説明

5−HT1B受容体の放射性リガンド

本発明は、式Iの、5−HT1B受容体の新規な放射性リガンドを提供する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−HT1B受容体の新規な放射性リガンドを提供する。
【背景技術】
【0002】
脳における特定の受容体に対する高い親和性及び選択性を有する放射性リガンドは、多様な動物及びヒトの研究を行う際の強力なツールである。例えば、陽電子放出断層撮影(PET)又は単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)と組み合わせた特定の放射性リガンドは、ヒトを含む動物における受容体密度、親和性及び薬物誘導受容体占有を測定するために使用することができる。受容体占有を測定する能力は、画像化と中枢神経系薬の治療効果及び副作用とを相関させること、さらに薬物開発における用量決定研究のために特に有用であることがわかった。
【0003】
いくつかのより最近の研究は、非侵襲性神経受容体画像化もまた神経伝達物質の濃度変化を測定するための有用なアプローチであることを実証した。PET及びSPECT研究は、一般的にドパミン作用系を調べるために使用されていたが、それらはまだ5−HT系を調べるためには広く使用されていなかった。この差異は、5−HT濃度変化に対して感受性である適切な放射性リガンドがないことに多く起因している。 [11C]−WAY−100635及び[3H]−NAD299のような5−HT1A受容体アンタゴニストを用いた初期の動物研究は、セロトニン濃度に対するいくらかの感受性を示唆したが、ヒトにおいて再現するのは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
5−HT1B自己受容体における薬物作用の治療可能性はつい最近になって考えられているが、5−HT1B受容体のインビボ研究に適している放射リガンドの開発の必要性がまだある。本発明は、5−HT1B受容体に対する新規な放射性リガンドを提供することによりこの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式I:
【化1】

の同位体で標識された化合物又はその薬学的に許容しうる塩を提供し、式中、式Iの化合物の1つ又はそれ以上の原子は、その原子について天然に通常見いだされる原子量又は質量数と異なる原子量又は質量数を有する原子で置き換えられている。
【0006】
実施態様の説明
本明細書において、式I:
【化2】

