造方法に準じて、化合物Aの製造を試みた。しかし、この反応液は濃青色に着色した。また硫酸に代えて、p−トルエンスルホン酸を用いて反応を行った。しかし、この場合も反応液は濃青色に着色した。
一方、第一の工程による化合物Aの製造方法においては、反応液の着色が抑制された。
【0068】
(第二の工程)
第一の工程で得られた化合物Aを、酸性化合物と反応させることによって、化合物Aの酸性塩又はその水和物を製造することができる。
【0069】
【化6】



【0070】
化合物Aを、酸性化合物と反応させる方法は特に制限されず、通常用いられる方法から適宜選択することができる。具体的には例えば、化合物Aを含む溶液又は懸濁液に酸性化合物を含む溶液を添加することで、化合物Aを酸性化合物と反応させることができる。
酸性化合物としては特に制限されず、塩酸及び硫酸等の鉱酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸;並びにシュウ酸が挙げられる。鉱酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
酸性塩としては、塩酸及び硫酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩;並びにシュウ酸との塩が挙げられる。鉱酸との塩が好ましく、塩酸塩がより好ましい。
【0071】
第二の工程における反応温度、反応時間は特に制限されず、用いる酸性化合物の種類等に応じて適宜選択できる。
また反応雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができる。
【0072】
第二の工程で得られる化合物Aの酸性塩は、単離せずにそのまま次の工程に用いることができるが、単離することが好ましい。
第二の工程で得られる化合物Aの酸性塩において、溶媒和物、水和物及び種々の形状の結晶が存在する場合、本発明は、これらを包含する。
【0073】
(第三の工程)
第二の工程で得られた化合物Aの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させることによって、化合物Aの水和物を製造することができる。
【0074】
【化7】



【0075】
酸性溶媒としては、例えば、鉱酸の水溶液が挙げられる。具体的には塩酸、硫酸及び硝酸が挙げられ、塩酸が好ましい。塩酸を用いることによって、より低温条件下で均一な化合物Aの水和物の結晶を製造することができる。
酸性溶媒の使用量は、特に限定されないが、化合物Aの酸性塩に対し、5倍量(v/w)〜50倍量(v/w)であればよい。
酸性溶媒の濃度は、特に限定されない。例えば塩酸を用いる場合、塩酸の濃度は、0.3mol/L〜0.8mol/Lが好ましく、0.4mol/L〜0.5mol/Lがより好ましい。
【0076】
塩としては、有機酸塩が好ましく用いられる。有機酸塩としてはカルボン酸の塩が挙げられ、カルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく、第一酸解離定数(pKa1)が2〜4であるカルボン酸のアルカリ金属塩がより好ましく、第一酸解離定数(pKa1)が3〜4であるカルボン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましい。
カルボン酸のアルカリ金属塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム及びコハク酸ナトリウムが挙げられる。ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム及びフマル酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ギ酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ギ酸ナトリウムがさらに好ましい。
第一酸解離定数(pKa1)が2〜4であるカルボン酸のアルカリ金属塩としては、マレイン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム及びフマル酸ナトリウムが挙げられる。
第一酸解離定数(pKa1)が3〜4であるカルボン酸のアルカリ金属塩としては、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム及びフマル酸ナトリウムが挙げられる。ギ酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ギ酸ナトリウムがより好ましい。
【0077】
塩の使用量は、化合物Aの酸性塩の種類、塩の種類並びに酸性溶媒の種類及び濃度に応じて適宜選択できる。例えば塩を添加した後の化合物Aの懸濁液又は溶液のpHが1〜4となるように塩の使用量を調整することが好ましく、pHが1.5〜2.5となるように塩の使用量を調整することがより好ましい。
具体的には、0.4mol/L〜0.5mol/L塩酸に化合物Aの塩酸塩を溶解させた後、ギ酸ナトリウムと反応させる場合、好ましいギ酸ナトリウムの使用量は、化合物Aの塩酸塩に対して、1.8倍モル〜3.0倍モルである。
【0078】
第三の工程は、化合物Aの酸性塩の懸濁液又は溶液に塩を添加することによって行うこともでき、化合物Aの酸性塩溶液に塩を添加する方法が好ましい。
具体的には、化合物Aの酸性塩を酸性溶媒に加え、必要に応じて加熱して化合物Aの酸性塩溶液を調製し、これに塩を添加することで行うことができる。
【0079】
第三の工程において用いる塩を構成する酸と塩基を、酸、塩基の順で個別に化合物Aの酸性塩の懸濁液又は溶液中に添加してもよい。
例えば、塩としてギ酸ナトリウムを用いる代わりに、化合物Aの酸性塩の懸濁液又は溶液にギ酸を添加した後に水酸化ナトリウム等を添加してもよい。
【0080】
第三の工程における反応温度は、室温〜60℃が好ましく、40℃〜50℃がより好ましい。
反応時間は、例えば1分間〜24時間とすることができる。
また反応雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができる。
【0081】
化合物Aの水和物の製造方法は、既に知られている。例えば、国際公開第2009/035168号パンフレットには、化合物Aのベンゼンスルホン酸塩を炭酸水素ナトリウムと反応させることによって、化合物Aの水和物が製造できることが記載されている。また、特開昭58−24569号公報には、アンモニア水を使用する方法が記載されている。
