説明

C9芳香族含有混合物をキシレン異性体類に転化する方法

キシレン異性体類の製造方法が開示される。特に、本方法は、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有中間生成物流に転化するに適切な条件下でC9芳香族含有供給物を触媒と接触させ、キシレン異性体類の少なくとも一部を中間生成物流から分離し、供給物を貧キシレン異性体類中間生成物流に再循環させることを含む。あるいは、キシレン異性体類の製造方法は、C9芳香族及びベンゼンを含む供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化するに適切な条件下で、C9芳香族及び供給物の総量を基準として約30 wt.%未満のベンゼンを含む供給物をVIB族金属酸化物含浸非硫化ラージポアゼオライトと接触させることを含む。開示された方法は、転化生成物中エチルベンゼンに対するキシレン異性体類の比、C9芳香族(例えば、メチルエチルベンゼン)に対するキシレン異性体類の比、C10芳香族に対するキシレン異性体類の比、メチルエチルベンゼンに対するトリメチルベンゼンの比、エチルベンゼンに対するベンゼンの比が予測できないほど高く、C9芳香族及びメチルエチルベンゼンの転化率が高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、芳香族炭化水素類を接触転化する方法に関し、特に、ベンゼン、トルエン及びC9芳香族をキシレン異性体類に不均化しアルキル交換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C8芳香族を含む炭化水素混合物は、限定されるものではないが接触改質プロセスを含む石油精製プロセスの生成物であることが多い。これらの改質された炭化水素混合物は、典型的にはC6-11芳香族及びパラフィン類を含み、そのうち芳香族のほとんどはC7-9芳香族である。これらの芳香族は、主要な群、すなわちC6、C7、C8、C9、C10及びC11芳香族に分画される。C8芳香族留分中に存在するのは、C8留分の総量を基準として約10wt.%〜約30wt.%を構成する非芳香族である。この留分の残りは、C8芳香族からなる。C8芳香族中に最も一般的に存在するのは、エチルベンゼン(EB)と、メタキシレン(mX)、オルソキシレン(oX)及びパラキシレン(pX)を含むキシレン異性体類である。当該分野及び本明細書において、キシレン異性体類及びエチルベンゼンをまとめて「C8芳香族」という。典型的には、C8芳香族中に存在する場合、エチルベンゼンは、C8芳香族の総量を基準として約15wt.%〜約20wt.%の濃度で存在し、残り(例えば、約100wt.%以下)はキシレン異性体類の混合物である。3種のキシレン異性体類は、典型的にはC8芳香族の残りを含み、一般に約1:2:1(oX:mX:pX)の平衡質量比で存在する。よって、本明細書において、用語「キシレン異性体類の平衡混合物」は、約1:2:1(oX:mX:pX)の質量比で異性体を含む混合物をいう。
【0003】
接触改質プロセスの生成物(又はリフォメート)は、C6-8芳香族(すなわち、ベンゼン、トルエン及びC8芳香族であり、まとめて「BTX」という)を含む。プロセスの副産物は、水素、軽質ガス、パラフィン類、ナフテン類及び重質C9+芳香族を含む。リフォメート中に存在するBTX(特に、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン)は、有用なガソリン添加剤であることが知られている。しかし、環境上の問題及び健康上の問題から、ガソリン中のある種の芳香族(特にベンゼン)の存在は大幅に削減され、疎んじられている。それでもなお、BTXの構成要素は、他のキャパシティ(能力)で用いるためにダウンストリーム(下流)ユニット運転中に分離され得る。あるいは、ベンゼンはBTXから分離されてもよく、得られるトルエン及びC8芳香族の混合物は、例えばガソリンのオクタン価を高めるための添加剤として用いることができる。
【0004】
ベンゼン及びキシレン類(特にパラキシレン)は、他の生成物を製造する際に実用的であるから、トルエンよりもより高い価値を有する。例えば、ベンゼンは、スチレン、クメン及びシクロヘキサンを作るために用いることができる。ベンゼンは、ゴム製品、潤滑剤、染料、洗剤、薬剤及び殺虫剤の製造にも有用である。C8芳香族の中で、エチルベンゼンがエチレン及びベンゼンの反応生成物である場合、エチルベンゼンは一般にスチレン製造に有用である。しかし、純度の問題故に、アルキル交換及び/又は不均化の結果として創製されるエチルベンゼンは、スチレン製造に用いることができない。メタキシレンは、イソフタル酸製造に有用であり、イソフタル酸自身は特にポリエステル繊維、塗料及び樹脂を作るために有用である。オルソキシレンは、無水フタル酸製造に有用であり、無水フタル酸自身はフタレート系可塑剤製造に有用である。パラキシレンは、テレフタル酸及びエステル類製造に有用な原材料であり、これらはポリ(ブテンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(プロピレンテレフタレート)などのポリマーを作るために用いられる。エチルベンゼン、メタキシレン及びオルソキシレンは有用な原材料であるが、これらから作られた化学物質及び材料に対する需要は、パラキシレンに対する需要及びパラキシレンから作られた材料に対する需要ほどには高くない。
【0005】
ベンゼン、C8芳香族及びこれらから作られた生成物におけるより高い価値の観点から、プロセスは、トルエンをベンゼンまで脱アルキル化するため、トルエンをベンゼン及びC8芳香族まで不均化するため、及びトルエン及びC9+含有芳香族をC8芳香族までアルキル交換するために開発されている。これらのプロセスは、一般にKirk Othmerの"Encyclopedia of Chemical Technology," 4th Ed., Supplement Volume, pp. 831-863 (John Wiley & Sons, New York, 1995)(開示内容を本明細書に援用する)に記載されている。
【0006】
特に、トルエン不均化(TDP)は、2モルのトルエンを1モルのキシレン及び1モルのベンゼンに転化する接触プロセスである。
【0007】
【化1】

【0008】
他の不均化反応としては、2モルのC9芳香族を1モルのトルエン及び重質炭化水素成分(すなわち、C10+重質分)に転化する接触プロセスを挙げることができる。
【0009】
【化2】

【0010】
トルエンアルキル交換は、2モルのキシレンを製造する1モルのトルエン及び1モルのC9芳香族(又はより高級の芳香族)の間の反応である。
【0011】
【化3】

【0012】
C9芳香族(又はより高級の芳香族)を含む他のアルキル交換反応としては、トルエン及びキシレンを製造するためのベンゼンとの反応を挙げることができる。
【0013】
【化4】

【0014】
上述の反応に示すように、C9芳香族及びキシレン分子に関連するメチル基及びエチル基は、任意の利用可能な環形成炭素原子と結合して分子の種々の異性体立体配置を形成することができる基として一般に示される。キシレン異性体類の混合物は、下流プロセスにおいてそれらの構成要素にまでさらに分離され得る。一度分離されたならば、異性体類はさらに処理されて(例えば異性化されて)再循環されて、例えば実質的に純粋なパラキシレンを得ることができる。
【0015】
理論的に且つ上述の反応から、C9芳香族を含む混合物は、キシレン類及び/又はベンゼンに転化され得る。キシレン類及びベンゼンの混合物は、例えば分留によって互いに分離され得る。しかし、これまで、所与のC9芳香族含有供給物から純粋なキシレン類生成物を得ることができる態様で如何に反応が行われるのか知られていない。
【0016】
米国特許第5,907,074号明細書、第5,866,741号明細書、第5,866,742号明細書及び第5,804,059号明細書(それぞれPhillips Petroleum Company ("Phillips")に譲渡されている)は、一般に、ある種のC9+芳香族含有流体供給物がBTXに転化される不均化及びアルキル交換反応を開示する。これらの特許は流体供給物の起源は重要ではないと述べているが、それぞれ、典型的には流体接触分解(FCC)ユニット内で行われる炭化水素(特にガソリン)芳香族化反応により得られる生成物の重質留分から派生した流体供給物に対する強い嗜好性を説明する。大きな(又は長い)炭化水素を含む低価値液体供給物はFCCユニット内で適切な触媒の存在下で気化され、高価値ディーゼル燃料及び高オクタン価ガソリンにブレンドされ得る生成物を形成し得るより軽質分子にまで分解される。FCCユニットの副産物は、これらの特許の教示によれば好ましい流体供給物を構成するより低価値の液体重質留分を含む。好ましい流体供給物のまさに起源は、供給物が硫黄含有化合物、パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類及び多環式芳香族(多環芳香族)を含むことを示唆する。
【0017】
'074特許によれば、BTXは一般に、'074特許中好ましい供給物中には実質的に不在であり、したがって、BTXの有意なアルキル交換は、一次不均化反応及びアルキル交換反応に対する副反応として生じない。'074特許に記載されている一次反応は、水素含有流体及び活性化調整剤(モディファー)(すなわち、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素、マグネシウム、錫、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、インジウム、ランタン、セシウム及びこれらの2種以上の組み合わせの酸化物)が組み込まれている金属酸化物活性化Y型ゼオライトを含む触媒の存在下で生じる。活性化調整剤(モディファー)は、金属酸化物が含浸された触媒に対して硫黄含有化合物が有する不活化効果(又は毒効果)に対抗することを補助する。
【0018】
'741特許、'742特許及び'059特許によれば、BTXは、一般的に好ましい供給物中には実質的に不在であり、したがってBTXの顕著なアルキル交換は一次不均化反応及びアルキル交換反応に対する副反応として生じない。しかし、BTXは、C9+芳香族によるそのような化学物質のアルキル化が二次的に望ましい場合に存在してもよい。'741特許によれば、これらの一次反応及び二次反応は、水素含有流体と活性促進剤(例えば、モリブデン、ランタン及びこれらの酸化物)が組み込まれているβ型ゼオライト含有触媒との存在下で生じる。'742特許によれば、一次反応及び二次反応は、水素含有流体と金属炭化物が組み込まれているβ型ゼオライト含有触媒との存在下で生じる。'059特許によれば、一次反応及び二次反応は、水素含有流体と金属酸化物活性化モルデナイト型ゼオライト含有触媒との存在下で生じる。
【0019】
上述の特許の各々の教示に潜在する目的は、C9+芳香族をBTXに転化することである。この目的を前提として、これらの特許は、BTXを得るに適する流体供給物、触媒及び反応条件の特定の組み合わせを開示する。しかし、これらの特許は、他のBTX成分を除外して任意の単独のBTX成分(もっと少ないキシレン異性体類)をいかにして得るかを開示も教示もしていない。これらの各々に関して、流体供給物中の硫黄の存在は、時間がたつと、触媒中の金属又は金属酸化物を金属硫化物に分解的に転化する。金属硫化物は、金属酸化物よりももっと低い水素化活性を有するので、硫黄は触媒活性を毒する。さらに、供給物中に存在するオレフィン類、パラフィン類及び多環芳香族は迅速に触媒を失活させ、望ましくない軽質ガスに転化される。
【0020】
上述の特許とは対照的に、米国特許出願公開第2003/0181774 A1 (Kong et al.)号公報は、ベンゼン及びC9+芳香族をトルエン及びC8芳香族に接触転化するアルキル交換方法を開示する。Kong等によれば、この方法は、H型ゼオライト及びモリブデン含有アルキル交換触媒を有する気固相固定床反応器中水素の存在下で行われるべきである。Kong等の方法の背後にある目的は、ダウンストリーム(下流)選択不均化反応器内の供給物として続いて使用するためにトルエンの製造を最大化することであり、得られたC8芳香族副産物をダウンストリーム(下流)異性化反応器中の供給物として使用することである。パラキシレンへのトルエンの選択不均化により、Kong等はいかにしてベンゼン及びC9+芳香族の混合物をパラキシレンに最終的に転化するかを示唆する。しかし、そのような示唆は、不利なことに多重反応容器(例えば、アルキル交換反応器及び不均化反応器)を必要とし、重要なことに、トルエン及びエチルベンゼンの製造を付随的に最小化しながら、アルキル交換反応から製造されるキシレン異性体類の量をいかにして最大化するかを教示していない。
