説明

6価クロム含有液の処理方法及び6価クロムの還元吸着材

【課題】6価クロム含有液を効率的に処理する方法及び6価クロムの還元吸着材を提供する。
【解決手段】多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6価クロム含有液の処理方法及び6価クロムの還元吸着材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
6価クロムは、高濃度排水としてメッキ工場等の排水に含まれている。また、中〜低濃度排水として生コン工場、コンクリート二次製品工場、ダムやトンネルの工事現場等セメントを使用する現場から出る排水等身近なところにも含まれている。また、6価クロムは、特殊な工場跡地において地下水に含まれている場合もある。6価クロムは人体に対して極めて有害であるため、水質汚濁防止法で厳しく規制されている(環境基準:0.05ppm、排水基準:0.5ppm)。
【0003】
近年、環境汚染等の問題から、地下水、工業排水、温泉等環境水からの重金属の除去が重要な課題となっており、重金属吸着材として、イミノジ酢酸基を有する石化原料由来のスチレン系基材からなる吸着材が使われている。
【0004】
また、放射線グラフト技術を用いて高分子基材にイミノジ酢酸基を導入することにより水溶液中の重金属を吸着させる研究開発も幾つかに開示されている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1等参照)。
【0005】
特殊な場合としては、スチレン系の陰イオン交換樹脂を用いて6価クロムを吸着することが報告されているが、吸着の効率が悪く、他の陰イオンが存在する場合には殆ど6価クロムを吸着しない。
【0006】
従来、6価クロムの除去は、排水全体を一旦酸性とした後、還元剤で6価クロムを3価クロムに還元し、その後排水全体を高アルカリ性にして還元されたクロムを水酸化クロムとして沈殿させ、これに凝集剤を加えて高分子溶液でフロックを形成させて除去し、中和処理して放流するという極めて煩雑な工程を経て行っているのが現状である。また、資源再利用の面からみると、この技術では大量に生じたスラッジからのクロムの回収に経済性は認められず、スラッジの処理も問題となる。
【0007】
その他、天然物質である樹皮、樹葉などが、重金属または6価クロムを吸着することが報告されている(特許文献3、非特許文献2、3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−105025号公報(2008年5月8日公開)
【特許文献2】特開2009−13204号公報(2009年1月22日公開)
【特許文献3】特開2007−307535号公報(2007年11月29日公開)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】重金属回収用高分子の製作とその性能評価,白子定治ら,東京都立産業技術研究所研究報告p15-18,第8号,2005
【非特許文献2】アカマツ針葉による6価クロムの除去,青山政和ら,J. Hokkaido For. Prod. Res. Inst. Vol.2, No.13.1999
【非特許文献3】ニセアカシア葉の6価クロムの吸着,青山政和ら, J. Hokkaido For. Prod. Res. Inst. Vol.15, No.2.2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、6価クロム含有液を効率的に処理する方法はこれまでに知られていない。
【0011】
すなわち、上述したイミノジ酢酸基を有するスチレン系基材からなる重金属吸着材は銅、亜鉛、カドミウム、ニッケル、3価クロム等の重金属イオンをよく吸着するが、6価クロムは殆ど吸着できない。
【0012】
また、放射線グラフト技術を用いて高分子基材にイミノジ酢酸基を導入した吸着材についても、かかる吸着材の殆どは汎用高分子を基材として用いるものであり、そのような吸着材では6価クロムを吸着することができないことから、一般に6価クロムを吸着することは困難であると考えられている。また、これまで6価クロムの吸着に関する報告もない。
【0013】
また、上述した天然物質は、重金属吸着材として使用する場合には、通常粉砕され、微粉状態として存在するため、吸着、溶離等の操作を行う上で取り扱いにくいという欠点がある。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、6価クロム含有液を効率的に処理する方法及び6価クロムの還元吸着材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、上記課題を解決するために、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、従来行われている、還元剤で6価クロムを3価クロムに還元し、その後高アルカリ性にして水酸化クロムとして沈殿させて除去するという煩雑な工程を行うことなく、還元と吸着を一工程で行うことができる。それゆえ、6価クロム含有液を効率的に処理することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る6価クロム含有液の処理方法では、上記アミノポリカルボン酸基は、イミノジ酢酸基、エチレンジアミンジコハク酸基、イミノジプロピオン酸基、又はジエチルイミノジ酢酸基であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る6価クロム含有液の処理方法では、上記多糖は、セルロース、キチン、キトサン、キシログルカン、ヒアルロン酸、カラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸、またはこれらの2種類以上の組み合わせであることが好ましい。
【0019】
本発明に係る6価クロム含有液の処理方法では、上記粒子状吸着材を6価クロム含有液に接触させる前に、6価クロム含有液のpHを酸性に調整するpH調整工程を含むことが好ましい。
【0020】
6価クロム含有液のpHを酸性に調整するpH調整工程を含むことにより、さらに6価クロムの吸着率を向上させることができるというさらなる効果を奏する。
【0021】
本発明に係る6価クロムの還元吸着材は、上記課題を解決するために、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、従来行われている、還元剤で6価クロムを3価クロムに還元し、その後高アルカリ性にして水酸化クロムとして沈殿させて除去するという煩雑な工程を行うことなく、還元と吸着を一工程で行うことが可能となる。それゆえ、6価クロム含有液を効率的に処理することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、以上のように、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させる構成を備えているので、従来行われている、還元剤で6価クロムを3価クロムに還元し、その後高アルカリ性にして水酸化クロムとして沈殿させて除去するという煩雑な工程を行うことなく、還元と吸着を一工程で行うことが可能となる。それゆえ、6価クロム含有液を効率的に処理することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明に係る6価クロムの還元吸着材は、以上のように、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる構成を備えているので、従来行われている、還元剤で6価クロムを3価クロムに還元し、その後高アルカリ性にして水酸化クロムとして沈殿させて除去するという煩雑な工程を行うことなく、還元と吸着を一工程で行うことが可能となる。それゆえ、6価クロム含有液を効率的に処理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明で用いられる粒子状吸着材の製造方法の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施例において行った6価クロムのバッチ吸着実験の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例において行った6価クロムのバッチ吸着実験後の上澄み液中に含まれるクロムの濃度及び組成を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例において行った6価クロムのバッチ吸着実験前後における吸着材表面のクロム分布の分析結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例において行った6価クロムのバッチ吸着実験の結果を示すグラフであり、吸着の時間特性を示す図である。
