説明

C−CAS制御可能なデジタル自主放送追加方法と追加システム

【課題】 CATV事業者が高価なC−CAS装置を導入困難なため、デジタル自主放送をC−CAS制御することができなかった。
【解決手段】 JC−HITS側又は共用ヘッドエンド側又は他の事業者からC−CAS制御用のEMM、ECMをCATV事業者に供給し、CATV事業者はそのEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送を、CATV事業者の専用スクランブラ(MULTI2)でC−CAS制御してCATV加入者側に送出するようにした。CATV事業者側に専用スクランブラを設け、専用スクランブラはJC−HITS側、又は共用ヘッドエンド側又は他の事業者から送られてきたC−CAS制御用のEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送をC−CAS制御してCATV加入者側に送出できるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はJC−HITSサービスや共用ヘッドエンド側から送信されてくるデジタル放送に、CATV事業者がC−CAS制御可能なデジタル自主放送を追加する方法とそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CATVシステムのデジタル放送には大別して2つの方式があり、一つは、図8のようにJC−HITS送出センター1から衛星2を介して送られる電波をCATV局(CATV事業者)3がパラボラアンテナ4で受信し、それをCATVシステムで加入者5に伝送する方法、他の一つは図9のようにCATVセンター(メインセンター)6のヘッドエンド側から送出される放送をCATVサブセンター(CATV事業者)3が受け、それをCATVシステムで加入者5に伝送する方法(共用ヘッドエンド環境下の伝送方法)がある。JC−HITSからの映像・音声信号(A・V信号)も、共用ヘッドエンド側からの映像・音声信号(A・V信号)も、C−CAS制御(Conditional Access system:番組の視聴を制御するシステム)されている。C−CAS制御は放送信号にECM(Entitlement Control Message:番組に関する情報とディ・スクランブルのための鍵などの番組情報及び制御情報当を備えた個別情報)によりスクランブルを掛け、EMM(Entitlement Management Control Message:視聴者ごとの契約情報及び共通情報の暗号を解くためのワーク鍵を含む個別情報)によりスクランブルを解除する鍵を暗号化して、視聴者が契約したチャンネル(CH)の放送しか受信できないようにする制御である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CATV事業者は、前記いずれの受信形態の場合も、受けた放送に、必要に応じてデジタル自主放送を追加して加入者に送り出している。この場合、JC−HITSシステムではC−CAS制御するためのC−CAS装置がJC−HITS送出センター(図8の1)にあり、共用ヘッドエンド環境下ではC−CAS装置が共用ヘッドエンド側(CATVセンター:図9の6)にあるため、CATV事業者がJC−HITS又は共用ヘッドエンド側からのデジタル放送に自主放送を追加する場合、自主放送をC−CAS制御するためにはCATV事業者が独自にC−CAS装置を導入しなければならい。しかし、C−CAS装置は数億円と高価であるため、CATV事業者は導入しにくい。そのため、デジタル自主放送をC−CAS制御することができず、日本ケーブルラボ運用仕様書内に記載される「簡易自主放送のJC−HITSトランスモジュレーションヘッドエンド構成」に従って、NON・C−CASでデジタル自主放送の追加が行われており、デジタル自主放送のC−CAS制御が実現されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加方法は、JC−HITS側又は共用ヘッドエンド側又は他の事業者からC−CAS制御用のEMM、ECMをCATV事業者に供給し、CATV事業者はそのEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送を、CATV事業者の専用スクランブラ(MULTI2)でC−CAS制御してCATV加入者側に送出するようにした。また、JC−HITS側又は共用ヘッドエンド側からC−CAS付きで又はC−CAS無しで送信されるTS(Transport Stream)に、C−CAS制御用のEMM、ECMを追加してCATV事業者に供給し、CATV事業者はそのEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送を、CATV事業者側の専用スクランブラでC−CAS制御するようにした。
