説明

C/C複合材料から作製される部品に自己修復層を形成する方法

複合材料から作製される部品上に自己修復層を形成するために、組成物を前記部品に塗布し、前記組成物はコロイドシリカ懸濁液と、粉末形態にあるホウ素またはホウ素化合物と、粉末形態にある炭化ケイ素と、少なくとも1種の超耐熱性酸化物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の背景
本発明は酸化に対する保護を提供するコーティングを炭素を含む熱構造複合材料から作製される部品に塗布することに関する。
【0002】
熱構造複合材料は構造部品を構成するに適する状態にするその機械的性質により、またこれらの機械的性質を高温においても保持するその能力により特徴づけられる。これらは耐熱性材料のマトリックスにより緻密にした繊維強化材により構成されていて、マトリックスは繊維強化材内の孔を少なくとも一部で塞ぐ。繊維強化材とマトリックスを構成する材料は炭素とセラミックスから一般に選択される。熱構造複合材料の例は炭素/炭素(C/C)複合材料およびセラミックマトリックス複合材料(CMC)例えばC/SiC(炭素繊維強化材および炭化ケイ素マトリックス)またはC/C−SiC(炭素繊維強化材および炭素と炭化ケイ素の双方のマトリックス)、さらにC/C−SiC−Si(Siと反応してシリサイド化されたC/C複合材料)である。
【0003】
非常に高い頻度で熱構造複合材料は炭素を含み、繊維を構成していようがいまいが、マトリックスの少なくとも一部を構成するか繊維上に形成される相間層(interphase layer)をも構成してマトリックスとの十分な結合を提供する。つまり酸化に対する保護を提供してこのような複合材料から作製される部品が酸化性雰囲気中350℃よりも高温で用いられる場合にこの部品の急速な劣化を回避することが必須である。
【0004】
炭素またはグラファイトから少なくとも部分的に作製されている部品のための抗酸化保護コーティングの形成に関する多くの文献が存在する。
【0005】
炭素を含む熱構造複合材料、特にC/C複合材料から作製される部品に、ホウ素を含む組成物、より特には自己修復性を有する組成物から少なくとも部分的に作られる保護コーティングを形成することが知られている。「自己修復」という語は部品の使用温度において粘性状態に変化することにより、コーティングまたは保護層に生ずるあらゆるクラックを塞ぐ働きをすることを意味する組成物について用いられる。そうしないと酸化性雰囲気中でこのようなクラックは周辺への酸素の接近手段を与えて複合材料に到達したりその残りの孔内へと浸入する。一般に使われている自己修復組成物はホウ素ガラスであり、具体的にはホウケイ酸ガラスである。一例として文献 US 4 613 522 を参照してもよい。
【0006】
酸化物Bはホウ素保護組成物の必須要素である。これは比較的低い融解温度(約450℃)を有し、またその存在は保護すべき炭素面をぬらすのに十分な能力を提供する。使用条件が特定の自己修復ガラス質混合物、つまり適切な粘性を意図した温度範囲で有するように配合されているものの使用を必要とする場合には上記混合物をBと混ぜ合わせて連続する保護フィルムを基材の面に形成することが必須である。
【0007】
使用条件によって、Bは500℃から徐々に揮発するであろうし(とりわけ湿潤雰囲気中)、より急速に高温で揮発するであろう。1100℃より高温では揮発はとても速くなって存在する保護混合物の効力はぬれ性を失った結果として非常に短い時間の使用に関してさえ消失する。
【0008】
の完全な消失を遅くする一つの方法はホウ化金属を保護組成物中に加えることから成り、存在するBが揮発してゆく際にこのホウ化物はBを徐々に酸化により再生することができる。文献 US 5 420 084 には具体的にはC/C複合材料部品を酸化から1350℃まで保護する働きをする保護コーティングが記載されており、この保護コーティングは二ホウ化ジルコニウムZrBとコロイドシリカSiOの混合物により形成されている。
【0009】
また文献 US 6 740 408 からはC/C複合材料部品の保護コーティングを形成する方法が知られている。その方法は部品にコーティングを形成することを含み、このコーティングは二ホウ化チタンTiB、ケイ酸ガラスを生ずることにより修復性を有し大部分がホウケイ酸塩混合物(例えばSiO−B混合物の粉末)である耐熱性酸化物の粉末、および耐熱性セラミック前駆体樹脂(例えばポリカルボシラン(PCS)、炭化ケイ素SiCの前駆体、およびポリチタノカルボシラン(PCT)から選択される樹脂)により構成されるバインダーにより大部分が構成されている混合物を含み、上記前駆体はその後セラミックスへと変化する。二ホウ化チタンTiBはB再生体を構成する。このことは酸化の際に550℃から徐々に1100℃からより急速にTiBがBの消失をB+TiOを生成することにより補填するためである。TiO酸化物はケイ酸ガラスの酸化物中に分散し、その修復力を維持しながら粘度を高める一因となる。従ってこのように得られた保護層は酸化に対する効果的かつ耐久性のある保護を湿潤環境中高温にて用いられるC/C複合材料部品に与える。