【図6】本発明の実施例において行った6価クロムのバッチ吸着実験の結果を示すグラフであり、6価クロムの吸着のpH依存性を示す図である。
【図7】本発明の実施例において行った3価クロムのバッチ吸着実験の結果を示すグラフであり、吸着の時間特性を示す図である。
【図8】本発明の実施例において行った3価クロムのバッチ吸着実験の結果を示すグラフであり、3価クロムの吸着のpH依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上述したように、従来、高分子基材に官能基が導入された重金属吸着剤を用いても6価クロムを吸着することは困難であると考えられていることから、かかる重金属吸着材を用いて6価クロムを吸着させるという発想はこれまでなかった。本発明者らは、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を製造し、その性能を検討する中で、たまたま6価クロムを吸着させたところ、驚くべきことに、6価クロムが効率的に吸着されることを見出した。
【0027】
すなわち、本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させる。以下本発明について(I)粒子状吸着材、(II)6価クロム含有液の処理方法の順に説明する。
【0028】
(I)粒子状吸着材
本発明において用いられる粒子状吸着材の原料として用いられる粒子状基材は、多糖を主成分として含有する粒子状基材であれば特に限定されるものではない。多糖を主成分として含有する粒子状基材を用いることにより、6価クロムを効率的に3価クロムに還元することができる。
【0029】
ここで、多糖とは、加水分解により単糖を生じる高分子化合物であって、7分子以上の単糖が縮合したものをいう。かかる多糖としては、例えば、セルロース、キチン、キトサン、キシログルカン、ヒアルロン酸、カラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸、これらの2種類以上の組み合わせ等を挙げることができる。
【0030】
また、上記多糖の結晶化度は、特に限定されるものではないが、結晶化度が高いことがより好ましい。これにより、結晶化度が高いために、化学的安定性がよく、機械的強度にすぐれた粒子状吸着材を得ることができる。上記多糖の結晶化度は、より好ましくは、50%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以上であり、99%以上でもよい。
【0031】
ここで、結晶化度が50%以上の多糖とは、粒子状基材において、結晶性部分の重量分率が50%以上のものであればよく、通常の結晶性部分と非結晶性部分とからなる多糖で結晶化度が50%以上のものをいう。なお上記多糖がセルロースの場合は、セルロースの結晶化度は、より好ましくは80%以上であり、80%以上が微結晶セルロースからなるセルロース粒子等をも含む趣旨である。なお、ここで、微結晶セルロースとは、通常のセルロースの非結晶性部分を取り除いて精製したものであり、結晶化度は100%に近い。
【0032】
例えば、結晶化度が99%以上のセルロース系の粒子状基材としては、微結晶セルロース100%の集合体を挙げることができる。上記微結晶セルロースとしては、具体的には、例えば、薬剤用等に市販されている微結晶セルロースを挙げることができ、一例として、例えば、旭化成ケミカルズのセオラス(登録商標)、セルフィア(登録商標)等を挙げることができる。
【0033】
さらに、上記多糖は、天然素材であっても、人工素材であってもよいが、環境に対する負荷、コストの点から、天然素材であることがより好ましい。
【0034】
上記粒子状基材は、多糖を主成分とする粒子状基材であれば特に限定されるものではない。すなわち、上記粒子状基材は、多糖のみからなるものであることが好ましいが、吸着性能に悪影響を与えない限り他の成分が含まれていてもよい。より具体的には、「主成分として」とは、70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上である。また、含まれうる他の成分は特に限定されるものではないが、例えば、Na無機塩類、架橋剤成分、他の汎用プラスチック樹脂等を挙げることができる。
【0035】
また、上記粒子状基材の形状は粒子状であれば特に限定されるものではなく、球形、楕円形、不定形破砕形状等であればよい。粒子状基材が粒子状であることにより、粒子状吸着材が得られ、従来のイオン交換/キレート樹脂球用の吸着塔、再生設備等をそのまま使用することができる。中でも、上記粒子状基材の形状は機械的強度の観点から、球形であることがより好ましい。
【0036】
また、上記粒子状基材の平均粒子径は、乾燥状態で、30〜800μmであることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましく、100〜300μmであることがさらに好ましい。
【0037】
なお、本明細書において、他に特に規定する場合を除き、平均粒子径とは以下の方法で決定された値をいう。まず、試料となる粒子の集合の数箇所から試料を採取する。それぞれの試料について、電子顕微鏡による観察を行い、数箇所から採取した試料全体で、合計100個以上の粒子に対して、それぞれ、対象となる粒子1つの長軸径、すなわち、粒子の形状の最も寸法の大きい方向の寸法を計測する。計測した100個以上の値のうち、上下各20%を除いた、60%の計測値の平均を本発明における平均粒子径とする。
【0038】
本発明において用いられる粒子状吸着材は、上記粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなるものである。
【0039】
上記グラフト鎖は、上記アミノポリカルボン酸基が結合可能となっていればどのようなものであってもよいが、例えば、エチレン性不飽和モノマーをグラフト重合することによってグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖が上記アミノポリカルボン酸基を結合可能な官能基を有しているものを挙げることができる。
【0040】
ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、エチレン性不飽和基、すなわち、炭素−炭素二重結合を有するモノマーをいう。かかるエチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和基を1つ有するエチレン性不飽和モノマーを用いることが好ましい。エチレン性不飽和基を1つ有するエチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー;スチレン;クロロスチレン等のスチレン誘導体等を好適に用いることができる。
【0041】
エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(1)
【0042】
【化1】

【0043】
で表される構造を有するモノマーを好適に用いることができる。ここで、上記一般式において、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、置換基を有するか有しない飽和炭化水素基又は水素原子を示す。また、該飽和炭化水素基は、一部の炭素原子が、O、N、P、S、又は、Siで置換されてもよい。置換基としても特に限定されるものではなく、例えば、アリール基、アルキル基、アルカノイル基、オキソ基(=O)等を挙げることができる。
【0044】
中でも、R、R、R、R、R、及びRは、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子であることがより好ましい。
【0045】
また、上記一般式において、Aは、置換基を有するか有しない飽和炭化水素鎖、すなわち、置換基を有するか有しない2価の飽和炭化水素基を示す。また、該飽和炭化水素鎖は、一部の炭素原子が、O、N、P、S、又は、Siで置換されてもよい。置換基としても特に限定されるものではなく、例えば、アリール基、アルキル基、アルカノイル基、オキソ基等を挙げることができる。また、上記一般式において、nは0又は1である。
【0046】
中でも、Aは、炭素数が1〜2の飽和炭化水素鎖、又は、該飽和炭化水素鎖中に少なくとも1つのオキシ基(−O−)を含むものであることがより好ましい。また、置換基として、オキソ基等を有するものであることがより好ましい。
【0047】
より具体的には、上記エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル、2−ビニルオキシラン、(メタ)アクリル酸2−メチルオキシラニルメチル、イタコン酸ジグリシジル、ペンテン酸グリシジル、ヘキセン酸グリシジル、ヘプテン酸グリシジル等を挙げることができる。
【0048】
上記エチレン性不飽和モノマーは、単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いても良い。また、本発明においては、上記粒子状基材に上記エチレン性不飽和基を1つ有するエチレン性不飽和モノマーがグラフト重合されていることが好ましいが、さらに、その他のモノマーがグラフト重合されていてもよい。例えば、エチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能性モノマーを共存させることにより、グラフト鎖が架橋した構造を得ることができる。これにより、本発明で用いられる粒子状吸着材の表面の膨潤度を調整することができる。
【0049】
本発明で用いられる粒子状吸着材においては、上記粒子状基材に導入されたグラフト鎖のグラフト率は特に限定されるものではないが、100%以上となっていることがより好ましい。グラフト率が100%以上であることにより、得られる粒子状吸着材におけるアミノポリカルボン酸基の量を多くすることができる。それゆえ、吸着能力の高い粒子状吸着材を得ることができる。
【0050】
なお、ここで、グラフト率とは、上記粒子状基材に対する、グラフト重合により導入されているエチレン性不飽和モノマーの量(重量百分率)をいい、後述する実施例に記載の方法により算出される値をいう。
【0051】
上記グラフト率は100%以上であることがより好ましいが、150%以上であることがさらに好ましく、200%以上であることが特に好ましい。
【0052】
本発明において用いられる粒子状吸着材は、上記粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、かかるグラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなるものである。
【0053】
ここで、上記アミノポリカルボン酸基としては、例えば、イミノジ酢酸基、エチレンジアミンジコハク酸基、イミノジプロピオン酸基、ジエチルイミノジ酢酸基等を挙げることができる。
【0054】
上記アミノポリカルボン酸基は、上記グラフト鎖と反応することによりアミノポリカルボン酸基が導入されるような化合物と、上記グラフト鎖とを反応させることにより導入される。従って、上記グラフト鎖がエポキシ基を有する場合には、上記化合物としては、エポキシ基と反応して、上記アミノポリカルボン酸基を導入できるような化合物を用いればよい。
【0055】
かかる化合物としては、例えば、イミノジ酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二酢酸、L−アスパラギン酸−N,N二酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、イミノジプロピオン酸等を好適に用いることができる。
【0056】
上記アミノポリカルボン酸基の導入量、すなわち、粒子状吸着材1g中に含まれる上記上記アミノポリカルボン酸基の量は、0.1mmol/g以上であることが好ましく、0.5mmol/g以上であることがより好ましく、1mmol/g以上であることがさらに好ましく、2mmol/g以上であることが特に好ましい。また、粒子状吸着材1g中に含まれる上記アミノポリカルボン酸基の量は、4mmol/g以下であることが好ましく、3mmol/g以下であることがさらに好ましい。
【0057】
粒子状吸着材1g中に含まれる上記上記アミノポリカルボン酸基の量の特に好ましい範囲は、1mmol/g以上3mmol/g以下である。
【0058】
なお、ここで、粒子状吸着材1g中に含まれる上記上記アミノポリカルボン酸基の量は、後述する実施例に記載の方法により算出される値をいう。
【0059】
本発明にかかる粒子状吸着材の形状は、上記粒子状基材と同様、粒子状であれば特に限定されるものではなく、球形、楕円形、不定形破砕形状等であることが好ましい。中でも、上記粒子状吸着材の形状は機械的強度の観点から、球形であることがより好ましい。
【0060】
また、本発明にかかる粒子状吸着材の平均粒子径は、100〜1500μmであることが好ましく、100〜800μmであることがより好ましく、200〜500μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が上記範囲であることにより、従来のイオン交換/キレート樹脂球用の吸着塔、再生設備等をそのまま使用することができる。
【0061】
(II)6価クロム含有液の処理方法
本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、上記粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させる。上記粒子状吸着材、すなわち、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を用いることにより、従来吸着が困難であった6価クロムを効率よく吸着することができる。
【0062】
吸着のメカニズムは、後述する実施例において得られた知見より、上記粒子状吸着材により、6価クロムが3価クロムに還元されるとともに、当該3価クロムがアミノポリカルボン酸基により吸着されると考えられる。
【0063】
すなわち、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる上記粒子状吸着材は、6価クロムの還元吸着材であるということもできる。
【0064】
また、本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、上記粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させることにより、6価クロム含有液中の6価クロムを3価クロムに還元し、当該3価クロムをアミノポリカルボン酸基に吸着させる処理方法であるということもできる。
