説明

7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体の製造方法

【課題】 反応において低温かつ安全性が懸念される物質を使用することなく、7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体を効率良く製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】 医薬中間体として有用な7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体の製造方法が開示されている。本発明の7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体の製造方法は、以下の式(IV):
【化1】


(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される化合物を脱水素する工程;を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体の製造方法に関し、より詳細には7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体をより効率良くかつ安全に製造し得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、7−ヒドロキシインドールは、以下の式で表されるアドレナリンβ−アゴニスト(AJ−9677):
【0003】
【化1】

【0004】
を合成する際の重要な物質であることが知られている。さらに、7−ヒドロキシインドールの7位の水酸基をアルデヒドに置換することにより抗癌剤として有用な物質を得ることができることも知られている。このように7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体は、医薬中間体などの種々の技術分野に用いることができ、その用途の拡大が広く期待されている。
【0005】
一方で、7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体に代表される、インドールまたはインドリン化合物の7位の官能基化には、従来よりいくつかの方法が知られているが、製造効率および安全性の点で未だ懸念が存在する。
【0006】
例えば、特許文献1は、セミカルバゾン類を還元することにより、7−ヒドロキシインドールを得る方法を開示している。しかし、この方法で使用するセミカルバゾン類は入手が困難であるため、特許文献1は、一旦、2−ニトロ−m−クレゾールから比較的効率の劣る状態で3−ベンジルオキシ−2−ニトロトルエンを合成し、その後セミカルバゾン類を得ることを開示している。しかし、特許文献1で出発物質として用いる2−ニトロ−m−クレゾールそのものを製造するためには、多段階の工程が必要であるため、全体として効率性の観点から改良が期待されている。
【0007】
また、非特許文献1は、インドリン化合物の7位を官能基化するために、1−(tert−ブトキシカルボニル)−インドリンを用いて、1−(tert−ブトキシカルボニル)−7−インドリンカルボキサアルデヒドを製造する方法を開示している。この方法では、sec−ブチルリチウムおよびエーテルが使用され、かつ−78℃の温度下にて反応が進行する。しかし、この方法に使用するsec−ブチルリチウムは発火性を有しかつ空気中の湿気に対して不安定であるという取扱い上の問題がある。また、エーテルもまた、工業的利用を考慮すれば、取扱いが困難である。さらに、この反応に必要とされる−78℃という温度は、工業的利用の観点から見れば、余りにも低温である。
【0008】
非特許文献2は、2,3−ジヒドロインドールをアセチル化した後、7位の水素原子をトリス−トリフルオロ酢酸タリウム(TTFA)でタリウム化(thallation)し、その後当該7位をハロゲン化する方法を開示している。しかし、この方法で使用するTTFAは有毒である。また、タリウム化の後に行われる反応の選択性は必ずしも好ましいものではなく、かつ得られる生成物の収率も満足し得るものではない。よって、このような方法もまた、工業的利用の観点からみれば問題があるといわざるを得ない。
【0009】
非特許文献3は、1−ベンジルオキシ−2−ニトロベンゼンから1−ベンジルオキシ−2−アミノベンゼンを得、その後、塩素存在下にて(MeO)CHCHSMeと反応させ、さらに酸処理と脱硫を行なうことによって、7位にベンジルオキシ基を有したインドールの製法を開示している。しかし、この方法で使用される(MeO)CHCHSMeは硫黄を含有するため臭気を備え、必ずしも工業的利用において好ましいと言い難い。さらに、この1−ベンジルオキシ−2−アミノベンゼンと(MeO)CHCHSMeとの反応は、収率が50%を下回ることも報告されており、この点で効率がよいともいえない。
【0010】
その他、N−スルフィニルアニリンまたはニトロベンゼン誘導体を出発物質として用い、グリニャール試薬と反応させることにより、7位にメトキシ基、メチル基、ハロゲン原子などが導入されたインドリン誘導体の製法も開示されている(非特許文献4)。また、非特許文献3と5では、この他、ニトロフェノールのエーテル誘導体にビニルマグネシウムブロミドを反応させ、対応する7−ヒドロキシインドールのエーテル誘導体を調製するための方法が開示されている。しかし、この方法では−40℃という低温を必要とする上、エーテルの構造によっても変動する収率が60%を越えることはない。さらに、グリニャール試薬のような有機金属は、空気中の湿気に対して不安定であるため、安全性かつ効率性の点で必ずしも工業的利用に有用とは言い難い。
【0011】
このようにインドールまたはインドリン化合物の7位の官能基化に関する技術は、未だ工業的利用には不充分であり、安全性および製造効率の点からさらなる改善が所望されている。
【0012】
【特許文献1】特開2000−38378号公報
【非特許文献1】クライシ,ティー.(Kuraishi,T.)ら、オーガニック・シンセシーズ・コレクティブ(Organic Syntheses Collective),第IX巻,1998年,p124−128
【非特許文献2】ソメイ,エム.(Somei,M.)ら、ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリティン(Chemical & Pharmaceutical Bulletin),第35号,第8巻,1987年,p3146−3154
【非特許文献3】ドブソン,ディ.(Dobson,D.)ら、シンセティック・コミュニケイションズ(SYNTHETIC COMMUNICATIONS),第21号,第5巻,1991年,p611−617
【非特許文献4】バウディン,ジーン−バーナード(Baudin,Jean−Bernard)ら、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters),第7号,第21巻,1986年,p837−840
【非特許文献5】バートーリ,ジー.(Bartoli,G.)ら、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters),第16号,第30巻,1989年,p2129−2132
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、反応において低温かつ安全性が懸念される物質を使用することなく、7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体を効率良く製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体の製造方法であって、以下の式(II):
【0015】
【化2】