【0005】
本発明のC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加システムは、CATV事業者側に専用スクランブラを設け、専用スクランブラはJC−HITS側、又は共用ヘッドエンド側又は他の事業者から送られてきたC−CAS制御用のEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送をC−CAS制御してCATV加入者側に送出できるものとした。また、CATV事業者側に、JC−HITS側又は共用ヘッドエンド側からC−CAS付で又はC−CAS無しで送信されるTSを加入者側に送り出すスルー系路と、デジタル自主放送を追加して加入者側に送り出す自主放送系路を設け、自主放送系路のMPEG2多重器とQAM変調器の間に専用スクランブラを設け、専用スクランブラは前記TSと共に送信されてきたC−CAS制御用のEMM、ECMを取り出し、それを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送にスクランブルを掛け、C−CAS制御してCATV加入者側に送出できるものとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明のC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加方法は次のような効果がある。
1.CATV事業者が独自の有料チャンネル、たとえば地方競馬、競輪等のチャンネルを編集してデジタル自主放送するときに、CATV事業者側にC−CAS装置がなくとも、JC−HITS、CATVセンター、他の事業者からC−CAS用のECM、EMMの供給を受けて、C−CAS制御できる独自の自主番組を追加することができる。
2.JC−HITS、CATVセンター、他の事業者から送出するECMの数を変えることにより、CATV事業者の自主番組のチャンネル数を増減できる。
【0007】
本発明のC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加システムは次のような効果がある。
1.自主放送するCATV事業者は、C−CAS装置がなくとも、C−CAS制御専用スクランブラを用意すれば、JC−HITS、CATVセンターから送られてくるC−CAS用のECM、EMMを利用してC−CAS制御可能な独自の自主番組を放送することができる。このため高価なC−CAS装置を導入する必要がない。共用ヘットエンド又は他の事業者からECM及びEMMだけ供給を受ける場合も同様である。
2.C−CAS装置が不要であるため、その分、CATV事業者の自主放送システムの構成が簡潔になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(既存のC−CAS制御システムの説明)
本発明のC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加方法の説明に先立って、JC−HITS又は共用ヘッドエンド視聴システムのC−CAS制御システムを図1に基づいて説明する。C−CAS制御システムではスクランブル鍵(Ksキー:スクランブルをかけるキー)、ワーク鍵(Kwキー:暗号化するキー)、マスター鍵(Kmキー:ワークキーと契約情報を暗号化するキー)が使用される。
【0009】
JC−HITS又は共用ヘッドエンドの送出側からはスクランブル鍵を含むECMを送出し、同時にEMMも伝送する。具体的には、図1のノン・スクランブルの映像、音声のES(Elementary Stream:映像、音声等のコンテンツ)に、送信側において、スクランブル鍵によりMULTI2スクランブを掛けて伝送される。スクランブル鍵はワーク鍵により暗号化されてECMとなり多重化される。多重化後の映像、音声スクランブル信号はQPSK変調(Quadra Phase Shift Keying:4相位相変調方式)されて出力され、ワーク鍵は契約情報と共にマスター鍵により暗号化されてEMMとなり、多重化されて出力される。EMMはスクランブラ内部に実装するC−CASカードと、加入者が使用するSTBに実装されるC−CASカードに対するものを含む必要がある。
【0010】
図1のC−CAS(Set Top Box:ケーブルテレビで伝送するRF信号の中からデジタル放送サービスの受信チャンネルの選局・復調・希望番組の選択・デコード等を行ってベースバンド信号を出力する機能を持つ受信装置)を備えた受信側では、伝送されてきた信号から、ECM、EMMを取り出し、ICカードに設定する。ICカード内のマスター鍵とEMMによりワーク鍵が生成され、ECMとワーク鍵によりスクランブル鍵、即ち、ディ・スクランブル鍵が生成される。ICカードから取得したディ・スクランブル鍵をMULTI2ディ・スクランブラーに設定することで、ディ・スクランブルされ、ディ・スクランブルされたノンスクランブルESをデコーダに入力して受像が可能となる。