【0010】
しかしながら、自己修復性を有する既知のコーティングの保護の効力は約1450℃よりも高い温度において、二ホウ化チタンTiBまたは二ホウ化ジルコニウムZrB等のB再生体を含むコーティングについてさえも確実ではない。1450℃よりも高温では再生体により得られる酸化物を含む酸化物Bが完全に揮発することが観察される。このような条件下ではとりわけ炭素をぬらす能力が不十分であるために部品の面に連続する保護フィルムを形成することがもはやできない。このような温度における保護の効力の損失は部品が長時間に亘り晒される際により大きい。
【0011】
1450℃よりも高い温度において軟化することができて修復役割を果たすガラス質混合物を発明することは比較的容易ではあるが、このような混合物を直接使用することは残念ながらできない。というのも、このような温度レベルにおいてBは存在せず、従って保護システムが炭素をぬらす能力を失うという結果に通ずるためである。
【0012】
このような事情の下で一般的に選択される解決策は保護混合物を炭素の面に代わって炭化ケイ素(SiC)の面に塗布するということから成る。そのことはSiC下塗層(primer underlayer)を形成することを必要とし、これはケイ素を保護すべき炭素面と化学的に反応させる(T<1400℃、アルゴン雰囲気)反応技術により、または化学蒸気浸透法(CVI)により得られる。
【0013】
つまりこのような下層の作製はさらなる工程を保護コーティングの形成において与え、この工程はややこしい作業条件をもたらすので、さらに非常に複雑である。
【0014】
酸化性雰囲気中1450℃よりも高温で用いられる部品のための保護を提供することが必要である。
【0015】
このことは具体的には水素および酸素ロケットエンジンのためのノズルの末広部位に当てはまり、ここでは発生しノズルを通じて排出される水蒸気は湿っていてかつ酸化を起こす環境を作り出す。
【0016】
またこのことは湿った滑走路上に着陸し移動する際の、航空機にて用いられる種類のC/C複合材料ブレーキディスクにも当てはまる。
【0017】
発明の目的と概要
本発明の目的は自己修復層を複合材料部品に単一形成工程にて形成することができる方法を提供することであり、上記の層は良好な効力を特に1450℃よりも高温で示す。
【0018】
この目的は部品に組成物を塗布することを含む方法により達成され、前記組成物は
・コロイドシリカの懸濁液と、
・粉末形態にあるホウ素またはホウ素化合物と、
・粉末形態にある炭化ケイ素と、
・少なくとも1種の超耐熱性酸化物
とを含有している。
【0019】
以下に説明する通り、このような組成物は保護コーティングを形成することができ、この保護コーティングは2つの自己修復相:酸化に対する保護を1450℃より低い温度にて提供する第1の相;および酸化に対する保護を1450℃より高い温度にて提供する第2の自己修復相を含んでいる。さらに、炭化ケイ素粒子は第2の自己修復相と協力して連続する保護フィルムを部品の面上に形成する。その結果、本発明の組成物は酸化に対する保護を提供し、1450℃よりも高い温度でさえこれらの温度レベルにおけるホウ素の消失にも関らず、またSiC下層が存在していないにも関らず効力を有する。
【0020】
この組成物は粉末形態にあるケイ素を含んでいてもよく、酸素をトラップしてさらなるシリカを生ずる働きをする。
【0021】
既に存在するホウ素とシリカに加えて、この組成物は粉末形態にあるホウケイ酸塩混合物を含んでいてもよい。
【0022】
ガラス改質酸化物をも加えてもよく、温度を保護ガラスの形成温度に順応させる。
【0023】
塗布した組成物を好ましくは90℃空気中で約1時間に亘り乾燥する。
【0024】
有利に、組成物を部品に塗布し、この組成物は乾燥後50マイクロメーター(μm)〜250μmの範囲にある平均厚さと1平方センチメートル当たり15ミリグラム(mg/cm)〜60mg/cmの範囲にある面密度を有する層を与える。
【0025】
また有利に、この組成物を部品に複数の連続する層として中間乾燥を伴って塗布する。
【0026】
