説明

C5−C6で環化されたフォトクロミック2H−クロメンおよびその調製方法

少なくとも1つの電子求引基を有する、C5−C6で環化されたナフトピランがここに開示されている。この化合物は、増加した退色反応速度などの望ましい性質を有する。C5−C6で環化された2H−クロメンを合成する新規の方法もここに記載されている。この方法は、それほど厳しくない反応条件を含み、増加した反応収率も提供する。この方法により、以前の合成経路では可能ではなかった、温度感受性であり得る多種多様のナフトピランの合成が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本発明は、2008年8月27日に出願された米国仮特許出願第61/092191号の、米国法典第35編第119条(e)の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、C5−C6で環化されたフォトクロミック2H−クロメンおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
5−C6で環化されたナフトピランは、例えば、紫外線などの多色光または単色光の影響下で変色できるフォトクロミック化合物である。次いで、この化合物は、照射がやめられたときに、または温度の影響下および/または最初の光とは異なる多色光または単色光の影響下で、元の色に戻る。C5−C6で環化されたナフトピランには、例えば、眼用レンズ、コンタクトレンズ、太陽光保護ガラス、フィルタ、カメラの光学素子または他の光学装置と観察装置、板ガラス、および装飾物品の製造などの様々な分野に用途が見出されている。C5−C6で環化された2H−クロメンは、ある場合には、紫外線照射の際に、ニュートラルグレイ色または褐色を呈し、このことは、所望の色合いを得るために異なる色の染料の混合物を使用する必要がないので、フォトクロミックレンズに使用するときに、特に興味深い。実際に、異なる色の染料は、紫外線エージングに対する異なる耐性、異なる退色反応速度、または異なる熱依存性を有し、このことは、使用中にレンズの色合いが変化する原因となる。例えば、眼用レンズの場合には、フォトクロミック製品が、見ることの快適さおよび安全上の理由(例えば、運転中)の両方のために、紫外線のない状況下で迅速に脱色することが非常に望ましい。
【0004】
5−C6で環化されたナフトピランの合成が以前に記載された。ある手法は、R−置換された1−フェニル−3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−ワンのシアノ酢酸エチルとの反応を含み、その後、分子内フリーデル・クラフツ環化が行われて、シアノ置換ナフトールが生成される。R置換基に応じて、この反応の収率は非常に低くなるであろう。このため、最終的に、ナフトピランの精製時間と製造コストが増加してしまう。さらに、このプロセスは高温を伴う。例えば、フリーデル・クラフツ環化は200℃で行われ、シアノ基の除去は高温(220℃)を伴い、このことは、ナフトピラン上に存在する、例えば、電子求引基などの多くの温度感受性置換基とって問題である。そのような置換基は、染料のフォトクロミック特性を調節する上で有用であるかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、それほど厳しくない反応条件しか必要とせず、増加した収率を提供する、C5−C6で環化された2H−クロメンを調製するための合成手法を有することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1つの電子求引基を有する、C5−C6で環化されたナフトピランがここに開示されている。この化合物は、増加した退色反応速度などの望ましい性質を有する。C5−C6で環化された2H−クロメンを合成する新規の方法もここに記載されている。この方法は、それほど厳しくない反応条件を含み、増加した反応収率も提供する。この方法により、以前の合成経路では可能ではなかった、温度感受性であり得る多種多様のナフトピランの合成が可能になる。本発明の利点は、一部は、以下の説明に述べられており、一部は、その説明または特許請求の範囲から自明であろう。先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単なる例示と説明であり、制限するものではないことが理解されよう。
【0007】
本明細書に包含され、その一部を構成する添付の図面は、以下の記載されたいくつかの態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ここに記載された方法を使用して、C5−C6で環化された2H−クロメンを合成するための一般的な反応を示す図
【図2】ここに記載された方法を使用して、C5−C6で環化された2H−クロメンを合成するための例示の反応を示す図
【図3】ここに記載されたいくつかの化合物のt1/2(すなわち、退色の半減時間)を決定するためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化合物、組成物、物品、装置、および/または方法を開示し、説明する前に、以下に記載する実施例は、特定の化合物、合成方法または使用には制限されず、もちろん、様々であってよいことが理解されよう。ここに使用される用語法は、特定の実施例を説明する目的のためだけであって、制限を意図するものではないことも理解されよう。
【0010】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有するものと定義されるいくつかの用語を参照する。
【0011】
明細書および添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数形は、前後関係で明白にそうではないと示されていない限り、複数を含むことに留意すべきである。それゆえ、例えば、「溶媒」への言及は、別記されない限り、そのような溶媒2種類以上の混合物などを含む。
【0012】
「随意的な」または「必要に応じて」とは、その後に記載された事象または環境が生じ得るまたは生じ得ないことを意味し、その記載は、その事象または環境が生じる場合と、生じない場合を含むことを意味する。
【0013】
「ハロゲン」という用語は、ここでは、フッ素、塩素、または臭素として定義される。
【0014】
「アルキル基」という用語は、ここに用いたように、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどの、1から12の炭素原子の分岐または未分岐の飽和炭化水素基である。
【0015】
「アルコキシ」という用語は、Rがここに定義されたようなアルキル基である、−ORとしてここに定義される。
【0016】
「アリールオキシ」という用語は、R’がここに定義されたようなアリール基である、−OR’としてここに定義される。
【0017】
「シクロアルキル基」という用語は、ここに用いたように、少なくとも3つの炭素原子を含む非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例としては、以下に限られないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。「ヘテロシクロアルキル基」という用語は、環の炭素原子の内の少なくとも1つが、以下に限られないが、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどのヘテロ原子により置換されている、先に定義されたようなシクロアルキル基である。
【0018】
「ハロアルキル基」という用語は、少なくとも1つの水素原子がハロゲンにより置換されている、先に定義されたようなアルキル基としてここに定義される。例えば、アルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素により置換されていて差し支えない。あるいは、アルキル基上の水素原子の全てがフッ素により置換されていても差し支えない。
【0019】
「ハロシクロアルキル基」という用語は、少なくとも1つの水素原子がハロゲンにより置換されている、先に定義されようなシクロアルキル基としてここに定義される。
【0020】
「ハロアルコキシ」という用語は、Rが、少なくとも1つの水素原子がハロゲンにより置換されているここに定義されたアルキル基である、−ORとしてここに定義される。
【0021】
「アリール基または芳香環」という用語は、ここに用いたように、以下に限られないが、ベンゼン、ナフタレンなどを含む任意の炭素系の芳香族基である。「アリールまたは芳香族」という用語は「ヘテロアリール基」も含み、これは、アリール基または芳香族基の環に少なくとも1つのヘテロ原子が含まれる、アリール基または芳香族基として定義される。ヘテロ原子の例としては、以下に限られないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。このアリール基は置換されていても、未置換であっても差し支えない。アリール基は、以下に限られないが、アルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、またはアルコキシを含む、1種類以上の基により置換されていて差し支えない。
【0022】
「アラルキル基」という用語は、アルキル基により置換されたアリール基としてここに定義される。
【0023】
「ヘテロアラルキル基」という用語は、アルキル基により置換されたヘテロアリール基としてここに定義される。あるいは、ヘテロアラルキル基は、アリール基に結合したヘテロアルキル基も含む。
【0024】
「フェノキシ基」という用語は、ここに定義されたアルコキシまたはアリールオキシ基を少なくとも1つ有するフェニル基としてここに定義される。このフェニル環は、未置換であっても、例えば、アルキル基などの追加の基1つ以上により置換されていても差し支えない。
【0025】
「ナフトキシ基」という用語は、ここに定義されたアルコキシまたはアリールオキシ基を少なくとも1つ有するナフテニル基としてここに定義される。ナフテニル環は、未置換であっても、例えば、アルキル基などの追加の基1つ以上により置換されていても差し支えない。
【0026】
「アミン基」という用語は、−NRR’としてここに定義され、ここで、RおよびR’は、独立して、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、ハロシクロアルキル基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、フェノキシ基、またはナフトキシ基である。RおよびR’は他の有機基であって差し支えないので、このリストは、制限を意図するものではない。あるいは、RおよびR’は1つの環を形成しても差し支えない。例えば、−NRR’は、5、6または7員環の一部であって差し支えない。
【0027】
「ハロゲン」という用語は、ここに用いたように、フッ素、塩素、または臭素を含む。
【0028】
「エステル」という用語は、ここに用いたように、式−COCR’を有し、ここで、R’は、ここに定義されたようなアルキル基またはアリール基である。
【0029】
「ケト」という用語は、ここに用いたように、式−C(O)R’を有し、ここで、R’は、ここに定義されたようなアルキル基またはアリール基である。
【0030】
「アミド」という用語は、ここに用いたように、式C(O)NR’R”を有し、ここで、R’およびR”は、独立して、ここに定義されたような、水素、アルキル基、またはアリール基である。
【0031】
「スルホン」という用語は、ここに用いたように、式−S(=O)(=O)−R’を有し、ここで、R’は、ここに定義されたようなアルキル基またはアリール基である。
【0032】
本明細書の全体に亘り使用されているR1〜R9、a、n、o、p、q、およびrなどの変数は、そうではないと述べられていない限り、先に定義されたものと同じ変数である。
【0033】
本発明を、様々な実施例を具体的に参照してここに説明する。以下の実施例は、本発明の制限を意図するものではなく、むしろ、例示の実施の形態として提供されたものである。C5−C6で環化された2H−クロメンを合成する方法がここに記載されている。2H−クロメンを合成するための一般的な反応を示す図が図1に示されており、特別な反応順序が図2に与えられている。
【0034】
図1を参照すると、第1の工程は、ケトンIを、構造IIを有するイリドと反応させて、エステル化合物Aを生成する工程を含む。この反応は、一般に、ウィッティヒ反応と称される。ウィッティヒ反応において、イリドIIはIのカルボニル基と反応して、以下に示されるようなA’を生成し、これはその後、より安定な構造Aに異性化する。
【化1】

