CBD1エピトープにおけるオーバーラップする中和決定基に対応する合成ペプチドによって広域中和抗体が誘導される
本発明は、Tヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41(CBD1)ペプチドのカベオリン1結合ドメイン又は前記CBD1の変異体を有するキメラペプチドに関する。一態様において、Tエピトープは、破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチド由来である。これらのキメラペプチド並びに医薬及び免疫原性組成物を含む組成物並びにこれらのキメラペプチドを含むワクチンも本発明の部分である。HIV−1活性に対する中和抗体を誘導するための方法及びHIV−1感染を処置又は予防するためのキメラペプチドの使用も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の属する技術分野
本発明は、破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを有するキメラペプチドに関する。これらのキメラペプチド又はタンパク質を含む組成物、並びにこれらのキメラペプチド又はタンパク質を含む薬学的な免疫原性組成物及びワクチンも本発明の部分である。HIV−1活性を中和する方法及びHIV−1活性に対する中和抗体を誘導するためのキメラペプチドの使用並びにHIV−1感染を処置する方法も開示される。
【0002】
2.発明の背景及び関連する先行技術
Pasteur Instituteでの1983年のBarre-Sinousi、Chermann、及びMontagnierによるLAVの発見及び単離以降、AIDSの大きな副作用のない有効な処置及び予防についての研究は困難なものであった。
【0003】
「高活性抗レトロウイルス治療」として当技術分野において公知である、逆転写酵素とHIVのプロテアーゼ酵素を標的とする薬物の組み合わせを用いてAIDS患者を処置することは、血中でのウイルス負荷を低レベルにするために有効である。
【0004】
そのため、1996年以降、抗レトロウイルス薬物、例えばジドブジン(AZT)、リトナビル、サキナビル、ラミブジン、アンプレナビル、アバカビル、インジナビル、ネルフィナビルなどを、一般的に、2つの逆転写酵素インヒビター及び1つのプロテアーゼインヒビターを使用した三剤治療において使用し、患者のHIV量を低下させた。しかし、これらの薬物のいずれも完全にはウイルスを除去しない。
【0005】
さらに、三剤治療に関連する重大な問題が残っている。HIV感染者が一定のスケジュールで一生にわたり薬物を服用しなければならないだけではないが、これらの薬物は非常に高価であるだけでなく(年10,000ドル又はそれ以上)、有毒である。それらの有毒な性質のため、抗レトロウイルス薬物は、嘔気、嘔吐、下痢、貧血、リポジストロフィー、糖尿病様の疾患、脆弱骨、しびれ、手又は足における刺痛又は疼痛、及び心疾患を含む周知の副作用を有する。これらの副作用の結果として、多くのAIDS患者がそれらの医薬の服用を止める。
【0006】
それらの有毒な効果の他、高度活性レトロウイルス治療での主要な課題の1つが薬物耐性である。HIVは常に突然変異することが周知であるため、何十億という新しいHIVウイルスが体内において毎日産生される。これらの突然変異はウイルスの一部分を変化させ、しばしば薬物を無効にする。抗レトロウイルス薬物の代替物は、HIVに対する有効なワクチンを開発することであろう。
【0007】
現在、優れたHIVワクチン製剤はT細胞応答を刺激し、抗HIV抗体を誘発する成分を有するべきであると広く考えられている。現在、T細胞応答を刺激するために設計された25を上回るHIVワクチンが臨床試験中である一方で、広域中和抗体及び/又はHIV−1の初代分離株による感染を阻害する抗体の産生を刺激することが可能であるワクチンは未だに記載されていない。そのため、初代HIV単離株を阻害する中和抗体を刺激することが可能であるワクチンの設計が、HIVワクチン研究の最優先事項の1つであると思われる(McMichael, 2006; Zwick and Burton, 2007)。
【0008】
外部エンベロープ糖タンパク質gp120が、中和抗体の開発のために広く研究されてきた。しかし、そのような抗体は、gp120の配列変動性の結果ある単離株にのみ特異的であり、そのため、限定された作用を有する;特に、それらは初代単離株を中和しない。代替戦略が、現在、受容体、共受容体結合部位、及び、また、CD4へのgp120の結合に続いて剥き出しになる潜在エピトープに対する中和抗体の刺激について評価されている(Lin and Nara, 2007; McMichael and Hanke, 2003)。gp120とは対照的に、膜貫通型エンベロープ糖タンパク質gp41は、保存ドメインがあるので研究対象に良い代替糖タンパク質を提供する。しかし、この場合における問題は、戦略的エピトープがgp120により覆われるうる、及び/又は潜在エピトープであると考えられることである(Wyatt and Sodroski, 1998)。例外は、中和ヒト抗体2F5及び4E10のエピトープを持つgp41外部ドメインのC末端半分である。gp41のサブユニットがワクチンの候補であると考えられてきた;しかし、N−HR及びC−HR領域に対して惹起された抗体が、生理学的条件下で非中和的であることが示された。同様に、中和ヒトモノクローナル抗体2F5及び4E10のエピトープに対する中和抗体を誘導する全ての試みが失敗している(Lin and Nara, 2007; Zwick and Burton, 2007)。
【0009】
全ての単一のHIV単離株において保存されているHIV−1膜貫通型エンベロープ糖タンパク質gp41中の戦略的エピトープが同定されている(Hovanessian et al., 2003, 2004a; Hovanessian et al., 2004b)。このエピトープ(CBD1エピトープと名付けられている)に対応する合成ペプチドが、次に、種々のTリンパ球及びマクロファージ向性HIV−1単離株並びにクレードA〜Gの初代単離株による初代CD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する抗体のウサギにおける産生を繰り返し誘発することが示された。
【0010】
免疫血清を用いてプレインキュベートされたウイルス粒子がそれらの感染性を失って、ウイルス産生培養物への免疫血清の添加は、欠陥ウイルス粒子の産生をもたらす(Hovanessian et al., 2004b)。カベオリン結合ドメインは、従って、HIV粒子上、及び、またウイルス感染細胞上に剥き出しになっている。抗CBD1抗体はHIV感染サイクルで2つの別々のステップで作用する:1)それらはHIV粒子による細胞の感染を予防する;及び2)それらはHIV産生細胞で原形質膜でgp41の凝集を起こし、gp120−gp41複合体を欠損したウイルス粒子の産生に導く。
【0011】
HIV−1 gp41の外部ドメインにおける高度に保存されたB細胞エピトープ、CBD1エピトープ、及び種々のHIV−1単離株を阻害する抗体の産生を誘発するこのエピトープに対応するペプチドの能力は、HIV/AIDSについての普遍的な合成B細胞エピトープワクチン候補の開発のための有望な展望を提供した(Hovanessian et al., 2003, 2004a; Hovanessian et al., 2004b)。
【0012】
しかし、より良好な免疫原性防御を提供する改良されたHIV−1ワクチンが依然として必要とされている。
【0013】
そのため、組成物、より具体的には、広域中和活性を誘導する免疫原性組成物及び/又はHIV−1の初代単離株による感染を阻害する抗体を提供することが本発明の目的である。
【0014】
哺乳動物において、HIV特異的な広域反応性中和抗体の誘導を誘発することが可能である普遍的なB細胞エピトープワクチンを提供することは、本発明の別の目的である。
【0015】
より大量に、及びより低いコストで作製することができる高精製ペプチドを含むワクチンを提供することは、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、種々のHIV−1単離株及びクレードの間で保存された性質のために、広域中和抗体を誘発する、より少ない副作用の免疫原性組成物を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、HIV感染個体における処置用ワクチンとして適用する免疫原性組成物又はワクチン製剤を提供することである。なぜなら、HIV感染個体は、天然抗CBD1抗体を産生する能力を欠くと思われるからである。
【0018】
本発明の別の目的は、組成物、医薬組成物、免疫原性組成物における、及びワクチンとして使用することができるキメラペプチド又はキメラタンパク質を提供することである。
【0019】
記載するペプチド及びキメラペプチドに対する抗体及び特にモノクローナル抗体は、本発明の別の目的である。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、HIV−1を中和する方法を提供することであり、前記方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、本発明の少なくとも1つのキメラペプチドを投与することを含む。HIV−1を中和する際に使用するための本発明の少なくとも1つのキメラペプチドも開示される。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、HIV−1を中和することができる抗体を誘導するための方法であり、前記方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、Tヘルパーエピトープを含む少なくとも1つのペプチドと共に、本発明の少なくとも1つのペプチドを投与することを含む。
【0022】
HIV−1に対する中和抗体を誘導するための医薬の製造のための本発明に記載される少なくとも1つのキメラペプチドの使用は、本発明のさらに別の目的である。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、HIV−1感染を予防するための少なくとも1つのキメラペプチドの使用である。
【0024】
これら並びに他の態様及び目的は、本発明により達成され、本発明の概要、好ましい実施態様の記載、及び請求の範囲により証明される通りである。
【0025】
発明の概要
本発明は、このように、Tヘルパーエピトープペプチドに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン(CBD1)又はCBD1の変異体を含むキメラペプチドに関する。別の態様において、本発明は、破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120からなる群より選択されるTヘルパーエピトープペプチドに融合された、HIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン又はCBD1の変異体を含むキメラペプチドに関する。
【0026】
本発明の別の態様において、キメラペプチドにおけるHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインは、SLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)からなる又は本質的になる。
【0027】
さらに別の態様において、キメラタンパク質におけるTヘルパーエピトープペプチドは、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)からなる又は本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)からなる又は本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)からなる又は本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである。
【0028】
本発明のキメラペプチドは、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリンリンカー(GPGPG)を有し、それはカベオリン1結合ドメインgp41ペプチドをTヘルパーエピトープに結合する。
【0029】
さらに別の態様において、本発明は、
【表1】
及びその混合物、並びに
【表2】
及びその混合物、並びに前述のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチドを提供する。本発明は、また、以下:C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M−T−W−M−Q−W−D−K(配列番号31)、C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M(配列番号32)及びC−S−L−E−Q−I−A−N−N−M−T−A−M−Q−A−D−K(配列番号39)のペプチドに関する。
【0030】
配列番号2〜4の少なくとも1つに融合された、配列番号5〜25の、配列番号31〜38及び52〜59の、並びに配列番号39の少なくとも1つのキメラペプチド、及び配列番号22〜24のペプチド、又は配列番号1、26〜30の少なくとも1つのペプチドの少なくとも1つ及びそれらの混合物に対する抗体、特にモノクローナル抗体も本発明の別の態様を形成する。
【0031】
少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチド又は複数のキメラペプチド、又は本明細書に記載する抗体もしくはモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む組成物も本発明のさらに別の態様である。
【0032】
さらに別の態様において、少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチドもしくは複数のキメラペプチド又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む免疫原性組成物又は医薬組成物を提供する。
【0033】
少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチドもしくは複数のキメラペプチド又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含むワクチンは、本発明のさらに別の態様を形成する。
【0034】
そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチド又は複数のキメラペプチド及びその混合物を投与すること、次にTヘルパーエピトープをさらに投与すること(又はその逆)を含む、HIV−1感染を処置する又はHIV−1活性を中和するための方法は、本発明のさらに別の態様である。
【0035】
医薬としての使用のため、又はHIV−1の中和における使用のため、又はAIDS及びHIV−1感染の症状の処置における使用のための本明細書に記載する1つのキメラペプチド、もしくは複数のキメラペプチド、又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体は、本発明の別の態様である。
【0036】
HIV−1を中和又は処置するための医薬の製造のため、又はHIV−1感染についての予防としての、少なくとも1つのキメラペプチド、又は好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチド、又は複数のキメラペプチド又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体は、本発明のさらに別の態様である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1はHIV−1 gp41の模式図であり、保存されたカベオリン結合モチーフ(WXXXXWXXW;配列番号41)の位置を示す。gp41外部ドメインの重要な機能ドメインは以下である:HIV標的細胞の膜に挿入される融合ペプチド(FP);原形質膜における足場に関与する膜貫通領域(TM)、コイルドコイルを特徴とする2つの疎水性7個繰り返しドメイン(N−HR及びC−HR)、FPと連携すると思われるTM(P−TM)に隣接する保存されたトリプトファンリッチドメイン。P−TM(LWYIK)の最後の5つのアミノ酸はコレステロールに結合する。P−TMは、また、2つの広域中和ヒトモノクローナル抗体(それぞれ2F5及びmAb 4E10)のコアとなる代表的なELDKWA及びNWFDITエピトープを含む。合成ペプチドT−20は、gp41媒介性の融合プロセスのインヒビターとして臨床において使用される。CDは細胞質内ドメインを表す。参考文献については、(Rey-Cuille et al., 2006)を参照のこと。
【図2】図2は、種々のHIV−1単離株由来の、gp41の外部ドメインにおけるCBD1ドメインの保存された配列である。CBD1ペプチドの配列は、以下のアミノ酸に対応する:Ser−Leu−Glu−Gln−Ile−Trp−Asn−Asn−Met−Thr−Trp−Met−Gln−Trp−Asp−Lys。CBD1は、gp41外部ドメインにおけるコンセンサス配列中のアミノ酸残基618−633に位置付けられる。カベオリン結合モチーフにおける3トリプトファン残基(ボールド体のW)は、HIV−1の850超の単離株の間で保存されている。保存率が、一部のアミノ酸残基について角括弧内に与えられ、他については、最も高頻度なアミノ酸が角括弧内に与えられる。625NMT627配列は、恐らくはN結合グリコシル化部位(N−X−T)の存在のために高度に保存されており、それはgp41外部ドメインにおけるN結合グリコシル化部位の1つである。CBD1ペプチドにおける他の残基、S618/M629/Q630/D632は90−97%保存されているのに対し、E620/Q621/N624/K633は若干可変性であるが、しかし、それらの変動は大部分が半保存的である。比較的保存されたM626残基は、HIV−1 O型におけるLである。
【図3】図3は、非免疫原性対応物と比較して免疫原性を示すTヘルパー及びB細胞エピトープを含む、配列のその部分を例示する3つのCBD1又はCBD1ベースのペプチドの配列である。
【図4】図4は、5回目の免疫化の10日後にアジュバントとしてCFAを使用した免疫化マウスにおける抗CBD1キメラペプチド抗体での結果を示すグラフである。免疫血清を、CBD1(C17K)及びC13Kペプチドに対するELISAにより滴定した。縦軸は、CBD1(C17K)ペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたOD値である。横軸は、種々のペプチドを用いて免疫化されたマウス群を示す。
【図5】図5は、5回目の免疫化の10日後にアジュバントとしてCFAを使用した免疫化マウスにおける抗C13Kキメラペプチド抗体での結果を示すグラフである。免疫血清を、C13Kペプチドに対するELISAにおいて滴定した。縦軸は、C13Kペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたOD値である。横軸は、種々のペプチドを用いて免疫化されたマウス群を示す。
【図6】図6は、CBD1(C17K)ペプチド及びCBD1ベースのペプチドに対して惹起されたモノクローナル抗体によるHIV−1感染の中和を示すグラフである。HIV−1 BZ 167を、初代CD4+Tリンパ球の感染の前に、37℃で45分間、各々のモノクローナル抗体調製物の種々の希釈物(PBS中)でインキュベートした。結果を、200及び400倍希釈でのモノクローナル抗体1.1.1、5B15、6A14(F6.4ともいう)、及び6B9について提示する。ウサギL血清をCBD1ペプチドに対して惹起された。HIV−1産生を、感染後5日目に、培養液中のp24濃度をモニターすることにより観測した。
【図7A】図7Aは、CBD1(C17K)エピトープに対して惹起されたモノクローナル抗体のHIV−1中和活性を示すグラフである。HIV−1 BZ 167を、HeLa P4細胞の感染の前に、37℃で45分間、各々のモノクローナル抗体調製物の種々の希釈でインキュベートした。βガラクトシダーゼの活性を感染後48時間に測定した。破線は、50%阻害効果のODを与える。CBD1、CBD2、C13K、及びp62ペプチドに対するELISAにおける各々のモノクローナル抗体調製物の力価を、下記の各々のグラフに与える。
【図7B】図7Bは、CBD1(C17K)エピトープに対して惹起されたモノクローナル抗体のHIV−1中和活性を示すグラフである。HIV−1 BZ 167を、HeLa P4細胞の感染の前に、37℃で45分間、各々のモノクローナル抗体調製物の種々の希釈物でインキュベートした。βガラクトシダーゼの活性を感染後48時間に測定した。破線は、50%阻害効果のODを与える。CBD1、CBD2、C13K、及びp62ペプチドに対するELISAにおける各々のモノクローナル抗体調製物の力価を、下記の各々のグラフに与える。
【図8】図8は、ウサギ、モルモット、及びマウスにおいてCBD1(C17K)ペプチドに対して惹起された免疫血清の精密エピトープマッピングを示すグラフである。2匹の動物の群を、説明文に記載するCBD1ペプチドを用いて免疫化した。5回目の免疫化から10日後に、免疫血清を、CBD1(C17K)、C13K、CBD2、p6362(p62ともいう)、p6364、及びp6365ペプチドに対するELISAにより試験した。CBD1ペプチドとの反応に対する各々のペプチドとの反応率を、種々のペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたOD値を考慮に入れて与える。
【図9A】図9Aは、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)のいずれかで免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫を示すグラフである。マカクを、実施例9に記載する[MF59 + MDP−Lys(L18)]を使用し、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化した。応答が、IFN−γ ELISpotアッセイにおいてCBD1(C18K)ペプチドを用いて、示した週(横軸)にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。結果を、試験に含まれた動物由来のPBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)数として表わす。13504及び13535は、それぞれi.d.及びi.m.経路によりアジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]単独(ペプチド無し)で注射された対照動物である。垂直の矢印はワクチン接種の週数を示す。
【図9B】図9Bは、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)のいずれかで免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫を示すグラフである。マカクを、実施例9に記載する[MF59 + MDP−Lys(L18)]を使用し、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化した。応答が、IFN−γ ELISpotアッセイにおいてCBD1(C18K)ペプチドを用いて、示した週(横軸)にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。結果を、試験に含まれた動物由来のPBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)数として表わす。13504及び13535は、それぞれi.d.及びi.m.経路によりアジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]単独(ペプチド無し)で注射された対照動物である。垂直の矢印はワクチン接種の週数を示す。
【図9C】図9Cは、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)のいずれかで免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫を示すグラフである。マカクを、実施例9に記載する[MF59 + MDP−Lys(L18)]を使用し、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化した。応答が、IFN−γ ELISpotアッセイにおいてCBD1(C18K)ペプチドを用いて、示した週(横軸)にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。結果を、試験に含まれた動物由来のPBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)数として表わす。13504及び13535は、それぞれi.d.及びi.m.経路によりアジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]単独(ペプチド無し)で注射された対照動物である。垂直の矢印はワクチン接種の週数を示す。
【図10A】図10Aは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。マカクを、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を用いた皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)経路を介して、0、4、8、12、及び16週目にCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。垂直の矢印はワクチン接種の日数を示す。24週間にわたり2週間間隔で採取した放血からの免疫血清を、CBD1(C18K)ペプチドに対するELISAによりアッセイした。力価は、OD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。CBD1(C18K)ペプチドとの反応性は、アジュバント単独を用いて注射された対照マカクからの血清では観察されなかった(示さず)。*マカクM13284及びM11321は、CBD1ペプチドに対するT細胞応答を示した(図9に提示する)。
【図10B】図10Bは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。マカクを、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を用いた皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)経路を介して、0、4、8、12、及び16週目にCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。垂直の矢印はワクチン接種の日数を示す。24週間にわたり2週間間隔で採取した放血からの免疫血清を、CBD1(C18K)ペプチドに対するELISAによりアッセイした。力価は、OD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。CBD1(C18K)ペプチドとの反応性は、アジュバント単独を用いて注射された対照マカクからの血清では観察されなかった(示さず)。*マカクM13284及びM11321は、CBD1ペプチドに対するT細胞応答を示した(図9に提示する)。
【図11A】図11Aは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。この組の免疫化は、最初の試験でのマカクの5回目の注射から4ヶ月後に開始された。マカクの両群を、アジュバントとして混合物[CpG+Montanide ISA 51]を使用し、遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド(200μg+150μg)又はTet−KK−CBD1(350μg)を用いて皮下に免疫化した。マカクを0、28、及び57日目に免疫化した(矢印により示す)。0、15、28、43、57、71、86、及び98日目の血清を、CBD1(C18K)及びTetペプチドに対するELISAにより滴定した。力価は、ELISAにおいてOD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。
【図11B】図11Bは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。この組の免疫化は、最初の試験でのマカクの5回目の注射から4ヶ月後に開始された。マカクの両群を、アジュバントとして混合物[CpG+Montanide ISA 51]を使用し、遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド(200μg+150μg)又はTet−KK−CBD1(350μg)を用いて皮下に免疫化した。マカクを0、28、及び57日目に免疫化した(矢印により示す)。0、15、28、43、57、71、86、及び98日目の血清を、CBD1(C18K)及びTetペプチドに対するELISAにより滴定した。力価は、ELISAにおいてOD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。
【図12】図12は、マカク免疫血清によるHIV−1感染の中和を示すグラフである。遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド[Tet+CBD1]又は共有結合したTet−KK−CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクからの免疫血清(86日目に放血)を、200及び400倍希釈(それぞれヒストグラム1及び2)で初代CD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する能力について試験した。縦軸は、感染後5日目でのELISAによる主要ウイルスコアタンパク質p24の濃度を測定することによりモニターされたHIV−1の産生(ng/ml)を与える。PISは、マカク13450の免疫前血清を表す。PBSは対照感染を表わし、そこではリン酸緩衝食塩水を希釈血清の代わりに加えた。破線はHIV−1産生の50%阻害を表す。
【図13】図13は、遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド又は融合Tet−KK−CBD1(C18K)ペプチドを用いた免疫化後のマカクからの連続放血の抗HIV活性を示すグラフである。1回目、2回目、及び3回目の免疫化(それぞれヒストグラム1、2、及び3)から2週間後に対応する15、43、及び71日目での放血を、400倍の血清希釈で初代CD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する能力について試験した。ヒストグラムCが対照感染を表わすのに対し、ヒストグラムBは免疫化前(0日目)の血清サンプルを表わす。
【図14】図14は、遊離の又はTヘルパーエピトープに融合されたCBD1(C18K)ペプチドに対してマカクにおいて惹起された免疫血清の交差反応性プロファイルを示すグラフである。3回目の免疫化から4週間後(86日目)の免疫化されたマカクからの免疫血清を、CBD1(gp41におけるアミノ酸残基618−633)、C13K、CBD2、p6362、p6363、p6364、p6365、p9127、及び組換えgp41(アミノ酸残基586−682)に対するELISAにより試験した。種々のペプチドに対する免疫血清の8,000倍希釈で観察されたOD値を使用し、CBD1ペプチドとの反応性により各々のペプチドの反応性を割ることにより算出された比×100により得られた交差反応性を推定した。免疫血清はCBD2ペプチドと交差反応しなかった。
【図15A】図15Aは、遊離の又はTetペプチドと融合されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマカクにおける抗CBD1及び抗C13Kペプチド抗体の動態を示すグラフである。遊離[CBD1+Tet]及びTT−KK−CBD1ペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマカクM11635及びM13284からの異なる日の免疫血清を、CBD1及びC13Kペプチドに対するELISAにより試験した。縦軸は、OD値≧0.1を与える免疫血清の希釈に対応する、抗CBD1(暗いヒストグラム)及び抗C13K(明るいヒストグラム)抗体の力価を与える。
【図15B】図15Bは、遊離の又はTetペプチドと融合されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマカクにおける抗CBD1及び抗C13Kペプチド抗体の動態を示すグラフである。遊離[CBD1+Tet]及びTT−KK−CBD1ペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマカクM11635及びM13284からの異なる日の免疫血清を、CBD1及びC13Kペプチドに対するELISAにより試験した。縦軸は、OD値≧0.1を与える免疫血清の希釈に対応する、抗CBD1(暗いヒストグラム)及び抗C13K(明るいヒストグラム)抗体の力価を与える。
【図16】図16は、CBD1(C17K)ペプチド及びCBD1ベースのペプチドに対して惹起された免疫血清によるHIV−1感染の阻害を示すグラフである。種々のペプチド(CBD1(C17K)、K27W、K24W、K27W(G)、K30W(G);横軸)を用いて免疫化された個々のマウスからの免疫血清(放血5)を、表4の説明文に記載した通りに、HIV−1感染を阻害する能力について試験した。HIV−1 BZ 167を、初代CD4+Tリンパ球の感染の前に、37℃で45分間、各々の免疫血清(それぞれヒストグラム1及び2)の200倍及び800倍希釈でインキュベートした。ヒストグラムCは、2つの免疫前血清を200倍希釈で使用した対照感染を表わす。混合物は、1/1/1/1/1比のCBD1(C17K)、K27W、K24W、K27W(G)、及びK30W(G)ペプチドを用いて免疫化されたマウスからのプール血清を表す。免疫血清の混合物を、200、800、1600、及び3200倍希釈(それぞれヒストグラム1、2、3、及び4)で試験した。破線はHIV−1感染の50%阻害を表す。
【図17A】図17Aは、CBD1(C17K)又はCBMベースのペプチドに対して惹起されたマウス免疫血清を用いて処理されたHIV−1感染培養物における感染が低下したウイルス粒子の産生を示すグラフである。(A)培養上清におけるp24の濃度により測定されたHIV−1産生。CD4+Tリンパ球をHIV−1BZ167を用いて感染させ、そして2日後、それらを、種々のペプチド:CBD1(C17K)、K27W、K24W、K27W(G)、K30W(G)(ヒストグラム1及び2にそれぞれ示す通り200及び800倍希釈)を用いて免疫化された個々のマウスからの免疫血清(放血S5)を用いて処理した。感染後5日目に、HIV−1の産生を、ビリオンp24(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。
【図17B】図17Bは、CBD1(C17K)又はCBMベースのペプチドに対して惹起されたマウス免疫血清を用いて処理されたHIV−1感染培養物における感染力が低下したウイルス粒子の産生を示すグラフである。(B)免疫血清の存在において産生されたHIV−1粒子の感染性は低い。感染CD4+Tリンパ球からの培養上清を感染後5日目(セクションAに記載されている通り)に培養物から回収し、10倍希釈し、HeLa P4C5細胞を使用することによる1回感染性アッセイにおいてビリオン感染性について試験した。ヒストグラム上の図中の線は、ウイルス感染の非存在において生じるバックグラウンドレベルを示す。3連サンプルでの平均±SDを示す。
【図18】図18は、カクテルA及びカクテルBペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清のHIV−1 BZ167中和活性を示すグラフである。8匹のマウスの2群を、アジュバントとしてCFAを使用したカクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化した。4回の皮下注射投与を1ヶ月間隔で行った。4回目の免疫化から2週間後、各群の免疫血清の50〜100μlの一定分量を集め、10ng/mlのp24抗原等価物でCD4+Tリンパ球の初代HIV−1 BZ167(クレードB)感染を阻害する能力についてアッセイした。プール血清を100、200、400、及び800倍希釈で使用した。HIV−1の産生を、感染後5日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。3連サンプルでの平均を示す。ヒストグラムC1及びC2は、免疫前血清を100倍希釈で使用した対照感染を表わす。HIV−1 BZ167感染の50%阻害(ID50)を与えるカクテルA及びカクテルBプール血清希釈を、それぞれ300及び400倍希釈と推定した。ヒト末梢単核細胞(PBMC)に由来するCD4+Tリンパ球の感染は、パラグラフ「方法」の2.3に記載する通りであった。
【図19A】図19Aは、HIV−1 KNH1207及びHIV−1 US1に対するカクテルA及びカクテルBペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清の中和活性を示すグラフである。8匹のマウスの2群を、テキストにおいて及び図18の説明文に記載される通りに、カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化した。カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスからのプール血清を、HIV−1ワクチン候補を試験するために現在使用されているHIV−1単離株の国際パネル[AIDS Research and Reference Program, Division of AIDS, NIAID, NIHから得られる]の2つ:HIV−1 KNH1207(クレードA)(A)及びHIV−1 US1(クレードB)(B)によるCD4+Tリンパ球の感染を阻害する能力についてアッセイした。ウイルス感染はp24抗原等価物50ng/mlで、プール血清を100、200、400、及び800倍希釈で使用した。HIV−1の産生を、感染後7日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。ヒト末梢単核細胞(PBMC)に由来するCD4+Tリンパ球の感染は、パラグラフ「方法」の2.3に記載する通りであった。
【図19B】図19Bは、HIV−1 KNH1207及びHIV−1 US1に対するカクテルA及びカクテルBペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清の中和活性を示すグラフである。8匹のマウスの2群を、テキストにおいて及び図18の説明文に記載される通りに、カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化した。カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスからのプール血清を、HIV−1ワクチン候補を試験するために現在使用されているHIV−1単離株の国際パネル[AIDS Research and Reference Program, Division of AIDS, NIAID, NIHから得られる]の2つ:HIV−1 KNH1207(クレードA)(A)及びHIV−1 US1(クレードB)(B)によるCD4+Tリンパ球の感染を阻害する能力についてアッセイした。ウイルス感染はp24抗原等価物50ng/mlで、プール血清を100、200、400、及び800倍希釈で使用した。HIV−1の産生を、感染後7日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。ヒト末梢単核細胞(PBMC)に由来するCD4+Tリンパ球の感染は、パラグラフ「方法」の2.3に記載する通りであった。
【0038】
発明の好ましい実施態様
本明細書において使用する「キメラペプチド」又は「融合タンパク質」は互換的に使用され、このペプチド又はタンパク質は、自然では一緒に連結されない2つ又はそれ以上のペプチド配列を連結することにより作製されることを意味する。キメラペプチドは、わずか50のアミノ酸、又はわずか40のアミノ酸、又はわずか30のアミノ酸、又はわずか25のアミノ酸、又はわずか20のアミノ酸のサイズを有する。一般的に、キメラペプチドは、50〜50のアミノ酸残基又は5〜40のアミノ酸残基又は5〜30のアミノ酸残基又は5〜20のアミノ酸残基又は10〜50のアミノ酸残基又は10〜40のアミノ酸残基又は10〜30のアミノ酸残基又は10〜20のアミノ酸残基を有する。
【0039】
一実施態様において、本発明のキメラペプチドは化学的に合成される。従って、本発明のキメラペプチドは、翻訳後修飾を持たず、特にそのアミノ酸残基はグリコシル化により修飾されない。別の態様において、NTXモチーフ(図2のペプチドの残基625〜627)はグリコシル化さない。
【0040】
いくつかのキメラペプチドは、本明細書に記載するものである。「いくつか」は、1〜20、1〜10、1〜8、又は1〜5のキメラペプチドを意味する。
【0041】
本明細書において使用する「融合された」という用語は、2つのペプチドが連結されて単一のペプチドを形成するように連結されることを意味する。ペプチドは、種々の結合を通じて化学的に又はペプチド結合により遺伝的に連結又は融合させることができる。
【0042】
本明細書において使用する「予防」という用語は、HIV−1について又はHIV感染に対する予防又は防御的処置を意味する。
【0043】
本明細書において使用する「処置する」という用語は、HIV−1ウイルスを減弱させることを意味する。この点において、HIV−1ウイルスの量は、処置をしない場合と比較して50%超減少する。別の態様において、HIV−1ウイルスの量は、処置をしない場合と比較して75%超減少する。さらに別の態様において、HIV−1ウイルスの量は、処置をしない場合と比較して100%減少する。
【0044】
本明細書において使用する「中和抗体」という用語は、ウイルスの複製サイクルがウイルス感染の初期段階において阻害される、もしくは、ウイルス放出が遮断されるような方法でHIV−1粒子に影響を与える、又は、感染性のない欠陥ウイルス粒子の産生を起こすモノクローナル又はポリクローナルのいずれかの抗体を意味する。
【0045】
「エピトープ」及び「決定基」という用語は互換的に使用され、抗体の抗体結合部位により特異的に結合される抗原性分子(例、ペプチド)の部分を定義する。エピトープという用語は、連続アミノ酸が抗体により認識される線形エピトープ、並びに、適切な立体配置又は立体構造をとる範囲で、抗体がアミノ酸を認識する立体構造エピトープの両方を包含する。結果的に、一部のエピトープにおいて、立体構造(三次元構造)はアミノ酸配列(一次構造)と同じくらい重要である。
【0046】
本明細書において使用する「特異的に」という用語は、抗原の抗体認識に言及する場合、無関係のペプチド、即ち、CBD1ドメインに関連又は由来しないペプチドと交差反応が起こらないことを意味する。
【0047】
本明細書において使用する「哺乳動物」は、皮膚が毛で覆われ、雌においては、仔を育てるための乳汁を産生する乳線を特徴とする、哺乳類(ヒトを含む)の種々の温血脊椎動物のいずれかを意味する。
【0048】
「受動ワクチン」という用語は、個体への投与時にHIV感染に対して一時的な防御を与えるワクチンを意味する。
【0049】
本明細書において使用する「HIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン」又は「CBD1」は、配列番号1(Ser−Leu−Glu−Gln−Ilo−Trp−Asn−Asn−Met−Thr−Trp−Met−Gln−Trp−Asp−Lys)で定義され、図2において提示される、gp41外部ドメインにおけるコンセンサス配列のアミノ酸残基618〜633からなるペプチドを意味する。CBD1ドメイン又はCBD1変異体を含む又はそれから本質的になるペプチドは、全長gp41ペプチド並びに全長HIV−1エンベロープ(gp160)を除外する。