任意に、本方法は組成物を塗布した後炭素樹脂またはセラミック前駆体樹脂を塗布すること、および上記樹脂を重合させること、またはラッピング−ガラス化熱処理を600℃〜1000℃の範囲にある温度で不活性雰囲気中行うことをさらに含んでいてもよい。このことは決して90℃にて乾燥させたものと比較して保護の効力を変えることはなく、組成物を起こり得る衝撃、摩擦等から保護する働きをする。
【0027】
また本発明は本発明の方法により得られる自己修復層を有し、大部分がホウケイ酸塩系により形成されている第1の自己修復相と、ケイ酸塩をベースとする第2の自己修復相と、炭化ケイ素粒子により形成される充填材とを含み、前記第2の自己修復相が少なくとも1種の超耐熱性酸化物を含有している複合材料部品を提供する。
【0028】
自己修復相は1種以上の以下の成分:粉末形態にあるケイ素;粉末形態にあるホウケイ酸塩混合物;および少なくとも1種のガラス改質酸化物をも含んでいてもよい。
【0029】
部品は機械的な保護表面層を抗酸化保護コーティング上に含んでいてもよい。
【0030】
部品は具体的にはC/C複合材料摩擦部品であるかロケットエンジンノズルのための末広部位であろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明を限定されない指摘として示す以下の詳細な記載を踏まえてより良く理解することができる。添付する図面を参照する。
【図1】図1は本発明の実施における自己修復層を形成するための一連の工程を示す図である。
【図2】図2は本発明の自己修復層に存在するSiC粒子の機能を示す図である。
【図3】図3は本発明に従って得られた保護コーティングの酸化性雰囲気中1500℃の温度での含有率を示すグラフである。
【図4】図4は本発明に従って得られた保護コーティングの酸化性雰囲気中1500℃の温度での含有率を示すグラフである。
【図5】図5は本発明に従って得られた保護コーティングの酸化性雰囲気中1500℃の温度での含有率を示すグラフである。
【0032】
実施の詳細な記載
本発明を図1を参照しながら、またC/C複合材料から作製された保護部品を酸化から保護するというその用途との観点で以下に記載する。本発明の詳細な用途は、特にロケットエンジンノズルの末広部位に関して、また航空機ブレーキディスク等の摩擦部に関して起こるのだが、高温に晒されることになるC/C複合材料部品を保護することにある。
【0033】
しかしながら、上記した通り本発明をあらゆる熱構造複合材料に適用することができ、熱構造複合材料は炭素、特には炭素繊維強化材を含むCMCまたは強化繊維と例えばSiCから作製されるセラミックマトリックスとの間の炭素界面相を与えるCMCを含んでいる。
【0034】
本方法の第1の工程10は保護されるべき部品面に塗布するための組成物を調製することからなる。
【0035】
上記組成物は以下の重量パーセント
・30%〜70%のコロイドシリカの水性懸濁液、例えば供給業者 Grace Davison からの製品 Ludox (商標登録)AS40;
・5%〜60%のホウ素粉末および/または特に二ホウ化金属(TiB、ZrB等)か酸化ホウ素(B等)から選択されるホウ素化合物の粉末;
・15%〜40%の炭化ケイ素粉末;
・1%〜10%の1種以上の超耐熱性酸化物(Y、HfO、Al、ZrO等);
・任意に5%〜15%のケイ素粉末;
・任意に5%〜20%のホウケイ酸ガラス成分であって、微粉化した(粉末)形態にあり大部分が酸化ホウ素と酸化ケイ素から構成されるもの;
・任意に1%〜10%の1種以上のガラス改質酸化物であって、粉末形態にあるもの
を含む。
【0036】
コロイドシリカの水性懸濁液は組成物の粉末形態にある他の成分のバインダーとして働く。
【0037】
好ましくは撹拌により均質化された後、組成物は保護されるべき部品面に塗布されるスラリーを生じ、塗布を例えばブラシかスプレーガンを用いるコーティングにより行ってもよい。塗布後、組成物をストーブ内で乾燥させる。塗布を複数の連続層となるように行ってもよく、例えば2つの層(工程20と40)であり各塗布工程後に乾燥工程(工程30と50)を伴う。
【0038】
堆積させる組成物の総量は好ましくは15mg/cm〜60mg/cmの範囲にあり、ストーブ内で乾燥した後、50マイクロメーター(μm)〜250μmの範囲にある厚さのコーティングを得る。
【0039】
コロイド状懸濁液を乾燥することは凝固した固体を生じる働きをし、これは組成物の粉末粒子と他の成分との間の凝集を提供し、また保護層を部品に接着させる。続く層を堆積させる前の中間乾燥は全体的な得られるコーティングの良好な均質性を高める。
【0040】
乾燥を空気中約90℃の温度で1時間行う。
【0041】