【0035】
ケトンIを調製する方法が当該技術分野において公知である。例えば、ここに引用される、米国特許第6506538号明細書およびB. L. Jensen, S. V. Slobodzian, Tetrahedron Letters, 2000, 41, 6029に開示されている方法を使用して、ケトンIを製造することができる。ある態様において、nは1または2である。nが1である場合、その環は5員環であり、nが2である場合、その環は6員環である。別の態様において、R1は、独立して、水素、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロシクロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、置換または未置換フェノキシまたはナフトキシ基、アミン基、アミド基、−OC(O)R5または−COOR5基であって差し支えなく、ここで、R5は、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、または電子求引基であり得る。R1基の数は1から4までであり得る。ある態様において、2つの隣接するR1基が存在する場合、それらが一緒になって、単一環または2つの環化された環を含む、少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を形成しても差し支えない。例えば、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基またはフェニル基などのアリール基を、ケトンIにおけるアリール環に縮合しても差し支えない。さらに別の態様において、Aにおける各R9は、独立して、水素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリールまたはアルコキシ基であり、qは1から3までである。ある態様において、2つの隣接するR9が存在する場合、それらが一緒になって、必要に応じて、少なくとも1つの置換基により置換された、少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を形成してもよい。
【0036】
ケトンIを参照すると、aは置換または未置換の縮合芳香環である。この芳香環は、1つの環(例えば、フェニル)または互いに縮合した多数の環(例えば、ナフタレン、アントラセンなど)であって差し支えない。この芳香環は、未置換であっても、上述したR1基1つ以上により置換されていても差し支えない。また、芳香環はここに定義されたようなヘテロアリール基であって差し支えないと考えられる。
【0037】
ある態様において、ケトンIに関して、aは置換または未置換のフェニル環であり、R1はハロアルキル基であり、nは2であり、oは1である。別の態様において、aは置換または未置換のフェニル環であり、R1はトリフルオロメチル基であり、nは2であり、oは1である。
【0038】
図1における式IIを有するイリドは構造に制限がない。ある態様において、R2およびR4は、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であって差し支えない。別の態様において、R3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であって差し支えない。別の態様において、R2はフェニル基であり、R3は水素であり、R4はアルキル基(例えば、メチル、エチルなど)である。ウィッティヒ反応に使用するための式IIを有するイリドの合成は当該技術分野において公知である(“Phosphrous Ylides: Chemistry and application in Synthesis” by Oleg I. Kolodiazhnyi, Wiley-VCH, New York, 1999; および“Methods for the preparation of C-substituted phosphorus ylides and their application in synthesis” Oleg I Kolodiazhnyi, Russ. Chem. Rev., 1997, 66, 225-254を参照のこと)。
【0039】
ウィッティヒ反応を行うための条件は比較的穏やかである。例えば、ケトンIおよびイリドIIを適切な有機溶媒に加え、この反応を完了するのに十分な時間に亘り加熱することができる。ウィッティヒ反応を行うための詳細な実験手法が実施例に与えられている。
【0040】
図1を参照すると、次の工程は、化合物Aを加水分解して、化合物Bを生成する工程を含む。式Aを有する任意の化合物を、加水分解工程の出発材料として使用して差し支えないのが理解されよう。この加水分解工程は、一般に、穏やかな条件下で行われる。ある態様において、加水分解工程は、100℃未満の温度で2時間未満に亘り行われる。別の態様において、加水分解工程は、約80℃で約1時間に亘り行われる。本発明の最初の二工程の反応条件は、従来技術の技法よりも著しく穏やかである。例えば、米国特許第6506538号明細書に開示された技法は、R−置換された1−フェニル−3,4−ジヒドロ−1H−ナフタレン−2−ワンのシアノ酢酸エチルとの反応を含み、その後、分子内フリーデル・クラフツ環化が行われて、シアノ置換ナフトールが生成される。このフリーデル・クラフツ反応は200℃で行われ、このエステルの加水分解およびシアノ基の除去は、さらに高い温度(220℃)を伴い、このことは、温度感受性置換基にとって問題である。このプロセス全体は高温で24時間より長くかかる。さらに、R置換基に応じて、反応の収率は非常に低いかもしれず、これにより、その材料の精製時間と製造コストが増加してしまう。反対に、ここに記載された最初の二工程は実質的に穏やかであり、反応時間が短く、反応温度が低く、化合物Bの収率は増加している(例えば、85〜92%)。
【0041】
次の工程は、式Bを有する化合物のフリーデル・クラフツ環化を行って、式Cを有する化合物を生成する工程を含む。このフリーデル・クラフツ環化を行う条件は当該技術分野において公知である。この環化は、様々な条件下で行うことができる。一般に、環化は、例えば、AlCl3、TiCl4またはBF3・Et2Oなどのルイス酸の存在下で行われる。式Bに存在する置換基に依存して、高酸性から非常に弱酸性までに及ぶ異なるルイス酸を使用することができる。ある態様において、環化工程は、無水物およびその無水物のナトリウム塩の存在下で行われる。例えば、環化は、Ac2O/NaOAcの存在下で行われ、ここで、式CにおけるR8はメチルであり、これは、反応体からのアセチル基に由来する。R8は、ここに定義された他のアルキル基であっても差し支えない。
【0042】
ある態様において、環化工程を行って、式Cを有する化合物を生成した後、この化合物に第2の加水分解工程を行って、構造Dを有する化合物(図1)を生成し、ここで、アセチル基がヒドロキシル基に転化される。上述した第1の加水分解工程と同様に、第2の加水分解工程では穏やかな条件しか必要ない。ある態様において、第2の加水分解工程は、100℃未満の温度で2時間未満に亘り行われる。別の態様において、加水分解工程は、約80℃で約1時間に亘り行われる。上述したように、以前の合成技法では、厳しい条件下(例えば、6時間に亘り200〜220℃の高温でのn−ブタノール中の水酸化カリウム)ワンポット反応において、シアノ基を加水分解し、除去している。さらに、この反応の一連の実験手法(work-up)は難しく、その結果として、収率が低くなる。式Dを有する化合物を生成するためのここに記載された方法は、ずっと穏やかな条件を伴う(例えば、1時間に亘る80℃での水酸化ナトリウムのメタノール溶液の使用)。加水分解生成物のDは、非常に高い収率で得られる(例えば、75%から定量的収率の範囲)。
【0043】
ここに記載された方法は、C5−C6で環化されたナフトピランの製造に有用な化合物を生成する都合よい様式を提供する。上述したように、この群の化合物には多種多様の用途があり、ここに記載された方法は、既存の合成技法を使用して製造できなかった、または比較的低い収率でしか製造できなかった数多くの異なる化合物への到達手段を提供する。構造Dを有する化合物への到達が容易であるため、当該技術分野において公知の技法を使用して、式Eを有する数多くの置換されたフォトクロミック化合物(図1)を製造することが可能である。例えば、式Dを有する化合物を下記のプロパルギルアルコールFと反応させて、構造Eを有する化合物を生成することができる
【化2】

