説明

ActRII受容体ポリペプチド、方法、および組成物

ある局面において、本発明は、骨、軟骨、筋肉、脂肪、および/または神経などの組織の成長を調節する(促進するまたは阻害する)組成物および方法を提供する。本発明はまた、ActRIIタンパク質および/またはActRIIリガンドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。本明細書で提供する組成物および方法は、ActRIIタンパク質および/またはActRIIリガンドの異常な活性に関連した疾患を治療する上で有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年7月23日に出願した米国仮特許出願第60/590,765号の恩典を主張する。上記出願の開示はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントおよび構造モチーフを共有する種々の増殖因子を含む。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の多種多様な細胞種に対して生物学的効果を及ぼすことが知られている。このスーパーファミリーのメンバーは、胚発生期にパターン形成および組織特異化において重要な機能を果たし、脂肪生成、筋形成、軟骨形成、心発生、造血、神経発生、および上皮細胞分化をはじめとする様々な分化過程に影響し得る。このファミリーは、そのメンバーが多様な、多くの場合相補的な効果を有する2つの一般的分類:BMP/GDF分類およびTGF-β/アクチビン/BMP10分類に分割される。TGF-βファミリーのメンバーの活性を操作することで、生物に顕著な生理的変化をもたらし得る場合が多い。例えば、PiedmonteseおよびBelgian Blueウシ品種は、筋肉量の顕著な増加をもたらす、GDF8(ミオスタチンとも称される)遺伝子の機能喪失変異を有する。Grobet et al., Nat Genet. 1997, 17(1):71-4(非特許文献1)。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性対立遺伝子が、筋肉量の増加、および報告によれば並外れた強さと関連している。Schuelke et al., N Engl J Med 2004, 350:2682-8(非特許文献2)。
【0003】
筋肉、骨、軟骨、およびその他の組織の変化は、適切なTGF-βファミリーメンバーによって媒介されるシグナル伝達を作動させるかまたは遮断することによって達成され得る。したがって、TGF-βシグナル伝達の強力な制御因子として機能する物質の必要性が存在する。
【0004】
【非特許文献1】Grobet et al., Nat Genet. 1997, 17(1):71-4
【非特許文献2】Schuelke et al., N Engl J Med 2004, 350:2682-8
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
ある局面において、本開示はActRIIポリペプチドを提供する。このようなActRIIポリペプチドは、種々の障害または状態、特に筋障害および神経筋障害(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および筋萎縮)、望ましくない骨/軟骨成長、脂肪組織疾患(例えば、肥満症)、代謝性疾患(例えば、2型糖尿病)、ならびに神経変性疾患の治療に使用され得る。ある態様において、ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)は、一般にActRII活性と関連する任意の過程でActRII受容体(例えば、ActRIIAまたはActRIIB)と拮抗し得る。任意で、本発明のActRIIポリペプチドは、GDF8(ミオスタチンとも称される)、GDF11、アクチビン、Nodal、およびBMP7(OP-1とも称される)などの、ActRII受容体の1つまたは複数のリガンドを優先的に遮断するよう設計され得、したがってさらなる疾患の治療においても有用であり得る。ActRIIポリペプチドの例には、天然ActRIIポリペプチドおよびその機能的変種が含まれる。
【0006】
ある局面において、本開示は、GDF8、GDF11、アクチビン、BMP7、またはNodalなどのActRIIリガンドに結合する可溶性ActRII(例えば、ActRIIAまたはActRIIB)ポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的調製物を提供する。任意で、可溶性ActRIIポリペプチドは、10マイクロモル未満、または1マイクロモル、100、10、もしくは1ナノモル未満のKdでActRIIリガンドに結合する。任意で、可溶性ActRIIポリペプチドは、ActRIIリガンドによって誘発される細胞内シグナル伝達事象などのActRIIシグナル伝達を阻害する。そのような調製物に使用するための可溶性ActRIIポリペプチドは、SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を有するか、またはSEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドのような、本明細書に開示するポリペプチドのいずれかであってよい。可溶性ActRIIポリペプチドは、SEQ ID NO:1〜4および9〜12から選択される配列の少なくとも10、20、または30アミノ酸を含む断片、またはC末端の10〜15アミノ酸(「尾部」)を欠くSEQ ID NO:1もしくは2の配列などの、天然ActRIIポリペプチドの機能的断片を含み得る。可溶性ActRIIポリペプチドは、天然ActRIIポリペプチドに対して、アミノ酸配列中(例えば、リガンド結合ドメイン中)に1つまたは複数の改変を含み得る。アミノ酸配列中の改変は、例えば、天然ActRIIポリペプチドと比較して、哺乳動物細胞、昆虫細胞、もしくはその他の真核細胞中で産生された場合にポリペプチドのグリコシル化を変更し得るか、またはポリペプチドのタンパク質分解切断を変更し得る。可溶性ActRIIポリペプチドは、1つのドメインとしてのActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIのリガンド結合ドメイン)、および薬物動態の改良、精製の簡便化、特定標的への標的化など、所望の特性を提供する1つまたは複数のさらなるドメインを有する融合タンパク質であってよい。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、摂取/投与、組織局在性もしくは分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製の1つまたは複数を増強し得る。可溶性ActRII融合タンパク質は、免疫グロブリンFcドメイン(野生型または変異体)または血清アルブミンを含み得る。好ましい態様において、ActRII-Fc融合物は、Fcドメインと細胞外ActRIIドメインとの間に位置する、比較的構造化されていないリンカーを含む。この非構造化リンカーは、ActRIIAもしくはActRIIBの細胞外ドメインのC末端に位置する約15アミノ酸の非構造化領域(「尾部」)に相当し得るか、または二次構造を比較的もたない5〜15、20、30、50、またはそれ以上のアミノ酸の人工的配列であってよい。リンカーはグリシンおよびプロリン残基に富んでいてよく、例えばスレオニン/セリンおよびグリシンの反復配列(例えば、TG4またはSG4反復)を含み得る。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合物などの精製サブ配列を含み得る。任意で、可溶性ActRIIポリペプチドは、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合したアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合したアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾アミノ酸残基を含む。薬学的調製物はまた、ActRII関連疾患を治療するために用いられる化合物などの、1つまたは複数のさらなる化合物を含み得る。好ましくは、薬学的調製物は実質的に発熱物質を含まない。一般に、ActRIIタンパク質は、患者における好ましくない免疫応答の可能性を低減させるために、ActRIIタンパク質の天然グリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株で発現させることが好ましい。ヒトおよびCHO細胞株での使用に成功しており、その他の一般的な哺乳動物発現ベクターも有用であると予想される。
【0007】
ある局面において、本開示は、本明細書に記載の薬学的調製物を含み、かつヒトにおいて組織の成長を促進するかまたは組織の損失を低減もしくは防止する上で使用するためにラベルされた、包装された薬剤を提供する。例示的な組織には、骨、軟骨、筋肉、脂肪、および神経が含まれる。
【0008】
ある局面において、本開示は、ActRIIの改変されたリガンド結合(例えば、GDF8結合)ドメインを含む可溶性ActRIIポリペプチドを提供する。ActRII受容体のそのような改変されたリガンド結合ドメインは、ヒトActRIIBのE37、E39、R40、K55、R56、Y60、A64、K74、W78、L79、D80、F82、およびF101などのアミノ酸残基における1つまたは複数の変異を含む。ActRII受容体のそのような改変されたリガンド結合ドメインは、ヒトActRIIAのE38、E40、R41、K56、R57、Y61、K65、K75、W79、L80、D81、I83、およびF102などのアミノ酸残基における1つまたは複数の変異を含む。任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、ActRII受容体の野生型リガンド結合ドメインと比較して、GDF8/GDF11などのリガンドに対して増大した選択性を有し得る。例えば、これらの変異は、改変されたリガンド結合ドメインの選択性を、(ActRIIBに対して提示される)アクチビンと比べGDF11(ひいては、おそらくはGDF8)に対して増大させることが本明細書において実証される:K74Y、K74F、K74I、およびD80I。以下の変異は、GDF11と比べアクチビン結合の比率を増大させる逆の効果を有する:D54A、K55A、L79A、およびF82A。全体的な(GDF11およびアクチビン)結合活性は、「尾部」領域もしくはおそらくは非構造化リンカー領域を含めることによって、またA64R(自然に生じる)またはK74Aなどの変異を使用することによって、増加させることができる。リガンド結合親和性の全体的な減少をもたらすその他の変異には、以下が含まれる:R40A、E37A、R56A、W78A、D80K、D80R、D80A、D80G、D80F、D80M、およびD80N。変異は、所望の効果を達成するために組み合わせることができる。例えば、GDF11:アクチビン結合の比率に影響する変異の多くは、リガンド結合に対して全体的に負の影響を有するため、これらを一般的にリガンド結合を増加させる変異と組み合わせて、リガンド選択性を有する改善された結合タンパク質を生成することができる。
【0009】
任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインの比率と比較して少なくとも2、5、10、またはさらには100倍高い、アクチビン結合に関するKdとGDF8結合に関するKdの比率を有する。任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインと比較して少なくとも2、5、10、またはさらには100倍高い、アクチビン阻害に関するIC50とGDF8/GDF11阻害に関するIC50の比率を有する。任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、アクチビン阻害に関するIC50と比べ少なくとも2、5、10、またはさらには100倍低いIC50でGDF8/GDF11を阻害する。これらの可溶性ActRIIポリペプチドは、免疫グロブリンFcドメイン(野生型または変異体)を含む融合タンパク質であってよい。ある場合において、本可溶性ActRIIポリペプチドは、GDF8/GDF11のアンタゴニスト(阻害剤)である。
【0010】
ある局面において、本開示は、完全なActRIIポリペプチドをコードしない、可溶性ActRIIポリペプチドをコードする核酸を提供する。単離ポリヌクレオチドは、上記のような可溶性ActRIIポリペプチドのコード配列を含み得る。例えば、単離核酸は、ActRIIの細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)をコードする配列、ならびにActRIIの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部またはすべてをコードするが、しかし、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインの内に位置するか、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインとの間に位置する終止コドンをコードする配列を含み得る。例えば、単離ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:7または8などの全長ActRIIポリヌクレオチド配列または部分的切断型を含み得、そのような単離ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの翻訳によって全長ActRIIの切断部分に任意で融合された細胞外ドメインが生じるように、3'末端よりも少なくとも600ヌクレオチド前、またはその他の方法で位置する転写終結コドンをさらに含む。本明細書に開示する核酸は発現のためにプロモーターに機能的に連結され得、本開示は、そのような組換えポリヌクレオチドで形質転換した細胞も提供する。好ましくは、細胞はCHO細胞などの哺乳動物細胞である。
【0011】
ある局面において、本開示は、可溶性ActRIIポリペプチドを作製する方法を提供する。そのような方法は、本明細書に開示する核酸(例えば、SEQ ID NO:5または6)のいずれかを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの適切な細胞で発現させる段階を含む。そのような方法は:a) 可溶性ActRIIポリペプチドの発現に適した条件下において、可溶性ActRII発現構築物で形質転換した細胞を培養する段階;およびb) そのようにして発現された可溶性ActRIIポリペプチドを回収する段階を含み得る。可溶性ActRIIポリペプチドは、細胞培養物からタンパク質を取得するための任意の周知の技法を用いて、未精製画分、部分精製画分、または高度に精製された画分として回収され得る。
【0012】
ある局面において、本明細書に開示する可溶性ActRIIポリペプチドは、筋肉の損失または不十分な筋肉成長と関連した疾患を有する対象を治療する方法において使用され得る。そのような疾患には、筋萎縮、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および筋消耗性疾患(例えば、悪液質、摂食障害、DMD症候群、BMD症候群、エイズるいそう症候群(AIDS wasting syndrome)、筋ジストロフィー、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部疾患、および炎症性筋疾患)が含まれる。方法は、可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含み得る。
【0013】
ある局面において、本明細書に開示する可溶性ActRIIポリペプチドは、神経変性に関連した疾患を有する対象を治療する方法において使用され得る。そのような疾患には、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)が含まれる。方法は、可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含み得る。
【0014】
ある局面において、本明細書に開示する可溶性ActRIIポリペプチドは、異常な細胞増殖および細胞分化に関連した疾患を有する対象を治療する方法において使用され得る。そのような疾患には、炎症、アレルギー、自己免疫疾患、感染症、および腫瘍が含まれる。方法は、可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含み得る。選択的アクチビン結合ActRIIタンパク質は、卵巣癌などのアクチビン依存性癌の治療に特に有用であり得る。
【0015】
ある局面において、本明細書に開示する可溶性ActRIIポリペプチドは、体脂肪含量を減少させるかまたは体脂肪含量の増加速度を減少させるため、ならびに肥満症、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、心血管疾患、癌、高血圧症、変形性関節症、発作、呼吸困難、および胆嚢疾患などの、望ましくない体重増加に関連した疾患を治療するための方法において使用され得る。これらの方法は、可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含み得る。
【0016】
ある局面において、本明細書に開示する可溶性ActRIIポリペプチドは、GDF8の異常な活性に関連した疾患を治療する方法において使用され得る。このような疾患には、代謝性疾患、例えば、2型糖尿病、耐糖能障害、代謝症候群(例えば、シンドロームX)、および外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性など;脂肪組織疾患(例えば、肥満症);筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む);筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;虚弱;手根管症候群;うっ血性閉塞性肺疾患;筋肉減少症、悪液質およびその他の筋消耗症候群;骨粗鬆症;グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症;骨減少症;変形性関節症;骨粗鬆症関連骨折;慢性的なグルココルチコイド治療、早発性性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、二次性副甲状腺機能亢進症、栄養欠乏症、および拒食症に起因する低骨量が含まれる。本方法は、可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を含み得る。
【0017】
ある局面において、本開示は、骨、軟骨、筋肉、脂肪、および神経などの組織の成長を刺激する物質を同定する方法を提供する。本方法は、a)可溶性ActRIIポリペプチドと競合的にActRIIポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験物質を同定する段階;およびb)その物質が組織の成長に及ぼす効果を評価する段階を含む。
【0018】
ある局面において、本開示は、細胞においてActRIIポリペプチドまたはActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビン、BMP7、およびNodal)の活性を遮断する方法を提供する。本方法は、細胞を可溶性ActRIIポリペプチドと接触させる段階を含む。任意で、ActRIIポリペプチドまたはActRIIリガンドの活性は、例えば細胞増殖をモニターすることにより、ActRII/ActRIIリガンド複合体によって媒介されるシグナル伝達によってモニターされる。本方法の細胞には、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、筋肉細胞、および神経細胞が含まれる。
【0019】
ある局面において、本開示は、本明細書に記載する障害または状態を治療する医用薬剤を作製するための可溶性ActRIIポリペプチドの使用を提供する。
【0020】
発明の詳細な説明
1. 概説
ある局面において、本発明はActRIIポリペプチドに関する。本明細書で使用する「ActRII」という用語は、任意の種に由来するアクチビンII型受容体(ActRII)タンパク質のファミリーおよびActRII関連タンパク質を指す。本明細書におけるActRIIへの言及は、ActRIIA(ActRIIとしても公知)およびActRIIBを含む、現在同定されている形態のいずれか1つへの言及であると理解される。ActRIIファミリーのメンバーは一般的にすべて、システインリッチ領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されるセリン/スレオニンキナーゼ特異性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。ヒトActRIIA前駆体タンパク質およびActRIIB前駆体タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ図3(SEQ ID NO:3)および図4(SEQ ID NO:4)に示す。
【0021】
「ActRIIポリペプチド」という用語は、ActRIIファミリーメンバーの任意の天然ポリペプチド、および有用な活性を保持するその任意の変種(変異体、断片、融合物、およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを指すために使用される。例えば、ActRIIポリペプチドは、ActRIIポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一であり、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはそれ以上同一である配列を有する、任意の既知ActRIIの配列に由来するポリペプチドを含む。
【0022】
特定の態様において、本発明は可溶性ActRIIポリペプチドに関する。本明細書に記載する「可溶性ActRIIポリペプチド」という用語は、一般にActRIIタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書で使用する「可溶性ActRIIポリペプチド」という用語は、ActRIIタンパク質の任意の天然細胞外ドメイン、ならびに、有用な活性を保持するその任意の変種(変異体、断片、およびペプチド模倣形態を含む)を含む。例えば、ActRIIタンパク質の細胞外ドメインはリガンドに結合し、一般的に可溶性である。可溶性ActRIIポリペプチドの例には、それぞれ図1(SEQ ID NO:1)および図2(SEQ ID NO:2)に示すActRIIAおよびActRIIB可溶性ポリペプチドが含まれる。可溶性ActRIIポリペプチドのその他の例は、例えば、図10(SEQ ID NO:9〜11)および図11(SEQ ID NO:12)に示す配列のように、ActRIIタンパク質の細胞外ドメインに加えてシグナル配列を含む。シグナル配列はActRIIの天然シグナル配列であってもよいし、または組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)シグナル配列もしくはミツバチメリチン(HBM)シグナル配列のような、別のタンパク質に由来するシグナル配列であってもよい。
【0023】
TGF-βシグナルはI型およびII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体のヘテロ複合体によって媒介され、この複合体はリガンド刺激に際して下流のSmadタンパク質をリン酸化および活性化する(Massague, 2000, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 1:169-178)。これらのI型およびII型受容体はすべて、システインリッチ領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されるセリン/スレオニン特異性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体はシグナル伝達に必須であり;II型受容体は、リガンドとの結合およびI型受容体の発現に必要である。I型およびII型アクチビン受容体は、リガンド結合後に安定した複合体を形成し、II型受容体によってI型受容体がリン酸化される。
【0024】