【0021】
米国特許出願公開第2003/0130549 A1(Xie et al.)号公報は、トルエンを選択的に不均化してベンゼンとパラキシレンに富むキシレン異性体類流とを得て、トルエン及びC9+芳香族の混合物をアルキル交換してベンゼン及びキシレン異性体類を得る方法を開示する。Xie等によれば、それぞれ適切な触媒(すなわち、選択不均化用にZSM-5触媒及びアルキル交換用にモルデナイト、MCM-22又はβ型ゼオライト)を含む別個の反応器内で水素の存在下で異なる反応が行われる。製造されたキシレン異性体類からパラキシレンを得るためにダウンストリーム(下流)処理が用いられる。Xie等により開示された方法は、ベンゼン及びエチルベンゼンの大容量が望ましく製造されることを示唆する。しかし、Xie等は、ベンゼン及びエチルベンゼンの製造を付随的に最小化しながら、アルキル交換反応から製造されたキシレン異性体類の量をいかにして最大化するかを示唆していない。
【0022】
米国特許出願公開第2001/0014645 A1 (Ishikawa et al.)号公報は、C9+芳香族をトルエンまで不均化して、C9+芳香族及びベンゼンをガソリン添加剤として使用するためにトルエン及びC8芳香族までアルキル交換する方法を開示する。アルキル交換反応中の反応体としてベンゼンを使用することは、低価値ガソリン留分からベンゼンを取り除くためのIshikawa等による試みを示唆する。ベンゼンからガソリン留分を取り除くために規定された使用及び示唆を前提として、当業者はガソリン收率を最大化するためにC8芳香族中のエチルベンゼンを所望するであろう。さらに、当業者は、製造されたエチルベンゼンがベンゼン(ガソリン留分から除去しようとする)にまで無意図的に分解されないことを確実にするために予防策を講じるであろう。開示された反応は、水素及びVIB族金属含浸で好ましくは硫化されたラージポアゼオライトの存在下で行われる。一般に、ベンゼン及びC9+芳香族の部分は、BTXをほとんど含む生成物流に転化される。BTX生成物流から、ベンゼンは取り出され、供給物に再循環される。最終的に、トルエン及びC8芳香族はベンゼン/C9+芳香族供給物から得られる。アルキル交換反応は、C9+芳香族に対して大過剰モルのベンゼン(すなわち、5:1〜20:1)で行われ、トルエン及びC8芳香族(エチルベンゼンを含む)を得る。しかし、Ishikawa等は、トルエン、ベンゼン及びC10芳香族の製造を最小化しながら、アルキル交換反応において製造されたキシレン異性体類の量をいかにして最大化するかを示唆していない。
【0023】
一般に、従来技術は、C9芳香族及び場合によってはトルエン及びベンゼンを含む混合物からキシレン異性体類をいかにして得るかを当業者に対して十分に教示又は示唆していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本明細書に開示されているのは、キシレン異性体類の製造方法である。特に、本方法は、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有中間生成物流に転化するに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させ、キシレン異性体類の少なくとも一部を中間生成物流から分離し、貧キシレン異性体類中間生成物流を供給物に再循環させることを含む。
【0025】
一実施形態において、キシレン異性体類の製造方法は、C9芳香族とベンゼンとを含む供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化するに適する条件下で、供給物の総量を基準として約30 wt.%未満のベンゼンとC9芳香族を含む供給物をVlB族金属酸化物含浸非硫化ラージポアゼオライトと接触させることを含む。
【0026】
別の実施形態において、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、少なくとも約6:1の生成物流中キシレン異性体類:エチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で供給物を触媒と接触させることを含む。
【0027】
さらに別の実施形態において、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、少なくとも約1:1の生成物流中キシレン異性体類:メチルエチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。
【0028】
別の実施形態において、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、少なくとも約3:1の生成物流中キシレン異性体類:C10芳香族の質量比を得るに適する条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。
【0029】
さらに別の実施形態において、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、少なくとも約1.5:1の生成物流中トリメチルベンゼン:メチルエチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。
【0030】
さらに別の実施形態において、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、少なくとも約2:1の生成物流中ベンゼン:エチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。
【0031】
またさらに別の実施形態において、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、少なくとも約4:1の供給物中に存在するC9芳香族:生成物流中に存在するC9芳香族の質量比を得るに適する条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。
【0032】
またさらに別の実施形態において、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、少なくとも約2:1の供給物中のメチルエチルベンゼン:生成物流中に存在するメチルエチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。
【0033】
本発明のさらなる特徴は、添付図面、実施例及び添付特許請求の範囲と共に以下の詳細な記載を読むことにより明らかとなるであろう。
【実施の形態】
【0034】
本発明をより完全に理解するために、以下の詳細な説明及び添付図面を参照されたい。
図1は、開示された方法を実施するために用いることができる装置を概略図示する説明図である。
【0035】
図2は、モルデナイト触媒を用いるC9芳香族の定常状態転化のプロセスフローを概略図示する説明図である。
図3は、モリブデン含浸モルデナイト触媒を用いるC9芳香族の定常状態転化のプロセスフローを概略図示する説明図である。
【0036】
開示された方法は、種々の形態での実施形態が可能であるが、本発明を限定するものではないが理解を容易にする説明のために、図面には本発明の特別の実施形態を説明する。
本発明は、一般に、パラキシレン製造用の化学供給原料として特に適するキシレン異性体類の製造方法に関する。特に、本方法は、C9芳香族含供給物をキシレン異性体類含有中間生成物流に転化するに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させ、中間生成物流からキシレン異性体類の少なくとも一部を分離し、貧キシレン異性体類中間生成物流を供給物に再循環させることを含む。あるいは、キシレン異性体類の製造方法は、C9芳香族とベンゼンを含む供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化するに適する条件下で、供給物の総量を基準として約30 wt.%未満のベンゼンとC9芳香族とを含む供給物をVIB族金属酸化物含浸非硫化ラージポアゼオライトと接触させることを含む。
【0037】
開示された方法に従って使用するに適切な供給物は、原油精製プロセスから最終的に得られるものを含む。一般に、原油は脱塩され、その後、種々の成分に蒸留される。脱塩工程は、一般に、ダウンストリームプロセスにおいて触媒を失活化させ得る金属及び懸濁固体を取り除く。脱塩工程から得られる生成物は、続いて、常圧又は真空蒸留に供される。常圧蒸留を介して得られる留分は、粗又はバージンナフサ、ガソリン、ケロシン、軽油、ディーゼル油、ガスオイル、潤滑留分(lube distillates)及び重質塔底物であり、これらはしばしばさらに真空蒸留法により蒸留される。これらの留分の多くは、最終生成物として固体であってもよく、あるいは、より小さな分子に破壊するか、より大きくより高価値の分子に集めるか、又はより高価値の分子に再生するかのいずれかによって、炭化水素分子の分子構造を変化させることができるダウンストリームユニット運転中にさらに処理されてもよい。例えば、蒸留工程から得られた粗又はバージンナフサは、オレフィン類をパラフィン類に転化させる水素処理ユニットを水素と一緒に通過してもよく、ダウンストリーム触媒を失活させ得る硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、ヘテロ原子及び金属不純物などの不純物を取り除く。水素処理ユニットを出るのは、処理済み貧不純物ガス又は実質的に不純物を含まないガス、富水素ガス、及び硫化水素及びアンモニアを含む流である。軽質炭化水素は、ダウンストリームユニット運転(リフォーマー)に送られて、炭化水素類(例えば非芳香族)を良好なガソリン特性を有する炭化水素類(例えば芳香族)に転化させられる。処理済みガス、一般に芳香族(典型的にはC6-10芳香族の沸点範囲にある)を含む処理済みガスは、開示した本発明方法に従う転化に適切な供給物として作用し得る。
【0038】
あるいは、水素化分解ユニットはFCCユニットに送られる供給物と同様の供給物を採取し、その供給物を貧ガソリン特性を有し硫黄又はオレフィン類を少量含むか又は含まない軽質炭化水素類(すなわち、ナフサ)に転化する。軽質炭化水素類は、次いで、リフォーマーに送られて、それらの炭化水素類を良好なガソリン特性を有する炭化水素類(例えば芳香族)に転化する。リフォーマーを出るのは、芳香族(典型的にはC6-10芳香族の沸点範囲内にある)ばかりでなくパラフィン類をも含むリフォメートである。リフォメートは、硫黄及びオレフィン類を実質的に含まないが、パラフィン類及び多環芳香族を含む。よって、続く工程において、パラフィン類及び多環芳香族は取り除かれて、C9芳香族含有生成物流を得る。このような生成物流は、本発明方法に従う転化に適切な供給物として作用し得る。
【0039】
原油の組成は、その源に応じて大幅に変動し得る。さらに、本明細書に開示されている本発明方法に従う使用に適切な供給物は、種々のアップストリーム(上流)ユニット運転の生成物として典型的には得られ、もちろん、それらのユニット運転に供給される反応体/物質に依存して変動し得る。しばしば、反応体/物質の起源は、ユニット運転の生成物として得られた供給物の組成を決定するであろう。
【0040】
C9芳香族含有供給物は、一般にC9芳香族を含む。本明細書において、用語「芳香族」とは、3個の二重結合を含む6員炭素環を有するベンゼンが典型的である1以上の環を含む不飽和環式炭化水素類の主たる群をいう。一般に, "Hawley's Condensed Chemical Dictionary," at p. 92 (13th Ed., 1997)参照。本明細書において、用語「C9芳香族」とは、9個の炭素原子を有する任意の芳香族化合物を含む混合物を意味する。好ましくは、C9芳香族としては、1,2,4-トリメチルベンゼン(シュードクメン)、1,2,3-トリメチルベンゼン(ヘミメリテン)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、メタ-メチルエチルベンゼン、オルソ-メチルエチルベンゼン、パラ-メチルエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン及びn-プロピルベンゼンを挙げることができる。
【0041】