【0044】
ここで、R6およびR6'は、独立して、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロシクロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、もしくは置換または未置換のフェノキシまたはナフトキシ基である。この反応の実験手法が、実施例および米国特許第6506538号明細書に与えられている。
【0045】
ここに記載された方法により、他の技法により製造できなかった、敏感な基(例えば、電子求引基)を有する式Eの化合物を合成することができる。例えば、高温およびアルカリ性条件を使用する従来技術の技法では、式EにおけるR1でのフルオロアルキル基およびシアノ基が加水分解されるであろう。さらに、ここに記載された方法を使用して、合成の各工程での高い反応収率が可能である。例えば、実施例における表1は、4種類の異なる反応系に関する反応収率を列記している。
【0046】
上述した方法により製造される特有の化合物もここに記載されている。例えば、式A〜Dを有する化合物は、ここに記載された方法の結果として製造された新規かつ有用な化合物である。ある態様において、化合物が式Aを有する場合、aは置換または未置換のフェニル環であり、R1は、例えば、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基であり、nは2であり、oは1であり、R3は水素であり、R4はアルキル基である。別の態様において、化合物が式Bを有する場合、aは置換または未置換のフェニル環であり、R1は、例えば、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基であり、nは2であり、oは1であり、R3は水素である。さらに別の態様において、化合物が式Cを有する場合、aは置換または未置換のフェニル環であり、R1は、例えば、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基であり、nは2であり、oは1であり、R3は水素である。別の態様において、化合物が式Dを有する場合、aは置換または未置換のフェニル環であり、R1は、例えば、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基であり、nは2であり、oは1であり、R3は水素である。
【0047】
ある態様において、ここに記載された方法は、式G
【化3】