2つの関連したII型受容体、ActRIIAおよびActRIIBが、アクチビンのII型受容体として同定されている(Mathews and Vale, 1991, Cell 65:973-982;Attisano et al., 1992, Cell 68: 97-108)。ActRIIAおよびActRIIBは、アクチビンに加えて、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含むいくつかの他のTGF-βファミリータンパク質と生化学的に相互作用し得る(Yamashita et al., 1995, J. Cell Biol. 130:217-226;Lee and McPherron, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. 98:9306-9311;Yeo and Whitman, 2001, Mol. Cell 7: 949-957;Oh et al., 2002, Genes Dev. 16:2749-54)。
【0025】
ある態様において、本発明は、本ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)によりActRII受容体のリガンド(ActRIIリガンドとも称される)を遮断することに関する。したがって、本発明の組成物および方法は、ActRII受容体の1つまたは複数のリガンドの異常な活性と関連した疾患の治療に有用である。ActRII受容体の例示的なリガンドには、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11、およびBMP7などのいくつかのTGF-βファミリーメンバーが含まれる。ActRII受容体のこれらのリガンドについて、以下に詳述する。
【0026】
アクチビンは二量体ポリペプチド増殖因子であり、TGF-βスーパーファミリーに属する。2つの密に関連したβサブユニットのホモ二量体/ヘテロ二量体(βAβA、βBβB、およびβAβB)である3つのアクチビン(A、B、およびAB)が存在する。TGF-βスーパーファミリーの中で、アクチビンは、卵巣および胎盤細胞においてホルモン産生を刺激し得る、神経細胞の生存を支持し得る、細胞種に応じて正にまたは負に細胞周期の進行に影響し得る、および少なくとも両生類の胚において中胚葉の分化を誘導し得る、独特でかつ多機能の因子である(DePaolo et al., 1991, Proc SocEp Biol Med. 198:500-512;Dyson et al., 1997, Curr Biol. 7:81-84;Woodruff, 1998, Biochem Pharmacol. 55:953-963)。さらに、刺激したヒト単球性白血病細胞から単離された赤芽球分化誘導因子(EDF)が、アクチビンAと同一であることが見出された(Murata et al., 1988, PNAS, 85:2434)。アクチビンAは、骨髄において赤血球生成の天然制御因子として作用することが示唆された。いくつかの組織において、アクチビンシグナル伝達は、その関連ヘテロ二量体、インヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出される過程において、アクチビンはFSHの分泌および合成を促進し、インヒビンはFSHの分泌および合成を防止する。アクチビンの生物活性を制御し得るおよび/またはアクチビンに結合し得るその他のタンパク質には、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、α2-マクログロブリン、ケルベロス(Cerberus)、およびエンドグリンが含まれ、これらについては以下で説明する。
【0027】
Nodalタンパク質は、中胚葉および内胚葉の誘導および形成、ならびにその後の初期発生における心臓および胃などの中軸構造の組織化において機能を有する。発生過程の脊椎動物胚における背側組織は、主に脊索および脊索前板の中軸構造に寄与し、一方、周囲の細胞を動員して非中軸胚構造を形成することが実証されている。Nodalは、I型およびII型受容体ならびにSmadタンパク質として公知の細胞内エフェクターを介してシグナルを伝達すると考えられる。最近の研究から、ActRIIAおよびActRIIBはNodalのII型受容体として機能するという考えが支持される(Sakuma et al., Genes Cells. 2002, 7:401-12)。Nodalリガンドはその補助因子(例えば、クリプト(cripto))と相互作用して、アクチビンI型およびII型受容体を活性化し、これがSmad2をリン酸化することが示唆されている。Nodalタンパク質は、中胚葉形成、前側パターン形成、および左右軸の特定化をはじめとする、脊椎動物初期胚にとって重要な多くの事象に関与している。実験的証拠から、Nodalシグナル伝達が、アクチビンおよびTGF-βに特異的に応答することが以前に示されたルシフェラーゼレポーター、pAR3-Luxを活性化することが実証された。しかし、Nodalは、骨形成タンパク質に特異的に応答するレポーター、pTlx2-Luxを誘導し得ない。最近の研究から、Nodalシグナル伝達がアクチビン-TGF-β経路Smadである、Smad2およびSmad3の双方によって媒介されるという直接的な生化学的証拠が提供されている。さらなる証拠から、細胞外クリプトタンパク質がNodalシグナル伝達に必要であり、これによってNodalシグナル伝達がアクチビンまたはTGF-βシグナル伝達とは異なることが示されている。
【0028】
増殖分化因子-8(GDF8)は、ミオスタチンとしても知られている。GDF8は、骨格筋量の負の制御因子である。GDF8は、発生過程の骨格筋および成人骨格筋において高度に発現されている。トランスジェニックマウスにおけるGDF8ヌル変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成によって特徴づけられる(McPherron et al., Nature, 1997, 387:83-90)。骨格筋量の同様の増加は、ウシ(Ashmore et al., 1974, Growth, 38:501-507;Swatland and Kieffer, J. Anim. Sci., 1994, 38:752-757;McPherron and Lee, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1997, 94:12457-12461;およびKambadur et al., Genome Res., 1997, 7:910-915)および顕著なことにはヒト(Schuelke et al., N Engl J Med 2004;350:2682-8)のGDF8の天然変異においても明らかである。研究から、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋消耗が、GDF8タンパク質発現の増加を伴うことも示されている(Gonzalez-Cadavid et al., PNAS, 1998, 95: 14938-43)。さらに、GDF8は、筋特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の産生を調節し得、また筋芽細胞増殖を調節し得る(国際公開公報第00/43781号)。GDF8プロペプチドは、成熟GDF8ドメイン二量体に非共有結合して、その生物活性を不活化し得る(Miyazono et al. (1988) J. Biol. Chem., 263: 6407-6415;Wakefield et al. (1988) J. Biol. Chem., 263; 7646-7654;およびBrown et al. (1990) Growth Factors, 3: 35-43)。GDF8または構造的に関連したタンパク質に結合し、それらの生物活性を阻害する他のタンパク質には、フォリスタチン、および潜在的にフォリスタチン関連タンパク質が含まれる(Gamer et al. (1999) Dev. Biol., 208: 222-232)。
【0029】
BMP11としても公知の増殖分化因子-11(GDF11)は、分泌タンパク質である(McPherron et al., 1999, Nat. Genet. 22: 260-264)。GDF11は、マウスの発生過程において、尾芽、肢芽、上顎弓および下顎弓、ならびに後根神経節で発現される(Nakashima et al., 1999, Mech. Dev. 80: 185-189)。GDF11は、中胚葉組織および神経組織のパターン形成において独特の役割を担う(Gamer et al., 1999, Dev Biol., 208:222-32)。GDF11は、発生過程のニワトリ肢における軟骨形成および筋形成の負の制御因子であることが示された(Gamer et al., 2001, Dev Biol. 229:407-20)。筋肉におけるGDF11の発現から、GDF8と同様に筋肉成長を制御する上での役割もまた示唆される。さらに、脳におけるGDF11の発現から、GDF11が神経系の機能に関連した活性もまた有し得ることが示唆される。興味深いことに、GDF11は、嗅上皮において神経発生を阻害することが見出された(Wu et al., 2003, Neuron. 37:197-207)。したがって、GDF11は、筋肉疾患および神経変性疾患(例えば、筋萎縮性脊索硬化症)などの疾患の治療においてインビトロおよびインビボ用途を有し得る。
【0030】
骨形成タンパク質-1(osteogenic protein-1)(OP-1)とも称される骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein)(BMP7)は、軟骨および骨の形成を誘導することが周知である。さらに、BMP7は多様な生理的過程を制御する。例えば、BMP7は、上皮骨形成の現象に関与する骨誘導因子であり得る。BMP7がカルシウム制御および骨恒常性において役割を担うこともまた判明している。アクチビンと同様に、BMP7はII型受容体、ActRIIAおよびIIBに結合する。しかし、BMP7およびアクチビンは、ヘテロ受容体複合体に対して異なるI型受容体を動員する。観察された主要なBMP7 I型受容体はALK2であり、一方アクチビンはALK4(ActRIIB)に独占的に結合した。BMP7およびアクチビンは異なる生物学的応答を誘発し、異なるSmad経路を活性化した(Macias-Silva et al., 1998, J Biol Chem. 273:25628-36)。
【0031】
ある局面において、本発明は、一般にActRII活性と関連する任意の過程において、ActRII受容体と拮抗するための、あるActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)の使用に関する。任意で、本発明のActRIIポリペプチドは、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11、およびBMP7などのActRII受容体の1つまたは複数のリガンドを遮断し得、したがってさらなる疾患の治療においても有用であり得る。
【0032】
したがって、本発明は、ActRIIまたはActRIIリガンドの異常な活性に関連した疾患または状態の治療または予防におけるActRIIポリペプチドの使用を意図する。ActRIIまたはActRIIリガンドは、多くの重要な生物学的過程の制御に関与している。これらの過程における重要な機能に起因して、ActRIIまたはActRIIリガンドは治療的介入の望ましい標的となる得る。例えば、ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)は、ヒトまたは動物の障害または状態を治療するために使用され得る。そのような障害または状態の例には、非限定的に、代謝性疾患、例えば、2型糖尿病、耐糖能障害、代謝症候群(例えば、シンドロームX)、および外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性など;脂肪組織疾患(例えば、肥満症);筋障害および神経筋障害、例えば筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)など;筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;虚弱;手根管症候群;うっ血性閉塞性肺疾患;ならびに筋肉減少症、悪液質およびその他の筋消耗症候群が含まれる。その他の例には、特に高齢の女性および/または閉経後の女性における骨粗鬆症;グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症;骨減少症;変形性関節症;および骨粗鬆症関連骨折が含まれる。さらなる例には、慢性的なグルココルチコイド治療、早発性性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、二次性副甲状腺機能亢進症、栄養欠乏症、および拒食症に起因する低骨量が含まれる。これらの障害および状態については、以下の「例示的な治療用途」において論じる。
【0033】
本明細書で使用する用語は一般に、本発明の状況および各用語が用いられる特定の状況における、当技術分野での通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびにそれらの作製および使用方法の記載に際して、実施者にさらなる手引きが提供されるように、特定の用語を以下または本明細書の他所で考察する。用語のいかなる使用の範囲または意味も、その用語が用いられる特定の状況から明らかになると考えられる。
【0034】
「約」および「およそ」は一般に、測定の性質または精度を前提として測定された量の許容可能な誤差の程度を意味するものとする。典型的には、例示的な誤差の程度は、所与の値または値域の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
【0035】
または、特に生物系においては、「約」および「およそ」という用語は、所与の値の1オーダー以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書で示す数量は、特記されない限り近似値であり、明確に記載されない場合でも、「約」または「およそ」という用語が推測され得ることを意味する。
【0036】
本発明の方法は、野生型配列と1つまたは複数の変異体(配列変種)をはじめとする、配列を相互に比較する段階を含み得る。そのような比較は典型的に、例えば当技術分野において周知である配列アライメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(数例を挙げると、例えば、BLAST、FASTA、およびMEGALIGN)を用いた、ポリマー配列のアライメントを含む。変異が残基の挿入または欠失を含むアライメントにおいて、配列アライメントは、挿入または欠失残基を含まないポリマー配列中に「ギャップ」(典型的には、ダッシュ記号または「A」で表される)を導入することを当業者は容易に理解し得る。
【0037】
「相同な」という用語は、その文法形態および綴りの変化形のすべてにおいて、同じ生物種のスーパーファミリーに由来するタンパク質、および異なる生物種に由来する相同タンパク質を含む、「共通の進化の起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指す。このようなタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、パーセント同一性の点からであれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、それらの配列類似性に反映される配列相同性を有する。
【0038】
「配列類似性」という用語は、その文法形態のすべてにおいて、共通の進化の起源を共有する可能性があるかまたはない核酸またはアミノ酸配列間の同一性または一致の程度を指す。
【0039】
しかし、一般的な使用および本出願において、「相同な」という用語は、「高度に」などの副詞で修飾される場合には、配列類似性を指し得、共通の進化の起源と関連する場合もあればそうでない場合もある。
【0040】
2. ActRIIポリペプチド
ある局面において、本発明はActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)に関する。好ましくは、断片、機能的変種、および改変型は、それらの対応する野生型ActRIIポリペプチドと類似のまたは同様の生物活性を有する。例えば、本発明のActRIIポリペプチドは、ActRIIタンパク質および/またはActRIIリガンドタンパク質(例えば、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11、またはBMP7)に結合し、これらの機能を阻害し得る。任意で、ActRIIポリペプチドは、骨、軟骨、筋肉、脂肪、および/または神経などの組織の成長を調節する。ActRIIポリペプチドの例には、ヒトActRIIA前駆体ポリペプチド(SEQ ID NO:3)、ヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(SEQ ID NO:4)、可溶性ヒトActRIIAポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:1および12)、可溶性ヒトActRIIBポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:2および9〜11)が含まれる。
【0041】
ある態様において、ActRIIポリペプチドの単離断片は、ActRIIポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:1〜2および9〜12のうちの1つ)をコードする核酸の対応する断片から組換えによって産生されるポリペプチドをスクリーニングすることにより得られ得る。さらに、断片は、従来のメリフィールド固相f-Mocまたはt-Boc化学などの当技術分野において周知の技法を用いて、化学的に合成され得る。断片を(組換えまたは化学合成により)産生し、例えばActRIIタンパク質またはActRIIリガンドのアンタゴニスト(阻害剤)またはアゴニスト(活性化因子)として機能し得るペプチジル断片を同定するために試験することができる。
【0042】
ある態様において、ActRIIポリペプチドの機能的変種は、SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有する。ある場合において、機能的変種は、SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0043】
ある態様において、本発明は、治療効果または安定性(例えば、エクスビボ貯蔵寿命、およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)を増強するなどの目的で、ActRIIポリペプチドの構造を改変することにより機能的変種を作製することを意図する。そのような改変ActRIIポリペプチドは、天然型のActRIIポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持するように設計される場合、天然ActRIIポリペプチドの機能的等価物と見なされる。改変ActRIIポリペプチドはまた、例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加によって生成され得る。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンによる、アスパラギン酸のグルタミン酸による、スレオニンのセリンによる分離された置換、またはアミノ酸の構造的に関連したアミノ酸による同様の置換(例えば、保存的変異)が、得られる分子の生物活性に大きな影響を与えないであろうと予測することは理にかなっている。保存的置換は、側鎖において関連のあるアミノ酸のファミリー内で起こる置換である。ActRIIポリペプチドのアミノ酸配列の変化が機能的相同体を生じるかどうかは、変種ActRIIポリペプチドが、細胞内で野生型ActRIIポリペプチドと同様の様式で応答を生じる能力を評価することによって、容易に決定することができる。
【0044】
ある態様において、本発明は、変種(または変異体)ActRIIポリペプチドが改変されたリガンド結合活性(例えば、結合親和性または結合特異性)を有するように、ActRIIポリペプチドの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも称される)内に変異を作製することを意図する。特定の場合において、そのような変種ActRIIポリペプチドは、特定のリガンドに対して改変された(上昇または減少した)結合親和性を有する。他の場合には、変種ActRIIポリペプチドは、それらのリガンドに対して改変された結合特異性を有する。
【0045】
例えば、変種ActRIIポリペプチドは、特定のリガンド(例えば、GDF8)に優先的に結合する。例えば、E39、K55、Y60、K74、W78、D80、およびF101(図13に示す)などのActRIIBタンパク質のアミノ酸残基は、リガンド結合ポケット中に存在し、アクチビンおよびGDF8のようなそのリガンドとの結合を媒介する。したがって、本発明は、それらのアミノ酸残基における1つまたは複数の変異を含む、ActRII受容体の改変されたリガンド結合ドメイン(例えば、GDF8結合ドメイン)を提供する。任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、ActRII受容体の野生型リガンド結合ドメインと比較して、GDF8などのリガンドに対して増大した選択性を有し得る。例えば、これらの変異は、改変されたリガンド結合ドメインの選択性を、アクチビンと比べGDF8に対して増大させる。任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインの比率と比較して少なくとも2、5、10、またはさらには100倍高い、アクチビン結合に関するKdとGDF8結合に関するKdの比率を有する。任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインと比較して少なくとも2、5、10、またはさらには100倍高い、アクチビン阻害に関するIC50とGDF8阻害に関するIC50の比率を有する。任意で、改変されたリガンド結合ドメインは、アクチビン阻害に関するIC50と比べ少なくとも2、5、10、またはさらには100倍低いIC50でGDF8を阻害する。
【0046】
具体例として、ActRIIBのリガンド結合ドメインの正電荷アミノ酸残基Asp(D80)は、変種ActRIIポリペプチドがGDF8に優先的に結合し、アクチビンに結合しないように、異なるアミノ酸残基に変異することができる。好ましくは、D60残基は、非電荷アミノ酸残基、負電荷アミノ酸残基、および疎水性アミノ酸残基からなる群より選択されるアミノ酸残基に変更される。当業者に認識されるように、記載する変異、変種、または改変の大部分は核酸レベルで作製され得、場合によって翻訳後修飾または化学合成によって作製され得る。そのような技法は当技術分野において周知である。
【0047】
ある態様において、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を変更するための、ActRIIポリペプチドの特定の変異を意図する。ActRIIAおよびActRIIBポリペプチドの例示的なグリコシル化部位を、それぞれ図3および4に示す。そのような変異は、O結合またはN結合グリコシル化部位などの、1つまたは複数のグリコシル化部位を導入または排除するように選択され得る。アスパラギン結合グリコシル化認識部位は一般に、適切な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識されるトリペプチド配列、アスパラギン-X-スレオニン(「X」は任意のアミノ酸)を含む。改変はまた、(O結合グリコシル化部位のための)野生型ActRIIポリペプチドの配列に対する1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、またはそれらによる置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位または第3位アミノ酸の一方または両方における種々のアミノ酸置換または欠失(および/または第2位におけるアミノ酸欠失)により、改変トリペプチド配列で非グリコシル化が生じる。ActRIIポリペプチド上の糖質部分の数を増大させる別の手段は、ActRIIポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的結合による。使用する結合様式に応じて、糖は(a) アルギニンおよびヒスチジン;(b) 遊離カルボキシル基;(c) システインなどの遊離スルフヒドリル基;(d) セリン、スレオニン、またはヒロドキシプロリンなどの遊離ヒドロキシル基;(e) フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンなどの芳香族残基;または(f) グルタミンのアミド基に結合され得る。これらの方法は、1987年9月11日に刊行された国際公開公報第87/05330号、およびAplin and Wriston (1981) CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。ActRIIポリペプチド上に存在する1つまたは複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物へのActRIIポリペプチドの曝露を含み得る。この処理によって、アミノ酸配列をそのままにしつつ、連結糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除く大部分またはすべての糖が切断される。化学的脱グリコシル化はさらに、Hakimuddin et al. (1987) Arch. Biochem. Biophys. 259:52、およびEdge et al. (1981) Anal. Biocehm. 118:131により記載されている。ActRIIポリペプチド上の糖質部分の酵素的切断は、Thotakura et al. (1987) Meth. Enzymol. 138:350に記載されているように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって達成され得る。哺乳動物、酵母、昆虫、および植物細胞はすべて、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得るため、ActRIIポリペプチドの配列は、使用する発現系の種類に応じて適切に調節することができる。一般に、ヒトにおいて使用するためのActRIIタンパク質は、HEK293またはCHO細胞株のような、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株で発現されるが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であると考えられる。
