説明

AVルーム用内装材

【課題】映像鑑賞時の臨場感の向上と、映像鑑賞を行うときの室内の雰囲気と映像鑑賞を行わないときの室内の快適さとを簡単な操作により両立できるAVルーム用内装材を提供すること。
【解決手段】 前面板205と背面基板203とを貼り合わせ、アクリル樹脂製の箱301と透明ポリカーボネート製の蓋306の中に納め、概観上の形態をタイル形状とする。そして、アクリル樹脂製の箱301の背面には、壁や天井への取付金具401と電気回路部品402を設け、電気回路部品402には、コネクタC1,C2,C3の他、リレースイッチ回路605を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型スクリーンにプロジェクタで投影して映画等を鑑賞する部屋の内装材として用いて好適なAVルーム用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年FPD(Flat Panel Display)の進展は目覚しく、対角40インチや50インチのLCD(Liquid Crystal Display)やPDP(Plasma Display Panel)を入手することが容易になってきた。これらは高画質である一方、映画館のような画面サイズは望むべくもない。より大きく、例えば対角100インチを越えるような大画面で、映画等を楽しみたい要求は、プロジェクタと反射スクリーンによって満足することが出来る。
【0003】
このような大画面を楽しむために、近年AVルームやホームシアターと呼ばれる視聴環境を整えた部屋を、企業に限らず個人宅にも設ける傾向が増えてきた。このような部屋(以下、AVルームという)は、大型画面と優れた音響装置を備えているのが特徴で、その中でも、プロジェクタと反射スクリーンを備えたAVルームは、映画館に匹敵する感動を人に与えることが出来る。
【0004】
プロジェクタの投影像を見るには、映画館と同様に周囲を暗くする必要がある。このため、AVルームには窓がなかったり、窓があっても遮光カーテンやシャッターによって室内への外光侵入を防ぐ設備が備わっている。遮光カーテンは手で引いてもよいが、電動式で稼動するものがある(特許文献1参照)。
この技術は、音響映像装置(以下、AVシステム)と連動して遮光カーテンが稼動する技術であり、AVルームが映像を楽しむことへより特化していく傾向を示している。
【0005】
音響は、多チャンネル化により臨場感が増す。DVD(Digital Video/Versatile Disc)に採用されていることから、近年は5.1チャンネルの音声データを再生する音響システムが普及する傾向にある。これにより、かつてより音響の臨場感は増していると言える。
【0006】
一方、映像は、画面のきめ細かさや発色の良さも影響するが、何より大画面によって、まるで映像の中にいるかのような臨場感が増す。AVルームにおいては、FPDよりもプロジェクタが選ばれる機会が多いのは、このためである。大画面とはいえ、視界の中には必ず画面外の領域がある。当然ながら画面外のものは、なるべく目に入らないのがよく、したがって、映画館のように周囲を暗くすることは、臨場感を増すことに大きく寄与している。
【0007】
しかしながら、遮光カーテンを引き照明を切って室内が暗くなっても、投影光の散乱、反射によって室内の壁や天井は照らされてしまう。この結果、画面外の領域の存在は目に入ってしまう。
【0008】
このような状況に対し、画面に相当する紙芝居以外の部分の色調を暗色系とすることで、紙芝居を観る際の臨場感を高めているものがある(特許文献2参照)。
これと同様の考え方で、AVルームにおいても、画面以外で目に入ってしまう壁や天井は、暗色系の方が没入感を高めることが出来る。
【特許文献1】特開2002−10370号公報
【特許文献2】実用新案登録3090057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、壁や天井を暗色系とすると、映像鑑賞をしない時では部屋全体が暗くなり、中にいる人々の気分にも少なからず影響を及ぼす可能性があった。この対策として、明色系のカーテンを壁に設けること、または壁や天井を明色系とし暗色系のカーテンを設けることも考えられるが、映像鑑賞の度にカーテン操作をすることは煩わしく、また、天井をカーテンで覆うことは容易ではないという課題があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、映像鑑賞時の臨場感の向上と、映像鑑賞を行うときの室内の雰囲気と映像鑑賞を行わないときの室内の快適さとを簡単な操作により両立できるAVルーム用内装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかるAVルーム用内装材は、反射率が変化するAVルーム用内装材であって、反射率の電気的な制御が可能な反射率可変板と、前記反射率可変板が内装された外套体と、前記反射率可変板に設けられ、前記反射率可変板の反射率を電気的に制御するための駆動電圧が印加される電極部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、煩わしいカーテン操作などをすることなく,簡単なスイッチ操作で壁や天井などを全面黒または白に切り替えることが可能となる。これにより、映像を鑑賞する際には黒表示にすることで内装を目立たなくして、映像鑑賞の際の臨場感を増大させることが可能となる。