【0048】
を有する化合物を生成することができ、ここで、
1は、水素、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、もしくはアラルキルまたはヘテロアラルキル基であり、
EWGは電子求引基であり、
pは1から4までであり、
qは1または2であり、
rは1から3までであり、
各R6、R6'、およびR7は、独立して、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロシクロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、もしくは置換または未置換のフェノキシまたはナフトキシ基であり、
各R9は、独立して、水素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリールまたはアルコキシ基であり、2つの隣接するR9基が存在する場合、それらは、少なくとも1つの置換基により必要に応じて置換された、少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を形成してもよい。
【0049】
式Gを有する化合物は、C1,C2,C3またはC4で少なくとも1つの電子求引基(EWG)を有する。「電子求引基」という用語は、ここに用いたように、芳香環から電子密度を除去するまたは引きつけ、それゆえ、電子求引基を有さない同じ芳香環と比べたときに、その芳香環を電子不足にする任意の基である。電子求引基の例としては、以下に限られないが、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アルデヒド基、ケト基、スルホン基、アミド基、ハロアルキル基、またはハロシクロアルキル基が挙げられる。
【0050】
ある態様において、電子求引基は式GのC2またはC3にある。1つの態様において、電子求引基は、例えば、C2またはC3にあるトリフルオロメチル基などのハロアルキル基である。他の態様において、電子求引基は、C2またはC3にある式−C(O)R5を有するケト基であり、ここで、R5は、直鎖または分岐鎖アルキルまたはアリール基である。
【0051】
式Gにおける他の基は、化合物の用途に応じて様々であり得る。ある態様において、R1は水素またはアルコキシ基である。別の態様において、R1は水素またはアルコキシ基であり、pは1であり、R7は水素またはアルコキシ基である。さらに別の態様において、R1は水素またはアルコキシ基であり、pは1であり、R7は水素またはアルコキシ基であり、qは1であり、R9は水素である。
【0052】
ある態様において、電子求引基はC2またはC3にあるトリフルオロメチル基であり、R1は水素であり、pは1であり、R7は水素またはアルコキシ基であり、qは1であり、R9は水素であり、各R6は、独立して、アリールまたはヘテロアリール基である。別の態様において、電子求引基はC2またはC3にある−C(O)R5であり、ここで、R5は直鎖または分岐鎖アルキル基またはアリール基であり、R1は水素またはアルコキシ基であり、pは1であり、R7は水素またはアルコキシ基であり、qは1であり、R9は水素であり、各R6は、独立して、アリールまたはヘテロアリール基である。式Gを有する化合物の追加の例並びに特定の反応条件が、以下の実施例に与えられている。
【0053】
式Gを有する化合物は望ましいフォトクロミック特性を有する。例えば、その化合物は速い退色反応速度を示す。ある態様において、その化合物は、電子求引基を有さない同様の化合物と比べて増加した退色反応速度を有する。例えば、実施例に記載された化合物を有するアクリルマトリクス中に分散させた化合物は、10秒から35秒の退色半減時間(t1/2)により測定される退色反応速度を有する。これは、同じマトリクス中において約70秒から80秒であり得る、電子求引基を有さない場合のt1/2値よりも著しく短い。退色反応速度を測定する技法が実施例に与えられている。さらに、電子求引基の存在は、活性化状態にある化合物の色にはほとんど影響しない。
【0054】
式Gを有する化合物は、様々な高分子マトリクス中に含ませることができ、これは、最終的に、多種多様の異なる物品を製造するために使用できる。一般に、式Gを有する化合物が中に含まれるまたは上に被覆される高分子マトリクスは、初期状態で無色またはわずかに着色されており、紫外線(365nm)に曝露されると、または太陽光のタイプの光源下で、濃い色を発色する。最終的に、照射が一旦やめられると、高分子マトリクスは元の色合いに戻る。式Gを有する化合物は、単独で用いても、または他のフォトクロミック材料との組合せで用いても差し支えない。式Gを有する化合物を2種類以上使用して、物品を製造しても差し支えないと考えられる。
【0055】
ここにおいて有用なポリマーの例としては、以下に限られないが、必要に応じてハロゲン化された、または少なくとも1つのエーテルおよび/またはエステルおよび/または炭酸および/またはカルバミン酸および/またはチオカルバミン酸および/または尿素および/またはアミド基を含む、アルキル、シクロアルキル、(ポリまたはオリゴ)エチレングリコール、アリールまたはアリールアルキルモノ−、ジ−、トリ−またはテトラアクリレートもしくはモノ−、ジ−、トリ−またはテトラメタクリレート;ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAポリカーボネート、ジアリルジエチレングリコールポリカーボネート)、ポリカルバメート、ポリエポキシ、ポリウレア、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、脂肪族または芳香族ポリエステル、ビニルポリマー、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸−プロピオン酸セルロース、またはポリビニルブチラールが挙げられる。上述した材料から誘導されたホモポリマーおよびコポリマーをここに使用しても差し支えない。
【0056】
式Gを有する化合物は、太陽光への曝露または太陽光の入射を防ぐことが望ましいどのような物品に含ませても、または塗布しても差し支えない。ある態様において、その物品は、眼用レンズ、フォトクロミック太陽光保護レンズ、板ガラス(建物の窓、機関車の窓、自動車の窓などの)、光学装置、装飾物品、および太陽光保護物品であって差し支えない。
【実施例】
【0057】
ここに記載された方法を、ここに、様々な実施例を具体的に参照して検討する。以下の実施例は、本発明の制限を意図するものではなく、むしろ、例示の実施の形態として与えられている。数(例えば、量、温度など)についての精度を確実にするために努力したが、ある程度の誤差および偏差が生じているであろう。別記しない限り、部は質量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧またはその辺りである。
【0058】
I. ここに記載された方法を使用したC5−C6で環化されたナフトピランの調製
以下に参照される全ての番号付けは図2に示されている。表1には、4つの異なる化合物系に関する以下に記載された工程1〜5の反応収率が与えられている。
【0059】
工程1:ウィッティヒ反応
【化4】

