説明

ALC回路

【課題】簡易な構成で確実に増幅回路の過入力を防止することができるALC回路を提供する。
【解決手段】入力されるRF信号を第1制御信号に応じて減衰する第1減衰器と、与えられる送信信号のタイミングで段階的に大きくなる第1制御信号を生成して第1減衰器に供給する第1制御部と、第1減衰器で減衰されたRF信号を第2制御信号に応じて減衰する第2減衰器と、第2減衰器により減衰されたRF信号に応じて、段階的に大きくなる第2制御信号を生成して第2減衰器に供給する第2制御部をもつALC回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力信号を減衰器により減衰することで増幅器への過入力を防止するALC(Auto Level Circuit)回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、増幅回路においては、出力を一定に保つために前段にALC回路が用いられることが知られている。ALC回路においても、入力信号が過入力とならぬように、出力信号の値に応じて入力信号を制御する方法が用いられる。
特許文献1には、自動利得制御回路であって出力信号の大きさをデジタル変換し、このデジタル値によって入力信号の値を適宜減衰する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−56345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の従来技術は、A/D変換回路、D/A変換回路、制御部等を用いており、回路構成としても大規模なものとなりコストダウンを図ることができない。
本発明は、簡易な構成で確実に増幅回路の過入力を防止することができるALC回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決する一実施形態は、
入力されるRF信号を第1制御信号に応じて減衰する第1減衰器と、
与えられる送信信号のタイミングで段階的に大きくなる前記第1制御信号を生成して前記第1減衰器に供給する第1制御部と、
前記第1減衰器で減衰されたRF信号を第2制御信号に応じて減衰する第2減衰器と、
前記第2減衰器により減衰されたRF信号に応じて、段階的に大きくなる前記第2制御信号を生成して前記第2減衰器に供給する第2制御部と、
を具備することを特徴とするALC回路である。
【発明の効果】
【0006】
抵抗RとコンデンサCで構成されたRC時定数回路と減衰器を追加するという比較的簡単な構成により、送信立上がり時の入力信号の値を適切に制御することで安定した増幅処理を行うことができる、安価で広帯域に渡り出力レベル偏差の少ないALC回路を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態に係るALC回路の構成の一例を示すブロック図。
【図2】同じくALC回路の動作の一例を示すタイミングチャート。
【図3】他のALC回路の構成の一例を示すブロック図。
【図4】他のALC回路の動作の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
ALC回路は、一般に、増幅回路において出力を一定に保つために用いられる。図1は、本発明の一実施形態に係るALC回路の構成の一例を示すブロック図、図2は、同じくALC回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0009】
本発明の一実施形態に係るALC回路1は、図1に示すように、発明の要部11である減衰器12と抵抗RとコンデンサCで構成されたRC時定数回路13を有しており、この減衰器12はRF(Radio Frequency)入力信号VINが入力され、送信オンオフ信号Vと固定電圧Vが供給されるRC時定数回路13から制御信号V’が供給される。さらにALC回路1は、減衰器12から減衰されたRF入力信号VINが供給される減衰器14と、増幅器15と、増幅器16と、増幅器16の出力を検出する検波器17と、検波器17の出力を受けて制御信号V2fを減衰器14に供給するRC時定数回路18を有している。
【0010】
このような構成のALC回路について、図2のタイミングチャートを用いて、以下に動作を説明する。ALC回路1は、通常動作時のRF入力信号VINの値が過入力とならぬよう、検波器17と減衰器14のALCループによるRF入力信号VINの制御が行われる。更に、送信オンオフ信号Vの起動時においても、RF入力信号VINの値が過入力とならぬように減衰器12によるRF入力信号VINの制御が行われる。
【0011】
すなわち、まず、外部より送信オンオフ信号VがRC時定数回路13に入力されると、これによりRC時定数回路13が動作を始める。この回路には固定電圧Vが入力されており、送信オンオフ信号Vをトリガーとして0VからVまで穏やかに変化する制御信号V’を出力する。この制御信号V’は減衰器12に供給され、制御信号V’より減衰器12の減衰量が穏やかに減少する。従って、送信オンオフ信号Vがオンした直後に過大なRF入力信号VINがそのまま増幅器15に入力されてしまうということがなくなり、送信オンオフ信号Vがオンすると徐々に値が大きくなるRF入力信号VINとして増幅器15に入力される。
【0012】
すなわち、RF入力信号VINは、特に送信オンオフ信号Vの起動時は値が小さくその後レベルが穏やかに大きくなる。