【0048】
本開示はさらに、ActRIIポリペプチドの変異体、特にコンビナトリアル変異体のセット、および切断変異体を作製する方法を意図する;コンビナトリアル変異体のプールは、機能的変種配列を同定するのに特に有用である。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、アゴニストもしくはアンタゴニストとして作用し得るか、または全体として新規な活性を有するActRIIポリペプチド変種を作製することであってよい。種々のスクリーニングアッセイ法を以下に提供するが、そのようなアッセイ法を用いて変種を評価することができる。例えば、ActRIIポリペプチド変種は、ActRIIポリペプチドに結合して、ActRIIリガンドのActRIIポリペプチドに対する結合を妨害する能力に関してスクリーニングされ得る。
【0049】
ActRIIポリペプチドまたはその変種の活性はまた、細胞に基づくアッセイ法またはインビボアッセイ法で試験され得る。例えば、骨芽細胞または前駆体において骨生成に関与する遺伝子の発現に及ぼすActRIIポリペプチド変種の効果を評価することができる。これは、必要に応じて、1つまたは複数の組換えActRIIリガンドタンパク質(例えば、BMP7)の存在下で行うことができ、細胞は、ActRIIポリペプチドおよび/またはその変種、ならびに任意でActRIIリガンドを産生するようにトランスフェクションし得る。同様に、ActRIIポリペプチドをマウスまたは他の動物に投与することができ、密度または量などの1つまたは複数の骨特性を評価することができる。骨折の治癒速度を評価してもよい。同様に、ActRIIポリペプチドまたはその変種の活性は、例えば以下に記載するアッセイ法により、筋肉細胞、脂肪細胞、および神経細胞において、これらの細胞の増殖に及ぼす任意の影響に関して試験することができる。そのようなアッセイ法は、当技術分野において周知であり、また日常的である。
【0050】
天然ActRIIポリペプチドと比較して選択的効力を有する、コンビナトリアル由来(combinatorially-derived)変種を作製することができる。このような変種タンパク質は、組換えDNA構築物から発現させる場合、遺伝子治療手順において使用することができる。同様に、突然変異誘発により、対応する野生型ActRIIポリペプチドと劇的に異なる細胞内半減期を有する変種が生成され得る。例えば、改変タンパク質は、タンパク質分解、または天然ActRIIポリペプチドを破壊するかもしくは別の方法で不活化する他の細胞過程に対して、安定性を高められるかまたは下げられ得る。そのような変種およびそれらをコードする遺伝子は、ActRIIポリペプチドの半減期を調節することによって、ActRIIポリペプチドレベルを改変するために利用され得る。例えば、短い半減期は、より一時的な生物学的効果をもたらし得、誘導性発現系の一部である場合には、細胞内の組換えActRIIポリペプチドレベルのより厳密な調節を可能にし得る。
【0051】
好ましい態様においては、それぞれが潜在的ActRIIポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーにより、コンビナトリアルライブラリーを作製する。例えば、潜在的ActRIIポリペプチドヌクレオチド配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、またはより大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイ用に)発現され得るように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結し得る。
【0052】
潜在的相同体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から作製し得る、多くの方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成機で行い、次いでこの合成遺伝子を発現用の適当なベクターに連結することができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成については、当技術分野で周知である(例えば、Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al., (1981) Recombinant DNA, Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam: Elsevier pp273-289;Itakura et al., (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al., (1984) Science 198:1056;Ike et al., (1983) Nucleic Acid Res. 11 :477を参照されたい)。他のタンパク質の定方向進化に、このような技法が使用されている(例えば、Scott et al., (1990) Science 249:386-390;Roberts et al., (1992) PNAS USA 89:2429-2433;Devlin et al., (1990) Science 249: 404-406;Cwirla et al., (1990) PNAS USA 87: 6378-6382;ならびに米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号、および同第5,096,815号を参照されたい)。
【0053】
または、他の形態の突然変異誘発法を利用して、コンビナトリアルライブラリーを作製することができる。例えば、例としてアラニンスキャン突然変異誘発法などを用いて(Ruf et al., (1994) Biochemistry 33:1565-1572;Wang et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:3095-3099;Balint et al., (1993) Gene 137:109-118;Grodberg et al., (1993) Eur. J. Biochem. 218:597-601;Nagashima et al., (1993) J. Biol. Chem. 268:2888-2892;Lowman et al., (1991) Biochemistry 30:10832-10838;およびCunningham et al., (1989) Science 244:1081-1085)、リンカースキャン突然変異誘発法により(Gustin et al., (1993) Virology 193:653-660;Brown et al., (1992) Mol. Cell Biol. 12:2644-2652;McKnight et al., (1982) Science 232:316);飽和突然変異誘発法により(Meyers et al., (1986) Science 232:613);PCR突然変異誘発法により(Leung et al., (1989) Method Cell Mol Biol 1:11-19);または化学的突然変異誘発法などを含むランダム突然変異誘発法により(Miller et al., (1992) A Short Course in Bacterial Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY;およびGreener et al., (1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34)、ActRIIポリペプチド変種(アゴニストおよびアンタゴニスト型の双方)を作製し、スクリーニングによりライブラリーから単離することができる。切断(生理活性)型のActRIIポリペプチドを同定するのであれば、リンカースキャン突然変異誘発法が、特に組み合わせ設定において魅力的な方法である。特定の態様においては、ActRII機能のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る可溶型のActRIIポリペプチドを作製するために、同様の方法を使用することができる。
【0054】
当技術分野において、点突然変異および切断により作製したコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、およびさらには特定の性質を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするための、多様な技法が周知である。このような技法は一般的に、ActRIIポリペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発で作製した遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適応できる。大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニングに最も広汎に用いられている技法は、典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングする段階、得られたベクターのライブラリーで適切な細胞を形質転換する段階、および、所望の活性を検出すれば検出された産物の遺伝子をコードするベクターを比較的容易に単離できるような条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させる段階を含む。以下に記載するアッセイ法の例はそれぞれ、コンビナトリアル突然変異誘発技法によって作製された数多くの縮重配列のスクリーニングに必要なハイスループット解析に適している。
【0055】
ある態様において、本発明のActRIIポリペプチドはペプチド模倣体を含む。本明細書で使用する「ペプチド模倣体」という用語は、化学的に修飾されたペプチドおよび非天然アミノ酸を含むペプチド様分子、ペプトイドなどを含む。ペプチド模倣体は、対象に投与した場合の安定性の増強をはじめとする、ペプチドを超える様々な利点を提供する。ペプチド模倣体を同定する方法は当技術分野において周知であり、潜在的ペプチド模倣体のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングを含む。例えば、ケンブリッジ構造データベース(Cambridge Structural Database)は、既知結晶構造を有する300,000種を超える化合物の収集物を含む(Allen et al., Acta Crystallogr. Section B, 35:2331 (1979))。標的分子の結晶構造が得られない場合には、例えばプログラムCONCORD(Rusinko et al., J. Chem. Inf. Comput. Sci. 29:251 (1989))を用いて、構造を作製することができる。別のデータベース、市販化学物質一覧(Available Chemicals Directory)(Molecular Design Limited, Informations Systems; San Leandro Calif.)は市販されている約100,000種の化合物を含み、これもまた、ActRIIポリペプチドの潜在的ペプチド模倣体を同定するために検索することができる。
【0056】
例えば、スキャン突然変異誘発法を使用して、別のタンパク質への結合に関与するActRIIポリペプチドのアミノ酸残基をマッピングすることで、結合に関与するそのような残基を模倣するペプチド模倣化合物を作製することができる。例えば、そのような残基の非加水分解性ペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidinger et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、アゼピン(例えば、Huffman et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、置換γラクタム環(Garvey et al., in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988)、ケト-メチレン偽ペプチド(Ewenson et al., (1986) J. Med. Chem. 29:295;およびEwenson et al., in Peptides: Structure and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、bターンジペプチド核(Nagai et al., (1985) Tetrahedron Lett 26:647;およびSato et al., (1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、およびb-アミノアルコール(Gordon et al., (1985) Biochem Biophys Res Commun 126:419;およびDann et al., (1986) Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて作製することができる。
【0057】
ある態様において、本発明のActRIIポリペプチドは、ActRIIポリペプチド中に天然に存在する翻訳後修飾に加えて、翻訳後修飾をさらに含み得る。そのような修飾には、これらに限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれる。結果として、改変ActRIIポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの、非アミノ酸要素を含み得る。そのような非アミノ酸要素がActRIIポリペプチドの機能性に及ぼす影響は、他のActRIIポリペプチド変種に関して本明細書中に記載したように試験することができる。ActRIIポリペプチドが、細胞内で新生型のActRIIポリペプチドの切断によって産生される場合、翻訳後プロセシングはまた、タンパク質の正確な折りたたみおよび/または機能にも重要であり得る。異なる細胞(CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH-3T3、またはHEK293など)は、特定の細胞機構およびそのような翻訳後活性の特徴的な機構を有し、ActRIIポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを確実にするよう選択され得る。
【0058】
ある局面において、ActRIIポリペプチドの機能的変種または改変型は、ActRIIポリペプチドの少なくとも一部および1つまたは複数の融合ドメインを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例には、非限定的に、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが含まれる。融合ドメインは、所望の特定を付与するように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインは、アフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティー精製を目的とする場合には、グルタチオン、アミラーゼ、およびニッケルまたはコバルト結合樹脂など、アフィニティークロマトグラフィーのための関連した充填剤を使用する。このような充填剤の多くは「キット」の形態で入手することができ、例えばPharmacia GST精製システム、および(HIS6)融合パートナーと共に使用して有用であるQIAexpress(商標)システム(Qiagen)などがある。別の例として、融合ドメインは、ActRIIポリペプチドの検出が容易になるよう選択され得る。そのような検出ドメインの例には、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、特異的抗体が入手可能な、通常短いペプチド配列である「エピトープタグ」が含まれる。特異的モノクローナル抗体が容易に入手できる周知のエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルスヘムアグルチニン(HA)、およびc-mycタグが含まれる。場合によっては、融合ドメインは、関連したプロテアーゼが融合タンパク質を部分消化し、そこから組換えタンパク質を遊離させることを可能にする、第Xa因子またはトロンビンなどのプロテアーゼ切断部位を有する。次いで、遊離したタンパク質を、その後のクロマトグラフィー分離により融合ドメインから単離することができる。特定の好ましい態様において、ActRIIポリペプチドは、インビボでActRIIポリペプチドを安定化するドメイン(「安定化」ドメイン)に融合される。「安定化」とは、これが破壊の減少によるのか、腎臓による排除の減少によるのか、または他の薬物動態学的効果によるのかにかかわらず、血清半減期を延長させるいかなるものも意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範なタンパク質に対して所望の薬物動態学的特性を付与することが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンとの融合も所望の特性を付与し得る。選択され得る他の種類の融合ドメインには、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび(筋肉成長のさらなる促進などの、さらなる生物学的機能を付与する)機能的ドメインが含まれる。
【0059】
具体例として、本発明は、Fcドメインに融合された細胞外(例えば、GDF8結合)ドメインを含む、GDF8アンタゴニストとしての融合タンパク質を提供する(例えば、SEQ ID NO:13)。

【0060】
好ましくは、Fcドメインは、Asp-265、リジン322、およびAsn-434などの残基における1つまたは複数の変異を有する(図12を参照されたい)。ある場合において、これらの変異(例えば、Asp-265変異)の1つまたは複数を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、Fcγ受容体に結合する能力が低い。その他の場合において、これらの変異(例えば、Asn-434変異)の1つまたは複数を有する変異体Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、MHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する能力が高い。
【0061】
融合タンパク質の異なる要素は、所望の機能性に合致する任意の様式で配列され得ることが理解される。例えば、ActRIIポリペプチドは異種ドメインのC末端側に配置されてもよいし、または異種ドメインがActRIIポリペプチドのC末端側に配置されてもよい。ActRIIポリペプチドドメインと異種ドメインは融合タンパク質内で隣接する必要はなく、さらなるドメインまたはアミノ酸配列を、いずれかのドメインのC末端もしくはN末端側に、またはそれらのドメインの間に含めることも可能である。
【0062】
ある態様において、本発明のActRIIポリペプチドは、ActRIIポリペプチドを安定化し得る1つまたは複数の修飾を含む。例えば、そのような修飾は、ActRIIポリペプチドのインビトロ半減期を延長させる、ActRIIポリペプチドの循環半減期を延長させる、またはActRIIポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。そのような安定化修飾には、非限定的に、融合タンパク質(例えば、ActRIIポリペプチドおよび安定化ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部分の改変(例えば、ActRIIポリペプチドに対するグリコシル化部位の付加を含む)、および糖質部分の改変(例えば、ActRIIポリペプチドからの糖質部分の除去を含む)が含まれる。融合タンパク質の場合、ActRIIポリペプチドは、IgG分子(例えば、Fcドメイン)などの安定化ドメインに融合される。本明細書で使用する「安定化ドメイン」という用語は、融合タンパク質の場合における融合ドメイン(例えば、Fc)を指すのみならず、糖質部分などの非タンパク質性修飾またはポリエチレングリコールなどの非タンパク質性ポリマーもまた含む。
【0063】
ある態様において、本発明は、他のタンパク質から単離された、またはさもなくば他のタンパク質を実質的に含まない、単離および/または精製型のActRIIポリペプチドを提供する。
【0064】
ある態様において、本発明のActRIIポリペプチド(非改変または改変)は、当技術分野において周知である種々の技法により産生され得る。例えば、そのようなActRIIポリペプチドは、Bodansky, M. Principles of Peptide Synthesis, Springer Verlag, Berlin (1993)、およびGrant G. A. (ed.), Synthetic Peptides: A User's Guide, W. H. Freeman and Company, New York (1992)に記載されているような、標準的タンパク質化学技法を用いて合成され得る。加えて、自動ペプチド合成機が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。または、ActRIIポリペプチド、その断片または変種は、当技術分野において周知であるように、種々の発現系(例えば、大腸菌(E. coli、チャイニーズハムスター卵巣細胞、COS細胞、バキュロウイルス)を用いて組換えにより産生され得る(下記も参照されたい)。さらなる態様において、改変または非改変ActRIIポリペプチドは、天然であるかまたは組換えによって産生された全長ActRIIポリペプチドを、例えばプロテアーゼ、例えばトリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対(paired)塩基性アミノ酸変換酵素(PACE)を用いて消化することにより生成され得る。(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation, Inc.を使用する)コンピュータ解析を用いて、タンパク質切断部位を同定することができる。または、そのようなActRIIポリペプチドは、化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミン)によるような当技術分野における標準的な技法などにより、天然であるかまたは組換えによって産生された全長ActRIIポリペプチドから生成され得る。
【0065】
3. ActRIIポリペプチドをコードする核酸
ある局面において、本発明は、本明細書に開示する断片、機能的変種、および融合タンパク質をはじめとするActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)のいずれかをコードする単離および/または組換え核酸を提供する。例えば、SEQ ID NO:7〜8は天然ActRII前駆体ポリペプチドをコードし、SEQ ID NO:5〜6は可溶性ActRIIポリペプチドをコードする。本核酸は、一本鎖であってもまたは二本鎖であってもよい。そのような核酸は、DNAまたはRNA分子であり得る。これらの核酸は、例えば、ActRIIポリペプチドを作製する方法において、または直接的な治療物質として(例えば、遺伝子治療アプローチにおいて)使用され得る。
