説明

C型肝炎ウイルス非構造タンパク質4A(NS4A)はエンハンサーエレメントである

本発明は、会合した遺伝子の発現を調節するエンハンサーの発見に関する。特に、C型肝炎ウイルス(HCV)からの非構造タンパク質4A(NS4A)は会合した核酸の発現および免疫原性を変調する、ということが見出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、付随した遺伝子の発現を調節するエンハンサーの発見に関する。特に、C型肝炎ウイルス(HCV)からの非構造タンパク質4A(NS4A)は付随した核酸の発現および免疫原性を変調する、ということが見出された。
【0002】
[発明の背景]
エンハンサーは、プロモーターに隣接する遺伝子の転写のレベルを増大させるシス作用エレメントである。しばしば転写の増強は、エンハンサーエレメントの位置および向きと比較的無関係である(Khoury and Gruss, Cell 33: 313 (1983)参照)。エンハンサーエレメントは、多数のウイルス、例えばポリオーマウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、例えばシミアンウイルス40(SV40)およびBKにおいて、ならびに多数の非ウイルス遺伝子で、例えばマウス免疫グロブリン遺伝子イントロン内で同定されている(例えば米国特許第RE37,806号参照)。哺乳動物細胞中で作用するエンハンサーは、バイオテクオロジー、免疫学および医学において特に有用であり、より多くのエンハンサーの必要性が明らかである。
【0003】
[発明の概要]
C型肝炎ウイルス(HCV)非構造タンパク質4A(NS4A)は、付随した核酸の転写および免疫原性を増強する、ということが発見された。最初の実験セットでは、HCV−1 NS3/4A遺伝子が哺乳動物細胞中にトランスフェクトされる場合、真核生物発現ベクターに関して、NS3の発現レベルは、HCV−1 NS3遺伝子および発現ベクターが単独(すなわちNS4Aなし)でトランスフェクトされる場合より高い、ということが観察された。さらにNS3/4A遺伝子で免疫されたマウスは、NS3遺伝子単独で免疫されたマウスと比較して、10〜100倍高いレベルのNS3−特異的抗体を初回抗原刺激されている(primed)ことが見出された。NS3/4A遺伝子により初回抗原刺激された体液応答は、NS3遺伝子(3.0)と比較して、より高いIgG2a/IgG1比(>2.0)を示したが、これは、Tヘルパー1−傾斜に偏った応答の証拠を提供する。
【0004】
別の実験セットでは、NS3/NS4A発現SP2/0ミエローマ細胞を保持するマウスが低用量のNS3/4A遺伝子(10μg)で筋注免疫された場合、NS3/4A発現腫瘍細胞の増殖は抑制されたが、一方、NS3遺伝子単独またはNS3タンパク質を用いたマウスの低用量免疫はNS3/4A発現腫瘍細胞の増殖の抑制をもたらさなかった。さらに、遺伝子銃が用いられる場合、2%〜4%の前駆体頻度で細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を効率的に初回抗原刺激するために、そしてNS3/NS4A発現SP2/0ミエローマ細胞を保有するマウスにおけるNS3/4A発現腫瘍細胞の増殖を抑制するために必要とされるのは、3回の4μg用量のNS3/4A遺伝子だけである、ということが確定された。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態は、NS4Aに付随した核酸の転写のレベルを増強するためのアプローチを包含する。例えばいくつかの方法では、細胞中の核酸の発現は、C型肝炎ウイルス(HCV)非構造タンパク質4A(NS4A)またはその機能的部分をコードする第1の核酸を準備し、発現増強に関する第2の核酸を同定し、そして上記細胞中の上記第2の核酸を上記第1の核酸に付随させ、それによりこのような付随が上記第2の核酸
の発現増強を生じることにより増大または増強される。いくつかの用途において、第2の核酸はHCV非構造タンパク質3(NS3)である。第1および第2の核酸は、同一構築物上で、別個の構築物上で、シス、並置、で連結され得るし、あるいはトランスで連結され得る。さらにいくつかの用途では、第1の核酸は、配列番号2の10〜20、20〜30、30〜40または50〜54連続アミノ酸から成る。
【0006】
本発明のさらなる実施形態は、NS4Aに付随した核酸の免疫原性を増強するためのアプローチに関する。例えばいくつかの方法では、核酸の免疫原性は、C型肝炎ウイルス(HCV)非構造タンパク質4A(NS4A)またはその機能的部分をコードする第1の核酸を準備し、免疫原性増強に関する第2の核酸を同定し、そして上記細胞中の上記第2の核酸を上記第1の核酸に付随させ、それによりこのような付随が上記第2の核酸の免疫原性増強を生じることにより増大または増強される。いくつかの用途において、第2の核酸はHCV非構造タンパク質3(NS3)である。第1および第2の核酸は、同一構築物上で、別個の構築物上で、シス、並置、で連結され得るし、あるいはトランスで連結され得る。さらにいくつかの用途では、第1の核酸は、配列番号2の10〜20、20〜30、30〜40または50〜54連続アミノ酸から成る。
【0007】
[発明の詳細な説明]
C型肝炎ウイルス(HCV)のNS4A遺伝子は、付随した遺伝子または核酸の転写および免疫原性を増大させるエンハンサーである、ということが発見された。本明細書中に提示されたデータは、HCV−1 NS3/4A遺伝子が哺乳動物細胞中にトランスフェクトされる場合、真核生物発現ベクターに関して、NS3の発現レベルは、HCV−1 NS3遺伝子および発現ベクターが単独(すなわちNS4Aなし)でトランスフェクトされた場合より高かった、ということを実証する。NS3/4A遺伝子で免疫されたマウスは、NS3遺伝子単独で免疫されたマウスと比較して、10〜100倍高いレベルのNS3−特異的抗体を初回抗原刺激されていたことが見出された。NS3特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、筋肉内にまたは経皮的に投与されたNS3/4A−pVAX1プラスミドにより有効に初回抗原刺激された。さらに、4μgプラスミド/用量を用いた4回の遺伝子銃免疫は、強力な免疫応答を引き出したが、この場合、総脾臓CD8+集団の約4%がNS3/4A特異的T細胞であった。これらの応答はin vivoで活性であり、NS3/4A発現腫瘍細胞の増殖を抑制するのに十分であった。ヒト臨床試験に用いられる免疫原用量と同等の用量で経皮的に投与された場合、NS3/4A−pVAX1免疫原はNS3特異的CTLを初回抗原刺激するのに非常に有効であることが判明した。
【0008】
本明細書中に記載された実施形態は、付随した核酸(例えばNS3をコードする遺伝子)の転写または免疫原性を増大させるためのNS4Aエンハンサーを含む遺伝子構築物の使用に関する。NS4Aエンハンサーを含む発現構築物は、例えば、マーカー遺伝子(例えばグリーン蛍光タンパク質または「GFP」またはlacZ)、免疫原(例えば肝炎またはHIV抗原)をコードする核酸、または治療用核酸(例えばアンチセンス構築物)の発現を増強するために用いられ得る。NS4Aエンハンサーを含む発現構築物はまた、付随した遺伝子または遺伝子産物に対する免疫応答を生成するために用いられるワクチンおよび組成物中の活性成分であるよう処方され得る。好ましい実施形態は、遺伝子銃送達のために処方される組成物を用いるが、これは、約0.1〜20μgの間の任意量のNS4Aエンハンサーまたはその機能的部分を含む発現構築物および会合した遺伝子(例えば0.1μg、0.5μg、1μg、3μg、5μg、7μg、10μg、13μg、15μg、17μgまたは20μg)を含む。
【0009】
本明細書中に記載された方法は、NS4Aエンハンサーに連結される対象遺伝子の発現を増大させるのに十分な量のNS4Aエンハンサーを含む組成物を、細胞、好ましくは哺乳動物(例えばヒト、ネコ、イヌ、ウマおよびヒツジ)または植物中に存在する細胞に導
入することにより実行され得る。以下の節で提示される例は、エンハンサー活性(例えば付随した遺伝子の転写の上方調節ならびに上記付随した遺伝子および/または遺伝子産物に対する免疫原性増大)が、細胞培養(in vitro)および哺乳動物中(in vivo)の両方において生じる、ということを実証する。
【0010】
以下の節は、NS4AエンハンサーおよびNS4Aエンハンサーを含有する構築物を記載する。
【0011】
NS4Aエンハンサー
C型肝炎ウイルス(HCV)は、フラビウイルス科の一本鎖RNAウイルスに属する(Virology, Fields ed., third edition, Lippencott-Raven publishers, pp 945-51 (1996))。HCVゲノムは約9.6kb長であり、少なくとも10のポリペプチドをコードする(Kato, Microb. Comp. Genomics, 5: 129-151 (2000))。ゲノムRNAはある単一ポリタンパク質に翻訳され、これはその後、ウイルスおよび細胞プロテアーゼにより切断されて、機能性ポリペプチドを産生する(同上)。ポリタンパク質は、3つの構造タンパク質(コアタンパク質、E1およびE2)に、未知の機能を有するp7に、そして6つの非構造(NS)タンパク質(NS2、NS3、NS4A/B、NS5A/B)に切断される(同上)。NS3は、ウイルス成熟に必要とされるタンパク質分解事象のいくつかに関与するセリンプロテアーゼをコードし(Kwong et al., Antiviral Res., 41: 67-84 (1999))、そしてNS4AはNS3プロテアーゼに関するコファクターとして作用する(同上)。NS3はさらにNTPアーゼ活性を示し、in vitroでRNAヘリカーゼ活性を保有する(Kwong et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 242: 171-96 (2000))。
【0012】
免疫原としてNS3/4Aを用いることの重要性が認識されている(例えば米国特許出願第09/929,955号および米国特許出願第09/930,591号参照)。さらに、完全NS3/4Aプロテアーゼを含有する遺伝子免疫原に対する体液性応答は、かなり強力である(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001))。この理由はその時点で明らかでなかったが、しかしコファクターNS4Aの存在がNS3の細胞内安定性を増大させるということを、いくつかは推測した(Wolk et al., J Virol, 74: 2293-2304 (2000)およびTanji et al., J Virol, 69: 1575-1581 (1995))。安定性仮説の増大は、NS4Aのアミノ末端が細胞内膜に対してNS3/4A複合体を標的にする、という事実により支持された(Tanji et al., J Virol, 69: 1575-1581 (1995))。さらに、HCV NS3のプロテアーゼおよびヘリカーゼ活性はともに、NS4Aの存在を必要とする(Bartenschlager et al., J Virol, 67: 3835-3844 (1993); Bartenschlager et al.,