【0050】
本明細書において使用する「ペプチド変異体」は、一端又は両端でのアミノ酸残基の付加により修飾された、及び/又はアミノ酸残基の置換、特に半保存的置換により修飾されたペプチドを意味する。従って、変異体は、その特定の連続配列[配列識別番号(配列番号)で定義される]が、1〜6の追加アミノ酸(1、2、3、4、5、又は6残基)を、これらの追加アミノ酸がHIV−1活性に対する中和抗体を誘導する能力に影響を与えないという条件で、その配列番号により特定される特定配列の一端又は両端のいずれかに含めることができるペプチドである。残基のそのような付加は、ペプチドの配列に関する、「本質的になる」という用語により包含される。ペプチド変異体は、先の定義の代わりに又はそれと組み合わせて、アミノ酸置換がHIV−1活性に対する中和抗体を誘導する能力に影響を与えないという条件で、その1〜6のアミノ酸(1、2、3、4、5、又は6)が他の半保存的アミノ酸残基により置換されたペプチドも意味する。例えば、非極性(即ち、疎水性)アミノ酸残基はアラニン(Ala又はA)、ロイシン(Leu又はL)、イソロイシン(Ile又はI)、バリン(Val又はV)、プロリン(Pro又はP)、フェニルアラニン(Phe又はF)、トリプトファン(Trp又はW)、及びメチオニン(Met又はM)を含む;極性中性アミノ酸残基はグリシン(Gly又はG)、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、システイン(Cys又はC)、チロシン(Tyr又はY)、アスパラギン(Asn又はN)、及びグルタミン(Gln又はQ)を含む;正電荷を持つ(即ち、塩基性)アミノ酸残基はアルギニン(Arg又はR)、リシン(Lys又はK)、及びヒスチジン(His又はH)を含む;並びに負電荷を持つ(即ち、酸性)アミノ酸残基はアスパラギン酸(Asp又はD)及びグルタミン酸(Glu又はE)を含む。
【0051】
本明細書において使用する「CBD1変異体」、「CBD1由来のペプチド」、及び「CBD1ベースのペプチド」という用語は互換的に使用され、先のパラグラフにおいて定義する通り、CBD1の変異体を意味する。そのようなCBD1変異体の例は、その配列がXnSLEQIWNNMTWMQWDKXm(配列番号25)からなるペプチドを含み、ここで、nが6つの追加アミノ酸を超えないという条件で、Xが任意のアミノ酸であり、n及びmが独立して0〜6の整数である。CBD1変異体の別の例は、その配列が配列番号1に対応するペプチドを含み、それにおいて、以下の表の位置の内の1〜6のアミノ酸残基(1、2、3、4、5、又は6)が置換されている。位置623、628、及び631におけるトリプトファン残基が置換されていることを除く(図2)。
【0052】
【表3】
【0053】
より具体的には、本発明は、Tヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドに関する。
【0054】
HIV−1 gp41(CBD1)ペプチドのカベオリン1結合ドメインは、当技術分野において公知であり、EP 1 466 924に記載される。この結合ドメインの合成ペプチドは、アミノ酸位置618〜633からのHIV−1のgp41中の領域に対応する、SLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)のアミノ酸配列を有する(Hovanessian et al., 2004)。WNNMTWMQW(配列番号26)の別々の結合モチーフが、全ての単一のウイルス単離株において保存されている(Hovanessian et al.,上記)。
【0055】
そのため、本発明のキメラペプチドはCBD1ペプチド及びまたCBD1変異体を含む。これらのペプチド変異体は、WNNMTWMQW(配列番号26)の別々の結合モチーフの全て又は一部分を保持し、それにおいてトリプトファン残基の1〜3が保持される。そのため、本発明の変異体の1つがアミノ酸配列XnWNNM(配列番号27)を有し、ここでXは任意のアミノ酸であり、nは1〜6(1、2、3、4、5、又は6)の数である。別の実施態様において、本発明の変異体は配列:XnWNNMTW(配列番号28)を有し、ここでXは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である。さらに別の態様において、本発明の変異体は配列:XnWNNMTWMQWZp(配列番号29)を有し、ここでX及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である。
【0056】
別の実施態様において、本発明はキメラタンパク質に関し、それにおいてCBD1ペプチド変異体はアミノ酸XnWNNMTWMQWZ(配列番号30)を有し、ここでXは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−K(即ち、Asp−Lys)である。
【0057】
本発明のキメラタンパク質は、上に記載した通り、Tヘルパーエピトープペプチドに融合されたCBD1ペプチド又はCBD1変異体を有する。この融合は化学融合を介しうるが、それにおいてキメラペプチドを、当技術分野において公知の標準方法を使用して(例えばFmoc化学の使用などにより)合成するか、又は、それは遺伝子工学的に融合されうるのに対し、ペプチドは組換え産生され、融合はペプチド結合による。
【0058】
任意のTヘルパーエピトープペプチドを、Tヘルパーによって、CBD1ドメインを認識でき、HIV−1活性を中和できる抗体の誘導が確実になる限り、キメラタンパク質において使用することができる。そのようなTヘルパーエピトープは、ヒト、動物、植物、細菌、又はウイルス由来の任意のタンパク質でありうる。特定の実施態様において、Tヘルパーエピトープは非天然(即ち、合成)である。本発明において使用することができるTヘルパーエピトープの例は以下:
− OVAp323−336(ISQAVHAAHAEINE)、オボアルブミン由来の強力なTヘルパーエピトープ、
− PADREペプチドaKXVAAWTLKAAaZC(X=L−シクロヘキシルアラニン、Z=アミノカプロン酸)、非天然の汎(pan)HLA DR結合エピトープ;又は
− Gag、gp120、gp41、及びポリメラーゼタンパク質を含むHIV−1タンパク質由来のエピトープ
である。
【0059】
特定の実施態様において、本発明のキメラペプチドは、破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0060】
一実施態様において、本発明のキメラタンパク質の一部分を形成するTヘルパーエピトープペプチドは、破傷風毒素ペプチド、HIV−1 Gag p24ペプチド、又はHIV−1 Env−gp 120ペプチドより選択される。一実施態様において、Tヘルパーエピトープタンパク質は、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)を含む又はそれからなるもしくは本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである。
【0061】
さらに別の実施態様において、Tヘルパーエピトープペプチドは配列番号2、3、又は4の変異体であり、それは1〜3(1、2、又は3)の追加アミノ酸をこれらの配列のN又はC末端に有する。
【0062】
CBD1ペプチド又はCBD1ペプチド変異体を、リンカーを介してTヘルパーエピトープに融合することができる。任意のリンカーを本発明において使用することができる(例えば、配列KK、GPGPG、GG、GGG、GGGG、GGA、GA、GD、GSGGGG、GSGGGGS、GS、GPSL、RS、RR、KKK、KKAA、VE、及びAAYを有するペプチドなど)。一態様において、CBD1ペプチド又はCBD1ペプチド変異体をTヘルパーエピトープに連結するために使用されるリンカーは、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリンリンカー(GPGPG)である。キメラペプチドは、また、スペーサーとして、ベータ、ガンマ、及びデルタアミノ酸を使用することにより設計されうる;例えばデルタアミノバレリン酸、ガンマアミノ酪酸、及びイプシロンアミノカプロン酸など。
【0063】
本発明は、このように、Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素ペプチド、HIV−1 Gag−p24ペプチド、又はHIV−1 Env−gp 120ペプチドより選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1ペプチドのカベオリン1結合ドメイン(又は変異体)を含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドに対する抗体に関する。これらの抗体は、キメラペプチドのCBD1部位を認識する。これらの抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、又はオリゴクローナルでありうる。別の態様において、これらの抗体は中和抗体である。さらなる態様において、抗体はモノクローナル(mAb)であり、HIV−1を中和することができる。抗体は、配列番号2〜4の少なくとも1つに融合された配列番号5〜25の、配列番号31〜38及び52〜59の又は配列番号39の少なくとも1つのキメラペプチド、配列番号1又は26〜30の少なくとも1つのペプチド、又は配列番号1又は26〜30のペプチドの少なくとも1つに及びそれらの混合物に対することができる。特定の態様において、抗体は以下:
− 配列番号5〜25の、配列番号31〜38及び52〜59の、又は配列番号39のキメラペプチドのCBD1部位中に位置付けられる決定基;
− 配列番号1又は26〜30のペプチドの決定基;
− 配列番号1又は26〜30において定義されるペプチド中に位置付けられる決定基で、前記ペプチドがTヘルパーエピトープに融合されている;
− 配列番号1又は26〜30において定義されるペプチド中に位置付けられる決定基で、前記ペプチドが、破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120からなる群より選択されるTヘルパーエピトープに融合されている;
− 配列番号1又は26〜30において定義されるペプチド中に位置付けられる決定基で、前記ペプチドが配列番号2〜4の少なくとも1つのペプチドに融合されている
に対し、それらを認識する。
【0064】
別の態様において、配列番号22〜24の少なくとも1つに対するモノクローナル抗体が、提供される。
【0065】
本発明の抗体は、遊離ウイルス上及びHIV−1感染細胞上の両方で、gp41タンパク質、及び特にCBD1ペプチドの少なくとも1つのエピトープ又は決定基を認識する能力を有する。HIV−1の中和に対する本発明の抗体の効果は、このように、以下:
− HIV−1不含ウイルスを中和し、新たな正常細胞の感染を予防すること;及び
− ADCC(抗体依存的な細胞媒介性の細胞毒性)及びCDC(補体依存的な細胞毒性)機構に関与するエフェクター細胞又は分子を動員し、細胞毒性及び感染細胞の破壊に導くこと
により得ることができる。
【0066】
これらの抗体は、当技術分野において公知の従来方法により作製することができ、さらに公知の方法により精製することができる。一態様において、本発明の抗体及びモノクローナル抗体は、哺乳動物に、特にヒトに、本発明のキメラペプチドを投与することにより得られる。投与後に得られた抗体は、キメラペプチドのCBD1部位、特にこのキメラペプチドのCBD1部位の少なくとも1つの決定基を認識する能力を有する。単一のキメラペプチドが、同じキメラペプチド上の異なる決定基を認識する異なる抗体の産生を誘導することができることを理解すべきである(例えば、表10及び11中のC17Kを参照のこと。3つの異なるモノクローナル抗体を誘導し、各々が異なる決定基を認識する)。そのような決定基は、表11の最後の列に開示する決定基(配列番号48〜51)から本質的になりもしくはなり、あるいは、以下の配列:
【表4】
に含まれる又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0067】
本発明は、また、HIV−1を中和する抗体及びモノクローナル抗体を産生するための方法に関し、(a)哺乳動物に本発明の少なくとも1つのキメラペプチドを投与すること;及び(b)所望の決定基に対する特異性を有する抗体又はモノクローナル抗体を回収することを含む。抗体の回収は、少なくとも1つのキメラペプチドが投与された哺乳動物からのサンプル(例、血液)を、所望の決定基を含む種々のペプチドと接触させ、そして抗体を溶出することにより実施してよい。一態様において、サンプルを、所望の決定基を含むペプチドが固定されている複合体と接触させる。一態様において、抗体を回収するために使用する決定基は、表11の最後の例に開示される決定基(配列番号48〜51)又は配列番号1、5、6、9、11、12、14、20、23、24、31〜38、52〜59、40、又は43に含まれる又はそれから本質的になるもしくはなる決定基である。
【0068】
さらなる態様において、本発明は、また、哺乳動物、例えばヒトに対する少なくとも1つのキメラペプチドの投与によって、HIV−1を中和することができる抗体の誘導が導かれたことを検査するための方法に関する。前記方法は、(a)本発明の少なくとも1つのキメラペプチドを用いて投与された患者からのサンプルを準備すること;(b)ペプチドに対する抗体の結合を可能にする条件において、前記サンプルを、CBD1決定基を含むペプチドと接触させること;及び(c)可能な場合、各々のペプチドについて、抗体/ペプチド複合体の形成を同定することを含む。一態様において、中和抗体の誘導を検査するために使用する決定基は、表11の最後の例に開示される決定基(配列番号48〜51)又は配列番号1、5、6、9、11、12、14、20、23、24、31〜38、52〜59、40、又は43に含まれる又はそれから本質的になるもしくはなる決定基である。
【0069】
本発明の抗体及びモノクローナル抗体を免疫療法において使用し、HIV−1及び/又はHIV−1感染を治療又は予防することができる。抗体は、このように、単独で又は固形粒子マトリクスに結合させて、免疫療法において使用することができる。抗体(ポリクローナル、モノクローナル、又はオリゴクローナル抗体を問わず)、制限された特異性を伴う抗体、及び/又は中和抗体は、薬学的に許容可能な賦形剤と共に投与することができる。
【0070】
少なくとも1つ、好ましくは上に記載する1つのキメラペプチド、いくつかのキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体、又は上に記載する抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む組成物又は医薬組成物は、本発明の別の実施態様である。このように、Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチド(又は変異体)のカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物を提供する。
【0071】
より具体的には、本発明の組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープWNNMTWMQW(配列番号26);
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープWNNMTWMQW(配列番号26);又は
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドWNNMTWMQW(配列番号26);
のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0072】
別の実施態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNM(配列番号27)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;又は− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物に関する。
【0073】
別の態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTW(配列番号28)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26及び/又は配列番号27のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる医薬的組成物又は組成物に関する。
【0074】
さらに別の態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬的組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、
式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜28の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0075】
さらに別の実施態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜29の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0076】
上のキメラペプチド式における記号「−」は、ペプチドが融合されていることを意味することに注意すべきである。
【0077】
本発明の種々のキメラペプチド(上に定義する)を含む特定の混合物は、組成物、医薬又は免疫原性組成物又はワクチンにおいて使用可能であり、配列番号12(K27W)、配列番号35(K24W)、配列番号16(K30W(G))、及び配列番号38(K27W(G))、並びに場合により配列番号31(C17K)からなるものである。
【0078】
【表5】
及びその混合物、並びに
【表6】
及びその混合物、及び上記のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチド;及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物は、本発明の別の態様である。
【0079】
これらの組成物又は医薬組成物は、また、C18Kペプチド(配列番号42)、配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドを、記載するキメラペプチドの1つ又はいくつかと一緒にさらに含みうる。
【0080】
上に開示するキメラペプチド又はキメラペプチド変異体に対して惹起された抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体及び/又は中和抗体などを含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物も本発明の実施態様の部分である。別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物に対する抗体は、本発明の別の態様である。さらに別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物に対するモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明の部分である。
【0081】
生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝剤、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、水、エタノールなど及びその組み合わせでありうる。
【0082】
また、アジュバントは、組成物又は医薬組成物を含むことができる。種々のアジュバントが当技術分野において公知であり、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、Montanide ISA(不完全SEPPICアジュバント)、ムラミルペプチド、例えばムラミルジペプチド(MDP)MDP−Lys(L18)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステオロイル−L−リシン)、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CPG ODN)、例えばCPG ODN1826及びCPG ODN2007など、並びにMF59(それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween(登録商標)80(w/v)、及び0.5% Span(w/v)を含む界面活性剤で安定化された水中油型乳剤である)を含む。
【0083】
上に記載するキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体又は上に記載する抗体及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む免疫原性組成物は、本発明の別の実施態様である。Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、本発明の別の態様である。
【0084】
より具体的には、本発明の組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープWNNMTWMQW(配列番号26);
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープWNNMTWMQW(配列番号26);又は
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドWNNMTWMQW(配列番号26);
のキメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0085】
別の実施態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNM(配列番号27)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;又は− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物に関する。
【0086】
別の態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTW(配列番号28)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26及び/又は配列番号27のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物に関する。
【0087】
さらに別の態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、
式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜28の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0088】
さらに別の実施態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜29の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0089】
上のキメラペプチド式における記号「−」は、ペプチドが融合されていることを意味することに注意すべきである。
【0090】
【表7】
及びその混合物、並びに
【表8】
及びその混合物、及び上記のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチド;及び生理学的に許容可能な希釈剤又は医薬的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、本発明の別の態様である。
【0091】
これらの免疫原性組成物は、また、C18Kペプチド(配列番号42)、配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドを、記載するキメラペプチドの1つ又はいくつかと一緒にさらに含みうる。
【0092】
上に開示するキメラペプチド又はキメラペプチド変異体に対して惹起された抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体及び/又は中和抗体などを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物も本発明の実施態様の部分である。別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物の少なくとも1つに対する抗体は、本発明の別の態様である。さらに別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物の少なくとも1つに対するモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明の部分である。
【0093】
生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝剤、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、水、エタノールなど及びその組み合わせでありうる。
【0094】
また、アジュバントは、組成物又は医薬組成物の部分を含むことができる。種々のアジュバントが当技術分野において公知であり、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、Montanide ISA(不完全SEPPICアジュバント)、ムラミルペプチド、例えばムラミルジペプチド(MDP)MDP−Lys(L18)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステオロイル−L−リシン)、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CPG ODN)、例えばCPG ODN1826及びCPG ODN2007など、並びにMF59(それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween(登録商標)80(w/v)、及び0.5% Span(w/v)を含む界面活性剤で安定化された水中油型乳剤である)を含む。
【0095】
さらに別の実施態様において、本発明は、上に記載するキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体又は上に記載する抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含むワクチンに関し、本発明の別の実施態様である。ワクチンは、Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0096】
より具体的には、本発明の組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープWNNMTWMQW(配列番号26);
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープWNNMTWMQW(配列番号26);又は
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドWNNMTWMQW(配列番号26);
のキメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0097】
別の実施態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNM(配列番号27)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;又は− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチンに関する。
【0098】
別の態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTW(配列番号28)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26及び/又は配列番号27のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチンに関する。
【0099】
さらに別の態様において、本発明のワクチンは、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、
式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜28の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
を有する本発明の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチン。
【0100】
さらに別の実施態様において、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜29の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
を有する本発明の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチン。
【0101】
上のキメラペプチド式における記号「−」は、ペプチドが融合されていることを意味することに注意すべきである。
【0102】
【表9】
及びその混合物、並びに
【表10】
及びその混合物、及び上記のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチド;及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチン(カクテル又はカクテルワクチンとも呼ばれる)は、本発明の別の態様である。
【0103】
これらのワクチンは、また、C18Kペプチド(配列番号42)、配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドを、記載するキメラペプチドの1つ又はいくつかと一緒にさらに含みうる。
【0104】
上に開示するキメラペプチド又はキメラペプチド変異体に対して惹起された抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体及び/又は中和抗体などを含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチンも本発明の実施態様の部分である。別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにそれらの混合物の少なくとも1つに対する抗体は、本発明の別の態様である。さらに別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物の少なくとも1つに対するモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明の部分である。
【0105】
生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝剤、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、水、エタノールなど及びその組み合わせでありうる。
【0106】
また、アジュバントは、組成物又は薬学的組成物の部分を含むことができる。種々のアジュバントが当技術分野において公知であり、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、Montanide ISA(不完全SEPPICアジュバント)、ムラミルペプチド、例えばムラミルジペプチド(MDP)MDP−Lys(L18)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステオロイル−L−リシン)、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CPG ODN)、例えばCPG ODN1826及びCPG ODN2007など、並びにMF59(それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween(登録商標)80(w/v)、及び0.5% Span(w/v)を含む界面活性剤で安定化された水中油型乳剤である)を含む。
【0107】
本発明は、また、HIV−1感染を処置又は中和するための方法に関し、前記方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、生理学的に許容可能な賦形剤中の上に記載するキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体又は上に記載する抗体を投与することを含む。この点において、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーペプチドに融合された配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜39及び52〜59の少なくとも1つ並びにその混合物、又は配列番号1、又は配列番号26〜30の少なくとも1つ及びそれらの混合物を含む、それから本質的になる又はなるキメラペプチドのいずれかをHIV−1感染を処置するための方法において使用することができる。
【0108】
本発明は、また、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、本発明に記載される抗体を投与することによる、HIV−1感染を処置するための方法を包含する。この点において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体、及び/又は中和抗体でありうる。
【0109】
本発明は、また、HIV−1活性を中和するための方法に関し、前記方法はそのような処置を必要とする哺乳動物に対して、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された配列番号5〜25、又は配列番号31〜39及び52〜59、又は配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つ及びそれらの混合物のキメラペプチドを含む、それから本質的になる又はなるキメラペプチドを投与すること、次にTヘルパーエピトープをさらに投与することを含む。
【0110】
上に記載する通り、ある態様において、Tヘルパーエピトープは、破傷風毒素ペプチド、HIV−1 gp120ペプチド、及びHIV−1 Gagペプチド由来でありうる。より具体的には、これらのペプチド、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)を含む又はそれからなるもしくは本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである。
【0111】
ペプチドのTヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120の群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを、医薬として、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防法として使用することができる。より具体的には、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜39及び52〜59もしくは配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はペプチド変異体を、医薬として、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防として使用することができる。又は、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された、本明細書に記載される、及び、配列番号22〜24のペプチドに対する又は配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜38及び52〜59又は配列番号39もしくは配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はキメラペプチド変異体及びそれらの混合物に対する抗体、特にモノクローナル抗体を、医薬として、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防として使用することができる。
【0112】
Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120の群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを、医薬の製造ために、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防のために使用することができる。より具体的には、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜39及び52〜59もしくは配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はペプチド変異体を、医薬の製造において、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防法のために使用することができる。又は、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された、本明細書に記載される、及び、配列番号22〜24のペプチドに対する又は配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜38及び52〜59又は配列番号39もしくは配列番号1、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はキメラペプチド変異体及びそれらの混合物に対する抗体、特にモノクローナル抗体を、医薬の製造において、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIVの処置のために又はHIV−1の予防のために使用することができる。
【0113】
本発明の多数の実施態様が記載されている。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができることが作製されうることが理解されるであろう。
【0114】
実施例
材料及び方法
以下の材料及び方法を、実施例を通じて使用した。
【0115】
1.材料
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、スクアレン、Tween 80、及びSpan 85(w/v)をSigmaから購入した。Imject(登録商標)マレイミド活性化KLH(mcKLH;Pierce Biotechnology)をCBD1ペプチドのための担体タンパク質として試験した。CBD1エピトープの領域でのHIV−1 MN gp41の配列からのオーバーラップペプチドをAIDS Research and Reference Program/NIAID、NIH(AIDS/NIH)から得た。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)において産生されたHIV−1 gp41組み換えフラグメント586−682をViral Therapeutics, Inc.から購入した。
【0116】
ペプチド
免疫グレードの純度(80〜90%純粋)の全てのペプチドが、NeoMPS(Strasbourg, France)により合成された。CBD1ペプチドはgp41のアミノ酸位置618〜633である:SLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)(Hovanessian et al., 2004)。CBD1ペプチド(C17K)のN末端のシステイン残基を、Pierce Biotechnologyから購入されたImject(登録商標)活性化キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にそれを結合するために加えた。Tヘルパーエピトープペプチドのアミノ酸配列は以下である:(1)破傷風毒素Tet830ペプチド、AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)、(2)HIV−1 gp120421−436ペプチド、KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)及び(3)HIV−1 Gag298−312ペプチド、KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)。
【0117】
CBD1及びCBD1ベースのペプチドの配列を、太文字の保存トリプトファン残基と共に以下に提供する。キメラペプチドを、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリン(GPGPG)スペーサーを使用して合成した(Lennon-Dumenill et al., 2002; Livingston et al., 2002)。
【0118】
【表11】
カベオリン1結合モチーフベースのペプチドの配列は以下:
【表12】
である。
【0119】
システイニルCBD1ペプチドを供給者(Pierce Biotechnology)の指示に従ってmcKLHに結合した。
【0120】
アジュバント
完全及び不完全フロイントアジュバント(CFA及びIFA)、ムラミルジペプチド(MDPという)(N−アセチル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン水和物)、MDP誘導体(MDP−Lys(L18)という)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステアロイル−L−リシン)及び水酸化アルミニウム(ミョウバン)をSigmaから購入した。CpGオリゴデオキシヌクレオチド(マウス用のCpG ODN 1826;ウサギ及びモルモット用のCpG ODN 2007;マカク用のCpG ODN 10103)をColey Pharmaceutical Group(USA)から購入した。界面活性剤で安定化した水中油型乳剤MF59を実験室で調製した。それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween 80(w/v)、0.5% Span 85(w/v)(O'Hagan and Rappuoli, 2004)からなる。Montanide ISA 51は、好意により、SEPPIC(フランス)により提供された。
【0121】
2.方法
2.1 動物の免疫化及びELISA
ウサギ(Fauves de Bourgogne、6週齢)及びモルモット(350〜400g)をAnimal Production Center(Olivet, France)から購入した。BALB/cマウス(6〜8週齢)をCharles River Laboratories(France)から購入した。動物を約2〜3週間の間隔で5回、CBD1又はCBD1由来ペプチドを用いて、CFA及びIFA(本明細書で提示する実験データのために)又は他のアジュバント(データ提示せず)を使用して免疫化した。そのような懸濁液を、150μl、300μl、及び500μlの全容積中で、等しい抗原/アジュバントの割合(1V/1V)で、それぞれマウス、モルモット、及びウサギにおいて投与した。
【0122】
ウサギを5回の注射にCFAを使用して皮内に免疫化し、モルモットを最初の3回を筋肉内免疫化、それに続くCFAを使用した2回の腹腔内注射でしたのに対し、マウスを、示した通りに、CFAを使用した最初の皮下免疫化、それに続くCFA及びIFAを使用した腹腔内注射で免疫化した。