【0066】
ある局面において、ActRIIポリペプチドをコードする本核酸は、SEQ ID NO:7または8の変種である核酸を含むことがさらに理解される。変種ヌクレオチド配列は、例えば対立遺伝子変種のような、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加、または欠失によって異なる配列を含み;したがって、SEQ ID NO:7または8に示されるコード配列のヌクレオチド配列と異なるコード配列を含む。
【0067】
ある態様において、本発明は、SEQ ID NO:5または6と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である単離または組換え核酸配列を提供する。当業者であれば、SEQ ID NO:5または6と相補的な核酸配列およびSEQ ID NO:5または6の変種もまた、本発明の範囲内に入ることを理解すると考えられる。さらなる態様において、本発明の核酸配列は、単離されても、組換えであっても、および/もしくは異種核酸配列と融合されても、またはDNAライブラリー中に存在してもよい。
【0068】
他の態様において、本発明の核酸はまた、SEQ ID NO:5もしくは6に示されるヌクレオチド配列に高ストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、SEQ ID NO:5もしくは6の相補配列、またはそれらの断片を含む。上記のように、当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件を変更できることを容易に理解すると考えられる。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件を変更できることを容易に理解すると考えられる。例えば、約45℃にて6.0 x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーションを行い、その後50℃にて2.0 x SSCで洗浄を行い得る。例えば、洗浄段階の塩濃度は、50℃における約2.0 x SSCという低ストリンジェンシーから、50℃における約0.2 x SSCという高ストリンジェンシーまでの範囲で選択され得る。さらに、洗浄段階の温度は、室温、約22℃における低ストリンジェンシー条件から、約65℃における高ストリンジェンシー条件まで上げることができる。温度および塩の両方を変更することも可能であるし、またはその他の変数を変更して温度または塩濃度を一定に維持してもよい。1つの態様において、本発明は、室温における6 x SSCおよびその後の室温における2 x SSCでの洗浄という低ストリンジェンシー条件でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0069】
遺伝暗号の縮重により、SEQ ID NO:5〜6に記載の核酸とは異なる単離された核酸もまた、本発明の範囲内である。例えば、多くのアミノ酸は2つ以上のトリプレットにより指定される。同じアミノ酸を特定するコドン、または同義コドン(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンに関して同義コドンである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響しない「サイレント」変異を生じ得る。しかし、本タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列多型が、哺乳動物細胞間に存在すると考えられる。当業者は、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(ヌクレオチドの約3〜5%まで)におけるこれらの変異が、自然の対立遺伝子変異に起因して、所与の種の個体間に存在し得ることを認識すると考えられる。任意の、および全てのそのようなヌクレオチド変異および生じるアミノ酸多型も、本発明の範囲内である。
【0070】
ある態様において、本発明の組換え核酸は、発現構築物内で1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列に機能的に連結され得る。制御ヌクレオチド配列は一般に、発現に使用する宿主細胞に適したものである。種々の宿主細胞に関して、多くの種類の適切な発現ベクターおよび適切な制御配列が当技術分野において公知である。典型的に、そのような1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列には、非限定的に、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたは活性化配列が含まれ得る。本発明では、当技術分野において公知である構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターが意図される。プロモーターは天然のプロモーターであっても、または2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターであってもよい。発現構築物はプラスミドなどのエピソーム上にあって細胞内に存在し得るか、または発現構築物は染色体内に挿入され得る。好ましい態様において、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は当技術分野において周知であり、使用する宿主細胞によって異なる。
【0071】
本発明のある局面において、本核酸は、少なくとも1つの制御配列に機能的に連結されたActRIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターとして提供される。制御配列は当技術分野において認識されており、ActRIIポリペプチドの発現を指示するように選択される。したがって、制御配列という用語は、プロモーター、エンハンサー、およびその他の発現調節エレメントを含む。例示的な制御配列は、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。例えば、これに機能的に連結された場合にDNA配列の発現を調節する多種多様な発現調節配列のいずれかを、これらのベクター中で使用して、ActRIIポリペプチドをコードするDNA配列を発現させることができる。そのような有用な発現調節配列には、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、発現がT7 RNAポリメラーゼにより方向付けられるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖系酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α-接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、および原核細胞もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子発現を調節することが公知の他の配列、ならびにそれらの種々の組み合わせが含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、および/または発現が所望されるタンパク質の種類などの要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を調節する能力、およびベクターによってコードされる、抗生物質マーカーなどの任意の他のタンパク質の発現もまた考慮すべきである。
【0072】
本発明の組換え核酸は、クローン化遺伝子またはその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母、トリ、昆虫、または哺乳動物)、またはその両方での発現に適したベクター中に連結することによって作製され得る。組換えActRIIポリペプチドを産生させるための発現媒体には、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、大腸菌などの原核細胞における発現用の以下の種類のプラスミドが含まれる:pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、およびpUC由来プラスミド。
【0073】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を容易にするための原核生物配列、および真核細胞中で発現される1つまたは複数の真核生物転写単位の両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neo、およびpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらベクターのいくつかは、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、pBR322などの細菌プラスミドの配列を用いて修飾される。または、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP由来、およびp205)などのウイルスの派生物を、真核細胞におけるタンパク質一過性発現に使用することができる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、下記の遺伝子治療送達系の説明において見出すことができる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換で用いられる様々な方法が、当技術分野において周知である。原核細胞および真核細胞の両方に適した他の発現系、ならびに一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989) Chapter 16および17を参照されたい。場合によっては、バキュロウイルス発現系を使用して、組換えポリペプチドを発現させることが望ましいと考えられる。そのようなバキュロウイルス発現系の例には、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393、およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、およびpBlueBac由来ベクター(β-gal含有pBlueBac IIIなど)が含まれる。
【0074】
好ましい態様において、Pcmv-Scriptベクター(Stratagene, La Jolla, Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)、およびpCI-neoベクター(Promega, Madison, Wisc.)などのベクターは、CHO細胞において本ActRIIポリペプチドが産生されるように設計される。明らかなように、本遺伝子構築物を用いて、例えば精製を目的として融合タンパク質または変種タンパク質をはじめとするタンパク質を産生させるために、培養で増殖させた細胞中で本ActRIIポリペプチドを発現させることができる。
【0075】
本発明はまた、本ActRIIポリペプチドの1つまたは複数のコード配列(例えば、SEQ ID NO:7または8)を含む組換え遺伝子をトランスフェクションした宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であってよい。例えば、本発明のActRIIポリペプチドは、大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用する)、酵母、または哺乳動物細胞において発現され得る。他の適切な宿主細胞は当業者に周知である。
【0076】
したがって、本発明はさらに、本ActRIIポリペプチドを産生する方法に関する。例えば、ActRIIポリペプチドをコードする発現ベクターをトランスフェクションした宿主細胞を、ActRIIポリペプチドの発現を可能とし得るのに適した条件下で培養し得る。ActRIIポリペプチドは分泌され、細胞およびActRIIポリペプチドを含む培地の混合物から単離され得る。または、ActRIIポリペプチドは細胞質中または膜画分中に保持され、細胞を回収、溶解して、タンパク質を単離し得る。細胞培養物は、宿主細胞、培地、および他の副産物を含む。細胞培養に適した培地は、当技術分野において周知である。本ActRIIポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびActRIIポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫アフィニティー精製をはじめとする、タンパク質を精製するための当技術分野において公知である技法を用いて、細胞培養液、宿主細胞、またはその両方から単離され得る。好ましい態様において、ActRIIポリペプチドは、その精製を容易にするドメインを含む融合タンパク質である。
【0077】
別の態様においては、組換えActRIIポリペプチドの所望の部分のN末端における、ポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列のような精製リーダー配列をコードする融合遺伝子によって、Ni2+金属樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製が可能になる。その後、エンテロキナーゼによる処理で精製リーダー配列を除去し、精製されたActRIIポリペプチドを提供することができる(例えば、Hochuli et al., (1987) J. Chromatography 411:177;およびJanknecht et al., PNAS USA 88:8972を参照されたい)。
【0078】
融合遺伝子を作製する技法は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の連結は、連結のための平滑末端または付着末端、適切な末端をもたらすための制限酵素消化、必要に応じた付着末端の充填平滑化、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素による連結を使用する、従来の技法に従って行われる。別の態様では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来の技法により合成され得る。または、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的な突出部を生じるアンカープライマーを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行うことができ、その後アニーリングさせて、キメラ遺伝子配列を作製することもできる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。
【0079】
4. 抗体
本発明の別の局面は、抗体に関する。ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)と特異的に反応する、およびActRIIポリペプチドと競合的に結合する抗体は、ActRIIポリペプチド活性のアンタゴニストとして使用することができる。例えば、ActRIIポリペプチドから得られた免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体を標準的な手順により作製することができる(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual ed. by Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press: 1988)を参照されたい)。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳動物を、ActRIIポリペプチドの免疫原性形態、抗体応答を誘発し得る抗原性断片、または融合タンパク質で免疫化し得る。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与する技法として、担体との結合または当技術分野で周知の他の技法が含まれる。ActRIIポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体力価を検出することによりモニターし得る。その免疫原を抗原とし、標準的なELISA法または他の免疫測定法を用いることで、抗体レベルを評価し得る。
【0080】
ActRIIポリペプチドの抗原性調製物で動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、必要に応じて、血清からポリクローナル抗体を単離することができる。モノクローナル抗体を作製するには、免疫した動物から抗体産生細胞(リンパ球)を回収し、標準的な体細胞融合手順により骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を創出し得る。このような技法は当技術分野で周知であり、これには、例えばハイブリドーマ技法(Kohler and Milstein, (1975) Nature, 256: 495-497により最初に開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbar et al., (1983) Immunology Tody, 4: 72)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV-ハイブリドーマ技法(Cole et al., (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. pp. 77-96)が含まれる。ハイブリドーマ細胞は、ActRIIポリペプチドと特異的に反応する抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、このようなハイブリドーマ細胞を含む培養物からモノクローナル抗体を単離することができる。
【0081】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、本ActRIIポリペプチドとやはり特異的に反応するその断片を包含することを意図している。抗体は慣用的技法を用いて断片化することができ、それらの断片を、抗体全体について上記と同様に有用性に関してスクリーニングすることができる。例えば、F(ab)2断片は、抗体をペプシンで処理することにより生成することができる。得られたF(ab)2断片をジスルフィド架橋を還元するように処理して、Fab断片を生成することができる。本発明の抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域によって付与されるActRIIポリペプチドに対する親和性を有する、二重特異性、一本鎖、ならびにキメラおよびヒト化分子を包含することをさらに意図している。好ましい態様において、抗体は、これに結合されて検出され得る標識(例えば、標識は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であってよい)をさらに含む。
【0082】
特定の好ましい態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、ある態様において、本発明は新規な抗体を作製する方法を提供する。例えば、ActRIIポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を作製する方法は、マウスに、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効なActRIIポリペプチドを含むある量の免疫原性組成物を投与する段階、マウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来の細胞)を採取し、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させて抗体産生ハイブリドーマを得る段階、および抗体産生ハイブリドーマを試験して、ActRIIポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する段階を含み得る。ハイブリドーマが得られたならば、任意でハイブリドーマ由来細胞がActRIIポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件において、このハイブリドーマを細胞培養で増殖させ得る。モノクローナル抗体は、細胞培養物から精製することができる。
【0083】
抗体に関して用いる場合の形容詞「〜に特異的に反応する」は、当技術分野において一般的に理解されているように、抗体が、関心対象の抗原(例えば、ActRIIポリペプチド)と関心対象以外の他の抗原との間で十分に選択的であること、抗体が、少なくとも、特定の種類の生物試料中の関心対象の抗原の存在の検出に有用であることを意味することを意図している。治療用途など、この抗体を用いる特定の方法においては、より高度の結合特異性が望ましいと考えられる。モノクローナル抗体は、一般に(ポリクローナル抗体と比較して)、所望の抗原と交差反応性ポリペプチドとを効果的に識別する一層強い傾向を有する。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を及ぼす1つの特徴は、抗体の抗原に対する親和性である。所望の特異性が種々の親和性の範囲で達成され得るが、一般に好ましい抗体は、約10-6、10-7、10-8、10-9、またはそれ未満の親和性(解離定数)を有する。
【0084】
加えて、所望の抗体を同定するために抗体をスクリーニングするのに用いる技法は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を溶液中の抗原と結合させるために用いるのであれば、溶液結合を試験することが望ましいと考えられる。抗体および抗原間の相互作用を試験して、特定の所望の抗体を同定するためには、多様な技法が利用可能である。そのような技法には、ELISA法、表面プラズモン共鳴結合アッセイ法(例えば、Biacore結合アッセイ法、Bia-core AB, Uppsala, Sweden)、サンドイッチアッセイ法(例えば、IGEN International, Inc., Gaithersburg, Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウエスタンブロット法、免疫沈降アッセイ法、および免疫組織化学法が含まれる。
【0085】
ある局面において、本開示は、可溶性ActRIIポリペプチドに結合する抗体を提供する。そのような抗体は、抗原として可溶性ActRIIポリペプチドまたはその断片を使用して、上記のように作製することができる。この種類の抗体は、例えば生物試料中のActRIIポリペプチドを検出するため、および/または個体中の可溶性ActRIIポリペプチドレベルをモニターするために使用することができる。特定の場合においては、可溶性ActRIIポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて、ActRIIポリペプチドおよび/またはActRIIリガンドの活性を調節し、それによって骨、軟骨、筋肉、脂肪、および神経などの組織の成長を制御する(促進するまたは阻害する)ことができる。
【0086】
5. スクリーニングアッセイ法
ある局面において、本発明は、ActRIIポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(物質)を同定するための本ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)の使用に関する。このスクリーニングを通じて同定される化合物は、インビトロにおいて組織増殖を調節する能力を評価するために、骨、軟骨、筋肉、脂肪、および/または神経などの組織で試験することができる。任意で、これらの化合物は、インビボにおいて組織増殖を調節する能力を評価するために、動物モデルでさらに試験することができる。
【0087】
ActRIIポリペプチドを標的とすることで組織増殖を調節する治療剤をスクリーニングするための多くのアプローチが存在する。ある態様においては、化合物のハイスループットスクリーニングを行い、骨、軟骨、筋肉、脂肪、および/または神経の増殖に及ぼすActRII媒介性効果を撹乱する物質を同定することができる。ある態様においては、アッセイを行い、ActRIIリガンド(例えば、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11、またはBMP7)などの結合パートナーに対するActRIIポリペプチドの結合を特異的に阻害するかまたは減少させる化合物をスクリーニングおよび同定する。または、アッセイを行って、ActRIIリガンドのような結合パートナーに対するActRIIポリペプチドの結合を増強する化合物を同定し得る。さらなる態様において、化合物は、ActRIIポリペプチドと相互作用する能力により同定され得る。