の同位体で標識された化合物又はその薬学的に許容しうる塩が提供され、式中、1つ又はそれ以上の原子が、天然に通常見いだされる原子量又は質量数と異なる原子量又は質量数を有する水素、炭素、窒素、酸素の同位体で独立して置き換えられている。同位体標識としては、3H、11C、14C、13N及び15Oが挙げられるがこれらに限定されない。
【0007】
本発明は、3H、11C、13N、及び15Oより選択される少なくとも1つの同位体標識を含む式Iの化合物を提供する。
【0008】
本発明は、3H又は11Cより選択される少なくとも1つの同位体標識を含む式Iの化合物を提供する。
【0009】
本発明は、同位体標識として14Cを含む式Iの化合物を提供する。
【0010】
本発明は、[3H] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)である式Iの化合物を提供する。
【0011】
本発明は、[11C ] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)である式Iの化合物を提供する。
【0012】
本発明は、式IIの化合物又はその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0013】
本発明は、式Iの化合物及び薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明は、5−HT1B受容体の陽電子放出断層撮影(PET)画像化における式Iの化合物の使用を提供する。
【0015】
本発明は、式Iの化合物と薬学的に許容しうる担体とを混合することを含む、医薬組成物を製造する方法を提供する。
【0016】
本発明は、[11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)のヒトの脳における空間分布を測定することにより、5−HT1B調節因子に応答性である該ヒトを同定する方法を提供する。
【0017】
本発明は、ヒトの脳における[11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の空間分布を測定することにより、該ヒトにおける抑うつを診断する方法を提供する。
【0018】
本発明は、ヒトの脳における[11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の空間分布を測定することにより、該ヒトにおける抑うつをモニタリングする方法を提供する。
【0019】
本発明は、ヒトの脳における[11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の空間分布を測定することにより、5−HT1B調節因子の用量を同定する方法を提供する。
【0020】
本発明は、式Iの製造における中間体としての、8−(1−ピペラジニル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド又はその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、1つ又はそれ以上の5−HT1B受容体を画像生成量の1つ又はそれ以上の同位体で標識された式Iの化合物で標識すること、及び陽電子放出断層撮影(PET)により哺乳動物における化合物の空間分布を測定することを含む、該哺乳動物における1つ又はそれ以上の5−HT1B受容体のPET画像化のための非侵襲性方法を提供する。
【0022】
陽電子放出断層撮影(PET)は、組織内の陽電子を放出する同位体の濃度を測定するための技術である。これらの測定は、典型的には生きている被験体の外にあるPETカメラを利用する。PETは、いくつかの工程に分けることができ、これらの工程には、陽電子放出同位体を含むように化合物を合成すること;同位体で標識された化合物を哺乳動物に投与すること; 及び陽電子活性の分布を放射トモグラフィにより時間の関数として画像化することが含まれるがこれらに限定されない。PETは、例えばAlavi et al.によりPositron Emission Tomography, Alan R. Liss, Inc.出版、1985において記載される。
【0023】
単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)では、哺乳動物の身体に導入された同位体で標識された化合物の濃度に関する情報が得られる。一般的に、SPECTは、電子捕獲及び/又はガンマ放射により崩壊する同位体を必要とする。被験体は、放射活性標識薬剤を典型的にはトレーサ用量で注射される。核崩壊は単ガンマ線の放出を生じ、これが組織を通過して、SPECTカメラで外部から測定される。コンピューターにより断層像として再構築された放射活性の取り込みは、断層像における組織分布を示す。
【0024】
意図された投与様式によって、本発明の化合物は固体、半固体又は液体の投薬形態、例えば錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム、ゲルなどの形態の医薬組成物中であり得る。組成物は、正確な投薬量の単回投与に適した単位投薬形態であり得る。いくつかの実施態様において、化合物は液体形態であり得る。いくつかの実施態様において、化合物はHPLCにより精製され、滅菌フィルターを通してろ過され、そして個体に静脈内投与される。
【0025】
組成物は、薬学的に許容しうる担体と組み合わせて有効量の化合物を含み得、そしてさらに、他の薬剤、医薬品、担体、アジュバント、希釈剤などを含み得る。薬学的に許容しうるは、生物学的又は別の点で望ましくないことのない物質を意味し、すなわち、その物質は、どんな望ましくない生物学的作用も引き起こさず、それが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用もせずに、化合物と共に個体に投与され得る。
【0026】
本明細書に開示される発明がより効果的に理解され得るように、実施例が以下に提供される。これらの実施例は説明の目的のためのみであり、いかなるようにも本発明を限定すると解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0027】
実施例1: 放射性リガンド前駆体(8−(1−ピペラジニル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の合成
【化3】

12.82g(89.9mmole)部の2−クロロ−5−メチルフェノールを75mLのジエチルエーテルに溶解した。10.9g(107.9mmole)部のトリエチルアミンを撹拌しながら滴下し、続いて14.04g(98.9mmoles)のアセチレンジカルボン酸ジメチルを滴下するとわずかに温度上昇した。反応混合物を終夜室温で撹拌し、次いでエーテルですすぎ、そしていくらかの残留物を溶解するために少量のTHFを使用して分液漏斗に移した。この混合物を2回200mLの1N NaOHで洗浄し、1回水で洗浄し、次いで2回飽和NaClで洗浄し、最後にMgSO4で乾燥した。ろ過及びロータリーエバポレーションによる溶媒の除去により淡黄色透明油状物を得、これを次の反応に直接持ち越した。
【0028】
【化4】

前の工程からの油状物を、50mLのEtOHに溶解させ、そしてこの溶液を撹拌しながらNaOH(14.4g, 360mmoles)の50mLの水中の溶液に室温でゆっくりと加えた。生じた透明な黄琥珀色の溶液を80−90℃で2時間加熱し、次いで30分間還流させた。この反応混合物を室温まで冷却して200mLの水で希釈し、150mLのエーテルで2回抽出し、次いで濃HClを撹拌しながらゆっくり加えて酸性化した。生じた乳白色懸濁液を、酸性生成物のプロトン化を完了させるためにさらに濃HClを加えながら、エーテル及び酢酸エチルで数回抽出した。エーテル及び酢酸エチル抽出物は別々に、飽和NaClで2回洗浄し、乾燥し(MgSO4)、ろ過し、そしてエバポレートしてそれぞれ5.44g及び13.41gのO−(1,2−ジカルボキシエテニル)−2−クロロ−5−メチルフェノールを淡黄色固体として得た(2工程で82%)。
【0029】
【化5】