【0065】
これにより、従来行われている、還元剤で6価クロムを3価クロムに還元し、その後高アルカリ性にして水酸化クロムとして沈殿させて除去するという煩雑な工程を行うことなく、還元と吸着を一工程で行うことができる。それゆえ、6価クロム含有液の処理を効率的に行うことができる。また、上記粒子状吸着材は、水中での形状維持性が高いため、カラム等に充填して使用することができ、さらに、脱離または再生によって繰り返し使用できるため、吸着の操作を行う上で取扱いやすい。
【0066】
さらに、本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、上記粒子状吸着材を用いることにより、6価クロム含有液が6価クロム以外の重金属を含む場合にも、6価クロムを効率的に吸着することができ、さらに他の重金属も同時に吸着することができる。
【0067】
本発明において、上記粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させる方法は特に限定されるものではないが、例えば、6価クロム含有液中に上記粒子状吸着材を投入して攪拌し又は振り混ぜる方法、或いは、上記粒子状吸着材を充填したカラム又は吸着塔に6価クロム含有液を通過させる方法等を用いることができる。
【0068】
なお、処理対象である6価クロム含有液は、6価クロムを含有する地下水、土壌、温泉水、沼湖水、海水、工場廃水、鉱山廃水、河川水等であればよい。特に高濃度の6価クロムを含有するメッキ工場等の排水、中〜低濃度の6価クロムを含有する生コン工場、コンクリート二次製品工場、ダムやトンネルの工事現場等セメントを使用する現場から出る排水等を有効に処理することができる。
【0069】
また、本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、上記粒子状吸着材を6価クロム含有液に接触させる前に、6価クロム含有液のpHを酸性に調整するpH調整工程を含むことが好ましい。6価クロム含有液のpHを酸性とすることにより、特に効率的に、上記粒子状吸着材によって6価クロムが3価クロムに還元されるとともに、当該3価クロムがアミノポリカルボン酸基により吸着される。
【0070】
上記pH調整工程では、6価クロム含有液のpHは酸性に調整すればよいが、より好ましくはpH2〜pH6に、さらに好ましくはpH3〜pH5に調整する。
【0071】
また、クロムまたはクロムを含む金属を吸着させた後の粒子状吸着材は、濃い塩酸等の溶離剤に接触させてクロムまたはクロムを含む金属を溶離させることにより再生することができる。また、溶離されたクロムは同時に回収することができる。溶離後の粒子状吸着材は、水酸化ナトリウム水溶液、純水等で洗浄後、再び吸着材として利用することができる。
【0072】
したがって本発明にかかる6価クロム含有液の処理方法は、クロムまたはクロムを含む金属を吸着させた後の粒子状吸着材を、濃い塩酸等の溶離剤に接触させて3価クロムまたは3価クロムを含む金属を溶離させて回収する、クロムまたはクロムを含む金属の回収工程を含んでいてもよい。言い換えれば、本発明にかかる6価クロム含有液の処理方法は、多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させる工程及び上記回収工程により、6価クロム含有液から3価クロムを回収する方法であるということもできる。
【0073】
(III)粒子状吸着材の製造方法
本発明で用いられる粒子状吸着材は、上記(I)の構成を有するものであればどのような製造方法によって製造されたものであってもよい。上記粒子状基材は、例えば、上記粒子状基材を活性化し、活性化された粒子状基材にグラフト鎖を導入し、導入された上記グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基を結合させることにより製造することができる。
【0074】
上記粒子状基材を活性化する方法は、続くグラフト鎖導入工程で、グラフト鎖が導入できるように、ラジカル活性点を生成させることができれば、その方法は特に限定されるものではない。例えば、ラジカル重合開始剤を用いて化学的に活性化を行う方法、電離放射線を照射することにより活性化を行う方法、紫外線を照射することにより活性化を行う方法、超音波により活性化を行う方法、プラズマ照射により活性化を行う方法等を用いることができる。中でも電離放射線を照射する方法は、製造プロセスが簡単、安全、且つ、低公害であるという利点を有する。また、グラフト鎖を粒子状基材の表面から内部まで導入することができ、吸着能力により優れた吸着材を得ることができる。
【0075】
なお、電離放射線を照射することにより活性化を行う場合は、その線量は1〜200kGyであることが好ましい。但し、結晶化度の高い多糖の粒子状基材を用いる場合は、粒子状基材にダメージを与えない線量の電離放射線を照射することが好ましい。かかる線量としては、1〜25kGyであることが好ましく、10〜20kGyであることがより好ましい。電離放射線の線量が1kGy以上であることにより、粒子状基材に必要なラジカル活性点を生成することができる。また、電離放射線の線量が25kGy以下であることにより、結晶化度の高い粒子状基材に加えられるダメージを抑制することができるという効果を奏する。また、低線量の電離放射線を照射することにより、エネルギーと照射時間を節約することができるため、製造コストを低減することができる。
【0076】
上記電離放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、X線等を挙げることができるが、中でも、工業的な生産性の観点から、例えばコバルト−60からのγ線、電子線加速器による電子線、X線等をより好適に用いることができる。また、電子線加速器による電子線を用いる場合、電子線加速器としては、厚物の照射を行うことができる電子線加速器を用いることがより好ましく、加速電圧1MeV以上の中エネルギーから高エネルギーの電子線加速器を好適に用いることができる。また、照射時に、上記粒子状基材の粒子層を、例えばプラスチックバッグの中に、平板化して封着すれば、1MeV以下の中低エネルギー電子線加速器でも電子線を透過させることができるため、好適に上記粒子状基材を活性化することができる。
【0077】
さらに、電離放射線の照射は、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。これにより、グラフト鎖の導入を効果的に行うことができるため好ましい。
【0078】
また、電離放射線の照射は、−20〜0℃の冷却条件下で行うことがより好ましい。これにより、グラフト鎖の導入を効果的に行うことができるため好ましい。
【0079】
また、グラフト鎖を導入する方法も特に限定されるものではないが、例えば、一例として、活性化された粒子状基材を、エチレン性不飽和モノマーを含むエマルジョンと接触させることにより、当該エチレン性不飽和モノマーを上記粒子状基材にグラフト重合させてグラフト鎖を導入する方法等を用いることができる。
【0080】
グラフト鎖の導入において用いられるエマルジョンに含まれる上記エチレン性不飽和モノマーの量は、エマルジョン全量に対して30重量%以上80重量%以下であることが好ましく、40重量%以上60重量%以下であることがより好ましく、45重量%以上55重量%以下であることがさらに好ましい。これにより粒子状基材に、高いグラフト率でエチレン性不飽和モノマーをグラフト重合することができる。さらに活性化された粒子状基材と、エチレン性不飽和モノマーを含むエマルジョンとの接触時間も短縮することができる。また、上記エチレン性不飽和モノマーの量が、エマルジョン全量に対して80重量%以下であることにより、エマルジョンを良好に調製することができ、分散が均一で安定性がよいため好ましい。
【0081】