【0123】
免疫血清を、2μMの種々のペプチド(示す通り)を用いてコーティングし、37℃で60分間インキュベートした96ウェルプレート(Maxisorp, Dynatech)を使用したELISAにより滴定した。免疫血清を階段希釈で加え、37℃で60分間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を結合したマウス抗ウサギ(Sigma)又はヤギ抗モルモット(Sigma)又はヒツジ抗マウス(Amersham)免疫グロブリンを加えた。インキュベーション及び洗浄に続き、o−フェニレンジアミン二塩酸(OPD)基質を、記載されている通りにウェルに加えた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。発色に続き、反応を450nmで定量した。抗体価は、0.1に等しいOD値(450nmで測定)を与えるそれぞれのウサギ血清の逆希釈(reciprocal dilution)に対応する。マウス及びモルモットの免疫血清におけるIgG1及びIgG2サブクラス抗体の割合を、それぞれヤギ抗マウスIgG1及びIgG2a抗体(Sigma)並びにヤギ抗モルモットIgG1及びIgG2(Nordic Immunology)抗体を使用して決定した。これらのヤギ抗体を、次に、HRP結合ウサギ抗ヤギIgG(Sigma)により検出した。
【0124】
2.2.マカクの免疫化及びELISA
体重4〜6kgの成体雄カニクイザル(Macaca fascicularis)を、Mauritius繁殖コロニーから輸入し、非ヒト霊長類ケア(EEC指令N86−609、1986年11月24日)のための欧州ガイドラインに従って維持し、扱った。動物を、免疫化及び血液サンプル採取のためにケタミン・クロルハイドレート(ketamine chlorhydrate)(10〜15mg/kg)を用いて鎮静させた。第1組の免疫化において、動物を、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)経路を介して、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を使用し、システイニルCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。対照マカクを、アジュバント単独を用いて注射した。第2組の免疫化において、動物を、アジュバントとして[CpG+Montanide ISA51]で構成される混合物を使用し、Tet−KK−CBD1(400μg)を用いて又はCBD1+TetA830ペプチド(200μg+150μg)を用いて皮下に免疫化した。各々の免疫化のために、1容積のアジュバント混合物と1容積の免疫原からなる500μlを投与した。一般的に、動物を、免疫応答をモニターするために、各々の免疫化後15日目に放血した。
【0125】
免疫血清を、2μMの種々のペプチド(示す通り)を用いてコーティングし、37℃で60分間インキュベートした96ウェルプレート(Maxisorp, Dynatech)を使用したELISAにより滴定した。免疫血清を階段希釈で加え、37℃で60分間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE Healthcare, UK Limited)を結合したヒツジ抗ヒトIgGを加えた(抗サル抗体を用いたサルIgGの検出は、抗ヒト抗体と比較し、より高いバックグラウンドレベルを与えることに注意すべきである)。インキュベーション及び洗浄に続き、o−フェニレンジアミン二塩酸(OPD)基質を、記載されている通りにウェルに加えた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。発色に続き、反応を450nmで定量した。抗体価は、0.1に等しいOD値(450nmで測定)を与えるそれぞれのウサギ血清の逆希釈に対応する。
【0126】
2.3.初代Tリンパ球におけるHIV感染のアッセイ
CD4+Tリンパ球を、10%熱不活化ウシ胎児血清及び50IU/mlのペニシリン−ストレプトマイシンを含むRPMI−1640中で増殖させた。CD4+リンパ球を、Dynabeads M-450 CD8(Dynal(登録商標)Invitrogen)を使用してCD8+細胞の除去後、PBMCから調製した。PHAを用いた3日間の刺激後、細胞を、IL−2を含む新鮮培養液中に懸濁させ、72時間後に初代HIV−1単離株BZ167を用いて感染させた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。HIV感染に対する抗CBD1免疫血清の阻害活性を、許容細胞とのインキュベーション(37℃、90分間)前に免疫血清の種々の希釈物を用いた所与のHIV単離株のプレインキュベーション(37℃、20分間)によりアッセイした。そのような初代CD4+細胞におけるウイルス産生の最大ピークは、感染後4〜5日目に起こる。細胞を3日目に継代し、ウイルス産生をELISAにより培養上清においてモニターし、HIV主要コアタンパク質p24の濃度を測定する(HIV-1 p24 ELISAキット、Perkin-Elmer)。異なる実験において得られた値は、3連のサンプルのng/mlで平均値±SDある。
【0127】
2.4.単回HIV−1感染性アッセイ
HIV感染性のアッセイのために、階段希釈の培養上清を使用し、HIV−1末端反復配列(LTR)の制御下にあるLacZ遺伝子を含むHeLa P4細胞に感染させた。HIV−1の侵入及び複製は、HIV−1 LTRの活性化をもたらし、β−ガラクトシダーゼの発現に導く。感染から48時間後、細胞を洗浄し、β−ガラクトシダーゼ活性を記載のように570nm波長のフィルターを使用して測定する(Nisole et al., 2000)。
【0128】
2.5.IFN−γ ELISPOTアッセイ
皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)に免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫応答。応答は、IFN−γ ELISPOTアッセイにおいて、CBD1ペプチドを用いて、示された日にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。MultiScreen 96ウェルろ過プレート(Millipore, Guyancourt, France)を35%エタノール水を用いて30秒間湿らせ、次に滅菌パイロジェフリー水を用いて3回洗浄し、続いてPBSを用いて追加洗浄した。プレートを、次に、PBS中の濃度10μg/mlのサルIFN−γ(クローンGZ4、Mabtech AB, Sophia Antipolis, France)に対するモノクローナル抗体を用いて4℃で一晩インキュベーションしてコーティングした。
プレートを、PBSを用いて6回洗浄し、次に、10%熱不活化ウシ胎児血清(FCS、Laboratoires Eurobio;培養液)が添加されたglutamax-1(Invitrogen)を含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地で37℃で2時間インキュベーションしてブロッキングした。末梢血単核球細胞(PBMC)を密度匂配遠心により回収し、2×105個の細胞を各ウェルに加えた。ペプチドを、次に、3連で、培養液中に最終濃度1μMで加えた。ホルボール12ミリスチン酸13アセテート(PMA)(Sigma-Aldrich, Saint-Quentin Fallavier, France)+イオノマイシン(ionomycine)(Sigma-Aldrich)(それぞれ最終濃度0.1μM及び1μM)を陽性対照として使用した。培養液単独を陰性対照として使用した。プレートを、5% CO2を含む雰囲気において37℃で18時間インキュベートした。それらを次にPBSを用いて5回洗浄し、0.5% FCSを含むPBSにおいて濃度1μg/mLのビオチン化抗IFN−γ抗体(クローン7−B6−1、Mabtech AB)を用いて4℃で一晩インキュベートした。プレートを、PBSを用いて5回洗浄し、0.25μg/mLのアルカリホスファターゼ−ストレプトアビジンコンジュゲート(Sigma-Aldrich)を用いて37℃で1時間インキュベートし、PBSを用いて5回洗浄した。スポットを、NBT/BCIP基質(Sigma-Aldrich)を80μl/ウェルで加えることにより発色した。スポットを、KSソフトウェアを使用しAutomated Elispot Reader System(Carl Zeiss, Le Pecq, France)を用いてカウントした。結果を、3連のウェルでの106個のPBMC当たりのIFN−γスポット形成細胞(IFN−γSFC/PBMC100万個)の平均値として表わす。バックグラウンドを、非刺激サンプルにおけるIFN−γ SFC/PBMC100万個の平均数の2倍として計算した。バックグラウンドの除去後に50超のIFN−γ SFC/PBMC100万個を産生するサンプルを陽性としてスコアした。
【0129】
実施例1 − ペプチド配列の生成
以下の実施例における全てのペプチドを、当技術分野において公知の方法を使用し、NeoMPS(Strasbourg, France)により合成した。全てのペプチドが、80%〜90%の免疫グレードの純度であった。
【0130】
別途示さない限り、実施例2、3、4、5、6、8、10、及び11(並びに図4、5、7、16、及び17)において、「CBD1」という用語は、CBD1ベースのペプチドC17K(配列番号31)を指す。実施例9(及び図9〜15)において、「CBD1」という用語は、CBD1ベースのペプチドC18K(配列番号42)を指す。
【0131】
実施例2 − 遊離ペプチドとして又は担体タンパク質に結合されたCFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性の比較
一連の実験をウサギにおいて実施し、遊離ペプチドとして又は担体タンパク質(例えばストレプトアビジン及びオボアルブミンなど)に結合した、完全フロイントアジュバント(CFA)を用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性を比較した。
【0132】
免疫血清の阻害活性を、Hovanessian et al., 2004bにより記載される通りに、初代HIV−1 BZ 167単離株を用いた初代CD4+Tリンパ球の感染に対する異なる希釈でアッセイした。
【0133】
CBD1ペプチド用の担体タンパク質としてのKLHの有効性を評価するために、ウサギを、アジュバントとしてCFAを使用し、システイニル−CBD1ペプチド又はKLHに結合したシステイニル−CBD1ペプチドのいずれかを用いて注射した。KLH結合CBD1ペプチドは、非常に弱い免疫原であることが見出された(表1)。KLH結合CBD1ペプチドの反応性の欠如は、KLHに結合した場合でのその構造の喪失に起因しうる。なぜなら、ELISAアッセイにおいて、CBD1抗体はKLH−CBD1構築物と弱く反応するからである。いずれにせよ、システイニルCBD1ペプチド(C17K及びC18K)は、それらが中和抗体の産生を誘発するので、より高い免疫原性を有することが示された。結果的に、さらなる免疫化実験において、遊離システイニル−CBD1ベースのペプチド(即ち、担体タンパク質なし)を使用した。
【0134】
システイニル−CBD1ペプチド(C17K、C18K)がより高い免疫原性を有するのに対し、オバルブミンに結合した場合、それらの免疫原性は50%だけ低下する。他方で、遊離ビオチニル−CBD1ペプチドは免疫原性を示さないのに対し、その免疫原性は、ストレプトアビジンに結合した場合、システイニル−CBD1ペプチドのそれと同程度である(Hovanessian et al., 2004b)。ストレプトアビジンに結合したシステイニル−CBD1ペプチド及びビオチニル−CBD1ペプチドを用いて免疫化されたウサギからの免疫血清は、HIV−1感染を阻害する能力を有する(表1)。
【0135】
【表13】
【0136】
ウサギにおける別の一連の実験において、種々のアジュバント:CFA、ALUM、MDP(ムラミルジペプチド)、MDP−Lys(L18)、及びMF−59(Chironにより開発された水中油型乳剤;Ott et al., 2000 p. 211-228を参照のこと)を使用し、システイニル−CBD1ペプチド(C17K、C18K)の免疫原性について研究した。ALUMの他、全ての他のアジュバントが、CBD1エピトープに対する特異的抗体の開発のために免疫応答を効率的に刺激した。最善のアジュバント活性が、MDP−Lys(L18)及びMF−59の混合物を使用して観察された(データ示さず)。
【0137】
実施例3 − 種々のアジュバントを使用したマウスにおけるシステイニル−CBD1ペプチドの免疫原性
これらの実験の目的は、ヒトにおいて適合性があるアジュバント、MF−59、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、及びMDP−Lysを使用し、マウスにおけるCBD1ペプチドに対する体液性及び細胞性免疫応答をモニターすることである。1群当たり6匹の動物を、MF−59、[MF−59+CpG ODN]、又は[MF−59+MDP−Lys]中で製剤化された50μgのCBD1ペプチドを用いて、両側の前脛骨筋中に筋肉内注射により2又は3週間の間隔で4回免疫化した。6匹のマウスの群に、[MF59+MDP−Lys]又は[MF59+CpG]のいずれかにおいて製剤化されたCBD1ペプチド(C17K)を用いて筋肉内注射した。各群の対照動物に、陰性対照としてアジュバント調製物のみを用いて注射した。マウスの異なる群を、最終注射から10日後に心穿刺によって放血させ、脾臓を除去し、ELISPOTアッセイ及びサイトカイン分泌評価を実施した。5回目の免疫化から10日後、免疫血清を、CBD1ペプチド(C17K)に対するELISAにより試験した。平均OD値±s.d.は、各群の1/8000希釈での免疫血清の平均値に対応する。結果を表2に示す。
【0138】
【表14】
【0139】
これらの試験は、有意な免疫細胞応答が、CBD1ペプチドを用いた免疫化に応答して開始されないことを示した(示さず)。しかし、免疫化されたマウスは、各々の追加免疫ー注射後に増加されたCBD1ペプチド特異的抗体を生成した。より重要なことに、これらの実験によって、CpG ODNがMDP−Lysよりもずっと免疫増強性の高いアジュバントであることが指摘された。実際に、[MF−59+CpG ODN]を用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマウスは、[MF59+MDP−Lys]中でアジュバント化されたCDB1ペプチドを用いて免疫化されたマウスと比較し、数倍高い抗CBD1抗体力価を誘発した(表2)。
【0140】
実施例4 − モルモットにおけるCFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性
CFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性を、モルモットにおいて、CBD2ペプチド、CBD1/Aペプチド(それにおいて3つの保存された芳香族トリプトファン残基がアラニンに変化している)、及びCBD1ペプチドの最後の12のアミノ酸残基を含むC13Kペプチドと並行して研究した(表3)。
【0141】
2匹のモルモットの群をペプチド(1回の免疫化当たり75μg):CBD1(C17K)、C13K、CBD1/A、又はKLHに結合したCBD1(CBD1−KLH)を用いて免疫化した。5回目の免疫化(放血5)から10日後、免疫血清を、CBD1、C13K、CBD1/A、及びC10Mペプチド並びにCBD1−KLH構築物に対するELISAにより試験した。抗CBD1抗体の力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。免疫血清を、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力についてアッセイした(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。HIV−1産生を、感染後5日目の初代CD4+Tリンパ球の培養上清においてp24の濃度を測定することによりモニターした。免疫血清の50倍希釈で生じるHIV感染のパーセント阻害を、表3に提示する。
【0142】
【表15】
【0143】
種々の動物における強力な抗体応答を誘発するCBD1ペプチド(CSLEQIWNNMTWMQWDK)の能力は、この17のアミノ酸ペプチドが免疫優性B細胞エピトープを含むはずであり、また、CD4+細胞により認識される主要組織適合性複合体クラスIIのT細胞エピトープとオーバーラップすることを示す(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。興味深いことに、CBD1ペプチドの最後の12のアミノ酸にカベオリン1結合モチーフを含むC13Kペプチド(CIWNNMTWMQWDK)は、モルモット(表3)、マウス、及びウサギ(データ示さず)において全く免疫原性を示さない。免疫原性のこの喪失は、CBD1ペプチドのN末端部分が、Tヘルパーエピトープとしての役割を果たすことを示唆する。
【0144】
CFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性を、モルモットにおいて、CBD1/Aペプチド(それにおいて3つの保存された芳香族トリプトファン残基がアラニンに変化している)と並行して研究した(表3)。CBD1ペプチドは、等しく十分にC13Kペプチドと反応する高力価抗体を誘発し、このように、3つの保存されたトリプトファン残基を含むCBD1ペプチドのC末端部分が免疫優性B細胞エピトープであることを示す。C13Kペプチドの他、抗CBD1免疫血清はCBD1/Aペプチドとわずかに交差反応し、それは、C10Mペプチド(CSLEQIWNNM)との同様の交差反応性を考慮すると、CBD1ペプチドのN末端の10アミノ酸残基の認識に起因すると思われる。CBD1/Aペプチドもモルモット(表3)において及びウサギにおいて(提示しない)免疫原性を示した。なぜなら、それはCBD1/Aペプチドに対する高力価抗体を誘発したからである。抗CBD1免疫血清とは対照的に、しかし、抗CBD1/A免疫血清とC13Kペプチドとの反応性は非常に弱かった。抗CBD1/A免疫血清とCBD1ペプチドとのわずかな交差反応性は、C10Mペプチドとの反応性により例示される通り、N末端部分の認識に起因するはずである。これらの観察は、CBD1ペプチドのN末端部分が追加のB細胞エピトープを提供することを示す。
【0145】
ペプチドの免疫原性は、担体タンパク質に結合した場合、しばしば改善される。この目的のために、アジュバントとしてCFAを使用したCBD1ペプチド用の担体タンパク質としてのKLHの有効性を研究した。しかし、2〜3週間の間隔での5回の免疫化後でさえ、KLHに結合したCBD1ペプチドが、モルモット(表3)及びウサギ(示さず)の両方において免疫原性を示さないことが見い出された。その構造のため、CBD1ペプチドは、細胞膜中に侵入し、界面のカベオリン1と相互作用し、免疫原性を示す能力を有することが最近報告された(Benferhat et al., 2008)。結果的に、CBD1ペプチドは、KLHに結合した場合、その構造及び免疫原性を失う。これを支持し、遊離CBD1ペプチドに対して惹起された抗CBD1抗体は、免疫原として使用されたKLH結合CBD1ペプチドを認識しない(表3)。
【0146】
モルモットにおいて惹起された種々の免疫血清(放血S5)を、ヒトCD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する能力について試験した。50倍希釈では、2匹のモルモットからの抗CBD1免疫血清が、HIV感染を66%及び57%阻害した。しかし、抗CBD1/免疫血清は、明らかな中和活性を有さなかった。この後者は、HIV中和抗体の開発するためのカベオリン1結合モチーフ中の保存されたW残基の重要性を指摘する。
【0147】
実施例5 − CBD1ペプチドの免疫原性並びにウサギ、モルモット、及びマウスにおいてCBD1ペプチドに対して惹起された免疫血清の微細エピトープマッピング
2匹の動物(ウサギ、モルモット、及びマウス)の群を、CFAを使用し、2〜3週間の間隔で、CBD1ペプチド(C17K;ウサギ、モルモット、及びマウスにおいてそれぞれ150、75、50μg/注射)を用いて免疫化した。5回目の免疫化から10日後、免疫血清を、CBD1ペプチドに対するELISAにより試験した。モルモット及びマウスの免疫血清におけるIgG1及びIgG2サブクラス抗体の割合を、特異的抗体によりモニターした。力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。HIV−1中和活性(表1においてモニター)をID50(阻害希釈50)として表わし、それはHIV−1感染の50%阻害をもたらす免疫血清の希釈を指す。
【0148】
【表16】
【0149】
2匹の動物(ウサギ、モルモット、及びマウス)の群を、上に記載する通りに、CBD1ペプチドを用いて免疫化した。5回目の免疫化から10日後、免疫血清を、以下に記載するCBD1、C13K、CBD2、p6362、p6364、及びp6365ペプチド(図8に示す)に対するELISAにより試験した。CBD1ペプチドとの反応性に対する各ペプチドとの%反応性を、種々のペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたO.D.値を考慮に入れることにより与える。結果を図8に示す。
【0150】
アジュバントとしてCBD1ペプチド及びCFAを使用した同様の免疫化条件下で、モルモットからの抗CBD1免疫血清のHIV中和活性が、CBD1ペプチドを用いて免疫化されたウサギ及びマウスからのものと比較し、数倍低いことが見い出された(表4)。この目的のために、抗CBD1免疫血清の微細エピトープマッピングを、カベオリン1結合モチーフWNNMTWMQW(図8)の種々のセグメントを含むCBD1、C13K、CBD2、及び3つのオーバーラップペプチド(p6362、p6364、及びp6365)を使用したELISAにより行った。ウサギ及びモルモットからの抗CBD1免疫血清は、カベオリン1結合モチーフを含むC13Kペプチドとの強力な交差反応性により(カベオリン1結合モチーフを含むが、しかし、N及びC末端修飾アミノ酸残基内にあるp6364ペプチドとの別々の交差反応性と共に)、マウス免疫血清から区別することができる。
【0151】
他方で、マウスからの抗CBD1免疫血清は、モチーフのN末端部分を含むp6362ペプチドとの強力な交差反応性によりウサギ及びモルモットから区別することができる。特に興味深いのは、抗CBD1モルモット免疫血清と、モチーフのC末端部分を含むp6365ペプチドとの強力な交差反応性である(図8)。なぜなら、モルモット免疫血清は、ウサギ及びマウス抗CBD1免疫血清と比較し、低下したHIV−1中和活性を一貫して現したからである(表4)。
【0152】
これらの結果によって、所与のCBD1ベースのペプチドに対し、ウサギ、モルモット、及びマウスからの抗CBD1免疫血清の交差反応性プロファイルにおいて有意差が示された。そのような差は、恐らくは、CBD1ペプチド免疫原に対するこれらの動物での固有の免疫応答における変動を反映する。例えば、CBD1ペプチドのプロセシングは、種々の動物においてわずかに異なりうる。そのため、代替HLAクラスIIアグレトープが生成される。差は、マウスと比較し、モルモットからの免疫血清における抗CBD1反応性抗体のIgGサブクラス分布でも観察された。実際に、血清IgG1及びIgG2濃度の分析によって、IgG2抗体が、マウスと比較し、モルモットにおいてIgG1抗体よりも優性であることが示され、IgG2/IgG1比はそれぞれ3.75〜4.10及び0.96〜1.15であった(表4)。
【0153】
種々の抗CBD1免疫血清とCBD2ペプチドとの交差反応性は、CBD1及びCBD2が相同カベオリン1結合モチーフを共有するという事実にもかかわらず、ほとんど無視できる。抗CBD1免疫血清とCBD2ペプチドとの交差反応性のこの欠如によって、過去に報告された通り、CBD1及びCBD2ペプチドの間での立体構造の差の存在がさらに確認される(Benferhat et al., 2008; Rey-Cuille et al., 2006)。
【0154】
実施例6 − ヒトCD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ162感染の阻害
モルモットの免疫血清(放血S5)を、次に、ヒトCD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ162感染を阻害するための能力について試験した。100倍希釈では、CBD1ペプチドを用いて免疫化されたモルモットA2及びF16からの免疫血清によってHIV感染がそれぞれ66%および57%阻害された。CBD1/AペプチドはCBD1ペプチドと同程度に免疫原性を示したが、CBD1/Aペプチドを用いて免疫化されたモルモットD7及びD8からの免疫血清は、100倍希釈ではHIV−1感染と阻害しなかった(表3を参照こと)。この後者は、中和抗体の開発用のカベオリン1結合モチーフ中の保存されたW残基の重要性を指摘する。
【0155】
実施例7 − CBD1又はCBD1ベースのペプチドに融合されたTヘルパーエピトープを含むキメラペプチドの構築
CBD1ペプチド、C17K及びC18Kが、それ自体で種々の動物(マウス、モルモット、ウサギ)において強い抗体応答を誘発することが可能であるという事実は、それがT細胞エピトープと共にB細胞エピトープを含むことを示す。他方で、最後の12のアミノ酸に対応するC13Kペプチドは、マウス、モルモット、及びウサギにおいて全く免疫原性を示さない。N末端の5〜6アミノ酸残基の非存在における免疫原性のこの喪失は、CBD1ペプチドのこの部分がTヘルパーエピトープの役割を果たし、保存されたCBMを含む部分が、図3に示す通り、B細胞エピトープの役割を果たす。
【0156】
CBD1ペプチドの免疫原性を増強し、C13Kペプチドが免疫原性を示すようにするために、Tヘルパーエピトープを有するいくつかの構築物を生成した。この目的のために、C17K/C18KのNH2末端及びCBD1ペプチドの最後の12のアミノ酸残基I−W−N−N−M−T−W−M−Q−W−D−Kに融合された3つの公知のTヘルパーエピトープを使用した。
【0157】
この実施例において使用された3つのTヘルパーエピトープは以下:
1)Tet830:AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)。これは、多数のMHCクラスII分子に結合する破傷風毒素からの「乱雑な(promiscuous)」T細胞エピトープである(Slingluff et al., 2001)。
2)gp120421−436:KQIINMWQWGKAMYA(配列番号3)。これは、ヒト、マウス、及びマカクにおいてヘルパーT細胞エピトープ機能を現すHIV−1 gp120中の4番目の定常ドメインである(Egan et al., 2004)。
3)Gag298−312:KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)。これは、13のヒトHLA−DR対立遺伝子に結合するHIV−GagヒトDRスーパーモチーフ(CN末端コアタンパク質p24に位置する)である(Wilson et al., 2001)。
である。
【0158】
CBD1ベースのペプチドを伴う共線形Tヘルパーエピトープを、ジリシン(−KK−)リンカーを使用して合成し、それはリソソームプロテアーゼカテプシンB(MHC−II抗原提示に関連する抗原プロセシングのための重要なプロテアーゼの1つ)の標的配列である(Lennon-Dumenill et al., 2002)。また、GPGPGスペーサーを使用してペプチドが合成され、それは、一方では、潜在的な接合エピトープの形成を妨げ(Livingston et al., 2002)、他方では、延長3鎖形成を促進するグリシン残基及びプロリン残基によってキメラペプチドにおけるB細胞エピトープの立体構造を保持することができた(Liu et al., 2005)。
【0159】
粘膜免疫の誘導のための候補ワクチンを提供しうるペプチドキメラを生成する目的のために、C13Kペプチド配列で構成されるA30KペプチドキメラのN末端に融合されたインテグリン結合モチーフRGD(Yano et al., 2005; Yano et al., 2003)及び破傷風ペプチドを含むR33Kペプチドを構築した。ペプチド抗原へのRGDモチーフの付加によって、それらの免疫原性の潜在力が顕著に増強され、特に、アジュバントなしで経鼻免疫化を可能にする(Yano et a!., 2005)。
【0160】
種々のキメラ構築物の配列は以下:
【表17】
である。
【0161】
全てのペプチドを、Fmoc化学(NeoMPS SA, Strasbourgによる)を使用して合成した。
【0162】
実施例8 − Tヘルパーエピトープと融合されたCBD1、CBD1及びCBMベースのペプチドの免疫原性及びHIV−1中和活性
マウスにおけるTヘルパーエピトープと融合されたCBD1、CBD1及びCBM由来ペプチドの免疫原性、及びHIV−1感染を阻害する誘発抗体の能力を、2組の実験において研究した。
【0163】
実施例8A
CBD1ペプチドに融合されたTetA830、gp120421−436、及びGag298−312 Tヘルパーペプチドを使用した第1組の実験(表5並びに図4及び5にまとめる)。
6匹のマウスの群を、種々のペプチド(C17K、C18K及びC13Kのキメラペプチドについては75μg:A36K、A35K、K36K、K35K、A30K、K29K、K30K、及びR33Kペプチドについては150μg)と完全フロイントアジュバントを使用して皮下に免疫化した。5回目の免疫化から10日後、16,000倍希釈の免疫血清を、CBD1ペプチド(C17K)に対するELISAにより試験した。OD450nm値±s.d.は、各群における6つの血清サンプルの平均値に対応する。IgG1及びIgG2サブクラス抗体の割合を、特異的抗体によりモニターした。各群からのプール血清を、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力について、CBD1ペプチドに対するELISAによりアッセイした。HIV−1産生を、以前に記載された通りに(Hovanessian et al., 2004b)、感染後5日目の培養上清においてp24の濃度を測定することによりモニターした。中和活性をID50(阻害希釈50)として表わし、それはHIV1感染の50%阻害をもたらす免疫血清の希釈を指す。それぞれのプール血清の200倍希釈での培養液におけるHIV−1産生の%阻害も提示する。結果を以下の表5に示す。
【0164】
【表18】
【0165】
結果は、TヘルパーエピトープTetA830、gp120421−426、及びGag298−312を含むこれらの種々のペプチドの存在が依然として免疫原性であり、100〜350倍の範囲の免疫血清希釈でHIV産生に対して50%阻害効果を示すHIV中和抗体の産生を誘発することを示す(表5)。C13Kペプチドはそれ自体では免疫原性を示すことなく、しかし、Tヘルパーエピトープ(ペプチドA30K、K29K、K30K、R33K)と融合された場合、それはC13Kペプチド並びに元のCBD1ペプチドの両方と反応する高力価抗体の産生を誘発する(図4及び5を参照こと)。免疫血清とCBD1ペプチドとの反応性は特異的である。なぜなら、それらはCBD2ペプチドと反応しないからである。種々のTヘルパーエピトープが、免疫血清とTヘルパーエピトープペプチド、TetA830、gp120421−426、及びGag298−312との低い又は非特異的反応性により説明される通り、免疫原性がないことに注意すべきである(データ示さず)。
【0166】
A35Kペプチド(TetA830−KK−CBD1ペプチドで構成される)を用いて免疫化されたマウスにおける抗CBD1ペプチド抗体の産生は、CBD1ペプチド単独のそれと比較し、少なくとも3倍低いのに対し(表5)、HIV−1感染の中和の程度における差は2つの免疫血清の間で2倍未満であった(表5)。一般的に、厳密な相関は抗CBD1抗体価とHIV−1中和活性の間で明らかでなく、このように、中和活性は少ない割合の全抗CBD1抗体に対応することが指摘された。この後者は、恐らくは、ELISAアッセイによって、特定の立体構造(天然gp41分子におけるCBD1エピトープの立体構造とわずかに異なりうる)を有しうる所与のペプチドとの反応性がモニターされるという事実に起因する。
【0167】
ウサギ及びモルモットにおいて惹起された抗CBD1抗体は、C13Kペプチドと強く反応する(表3、Rey-Cuille et al., 2006を参照)。しかし、マウスにおいて惹起された抗CBD1抗体は、C13Kペプチドと非常に弱く反応するが、それらは強力な抗HIV阻害効果を発揮する(表3、図4及び5)。マウスとウサギ/モルモットの間でのこれらの差は、恐らくは、C17Kペプチドに対するこれらの動物の固有の免疫応答、及びCBD1ペプチド中の固有のN末端Tヘルパーエピトープがこれらの動物において機能するプロセスに起因する。これに従い、オーバーラップペプチドを使用したウサギ、モルモット、及びマウスからの種々の免疫血清での微細エピトープマッピングによって、所与のCBD1又はCBD1ベースのペプチド免疫原に関連するこれらの動物の間での有意差を明らかにした(図8)。
【0168】
実施例8B
5匹のマウスの群を、K27W、K24W、K23M、K30W(G)、及びK27W(G)構築物についてのCBM IWNNMTWMQWの異なるサイズフラグメントに融合されたGag298−312Tヘルパーペプチドで構成される種々のキメラペプチドを使用して皮下に免疫化したのに対し、K27W−2については、モチーフは二次コンセンサス配列に対応するIWDNMTWMEWであった。唯一の除外は、C10Mペプチド(C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M)に結合されたGag298−312ペプチドで構成されるK27Mキメラペプチドであった。それはCBD1ペプチド(C17K)の最初の9つのアミノ酸残基に対応する。この実施例についてのペプチドを、以下の表6に示す。
【0169】
【表19】
【0170】
4回目の免疫化から2週間後、免疫血清を、それぞれのペプチドに対するELISAにより試験し、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力についてアッセイした(表6、表7)。免疫化されたマウスからの免疫血清を表6に記載する。放血S4を、種々のペプチドに対するELISAにより滴定した。OD450nm値±s.d.は、6,000倍希釈での各群における5つの血清サンプルでの平均値に対応する。K27Wペプチドに対して惹起された免疫血清の反応性は、同種のK30W(G)ペプチドより高い;2つのペプチドの間での唯一の違いはリンカーである。抗K27W免疫血清は、そのそれぞれの免疫原(K−Kリンカーを有する)及びG−P−G−P−Gリンカーを有するその同種のK30W(G)ペプチドと強く反応する。同様に、抗K24W免疫血清は、そのそれぞれの免疫原(K−Kリンカーを有する)及びG−P−G−P−Gリンカーを有するその同種のK27W(G)ペプチドと強く反応する。
【0171】
K23Mペプチドは弱い免疫原であることが見い出された。なぜなら、5匹の免疫化マウスの内のわずか1匹がペプチド特異的抗体を生成したからである。全ての他のペプチドは、ペプチド−免疫原特異的抗体の産生により説明される通り、高免疫原性を示した(表7)。
【0172】
ペプチドキメラK27W及びK24Wは、それぞれK30W(G)及びK27W(G)と同種である。それらの間の差は、単にペプチドリンカーK−K又はG−P−G−P−Gである。配列W−N−N−M−T−W−M−Q−W及びI−W−N−N−M−T−Wは、K−Kリンカーと比較し、G−P−G−P−Gリンカーを有するキメラにおいてより良好に提示されると思われる。従って、抗K27W及び抗K24W免疫血清とG−P−G−P−G結合K30W(G)及びK27W(G)ペプチドとの反応性は、K27W及びK24Wペプチドのそれと比較し、それぞれ一貫してより高い。他方で、抗K30W(G)及びK27W(G)は、同種のK27W及びK24Wペプチドと反応せず、このように、K−K及びG−P−G−P−Gリンカーにより惹起される重要な立体構造の違いが明らかになる(表7)。それらの同種のG−P−G−P−G結合K30W(G)及びK27W(G)ペプチドの他、K27W及びK24Wが他のペプチド[二次コンセンサスカベオリン1結合モチーフW−D−N−M−T−W−M−E−W(それにおいてN及びQがそれぞれD及びEに変化している)を含むK27W−2ペプチド含む]と交差反応した。この後者は、立体構造エピトープを有するそのような抗体の反応性と一致する。
【0173】
【表20】
【0174】
5匹のマウスの群を、種々のペプチド(C17Kについては75μg:K27W、K27W−2、K30W(G)、K24W、K27W(G)、K27M、及びK23Mについては150μg)と完全フロイントアジュバントを使用して皮下に免疫化した。C10M群について、免疫原混合物は、75μgのC10Mペプチド(C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M)と75μgのGag298−312ペプチド(K−R−W−I−I−L−G−N−K−I−V−R−M−Y)であった。5回目の免疫化から2週間後、免疫血清を、それぞれのペプチドに対するELISAにより試験した。OD450nm値は、6,000倍希釈での各群における5つの血清サンプルでの平均値に対応する。各群からのプール血清を、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力についてアッセイした(表8)。HIV−1産生を、以前に記載された通りに(Hovanessian et al., 2004b)、感染後5日目の培養上清においてp24の濃度を測定することによりモニターした。HIV−1中和活性をID50(阻害希釈50)として表わし、それはHIV−1感染の50%阻害をもたらす免疫血清の希釈を指す。それぞれのプール血清の200倍希釈での培養液におけるHIV−1産生の%阻害も提示する。この混合物は、星印により指定したC17K/K27W/K30W(G)/K24W(1/1/1/1)を用いて免疫化されたマウスからのプール血清を表す。
【0175】
【表21】
【0176】
C10Mペプチドは免疫原性を示さなかった。しかし、Gag TヘルパーエピトープK27Mに結合した場合、次に、高力価抗体が免疫化されたマウスにおいて生成された。抗K27M抗体はC10Mペプチドと強く反応した(示さず)。K27W−2、K30(G)、K27W(G)、及びC17Kに対して惹起された免疫血清は、他のペプチドと有意に交差反応せず、そのため、CBMの10アミノ酸残基内での複数の決定基の存在が明らかとなった。免疫原性を示した最小配列は、K24Wキメラにより提示されるI−W−N−N−M−T−W配列である(表6)。
【0177】
免疫血清の大部分が、100〜450倍の範囲の免疫血清希釈で、HIV産生に対して50%阻害効果を示すHIV−1中和活性を現した(表8)。最高ID50値が、K24W及びK27W−2、それに続きK27W及びC17Kについて観察された。興味深いことに、K27W、K24W、K30W(G)、及びC17K(1/1/1/1:星印により指定)を用いて免疫化されたマウスからの免疫血清の混合物は、HIV−1感染に対する相乗的な中和活性をもたらし、ID50値はプール血清の>800倍希釈であった。プール血清の200倍希釈では、HIV−1感染に対する阻害効果は>98%であった。
【0178】
同様の実験を、CBD1、K27W、K24W、K27W(G)、及びK30W(G)ペプチドを用いて免疫化されたマウスの各群からの個々の免疫血清を使用して実施した。典型的な実験での結果を図16に提示し、種々の免疫血清のID50阻害効果が、異なるペプチドに対して惹起された5つの免疫血清の混合物により少なくとも4倍増加されることを示す。個々の免疫血清の200及び800倍希釈で、HIV−1感染に対する阻害効果はそれぞれ70〜90%及び50%未満であるのに対し、そのような血清の混合物についてのID50値は3200倍未満の希釈で観察される(図16)。
【0179】
Tリンパ球のHIV−1産生培養物に抗CBD1抗体を添加することによって欠陥ウイルス粒子の産生が起こる。なぜなら、抗CBD1抗体によって原形質膜においてgp41の凝集が起こり、gp120−gp41複合体を欠損したウイルス粒子の産生をもたらすからである。結果的に、そのようなウイルス粒子は感染性が低い(Hovanessian et al., 2004)。図17は、これがCBM由来キメラペプチドに対して惹起される抗体にも当てはまることを実証する。この目的のために、HIV−1産生に対する免疫血清の作用が、CD4+Tリンパ球のウイルス感染から2日後に加えられた場合に試験された。これらの実験条件下で、感染後5日目にHIV−1主要コアタンパク質p24によりモニターされたウイルス産生に対する明らかな効果はない(図17A)。そのような感染細胞の培養上清を10倍希釈し、HeLa P4C5細胞を使用することにより、単回感染性アッセイにおいてビリオン感染性について試験した(図17B)。結果は、HIV−1粒子が、200倍希釈の免疫血清の存在において産生され、免疫前血清を用いて処理された培養物から回収された対応するビリオンと比較し、少なくとも50%低い感染性を示す。
【0180】
従って、ウイルス感染の阻害に加えて、種々のCBMベースのキメラペプチドに対して惹起されたマウス免疫血清が、HIV−1産生細胞に対して作用する能力を有し、感染力の低下したウイルス粒子の産生をもたらす。
【0181】
これらの結果の有意性:
抗CBM抗体が、HIV−1産生細胞培養物に加えられた場合、欠損ウイルス粒子の産生を起こすことができたとの観察(図17)は、別々の中和決定基に対するそのような抗体が、HIV−1産生細胞の表面上に発現されるgp41と反応することもできることを指摘する。結果的に、そのような抗体は、Fc媒介性のエフェクター系、例えば抗体依存的な細胞性の及び補体媒介性の細胞毒性などによりインビボでHIV感染細胞の除去を引き起こしうる(Parren and Burton, 2001)。他方で、HIV偽ウイルス粒子に対する応答において最近報告されているように、欠陥HIV粒子は、ウイルスタンパク質に対する体液性及び細胞性免疫応答の生成のための宿主免疫系に関与しうる。(Chen et al., 2005)。
【0182】
上の実験から下すことのできる結論は以下のとおりである。高親和性の及び防御的な中和抗体を誘導することができるペプチドワクチンは、部分的に、天然タンパク質における対応する領域の三次元構造を模倣する抗原エピトープの設計に依存しなくてはならない。ここで、CBD1ペプチド及びCBD1由来ペプチドが、そのままで又はTヘルパーエピトープに融合して、HIV−1感染を中和することが可能な抗体を誘導する能力を有する立体構造エピトープを生成することが示された。CBM由来ペプチドは、Tヘルパーエピトープと融合後にのみ免疫原性を示す。
【0183】
原形質膜においてカベオリン1に結合する能力により、CBD1ペプチドはエンドソーム経路により取り込まれ、抗原提示細胞の原形質膜へのそれらの輸送中にタンパク分解酵素によりプロセシングされHLAクラスII分子と相互作用する別々のオーバーラップフラグメント(又は決定基)を与えることができる。そのようなプロセシングされたペプチドは、次に、CD4+ヘルパーT細胞の原形質膜上に存在するT細胞受容体により特定されうる。この後者は、オーバーラップ決定基の生成を説明しうる。
【0184】
HIV−1感染に対して中和活性を発揮しながらの種々の免疫血清の交差反応性の欠如(表6及び7)、及び別々のCBD1及びCBMベースのペプチドと交差反応しない中和モノクローナル抗体の単離(表10)から、CBD1エピトープがいくつかの関連する立体構造(特異的CBD1及びCBMベースのペプチドにより模倣される)を有することを示唆することが理にかなう。結果的に、そのようなペプチドによって、CBMの特定の立体構造に対する抗体を誘導することができた。
【0185】
特定の決定基と反応する免疫血清の混合物により観察されたHIV中和における相乗作用は、CBD1エピトープに対して効率的な体液性免疫応答を得るために、種々のTヘルパーペプチドを有するCBD1及びCBM由来ペプチドのカクテルを、候補ワクチン調製のために考慮すべきであることを示唆する。
【0186】