一方、通常の部屋として使用する際は、白表示で明るい内装に切り替え、快適な気分で過ごせる空間を得ることができ、映像鑑賞時の臨場感の向上と、映像鑑賞時と映像鑑賞を行わないときの部屋の快適さとを簡単な操作により両立できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態のAVルーム用内装材に用いられるマイクロカプセルの説明図である。図2は本実施の形態のAVルーム用内装材における反射率可変板211の断面構造図である。図3は本実施の形態のAVルーム用内装材の形態をタイル形状にしたときの構造図である。図4は本実施の形態のAVルーム用内装材の形態をタイル形状にしたときの背面図である。図5は本実施の形態のAVルーム用内装材の形態をタイル形状にしたときの外部制御部502を含むシステム構成図である。
【0014】
近年、電子ペーパーと呼ばれる新しい表示媒体が登場しているが、この電子ペーパーは、LCDやPDP、CRT(Cathode Ray Tube)のような従来からある表示媒体と異なり、発光せずに反射率を変化させることで表示を行う。電子ペーパーと呼ばれる技術は複数存在するが、本実施の形態のAVルーム用内装材では、電気泳動方式、その中でもマイクロカプセル型電気泳動方式の反射率可変板211を採用する。
【0015】
反射率可変板211は、図1に示すように、マイクロカプセル型電気泳動方式により、それぞれ正負に帯電した白顔料101、黒顔料103を、透明な分散媒体104と共にマイクロカプセル102に封入し、図2に示すようにマイクロカプセル102を少なくとも一方には透明電極201が構成された透明基板202と電極基板203との間に配置して、電極に印加する電圧の極性に応じて、透明電極201側に黒顔料または白顔料を電気泳動させて反射率を変化させる。
【0016】
マイクロカプセル102は、透明電極を有する透明樹脂フィルム上に塗布することが可能であり、図2に示すように、マイクロカプセル102が塗布されたフィルムが前面板205である。前面板205は粘着性を有し、電子書籍リーダーで用いられているTFT(Thin Film Transistor)ガラス基板以外の部材にも貼り付けることが可能である。前面板205が貼り付けられる基板が背面基板203である。反射率可変板211は、前面板205と背面基板203と画素電極204とから構成される。
【0017】
一般に、様々な表示を行う情報ディスプレイで用いる電極は、多数の画素のON/OFFで表示を構成するために、多くの画素電極204を必要とする。例えば、先の電子書籍リーダーの場合、背面基板203は48万個もの画素電極204を有している。この画素電極を制御するためには、背面基板203および制御回路の作りこみが必要で、構造が複雑になり、コストも高くなる。
【0018】
しかしながら、本実施の形態のAVルーム用内装材では、壁や天井を全面白または黒で切り替えるため、このような作りこみは不要で、電極構成は大面積の電極一対でよく、制御回路も簡便なものとなる。背面基板203は、導電性を有する材料、例えば金属板、金属箔、導電性カーボンインク等が使用できる。背面基板203の一部には、前面板205の透明電極と電気接続を取るための接点を設け、導電性接着剤や金属ペースト、カーボンペースト等により接続する。さらには、設計、施工を容易にするために、壁一面を一枚の部材で作るのではなく、一定の大きさのタイル状部品(以下、タイルという)を基本単位として、面積に応じてこのタイルを並列設置するようにする。
【0019】
また、本実施の形態では、図5、図6に示すように複数のタイル同士は電気的に連結接続され、一つの外部制御部502によって一括で制御される。この外部制御部502はスイッチ503、例えば壁の専用のスイッチにより操作したり、あるいは照明スイッチやプロジェクタのスイッチと連動で動作するように設定する。このスイッチ503からの入力を受けて、前記外部制御部502はマイクロコンピュータに格納されたプログラムに従い、タイルを黒または白になるよう、電圧を発生させて、タイルの電極に印加する。このとき印加される電圧の極性に応じて、タイルの前面板205は全面で白または黒に切り替わる。
【0020】
各タイルは、駆動電圧を外部制御部502から受け取る端子の他に、簡単なスイッチ回路605を有する。このスイッチ回路605は、タイル同士の電気リークを防止するもので、タイルの白黒切り替え動作を安定化させる働きがある。このスイッチ回路605は、本実施の形態では、リレースイッチ回路により構成する。
【0021】
図3において、前面板205は米国EInk社より購入した。前面板205には、マイクロカプセルを取り除き透明電極を露出させた透明電極露出部305が予め設けてある。この前面板205を背面基板203へ貼り付ける。背面基板203は、0.5mm厚、40cm×40cmのアルミニウム薄板を用いた。背面基板203には、前面板205の透明電極露出部305に対応する位置に3mm×10mmの切り欠き部303が予め構成されている。切り欠き部303を通して、透明電極露出部305と電気回路部品402のスイッチ回路605との電気接続を銀ペーストにより行なった。
【0022】
前面板205と背面基板203とを貼り合わせたものは、図3に示すようにアクリル樹脂製の箱301と透明ポリカーボネート製の蓋306の中に納め、概観上の形態をタイル形状とした。箱に収めたのは、壁材、天井材となるので、外部衝撃からの保護や、漏電などの電気トラブルからの保護のためである。