また、上記エマルジョンは水系エマルジョン、すなわち、上記エチレン性不飽和モノマーと水とを含むエマルジョンであることがより好ましい。なお、ここで用いられる水としては、イオン交換水、純水、超純水等を用いればよい。これにより、上記エチレン性不飽和モノマーは小さいミセル中に分散し、ラジカルの利用率と重合速度が高くなるため、結晶化度が80%以上の多糖を主成分とする粒子状基材に、高いグラフト率でエチレン性不飽和モノマーをグラフト重合することができる。また、グラフト鎖導入工程において有機溶媒を使用しないため、プロセスのコスト低減、環境に対する負荷の低減、及び、プロセスの安全性向上の点から好ましい。
【0082】
また、上記エマルジョンは、さらに、エチレン性不飽和モノマーに対して、3〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%の界面活性剤を含むことがより好ましい。これにより、結晶化度が80%以上の多糖を主成分とする粒子状基材に、高いグラフト率でエチレン性不飽和モノマーをグラフト重合することができる。さらに活性化された粒子状基材とエチレン性不飽和モノマーを含むエマルジョンとの接触時間も短縮することができる。
【0083】
上記界面活性剤も、特に限定されるものではなく、通常エマルジョン重合で用いられている界面活性剤を好適に用いることができる。かかる界面活性剤としては、具体的には、例えば、アルキルポリオキシエチレンエーテル、S−アルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、N,N’−ジ(アルカノール)アルカンアミド、アミンオキシド等の非イオン界面活性剤;セッケン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチル、硫酸アルキル塩、硫酸アルキル(ポリオキシエチレン)塩、リン酸アルキル塩、N−アシルアミノ酸塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、モノアルキルトリメチルアンモニウムクロリド等のイオン性界面活性剤;スルホベタイン、ベタイン等の両性界面活性剤を挙げることができる。
【0084】
また、活性化された粒子状基材とエチレン性不飽和モノマーを含むエマルジョンとの接触方法は特に限定されるものではないが、例えば、活性化された粒子状基材を、上記エマルジョンに浸漬する方法等を挙げることができる。
【0085】
活性化された粒子状基材とエチレン性不飽和モノマーを含むエマルジョンとの接触時間は、接触方法として浸漬する方法を用いる場合5分〜8時間であり、より好ましくは30分〜60分である。
【0086】
また、反応温度、すなわち、活性化された粒子状基材とエチレン性不飽和モノマーを含むエマルジョンとを接触させる温度は、接触方法として浸漬する方法を用いる場合、40〜80℃であり、より好ましくは、50〜60℃である。
【0087】
また、活性化された粒子状基材とエチレン性不飽和モノマーを含むエマルジョンとの接触は、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、ラジカルと酸素との反応を防止することができる。
【0088】
上記グラフト鎖に、アミノポリカルボン酸基を結合させる反応条件は、アミノポリカルボン酸基に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0089】
例えば、イミノジ酢酸ナトリウムを導入する場合は、上記グラフト鎖が導入された粒子状基材を、イミノジ酢酸ナトリウム水溶液に投入して反応させればよい。ここで、イミノジ酢酸ナトリウム水溶液のモル濃度、すなわち、イミノジ酢酸ナトリウム水溶液1L中のイミノジ酢酸ナトリウムのモル数は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1M以上0.8M以下であり、より好ましくは0.3M以上0.6M以下である。また、反応温度は好ましくは60℃以上90℃以下であり、より好ましくは75℃以上85℃以下である。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、実施例および比較例における、グラフト率の決定方法を以下に示す。
【0091】
<グラフト率>
粒子状吸着材のグラフト率、すなわち、前記粒子状基材に対する、グラフト重合により導入されているグラフト鎖の量(重量百分率)は、以下の方法で求めた。
【0092】
グラフト重合後、グラフト鎖が導入された粒子状基材を、メタノール、アセトン等の有機溶媒に48時間浸漬して未反応のモノマー及びホモポリマーを除去した。その後、グラフト鎖が導入された粒子状基材をさらに水に24時間浸漬した後、水で洗浄し、50℃で24時間乾燥した。この乾燥後のグラフト鎖が導入された粒子状基材の重量(W)と、グラフト鎖を導入する前の粒子状基材の乾燥重量(W)とからグラフト率を次式により算出した。
グラフト率(%)=((W−W)/W)×100
<官能基密度>
アミノポリカルボン酸基の平均密度、すなわち、官能基密度は、上記方法で求めた乾燥後のグラフト鎖が導入された粒子状基材の重量(W)、アミノポリカルボン酸基の分子量(M)、アミノポリカルボン酸基を結合し洗浄乾燥して得られた粒子状吸着材の重量(W)から次式により算出した。
官能基密度(mol/g)=((W−W)/M)/W
〔実施例1:粒子状吸着材の製造〕
市販のセルロース微粒子を粒子状基材として用い、図1に示す製造方法により、当該粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にイミノジ酢酸ナトリウムが結合してなる粒子状吸着材を製造した。
【0093】
市販の微結晶セルロースのみで構成されたセルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203)10g(平均粒子径200〜300μm)を粒子状基材として用いた。この粒子状基材を、薄いプラスチックバッグの中に配置し、このプラスチックバッグを窒素で数回パージし封着した。続いてこの粒子状基材に、窒素雰囲気中、ドライアイスによる冷却条件下、電子線加速器(NHVコーポレーション製、EPS−800)を用いて、電子線を20kGy照射し、ラジカル活性点を生成させた。
【0094】
照射後の粒子状基材を、すぐに予め調製し窒素置換されたメタクリル酸グリシジル(GMA)を含むエマルジョンに浸漬して、50℃で1時間反応させた。使用したエマルジョンの組成は、エマルジョン液全量に対して、界面活性剤(和光純薬株式会社製、Tween20)3重量%、メタクリル酸グリシジル30重量%、水67重量%であった。
【0095】
グラフト率を測定したところ、メタクリル酸グリシジルのグラフト率は250%であった。
【0096】
得られたメタクリル酸グリシジルがグラフトされた粒子状基材を、0.5Mのイミノジ酢酸ナトリウム(IDA)水溶液に投入して、80℃で12時間反応させ、粒子状吸着材を得た。
【0097】
得られた粒子状吸着材を、水で洗浄後乾燥し、目的とする粒子状吸着材(直径400〜500μm、平均粒子径450μm)を得た。この粒子状吸着材のイミノジ酢酸基転換率は約60%であった。また、イミノジ酢酸基の官能基密度は、2.2mmol/gであった。
【0098】
〔実施例2:各種重金属を単独で含む各種重金属含有液のバッチ吸着試験〕
実施例1で得られた粒子状吸着材(イミノジ酢酸基転換率:60%、以下CCM−Mと称する)を用いて、以下に示す各種重金属のバッチ吸着実験を行った。
【0099】
市販の各種重金属標準液を、pH4前後の酢酸バッファーで希釈して、Cu、Cd、Zn、Fe(III)、Mn、Ni、Ca、Al(III)、Cr(VI)を、それぞれ10ppm含む各種重金属含有液を調製した(初期pH=4.0)。実施例1で製造した粒子状吸着材0.1gを、100mLの上記各種重金属含有液に添加して室温で24時間攪拌した。
【0100】