また、検波器17の出力を受けたRC時定数回路18から出力される制御信号V2fは、検波器17の出力に応じて段階的に大きくなり、減衰器14に供給されることでALCループが送信オンオフ信号Vの起動時の後の値に追従してレベルを一定に保つことになる。このため、減衰器14により出力されたRF信号VINは、送信オンオフ信号Vがオンとなる際及びその後も過入力とはならずに増幅器15、増幅器16で増幅され、検波器17を通り、RF出力信号VOUTとして、図2のタイミングチャートに示すような波形として出力される。
【0013】
このように本発明の一実施形態に係るALC回路は、簡易な構成により、送信オンオフ信号Vがオンとなる起動時においても、過大なRF入力信号VINが増幅器15,16に供給されることがなく、広帯域に渡り出力レベル偏差の少ない安定した出力を得ることができる。
【0014】
(他の実施形態)
次に、ALC回路の他の実施形態を示し、上述したALC回路1と比較して考察する。図3は他のALC回路の構成の一例を示すブロック図、図4は他のALC回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
他の実施形態であるALC回路3は、RF入力信号VIN2が供給される減衰器31と、増幅器32と、増幅器33と、増幅器33の出力を検出する検波器34と、検波器34の出力に応じて段階的に穏やかに大きくなる制御信号を出力するRC時定数回路35と、これを受けて制御電圧を選択的に出力する制御電圧選択スイッチ36と、温度センサ40と、温度センサ40の出力と周波数情報と送信オンオフ信号を受けるFPGA(Field Programming Gate Array)等による制御部39と、制御部39からのアドレスを受けて格納してある制御情報を出力するROM(Read Only Memory)38と、この出力をD/A変換するD/Aコンバータ37を有している。
【0015】
このような構成をもつALC回路3は、検波器34でRF出力信号VOUT2を検波し、RC時定数回路35を介して、検波した電圧で減衰器31を制御し、RF出力信号VOUT2が大きい場合は減衰器31の減衰量をふやし、小さい場合は減衰量を減らして出力レベルを一定に保つ。すなわち、ALC回路では重要なパラメータとしてループゲインと時定数があるが、ループゲインやRC時定数回路35の時定数を適切に選択することにより、増幅器の利得の周波数特性を補正し、RF出力信号VOUTの値を一定に保つことが可能となる。
【0016】
また、このALC回路3においては、送信オンオフ信号VT2の起動時においてもRF入力信号VIN2が過入力とならぬように、制御部39とROM38の制御信号による減衰器31の制御が行われる。
まず、RF入力信号VIN2が0Vの時、RF出力信号VOUT2も0となるため、ALC回路3は減衰器31の減衰量が最小となるように動作する。この状態でRF入力信号VIN2が入力されると、増幅器32の入力レベルが大きくなり、増幅器32及び増幅器33を破損させる可能性がある。
【0017】
これを防止するべく、ALC回路3では、制御部39において、各周波数に対して出力が一定になる減衰器の減衰量を予め測定して、そのデータを周波数/温度毎にROM38に書き込んでおく。そして、制御部39は、実際に送信する際に、与えられた周波数情報や温度センサ40からの温度情報に対応したアドレスをROM38に供給し、ROM38から最適な制御情報を読み出してD/Aコンバータ37、制御電圧選択スイッチ36を介して減衰器31に供給する。減衰器31は、これにより瞬時に最適な値に制御され、増幅器32に与えられる入力信号を最適の値に減衰して過入力となることを防止するものである。これにより、ALC回路3からは、図4のタイミングチャートが示すように、RF出力信号VOUT2が一定の値に抑制されて出力される。
【0018】
このようにALC回路3によれば、与えられる周波数・温度に対応して、ROM38に格納された最適の制御量によりRF入力信号VINを減衰することで、過入力となることを確実に防止することができる。
なお、ここで、ALC回路3は、図1に示したALC回路1と比べると、きめ細かな制御を行うことができるが、構造上複雑となり、また、コスト高となるという面がある。
【0019】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0020】
1…ALC回路、11…本発明の要部、12…減衰器、13…RC時定数回路、14…減衰器、15…増幅器、16…増幅器、17…検波器、18…RC時定数回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるRF信号を第1制御信号に応じて減衰する第1減衰器と、
与えられる送信信号のタイミングで段階的に大きくなる前記第1制御信号を生成して前記第1減衰器に供給する第1制御部と、
前記第1減衰器で減衰されたRF信号を第2制御信号に応じて減衰する第2減衰器と、
前記第2減衰器により減衰されたRF信号に応じて、段階的に大きくなる前記第2制御信号を生成して前記第2減衰器に供給する第2制御部と、
を具備することを特徴とするALC回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−177787(P2010−177787A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15641(P2009−15641)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】