【0060】
還流冷却器およびアルゴン風船が取り付けられた二口フラスコ内で、ケトン1(1.7g、5.3ミリモル)およびウィッティヒイリド2(3.7g、10.6ミリモル)を乾燥トルエン(20ml)中に入れ、12時間に亘り130℃(油浴温度)で還流した。次いで、トルエンを真空下で除去し、この混合物を、ヘキサン−酢酸エチル(97:3)の混合物を用いて、シリカゲルカラムのカラム・クロマトグラフィーによって精製し、これにより、61%(1.26g、3.3ミリモル)の異性化されたオレフィンエステル付加物3が得られた。FT-IR (KBr, υmax/cm-1): 1107, 1156, 1328, 1499, 1604, 1724, 2833, 2928. 1HNMR (300MHz,CDCl3,): δ 1.23 (t, 3H, J=7.1), 2.46 (t, 2H, J1=8.3 Hz, J2=7.5 Hz), 2.86(t, 2H, J1=7.4 Hz, J2=8.2 Hz), 3.04 (s, 2H), 3.64 (s, 3H), 4.11 (q, 2H, J=14.3 Hz), 6.09 (d, 1H, J=2.6 HZ), 6.67 (dd, 1H, J1=8.2 Hz, J2=2.6 Hz), 7.09 (d, 1H, J=8.2 Hz), 7.33(d, 2H, J=7.9 Hz), 7.66 (d, 2H , J=7.9 Hz)。13CNMR(75MHz,CDCl3): δ 14.14, 27.16, 28.67, 40.63, 55.17, 60.73, 110.98, 112.88, 125.41, 127.46, 127.88, 28.95, 129.25, 130.51, 131.76, 135.89, 136.72, 142.74, 158.16, 170.96. LRMS(FAB) : Calculated for C22H21O3F3 390.40; m/z found 390.86。
【0061】
工程2:ウィッティヒ付加物の加水分解
【化5】

【0062】
ウィッティヒ付加物3(1.4g、3.58ミリモル)をメタノール(15ml)中に溶解させ、NaOH溶液(10%水溶液、3ml)と混合し、1時間に亘り80℃で還流させた。メタノールを減圧下で除去し、次いで、この混合物を濃HCl(1ml)で酸性化した。沈殿した残留物を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、酢酸エチル/ヘキサン(20:80)を使用したシリカゲルのカラムで生成して、白色の結晶質固体として、89%の収率(1.15g、3.18ミリモル)で酸4を生成した。FT-IR (KBr,υmax/cm-1): 1240, 1327, 1498, 1687, 2934. 1HNMR (300MHz,CDCl3,): δ 2.48 (t, 2H, J1=8.1, J2=7.5 Hz), 2.87 (t, 2H J1=7.5 J2 = 7.7 Hz), 3.09 (s, 2H), 3.63 (s, 3H), 6.09 (s, 1H), 6.68 (d, 1H, J=10.3 Hz), 7.09 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 7.33 (d, 2H, J= 7.7 Hz), 7.67 (d, 2H, J = 8.01Hz). 13CNMR (75MHz,CDCl3): δ 27.10, 28.63, 40.24, 55.20, 111.19, 112.99, 125.52, 125.57, 127.44, 127.94, 129.39, 130.42, 130.72, 136.51, 142.49, 158.16, 177.34. LRMS (FAB): Calculated for C20H17F3O3: 362.34; found: 363.76 (M+1) 。
【0063】
工程3:フリーデル・クラフツ環化
【化6】