【0088】
様々なアッセイ形式が十分であり、本開示に照らして、本明細書に明確に記載していないものであっても当業者により理解されると考えられる。本明細書に記載するように、本発明の試験化合物(物質)は、任意のコンビナトリアル化学法によって作製され得る。または、本化合物は、インビボまたはインビトロで合成される天然生体分子であってよい。組織増殖の調節因子として作用する能力について試験しようとする化合物(物質)は、例えば、細菌、酵母、植物、または他の生物によって産生され得るか(例えば、天然物)、化学的に生成され得るか(例えば、ペプチド模倣体を含む小分子)、または組換えによって産生され得る。本発明の意図する試験化合物には、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、糖類、ホルモン、および核酸分子が含まれる。ある態様において、試験物質は、約2,000ダルトン未満の分子量を有する小有機分子である。
【0089】
本発明の試験化合物は、単一の分離した実体として提供され得るか、またはコンビナトリアル化学によって作製されるような、より複雑なライブラリーの形態で提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテル、およびその他の種類の有機化合物を含み得る。試験化合物の試験系への提示は、単離形態であってもよいし、または特に最初のスクリーニング段階では化合物の混合物としてでもよい。任意で、化合物は他の化合物で任意で誘導体化され、化合物の単離を容易にする誘導体基を含み得る。誘導体基の非限定的な例には、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位元素、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化架橋剤、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0090】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムでは、所与の期間内に調査する化合物数を最大限にするために、ハイスループットアッセイが望ましい。精製または半精製タンパク質を用いて導かれ得るような無細胞系で行うアッセイ法は、試験化合物によって媒介される分子標的の変化の迅速な生成および比較的容易な検出が可能になるよう作製できるという点で、「初期」スクリーニングとして好ましい場合が多い。さらに、試験化合物の細胞毒性または生物学的利用能の影響は一般にインビトロ系では無視することができ、その代わりアッセイは、ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質(例えば、ActRIIリガンド)との間の結合親和性の変化として示され得る、分子標的に及ぼす薬物の効果に主に焦点が当てられ得る。
【0091】
単なる例であるが、本発明の例示的なスクリーニングアッセイでは、関心対象の化合物を、アッセイの意図に応じて、通常ActRIIリガンドに結合し得る単離および精製されたActRIIポリペプチドと接触させる。次いで、化合物およびActRIIポリペプチドの混合物に対して、ActRIIリガンドを含む組成物を添加する。ActRII/ActRIIリガンド複合体の検出および定量化により、ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体形成を阻害する(または増強する)際の化合物の有効性を決定する手段が提供される。化合物の有効性は、様々な濃度の試験化合物を用いて得られるデータから用量反応曲線を作製することにより評価し得る。さらに、対照アッセイを同様に行って、比較のための基準を提供し得る。例えば、対照アッセイでは、単離および精製されたActRIIリガンドを、ActRIIポリペプチドを含む組成物に添加し、ActRII/ActRIIリガンド複合体の形成を試験化合物の非存在下で定量化する。一般に、反応物を混合し得る順序は変更でき、また同時に混合できることが理解される。さらに、精製タンパク質の代わりに細胞抽出物および溶解物を使用して、適切な無細胞アッセイ系を提供することも可能である。
【0092】
ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体形成は、様々な技法により検出することができる。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、放射標識(例えば、32P、35S、14C、または3H)、蛍光標識(例えば、FITC)、または酵素標識したActRIIポリペプチドまたはその結合タンパク質などの、検出可能に標識したタンパク質を用いて、免疫測定法によりまたはクロマトグラフィー検出により定量化することができる。
【0093】
ある態様において、本発明は、ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の程度を直接または間接的に測定する際の、蛍光偏光アッセイ法および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ法の使用を意図する。さらに、光導波路(PCT出願国際公開公報第96/26432号および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面荷電センサー、および表面力センサーに基づくようなその他の様式の検出も、本発明の多くの態様と適合する。
【0094】
さらに、本発明は、ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を破壊するかまたは増強する物質を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ法」としても公知の相互作用捕捉アッセイ法の使用を意図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervos et al. (1993) Cell 72:223-232;Madura et al. (1993) J Biol Chem 268:12046-12054;Bartel et al. (1993) Biotechniques 14:920-924;およびIwabuchi et al. (1993) Oncogene 8:1693-1696を参照されたい)。特定の態様において、本発明は、ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、小分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を意図する。例えば、Vidal and Legrain, (1999) Nucleic Acids Res 27:919-29;Vidal and Legrain, (1999) Trends Biotechnol 17:374-81;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照されたい。
【0095】
ある態様において、本化合物は、本発明のActRIIポリペプチドと相互作用する能力により同定される。化合物とActRIIポリペプチドとの間の相互作用は、共有結合であってもまたは非共有結合であってもよい。例えば、そのような相互作用は、光架橋、放射標識リガンド結合、およびアフィニティークロマトグラフィーをはじめとするインビトロの生化学的方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る(Jakoby WB et al., 1974, Methods in Enzymology 46: 1)。ある場合において、化合物は、ActRIIポリペプチドに結合する化合物を検出するアッセイ法などの、ある機構に基づくアッセイ法でスクリーニングされ得る。これは固相または流体相結合事象を含み得る。または、ActRIIポリペプチドをコードする遺伝子をレポーターシステム(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)と共に細胞にトランスフェクションし、好ましくはハイスループットスクリーニングによりライブラリーに対して、またはライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングすることができる。例えば自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ法など、他の機構に基づく結合アッセイ法を用いることも可能である。結合アッセイは、ウェル、ビーズ、もしくはチップに固定されるか、または固定化抗体によって捕獲されるか、またはキャピラリー電気泳動によって分離された標的を用いて行うことができる。結合した化合物は通常、比色または蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出され得る。
【0096】
ある局面において、本発明は、例えばActRIIポリペプチドおよび/またはActRIIリガンドの機能を遮断することにより、筋肉成長を促進するおよび筋肉量を増大させる方法および物質を提供する。したがって、同定される任意の化合物を、インビトロまたはインビボにおいて細胞または組織全体で試験して、筋肉成長を調節する能力を確認することができる。当技術分野において周知である種々の方法を、この目的に使用することができる。例えば、本発明の方法は、ActRIIリガンド(例えば、GDF8)への結合によって活性化されるActRIIタンパク質を介したシグナル伝達が減少するかまたは阻害されるように行われる。生物の筋肉組織の成長は、ActRIIタンパク質を介したシグナル伝達が影響を受けなかった対応する生物(または生物集団)の筋肉量と比較して、生物の筋肉量の増加をもたらすことが認識される。
【0097】
例えば、ActRIIポリペプチドまたは試験化合物が筋肉細胞の成長/増殖に及ぼす影響は、筋原細胞の増殖と関連するPax-3およびMyf-5の遺伝子発現、ならびに筋肉分化と関連したMyoDの遺伝子発現を測定することによって決定され得る(例えば、Amthor et al., Dev Biol. 2002, 251:241-57)。GDF8はPax-3およびMyf-5の遺伝子発現を下方制御し、MyoDの遺伝子発現を阻害することが公知である。ActRIIポリペプチドまたは試験化合物は、GDF8のこの活性を遮断することが予測される。細胞に基づくアッセイ法の別の例は、ActRIIポリペプチドまたは試験化合物の存在下で、C(2)C(12)筋芽細胞などの筋芽細胞の増殖を測定する段階を含む(例えば、Thomas et al., J Biol Chem. 2000, 275:40235-43)。
【0098】
本発明はまた、筋肉量および筋力を測定するためのインビボアッセイ法を意図する。例えば、Whittemore et al. (Biochem Biophys Res Commun. 2003, 300:965-71)は、マウスにおいて骨格筋量の増加および握力の増加を測定する方法を開示している。任意で、この方法を用いて、筋肉の疾患または状態、例えば筋肉量が限定される疾患に及ぼす試験化合物(例えば、ActRIIポリペプチド)の治療効果を決定することができる。
【0099】
ある局面において、本発明は、骨形成を調節する(促進または阻害する)および骨量を増大させる方法および物質を提供する。したがって、同定される任意の化合物を、インビトロまたはインビボにおいて細胞または組織全体で試験して、骨または軟骨の成長を調節する能力を確認することができる。当技術分野において周知である種々の方法を、この目的に使用することができる。
【0100】
例えば、ActRIIポリペプチドまたは試験化合物が骨または軟骨の成長に及ぼす影響は、細胞に基づくアッセイ法でMsx2の誘導、または骨芽前駆細胞の骨芽細胞への分化を測定することによって決定され得る(例えば、Daluiski et al., Nat. Genet. 2001, 27(1):84-8;Hino et al., Front Biosci. 2004, 9:1520-9を参照されたい)。細胞に基づくアッセイ法の別の例は、間葉系前駆細胞および骨芽細胞において、本ActRIIポリペプチドおよび試験化合物の骨形成活性を解析する段階を含む。例えば、ActRIIポリペプチドを発現する組換えアデノウイルスを構築して、多能性間葉系前駆細胞C3H10T1/2細胞、前骨芽C2C12細胞、および骨芽TE-85細胞を感染させる。次いで、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、および基質石灰化の誘導を測定することにより、骨形成活性を決定する(例えば、Cheng et al., J bone Joint Surg Am. 2003, 85-A(8):1544-52を参照されたい)。
【0101】
本発明はまた、骨または軟骨の成長を測定するためのインビボアッセイ法を意図する。例えば、Namkung-Matthai et al., Bone, 28:80-86 (2001)は、骨折後の初期の骨修復を研究するラット骨粗鬆症モデルを開示している。Kubo et al., Steroid Biochemistry & Molecular Biology, 68:197-202 (1999)もまた、骨折後の後期の骨修復を研究するラット骨粗鬆症モデルを開示している。これらの参考文献は、骨粗鬆症性骨折に関する研究のためのラットモデルの開示に関して、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。ある局面において、本発明は、当技術分野において周知である骨折治癒アッセイ法を使用する。これらのアッセイ法は、例えば米国特許第6,521,750号に記載されている骨折技法、組織学的解析、および生体力学的解析を含み、前記特許は、骨折を引き起こし骨折の程度を測定する、ならびに修復過程をもたらしこれを測定する実験手順の開示に関して、その全体が参照により組み入れられる。
【0102】
ある局面において、本発明は、体重増加および肥満を調節する方法および物質を提供する。細胞レベルにおいて、脂肪細胞の増殖および分化は、さらなる脂肪細胞(fat cell)(脂肪細胞(adipocyte))の生成をもたらす肥満の発症に重要である。したがって、同定される任意の化合物を、インビトロまたはインビボにおいて細胞または組織全体で試験して、脂肪細胞の増殖または分化を測定することにより脂肪生成を調節する能力を確認することができる。当技術分野において公知である種々の方法を、この目的に使用することができる。例えば、ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)または試験化合物が脂肪生成に及ぼす影響は、例えばOil Red O染色小胞中のトリアシルグリセロールの蓄積を観察することによる、ならびにFABP(aP2/422)およびPPARγ2などの特定の脂肪細胞マーカーの出現によるなど、細胞に基づくアッセイ法で3T3-L1前脂肪細胞の成熟脂肪細胞への分化を測定することによって決定され得る。例えば、Reusch et al., 2000, Mol Cell Biol. 20:1008-20;Deng et al., 2000, Endocrinology. 141:2370-6;Bell et al., 2000, Obes Res. 8:249-54を参照されたい。細胞に基づくアッセイ法の別の例は、ブロモデオキシウリジン(BrdU)陽性細胞をモニターするなどして、脂肪細胞または脂肪細胞前駆細胞(例えば、3T3-L1細胞)の増殖におけるActRIIポリペプチドおよび試験化合物の役割を解析する段階を含む。例えば、Pico et al., 1998, Mol Cell Biochem. 189:1-7;Masuno et al., 2003, Toxicol Sci. 75:314-20を参照されたい。
【0103】
本発明のスクリーニングアッセイ法は、本ActRIIポリペプチドおよびActRIIポリペプチドの変種に適用されるのみならず、ActRIIポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストを含む任意の試験化合物にも適用されることが理解される。さらに、これらのスクリーニングアッセイ法は、薬物標的検証および品質管理の目的にも有用である。
【0104】
6. 例示的な治療用途
ある態様において、本発明の組成物(例えば、ActRIIポリペプチド)は、ActRIIポリペプチドおよび/またはActRIIリガンド(例えば、GDF8)の異常な活性に関連した疾患または状態を治療または予防するために使用され得る。これらの疾患、障害、または状態は、本明細書では一般に「ActRII関連状態」と称する。ある態様において、本発明は、上記のActRIIポリペプチドの治療的有効量を個体に投与することにより、それを必要とする個体を治療または予防する方法を提供する。これらの方法は特に、動物、特にヒトの治療的処置および予防的処置を目的としている。
【0105】
本明細書において使用する場合、障害または状態を「予防する」治療薬とは、統計的試料において、未処置の対照試料と比較して処置試料において障害もしくは状態の発生を減少させるか、または未処置の対照試料と比較して障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状の発症を遅延させるか、もしくはそれら症状の重症度を軽減する化合物を指す。本明細書で使用する「治療する」という用語は、指定の状態の予防、またはいったん確立された状態の改善もしくは排除を含む。
【0106】
ActRII/ActRIIリガンド複合体は、組織増殖および例えば種々の構造の正確な形成などの初期発生過程において、または性的発育、下垂体ホルモン産生、ならびに骨および軟骨の形成をはじめとする1つまたは複数の発生後能力において必須の役割を果たす。したがって、ActRII関連状態には、異常な組織増殖および発達障害が含まれる。さらに、ActRII関連状態には、非限定的に、炎症、アレルギー、自己免疫疾患、感染症、および腫瘍などの、細胞の増殖および分化の障害が含まれる。
【0107】
例示的なActRII関連状態には、神経筋障害(例えば、筋ジストロフィーおよび筋萎縮)、うっ血性閉塞性肺疾患、筋消耗症候群、筋肉減少症、悪液質、脂肪組織疾患(例えば、肥満症)、2型糖尿病、および骨変性疾患(例えば、骨粗鬆症)が含まれる。その他の例示的なActRII関連状態には、筋変性疾患および神経筋障害、組織修復(例えば、創傷治癒)、神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、免疫疾患(例えば、リンパ球の異常な増殖または機能に関連した疾患)、ならびに肥満症または脂肪細胞の異常な増殖に関連した疾患が含まれる。
【0108】
ある態様において、本発明の組成物(例えば、可溶性ActRIIポリペプチド)は、筋ジストロフィーの治療の一部として用いられる。「筋ジストロフィー」という用語は、骨格筋ならびに場合によっては心筋および呼吸筋の段階的な衰弱および悪化を特徴とする変性性筋疾患の群を指す。筋ジストロフィーは、筋肉の顕微鏡学的変化で始まる、進行性の筋消耗および筋衰弱を特徴とする遺伝性疾患である。時間とともに筋肉が変性するにつれ、患者の筋力は低下する。本ActRIIポリペプチドを含む療法を用いて治療し得る例示的な筋ジストロフィーには、以下のものが含まれる:デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー(Becker)型筋ジストロフィー(BMD)、エメリ・ドレフュシュ(Emery-Dreifuss)型筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(ランドゥジー・デジェリン(Landouzy-Dejerine)としても知られる)、筋緊張性ジストロフィー(MMD)(シュタイネルト(Steinert)病としても知られる)、眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)、遠位型筋ジストロフィー(DD)、先天性筋ジストロフィー(CMD)。
【0109】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、1860年代にフランス人神経学者Guillaume Benjamin Amand Duchenneによって初めて記載された。ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、1950年代にDMDのこの変種について初めて記載したドイツ人医師Peter Emil Beckerにちなんで命名されている。DMDは男性における最も頻度の高い遺伝性疾患の1つであり、男児3,500人に1人が罹患する。DMDは、X染色体の短腕上に位置するジストロフィン遺伝子が損傷を受けた場合に発症する。男性はX染色体を1コピーしかもたないため、ジストロフィン遺伝子も1コピーしか存在しない。ジストロフィンタンパク質が存在しないと、筋肉は収縮および弛緩の周期中に容易に損傷を受ける。疾患の初期には筋肉は再生によって補われるが、その後は、筋肉前駆細胞が損傷の進行に対応することができず、健常な筋肉が非機能的な線維脂肪組織に置き換えられる。
【0110】
BMDは、ジストロフィン遺伝子内の異なる変異によって起こる。BMD患者はある程度のジストロフィンを有するが、ジストロフィンは量が不十分であるか、または質が不良である。ある程度のジストロフィンが存在するため、BMD患者の筋肉は、DMD患者の筋肉のような悪性の、または急速な変性から保護される。
【0111】
例えば、最近の研究者により、インビボでのGDF8(ActRIIリガンド)機能の遮断または除去が、DMDおよびBMD患者の少なくとも一部の症状を効果的に治療し得ることが実証されている(Bogdanovich et al.、前記;Wagner et al.、前記)。したがって、本ActRIIポリペプチドはGDF8阻害剤(アンタゴニスト)として作用し得、DMDおよびBMD患者においてインビボでGDF8および/またはActRIIの機能を遮断する別の手段を構成し得る。
【0112】
同様に、本ActRIIポリペプチドは、筋肉成長を必要とする他の疾患状態において筋肉量を増加させる有効な手段を提供する。例えば、Gonzalez-Cadavid et al.(前記)は、GDF8発現がヒトの除脂肪量と逆の相関があること、およびGDF8遺伝子の発現増加がエイズるいそう症候群患者の体重減少と関連があることを報告した。エイズ患者においてGDF8の機能を阻害することで、完全に除去されないとしても、エイズの少なくとも一部の症状が緩和され得、したがってエイズ患者の生活の質が顕著に改善される。
【0113】
GDF8(ActRIIリガンド)機能の損失はまた、栄養摂取の減少を伴わない脂肪消失とも関連があるため(Zimmers et al.、前記;McPherron and Lee、前記)、本ActRIIポリペプチドはさらに、肥満症およびII型糖尿病の発症を遅延させるまたは予防する治療剤として使用され得る。
【0114】
食思不振・がん悪液質(cancer anorexia-cachexia)症候群は、最も衰弱させかつ生命にかかわる癌の局面の1つである。食思不振・がん悪液質症候群における進行性の体重減少は、多くの種類の癌の共通した特徴であり、生活の質の低さおよび化学療法への応答不良ばかりでなく、体重減少を認めない同等の腫瘍を有する患者で見られる生存期間よりも短い生存期間の原因となる。食欲不振、脂肪および筋肉組織の消耗、心理的苦悩、ならびに生活の質の低さに関連して、悪液質は癌と宿主の間の複雑な相互作用から生じる。悪液質は癌患者の間で最も多く見られる死因の1つであり、死亡時には80%で存在する。悪液質は、タンパク質、炭水化物、および脂肪代謝に影響する代謝無秩序の複合例である。腫瘍は直接的および間接的異常を生じて、食欲不振および体重減少をきたす。現在のところ、この過程を調節するかまたは回復させる治療は存在しない。食思不振・がん悪液質症候群は、サイトカイン産生、脂質動員因子およびタンパク質分解誘導因子の放出、ならびに中間代謝の変化に影響を及ぼす。食欲不振はよく見られるが、食物摂取の減少のみで、癌患者に見られる身体組成の変化を説明することはできず、栄養摂取量の増加で消耗性症候群を回復することはできない。発病前の体重の5パーセントを超える非自発的体重減少が6ヶ月の期間内に生じた場合に、癌患者で悪液質が疑われるべきである。
【0115】
成体マウスにおけるGDF8の全身性過剰発現によって、ヒト悪液質症候群に見られる著しい筋肉および脂肪の損失と類似した損失が誘導されることが認められたため(Zimmers et al.、前記)、薬学的組成物としての本ActRIIポリペプチドは、筋肉成長が望まれる悪液質症候群の症状を予防、治療、または緩和するために有利に用いられ得る。
【0116】