実施例9 − CBD1ペプチドはアカゲザルにおいて中和抗体を誘発する。
体重4〜6kgの成体雄カニクイザル(Macaca fascicularis)を、Mauritius繁殖コロニーから輸入し、非ヒト霊長類ケア(EEC指令N86−609、1986年11月24日)のための欧州ガイドラインに従って維持し、扱った。動物を、免疫化及び血液サンプルの採取のためにケタミン・クロルハイドレート(10〜15mg/kg)を用いて鎮静させた。第1組の免疫化において、動物を、皮内(I.D.)又は筋肉内(I.M.)経路を介して、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を使用し、システイニルCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。対照マカクを、アジュバント単独を用いて注射した。この実施例において、CBD1は、配列番号42において定義される、C18KペプチドCKSLEQIWNNMTWMQWDKを指す。
【0187】
第2組の免疫化において、動物を、アジュバントとして[CpG+Montanide ISA51]で構成される混合物を使用し、Tet−KK−CBD1(400μg)を用いて又はCBD1+TetA830ペプチド(200μg+150μg)を用いて皮下に免疫化した。各々の免疫化のために、1容積のアジュバント混合物と1容積の免疫原からなる500μlを投与した。一般的に、動物を、免疫応答をモニターするために、各々の免疫化後15日目に放血した。
【0188】
免疫血清を、2μMの種々のペプチド(示す通り)を用いてコーティングし、37℃で60分間インキュベートした96ウェルプレート(Maxisorp, Dynatech)を使用したELISAにより滴定した。免疫血清を階段希釈で加え、37℃で60分間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE Healthcare, UK Limited)を結合したヒツジ抗ヒトIgGを加えた(抗サル抗体を用いたサルIgGの検出は、抗ヒト抗体と比較し、より高いバックグラウンドレベルに与えることに注意すべきである)。インキュベーション及び洗浄に続き、o−フェニレンジアミン二塩酸(OPD)基質を、記載されている通りにウェルに加えた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。発色に続き、反応を450nmで定量した。抗体価は、0.1に等しいOD値(450nmで測定)を与えるそれぞれのウサギ血清の逆希釈に対応する。
【0189】
マカクにおけるCBD1ペプチドの免疫原性
合計8匹の動物をこの試験において使用した。3匹の動物の2群に、0、4、8、12、及び16週目に、[MDP−Lys+MF−59]アジュバント中で製剤化されたCBD1ペプチド(200μg)を用いて筋肉内又は皮内経路を介して注射した。対照として、2匹のマカクを、アジュバント製剤単独を用いて筋肉内又は皮内のいずれかに注射した。血清及びPBMCを0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、及び22週目に回収し、ELISAにより抗体の力価を試験し、また、CBD1ペプチドに特異的なIFN−γ ELISpotを実施することにより細胞性免疫応答をモニターした。
【0190】
有意なレベルの抗CBD−1体液性応答は、CBD1ペプチドを用いた3回目の免疫化まで、免疫化された動物において生成されなかった(図10A、10B)。5回の免疫化後、3匹の皮内注射されたマカクの内の2匹が、3匹の筋肉内注射された動物(マカクM11421)の内の1匹と比較し、高い抗体価を与えた(マカクM13510及びM13284)。従って、皮内注射が、筋肉内注射と比較し、注射のより効率的な経路であることが可能でありうる。各群において、免疫化された動物の間に弱い応答を示すものがあった:皮内注射された群におけるマカクM13246は弱い体液性応答を与え、筋肉内注射された群におけるマカクM11635及びM11450はそれぞれ弱及び無応答を与えた。動物における免疫応答のこの弱さ又は欠如は、CBD1ペプチド免疫原に対する最適な体液性応答を与えるために霊長類においてMHC拘束性があるはずであることを示唆した。実際に、CBD1ペプチドは、この実験において使用されるマカク集団の全てのMHC分子により結合できない可能性がある。T細胞へのCBD1ペプチド提示における欠損は、効率的なTヘルパー応答の非存在を反映しうる。
【0191】
CBD1ペプチドに対する細胞性免疫応答に関し、各群における3匹の免疫化された動物の内のわずか1匹が、CBD1エピトープに対する有意なレベルのT細胞応答を与えた(図9)。この後者は、皮内に免疫化されたマカクM13284における3回目の免疫化後、及び筋肉内に免疫化されたマカクM13421における2回目の免疫化後に観察された。T細胞応答の生成は、これらの2匹の動物において抗CBD1抗体の産生と相関したが、高い抗体価を産生したマカクM13510は有意なT細胞応答を現さなかった。4回目の免疫化後、全ての免疫化された動物が、アジュバント混合物により媒介されうる非特異的なT細胞応答を生成した。なぜなら、同様の非特異的なT細胞応答が、アジュバント混合物のみを用いて注射された対照マカク(M13535及びM13504)においても生成されたからである(示さず)。[MDP−Lys(L18)+MF−59]アジュバントが、非特異的なT細胞応答の生成を起こす機構が依然として研究されていない。他方で、これらの同じマカクにおいて生成する体液性応答が24週間の試験期間にわたりCBD1免疫原に特異的であったことに注意すべきである(図10)。実際に、CBD1ペプチドと反応したマカク免疫血清が、HIV−2の膜貫通型エンベロープ糖タンパク質中の潜在的カベオリン1結合ドメインに対応する同種のCBD2ペプチド(CSLTPIWNNMTWQEWER)と交差反応しなかった(データ示さず)。
【0192】
破傷風毒素からの乱雑なTヘルパーエピトープに関連するCBD1ペプチドの免疫原性
マカクにおけるCBD1ペプチドに対する潜在的なMHC拘束を克服するために、破傷風毒素からの「乱雑な」T細胞エピトープ(TetA830:AQYIKANSKFIGITEL)(多数のMHCクラスII分子と結合する)を使用した(Jackson et al., 2002)。ジリシンリンカー(KK)(MHC−II抗原提示に関連する抗原プロセシングに関与するリソソームプロテアーゼカテプシンBの標的配列である)を介してCBD1ペプチドと融合された、TetA830、ヘルパーエピトープで構成されるTet−KK−CBD1共線形キメラを構築した(Lennon-Dumenill et al., 2002; Yano et al., 2005)。ジリシンモチーフは、また、小胞体における保持及び免疫原の半減期の延長に関与しうる(Steinhilb et al., 2002)。
【0193】
いくつかの免疫化実験において、Tet−KK−CBD1キメラが、マウス、モルモット、及びウサギにおいて抗CBD1抗体の産生を誘発することにより免疫原性を示すことが初めて示された(示さず)。CBD1ペプチド単独を用いて過去に免疫化されたマカクの2群におけるCBD1ペプチドの免疫原性に対するTet Tヘルパーエピトープの効果を試験した。この第2組の免疫化は、最初の試験に記載するマカクの5回目の注射から4ヶ月後に開始した。興味深いことに、有意なレベルの抗CBD1抗体が、反応性が高いレスポンダーと考えられたそれらのマカクにおいて4ヶ月後に依然として存在した(表9)。抗CBD1抗体のこの持続性は、CBD1ペプチドを用いた免疫化がB細胞記憶応答を誘発することができたことを示唆する。
【0194】
マカクの2群は、アジュバントとして混合物[CpG+Montanide ISA 51]を使用し、融合された(Tet−KK−CBD1)又は遊離の(CBD1+Tet)ペプチドのいずれかである破傷風Tヘルパーエピトープペプチドに関連するCBD1ペプチドを用いて皮下に免疫化した。CpG及びMontanideの選択は、アジュバントとしてのそれらの有効性並びに種々の第II相及び第III相ヒトワクチン接種治験における臨床的安全性に基づいた(Kleinman et al., 1991; Kreig, 2007; Peek et al., 2008)。マカクを0、28、及び57日目に3回免疫化し、CBD1及びTetペプチドに対するELISAにより滴定するために、血清を0、15、28、43、57、71、86、及び98日目に回収した(表9、図11)。遊離の又は融合されたCBD1ペプチドを有するTet Tヘルパーエピトープの投与が、最初の免疫化から15日後という早期に全てのマカクの間で顕著に抗CBD1抗体応答を増強し、2回目の免疫化後にプラトーに達すると思われた。印象的なのは、第1組の免疫化試験における弱い及び非応答動物マカク、マカクM13246、M11635、及びM11450が、Tヘルパーペプチドの存在において非常に強いCBD1特異的な体液性応答を生成した。
【0195】
CBD1ペプチドと対照的に、各群における3匹の免疫化されたマカクの内のわずか1匹が、高レベルの抗Tetペプチド抗体を生成した(表9)。さらに、所与の免疫血清においてTet及びCBD1ペプチドに対する抗体価において直接的な相関はなかった。例えば、CBD1ペプチドに対して強い応答を生成したマカクM13246、M11635、及びM13450は、Tetペプチドに対して比較的低い又は無体液性応答を生成した。
【0196】
マカク免疫血清のHIV中和活性
初代HIV−1単離株による初代CD4+Tリンパ球の感染を阻害するマカク免疫血清の能力を試験した。一貫して、本発明者らは、そのような培養物におけるHIV−1感染が、対照マカク血清の<200倍希釈存在において30〜50%、免疫前又はアジュバント単独を用いて注射されたマカクからで増強されることを観察した。ウイルス産生に対するこの増強効果は、培養における初代ヒトTリンパ球細胞の増殖に及ぼすマカク血清の刺激効果に起因しうる。この理由のため、HIV感染に対するマカク免疫血清の阻害効果を、200及び400倍希釈でアッセイした。
【0197】
図12は典型的なウイルス中和実験の結果を示し、それにおいてTリンパ球のHIV−1感染が、3回目の免疫化から4週間後に得られたマカク免疫血清の非存在又は存在において行われた。ウイルス産生を、次に、感染後5日目の培養液においてHIV主要コアタンパク質p24の濃度を測定することによりモニターした。予想外に、遊離のCBD1及びTetペプチドを用いて免疫化された3匹のマカクの全てとは対照的に、Tet−KK−CBD1キメラペプチドを用いて免疫化された3匹のマカクの内のわずか1匹からの免疫血清がHIV−1中和活性を現した。
HIV−1阻害効果は、200倍希釈と比較し、400倍でより顕著であり、それはマカク血清のより高い希釈での固有の増強効果の完全な喪失に起因しうる。HIV−1感染の阻害の程度は、中和活性を現したマカクの免疫血清の400倍希釈で60〜75%であった(図13)。
【0198】
マカクM13246及びM13510免疫血清のHIV−1中和活性の欠如(図12)は、抗CBD1抗体の存在にもかかわらず(図11、表9)、中和抗体が全抗CBD1抗体の小さな割合に対応することを示唆する。これに従い、中和は、最初の免疫化後に、M13284、M13421、及びM13450免疫血清を用いて観察されなかったが、高力価な抗CBD1抗体が産生された。同様に、マカクM13284及びM13241における抗CBD1力価が、2回目の免疫化後にプラトーに達したが、それぞれの中和活性は、2回目の免疫化と比較し、3回目の後でより高かった(図13、表9)。
【0199】
マカク免疫血清の微細エピトープマッピング
キメラTet−KK−CBD1ペプチドと比較し、遊離のCBD1及びTetペプチドを用いて免疫化されたマカクにおいて誘導された免疫体液性応答を特徴付けるために、免疫血清の反応性を、種々のCBD1関連ペプチドに対して試験した:CBD1ペプチドのC末端部分に対応するC13Kペプチド、HIV−2におけるCBD1ペプチドホモログであるCBD2ペプチド、N及びC末端が改変されたアミノ酸残基内のカベオリン1結合モチーフとオーバーラップするアミノ酸配列を有する一連のペプチド、及びgp41の組換え調製物(図14)。これらの試験によって、中和及び非中和マカク免疫血清の交差反応性プロファイルにおける主要な違いが明らかになった。実際に、非中和免疫血清(マカクM13246及びM13510)を、種々のオーバーラップペプチドp6362、p6363、p6364、p6365、及びp9127並びに組換えgp41との強い交差反応性により、中和免疫血清(マカクM11635、M13421、M13450、及びM13284)から区別した。この広いスペクトルの交差反応性は特異的である。なぜなら、免疫血清のいずれもCBD2ペプチドと反応しなかったからである。これらの結果は、融合されたTet−KK−CBD1ペプチドよりむしろ、遊離のCBD1及びTetペプチドの同時免疫化が、中和抗体の生成に有利に働くことを説明する。
【0200】
CBD1又はTet−KK−CBD1免疫原に対して惹起された免疫血清でのELISAにおける注目すべき違いは、CBD1ペプチドの最後の12残基と同一であるアミノ酸配列を有するC13Kペプチドとの交差反応性である。図15は、それぞれ遊離の及び融合されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマカクM11635及びM13284における抗CBD1及び抗C13K抗体の産生の動態を示す。一貫して、Tet−KK−CBD1により誘導された抗体は、C13Kペプチドと強く交差反応した。これらの抗C13K反応性抗体は、抗CBD1反応性抗体の産生と比較し、免疫化の期間中に遅い時間に生成された(図15)。両方の免疫血清がHIV−1感染に対する中和活性を現したため、C13Kとの交差反応性の有意性をさらに研究しなければならない。興味深いことに、高力価C13K反応性抗体も、Tet−KK−CBD1を用いて免疫化されたウサギ、モルモット、及びマウスにおいて産生された(未発表の結果)。従って、N末端Tヘルパーエピトープの存在は、CBD1ペプチドに対する最終的な免疫応答に有意に影響を与える。この後者は、キメラTet−KK−CBD1ペプチドに関連して提示される場合、CBD1配列における代替HLAクラスIIアグレトープの生成により説明されうる。
【0201】
【表22】
【0202】
実施例10 − 特異的モノクローナル抗体(mAb)を生成することによるCBD1エピトープにおける複数のオーバーラップする中和決定基の存在の確認
中和抗体を誘導することができるペプチドワクチンは、部分的に、天然タンパク質における対応する領域の三次元構造を模倣する抗原エピトープの設計に依存しなくてはならない。
【0203】
Tヘルパーエピトープに融合されたCBD1ペプチド及びCBM由来ペプチドが、関連するCBM由来ペプチドと交差反応しないHIV中和抗体を誘発するという実証は、別々の及びオーバーラップする中和決定基の存在を示し、それらは恐らくはCBD1エピトープの動的立体構造の特徴の反映である。従って、CBD1ペプチド及びCBM由来ペプチドは、天然HIV−gp41タンパク質におけるCBD1エピトープの動的構造により生成される別々の柔軟な立体構造を模倣する能力を有する。これに従い、CBD1ペプチド及び異なるCBM由来ペプチドに対して惹起された中和免疫血清の混合物は、HIV−1感染に対する相乗的な中和活性をもたらす(表7及び8)。結果的に、同時にいくつかの別々の立体構造決定基に対する抗体の反応性は、強い中和活性をもたらす。
【0204】
CBD1エピトープにおけるオーバーラップする立体構造決定基の存在は、免疫原としてCBD1ペプチド並びに種々のCBD1及びCBM由来ペプチドを使用することによるモノクローナル抗体(mAb)の生成により確認される。全体で、19のmAbが、異なる程度のHIV−1中和活性に基づき単離された。これらのmAbは、種々のCBD1及びCBMベースのペプチドとの交差反応性によって11のサブグループに特徴付けられ、このように、CBD1エピトープにおける別々の立体構造決定基の存在を説明する。
【0205】
マウスの4連続の免疫化を、CBD1ペプチド、並びにCBD1及びCBM由来ペプチドを使用して行った。いくつかのモノクローナル抗体を単離し、gp41中のカベオリン1結合ドメインの種々のオーバーラップセグメントを含む種々のペプチドとの反応性について特徴付けた。単離mAbを、CBD1ペプチド並びに種々のCBD1及びCBMベースのペプチドとの反応性に従って、11の主なサブグループにグループ化することができる:CBD1(C17K)、C13K、CBD2、p62、C10M、K27M、K29K、K24W、K27W(G)、K30W(G)、及びK27W(表10)。
【0206】
【表23】
【0207】
ELISAにおける種々のペプチドCBD1(C17K)、C13K、CBD2、p6362、C10M、K27M、K29K、K24W、K27W、K27W(G)、及びK30W(G)との各mAbの反応性に基づき、決定基のペプチド配列を定義した(表11)。所与の配列であるが、異なるペプチドにおける反応する異なるmAbの能力は、同じ配列の別々の立体構造決定基との反応性を示す(表11)。これらの11のオーバーラップ決定基は以下である:IWNNMTWMQWDK(3つの立体構造における)、IWNNM(2つの立体構造における)、SLEQIWNNM(3つの立体構造における)、IWNNMTW(2つの立体構造における)、及びIWNNMTWMQW。
【0208】
【表24】
【0209】
mAb 1.1.1、1.1.2、E5.4、H18.1、81.4、及びU.13は、それぞれC13K、CBD2、K29K、K27Wの間で2つ、3つ、及び4つのペプチドとの反応性から推定された決定基IWNNMTWMQWDKの3つの別々の立体構造と反応する。
【0210】
mAb 4.1、16.2、及びH21.3は、それぞれC17K、K27M、及びC10Mの間で1つ、2つ、及び3つのペプチドとのそれらの反応性から推定された決定基SLEQIWNNMの3つの別々の立体構造と反応する。
【0211】
mAb 5B15、6B9、及びE5.1は、それぞれC17K、C13K、C10M、及びK27W(G)の間で2つ及び4つのペプチドとの反応性から推定された決定基IWNNMの2つの別々の立体構造と反応する。
【0212】
mAb N.1.1、N1.3、及びF1.1、F1.3、F6.4、及びH3.1は、ペプチドK27W(G)及びK30W(G)のいずれか1つ又は両方とのそれらの反応性から推定された決定基IWNNMTWの2つの別々の立体構造と反応する。
【0213】
mAb 9.1は、K27W又はK30W(G)ペプチドとのその強い反応性から推定された別々の決定基IWNNMTWMQWと反応する。
【0214】
CBD1ペプチド並びにCBD1及びCBMベースのキメラペプチドに対して惹起されたHIV中和mAbの単離によって、AIDSワクチン製剤のための効率的なB細胞エピトープとしてのCBD1エピトープの重要性が指摘される。
【0215】
mAbの大部分が、初代CD4+Tリンパ球培養物においてHIV−1 BZ167感染を阻害する能力を有し、ID50値は100〜500倍希釈の範囲である。図6に、mAb 1.1.1、5B15、6A14(F6.4ともいう)、及び6B9について得られた代表的な結果を示す。
【0216】
興味深いことに、CBD1エピトープに対するmAbは、HIV−1LTRの制御下に細菌のlacZ遺伝子を含むHeLa−CD4−LTR−lacZ細胞の単一サイクルのHIV感染を阻害する能力を有する(Nisole et al., 1999)。HIV侵入のこの実験モデルにおいて、mAbの中和活性が10〜100倍希釈で観察された(図7)。同様の実験条件下で、ヒトmAb 2F5が効果を有さなかったが、mAb 2F5がCD4+Tリンパ球において同じHIV−1単離株を阻害することに注意すべきである。mAb 2F5と比較し、抗CBD1 mAbによるHeLa P4細胞中へのHIV侵入の阻害におけるこの違いは、依然として明らかとなっていない。
【0217】
CBD1、CBD2、C13K、及びp6362ペプチドに対する各mAb調製物の力価を、図7におけるグラフの下に与える。本発明者らが種々の免疫血清を用いて観察していた通り、種々のmAbの抗体の力価は、HIV感染の阻害の程度に厳密に相関しない。この後者は、恐らくは、ELISAアッセイによって、特定の立体構造(天然gp41分子におけるCBD1エピトープの立体構造とわずかに異なりうる)を有しうる所与のペプチドとの反応性がモニターされるという事実に起因する。いずれの場合でも、CBD2ペプチドとの反応性の欠如は、しばしば、HIV感染に対するより低い阻害活性と相関する。mAb K29K3−2−4を産生するハイブリドーマは、CBD1ペプチドに対し特異的であるが、しかし、非常に低い力価のために選択された。このmAbは、40倍希釈でHeLa P4モデルにおけるHIV−1侵入を阻害するのに対し、それは75倍希釈でTリンパ球におけるHIV感染を阻害する。
【0218】
実施例11.AIDS患者における治療用ワクチンとしてのCBD1ペプチド、又はCBD1及びCBMベースのペプチドの適用
非常に低い割合のHIV−1感染者だけが、低いELISA力価を伴うCBD1ペプチドに対する抗体を有することが過去に示された(Hovanessian et al., 2004b)。この目的のために、ジスルフィドループを含むgp41における免疫原性エピトープ(ペプチド600〜612)及びgp41におけるカベオリン1結合ドメイン、即ち、CBD1エピトープ(ペプチド618〜633)に対するIgG抗体の存在をELISAにより試験した。ヒトHIV−1陽性及び陰性の血清を、1000倍希釈で試験した。450nm±S.D.(括弧中)で測定されたOD値の平均値を、各群(n=試験された血清の数)について与える。各アッセイでのカットオフ点を、各国からの30人の非HIV感染者からの血清を用いて決定した(Hovanessian et al., 2004b)。
【0219】
結果によって、HIV−1感染者からの非常に低い割合の血清だけがCBD1ペプチドと弱く反応するのに対し、免疫優性エピトープ(ペプチド600〜602)とのこれらの同じ血清の反応性が大きく上昇することが示された(表12)。
【0220】
【表25】
【0221】
血清がgp41免疫優性ペプチド(ペプチド600〜612)について全て高度に陽性である75人のHIV−1陽性者の別の集団において、わずか2つの血清が、ELISAにおいてCBD1ペプチド(C17K)について陽性であることが見い出された。これらの2つの血清の精密エピトープマッピングを、種々のオーバーラップCBD1及びCBMベースのペプチドを使用したELISAにより行った(表13)。
【0222】
これらの2つの血清を、CBD1、CBD2、p62、及びC10Mペプチド並びにCBD1ベースのペプチド:C13K、K29K、K27W、K24W、K23M、及びK27Mに対するIgG抗体の存在についてELISAにより試験した。これらの2つの血清の抗CBD1ペプチド抗体の力価は、それぞれ6,400及び12,800であった。各血清の力価は、ELISAにおいてOD値0.2を与える血清の希釈に対応した。結果を表13に示す。
【0223】
【表26】
【0224】
結果は、CBD1ペプチドについて陽性である2つの血清が、実際にそのN末端部分と反応することを示した。反応性は、保存されたカベオリン結合モチーフの種々のセグメントに対応するペプチドを用いて観察されなかった。
【0225】
これらの結果は、従って、HIV−1感染者が、保存されたカベオリン1結合モチーフ(CBM)(中和抗体の作用のためのCBD1エピトープにおける決定基である)に対して抗体を産生しないことを示す。HIV−1感染者におけるCBD1エピトープに対する天然抗体の産生の欠如は、N625のN結合グリコシル化に起因しうるが(Johnson et al., 2001)、それは免疫応答の生成を妨げうる(Rudd et al., 2001)。
【0226】
CBD1及びCBD1ベースのペプチドがマカクにおいて免疫原性を示し、中和抗体を産生するとの事実、及びいくつかの地域からのHIV−1感染者におけるCBD1エピトープに対する抗体の欠如から、CBD1ベースのワクチンがAIDS患者における治療用ワクチンとしての適用を有しうる。
【0227】
実施例12 − HIV/AIDSのためのワクチン候補としてのオーバーラップするCBD1ベースのペプチドの混合物の免疫原性及び有効性
実施例8(上)において、CBMベースのペプチドIWNNMTWMQW及びIWNNMTWは、Tヘルパーエピトープに融合された場合、初代Tリンパ球培養物においてHIV−1感染を中和することが可能である高力価なCBM特異的抗体を誘導することにより免疫原性であることが示された。所与のペプチドに対して惹起された中和免疫血清は、関連するCBM由来ペプチドと交差反応せず、このように、CBD1における別々の中和立体構造エピトープの存在を示唆する(表7)。CBD1におけるいくつかの別々のオーバーラップエピトープの存在は、CBM由来キメラペプチドに対して生成されたマウスモノクローナル抗体により確認された。
【0228】
これらの結果は、CBD1が、HIV−1に対する潜在的な中和抗体の標的を表すいくつかのオーバーラップB細胞エピトープを含むことを指摘する。これに従い、種々のペプチドに対して惹起された中和免疫血清の混合物は、HIV−1感染に対する相乗的な中和活性をもたらす(表8)。免疫血清の混合物における特異的抗体が、CBM内で同時に別々のエピトープと反応することにより強いHIV−1中和を発揮しうることが可能でありうる。それは、恐らくは、天然HIV−gp41タンパク質におけるCBD1の動的構造により生成される。
【0229】
従って、CBD1及びCBM(カベオリン1結合モチーフ)ベースのペプチドは、HIV−1のgp41におけるCBD1の別々の動的な立体構造を模倣し、このように、中和抗体の誘導を媒介する。このこと及びCBD1における別々のエピトープと反応する免疫血清の混合物により観察されるHIV中和における相乗作用が、CBM由来ペプチドキメラのカクテルがHIV−AIDS感染に対する効率的な体液性免疫応答を誘発するために、候補ワクチン製剤として考慮すべきであることを示唆する。
【0230】
この実施例において、マウスにおけるそのようなカクテル−ワクチン製剤の免疫原性について着手されており、免疫原性及び有効性試験が、現在、ヒトでの使用のために許容可能なアジュバントを使用し、カニクイザルにおいて評価されている。
【0231】
A.マウスにおけるCBD1ベースのカクテルペプチドの免疫原性
8匹のBALB/Cマウス(6〜8週齢)の2群を、完全フロイントアジュバント(CFA)を使用し、カクテルA及びカクテルBペプチド(以下で記載する)を用いて免疫化した。4回の皮下注射が1ヶ月間隔で投与された。
【0232】
カクテルAペプチド:C17K + K27W+ K24W + K30W/G + K27W/G(カクテル中の各ペプチドは80μg/マウス/注射であった)
【0233】
【表27】
【0234】
カクテルBペプチド:K27W+ K24W + K30W/G + K27W/G(カクテル中の各ペプチドは80μg/マウス/注射であった)
【0235】
【表28】
【0236】
Gag298−312の配列を伴う:K−R−W−I−I−L−G−L−N−K−I−V−R−M−Y(配列番号4)。
【0237】
A.1.カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスにおける体液性応答
4回目の免疫化から2週間後、免疫血清を、カクテルA及びカクテルBペプチドに対するELISAにより試験した。抗カクテルA及び抗カクテルB抗体の力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。ELISAのための実験条件を、上の方法のポイント2.1に記載した。結果を表14に提示する。マウスにおける個々のペプチドの免疫原性を、実施例8B及び表8に記載している。
【0238】
【表29】
【0239】
マウスの免疫血清におけるIgG1及びIgG2aサブクラス抗体の割合を、ヤギ抗マウスIgG1及びIgG2a抗体(Sigma)を使用して決定した。個々のマウスにおいてそれぞれのカクテル免疫原に対するELISAにより推定されるIgG2/IgG1比は、<0.04であった。
【0240】
各群の個々のマウスの間で抗体価の程度にいくらかの変動性があったが、抗体価は大きく上昇し、100,000〜2,000,000の範囲であった。マウスの免疫血清におけるIgG1及びIgG2aサブクラス抗体の割合に関する試験によって、カクテルA及びカクテルBペプチドに対して生成された免疫血清における抗体サブタイプは主にIgG1型であることが示され、その割合は種々の個々の免疫血清において>96%であった。Gag Tヘルパーエピトープは、免疫血清とTヘルパーエピトープペプチドGag298−312との反応性の欠如により説明される通り、免疫原性でないことにも注意すべきである(示さず)。
【0241】
カクテルA又はカクテルBのいずれかで一緒に投与された場合での個々のペプチドの免疫原性を次に研究した。この目的のために、4回目の免疫化から2週間後、マウスの各群における免疫血清を、個々のペプチド、即ち、C17K、K27W、K24W、K30W/G、及びK27W/Gペプチドに対するELISAにより試験した(カクテルAについては表15及びカクテルBについては表16)。各ペプチドに対する抗体力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。ELISAのための実験条件を、上の方法のポイント2.1に記載した。
【0242】
【表30】
【0243】
【表31】
【0244】
マウスを、カクテルAペプチドを用いて免疫化した場合、それらは全て高力価な抗C17K抗体を生成し、一方、K27W、K24W、K30W/G、及びK27W/Gペプチドに対する抗体の産生は異なる個人の間で変動した(表15)。これらの4つの後者のペプチドの内、1つのペプチドに対して高力価な抗体を産生する所与のマウスの能力は、他の3つのペプチドに対する体液性免疫応答を生成する能力と体系的に相関し、そのため、個々のペプチドのプロセシングが個々のマウスの間でわずかに異なりうることを示す。カクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスにおいて、カクテルB(K27W、K24W、K30W/G、K27W/G)の個々のペプチドに対して高力価な抗体を生成するマウスナンバー2の免疫血清は、C17Kペプチドと交差反応した(表16)。一般的に、K27W及びK24Wペプチドは、カクテルBで一緒に投与された場合、K30W/G及びK27W/Gペプチドよりも良好な免疫原であると思われた。
【0245】
それにもかかわらず、免疫血清とK30W/G及びK27W/Gペプチドとの低い反応性が、これらのペプチドの立体構造の結果でありうることに注意すべきである。最後に、表14及び15に提示する抗体価は、C17Kペプチドの非存在下において、K30W(G)及びK27W(G)ペプチドに対するカクテルBの投与により惹起された免疫応答が比較的弱いのに対し、K24W及びK27Wペプチドは依然として強い免疫原である。従って、カクテル免疫原におけるC17Kペプチドの存在は、K30W(G)及びK27W(G)ペプチドに対する抗体応答に有利に働きうる。
【0246】
A.2.カクテルA及びカクテルBペプチドをそれぞれ用いて免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清のHIV−1中和活性
4回目の免疫化から2週間後、各群の免疫血清を集め、CD4+Tリンパ球の初代HIV−1 BZ167(クレードB)感染を阻害する能力についてアッセイした。HIV−1の産生を、感染後5日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質p24の濃度を測定することによりモニターした(図18)。カクテルA及びカクテルBペプチドとのそれらの強い反応性と一致し(表14)、いずれかのカクテルペプチドに対して惹起された免疫血清が中和抗体を誘発し、それらは用量依存的な様式でHIV−1感染を阻害した(図18)。HIV−1 BZ167感染の50%阻害(ID50)を与えるカクテルA及びカクテルBプール血清希釈を、それぞれ300及び400倍希釈と推定した。
【0247】
カクテルA及びカクテルB免疫化マウスからのプール血清の中和効果を、HIV−1ワクチン候補を試験するために現在使用されるHIV−1単離株の国際パネルからのいくつかのHIV単離株を使用してさらに研究した:HIV−1 KNH1207(クレードA)、HIV−1Ba−L(クレードB)、HIV−1 US1(GS 004;クレードB)、HIV−1 56313(98US−PSC5016;クレードC)、HIV−1 98UG−57128(クレードD)。カクテルA及びカクテルB免疫化マウスからのプール免疫血清は、これらの異なるHIV−1単離株によるCD4+Tリンパ球のウイルス感染を阻害し、ID50値は150〜350倍希釈の範囲であった。ウイルス中和の例を、図19A及び19Bにおいて、CD4+Tリンパ球のHIV−1 KNH1207及びHIV−1 US1感染に対して提示する。
【0248】
B.カニクイザルにおけるCBD1ベースのペプチドカクテルワクチン製剤の免疫原性及び有効性
CBD1ベースのペプチドカクテルワクチン製剤の免疫原性及び有効性を、カニクイザルにおいて2相で評価した:
1.免疫化動物におけるカクテルワクチン製剤に対する体液性及び細胞性免疫応答をモニターすることによる;及び
2.HIV−1エンベロープ糖タンパク質を発現する複製能力のあるキメラサル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)免疫化動物を投与することによる。
【0249】
合計12匹のマカクが、この試験において使用された:
− 免疫原及びアジュバントを用いて免疫化された6匹のマカク;
− 対照PBS及びアジュバントを用いて注射された6匹の対照マカク;
【0250】
体重4〜6kgの成体雄カニクイザル(Macaca fascicularis)を、Mauritius繁殖コロニーから輸入し、非ヒト霊長類ケア(EEC指令N86−609、1986年11月24日)のための欧州ガイドラインに従って維持し、扱った。動物を、免疫化及び血液サンプルの採取のためにケタミン・クロルハイドレート(10〜15mg/kg)を用いて鎮静させた。免疫化は、アジュバントとして[CpG+Montanide ISA 51]で構成される混合物を使用した免疫原カクテルの皮下注射により行った。各々の免疫化のために、1容積のアジュバント混合物と1容積の免疫原からなる500μlを投与した。
【0251】
免疫原混合物のためのペプチドのカクテルは、以下であった:
【0252】
【表32】
【0253】
ペプチドを蒸留水中で4mg/mlで調製した(最初に、最終容積の10%のDMSOを用いて可溶化)。次に、ペプチドを集め、6匹のマカクに皮下注射するために(5回の免疫化のために)、CBD1カクテル免疫原において各ペプチドの正確な量を与えた。使用したアジュバントは、免疫増強剤[CpG ODN 10103、500μg/マカクで使用]を用いる送達系[Montanide ISA 50 VG、50%で使用]で構成される混合物であった。
【0254】
2相の試験:
第I相において、マカクは、0、4、10、16、及び22〜26週目に5回の皮下注射を受け、血漿又は血清、及びPBMCを免疫化から2及び4週間(及び適用可能な場合は6週間)後に回収し、ELISAにより抗体の力価を試験し、また、CBD1エピトープ特異的IFN−γ産生を、ELIspotアッセイを使用してモニターした。
【0255】
第II相において、6匹のワクチン接種されたマカク及び6匹の対照マカクを、最後のワクチン追加免疫から8〜10週間後にHIV−1R5エンベロープ糖タンパク質を発現するSHIV162P4を用いて直腸内経路により投与した。
【0256】
サルでの抗原投与後の経過観察は、ウイルス抗原に対するセロコンバージョンを試験すること、血漿(定量RT−PCRによる)及び細胞性(PBMCにおける定量PCR−DNA)ウイルス負荷をモニターすること、循環CD4+及びCD8+Tリンパ球をカウントすることを含む完全な血液学を含む。抗原投与後のT細胞免疫は、CBD1ペプチドを用いた及びSIV Gag p27抗原を用いたPBMCの特定刺激に応答したIFN−γ及びIL−4分泌を試験することによりモニターされうる。
【0257】
IFN−γ ELISpotアッセイ:
免疫化マカクにおけるCBD1ベースのペプチドに対する細胞性免疫応答を、示した日にサンプリングされたPBMCをCBD1ベースのペプチド(カクテル免疫原中)を用いて刺激することにより、先に記載した(上の方法のポイント2.5)IFN−γ ELISpotアッセイにおいてモニターする。IFN−γ ELISpotアッセイのために試験されるペプチドは以下である:C17K、K27W、K24W、Gag298−312:K−R−W−I−I−L−G−L−N−K−I−V−R−M−Y(配列番号4)、TetA830:A−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号2)及びgp120421−436:K−Q−I−I−N−M−W−Q−V−V−G−K−A−M−Y−A(配列番号3)(対照ペプチドとして)。
【0258】
C.種々のTヘルパーエピトープを使用したCBM由来ペプチドのカクテル
C13Kペプチド(CIWNNMTWMQWDK)(配列番号33)は、C17Kペプチドのより短いバージョンであり、それ自体は種々の動物において免疫原性を示さない。しかし、ジリシンリンカーを使用してTヘルパーエピトープペプチドと融合された場合、このC13Kペプチドは免疫原性を示す。従って、IWNNMTWMQWDK配列(配列番号23)に融合された、TヘルパーエピトープペプチドTetA830、gp120421−436、及びGag298−312でそれぞれ構成されるA30K、K29K、及びK30Kキメラペプチドは、高力価のHIV−1中和抗体を誘導する(実施例8A及び表5)。
【0259】
Tヘルパーエピトープペプチドのアミノ酸配列は以下:
1)破傷風毒素TetA830ペプチド、AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2);
2)HIV−1 gp120421−436ペプチド、KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3);及び
3)HIV−1 Gag298−312ペプチド、KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)
である。
【0260】
さらに、CBMベースのペプチドIWNNMTWMQW(配列番号51)及びIWNNMTW(配列番号50)がGag298−312Tヘルパーエピトープに融合された場合、初代Tリンパ球培養物においてHIV−1感染を中和することが可能である高力価のCBM特異的抗体を誘導する(実施例8)。結果的に、そのようなCBMベースのペプチドIWNNMTWMQW及びIWNNMTWは、最終的なMHC拘束を克服しうる免疫原を生成するために、TetA830及びHIV−1 gp120421−436Tヘルパーエピトープでキメラペプチドを構築するためにも使用されうる。キメラCBMベースのペプチドにおけるいくつかのTヘルパーエピトープの使用は、ヒト被険者におけるMHCクラスII分子の大部分を覆うために、考慮すべき重要なパラメータである。
【0261】
以下の相補的ペプチドは、HIVワクチンカクテル製剤中に含まれうるペプチドの例である。CBMベースのペプチドを有する共線形Tヘルパーエピトープは、上に記載する通りに、ジリシン(−KK−)リンカー及びGPGPGスペーサーを使用して合成されうる:
【0262】
【表33】
【0263】
【表34】
【技術分野】
【0001】
1.発明の属する技術分野
本発明は、破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを有するキメラペプチドに関する。これらのキメラペプチド又はタンパク質を含む組成物、並びにこれらのキメラペプチド又はタンパク質を含む薬学的な免疫原性組成物及びワクチンも本発明の部分である。HIV−1活性を中和する方法及びHIV−1活性に対する中和抗体を誘導するためのキメラペプチドの使用並びにHIV−1感染を処置する方法も開示される。
【0002】
2.発明の背景及び関連する先行技術
Pasteur Instituteでの1983年のBarre-Sinousi、Chermann、及びMontagnierによるLAVの発見及び単離以降、AIDSの大きな副作用のない有効な処置及び予防についての研究は困難なものであった。
【0003】
「高活性抗レトロウイルス治療」として当技術分野において公知である、逆転写酵素とHIVのプロテアーゼ酵素を標的とする薬物の組み合わせを用いてAIDS患者を処置することは、血中でのウイルス負荷を低レベルにするために有効である。
【0004】
そのため、1996年以降、抗レトロウイルス薬物、例えばジドブジン(AZT)、リトナビル、サキナビル、ラミブジン、アンプレナビル、アバカビル、インジナビル、ネルフィナビルなどを、一般的に、2つの逆転写酵素インヒビター及び1つのプロテアーゼインヒビターを使用した三剤治療において使用し、患者のHIV量を低下させた。しかし、これらの薬物のいずれも完全にはウイルスを除去しない。
【0005】
さらに、三剤治療に関連する重大な問題が残っている。HIV感染者が一定のスケジュールで一生にわたり薬物を服用しなければならないだけではないが、これらの薬物は非常に高価であるだけでなく(年10,000ドル又はそれ以上)、有毒である。それらの有毒な性質のため、抗レトロウイルス薬物は、嘔気、嘔吐、下痢、貧血、リポジストロフィー、糖尿病様の疾患、脆弱骨、しびれ、手又は足における刺痛又は疼痛、及び心疾患を含む周知の副作用を有する。これらの副作用の結果として、多くのAIDS患者がそれらの医薬の服用を止める。
【0006】
それらの有毒な効果の他、高度活性レトロウイルス治療での主要な課題の1つが薬物耐性である。HIVは常に突然変異することが周知であるため、何十億という新しいHIVウイルスが体内において毎日産生される。これらの突然変異はウイルスの一部分を変化させ、しばしば薬物を無効にする。抗レトロウイルス薬物の代替物は、HIVに対する有効なワクチンを開発することであろう。
【0007】
現在、優れたHIVワクチン製剤はT細胞応答を刺激し、抗HIV抗体を誘発する成分を有するべきであると広く考えられている。現在、T細胞応答を刺激するために設計された25を上回るHIVワクチンが臨床試験中である一方で、広域中和抗体及び/又はHIV−1の初代分離株による感染を阻害する抗体の産生を刺激することが可能であるワクチンは未だに記載されていない。そのため、初代HIV単離株を阻害する中和抗体を刺激することが可能であるワクチンの設計が、HIVワクチン研究の最優先事項の1つであると思われる(McMichael, 2006; Zwick and Burton, 2007)。
【0008】
外部エンベロープ糖タンパク質gp120が、中和抗体の開発のために広く研究されてきた。しかし、そのような抗体は、gp120の配列変動性の結果ある単離株にのみ特異的であり、そのため、限定された作用を有する;特に、それらは初代単離株を中和しない。代替戦略が、現在、受容体、共受容体結合部位、及び、また、CD4へのgp120の結合に続いて剥き出しになる潜在エピトープに対する中和抗体の刺激について評価されている(Lin and Nara, 2007; McMichael and Hanke, 2003)。gp120とは対照的に、膜貫通型エンベロープ糖タンパク質gp41は、保存ドメインがあるので研究対象に良い代替糖タンパク質を提供する。しかし、この場合における問題は、戦略的エピトープがgp120により覆われるうる、及び/又は潜在エピトープであると考えられることである(Wyatt and Sodroski, 1998)。例外は、中和ヒト抗体2F5及び4E10のエピトープを持つgp41外部ドメインのC末端半分である。gp41のサブユニットがワクチンの候補であると考えられてきた;しかし、N−HR及びC−HR領域に対して惹起された抗体が、生理学的条件下で非中和的であることが示された。同様に、中和ヒトモノクローナル抗体2F5及び4E10のエピトープに対する中和抗体を誘導する全ての試みが失敗している(Lin and Nara, 2007; Zwick and Burton, 2007)。
【0009】