【0064】
酸4(1.1g、3.04ミリモル)を無水酢酸(5ml)および酢酸ナトリウム(498mg、6.07ミリモル)と混合し、この混合物を3時間に亘り80℃で加熱した。次いで、この混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、重炭酸ナトリウムの固体で中和して、酢酸の全てを除去した。この有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。その残留物を、酢酸エチル/ヘキサン(5:95)を使用してシリカゲルのカラムで精製して、粘着性固体として79%のアクリル化ナフトール5(0.930g、2.40ミリモル)を生成した。FT-IR (neat,υmax/cm-1): 1114, 1155, 1205, 1315, 1375, 1598, 2951, 3327. 1HNMR (300MHz,CDCl3,):δ 2.5 (s,3H), 2.76 (t, 2H J1= 6.6 Hz, J2= 5.7Hz), 2.89 (t, 2H J1= 5.6 Hz, J2= 6.6 Hz), 3.84 (s, 2H), 6.85 (dd, 1H, J1= 8.2 Hz, J2= 2.5 Hz), 7.24-7.45 (m, 3H), 7.67 (d, 1H, J=9.02 Hz), 8.20 (s, 1H), 8.68 (d, 1H, J=9.03 Hz). 13CNMR (75MHz, CDCl3): δ21.07, 28.09, 30.96, 55.44, 112.12, 115.12, 119.49, 120.04, 122.12, 125.81, 126.05, 127.04, 127.37, 128.54, 130.19, 131.48, 132.18, 133.89, 139.80, 145.88, 158.00, 169.37. LRMS (FAB): Calculated for C22H17F3O3 : 386.36; found 386.78。
【0065】
工程4:アクリル化ナフトールの加水分解
【化7】

【0066】
アクリル化ナフトール5(930mg、2.40ミリモル)をメタノール(10ml)中に溶解させ、次いで、NaOH溶液(10%水溶液、3ml)と混合し、1時間に亘り80℃で還流した。メタノールを真空下で除去し、次いで、この混合物を濃HCl(0.5ml)で酸性化した。沈殿したナフトール6を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、酢酸エチル/ヘキサン(10:90)を使用してシリカゲルのカラムで精製して、白色固体として97%の収率で6(0.818g、2.38ミリモル)を得た。FT-IR (KBr,υmax/cm-1): 1114, 1155, 1205, 1315, 1375, 1598, 2951, 3327. 1HNMR (300MHz, CDCl3,): δ 2.80 (m, 4H), 3.86 (s, 3H), 5.78 (s, 1H), 6.79-6.84 (m, 2H), 7.28 (s, 1H), 7.37 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 7.65 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 8.62 (t, 2H, J1=9 Hz, J2=12.1Hz). 13CNMR (75MHz, CDCl3): δ 28.26, 31.18, 55.46, 110.48, 111.33, 114.50, 120.40, 120.46, 122.19, 123.38, 125.00, 125.80, 126.26, 128.32, 131.08, 132.41, 134.52, 140.49, 151.26, 157.98. LRMS (FAB): Calculated for C20H15F3O2:344.33; found 344.69。
【0067】
工程5:最終的な縮合
【化8】

【0068】
100mlの丸底フラスコ内で、ナフトール6(150mg、0.43ミリモル)および7(155.4mg、0.48ミリモル)の混合物をベンゼン(10ml)中に溶解させた。この混合物に、カンファースルホン酸(20mg)を加え、3時間に亘り室温で撹拌した。TLCによりモニタした反応の完了後、過剰の溶媒を蒸発させた後、粗製材料のカラム・クロマトグラフィーの精製により、95%の収率で270mgの8が生成された。FT-IR (neat,υmax/cm-1): 1123, 1180, 1247, 1317,1370, 1506, 1607, 2980. 1H NMR (300MHz, CDCl3,): δ 1.29 (d, 12H, J = 5.9 Hz), 2.70 - 2.85 (m, 4H), 3.80 (s, 3H), 4.45-4.53 (m, 2H), 6.21 (d, 1H, J = 9.9 Hz), 6.76-6.83 (m, 5H), 6.93(d, 1H, J=10.0 Hz), 7.22-7.26 (m, 2H), 7.36 (d, 4H, J=8.7Hz), 7.56 (d, 1H, J=7.3 Hz), 8.52 (d, 1H, J=8.7 Hz), 8.65 (s, 1H). 13CNMR (75 MHz, CDCl3): δ 21.99, 26.07, 28.00, 29.03, 55.32, 69.71, 82.83, 119.46, 120.32, 121.76, 123.53, 125.31, 126.20, 126.39, 126.63, 128.08, 128.23, 129.28, 130.59, 131.99, 134.68, 136.42, 136.64, 147.86, 157.43, 157.97. LRMS (FAB): Calculated for C41H39F3O4 652.28: found 652.17。
【表1】

【0069】
II. メトキシ置換されたC5−C6で環化されたナフトピランの調製
工程1:4,4’−ジイソプロポキシベンゾフェノンの合成
【化9】

【0070】
化合物9(1g、4.6ミリモル)を、還流冷却器を備えた100mlの丸底フラスコ内で20mlの乾燥アセトン中に溶解させた。この混合物に、K2CO3(3.2g、5当量、9.33ミリモル)、臭化イソプロピル(10当量、46ミリモル)および臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)(0.5当量)を加えた。この混合物を60℃で30時間に亘り還流した。反応が完了したときに(TLCによりモニタした)、アセトンをロータリー・エバポレータにより減圧下で除去し、残りを蒸留水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(25ml×3回)。有機層を分離し、塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、その後、粗製材料のカラム・クロマトグラフィーの精製により、白色固体として82%の収率で化合物10を生成した。
【0071】
この生成物を以下のスペクトル技法により特徴付けた。FT-IR(KBr,υmax/cm-1) : 2980, 2935, 2900, 1676, 1639, 1598, 1504, 1467, 1454, 1377, 1255, 950, 848. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.76 (d, 4H, J=8.79Hz), 6.93 (d, 4H, J=8.79Hz), 4.68 - 4.64 (m, 2H), 1.30 - 1.39 (s, 12H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ 161.04, 131.95, 130.10, 114.62, 69.74, 21.67。
【0072】
工程2:プロパルギルアルコール11の合成
【化10】