【0011】
(本発明のC−CAS付きデジタル自主放送追加方法の実施例)
本発明のC−CAS付きデジタル自主放送追加方法の実施例を、送出側がJC−HITSの場合を例として説明する。JC−HITSのヘッドエンドは図2に示す構成になっており、基本的には、JC−HITSのTS(Transport Stream:MPEG2システム規格で規定されたトランスポートストリームであって、PAT、PMT、CAT等を必ず含み、複数のサービス(番組)をその中に多重して伝送できる)に、CATV事業者が使用する自主放送チャンネルのためのECM、EMMを追加して伝送できるようになっている。図2ではEMMの送り出しは図示してないが、EMMの送り出しは図1の場合と同様に通常の運用になり、C−CAS制御も他のチャンネルと同様の運用となる。
【0012】
図2のJC−HITSのヘッドエンドから自主放送C−CAS制御用のECMを伝送する場合、ECMのPID(Packet Identification:パケット識別:TSパケットの先頭に付され、当該TSパケットで伝送される情報の属性を示すためのラベルの役割を果たす。)がTS内ユニークでなければ、PID変換を行なってECMだけを送出する。ECMだけを送出できない場合は、映像音声のESを含めたTSとして伝送することもできる。図2では、JC−HITSのTSにECMだけを多重する場合を示しているが、自主放送用の別のTSを作り、その中でECM、EMMまたは、映像音声を含めたECM、EMMを伝送することもできる。
【0013】
前記のようにしてJC−HITSのヘッドエンドから伝送されたECM、EMMを含むJC−HITS・IF信号は、CATV事業者のヘッドエンドで受信される。CATV事業者のヘッドエンドは図3、図4に示す構成になっている。図3はJC−HITSからのデジタル放送に自主放送を追加する場合、図4は共用ヘッドエンドから配信されるデジタル放送に自主放送を追加する場合のヘッドエンドである。図3のJC−HITS用のヘッドエンドは、入力部分配器の後の受信部がJC−HITSトランスモジュレーターであるが、図4の共用ヘッドエンド環境のヘッドエンドは、その受信部を64QAM受信部としてある。この場合は、QAM/QAM変換器またはQAM復調器とQAM変調器を使用する。
【0014】
図3、図4のヘッドエンドは、受信したC−CAS制御付の信号を必要数に分配する入力分配器を備え、そこで分配された信号の一方を加入者側に送り出すスルー系路10と、分配された信号の他方に自主放送を追加する自主放送系路11を備え、分配された信号中のECM、EMMを自主放送系路11において取り出し、MPEG2多重器とQAM変調器の間に設けた専用スクランブラ(MULTI2)において、自主放送の信号に前記ECM、EMMを使用してスクランブルを掛け、自主放送をC−CAS制御可能とし、両系路10、11からの信号が出力混合器で混合されて、64QAM信号として加入者側に送り出されるようにしてある。
【0015】
図5は図3の専用スクランブラを詳細に図示したCATV事業者ヘッドエンド、図6は図5の専用スクランブラの構成図である。図5のJC−HITS受信部で受信された自主放送のためのECMを含むJC−HITS・IF信号はQPSKで復調され、それをPID変換/スルーからそのままスルーさせるか、ECMがPID変換されている場合はPIDを共有情報で指定されるPIDに変換してECM、EMMを選択する。EMMはSI/EPGデータ、CATと共に多重化する。追加する自主放送の映像・音声はMPEG2エンコーダによりTSに変換され、SI/EPGデータ、CATと多重化されて、その他、PSI信号と共に出力され、専用スクランブラに入力される。
【0016】
図5、図6の専用スクランブラでは、入力された信号からECM、EMMを抜き取り、内部に実装されるC−CASカードに送る。ECMに含まれる鍵は、本来は、スクランブルの掛かった信号をディ・スクランブルするための鍵であるが、スクランブラの鍵としても使用できる。C−CASカードからスクランブルのための鍵を取得し、その鍵をMULTI2スクランブラに設定することによりノンスクランブル信号にスクランブルを掛けることができる。スクランブルの掛かったTSはQAM変調器に入力され、自主放送のサービスを含むTS9(JC−HITSの場合)としてCATVシステムに出力される。
【0017】