C9芳香族と一緒に、供給物は典型的には多数の他の炭化水素類を含むであろう。これらの多くは痕跡量で存在するに過ぎない。例えば、供給物は、パラフィン類及びオレフィン類を実質的に含まない。パラフィン類及びオレフィン類を実質的に含まない供給物は、好ましくは供給物の総量を基準としてそれぞれ約3wt.%未満のパラフィン類及びオレフィン類を含み、より好ましくはそれぞれ約1wt.%未満のパラフィン類及びオレフィン類を含む。さらに、供給物は、硫黄(例えば、元素状硫黄及び硫黄含有炭化水素類及び非炭化水素類)を実質的に含まない。硫黄を実質的に含まない供給物は、供給物の総量を基準として好ましくは約1wt.%未満の硫黄を含み、より好ましくは約0.1wt.%未満の硫黄を含み、さらにより好ましくは約0.01wt.%未満の硫黄を含む。
【0042】
種々の好ましい実施形態において、供給物はキシレン異性体類、トルエン、エチルベンゼン及び/又はベンゼンを実質的に含まない。キシレン異性体類を実質的に含まない供給物は、好ましくは供給物の総量を基準として約3wt.%未満のキシレン異性体類を含み、より好ましくは約1wt.%未満のキシレン異性体類を含む。トルエンを実質的に含まない供給物は、供給物の総量を基準として好ましくは約5wt.%未満のトルエンを含み、より好ましくは約3wt.%未満のトルエンを含む。エチルベンゼンを実質的に含まない供給物は、供給物の総量を基準として好ましくは約5wt.%未満のエチルベンゼンを含み、より好ましくは約3wt.%未満のエチルベンゼンを含む。ベンゼンを実質的に含まない供給物は、供給物の総量を基準として好ましくは約5wt.%未満のベンゼンを含み、より好ましくは約3wt.%未満のベンゼンを含む。
【0043】
しかし、ある種の実施形態において、供給物は、トルエン及びベンゼンの一方又は両者を多量に含み得る。例えば、ある実施形態において、供給物は供給物の総量を基準として約50wt.%以下のトルエンを含み得る。しかし、好ましくは、供給物は、供給物の総量を基準として約50wt.%未満のトルエンを含み、より好ましくは約40wt.%未満のトルエンを含み、さらにより好ましくは約30wt.%未満のトルエンを含み、最も好ましくは約20wt.%未満のトルエンを含む。同様に、ある種の実施形態において、供給物は、供給物の総量を基準として約30wt.%以下のベンゼンを含み得る。しかし、好ましくは、供給物は、供給物の総量を基準として約30wt.%未満のベンゼンを含み、より好ましくは約20wt.%未満のベンゼンを含む。
【0044】
またさらに、種々の実施形態において、供給物はC10+芳香族を実質的に含まないこともある。しかし、供給物は、C10+芳香族を実質的に含まないことが必要ではない。一般に、C10+芳香族(A10+)は、1以上の炭化水素官能基を有するベンゼンを含むであろう。これは集合体としては4以上の炭素を有する。このようなC10+芳香族の例としては、限定されるものではないが、例えば、ブチルベンゼン(イソブチルベンゼン及びターシャリブチルベンゼンを含む)、ジエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、テトラメチルベンゼンなどのC10芳香族(A10)及びトリメチルエチルベンゼン及びエチルプロピルベンゼンなどのC11芳香族を挙げることができる。C10+芳香族の例としてはさらに、ナフタレン及びメチルナフタレンを挙げることができる。C10+芳香族を実質的に含まない供給物は、供給物の総量を基準として、好ましくは約5wt.%未満のC10+芳香族を含み、より好ましくは約3wt.%未満のC10+芳香族を含む。
【0045】
本明細書において、用語「C8芳香族」とは、主にキシレン異性体類及びエチルベンゼンを含む混合物を意味する。対比的に、本明細書において用語「キシレン異性体類」とは、メタキシレン、オルソキシレン及びパラキシレンを含む混合物であって、エチルベンゼンを実質的に含まない混合物を意味する。好ましくは、そのような混合物は、キシレン異性体類及び任意のエチルベンゼンの総量を基準として3wt%未満のエチルベンゼンを含む。しかし、より好ましくは、そのような混合物は、約1wt%未満のエチルベンゼンを含む。
【0046】
上述したように、本発明の方法のいくつかの実施形態において、供給物はキシレン異性体類含有中間生成物流に接触的に転化され、キシレン異性体類の少なくとも一部は中間生成物流から分離されて、その後、中間生成物流は供給物に再循環される。最初のパスにおいて、転化生成物は「中間生成物流」と呼ばれ、キシレン異性体類の少なくとも一部が中間生成物流から分離されると、この流は再循環される。しかし、他の実施形態において、「中間生成物流」は、転化において求められている特定の芳香族であるキシレン異性体類を含んでいるので「生成物流」と考えることができる。したがって、これらの実施形態において、本方法は、供給物がキシレン異性体類含有生成物流に接触的に転化され、キシレン異性体類が生成物流から分離され、その後、生成物流は供給物に再循環される方法と記載することができる。これらの実施形態において、「中間生成物流」又は「生成物流」と呼ばれる再循環された流は、好ましくはキシレン異性体類を含まず(又はわずかに痕跡量を含む)、未反応の供給物、トルエン及び/又はベンゼンを主として含む。
【0047】
本発明の方法のさらに別の実施形態において、生成物又は中間生成物流は、少なくとも約6:1のキシレン異性体類:エチルベンゼン質量比、好ましくは少なくとも約10:1の質量比、より好ましくは少なくとも約25:1の質量比で存在するキシレン異性体類及びエチルベンゼンを含む。別の言い方をすれば、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、生成物流中キシレン異性体類:エチルベンゼンの質量比が少なくとも約6:1、好ましくは少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約25:1となるような適切な条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。生成物流中キシレン異性体類:エチルベンゼンのこのような高い質量比は、生成物流が主要な構成要素、すなわち6炭素、7炭素、8炭素及び9炭素を含む芳香族に分画されるべきダウンストリーム(下流)処理において有益である。典型的には、C8芳香族留分のさらなる処理はエチルベンゼンのエネルギー消費型処理を必要的に含むであろう。しかし、液体反応生成物中にエチルベンゼンが実質的に含まれないと仮定すると、したがってC8芳香族留分中にエチルベンゼンが実質的に含まれないと仮定すると、留分からエチルベンゼンを取り除くためにそのようなエネルギー消費型処理は必要とされない。
【0048】
さらに、エチルベンゼンが実質的に含まれないことは、特に望ましい。上述したように、エチルベンゼンはスチレンを製造するための原材料として使用することができるけれども、そのようなエチルベンゼンは高度に精製された形態でなければならない。ベンゼン、トルエン及びC9芳香族を不均化しアルキル交換することから得られる特定のエチルベンゼンは、他の芳香族を含む混合物中に必然的に存在する。エチルベンゼンをそのような混合物から分離することは、非常に困難で非常に費用がかかる。したがって、実用的観点から、このエチルベンゼンをスチレンの製造に使用することはできない。実際、エチルベンゼンは、ガソリン添加剤(オクタン価向上剤として)として使用されるか又はおそらく軽質ガス(例えば、エタン)及びベンゼンを得るためにさらなる不均化に供されるであろう。しかし、本発明によれば、液体反応生成物及びC8芳香族留分中にエチルベンゼンが実質的に含まれないことは、そのような処理を取り除くであろう。
【0049】
本発明の方法の別の実施形態において、生成物又は中間生成物流は、キシレン異性体類:メチルエチルベンゼン(MEB)の質量比が少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1となる割合で含む。別の言い方をすれば、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、生成物流中キシレン異性体類:メチルエチルベンゼンの質量比が少なくとも約1:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1となるような適切な条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。生成物流及び/又は中間生成物流中メチルエチルベンゼンの欠如(又は低量)は、転化のために供給物に再循環して戻されるべきそのような未反応又は製造されたC9芳香族の量が少なくなり、よってエネルギーを節約し、資本コストを削減する点で有利である。
【0050】
本発明の方法のまた別の実施形態において、生成物又は中間生成物流は、キシレン異性体類:C10芳香族の質量比が少なくとも約3:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1でキシレン異性体類及びC10芳香族を含む。別の言い方をすれば、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、生成物流中キシレン異性体類:C10芳香族の質量比が少なくとも約3:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1となるような適切な条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。このような高い比率は、C9芳香族を含む優勢な反応がキシレン異性体類を得る不均化反応であって、C10芳香族、トルエン及びベンゼンを得る反応ではないことの証拠である。生成物及び/又は中間生成物流中C10芳香族の欠如又は低量は、転化のために供給物に再循環して戻されるべき未反応又製造されたC10芳香族の量が少なくなり、よってエネルギーを節約し資本投資を削減する点で有利である。C10芳香族が中間流又は生成物流中に存在するという範囲で、このようなC10芳香族は主としてテトラメチルベンゼンであり、再循環されて、より敏感に反応してキシレン異性体類に転化され得る。有利なことに、C10芳香族は、キシレン異性体類に転化し難くしたがって再循環されにくいエチルジメチルベンゼン及び/又はジエチルベンゼンをあまり含まない。
【0051】
本発明の方法の別の実施形態において、生成物又は中間生成物流は、トリメチルベンゼン:メチルエチルベンゼンの質量比が少なくとも約1.5:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1、さらにより好ましくは少なくとも約15:1でトリメチルベンゼン及びメチルエチルベンゼンを含む。別の言い方をすれば、本方法は、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化することを含み、生成物流中トリメチルベンゼン:メチルエチルベンゼンの質量比が少なくとも約1.5:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1、さらにより好ましくは少なくとも約15:1となるような適切な条件下で供給物を触媒と接触させることを含む。トリメチルベンゼンからキシレン異性体を得るために、単独のメチル基をトリメチルベンゼン分子から取り除かなければならない。対比して、メチルエチルベンゼンからキシレン異性体を得るために、ベンゼン環上のエチル基をメチル基で置換しなければならない。このような置換は実施が困難である。したがって、トリメチルベンゼン:メチルエチルベンゼンの高い比率は、メチルエチルベンゼンよりもトリメチルベンゼンがキシレン異性体類へ転化されやすく、したがって再循環されやすい点で、有利である。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態において、生成物又は中間生成物流は、ベンゼン:エチルベンゼンを質量比で少なくとも約2:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1で含む。別の言い方をすれば、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、生成物流中ベンゼン:エチルベンゼンの質量比が少なくとも約2:1、好ましくは少なくとも約5:1、より好ましくは少なくとも約10:1となるような適切な条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。このような高い比率は、エチルベンゼンを他のC8芳香族の混合物から分離することが困難であり、C9芳香族を含む不均化反応及びアルキル交換反応中に得られるタイプのエチルベンゼンが化学供給原料としてより低い価値を有すると仮定すると有益である。上述したように、C9芳香族及びベンゼンの分子はアルキル交換されてキシレン及びトルエンの分子になり得る。よって、流中のエチルベンゼンに対するベンゼンの高い比率は、キシレン異性体類の收率を増加させるために流の部分を再循環させ得ることを考慮すると有用であると立証され得る。
