説明

500KPAを超す圧力で土壌を強化する、または、構造物を持ち上げる方法

【課題】基礎土壌を強化するため、または、500kPaを超す圧力を土壌に加える非常に重い/大きい構造物を持ち上げるための方法を提供する。
【解決手段】強化されるべき土壌に、または、持ち上げられるべき構造物の基礎の下方の土壌に、化学反応の結果として膨張し、かつ、その膨張の間に500kPa以上の土壌の圧縮圧力を生成するのに適した膨張可能物質を注入する。膨張可能物質は、膨張する間、周囲の土壌に、500kPaよりも大きく、10,000kPaを超える圧力を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎土壌を強化するための、または、非常に重い又は大きい構造物を持ち上げる方法に関し、500kPaを超す圧力をかける必要がある方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物のために基礎土壌を強化する発明の分野では、構造物を建築する前と後の支持強度を増すことが目的とされ、床や舗装の沈下を未然に防ぐ発明の分野では、化学反応の結果により膨張する物質を用いることが知られている。このような物質は、多価アルコールとMDIイソシアン酸塩の混合物からなるタイプの物質や、似たような膨張可能な物質が知られており、膨張の後に凝固し、上記膨張を永続させる。
【0003】
本願と同じ出願人による欧州特許第851,064号は、基礎土壌の耐力を増大させるための方法を開示しており、この方法は、実質的に、土壌に間隔をおいて複数の深い孔を形成することと、これらの孔を介して上記タイプの膨張物質を注入することからなる。上記物質は、その構成材料の化学反応の結果、膨張し、常圧の下で最初の体積の少なくとも5倍の体積の増大を生じさせる膨張力を利用する。上記物質の膨張は、意図された耐力に達するまで、近接する土壌の締め固めを生じさせる。影響を受ける土壌の標高や、その土壌の領域を覆っている構造物の標高が、その持ち上がりの開始を検知するために絶えず観測されている。この土壌の持ち上がりは、基礎土壌が、その上を覆う構造物を支持するのに適した耐力を達成したこと、あるいは、構造物が無い場合は、地盤と注入領域との間の土壌の層が締め固められたことを意味する。
【0004】
明らかに、上記構造物は、関連する物質の膨張によって生じた圧力が、上記膨張により作用する圧力と、上記構造物の静的および動的重量と注入地点を覆う土壌の重量とで作用する圧力と、上記土壌中の摩擦力で作用する圧力とによって上記土壌に作用する圧力よりも大きい場合に、持ち上がり得る。
【0005】
これらの物質の膨張によって生じ得る最大圧力は、以前より、最大でも500kPaと見積もられている。したがって、この方法は、非常に大きい、または、非常に重い建築物および構造物には、それらは一般的に500kPa以上の圧力を土壌に与えるので、その基礎の締め固めを実行することや、そのような構造物を持ち上げようとすることには適しているとはみなされておらず、また、用いられていなかった。これは、上記構造物の下での上記物質の膨張は、土壌の締め固めを改善したり、上記構造物の持ち上げを生じさせたりするのは不可能だと考えられていたからである。さらに、既に良好に締め固められて500kPa以上の破壊強度を呈する土壌を、それ以上締め固めるという試みはなされていなかった。
【0006】
低重量構造物の下や無負荷の土壌においても、500kPa以上の土壌の圧縮(compression)を生成することは、好都合であり得るし、あるいは、不可欠であり得る。土壌の低い支持強度によって生じる沈下(構造物の負荷が500kPa以下であれば、同じ出願人による上述の特許において開示された方法によって、効果的に解決できる)と、十分な支持強度を有していても細粒土壌において発生することがある圧密沈下との間の相違点を強調することは、実際に重要である。現実に、比較的軽い構造物が、被覆荷重を超える耐力を有する土壌の上に建てられていても、しばしば沈下する。これは、長時間が経過すると、水の移動により、体積の減少を引き起こす圧密過程が進行中となり、その結果として沈下を伴うというだけの理由で発生する。
【0007】
同様の状況において、構造物への損害を回避するために、これらの沈下の開始を当初から防止することが重要である場合がある。そのような場合、通常は、設計において直接に、ある程度の沈下を許容することができる基礎と構造物が提供される。しかしながら、既存の構造物に対して、この設計がなされていない、あるいは、深い地質的調査を行っても、正確な沈下予測を定式化することが非常に困難であることを考慮して、予測された沈下量が正確でないことが判明したところで、また、例えば器具や機械の最小限レベルの振動を防止するために、これらの沈下の開始を当初から防止することが重要であるところで、それらの現象を改善するまたは防止するためにインターベンション(intervene)を行うのが重要である。土壌の圧縮の大きな増加(支持強度のみに対して要求された圧縮よりもずっと高い)が、強化の進行を導き、したがって、沈下を防ぐからである。