4.989g(名目上19.4mmole)部のO−(1,2−ジカルボキシエテニル)−2−クロロ−5−メチルフェノールを加温しながら9mLの濃硫酸に溶解し、次いで80−90℃に10分間維持した。生じた黒色粘性混合物を約80℃と還流温度との間に維持された55mL分の無水エタノールに滴下した。添加が完了した後、エタノール溶液を数分間還流し、次いで穏やかな窒素気流を使用して体積をおよそ3分の1まで減らした。次いでこの溶液をゆっくりと−20℃に冷却し、そして終夜放置した。生じた結晶性固体をろ過により集め、次いで冷1:1 エタノール/水で洗浄し、そして真空乾燥して2.568g(50%)の8−クロロ−2−エトキシカルボニル−5−メチルクロマ−2−エン−4−オンを銀白色フレークとして得た。
【0030】
【化6】

不活性雰囲気下で10mLの反応容器に300mg(1.12mmole)の8−クロロ−2−エトキシカルボニル−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン、312mg(1.69mmole)の1−t−ブチルオキシカルボニルピペラジン、41mg(0.042mmole)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、53mg(0.108mmole)のジシクロヘキシル[2−(2,4,6−トリスイソプロピルフェニル)フェニル]ホスフィン及び510mg(1.57mmole)の無水炭酸セシウムをいれた。8mL部の乾燥トルエンを注入し、そして反応混合物を不活性雰囲気下で撹拌しながら100−110℃の浴中にて約16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで酢酸エチルと水との間で分配した。有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そしてエバポレートして固体を含む655mgの橙色油状物を得た。メタノール/ジクロロメタンを使用するシリカゲルクロマトグラフィーで所望の成分を分離して固体を含む301mgの橙色油状物を得、これから160mg(34%)の8−(4−t−ブトキシカルボニル−1−ピペラジニル)−2−エトキシカルボニル−5−メチルクロマ−2−エン−4−オンを、エーテルでのトリチュレーションの後に単離した。
【0031】
【化7】

150mg(0.373mmole)部の8−(4−t−ブトキシカルボニル−1−ピペラジニル)−2−エトキシカルボニル−5−メチルクロマ−2−エン−4−オンを、15mLの3:1:1 (v/v/v) THF/MeOH/H2Oに溶解した。31mg(0.75 mmol)部のLiOH.H2Oを加え、そしてこの混合物を均質になるまで撹拌し、次いで室温で約16時間放置した。有機溶媒の大部分を窒素気流を用いてエバポレートし、1N HClを加えることにより残りの溶液をpH約3に酸性化した。酢酸エチルで抽出し、そして抽出物を飽和ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そしてエバポレーションして141mg(97%)の8−(4−t−ブトキシカルボニル−1−ピペラジニル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−カルボン酸を黄色固体として得た。
【0032】
【化8】

10mLの反応容器に、141mg(0.363mmole)の8−(4−t−ブトキシカルボニル−1−ピペラジニル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−カルボン酸、65mg(0.363mmole)の4−モルホリノアニリン、151mg(0.472mmole)のO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート、64mg(0.472mmole)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物及び約1mg (約0.009mmole)の4−ジメチルアミノピリジンを入れた。この混合物に4mLの乾燥ジメチルホルムアミド及び101μL (73mg, 0.726mmole)のトリエチルアミンを続けて素早く加え、そしてこの混合物を室温で約16時間撹拌した。溶媒の大部分を真空でエバポレートし、残留物をクロロホルムと飽和炭酸水素ナトリウム溶液との間で分配した。分離した有機相を水で3回洗浄し、次いで飽和ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そしてエバポレートして274mgの暗琥珀色ガラス状物質を得た。メタノール/ジクロロメタンを使用するシリカゲルクロマトグラフィーにより結晶を含む209mgの暗琥珀色ガラス状物質を得た。エタノール/ジクロロメタンからの結晶化により111mg(56%)の8−(4−t−ブトキシカルボニル−1−ピペラジニル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミドを得た。さらに69mgが二回目の収穫で得られた。
【0033】
【化9】