本発明者らは、これらの製造方法によって、化合物Aの水和物の製造を試みた。しかし、得られた化合物Aの水和物は、炭酸水素ナトリウムやアンモニア水の添加量が等量点をわずかに超えたところで青色に着色した。一方、カルボン酸の塩を用いて得られた化合物Aの水和物は、添加量が等量点を大幅に超えても着色しなかった。
【0082】
本発明の製造方法によって得られる化合物Aの水和物を医薬として用いる場合、通常、製剤化に使用される賦形剤、担体及び希釈剤等の製剤補助剤を適宜混合してもよい。これらは、常法にしたがって、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、粉体製剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、軟膏剤又は注射剤等の形態で、経口又は非経口で投与することができる。また投与方法、投与量及び投与回数は、患者の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。通常、成人に対しては、経口又は非経口(例えば、注射、点滴及び直腸部位への投与等)投与により、1日、0.01mg/kg〜1000mg/kgを1回から数回に分割して投与すればよい。
本発明の有用性を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0083】
次に、本発明を参考例、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0084】
粉末X線回折の測定条件
対陰極:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
走査軸:2θ
なお、粉末X線回折による特徴的なピークは、測定条件により変動することがある。一般に、2θは、±0.2°の範囲内で誤差が生じる。従って、「2θで表されるX°の回折角度」は、「2θで表される((X−0.2)〜(X+0.2))°の回折角度」を意味する。
【0085】
以下の試薬を用いた。
2−アミノマロンアミド:立山化成(Lot No. 091026)
オルトギ酸トリエチル:日宝化学(Lot No. OJ1401、純度:99.5%、不純物としてトリアジン等の塩基性化合物を含む。)(参考例1、2及び4、実施例6及び7、並びに比較例1、2、5及び6)
オルトギ酸トリエチル:和光純薬工業(Lot No. CDM1714)(参考例3及び実施例8)
【0086】
参考例1
窒素雰囲気下、2−プロパノール200mLに2−アミノマロンアミド10g及びギ酸19.7mgを加え、80℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル35.4mLを5分かけて滴下した。次いで、反応混合物を80℃で8時間撹拌した。反応終了時の反応液の色は、淡青色であった。次いで、56℃まで冷却後、水10mL次いで濃塩酸8mLを反応混合物に添加した。水冷後、結晶を濾取し、次いでアセトン40mLで洗浄し、淡黄緑色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物16gを得た。
【0087】
参考例2
窒素雰囲気下、2−プロパノール200mLに2−アミノマロンアミド10g及びシュウ酸38.4mgを加え、80℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル35.4mLを5分かけて滴下した。次いで、反応混合物を80℃で8時間撹拌した。反応終了時の反応液の色は、淡黄色であった。次いで、53℃まで冷却後、水10mL次いで濃塩酸8mLを反応混合物に添加した。水冷後、結晶を濾取し、次いでアセトン40mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物16gを得た。
【0088】
参考例3
窒素雰囲気下、2−プロパノール200mLに2−アミノマロンアミド10g及びオルトギ酸トリエチル35.4mLを加え、80℃に加熱した後、同温度で8時間撹拌した。反応終了時の反応液の色は、淡黄色であった。次いで、57℃まで冷却後、水10mL次いで濃塩酸8mLを反応混合物に添加した。水冷後、結晶を濾取し、次いでアセトン40mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物16gを得た。
【0089】
参考例4
窒素雰囲気下、2−プロパノール200mLに2−アミノマロンアミド10g及びオルトギ酸トリエチル35.4mLを加え、80℃に加熱した後、同温度で13時間撹拌した。反応終了時の反応液の色は、淡青色であった。反応混合物を58℃まで冷却し、水10mL及び濃塩酸8mLを順次添加した。反応混合物を5℃まで冷却し、結晶を濾取し、アセトン40mLで洗浄し、緑色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物16gを得た。
【0090】
実施例1
窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸240mLに参考例2に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物20.0gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液に50℃でギ酸ナトリウム14.3gの水40mL溶液を35分かけて滴下した。反応混合物を冷却し、内温5℃で90分間攪拌した。結晶を濾取し、アセトン20mL及び水40mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン60mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物12.6gを得た。
含水率:8.6%(カール・フィッシャー法)
IR(ATR)1655, 1619, 1584, 1551cm−1
粉末X線回折のパターンを図1及び表1に、赤外吸収スペクトル(ATR法)を図2に示す。
【0091】
【表1】



【0092】
実施例2
窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸240mLに参考例2に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物20.0gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液に50℃でギ酸ナトリウム14.3gの水40mL溶液を33分かけて滴下した。反応混合物を冷却した。結晶を濾取し、アセトン20mL及び水40mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン60mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物12.8gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0093】