J Virol, 69: 7519-7528 (1995); Failla et al., J Virol, 68: 3753-3760 (1994); Pang et al., Embo J, 21: 1168-1176 (2002))。しかしながら本発明の開示まで、NS4A遺伝子およびその部分が会合した遺伝子の発現および免疫原性を増強する、ということは分かっていなかった。
【0013】
「NS4Aエンハンサー」という用語は、会合した核酸の転写および/または前記付随した核酸の免疫原性を増強する任意のHCV単離物(好ましくはHCV−1b)からの任意のNS4A遺伝子を指す。いくつかの情況では、「NS4Aエンハンサー」という用語は、付随した遺伝子の転写および/または前記付随した遺伝子の免疫原性を増大させる能力を保持するHCV単離物(好ましくはHCV−1)のNS4A遺伝子の一部を指す。すなわち「NS4Aエンハンサー」は、付随した遺伝子の転写および/または前記付随した遺伝子の免疫原性を増大させる能力を当該分子が保持する限り、NS4Aの約3〜54の任意量の連続アミノ酸(例えば寄託番号CAB46677により、そしてLohmann et al., Science 285: 110-113 (1999)により開示されるようなSTWVLVGGVL AALAAYCLTT GSVVIVGRII LSGKPAIIPD REVLYREFDE
MEEC(配列番号2))をコードする核酸から成るか、該核酸から本質的に成るか、
または該核酸を含み得る。すなわちNS4Aエンハンサーは、NS4A(配列番号2)の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53または54連続アミノ酸をコードする核酸から成るか、該核酸から本質的に成るか、または該核酸を含み得る。
【0014】
さらに「NS4Aエンハンサー」は、会合した遺伝子の転写および/または上記会合した遺伝子の免疫原性を増大させる能力を当該分子が保持する限り、NS4A遺伝子の約9〜162の任意量の連続ヌクレオチド(例えば寄託番号AJ238799により、そしてLohmann et al., Science 285: 110-113 (1999)により開示されるようなAGCACCTGGG TGCTGGTAGG CGGAGTCCTA GCAGCTCTGG CCGCGTATTG CCTGACAACA GGCAGCGTGG TCATTGTGGG
CAGGATCATC TTGTCCGGAA AGCCGGCCAT CATTCCCGAC AGGGAAGTCC TTTACCGGGA GTTCGATGAG ATGGAAGAGT GC(配列番号3))である核酸から成るか、該核酸から本質的に成るか、または該核酸を含み得る。すなわちNS4Aエンハンサーは、NS4A遺伝子(例えば配列番号3)の少なくとも9、15、21、24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、114、117、120、123、126、129、132、135、138、141、144、147、150、153、156、159または162連続ヌクレオチドである核酸から成るか、該核酸から本質的に成るか、または該核酸を含み得る。
【0015】
本明細書中に記載されたNS4Aエンハンサーは、増強したい任意の所望の対象核酸(例えばNS3)がNS4Aエンハンサーに付随され得るように設計される遺伝子構築物、例えば発現構築物中に組入れられ得る。このような会合は、「シス」状態にあり、これは同一プラスミド上に存在し、あるいは「トランス」状態で、これは別個のプラスミド上に存在する。好ましくはNS4Aおよび増強されるべき核酸は、並置される。望ましくはこのような構築物は、対象核酸をカセット様方式で容易に挿入させ、NS4Aエンハンサーに連結させるNS4Aエンハンサーのまたはその付近の都合の良い制限部位(例えば多重クローニング部位)を有する。
【0016】
以下の実施例は、NS4Aエンハンサーを同定し、特徴付けるために用いられたいくつかの構築物の製造を記載する。
【実施例1】
【0017】
NS3およびNS3/4A遺伝子を含有する構築物を、以下のように作製した。全長NS3およびNS3/NS4A遺伝子断片を、前に記載されたように(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001))、HCV遺伝子型1bに感染した患者から増幅した。NS3およびNS3/4A遺伝子を真核生物発現ベクターpVAX1(Invitrogen, San Diego, CA)に挿入した。NS3の増幅のために、順方向プライマー5’−GTG GAA TTC ATG GCG CCT ATC ACG GCC TAT−3’(配列番号4)および逆方向プライマー5’−CCA CGC GGC CGC GAC GAC CTA CAG−3’(配列番号5)を用いて、Eco RIおよびNot I制限部位を導入した。工学処理された翻訳開始および停止コドンに下線を付す。NS3/NS4Aの増幅のために、順方向プライマー5’−GTG GAA TTC ATG GCG
CCT ATC ACG GCC TAT−3’(配列番号4)および逆方向プライマー5’−CCC TCT AGA TCA GCA CTC TTC CAT TTC ATC−3’(配列番号6)を用いて、EcoRIおよびXbaI制限部位を導入した。
これもまた、工学処理翻訳開始および停止コドンに下線を付す。発現構築物をシーケンスして、正しい配列およびリーディングフレームを保証し、そして構築物のサイズをPCRおよび制限酵素切断により分析した。
【0018】
突然変異NS3/4A(mNS3/4A)遺伝子を含有する発現構築物も作製した。例えば一突然変異体構築物では、NS4A上のアミノ末端セリン残基をプロリンに突然変異させた。この突然変異を、順方向プライマー(5’−CTG GAG GTC GTC ACG CCT ACC TGG GTG CTC GTT−3’(配列番号7))および逆方向プライマー(5’−AAC GAG CAC CCA GGT AGG CGT
GAC GAC CTC CAG−3’(配列番号8))を用いて、部位特異的in vitro突然変異誘発(QuikChange, 部位特異的突然変異誘発キット、Stratagene; La
Jolla, CA)により、構築物中に導入した。その結果生じた構築物は、mNS3/4A−pVAX1ベクターであった。突然変異体構築物をシーケンスして、所望の突然変異配列を制御し、正しいリーディングフレームを保証した。
【0019】
NS3、NS4Aエンハンサーおよび突然変異体NS3/4Aを含有する構築物を、前に記載されたように(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001)およびZhang
et al., Clin Diagn Lab Immunol, 7: 58-63 (2000))、50μgカナマイシン/mlを補足したルリア−ベルターニ(LB)培地を含有するLA/Kanaプレート上で培養した大腸菌から増殖させ、精製した。精製プラスミドDNAを滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、1mg/mlの濃度とした。
【0020】
挿入遺伝子が無傷であり、そして翻訳され得る、ということを保証するために、原核生物T7結合網状赤血球溶解物系を用いたin vitro転写検定(TNT;Promega, Madison, WI)を、前に記載されたように(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308
(2001)およびZhang et al., Clin Diagn Lab Immunol, 7: 58-63 (2000))、35S−メチオニンの存在下で実施した。プラスミドNS3−pVAX1、NS3/4A−pVAX1およびmNS3/4A−pVAX1からの翻訳産物を生成し、SDS−PAGEにより分析した。この検定は、野生型におよび変異タンパク質がプラスミドから正確に翻訳されることができることを示した(図1参照)。
【0021】
2つのバンド(約70〜78kD)はNS3/4Aプラスミドのin vitro翻訳後に眼に見えるようになる、ということが前に観察されたが、このことは、NS3プロテアーゼにより媒介されるNS3およびNS4A間の切断がin vitro翻訳検定では完全でないかもしれない、ということを示す(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001)およびZhang et al., Clin Diagn Lab Immunol, 7: 58-63 (2000)参照)。NS3/4Aタンパク質分解部位のプロリンでP1’セリンを置換する標的化突然変異を導入することにより(Ingallinella et al., Biochemistry, 37: 8906-8914 (1998)およびSteinkuhler et al., J Virol, 70: 6694-6700 (1996)参照)、予測NS3/4A融合タンパク質を表すバンドのみが依然として可視的であった(図1)。Thr−Pro−Thrモチーフで連結Thr−Ser−Thrモチーフを置換することにより、NS3/4A融合タンパク質のみが突然変異体プラスミドからの翻訳産物として検出され得るため、タンパク質分解部位が首尾よく破壊された。したがって、NS3−pVAX1、NS3/4A−pVAX1およびmNS3/4A−pVAX1構築物は予測全長遺伝子を発現し、そしてNS3のプロテアーゼ活性は無傷のままであった、ということが確定された。
【0022】
仔ハムスター腎(BHK)−21細胞を用いて、セムリキ森林ウイルス(SFV)ベクターベースの発現系で、NS3、NS3/4AおよびmNS3/4A遺伝子をさらにまた分析した。NS3、NS3/4AおよびmNS3/4Aをコードする配列をPCRによりSpe1−BStB1断片として単離し、キャプシドの34アミノ酸長翻訳エンハンサー
配列およびその後にFMDV2a切断ペプチドを含有するpSFV10EnhのSpe1−BstB1部位に挿入した(Smerdou et al., Curr Opin Mol Ther, 1: 244-251 (1999)およびSmerdou et al., J Virol, 73: 1092-1098 (1999)参照)。
【0023】
2−ヘルパーRNA系を用いて、rSFV粒子中への組換えRNAのパッケージングを成し遂げた(Smerdou et al., Curr Opin Mol Ther, 1: 244-251 (1999)およびSmerdou et al., J Virol, 73: 1092-1098 (1999))。要するに、BHK細胞(5%FCS、10%トリプトース・ホスフェイト・ブロス、2mMのグルタミン、20mMのHepesおよび抗生物質(ストレプトマイシン10μg/mlおよびペニシリン100 IU/ml)を加えた完全BHK培地で維持した)を、組換えRNAおよび2つのヘルパーRNA(一方はSFVキャプシドタンパク質をコードし、他方はエンベロープタンパク質をコードする)とともに同時トランスフェクトした。48時間のインキュベーション後、組換えウィルスストックを含む培地を回収して精製した(Fleeton et al., J Gen Virol, 81: 749-758 (2000)参照)。
【0024】
次に[35S]メチオニンで代謝的標識することにより、rSFV感染細胞の発現レベルを分析した(Smerdou et al., Curr Opin Mol Ther, 1: 244-251 (1999)およびSmerdou