他の態様において、本発明は、骨および/もしくは軟骨形成を誘導する、骨減少を防止する、骨石灰化を増大させる、または骨の脱石灰化を防止する方法を提供する。例えば、本ActRIIポリペプチドおよび本発明において同定される化合物は、ヒトおよびその他の動物において骨粗鬆症を治療する、ならびに骨折および軟骨欠損を治癒する上で用途を有する。ActRIIポリペプチドは、骨粗鬆症の発症に対する保護対策として、無症候性低骨密度と診断される患者において有用であり得る。
【0117】
1つの特定の態様において、本発明の方法および組成物は、ヒトおよびその他の動物における骨折および軟骨欠損の治癒において医学的有用性を見出し得る。本方法および組成物はまた、閉鎖骨折および開放骨折の減少において、ならびにまた人工関節の定着の改善において予防的用途を有し得る。骨形成剤により誘導される新規骨形成は、先天性の、外傷によって誘発される、または腫瘍切除によって誘発される頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、また美容整形手術にも有用である。さらに、本発明の方法および組成物は、歯周病の治療において、およびその他の歯の修復過程において用いられ得る。ある場合において、本ActRIIポリペプチドは、骨形成細胞を誘引する環境を提供し得、骨形成細胞の増殖を促進し得、または骨形成細胞の前駆細胞の分化を誘導し得る。本発明のActRIIポリペプチドはまた、骨粗鬆症の治療に有用であり得る。さらに、ActRIIポリペプチドは、軟骨欠損の修復および変形性関節症の予防/回復に使用され得る。
【0118】
別の特定の態様において、本発明は、骨折、ならびに軟骨および/もしくは骨欠損または歯周病に関連するその他の状態を修復するための治療方法および治療組成物を提供する。本発明はさらに、創傷治癒および組織修復のための治療方法および治療組成物を提供する。創傷の種類には、非限定的に、熱傷、切り傷、および潰瘍が含まれる。例えば、国際公開公報第84/01106号を参照されたい。そのような組成物は、薬学的に許容される媒体、担体、または基質と混合された、本発明のActRIIポリペプチドの少なくとも1つの治療的有効量を含む。
【0119】
別の特定の態様において、本発明の方法および組成物は、骨粗鬆症、副甲状腺機能亢進症、クッシング(Cushing)病、甲状腺中毒症、慢性的な下痢状態もしくは吸収不良、尿細管性アシドーシス、または拒食症などの骨減少をもたらす状態に適用され得る。多くの人々は、女性であること、低体重であること、および座りがちな生活様式を送ることが、骨粗鬆症(骨折の危険性をもたらす骨ミネラル密度の減少)の危険因子であることを承知している。しかし、骨粗鬆症はまた、特定の薬物の長期使用に起因し得る。薬物または別の医学的状態に起因する骨粗鬆症は、二次性骨粗鬆症として知られている。クッシング病として公知の状態では、身体で産生される過剰量のコルチゾールが、骨粗鬆症および骨折を引き起こす。二次性骨粗鬆症に関連した最も一般的な薬物は、コルチゾールのように作用する種類の薬物であって、副腎から自然に産生されるホルモンであるコルチコステロイドである。適切なレベルの甲状腺ホルモン(甲状腺から産生される)は骨格の発達に必要であるが、過剰な甲状腺ホルモンは時間とともに骨量を減少させ得る。アルミニウムを含む制酸剤は、特に透析を受けている腎臓障害を有する人が高用量で摂取した場合に、骨減少をもたらし得る。二次性骨粗鬆症をもたらし得る他の薬物には、発作を予防するために用いられるフェニトイン(Dilantin))およびバルビツール酸;いくつかの形態の関節炎、癌、および免疫疾患のための薬剤であるメトトレキセート(Rheumatrex、Immunex、Folex PFS);ある種の自己免疫疾患を治療するため、および臓器移植患者の免疫系を抑制するために用いられる薬物であるシクロスポリン(Sandimmune、Neoral);前立腺癌および子宮内膜症の治療に用いられる黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(Lupron、Zoladex);抗凝固薬物であるヘパリン(Calciparine、Liquaemin);ならびに高コレステロールの治療に用いられるコレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)が含まれる。歯肉疾患では、口腔内の有害細菌のために身体が細菌に対し防御することを強いられるため、骨減少が起こる。細菌は歯肉線において毒素および酵素を産生し、慢性感染を引き起こす。
【0120】
さらなる態様において、本発明は、異常なまたは望ましくない骨成長と関連した疾患または障害を治療するための方法および治療剤を提供する。例えば、進行性骨化性線維形成異常症(FOP)として公知の疾患を有する患者は、任意の運動を妨害する異常な「二次骨格」を成長させる。さらに、異常な骨成長は股関節置換手術後に発生し得、したがって手術結果を損なう。これは、本方法および組成物が治療的に有用であり得る病理学的骨成長および状況のより一般的な例である。同様の方法および組成物はまた、その他の形態の異常な骨成長(例えば、外傷、熱傷、または脊髄損傷後の骨の病理学的成長など)を治療するため、および転移性前立腺癌または骨肉腫と関連して見られる異常な骨成長と関連した望ましくない状態を治療または予防するために有用であり得る。これらの治療剤の例には、非限定的に、ActRIIリガンド(例えば、BMP7)の機能を遮断するActRIIポリペプチド、ActRIIとそのリガンド(例えば、BMP7)の間の相互作用を破壊する化合物、およびActRIIリガンド(例えば、BMP7)がActRII受容体に結合し得ないようにActRII受容体に特異的に結合する抗体が含まれる。
【0121】
他の態様において、本発明は、動物の体脂肪含量を制御するため、およびこれに関連する状態、特にこれに関連する健康を損なう状態を治療または予防するための組成物および方法を提供する。本発明によれば、体重の制御(調節)とは、体重の減少もしくは増加、体重増加の速度の減少もしくは増加、または体重減少の速度の増加もしくは減少を指し得、(例えば、別の方法で体重を増加または減少させ得る外的または内的影響に対して)体重を積極的に維持すること、または体重を大幅に変化させないことを含む。本発明の1つの態様は、ActRIIポリペプチドをそれ必要とする動物(例えば、ヒト)に投与することによって、体重を制御することに関する。
【0122】
1つの特定の態様において、本発明は、動物の体重を減少させるおよび/または体重増加を減少させるため、特に肥満症の危険性があるかまたは肥満症を患っている患者の肥満を治療するまたは改善するための方法および組成物を提供する。別の特定の態様において、本発明は、体重を増加または保持し得ない動物(例えば、消耗性症候群を有する動物)を治療するための方法および組成物に関する。そのような方法は、体重および/もしくは体格を増加させるため、または体重および/もしくは体格の減少を低減するため、または望ましくない低(例えば、不健康な)体重および/もしくは体格に関連するか、もしくはそれらによって起こる状態を改善するために有効である。
【0123】
他の態様において、本ActRIIポリペプチドは、神経変性が関与する疾患の宿主の症状を予防、治療、または緩和するために有利に使用され得る。いかなる特定の理論に縛られることも望まないが、本ActRIIは、I型受容体ALK7を介して媒介される抑制性のフィードバック機構を遮断し得、よって新たなニューロンの成長および分化を可能にする。薬学的組成物としての本ActRIIポリペプチドは、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびハンチントン病(HD)を含む、神経変性を伴う疾患の症状を予防、治療、または緩和するために有利に使用され得る。
【0124】
アルツハイマー病(AD)は、徐々に起こり、記憶喪失、異常挙動、人格変化、および思考能力の低下をきたす、慢性的な不治でかつ制止できない中枢神経系(CNS)疾患である。これらの損失は、特定の種類の脳細胞の死滅およびそれらの間の連絡の断絶に関連している。ADは、幼児期の発達の逆行として説明されている。大部分のAD患者では、60歳より後に症状が現れる。初発症状には、近時記憶の喪失、誤判断、および人格変化が含まれる。疾患後期には、AD患者は、手を洗うなどの単純な課題を行う方法も忘れ得る。最終的に、AD患者はすべての推論能力を失い、日々の世話を他の人に依存するようになる。ついには、この疾患は衰弱性となって、患者は寝たきりになり、典型的に合併症を発症する。AD患者は、最も多くは、疾患の発症から8〜20年後に肺炎で死亡する。
【0125】
パーキンソン病(PD)は、徐々に起こり、身体運動の制御不能、硬直、振戦、および歩行困難をきたす、慢性的な不治でかつ制止できないCNS疾患である。これらの運動系の問題は、筋活動の調節を助ける化学物質であるドーパミンを産生する脳の領域における脳細胞の死滅に関連している。大部分のPD患者では、症状は50歳より後に現れる。PDの初期症状は、四肢、特に手、または唇に起こる顕著な振戦である。それに続くPDの特徴的な症状は、運動の硬直または緩慢化、引きずり歩行、前屈姿勢、およびバランス障害である。記憶喪失、認知症、鬱、情緒変化、嚥下困難、異常発語、性機能障害、ならびに膀胱および腸障害など、広範囲にわたる二次的症状が存在する。これらの症状は、フォークを握るまたは新聞を読むなどの日常活動を妨げ始める。最終的に、PD患者は重度障害となって、寝たきりになる。PD患者は通常、肺炎で死亡する。
【0126】
ルー・ゲーリック病(運動ニューロン疾患)とも称されるALSは、脳を骨格筋に結びつけるCNSの成分である運動ニューロンを攻撃する、慢性的な不治でかつ制止できないCNS疾患である。ALSでは、運動ニューロンが変質して最終的には死滅するため、患者の脳は通常、十分に機能し続けかつ機敏なままであるが、運動の命令が筋肉に到達しない。ALSに罹患する大部分の患者は、40〜70歳である。衰弱する最初の運動ニューロンは、腕または脚に至る運動ニューロンである。ALS患者は歩行困難を有し得、物を落とす、落下する、不明瞭に発音する、および制御不可能に笑ったり泣いたりする場合がある。最終的に、四肢の筋肉は、使われないために萎縮し始める。この筋力低下が衰弱性となり、患者は車椅子を必要とするか、またはベッドの外で機能できなくなる。大部分のALS患者は、疾患の発症から3〜5年後に、呼吸不全または肺炎に似た人工呼吸器支援の合併症で死亡する。
【0127】
これらの神経疾患の原因は、大部分が依然として不明である。これらは従来異なる疾患として定義されているが、基本的な経過において並外れた類似性を明らかに示し、偶然のみから予想されるよりもはるかに多くの重複した症状を示す。現行の疾患の定義は、重複の問題を適切に扱うことができず、神経変性疾患の新たな分類が求められている。
【0128】
HDは、脳の特定領域にあるニューロンの、遺伝的にプログラムされた変性によって生じる別の神経変性疾患である。この変性は、無制御運動、知的能力の喪失、および情緒障害をきたす。HDは、野生型遺伝子における優性変異を通して親から子へ伝わる家族性疾患である。HDのいくつかの初期症状は、気分変動、鬱、興奮性、または運転、新しいことの学習、事実の記憶、もしくは意思決定の困難である。疾患が進行するにつれ、知的課題への集中が次第に困難になり、患者は自力で食べることおよび飲み込むことも困難となり得る。疾患の進行速度および発症年齢は、人によって異なる。
【0129】
テイ・サックス(Tay-Sachs)病およびサンドホフ(Sandhoff)病は、リソソームβ-ヘキソサミニダーゼの欠如によって起こる糖脂質蓄積疾患である(Gravel et al., in The Metabolic Basis of Inherited Disease, eds. Scriver et al., McGraw-Hill, New York, pp. 2839-2879, 1995)。いずれの疾患においても、GM2ガングリオシドおよびβ-ヘキソサミニダーゼの関連糖脂質基質が神経系に蓄積し、急性神経変性を誘発する。最も重篤な形態では、症状の発症は早期乳児期に始まる。次いで急激な神経変性経過が続き、罹患乳児は、運動機能障害、発作、視力喪失、および聴覚障害を示す。通常、2〜5歳までに死亡する。アポトーシス機構を介したニューロンの喪失が実証されている(Huang et al., Hum. Mol. Genet. 6: 1879-1885, 1997)。
【0130】
アポトーシスが、免疫系においてエイズ発症の一因となることは周知である。しかし、HIV-1はまた神経疾患も誘発する。Shi et al. (J. Clin. Invest. 98: 1979-1990, 1996)は、インビトロモデルおよびエイズ患者の脳組織において、中枢神経系(CNS)のHIV-1感染によって誘導されるアポトーシスについて調べ、初代脳培養物のHIV-1感染により、インビトロにおいてニューロンおよびアストロサイトでアポトーシスが誘導されることを見出した。ニューロンおよびアストロサイトのアポトーシスはまた、HIV-1認知症患者5人中5人および非認知症患者5人中4人を含む、エイズ患者11人中10人の脳組織でも検出された。
【0131】
ニューロンの喪失はまた、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病、ウシのBSE(狂牛病)、ヒツジおよびヤギのスクレイピー病、ならびにネコの猫海綿状脳症(FSE)などのプリオン病の顕著な特徴である。
【0132】
本ActRIIポリペプチドはまた、以下に記載するような様々なPNS疾患の症状を予防、治療、および緩和するのにも有用である。PNSは、CNSに至るまたはCNSから分岐する神経から構成される。末梢神経は、感覚機能、運動機能、および自律機能を含む、身体の多様な機能をつかさどる。個体が末梢神経障害を有する場合、PNSの神経は損傷を受けている。神経損傷は、疾患、肉体的損傷、中毒、または栄養不良などの多くの原因から起こり得る。これらの病因は、求心性神経または遠心性神経を冒し得る。損傷の原因によって、神経細胞軸索、その保護的な髄鞘、またはその両方が損傷または破壊され得る。
【0133】
「末梢神経障害」という用語は、脳および脊髄外の神経‐末梢神経‐が損傷された広範な疾患を包含する。末梢神経障害はまた末梢神経炎とも称され得、または多くの神経が関与する場合には、多発性神経障害もしくは多発性神経炎という用語が使用され得る。
【0134】
末梢神経障害は広範な障害であり、根底にある原因が多く存在する。これらの原因には、糖尿病のように一般的なものもあれば、アクリルアミド中毒および特定の遺伝性疾患など、極めて稀なものもある。末梢神経障害の最もよく見られる世界的な原因は、ハンセン病である。ハンセン病は、罹患患者の末梢神経を攻撃する細菌、ライ菌(Mycobacterium leprae)によって起こる。世界保健機関によって収集された統計によると、世界的に見て、推定115万人の人がハンセン病に罹患している。
【0135】
米国では、ハンセン病は極めて稀であり、糖尿病が末梢神経障害の最も一般的な既知原因である。米国およびヨーロッパでは、1,700万人を超える人が、糖尿病関連多発性神経障害を患っていると推定されている。多くの神経障害は特発性であり、既知原因を見出すことができない。米国で最も多く見られる遺伝性末梢神経障害はシャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth)病であり、約125,000人の人がこの疾患に罹患している。
【0136】
よく知られた別の末梢神経障害はギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群であり、これは、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルス疾患、またはカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)およびライム(Lyme)病を含む細菌感染に伴う合併症から生じる。世界的な発生率は、年間で100,000人当たり約1.7症例である。末梢神経障害のよく知られたその他の原因には、慢性アルコール依存症、水痘帯状疱疹ウイルス感染、ボツリヌス中毒、および灰白髄炎が含まれる。末梢神経障害は一次症状として発現する場合もあれば、別の疾患が原因である場合もある。例えば、末梢神経障害は、アミロイドニューロパチー、ある種の癌、または遺伝性神経障害などの疾患の唯一の症状である。そのような疾患は、末梢神経系(PNS)および中枢神経系(CMS)、ならびに他の身体組織を冒し得る。
【0137】
本ActRIIで治療し得る他のPNS疾患には、以下のものが含まれる:腕神経叢神経障害(頸部および第一胸部神経根、神経幹、神経束、ならびに腕神経叢の末梢神経成分の疾患。臨床症状には、上肢の局所疼痛、知覚異常;筋衰弱、および感覚低下が含まれる。この疾患は、出生時外傷をはじめとする外傷;胸郭出口症候群;新生物、神経炎、放射線治療;およびその他の状態に関連している可能性がある。Adams et al., Principles of Neurology, 6th ed, pp1351-2を参照されたい);糖尿病性神経障害(糖尿病に関連した末梢神経、自律神経、および脳神経障害)。これらの状態は、通常、神経を満たす小血管(神経栄養血管)を含む、糖尿病性微小血管損傷に起因する。糖尿病性神経障害に関連していると考えられる比較的よく見られる病態には、第三神経麻痺;単神経障害;多発性単神経炎;糖尿病性筋萎縮症;有痛性多発性神経障害;自律神経障害;および胸腹部神経障害が含まれる(Adams et al., Principles of Neurology, 6th ed, p1325を参照されたい);単神経障害(分離した、または広汎性末梢神経障害の証拠に対して不釣り合いな、単一の末梢神経が関与する疾患または外傷)。多発性単神経炎は、複数の分離した神経損傷を特徴とする状態を指す。単神経障害は、虚血;外傷;圧迫;結合組織病;蓄積外傷疾患;およびその他の病態を含む多種多様な原因に起因し得る);神経痛(末梢神経または脳神経の進路または分布に沿って起こる激痛またはうずく痛み);末梢神経系新生物(末梢神経組織から生じる新生物。これには、神経線維腫;シュワン腫;顆粒細胞種;および悪性末梢神経鞘腫瘍が含まれる。DeVita Jr et al., Cancer: Principles and Practice of Oncology, 5th ed, pp1750-1を参照されたい);神経圧迫症候群(内因または外因による、神経または神経根の機械的圧迫。これらは、例えば髄鞘機能障害または軸索消失に起因して、神経インパルスの伝導ブロックをきたし得る。神経および神経鞘の損傷は、虚血;炎症;または直接的な機械的影響によって起こり得る;または神経炎(末梢神経または脳神経の炎症を示す一般用語)。臨床症状には、疼痛;知覚異常;不全麻痺;または感覚鈍麻が含まれる;多発性神経障害(複数の末梢神経の疾患)。影響を受ける神経の種類により(例えば、感覚、運動、または自律)、神経損傷の分布により(例えば、遠位 対 近位)、主に影響を受けた神経成分により(例えば、脱髄性 対 軸索)、病因により、または遺伝のパターンにより、様々な形態が分類される。
【0138】
7. 薬学的組成物
ある態様において、本発明の組成物(例えば、ActRIIポリペプチド)は、薬学的に許容される担体と共に製剤化される。例えば、ActRIIポリペプチドは、単独で、または薬学的製剤(治療的組成物)の成分として投与することができる。本化合物は、ヒト薬または動物薬で使用するために、任意の簡便な方法で投与されるよう製剤化され得る。
【0139】
ある態様において、本発明の治療方法は、組成物を局所的に、全身的に、または移植片もしくは装置として限局的に投与する段階を含む。投与する時点で、本発明に使用する治療組成物は当然のことながら発熱物質を含まず、生理学的に許容される形態にある。さらに、組成物は、標的組織部位(例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪、または神経)、例えば組織損傷を有する部位に送達するために、望ましくはカプセル封入されるか、または粘性形態として注射され得る。局所投与は、創傷治癒および組織修復に適していると考えられる。上記組成物中に同様に任意で含めることができる、ActRIIポリペプチド以外の治療上有用な物質を、本発明の方法において、本化合物(例えば、ActRIIポリペプチド)と同時にまたは逐次的に、選択的にまたは付加的に投与してもよい。
【0140】
ある態様において、本発明の組成物は、組織標的部位(例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪、または神経)に1つまたは複数の治療化合物(例えば、ActRIIポリペプチド)を送達し得、組織発達のための構造を提供し、最適には体内に再吸収され得る基質を含み得る。例えば、基質は、ActRIIポリペプチドの徐放を提供し得る。そのような基質は、他の移植医療用途に現在使用されている材料で形成され得る。
【0141】
基質材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容上の外観、および界面特性に基づく。本組成物の特定の用途により、適切な製剤が決まる。組成物に利用可能な基質は、生分解性であり化学的に規定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、およびポリ無水物であってよい。他の可能な材料は、生分解性であり生物学的に十分規定されたもの、例えば骨または皮膚コラーゲンである。さらなる基質は、純粋なタンパク質または細胞外基質成分からなる。他の可能な基質は、非生分解性であり化学的に規定されたもの、例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸、または他のセラミックスである。基質は、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムのように、上記種類の材料のいずれかの組み合わせからなってもよい。バイオセラミックは、孔径、粒径、粒形、および生分解性を変更するために、カルシウム-アルミン酸-リン酸などの組成および加工処理において改変することができる。
【0142】
ある態様において、本発明の方法は、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(香味基材、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴムを使用)、粉末剤、顆粒剤の形態で、または水性液体もしくは非水液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型乳濁液として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基材を使用)として、および/または洗口剤などとして投与され得、それぞれ所定量の物質を有効成分として含む。物質はまた、巨丸剤、舐剤、またはペースト剤として投与され得る。
【0143】
経口投与用の固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末剤、顆粒剤など)においては、本発明の1つまたは複数の治療化合物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合し得るが、担体は、例えば、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム、および/または以下のうちのいずれかである:(1) 充填剤または増量剤、例えば澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など;(2) 結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアラビアゴムなど;(3) 湿潤剤(humectant)、例えばグリセロールなど;(4) 崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど;(5) 溶液遅延剤、例えばパラフィンなど;(6) 吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物など;(7) 浸潤剤(wetting agent)、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど;(8) 吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土など;(9) 潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物など;ならびに(10) 着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、薬学的組成物はまた緩衝剤を含み得る。同様の種類の固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセル剤の充填剤として使用することもできる。