【0053】
本発明の別の実施形態において、生成物又は中間生成物流は、供給物中に存在する量に比較して少なくとも約4:1、好ましくは少なくとも約8:1、より好ましくは少なくとも約10:1の量(質量比)で存在するC9芳香族を含む。別の言い方をすれば、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、供給物中に存在するC9芳香族:生成物流中に存在するC9芳香族の質量比が少なくとも約4:1、好ましくは少なくとも約8:1、より好ましくは少なくとも約10:1となるに適切な条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。このような高い転化率は、転化のために供給物に再循環して戻されることが必要な未反応C9芳香族の量が少なくなり、よってエネルギーを節約し、資本投資を節約するという点で有利である。
【0054】
本発明の別の実施形態において、供給物は、生成物又は中間生成物流中に存在する量に対して少なくとも約2:1、好ましくは少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約20:1の量(質量比)で存在するメチルエチルベンゼンを含む。別の言い方をすれば、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法は、供給物中に存在するメチルエチルベンゼン:生成物流中に存在するメチルエチルベンゼンの質量比が少なくとも約2:1、好ましくは少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約20:1となるに適切な条件下で、供給物を触媒と接触させることを含む。このような高い比率は、本発明の方法が供給物中C9芳香族中に存在するメチルエチルベンゼンの高い割合を効果的に転化することの証拠である。実際、高い比率は、反応が約50%、好ましくは90%、最も好ましくは95%のメチルエチルベンゼンを軽質ガス及びより軽質の芳香族に効果的に転化することを示す。さらに、このような高い比率は、反応がメチルエチルベンゼンを生じさせないことの証拠である。
【0055】
開示されたプロセスは、概略、図1に示されている。ここで、一般に10で示されるプロセスの実施形態は、反応器12及び液体生成物分離器14を含む。特に、供給物ライン16内のC9芳香族含有供給物及びガスライン18内の水素含有ガスを一緒にして炉20内で加熱する。加熱された混合物を反応器12に通過させて、ここでC9芳香族含有供給物を水素の存在下で、接触的に反応させて中間生成物を得る。中間生成物は、中間生成物ライン22を通って反応器12を出て、その後、熱交換器24内で冷却される。冷却された中間生成物は、搬送ライン26を通って熱交換器24を出て、容器28に通過し、ここで気体と液体とが互いに分離される。必要であれば、反応器12を冷却するために、新鮮な水素をもガスライン18Aを通して直接、反応器12に通過させてもよい。ガス、主として水素は容器28から抜き出され、一部は圧縮されて(圧縮機は図示せず)、ガスライン30を通ってライン18内の水素含有ガスに再循環される。一方、残りはパージライン32を通ってパージされてもよい。液体は容器28から抜き出され、搬送ライン34を通って液体分離器14に通過する。分離器14内で、中間生成物を含む構成要素は分離される。キシレン異性体類生成物は、導管36を通って分離器を出る。1以上の再循環流は、C9芳香族(38)及びベンゼン及びトルエン(40)を、例えば、これらの流を供給物ライン16中の新鮮な供給物と組み合わせることによって、反応器12まで運んで戻す。よって、本方法のこの実施形態10に入るのはC9芳香族含有供給物(16)及び水素含有ガス(18)であり、出るのはキシレン異性体類生成物(36)である。本方法で行われるアルキル交換及び不均化は、ベンゼン基の数に対して存在すべきメチル基の相当数を必要とするから、形成されたベンゼン及びトルエン(42)の幾分かがプロセス全体から流れ出るが、多量ではない。本プロセスは、詳細は後述するが再循環流の使用を含むものでもよい。
【0056】
開示された方法(及び種々の実施形態)に包含される方法を実施するために適切な処理設備及び制御は、当業者には理解される。そのような処理設備としては、限定されるものではないが、適切な配管、ポンプ、弁、ユニット運転設備(例えば、適切な入口及び出口を有する反応容器、熱交換器、分離ユニットなど)、関連する処理制御設備及び品質制御設備を挙げることができる。他の任意の処理設備は、特に好ましい場合には本明細書において特定される。
【0057】
一般に、開示された方法は、詳細は後述するが、活性触媒を含む反応容器内で行われ、そのような触媒は、VIB族金属酸化物含浸ラージポアゼオライト及び適切なバインダを含む。本発明に従って使用するに適切なラージポアゼオライトとしては、少なくとも約6Åのポアサイズを有するゼオライトを挙げることができ、β(BEA)、EMT、FAU(例えば、ゼオライトX、ゼオライトY(USY))、LTL、MAZ、マーザイト(mazzite)、モルデナイト(MOR)、オメガ、SAPO-37、VFI、ゼオライトL構造型ゼオライト(IUPAC ゼオライト命名委員会)を挙げることができる。しかし、好ましくは、本発明で使用するラージポアゼオライトとしては、β(BEA)、Y(USY)及びモルデナイト(MOR)ゼオライトを挙げることができ、各々の一般的な記載はKirk Othmerの"Encyclopedia of Chemical Technology," 4th Ed., Vol. 16, pp. 888-925 (John Wiley & Sons, New York, 1995)及びW.M. Meier et al., "Atlas of Zeolite Structure Types," 4th Ed. (Elsevier 1996)(開示内容は本明細書に援用する)に見ることができる。これらのタイプのゼオライトは、例えば、the PQ Corporation (Valley Forge, Pennsylvania)、Tosoh USA, Inc. (Grove City, Ohio)及びUOP Inc. (Des Plaines, Illinois)などの商業源から入手することができる。より好ましくは、本発明で使用するためのラージポアゼオライトはモルデナイトゼオライトである。
【0058】
ゼオライトに組み込まれた場合に、C9+芳香族化合物をC6〜C8芳香族炭化水素に水素脱アルキル化することを促進し得る任意の金属酸化物を本発明において用いることができる。金属酸化物は、好ましくは酸化モリブデン、酸化クロム、酸化タングステン及びこれらの2種以上の任意の組み合わせからなる群より選択される。ここで、金属の酸化状態は、任意の利用可能な酸化状態でよい。例えば、酸化モリブデンの場合、モリブデンの酸化状態は0、2、3、4、5、6、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせでよい。
【0059】
適切な金属化合物の例としては、限定されるものではないが、クロム含有化合物、モリブデン含有化合物及び/又はタングステン含有化合物を挙げることができる。適切なクロム含有化合物としては、限定されるものではないが、クロム(ll)アセテート、クロム(ll)クロライド、クロム(ll)フルオライド、クロム(lll)2,4-ペンタンジオネート(pentanedionate)、クロム(lll)アセテート、クロム(lll)アセチルアセトネート、クロム(lll)クロライド、クロム(lll)フルオライド、クロムヘキサカルボニル、クロム(lll)ナイトレート、クロムナイトライド、クロム(lll)パークロレート及びクロム(lll)テルライドを挙げることができる。適切なタングステン含有化合物としては、限定されるものではないが、タングステン酸、タングステン(V)ブロマイド、タングステン(IV)クロライド、タングステン(VI)クロライド、タングステンヘキサカルボニル及びタングステン(VI)オキシクロライドを挙げることができる。モリブデン含有化合物は好ましい金属であり、そのような化合物としては限定されるものではないが、アンモニウムジモリブデート、アンモニウムヘプタモリブデート(VI)、アンモニウムモリブデート、アンモニウムホスホモリブデート、アンモニウムテトラチオモリブデート、アンモニウムテトラチオモリブデート、ビス(アセチルアセトネート)ジオキソモリブデン(VI)、モリブデンフルオライド、モリブデンヘキサカルボニル、モリブデンオキシクロライド、モリブデンスルフィド、モリブデン(ll)アセテート、モリブデン(ll)クロライド、モリブデン(lll)ブロマイド、モリブデン(lll)クロライド、モリブデン(IV)クロライド、モリブデン(V)クロライド、モリブデン(VI)フルオライド、モリブデン(VI)オキシクロライド、モリブデン(VI)テトラクロライドオキシド、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム、及び酸化モリブデン(ここで、Moの酸化状態は2、3、4、5及び6及びこれらの2種以上の組み合わせでよい)を挙げることができる。好ましくは、その存在量及びモリブデンを一緒に好ましいモルデナイトゼオライトに組み込むことができる相対的な容易さ故に、金属化合物はアンモニウムモリブデートである。
【0060】
触媒組成物中に存在する金属又は金属酸化物の量は、アルキル交換プロセス及び不均化プロセスで有効となるに十分であるべきである。したがって、金属又は金属酸化物の量は、好ましくは触媒組成物の総量を基準として約0.1 wt. %〜約40 wt.%の範囲であり、より好ましくは約0.5 wt.%〜約20 wt.%の範囲であり、さらにより好ましくは約1 wt.%〜10 wt.%の範囲である。金属又は金属酸化物の組み合わせを用いる場合には、第2、第3及び第4の金属酸化物:第1の金属酸化物のモル比は約0.01:1〜約100:1の範囲となるべきである。
【0061】
モリブデンは好ましい金属であり、約1 wt.%〜約5 wt.%の量で存在する場合には、結果的に、量がこの範囲から外れる場合に得られる転化率よりも予想できないほど驚異的に優れた転化率を得る。このような予想できない驚異的な優れた結果は以下の実施例に示されている。これらの知見から、好ましくは、触媒はモリブデン又は酸化モリブデンを含浸しており、ここでモリブデンは触媒の総量を基準として触媒の約0.5 wt.%〜約10 wt.%を構成する。より好ましくは、モリブデンは触媒の総量を基準として、触媒の約1 wt.%〜約5 wt.%を構成し、最も好ましくは、モリブデンは触媒の約2 wt.%を構成する。
【0062】
触媒を調製する際に使用する適切なバインダとしては、限定されるものではないが、例えばα-アルミナ及びγ-アルミナなどのアルミナ類;シリカ類;アルミナシリカ類;及びこれらの組み合わせを挙げることができる。ゼオライト:バインダの質量比は、好ましくは約20:1〜約0.1:1であり、より好ましくは約10:1〜約0.5:1である。バインダは、典型的には液体の存在下で、好ましくは水性媒体中で、ゼオライトと組み合わせられてゼオライト−バインダ混合物を形成する。
【0063】
金属酸化物化合物をゼオライトに組み込むための適宜方法、例えば含浸又は吸着などを本発明の方法で使用するための触媒を製造するために使用することができる。例えば、ゼオライト及びバインダは、撹拌、ブレンド、ニーディング(混練)又は押出により十分混合し、その後、ゼオライト-バインダ混合物を空気中、約20℃〜約200℃の範囲の温度、好ましくは約25℃〜約175℃の範囲の温度、より好ましくは25℃〜150℃の範囲の温度で、約0.5時間〜約50時間、好ましくは約1時間〜約30時間、より好ましくは1時間〜20時間、乾燥させることができる。好ましくは、混合は大気圧下で行うが、大気圧よりもわずかに上又は下の圧力でもよい。ゼオライト及びバインダを十分に混合し乾燥させた後、ゼオライト-バインダ混合物を場合によっては空気中、約300℃〜1000℃の範囲の温度、好ましくは約350℃〜約750℃の範囲の温度、より好ましくは約450℃〜約650℃の範囲の温度でカ焼してもよい。カ焼は、約1時間〜約30時間、より好ましくは約2時間〜約15時間行ってもよく、カ焼されたゼオライト-バインダを得る。バインダが望ましくない場合には、ゼオライトを同様の条件下でカ焼して、存在するならば汚染物質を除去することもできる。