et al., J Virol, 73: 1092-1098 (1999)参照)。簡潔には、BHK細胞を5のMOIでrSFV粒子に感染させて、15時間後、増殖培地をメチオニンを含まないMEMに取り換えて、30分後に、75μCi/mlの[35S]メチオニンを含有する新鮮な培地を付加した。15分間標識後、非標識メチオニンを含有する培地中でさらに種々の時間細胞をインキュベートした。次に上清を収集し、100mMのヨードアセトアミドを含有するNonidetP−40緩衝液で細胞を溶解した。細胞溶解物を、プロテインAセファロースおよび抗NS3モノクローナル抗体(G. Inschauspe (Lyon, France)にご提供頂いた)とともに4℃で一晩免疫沈降させた。洗浄ペレットをSDS試料緩衝液中に再懸濁し、95℃で5分間加熱後、10%アクリルアミド還元ゲル上でSDS−PAGE分析を実施した。3つの遺伝子を発現するSFVベクターによるBHK細胞の非増殖性感染は、インタクトのタンパク質分解部位を有するNS3/4A遺伝子は付随した遺伝子NS3の最高発現をもたらす、ということを明示した(図2参照)。データは、NS4Aの存在が付随した遺伝子NS3の発現を増強する、ということを実証した。
【0025】
次に、感染BHK細胞の間接的免疫蛍光検査を実施した(Smerdou et al., Curr Opin Mol Ther, 1: 244-251 (1999)およびSmerdou et al., J Virol, 73: 1092-1098 (1999))。すなわち、BHK細胞を、5のMOIでrSFV−NS3、NS3/4aまたはmNS3/4Aに感染させた。16、18または24時間増殖後、細胞をメタノール中に固定し、細胞を抗NS3モノクローナル抗体と、その後、抗マウスIgG FITC(Sigma)とともにインキュベートすることにより、タンパク質発現を検出した。rSFV−NS3およびrNS3/4A感染BHK細胞の免疫蛍光染色は、NS3の異なる細胞内分布を明示した(図2参照)。rSFV−NS3を用いた感染により発現されるNS3タンパク質は、感染24時間後のrNS3/4Aと比較した場合に、より拡散した染色のパターンを表示したが、これは、NS4Aにより付与された膜ターゲッティングの証拠を提示する。
【0026】
次の節は、遺伝子構築物中のNS4Aエンハンサーに付随し得るいくつかの遺伝子を記載する。
【0027】
NS4Aエンハンサーに付随し得る核酸
NS4Aエンハンサーは、多数の異なる付随した核酸の転写および免疫原性のレベルを改良し得る。NS4Aエンハンサーは、例えばマーカー遺伝子の転写のレベルを改良し得る。GFP、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、lac Zまたはクロラムフェニコールトランスフェラーゼをコードする遺伝子はとりわけ、市販の構築
物および/または分子生物学における慣用的技法を用いて、NS4Aエンハンサーと容易に付随され得る。NS4Aエンハンサーは、同様に免疫原をコードする核酸の転写および免疫原性のレベルを改良し得る。例えばB型肝炎ウイルス(HBV)コアおよびeタンパク質またはHIV gp120上に存在する配列に対応するペプチドからなるか、本質的に成るかまたは含むペプチドのような肝炎またはHIV抗原をコードする核酸は、NS4Aエンハンサーと容易に会合され得る(例えば米国特許第6,417,324号;第5,589,175号;および第5,840,313号参照)。NS4Aエンハンサーは、治療用遺伝子または核酸断片の転写のレベルも改良し得る。インターフェロンをコードする遺伝子または干渉する核酸(例えばアンチセンスまたはRNAiを起こす核酸)あるいは酵素をコードする遺伝子は、NS4Aに連結され得る(例えば米国特許第4,855,238号;第5,574,137号;第5,595,888号;第5,690,925号;第6,326,193号;あるいは米国特許出願第20020137210号および第20020086356号;あるいはPCT出願WO0244321;WO0175164;WO0142443;WO0129058;WO02072762;およびWO0168836参照)。
【0028】
次の実施例は、NS4A/GFP構築物の構築を記載する。
【実施例2】
【0029】
NS4A/GFP構築物を以下のように作製し、特徴付けることができる。GFPベクター(例えばpDS1−1、pDS1−N1またはpDS1−C1)は、商業的供給元(Clonetech)から入手する。これらの発現ベクターは、エンハンサーおよび/またはプロモーターの効率を評価するよう設計され、そしてNS4Aおよびその他の要素の導入を促す都合の良い多数のクローニング部位を有する。例えば内因性プロモーターを有するベクターもあるし、プロモーターを挿入させるベクターもある。ベクター中のGFP配列に近位のクローニングを促すプライマーを用いて、上記のようにPCRにより、NS4A配列を生成し得る。任意に,pVAX−1中に存在するプロモーターをGFP/NS4A構築物中にサブクローニングする。好ましくは、GFPの発現に及ぼすNS4Aの影響を直接評価するために、NS4Aを欠く対照ベクターを作製する。シーケンスにより正確なクローンが立証されれば、適切な細胞株からの細胞をNS4A/GFP構築物でトランスフェクトするか、あるいは対照構築物を用いてトランスフェクトする。次にNS4A/GFP構築物含有細胞および対照構築物含有細胞中でのGFPの発現を、メーカー推奨プロトコルに従って、慣用的な分析法(例えば顕微鏡またはFACS)を用いて比較する。NS4A/GFP含有細胞は、対照構築物を含有する細胞と比較した場合、GFPの発現増強を示す。
【0030】
以下の節は、NS4Aエンハンサーを用いて会合した遺伝子に対する免疫応答を促すかまたは改良したいくつかの方法を記載する。
【0031】
NS4Aは付随した核酸の免疫原性を改良する
会合した核酸の転写のレベルを増強するほかに、NS4Aは付随した核酸の免疫原性を改良する、ということを発見した。したがって本明細書中に記載されたいくつかの実施形態は、NS4Aおよび免疫原である付随した核酸を含有する構築物の製造および使用に関する。ワクチン製剤中の免疫原または活性成分としての核酸の使用は、十分に確立されている(例えば米国特許第5589466号および第6214804号参照)。好ましい実施形態は、ウイルス核酸ベースの免疫原、例えば肝炎免疫原(例えばHBVコアおよびe免疫原およびHCV免疫原)ならびにHIV免疫原(例えばgp120免疫原)と付随されるNS4A含有構築物の使用に関する。この目的のためにNS4Aに付随され得る核酸としては、例えば米国特許第6,417,324号;第5,589,175号;および第5,840,313号に記載されたペプチドをコードする核酸が挙げられる。次の実施例
は、会合NS3遺伝子も含有するNS4A含有構築物を用いて実行された実験を記載する。これらの実験の結果は、NS4Aが付随した免疫原に対する免疫応答を促すかまたは改良するという証拠を提供した。
【実施例3】
【0032】
異なるNS3遺伝子の免疫原性を試験するために、BALB/c(H−2)マウスを組換え(r)NS3、ならびにNS3、NS3/4AおよびmNS3/4A遺伝子で免疫し、抗体力価を評価した。BALB/cマウスを用いたのは、それらがNS3に対して良好な反応を示すが、しかし遺伝子型1のNS4Aに対しては低/非反応であることが示されていたためであった(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001); Sallberg et al., J Gen Virol, 77: 2721-2728 (1996)およびZhang et al., J Gen Virol, 78: 2735-2746 (1997))。したがって免疫応答における任意の差異は、新規のCD4+Tヘルパー(Th)エピトープの付加に起因するとは考えられなかった。近交系BALB/c(H−2)マウスを、商業的売主(Charles River, Uppsala, Sweden)から入手した。イソフルオラン麻酔マウスの眼窩後方採血により、一次免疫後2または4週目毎に、抗体検出およびアイソタイプ分類のための血清を収集した。前に記載されたように、酵素免疫検定を実施した(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001)および Sallberg et al., J Gen Virol, 77: 2721-2728 (1996))。
【0033】
NS3およびNS3/4A遺伝子の免疫原性を直接比較するために、5匹のBALB/c(H−2)マウスの2つの群を各々、100μgのNS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1で免疫した。PBS中のプラスミドDNAを、前脛骨(TA)筋に筋肉内(i.m.)投与した(Davis et al., Human Gene Therapy, 4: 733-740 (1993))。NS3/4A−pVAX1で免疫したマウスは、より迅速な抗体応答を有し、NS3/4Aプラスミドがより高い内在性免疫原性を有するという証拠を提供した(図3参照)。4回免疫後、NS3/4Aで免疫されたマウスは、より高い抗体レベルを有した。
【0034】
これらの予備的知見を立証するために、より大きい群のマウスを、NS3のみを発現するNS3−pVAX1で、またはNS3およびNS4Aの両方を発現するNS3/4A−pVAX1で、または突然変異体NS3/4A融合タンパク質を発現する突然変異体NS3/4Aプラスミドで免疫した。NS3−pVAX1およびNS3/4A−pVAX1プラスミド間の免疫原性の差は、完全に反復された(図3参照)。さらにまた、NS3/4A遺伝子は、応答マウスの平均抗体レベルおよび頻度に関して、NS3遺伝子単独よりも免疫原性が高かった。これらの結果は、NS4Aが会合した遺伝子および/または遺伝子産物の免疫原性を増強する、ということを確証した。興味深いことに、初期免疫応答では、すなわち2および4週では、NS3/4A−pVAX1プラスミドはまた、mNS3/4A−pVAX1プラスミドよりも高免疫原性であった(図3参照)。したがってある状況下では、会合した遺伝子およびNS4A間の機能的タンパク質分解部位が望ましい。
【0035】
新規のThエピトープがNS3およびNS4Aタンパク質の接合部に生成されたか否か(これはNS3/4A遺伝子を用いて観察される免疫原性増大を部分的に説明し得る)を確定するために、T細胞増殖検定を実施した。BALB/cマウスを、rNS3またはNS3/4A−pVAX1で免疫し、9日後に、脾臓細胞リコール培養を確立した(すなわちin vivo初回抗原刺激細胞を、rNS3で5日間リコールし、20アミノ酸ペプチドをNS3/4A接合部にスパニングした)。組換えNS3(rNS3)タンパク質は、Darrell L. Peterson氏(Department of Biochemistry, Commonwealth University, VA)によりご提供頂いた。大腸菌中の組換えNS3タンパク質(NS4Aを含まない)の産生は、以前に詳細に記載されている(Jin et al., Arch. Biochem. Biophys., 323: 47-53 (1995))。使用前に、rNS3タンパク質をPBSに対して一晩透析し、滅菌濾過した。完全フロイントアジュバントと混合した(1:1)100μgペプチドを用いて、尾