【0016】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体を、ポリリン酸とともに加熱して、7員環を有するケトラクタム化合物を得る工程;
該7員環を有するケトラクタム化合物を、酸性水溶液中、ペルオキソニ硫酸塩と反応させて、8員環を有するアミドラクトン化合物に変換する工程;
該8員環を有するアミドラクトン化合物を酸性条件下にて還流し、7−ヒドロキシインドリンまたはその誘導体を得る工程;ならびに
該7−ヒドロキシインドリンまたはその誘導体を脱水素する工程;
を包含する、方法である。
【0017】
1つの実施形態では、上記式(II)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体のR、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖のC〜Cアルコキシ基である。
【0018】
1つの実施形態では、上記ペルオキソニ硫酸塩はペルオキソニ硫酸カリウムである。
【0019】
本発明はまた、7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体の製造方法であって、以下の式(IV):
【0020】
【化3】

【0021】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される化合物を脱水素する工程;を包含する、方法である。
【0022】
本発明はまた、以下の式(III):
【0023】
【化4】

【0024】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物である。
【0025】
本発明はまた、以下の式(III):
【0026】
【化5】

【0027】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物を製造するための方法であって、以下の式(II):
【0028】
【化6】

【0029】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体を、ポリリン酸とともに加熱する工程;を包含する、方法である。
【0030】
本発明はまた、以下の式(IV):
【0031】
【化7】

【0032】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物である。
【0033】
本発明はまた、以下の式(IV):
【0034】
【化8】

【0035】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物を製造するための方法であって、該以下の式(III):
【0036】
【化9】

【0037】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される化合物を、酸性水溶液中、ペルオキソニ硫酸塩と反応させる工程;を包含する、方法である。
【0038】
本発明はまた、以下の式(V):
【0039】
【化10】

【0040】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物である。
【0041】
本発明はまた、以下の式(V):
【0042】
【化11】

【0043】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物を製造するための方法であって、該以下の式(IV):
【0044】
【化12】

【0045】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される化合物を酸性条件下にて還流する工程;を包含する、方法である。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、より低温の反応温度も有害な化学物質も用いることなく、比較的少ない反応工程で7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体を容易に製造することができる。本発明の方法においては、7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体を高収率で得ることができる。本発明によれば、当該化合物を工業的に容易に製造することができるので、医薬分野などの種々の分野に対する7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体の汎用性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
まず、本明細書中で用いられる用語を定義する。
【0048】
用語「直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基」とは、任意の炭素数1〜5を有する、直鎖または分岐鎖アルキル基を包含していい、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびペンチルが挙げられる。
【0049】
用語「直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基」とは、炭素数1〜5の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基および炭素数3〜5の任意の分岐鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、tert−ブチルオキシなどが挙げられる。
【0050】
本明細書中に用いられる用語「ハロゲン原子」の例としては、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素が挙げられる。
【0051】
以下、本発明について詳述する。
【0052】
本発明により製造され得る7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体は、以下の式(I):
【0053】
【化13】

【0054】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、7位に水酸基を有するインドール類である。
【0055】
本発明の製造方法においては、例えば、まず、以下の式(II):
【0056】
【化14】

【0057】
(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体を、ポリリン酸とともに加熱することにより、7員環を有するケトラクタム化合物が合成される。
【0058】
上記式(II)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体は、例えば、以下のインドリン化合物:
【0059】
【化15】