【0064】
バインダがある場合又はない場合及びか焼された場合又はか焼されていない場合もあるが、ゼオライトは、一般に、最初に金属化合物と混合される。バインダを金属化合物と組み合わせる場合、続いて、一般に空気中で、昇温された温度にて加熱することによって金属酸化物に転化され得る。金属は、好ましくは、上述したように、クロム、モリブデン、タングステン及びこれらの組み合わせなどのVIB族金属から選択される。金属化合物は、ゼオライトと接触する前に、溶媒中に溶解させてもよい。しかし、好ましくは、金属化合物は水溶液である。接触は、任意の温度で行うことができるが、好ましくは約15℃〜約100℃の範囲、より好ましくは約20℃〜約100℃の範囲、さらにより好ましくは約20℃〜60℃の範囲の温度で行う。接触は、金属化合物とゼオライトとの混合物を確実にするに十分な長さの時間にわたり、一般に、任意の圧力下で行うことができ、好ましくは大気圧で行うことができる。一般に、この時間の長さは約1分間〜約15時間であり、好ましくは約1分間〜約5時間である。
【0065】
操作上の厳格さ及びプロセス因子によっては、触媒は劣化するであろう。触媒が劣化するにつれ、触媒表面上へのコークス沈着の形成又は供給物毒ゆえに、所望の反応に対する触媒の活性は緩やかに減退する傾向にある。触媒は、当業者に一般に知られている方法によって、活性の初期レベルに維持されるか又は定期的に再生され得る。あるいは、劣化した触媒を単に新規の触媒と置換してもよい。
【0066】
劣化した触媒を新規の触媒と置換しない限り、劣化した触媒は、6ヶ月に1度程度の頻度で、3ヶ月に1度程度の頻度で、時々、1ヶ月又は2ヶ月に1度の頻度で再生を必要とするかもしれない。本明細書において、「再生」とは、酸素又は酸素含有ガスにより触媒上のコークス沈着を燃焼させることによるモレキュラーシーブ初期活性の少なくとも一部の回復を意味する。文献には、本発明のプロセスで用いることができる触媒再生方法が多く記載されている。これらの再生方法のいくつかは、失活したモレキュラーシーブの活性を増加させるための化学的方法を含む。他の再生方法は、例えば触媒床を貫通する閉鎖ループ構成内での再生ガスの循環流又は多量の酸素を含有する不活性ガスの連続循環などの酸素含有ガス流によるコークスの燃焼によりコークス失活触媒を再生する方法に関する。
【0067】
開示された方法で使用するための触媒は、触媒失活炭素質沈着(コークスとしても知られている)の酸素又は酸素含有ガスでの酸化又は焼成による再生に特に適する。触媒がコークス燃焼によって再生され得る方法は変えることができるが、好ましくは、例えば再生中の触媒に対する熱的損傷が最も少ない温度、圧力及びガス空間速度の条件で行われる。時機に適した態様で再生を行い、固定床反応器システムの場合にはプロセスの不稼働時間を短縮し、又は連続再生プロセスの場合には設備寸法を減少させることも好ましい。
【0068】
最適な再生条件及び方法は、一般に、当業者に知られているが、触媒再生は、好ましくは、約550゜F(約287℃)〜約1300゜F(約705℃)の範囲の温度、約0psig(約0MPa)〜約300 psig(約2MPa)の範囲の圧力、及び約0.1 mol%〜約25 mol%の再生ガス酸素含有量を含む条件で達成される。触媒損傷プロセス条件を避けながら、できるだけ迅速に触媒を再生するため、触媒床出口温度を基準として、再生ガスの酸素含有量は、典型的には触媒再生手順の間に増加してもよい。好ましい触媒再生条件は、約600 ゜F(約315℃)〜約1150 ゜F(約620℃)の範囲の温度、約0psig(約0MPa)〜約150 psig (約1MPa)の範囲の圧力及び約0.1 mol%〜約10 mol%の再生ガス酸素含有量を含む。酸素含有再生ガスは、好ましくは、窒素及び一酸化炭素及び二酸化炭素などの炭素燃焼生成物を含み、空気の形態で酸素が添加されている。しかし、純酸素又は別の気体状成分で希釈された酸素の混合物として、酸素を再生ガス中に導入することは可能である。好ましくは、酸素含有ガスは空気である。
【0069】
上述したように、開示された方法は、水素(すなわち、分子状水素、H2)を含む水素含有ガスの存在下で行われる。このような水素含有ガスは、好ましくは約1vol.%〜約100 vol.%の範囲、好ましくは約50 vol. %〜約100 vol.%の範囲、より好ましくは75 vol.%〜100 vol.%の範囲で水素を含む。ガス中の水素含有量が約100 vol.%未満の場合には、ガスの残りは、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びこれらの組み合わせなどの任意の不活性ガス、又は本明細書に開示された方法及び用いられる触媒に有害な影響を与えない任意の他のガスであってよい。水素は、水素プラント、接触改質設備、その他の水素製造又は水素回収プロセスから供給されてもよい。
【0070】
水素は、接触反応の間、水素:炭化水素のモル比が好ましくは約0.01:約5、より好ましくは約0.1:約2、より好ましくは約0.1:約0.5で存在する。これらの範囲よりも低い水素循環比は、より高い触媒失活化速度をもたらし、結果的に増大されたより頻度が高いエネルギー集約的な再生サイクルをもたらす。過剰に高い反応圧力は、エネルギー費用及び設備費用を増大させ、限界利益を減少させる。過剰に高い水素循環比もまた、反応平衡に影響し、反応を望ましくない方向に進行させて、例えば、C9芳香族転化率を減少させ、キシレン異性体類収率を低減させる。不活性ガスの存在は、炭化水素の分圧を減少させ、供給物原料からのキシレン異性体類へのより高い転化率をもたらすように有利に作用し得る。
【0071】
触媒組成物の存在下で、炭化水素含有流体供給物流を水素含有流体(気体又は液体)と接触させることは、炭化水素をC6〜C8芳香族炭化水素に転化させるに有効な条件下で、バッチ、半連続又は連続プロセスでの任意の技術的に適切な態様で行うことができる。一般に、上述のような好ましくは気化状態での流体流は供給物と共に、例えば圧力、計量ポンプその他類似の手段等の当業者に公知の任意の手段によって、固定触媒床、移動触媒床、流動触媒床又はこれらの2以上の組み合わせを有する適切な水素化処理反応器に導入される。水素化処理反応器及びそのプロセスは当業者に周知であるから、簡略にするため、本明細書では説明を割愛する。
【0072】
本発明の方法を実施するに適切な条件としては、流体供給物流の質量時間当たり空間速度(WHSV)が約0.1〜約20、好ましくは約0.5〜約10、最も好ましくは約1〜約5(1時間あたり触媒1単位質量あたりの単位質量供給物)の範囲を挙げることができる。水素含有流体(気体)時間当たり空間速度は、一般に約1〜約10,000、好ましくは約5〜約7,000、最も好ましくは約10〜約10,000 ft3 H2 /ft3 触媒/hourの範囲である。
【0073】
一般に、圧力は、約0.5 MPa(約73 psig)〜約5 MPa(約725 psig)、好ましくは約1 MPa(約145 psig)〜約3 MPa(約435 psig)、より好ましくは約1.25 MPa(約181 psig)〜約2 MPa(約190 psig)の範囲でよい。本発明の方法を実施するために適切な温度は、約200℃(約392゜F)〜約1000℃(約1830゜F)、より好ましくは約300℃(約572゜F)〜約800℃(約1472゜F)、さらにより好ましくは約350℃(約662゜F)〜約600℃(約1112゜F)の範囲である。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。実施例1は、実施例2〜4に記載するプロセスで用いられる触媒の調製に関する。実施例3−Aは、実施例3に記載される供給物及び触媒Aを用いるモデルプロセスに基づく。一方、実施例3−Bは、実施例3に記載される供給物及び触媒Bを用いる同様のモデルプロセスに基づく。実施例5は、ラージポアモリブデン含浸ゼオライト触媒の性能容量(パフォーマンス・ケイパビリティ)を説明する。
【0075】
[実施例1]
本実施例は、2種の触媒(触媒A及びB)の調製を記載する。これら触媒は、続いて実施例2〜4に記載するプロセスで用いた。第1の触媒である「触媒A」はモルデナイトゼオライトであり、第2の触媒である「触媒B」はモリブデン含浸モルデナイトゼオライトを含む。本実施例は、さらに、他の2種の触媒(触媒C及びD)の調製をも記載する。これらの触媒は、続いて実施例5に記載するプロセスで用いた。「触媒C」は、モリブデン含浸β型ゼオライトからなり、一方、「触媒D」はモリブデン含浸 USY型ゼオライトからなる。
【0076】
より詳細には、「触媒A」はモルデナイトゼオライトであり、H-モルデナイトゼオライト(Union Carbide Corporation (Houston, Texas)から商標"LZM-8"で市販されている)80 gと蒸留水100 gとAI2O3ゾル(水中9.3%固体)(アルミナゾルとしてCriterionから市販されている)215 gとを混合することにより調製した。次いで、混合物を329゜F(165℃)で約3時間乾燥し、その後、950゜F(510℃)で 約4時間か焼して、モルデナイト触媒(80%シーブ/20% AI2O3)を得た。か焼後、触媒を顆粒化して、14/40 シーブ(篩)に通過させた。
【0077】
「触媒B」は、モリブデン含浸モルデナイト(MOR)触媒(すなわち、2% Mo/MOR 触媒)であった。特に、1.32 gのアンモニウムヘプタモリブデート((NH4)6Mo7O24・4H2O)を32 gの蒸留水に溶解させて澄明な液を得た。この澄明な液を次いで36 gの「触媒A」(上述のように調製した)に添加して混合し、329゜F(165℃)で約3時間乾燥させ、その後、950゜F(510℃)で約4時間か焼して、含浸触媒(すなわち「触媒B」)を得た。
【0078】
「触媒C」は、モリブデン含浸β型(BEA)ゼオライト(すなわち、2% Mo/BEA触媒)であった。64 gのH-β型ゼオライト(PQ Corporation(Valley Forge, Pennsylvania)から市販されている)と22 gの蒸留水と172 gのAI2O3ゾル(水中9.3%固体)(アルミナゾルとしてCriterionから市販されている)を混合することによって、β型触媒(80% シーブ/20% AI2O3)を調製した。次いで、この混合物を329゜F(165℃)で約3時間乾燥させ、その後、950゜F(510℃)で約4時間、か焼した。か焼後、触媒を顆粒化して、14/40シーブ(篩)に通過させた。アンモニウムヘプタモリブデート水溶液0.784 gを調製したβ型触媒21.3 gと混合して、329゜F(165℃)で約3時間乾燥させ、その後、950゜F(510℃)で約4時間、か焼して、含浸触媒(すなわち「触媒C」)を得た。
【0079】
「触媒D」は、モリブデン含浸USYゼオライト(すなわち、5% Mo/USY触媒)であった。80 gのH-USYゼオライト(UOP, Inc.(Des Plaines, Illinois)から商標"LZY-84"として市販されている)を215 gのAI2O3ゾル(水中9.3%固体)(アルミナゾルとしてCriterionから市販されている)と混合することによって、USY触媒(80% シーブ/20% AI2O3)を調製した。次いで、この混合物を329゜F(165℃)で約 3時間乾燥させ、その後950゜F(510℃)で約4時間、か焼した。か焼後、触媒を顆粒化して14/40シーブに通過させた。アンモニウムヘプタモリブデート水溶液2.35 gと、調製したUSY 触媒25 gとを混合して、329゜F(165℃)で約3時間乾燥させ、その後、950゜F(510℃)で約4時間、か焼して、含浸触媒(すなわち「触媒D」)を得た。
【0080】
[実施例2]
本実施例は、ニトロ化級(nitration-grade)トルエンをベンゼン及びキシレンに転化するためのモルデナイト触媒(実施例1の「触媒A」)及びモリブデンを含浸した同一の触媒(実施例1の「触媒B」)のパフォーマンス・ケイパビリティを説明する。各実験において、破砕した触媒を3/4インチ管状ステンレススチール栓流反応器に充填し、液体供給物の導入前に、2時間かけて、400℃(752゜F)で200psig(約1.4MPa)で水素を流しながら処理した。供給物流は水素とトルエン(水素:トルエンモル比が4:1)の混合物であり、反応条件は400℃(752゜F)で200 psig(約1.4 MPa)であり、WHSVは触媒Aについて1.0及び2.0、触媒Bについて1.0、2.0及び5.0であった。各実験で得られた液体供給物(Feed Wt.%)及び生成物(Pdt. Wt.%)の分析結果はTable 1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