前記、QAM変調された出力信号は、加入者に設置されたSTBで受信される。STBは受信したEMM、ECMを、STBが内蔵するC−CASカードに設定することによりディ・スクランブル鍵を取得できる。ICカードに収納されているマスター鍵と、EMMによりワーク鍵が生成され、このワーク鍵とECMによりスクランブル鍵、すなわち、ディ・スクランブル鍵が生成され、ICカードから取得したディ・スクランブル鍵をMULTI2ディ・スクランブラーに設定することでディ・スクランブルすることができる。ディ・スクランブルされたノン・スクランブルESをデコーダに入力して受像が可能となる。この場合、当然のことではあるが、STBに対する鍵開け設定されたEMMが伝送されている場合のみディ・スクランブルできる。鍵開け制御を行うC−CAS装置はJC−HITS側、共用ヘッドエンド側に実装され、そこから送られるECMとEMMによりC−CAS制御される。CATV事業者側に設置される専用スクランブラは、C−CAS装置から送られるECMに含まれる鍵によりスクランブルを行なうだけである。
【0018】
上記説明は、JC−HITS・IF信号を送信し、受信する場合であるが、共用ヘッドエンドからの配信信号を送信し、受信する場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】C−CASシステムの基本構成図。
【図2】JC−HITSヘッドエンドの構成図。
【図3】JC−HITSからの放送にC−CAS制御の自主放送を追加する場合の構成図。
【図4】共用ヘッドエンドからの配信信号にC−CAS制御の自主放送を追加する場合の構成図。
【図5】CATV事業者ヘッドエンド。
【図6】本発明における専用スクランブラの構成図。
【図7】本発明における加入者側のSTBの一部の構成図。
【図8】JC−HITSによるデジタル放送システム概要図。
【図9】共用ヘッドエンドからの配信信号にCAS制御の自主放送を追加する場合の構成図。
【符号の説明】
【0020】
1 JC−HITS送出センター
2 衛星
3 CATV事業者
4 パラボラアンテナ
5 加入者
6 CATVセンター(メインセンター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JC−HITS側又は共用ヘッドエンド側又は他の事業者からC−CAS制御用のEMM、ECMをCATV事業者に供給し、CATV事業者はそのEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送を、CATV事業者の専用スクランブラ(MULTI2)でC−CAS制御してCATV加入者側に送出することを特徴とするC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加方法。
【請求項2】
JC−HITS側又は共用ヘッドエンド側からC−CAS付きで又はC−CAS無しで送信されるTS(Transport Stream)に、C−CAS制御用のEMM、ECMを追加してCATV事業者に供給し、CATV事業者はそのEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送を、CATV事業者側の専用スクランブラでC−CAS制御することを特徴とするC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加方法。
【請求項3】
CATV事業者側に専用スクランブラを設け、専用スクランブラはJC−HITS側、又は共用ヘッドエンド側又は他の事業者から送られてきたC−CAS制御用のEMM、ECMを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送をC−CAS制御してCATV加入者側に送出できることを特徴とするC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加システム。
【請求項4】
CATV事業者側に、JC−HITS側又は共用ヘッドエンド側からC−CAS付で又はC−CAS無しで送信されるTSを加入者側に送り出すスルー系路と、デジタル自主放送を追加して加入者側に送り出す自主放送系路を設け、自主放送系路のMPEG2多重器とQAM変調器の間に専用スクランブラを設け、専用スクランブラは前記TSと共に送信されてきたC−CAS制御用のEMM、ECMを取り出し、それを使用して、CATV事業者が追加するデジタル自主放送にスクランブルを掛け、C−CAS制御してCATV加入者側に送出できることを特徴とするC−CAS制御可能なデジタル自主放送追加システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−13949(P2006−13949A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188694(P2004−188694)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000114226)ミハル通信株式会社 (38)
【Fターム(参考)】