【0008】
土壌のエドメトリック(edometric)係数は、実際は、沈下に反比例する。土壌の高い圧縮(500kPa以上)は、エドメトリック係数を増大し、その結果、これらの種類の土壌でさえも沈下を低減する。
【0009】
最後に、一般的な基準では、表面の基礎において、3の安全係数が必要である。したがって、基準に従うためには、いかなる基礎土壌も、被覆する構造によって引き起こされる応力の少なくとも3倍の支持強度を有していなければならない。
【0010】
すなわち、500kPa以上の膨張物質の膨張圧力が必要とされるような上述の全ての問題には、上で言及されたタイプの膨張物質は、上述の値の膨張力を生成することができないと考えられたので、上述の方法では扱われなかった。
【0011】
驚くべきなのは、出願人によって行われた高密度土壌のインターベンション(intervention)において、この確信を疑問視する結果が得られ、上記物質によって生成された圧力は仮定によるものよりも高い可能性があると考察するに至った。
【0012】
この理由で、出願人は、化学反応の結果として膨張する物質の膨張によって得られる実際の最大圧力を特定することを目的として、複数の実験を行った。
【0013】
上記膨張可能な物質をインターベンション(intervention)に用いるのは不可能であると従来信じられていたので、これらの実験結果は、いずれも等しく驚くべきものであった。なぜならば、ある条件で上述の対応の物質によって生成された最大圧力は、仮定による圧力よりも相当に高かったからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、特に、沈下の後の修復のために、基礎土壌を強化し、また、500kPaを遙かに超える地盤の圧力に打ち勝つことによってのみ持ち上げることができるような、例えば超高層ビル、大きな記念碑の建物、ブリッジ、ハイウェー構造、サイロ、ダム、大きなインフラストラクチャー等のような、非常に大きい、または、非常に重い構造物を持ち上げるために、すなわち、化学反応の結果として膨張する物質を用いることは従来想像できなかったインターベンション(intervention)のために、また、それほど重くない構造物が被覆する幾つかの種類の土壌において、沈下を防止し、かつ、長期間の構造物の安定を保証するただ一つの方法である場合があるので、いかなる場合にも過圧密の効果を得るために、これらの物質の膨張によって生成された力を利用することを可能とする方法を提供することにある。
【0015】
この目的の範囲内では、本発明の目的は、既知の種類のインターベンション(intervention)で必要とされたよりも相当に低いコストで、非常に大きい、または、非常に重い構造物の沈下の後に、予防または修理を行うことを可能にする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的、および、以下により明らかになる他の目的が、基礎地盤を強化するための方法、または、500kPaより大きい圧力の適用が必要である非常に重い、または、非常に大きい構造物を持ち上げるための方法によって達成され、その方法は、強化されるべき土壌に、または、持ち上げられるべき構造物の基礎の下方の土壌に、化学反応の結果として膨張し、かつ、その膨張の間に500kPa以上の土壌の圧縮圧力を生成するのに適した膨張可能物質を注入することを特徴とする。また、一実施形態において、この方法は、基礎土壌の適切な強化を確実に行うために、及び/または、500kPaを超す圧力を土壌にかける非常に重いまたは非常に大きい構造物の持ち上げを確実に行うために、処理すべき基礎土壌が500kPaを超す膨張圧力を必要としていることを確定する工程と、化学反応の結果として上記基礎土壌内へと膨張する間に500kPaを超す圧力であって、10000kPaにまで達することができ、さらには10000kPaを超すことのできる圧力を生成するようになっている膨張可能物質を用意する工程と、垂直膨張試験を通じ、及び上記基礎土壌の地質的調査データと、処理すべき基礎土壌において達成すべき圧力と、この圧力を与えることの結果として生じる上記膨張可能物質の密度と、意図した結果を達成するのに必要な上記膨張可能物質の体積とに基づく数学的計算を通じて確定される上記膨張可能物質の膨張圧力に基づいて、必要な基礎土壌の強化の度合い及び達成すべき構造物の持ち上げに対する上記膨張可能物質の注入すべき量を確定する工程と、強化されるべき土壌に、または、持ち上げられるべき構造物の基礎の下方の土壌に、上記確定された量の膨張可能物質を注入し、この注入した量の膨張可能物質が膨張する間に上記土壌内に500kPaを超す圧力を生成する注入工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、本発明による方法は、上記注入工程が、