【0144】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は、有効成分に加えて、例えば水または他の溶媒などの当技術分野で通常用いられる不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤、ならびにそれらの混合物を含み得る。経口組成物は、不活性希釈剤に加えて、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香料剤、および保存剤などの補助剤もまた含み得る。
【0145】
懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカントゴム、ならびにこれらの混合物などの懸濁剤を含み得る。
【0146】
本明細書に開示するある組成物は、皮膚または粘膜に局所投与され得る。局所製剤は、皮膚または角質層浸透促進剤として有効であることが知られている多種多様な薬剤の1つまたは複数をさらに含み得る。これらの例としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセタミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルアルコールまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンが挙げられる。化粧的に許容される製剤を作製するために、さらなる薬物を含めることも可能である。これらの例としては、脂肪、ろう、油、色素、香料、保存剤、安定剤、および界面活性剤が挙げられる。当技術分野において公知であるような角質溶解剤もまた含めることが可能である。その例はサリチル酸および硫黄である。
【0147】
局所または経皮投与用の剤形には、粉末剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液、貼付剤、および吸入剤が含まれる。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要と考えられる任意の保存剤、緩衝剤、または推進剤と混合され得る。軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、およびゲル剤は、本発明の本化合物(例えば、ActRIIポリペプチド)に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ろう、パラフィン、澱粉、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、ならびに酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤を含み得る。
【0148】
粉末剤および噴霧剤は、本化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含み得る。噴霧剤は、クロロフルオロ炭化水素などの慣用的な推進剤、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素をさらに含み得る。
【0149】
ある態様において、非経口投与に適した薬学的組成物は、1つまたは複数のActRIIポリペプチドを、1つまたは複数の薬学的に許容される無菌の等張性の水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液、または乳濁液、あるいは使用する直前に無菌の注射用溶液または分散液に再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含み得、この無菌粉末は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を対象となるレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る。本発明の薬学的組成物に使用し得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆材の使用により、分散剤の場合には必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0150】
本発明の組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含み得る。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどを含めることにより、微生物の作用の予防を確実にすることも可能である。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることもまた望ましいと考えられる。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる物質を含めることで、注射用薬剤形態の吸収を延長することも可能である。
【0151】
投与計画は、主治医が、本発明の本化合物(例えば、ActRIIポリペプチド)の作用を変化させる様々な要因を考慮した上で決定されることが理解される。様々な要因には、これらに限定されないが、形成が所望される骨重量、骨損傷の部位、損傷した骨の状態、創傷の大きさ、損傷組織の種類、患者の年齢、性別、および食習慣、感染があればその重症度、投与期間、ならびに他の臨床上の要因が含まれる。任意で、用量は、再構成に用いる基質の種類および組成物中の化合物の種類に応じて変化し得る。他の既知の増殖因子を最終的な組成物に加えることもまた、投与量に影響し得る。進展は、例えば、X線、組織形態学的測定、およびテトラサイクリン標識により、骨の成長および/または修復を定期的に評価することでモニターすることができる。
【0152】
本発明のある態様においては、1つまたは複数のActRIIポリペプチドを、共に(同時に)または異なる時点で(逐次的にまたは重複して)投与し得る。さらに、ActRIIポリペプチドは、別の種類の治療剤、例えば、軟骨誘導剤、骨誘導剤、筋肉誘導剤、減脂剤、または神経誘導剤と共に投与し得る。2つの種類の化合物は、同時にまたは異なる時点で投与することができる。本発明のActRIIポリペプチドは、別の治療剤と協調して、またはおそらくは相乗的に作用し得ることが予測される。
【0153】
特定の例として、種々の骨形成因子、軟骨誘導因子、および骨誘導因子が記載されており、特にビスホスフォネートが挙げられる。例えば、欧州特許出願第148,155号および同第169,016号を参照されたい。例えば、本ActRIIポリペプチドと組み合わせることができる他の因子には、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF-αおよびTGF-β)、およびインスリン様増殖因子(IGF)などの種々の増殖因子が含まれる。
【0154】
ある態様において、本発明はまた、ActRIIポリペプチドをインビボ産生させるための遺伝子治療を提供する。このような治療は、ActRIIポリヌクレオチド配列を上記の疾患を有する細胞または組織に導入することによって、その治療効果を達成する。ActRIIポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスなどの組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いて達成することができる。ActRIIポリヌクレオチド配列の治療的送達に好ましいのは、標的化リポソームの使用である。
【0155】
本明細書で開示する遺伝子治療に用いることができる様々なウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または好ましくはレトロウイルスなどのRNAウイルスが含まれる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリのレトロウイルスの派生物である。単一の外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスベクターの例には、非限定的に、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれる。多くのさらなるレトロウイルスベクターは、複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターはすべて、形質導入された細胞が同定および作製され得るように、選択可能なマーカーの遺伝子を伝達するかまたは組み込むことができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質を結合させることによって標的特異的にすることができる。好ましい標的化は、抗体を用いることで達成される。当業者は、ActRIIポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能とするために、特定のポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノム中に挿入するか、またはウイルスエンベロープに結合することができることを認識すると考えられる。1つの好ましい態様において、ベクターは骨、軟骨、筋肉、または神経細胞/組織に標的化される。
【0156】
または、組織培養細胞に、レトロウイルス構造遺伝子gag、pol、およびenvをコードするプラスミドを、慣例的なリン酸カルシウムトランスフェクションによって直接トランスフェクトすることができる。次いで、これらの細胞に、関心対象の遺伝子を含むベクタープラスミドをトランスフェクションする。得られる細胞は、レトロウイルスベクターを培地中に放出する。
【0157】
ActRIIポリヌクレオチドの別の標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、微粒子、ビーズ、ならびに水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームをはじめとする脂質に基づく系が含まれる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達媒体として有用である人工膜小胞である。RNA、DNA、および無傷のビリオンをその水性内部に封入し、生物学的に活性のある形態で細胞に送達することができる(例えば、Fraley, et al., Trends Biochem. Sci., 6:77, 1981を参照されたい)。リポソーム媒体を使用する効率的な遺伝子移入の方法は当技術分野において公知であり、例えば、Mannino, et al., Biotechniques, 6:682, 1988を参照されたい。リポソームの組成は通常、一般的にステロイド、特にコレステロールと組み合わせた、リン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質を使用することも可能である。リポソームの物理的特性はpH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0158】
リポソームの生成に有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが含まれる。例示的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。リポソームの標的化もまた、例えば、臓器特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性に基づいて可能であり、当技術分野において公知である。
【0159】
実施例
ここに本発明を広く説明したが、本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されると考えられる。以下の実施例は、本発明の特定の態様および態様を単に説明する目的で含めるものであって、本発明を限定することを意図していない。
【0160】
実施例1. ActRIIB変異体の作製:
本出願者らは、ActRIIBの細胞外ドメイン中に一連の変異をもたらし、これらの変異体タンパク質を細胞外ActRIIBとFcドメインとの可溶性融合タンパク質として産生させた。アクチビンと細胞外ActRIIBの共結晶構造から、リガンド結合における細胞外ドメインの最後の(C末端の)15アミノ酸(本明細書では「尾部」と称する)の役割は示されなかった。この配列は結晶構造において分離することができず、これらの残基が、結晶中に均一に詰め込まれない可動性ループ中に存在することが示唆された。Thompson et al. EMBO J. 2003 Apr 1;22(7):1555-66。この配列はまた、ActRIIBとActRIIAの間で十分に保存されていない。したがって、これらの残基は、基本的なまたはバックグラウンドのActRIIB-Fc融合構築物から除外した。さらに、A64R対立遺伝子が天然に存在するが、バックグラウンド形態中の64位はアラニンが占有し、これを一般的に「野生型」と見なす。そのため、バックグラウンドActRIIB-Fc融合物は、以下の配列(Fc部分を下線で示す)(SEQ ID NO:14)を有する:

【0161】
驚くべきことに、以下に論じるように、C末端尾部はアクチビンおよびGDF-11結合を増強することが判明し、したがって、ActRIIB-Fcの好ましい形態は以下の配列(Fc部分を下線で示す)(SEQ ID NO:15)を有する:

【0162】
バックグラウンドActRIIB-Fcタンパク質に様々な変異を導入した。PCR突然変異誘発法により、ActRIIB細胞外ドメイン中に変異を起こした。PCR後、Qiagenカラムで断片を精製し、SfoIおよびAgeIで消化して、ゲル精製した。連結によりヒトIgG1との融合キメラが作製されるように、これらの断片を発現ベクターpAID4に連結した。大腸菌DH5αに形質転換し、コロニーを拾い、DNAを単離した。変異体はすべて配列を確認した。
【0163】
全変異体を、一過性のトランスフェクションにより、HEK293T細胞で産生させた。要約すると、500 mlスピナー中、HEK293T細胞を250 ml量のFreestyle(Invitrogen)培地中で6x 105細胞/mlに設定し、一晩培養した。翌日、これらの細胞を、0.5 ug/mlの最終DNA濃度でDNA:PEI(1:1)複合体で処理した。4時間後に培地250 mlを添加し、細胞を7日間培養した。細胞を沈降させて馴化培地を回収し、濃縮した。
【0164】
変異体はすべてプロテインAカラムで精製し、低pH(3.0)グリシン緩衝液で溶出した。中和した後、これらをPBSに対して透析した。
【0165】
変異体はまた、同様の方法によりCHO細胞で産生させた。
【0166】
変異体を、以下に記載する結合アッセイおよびバイオアッセイで試験した。CHO細胞およびHEK293細胞で発現させたタンパク質は、結合アッセイおよびバイオアッセイにおいて識別不能であった。
【0167】
実施例2. GDF-11およびアクチビンA結合
ActRIIB-Fcタンパク質の結合は、BiaCore(商標)アッセイで試験した。
【0168】
GDF-11またはアクチビンA(「ActA」)を、標準的なアミンカップリング手順を用いてBiaCore CM5チップ上に固定化した。ActRIIB-Fc変異体または野生型タンパク質をシステムに添加し、結合を測定した。結果を以下の表1に要約する。
【0169】
(表1)GDF11およびアクチビンAに対する可溶性ActRIIB-Fcの結合(BiaCoreアッセイ)

* 結合は観察されず
-- < 1/5 WT結合
- 約1/2 WT結合
+ WT
++ < 2x結合増加
+++ 約5x結合増加
++++ 約10x結合増加
+++++ 約40x結合増加
【0170】
表1に示すように、変異はリガンド結合に対して様々な影響を及ぼした。細胞外ドメインのC末端15アミノ酸を付加することで、アクチビンAおよびGDF-11の両方に対する結合親和性が実質的に増加し、この効果が実質的にすべての他の変異に変換されることが予測される。天然対立遺伝子A64RおよびK74Aをはじめとする他の変異も、リガンド結合親和性の全体的な増加をもたらした。R40A変異は、アクチビンAおよびGDF-11の両方に対する結合親和性を中程度に減少させた。E37A、R56A、W78A、D80K、D80R、D80A、D80G、D80F、D80M、およびD80Nを含む多くの変異は、アクチビンAおよびGDF-11に対する検出可能な結合を消失させた。特定の変異は、選択性の変化をもたらした。以下の変異は、アクチビンA結合に対するGDF-11結合の比率を増大させた:K74Y、K74F、K74I、およびD80I。以下の変異は、アクチビンA結合に対するGDF-11結合の比率を減少させた:D54A、K55A、L79A、およびF82A。
【0171】
実施例3. GDF-11およびアクチビン媒介性シグナル伝達に関するバイオアッセイ。
A-204レポーター遺伝子アッセイを用いて、GDF-11およびアクチビンAによるシグナル伝達に及ぼすActRIIB-Fcの影響を評価した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉由来)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennler et al, 1998, EMBO 17: 3091-3100に記載されている)。図5を参照されたい。CAGA12モチーフがTGF-β応答遺伝子(PAI-1遺伝子)内に存在するため、このベクターは、Smad2およびSmad3を介してシグナル伝達する因子に一般的に有用である。
1日目:A-204細胞を48ウェルプレートに分割する。
2日目:A-204細胞に、10 ug pGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10 ug)+pRLCMV(1 ug)およびFugeneをトランスフェクションする。
3日目:因子(培地+0.1% BSAに希釈)を添加する。阻害因子は、細胞に添加する1時間前に、因子と共にプレインキュベートしておく必要がある。6時間後、細胞をPBSですすぎ、細胞を溶解する。
【0172】
これにルシフェラーゼアッセイが続く。阻害因子が存在しない場合、アクチビンAはレポーター遺伝子発現の10倍の促進、およびED50約2 ng/mlを示した。GDF-11:16倍の促進、ED50:約1.5 ng/ml。
【0173】
図16に示すように、野生型(バックグラウンドA64)ActRIIB-Fcは、A-204レポーター遺伝子アッセイにおいてGDF-11シグナル伝達を阻害する。バックグラウンドA64構築物は、GDF-11活性に対して阻害効果を示した。A64K変異(これも天然型である)はGDF-11阻害の実質的増加をもたらし、またA64K変異を細胞外ドメインのC末端15アミノ酸(15アミノ酸「尾部」)の付加と組み合わせることで、GDF-11活性のより強力な阻害剤が生成された。図17に示すように、バックグランドA64構築物は、アクチビンA活性に対して阻害効果を示した。K74A変異は、アクチビンA阻害の実質的増加をもたらした。アクチビンAを欠く対照試料は、活性を示さなかった。
【0174】
バイオアッセイ系によるこれらのデータは、表1に示した結合アッセイと良好に相関し、様々な変異の効果が生物学的系に変換されることが実証される。
【0175】
実施例4:ActRIIA-Fc融合タンパク質
図14に示すように、ActRIIAおよびActRIIBは、高度に保存されている。したがって、ActRIIBで試験した変異の大部分は、ActRIIAで同様の効果を有することが予測される。よって、以下の配列(Fc部分を下線で示す)(SEQ ID NO:16)を有するバックグラウンドActRIIA-Fc融合物を構築し得る:

【0176】
以下に論じるように、C末端尾部はアクチビンおよびGDF-11結合を増強することが判明し、したがって、ActRIIA-Fcの好ましい形態は以下の配列(Fc部分を下線で示す)(SEQ ID NO:17)を有する:

【0177】
ActRIIBで作製した変異に対応するさらなる変異を、バックグラウンド型のActRIIAまたは「尾部」型のActRIIAにおいて作製し得る。ActRIIB変異とActRIIA変異との間の対応を以下の表2に示す。

【0178】
参照による引用
本明細書において言及した出版物および特許はすべて、個々の出版物または特許が具体的にかつ個別に参照により組み入れられることが示されるように、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0179】
本件の特定の態様について論じたが、上記明細書は説明のためであって、限定するものではない。本明細書および特許請求の範囲を検討することで、多くの変形が当業者に明らかになると考えられる。本発明の全範囲は、特許請求の範囲を同等物の全範囲と共に参照し、本明細書をそのような変形と共に参照して決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】ヒトActRIIA可溶性(細胞外)ポリペプチド配列(SEQ ID NO:1)を示す。C末端「尾部」を下線で示す。
【図2】ヒトActRIIB可溶性(細胞外)ポリペプチド配列(SEQ ID NO:2)を示す。C末端「尾部」を下線で示す。
【図3】ヒトActRIIA前駆体タンパク質配列(SEQ ID NO:3)を示す。シグナルペプチドを下線で示し;細胞外ドメインを太字で示し(SEQ ID NO:1とも称する);潜在的N結合グリコシル化部位を囲みで示す。
【図4】ヒトActRIIB前駆体タンパク質配列(SEQ ID NO:4)を示す。シグナルペプチドを下線で示し;細胞外ドメインを太字で示し(SEQ ID NO:2とも称する);潜在的N結合グリコシル化部位を囲みで示す。
【図5】SEQ ID NO:5として設計した、ヒトActRIIA可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列を示す。
【図6】SEQ ID NO:6として設計した、ヒトActRIIB可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列を示す。
【図7】SEQ ID NO:7として設計した、ヒトActRIIA前駆体タンパク質をコードする核酸配列を示す。
【図8】SEQ ID NO:8として設計した、ヒトActRIIB前駆体タンパク質をコードする核酸配列を示す。
【図9】ActRIIAまたはActRIIBの細胞外(可溶性)ドメインの発現を示す。ActRIIAまたはActRIIBのヒト細胞外ドメインを発現する構築物は、全部で3つのシグナル配列を用いて作製した。
【図10】種々のシグナル配列を有する3つの可溶性ActRIIBポリペプチド、SEQ ID NO:9〜11を示す。
【図11】天然シグナル配列を有する可溶性ActRIIAポリペプチド、SEQ ID NO:12を示す。
【図12】ActRIIAまたはActRIIBポリペプチドのFc融合物の設計を示す。可動性リンカー配列およびFc配列(SEQ ID NO:13)を示す。Fc配列の、1つ、複数のアミノ酸残基において、変異が作製され得る。変異のためのそのような残基の例を下線で示し、これらをAsp-265、リジン-322、およびAsn-434と称する。
【図13】ActRIIBポリペプチドのリガンド結合ポケットを示す。リガンド結合ポケット中のアミノ酸残基の例を、E39、K55、Y60、K74、W78、D80、およびF101として示す。本発明のActRIIBポリペプチドは、これらのアミノ酸残基の1つまたは複数において変異を含み得る。
【図14】ActRIIAおよびActRIIBの細胞外ドメインのアライメントを、ActRIIBにおいてリガンド結合に影響を及ぼすことが本明細書で実証された変異の位置と共に示す。アライメントから、これらの変異の位置がActRIIAで保存されていることが示される。
【図15】A-204レポーター遺伝子アッセイの概略図を示す。図は、レポーターベクター:pGL3(CAGA)12を示す(Dennler et al, 1998, EMBO 17: 3091-3100に記載されている)。CAGA12モチーフがTGF-β応答遺伝子(PAI-1遺伝子)中に存在するため、このベクターは、Smad2およびSmad3を介してシグナル伝達する因子に一般的に有用である。
【図16】ActRIIB-Fc中の種々の変異がGDF-11 A-204レポーター遺伝子アッセイに及ぼす影響を示す。バックグラウンドA64構築物は、GDF-11活性に対して最小の影響を示した。A64K変異(これも天然型である)はGDF-11阻害の実質的増加をもたらし、かつA64K変異を細胞外ドメインのC末端15アミノ酸(15アミノ酸「尾部」)の付加と組み合わせることで、GDF-11活性のより強力な阻害剤が生成された。
【図17】ActRIIB-Fc中の種々の変異がアクチビンA、A-204レポーター遺伝子アッセイに及ぼす影響を示す。バックグラウンドA64構築物は、アクチビンA活性に対して最小の影響を示した。K74A変異は、アクチビンA阻害の実質的増加をもたらした。アクチビンAを欠く対照試料は、活性を示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 可溶性ActRIIポリペプチド;および
b) 薬学的に許容される担体
を含む、ActRII関連疾患を治療するための薬学的調製物。
【請求項2】
可溶性ActRIIポリペプチドが、
a) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択される少なくとも10個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド
からなる群より選択され、
該可溶性ActRIIポリペプチドが、以下の特徴の1つまたは複数を有する、請求項1記載の薬学的調製物:
i) 少なくとも10-5 MのKdでActRIIリガンドに結合する;および
ii) 細胞においてActRIIシグナル伝達を阻害する。
【請求項3】
ActRIIリガンドが、アクチビン、BMP7、GDF8、GDF11、およびNodalからなる群より選択される、請求項2記載の薬学的調製物。
【請求項4】
可溶性ActRIIポリペプチドが、可溶性ActRIIAポリペプチドおよび可溶性ActRIIBポリペプチドからなる群より選択される、請求項1記載の薬学的調製物。
【請求項5】
可溶性ActRIIポリペプチドがSEQ ID NO:1または2において変異を含む、請求項1記載の薬学的調製物。
【請求項6】
変異によって可溶性ActRIIポリペプチドに対するActRIIリガンドの結合が改変される、請求項5記載の薬学的調製物。
【請求項7】
SEQ ID NO:2の62位のAspアミノ酸残基が、非電荷アミノ酸、負電荷アミノ酸、および疎水性アミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸残基に変異された、請求項6記載の薬学的調製物。
【請求項8】
可溶性ActRIIポリペプチドが、ActRIIポリペプチドドメインに加えて、インビボ安定性、インビボ半減期、摂取/投与、組織局在性もしくは分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製の1つまたは複数を増強する1つまたは複数のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、請求項1記載の薬学的調製物。
【請求項9】
融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、請求項8記載の薬学的調製物。
【請求項10】
融合タンパク質が、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合物から選択される精製サブ配列を含む、請求項8記載の薬学的調製物。
【請求項11】
可溶性ActRIIポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合したアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合したアミノ酸から選択される1つまたは複数の修飾アミノ酸残基を含む、請求項1記載の薬学的調製物。
【請求項12】
実質的に発熱物質を含まない、請求項1記載の薬学的調製物。
【請求項13】
可溶性ActRIIポリペプチドが1マイクロモル未満のKdでActRIIリガンドに結合する、請求項1記載の薬学的調製物。
【請求項14】
請求項1記載の薬学的調製物を含み、かつヒトにおいて組織の成長を促進するかまたは組織の損失を低減もしくは防止する上で使用するためにラベルされた包装された薬剤であって、組織が骨、軟骨、筋肉、脂肪、および神経からなる群より選択される、包装された薬剤。
【請求項15】
請求項1記載の薬学的調製物を含み、かつ非ヒトにおいて組織の成長を促進するかまたは組織の損失を低減もしくは防止する上で使用するためにラベルされた包装された薬剤であって、組織が骨、軟骨、筋肉、脂肪、および神経からなる群より選択される、包装された薬剤。
【請求項16】
可溶性ActRIIポリペプチド、および安定化ドメインを含む第2部分を含む、安定化されたActRIIポリペプチド。
【請求項17】
第2部分が、可溶性ActRIIポリペプチドに共有結合で融合されたポリペプチドである、請求項16記載の安定化されたActRIIポリペプチド。
【請求項18】
第2部分が、可溶性ActRIIポリペプチドのカルボキシル末端に融合されたポリペプチドである、請求項17記載の安定化されたActRIIポリペプチド。
【請求項19】
第2部分が、血清アルブミンおよびIgG Fcドメインからなる群より選択される、請求項17記載の安定化されたActRIIポリペプチド。
【請求項20】
第2部分が非アミノ酸部分である、請求項17記載の安定化されたActRIIポリペプチド。
【請求項21】
第2部分がポリエチレングリコールを含む、請求項17記載の安定化されたActRIIポリペプチド。
【請求項22】
a) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択される少なくとも10個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド
からなる群より選択される可溶性ActRIIポリペプチドのコード配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、
該可溶性ActRIIポリペプチドが、以下の特徴の1つまたは複数を有する、単離されたポリヌクレオチド:
i) 少なくとも10-5 MのKdでActRIIリガンドに結合する;および
ii) 細胞においてActRIIシグナル伝達を阻害する。
【請求項23】
a) ActRIIポリペプチドをコードする配列;
b) 終止コドン;および
c) ActRIIポリペプチドをコードする配列と少なくとも90%同一である配列
を含む単離されたポリヌクレオチドであって、
終止コドンが(a)の配列と(c)との配列の間、または(c)の配列内に位置する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項24】
SEQ ID NO:7および8からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、3'末端よりも少なくとも600ヌクレオチド前に非天然転写終結コドンをさらに含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項25】
請求項22、23、または24のいずれか一項記載のポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーター配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25記載の組換えポリヌクレオチドで形質転換された細胞。
【請求項27】
哺乳動物細胞である、請求項26記載の細胞。
【請求項28】
ヒト細胞である、請求項27記載の細胞。
【請求項29】
a) 可溶性ActRIIポリペプチドの発現に適した条件下において、請求項25記載の組換えポリヌクレオチドで形質転換した細胞を培養する段階;および
b) そのようにして発現された可溶性ActRIIポリペプチドを回収する段階
を含む、可溶性ActRIIポリペプチドを作製する方法。
【請求項30】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を対象に投与する段階を含む、筋肉の損失または不十分な筋肉成長と関連した疾患を有する対象を治療する方法。
【請求項31】
対象が筋萎縮を有する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
対象が筋ジストロフィーを有する、請求項30記載の方法。
【請求項33】
対象がALSを有する、請求項30記載の方法。
【請求項34】
可溶性ActRIIポリペプチドが、
a) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択される少なくとも10個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、
d) 安定化されたActRIIポリペプチド
からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項35】
疾患が筋消耗性疾患である、請求項30記載の方法。
【請求項36】
疾患が、悪液質、摂食障害、DMD症候群、BMD症候群、エイズるいそう症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部疾患、および炎症性筋障害からなる群より選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
可溶性ActRIIポリペプチドが、以下の特徴の1つまたは複数を有する、請求項35記載の方法:
i) 少なくとも10-5 MのKdでActRIIリガンドに結合する;および
ii) 細胞においてActRIIシグナル伝達を阻害する。
【請求項38】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を対象に投与する段階を含む、神経変性に関連した疾患を有する対象を治療する方法。
【請求項39】
疾患が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病からなる群より選択される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
可溶性ActRIIポリペプチドが、
a) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択される少なくとも10個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、
d) 安定化されたActRIIポリペプチド
からなる群より選択される、請求項38記載の方法。
【請求項41】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を対象に投与する段階を含む、異常な細胞増殖および細胞分化に関連した疾患を有する対象を治療する方法。
【請求項42】
疾患が、炎症、アレルギー、自己免疫疾患、感染症、および腫瘍からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
可溶性ActRIIポリペプチドが、
a) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択される少なくとも10個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、
d) 安定化されたActRIIポリペプチド
からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項44】
組織の成長を増大させるかまたは組織の損失を減少させるのに十分な可溶性ActRIIポリペプチドの有効量を対象に投与する段階を含む、対象の組織の成長を増大させるかまたは組織の損失を減少させる方法であって、組織が骨、軟骨、筋肉、脂肪、および神経からなる群より選択される、方法。
【請求項45】
可溶性ActRIIポリペプチドが、
a) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択される少なくとも10個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、
d) 安定化されたActRIIポリペプチド
からなる群より選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、対象の体脂肪含量を減少させるかまたは体脂肪含量の増加速度を減少させる方法。
【請求項47】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、対象の望ましくない体重増加に関連した疾患を治療する方法。
【請求項48】
疾患が、肥満症、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、心血管疾患、癌、高血圧症、変形性関節症、発作、呼吸困難、および胆嚢疾患からなる群より選択される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
可溶性ActRIIポリペプチドが、
a) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c) SEQ ID NO:1〜2および9〜12から選択される少なくとも10個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、
d) 安定化されたActRIIポリペプチド
からなる群より選択される、請求項46または47記載の方法。
【請求項50】
a) 可溶性ActRIIポリペプチドと競合的にActRIIポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験物質を同定する段階;および
b) その物質が組織の成長に及ぼす効果を評価する段階
を含む、骨、軟骨、筋肉、脂肪、および神経からなる群より選択される組織の成長を刺激する物質を同定する方法。
【請求項51】
細胞を可溶性ActRIIポリペプチドと接触させる段階を含む、細胞におけるActRIIポリペプチドの活性を遮断する方法。
【請求項52】
細胞を可溶性ActRIIポリペプチドと接触させる段階を含む、細胞におけるActRIIリガンドの活性を遮断する方法であって、ActRIIリガンドがアクチビン、BMP7、GDF8、GDF11、およびNodalからなる群より選択される、方法。
【請求項53】
活性が、ActRII/ActRIIリガンド複合体によって媒介されるシグナル伝達によってモニターされる、請求項51または52記載の方法。
【請求項54】
活性が細胞増殖によってモニターされる、請求項51または52記載の方法。
【請求項55】
細胞が、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、筋肉細胞、および神経細胞からなる群より選択される、請求項51または52記載の方法。
【請求項56】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、骨または軟骨組織の異常な量、発達、または代謝活性に関連した疾患の治療のための医用薬剤を作製するための可溶性ActRIIポリペプチドの使用。
【請求項57】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、筋肉組織の異常な量、発達、または代謝活性に関連した疾患の治療のための医用薬剤を作製するための可溶性ActRIIポリペプチドの使用。
【請求項58】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、望ましくない体脂肪含量に関連した疾患の治療のための医用薬剤を作製するための可溶性ActRIIポリペプチドの使用。
【請求項59】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、神経変性に関連した疾患の治療のための医用薬剤を作製するための可溶性ActRIIポリペプチドの使用。
【請求項60】
野生型受容体のGDF8結合ドメインと比較してGDF8に対する結合ドメインの選択性を増大させる1つまたは複数の変異を含む、ActRII受容体の改変されたGDF8結合ドメインを含むGDF8アンタゴニスト。
【請求項61】
1つまたは複数の変異が、改変された結合ドメインの選択性を、アクチビンと比べGDF8に対して増大させる、請求項60記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項62】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインに関する比率と比較して改変された結合ドメインに関して少なくとも2倍高い、アクチビン結合に関するKdとGDF8結合に関するKdの比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項63】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインに関する比率と比較して改変された結合ドメインに関して少なくとも5倍高い、アクチビン結合に関するKdとGDF8結合に関するKdの比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項64】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインに関する比率と比較して改変された結合ドメインに関して少なくとも10倍高い、アクチビン結合に関するKdとGDF8結合に関するKdの比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項65】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインに関する比率と比較して改変された結合ドメインに関して少なくとも100倍高い、アクチビン結合に関するKdとGDF8結合に関するKdの比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項66】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインと比べ改変された結合ドメインに関して少なくとも2倍高い、アクチビン阻害に関するIC50とGDF8阻害に関するIC50の比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項67】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインと比べ改変された結合ドメインに関して少なくとも5倍高い、アクチビン阻害に関するIC50とGDF8阻害に関するIC50の比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項68】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインと比べ改変された結合ドメインに関して少なくとも10倍高い、アクチビン阻害に関するIC50とGDF8阻害に関するIC50の比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項69】
改変された結合ドメインが、野生型受容体のGDF8結合ドメインと比べ改変された結合ドメインに関して少なくとも100倍高い、アクチビン阻害に関するIC50とGDF8阻害に関するIC50の比率を有する、請求項61記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項70】
アクチビン阻害に関するアンタゴニストのIC50と比べ少なくとも2倍低いIC50でGDF8を阻害する、請求項60記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項71】
アクチビン阻害に関するアンタゴニストのIC50と比べ少なくとも5倍低いIC50でGDF8を阻害する、請求項60記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項72】
アクチビン阻害に関するアンタゴニストのIC50と比べ少なくとも10倍低いIC50でGDF8を阻害する、請求項60記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項73】
アクチビン阻害に関するアンタゴニストのIC50と比べ少なくとも100倍低いIC50でGDF8を阻害する、請求項60記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項74】
改変されたGDF8結合ドメインが、ActRIIBポリペプチド中、E37、E39、R40、K55、R56、Y60、A64、K74、W78、L79、D80、F82、およびF101からなる群より選択される残基において1つまたは複数の変異を含む、請求項60、61、62、66、および70のいずれか一項記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項75】
融合タンパク質である、請求項60記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項76】
ActRII受容体の改変されたGDF8結合ドメインがIgG Fcドメインに融合されている、請求項75記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項77】
IgG Fcドメインが1つまたは複数の変異を含む、請求項76記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項78】
Fcドメインが、野生型Fcドメインと比較してFcγ受容体に結合する能力が低い、請求項77記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項79】
Fcドメインが、野生型Fcドメインと比較してMHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する能力が高い、請求項77記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項80】
Fcドメインが、Asp-265、リジン322、およびAsn-434からなる群より選択される残基において変異を有する、請求項80記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項81】
変異が図12に示される、請求項77記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項82】
IgG FcドメインがSEQ ID NO:13に記載のアミノ酸配列を有する、請求項76記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項83】
Fcドメインに融合されたActRII受容体のGDF8結合ドメインを含むGDF8アンタゴニストであって、IgG Fcドメインが1つまたは複数の変異を含む、GDF8アンタゴニスト。
【請求項84】
Fcドメインが、野生型Fcドメインと比較してMHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する能力が高い、請求項83記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項85】
Fcドメインが、野生型Fcドメインと比較してMHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する能力が高い、請求項83記載のGDF8アンタゴニスト。
【請求項86】
可溶性ActRIIポリペプチドの有効量をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、GDF8の異常な活性に関連した疾患を治療する方法。
【請求項87】
疾患が、代謝性疾患、例えば、2型糖尿病、耐糖能障害、代謝症候群(例えば、シンドロームX)、および外傷(例えば、熱傷または窒素不均衡)によって誘導されるインスリン抵抗性など;脂肪組織疾患(例えば、肥満症);筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む);筋萎縮性側索硬化症(ALS);筋萎縮;器官萎縮;虚弱;手根管症候群;うっ血性閉塞性肺疾患;筋肉減少症、悪液質、およびその他の筋消耗症候群;骨粗鬆症;グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症;骨減少症;変形性関節症;骨粗鬆症関連骨折;慢性的なグルココルチコイド治療、早発性性腺機能不全、アンドロゲン抑制、ビタミンD欠乏症、二次性副甲状腺機能亢進症、栄養欠乏症、および拒食症に起因する低骨量からなる群より選択される、請求項86記載の方法。
【請求項88】
改変されたGDF8結合ドメインが、ActRIIAポリペプチド中、E38、E40、R41、K56、R57、Y61、K65、K75、W79、L80、D81、I83、およびF102からなる群より選択される残基において1つまたは複数の変異を含む、請求項60、61、62、66、および70のいずれか一項記載のGDF8アンタゴニスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−507288(P2008−507288A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522846(P2007−522846)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/026368
【国際公開番号】WO2006/012627
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(506297005)アクセルロン ファーマ インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】