トルエンの転化率は、供給物中及び生成物中のトルエンの量における差を供給物中に存在するトルエンの量で除することによって決定する。例えば、触媒AでWHSVが2.0での実験で得られたデータを用いると、トルエン転化率は約34.8(すなわち、34.8 = 100 × (99.76 - 65.06) ÷ 99.76)であった。生成物中の任意の特定の成分の選択率は、トルエンの転化率で成分の收率を除することによって決定する。よって、例えば、触媒AでWHSVが2.0での実験で得られたデータを用いると、ベンゼン選択率は約39%(すなわち、39 = 100 × (13.59 ÷ 34.8))であり、キシレン異性体類選択率は約49.7%(すなわち、49.7 = 100 × (17.29 ÷ 34.8))であった。
【0083】
触媒Bについて、転化率は、WHSV 1及び2においてほぼ同一であり、触媒がほぼ平衡転化であることを示す。データは、触媒Bを用いる場合に、WHSVが増加すると、トルエンの転化率は減少することを示す(WHSVが1、2及び5についてそれぞれ57%〜56%〜33%へ)。この傾向は、触媒Aを用いる場合のデータによっても示される(WSHVが1及び2についてそれぞれ41 %から35%へ)。各触媒を用いて製造された生成物のプロファイルに基づいて、2 wt%の酸化モリブデンの添加は、一般に、他の成分中での1の特定の成分の製造(選択率)にあまり影響しないことが容易にわかる。WHSVが5のとき、触媒Bを用いて得られるベンゼン及びキシレンの選択率は、それぞれ40.8及び49.8であり、触媒Aを用いて得られたものと非常に類似する。2%の酸化モリブデンの添加は、触媒Aと比較して約2.5倍の触媒活性の向上をもたらす。副産物軽質ガスの收率はより高く、重質芳香族の收率は低くなり、あまり所望でない生成物のわずかに高い收率をもたらす。
【0084】
[実施例3]
本実施例は、ほぼ100%のC9芳香族含有供給物をキシレン異性体類に転化するためのモルデナイト触媒(実施例1の触媒A)及びモリブデンが含浸された同一の触媒(実施例1の触媒B)のパフォーマンス・ケイパビリティを説明する。供給物の組成は下記Table 2に示し、5回の実験の各々で同一であった。各実験において、触媒を3/4インチ管状ステンレススチール栓流反応器に充填して、液体供給物の導入前に、2時間にわたり、400℃(752゜F)で200 psig(約1.4 MPa)で水素を流しながら処理した。供給物流は、 モル比が4:1の水素及び炭化水素の混合物であった。反応条件は、400℃(752゜F)、200 psig(約1.4 MPa)であった。触媒Aを用いる2種の実験についてのWHSVは1.0及び1.5であり、一方、触媒Bを用いる3種の実験についてのWHSVは1.0、1.5及び2.0であった。液体供給物及び各実験で得られた生成物の分析結果は下記Table 2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
上記Table 2に示すデータに基づいて、触媒Bを用いる場合に予測しなかった驚くべき結果が得られたことがわかる。例えば、触媒Aと比較した場合に、驚異的で予測しなかった供給物の高い転化率を触媒Bで得ることができる。特に、触媒Aを用いて得られた液体生成物は、供給物中に存在するC9芳香族と生成物中に存在するC9芳香族との質量比が WHSVが1.0の場合に約1.51(すなわち、97.71/64.76)であり、WHSVが1.5の場合に1.35(すなわち、97.71/72.06)である。対比して、触媒Bを用いて同一の供給物を同一の反応条件で通過させた場合に得られた液体生成物は、供給物中に存在するC9芳香族と生成物中に存在するC9芳香族の質量比が、WHSVが1.0の場合に約4.89(すなわち、97.71/19.98)であり、WHSVが1.5の場合に4.5(すなわち、97.71/21.69)である。この予測しなかった驚異的に高い転化率は、転化のために反応器に戻される必要がある未反応のC9芳香族の量がより少ない点で有益である。モリブデンの添加が触媒の寿命(活性)を増長することは予測されるが、モリブデンの添加がC9芳香族のキシレン異性体類へのこのように高い転化率をもたらすことは予測できないことであり驚異的である。
【0087】
さらに、C9芳香族のキシレン異性体類への驚異的で予測できない高い転化率は、触媒Aよりも触媒Bによって得ることができる。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、C9芳香族に対するキシレン異性体類の質量比がWHSV1.0の場合に約0.12(すなわち、7.86/64.76)であり、WSHVが1.5の場合に0.08(5.45/72.06)である。対比して、触媒Bを用いて同一の供給物を同一の反応条件で通過させる場合に得られる液体生成物は、C9芳香族に対するキシレン異性体類の質量比がWHSV1.0の場合に約1.74(すなわち、34.67/19.98)であり、WHSV1.5の場合に1.63(35.43/21.69)である。
【0088】
同様に、Table 2のデータは、触媒Aと比較して触媒Bによるメチルエチルベンゼンの驚異的で予測できない高い転化率を示す。特に、触媒Aを用いる場合に得られた液体生成物は、生成物中に存在するメチルエチルベンゼンに対する供給物中に存在するメチルエチルベンゼンの質量比がWHSV1.0の場合に約1.61(すなわち、49.32/30.67)であり、WHSV1.5の場合に1.41(すなわち、49.32/35)である。対比して、触媒Bを用いて同一の供給物を同一の反応条件で通過させる場合に得られた液体生成物は、生成物中に存在するメチルエチルベンゼンに対する供給物中に存在するメチルエチルベンゼンの質量比がWHSV1.0の場合に約37.65(すなわち、49.32/1.31)であり、WHSV1.5の場合に22.58(すなわち、49.32/2.19)である。この予測できない驚異的な高い転化率は、転化のために反応器に戻されることが必要な未反応のメチルエチルベンゼンの量がより少ない点で有益である。
【0089】
またさらに、触媒Aを用いる場合に得られた液体生成物は、エチルベンゼンに対するキシレン異性体類の質量比がWHSV1.0の場合に約2.58(すなわち、7.86/3.05)であり、WHSV1.5の場合に2.14(すなわち、5.45/2.55)である。対比して、触媒Bを用いて実質的に同一の供給物を同一の反応条件で通過させる場合に得られた液体生成物は、エチルベンゼンに対するキシレン異性体類の質量比がWHSV1.0の場合に約66.67(すなわち、34.67/0.52)であり、WHSV1.5の場合に39.81(すなわち、35.43/0.89)である。この予測できない驚異的な高い質量比は、生成物流がその主要成分、すなわち、6個、7個、8個及び9個の炭素を含む芳香族に分留されるべき下流処理において有益である。典型的に、C8芳香族留分のさらなる処理は、エチルベンゼンのエネルギー消費型処理を含むことが必要であろう。しかし、触媒Bを用いる場合に得られた液体反応生成物中にエチルベンゼンが実質的に存在しないとすれば、C8芳香族留分中にエチルベンゼンは実質的に存在しないので、このようなエネルギー消費型処理は、 エチルベンゼンの留分を取り除くために必要とされない。しかし、これは、所定の反応条件及び所定の供給物の下で、触媒Aに対して、触媒Bを用いることにより認められる利点の一つに過ぎない。
【0090】
さらに、触媒Aを用いて得られた生成物と比較して、触媒Bで得られた生成物は、C10芳香族に対するキシレン異性体類の驚異的で予測できない高い質量比を有する。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、C10芳香族に対するキシレン異性体類の質量比がWHSV1.0の場合に約0.82(すなわち、7.86/9.59)であり、WHSV1.5の場合に0.67(すなわち、5.45/8.08)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、C10芳香族に対するキシレン異性体類の質量比がWHSV1.0の場合に約9.22(すなわち、34.67/3.76)であり、WHSV1.5の場合に7.79(すなわち、35.43/4.55)である。このような高い比率は、C9芳香族を含む主たる反応がキシレン異性体類を生じさせる不均化反応であって、C10芳香族及びベンゼンを得る反応ではないことの証拠である。生成物及び/又は中間生成物流中にC10芳香族がないか又は少量であることは、転化のために供給物に戻されるべき未反応又は生成したC10芳香族の量が少なく、よってエネルギーを節約し、資本投資を減少させる点で有益である。C10芳香族が中間又は生成物流中に存在する限りにおいて、そのようなC10芳香族は主としてテトラメチルベンゼンであり、再循環され得るし、キシレン異性体類への転化により適している。有利なことに、触媒Aで得られる生成物と対比して、触媒Bから得られる生成物中に存在するC10芳香族は、キシレン異性体類への転化がより困難であるエチルジメチルベンゼン及び/又はジエチルベンゼンを含まず、したがって再循環にあまり適さない。
【0091】
触媒Aを用いて得られる生成物と比較して、触媒Bで得られる生成物はさらに、メチルエチルベンゼンに対するトリメチルベンゼンの驚異的で予測できない高い質量比を有する。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、メチルエチルベンゼンに対するトリメチルベンゼンの質量比がWHSV1.0の場合に約1.1(すなわち、33.4/30.67)であり、WHSV1.5の場合に1.0(すなわち、35.8/35.0)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、メチルエチルベンゼンに対するトリメチルベンゼンの質量比がWHSV1.0の場合に約14.25(すなわち、18.67/1.31)であり、WHSV1.5の場合に8.9(すなわち、19.5/2.19)である。この予測できない驚異的に高い比率は、メチルエチルベンゼンよりもトリメチルベンゼンがより容易にキシレン異性体類に転化され得るので、再循環により適しているから、有益である。
【0092】
またさらに、触媒Aを用いて得られる生成物と比較して、触媒Bで得られる生成物は、エチルベンゼンに対するベンゼンの驚異的で予測できない高い質量比を有する。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、エチルベンゼンに対するベンゼンの質量比がWHSV1.0の場合に約0.69(すなわち、2.09/3.05)であり、WHSV1.5の場合に0.78(すなわち、1.98/2.55)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる生成物は、エチルベンゼンに対するベンゼンの質量比がWHSV1.0の場合に約9.9(すなわち、5.15/0.52)であり、WHSV1.5の場合に5.51(すなわち、4.9/0.89)である。
【0093】
上記Table 2に示すトルエン不均化に関する結果は、同一の条件下でより高いメチルエチルベンゼン及びトリメチルベンゼン転化率によって立証されるように、酸化モリブデン2%の添加が触媒の活性を増加させることを示す。上記実施例2で得られた結果を参照すれば、触媒A及びBを用いて得られるトルエン不均化に対する選択率は、触媒Bに対するものとほぼ同一であるか又は僅かに悪くなっている。下記Table 3に報告するデータは、C9芳香族の転化について、キシレン類に対する選択率は顕著に高くなり、ベンゼンに対する選択率は僅かに低くなり、重質C10+芳香族に対する選択率は顕著に低くなることを示す。
【0094】
【表3】

【0095】
触媒BでC8芳香族留分中に存在するエチルベンゼンの量は、触媒Aで得られる同じ留分中に存在するエチルベンゼンの量よりも大幅に少ない。よって、触媒Bを用いて得られるC8芳香族留分は、パラキシレン製造用の化学供給原料としてもっとよく適している。触媒Bを用いて得られる生成物中に存在する重質C10+芳香族は、追加のキシレン類を製造するためのプロセスに再循環され得ることがわかった。対比して、触媒Aを用いて得られる生成物中に存在する重質C10+芳香族は、この留分がキシレン異性体類に容易に転化されない特定のC10+芳香族(例えば、エチルジメチルベンゼン及びジエチルベンゼン)を含み、触媒を迅速に失活するであろうから、そのようには再循環され得ない。触媒Aを用いる場合、メチルエチルベンゼンの大部分が反応して、ジエチル-C10+芳香族及びトルエン又はエチルジメチルベンゼン及びエチルベンゼンを形成する。しかし、触媒Bを用いる場合、メチルエチルベンゼンはエチル基を脱アルキル化して、基を飽和してトルエンの製造を伴いエタンを得る。少量のエチルベンゼンが形成され、トルエンは供給物中に存在するトリメチルベンゼンと反応して、2個のキシレン分子を生成させる。重質芳香族はテトラメチルベンゼンの平衡分布物であり、これはトルエンと手際よく反応して追加のキシレン異性体類を与える。