実施例3
窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸18mLに参考例2に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物1.5gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液に50℃でギ酸カリウム1.9gの水6mL溶液を滴下した。反応混合物のpHは3.1であった。反応混合物を室温に冷却した。結晶を濾取し、アセトン1.5mL及び水3.0mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン4.5mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物0.90gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0094】
実施例4
窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸120mLに参考例2に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物10.0gを加え、40〜50℃に加熱して溶解させた。この溶液に50℃で酢酸ナトリウム10.3gの水25mL溶液を滴下した。反応混合物のpHは4.0であった。滴下終了後、反応溶液を室温に冷却して1時間撹拌した。結晶を濾取し、アセトン10mL及び水20mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン30mLで洗浄し、灰色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物6.1gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0095】
実施例5
窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸18mLに参考例2に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物1.5gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液に50℃でリンゴ酸ナトリウム3.5gの水6mL溶液を滴下した。反応混合物のpHは2.6であった。反応混合物を室温に冷却した。結晶を濾取し、アセトン1.5mL及び水3.0mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン4.5mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物0.89gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0096】
実施例6
(1)窒素雰囲気下、2−プロパノール600mLに2−アミノマロンアミド30g及びシュウ酸115mgを加え、82℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル106mLを10分かけて滴下した。次いで、反応混合物を84℃で7時間30分間撹拌した。57℃まで冷却後、反応混合物に水30mL及び濃塩酸24mLを順次添加した。反応混合物を5℃まで冷却し、結晶を濾取し、アセトン120mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物49gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸240mLに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物20.0gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液にギ酸ナトリウム14.3gの水40mL溶液を33分かけて滴下した。反応混合物を5℃まで冷却し、結晶を濾取し、アセトン20mL及び水40mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン60mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物12.8gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0097】
実施例7
(1)窒素雰囲気下、2−プロパノール80mLに2−アミノマロンアミド5.00g及びギ酸20mgを加え、81℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル17.7mLを14分間かけて添加した。次いで、反応混合物を83℃で6時間33分間撹拌した。58℃まで冷却後、水5mL次いで濃塩酸4mLを反応混合物に滴下した。20℃まで冷却後、結晶を濾取し、次いでアセトン20mLで洗浄し、黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物8.05gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸22mLに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物2.00gを加え、46〜48℃に加熱して溶解させた。65℃まで加熱後、0.45mol/L塩酸2mLを添加した。この溶液を50℃まで冷却後、ギ酸ナトリウム1.43gと水4mLから調製した水溶液を滴下した。反応混合物を5℃まで冷却して結晶を濾取し、アセトン2mLと水4mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン6mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、褐色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物1.23gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0098】