【0023】
アクリル樹脂製の箱301の背面には、図4に示すように壁や天井への取付金具401と、簡単な電気回路部品402が設けてある。取付金具401は、取り付け工法により任意のものが使用できる。
【0024】
また、図5に示すように、タイル501と外部制御部502との間、およびタイル501同士が電気回路部品402および電気ケーブル類により電気的に接続される。電気回路部品402には、コネクタ(駆動電圧供給部、制御信号入力部)C1,C2,C3の他、図6に示す簡単なリレースイッチ回路605を設けた。
【0025】
図6は、図5に示したタイル501と外部制御部502、図4に示した電気回路部品402の各構成および、それらタイル501と外部制御部502と電気回路部品402との電気的な接続関係を示す電気回路図である。
図6に示すように、このAVルーム用内装材を用いたシステムでは、外部制御部502には前記スイッチ503から操作スイッチ入力が与えられ、また外部制御部502はマイクロプロセッシングユニット(マイクロコンピュータ)、主電源部、駆動電源部を備えている。さらに、図5に示すように、タイル501を25枚連結設置し外部制御部502に接続した構成である。さらに外部制御部502の電源は、単相100Vのコンセント504から取った。タイル501の動作電源+15Vおよび−15Vは25枚全て外部制御部502から供給される。外部制御部502を操作するスイッチ503を壁に設置した。スイッチ503を操作することで、タイル25枚全てを白または黒に切り替える。
【0026】
そして、フロントプロジェクタ用スクリーンの周りを取り囲むように、この25枚のタイル501を配置し、白表示状態、または黒表示状態で2時間の映画を鑑賞したところ黒表示状態の方が映画に没頭できる。
【0027】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、壁や天井などにこのAVルーム用内装材を用いることで、煩わしいカーテン操作などをすることなく,簡単なスイッチ操作で壁や天井などを、全面黒または白に切り替えることが可能となる。これにより、映画などをフロントプロジェクタで楽しむ時は、黒表示で内装が目立たなくなり、映像鑑賞の際の臨場感を増大させることが可能となる。一方、通常の部屋として使用する時は、白表示で明るい内装に切り替え、快適な気分で過ごせる空間を得ることができ、映像鑑賞時の臨場感の向上と、映像鑑賞時と映像鑑賞を行わないときの部屋の快適さとを簡単な操作により両立できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態のAVルーム用内装材に用いられるマイクロカプセルの説明図である。
【図2】本発明の実施の形態のAVルーム用内装材における白黒表示部の断面構造図である。
【図3】本発明の実施の形態のAVルーム用内装材の形態をタイル形状にしたときの構造図である。
【図4】本発明の実施の形態のAVルーム用内装材の形態をタイル形状にしたときの背面図である。
【図5】本発明の実施の形態のAVルーム用内装材の形態をタイル形状にしたときの外部制御部502を含むシステム構成図である。
【図6】本発明の実施の形態のAVルーム用内装材の形態をタイル形状にしたときのタイルと外部制御部、電気回路部品の各構成および、それらタイルと外部制御部と電気回路部品との電気的な接続関係を示す電気回路図である。
【符号の説明】
【0029】
211……反射率可変板、301……タイルケース(外套体)、305……透明電極接続部(電極部)、306……透明板(外套体)、605……リレースイッチ(スイッチ回路)、C1,C2,C3……コネクタ(駆動電圧供給部、制御信号入力部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射率が変化するAVルーム用内装材であって、
反射率の電気的な制御が可能な反射率可変板と、
前記反射率可変板が内装された外套体と、
前記反射率可変板に設けられ、前記反射率可変板の反射率を電気的に制御するための駆動電圧が印加される電極部と、
を備えたことを特徴とするAVルーム用内装材。
【請求項2】
前記反射率可変板は、帯電した顔料を移動させる電気泳動方式により反射率が電気的に制御されることを特徴とする請求項1記載のAVルーム用内装材。
【請求項3】
前記外套体は矩形状のタイルの形態に構成されていることを特徴とする請求項1記載のAVルーム用内装材。
【請求項4】
前記駆動電圧が外部から供給されている駆動電圧供給部と、前記駆動電圧の前記反射率可変板への印加を制御するための制御信号が入力される制御信号入力部と、前記制御信号入力部から入力された前記制御信号をもとに、前記反射率可変板への前記電極部を介した前記駆動電圧の印加を制御するスイッチ回路とを備えていることを特徴とする請求項1記載のAVルーム用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−239284(P2007−239284A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62096(P2006−62096)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】