【0060】
(ここで、R、RおよびRは上記のものと同様である。)を当業者に周知の方法を用いてアシル化することにより、容易に製造することができる。
【0061】
本発明に用いられるポリリン酸は、上記式(II)のN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体に対し過剰量使用するが、好ましくは上記式(II)のN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体に対し、重量比で10〜40倍の割合で反応に供される。好ましくはこの反応は加熱下にて行われ、好ましくは100℃〜140℃、より好ましくは120℃〜130℃の温度下にて行われる。反応に要する時間は、使用する反応物の量、反応温度等によって変動するため、必ずしも限定されないが、例えば、5時間〜25時間である。
【0062】
このようにして、上記式(II)のN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体とポリリン酸とを反応させることにより、以下の式(III):
【0063】
【化16】

【0064】
(ここで、R、RおよびRは上記のものと同様である。)で表される、7員環を有するケトラクタム化合物を得ることができる。
【0065】
次いで、上記式(III)で表されるケトラクタム化合物は、酸性水溶液中、ペルオキソニ硫酸塩と反応させられる。
【0066】
本発明に用いられる酸性水溶液は、好ましくは強酸を含有する水溶液である。強酸の例としては、硫酸および塩酸が挙げられる。酸性水溶液の濃度は特に限定されないが、例えば、60(v/v)%〜80(v/v)%である。
【0067】
本発明に用いられるペルオキソニ硫酸塩の例としては、ペルオキソニ硫酸カリウムが挙げられる。入手が容易であり、かつ反応性がより良好であるという理由から、ペルオキソニ硫酸カリウムを用いることが好ましい。本発明に用いられるペルオキソニ硫酸塩の量は、上記式(II)で表されるケトラクタム化合物1モルに対し、好ましくは3モル〜7モルである。ペルオキソニ硫酸塩の量が3モルを下回ると、反応が充分に進行せず、後述の式(IV)で表されるアミドラクトン化合物をよりよい収率で得ることが困難になる恐れがある。一方、ペルオキソニ硫酸塩の量が7モルを上回っても、反応自体に変化が見られず、むしろ生産性が劣る恐れがある。
【0068】
酸性水溶液中の、上記式(III)のケトラクタム化合物とペルオキソニ硫酸塩との反応は、不要な副反応を避けるため、例えば、氷温付近で行われることが好ましい。
【0069】
このようにして、式(III)のケトラクタム化合物とペルオキソニ硫酸塩とを反応させることにより、以下の式(IV):
【0070】
【化17】

【0071】
(ここで、R、RおよびRは上記のものと同様である。)で表される、8員環を有するアミドラクトン化合物を得ることができる。
【0072】
次いで、上記式(IV)で表されるアミドラクトン化合物は、酸性条件下にて還流されることにより、以下の式(V):
【0073】
【化18】

【0074】
(ここで、R、RおよびRは上記のものと同様である。)で表される、7−ヒドロキシインドリンまたはその誘導体を得ることができる。
【0075】
さらに、この式(IV)の7−ヒドロキシインドリンまたはその誘導体を二酸化マンガンなどの触媒存在下、脱水素することにより、上記式(I)で表される7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体を製造することができる。
【0076】
上記では、本発明の7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体の製造方法について、出発物質として式(II)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体を用いた場合の一連の反応工程を説明したが、本発明はこれらの一連の工程を必ずしも含むことに限定されない。すなわち、本発明の7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体の製造方法は、上記式(IV)で表される7−インドリンおよびその誘導体を用い、これを脱水素することにより得られるものであれば、必ずしも上記一連の工程の経て製造されるものでなくてもよい。
【0077】
このようにして目的の7−ヒドロキシインドールまたはびその誘導体を効率良く製造することができる。得られた7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体は、必要に応じて、さらに数段階の工程を経て最終目的の化合物へと変換され得る。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例によって具体的に記述する。しかし、これらによって本発明は制限されるものではない。
【0079】
<参考例1:4−(2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル)−4−オキソ酪酸(2)の調製>
【0080】
【化19】

【0081】
氷冷下に撹拌した無水コハク酸(1.8g,18mmol,1.1当量)のピリジン溶液(40ml)に、インドリン(1)(2.07g,17mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応液に氷水を加え、6MのHCl溶液を加えて酸性にした。次いで、生成した結晶を吸引濾過で濾取し、水洗後、減圧乾燥して、3.5gの標題化合物(2)を得た(収率96%)。
【0082】
得られた化合物(2)の分析結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
<実施例1:1,2,5,6−テトラヒドロ−アゼピノ[3,2,1−hi]インドール−4,7−ジオン(3)の合成>
【0085】
【化20】