【0073】
ケトン10(200mg、6.71ミリモル)を5mlのエチレンジアミン中に溶解させ、これにリチウムアセチリド(3当量、2.01ミリモル)を加えた。この反応混合物をアルゴン雰囲気下で3時間に亘り室温で撹拌した。TLCによりモニタして、反応の完了後、反応混合物を氷水で急冷し、4:3:3の比の酢酸エチル、ジイソプロピルエーテルおよびトルエンの混合物で抽出した。有機層を水で洗浄し、その後、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空で蒸発させ、粗製生成物を、ヘキサン/EtOAc混合物(95:5)を使用したシリカゲルのカラム・クロマトグラフィーによって精製して、白色固体として80%の全体収率で化合物11を生成した。
【0074】
この生成物を以下のスペクトル技法により特徴付けた。FT-IR(KBr,υmax/cm1) : 3450, 3273, 2980, 2360, 1606, 1504, 1367, 1240, 1170, 950, 823. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): d 7.49 - 7.45 (m , 4H), 6.85 - 6.81 (m, 4H), 4.56 - 4.48 (m, 2H), 2.8 (s, 1H), 1.32 (s, 12H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3): d 157.42, 136.57, 127.70, 115.24, 86.88, 74.92, 73.62, 69.79, 22.00. LR-MS(FAB): m/z = found at 323.96, calculated forC21H24O3 323.17。
【0075】
工程3:13の合成
【化11】

【0076】
化合物12(100mg、3.6ミリモル)を2mlのトリエチルアミンおよび0.06mlの無水酢酸(2当量、7.2ミリモル)中に溶解させた。この混合物にDMAP(2mg)を加えた。この混合物を24時間に亘り室温で撹拌した。TLCによりモニタした、反応の完了後、最初に水を加え、その後、水性層が塩基性のままであり、CO2の放出が停止するまで、重炭酸ナトリウムを加えることによって、一連の実験手法を行った。この反応混合物をクロロホルムで抽出し、塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、その後、粗製材料のカラム・クロマトグラフィーの精製により、白色固体として85%の収率で化合物13を生成した。
【0077】
この生成物を以下のスペクトル技法により特徴付けた。FT-IR(KBr,υmax/cm1) : 2938, 2835, 1763, 1626, 1605, 1509, 1475, 1366, 1197, 1170, 1037, 920, 831. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.45 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 7.82 (d, 1H, J=7.6 Hz), 7.14 - 7.36 (m, 6H), 3.94 (s, 3H), 2.83 (s, 4H), 2.48 (s, 3H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3) : 169.10, 156.90, 144.32, 139.19, 134.25, 133.39, 129.74, 128.25, 127.76, 127.49, 127.42, 126.57, 126.37, 125.74, 118.91, 118.41, 99.77, 54.75, 29.85, 29.07, 20.56. LR-MS(FAB): m/z = found at 317.96 calculated for C21H18O3 at 316.13。
【0078】
工程4:13のフリーデル・クラフツ環化
【化12】

【0079】
乾燥ジクロロメタン中の化合物13(100mg、3.14ミリモル)の溶液に、無水塩化アンモニウム(3当量、0.94ミリモル)を加え、その後、塩化アセチル(0.05ml、2当量、0.62ミリモル)を加え、この混合物を2時間に亘り室温で撹拌した。反応の完了後(TLCによりモニタした)、この反応を氷の添加により急冷し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を分離し、塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、その後、粗製材料のカラム・クロマトグラフィーの精製により、無色液体として化合物14(60%の収率)を生成した。
【0080】
この生成物を以下のスペクトル技法により特徴付けた。FT-IR(KBr,υmax/cm1): 2924, 2851, 1766, 1733, 1677, 1597, 1362, 1260, 1127, 1037, 965, 820. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.38 (d, 1H, J = 9 .3Hz), 7.95 - 7.87 (m, 3H), 7.26 - 7.17 (m, 3H), 3.94 (s, 3H), 2.87 (s, 4H), 2.65 (s, 3H), 2.49 (s, 3H). LR-MS(FAB): m/z calculated for C23H20O4 : 361.14; found: 361.48。
【0081】
工程5:化合物14の塩基性加水分解
【化13】

【0082】
メタノール(5ml)中の14(80mg、0.22ミリモル)の溶液に、10%のNaOH溶液(1ml)を加え、この混合物を2時間に亘り還流した。TLCによりモニタした、反応の完了後、最初に、減圧下で過剰の溶媒を除去し、その後、1%のHClを使用した水性層の酸性化により一連の実験手法を行った。この混合物をエーテルで抽出し、有機層を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させて、粗製混合物を生成した。この粗製混合物をシリカゲルのクロマトグラフィーによって精製して、黄色の粘性液体として、60%の収率で化合物15を生成した。
【0083】
この生成物を以下のスペクトル技法により特徴付けた。FT-IR(KBr,υmax/cm1): 3258, 2935, 2838, 1614, 1590, 1520, 1496, 1479, 1391, 1357, 1215, 1069, 818, 763. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 8.36 (d, 1H, J=9.4 Hz), 7.95-7.90 (m, 3H), 7.26 - 7.18 (m, 3H), 3.98 (s, 3H), 2.83 (s, 4H), 2.65 (s, 3H). LR-MS(FAB): m/z found at 319.46 calculated for C21H18O3at 319.13。
【0084】
工程6:最終的な縮合
【化14】