の基部に皮下(s.c.)注射して、ペプチド免疫を実施した。DNA免疫原として用いられる完全NS3/4A配列に対応する20merペプチドを、前に記載されたように(Sallberg et al., Immunol Lett, 30: 59-68 (1991))、自動ペプチド合成により合成した。
【0036】
図3に示したように、rNS3およびNS3/4A−pVAX1はともに、rNS3によりin vitroでリコールされたT細胞を初回抗原刺激した。rNS3またはNS3/4A−pVAX1初回抗原刺激化T細胞は、NS3/4A接合性ペプチドによりリコールされない。同一結果は、C57BL/6(H−2)マウスにおいて反復された。これらの結果は、新規のTヘルパー細胞部位はNS3/4A融合タンパク質により生成されなかった、ということを確証した。
【0037】
NS3およびNS3/4Aの増殖性Th細胞応答を比較するために、マウスの群を100μgのプラスミドで免疫し、13日後、脾臓細胞を収穫し、rNS3を用いてin vitroリコール検定を確立した。NS3に対する増殖性応答の検出は、前に記載されたプロトコルに従った(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001)および Sallberg et al., J Gen Virol, 77: 2721-2728 (1996))。簡潔には、筋肉中の100μgのNS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1でマウスの群を免疫した。13日後、脾臓細胞を回収し、単一細胞懸濁液を調製し、細胞をrNS3の連続希釈液とともにインキュベートした。細胞を、rNS3とともにまたは伴わずに4日間インキュベートし、最後の24時間はH−標識チミジン(TdR)を付加した。液体シンチレーション計測により、放射性チミジンの取込みを測定した。
【0038】
NS3特異的Th細胞初回抗原刺激のレベルは、NS3免疫マウスの場合よりNS3/4A免疫マウスにおいてより効率的である、ということを確定した(図4)。T細胞増殖のレベルはより高く、そして検出可能応答をリコールするために必要とされるrNS3の量はより低かった。
【0039】
NS3/4A免疫により初回抗原刺激されるTh細胞表現型は、以前に詳細に記載されている(Lazdina et al., J Gen Virol, 82: 1299-1308 (2001))。NS3およびNS3/4A免疫により初回抗原刺激されたT細胞応答のTヘルパー1(Th1)およびTh2−傾斜を直接比較するために、NS3特異的IgG1(Th2)およびIgG2a(Th1)抗体のレベルを分析した(図4参照)。PBS中のrNS3またはアジュバントで免疫されたH−2およびH−2マウスでは、IgG1はドミナントなサブクラスであった。rNS3で免疫したマウスにおけるIgG2a/IgG1比は、Th2支配応答をシグナル伝達するネズミハプロタイプにかかわらず、常に<1であった(Schirmbeck et al., Intervirology, 44: 115-123 (2001))。それに反して、NS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1で免疫したマウスは、>1のIgG1/IgG2a比により照明されるTh1−傾斜Th−細胞応答を有した。しかしながらNS3−pVAX1免疫マウスにおけるサブクラス比は、混合Th1/Th2応答の証拠を提供した(図4)。これに反して、NS3/4A−pVAX1免疫マウスはIgG1を示さなかったが、これは顕著なTh1傾斜応答を示す。
【0040】
本実施例における実験は、NS3ベースのDNA免疫原中のNS4Aの含入がより迅速なNS3特異的体液性応答をもたらし、これはより高い力価に達する、ということを実証した。さらにTh細胞の初回抗原刺激はより効果的であり、Th1/Th2平衡は、Th1方向にシフトした。したがってNS3タンパク質の内在性免疫原性は、NS4Aの付加により改良されていた。次の実施例は、NS4Aがin vivoでの会合した核酸の免疫原性を増強する、という付加的証拠を示す。
【実施例4】
【0041】
所望の抗原を発現するSP2/0ミエローマ細胞を含有するBALB/cマウスにおける腫瘍増殖の抑制をモニタリングすることにより、特定の抗原に対する免疫応答をin vivoで効率的に分析し得る(Encke et al., J Immunol, 161: 4917-4923 (1998)参照)。DNA免疫後の腫瘍増殖の抑制は、特定のCTLの効率的な初回抗原刺激に完全に依っている(Encke et al., J Immunol, 161: 4917-4923 (1998))。このモデルは、望ましくないウイルスタンパク質(すなわちベクター由来タンパク質)が細胞により産生されないため、例えば組換えワクシニアウイルス系より信頼できる。
【0042】
NS3/4Aを安定的に発現するSP2/0細胞株を作製し、NS3/4A発現細胞株のin vivo増殖動態が親細胞株と完全に一致することを見出した。10%ウシ胎仔血清(FCS;Sigma Chemicals, St Louis, MO)、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、1mMの非必須アミノ酸、50μMのβ−メルカプトエタノールおよび1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO-BRL, Gaithersburgh, MD)を補足したDMEM培地中に、SP2/0−Ag14ミエローマ細胞株(H−2)を保持した。SuperFect(Qiagen GmbH, Hilden, FRG)トランスフェクション試薬を用いて、直線化NS3/4A−pcDNA3.1プラスミドでSP2/0細胞をトランスフェクトすることにより、NS3/4Aの安定発現を示すSP2/0−Ag14細胞を生成した。メーカーのプロトコルに従って、トランスフェクション手法を実施した。限定希釈によりトランスフェクトされた細胞をクローン化し、800μgのジェネティシン(G418)/ml完全DMEM培地の付加により選定した。逆転写PCRにより、ならびにNS3に対するモノクローナル抗体を用いた捕捉EIAにより、NS3/4Aの発現を確認した(Zhang et al., Clin Diagn Lab Immunol, 7: 58-63 (2000))。
【0043】
NS3/4A発現細胞をin vitroで溶解したCTLを初回抗原刺激するために必要とされるDNA注射の量を決定するよう、初期実験を計画した。心臓毒(DNA免疫前に5日間、0.9%滅菌NaCl生理食塩水中の0.01mMの心臓毒(Latoxan, Rosans, France)を50μL/TAで筋注し、4週間間隔で追加免疫した)でマウスを前処理し、次にTA筋肉中に100μgのNS3/4A−pVAX1を1ヶ月に2回、3回または6回投与した。各注射の2週間後に5匹のマウスの群を屠殺し、分析した。DNA免疫BALB/cマウスからの脾臓細胞を、完全DMEM培地中に再懸濁した。5U/ml組換えネズミIL−2(mIL−2;R&D Systems, Minneapolis, MN)を含入する最終容積12mlでの25mlフラスコ中で5日間、in vitro刺激を実行した。再刺激培養は、NS3/4Aタンパク質を発現する総計40×10免疫脾臓細胞および2×10照射(10,000 rad)同系SP2/0細胞を含有した。in vitro刺激の5日後、標準51Cr放出検定を実施した。SP2/0細胞およびNS3/4Aタンパク質を発現するSP2/0細胞を標的とし、20μlの51Cr(5mCi/ml)で1時間標識され、次にPBS中で3回洗浄された。エフェクター細胞の連続希釈液を5×10個の51Cr標識化標的細胞/ウェルとともにインキュベートした。37℃、5%COで4時間のインキュベーション後、100μlの上清を回収し、γ−カウンターにより放射能を確定した。
【0044】
同様に、ペプチド免疫マウス(免疫後12日)またはナイーブマウスからの脾臓細胞を、10%FCS、2mMのL−グルタミン、10mMのHEPES、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、1mMの非必須アミノ酸、50μMのβ−メルカプトエタノールおよび1mMのピルビン酸ナトリウムを補足したRPMI 1640培地中に再懸濁した。25×10脾臓細胞および25×10照射(2,000 rad)同系脾臓細胞を含入する総容積12mlを25mlフラスコ中で5日間、in vitro刺激を実行した。0.05μMのNS3/4A−H−2D結合ペプ
チド(配列GAVQNEVTL、配列番号1)または非関連H−2Dペプチド(配列KAVYNFATM、配列番号9)の存在下で、再刺激を実施した。in vitro培養の5日後、51Cr放出検定を上記のように実施した。RMA−S細胞および51Cr標識前に+37℃で1.5時間、50μMのペプチドでパルス処理したRMA−S細胞は、標的とした。3〜6回筋注は、in vitroで検出可能CTLを初回抗原刺激するために必要とされる、ということを決定した(図5参照)。
【0045】
活性CTLがin vivoで初回抗原刺激されたことを保証するために、全マウスに5回の免疫を施した後、NS3/4A発現細胞を用いてin vivo曝露(challenge)した。Encke等(Encke et al., J Immunol, 161: 4917-4923 (1998))により記載された方法に従って、NS3/4A発現SP2/0ミエローマを用いた免疫マウスのin vivo曝露を実施した。簡潔には、BALB/cマウスの群を、記載されたように0、4、8、12および16週目に異なる免疫原で免疫した。最終免疫後2週間目に、2×10個のNS3/4A発現SP2/0細胞を右わき腹に皮下注射した。腫瘍注射後7、11および13日目に皮膚を介して腫瘍のサイズを測定することにより、腫瘍増殖の動態を確定した。平均腫瘍サイズを算定し、動的腫瘍発達を、曲線下面積(AUC)を用いて比較した。AUC値を、分散分析(ANOVA)を用いて比較した。頻度分析のためにフィッシャーの直接確率検定を用い、2つの群からの値を比較するためにはマン−ホイットニーU検定を用いた。StatViewソフトウェアのマッキントッシュバージョン(バージョン5.0)を用いて、計算を実施した。PBSで、またはヒト免疫不全ウイルス1型のp17タンパク質を発現する対照プラスミド(Iroegbu et al., Clin Diagn Lab Immunol, 7: 377-383 (2000))で免疫したマウスの群間の腫瘍増殖に差は認められなかった(図6参照)。
【0046】
14日目に、全マウスを屠殺し、腫瘍を取り出して、パラフィン包埋し、切片にした。簡潔には、腫瘍組織をホルマリン中に入れて、パラフィン中に包埋し、そして4μmの切片を調製した。パラフィン包埋切片をアビジン−ビオチンブロッキングキット(Vector, Vector Laboratories, Burlingame, CA)で前処理し、次に抗CD3抗体(Dako, Denmark)で免疫染色して、腫瘍中のT細胞浸潤の量を確定した。検出のために、ビオチニル化免疫グロブリンを、その後、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ(Vector)を用いた。CD3免疫染色のいくつかのために、マイクロ波前処理も用いた。標準手法に従って、4μm厚腫瘍切片をスライド上に載せて、いくつかをヘマトキシリン−エオシン染料で染色した。切片が属する群を知らされていない病理学者が、腫瘍の組織学的外観を分析した。
【0047】