【0086】
参考例1で得られた化合物(2)(1.0g,4.5mmol)とポリリン酸(20g)とを混合し、125℃で、15時間加熱撹拌した。反応溶液に氷水を加え、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液を合して、水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルかラムクロマトグラフィー(シリカゲル8g;(溶離液)ヘキサン−酢酸エチル=4:1(容量比))にかけ、0.65gの標題化合物(3)を得た(収率71%)。
【0087】
得られた化合物(3)の分析結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
<実施例2:1,2,8,9−テトラヒドロ−6−オキサ−10a−アザ−シクロオクタ[cd]インデン−7,10−ジオン(4)の合成>
【0090】
【化21】

【0091】
実施例1で得られた化合物(3)(0.10g,0.50mmol)を、ペルオキソニ硫酸カリウム(K)(0.67g,2.5mmol,5当量)と70%硫酸水溶液(6ml)との混合物に加え、−5℃で3分間激しく撹拌した。氷を加えた後、生成した結晶を濾取し、水洗の後、乾燥することにより、0.07gの標題化合物(4)を得た(収率75%)。
【0092】
得られた化合物(4)の分析結果を表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
<比較例1〜3>
ペルオキソニ硫酸カリウムの代わりに、同当量の過酢酸、m−クロロペルオキシ安息香酸、またはトリフルオロ過酢酸を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例1で得られた化合物(3)との反応を試みた。いずれの反応も充分に進まず、化合物(4)を得ることができなかったことを確認した。
【0095】
<実施例3:2,3−ジヒドロ−1H−インドール−7−オール(5)の合成>
【0096】
【化22】

【0097】
実施例2で得られた化合物(4)(0.3g,1.3mmol)を、3MのHCl(10ml)水溶液(10ml)に懸濁し、窒素気流下にて5時間加熱還流した。室温まで冷却した後、氷水を加え、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液を水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル5g;(溶離液)ジクロロメタン)で精製して、0.13gの標題化合物(5)を得た(収率73%)。
【0098】
得られた化合物(5)の分析結果を表4に示す。
【0099】
【表4】

【0100】
<実施例4:7−ヒドロキシインドール(6)の合成>
【0101】
【化23】

【0102】
実施例3で得られた化合物(5)(0.2g,1.5mmol)、MnO(0.26g,2.0当量)およびベンゼン(10ml)の混合物を、6時間、加熱還流した。室温まで冷却した後、氷水を加え、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル5g;(溶離液)ヘキサン:酢酸エチル=3.1(容量比))で精製し、0.15%の標題化合物(6)を得た(収率76%)。
【0103】
得られた化合物(6)の分析結果を表4に示す。
【0104】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体を効率良く製造することができる。本発明により得られた7−ヒドロキシインドールおよびその誘導体は、例えば、アドレナリンβ−アゴニスト(AJ−9677)または他の医薬中間体などの種々の技術分野に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体の製造方法であって、
以下の式(II):
【化1】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体を、ポリリン酸とともに加熱して、7員環を有するケトラクタム化合物を得る工程;
該7員環を有するケトラクタム化合物を、酸性水溶液中、ペルオキソニ硫酸塩と反応させて、8員環を有するアミドラクトン化合物に変換する工程;
該8員環を有するアミドラクトン化合物を酸性条件下にて還流し、7−ヒドロキシインドリンまたはその誘導体を得る工程;ならびに
該7−ヒドロキシインドリンまたはその誘導体を脱水素する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記式(II)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体のR、RおよびRが、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖のC〜Cアルコキシ基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペルオキソニ硫酸塩がペルオキソニ硫酸カリウムである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
7−ヒドロキシインドールまたはその誘導体の製造方法であって、
以下の式(IV):
【化2】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される化合物を脱水素する工程;を包含する、方法。
【請求項5】
以下の式(III):
【化3】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物。
【請求項6】
以下の式(III):
【化4】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物を製造するための方法であって、
以下の式(II):
【化5】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表されるN−(3−カルボキシプロパノイル)誘導体を、ポリリン酸とともに加熱する工程;を包含する、方法。
【請求項7】
以下の式(IV):
【化6】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物。
【請求項8】
以下の式(IV):
【化7】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物を製造するための方法であって、
該以下の式(III):
【化8】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される化合物を、酸性水溶液中、ペルオキソニ硫酸塩と反応させる工程;を包含する、方法。
【請求項9】
以下の式(V):
【化9】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物。
【請求項10】
以下の式(V):
【化10】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される、化合物を製造するための方法であって、
該以下の式(IV):
【化11】

(ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルキル基;あるいは直鎖または分岐鎖状のC〜Cアルコキシ基である)で表される化合物を酸性条件下にて還流する工程;を包含する、方法。

【公開番号】特開2006−160660(P2006−160660A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354057(P2004−354057)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】