129mg(0.235mmole)部の8−(4−t−ブトキシカルボニル−1−ピペラジニル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミドを6mLの1:1 (v/v) トリフルオロ酢酸/ジクロロメタンに溶解し、室温で30分間放置した。黒色混合物をジクロロメタンで希釈し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと加えて塩基性化した。有機層を分離し、飽和ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そしてエバポレートして71mgの黄色固体を得た。ジクロロメタン/ヘキサンからの再結晶により61mg(58%)の式II 8−(1−ピペラジニル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミドを綿毛状黄緑色針状晶として得た。
【0034】
実施例2: トリチウム化放射性リガンド [3H] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の合成
0.3ml DMF中の1.6mg (3.57umole)の前駆体8−ピペラジン−1−イル−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミドに、100mCiのC3H3I (100μl DMF溶液、Amersham)を加え、最後に100μl DMFを洗浄液として使用して合計0.5mLの反応体積にした。反応液を密封し、そして100−110℃の油浴中に置き、そして50分間撹拌しながら加熱した。反応混合物を放冷させ、そして6mgのBoc無水物を加え、そして密封して60分間加熱した。揮発性物質を除去し、そして生成物をアセトニトリル及び水中0.1% TFA 50/50に溶解した。生成物をHPLC C18 Phenomex Lunaカラム(10×50cm; グラジエント 10分間で20−60% アセトニトリル(0.1% TFA)(保持時間=8.1分)で単離した。別々の単離操作の主要フラクションを合わせて; エバポレートし、そしてEtOH(6.3mL)に再溶解して、80 Ci/mmoleにて 26.8 mCi(4.25mCi/mL)で99%の放射化学的純度を示した。
【0035】
実施例3: 11C 放射性リガンド: [11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の合成
[11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)を、[11C]メチルトリフレートを使用し、そしてHPLCで精製して、対応する脱メチル化前駆体8−ピペラジン−1−イル−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)のメチル化により製造した。HPLCからの集めたフラクションをエバポレートし、そして残留物を8mLの滅菌生理学的リン酸緩衝液(pH=7.4)に再溶解した。滅菌ろ過の後、製剤化された製品溶液は滅菌でかつパイロジェンフリーである。
【0036】
生物学的試験
5HT1B−受容体結合及び占有のPET決定のための放射性リガンドとしての、[11C]標識放射性リガンドの適合性を決定するためにカニクイザルを使用した。ケタミン(1時間あたり3−4mg/kgのKetalar, Parke−Davis)及びキシラジン塩酸塩(1時間あたり1−2mg/kgのRompun(登録商標) Vet., Bayer, Sweden)の混合物を各測定期間の間繰り返し筋内注射することにより、麻酔を導入及び維持した。サルの頭部をPET測定の間位置決めするために固定装置を使用した。体温をBair Hugger − Model 505 (Arizant Healthcare Inc, MN)により制御した。
【0037】
PET画像収集
脳内の放射活性を、3次元モデルにおいて使用することができるSiemens ECAT Exact HR47システムを用いて測定した。このシステムは、15cmの体軸方向距離をカバーする。再構成画像の体軸横断方向分解能は、約3.8mmの半値幅(full width at half−maximum)(FWHM)及び体軸方向分解能4.0mm FWHMであった。 透過スキャンは、3つの回転する68Ge−68Ga線源を用いて収集し、そして組織及び頭部支持材を通る511keVの光子線の減衰に対して放射スキャンを補正するために使用した。
【0038】
サルにおけるPET測定
各PET測定において、約1.4mCi (50MBq)の[11C]標識化合物を含有する滅菌生理的リン酸緩衝液(pH=7.4)を2秒の間に腓腹静脈内にボーラス注射し、同時にPETデータ収集を開始した。脳内の放射活性を、[11C]標識化合物の静脈内注射直後に開始した予めプログムされた一連の15フレーム(frames)に従って93分間連続して測定した。最初の3つのフレームはそれぞれ1分であり、その後の3つはそれぞれ3分であり、そして残りのフレームは6分であった。
【0039】
各サルにおいて、ベースライン測定を午前に行い、そして処置前測定を同日の午後に行った。全ての処置前測定において、参照リガンドを、放射性リガンド注射の30分前に静脈注射した。全ての参照リガンドは、3〜5分の時間フレームにわたって遅いボーラス注射された。
【0040】
全てのPET測定の間、静脈血サンプル(約0.5ml)を4つの時点(約4、15、30及び45分にて)で採取し、そして血漿放射活性濃度をウェルカウンターで測定し、カメラを用いて相互較正した。静脈サンプルはまた、HPLCによる血漿中の未変化放射性リガンドの決定のためにも使用した。