CFA中のrNS3で免疫したマウスは腫瘍増殖の抑制を示さず、これは、特定のBおよびTh細胞単独の初回抗原刺激はこのモデルにおいては腫瘍防御を付与しないということを明らかにし、一方、100μgのNS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1で免疫したマウスは全ての時点で腫瘍増殖の有意の低減を示した(図6参照)。興味深いことに、mNS3/4Aによる免疫は、7および13日目には腫瘍増殖の有意の抑制を示したが、しかし11日目には示さなかった。プラスミドの用量を10分の1に低減することにより、応答抑制を初回抗原刺激する能力はNS3−pVAX1プラスミドに関しては失われたが、しかしNS3/4A−pVAX1プラスミドに関しては失われなかった(図6参照)。これらの実験は、NS4がin vivoでの免疫応答を防御する腫瘍の初回抗原刺激においてNS3の免疫原性を増強する、ということを明示した。mNS3/4A−pVAX1を用いた免疫によりわずかに低い防御が付与されたため、NS3/4A接合部での機能的切断部位の存在は重要であり得る。
【0048】
異なる実験群から回収された腫瘍の全ての組織学的知見は、偽免疫マウスにおいて発症した腫瘍のほとんどが壊死性で、中心細胞死および凝縮(pycnotic)核残遺物の存在により特徴付けられる、ということを明示した(図7参照)。CD3抗原に関して染色された
対応する切片では、陽性Tリンパ球のまばらな浸潤のみが認められた。同様の観察は、組換えNS3タンパク質で免疫したマウスから単離された腫瘍でなされた。DNA免疫動物(すなわちNS3−pVAX1、NS3/4A−pVAX1およびmNS3/4A−pVAX1)では、時折壊死が観察されただけであった。これらの腫瘍では、大きな領域が浮腫性(oedematous)および血管新生化組織に置き換えられていた(図7参照)。これらの領域は、CD3陽性リンパ球により密に浸潤された。生存可能な腫瘍組織との境界では、リンパ球の蓄積、ならびに死滅するミエローマ細胞であろうアポトーシス細胞が認められた(図7参照)。さらにCD3抗体による染色は、腫瘍退行の領域におけるT細胞の大きな侵入を明示した(図7参照)。
【0049】
これらのデータはさらに、T細胞、おそらくはCTLが、観察された腫瘍増殖抑制に関与しており、そしてNS3/4A発現腫瘍細胞のCTL依存性抑制は、NS4Aが存在した場合、10分の1の用量の免疫原でin vivoで得られる、ということを明らかにする。明らかに、NS4Aは付随した遺伝子または遺伝子産物(例えばヘテロ二量体または融合タンパク質)の免疫原性を増強する。
【0050】
次の実施例は、NS3/NS4AベースのDNA免疫原の使用を評価したより多くの実験を記載する。
【実施例5】
【0051】
筋肉組織を再生するに際しての注射はマウスにおけるDNA免疫のために有効であるが、しかしこのような処置はヒトに用いるには望ましくない。したがって遺伝子銃を用いたNS3/4A−pVAX1免疫原による経皮免疫の有効性を評価するための実験を実行した。遺伝子銃ベースの免疫のために、メーカー(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により供給されたプロトコルに従って、プラスミドDNAを金粒子と連結させた。免疫前に、注射領域を剃毛し、メーカーのプロトコルに従って免疫を実施した。各注射用量は、4μgのプラスミドDNAを含有した。1ヶ月間隔で、同一用量を用いてマウスを追加免疫した。
【0052】
最初に、経皮プラスミド投与のCTL初回抗原刺激効率を評価するために、フローサイトメトリーによりCTL応答を定量するのに必要な試薬を開発した。まずH−2制限NS3特異的CTLエピトープに対応するペプチドを同定して、二価MHC:Ig融合タンパク質を用いてNS3/4A特異的CTLを定量した(Dal Porto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6671-6675 (1993)参照)。次にNS3/4A特異的CTLエピトープを、一組の重複20アミノ酸長合成ペプチド範囲のNS3/4A(10アミノ酸重複を伴う総計69の異なるペプチド)から同定した。抗原プロセシング(TAP)2欠損RMA−S細胞株と会合した輸送体上のMHCクラスI分子の表面発現の安定化に関して、20アミノ酸長ペプチドを検定した(Ljunggren et al., Nature, 346: 476-480 (1990); Stuber et al., Eur J Immunol, 22: 2697-2703 (1992))。
【0053】
簡潔には、5%FCS、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補足したRPMI 1640培地中にRMA−S細胞を維持した。全細胞を、保湿37℃、5%COインキュベーター中で増殖させた。10%FCS、2mMのL−グルタミンおよび10mMのHEPESを補足したRPMI 1640培地中で、1×10RMA−s細胞を、約0.3mMの個々の20−merペプチドとともに室温(〜21℃)で16〜20時間インキュベートした。次に細胞を洗浄し、最適濃度(1μg/10)のFITC結合抗H−2Kまたは抗H−2D抗体を用いて氷上で30分間染色した。0.5μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI:Sigma)を含有するPBS/1%FCS(FACS緩衝液)中に細胞を再懸濁した。次に生細胞(PI陰性)上でのH−2KおよびH−2D発現を、FACSにより分析した。
この検定により、単一ペプチドを同定し、これは、高親和性でH−2D分子を結合した。
【0054】
好ましいペプチド配列を同定するために、9アミノ酸長ペプチド(8つのアミノ酸重複)を合成し、H−2D結合に関して評価した。種々のペプチド濃度(0.01〜100μM)を用いて、ペプチド負荷RMA−S細胞を37℃で45分間追跡した後、非特異的バックグラウンドを低減するために、抗H−2D抗体で染色した。
【0055】
上記の実験は、H−2Dを有意に結合するNS3/4A接合部からの21アミノ酸であるNS3のC末端に位置する配列GAVQNEVTL(配列番号1)から成るペプチドを明示した。次にこのペプチドを用いて、C57BL/6(H−2)マウス(4〜8週齢)を免疫した。同系C57BL/6(H−2)マウスを、商業的売主(Charles River, Uppsala, Sweden)から入手した。免疫マウスからの脾臓細胞を収穫し、NS3ペプチドおよび無関連ペプチドを用いて再刺激培養を準備した。5日後、ペプチド負荷RMA−S細胞の溶解に関して、効果細胞を試験した。
【0056】
NS3/4A−ペプチドで再刺激しておいたペプチド免疫マウスからの脾臓細胞では、NS3/4A特異的CTLのみが検出された(図8参照)。NS3由来CTLペプチドが、遺伝子銃を用いたNS3/4A−pVAX1免疫により初回抗原刺激されたCTLにより認識され得るか否かを試験するために、DNA免疫マウスからの脾臓をNS3ペプチドで再刺激して、ペプチド負荷RMA−S細胞の溶解に関して評価した。これらの実験は、遺伝子銃を用いてNS3/4A−pVAX1で経皮的に免疫されたマウスは、脾臓細胞がNS3−ペプチドで再刺激されていた場合にのみNS3特異的CTLを発生し、無関連ペプチドで再刺激された場合は生じないことを示した(図8参照)。
【0057】
次に、特異的CTLをex−vivoで直接的に定量した。このアプローチの一利点は、それが、分析前にCTLのin vitro拡張を回避する、という点であった。組換え可溶性二量体マウスH−2D:Ig融合タンパク質を用いたNS3/4A DNA免疫マウスからの脾臓細胞のex−vivo染色により、NS3/4A−ペプチド特異的CD8+T細胞の頻度を分析した。100μlのPBS/1%FCS(FACS緩衝液)中に再懸濁させた約2×10個の脾臓細胞を、1μg/10細胞のFc遮断抗体とともに氷上で15分間インキュベートした。次に細胞を、160nMの余分量のNS3/4A由来ペプチドで+4℃で48時間前負荷した2μg/10細胞のH−2D:Ig(配列GAVQNEVTL、配列番号1)、または2μg/10細胞の非負荷H−2D:Ig融合タンパク質とともに、氷上で1.5時間インキュベートした。次に細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、10μl/100μlのPE接合ラット−αマウスIgG1二次抗体を含有するFACS緩衝液100μl中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。次に細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、1μg/10細胞のFITC接合α−マウスCD8抗体とともに30分間インキュベートした。次に細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、0.5μg/mlのPIを含有するFACS緩衝液0.5ml中に再懸濁した。各試料からの約200,000事象をFACSCalibur(BDB)で得て、死細胞(PI陽性細胞)を分析では排除した。
【0058】
NS3−ペプチド負荷二価H−2D:Ig融合タンパク質分子を用いたNS3特異的CTLの直接ex−vivo定量は、遺伝子銃を用いてNS3/4A−pVAX1で経皮的に免疫したマウスからの脾臓のCD8+集団の約2%〜4%がNS3/4Aに特異的である、ということを明示した(図9参照)。この結果は、溶解検定で記録されたペプチド負荷細胞の有効な溶解と完全に一致した。明らかに、NS3/4A−pVAX1は特異的CTLの大集団を有効に初回抗原刺激し、これはin vitroで容易に検出可能であり、そして微細にマッピングされたH−2D結合NS3特異的CTLエピトープを認識
した。
【0059】
経皮投与後にin vivoでの初回抗原刺激NS3/4A特異的CTL応答の効率を試験するために、免疫マウスをNS3/4A発現SP2/0腫瘍細胞株で曝露した。従来の実験は、4回の経皮注射がNS3/4A特異的CTLの高前駆体頻度を初回抗原刺激した、ということを示していた。10匹のBALB/cマウスの群を、未処置のままにしておくか、または4μgのNS3/4A−pVAX1プラスミドを1ヶ月間隔で用いる4回の注射を投与した。総用量16μgのNS3/4A−pVAX1プラスミドは、in vivoでCTL応答を有効に初回抗原刺激し、腫瘍増殖を有意に抑制した(図10参照)。したがってヒトワクチン試験にすでに用いたもの(Roy et al., Vaccine, 19: 764-778
(2000))と一致する抗原用量で遺伝子銃免疫を用いることにより、NS3/4A−pVAX1プラスミドは腫瘍抑制免疫応答を有効に初回抗原刺激する、ということが発見された。次の実施例は、NS4Aがその発現を増大させることにより会合した核酸の免疫原性を増強する、という証拠を提供する。
【実施例6】
【0060】
NS4Aに付随された遺伝子の免疫原性増大に関する基礎を評価するために、NS3/4A−pVAX1プラスミドまたは対照配列の存在下でのB細胞活性化および増殖を試験する実験を実施した。10%FCSを含むRPMI 1640倍地中のBALB/c脾臓細胞(2×10/ml)を、5μg/mlのpVAX1ベクターまたは5μg/mlのNS3−pVAX1 DNAまたは5μg/mlのNS3/4A−pVAX1 DNAを用いて、24時間または48時間刺激した。培地のみの中で増殖させた細胞は、陰性対照として用い、そして1μg/mlのLPS(Sigma Chemicals, St Louis, MO)および1.3μg/mlのホスホロチオエート修飾オリゴデオキシヌクレオチド(ODN;Cybergene AB, Sweden)(CpG−1826と呼ばれる)(Hartmann et al., J Immunol, 164:
1617-1624 (2000))は、陽性対照として用いた。培養の最後の4時間に、ブロモデオキシウリジン(BrdU;Sigma Chemicals)を付加して、最終濃度を10μMとした。培養終了時に、細胞を遠心分離して、PBS/1%FCS中で2回洗浄した。最終洗浄後、細胞を2.4G2mAb(PBS/1%FCS中に1μg/10細胞)とともに+4℃で20分間インキュベートした。次に細胞を上記と同様に洗浄した。その後、細胞をPE結合抗CD69抗体およびCyChrome(商標)結合抗CD45R/B220抗体を用いて、+4℃で30分間染色した。次に細胞を上記と同様に洗浄した。その後、ウェル当たり100μlのCytofix/Cytoperm(商標)溶液(Cytofix/Cytoperm Plusキット(BDB Pharmingen)に含まれる)を付加することにより、細胞を固定し、透過化処理(permeabilized)して、+4℃で20分間インキュベートした。その後、細胞をPerm/Wash(商標)溶液(Cytofix/Cytoperm Plusキットに含まれる)中で洗浄した。Boehringer Mannheim(Mannheim, Germany)から購入した2.5μl/mlの2,000U/ml(50mg/mlPBS)DNアーゼIを補足したPerm/Wash(商標)溶液で希釈した1:10のFITC結合抗BrdU抗体で細胞を染色した。細胞を室温で暗所で1時間インキュベートし、次にPerm/Wash(商標)溶液中で2回洗浄し、PBS/1%FCS中に再懸濁した。試料をFACS Calibur(商標)(BDB)で分析し、CD69およびBrdUに対して陽性のB細胞(CD45R/B220ゲート)のパーセンテージを、CellQuest(商標)(BDB)プログラムを用いて算定した。対照DNA配列(CPG−1826)はB細胞を活性化するが、しかしフローサイトメトリーによるNS3−pVAX1およびNS3/4A−pVAX1の付加により誘導されるB細胞活性化の比較は差を示さない、ということが観察された。このデータは、NS4Aが付随した遺伝子の発現を増強することにより付随した遺伝子の免疫原性を増大させる、という証拠を提供した。
【0061】
先の実施例では、全てのモノクローナル抗体およびMHC:Ig融合タンパク質(Dal
Porto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6671-6675 (1993))は、BDB Pharmingen(San Diego, CA)から購入した:例えば抗CD16/CD32(Fc−ブロック(商標)、クローン2.4G2)、FITC結合抗CD8(クローン53−6.7)、FITC結合抗H−2K(クローンAF6−88.5)、FITC結合抗H−2D(クローンKH95)、組換え可溶性二量体マウスH−2D:Ig、PE接合ラット−αマウスIgG1(クローンX56)、FITC結合抗BrdU(クローンB44)、PE結合抗CD69(クローンH1.2F3)、Cy−Chrome(商標)結合抗CD45R/B220(クローンRA3−682)。次の実施例は、NS4Aがエンハンサーであるというよりさらなる証拠を提供する。
【実施例7】
【0062】
異なるベクターにより初回抗原刺激されたNS3特異的CTLのin vitro溶解活性を直接比較するために、1回または2回免疫後に標準51Cr放出検定を実施した。wtNS3−pVAX1(野生型NS3)、wtNS3/4A(野生型NS3/4A)およびcoNS3/4A(ヒトコドン最適化NS3/4A)プラスミドの遺伝子銃免疫、あるいはwtNS3/4A−SFV粒子(セムリキ森林ウイルス粒子を含有するNS3/4A)の皮下注射により、H−2マウスにおけるin vitro検出可能CTLの初回抗原刺激を実行した。コドン最適化NS3/4A構築物を作製するために、ヒト細胞中の最も一般的に用いられるコドンに関するコドン用法に関して、野生型NS3/4Aを分析した。総計433個のヌクレオチド(15アミノ酸が異なった)を、ヒト細胞のためのコドン用法を最適化するために置き換えた。coNS3/4A遺伝子は、HCV−1参照株のヌクレオチド位置3417〜5475の領域と79%の配列相同性を有する。
【0063】
5〜10匹のH−2マウスの群を、1回(a)または2回(b)免疫した。NS3−ペプチド負荷H−2D発現RMA−S細胞、ならびにNS3/4Aを安定的に発現するEL−4細胞の両方で、in vivo初回抗原刺激化CTLの溶解活性を検定した。特異的溶解%は、NS3−ペプチド被覆RMA−S細胞((a)および(b)の上パネル)またはNS3/4A発現EL−4細胞((a)および(b)の下パネル)を用いて得られた溶解%から非負荷または非トランスフェクト化EL−4細胞を用いて得られた溶解%を引いた値に対応する。値は、60:1、20:1および7:1のエフェクター対標的(E:T)細胞比に関して示されている。各線は、個々のマウスを示す。
【0064】
1回投与後、NS3/4Aコード構築物は、NS3−ペプチド被覆標的細胞を溶解するCTLの初回抗原刺激に際して、NS3プラスミドより有意に効率的である、ということが明らかになった(図11参照)。したがってCTL初回抗原刺激事象は、NS4A遺伝子の存在により増強された。NS3/4A発現EL−4細胞を用いた場合、差はあまり明白でなかったが、これはおそらくは、この検定が低感受性のためである。2回免疫後、全てのNS3/4Aベクターが、同様の効率でNS3特異的CTLを初回抗原刺激すると思われた。しかしながらNS3/4A含有ベクターのいずれかを用いた2回免疫は、wtNS3遺伝子のみを含有するプラスミドと比較した場合、NS3特異的CTLの初回抗原刺激において明らかにより効率的であった。したがってNS4A遺伝子は、NS3特異的CTLのより迅速な初回抗原刺激を促すエンハンサーである。次の実施例は、NS4Aがエンハンサーであるというさらなる証拠を提供する。
【実施例8】
【0065】
HCVウイルス抗原を発現するSP2/0ミエローマ細胞を用いたBALB/cマウスにおける、あるいはHCVウイルス抗原を発現するEL−4リンパ細胞を用いたC57BL/6マウスにおけるin vivoでの腫瘍増殖の抑制の分析が、in vivo機能性HCV特異的免疫応答を表すことは、当該技術分野の当業者により認識されている(Encke J et al., J Immunol, 161: 4917-4923 (1998)参照)。NS3/4Aを安定的に発現
するSP2/0細胞株は、前に記載されており(Frelin L et al., Gene Ther 10: 686-699 (2003)参照)、そしてNS3/4A発現EL−4細胞株は下記のように特徴付けられた。
【0066】
NS3/4A発現EL−4細胞株を用いた腫瘍増殖の抑制がNS3/4A特異的免疫応答に完全に依っている、ということを確証するために、対照実験を実施した。10匹のC57BL/6マウスの群を、非免疫のままでおくか、またはcoNS3/4Aプラスミドで2回免疫した。免疫の2週間後、10のナイーブEL−4またはNS3/4A発現EL−4細胞(NS3/4A−EL−4)の皮下注射により、マウスを曝露した。NS3/4A−EL−4細胞株の増殖に対して免疫マウスのみが防御されたため、NS3/4A特異的免疫応答は防御のために必要であった。したがってこのH−2制限モデルは、前に記載されたH−2制限モデル(同上)と非常に類似して振舞う。
【0067】
組換えNS3タンパク質による免疫は、NS3/4A特異的B細胞およびCD4+T細胞の両方が腫瘍増殖に対する防御においてきわめて重要であるというわけではない、という証拠を提供した。coNS3/4Aプラスミド免疫H−2マウスからの脾臓細胞のCD4+またはCD8+T細胞のin vitroでの欠乏は、CD8+T細胞が51Cr放出検定における主要効果細胞である、ということを示唆した。in vivo機能性抗腫瘍効果細胞集団を定義(define)するために、coNS3/4Aプラスミドで免疫したマウスにおけるCD4+またはCD8+T細胞を、NS3/4A−EL−4主要細胞株を用いた攻撃誘発の1週間前および最中に選択的に欠乏させた。フローサイトメトリーによる分析は、CD4+およびCD8+T細胞の85%がそれぞれ欠乏していた、ということを明示した。この実験は、CD4+T細胞のin vivo欠失は腫瘍免疫性に有意の作用を及ぼさない、ということを明示した。これに反して、in vivoでのCD8+T細胞の欠失は、腫瘍免疫性を有意に低減した。したがって予測どおり、NS3/4A特異的CD8+CTLは、腫瘍増殖の抑制に関するin vivoモデルにおけるエフェクター段階での主要防御細胞であると思われる。
【0068】
次に上記の腫瘍曝露モデルを用いて、in vivoでのNS3/4A−EL−4腫瘍細胞の増殖に対する防御免疫を初回抗原刺激するに際しての異なる免疫原の効率を評価した。初回抗原刺激事象の有効性が試験されたことを保証するために、全てのマウスを1回だけ免疫した。in vitroCTLデータと完全に一致して、NS3/4Aを含有するベクターのみが防御的免疫応答を迅速に初回抗原刺激し得る、ということが観察された(図12参照)(p<0.05、ANOVA)。この初回抗原刺激事象は、NS4Aエンハンサーに依っており、そしてコドン最適化とは無関係であった。
【0069】
in vivo防御的CD8+CTL応答の初回抗原刺激のための必要前提条件をさらに明らかにするために、さらなる実験を実施した。まず、NS3由来CTLペプチドで免疫したC57BL/6マウスは、NS3/4A−EL−4腫瘍の増殖に対して防御されなかった(図12)。第二に、アジュバント中の組換えNS3による免疫は、腫瘍増殖に対して防御しなかった(図12)。NS3由来CTLペプチドはC57BL/6マウスにおけるCTLを有効に初回抗原刺激し、アジュバント中のrNS3は高レベルのNS3特異的Tヘルパー細胞を初回抗原刺激するため、NS3/4Aの内因性産生はin vivo防御的CTLを初回抗原刺激するために必要であると思われる。初回抗原刺激事象をさらに特徴付けるために、B細胞の群(μMT)またはCD4欠損C57BL/6マウスを、遺伝子銃を用いてcoNS3/4A遺伝子で1回免疫し、2週間後に曝露した(図12)。両系列はともに腫瘍増殖に対して防御されたため、B細胞またはCD4+T細胞は、in vivo機能性NS3/4A特異的CTLの初回抗原刺激の必要がなかった(図12)。したがってC57BL/6マウスにおけるin vivo腫瘍防御性NS3/4A特異的CTLの初回抗原刺激は、エンハンサーNS4A、ならびに免疫原の内因性発現を要
する。C57BL/6マウスにおいて、初回抗原刺激は、遺伝子送達経路または補助細胞、例えばB細胞またはCD4+T細胞にあまり依存しない。coNS3/4A DNAプラスミドによるin vivo機能性CTLの初回抗原刺激はCD4+Tヘルパー細胞に無関係であったという事実は、初回抗原刺激が起きた速度を説明するのに役立ち得る。
【0070】