実施例8
(1)窒素雰囲気下、2−アミノマロンアミド5.00gに2−プロパノール100mLを加え、80℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル17.7mLを30分かけて滴下した。次いで、反応混合物を83〜84℃で7時間50分間撹拌した。50〜60℃まで冷却後、濃塩酸4mLと水5mLから調製した水溶液を反応混合物に添加した。20〜30℃まで冷却後、結晶を濾取し、次いでアセトン25mLで洗浄し、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物8.04gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.5mol/L塩酸50mLに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物5.00gを加え、48〜49℃に加熱して溶解させた。この溶液に、酢酸ナトリウム4.11gと水10mLから調製した水溶液を18分かけて滴下した。反応混合物を冷却して結晶を濾取し、アセトン5mLと水10mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン15mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物3.21gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0099】
実施例9
(1)窒素雰囲気下、実施例6(1)に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物400gを0.45mol/L塩酸4.40Lに加えた。57℃に加熱して溶解させた後、活性炭(日本エンバイロケミカルズ製特製白鷺)20.0gを添加し45分間撹拌した。濾過により活性炭を除去した後、0.45mol/L塩酸400mLによって活性炭を洗浄し、洗液を濾液に合わせた。この濾液を15℃に冷却し、濃塩酸400mLを加え1時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、2.4mol/L塩酸1.6Lで洗浄し、次いでアセトン1.60Lで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物364gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸3.52Lに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物320gを加え、57℃に加熱して溶解させた。この反応溶液を濾過し、0.45mol/L塩酸320mLで残渣を洗浄し、洗液を反応溶液に合わせ50℃に調整した。ギ酸ナトリウム229gと水1.14Lから調製した水溶液を50℃で66分間かけて滴下した。反応混合物を10℃以下に冷却して終夜で静置した後、析出した結晶を濾取した。結晶をアセトン320mLと水640mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン960mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物198gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0100】
実施例10
(1)窒素雰囲気下、実施例7(1)に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物7.00gを0.45mol/L塩酸77mLに加え、60℃に加熱して溶解させた。この溶液に対して活性炭(日本エンバイロケミカルズ製特製白鷺)350mgを添加し、60℃で30分間撹拌した。濾過により活性炭を除去した後、0.45mol/L塩酸7mLによって活性炭を洗浄し、洗液を濾液に合わせた。この濾液を5〜10℃に冷却し、濃塩酸7mLを加え5〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、1.5mol/L塩酸28mLで洗浄し、次いでアセトン28mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物6.44gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸60mLに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物5.00gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液に対して、ギ酸ナトリウム3.58gと水20mLから調製した水溶液を滴下した。反応混合物を氷浴上で5℃に冷却して30分間撹拌した後、析出した結晶を濾取した。結晶をアセトン5mLと水10mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン15mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物3.17gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0101】
実施例11
(1)窒素雰囲気下、参考例3に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物7.00gを0.45mol/L塩酸77mLに加え、60℃に加熱して溶解させた。この溶液に対して活性炭(日本エンバイロケミカルズ製特製白鷺)350mgを添加し、60℃で30分間撹拌した。濾過により活性炭を除去した後、0.45mol/L塩酸7mLによって活性炭を洗浄し、洗液を濾液に合わせた。この濾液を5〜10℃に冷却し、濃塩酸7mLを加え5〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、1.5mol/L塩酸28mLで洗浄し、次いでアセトン28mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物6.44gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸60mLに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物5.00gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液に対して、ギ酸ナトリウム3.58gと水20mLから調製した水溶液を滴下した。反応混合物を5℃に冷却して30分間撹拌した後、析出した結晶を濾取した。結晶をアセトン5mLと水10mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン15mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物3.22gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0102】