【0096】
[実施例3−A](触媒Aでの定常状態運転)
前述の実施例は、単一工程(single pass)で得られ得る転化を示す。再循環を用いる定常状態プロセスで得られ得る転化率を決定又は推定することも可能である。触媒Aを用いるプロセスでの再循環収率は、上記Table 2に示した結果に基づいてプロセスをモデル化することによって決定した。このモデル化に基づくプロセスフローダイアグラムを図2に示す。
【0097】
図2を参照すれば、プロセスフローは概して50で示され、反応器52と液体生成物分離器54及び多数の蒸留塔56A、56B、56C及び56Dによって画定される蒸留列とを含む。一般に、C9芳香族含有供給物及び水素ガスはライン58を通過して、反応器52に入り、ここで供給物は水素ガスの存在下で接触反応(触媒A)して、中間生成物を得る。中間生成物は、中間生成物ライン60を通して反応器52を出て、続いて液体生成物分離器54に入る。次に、分離器54は、軽質炭化水素類(典型的には気体)を芳香族(典型的には液体)から分離する。軽質炭化水素類はライン62を介してプロセスフローを出て、芳香族はライン64を介して分離器54を出て、第1蒸留塔56Aに入り、ここで芳香族は2種の留分に分離される。一方の留分は主としてベンゼン及びトルエンを含み、他方の留分は高級芳香族(キシレン類を含む)を含む。ベンゼン及びトルエンを含む留分は、蒸留塔56Aを出てライン66を介して第2蒸留塔56Bに入り、高級芳香族留分は蒸留塔56Aを出てライン68を介して第3蒸留塔56Cに入る。第2蒸留塔56Bは、流入してくる供給物を主としてベンゼンを含む留分70と主としてトルエンを含む留分72とに分離する。両方の留分は最終的には再循環され、こうして第2蒸留塔全体を除いてもよいが、図示されているようにトルエン留分72(いくらかのベンゼンを含んでいてもよい)だけが再循環される。第3蒸留塔56Cは、流入してくる供給物を主として所望のキシレン異性体類生成物を含む留分74と、主としてC9+芳香族を含む留分76と、に分離する。次に、C9+芳香族留分76は第4蒸留塔56Dに送られ、ここで供給物は、再循環可能な未反応C9芳香族の留分78と、重質C10+芳香族副産物留分80(典型的には多重置換メチル芳香族及びエチル芳香族の混合物を含む)とに分離される。
【0098】
上記Table 2を参照すれば、触媒Aについて、1.0 WHSVで、C9供給物中メチル基の非C9生成物に対する選択率は以下の通りである。軽質非芳香族に対して6%;トルエンに対して26%;キシレンに対して36%;C10+重質芳香族に対して32%。軽質非芳香族及びC10+重質芳香族のいずれも図2に示すプロセスフロー50内では再循環されず、これらの留分は混合キシレン類への最終的転化に利用されない。C9供給物中芳香族環の非C9生成物に対する選択率は以下の通りである。BTXに対して69%;エチルベンゼンに対して10%;C10+重質芳香族に対して21%。C9供給物が100 ポンド(lbs.)と仮定すると、供給物中メチル基は1.49ポンドモル(Ibmoles)であり、供給物中芳香族環は0.822 lbmolesとなる。次の工程は、メチル基又はベンジル基の利用可能性がキシレン異性体類の製造を制限するか否かを計算することである。メチル基のキシレンポテンシャルは、供給物中の利用可能なメチル基のモル量を製造されたトルエン及びキシレンに対するそれらのメチル基の選択率の平均総量と掛け合わせることにより決定される。
1.49 lbmoles x (0.26 + 0.36) ÷ 2 = 0.462 Ibmoles.
同様に、ベンジル基のキシレンポテンシャルは、ベンジル基のモル量を生成物中BTXに対する供給物中芳香族環の選択率と掛け合わせることにより決定される。
0.822 Ibmoles x 0.69 = 0.567 Ibmoles.
上述の内容に基づいて、メチル基の利用可能性はキシレン類の製造を制限するといえる。これに基づいて、モル基準での再循環収率は、0.462 Ibmoles キシレン類;0.105 Ibmoles ベンゼン(0.567と0.462との差);0.082 Ibmoles エチルベンゼン;0.173 Ibmoles C10+重質質芳香族と計算される。軽質非芳香族を含む相対質量基準では、9% 軽質非芳香族;8% ベンゼン;49% キシレン類;9% エチルベンゼン;25% C10+重質芳香族となる。
【0099】
[実施例3−B](触媒Bでの定常状態運転)
触媒Bを用いる定常状態プロセスでの再循環収率は、上記Table 2に示す結果に基づいてプロセスをモデル化することにより同様に決定される。このモデル化に基づくプロセスフローダイアグラムを図3に示す。図3は、異なる転化率が得られ得る点を除いて図2に示したモデル化と多数の類似点を有する。
【0100】
図3を参照すれば、プロセスフローは概して90で示され、反応器52と、液体生成物分離器54及び多数の蒸留塔56A、56B及び56Cによって画定される蒸留列とを含む。一般に、C9芳香族含有供給物及び水素ガスはライン58を通過して反応器52に入り、ここで供給物は水素ガスの存在下で接触反応(触媒B)して、触媒Aを用いて得られたものとは異なる中間生成物を得る。この中間生成物は反応器52を出て、中間生成物ライン60を通って、続いて液体生成物分離器54に入る。分離器54は、軽質炭化水素類(典型的には気体)を芳香族(典型的には液体)から分離し、軽質炭化水素類はプロセスフローをライン62を介して出て、芳香族は分離器54をライン64を介して出て第1蒸留塔56Aに入る。そこで、芳香族は、2種の留分に分離され、一方の留分は主としてベンゼン及びトルエンを含み、他方の留分は高級芳香族(キシレン類を含む)を含む。ベンゼン及びトルエンを含む留分は、蒸留塔56Aを出てライン66を介して第2蒸留塔56Bに入り、高級芳香族留分は、蒸留塔56Aを出てライン68を介して第3蒸留塔56Cに入る。第2蒸留塔56Bは、入ってくる供給物を主としてベンゼンを含む留分70と主としてトルエンを含む留分72とに分離する。両方の留分とも最終的に再循環され、こうして第2蒸留塔全体を除いてもよいが、図示されているようにトルエン留分72(いくらかのベンゼンを含んでいてもよい)だけが再循環される。第3蒸留塔56Cは、入ってくる供給物を所望のキシレン異性体類生成物を含む留分74とC9+芳香族を含む留分76とに分離し、留分76は反応器52に再循環される。
【0101】
上記Table 2を参照すれば、触媒Bについて1.0 WHSVで、C9供給物中メチル基の非C9生成物に対する選択率は以下の通りである。軽質非芳香族に対して0%;トルエンに対して25%;キシレン類に対して65%;C10+重質芳香族に対して11%。C10+重質芳香族はすべてメチル置換であるから、キシレン類を製造するベンゼン及びトルエンとの反応を続けるであろう。このプロセスフロー90では、副産物として損失するメチル基はない。非C9生成物に対するC9供給物中ベンジル基の選択率は以下の通りである。BTXに対して96%;エチルベンゼンに対して1 %;C10+重質芳香族に対して3%。再び、C9供給物を100 lbsと仮定すると、供給物中メチル基は1.49 lbmolesとなり、供給物中ベンジル基は0.822 lbmolesとなるであろう。次の工程は、メチル基又はベンジル基の利用可能性がキシレン異性体類の製造を制限するか否かを計算することである。このような計算は実施例3-Aについて上述した態様で行う。メチル基のキシレンポテンシャルは、0.745 Ibmolesであり、ベンジル基のキシレンポテンシャルは0.814 Ibmolesである。前述の内容に基づいて、メチル基の利用可能性はキシレン類の製造を制限するといえる。これに基づいて、再循環収率はモル基準で、0.745 Ibmoles キシレン;0.069 Ibmoles ベンゼン(0.814と0.745の差)及び0.008 Ibmoles エチルベンゼンとなる。軽質非芳香族を含む相対質量基準では、15% 軽質非芳香族;5% ベンゼン;79% キシレン類;1% エチルベンゼン;0% C10+重質芳香族となる。
【0102】
実施例3−A及び3−Bで得られた再循環収率の比較を下記Table 4にまとめる。
【0103】
【表4】

【0104】
[実施例4]
本実施例は、モルデナイト触媒(実施例1の触媒A)とモリブデンを含浸した同じ触媒(実施例1の触媒B)の約61 wt% C9芳香族(A9)炭化水素類及び約38 wt%トルエンを含む供給物をキシレン異性体類へ転化するパフォーマンス・ケイパビリティを説明する。2種の別個の実験を同じ供給物で行った。各実験において、触媒を3/4インチ管状ステンレススチール栓流反応器に充填し、液体供給物の導入前に、水素を流しながら2時間400℃(752゜F)、200 psig(約1.4 MPa)で処理した。供給物流は、水素及び炭化水素の4:1モル比の混合物であった。反応条件は、400℃(752゜F)、200 psig(約1.4 MPa)、WHSV 1.0に設定した。液体供給物及び生成物の分析結果を下記Table 5に示す。
【0105】
【表5】

【0106】
本実施例に対する反応条件は、実施例3で用いた条件と同じである。よって、混合トルエン/C9芳香族供給物が同じ処理条件で反応し、したがって純C9芳香族供給物で開始する限りにおいてトルエンが製造され、このようなトルエンはキシレンの追加製造のためのプロセスに再循環され得ることは容易に理解される。再循環運転時に、最適な生成物は軽質ガス、ベンゼン及びキシレンである。いずれの触媒もトルエン及びC9芳香族を同時に転化することができるが、触媒Aに対して、トルエン及びC9芳香族の反応は、エチルベンゼンが不利に高く、約17.8%(すなわち、17.8 = 100 x (3.00/(3.00 + 3.45 + 7.25 + 3.23))であるC8芳香族生成物を得る。よって、トルエンと一緒にC9芳香族を処理することで追加のキシレン類を製造することができるが、パラキシレンの製造における化学供給原料として使用するためのキシレン類の品質は悪く、すなわち、トルエンから製造されたキシレン類は、トルエン不均化により製造されたキシレン類と比較してはるかに低い品質である。しかし、触媒Bを用いて同じ供給物から製造されたC8芳香族は、有利に、予測されなかったことであるが、エチルベンゼンが約1.7%(すなわち、1.7% = 100 x (0.55/(0.55 + 7.70 + 16.87 + 7.33))と驚異的に低く、結果的に、パラキシレンの製造における化学供給物質としてより良好に適するより高品質のキシレン生成物を得る。
【0107】
さらに、他の多くの予測できない驚異的な結果が、触媒Bを用いる場合に得られる。 例えば、触媒Aと比較した場合にC9芳香族からキシレン異性体類への驚異的で予測できない高い転化率が触媒Bで得られ得る。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、供給物中に存在するC9芳香族の生成物中に存在するC9芳香族の質量比が約1.64(すなわち、60.82/37.17)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、供給物中に存在するC9芳香族の生成物中に存在するC9芳香族の質量比が約4.98(すなわち、60.82/12.22)である。この予測できない驚異的に高い転化率は、転化のために反応器に再循環されて戻される必要がある未反応C9芳香族の量がより少ない点で有益である。モリブデンの添加は触媒の寿命(活性)を増長させると予測されるが、モリブデンの添加が結果的にこのように高いC9芳香族のキシレン異性体類への転化率をもたらすことは予測できないことであり驚異的なことである。
【0108】
さらに、触媒Aと比較した場合に、触媒Bで、驚異的で予測できない高い供給物の転化率が得られる。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、C9芳香族に対するキシレン異性体類の質量比が約0.37(すなわち、13.93/37.17)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、C9芳香族に対するキシレン異性体類の質量比が約2.61(すなわち、31.9/12.22)である。
【0109】