全ての単一のHIV単離株において保存されているHIV−1膜貫通型エンベロープ糖タンパク質gp41中の戦略的エピトープが同定されている(Hovanessian et al., 2003, 2004a; Hovanessian et al., 2004b)。このエピトープ(CBD1エピトープと名付けられている)に対応する合成ペプチドが、次に、種々のTリンパ球及びマクロファージ向性HIV−1単離株並びにクレードA〜Gの初代単離株による初代CD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する抗体のウサギにおける産生を繰り返し誘発することが示された。
【0010】
免疫血清を用いてプレインキュベートされたウイルス粒子がそれらの感染性を失って、ウイルス産生培養物への免疫血清の添加は、欠陥ウイルス粒子の産生をもたらす(Hovanessian et al., 2004b)。カベオリン結合ドメインは、従って、HIV粒子上、及び、またウイルス感染細胞上に剥き出しになっている。抗CBD1抗体はHIV感染サイクルで2つの別々のステップで作用する:1)それらはHIV粒子による細胞の感染を予防する;及び2)それらはHIV産生細胞で原形質膜でgp41の凝集を起こし、gp120−gp41複合体を欠損したウイルス粒子の産生に導く。
【0011】
HIV−1 gp41の外部ドメインにおける高度に保存されたB細胞エピトープ、CBD1エピトープ、及び種々のHIV−1単離株を阻害する抗体の産生を誘発するこのエピトープに対応するペプチドの能力は、HIV/AIDSについての普遍的な合成B細胞エピトープワクチン候補の開発のための有望な展望を提供した(Hovanessian et al., 2003, 2004a; Hovanessian et al., 2004b)。
【0012】
しかし、より良好な免疫原性防御を提供する改良されたHIV−1ワクチンが依然として必要とされている。
【0013】
そのため、組成物、より具体的には、広域中和活性を誘導する免疫原性組成物及び/又はHIV−1の初代単離株による感染を阻害する抗体を提供することが本発明の目的である。
【0014】
哺乳動物において、HIV特異的な広域反応性中和抗体の誘導を誘発することが可能である普遍的なB細胞エピトープワクチンを提供することは、本発明の別の目的である。
【0015】
より大量に、及びより低いコストで作製することができる高精製ペプチドを含むワクチンを提供することは、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、種々のHIV−1単離株及びクレードの間で保存された性質のために、広域中和抗体を誘発する、より少ない副作用の免疫原性組成物を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、HIV感染個体における処置用ワクチンとして適用する免疫原性組成物又はワクチン製剤を提供することである。なぜなら、HIV感染個体は、天然抗CBD1抗体を産生する能力を欠くと思われるからである。
【0018】
本発明の別の目的は、組成物、医薬組成物、免疫原性組成物における、及びワクチンとして使用することができるキメラペプチド又はキメラタンパク質を提供することである。
【0019】
記載するペプチド及びキメラペプチドに対する抗体及び特にモノクローナル抗体は、本発明の別の目的である。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、HIV−1を中和する方法を提供することであり、前記方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、本発明の少なくとも1つのキメラペプチドを投与することを含む。HIV−1を中和する際に使用するための本発明の少なくとも1つのキメラペプチドも開示される。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、HIV−1を中和することができる抗体を誘導するための方法であり、前記方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、Tヘルパーエピトープを含む少なくとも1つのペプチドと共に、本発明の少なくとも1つのペプチドを投与することを含む。
【0022】
HIV−1に対する中和抗体を誘導するための医薬の製造のための本発明に記載される少なくとも1つのキメラペプチドの使用は、本発明のさらに別の目的である。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、HIV−1感染を予防するための少なくとも1つのキメラペプチドの使用である。
【0024】
これら並びに他の態様及び目的は、本発明により達成され、本発明の概要、好ましい実施態様の記載、及び請求の範囲により証明される通りである。
【0025】
発明の概要
本発明は、このように、Tヘルパーエピトープペプチドに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン(CBD1)又はCBD1の変異体を含むキメラペプチドに関する。別の態様において、本発明は、破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120からなる群より選択されるTヘルパーエピトープペプチドに融合された、HIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン又はCBD1の変異体を含むキメラペプチドに関する。
【0026】
本発明の別の態様において、キメラペプチドにおけるHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインは、SLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)からなる又は本質的になる。
【0027】
さらに別の態様において、キメラタンパク質におけるTヘルパーエピトープペプチドは、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)からなる又は本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)からなる又は本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)からなる又は本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである。
【0028】
本発明のキメラペプチドは、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリンリンカー(GPGPG)を有し、それはカベオリン1結合ドメインgp41ペプチドをTヘルパーエピトープに結合する。
【0029】
さらに別の態様において、本発明は、
【表1】
及びその混合物、並びに
【表2】
及びその混合物、並びに前述のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチドを提供する。本発明は、また、以下:C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M−T−W−M−Q−W−D−K(配列番号31)、C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M(配列番号32)及びC−S−L−E−Q−I−A−N−N−M−T−A−M−Q−A−D−K(配列番号39)のペプチドに関する。
【0030】
配列番号2〜4の少なくとも1つに融合された、配列番号5〜25の、配列番号31〜38及び52〜59の、並びに配列番号39の少なくとも1つのキメラペプチド、及び配列番号22〜24のペプチド、又は配列番号1、26〜30の少なくとも1つのペプチドの少なくとも1つ及びそれらの混合物に対する抗体、特にモノクローナル抗体も本発明の別の態様を形成する。
【0031】
少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチド又は複数のキメラペプチド、又は本明細書に記載する抗体もしくはモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む組成物も本発明のさらに別の態様である。
【0032】
さらに別の態様において、少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチドもしくは複数のキメラペプチド又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む免疫原性組成物又は医薬組成物を提供する。
【0033】
少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチドもしくは複数のキメラペプチド又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含むワクチンは、本発明のさらに別の態様を形成する。
【0034】
そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチド又は複数のキメラペプチド及びその混合物を投与すること、次にTヘルパーエピトープをさらに投与すること(又はその逆)を含む、HIV−1感染を処置する又はHIV−1活性を中和するための方法は、本発明のさらに別の態様である。
【0035】
医薬としての使用のため、又はHIV−1の中和における使用のため、又はAIDS及びHIV−1感染の症状の処置における使用のための本明細書に記載する1つのキメラペプチド、もしくは複数のキメラペプチド、又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体は、本発明の別の態様である。
【0036】
HIV−1を中和又は処置するための医薬の製造のため、又はHIV−1感染についての予防としての、少なくとも1つのキメラペプチド、又は好ましくは本明細書に記載する1つのキメラペプチド、又は複数のキメラペプチド又は本明細書に記載する抗体、特にモノクローナル抗体は、本発明のさらに別の態様である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1はHIV−1 gp41の模式図であり、保存されたカベオリン結合モチーフ(WXXXXWXXW;配列番号41)の位置を示す。gp41外部ドメインの重要な機能ドメインは以下である:HIV標的細胞の膜に挿入される融合ペプチド(FP);原形質膜における足場に関与する膜貫通領域(TM)、コイルドコイルを特徴とする2つの疎水性7個繰り返しドメイン(N−HR及びC−HR)、FPと連携すると思われるTM(P−TM)に隣接する保存されたトリプトファンリッチドメイン。P−TM(LWYIK)の最後の5つのアミノ酸はコレステロールに結合する。P−TMは、また、2つの広域中和ヒトモノクローナル抗体(それぞれ2F5及びmAb 4E10)のコアとなる代表的なELDKWA及びNWFDITエピトープを含む。合成ペプチドT−20は、gp41媒介性の融合プロセスのインヒビターとして臨床において使用される。CDは細胞質内ドメインを表す。参考文献については、(Rey-Cuille et al., 2006)を参照のこと。
【図2】図2は、種々のHIV−1単離株由来の、gp41の外部ドメインにおけるCBD1ドメインの保存された配列である。CBD1ペプチドの配列は、以下のアミノ酸に対応する:Ser−Leu−Glu−Gln−Ile−Trp−Asn−Asn−Met−Thr−Trp−Met−Gln−Trp−Asp−Lys。CBD1は、gp41外部ドメインにおけるコンセンサス配列中のアミノ酸残基618−633に位置付けられる。カベオリン結合モチーフにおける3トリプトファン残基(ボールド体のW)は、HIV−1の850超の単離株の間で保存されている。保存率が、一部のアミノ酸残基について角括弧内に与えられ、他については、最も高頻度なアミノ酸が角括弧内に与えられる。625NMT627配列は、恐らくはN結合グリコシル化部位(N−X−T)の存在のために高度に保存されており、それはgp41外部ドメインにおけるN結合グリコシル化部位の1つである。CBD1ペプチドにおける他の残基、S618/M629/Q630/D632は90−97%保存されているのに対し、E620/Q621/N624/K633は若干可変性であるが、しかし、それらの変動は大部分が半保存的である。比較的保存されたM626残基は、HIV−1 O型におけるLである。
【図3】図3は、非免疫原性対応物と比較して免疫原性を示すTヘルパー及びB細胞エピトープを含む、配列のその部分を例示する3つのCBD1又はCBD1ベースのペプチドの配列である。
【図4】図4は、5回目の免疫化の10日後にアジュバントとしてCFAを使用した免疫化マウスにおける抗CBD1キメラペプチド抗体での結果を示すグラフである。免疫血清を、CBD1(C17K)及びC13Kペプチドに対するELISAにより滴定した。縦軸は、CBD1(C17K)ペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたOD値である。横軸は、種々のペプチドを用いて免疫化されたマウス群を示す。
【図5】図5は、5回目の免疫化の10日後にアジュバントとしてCFAを使用した免疫化マウスにおける抗C13Kキメラペプチド抗体での結果を示すグラフである。免疫血清を、C13Kペプチドに対するELISAにおいて滴定した。縦軸は、C13Kペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたOD値である。横軸は、種々のペプチドを用いて免疫化されたマウス群を示す。
【図6】図6は、CBD1(C17K)ペプチド及びCBD1ベースのペプチドに対して惹起されたモノクローナル抗体によるHIV−1感染の中和を示すグラフである。HIV−1 BZ 167を、初代CD4+Tリンパ球の感染の前に、37℃で45分間、各々のモノクローナル抗体調製物の種々の希釈物(PBS中)でインキュベートした。結果を、200及び400倍希釈でのモノクローナル抗体1.1.1、5B15、6A14(F6.4ともいう)、及び6B9について提示する。ウサギL血清をCBD1ペプチドに対して惹起された。HIV−1産生を、感染後5日目に、培養液中のp24濃度をモニターすることにより観測した。
【図7A】図7Aは、CBD1(C17K)エピトープに対して惹起されたモノクローナル抗体のHIV−1中和活性を示すグラフである。HIV−1 BZ 167を、HeLa P4細胞の感染の前に、37℃で45分間、各々のモノクローナル抗体調製物の種々の希釈でインキュベートした。βガラクトシダーゼの活性を感染後48時間に測定した。破線は、50%阻害効果のODを与える。CBD1、CBD2、C13K、及びp62ペプチドに対するELISAにおける各々のモノクローナル抗体調製物の力価を、下記の各々のグラフに与える。
【図7B】図7Bは、CBD1(C17K)エピトープに対して惹起されたモノクローナル抗体のHIV−1中和活性を示すグラフである。HIV−1 BZ 167を、HeLa P4細胞の感染の前に、37℃で45分間、各々のモノクローナル抗体調製物の種々の希釈物でインキュベートした。βガラクトシダーゼの活性を感染後48時間に測定した。破線は、50%阻害効果のODを与える。CBD1、CBD2、C13K、及びp62ペプチドに対するELISAにおける各々のモノクローナル抗体調製物の力価を、下記の各々のグラフに与える。
【図8】図8は、ウサギ、モルモット、及びマウスにおいてCBD1(C17K)ペプチドに対して惹起された免疫血清の精密エピトープマッピングを示すグラフである。2匹の動物の群を、説明文に記載するCBD1ペプチドを用いて免疫化した。5回目の免疫化から10日後に、免疫血清を、CBD1(C17K)、C13K、CBD2、p6362(p62ともいう)、p6364、及びp6365ペプチドに対するELISAにより試験した。CBD1ペプチドとの反応に対する各々のペプチドとの反応率を、種々のペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたOD値を考慮に入れて与える。
【図9A】図9Aは、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)のいずれかで免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫を示すグラフである。マカクを、実施例9に記載する[MF59 + MDP−Lys(L18)]を使用し、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化した。応答が、IFN−γ ELISpotアッセイにおいてCBD1(C18K)ペプチドを用いて、示した週(横軸)にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。結果を、試験に含まれた動物由来のPBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)数として表わす。13504及び13535は、それぞれi.d.及びi.m.経路によりアジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]単独(ペプチド無し)で注射された対照動物である。垂直の矢印はワクチン接種の週数を示す。
【図9B】図9Bは、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)のいずれかで免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫を示すグラフである。マカクを、実施例9に記載する[MF59 + MDP−Lys(L18)]を使用し、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化した。応答が、IFN−γ ELISpotアッセイにおいてCBD1(C18K)ペプチドを用いて、示した週(横軸)にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。結果を、試験に含まれた動物由来のPBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)数として表わす。13504及び13535は、それぞれi.d.及びi.m.経路によりアジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]単独(ペプチド無し)で注射された対照動物である。垂直の矢印はワクチン接種の週数を示す。
【図9C】図9Cは、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)のいずれかで免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫を示すグラフである。マカクを、実施例9に記載する[MF59 + MDP−Lys(L18)]を使用し、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化した。応答が、IFN−γ ELISpotアッセイにおいてCBD1(C18K)ペプチドを用いて、示した週(横軸)にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。結果を、試験に含まれた動物由来のPBMC100万個当たりのスポット形成細胞(SFC)数として表わす。13504及び13535は、それぞれi.d.及びi.m.経路によりアジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]単独(ペプチド無し)で注射された対照動物である。垂直の矢印はワクチン接種の週数を示す。
【図10A】図10Aは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。マカクを、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を用いた皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)経路を介して、0、4、8、12、及び16週目にCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。垂直の矢印はワクチン接種の日数を示す。24週間にわたり2週間間隔で採取した放血からの免疫血清を、CBD1(C18K)ペプチドに対するELISAによりアッセイした。力価は、OD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。CBD1(C18K)ペプチドとの反応性は、アジュバント単独を用いて注射された対照マカクからの血清では観察されなかった(示さず)。*マカクM13284及びM11321は、CBD1ペプチドに対するT細胞応答を示した(図9に提示する)。
【図10B】図10Bは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。マカクを、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を用いた皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)経路を介して、0、4、8、12、及び16週目にCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。垂直の矢印はワクチン接種の日数を示す。24週間にわたり2週間間隔で採取した放血からの免疫血清を、CBD1(C18K)ペプチドに対するELISAによりアッセイした。力価は、OD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。CBD1(C18K)ペプチドとの反応性は、アジュバント単独を用いて注射された対照マカクからの血清では観察されなかった(示さず)。*マカクM13284及びM11321は、CBD1ペプチドに対するT細胞応答を示した(図9に提示する)。
【図11A】図11Aは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。この組の免疫化は、最初の試験でのマカクの5回目の注射から4ヶ月後に開始された。マカクの両群を、アジュバントとして混合物[CpG+Montanide ISA 51]を使用し、遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド(200μg+150μg)又はTet−KK−CBD1(350μg)を用いて皮下に免疫化した。マカクを0、28、及び57日目に免疫化した(矢印により示す)。0、15、28、43、57、71、86、及び98日目の血清を、CBD1(C18K)及びTetペプチドに対するELISAにより滴定した。力価は、ELISAにおいてOD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。
【図11B】図11Bは、CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクの血清における抗CBD1抗体価を示すグラフである。この組の免疫化は、最初の試験でのマカクの5回目の注射から4ヶ月後に開始された。マカクの両群を、アジュバントとして混合物[CpG+Montanide ISA 51]を使用し、遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド(200μg+150μg)又はTet−KK−CBD1(350μg)を用いて皮下に免疫化した。マカクを0、28、及び57日目に免疫化した(矢印により示す)。0、15、28、43、57、71、86、及び98日目の血清を、CBD1(C18K)及びTetペプチドに対するELISAにより滴定した。力価は、ELISAにおいてOD値≧0.1を与える抗CBD1ペプチド抗体の希釈に対応する。
【図12】図12は、マカク免疫血清によるHIV−1感染の中和を示すグラフである。遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド[Tet+CBD1]又は共有結合したTet−KK−CBD1(C18K)ペプチドを用いて免疫化したマカクからの免疫血清(86日目に放血)を、200及び400倍希釈(それぞれヒストグラム1及び2)で初代CD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する能力について試験した。縦軸は、感染後5日目でのELISAによる主要ウイルスコアタンパク質p24の濃度を測定することによりモニターされたHIV−1の産生(ng/ml)を与える。PISは、マカク13450の免疫前血清を表す。PBSは対照感染を表わし、そこではリン酸緩衝食塩水を希釈血清の代わりに加えた。破線はHIV−1産生の50%阻害を表す。
【図13】図13は、遊離CBD1(C18K)及びTetペプチド又は融合Tet−KK−CBD1(C18K)ペプチドを用いた免疫化後のマカクからの連続放血の抗HIV活性を示すグラフである。1回目、2回目、及び3回目の免疫化(それぞれヒストグラム1、2、及び3)から2週間後に対応する15、43、及び71日目での放血を、400倍の血清希釈で初代CD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する能力について試験した。ヒストグラムCが対照感染を表わすのに対し、ヒストグラムBは免疫化前(0日目)の血清サンプルを表わす。
【図14】図14は、遊離の又はTヘルパーエピトープに融合されたCBD1(C18K)ペプチドに対してマカクにおいて惹起された免疫血清の交差反応性プロファイルを示すグラフである。3回目の免疫化から4週間後(86日目)の免疫化されたマカクからの免疫血清を、CBD1(gp41におけるアミノ酸残基618−633)、C13K、CBD2、p6362、p6363、p6364、p6365、p9127、及び組換えgp41(アミノ酸残基586−682)に対するELISAにより試験した。種々のペプチドに対する免疫血清の8,000倍希釈で観察されたOD値を使用し、CBD1ペプチドとの反応性により各々のペプチドの反応性を割ることにより算出された比×100により得られた交差反応性を推定した。免疫血清はCBD2ペプチドと交差反応しなかった。
【図15A】図15Aは、遊離の又はTetペプチドと融合されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマカクにおける抗CBD1及び抗C13Kペプチド抗体の動態を示すグラフである。遊離[CBD1+Tet]及びTT−KK−CBD1ペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマカクM11635及びM13284からの異なる日の免疫血清を、CBD1及びC13Kペプチドに対するELISAにより試験した。縦軸は、OD値≧0.1を与える免疫血清の希釈に対応する、抗CBD1(暗いヒストグラム)及び抗C13K(明るいヒストグラム)抗体の力価を与える。
【図15B】図15Bは、遊離の又はTetペプチドと融合されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマカクにおける抗CBD1及び抗C13Kペプチド抗体の動態を示すグラフである。遊離[CBD1+Tet]及びTT−KK−CBD1ペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマカクM11635及びM13284からの異なる日の免疫血清を、CBD1及びC13Kペプチドに対するELISAにより試験した。縦軸は、OD値≧0.1を与える免疫血清の希釈に対応する、抗CBD1(暗いヒストグラム)及び抗C13K(明るいヒストグラム)抗体の力価を与える。
【図16】図16は、CBD1(C17K)ペプチド及びCBD1ベースのペプチドに対して惹起された免疫血清によるHIV−1感染の阻害を示すグラフである。種々のペプチド(CBD1(C17K)、K27W、K24W、K27W(G)、K30W(G);横軸)を用いて免疫化された個々のマウスからの免疫血清(放血5)を、表4の説明文に記載した通りに、HIV−1感染を阻害する能力について試験した。HIV−1 BZ 167を、初代CD4+Tリンパ球の感染の前に、37℃で45分間、各々の免疫血清(それぞれヒストグラム1及び2)の200倍及び800倍希釈でインキュベートした。ヒストグラムCは、2つの免疫前血清を200倍希釈で使用した対照感染を表わす。混合物は、1/1/1/1/1比のCBD1(C17K)、K27W、K24W、K27W(G)、及びK30W(G)ペプチドを用いて免疫化されたマウスからのプール血清を表す。免疫血清の混合物を、200、800、1600、及び3200倍希釈(それぞれヒストグラム1、2、3、及び4)で試験した。破線はHIV−1感染の50%阻害を表す。
【図17A】図17Aは、CBD1(C17K)又はCBMベースのペプチドに対して惹起されたマウス免疫血清を用いて処理されたHIV−1感染培養物における感染が低下したウイルス粒子の産生を示すグラフである。(A)培養上清におけるp24の濃度により測定されたHIV−1産生。CD4+Tリンパ球をHIV−1BZ167を用いて感染させ、そして2日後、それらを、種々のペプチド:CBD1(C17K)、K27W、K24W、K27W(G)、K30W(G)(ヒストグラム1及び2にそれぞれ示す通り200及び800倍希釈)を用いて免疫化された個々のマウスからの免疫血清(放血S5)を用いて処理した。感染後5日目に、HIV−1の産生を、ビリオンp24(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。
【図17B】図17Bは、CBD1(C17K)又はCBMベースのペプチドに対して惹起されたマウス免疫血清を用いて処理されたHIV−1感染培養物における感染力が低下したウイルス粒子の産生を示すグラフである。(B)免疫血清の存在において産生されたHIV−1粒子の感染性は低い。感染CD4+Tリンパ球からの培養上清を感染後5日目(セクションAに記載されている通り)に培養物から回収し、10倍希釈し、HeLa P4C5細胞を使用することによる1回感染性アッセイにおいてビリオン感染性について試験した。ヒストグラム上の図中の線は、ウイルス感染の非存在において生じるバックグラウンドレベルを示す。3連サンプルでの平均±SDを示す。
【図18】図18は、カクテルA及びカクテルBペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清のHIV−1 BZ167中和活性を示すグラフである。8匹のマウスの2群を、アジュバントとしてCFAを使用したカクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化した。4回の皮下注射投与を1ヶ月間隔で行った。4回目の免疫化から2週間後、各群の免疫血清の50〜100μlの一定分量を集め、10ng/mlのp24抗原等価物でCD4+Tリンパ球の初代HIV−1 BZ167(クレードB)感染を阻害する能力についてアッセイした。プール血清を100、200、400、及び800倍希釈で使用した。HIV−1の産生を、感染後5日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。3連サンプルでの平均を示す。ヒストグラムC1及びC2は、免疫前血清を100倍希釈で使用した対照感染を表わす。HIV−1 BZ167感染の50%阻害(ID50)を与えるカクテルA及びカクテルBプール血清希釈を、それぞれ300及び400倍希釈と推定した。ヒト末梢単核細胞(PBMC)に由来するCD4+Tリンパ球の感染は、パラグラフ「方法」の2.3に記載する通りであった。
【図19A】図19Aは、HIV−1 KNH1207及びHIV−1 US1に対するカクテルA及びカクテルBペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清の中和活性を示すグラフである。8匹のマウスの2群を、テキストにおいて及び図18の説明文に記載される通りに、カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化した。カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスからのプール血清を、HIV−1ワクチン候補を試験するために現在使用されているHIV−1単離株の国際パネル[AIDS Research and Reference Program, Division of AIDS, NIAID, NIHから得られる]の2つ:HIV−1 KNH1207(クレードA)(A)及びHIV−1 US1(クレードB)(B)によるCD4+Tリンパ球の感染を阻害する能力についてアッセイした。ウイルス感染はp24抗原等価物50ng/mlで、プール血清を100、200、400、及び800倍希釈で使用した。HIV−1の産生を、感染後7日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。ヒト末梢単核細胞(PBMC)に由来するCD4+Tリンパ球の感染は、パラグラフ「方法」の2.3に記載する通りであった。
【図19B】図19Bは、HIV−1 KNH1207及びHIV−1 US1に対するカクテルA及びカクテルBペプチドを用いてそれぞれ免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清の中和活性を示すグラフである。8匹のマウスの2群を、テキストにおいて及び図18の説明文に記載される通りに、カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化した。カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスからのプール血清を、HIV−1ワクチン候補を試験するために現在使用されているHIV−1単離株の国際パネル[AIDS Research and Reference Program, Division of AIDS, NIAID, NIHから得られる]の2つ:HIV−1 KNH1207(クレードA)(A)及びHIV−1 US1(クレードB)(B)によるCD4+Tリンパ球の感染を阻害する能力についてアッセイした。ウイルス感染はp24抗原等価物50ng/mlで、プール血清を100、200、400、及び800倍希釈で使用した。HIV−1の産生を、感染後7日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質(ng/ml、縦軸)の濃度を測定することによりモニターした。ヒト末梢単核細胞(PBMC)に由来するCD4+Tリンパ球の感染は、パラグラフ「方法」の2.3に記載する通りであった。
【0038】
発明の好ましい実施態様
本明細書において使用する「キメラペプチド」又は「融合タンパク質」は互換的に使用され、このペプチド又はタンパク質は、自然では一緒に連結されない2つ又はそれ以上のペプチド配列を連結することにより作製されることを意味する。キメラペプチドは、わずか50のアミノ酸、又はわずか40のアミノ酸、又はわずか30のアミノ酸、又はわずか25のアミノ酸、又はわずか20のアミノ酸のサイズを有する。一般的に、キメラペプチドは、50〜50のアミノ酸残基又は5〜40のアミノ酸残基又は5〜30のアミノ酸残基又は5〜20のアミノ酸残基又は10〜50のアミノ酸残基又は10〜40のアミノ酸残基又は10〜30のアミノ酸残基又は10〜20のアミノ酸残基を有する。
【0039】
一実施態様において、本発明のキメラペプチドは化学的に合成される。従って、本発明のキメラペプチドは、翻訳後修飾を持たず、特にそのアミノ酸残基はグリコシル化により修飾されない。別の態様において、NTXモチーフ(図2のペプチドの残基625〜627)はグリコシル化さない。
【0040】
いくつかのキメラペプチドは、本明細書に記載するものである。「いくつか」は、1〜20、1〜10、1〜8、又は1〜5のキメラペプチドを意味する。
【0041】
本明細書において使用する「融合された」という用語は、2つのペプチドが連結されて単一のペプチドを形成するように連結されることを意味する。ペプチドは、種々の結合を通じて化学的に又はペプチド結合により遺伝的に連結又は融合させることができる。
【0042】
本明細書において使用する「予防」という用語は、HIV−1について又はHIV感染に対する予防又は防御的処置を意味する。
【0043】
本明細書において使用する「処置する」という用語は、HIV−1ウイルスを減弱させることを意味する。この点において、HIV−1ウイルスの量は、処置をしない場合と比較して50%超減少する。別の態様において、HIV−1ウイルスの量は、処置をしない場合と比較して75%超減少する。さらに別の態様において、HIV−1ウイルスの量は、処置をしない場合と比較して100%減少する。
【0044】
本明細書において使用する「中和抗体」という用語は、ウイルスの複製サイクルがウイルス感染の初期段階において阻害される、もしくは、ウイルス放出が遮断されるような方法でHIV−1粒子に影響を与える、又は、感染性のない欠陥ウイルス粒子の産生を起こすモノクローナル又はポリクローナルのいずれかの抗体を意味する。
【0045】
「エピトープ」及び「決定基」という用語は互換的に使用され、抗体の抗体結合部位により特異的に結合される抗原性分子(例、ペプチド)の部分を定義する。エピトープという用語は、連続アミノ酸が抗体により認識される線形エピトープ、並びに、適切な立体配置又は立体構造をとる範囲で、抗体がアミノ酸を認識する立体構造エピトープの両方を包含する。結果的に、一部のエピトープにおいて、立体構造(三次元構造)はアミノ酸配列(一次構造)と同じくらい重要である。
【0046】
本明細書において使用する「特異的に」という用語は、抗原の抗体認識に言及する場合、無関係のペプチド、即ち、CBD1ドメインに関連又は由来しないペプチドと交差反応が起こらないことを意味する。
【0047】
本明細書において使用する「哺乳動物」は、皮膚が毛で覆われ、雌においては、仔を育てるための乳汁を産生する乳線を特徴とする、哺乳類(ヒトを含む)の種々の温血脊椎動物のいずれかを意味する。
【0048】
「受動ワクチン」という用語は、個体への投与時にHIV感染に対して一時的な防御を与えるワクチンを意味する。
【0049】
本明細書において使用する「HIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン」又は「CBD1」は、配列番号1(Ser−Leu−Glu−Gln−Ilo−Trp−Asn−Asn−Met−Thr−Trp−Met−Gln−Trp−Asp−Lys)で定義され、図2において提示される、gp41外部ドメインにおけるコンセンサス配列のアミノ酸残基618〜633からなるペプチドを意味する。CBD1ドメイン又はCBD1変異体を含む又はそれから本質的になるペプチドは、全長gp41ペプチド並びに全長HIV−1エンベロープ(gp160)を除外する。
【0050】
本明細書において使用する「ペプチド変異体」は、一端又は両端でのアミノ酸残基の付加により修飾された、及び/又はアミノ酸残基の置換、特に半保存的置換により修飾されたペプチドを意味する。従って、変異体は、その特定の連続配列[配列識別番号(配列番号)で定義される]が、1〜6の追加アミノ酸(1、2、3、4、5、又は6残基)を、これらの追加アミノ酸がHIV−1活性に対する中和抗体を誘導する能力に影響を与えないという条件で、その配列番号により特定される特定配列の一端又は両端のいずれかに含めることができるペプチドである。残基のそのような付加は、ペプチドの配列に関する、「本質的になる」という用語により包含される。ペプチド変異体は、先の定義の代わりに又はそれと組み合わせて、アミノ酸置換がHIV−1活性に対する中和抗体を誘導する能力に影響を与えないという条件で、その1〜6のアミノ酸(1、2、3、4、5、又は6)が他の半保存的アミノ酸残基により置換されたペプチドも意味する。例えば、非極性(即ち、疎水性)アミノ酸残基はアラニン(Ala又はA)、ロイシン(Leu又はL)、イソロイシン(Ile又はI)、バリン(Val又はV)、プロリン(Pro又はP)、フェニルアラニン(Phe又はF)、トリプトファン(Trp又はW)、及びメチオニン(Met又はM)を含む;極性中性アミノ酸残基はグリシン(Gly又はG)、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、システイン(Cys又はC)、チロシン(Tyr又はY)、アスパラギン(Asn又はN)、及びグルタミン(Gln又はQ)を含む;正電荷を持つ(即ち、塩基性)アミノ酸残基はアルギニン(Arg又はR)、リシン(Lys又はK)、及びヒスチジン(His又はH)を含む;並びに負電荷を持つ(即ち、酸性)アミノ酸残基はアスパラギン酸(Asp又はD)及びグルタミン酸(Glu又はE)を含む。
【0051】
本明細書において使用する「CBD1変異体」、「CBD1由来のペプチド」、及び「CBD1ベースのペプチド」という用語は互換的に使用され、先のパラグラフにおいて定義する通り、CBD1の変異体を意味する。そのようなCBD1変異体の例は、その配列がXnSLEQIWNNMTWMQWDKXm(配列番号25)からなるペプチドを含み、ここで、nが6つの追加アミノ酸を超えないという条件で、Xが任意のアミノ酸であり、n及びmが独立して0〜6の整数である。CBD1変異体の別の例は、その配列が配列番号1に対応するペプチドを含み、それにおいて、以下の表の位置の内の1〜6のアミノ酸残基(1、2、3、4、5、又は6)が置換されている。位置623、628、及び631におけるトリプトファン残基が置換されていることを除く(図2)。
【0052】
【表3】
【0053】
より具体的には、本発明は、Tヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドに関する。
【0054】
HIV−1 gp41(CBD1)ペプチドのカベオリン1結合ドメインは、当技術分野において公知であり、EP 1 466 924に記載される。この結合ドメインの合成ペプチドは、アミノ酸位置618〜633からのHIV−1のgp41中の領域に対応する、SLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)のアミノ酸配列を有する(Hovanessian et al., 2004)。WNNMTWMQW(配列番号26)の別々の結合モチーフが、全ての単一のウイルス単離株において保存されている(Hovanessian et al.,上記)。
【0055】
そのため、本発明のキメラペプチドはCBD1ペプチド及びまたCBD1変異体を含む。これらのペプチド変異体は、WNNMTWMQW(配列番号26)の別々の結合モチーフの全て又は一部分を保持し、それにおいてトリプトファン残基の1〜3が保持される。そのため、本発明の変異体の1つがアミノ酸配列XnWNNM(配列番号27)を有し、ここでXは任意のアミノ酸であり、nは1〜6(1、2、3、4、5、又は6)の数である。別の実施態様において、本発明の変異体は配列:XnWNNMTW(配列番号28)を有し、ここでXは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である。さらに別の態様において、本発明の変異体は配列:XnWNNMTWMQWZp(配列番号29)を有し、ここでX及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である。
【0056】
別の実施態様において、本発明はキメラタンパク質に関し、それにおいてCBD1ペプチド変異体はアミノ酸XnWNNMTWMQWZ(配列番号30)を有し、ここでXは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−K(即ち、Asp−Lys)である。
【0057】
本発明のキメラタンパク質は、上に記載した通り、Tヘルパーエピトープペプチドに融合されたCBD1ペプチド又はCBD1変異体を有する。この融合は化学融合を介しうるが、それにおいてキメラペプチドを、当技術分野において公知の標準方法を使用して(例えばFmoc化学の使用などにより)合成するか、又は、それは遺伝子工学的に融合されうるのに対し、ペプチドは組換え産生され、融合はペプチド結合による。
【0058】
任意のTヘルパーエピトープペプチドを、Tヘルパーによって、CBD1ドメインを認識でき、HIV−1活性を中和できる抗体の誘導が確実になる限り、キメラタンパク質において使用することができる。そのようなTヘルパーエピトープは、ヒト、動物、植物、細菌、又はウイルス由来の任意のタンパク質でありうる。特定の実施態様において、Tヘルパーエピトープは非天然(即ち、合成)である。本発明において使用することができるTヘルパーエピトープの例は以下:
− OVAp323−336(ISQAVHAAHAEINE)、オボアルブミン由来の強力なTヘルパーエピトープ、