互いに間隔をおいて、上記構造物の基礎の下方の前方、または、下側に位置する複数の孔を土壌に形成すること、
上記孔を通して、化学変化の結果として膨張すると共に、多価アルコールとMDIイソシアン酸塩の混合物からなる物質、あるいは、同様の膨張可能な物質であって、膨張開始時間が実質的に2秒から25秒の間であり、膨張の結果、膨張前の体積の5倍以上の体積に増大する潜在的体積を有する物質を注入すること、
上記土壌が意図された強化の度合い、または、上記構造物が意図された持ち上がりの度合いに達する時点を測定すること、
上記土壌が意図された強化の度合い、または、上記構造物が意図された持ち上がりの度合いに達したときに、上記膨張可能な物質の注入を終了すること
を含む。
【0018】
好ましい、しかし、限定的でない実施形態であって、非制限的な例としてのみ以下に与えられる詳細な説明および添付図面から、本発明のさらなる特徴および利点がより明確になるであろう。
【0019】
(本発明を実行する方法)
本発明による方法は、土壌に複数の孔を形成する第1のステップを備えるのが好都合であり、上記孔は、構造物の基礎の下方の前面(lower front)または下側に、互いに間隔が置かれている。
【0020】
形成されるべき上記孔の数、それらの寸法およびそれらの相互の距離は、上記構造物を持ち上げるために克服すべき力に基づいて計算され、すなわち、上記構造物の荷重と、処理される土壌への上記荷重の分布とに基づいて計算される。
【0021】
上記孔は、必要に応じて、鉛直方向に、または、鉛直に対して傾斜して延びることが可能である。
【0022】
これらの孔を通って、上記孔に前もって挿入されたチューブの補助により、構成成分の間の化学反応の結果として膨張する物質が上記土壌に注入される。上記物質は、多価アルコールとMDIイソシアン酸塩の混合物、または、同様の膨張可能な物質であって、2〜25秒の間の膨張開始時間を有し、好ましくは2〜7秒の間であり、膨張前の体積の少なくとも5倍に増大する潜在的な体積を有する。「潜在的な体積の増大」は、大気圧で妨害されない状態で生じる膨張の結果として、上記物質に生じる体積の増加をいう。
【0023】
例えば、べた基礎のように、やや(rather)幅広の基礎を有する構造物の場合は、膨張可能な物質の動作の領域を厳密に特定する必要が無いところで、7秒以上膨張開始時間を有する膨張可能物質を用いることができる。
【0024】
その代わりに、膨張可能な物質の動作の領域を高精度に特定する必要がある場合は、2〜7秒の間の膨張開始時間の物質を選択するのが好ましい。
【0025】
上記物質は、膨張の後、徐々に堅くなってその膨張を永久的に維持する、クローズドセル・ウレタンフォームによって構成される。
【0026】
膨張可能な物質の構成成分は、ポンプを備えた混合装置の内部で混合され、このポンプは、土壌の中に形成された孔に挿入されたチューブに接続されている。
【0027】
上記膨張可能な物質は、好ましくは2つの構成物質で構成され、第1の構成成分は、例えば、オランダ国のResina Chemie社によって作られたURETEK GEOPLUS Aのような、ポリエーテル・ポリオールおよび/またはポリエステル・ポリオールを含む多価アルコール混合物、触媒および水によって構成され、第2の構成成分は、同じ会社によって作られた、例えばURETEK GEOPLUS BのようなMDIイソシアン酸塩によって構成され、この膨張可能な物質は、およそ3秒の膨張開始時刻を有し、特に、以下に詳細が説明されるように、測定された最大の膨張力を生成することができる。
【0028】
これらの2つの構成成分を混合することにより、ウレタンフォームの膨張が生成され、このウレタンフォームは、上記膨張の終わりにおいて、膨張に対する抵抗、すなわち、考慮されたケースでは、注入領域に隣接する土壌によって対抗される抵抗に応じて、密度が異なる。
【0029】
また、上記物質が隣接した土壌に伝える圧力は、密度に比例し、したがって、上記物質が注入される土壌によって対抗された抵抗に比例する。
【0030】
垂直の膨張試験が、URETEK GEOPLUS A+Bの混合物、触媒および水の各々を調節した量で用いられて、エンドメトリック(endometric)の条件で実行され、以下の表のような結果が得られた。この表において、略記号は、P(重さ)、D(直径)、H(高さ)(V(体積))、a(膨張圧力)およびt(試験時間)であり、また、試験サンプルの特徴が表わされている。
【0031】