比較例1
窒素雰囲気下、2−プロパノール200mLに2−アミノマロンアミド10.0g及びp−トルエンスルホン酸一水和物81.2mgを加え、82℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル35.4mLを5分間かけて滴下した。反応混合物を80℃で3時間撹拌した。反応終了時の反応液の色は、濃青色であった。反応混合物を57℃まで冷却し、水10mL及び濃塩酸8mLを順次添加した。反応混合物を5℃まで冷却し、結晶を濾取し、アセトン40mLで洗浄し、緑色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物15.6gを得た。
【0103】
比較例2
窒素雰囲気下、2−プロパノール200mLに2−アミノマロンアミド10.0g及び硫酸44mgを加え、80℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル35.4mLを10分間かけて滴下した。反応混合物を80℃で7時間撹拌した。反応終了時の反応液の色は、濃青色であった。反応混合物を58℃まで冷却し、水10mL及び濃塩酸8mLを順次添加した。反応混合物を5℃まで冷却し、結晶を濾取し、アセトン40mLで洗浄し、緑色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物15.6gを得た。
【0104】
比較例3
(1)特許文献1(国際公開第2009/035168)の実施例6に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド100gを7%塩酸1456gに加え、75℃に加熱して溶解させた。この溶液に対して活性炭(日本エンバイロケミカルズ製特製白鷺)4.6g及び7%塩酸14gを添加し、75℃で10分間撹拌した。濾過により活性炭を除去した後、7%塩酸211gによって活性炭を洗浄し、洗液を濾液に合わせた。この濾液を20〜25℃に冷却し、1時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、2−プロパノール314mLで2回洗浄した。減圧乾燥を行い、無色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物133gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸18mLに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物1.5gを加え、40〜50℃に加熱して溶解させた。この溶液に水酸化ナトリウム0.63gの水6mL溶液を10分間かけて滴下した。反応混合物のpHは6.6であった。滴下終了後、反応溶液を室温に冷却して1時間撹拌した。結晶を濾取し、アセトン1.5mL及び水3.0mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン4.5mLで洗浄し、青色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物0.52gを得た。
【0105】
比較例4
窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸60mLに比較例3(1)で得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物5.0gを加え、40〜50℃に加熱して溶解させた。この溶液に25%アンモニア水3.9mLを10分間かけて滴下した。反応混合物のpHは6.6であった。滴下終了後、反応溶液を室温に冷却して1時間撹拌した。結晶を濾取し、アセトン5mL及び水10mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン15mLで洗浄し、青色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物0.54gを得た。
【0106】
比較例5
特許文献1(国際公開第2009/035168)の実施例6に記載の方法に準じて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体として得た。
H−NMRによって分析した結果、得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドは、約0.15%の安息香酸を含有していた。
【0107】
比較例6
(1)窒素雰囲気下、2−プロパノール400mLに2−アミノマロンアミド20g及びp−トルエンスルホン酸一水和物325mgを加え、82℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル56.7mLを4時間8分間かけて分割添加した。次いで、反応混合物を79℃で3時間21分間撹拌した。51℃まで冷却後、水20mL次いで濃塩酸15.7mLを反応混合物に滴下した。室温まで冷却後、結晶を濾取し、次いでアセトン100mLで洗浄し、灰色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物30.56gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸11mLに得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物1gを加え、46〜48℃に加熱して溶解させた。65℃まで加熱後、0.45mol/L塩酸1mLを添加した。この溶液を50℃まで冷却後、ギ酸ナトリウム0.72gと水2mLから調製した水溶液を滴下した。反応混合物を冷却して結晶を濾取し、アセトン1mLと水2mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン3mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、褐色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物0.63gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0108】