− PADREペプチドaKXVAAWTLKAAaZC(X=L−シクロヘキシルアラニン、Z=アミノカプロン酸)、非天然の汎(pan)HLA DR結合エピトープ;又は
− Gag、gp120、gp41、及びポリメラーゼタンパク質を含むHIV−1タンパク質由来のエピトープ
である。
【0059】
特定の実施態様において、本発明のキメラペプチドは、破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0060】
一実施態様において、本発明のキメラタンパク質の一部分を形成するTヘルパーエピトープペプチドは、破傷風毒素ペプチド、HIV−1 Gag p24ペプチド、又はHIV−1 Env−gp 120ペプチドより選択される。一実施態様において、Tヘルパーエピトープタンパク質は、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)を含む又はそれからなるもしくは本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである。
【0061】
さらに別の実施態様において、Tヘルパーエピトープペプチドは配列番号2、3、又は4の変異体であり、それは1〜3(1、2、又は3)の追加アミノ酸をこれらの配列のN又はC末端に有する。
【0062】
CBD1ペプチド又はCBD1ペプチド変異体を、リンカーを介してTヘルパーエピトープに融合することができる。任意のリンカーを本発明において使用することができる(例えば、配列KK、GPGPG、GG、GGG、GGGG、GGA、GA、GD、GSGGGG、GSGGGGS、GS、GPSL、RS、RR、KKK、KKAA、VE、及びAAYを有するペプチドなど)。一態様において、CBD1ペプチド又はCBD1ペプチド変異体をTヘルパーエピトープに連結するために使用されるリンカーは、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリンリンカー(GPGPG)である。キメラペプチドは、また、スペーサーとして、ベータ、ガンマ、及びデルタアミノ酸を使用することにより設計されうる;例えばデルタアミノバレリン酸、ガンマアミノ酪酸、及びイプシロンアミノカプロン酸など。
【0063】
本発明は、このように、Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素ペプチド、HIV−1 Gag−p24ペプチド、又はHIV−1 Env−gp 120ペプチドより選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1ペプチドのカベオリン1結合ドメイン(又は変異体)を含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドに対する抗体に関する。これらの抗体は、キメラペプチドのCBD1部位を認識する。これらの抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、又はオリゴクローナルでありうる。別の態様において、これらの抗体は中和抗体である。さらなる態様において、抗体はモノクローナル(mAb)であり、HIV−1を中和することができる。抗体は、配列番号2〜4の少なくとも1つに融合された配列番号5〜25の、配列番号31〜38及び52〜59の又は配列番号39の少なくとも1つのキメラペプチド、配列番号1又は26〜30の少なくとも1つのペプチド、又は配列番号1又は26〜30のペプチドの少なくとも1つに及びそれらの混合物に対することができる。特定の態様において、抗体は以下:
− 配列番号5〜25の、配列番号31〜38及び52〜59の、又は配列番号39のキメラペプチドのCBD1部位中に位置付けられる決定基;
− 配列番号1又は26〜30のペプチドの決定基;
− 配列番号1又は26〜30において定義されるペプチド中に位置付けられる決定基で、前記ペプチドがTヘルパーエピトープに融合されている;
− 配列番号1又は26〜30において定義されるペプチド中に位置付けられる決定基で、前記ペプチドが、破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120からなる群より選択されるTヘルパーエピトープに融合されている;
− 配列番号1又は26〜30において定義されるペプチド中に位置付けられる決定基で、前記ペプチドが配列番号2〜4の少なくとも1つのペプチドに融合されている
に対し、それらを認識する。
【0064】
別の態様において、配列番号22〜24の少なくとも1つに対するモノクローナル抗体が、提供される。
【0065】
本発明の抗体は、遊離ウイルス上及びHIV−1感染細胞上の両方で、gp41タンパク質、及び特にCBD1ペプチドの少なくとも1つのエピトープ又は決定基を認識する能力を有する。HIV−1の中和に対する本発明の抗体の効果は、このように、以下:
− HIV−1不含ウイルスを中和し、新たな正常細胞の感染を予防すること;及び
− ADCC(抗体依存的な細胞媒介性の細胞毒性)及びCDC(補体依存的な細胞毒性)機構に関与するエフェクター細胞又は分子を動員し、細胞毒性及び感染細胞の破壊に導くこと
により得ることができる。
【0066】
これらの抗体は、当技術分野において公知の従来方法により作製することができ、さらに公知の方法により精製することができる。一態様において、本発明の抗体及びモノクローナル抗体は、哺乳動物に、特にヒトに、本発明のキメラペプチドを投与することにより得られる。投与後に得られた抗体は、キメラペプチドのCBD1部位、特にこのキメラペプチドのCBD1部位の少なくとも1つの決定基を認識する能力を有する。単一のキメラペプチドが、同じキメラペプチド上の異なる決定基を認識する異なる抗体の産生を誘導することができることを理解すべきである(例えば、表10及び11中のC17Kを参照のこと。3つの異なるモノクローナル抗体を誘導し、各々が異なる決定基を認識する)。そのような決定基は、表11の最後の列に開示する決定基(配列番号48〜51)から本質的になりもしくはなり、あるいは、以下の配列:
【表4】
に含まれる又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0067】
本発明は、また、HIV−1を中和する抗体及びモノクローナル抗体を産生するための方法に関し、(a)哺乳動物に本発明の少なくとも1つのキメラペプチドを投与すること;及び(b)所望の決定基に対する特異性を有する抗体又はモノクローナル抗体を回収することを含む。抗体の回収は、少なくとも1つのキメラペプチドが投与された哺乳動物からのサンプル(例、血液)を、所望の決定基を含む種々のペプチドと接触させ、そして抗体を溶出することにより実施してよい。一態様において、サンプルを、所望の決定基を含むペプチドが固定されている複合体と接触させる。一態様において、抗体を回収するために使用する決定基は、表11の最後の例に開示される決定基(配列番号48〜51)又は配列番号1、5、6、9、11、12、14、20、23、24、31〜38、52〜59、40、又は43に含まれる又はそれから本質的になるもしくはなる決定基である。
【0068】
さらなる態様において、本発明は、また、哺乳動物、例えばヒトに対する少なくとも1つのキメラペプチドの投与によって、HIV−1を中和することができる抗体の誘導が導かれたことを検査するための方法に関する。前記方法は、(a)本発明の少なくとも1つのキメラペプチドを用いて投与された患者からのサンプルを準備すること;(b)ペプチドに対する抗体の結合を可能にする条件において、前記サンプルを、CBD1決定基を含むペプチドと接触させること;及び(c)可能な場合、各々のペプチドについて、抗体/ペプチド複合体の形成を同定することを含む。一態様において、中和抗体の誘導を検査するために使用する決定基は、表11の最後の例に開示される決定基(配列番号48〜51)又は配列番号1、5、6、9、11、12、14、20、23、24、31〜38、52〜59、40、又は43に含まれる又はそれから本質的になるもしくはなる決定基である。
【0069】
本発明の抗体及びモノクローナル抗体を免疫療法において使用し、HIV−1及び/又はHIV−1感染を治療又は予防することができる。抗体は、このように、単独で又は固形粒子マトリクスに結合させて、免疫療法において使用することができる。抗体(ポリクローナル、モノクローナル、又はオリゴクローナル抗体を問わず)、制限された特異性を伴う抗体、及び/又は中和抗体は、薬学的に許容可能な賦形剤と共に投与することができる。
【0070】
少なくとも1つ、好ましくは上に記載する1つのキメラペプチド、いくつかのキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体、又は上に記載する抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む組成物又は医薬組成物は、本発明の別の実施態様である。このように、Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチド(又は変異体)のカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物を提供する。
【0071】
より具体的には、本発明の組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープWNNMTWMQW(配列番号26);
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープWNNMTWMQW(配列番号26);又は
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドWNNMTWMQW(配列番号26);
のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0072】
別の実施態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNM(配列番号27)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;又は− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物に関する。
【0073】
別の態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTW(配列番号28)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26及び/又は配列番号27のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる医薬的組成物又は組成物に関する。
【0074】
さらに別の態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬的組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、
式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜28の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0075】
さらに別の実施態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜29の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0076】
上のキメラペプチド式における記号「−」は、ペプチドが融合されていることを意味することに注意すべきである。
【0077】
本発明の種々のキメラペプチド(上に定義する)を含む特定の混合物は、組成物、医薬又は免疫原性組成物又はワクチンにおいて使用可能であり、配列番号12(K27W)、配列番号35(K24W)、配列番号16(K30W(G))、及び配列番号38(K27W(G))、並びに場合により配列番号31(C17K)からなるものである。
【0078】
【表5】
及びその混合物、並びに
【表6】
及びその混合物、及び上記のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチド;及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物は、本発明の別の態様である。
【0079】
これらの組成物又は医薬組成物は、また、C18Kペプチド(配列番号42)、配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドを、記載するキメラペプチドの1つ又はいくつかと一緒にさらに含みうる。
【0080】
上に開示するキメラペプチド又はキメラペプチド変異体に対して惹起された抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体及び/又は中和抗体などを含む又はそれから本質的になるもしくはなる組成物又は医薬組成物も本発明の実施態様の部分である。別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物に対する抗体は、本発明の別の態様である。さらに別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物に対するモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明の部分である。
【0081】
生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝剤、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、水、エタノールなど及びその組み合わせでありうる。
【0082】
また、アジュバントは、組成物又は医薬組成物を含むことができる。種々のアジュバントが当技術分野において公知であり、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、Montanide ISA(不完全SEPPICアジュバント)、ムラミルペプチド、例えばムラミルジペプチド(MDP)MDP−Lys(L18)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステオロイル−L−リシン)、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CPG ODN)、例えばCPG ODN1826及びCPG ODN2007など、並びにMF59(それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween(登録商標)80(w/v)、及び0.5% Span(w/v)を含む界面活性剤で安定化された水中油型乳剤である)を含む。
【0083】
上に記載するキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体又は上に記載する抗体及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む免疫原性組成物は、本発明の別の実施態様である。Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、本発明の別の態様である。
【0084】
より具体的には、本発明の組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープWNNMTWMQW(配列番号26);
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープWNNMTWMQW(配列番号26);又は
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドWNNMTWMQW(配列番号26);
のキメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0085】
別の実施態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNM(配列番号27)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;又は− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物に関する。
【0086】
別の態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTW(配列番号28)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26及び/又は配列番号27のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物に関する。
【0087】
さらに別の態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、
式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜28の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0088】
さらに別の実施態様において、本発明の変異体キメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜29の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を有する。
【0089】
上のキメラペプチド式における記号「−」は、ペプチドが融合されていることを意味することに注意すべきである。
【0090】
【表7】
及びその混合物、並びに
【表8】
及びその混合物、及び上記のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチド;及び生理学的に許容可能な希釈剤又は医薬的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物は、本発明の別の態様である。
【0091】
これらの免疫原性組成物は、また、C18Kペプチド(配列番号42)、配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドを、記載するキメラペプチドの1つ又はいくつかと一緒にさらに含みうる。
【0092】
上に開示するキメラペプチド又はキメラペプチド変異体に対して惹起された抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体及び/又は中和抗体などを含む又はそれから本質的になるもしくはなる免疫原性組成物も本発明の実施態様の部分である。別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物の少なくとも1つに対する抗体は、本発明の別の態様である。さらに別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物の少なくとも1つに対するモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明の部分である。
【0093】
生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝剤、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、水、エタノールなど及びその組み合わせでありうる。
【0094】
また、アジュバントは、組成物又は医薬組成物の部分を含むことができる。種々のアジュバントが当技術分野において公知であり、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、Montanide ISA(不完全SEPPICアジュバント)、ムラミルペプチド、例えばムラミルジペプチド(MDP)MDP−Lys(L18)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステオロイル−L−リシン)、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CPG ODN)、例えばCPG ODN1826及びCPG ODN2007など、並びにMF59(それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween(登録商標)80(w/v)、及び0.5% Span(w/v)を含む界面活性剤で安定化された水中油型乳剤である)を含む。
【0095】
さらに別の実施態様において、本発明は、上に記載するキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体又は上に記載する抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含むワクチンに関し、本発明の別の実施態様である。ワクチンは、Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0096】
より具体的には、本発明の組成物は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープWNNMTWMQW(配列番号26);
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープWNNMTWMQW(配列番号26);又は
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドWNNMTWMQW(配列番号26);
のキメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなる。
【0097】
別の実施態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNM(配列番号27)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;又は− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチンに関する。
【0098】
別の態様において、本発明は、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTW(配列番号28)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26及び/又は配列番号27のキメラペプチドとの混合物、
の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチンに関する。
【0099】
さらに別の態様において、本発明のワクチンは、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、
式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは1〜3の数である;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜28の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
を有する本発明の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチン。
【0100】
さらに別の実施態様において、以下の式:
− Tヘルパー破傷風毒素エピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、
式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− HIV−1 Gag p24ペプチドのTヘルパーエピトープXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;
− TヘルパーHIV−1エピトープHIV−1 Env−gp120ペプチドXnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである;又は
− その混合物、又は、上に開示する、配列番号26〜29の少なくとも1つのキメラペプチドとの混合物、
を有する本発明の変異体キメラペプチド、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤
を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチン。
【0101】
上のキメラペプチド式における記号「−」は、ペプチドが融合されていることを意味することに注意すべきである。
【0102】
【表9】
及びその混合物、並びに
【表10】
及びその混合物、及び上記のペプチドのいずれかの混合物の群より選択されるキメラペプチド;及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤を含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチン(カクテル又はカクテルワクチンとも呼ばれる)は、本発明の別の態様である。
【0103】
これらのワクチンは、また、C18Kペプチド(配列番号42)、配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドを、記載するキメラペプチドの1つ又はいくつかと一緒にさらに含みうる。
【0104】
上に開示するキメラペプチド又はキメラペプチド変異体に対して惹起された抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体及び/又は中和抗体などを含む又はそれから本質的になるもしくはなるワクチンも本発明の実施態様の部分である。別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにそれらの混合物の少なくとも1つに対する抗体は、本発明の別の態様である。さらに別の態様において、ペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)、上に記載するキメラペプチド及びキメラペプチド変異体並びにその混合物の少なくとも1つに対するモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明の部分である。
【0105】
生理学的に許容可能な希釈剤又は薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝剤、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、水、エタノールなど及びその組み合わせでありうる。
【0106】
また、アジュバントは、組成物又は薬学的組成物の部分を含むことができる。種々のアジュバントが当技術分野において公知であり、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、Montanide ISA(不完全SEPPICアジュバント)、ムラミルペプチド、例えばムラミルジペプチド(MDP)MDP−Lys(L18)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステオロイル−L−リシン)、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CPG ODN)、例えばCPG ODN1826及びCPG ODN2007など、並びにMF59(それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween(登録商標)80(w/v)、及び0.5% Span(w/v)を含む界面活性剤で安定化された水中油型乳剤である)を含む。
【0107】
本発明は、また、HIV−1感染を処置又は中和するための方法に関し、前記方法は、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、生理学的に許容可能な賦形剤中の上に記載するキメラペプチドもしくはキメラペプチド変異体又は上に記載する抗体を投与することを含む。この点において、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーペプチドに融合された配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜39及び52〜59の少なくとも1つ並びにその混合物、又は配列番号1、又は配列番号26〜30の少なくとも1つ及びそれらの混合物を含む、それから本質的になる又はなるキメラペプチドのいずれかをHIV−1感染を処置するための方法において使用することができる。
【0108】
本発明は、また、そのような処置を必要とする哺乳動物に対して、本発明に記載される抗体を投与することによる、HIV−1感染を処置するための方法を包含する。この点において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体、制限された特異性を有する抗体、及び/又は中和抗体でありうる。
【0109】
本発明は、また、HIV−1活性を中和するための方法に関し、前記方法はそのような処置を必要とする哺乳動物に対して、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された配列番号5〜25、又は配列番号31〜39及び52〜59、又は配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つ及びそれらの混合物のキメラペプチドを含む、それから本質的になる又はなるキメラペプチドを投与すること、次にTヘルパーエピトープをさらに投与することを含む。
【0110】
上に記載する通り、ある態様において、Tヘルパーエピトープは、破傷風毒素ペプチド、HIV−1 gp120ペプチド、及びHIV−1 Gagペプチド由来でありうる。より具体的には、これらのペプチド、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)を含む又はそれからなるもしくは本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)を含む又はそれからなるもしくは本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである。
【0111】
ペプチドのTヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120の群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを、医薬として、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防法として使用することができる。より具体的には、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜39及び52〜59もしくは配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はペプチド変異体を、医薬として、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防として使用することができる。又は、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された、本明細書に記載される、及び、配列番号22〜24のペプチドに対する又は配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜38及び52〜59又は配列番号39もしくは配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はキメラペプチド変異体及びそれらの混合物に対する抗体、特にモノクローナル抗体を、医薬として、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防として使用することができる。
【0112】
Tヘルパーエピトープ、特に破傷風毒素、HIV−1 Gag−p24、及びHIV−1 Env−gp 120の群より選択されるペプチドのTヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインを含む又はそれから本質的になるもしくはなるキメラペプチドを、医薬の製造ために、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防のために使用することができる。より具体的には、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜39及び52〜59もしくは配列番号1の少なくとも1つ、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はペプチド変異体を、医薬の製造において、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIV感染の処置のために又はHIV−1の予防法のために使用することができる。又は、配列番号2〜4の少なくとも1つのTヘルパーエピトープペプチドに融合された、本明細書に記載される、及び、配列番号22〜24のペプチドに対する又は配列番号5〜25の少なくとも1つ又は配列番号31〜38及び52〜59又は配列番号39もしくは配列番号1、又は配列番号26〜30の少なくとも1つのキメラペプチド又はキメラペプチド変異体及びそれらの混合物に対する抗体、特にモノクローナル抗体を、医薬の製造において、HIV−1の中和のために又はHIV−1もしくはAIDSもしくはHIVの処置のために又はHIV−1の予防のために使用することができる。
【0113】
本発明の多数の実施態様が記載されている。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができることが作製されうることが理解されるであろう。
【0114】
実施例
材料及び方法
以下の材料及び方法を、実施例を通じて使用した。
【0115】
1.材料
キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、スクアレン、Tween 80、及びSpan 85(w/v)をSigmaから購入した。Imject(登録商標)マレイミド活性化KLH(mcKLH;Pierce Biotechnology)をCBD1ペプチドのための担体タンパク質として試験した。CBD1エピトープの領域でのHIV−1 MN gp41の配列からのオーバーラップペプチドをAIDS Research and Reference Program/NIAID、NIH(AIDS/NIH)から得た。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)において産生されたHIV−1 gp41組み換えフラグメント586−682をViral Therapeutics, Inc.から購入した。
【0116】
ペプチド
免疫グレードの純度(80〜90%純粋)の全てのペプチドが、NeoMPS(Strasbourg, France)により合成された。CBD1ペプチドはgp41のアミノ酸位置618〜633である:SLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)(Hovanessian et al., 2004)。CBD1ペプチド(C17K)のN末端のシステイン残基を、Pierce Biotechnologyから購入されたImject(登録商標)活性化キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にそれを結合するために加えた。Tヘルパーエピトープペプチドのアミノ酸配列は以下である:(1)破傷風毒素Tet830ペプチド、AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)、(2)HIV−1 gp120421−436ペプチド、KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)及び(3)HIV−1 Gag298−312ペプチド、KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)。
【0117】
CBD1及びCBD1ベースのペプチドの配列を、太文字の保存トリプトファン残基と共に以下に提供する。キメラペプチドを、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリン(GPGPG)スペーサーを使用して合成した(Lennon-Dumenill et al., 2002; Livingston et al., 2002)。
【0118】
【表11】
カベオリン1結合モチーフベースのペプチドの配列は以下:
【表12】
である。
【0119】
システイニルCBD1ペプチドを供給者(Pierce Biotechnology)の指示に従ってmcKLHに結合した。
【0120】
アジュバント
完全及び不完全フロイントアジュバント(CFA及びIFA)、ムラミルジペプチド(MDPという)(N−アセチル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン水和物)、MDP誘導体(MDP−Lys(L18)という)(Nα−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−Ne−ステアロイル−L−リシン)及び水酸化アルミニウム(ミョウバン)をSigmaから購入した。CpGオリゴデオキシヌクレオチド(マウス用のCpG ODN 1826;ウサギ及びモルモット用のCpG ODN 2007;マカク用のCpG ODN 10103)をColey Pharmaceutical Group(USA)から購入した。界面活性剤で安定化した水中油型乳剤MF59を実験室で調製した。それは、水中の5%スクアレン(w/v)、0.5% Tween 80(w/v)、0.5% Span 85(w/v)(O'Hagan and Rappuoli, 2004)からなる。Montanide ISA 51は、好意により、SEPPIC(フランス)により提供された。
【0121】
2.方法
2.1 動物の免疫化及びELISA
ウサギ(Fauves de Bourgogne、6週齢)及びモルモット(350〜400g)をAnimal Production Center(Olivet, France)から購入した。BALB/cマウス(6〜8週齢)をCharles River Laboratories(France)から購入した。動物を約2〜3週間の間隔で5回、CBD1又はCBD1由来ペプチドを用いて、CFA及びIFA(本明細書で提示する実験データのために)又は他のアジュバント(データ提示せず)を使用して免疫化した。そのような懸濁液を、150μl、300μl、及び500μlの全容積中で、等しい抗原/アジュバントの割合(1V/1V)で、それぞれマウス、モルモット、及びウサギにおいて投与した。
【0122】
ウサギを5回の注射にCFAを使用して皮内に免疫化し、モルモットを最初の3回を筋肉内免疫化、それに続くCFAを使用した2回の腹腔内注射でしたのに対し、マウスを、示した通りに、CFAを使用した最初の皮下免疫化、それに続くCFA及びIFAを使用した腹腔内注射で免疫化した。
【0123】
免疫血清を、2μMの種々のペプチド(示す通り)を用いてコーティングし、37℃で60分間インキュベートした96ウェルプレート(Maxisorp, Dynatech)を使用したELISAにより滴定した。免疫血清を階段希釈で加え、37℃で60分間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を結合したマウス抗ウサギ(Sigma)又はヤギ抗モルモット(Sigma)又はヒツジ抗マウス(Amersham)免疫グロブリンを加えた。インキュベーション及び洗浄に続き、o−フェニレンジアミン二塩酸(OPD)基質を、記載されている通りにウェルに加えた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。発色に続き、反応を450nmで定量した。抗体価は、0.1に等しいOD値(450nmで測定)を与えるそれぞれのウサギ血清の逆希釈(reciprocal dilution)に対応する。マウス及びモルモットの免疫血清におけるIgG1及びIgG2サブクラス抗体の割合を、それぞれヤギ抗マウスIgG1及びIgG2a抗体(Sigma)並びにヤギ抗モルモットIgG1及びIgG2(Nordic Immunology)抗体を使用して決定した。これらのヤギ抗体を、次に、HRP結合ウサギ抗ヤギIgG(Sigma)により検出した。
【0124】
2.2.マカクの免疫化及びELISA
体重4〜6kgの成体雄カニクイザル(Macaca fascicularis)を、Mauritius繁殖コロニーから輸入し、非ヒト霊長類ケア(EEC指令N86−609、1986年11月24日)のための欧州ガイドラインに従って維持し、扱った。動物を、免疫化及び血液サンプル採取のためにケタミン・クロルハイドレート(ketamine chlorhydrate)(10〜15mg/kg)を用いて鎮静させた。第1組の免疫化において、動物を、皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)経路を介して、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を使用し、システイニルCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。対照マカクを、アジュバント単独を用いて注射した。第2組の免疫化において、動物を、アジュバントとして[CpG+Montanide ISA51]で構成される混合物を使用し、Tet−KK−CBD1(400μg)を用いて又はCBD1+TetA830ペプチド(200μg+150μg)を用いて皮下に免疫化した。各々の免疫化のために、1容積のアジュバント混合物と1容積の免疫原からなる500μlを投与した。一般的に、動物を、免疫応答をモニターするために、各々の免疫化後15日目に放血した。
【0125】
免疫血清を、2μMの種々のペプチド(示す通り)を用いてコーティングし、37℃で60分間インキュベートした96ウェルプレート(Maxisorp, Dynatech)を使用したELISAにより滴定した。免疫血清を階段希釈で加え、37℃で60分間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE Healthcare, UK Limited)を結合したヒツジ抗ヒトIgGを加えた(抗サル抗体を用いたサルIgGの検出は、抗ヒト抗体と比較し、より高いバックグラウンドレベルを与えることに注意すべきである)。インキュベーション及び洗浄に続き、o−フェニレンジアミン二塩酸(OPD)基質を、記載されている通りにウェルに加えた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。発色に続き、反応を450nmで定量した。抗体価は、0.1に等しいOD値(450nmで測定)を与えるそれぞれのウサギ血清の逆希釈に対応する。
【0126】
2.3.初代Tリンパ球におけるHIV感染のアッセイ
CD4+Tリンパ球を、10%熱不活化ウシ胎児血清及び50IU/mlのペニシリン−ストレプトマイシンを含むRPMI−1640中で増殖させた。CD4+リンパ球を、Dynabeads M-450 CD8(Dynal(登録商標)Invitrogen)を使用してCD8+細胞の除去後、PBMCから調製した。PHAを用いた3日間の刺激後、細胞を、IL−2を含む新鮮培養液中に懸濁させ、72時間後に初代HIV−1単離株BZ167を用いて感染させた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。HIV感染に対する抗CBD1免疫血清の阻害活性を、許容細胞とのインキュベーション(37℃、90分間)前に免疫血清の種々の希釈物を用いた所与のHIV単離株のプレインキュベーション(37℃、20分間)によりアッセイした。そのような初代CD4+細胞におけるウイルス産生の最大ピークは、感染後4〜5日目に起こる。細胞を3日目に継代し、ウイルス産生をELISAにより培養上清においてモニターし、HIV主要コアタンパク質p24の濃度を測定する(HIV-1 p24 ELISAキット、Perkin-Elmer)。異なる実験において得られた値は、3連のサンプルのng/mlで平均値±SDある。