【表1】

【0032】
試験は、パドバの大学の特殊な研究所で利用可能であった器械を使用して行われ、実質的に、重荷重がかかる基礎土壌に注入されて膨張する間に物質にかかる圧力条件と似た圧力条件に制御された圧力を生成することに基づいて行われ、その結果、様々な試験サンプルの膨張圧力を測定した。
【0033】
添付の図1−3は、それぞれ、膨張の終わりにおいて、物質の密度の関数としての上記物質の膨張によって生成された圧力を示したものであり、これは、注入が行なわれる土壌の膨張時間、および、容積重量の密度に、既に述べたように比例する。
【0034】
上記物質の膨張によって実際に生成された圧力は、10,000kPaに達し、また、超える場合があり得ることが分かる。
【0035】
上記膨張によって生成された圧力は、また、上記物質の温度に関連して変化する。
【0036】
図示された図表は、80℃と238.6℃との2つの異なる温度において、2本の圧力のカーブを示す。
【0037】
膨張開始時刻は、必要な条件に応じて、物質の2つの構成成分の比率を修正することにより、変更することができる。より詳細には、物質の分散が生じる土壌への注入は短時間であるのが好しく、また、より均一でより固められた土壌を得るためには、長時間(2〜7秒が好ましい)の注入が好ましい。7秒以上の時間は、非常に長大な基礎の場合に適しており、また、有用である。
【0038】
必要な条件に応じて、上記物質は、土壌の中に形成された孔の中に単一の工程で注入でき、これは、上記注入地点を徐々に上昇させて、したがって、上記土壌の中に形成された孔の中のチューブを上方に引き込むことによる。あるいは、上記物質は、注入地点の断続的な上昇を生じることにより、複数の工程で注入でき、これは、上記孔の中のチューブを、断続的な停止を有するように、上方に引き上げることによる。
【0039】
例えば、非常に大きく重い構造物を持ち上げるか、または、構造物の損害を回避するために構造物を同時かつ均一に持ち上げるために、広大な表面において膨張可能な物質によって生成された圧力を同時に利用することが必要な場合、上記膨張可能な物質は、任意の複数のポンプを用いて、複数の穴に同時に注入される。
【0040】
上記膨張可能な物質は、注入の間、非常に流動的であり、したがって、土壌の比較的少ない密度の領域に、より容易に浸透する。この後の上記物質の膨張は、土壌の密度の比較的少ない領域をより強く圧縮し、上記土壌の密度の均一性をさらに改善する。
【0041】
注入された物質の膨張の迅速さは、膨張によって比較的正確に影響を受けた領域の限界を定めることにより、いかなる場合でも上記物質の望まれない分散を回避し、したがって、土壌の圧縮、および、構造物を上がることにおける優れた効果を得ることができる。膨張の間に上記物質によって生成される土壌の押圧の効果は、流体圧力からではなく、上記構成成分の化学反応から発生する。上記膨張可能な物質は、流体圧力を用いることにより土壌に注入されるが、上記流体圧力は、意図したポイントに上記物質を導入するためだけに用いられる。
【0042】
土壌の中に形成された孔の深さについては、機能の発揮を望む構造物について、その下方の土壌を圧縮する方法に応じて変えてもよい。
【0043】
どのような場合でも、「基礎土壌」の表現は、圧力バルブ(pressure bulb)によって覆われた領域を示すために用いられる。上記圧力バルブとは、上記基礎の下方にあり、静的および動的荷重によって起こされる略全ての応力およびひずみが消散する領域であり、固有のケースにおいて各々計算される領域であるが、一般的には、上記基礎の底面よりも下方に、上記基礎の幅の約2−3倍の深さに相当にする。
【0044】
構造物を持ち上げるために、また、基礎をなす土壌の修復または沈下の防止のために基礎地盤を強化するために、上記土壌の状況に応じて、以下の2つの方法を行うことが可能である。
【0045】
第1の方法は、上記圧縮バルブの全ての厚み、および、圧縮または支持強度が低い層のさらなる厚みを、十分に強度のある層に強化するために、深さがどうであれ、固い層位まで処理することを含む。上記固い層位は、地質工学的な分析により、特定できる。
【0046】
一方、第2の方法は、技術的および/または資金的な都合のために、過剰な深さに存在するであろう固い層位には達しないが、いかなる場合も広範囲の地表面に載る荷重を消散するのに十分な厚みを有する土壌の層(少なくとも圧力バルブに等しい)を処理することを含む。
【0047】
インターベンション(intervention)が、注入領域の上方に位置する構造物を持ち上げることを目的とする場合、上記膨張可能物質を注入する間、上記構造物の持ち上がりの開始を高精度に検出するために、処理される土壌領域の上の上記構造物の標高が、レーザーレベルや他のシステムによって常に観測される。
【0048】