適切な保護層を形成した後にこれを樹脂で覆ってもよく、続いてその樹脂の性質に対応する温度で行う熱処理によって硬化させる。樹脂は具体的には炭素樹脂、例えばフェノール樹脂、またはセラミック前駆体樹脂、例えばポリカルボシラン(PCS)樹脂またはポリシロキサン樹脂であってもよい。樹脂を堆積し硬化させることは保護表面層を形成する働きをして機械的衝撃、摩擦、腐食等に対しての保護層の維持を強化する。
【0042】
同様に、保護層の維持を600℃〜1000℃の範囲にある温度における不活性雰囲気中での層のラッピング−ガラス化熱処理により強化してもよい。
【0043】
組成物を乾燥した後、また場合により樹脂を硬化させた後またはラッピング−ガラス化後には、コロイド状懸濁液に由来する、ホウ素および/またはホウ素化合物粉末に由来する、炭化ケイ素粉末に由来するおよび少なくとも1種の超耐熱性酸化物に由来する少なくともシリカ粒子を含む自己修復保護層を有する部品を得る。以下に説明する通り、これらの成分は保護コーティングを形成することができ、保護コーティングは大部分がホウケイ酸塩系から成る第1の自己修復相と、ケイ酸塩をベースとして少なくとも1種の超耐熱性酸化物および炭化ケイ素粒子から成る充填材を含む第2の自己修復相とを有する。
【0044】
意図される用途において、組成物を部品の外表面の全てに塗布してもよいし、一部にのみ塗布してもよいということが認められるであろう。例えば、ブレーキディスクに関しては、組成物を摩擦面以外の面にもっぱら塗布してもよく、またロケットエンジンノズルの末広部位については、組成物はその内面にのみ塗布してもよい。
【0045】
酸化物に用いた際の「超耐熱性」という語は2000℃を超える融解温度を有する酸化物を示す。
【0046】
水性分散液の形態にある用いられるコロイドシリカは組成物のバインダーとして働き、また種々の粉末の粒子を実質的に均一に分散させる働きをする。しかしながら、シリカもまた部品を保護する機能の一因となる(修復および拡散バリア)。というのもシリカは組成物の他のガラス形成種と組み合わさって拡散バリアを軟化状態で形成するからである。より正確には、約1450℃より低い温度において、シリカはホウ素と協力して[B+SiO]タイプの自己修復ホウケイ酸ガラスを形成して炭素をぬらし、拡散バリアを形成する。加えて、1450℃より高い温度においては、シリカは超耐熱性酸化物と協力して[SiO+超耐熱性酸化物]の自己修復ガラスを形成して炭化ケイ素粒子をぬらす。
【0047】
ホウ素(ホウ素元素またはホウ素化合物)は炭素をぬらす能力を提供して自己修復ガラスを1450℃より低い温度で形成することの一因となる。
【0048】
SiC粉末は保護すべき部品面上に連続的な保護フィルムを高温で、すなわち1450℃よりも高い温度で形成する働きをする。上述した通りこれらの温度からは保護層に存在するホウ素は殆ど消費されることにより、結果としてB保護酸化物を含み炭素をぬらす物質は消失する。このような状況下では、連続する保護フィルムを部品面に、特に炭素をぬらす不十分な能力ゆえにもはや形成することができない。図2に図式的に示すように、SiC粒子は炭素をぬらす能力のこの損失を緩和する働きをする。というのも、これらの温度において形成される自己修復ガラス([SiO+超耐熱性酸化物)]は保護すべき部品面に存在するSiC粒子をぬらし、これらの粒子自体が部品面における孔に機械的に固定されていることにより保持されるためである。軟化状態のガラスは滴の形態でSiC粒子の周りに広がる。部品面に存在するSiC粒子のサイズと近さはガラスの滴が互いに接触して保たれることを可能にし、それにより部品面において連続する保護層を形成する。
【0049】
SiC粉末の平均粒径を保護すべき部品にあるマクロ孔の平均サイズに対応して決定する。SiC粒子をマクロ孔に適切に固定することを確実にするためには、粒子はあまりにも大きなサイズであってはならない。さらに、SiC粒子はあまりにも小さなサイズを有していてもならない。粒子が酸化にあまりにも早く供され(SiCのシリカへの変化)、部品面の保護フィルムの不連続性につながる可能性を回避するためである。またSiC粒子の最小サイズは制限され、組成物の粘度を過度に高めることを塗布のために回避する。一例として、SiC粉末の平均粒径は5μm〜50μmの範囲にあってもよい。
【0050】
保護層に存在するシリカと組み合わせることにより、超耐熱性酸化物は軟化温度を1450℃付近に有する自己修復ガラスを形成する働きをする。このことは自己修復ガラス形成組成物を、拡散バリアを形成するに適した粘度にてホウケイ酸ガラスの保護効果がもはや保証されない温度で生ずる。
【0051】