同様に、Table 5のデータは、触媒Aと比較した場合に、触媒Bでの驚異的で予測できない高いメチルエチルベンゼンの転化率を示す。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、生成物中に存在するメチルエチルベンゼンに対する供給物中に存在するメチルエチルベンゼンの質量比が約1.71(すなわち、30.75/18.02)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、生成物中に存在するメチルエチルベンゼンに対する供給物中に存在するメチルエチルベンゼンの質量比が約33.06(すなわち、30.75/0.93)である。この予測できない驚異的に高い転化率は、転化のために反応器に再循環されて戻される必要がある未反応(又は製造された)メチルエチルベンゼンの量がより少ない点で有益である。
【0110】
またさらに、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、エチルベンゼンに対するキシレン異性体類の質量比が約4.64(すなわち、13.93/3)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、エチルベンゼンに対するキシレン異性体類の質量比が約58(すなわち、31.9/0.55)である。この予測できない驚異的に高い質量比は、上述のように生成物流を主要成分、すなわち、6個、7個、8個及び9個の炭素を含む芳香族に分画する下流処理において有益である。典型的には、C8芳香族留分の更なる処理は、エチルベンゼンのエネルギー消費型処理を必然的に含むであろう。しかし、触媒Bを含む場合に得られる液体反応生成物中にエチルベンゼンが実質的に含まれていないとすると、C8芳香族留分中にエチルベンゼンが実質的に含まれず、そのようなエネルギー消費型処理はエチルベンゼンの留分を除くために必要ではない。
【0111】
触媒Bで得られる生成物もまた、触媒Aを用いて得られる生成物と比較した場合に、C10芳香族に対してキシレン異性体類が驚異的で予測できない高い量で含まれる。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、C10芳香族に対するキシレン異性体類の質量比が約2.88(すなわち、13.93/4.83)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、C10芳香族に対するキシレン異性体類の質量比が約20.19(すなわち、31.9/1.58)である。
【0112】
またさらに、触媒Bで得られる生成物は、触媒Aを用いて得られる生成物と比較して、メチルエチルベンゼンに対してトリメチルベンゼンが驚異的で予測できない高い量で含まれる。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、メチルエチルベンゼンに対するトリメチルベンゼンの質量比が約1.05(すなわち、18.89/18.02)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、メチルエチルベンゼンに対するトリメチルベンゼンの質量比が約12.14(すなわち、11.29/0.93)である。
【0113】
触媒Bで得られる生成物は、触媒Aを用いて得られる生成物と比較して、エチルベンゼンに対してベンゼンが驚異的で予測できない高い量で含まれる。特に、触媒Aを用いる場合に得られる液体生成物は、エチルベンゼンに対するベンゼンの質量比が約1.14(すなわち、3.43/3)である。対比して、触媒Bを用いて同一の反応条件下で同一の供給物を通過させる場合に得られる液体生成物は、エチルベンゼンに対するベンゼンの質量比が約20.6(すなわち、11.3/0.55)である。
【0114】
報告データは、C9芳香族のほぼ80%が触媒Bで転化され(触媒Aではわずかに約39%)、供給物中トルエンの約14%が触媒Bで転化された(触媒Aではわずかに約7.6%)ことを示す。さらに、生成物流の大まかな比較検討は、触媒Bを用いると、(a)ほぼ全量のメチルエチルベンゼンが転化されてしまうこと;(b)ベンゼン及びキシレンの収率が増加すること;(c)C8芳香族中エチルベンゼン濃度が顕著に低下すること;及び(d)C10芳香族の収率が劇的に減少することを示す。C9芳香族単独の反応と比較すると、トルエンの収率に純益はないが、ベンゼンの収率は増加する。よって、トルエンはC9芳香族と共に処理されて、ベンゼンの収率を増加させ、所望であれば反応器に再循環して戻されてもよい。
【0115】
[実施例5]
本実施例は、ラージポアモリブデン含浸ゼオライト触媒のパフォーマンス・ケイパビリティを説明する。特に、本実施例は、モリブデン含浸モルデナイト触媒(実施例1の触媒B)、モリブデン含浸β型ゼオライト(実施例1の触媒C)及びモリブデン含浸USYゼオライト(実施例1の触媒D)について、約60 wt% C9芳香族(A9)炭化水素及び約38 wt%トルエンを含む供給物をキシレン異性体類に転化するためのパフォーマンス・ケイパビリティを説明する。同じ供給物について4種の別個の実験を行った。各実験において、触媒を3/4インチ管状ステンレススチール栓流反応器に充填し、液体供給物の導入前に、水素を流しながら2時間、約400℃(752 ゜F)(下記に示したデータにおいて特にことわらない限り)及び200 psig(約1.4 MPa)で処理した。供給物流は、水素及び炭化水素の4:1モル比混合物であり、反応条件は400℃(752゜F)(特にことわらない限り)、200 psig(約1.4 MPa)、WHSV 1.0に設定した。液体供給物及び生成物の分析結果は、下記Table 6に示す。
【0116】
【表6】

【0117】
上記Tableに示したデータは、モリブデン含浸モルデナイト触媒(触媒B)に加えて、他のラージポアモリブデン含浸ゼオライト(触媒C及びD)もまたC9芳香族含有供給物をキシレン異性体類へ転化する際に望ましく良好に作用することを示す。実際、これらの他のラージポアモリブデン含浸ゼオラトもまた、転化生成物中エチルベンゼンに対するキシレン異性体類の比、C9芳香族(例えばメチルエチルベンゼン)に対するキシレン異性体類の比、C10芳香族に対するキシレン異性体類の比、メチルエチルベンゼンに対するトリメチルベンゼンの比、エチルベンゼンに対するベンゼンの比が予測できないほど驚異的に高く、C9芳香族及びメチルエチルベンゼンの高い転化率をもたらす。
【0118】
上記記述は、理解を明瞭にするために与えられるものであり、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲内での改変は当業者に容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
本発明をより完全に理解するために、以下の詳細な説明及び添付図面を参照されたい。
【図1】図1は、開示された方法を実施するために用いることができる装置を概略図示する説明図である。
【図2】図2は、モルデナイト触媒を用いるC9芳香族の定常状態転化のプロセスフローを概略図示する説明図である。
【図3】図3は、モリブデン含浸モルデナイト触媒を用いるC9芳香族の定常状態転化のプロセスフローを概略図示する説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシレン異性体類の製造方法であって、
(a)C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有中間生成物流に転化するに適する条件下でC9芳香族含有供給物を触媒と接触させる工程;
(b)キシレン異性体類の少なくとも一部を該中間生成物流から分離する工程;及び
(c)工程(b)で得られた貧キシレン異性体類中間生成物流を工程(a)の供給物に再循環させる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記供給物は、キシレン異性体類、硫黄、パラフィン類及びオレフィン類を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給物は、供給物の総量を基準として約50 wt.%未満のトルエンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記供給物は、供給物の総量を基準として約30 wt.%未満のベンゼンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒は、VlB族金属酸化物が含浸されている非硫化ラージポアゼオライトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ゼオライトは、モルデナイト、β型ゼオライト、Y型ゼオライト及び1種以上のこれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間生成物流は、少なくとも約6:1のキシレン異性体類:エチルベンゼンの質量比で存在するキシレン異性体類及びエチルベンゼンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
C9芳香族及び供給物の総量を基準として約30 wt.%未満のベンゼンを含む供給物とVIB族金属酸化物が含浸されている非硫化ラージポアゼオライトとを、該供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化するに適する条件下で、接触させることを含む、キシレン異性体類の製造方法。
【請求項9】
少なくとも約6:1の生成物流中キシレン異性体類:エチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させることを含むC9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法。
【請求項10】
少なくとも約1:1の生成物流中キシレン異性体類:メチルエチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させることを含む、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法。
【請求項11】
少なくとも約3:1の生成物流中キシレン異性体類:C10芳香族の質量比を得るに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させることを含む、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法。
【請求項12】
少なくとも約1.5:1の生成物流中トリメチルベンゼン:メチルエチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させることを含むC9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法。
【請求項13】
生成物流中ベンゼン:エチルベンゼンの質量比が少なくとも約2:1となるに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させることを含む、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法。
【請求項14】
少なくとも約4:1の供給物中に存在するC9芳香族:生成物流中に存在するC9芳香族の質量比を得るに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させることを含む、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法。
【請求項15】
少なくとも約2:1の供給物中に存在するメチルエチルベンゼン:生成物流中に存在するメチルエチルベンゼンの質量比を得るに適する条件下で、C9芳香族含有供給物を触媒と接触させることを含む、C9芳香族含有供給物をキシレン異性体類含有生成物流に転化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−526301(P2007−526301A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501767(P2007−501767)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/038075
【国際公開番号】WO2005/095309
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】