上記構造物の持ち上がりの開始は、その地点で土壌に実行された圧密(compaction)は、上記構造物を支持するために十分であり、また、上記物質のさらなる膨張は構造物を持ち上げることを意味する。
【0049】
インターベンション(intervention)が、例えば剛性や荷重の理由により、持ち上げることが許されない場合や、単に持ち上げが目的とする効果ではない場合のように、構造物を持ち上げることなく基礎土壌を強化することを目的とする場合は、要求された強度の達成は、構造物の持ち上がりの開始を観測する代わりに、注入された膨張可能物質の量を測定することによって決定される。実際には、事前の適切な計算によって、意図する強化を達成するために幾らの膨張可能物質を注入すべきかが決定され得る。個別的に実行される注入の間(実行が容易で、そのうえ最大の強化を達成することができる)、必要とする強化の度合いを決定したい場合、土壌の適切な地質的調査のデータと、得るべき強化の度合いと、与えられるべき圧力と、この圧力を与えることによって得られる膨張可能物質の結果として生じる密度と、最後に、意図する結果を達成するために要求される膨張可能物質の体積とに基づいて、数学的計算によって、注入すべき上記膨張可能物質の量を確立することができる。この手続は、確実に、より困難であり、より効果であり、また、インターベンションの大部分によって考慮された場合、完全に正当化される。
【0050】
ほとんど負荷を受けず、どのような場合でも沈下を防ぐために過圧密(overconsolidation)を必要とする土壌では、まず、上述の工程と同様の工程が行われ、そして、既に(部分的に)強化された土壌の中に、その前に実行された注入の間に、間隔をおいてさらなる注入が実行される。適切な地質学的な計算によって予め定められた値であって、要求される値が得られるまで、上記手順の繰り返しを継続する。
【0051】
このように徐々に高密度にされる土壌は、膨張可能な物質の膨張に対するさらなる抵抗力を提供する。それは徐々に強く自動的に制限されることにより、さらに高い膨応力を生成する。
【0052】
やや軽い構造物では、既に最初の注入によって生成されて既に荷重で十分に応力が生成されて、その点で要求されるより大きい応力の状態が生成されており、一度に単一の注入を行うことによって、注入点の上の単位荷重よりも大幅に大きい対比(contrast)圧力を提供でき、これは、既に高密度にされている土壌によって生成された対比圧力に追加されて、上記土壌の高い圧縮を実行することができる。また、より高い対比圧力を得るために、土壌または構造物上に荷重を加えてもよい。
【0053】
構造物が意図された持ち上がりの度合いに到達すると、または、土壌圧縮が意図された度合いに到達すると、物質の注入が遮られ、この後の上記物質の固化が、得られた結果を安定して維持する。
【0054】
述べたように、膨張の間に上記物質によって生成することができる圧力は、10,000kPaに達する、あるいは、超えることができる。これは、基礎の下方に上記物質を注入することにより、状況に応じて複数の点で同時に行うことにより、例えば超高層ビル、タワー、大きな記念碑、ブリッジ、ダム、ハイウェー構造、サイロおよび大きなインフラストラクチャー等のような非常に大きな構造を持ち上げることができ、あるいは、基礎土壌の強化を、これが非常に高圧力を必要とするものであっても、行うことができる。このことは、それゆえ、上述の技術を、従来考えられなかったインターベンションに用いることができることを意味する。同様に、殆ど荷重を受けないものであっても、土壌を、構造物の荷重によって生成される状態に関して、過圧密状態にすることができ、従来は化学反応の結果膨張する物質では対処できないと思われていた圧密沈下を妨げ、あるいは、停止させることができる。
【0055】
パリに位置する500kPaを相当超える非常に重い建築物の下に、本発明による方法で処理された基礎土壌において、(図4および図5に示すように)貫入試験が行われた。
【0056】
注入は、基礎の下の1,2および4,5mにおいて行われ、処理された領域は約9mの直線延長を有する。
【0057】
上記貫入試験は、初期の値に対して10倍以上に改善された動的抵抗力を示し、これは、構造物の持ち上げと、基礎土壌の信頼性ある強化を提供するのに完全に適切である。
【0058】
実際問題として、本発明の方法によれば、上述のタイプの膨張可能物質の従来知られていなかった特性を利用することにより、特に沈下の防止または修復のため、任意に非常に重いまたは非常に大きい構造物の持ち上げを行って、基礎土壌の強化インターベンションを行うことができ、また、殆ど荷重を受けていない細粒の土壌の圧密(過圧密)度合いを大幅に増大させることができるので、意図された目的を完全に達成することができることが見いだされた。
【0059】