その後、各上澄み液中の重金属濃度をICP発光分析装置により測定し、各種重金属含有液中の重金属の初期濃度と24時間攪拌後の重金属の残留濃度から各重金属の吸着量を求めた。
【0101】
結果を、後述する比較例1において、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球を用いて同様の測定を行った結果とともに表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示すように、粒子状吸着材CCM−Mは、特に、六価クロムに対しては、約97%という吸着率を示し、非常に高い吸着能力を有していた。これに対して、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球を用いた場合には、同じイミノジ酢酸官能基を持つが、六価クロムの吸着率が僅か1.7%であり、殆ど吸着能力を有していない。
【0104】
加えて、粒子状吸着材CCM−Mは、殆どの重金属に対して、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球と同等又はそれ以上の吸着能力を有する。粒子状吸着材CCM−Mは、中でも、Cu、Fe、Niに対して特に高い吸着能力を有することが判る。したがって、粒子状吸着材CCM−Mは、重金属の除去又は回収用途に用いることができ、さらに市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球では除去できない六価クロムに対し、六価クロム専用吸着材としての用途が期待できる。
【0105】
〔比較例1:各種重金属を単独で含む各種重金属含有液のバッチ吸着試験〕
吸着材として、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)を用いた以外は、実施例2と同様にして、各種重金属含有液のバッチ吸着試験を行った。測定結果を表1に示す。
【0106】
〔実施例3:各種重金属の混合物を含有する重金属混合物含有液のバッチ吸着試験〕
実施例1で得られた粒子状吸着材CCM−Mを用いて、各種重金属の混合物を含有する重金属混合物含有液のバッチ吸着実験を行った。
【0107】
市販の各種重金属標準液を、pH4前後の酢酸バッファーで希釈して混合し、Cu、Cd、Zn、Fe(III)、Mn、Ni、Ca、Al(III)、及びCr(VI)を、それぞれ10ppm含む重金属混合物含有液を調製した(初期pH=4.0)。実施例1で製造した粒子状吸着材0.1gを、100mLの上記重金属混合物含有液に添加して室温で24時間攪拌した。
【0108】
その後、上澄み液中の各重金属の濃度をICP発光分析装置により測定し、重金属混合物含有液中の各重金属の初期濃度と24時間攪拌後の各重金属の残留濃度から各重金属の吸着量を求めた。
【0109】
結果を、後述する比較例2において、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球を用いて同様の測定を行った結果とともに表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表2に示すように、粒子状吸着材CCM−Mは、特に、六価クロムに対しては、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球よりもはるかに高い、約65%の吸着率を示した。また、Cu、Fe(III)、Cd、Ni、Zn等の重金属に対しても、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球と同等又はそれ以上の吸着能力を有することが判る。
【0112】
以上のように、粒子状吸着材CCM−Mは、水中の6価クロムに対して、6価クロムが単独で存在する場合のみでなく、他の重金属と共存する場合にも高い吸着能力を有することが明らかとなった。かかる結果から、粒子状吸着材CCM−Mは、メッキ廃液など多種類の重金属を含有する排水中においても効率的に6価クロムを除去できることが判る。
【0113】
〔比較例2:各種重金属の混合物を含有する重金属混合物含有液のバッチ吸着試験〕
吸着材として、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)を用いた以外は、実施例3と同様にして、各種重金属含有液のバッチ吸着試験を行った。測定結果を表2に示す。
【0114】
〔実施例4:6価クロム含有液のバッチ吸着試験〕
実施例2及び3の結果より、本発明の粒子状吸着材は、同じイミノジ酢酸基を有するスチレン系の吸着材に比べて、6価クロムに対する高い吸着能力を有することが明らかになった。これは吸着後、上澄み液中の総クロムの残存量をICP発光分析装置により分析した結果から判断したものである。
【0115】
本実施例では、本発明の粒子状吸着材を用いて、6価クロム含有液のバッチ吸着試験を行った後、上澄み液中の総クロム、6価クロム、及び3価クロムの比率について分析を行った。本発明の粒子状吸着材としては、実施例1で得られた粒子状吸着材CCM−Mを用いた。
【0116】
市販のクロム酸(6価クロム)標準液を、pH4前後の酢酸バッファーで希釈して、6価クロムを10ppm含む6価クロム含有液を調製した(初期pH=4.0)。この6価クロム含有液200mLに、実施例1で得られた粒子状吸着材CCM−M0.2gを添加して、室温で24時間攪拌した。その後、上澄み液中の総クロム濃度をICP発光分光装置により測定し、更に吸光光度法(JIS K0102 65.2.1ジフェニルカルバジド吸光光度法)により6価クロムの濃度を測定した。上澄み液中の総クロム濃度から6価クロム濃度を引くことにより、上澄み液中の3価クロム濃度を求めた。
【0117】
対照として、未処理の上記6価クロムを10ppm含む6価クロム含有液中の総クロム、6価クロム、及び3価クロムの濃度の分析も行った。
【0118】
6価クロムのバッチ吸着試験を行った後、上澄み液中の総クロム濃度を測定した結果を、後述する比較例3において、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)、セルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203、平均粒子径200〜300μm)、イミノジ酢酸官能基を導入する前のメタクリル酸グリシジルがグラフトされたセルロース微粒子(グラフト率250%)を用いて同様の測定を行った結果とともに図2に示す。図2中、縦軸は6価クロム含有液中の6価クロムの初期濃度と、上澄み液中の総クロム濃度(残留濃度)から求めたクロムの吸着率(図2中「Adsorpution rate」(単位:%)と記載)を示す。また、図2中、「Reference」は対照を、「Celp−g−GMA」はイミノジ酢酸官能基を導入する前のメタクリル酸グリシジルがグラフトされたセルロース微粒子を、「Celp」はグラフト鎖を導入する前の粒子状基材(セルロース微粒子)を吸着材として用いた場合の結果を示す。
【0119】
図2に示すように、粒子状吸着材CCM−Mは、高いクロムの吸着率を示しているが、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球は僅かに吸着特性を示すのみである。
【0120】
また、グラフト鎖を導入する前の粒子状基材、イミノジ酢酸ナトリウムを結合する前のグラフト鎖が導入された粒子状基材を用いた場合には、クロムが全く吸着されていないことが判った。これらの結果から、クロムの吸着にはイミノジ酢酸基の存在は不可欠であることが判る。
【0121】