また保護層はケイ素を粉末形態で含んでいてもよく、これは酸素トラップおよびシリカの生成源を構成する。
【0052】
さらに保護層は自己修復ホウケイ酸ガラスの前駆体を含んでいてもよく、これは保護層に既に存在するシリカおよびホウ素に加えて、部品を1450℃より低い温度で保護する機能に関与する。
【0053】
最終的に、ホウ素酸化物とケイ素酸化物に加えて、保護層は1種以上の酸化物を含んでいてもよく、ホウケイ酸ガラスが粘性を示して保護機能(修復および拡散バリア)を果たす温度範囲を調節する働きをする。特に、ガラス改質酸化物、例えばアルカリ元素の酸化物:NaO、KO、バリウム酸化物BaO、またはカルシウム酸化物CaO、またはマグネシウム酸化物MgO、ジルコニアZrO、アルミナAl、一酸化鉛PbO、酸化鉄を用いることができる。
【0054】
改質ホウケイ酸ガラスの一例は米国供給業者 Corning からの「PYLEX(商標登録)」ガラス粉末であり、以下の組成(重量パーセント):
SiO 80.60%
12.60%
NaO 4.2%
Al 2.25%
Cl 0.1%
CaO 0.1%
MgO 0.05%
Fe 0.04%
を主に有する。
【0055】
試験
本発明の自己修復層の効果を検証するために、C/C複合材料のサンプルに自己修復層を以下の条件下で与え、高温(1500℃)で試験した。
【0056】
サンプルはC/C複合材料ブロックであり、CVIにより得られる熱分解炭素マトリックスにより緻密にした炭素繊維強化材により構成されていた。
【0057】
以下の組成(割合を重量パーセントとして示す):
【表1】

【0058】
を調製した。
【0059】
組成物の全てを部品にブラシにより2層の連続する層で塗布し、90℃で乾燥した後はさらなる処理を行わない。以下に記載する機能はさらなる処理(硬化樹脂コーティングまたはラッピング)を行っても変化しないことが理解されるであろう。
【0060】
試験1
この例においては、同じC/C複合材料サンプルに自己修復層を与えた。各サンプルE、E、E、E、EおよびEを上記した組成物A、B、C、D、EおよびFを塗布することによりそれぞれ得られる異なるコーティングにより保護した。全ての組成物を上記した条件下で塗布した。
【0061】
サンプルE、E、E、EおよびEと異なり、サンプルE上の保護コーティングはSiC粉末を全く含んでいなかったことが理解されるであろう。
【0062】
図3は1500℃で乾燥空気に1時間晒した後に測定した相対的な重量変化を示す。
【0063】
試験サンプルの全てのコーティングは1500℃での保護の提供に要するガラス形成組成物を含んでいたが、サンプルEのみが重量損失を被るであろうことを理解することができる。
【0064】
この試験は連続保護フィルムが1450℃よりも高温で形成されることを引き起こすことにおけるSiC粉末の利点を示す。
【0065】
試験2
この例においては、同じC/C複合材料サンプルに自己修復層を与えた。各サンプルE、EおよびEを上記した組成物A、BおよびIを塗布することによりそれぞれ得られた異なるコーティングにより保護した。全ての組成物を上記した条件下で塗布した。
【0066】
サンプルEと異なり、サンプルEの保護コーティングはSiC粉末を全く含んでおらず、サンプルEの保護コーティングはSiC粉末と超耐熱性酸化物とを全く含んでいなかったことが理解されるであろう。
【0067】
図4は1500℃で乾燥空気に1時間晒した後に測定した相対的な重量変化を示す。
【0068】
重量低下はサンプルEよりもサンプルEのほうがより著しかったことを理解することができる。
【0069】
この試験はガラス形成組成物を意図する使用温度に適合させることにおける超耐熱性酸化物の利点を示す。
【0070】
試験3
この例においては、同じC/C複合材料サンプルに自己修復層を与えた。各サンプルE、EおよびEを上記した組成物F、GおよびHを塗布することによりそれぞれ得られた異なるコーティングにより保護した。全ての組成物を上記した条件下で塗布した。
【0071】
サンプルの保護コーティングはSiC粒子を全て含んでいるが、これらは異なる超耐熱性酸化物、すなわちサンプルEはY、サンプルEはHfOおよびサンプルEはAlを含んでいるという点で異なることが理解されるであろう。
【0072】
図5は1500℃で乾燥空気に1時間晒した後に測定した相対的な重量変化を示す。
【0073】
サンプルEとサンプルEが重量を減らしたことを理解することができる。
【0074】
この試験は酸化に対する1500℃における保護はHfOまたはAlの場合よりもYの場合により有効であるということを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料部品上に自己修復層を形成する方法であって、前記方法は組成物を前記部品に塗布することを含み、前記組成物が