このように、上記方法は、発明の概念の範囲内において多数の修正および変更が可能であると理解され、全ての細部は、他の技術的に均等な要素に置き換えることができる。
【0060】
本願が優先権を主張するイタリア特許出願第MI2001A002496号における開示は、ここにおいて、参照により結合される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、いくつかの注入条件での関数としての膨張圧力変化を示すグラフである。
【図2】図2は、いくつかの注入条件での関数としての膨張圧力変化を示すグラフである。
【図3】図3は、いくつかの注入条件での関数としての膨張圧力変化を示すグラフである。
【図4】図4は、重い構造物の下で、処理された基礎土壌上で行なわれた貫入試験の結果を示す比較図表である。
【図5】図5は、重い構造物の下で、処理された基礎土壌上で行なわれた貫入試験の結果を示す比較図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎地盤を強化するための、または、500kPa以上の圧力の適用が必要である非常に重い、または、非常に大きい構造物を持ち上げるための方法であって、
強化されるべき土壌に、または、持ち上げられるべき構造物の基礎の下方の土壌に、化学反応の結果として膨張し、かつ、その膨張の間に500kPa以上の土壌の圧縮圧力を生成するのに適した膨張可能物質を注入することを特徴とする方法。
【請求項2】
基礎土壌を強化するための、または、構造物を持ち上げるための方法であって、
基礎土壌の適切な強化を確実に行うために、及び/または、500kPaを超す圧力を土壌にかける非常に重いまたは非常に大きい構造物の持ち上げを確実に行うために、処理すべき基礎土壌が500kPaを超す膨張圧力を必要としていることを確定する工程と、
化学反応の結果として上記基礎土壌内へと膨張する間に500kPaを超す圧力であって、10000kPaにまで達することができ、さらには10000kPaを超すことのできる圧力を生成するようになっている膨張可能物質を用意する工程と、
垂直膨張試験を通じ、及び上記基礎土壌の地質的調査データと、処理すべき基礎土壌において達成すべき圧力と、この圧力を与えることの結果として生じる上記膨張可能物質の密度と、意図した結果を達成するのに必要な上記膨張可能物質の体積とに基づく数学的計算を通じて確定される上記膨張可能物質の膨張圧力に基づいて、必要な基礎土壌の強化の度合い及び達成すべき構造物の持ち上げに対する上記膨張可能物質の注入すべき量を確定する工程と、
強化されるべき土壌に、または、持ち上げられるべき構造物の基礎の下方の土壌に、上記確定された量の膨張可能物質を注入し、この注入した量の膨張可能物質が膨張する間に上記土壌内に500kPaを超す圧力を生成する注入工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
上記注入工程は、
互いに間隔をおいて、上記構造物の基礎の下方の前方、または、下側に位置する複数の孔を土壌に形成すること、
上記孔を通して、化学変化の結果として膨張すると共に、多価アルコールとMDIイソシアン酸塩の混合物からなる物質、あるいは、同様の膨張可能な物質であって、膨張開始時間が実質的に2秒から25秒の間であり、膨張の結果、膨張前の体積の5倍以上の体積に増大する潜在的体積を有する膨張可能物質を注入すること、
上記土壌が意図された強化の度合い、または、上記構造物が意図された持ち上がりの度合いに達する時点を測定すること、
上記土壌が意図された強化の度合い、または、上記構造物が意図された持ち上がりの度合いに達したときに、上記膨張可能物質の注入を終了すること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の方法において、
上記構造物の意図された持ち上がりの度合い、および/または、上記土壌の意図された強化の度合いは、上記注入の領域の上にある上記構造物の標高を継続的に観測することによって定めることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の方法において、
上記土壌の意図された強化の度合いは、上記膨張可能物質が注入される量を測定することによって定めることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の方法において、
上記膨張可能物質の膨張開始時間は、実質的に2秒から7秒の間であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の方法において、