【0041】
関心領域(ROI)
静脈注射の9分後から測定の終了までに測定された放射活性を示すPET総和(summation)画像にROIを描いた。線条、黒質、橋、視床、視床下部、淡蒼球、前頭皮質、小脳及び脳輪郭全体を、インサイチュで低温切開されたカニクイザル頭部のアトラスに従って規定した。放射活性を、時間フレームの順序について計算し、放射活性減衰について補正し、そして時間に対してプロットした。各領域について、時間−活性曲線を作成し、そして放射活性をnCi/mlとして表した。
【0042】
最大放射活性の時点で脳内に存在する注射された放射活性化合物のパーセンテージを計算するために、脳全体についてのROIにおける放射活性濃度を、体重4kgのカニクイザイルについて65mLの推定脳体積と掛け算した。次いで脳内の総放射活性について算出された値を、注射された放射活性で割り、そして100をかけてパーセンテージを得た。
【0043】
定量分析
小脳は、5−HT1Bの密度がごくわずかである領域であり、置き換え可能な放射性リガンド結合がない場合の参照領域として使用される。従って小脳皮質における放射活性は、脳内の遊離放射性リガンド及び非特異的に結合した放射性リガンドについての近似値として使用される。
【0044】
高密度領域における5−HT1Bに対する特異的放射活性リガンド結合についての時間曲線は、ROIと小脳との間の総放射活性濃度の差として規定される。ピーク平衡の時間は、特異的結合についての曲線がそのピークに達した瞬間として規定される。
【0045】
小脳に対するROIにおける結合の比は、ピーク平衡が生じた場合にサルにおいて計算される。この比は結合ポテンシャル(BP)に対応し、利用可能な受容体の密度についての指標として見ることができる。全ての計算は、脳内の放射活性が変化していない放射性リガンドを表すという仮定に基づく。
【0046】
実施例3の化合物は、霊長類の脳に急速に進入し、そして有用な霊長類PETリガンドであるために非特異的比(小脳のように非特異的と規定される)に対して充分に高く特異的に、関心のある領域に対して特異的に結合する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】サル脳における同位体で標識された化合物の局所分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3H、11C、13N、又は15Oより選択された少なくとも1つの同位体標識を含む、式I:
【化1】

の同位体で標識された化合物又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
3H又は11Cより選択された少なくとも1つの同位体標識を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
同位体標識として14Cを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
[3H]8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
[11C]8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式IIの化合物又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物及び薬学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。
【請求項8】
5−HT1B受容体の陽電子放出断層撮影(PET)画像化における、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容しうる担体とを混合することを含む、医薬組成物を製造する方法。
【請求項10】
[11C]8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)のヒトの脳における空間分布を測定することにより、5−HT1B調節因子に応答性であるヒトを同定する方法。
【請求項11】
ヒトの脳における[11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の空間分布を測定することにより、ヒトの鬱病を診断する方法。
【請求項12】
ヒトの脳における[11C] 8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の空間分布を測定することにより、ヒトの鬱病をモニタリングする方法。
【請求項13】
ヒトの脳における[11C]8−(4−メチルピペラジン−1−イル)−5−メチルクロマ−2−エン−4−オン−2−(4−モルホリノフェニル)カルボキサミド)の空間分布を測定することにより、5−HT1B調節因子の用量を同定する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−532328(P2009−532328A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555191(P2008−555191)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000135
【国際公開番号】WO2007/094718
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】