比較例7
(1)窒素雰囲気下、比較例6(1)に記載の方法に従い製造した5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物7.00gを0.45mol/L塩酸77mLに加え、60℃に加熱して溶解させた。この溶液に対して活性炭(日本エンバイロケミカルズ製特製白鷺)350mgを添加し、60℃で30分間撹拌した。濾過により活性炭を除去した後、0.45mol/L塩酸7mLによって活性炭を洗浄し、洗液を濾液に合わせた。この濾液を5〜10℃に冷却し、濃塩酸7mLを加え5〜10℃で1時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、1.5mol/L塩酸28mLで洗浄し、次いでアセトン28mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物6.44gを得た。
(2)得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物5.00gを、窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸60mLに加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液に対して、ギ酸ナトリウム3.58gと水20mLから調製した水溶液を滴下した。反応混合物を5℃に冷却して30分間撹拌した後、析出した結晶を濾取した。結晶をアセトン5mLと水10mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン15mLで洗浄した。減圧乾燥を行い、淡黄色の結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物3.21gを得た。赤外吸収スペクトル(ATR法)は、実施例1と一致した。
【0109】
本発明の有用性を以下の試験例で説明する。
なお、各試験例においては、各参考例、実施例又は比較例で得られた最終化合物を使用した。
【0110】
試験例1
参考例2〜4並びに比較例1及び2の反応液の色を観察した。反応終了時の反応液を図5〜9に、結果を表2に示す。
【0111】
【表2】



【0112】
参考例2及び3の反応液の色は、淡黄色であった。一方、参考例4の反応液の色は、淡青色、比較例1及び2の反応液の色は、濃青色であった。
化合物Aの製造を鉱酸類の不存在下、かつ、スルホン酸類の不存在下に行うことで反応液の青色の着色が抑制された。
【0113】
試験例2
実施例2及び5並びに比較例3及び4で得られた結晶の色を観察した。結果を表3に示す。
【0114】
【表3】



【0115】
実施例2及び5の結晶の色は、淡黄色であった。一方、比較例3及び4の結晶の色は、青色であった。
実施例2及び5の結晶は青色の着色が抑制された。
【0116】
試験例3
試験物質として、実施例6、8及び10並びに比較例5及び6の化合物を使用した。
試験物質約1gを厚さが0.04mmのポリエチレン製袋を二枚に重ねた保存袋に入れ、それぞれのポリエチレン製袋に封をして、空気雰囲気下、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した。試験前後の結晶の色の変化を、色差によって評価した。結果を表4に示す。
【0117】
測色計:日本電色工業株式会社製の分光色差計SE2000型
測定法:反射法
【0118】
【表4】



【0119】
比較例6の化合物は、比較例5の化合物に比べて、色差が小さかった。
実施例6、8及び10の化合物は、比較例5及び6の化合物に比べて、色差が小さかった。
さらに実施例6の化合物は、60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した場合にも肉眼で青色の着色は見られなかった。
試験開始前の実施例6の化合物を図3に示す。
60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後の実施例6の化合物を図4に示す。
本発明の製造方法で得られた化合物Aの水和物は、保存前と保存後との色差が小さく、保存安定性に優れていた。
【0120】
試験例4
試験物質として、実施例9及び比較例7の化合物を使用した。
試験物質約1gを厚さが0.04mmのポリエチレン製袋を二枚に重ねた保存袋に入れ、それぞれのポリエチレン製袋に封をして、空気雰囲気下、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した。試験前後の結晶の色の変化を、色差によって評価した。結果を表5に示す。
【0121】
測色計:日本電色工業株式会社製の分光色差計SE2000型
測定法:反射法
【0122】
【表5】



【0123】
比較例7の化合物は、活性炭を使用して製造された。しかし、色差が大きく、比較例7の化合物は、実施例9の化合物に比べて、保存安定性に劣っていた。一方、実施例9の化合物は、色差が小さかった。
本発明の製造方法で得られた化合物Aの水和物は、保存前と保存後との色差が小さく、保存安定性に優れていた。
【0124】
試験例5
実施例6及び8〜11の結晶のマンセル表色系における色相(H)を測定した。結果を表6に示す。
【0125】
測色計:日本電色工業株式会社製の分光色差計SE2000型
測定法:反射法
【0126】
【表6】



【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の製造方法は、(1)添加物を含有しない、(2)保存前と保存後との色差が小さい、(3)保存安定性が優れる、(4)不純物が少ない、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の工業的な製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後における保存前との色差(ΔE)が6以下であり、酸性化合物の含有率が0.1質量%以下である5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。
【請求項2】
色差(ΔE)が3以下である請求項1に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。
【請求項3】