上記膨張可能物質は、膨張する間、周囲の土壌に、この土壌によって押し返される応力に比例する圧力であると共に、500kPaよりも大きく、10,000kPaを超えることができる圧力を生成することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の方法において、
上記膨張可能物質は2つの構成成分を備え、
第1の構成成分は、ポリエーテル・ポリオールおよび/またはポリエステル・ポリオールを含む多価アルコール混合物、触媒および水で形成され、
第2の構成成分は、MDIイソシアン酸塩で形成されている
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれか1つに記載の方法において、
上記孔は、鉛直方向に形成されていることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項3乃至8のいずれか1つに記載の方法において、
上記孔は、鉛直方向に対して角度を有して形成されていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項3乃至10のいずれか1つに記載の方法において、
上記膨張可能物質の上記孔への注入は、複数の上記孔に同時に行うことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項3乃至11のいずれか1つに記載の方法において、
上記膨張可能物質の上記孔への注入は、対応する上記孔に沿って注入位置を徐々に上昇させながら、連続的に行うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項3乃至11のいずれか1つに記載の方法において、
上記膨張可能物質の上記孔への注入は、対応する上記孔に沿って注入位置を断続的に上昇させながら、複数の段階で行うことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載の方法において、
先行する注入工程で既に用いられた孔の間に間隔がおかれた孔に、上記膨張可能物質を注入する追加的な工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1つに記載の方法において、
非常に重いまたは非常に大きい構造物を持ち上げる間のダメージを回避するために、上記基礎土壌に設けられた複数の孔に同時に上記膨張可能物質を注入することを特徴とする方法。
【請求項16】
化学変化の結果として、処理すべき基礎土壌内への膨張の間、500kPaを超す圧力であって、10000kPaにまで達することができ、さらには10000kPaを超すことのできる圧力を生成するようになっている物質の使用法であって、
上記物質は、多価アルコールとMDIイソシアン酸塩の混合物からなり、膨張開始時間が実質的に2秒から25秒の間であり、膨張の結果、膨張前の体積の5倍以上の体積に増大する潜在的な体積の増大があり、
上記物質は、基礎土壌を強化するため、および/または、500kPaを超す圧力の適用を必要とする基礎土壌によって支持される非常に重いまたは非常に大きい構造物を持ち上げるために、上記基礎土壌に注入され、上記物質の膨張時、上記基礎土壌に500kPaを超す圧力であって、10000kPaにまで達することができ、さらには10000kPaを超すことのできる圧力を生成することを特徴とする使用法。
【請求項17】
請求項16に記載の使用法において、
上記膨張可能な物質は2つの構成成分を備え、
第1の構成成分は、ポリエーテル・ポリオールおよび/またはポリエステル・ポリオールを含む多価アルコール混合物、触媒および水で形成され、
第2の構成成分は、MDIイソシアン酸塩で形成されている
ことを特徴とする使用法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の使用法において、
上記膨張可能な物質は、実質的に2秒から7秒の間の膨張開始時間を有することを特徴とする使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−332771(P2007−332771A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222817(P2007−222817)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【分割の表示】特願2003−547717(P2003−547717)の分割
【原出願日】平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願人】(504204719)ウレテック・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (2)
【氏名又は名称原語表記】URETEK S.r.l.
【Fターム(参考)】