【0085】
トルエン(5ml)中の15(50mg、0.15ミリモル)および11(55mg、0.17ミリモル)の混合物に、カンファースルホン酸(10mg)を加え、この反応混合物を2時間に亘り60℃で撹拌した。TLCによりモニタした、反応の完了後、過剰の溶媒を蒸発させ、その後、粗製材料のカラム・クロマトグラフィーの精製により、56%の収率で16を生成した。
【0086】
化合物16を以下のスペクトル技法により特徴付けた。FT-IR(KBr,υmax/cm1): 2932, 2862, 1728, 1602, 1451, 1366, 1248, 1178, 1119, 828, 735. 1H NMR (300MHz ,CDCl3): δ 8.25 (d, 1H, J = 9.3Hz), 7.98-7.77 (m, 3H), 7.68 (d, 1H J=2.5 Hz), 7.38 (d, 4H, J = 8.7 Hz), 7.14 (m 1H,), 6.94 (d, 1H, J = 9.5Hz), 6.82 (d, 4H, J = 8.7Hz), 6.20 (d, 1H, J = 9.8Hz), 4.53 - 4.47 (m, 2H), 3 .95 (s, 3H), 2.85 (s, 4H), 2.63 (s, 3H), 1.32 - 1.25 (m, 12H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3): 197.84, 157.24, 156.95, 147.35, 139.46, 138.58, 136.98, 134.32, 132.53, 128.60, 128.19, 127.95, 127.07, 126.54, 126.36, 125.69, 124.32, 119.74, 118.83, 115.02, 113.96, 101.09, 82.43, 69.70, 55.41, 29.31, 29.02, 26.53, 25.19, 22.65. LR-MS(FAB): m/z = found at 625.71 calculated for C42H40O5 at 625.29。
【0087】
表2の化合物17を、16について上述したものと同様の方法にしたがって合成した。
【0088】
III. フォトクロミック特性の分析
各染料のフォトクロミック特性を、2枚のガラス板の間に70℃で2時間、次いで、90℃で2時間に亘り注型された、10質量%のジビニルベンゼン、60質量%のビスフェノールAエポキシレートジメタクリレート、30質量%のポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、平均550g/モル、0.2質量%の2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、0.5質量%のドデカンチオールの混合物中の染料の0.05質量%の分散体を含有する2mm厚のレンズにおいて特徴付けた。図3に示されるように、82キロルクスによる15分間の暗化(AM2分布)後の暗所での5分間の退色中に、22℃でフォトクロミック特性を観察した。特に、退色反応速度は、退色の半減時間(t1/2)により測定した。
【0089】
表2に示されるように、ナフチル環に電子求引基を加えると、化合物16〜18に関して染料の色がほとんど変化せずに、退色の半減時間が71秒から16秒まで劇的に減少する。
【表2】

【0090】
ナフチル環に電子求引性−CF3置換基を有する異なる染料を、セクションIの方法にしたがって合成した。その化学構造およびフォトクロミック性能が、以下の表3に要約されている(化合物19〜24)。表3に示されるように、ナフチル環に電子求引−CF3置換基が存在すると、退色反応速度が非常に速くなり、t1/2値が13秒ほどに低下する。
【表3−1】

【表3−2】

【0091】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を本発明に行えることが当業者には明白である。それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に含まれるという条件で、包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式G:
【化1】

を有する化合物において、ここで、
1は、水素、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、もしくはアラルキルまたはヘテロアラルキル基からなり、
EWGは電子求引基からなり、
pは1から4までであり、
qは1または2であり、
rは1から3までであり、
各R6、R6'およびR7は、独立して、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロシクロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、もしくは置換または未置換フェノキシまたはナフトキシ基からなり、
各R9は、独立して、水素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基からなり、ここで、2つの隣接するR9基が存在する場合、該2つのR9基が、少なくとも1つの直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、もしくはアラルキルまたはヘテロアラルキル基により必要に応じて置換された少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を形成してもよいものである化合物。
【請求項2】
前記電子求引基が、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アルデヒド基、ケト基、スルホン基、またはアミド基からなることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記電子求引基が、ハロアルキル基またはハロシクロアルキル基からなることを特徴とする請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
前記電子求引基がC2またはC3にあることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
前記電子求引基がC2またはC3にある−C(O)R5またはトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
1が水素またはアルコキシ基であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
pが1であり、R7が水素またはアルコキシ基であり、qが1であり、R9が水素であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
物品の一部を形成することを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
式A:
【化2】

を有する化合物を製造する方法において、
式Iを有する化合物を式IIを有する化合物と反応させる工程であって:
【化3】

nは1または2であり、
1は、独立して、水素、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロシクロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、置換または未置換フェノキシまたはナフトキシ基、アミン基、アミド基、−OC(O)R5または−COOR5基からなり、ここで、R5は、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、または電子求引基からなり、2つの隣接するR1基が存在する場合、該2つのR1基が、必要に応じて、単環または2つの環化された環を含む少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を一緒になって形成してもよく、
oは1から4までであり、
aは置換または未置換縮合芳香環であり、
3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基からなり、
2およびR4は、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基からなり、
qは1または2であり、
各R9は、独立して、水素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基からなり、ここで、2つの隣接するR9基が存在する場合、該2つのR9基が、少なくとも1つの直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、もしくはアラルキルまたはヘテロアラルキル基により必要に応じて置換された少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を形成してもよいものである工程、
を有してなる方法。
【請求項10】
式A:
【化4】

を有する化合物において、
nは1または2であり、
1は、独立して、水素、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロシクロアルキル基、ハロアルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、置換または未置換フェノキシまたはナフトキシ基、アミン基、アミド基、−OC(O)R5または−COOR5基からなり、ここで、R5は、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、または電子求引基からなり、
5は、直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基からなり、
2つの隣接するR1基が存在する場合、該2つのR1基が、必要に応じて、単環または2つの環化された環を含む少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を一緒になって形成してもよく、
oは1から4までであり、
aは置換または未置換縮合芳香環であり、
3は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基からなり、
4は、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基からなり、
qは1または2であり、
各R9は、独立して、水素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基からなり、ここで、2つの隣接するR9基が存在する場合、該2つのR9基が、少なくとも1つの直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、直鎖または分岐鎖アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、もしくはアラルキルまたはヘテロアラルキル基により必要に応じて置換された少なくとも1つの芳香族または非芳香族環状基を形成してもよいものである化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−501326(P2012−501326A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524978(P2011−524978)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/004803
【国際公開番号】WO2010/027418
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】