色差(ΔE)が3以下であり、酸性化合物の含有率が0.05質量%以下である請求項1に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。
【請求項4】
40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存する前における結晶が無色、淡黄色又は黄色である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。
【請求項5】
40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存する前における結晶が無色又はマンセル表色系での色相(H)が1Y〜6Yである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。
【請求項6】
2−アミノマロンアミドを、カルボン酸類の存在下、一般式[1]
【化1】



(式中、Rはそれぞれ独立にC1−3アルキル基を示す)で表される化合物と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを得る工程と、
得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを酸性化合物と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの酸性塩又はその水和物を得る工程と、
得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物を得る工程と、
を含む5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項7】
2−アミノマロンアミドを、鉱酸類の不存在下、かつ、スルホン酸類の不存在下、一般式[1]
【化2】



(式中、Rはそれぞれ独立にC1−3アルキル基を示す)で表される化合物と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを得る工程と、
得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを酸性化合物と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの酸性塩又はその水和物を得る工程と、
得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの酸性塩又はその水和物を、酸性溶媒の存在下、塩と反応させて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物を得る工程と、
を含む5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項8】
5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを得る工程が、カルボン酸類の存在下に行われる請求項7に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項9】
カルボン酸類が、ギ酸又はシュウ酸である請求項6又は請求項8に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項10】
カルボン酸類が、シュウ酸である請求項6、請求項8及び請求項9のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項11】
カルボン酸類の使用量が、2−アミノマロンアミドに対して0.001倍モル〜0.05倍モルである請求項6及び請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項12】
酸性化合物が塩酸であり、酸性塩が塩酸塩である請求項6〜請求項11のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項13】
酸性溶媒が、塩酸である請求項6〜請求項12のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項14】
酸性溶媒が、0.3mol/L〜0.8mol/L塩酸である請求項6〜請求項13のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項15】
塩が、カルボン酸の塩である請求項6〜請求項14のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項16】
塩が、カルボン酸のアルカリ金属塩である請求項6〜請求項15のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項17】
塩が、第一酸解離定数(pKa1)が2〜4のカルボン酸のアルカリ金属塩である請求項6〜請求項16のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項18】
塩が、第一酸解離定数(pKa1)が3〜4のカルボン酸のアルカリ金属塩である請求項6〜請求項17のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の製造方法。
【請求項19】
請求項6〜請求項18のいずれか1項に記載の製造方法で得られる5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物。
【請求項20】
請求項6〜請求項18のいずれか1項に記載の製造方法で得られ、40℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後における保存前との色差(ΔE)が6以下であり、酸性化合物の含有率が0.1質量%以下である5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。
【請求項21】
色差(ΔE)が3以下である請求項20に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。
【請求項22】
色差(ΔE)が3以下であり、酸性化合物の含有率が0.05質量%以下である請求項20に記載の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド・3/4水和物の結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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