6価クロムのバッチ吸着試験を行った後の上澄み液中のクロム組成(総クロム、6価クロム、3価クロムのそれぞれの濃度)を、後述する比較例3において、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球、グラフト鎖を導入する前の粒子状基材(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203、平均粒子径200〜300μm)、イミノジ酢酸ナトリウムを結合する前のグラフト鎖が導入された粒子状基材を用いて同様の測定を行った結果とともに図3に示す。図3中、縦軸は6価クロムのバッチ吸着試験を行った後の上澄み液中の総クロム(図3中「Total Cr」と表示)、6価クロム(図3中「Cr(VI)」と表示)、3価クロム(図3中「Cr(III)」と表示)のそれぞれの濃度を示す。また、図3中、「Reference」、「Celp−g−GMA」、「Celp」は上述したとおりである。
【0122】
未処理の上記6価クロムを10ppm含む6価クロム含有液中の総クロム、6価クロム、及び3価クロムの濃度の分析から、未処理の6価クロムを10ppm含む6価クロム含有液に、実際に測定された総クロム量は9.45ppmであり、そのうち95%が6価クロム、5%が3価クロムであった。
【0123】
また、粒子状吸着材CCM−Mを用いて上記6価クロム含有液を処理した後の上澄み液では、総クロム量は3ppm程度しか残留していなかった。また、残留しているクロムは殆ど3価クロムの形で存在することが判った。
【0124】
一方、セルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203、平均粒子径200〜300μm)、イミノジ酢酸官能基を導入する前のメタクリル酸グリシジルがグラフトされたセルロース微粒子(グラフト率250%)を用いた場合には、処理前(Reference)と処理後で、総クロム量は殆ど変わらないが、3価クロムの割合は十数%に達した。かかる結果から、セルロースを主成分として含有する基材が、6価クロム含有液中の6価クロムを3価クロムに還元すると考えられる。これらの結果より、本発明にかかる粒子状吸着材は、6価クロム含有液中の6価クロムを一旦3価クロムに還元し後、イミノジ酢酸基が3価クロムをキレート吸着すると考えられる。
【0125】
さらに、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球では、バッチ吸着試験を行った後の上澄み液中の総クロム量は殆ど減少しておらず、総クロム中のクロムは殆ど6価クロムの形で存在することが判る。このことは、スチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球では、6価クロムを3価クロムに還元することが困難であり、イミノジ酢酸は6価クロムを吸着しないことを示唆している。
【0126】
〔比較例3:6価クロム含有液のバッチ吸着試験〕
吸着材として、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)、セルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203、平均粒子径200〜300μm)、イミノジ酢酸官能基を導入する前のメタクリル酸グリシジルがグラフトされたセルロース微粒子(グラフト率250%)を用いた以外は、実施例4と同様にして、6価クロム含有液のバッチ吸着試験を行った後、上澄み液中の総クロム、6価クロム、及び3価クロムの比率について分析を行った。結果を、図2及び図3に示す。
【0127】
〔実施例5:6価クロム含有液のバッチ吸着試験前後における吸着材表面のクロム分布の分析〕
実施例4では、本発明にかかる粒子状吸着材が、6価クロム含有液中の6価クロムを一旦3価クロムに還元した後、イミノジ酢酸基が3価クロムをキレート吸着することが示唆された。そこで、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、攪拌を行わない以外は、粒子状吸着材CCM−Mを用いて、実施例4と同様にしてバッチ吸着試験を行った前後の吸着材表面のクロム分布を分析した。
【0128】
XRFの分析結果を、後述する比較例4において、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)、セルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203、平均粒子径200〜300μm)、イミノジ酢酸官能基を導入する前のメタクリル酸グリシジルがグラフトされたセルロース微粒子(グラフト率250%)を用いて同様の測定を行った結果とともに図4に示す。図4中、「Celp−g−GMA」、「Celp」は上述したとおりである。また、「CCM−M Cr(VI)」のように、「Cr(VI)」が付されている結果が、バッチ吸着試験を行った後の吸着材の表面のクロム分布を示す結果である。
【0129】
図4に示すように、粒子状吸着材CCM−Mを用いた場合は、バッチ吸着試験を行った後の吸着材の表面にクロムに特徴的なピークが観察された。これに対して、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球を用いた場合は、クロムに特徴的なピークは小さく、クロムの吸着量が少ないことがわかる。また、セルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203、平均粒子径200〜300μm)、イミノジ酢酸官能基を導入する前のメタクリル酸グリシジルがグラフトされたセルロース微粒子の場合には、クロムに特徴的なピークは認められなかった。かかる結果は、実施例4で得られた吸着結果と良く一致している。
【0130】
〔比較例4:6価クロム含有液のバッチ吸着試験前後における吸着材表面のクロム分布の分析〕
吸着材として、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)、セルロース微粒子(旭化成ケミカルズ製、セルフィア(登録商標)203、平均粒子径200〜300μm)、イミノジ酢酸官能基を導入する前のメタクリル酸グリシジルがグラフトされたセルロース微粒子(グラフト率250%)を用いた以外は、実施例5と同様にして、6価クロム含有液のバッチ吸着試験前後における吸着材表面のクロム分布の分析を行った。結果を、図4に示す。
【0131】
〔実施例6:6価クロムの吸着の時間特性〕
市販のクロム酸(6価クロム)標準液を、pH4前後の酢酸バッファーで希釈して、6価クロムを10ppm含む6価クロム含有液を調製した(初期pH=4.0)。この6価クロム含有液100mLに、実施例1で得られた粒子状吸着材CCM−M0.1gを添加して、室温で10分間攪拌した。その後、上澄み液中の残留総クロム濃度をICP発光分光装置により測定し、6価クロム含有液中の6価クロムの初期濃度と10分攪拌後の残留総クロム濃度からクロムの吸着量を求めた。
【0132】
攪拌時間を、10分間からそれぞれ、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間に変更して同様のバッチ吸着試験を行った。
【0133】
本実施例の結果を、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球を用いて行った比較例5の結果とともに図5に示す。図5中、縦軸は、吸着材1g当たりのクロムの吸着量(単位:mg/g、図5中「Adsorption capacity(mg/g)」と記載)を示し、横軸は浸漬時間(単位:時間、図5中「Adsorption time(h)」と記載)を示す。また、図5中丸はCCM−Mを用いた場合の結果を、四角は、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球CR−11を用いた場合の結果を示す。
【0134】
図2に示すように、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球は6価クロムを全く吸着しないのに対し、本発明の粒子状吸着材は、6価クロムに対して、最初の8時間は吸着速度が大きく、約24時間で飽和することが判る。