NS3/4A−EL−4細胞株を用いたC57BL/6マウスにおける反復実験は、腫瘍増殖に対する防御は、コドン最適化とは無関係に、NS3/4A遺伝子による最初の免疫後すでに得られる、ということを示している(図12)。さらにまた2回注射後、NS3/4A−EL−4腫瘍増殖に対する免疫性はさらに増強されたが、しかしNS4Aが存在した場合のみであった。したがってこのモデルは、異なる免疫原の内在性免疫原性における微妙な差を明示するのに十分に感受性であるというわけではない。wtNS3/4AおよびcoNS3/4A DNAプラスミドの免疫原性をより良好に比較するために、H−2マウスにおいてさらなる実験を実施したが、この場合、少なくとも2回の免疫が、腫瘍防御免疫のために必要であると思われた。BALB/cマウスにおけるNS3/4A遺伝子を用いた遺伝子銃免疫後に得られるIgGサブクラス分布は混合Th1/Th2様応答を示した、ということを指摘することは重要である。したがって、Th2傾向BALB/cマウス株におけるTh2様免疫経路(遺伝子銃)は、in vivo有効CTL応答を初回抗原刺激する能力を減損し得る、という可能性があった。
【0071】
本明細書中に記載した組成物は他の成分を含有し得る。その例としては、種々のペプチド、アジュバント、結合剤、賦形剤、例えば安定剤(長期貯蔵を促すため)、乳化剤、増粘剤、塩、防腐剤、溶媒、分散培地、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等が挙げられるが、これらに限定されない(例えば米国特許出願第09/929,955号および米国特許出願第09/930,591号参照)。これらの組成物は、疾患または症状を回避するための予防手段として、あるいは疾患または症状にすでに悩まされている動物を治療するための療法として、動物、特に哺乳動物の治療に適している。
【0072】
多数のその他の成分も存在し得る。例えばアジュバントおよび抗原は、慣用的賦形剤(例えばアジュバントおよび/または抗原と有害に反応しない非経口的、経腸的(例えば経口)、または局所的適用に適している薬学的に許容可能な有機または無機担体物質)と混合して用いられ得る。適切な薬学的に許容可能な担体としては、水、塩溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されない。多数のさらに適切な担体が、Remmington’s Pharmaceutical Sciences, 15thEdition, Easton:Mack Publishing Company, pages 1405-1412 and 1461-1487 (1975)ならびにThe National Formulary XIV, 14th Edition, Washington, American Pharmaceutical Association (1975)に記載されている。
【0073】
本明細書中に記載した遺伝子構築物は、特に、同一遺伝子ワクチンがこのような作用物質の非存在下で投与される場合に起きる細胞による遺伝子構築物の取込みおよび/または発現と比較して、細胞による遺伝子構築物の取込みおよび/または発現を増大させる作用物質とともに処方されるかまたは投与され得る。このような作用物質ならびにそれらを遺伝子構築物と一緒に投与するためのプロトコルは、PCT特許出願番号PCT/US94/00899(1994年1月26日出願)に記載されている。このような作用物質の例としては、以下のものが挙げられる:CaPO、DEAEデキストラン、陰イオン性脂質;細胞外マトリックス活性酵素;サポニン;レクチン;エストロゲン化合物およびステロイドホルモン;加水分解化低級アルキル;ジメチルスルホキシド(DMSO);尿素および安息香酸エステルアニリド、アミジン、ウレタンおよびその塩酸塩、例えば局所麻酔
薬のファミリーのもの。さらに、遺伝子構築物は、脂質/ポリカチオン複合体内に封入され/それらとともに投与され得る。
【0074】
NS4Aをコードする核酸は、増強する遺伝子と「シス」状態で提供される(例えば並列または並置)か、または「トランス」で提供され得る(例えば増強されるべき遺伝子を含有する構築物と関係なく働く別個の構築物上に、または増強されるべき遺伝子を含有する構築物と融合する別個の構築物上に)。あるいはNS4Aペプチドは、上記の構築物のいずれかと一緒に投与され得る。
【0075】
ワクチンは滅菌され、そして所望により、アジュバントあるいは投与される核酸またはペプチドと有害に反応しない助剤、例えば滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、風味および/または芳香物質等と混合され得る。
【0076】
特定のワクチン処方物の有効用量および投与方法は、個々の患者ならびに疾患の型および段階、ならびに当業者に既知のその他の因子に基づいて変わり得る。ワクチンの治療効力および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学手法により、例えばED50(集団の50%に治療的に有効な用量)により決定され得る。細胞培養検定および動物試験から得られるデータは、ヒト使用のための一連の投与量を処方するために用いられ得る。ワクチンの投与量は、好ましくは毒性を伴わないED50を含む一連の循環濃度範囲内である。投与量は、アジュバント誘導体およびHCV抗原の型、用いられる剤形、患者の感受性ならびに投与経路に応じて、この範囲内で変化する。
【0077】
数年の間に多数のアジュバントが市場に出されているため、多数の剤形および投与経路が既知である。既知の剤形および投与経路は全て、本明細書中に記載した実施形態の情況内に提供され得る。好ましくは動物における抗原に対する免疫応答を増強するのに有効であるアジュバントの量は、動物において約0.25〜12.5μg/ml、好ましくは約2.5μg/mlの抗原の血中血清レベルを達成するのに十分な量であると考えられ得る。いくつかの実施形態では、アジュバントの量は、ワクチンを投与されるべき動物の体重によって確定される。したがってワクチン処方物中のアジュバントの量は、約0.1〜6.0mg/体重1kgであり得る。すなわちいくつかの実施形態は、約0.1〜1.0mg/動物の体重1kg、1.1〜2.0mg/動物の体重1kg、2.1〜3.0mg/動物の体重1kg、3.1〜4.0mg/動物の体重1kg、4.1〜5.0mg/動物の体重1kgおよび5.1〜6.0mg/動物の体重1kgに対応するアジュバントの量を有する。ワクチンが約0.25mg〜2,000mgのアジュバントを含有すると、さらに都合が良い。すなわち、いくつかの実施形態は、約250μg、500μg、1mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、1g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9gおよび2.0gのアジュバントを有する。
【0078】
当業者が理解するように、ワクチン中の抗原の量は、抗原の型およびその免疫原性によって変わり得る。それに従って、ワクチン中の抗原の量が変化し得る。それにもかかわらず、一般的指針として、ワクチンは、例えば約1μg、5μg、1μg、20μg、40μg、80μg、100μg、0.25mg〜5mg、5〜10mg、10〜100mg、100〜500mgおよび2,000mgまでの量の本明細書中に記載した抗原を有し得る。好ましくは抗原の量は、抗原が核酸である場合、0.1μg〜1mg、望ましくは0.1μg〜100μg、好ましくは3μg〜50μg、最も好ましくは7μg、8μg、9μg、10μg、11μg〜20μgである。
【0079】
本明細書中に記載したいくつかのアプローチでは、アジュバントおよび/または抗原の的確な量は、治療される患者を考慮して、個々の医師により選定される。さらにアジュバントの量は、同一のまたは等価の量の抗原と組合せて、あるいはそれらとは別個に付加され得るし、そしてこれらの量は、患者特異的または抗原特異的考察の点から見て十分なレベルを提供するために、特定の予防接種プロトコル中に調整され得る。この趣旨で、考慮され得る患者特異的および抗原特異的因子としては、患者の疾患状態の重症度、患者の年齢および体重、食事、投与の時間および頻度、薬剤組合せ(単数または複数)、反応感受性、ならびに療法に対する耐容/応答が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
実施形態および実施例を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の修正がなされ得る、と理解されるべきである。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】35S−メチオニンの存在下でプラスミドNS3−pVAX1、NS3/4A−pVAX1およびmNS3/4A−pVAX1から作製され、SDS−PAGEにより分けられたin vitro翻訳産物。レーン1、分子量マーカー(CFA 756;Amersham Pharmacia Biotech);レーン2、61kDaキット対照;レーン3、陰性対照;レーン4、NS3−pVAX1;レーン5、NS3/4A−pVAX1;およびレーン6、mNS3/4A−pVAX1。
【図2】rSFV−NS3(a)、mNS3/4a(b)またはNS3/4a(c)感染BHK−21細胞により発現されるNS3タンパク質の分析。32Sメチオニンで標識後、細胞を非標識メチオニンで指示時間「チェイス」した。その結果生じた細胞溶解物を、免疫沈降および10%SDS PAGEにより分析した。NS3特異的モノクローナル抗体を用いて免疫蛍光染色により、rSFV−NS3(d)およびrSFV−NS3/4A(e)感染BHK細胞中でも、NS3発現を分析した。細胞を感染後、24時間染色し、rSFV−NS3感染細胞中(e)でのNS3タンパク質のより大きい分散を観察した。
【図3】5匹のH−2マウスの群における100μgのNS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1を用いた免疫により初回抗原刺激された抗体応答(a)。矢印は、免疫時点を示す。マウスは全て、心臓毒で前処理した。値は、平均終点抗体±SDとして示される。10〜20匹のH−2マウスの群における100μgのNS3−pVAX1、NS3/4A−pVAX1またはmNS3/4A−pVAX1により初回抗原刺激された体液応答の比較も示す。マウスを初回抗原刺激し、0および4週目に追加免疫した。値は、平均終点抗体力価±SDとして示される。実線はp<0.01の有意差を、破線はp<0.05の差を、そして点線は有意差(マン−ホイットニーU検定)が観察されなかったことを示す。
【図4】T細胞は、免疫H−2マウスからの脾臓中のNS3に応答する。5匹のマウスの群を、100μgのNS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1で免疫した。全マウスを心臓毒で前処理した。値は、抗原誘導性増殖−自発性増殖(Δcpm)として示される。値は、三重反復測定の平均cpm値±SDとして示される(a)。PBS中のrNS3(20μg)、NS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1で免疫されたBALB/cマウスにおける6週目のNS3特異的IgGサブクラス応答の比較(b)。値は、NS3に対するIgG1またはIgG2a抗体の平均終点力価±SDとして示された。NS3に対するIgG2a抗体の平均終点力価をNS3に対するIgG1抗体の平均終点力価で割ることにより、力価比を得た。高い比(>3)はTh1様応答を示し、低い比(<0.3)はTh2様応答を示すが、一方、1から3倍以内の差の値(0.3から3)は混合Th1/Th2応答を示す。筋注で投与のNS3/4A−pVAX1プラスミドによる3回の1ヶ月ごとの注射後、CFAにおけるrNS3による1回の免疫後の脾臓中の増殖性応答も示される(これらのマウスを最終注射後6ヶ月に屠殺した)。値は、三重反復測定の平均cpm値として示される(c)。