【0127】
2.4.単回HIV−1感染性アッセイ
HIV感染性のアッセイのために、階段希釈の培養上清を使用し、HIV−1末端反復配列(LTR)の制御下にあるLacZ遺伝子を含むHeLa P4細胞に感染させた。HIV−1の侵入及び複製は、HIV−1 LTRの活性化をもたらし、β−ガラクトシダーゼの発現に導く。感染から48時間後、細胞を洗浄し、β−ガラクトシダーゼ活性を記載のように570nm波長のフィルターを使用して測定する(Nisole et al., 2000)。
【0128】
2.5.IFN−γ ELISPOTアッセイ
皮内(i.d.)又は筋肉内(i.m.)に免疫化されたマカクにおけるCBD1ペプチドに対する細胞性免疫応答。応答は、IFN−γ ELISPOTアッセイにおいて、CBD1ペプチドを用いて、示された日にサンプリングされたPBMCを刺激することにより得られた。MultiScreen 96ウェルろ過プレート(Millipore, Guyancourt, France)を35%エタノール水を用いて30秒間湿らせ、次に滅菌パイロジェフリー水を用いて3回洗浄し、続いてPBSを用いて追加洗浄した。プレートを、次に、PBS中の濃度10μg/mlのサルIFN−γ(クローンGZ4、Mabtech AB, Sophia Antipolis, France)に対するモノクローナル抗体を用いて4℃で一晩インキュベーションしてコーティングした。
プレートを、PBSを用いて6回洗浄し、次に、10%熱不活化ウシ胎児血清(FCS、Laboratoires Eurobio;培養液)が添加されたglutamax-1(Invitrogen)を含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地で37℃で2時間インキュベーションしてブロッキングした。末梢血単核球細胞(PBMC)を密度匂配遠心により回収し、2×105個の細胞を各ウェルに加えた。ペプチドを、次に、3連で、培養液中に最終濃度1μMで加えた。ホルボール12ミリスチン酸13アセテート(PMA)(Sigma-Aldrich, Saint-Quentin Fallavier, France)+イオノマイシン(ionomycine)(Sigma-Aldrich)(それぞれ最終濃度0.1μM及び1μM)を陽性対照として使用した。培養液単独を陰性対照として使用した。プレートを、5% CO2を含む雰囲気において37℃で18時間インキュベートした。それらを次にPBSを用いて5回洗浄し、0.5% FCSを含むPBSにおいて濃度1μg/mLのビオチン化抗IFN−γ抗体(クローン7−B6−1、Mabtech AB)を用いて4℃で一晩インキュベートした。プレートを、PBSを用いて5回洗浄し、0.25μg/mLのアルカリホスファターゼ−ストレプトアビジンコンジュゲート(Sigma-Aldrich)を用いて37℃で1時間インキュベートし、PBSを用いて5回洗浄した。スポットを、NBT/BCIP基質(Sigma-Aldrich)を80μl/ウェルで加えることにより発色した。スポットを、KSソフトウェアを使用しAutomated Elispot Reader System(Carl Zeiss, Le Pecq, France)を用いてカウントした。結果を、3連のウェルでの106個のPBMC当たりのIFN−γスポット形成細胞(IFN−γSFC/PBMC100万個)の平均値として表わす。バックグラウンドを、非刺激サンプルにおけるIFN−γ SFC/PBMC100万個の平均数の2倍として計算した。バックグラウンドの除去後に50超のIFN−γ SFC/PBMC100万個を産生するサンプルを陽性としてスコアした。
【0129】
実施例1 − ペプチド配列の生成
以下の実施例における全てのペプチドを、当技術分野において公知の方法を使用し、NeoMPS(Strasbourg, France)により合成した。全てのペプチドが、80%〜90%の免疫グレードの純度であった。
【0130】
別途示さない限り、実施例2、3、4、5、6、8、10、及び11(並びに図4、5、7、16、及び17)において、「CBD1」という用語は、CBD1ベースのペプチドC17K(配列番号31)を指す。実施例9(及び図9〜15)において、「CBD1」という用語は、CBD1ベースのペプチドC18K(配列番号42)を指す。
【0131】
実施例2 − 遊離ペプチドとして又は担体タンパク質に結合されたCFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性の比較
一連の実験をウサギにおいて実施し、遊離ペプチドとして又は担体タンパク質(例えばストレプトアビジン及びオボアルブミンなど)に結合した、完全フロイントアジュバント(CFA)を用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性を比較した。
【0132】
免疫血清の阻害活性を、Hovanessian et al., 2004bにより記載される通りに、初代HIV−1 BZ 167単離株を用いた初代CD4+Tリンパ球の感染に対する異なる希釈でアッセイした。
【0133】
CBD1ペプチド用の担体タンパク質としてのKLHの有効性を評価するために、ウサギを、アジュバントとしてCFAを使用し、システイニル−CBD1ペプチド又はKLHに結合したシステイニル−CBD1ペプチドのいずれかを用いて注射した。KLH結合CBD1ペプチドは、非常に弱い免疫原であることが見出された(表1)。KLH結合CBD1ペプチドの反応性の欠如は、KLHに結合した場合でのその構造の喪失に起因しうる。なぜなら、ELISAアッセイにおいて、CBD1抗体はKLH−CBD1構築物と弱く反応するからである。いずれにせよ、システイニルCBD1ペプチド(C17K及びC18K)は、それらが中和抗体の産生を誘発するので、より高い免疫原性を有することが示された。結果的に、さらなる免疫化実験において、遊離システイニル−CBD1ベースのペプチド(即ち、担体タンパク質なし)を使用した。
【0134】
システイニル−CBD1ペプチド(C17K、C18K)がより高い免疫原性を有するのに対し、オバルブミンに結合した場合、それらの免疫原性は50%だけ低下する。他方で、遊離ビオチニル−CBD1ペプチドは免疫原性を示さないのに対し、その免疫原性は、ストレプトアビジンに結合した場合、システイニル−CBD1ペプチドのそれと同程度である(Hovanessian et al., 2004b)。ストレプトアビジンに結合したシステイニル−CBD1ペプチド及びビオチニル−CBD1ペプチドを用いて免疫化されたウサギからの免疫血清は、HIV−1感染を阻害する能力を有する(表1)。
【0135】
【表13】
【0136】
ウサギにおける別の一連の実験において、種々のアジュバント:CFA、ALUM、MDP(ムラミルジペプチド)、MDP−Lys(L18)、及びMF−59(Chironにより開発された水中油型乳剤;Ott et al., 2000 p. 211-228を参照のこと)を使用し、システイニル−CBD1ペプチド(C17K、C18K)の免疫原性について研究した。ALUMの他、全ての他のアジュバントが、CBD1エピトープに対する特異的抗体の開発のために免疫応答を効率的に刺激した。最善のアジュバント活性が、MDP−Lys(L18)及びMF−59の混合物を使用して観察された(データ示さず)。
【0137】
実施例3 − 種々のアジュバントを使用したマウスにおけるシステイニル−CBD1ペプチドの免疫原性
これらの実験の目的は、ヒトにおいて適合性があるアジュバント、MF−59、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、及びMDP−Lysを使用し、マウスにおけるCBD1ペプチドに対する体液性及び細胞性免疫応答をモニターすることである。1群当たり6匹の動物を、MF−59、[MF−59+CpG ODN]、又は[MF−59+MDP−Lys]中で製剤化された50μgのCBD1ペプチドを用いて、両側の前脛骨筋中に筋肉内注射により2又は3週間の間隔で4回免疫化した。6匹のマウスの群に、[MF59+MDP−Lys]又は[MF59+CpG]のいずれかにおいて製剤化されたCBD1ペプチド(C17K)を用いて筋肉内注射した。各群の対照動物に、陰性対照としてアジュバント調製物のみを用いて注射した。マウスの異なる群を、最終注射から10日後に心穿刺によって放血させ、脾臓を除去し、ELISPOTアッセイ及びサイトカイン分泌評価を実施した。5回目の免疫化から10日後、免疫血清を、CBD1ペプチド(C17K)に対するELISAにより試験した。平均OD値±s.d.は、各群の1/8000希釈での免疫血清の平均値に対応する。結果を表2に示す。
【0138】
【表14】
【0139】
これらの試験は、有意な免疫細胞応答が、CBD1ペプチドを用いた免疫化に応答して開始されないことを示した(示さず)。しかし、免疫化されたマウスは、各々の追加免疫ー注射後に増加されたCBD1ペプチド特異的抗体を生成した。より重要なことに、これらの実験によって、CpG ODNがMDP−Lysよりもずっと免疫増強性の高いアジュバントであることが指摘された。実際に、[MF−59+CpG ODN]を用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマウスは、[MF59+MDP−Lys]中でアジュバント化されたCDB1ペプチドを用いて免疫化されたマウスと比較し、数倍高い抗CBD1抗体力価を誘発した(表2)。
【0140】
実施例4 − モルモットにおけるCFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性
CFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性を、モルモットにおいて、CBD2ペプチド、CBD1/Aペプチド(それにおいて3つの保存された芳香族トリプトファン残基がアラニンに変化している)、及びCBD1ペプチドの最後の12のアミノ酸残基を含むC13Kペプチドと並行して研究した(表3)。
【0141】
2匹のモルモットの群をペプチド(1回の免疫化当たり75μg):CBD1(C17K)、C13K、CBD1/A、又はKLHに結合したCBD1(CBD1−KLH)を用いて免疫化した。5回目の免疫化(放血5)から10日後、免疫血清を、CBD1、C13K、CBD1/A、及びC10Mペプチド並びにCBD1−KLH構築物に対するELISAにより試験した。抗CBD1抗体の力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。免疫血清を、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力についてアッセイした(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。HIV−1産生を、感染後5日目の初代CD4+Tリンパ球の培養上清においてp24の濃度を測定することによりモニターした。免疫血清の50倍希釈で生じるHIV感染のパーセント阻害を、表3に提示する。
【0142】
【表15】
【0143】
種々の動物における強力な抗体応答を誘発するCBD1ペプチド(CSLEQIWNNMTWMQWDK)の能力は、この17のアミノ酸ペプチドが免疫優性B細胞エピトープを含むはずであり、また、CD4+細胞により認識される主要組織適合性複合体クラスIIのT細胞エピトープとオーバーラップすることを示す(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。興味深いことに、CBD1ペプチドの最後の12のアミノ酸にカベオリン1結合モチーフを含むC13Kペプチド(CIWNNMTWMQWDK)は、モルモット(表3)、マウス、及びウサギ(データ示さず)において全く免疫原性を示さない。免疫原性のこの喪失は、CBD1ペプチドのN末端部分が、Tヘルパーエピトープとしての役割を果たすことを示唆する。
【0144】
CFAを用いてアジュバント化されたCBD1ペプチドの免疫原性を、モルモットにおいて、CBD1/Aペプチド(それにおいて3つの保存された芳香族トリプトファン残基がアラニンに変化している)と並行して研究した(表3)。CBD1ペプチドは、等しく十分にC13Kペプチドと反応する高力価抗体を誘発し、このように、3つの保存されたトリプトファン残基を含むCBD1ペプチドのC末端部分が免疫優性B細胞エピトープであることを示す。C13Kペプチドの他、抗CBD1免疫血清はCBD1/Aペプチドとわずかに交差反応し、それは、C10Mペプチド(CSLEQIWNNM)との同様の交差反応性を考慮すると、CBD1ペプチドのN末端の10アミノ酸残基の認識に起因すると思われる。CBD1/Aペプチドもモルモット(表3)において及びウサギにおいて(提示しない)免疫原性を示した。なぜなら、それはCBD1/Aペプチドに対する高力価抗体を誘発したからである。抗CBD1免疫血清とは対照的に、しかし、抗CBD1/A免疫血清とC13Kペプチドとの反応性は非常に弱かった。抗CBD1/A免疫血清とCBD1ペプチドとのわずかな交差反応性は、C10Mペプチドとの反応性により例示される通り、N末端部分の認識に起因するはずである。これらの観察は、CBD1ペプチドのN末端部分が追加のB細胞エピトープを提供することを示す。
【0145】
ペプチドの免疫原性は、担体タンパク質に結合した場合、しばしば改善される。この目的のために、アジュバントとしてCFAを使用したCBD1ペプチド用の担体タンパク質としてのKLHの有効性を研究した。しかし、2〜3週間の間隔での5回の免疫化後でさえ、KLHに結合したCBD1ペプチドが、モルモット(表3)及びウサギ(示さず)の両方において免疫原性を示さないことが見い出された。その構造のため、CBD1ペプチドは、細胞膜中に侵入し、界面のカベオリン1と相互作用し、免疫原性を示す能力を有することが最近報告された(Benferhat et al., 2008)。結果的に、CBD1ペプチドは、KLHに結合した場合、その構造及び免疫原性を失う。これを支持し、遊離CBD1ペプチドに対して惹起された抗CBD1抗体は、免疫原として使用されたKLH結合CBD1ペプチドを認識しない(表3)。
【0146】
モルモットにおいて惹起された種々の免疫血清(放血S5)を、ヒトCD4+Tリンパ球のHIV−1感染を阻害する能力について試験した。50倍希釈では、2匹のモルモットからの抗CBD1免疫血清が、HIV感染を66%及び57%阻害した。しかし、抗CBD1/免疫血清は、明らかな中和活性を有さなかった。この後者は、HIV中和抗体の開発するためのカベオリン1結合モチーフ中の保存されたW残基の重要性を指摘する。
【0147】
実施例5 − CBD1ペプチドの免疫原性並びにウサギ、モルモット、及びマウスにおいてCBD1ペプチドに対して惹起された免疫血清の微細エピトープマッピング
2匹の動物(ウサギ、モルモット、及びマウス)の群を、CFAを使用し、2〜3週間の間隔で、CBD1ペプチド(C17K;ウサギ、モルモット、及びマウスにおいてそれぞれ150、75、50μg/注射)を用いて免疫化した。5回目の免疫化から10日後、免疫血清を、CBD1ペプチドに対するELISAにより試験した。モルモット及びマウスの免疫血清におけるIgG1及びIgG2サブクラス抗体の割合を、特異的抗体によりモニターした。力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。HIV−1中和活性(表1においてモニター)をID50(阻害希釈50)として表わし、それはHIV−1感染の50%阻害をもたらす免疫血清の希釈を指す。
【0148】
【表16】
【0149】
2匹の動物(ウサギ、モルモット、及びマウス)の群を、上に記載する通りに、CBD1ペプチドを用いて免疫化した。5回目の免疫化から10日後、免疫血清を、以下に記載するCBD1、C13K、CBD2、p6362、p6364、及びp6365ペプチド(図8に示す)に対するELISAにより試験した。CBD1ペプチドとの反応性に対する各ペプチドとの%反応性を、種々のペプチドに対する免疫血清の16,000倍希釈で観察されたO.D.値を考慮に入れることにより与える。結果を図8に示す。
【0150】
アジュバントとしてCBD1ペプチド及びCFAを使用した同様の免疫化条件下で、モルモットからの抗CBD1免疫血清のHIV中和活性が、CBD1ペプチドを用いて免疫化されたウサギ及びマウスからのものと比較し、数倍低いことが見い出された(表4)。この目的のために、抗CBD1免疫血清の微細エピトープマッピングを、カベオリン1結合モチーフWNNMTWMQW(図8)の種々のセグメントを含むCBD1、C13K、CBD2、及び3つのオーバーラップペプチド(p6362、p6364、及びp6365)を使用したELISAにより行った。ウサギ及びモルモットからの抗CBD1免疫血清は、カベオリン1結合モチーフを含むC13Kペプチドとの強力な交差反応性により(カベオリン1結合モチーフを含むが、しかし、N及びC末端修飾アミノ酸残基内にあるp6364ペプチドとの別々の交差反応性と共に)、マウス免疫血清から区別することができる。
【0151】
他方で、マウスからの抗CBD1免疫血清は、モチーフのN末端部分を含むp6362ペプチドとの強力な交差反応性によりウサギ及びモルモットから区別することができる。特に興味深いのは、抗CBD1モルモット免疫血清と、モチーフのC末端部分を含むp6365ペプチドとの強力な交差反応性である(図8)。なぜなら、モルモット免疫血清は、ウサギ及びマウス抗CBD1免疫血清と比較し、低下したHIV−1中和活性を一貫して現したからである(表4)。
【0152】
これらの結果によって、所与のCBD1ベースのペプチドに対し、ウサギ、モルモット、及びマウスからの抗CBD1免疫血清の交差反応性プロファイルにおいて有意差が示された。そのような差は、恐らくは、CBD1ペプチド免疫原に対するこれらの動物での固有の免疫応答における変動を反映する。例えば、CBD1ペプチドのプロセシングは、種々の動物においてわずかに異なりうる。そのため、代替HLAクラスIIアグレトープが生成される。差は、マウスと比較し、モルモットからの免疫血清における抗CBD1反応性抗体のIgGサブクラス分布でも観察された。実際に、血清IgG1及びIgG2濃度の分析によって、IgG2抗体が、マウスと比較し、モルモットにおいてIgG1抗体よりも優性であることが示され、IgG2/IgG1比はそれぞれ3.75〜4.10及び0.96〜1.15であった(表4)。
【0153】
種々の抗CBD1免疫血清とCBD2ペプチドとの交差反応性は、CBD1及びCBD2が相同カベオリン1結合モチーフを共有するという事実にもかかわらず、ほとんど無視できる。抗CBD1免疫血清とCBD2ペプチドとの交差反応性のこの欠如によって、過去に報告された通り、CBD1及びCBD2ペプチドの間での立体構造の差の存在がさらに確認される(Benferhat et al., 2008; Rey-Cuille et al., 2006)。
【0154】
実施例6 − ヒトCD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ162感染の阻害
モルモットの免疫血清(放血S5)を、次に、ヒトCD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ162感染を阻害するための能力について試験した。100倍希釈では、CBD1ペプチドを用いて免疫化されたモルモットA2及びF16からの免疫血清によってHIV感染がそれぞれ66%および57%阻害された。CBD1/AペプチドはCBD1ペプチドと同程度に免疫原性を示したが、CBD1/Aペプチドを用いて免疫化されたモルモットD7及びD8からの免疫血清は、100倍希釈ではHIV−1感染と阻害しなかった(表3を参照こと)。この後者は、中和抗体の開発用のカベオリン1結合モチーフ中の保存されたW残基の重要性を指摘する。
【0155】
実施例7 − CBD1又はCBD1ベースのペプチドに融合されたTヘルパーエピトープを含むキメラペプチドの構築
CBD1ペプチド、C17K及びC18Kが、それ自体で種々の動物(マウス、モルモット、ウサギ)において強い抗体応答を誘発することが可能であるという事実は、それがT細胞エピトープと共にB細胞エピトープを含むことを示す。他方で、最後の12のアミノ酸に対応するC13Kペプチドは、マウス、モルモット、及びウサギにおいて全く免疫原性を示さない。N末端の5〜6アミノ酸残基の非存在における免疫原性のこの喪失は、CBD1ペプチドのこの部分がTヘルパーエピトープの役割を果たし、保存されたCBMを含む部分が、図3に示す通り、B細胞エピトープの役割を果たす。
【0156】
CBD1ペプチドの免疫原性を増強し、C13Kペプチドが免疫原性を示すようにするために、Tヘルパーエピトープを有するいくつかの構築物を生成した。この目的のために、C17K/C18KのNH2末端及びCBD1ペプチドの最後の12のアミノ酸残基I−W−N−N−M−T−W−M−Q−W−D−Kに融合された3つの公知のTヘルパーエピトープを使用した。
【0157】
この実施例において使用された3つのTヘルパーエピトープは以下:
1)Tet830:AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)。これは、多数のMHCクラスII分子に結合する破傷風毒素からの「乱雑な(promiscuous)」T細胞エピトープである(Slingluff et al., 2001)。
2)gp120421−436:KQIINMWQWGKAMYA(配列番号3)。これは、ヒト、マウス、及びマカクにおいてヘルパーT細胞エピトープ機能を現すHIV−1 gp120中の4番目の定常ドメインである(Egan et al., 2004)。
3)Gag298−312:KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)。これは、13のヒトHLA−DR対立遺伝子に結合するHIV−GagヒトDRスーパーモチーフ(CN末端コアタンパク質p24に位置する)である(Wilson et al., 2001)。
である。
【0158】
CBD1ベースのペプチドを伴う共線形Tヘルパーエピトープを、ジリシン(−KK−)リンカーを使用して合成し、それはリソソームプロテアーゼカテプシンB(MHC−II抗原提示に関連する抗原プロセシングのための重要なプロテアーゼの1つ)の標的配列である(Lennon-Dumenill et al., 2002)。また、GPGPGスペーサーを使用してペプチドが合成され、それは、一方では、潜在的な接合エピトープの形成を妨げ(Livingston et al., 2002)、他方では、延長3鎖形成を促進するグリシン残基及びプロリン残基によってキメラペプチドにおけるB細胞エピトープの立体構造を保持することができた(Liu et al., 2005)。
【0159】
粘膜免疫の誘導のための候補ワクチンを提供しうるペプチドキメラを生成する目的のために、C13Kペプチド配列で構成されるA30KペプチドキメラのN末端に融合されたインテグリン結合モチーフRGD(Yano et al., 2005; Yano et al., 2003)及び破傷風ペプチドを含むR33Kペプチドを構築した。ペプチド抗原へのRGDモチーフの付加によって、それらの免疫原性の潜在力が顕著に増強され、特に、アジュバントなしで経鼻免疫化を可能にする(Yano et a!., 2005)。
【0160】
種々のキメラ構築物の配列は以下:
【表17】
である。
【0161】
全てのペプチドを、Fmoc化学(NeoMPS SA, Strasbourgによる)を使用して合成した。
【0162】
実施例8 − Tヘルパーエピトープと融合されたCBD1、CBD1及びCBMベースのペプチドの免疫原性及びHIV−1中和活性
マウスにおけるTヘルパーエピトープと融合されたCBD1、CBD1及びCBM由来ペプチドの免疫原性、及びHIV−1感染を阻害する誘発抗体の能力を、2組の実験において研究した。
【0163】
実施例8A
CBD1ペプチドに融合されたTetA830、gp120421−436、及びGag298−312 Tヘルパーペプチドを使用した第1組の実験(表5並びに図4及び5にまとめる)。
6匹のマウスの群を、種々のペプチド(C17K、C18K及びC13Kのキメラペプチドについては75μg:A36K、A35K、K36K、K35K、A30K、K29K、K30K、及びR33Kペプチドについては150μg)と完全フロイントアジュバントを使用して皮下に免疫化した。5回目の免疫化から10日後、16,000倍希釈の免疫血清を、CBD1ペプチド(C17K)に対するELISAにより試験した。OD450nm値±s.d.は、各群における6つの血清サンプルの平均値に対応する。IgG1及びIgG2サブクラス抗体の割合を、特異的抗体によりモニターした。各群からのプール血清を、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力について、CBD1ペプチドに対するELISAによりアッセイした。HIV−1産生を、以前に記載された通りに(Hovanessian et al., 2004b)、感染後5日目の培養上清においてp24の濃度を測定することによりモニターした。中和活性をID50(阻害希釈50)として表わし、それはHIV1感染の50%阻害をもたらす免疫血清の希釈を指す。それぞれのプール血清の200倍希釈での培養液におけるHIV−1産生の%阻害も提示する。結果を以下の表5に示す。
【0164】
【表18】
【0165】
結果は、TヘルパーエピトープTetA830、gp120421−426、及びGag298−312を含むこれらの種々のペプチドの存在が依然として免疫原性であり、100〜350倍の範囲の免疫血清希釈でHIV産生に対して50%阻害効果を示すHIV中和抗体の産生を誘発することを示す(表5)。C13Kペプチドはそれ自体では免疫原性を示すことなく、しかし、Tヘルパーエピトープ(ペプチドA30K、K29K、K30K、R33K)と融合された場合、それはC13Kペプチド並びに元のCBD1ペプチドの両方と反応する高力価抗体の産生を誘発する(図4及び5を参照こと)。免疫血清とCBD1ペプチドとの反応性は特異的である。なぜなら、それらはCBD2ペプチドと反応しないからである。種々のTヘルパーエピトープが、免疫血清とTヘルパーエピトープペプチド、TetA830、gp120421−426、及びGag298−312との低い又は非特異的反応性により説明される通り、免疫原性がないことに注意すべきである(データ示さず)。
【0166】
A35Kペプチド(TetA830−KK−CBD1ペプチドで構成される)を用いて免疫化されたマウスにおける抗CBD1ペプチド抗体の産生は、CBD1ペプチド単独のそれと比較し、少なくとも3倍低いのに対し(表5)、HIV−1感染の中和の程度における差は2つの免疫血清の間で2倍未満であった(表5)。一般的に、厳密な相関は抗CBD1抗体価とHIV−1中和活性の間で明らかでなく、このように、中和活性は少ない割合の全抗CBD1抗体に対応することが指摘された。この後者は、恐らくは、ELISAアッセイによって、特定の立体構造(天然gp41分子におけるCBD1エピトープの立体構造とわずかに異なりうる)を有しうる所与のペプチドとの反応性がモニターされるという事実に起因する。
【0167】
ウサギ及びモルモットにおいて惹起された抗CBD1抗体は、C13Kペプチドと強く反応する(表3、Rey-Cuille et al., 2006を参照)。しかし、マウスにおいて惹起された抗CBD1抗体は、C13Kペプチドと非常に弱く反応するが、それらは強力な抗HIV阻害効果を発揮する(表3、図4及び5)。マウスとウサギ/モルモットの間でのこれらの差は、恐らくは、C17Kペプチドに対するこれらの動物の固有の免疫応答、及びCBD1ペプチド中の固有のN末端Tヘルパーエピトープがこれらの動物において機能するプロセスに起因する。これに従い、オーバーラップペプチドを使用したウサギ、モルモット、及びマウスからの種々の免疫血清での微細エピトープマッピングによって、所与のCBD1又はCBD1ベースのペプチド免疫原に関連するこれらの動物の間での有意差を明らかにした(図8)。
【0168】
実施例8B
5匹のマウスの群を、K27W、K24W、K23M、K30W(G)、及びK27W(G)構築物についてのCBM IWNNMTWMQWの異なるサイズフラグメントに融合されたGag298−312Tヘルパーペプチドで構成される種々のキメラペプチドを使用して皮下に免疫化したのに対し、K27W−2については、モチーフは二次コンセンサス配列に対応するIWDNMTWMEWであった。唯一の除外は、C10Mペプチド(C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M)に結合されたGag298−312ペプチドで構成されるK27Mキメラペプチドであった。それはCBD1ペプチド(C17K)の最初の9つのアミノ酸残基に対応する。この実施例についてのペプチドを、以下の表6に示す。
【0169】
【表19】
【0170】
4回目の免疫化から2週間後、免疫血清を、それぞれのペプチドに対するELISAにより試験し、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力についてアッセイした(表6、表7)。免疫化されたマウスからの免疫血清を表6に記載する。放血S4を、種々のペプチドに対するELISAにより滴定した。OD450nm値±s.d.は、6,000倍希釈での各群における5つの血清サンプルでの平均値に対応する。K27Wペプチドに対して惹起された免疫血清の反応性は、同種のK30W(G)ペプチドより高い;2つのペプチドの間での唯一の違いはリンカーである。抗K27W免疫血清は、そのそれぞれの免疫原(K−Kリンカーを有する)及びG−P−G−P−Gリンカーを有するその同種のK30W(G)ペプチドと強く反応する。同様に、抗K24W免疫血清は、そのそれぞれの免疫原(K−Kリンカーを有する)及びG−P−G−P−Gリンカーを有するその同種のK27W(G)ペプチドと強く反応する。
【0171】
K23Mペプチドは弱い免疫原であることが見い出された。なぜなら、5匹の免疫化マウスの内のわずか1匹がペプチド特異的抗体を生成したからである。全ての他のペプチドは、ペプチド−免疫原特異的抗体の産生により説明される通り、高免疫原性を示した(表7)。
【0172】
ペプチドキメラK27W及びK24Wは、それぞれK30W(G)及びK27W(G)と同種である。それらの間の差は、単にペプチドリンカーK−K又はG−P−G−P−Gである。配列W−N−N−M−T−W−M−Q−W及びI−W−N−N−M−T−Wは、K−Kリンカーと比較し、G−P−G−P−Gリンカーを有するキメラにおいてより良好に提示されると思われる。従って、抗K27W及び抗K24W免疫血清とG−P−G−P−G結合K30W(G)及びK27W(G)ペプチドとの反応性は、K27W及びK24Wペプチドのそれと比較し、それぞれ一貫してより高い。他方で、抗K30W(G)及びK27W(G)は、同種のK27W及びK24Wペプチドと反応せず、このように、K−K及びG−P−G−P−Gリンカーにより惹起される重要な立体構造の違いが明らかになる(表7)。それらの同種のG−P−G−P−G結合K30W(G)及びK27W(G)ペプチドの他、K27W及びK24Wが他のペプチド[二次コンセンサスカベオリン1結合モチーフW−D−N−M−T−W−M−E−W(それにおいてN及びQがそれぞれD及びEに変化している)を含むK27W−2ペプチド含む]と交差反応した。この後者は、立体構造エピトープを有するそのような抗体の反応性と一致する。
【0173】
【表20】
【0174】
5匹のマウスの群を、種々のペプチド(C17Kについては75μg:K27W、K27W−2、K30W(G)、K24W、K27W(G)、K27M、及びK23Mについては150μg)と完全フロイントアジュバントを使用して皮下に免疫化した。C10M群について、免疫原混合物は、75μgのC10Mペプチド(C−S−L−E−Q−I−W−N−N−M)と75μgのGag298−312ペプチド(K−R−W−I−I−L−G−N−K−I−V−R−M−Y)であった。5回目の免疫化から2週間後、免疫血清を、それぞれのペプチドに対するELISAにより試験した。OD450nm値は、6,000倍希釈での各群における5つの血清サンプルでの平均値に対応する。各群からのプール血清を、初代CD4+Tリンパ球のHIV−1 BZ167感染を阻害する能力についてアッセイした(表8)。HIV−1産生を、以前に記載された通りに(Hovanessian et al., 2004b)、感染後5日目の培養上清においてp24の濃度を測定することによりモニターした。HIV−1中和活性をID50(阻害希釈50)として表わし、それはHIV−1感染の50%阻害をもたらす免疫血清の希釈を指す。それぞれのプール血清の200倍希釈での培養液におけるHIV−1産生の%阻害も提示する。この混合物は、星印により指定したC17K/K27W/K30W(G)/K24W(1/1/1/1)を用いて免疫化されたマウスからのプール血清を表す。
【0175】
【表21】
【0176】
C10Mペプチドは免疫原性を示さなかった。しかし、Gag TヘルパーエピトープK27Mに結合した場合、次に、高力価抗体が免疫化されたマウスにおいて生成された。抗K27M抗体はC10Mペプチドと強く反応した(示さず)。K27W−2、K30(G)、K27W(G)、及びC17Kに対して惹起された免疫血清は、他のペプチドと有意に交差反応せず、そのため、CBMの10アミノ酸残基内での複数の決定基の存在が明らかとなった。免疫原性を示した最小配列は、K24Wキメラにより提示されるI−W−N−N−M−T−W配列である(表6)。
【0177】
免疫血清の大部分が、100〜450倍の範囲の免疫血清希釈で、HIV産生に対して50%阻害効果を示すHIV−1中和活性を現した(表8)。最高ID50値が、K24W及びK27W−2、それに続きK27W及びC17Kについて観察された。興味深いことに、K27W、K24W、K30W(G)、及びC17K(1/1/1/1:星印により指定)を用いて免疫化されたマウスからの免疫血清の混合物は、HIV−1感染に対する相乗的な中和活性をもたらし、ID50値はプール血清の>800倍希釈であった。プール血清の200倍希釈では、HIV−1感染に対する阻害効果は>98%であった。
【0178】
同様の実験を、CBD1、K27W、K24W、K27W(G)、及びK30W(G)ペプチドを用いて免疫化されたマウスの各群からの個々の免疫血清を使用して実施した。典型的な実験での結果を図16に提示し、種々の免疫血清のID50阻害効果が、異なるペプチドに対して惹起された5つの免疫血清の混合物により少なくとも4倍増加されることを示す。個々の免疫血清の200及び800倍希釈で、HIV−1感染に対する阻害効果はそれぞれ70〜90%及び50%未満であるのに対し、そのような血清の混合物についてのID50値は3200倍未満の希釈で観察される(図16)。
【0179】
Tリンパ球のHIV−1産生培養物に抗CBD1抗体を添加することによって欠陥ウイルス粒子の産生が起こる。なぜなら、抗CBD1抗体によって原形質膜においてgp41の凝集が起こり、gp120−gp41複合体を欠損したウイルス粒子の産生をもたらすからである。結果的に、そのようなウイルス粒子は感染性が低い(Hovanessian et al., 2004)。図17は、これがCBM由来キメラペプチドに対して惹起される抗体にも当てはまることを実証する。この目的のために、HIV−1産生に対する免疫血清の作用が、CD4+Tリンパ球のウイルス感染から2日後に加えられた場合に試験された。これらの実験条件下で、感染後5日目にHIV−1主要コアタンパク質p24によりモニターされたウイルス産生に対する明らかな効果はない(図17A)。そのような感染細胞の培養上清を10倍希釈し、HeLa P4C5細胞を使用することにより、単回感染性アッセイにおいてビリオン感染性について試験した(図17B)。結果は、HIV−1粒子が、200倍希釈の免疫血清の存在において産生され、免疫前血清を用いて処理された培養物から回収された対応するビリオンと比較し、少なくとも50%低い感染性を示す。
【0180】
従って、ウイルス感染の阻害に加えて、種々のCBMベースのキメラペプチドに対して惹起されたマウス免疫血清が、HIV−1産生細胞に対して作用する能力を有し、感染力の低下したウイルス粒子の産生をもたらす。
【0181】
これらの結果の有意性:
抗CBM抗体が、HIV−1産生細胞培養物に加えられた場合、欠損ウイルス粒子の産生を起こすことができたとの観察(図17)は、別々の中和決定基に対するそのような抗体が、HIV−1産生細胞の表面上に発現されるgp41と反応することもできることを指摘する。結果的に、そのような抗体は、Fc媒介性のエフェクター系、例えば抗体依存的な細胞性の及び補体媒介性の細胞毒性などによりインビボでHIV感染細胞の除去を引き起こしうる(Parren and Burton, 2001)。他方で、HIV偽ウイルス粒子に対する応答において最近報告されているように、欠陥HIV粒子は、ウイルスタンパク質に対する体液性及び細胞性免疫応答の生成のための宿主免疫系に関与しうる。(Chen et al., 2005)。
【0182】
上の実験から下すことのできる結論は以下のとおりである。高親和性の及び防御的な中和抗体を誘導することができるペプチドワクチンは、部分的に、天然タンパク質における対応する領域の三次元構造を模倣する抗原エピトープの設計に依存しなくてはならない。ここで、CBD1ペプチド及びCBD1由来ペプチドが、そのままで又はTヘルパーエピトープに融合して、HIV−1感染を中和することが可能な抗体を誘導する能力を有する立体構造エピトープを生成することが示された。CBM由来ペプチドは、Tヘルパーエピトープと融合後にのみ免疫原性を示す。
【0183】
原形質膜においてカベオリン1に結合する能力により、CBD1ペプチドはエンドソーム経路により取り込まれ、抗原提示細胞の原形質膜へのそれらの輸送中にタンパク分解酵素によりプロセシングされHLAクラスII分子と相互作用する別々のオーバーラップフラグメント(又は決定基)を与えることができる。そのようなプロセシングされたペプチドは、次に、CD4+ヘルパーT細胞の原形質膜上に存在するT細胞受容体により特定されうる。この後者は、オーバーラップ決定基の生成を説明しうる。
【0184】
HIV−1感染に対して中和活性を発揮しながらの種々の免疫血清の交差反応性の欠如(表6及び7)、及び別々のCBD1及びCBMベースのペプチドと交差反応しない中和モノクローナル抗体の単離(表10)から、CBD1エピトープがいくつかの関連する立体構造(特異的CBD1及びCBMベースのペプチドにより模倣される)を有することを示唆することが理にかなう。結果的に、そのようなペプチドによって、CBMの特定の立体構造に対する抗体を誘導することができた。
【0185】
特定の決定基と反応する免疫血清の混合物により観察されたHIV中和における相乗作用は、CBD1エピトープに対して効率的な体液性免疫応答を得るために、種々のTヘルパーペプチドを有するCBD1及びCBM由来ペプチドのカクテルを、候補ワクチン調製のために考慮すべきであることを示唆する。
【0186】
実施例9 − CBD1ペプチドはアカゲザルにおいて中和抗体を誘発する。
体重4〜6kgの成体雄カニクイザル(Macaca fascicularis)を、Mauritius繁殖コロニーから輸入し、非ヒト霊長類ケア(EEC指令N86−609、1986年11月24日)のための欧州ガイドラインに従って維持し、扱った。動物を、免疫化及び血液サンプルの採取のためにケタミン・クロルハイドレート(10〜15mg/kg)を用いて鎮静させた。第1組の免疫化において、動物を、皮内(I.D.)又は筋肉内(I.M.)経路を介して、アジュバント[MF59+MDP−Lys(L18)]を使用し、システイニルCBD1ペプチド(200μg)を用いて免疫化した。対照マカクを、アジュバント単独を用いて注射した。この実施例において、CBD1は、配列番号42において定義される、C18KペプチドCKSLEQIWNNMTWMQWDKを指す。
【0187】
第2組の免疫化において、動物を、アジュバントとして[CpG+Montanide ISA51]で構成される混合物を使用し、Tet−KK−CBD1(400μg)を用いて又はCBD1+TetA830ペプチド(200μg+150μg)を用いて皮下に免疫化した。各々の免疫化のために、1容積のアジュバント混合物と1容積の免疫原からなる500μlを投与した。一般的に、動物を、免疫応答をモニターするために、各々の免疫化後15日目に放血した。
【0188】
免疫血清を、2μMの種々のペプチド(示す通り)を用いてコーティングし、37℃で60分間インキュベートした96ウェルプレート(Maxisorp, Dynatech)を使用したELISAにより滴定した。免疫血清を階段希釈で加え、37℃で60分間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE Healthcare, UK Limited)を結合したヒツジ抗ヒトIgGを加えた(抗サル抗体を用いたサルIgGの検出は、抗ヒト抗体と比較し、より高いバックグラウンドレベルに与えることに注意すべきである)。インキュベーション及び洗浄に続き、o−フェニレンジアミン二塩酸(OPD)基質を、記載されている通りにウェルに加えた(Hovanessian et al., 2004; Rey-Cuille et al., 2006)。発色に続き、反応を450nmで定量した。抗体価は、0.1に等しいOD値(450nmで測定)を与えるそれぞれのウサギ血清の逆希釈に対応する。
【0189】
マカクにおけるCBD1ペプチドの免疫原性
合計8匹の動物をこの試験において使用した。3匹の動物の2群に、0、4、8、12、及び16週目に、[MDP−Lys+MF−59]アジュバント中で製剤化されたCBD1ペプチド(200μg)を用いて筋肉内又は皮内経路を介して注射した。対照として、2匹のマカクを、アジュバント製剤単独を用いて筋肉内又は皮内のいずれかに注射した。血清及びPBMCを0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、及び22週目に回収し、ELISAにより抗体の力価を試験し、また、CBD1ペプチドに特異的なIFN−γ ELISpotを実施することにより細胞性免疫応答をモニターした。
【0190】
有意なレベルの抗CBD−1体液性応答は、CBD1ペプチドを用いた3回目の免疫化まで、免疫化された動物において生成されなかった(図10A、10B)。5回の免疫化後、3匹の皮内注射されたマカクの内の2匹が、3匹の筋肉内注射された動物(マカクM11421)の内の1匹と比較し、高い抗体価を与えた(マカクM13510及びM13284)。従って、皮内注射が、筋肉内注射と比較し、注射のより効率的な経路であることが可能でありうる。各群において、免疫化された動物の間に弱い応答を示すものがあった:皮内注射された群におけるマカクM13246は弱い体液性応答を与え、筋肉内注射された群におけるマカクM11635及びM11450はそれぞれ弱及び無応答を与えた。動物における免疫応答のこの弱さ又は欠如は、CBD1ペプチド免疫原に対する最適な体液性応答を与えるために霊長類においてMHC拘束性があるはずであることを示唆した。実際に、CBD1ペプチドは、この実験において使用されるマカク集団の全てのMHC分子により結合できない可能性がある。T細胞へのCBD1ペプチド提示における欠損は、効率的なTヘルパー応答の非存在を反映しうる。
【0191】
CBD1ペプチドに対する細胞性免疫応答に関し、各群における3匹の免疫化された動物の内のわずか1匹が、CBD1エピトープに対する有意なレベルのT細胞応答を与えた(図9)。この後者は、皮内に免疫化されたマカクM13284における3回目の免疫化後、及び筋肉内に免疫化されたマカクM13421における2回目の免疫化後に観察された。T細胞応答の生成は、これらの2匹の動物において抗CBD1抗体の産生と相関したが、高い抗体価を産生したマカクM13510は有意なT細胞応答を現さなかった。4回目の免疫化後、全ての免疫化された動物が、アジュバント混合物により媒介されうる非特異的なT細胞応答を生成した。なぜなら、同様の非特異的なT細胞応答が、アジュバント混合物のみを用いて注射された対照マカク(M13535及びM13504)においても生成されたからである(示さず)。[MDP−Lys(L18)+MF−59]アジュバントが、非特異的なT細胞応答の生成を起こす機構が依然として研究されていない。他方で、これらの同じマカクにおいて生成する体液性応答が24週間の試験期間にわたりCBD1免疫原に特異的であったことに注意すべきである(図10)。実際に、CBD1ペプチドと反応したマカク免疫血清が、HIV−2の膜貫通型エンベロープ糖タンパク質中の潜在的カベオリン1結合ドメインに対応する同種のCBD2ペプチド(CSLTPIWNNMTWQEWER)と交差反応しなかった(データ示さず)。