【0135】
〔比較例5:6価クロムの吸着の時間特性〕
吸着材として、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)を用いた以外は、実施例6と同様にしてバッチ吸着試験を行った。測定結果を図5に示す。
【0136】
〔実施例7:6価クロムの吸着のpH依存性〕
市販のクロム酸(6価クロム)標準液を、pH1−10の様々なバッファーで希釈して、6価クロムを10ppm含む6価クロム含有液を調製した。かかる6価クロム含有液100mLに、実施例1で得られた粒子状吸着材CCM−M0.1gを添加して、室温で24時間攪拌した。その後、上澄み液中の残留総クロム濃度をICP発光分光装置により測定し、6価クロム含有液中の6価クロムの初期濃度と24時間攪拌後の残留総クロム濃度からクロムの吸着量を求めた。
【0137】
初期pHを様々に変更して同様のバッチ吸着試験を行った本実施例の結果を図6に示す。図6中、縦軸は、吸着材1g当たりのクロムの吸着量(単位:mg/g、図6中「Adsorption capacity(mg/g)」と記載)を示し、横軸はpHを示す。
【0138】
図6に示すように、本発明にかかる粒子状吸着材は、pH3−5の範囲内で、6価クロムを良く吸着することがわかった。また、pH3.6前後で最も高い吸着能力を有することが判る。
【0139】
〔実施例8:3価クロムの吸着の時間特性〕
市販の3価クロム標準液を、pH4前後の酢酸バッファーで希釈して、3価クロムを10ppm含む3価クロム含有液を調製した(初期pH=4.0)。この3価クロム含有液100mLに、実施例1で得られた粒子状吸着材CCM−M0.1gを添加して、室温で10分間攪拌した。その後、上澄み液中の残留総クロム濃度をICP発光分光装置により測定し、3価クロム含有液中の3価クロムの初期濃度と10分攪拌後の残留総クロム濃度からクロムの吸着量を求めた。
【0140】
攪拌時間を、10分間からそれぞれ、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間に変更して同様のバッチ吸着試験を行った。
【0141】
本実施例の結果を、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球を用いて行った比較例6の結果とともに図7に示す。図7中、縦軸は、吸着材1g当たりのクロムの吸着量(単位:mg/g、図7中「Adsorption capacity(mg/g)」と記載)を示し、横軸は浸漬時間(単位:時間、図7中「Adsorption time(h)」と記載)を示す。また、図7中丸はCCM−Mを用いた場合の結果を、四角は、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球CR−11を用いた場合の結果を示す。
【0142】
図7に示すように、本発明の粒子状吸着材と、市販のスチレン系のイミノジ酢酸吸着樹脂球とはともに、3価クロムに対して、非常には吸着速度が大きく、約2時間で飽和した。これは、3価クロムイオンは6価クロムイオンと異なり、直接イミノジ酢酸基と錯体を形成するためであると考えられる。
【0143】
〔比較例6:3価クロムの吸着の時間特性〕
吸着材として、市販のイミノジ酢酸吸着樹脂球(CR−11、三菱化学製、スチレン系基材)を用いた以外は、実施例8と同様にしてバッチ吸着試験を行った。測定結果を図7に示す。
【0144】
〔実施例9:3価クロムの吸着のpH依存性〕
市販の3価クロム標準液を、pH1−10の様々なバッファーで希釈して、3価クロムを10ppm含む3価クロム含有液を調製した。かかる3価クロム含有液100mLに、実施例1で得られた粒子状吸着材CCM−M0.1gを添加して、室温で24時間攪拌した。その後、上澄み液中の残留総クロム濃度をICP発光分光装置により測定し、3価クロム含有液中の3価クロムの初期濃度と24時間攪拌後の残留総クロム濃度からクロムの吸着量を求めた。
【0145】
初期pHを様々に変更して同様のバッチ吸着試験を行った本実施例の結果を図8に示す。図8中、縦軸は、吸着材1g当たりのクロムの吸着量(単位:mg/g、図8中「Adsorption capacity(mg/g)」と記載)を示し、横軸はpHを示す。
【0146】
図8に示すように、本発明にかかる粒子状吸着材は、6価クロムに対すると同様に、pH3−5の範囲内で、3価クロムを良く吸着することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明にかかる粒子状吸着材は、以上のように、6価クロムに対する優れた吸着能を有し、また、還元と吸着を一工程で行うことができる。それゆえ、還元剤で6価クロムを3価クロムに還元し、その後高アルカリ性にして水酸化クロムとして沈殿させて除去するという煩雑な工程を行うことなく、6価クロム含有液の処理を効率的に行うことができる。
【0148】
さらに、本発明に係る6価クロム含有液の処理方法は、上記粒子状吸着材を用いることにより、6価クロム以外の重金属が含まれる場合にも、液中に存在する6価クロムを効率的に吸着することができる。
【0149】
それゆえ、本発明にかかる粒子状吸着材は、6価クロムで汚染された、地下水、温泉水、工場廃水、鉱山廃水等の浄化を行う場合に非常に有利である。
【0150】
また、上記粒子状吸着材は、水中での形状維持性が高いため、カラム等に充填して使用することができ、さらに、脱離または再生によって繰り返し使用できるため、吸着の操作を行う上で取扱いやすい。さらに、上記粒子状吸着材の形状は従来の市販イオン交換樹脂球/キレート樹脂球と同様の形状を有するため、イオン交換/キレート樹脂球用の吸着塔、再生設備等をそのまま使用することができる。それゆえ、製造プロセス、吸着能力、再生速度、環境面などの要素を考えると、本発明にかかる粒子状吸着材は、従来のキレート樹脂球を代替することができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなる粒子状吸着材を、6価クロム含有液に接触させることを特徴とする6価クロム含有液の処理方法。
【請求項2】
上記アミノポリカルボン酸基は、イミノジ酢酸基、エチレンジアミンジコハク酸基、イミノジプロピオン酸基、又はジエチルイミノジ酢酸基であることを特徴とする請求項1に記載の6価クロム含有液の処理方法。
【請求項3】
上記多糖は、セルロース、キチン、キトサン、キシログルカン、ヒアルロン酸、カラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸、またはこれらの2種類以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の6価クロム含有液の処理方法。
【請求項4】
上記粒子状吸着材を6価クロム含有液に接触させる前に、6価クロム含有液のpHを酸性に調整するpH調整工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の6価クロム含有液の処理方法。
【請求項5】
多糖を主成分として含有する粒子状基材にグラフト鎖が導入されており、当該グラフト鎖にアミノポリカルボン酸基が結合してなることを特徴とする、6価クロムの還元吸着材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−120973(P2011−120973A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278803(P2009−278803)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(503237806)株式会社NHVコーポレーション (37)
【Fターム(参考)】