【図5】H−2マウスにおけるin vitro検出可能CTLの初回抗原刺激の動態。5匹のH−2マウスの群を、1ヶ月間隔で、100μgのNS3/4A−pVAX1で筋注により免疫した。全マウスを心臓毒で前処理した。細胞傷害性検定からの結果は、100μgDNAの2回注射(a)、3回注射(b)および6回注射(c)から得た。特異的溶解%は、NS3/4A発現SP2/0細胞を用いて得られた溶解%から非トランスフェクト化SP2/0細胞を用いて得られた溶解%を引いた値に対応する。値は、40:1、20:1および10:1のエフェクター対標的(E:T)細胞比に関して得られた。10より多い特異的溶解%を陽性とみなした。各線は、個々のマウスに対応する。
【図6】異なる方式の免疫を用いたin vivoでの腫瘍細胞増殖の抑制。5〜10匹のH−2マウスの群を、腹腔内投与されたPBSまたはCFA中の20μgのrNS3もしくは100μgの対照プラスミド(p17−pcDNA3)(a)で、あるいは10μgのNS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1(b)で、あるいは100μgのNS3−pVAX1またはNS3/4A−pVAX1またはmNS3/4A−pVAX1(c)で免疫した。マウスを初回抗原刺激し、そして4、8、12および16週目に追加免疫した。全マウスを心臓毒で前処理した。最終免疫後2週間目に、マウスに2×10個のNS3/4A発現SP2/0細胞を皮下注射した。腫瘍注射後7、11および13日目に皮膚を介して、各腫瘍のサイズを測定した。各群における平均腫瘍増殖を全期間査定し、曲線下面積(AUC)およびANOVAを用いて統計学的に群を比較した。(d)では、実験群および対照群間の統計学的比較が示される。
【図7】非免疫マウス(aおよびb)、10μgのNS3/4A−pVAX1で免疫されたマウス(cおよびd)、ならびに100μgのNS3/4A−pVAX1で免疫されたマウス(eおよびf)から切り取られた固形腫瘍の組織学的外観。ヘマトキシリン−エオシンにより(a、cおよびe)、あるいは抗−CD3抗体により(b、dおよびf)染色されたNS3/4A発現SP2/0黒色腫の切片。図(a)における挿入は、RT−PCRによりNS3/4A mRNAの発現に関してトランスフェクト化細胞株を試験した結果を示す。レーン1および2は分子量マーカーを、レーン3はNS3/4A−SP2/0細胞を、レーン4はSP2/0細胞を、レーン5、7および8は陰性対照を、そしてレーン6は2,061塩基のバンドを示すNS3/4A−pVAX1プラスミドのDNA PCRを示す。
【図8】NS3/4A−pVAX1を用いた遺伝子銃免疫は、H−2D制限ペプチドエピトープに特異的なCTLを示す。5〜10匹のC57BL/6マウスの群を、CFA中の100μgのNS3特異的ペプチド(GAVQNEVTL(配列番号1))で皮下に、あるいは1ヶ月間隔で遺伝子銃を用いて4μgのDNA/用量で経皮的に免疫した。ナイーブ(a)またはNS3/4Aペプチド免疫マウス(b)またはNS3/4A−pVAX1遺伝子銃免疫マウス(d)からの脾臓細胞を、放射線照射NS3−ペプチド負荷ナイーブ脾臓細胞を用いてin vitroで5日、再刺激した。関連のないH−2D結合ペプチドで再免疫刺激された遺伝子銃免疫マウスからの脾臓細胞を、陰性対照(c)として用いた。パネル(d)では、中白ボックスは3回の免疫後の特異的溶解%を示し、そして中黒ボックスは4回の免疫後の特異的溶解%を表す。括弧内は、再刺激培養に用いたペプチドを示す。各線は、個々のマウスからのデータを表す。
【図9】遺伝子銃免疫後のNS3/4A特異的CD8 T細胞の誘導。ナイーブマウス(a、c、eおよびg)、ならびにNS3ペプチド(GAVQNEVTL(配列番号1))を負荷した二量体H−2D:Ig融合タンパク質を用いたNS3/4A−pVAX1 DNA免疫マウス(b、d、fおよびh)の脾臓細胞のフローサイトメトリー染色により、NS3/4Aペプチド特異的CD8 T細胞の頻度を決定した。非負荷H−2D:Ig融合タンパク質を用いて、非特異的染色をモニタリングした(gおよびh)。合計150,000〜200,000細胞を収集し、H−2D:Igに関して染色されたCD8+細胞のパーセンテージを、各ドット−プロットの括弧内に示す。
【図10】遺伝子銃免疫を用いたin vivoでの腫瘍増殖の抑制。10匹のBALB/cマウスを、未処理のままにするか、あるいは4μgのDNA/用量のNS3/4A−pVAX1で1ヶ月ごとに4回経皮免疫した。最終免疫後4週目に、マウスに1×10NS3/4A発現SP2/0細胞を皮下注射した。腫瘍注射後6、7、8、10、11、12、13および14、15日目に皮膚を通して腫瘍サイズを測定した。2つの曲線に関する曲線下面積は、統計学的に異なった(ANOVA;p<0.01)。
【図11】wtNS3−pVAX1(野生型NS3)、wtNS3/4A(野生型NS3/4A)およびcoNS3/4A(ヒトコドン最適化NS3/4A)プラスミドの遺伝子銃免疫、あるいはwtNS3/4A−SFV粒子(NS3/NS4A含有セムリキ森林ウイルス粒子)の皮下注射による、H−2マウスにおけるin vitro検出可能CTLの初回抗原刺激。5〜10匹のH−2マウスの群を、1回(a)または2回(b)免疫した。特異的溶解%は、NS3−ペプチド被覆RMA−S細胞(aおよびbの上パネル)またはNS3/4A発現EL−4細胞(aおよびbの下パネル)を用いて得られた溶解%から非負荷または非トランスフェクト化EL−4細胞を用いて得られた溶解%を引いた値に対応する。値は、60:1、20:1および7:1のエフェクター対標的(E:T)細胞比に関して示されている。各線は、個々のマウスを示す。
【図12】1回免疫後のHCV NS3/4A特異的腫瘍抑制応答を初回抗原刺激する異なる免疫原の能力の評価。10匹のC57BL/6マウスの群を、未処理のままにするか、あるいは図11に記載したように、指示された免疫原を用いて1回免疫した((a)、(b)、(c)、(g)および(h)では遺伝子銃を用いて4μgのDNA;(d)では10SFV粒子を皮下投与;(e)ではCFA中の100μgのペプチドを皮下投与;ならびに(f)ではCFA中の20μgのrNS3を皮下投与)。最終免疫後2週間目に、マウスに10NS3/4A発現EL−4細胞を皮下注射した。腫瘍注射後6〜19日目に皮膚を通して腫瘍サイズを測定した。値は、平均腫瘍サイズ±標準誤差として示されている。(a)〜(e)では、陰性対照として、遺伝子銃により空pVAXプラスミドを用いて免疫した群からの平均データを、各グラフにプロットした。(f)〜(h)では、陰性対照は非免疫マウスであった。曲線下面積およびANOVAを用いた対照と各曲線との統計学的比較から得られたp値も示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウイルス(HCV)非構造タンパク質4A(NS4A)またはその機能的部分をコードする第1の核酸を準備し、
発現増大させるための第2の核酸を同定し、
前記第2の核酸を前記第1の核酸に細胞中で付随させ、それによりこのような付随が前記第1の核酸の非存在下の場合に比べて前記第2の核酸を多く発現させること、
を包含する、細胞中の核酸の発現を増大させる方法。
【請求項2】
前記第2の核酸がHCV非構造タンパク質3(NS3)である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の核酸がシスで連結される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の核酸が並置される請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の核酸が同一構築物上に存在する請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の核酸が別個の構築物上に存在する請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記第1の核酸が配列番号2の10〜20連続アミノ酸から成る請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記第1の核酸が配列番号2の20〜30連続アミノ酸から成る請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記第1の核酸が配列番号2の30〜40連続アミノ酸から成る請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
前記第1の核酸が配列番号2の50〜54連続アミノ酸から成る請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
C型肝炎ウイルス(HCV)非構造タンパク質4A(NS4A)またはその機能的部分をコードする第1の核酸を準備し、
哺乳動物における免疫原性を増大させるための抗原をコードする第2の核酸を同定し、
前記第2の核酸を前記第1の核酸に付随させ、それによりこのような付随が、前記哺乳動物における前記第1の核酸の非存在下で前記第2の核酸により生成される前記抗原に対する免疫原性より大きい前記哺乳動物における前記抗原に対する免疫原性を生じさせること、
を包含する、哺乳動物における抗原に対する免疫原性を増大させる方法。
【請求項12】
前記第2の核酸がHCV非構造タンパク質3(NS3)である請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2の核酸がシスで連結される請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2の核酸が並置される請求項11または12記載の方法。
【請求項15】
前記第1および第2の核酸が同一構築物上に存在する請求項11または12記載の方法。
【請求項16】
前記第1および第2の核酸が別個の構築物上に存在する請求項11または12記載の方
法。
【請求項17】
前記第1の核酸が配列番号2の10〜20連続アミノ酸から成る請求項11または12記載の方法。
【請求項18】
前記第1の核酸が配列番号2の20〜30連続アミノ酸から成る請求項11または12記載の方法。
【請求項19】
前記第1の核酸が配列番号2の30〜40連続アミノ酸から成る請求項11または12記載の方法。
【請求項20】
前記第1の核酸が配列番号2の50〜54連続アミノ酸から成る請求項11または12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−532091(P2007−532091A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554874(P2004−554874)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2003/006488
【国際公開番号】WO2004/048403
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マッキントッシュ
【出願人】(501429782)
【Fターム(参考)】