・コロイドシリカの懸濁液と、
・粉末形態にあるホウ素またはホウ素化合物と、
・粉末形態にある炭化ケイ素と、
・少なくとも1種の超耐熱性酸化物
とを含有している方法。
【請求項2】
前記組成物が粉末形態にあるケイ素も含有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が粉末形態にあるホウケイ酸塩混合物も含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が少なくとも1種のガラス改質酸化物も含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化ケイ素粉末は5μm〜50μmの範囲にある平均粒径を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記塗布した組成物を乾燥する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
組成物を前記部品に塗布し、前記組成物は乾燥後50μm〜250μmの範囲にある平均厚さと15mg/cm〜60mg/cmの範囲にある面密度とを有する層を与えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物を前記部品に複数の連続する層として、中間乾燥を伴って塗布することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物を塗布した後、炭素樹脂またはセラミック前駆体樹脂の層を塗布すること、および前記樹脂を重合させることをさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物を塗布した後、ラッピング−ガラス化熱処理を600℃〜1000℃の範囲にある温度で不活性雰囲気中行うことをさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
大部分がホウケイ酸塩系により形成されている第1の自己修復相を含む酸化に対しての保護コーティングを有する複合材料部品であって、前記部品は前記コーティングがケイ酸塩をベースとする第2の自己修復相および炭化ケイ素粒子により形成される充填材をさらに含んでおり、前記第2の自己修復相が少なくとも1種の超耐熱性酸化物を含有していることを特徴とする複合材料部品。
【請求項12】
前記コーティングが粉末形態にあるケイ素をさらに含有していることを特徴とする請求項11に記載の部品。
【請求項13】
前記コーティングが粉末形態にあるホウケイ酸塩混合物をさらに含有していることを特徴とする請求項11または12に記載の部品。
【請求項14】
前記コーティングが少なくとも1種のガラス改質酸化物をさらに含有していることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の部品。
【請求項15】
前記炭化ケイ素粒子は5μm〜50μmの範囲にある平均サイズを示すことを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の部品。
【請求項16】
機械的な保護表面層を抗酸化保護コーティング上にさらに含んでいることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の部品。
【請求項17】
炭素/炭素複合材料から作製される摩擦部品の構成要素となる請求項11〜16のいずれか1項に記載の部品。
【請求項18】
保護コーティングがその摩擦面以外のその表面に設けられていることを特徴とする請求項17に記載の部品。
【請求項19】
炭素/炭素複合材料から作製されているロケットエンジンノズルの末広部品を構成し、その少なくとも内面には抗酸化保護コーティングが設けられている請求項11〜16のいずれか1項に記載の部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−522099(P2011−522099A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512188(P2011−512188)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051065
【国際公開番号】WO2010/001021
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】