【0192】
破傷風毒素からの乱雑なTヘルパーエピトープに関連するCBD1ペプチドの免疫原性
マカクにおけるCBD1ペプチドに対する潜在的なMHC拘束を克服するために、破傷風毒素からの「乱雑な」T細胞エピトープ(TetA830:AQYIKANSKFIGITEL)(多数のMHCクラスII分子と結合する)を使用した(Jackson et al., 2002)。ジリシンリンカー(KK)(MHC−II抗原提示に関連する抗原プロセシングに関与するリソソームプロテアーゼカテプシンBの標的配列である)を介してCBD1ペプチドと融合された、TetA830、ヘルパーエピトープで構成されるTet−KK−CBD1共線形キメラを構築した(Lennon-Dumenill et al., 2002; Yano et al., 2005)。ジリシンモチーフは、また、小胞体における保持及び免疫原の半減期の延長に関与しうる(Steinhilb et al., 2002)。
【0193】
いくつかの免疫化実験において、Tet−KK−CBD1キメラが、マウス、モルモット、及びウサギにおいて抗CBD1抗体の産生を誘発することにより免疫原性を示すことが初めて示された(示さず)。CBD1ペプチド単独を用いて過去に免疫化されたマカクの2群におけるCBD1ペプチドの免疫原性に対するTet Tヘルパーエピトープの効果を試験した。この第2組の免疫化は、最初の試験に記載するマカクの5回目の注射から4ヶ月後に開始した。興味深いことに、有意なレベルの抗CBD1抗体が、反応性が高いレスポンダーと考えられたそれらのマカクにおいて4ヶ月後に依然として存在した(表9)。抗CBD1抗体のこの持続性は、CBD1ペプチドを用いた免疫化がB細胞記憶応答を誘発することができたことを示唆する。
【0194】
マカクの2群は、アジュバントとして混合物[CpG+Montanide ISA 51]を使用し、融合された(Tet−KK−CBD1)又は遊離の(CBD1+Tet)ペプチドのいずれかである破傷風Tヘルパーエピトープペプチドに関連するCBD1ペプチドを用いて皮下に免疫化した。CpG及びMontanideの選択は、アジュバントとしてのそれらの有効性並びに種々の第II相及び第III相ヒトワクチン接種治験における臨床的安全性に基づいた(Kleinman et al., 1991; Kreig, 2007; Peek et al., 2008)。マカクを0、28、及び57日目に3回免疫化し、CBD1及びTetペプチドに対するELISAにより滴定するために、血清を0、15、28、43、57、71、86、及び98日目に回収した(表9、図11)。遊離の又は融合されたCBD1ペプチドを有するTet Tヘルパーエピトープの投与が、最初の免疫化から15日後という早期に全てのマカクの間で顕著に抗CBD1抗体応答を増強し、2回目の免疫化後にプラトーに達すると思われた。印象的なのは、第1組の免疫化試験における弱い及び非応答動物マカク、マカクM13246、M11635、及びM11450が、Tヘルパーペプチドの存在において非常に強いCBD1特異的な体液性応答を生成した。
【0195】
CBD1ペプチドと対照的に、各群における3匹の免疫化されたマカクの内のわずか1匹が、高レベルの抗Tetペプチド抗体を生成した(表9)。さらに、所与の免疫血清においてTet及びCBD1ペプチドに対する抗体価において直接的な相関はなかった。例えば、CBD1ペプチドに対して強い応答を生成したマカクM13246、M11635、及びM13450は、Tetペプチドに対して比較的低い又は無体液性応答を生成した。
【0196】
マカク免疫血清のHIV中和活性
初代HIV−1単離株による初代CD4+Tリンパ球の感染を阻害するマカク免疫血清の能力を試験した。一貫して、本発明者らは、そのような培養物におけるHIV−1感染が、対照マカク血清の<200倍希釈存在において30〜50%、免疫前又はアジュバント単独を用いて注射されたマカクからで増強されることを観察した。ウイルス産生に対するこの増強効果は、培養における初代ヒトTリンパ球細胞の増殖に及ぼすマカク血清の刺激効果に起因しうる。この理由のため、HIV感染に対するマカク免疫血清の阻害効果を、200及び400倍希釈でアッセイした。
【0197】
図12は典型的なウイルス中和実験の結果を示し、それにおいてTリンパ球のHIV−1感染が、3回目の免疫化から4週間後に得られたマカク免疫血清の非存在又は存在において行われた。ウイルス産生を、次に、感染後5日目の培養液においてHIV主要コアタンパク質p24の濃度を測定することによりモニターした。予想外に、遊離のCBD1及びTetペプチドを用いて免疫化された3匹のマカクの全てとは対照的に、Tet−KK−CBD1キメラペプチドを用いて免疫化された3匹のマカクの内のわずか1匹からの免疫血清がHIV−1中和活性を現した。
HIV−1阻害効果は、200倍希釈と比較し、400倍でより顕著であり、それはマカク血清のより高い希釈での固有の増強効果の完全な喪失に起因しうる。HIV−1感染の阻害の程度は、中和活性を現したマカクの免疫血清の400倍希釈で60〜75%であった(図13)。
【0198】
マカクM13246及びM13510免疫血清のHIV−1中和活性の欠如(図12)は、抗CBD1抗体の存在にもかかわらず(図11、表9)、中和抗体が全抗CBD1抗体の小さな割合に対応することを示唆する。これに従い、中和は、最初の免疫化後に、M13284、M13421、及びM13450免疫血清を用いて観察されなかったが、高力価な抗CBD1抗体が産生された。同様に、マカクM13284及びM13241における抗CBD1力価が、2回目の免疫化後にプラトーに達したが、それぞれの中和活性は、2回目の免疫化と比較し、3回目の後でより高かった(図13、表9)。
【0199】
マカク免疫血清の微細エピトープマッピング
キメラTet−KK−CBD1ペプチドと比較し、遊離のCBD1及びTetペプチドを用いて免疫化されたマカクにおいて誘導された免疫体液性応答を特徴付けるために、免疫血清の反応性を、種々のCBD1関連ペプチドに対して試験した:CBD1ペプチドのC末端部分に対応するC13Kペプチド、HIV−2におけるCBD1ペプチドホモログであるCBD2ペプチド、N及びC末端が改変されたアミノ酸残基内のカベオリン1結合モチーフとオーバーラップするアミノ酸配列を有する一連のペプチド、及びgp41の組換え調製物(図14)。これらの試験によって、中和及び非中和マカク免疫血清の交差反応性プロファイルにおける主要な違いが明らかになった。実際に、非中和免疫血清(マカクM13246及びM13510)を、種々のオーバーラップペプチドp6362、p6363、p6364、p6365、及びp9127並びに組換えgp41との強い交差反応性により、中和免疫血清(マカクM11635、M13421、M13450、及びM13284)から区別した。この広いスペクトルの交差反応性は特異的である。なぜなら、免疫血清のいずれもCBD2ペプチドと反応しなかったからである。これらの結果は、融合されたTet−KK−CBD1ペプチドよりむしろ、遊離のCBD1及びTetペプチドの同時免疫化が、中和抗体の生成に有利に働くことを説明する。
【0200】
CBD1又はTet−KK−CBD1免疫原に対して惹起された免疫血清でのELISAにおける注目すべき違いは、CBD1ペプチドの最後の12残基と同一であるアミノ酸配列を有するC13Kペプチドとの交差反応性である。図15は、それぞれ遊離の及び融合されたCBD1ペプチドを用いて免疫化されたマカクM11635及びM13284における抗CBD1及び抗C13K抗体の産生の動態を示す。一貫して、Tet−KK−CBD1により誘導された抗体は、C13Kペプチドと強く交差反応した。これらの抗C13K反応性抗体は、抗CBD1反応性抗体の産生と比較し、免疫化の期間中に遅い時間に生成された(図15)。両方の免疫血清がHIV−1感染に対する中和活性を現したため、C13Kとの交差反応性の有意性をさらに研究しなければならない。興味深いことに、高力価C13K反応性抗体も、Tet−KK−CBD1を用いて免疫化されたウサギ、モルモット、及びマウスにおいて産生された(未発表の結果)。従って、N末端Tヘルパーエピトープの存在は、CBD1ペプチドに対する最終的な免疫応答に有意に影響を与える。この後者は、キメラTet−KK−CBD1ペプチドに関連して提示される場合、CBD1配列における代替HLAクラスIIアグレトープの生成により説明されうる。
【0201】
【表22】
【0202】
実施例10 − 特異的モノクローナル抗体(mAb)を生成することによるCBD1エピトープにおける複数のオーバーラップする中和決定基の存在の確認
中和抗体を誘導することができるペプチドワクチンは、部分的に、天然タンパク質における対応する領域の三次元構造を模倣する抗原エピトープの設計に依存しなくてはならない。
【0203】
Tヘルパーエピトープに融合されたCBD1ペプチド及びCBM由来ペプチドが、関連するCBM由来ペプチドと交差反応しないHIV中和抗体を誘発するという実証は、別々の及びオーバーラップする中和決定基の存在を示し、それらは恐らくはCBD1エピトープの動的立体構造の特徴の反映である。従って、CBD1ペプチド及びCBM由来ペプチドは、天然HIV−gp41タンパク質におけるCBD1エピトープの動的構造により生成される別々の柔軟な立体構造を模倣する能力を有する。これに従い、CBD1ペプチド及び異なるCBM由来ペプチドに対して惹起された中和免疫血清の混合物は、HIV−1感染に対する相乗的な中和活性をもたらす(表7及び8)。結果的に、同時にいくつかの別々の立体構造決定基に対する抗体の反応性は、強い中和活性をもたらす。
【0204】
CBD1エピトープにおけるオーバーラップする立体構造決定基の存在は、免疫原としてCBD1ペプチド並びに種々のCBD1及びCBM由来ペプチドを使用することによるモノクローナル抗体(mAb)の生成により確認される。全体で、19のmAbが、異なる程度のHIV−1中和活性に基づき単離された。これらのmAbは、種々のCBD1及びCBMベースのペプチドとの交差反応性によって11のサブグループに特徴付けられ、このように、CBD1エピトープにおける別々の立体構造決定基の存在を説明する。
【0205】
マウスの4連続の免疫化を、CBD1ペプチド、並びにCBD1及びCBM由来ペプチドを使用して行った。いくつかのモノクローナル抗体を単離し、gp41中のカベオリン1結合ドメインの種々のオーバーラップセグメントを含む種々のペプチドとの反応性について特徴付けた。単離mAbを、CBD1ペプチド並びに種々のCBD1及びCBMベースのペプチドとの反応性に従って、11の主なサブグループにグループ化することができる:CBD1(C17K)、C13K、CBD2、p62、C10M、K27M、K29K、K24W、K27W(G)、K30W(G)、及びK27W(表10)。
【0206】
【表23】
【0207】
ELISAにおける種々のペプチドCBD1(C17K)、C13K、CBD2、p6362、C10M、K27M、K29K、K24W、K27W、K27W(G)、及びK30W(G)との各mAbの反応性に基づき、決定基のペプチド配列を定義した(表11)。所与の配列であるが、異なるペプチドにおける反応する異なるmAbの能力は、同じ配列の別々の立体構造決定基との反応性を示す(表11)。これらの11のオーバーラップ決定基は以下である:IWNNMTWMQWDK(3つの立体構造における)、IWNNM(2つの立体構造における)、SLEQIWNNM(3つの立体構造における)、IWNNMTW(2つの立体構造における)、及びIWNNMTWMQW。
【0208】
【表24】
【0209】
mAb 1.1.1、1.1.2、E5.4、H18.1、81.4、及びU.13は、それぞれC13K、CBD2、K29K、K27Wの間で2つ、3つ、及び4つのペプチドとの反応性から推定された決定基IWNNMTWMQWDKの3つの別々の立体構造と反応する。
【0210】
mAb 4.1、16.2、及びH21.3は、それぞれC17K、K27M、及びC10Mの間で1つ、2つ、及び3つのペプチドとのそれらの反応性から推定された決定基SLEQIWNNMの3つの別々の立体構造と反応する。
【0211】
mAb 5B15、6B9、及びE5.1は、それぞれC17K、C13K、C10M、及びK27W(G)の間で2つ及び4つのペプチドとの反応性から推定された決定基IWNNMの2つの別々の立体構造と反応する。
【0212】
mAb N.1.1、N1.3、及びF1.1、F1.3、F6.4、及びH3.1は、ペプチドK27W(G)及びK30W(G)のいずれか1つ又は両方とのそれらの反応性から推定された決定基IWNNMTWの2つの別々の立体構造と反応する。
【0213】
mAb 9.1は、K27W又はK30W(G)ペプチドとのその強い反応性から推定された別々の決定基IWNNMTWMQWと反応する。
【0214】
CBD1ペプチド並びにCBD1及びCBMベースのキメラペプチドに対して惹起されたHIV中和mAbの単離によって、AIDSワクチン製剤のための効率的なB細胞エピトープとしてのCBD1エピトープの重要性が指摘される。
【0215】
mAbの大部分が、初代CD4+Tリンパ球培養物においてHIV−1 BZ167感染を阻害する能力を有し、ID50値は100〜500倍希釈の範囲である。図6に、mAb 1.1.1、5B15、6A14(F6.4ともいう)、及び6B9について得られた代表的な結果を示す。
【0216】
興味深いことに、CBD1エピトープに対するmAbは、HIV−1LTRの制御下に細菌のlacZ遺伝子を含むHeLa−CD4−LTR−lacZ細胞の単一サイクルのHIV感染を阻害する能力を有する(Nisole et al., 1999)。HIV侵入のこの実験モデルにおいて、mAbの中和活性が10〜100倍希釈で観察された(図7)。同様の実験条件下で、ヒトmAb 2F5が効果を有さなかったが、mAb 2F5がCD4+Tリンパ球において同じHIV−1単離株を阻害することに注意すべきである。mAb 2F5と比較し、抗CBD1 mAbによるHeLa P4細胞中へのHIV侵入の阻害におけるこの違いは、依然として明らかとなっていない。
【0217】
CBD1、CBD2、C13K、及びp6362ペプチドに対する各mAb調製物の力価を、図7におけるグラフの下に与える。本発明者らが種々の免疫血清を用いて観察していた通り、種々のmAbの抗体の力価は、HIV感染の阻害の程度に厳密に相関しない。この後者は、恐らくは、ELISAアッセイによって、特定の立体構造(天然gp41分子におけるCBD1エピトープの立体構造とわずかに異なりうる)を有しうる所与のペプチドとの反応性がモニターされるという事実に起因する。いずれの場合でも、CBD2ペプチドとの反応性の欠如は、しばしば、HIV感染に対するより低い阻害活性と相関する。mAb K29K3−2−4を産生するハイブリドーマは、CBD1ペプチドに対し特異的であるが、しかし、非常に低い力価のために選択された。このmAbは、40倍希釈でHeLa P4モデルにおけるHIV−1侵入を阻害するのに対し、それは75倍希釈でTリンパ球におけるHIV感染を阻害する。
【0218】
実施例11.AIDS患者における治療用ワクチンとしてのCBD1ペプチド、又はCBD1及びCBMベースのペプチドの適用
非常に低い割合のHIV−1感染者だけが、低いELISA力価を伴うCBD1ペプチドに対する抗体を有することが過去に示された(Hovanessian et al., 2004b)。この目的のために、ジスルフィドループを含むgp41における免疫原性エピトープ(ペプチド600〜612)及びgp41におけるカベオリン1結合ドメイン、即ち、CBD1エピトープ(ペプチド618〜633)に対するIgG抗体の存在をELISAにより試験した。ヒトHIV−1陽性及び陰性の血清を、1000倍希釈で試験した。450nm±S.D.(括弧中)で測定されたOD値の平均値を、各群(n=試験された血清の数)について与える。各アッセイでのカットオフ点を、各国からの30人の非HIV感染者からの血清を用いて決定した(Hovanessian et al., 2004b)。
【0219】
結果によって、HIV−1感染者からの非常に低い割合の血清だけがCBD1ペプチドと弱く反応するのに対し、免疫優性エピトープ(ペプチド600〜602)とのこれらの同じ血清の反応性が大きく上昇することが示された(表12)。
【0220】
【表25】
【0221】
血清がgp41免疫優性ペプチド(ペプチド600〜612)について全て高度に陽性である75人のHIV−1陽性者の別の集団において、わずか2つの血清が、ELISAにおいてCBD1ペプチド(C17K)について陽性であることが見い出された。これらの2つの血清の精密エピトープマッピングを、種々のオーバーラップCBD1及びCBMベースのペプチドを使用したELISAにより行った(表13)。
【0222】
これらの2つの血清を、CBD1、CBD2、p62、及びC10Mペプチド並びにCBD1ベースのペプチド:C13K、K29K、K27W、K24W、K23M、及びK27Mに対するIgG抗体の存在についてELISAにより試験した。これらの2つの血清の抗CBD1ペプチド抗体の力価は、それぞれ6,400及び12,800であった。各血清の力価は、ELISAにおいてOD値0.2を与える血清の希釈に対応した。結果を表13に示す。
【0223】
【表26】
【0224】
結果は、CBD1ペプチドについて陽性である2つの血清が、実際にそのN末端部分と反応することを示した。反応性は、保存されたカベオリン結合モチーフの種々のセグメントに対応するペプチドを用いて観察されなかった。
【0225】
これらの結果は、従って、HIV−1感染者が、保存されたカベオリン1結合モチーフ(CBM)(中和抗体の作用のためのCBD1エピトープにおける決定基である)に対して抗体を産生しないことを示す。HIV−1感染者におけるCBD1エピトープに対する天然抗体の産生の欠如は、N625のN結合グリコシル化に起因しうるが(Johnson et al., 2001)、それは免疫応答の生成を妨げうる(Rudd et al., 2001)。
【0226】
CBD1及びCBD1ベースのペプチドがマカクにおいて免疫原性を示し、中和抗体を産生するとの事実、及びいくつかの地域からのHIV−1感染者におけるCBD1エピトープに対する抗体の欠如から、CBD1ベースのワクチンがAIDS患者における治療用ワクチンとしての適用を有しうる。
【0227】
実施例12 − HIV/AIDSのためのワクチン候補としてのオーバーラップするCBD1ベースのペプチドの混合物の免疫原性及び有効性
実施例8(上)において、CBMベースのペプチドIWNNMTWMQW及びIWNNMTWは、Tヘルパーエピトープに融合された場合、初代Tリンパ球培養物においてHIV−1感染を中和することが可能である高力価なCBM特異的抗体を誘導することにより免疫原性であることが示された。所与のペプチドに対して惹起された中和免疫血清は、関連するCBM由来ペプチドと交差反応せず、このように、CBD1における別々の中和立体構造エピトープの存在を示唆する(表7)。CBD1におけるいくつかの別々のオーバーラップエピトープの存在は、CBM由来キメラペプチドに対して生成されたマウスモノクローナル抗体により確認された。
【0228】
これらの結果は、CBD1が、HIV−1に対する潜在的な中和抗体の標的を表すいくつかのオーバーラップB細胞エピトープを含むことを指摘する。これに従い、種々のペプチドに対して惹起された中和免疫血清の混合物は、HIV−1感染に対する相乗的な中和活性をもたらす(表8)。免疫血清の混合物における特異的抗体が、CBM内で同時に別々のエピトープと反応することにより強いHIV−1中和を発揮しうることが可能でありうる。それは、恐らくは、天然HIV−gp41タンパク質におけるCBD1の動的構造により生成される。
【0229】
従って、CBD1及びCBM(カベオリン1結合モチーフ)ベースのペプチドは、HIV−1のgp41におけるCBD1の別々の動的な立体構造を模倣し、このように、中和抗体の誘導を媒介する。このこと及びCBD1における別々のエピトープと反応する免疫血清の混合物により観察されるHIV中和における相乗作用が、CBM由来ペプチドキメラのカクテルがHIV−AIDS感染に対する効率的な体液性免疫応答を誘発するために、候補ワクチン製剤として考慮すべきであることを示唆する。
【0230】
この実施例において、マウスにおけるそのようなカクテル−ワクチン製剤の免疫原性について着手されており、免疫原性及び有効性試験が、現在、ヒトでの使用のために許容可能なアジュバントを使用し、カニクイザルにおいて評価されている。
【0231】
A.マウスにおけるCBD1ベースのカクテルペプチドの免疫原性
8匹のBALB/Cマウス(6〜8週齢)の2群を、完全フロイントアジュバント(CFA)を使用し、カクテルA及びカクテルBペプチド(以下で記載する)を用いて免疫化した。4回の皮下注射が1ヶ月間隔で投与された。
【0232】
カクテルAペプチド:C17K + K27W+ K24W + K30W/G + K27W/G(カクテル中の各ペプチドは80μg/マウス/注射であった)
【0233】
【表27】
【0234】
カクテルBペプチド:K27W+ K24W + K30W/G + K27W/G(カクテル中の各ペプチドは80μg/マウス/注射であった)
【0235】
【表28】
【0236】
Gag298−312の配列を伴う:K−R−W−I−I−L−G−L−N−K−I−V−R−M−Y(配列番号4)。
【0237】
A.1.カクテルA及びカクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスにおける体液性応答
4回目の免疫化から2週間後、免疫血清を、カクテルA及びカクテルBペプチドに対するELISAにより試験した。抗カクテルA及び抗カクテルB抗体の力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。ELISAのための実験条件を、上の方法のポイント2.1に記載した。結果を表14に提示する。マウスにおける個々のペプチドの免疫原性を、実施例8B及び表8に記載している。
【0238】
【表29】
【0239】
マウスの免疫血清におけるIgG1及びIgG2aサブクラス抗体の割合を、ヤギ抗マウスIgG1及びIgG2a抗体(Sigma)を使用して決定した。個々のマウスにおいてそれぞれのカクテル免疫原に対するELISAにより推定されるIgG2/IgG1比は、<0.04であった。
【0240】
各群の個々のマウスの間で抗体価の程度にいくらかの変動性があったが、抗体価は大きく上昇し、100,000〜2,000,000の範囲であった。マウスの免疫血清におけるIgG1及びIgG2aサブクラス抗体の割合に関する試験によって、カクテルA及びカクテルBペプチドに対して生成された免疫血清における抗体サブタイプは主にIgG1型であることが示され、その割合は種々の個々の免疫血清において>96%であった。Gag Tヘルパーエピトープは、免疫血清とTヘルパーエピトープペプチドGag298−312との反応性の欠如により説明される通り、免疫原性でないことにも注意すべきである(示さず)。
【0241】
カクテルA又はカクテルBのいずれかで一緒に投与された場合での個々のペプチドの免疫原性を次に研究した。この目的のために、4回目の免疫化から2週間後、マウスの各群における免疫血清を、個々のペプチド、即ち、C17K、K27W、K24W、K30W/G、及びK27W/Gペプチドに対するELISAにより試験した(カクテルAについては表15及びカクテルBについては表16)。各ペプチドに対する抗体力価は、0.1に等しいOD450nm値を与える免疫血清の逆希釈に対応する。ELISAのための実験条件を、上の方法のポイント2.1に記載した。
【0242】
【表30】
【0243】
【表31】
【0244】
マウスを、カクテルAペプチドを用いて免疫化した場合、それらは全て高力価な抗C17K抗体を生成し、一方、K27W、K24W、K30W/G、及びK27W/Gペプチドに対する抗体の産生は異なる個人の間で変動した(表15)。これらの4つの後者のペプチドの内、1つのペプチドに対して高力価な抗体を産生する所与のマウスの能力は、他の3つのペプチドに対する体液性免疫応答を生成する能力と体系的に相関し、そのため、個々のペプチドのプロセシングが個々のマウスの間でわずかに異なりうることを示す。カクテルBペプチドを用いて免疫化されたマウスにおいて、カクテルB(K27W、K24W、K30W/G、K27W/G)の個々のペプチドに対して高力価な抗体を生成するマウスナンバー2の免疫血清は、C17Kペプチドと交差反応した(表16)。一般的に、K27W及びK24Wペプチドは、カクテルBで一緒に投与された場合、K30W/G及びK27W/Gペプチドよりも良好な免疫原であると思われた。
【0245】
それにもかかわらず、免疫血清とK30W/G及びK27W/Gペプチドとの低い反応性が、これらのペプチドの立体構造の結果でありうることに注意すべきである。最後に、表14及び15に提示する抗体価は、C17Kペプチドの非存在下において、K30W(G)及びK27W(G)ペプチドに対するカクテルBの投与により惹起された免疫応答が比較的弱いのに対し、K24W及びK27Wペプチドは依然として強い免疫原である。従って、カクテル免疫原におけるC17Kペプチドの存在は、K30W(G)及びK27W(G)ペプチドに対する抗体応答に有利に働きうる。
【0246】
A.2.カクテルA及びカクテルBペプチドをそれぞれ用いて免疫化されたマウスの2群からのプール免疫血清のHIV−1中和活性
4回目の免疫化から2週間後、各群の免疫血清を集め、CD4+Tリンパ球の初代HIV−1 BZ167(クレードB)感染を阻害する能力についてアッセイした。HIV−1の産生を、感染後5日目の培養上清においてHIV−1主要コアタンパク質p24の濃度を測定することによりモニターした(図18)。カクテルA及びカクテルBペプチドとのそれらの強い反応性と一致し(表14)、いずれかのカクテルペプチドに対して惹起された免疫血清が中和抗体を誘発し、それらは用量依存的な様式でHIV−1感染を阻害した(図18)。HIV−1 BZ167感染の50%阻害(ID50)を与えるカクテルA及びカクテルBプール血清希釈を、それぞれ300及び400倍希釈と推定した。
【0247】
カクテルA及びカクテルB免疫化マウスからのプール血清の中和効果を、HIV−1ワクチン候補を試験するために現在使用されるHIV−1単離株の国際パネルからのいくつかのHIV単離株を使用してさらに研究した:HIV−1 KNH1207(クレードA)、HIV−1Ba−L(クレードB)、HIV−1 US1(GS 004;クレードB)、HIV−1 56313(98US−PSC5016;クレードC)、HIV−1 98UG−57128(クレードD)。カクテルA及びカクテルB免疫化マウスからのプール免疫血清は、これらの異なるHIV−1単離株によるCD4+Tリンパ球のウイルス感染を阻害し、ID50値は150〜350倍希釈の範囲であった。ウイルス中和の例を、図19A及び19Bにおいて、CD4+Tリンパ球のHIV−1 KNH1207及びHIV−1 US1感染に対して提示する。
【0248】
B.カニクイザルにおけるCBD1ベースのペプチドカクテルワクチン製剤の免疫原性及び有効性
CBD1ベースのペプチドカクテルワクチン製剤の免疫原性及び有効性を、カニクイザルにおいて2相で評価した:
1.免疫化動物におけるカクテルワクチン製剤に対する体液性及び細胞性免疫応答をモニターすることによる;及び
2.HIV−1エンベロープ糖タンパク質を発現する複製能力のあるキメラサル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)免疫化動物を投与することによる。
【0249】
合計12匹のマカクが、この試験において使用された:
− 免疫原及びアジュバントを用いて免疫化された6匹のマカク;
− 対照PBS及びアジュバントを用いて注射された6匹の対照マカク;
【0250】
体重4〜6kgの成体雄カニクイザル(Macaca fascicularis)を、Mauritius繁殖コロニーから輸入し、非ヒト霊長類ケア(EEC指令N86−609、1986年11月24日)のための欧州ガイドラインに従って維持し、扱った。動物を、免疫化及び血液サンプルの採取のためにケタミン・クロルハイドレート(10〜15mg/kg)を用いて鎮静させた。免疫化は、アジュバントとして[CpG+Montanide ISA 51]で構成される混合物を使用した免疫原カクテルの皮下注射により行った。各々の免疫化のために、1容積のアジュバント混合物と1容積の免疫原からなる500μlを投与した。
【0251】
免疫原混合物のためのペプチドのカクテルは、以下であった:
【0252】
【表32】
【0253】
ペプチドを蒸留水中で4mg/mlで調製した(最初に、最終容積の10%のDMSOを用いて可溶化)。次に、ペプチドを集め、6匹のマカクに皮下注射するために(5回の免疫化のために)、CBD1カクテル免疫原において各ペプチドの正確な量を与えた。使用したアジュバントは、免疫増強剤[CpG ODN 10103、500μg/マカクで使用]を用いる送達系[Montanide ISA 50 VG、50%で使用]で構成される混合物であった。
【0254】
2相の試験:
第I相において、マカクは、0、4、10、16、及び22〜26週目に5回の皮下注射を受け、血漿又は血清、及びPBMCを免疫化から2及び4週間(及び適用可能な場合は6週間)後に回収し、ELISAにより抗体の力価を試験し、また、CBD1エピトープ特異的IFN−γ産生を、ELIspotアッセイを使用してモニターした。
【0255】
第II相において、6匹のワクチン接種されたマカク及び6匹の対照マカクを、最後のワクチン追加免疫から8〜10週間後にHIV−1R5エンベロープ糖タンパク質を発現するSHIV162P4を用いて直腸内経路により投与した。
【0256】
サルでの抗原投与後の経過観察は、ウイルス抗原に対するセロコンバージョンを試験すること、血漿(定量RT−PCRによる)及び細胞性(PBMCにおける定量PCR−DNA)ウイルス負荷をモニターすること、循環CD4+及びCD8+Tリンパ球をカウントすることを含む完全な血液学を含む。抗原投与後のT細胞免疫は、CBD1ペプチドを用いた及びSIV Gag p27抗原を用いたPBMCの特定刺激に応答したIFN−γ及びIL−4分泌を試験することによりモニターされうる。
【0257】
IFN−γ ELISpotアッセイ:
免疫化マカクにおけるCBD1ベースのペプチドに対する細胞性免疫応答を、示した日にサンプリングされたPBMCをCBD1ベースのペプチド(カクテル免疫原中)を用いて刺激することにより、先に記載した(上の方法のポイント2.5)IFN−γ ELISpotアッセイにおいてモニターする。IFN−γ ELISpotアッセイのために試験されるペプチドは以下である:C17K、K27W、K24W、Gag298−312:K−R−W−I−I−L−G−L−N−K−I−V−R−M−Y(配列番号4)、TetA830:A−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号2)及びgp120421−436:K−Q−I−I−N−M−W−Q−V−V−G−K−A−M−Y−A(配列番号3)(対照ペプチドとして)。
【0258】
C.種々のTヘルパーエピトープを使用したCBM由来ペプチドのカクテル
C13Kペプチド(CIWNNMTWMQWDK)(配列番号33)は、C17Kペプチドのより短いバージョンであり、それ自体は種々の動物において免疫原性を示さない。しかし、ジリシンリンカーを使用してTヘルパーエピトープペプチドと融合された場合、このC13Kペプチドは免疫原性を示す。従って、IWNNMTWMQWDK配列(配列番号23)に融合された、TヘルパーエピトープペプチドTetA830、gp120421−436、及びGag298−312でそれぞれ構成されるA30K、K29K、及びK30Kキメラペプチドは、高力価のHIV−1中和抗体を誘導する(実施例8A及び表5)。
【0259】
Tヘルパーエピトープペプチドのアミノ酸配列は以下:
1)破傷風毒素TetA830ペプチド、AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2);
2)HIV−1 gp120421−436ペプチド、KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3);及び
3)HIV−1 Gag298−312ペプチド、KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)
である。
【0260】
さらに、CBMベースのペプチドIWNNMTWMQW(配列番号51)及びIWNNMTW(配列番号50)がGag298−312Tヘルパーエピトープに融合された場合、初代Tリンパ球培養物においてHIV−1感染を中和することが可能である高力価のCBM特異的抗体を誘導する(実施例8)。結果的に、そのようなCBMベースのペプチドIWNNMTWMQW及びIWNNMTWは、最終的なMHC拘束を克服しうる免疫原を生成するために、TetA830及びHIV−1 gp120421−436Tヘルパーエピトープでキメラペプチドを構築するためにも使用されうる。キメラCBMベースのペプチドにおけるいくつかのTヘルパーエピトープの使用は、ヒト被険者におけるMHCクラスII分子の大部分を覆うために、考慮すべき重要なパラメータである。
【0261】
以下の相補的ペプチドは、HIVワクチンカクテル製剤中に含まれうるペプチドの例である。CBMベースのペプチドを有する共線形Tヘルパーエピトープは、上に記載する通りに、ジリシン(−KK−)リンカー及びGPGPGスペーサーを使用して合成されうる:
【0262】
【表33】
【0263】
【表34】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン(CBD1)又は前記CBD1の変異体を含む、から本質的になる又はなるキメラペプチド。
【請求項2】
Tヘルパーエピトープが、破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチド由来である、請求項1記載のキメラペプチド。
【請求項3】
HIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインがSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)から本質的になる、請求項1又は2記載のキメラペプチド。
【請求項4】
CBD1の変異体が以下:
a)XnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
b)XnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
c)XnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;及び
d)XnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである
の間から選ばれる、請求項1又は2記載のキメラペプチド。
【請求項5】
CBD1の変異体がIWNNMTW(配列番号50)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、及びXnWNNMTWMQW(配列番号51)の中から選ばれる、請求項4記載のキメラペプチド。
【請求項6】
Tヘルパーエピトープペプチドが、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)から本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)から本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)から本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである、請求項1〜5のいずれか一項記載のキメラペプチド。
【請求項7】
カベオリン1結合ドメインgp41ペプチド及びTヘルパーエピトープが、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリンリンカー(GPGPG)から選択されるペプチドリンカーにより連結される、請求項1〜6のいずれか一項記載のキメラペプチド。
【請求項8】
【表35】
及びそれらの混合物から本質的になる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項記載のキメラペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド及びその混合物のCBD1ベースのペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)の決定基に対するモノクローナル抗体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む免疫原性組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド及び薬学的に許容可能な担体を含むワクチン。
【請求項14】
配列番号12(K27W)、配列番号35(K24W)、配列番号16(K30W(G))、及び配列番号38(K27W(G))からなる、請求項10〜13のいずれか一項記載の組成物又はワクチン。
【請求項15】
配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドをさらに含む、請求項10〜13のいずれか一項記載の組成物又はワクチン。
【請求項16】
配列番号12(K27W)、配列番号35(K24W)、配列番号16(K30W(G))、及び配列番号38(K27W(G))並びに配列番号31(C17K)からなる、請求項15記載の組成物又はワクチン。
【請求項17】
医薬としての使用のための、請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド又は請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
HIV−1に対する中和抗体の誘導に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又は少なくとも1つのキメラペプチド。
【請求項19】
HIV−1の中和に使用するための、請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
HIV−1又はAIDS又はHIV−1感染の処置に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチドもしくはいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
HIV−1に対する中和抗体を誘導するため又はHIV−1を処置するため又はHIV−1感染を処置するための医薬の製造のための、請求項1〜8のいずれか一項記載の少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは1つのキメラペプチドもしくは複数のキメラペプチドの使用。
【請求項22】
HIV−1を中和するため、HIV−1を処置するため、又はHIV−1感染を処置するために使用するための、請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項23】
HIV−1感染の予防法に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは1つのキメラペプチド若しくは複数のキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項1】
Tヘルパーエピトープに融合されたHIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメイン(CBD1)又は前記CBD1の変異体を含む、から本質的になる又はなるキメラペプチド。
【請求項2】
Tヘルパーエピトープが、破傷風毒素、HIV−1 Gag p24、及びHIV−1 Env−gp120からなる群より選択されるペプチド由来である、請求項1記載のキメラペプチド。
【請求項3】
HIV−1 gp41ペプチドのカベオリン1結合ドメインがSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)から本質的になる、請求項1又は2記載のキメラペプチド。
【請求項4】
CBD1の変異体が以下:
a)XnWNNM(配列番号27)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数である;
b)XnWNNMTW(配列番号28)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜3の数である;
c)XnWNNMTWMQWZp(配列番号29)、式中、X及びZは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、pは0〜3、好ましくは1〜3の数である;及び
d)XnWNNMTWMQWZ(配列番号30)、式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1〜6の数であり、ZはD−Kである
の間から選ばれる、請求項1又は2記載のキメラペプチド。
【請求項5】
CBD1の変異体がIWNNMTW(配列番号50)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、及びXnWNNMTWMQW(配列番号51)の中から選ばれる、請求項4記載のキメラペプチド。
【請求項6】
Tヘルパーエピトープペプチドが、配列AQYIKANSKFIGITEL(配列番号2)から本質的になる破傷風毒素Tet830ペプチド、配列KQIINMWQVVGKAMYA(配列番号3)から本質的になるHIV−1 gp120421−436ペプチド、又は配列KRWIILGLNKIVRMY(配列番号4)から本質的になるHIV−1 Gag298−312ペプチドである、請求項1〜5のいずれか一項記載のキメラペプチド。
【請求項7】
カベオリン1結合ドメインgp41ペプチド及びTヘルパーエピトープが、ジリシンリンカー(KK)又はグリシンプロリンリンカー(GPGPG)から選択されるペプチドリンカーにより連結される、請求項1〜6のいずれか一項記載のキメラペプチド。
【請求項8】
【表35】
及びそれらの混合物から本質的になる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項記載のキメラペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド及びその混合物のCBD1ベースのペプチドSLEQIWNNMTWMQWDK(配列番号1)、IWNNMTWMQWDK(配列番号23)、(p62)ASWSNKSLDDIWNNM(配列番号24)の決定基に対するモノクローナル抗体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体、及び生理学的に許容可能な希釈剤を含む組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む免疫原性組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体、及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド及び薬学的に許容可能な担体を含むワクチン。
【請求項14】
配列番号12(K27W)、配列番号35(K24W)、配列番号16(K30W(G))、及び配列番号38(K27W(G))からなる、請求項10〜13のいずれか一項記載の組成物又はワクチン。
【請求項15】
配列番号31(C17K)に定義するペプチド、配列番号32(C10M)に定義するペプチド、及び/又は配列番号39(CBD1/A)に定義するペプチドをさらに含む、請求項10〜13のいずれか一項記載の組成物又はワクチン。
【請求項16】
配列番号12(K27W)、配列番号35(K24W)、配列番号16(K30W(G))、及び配列番号38(K27W(G))並びに配列番号31(C17K)からなる、請求項15記載の組成物又はワクチン。
【請求項17】
医薬としての使用のための、請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又はいくつかのキメラペプチド又は請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
HIV−1に対する中和抗体の誘導に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチド又は少なくとも1つのキメラペプチド。
【請求項19】
HIV−1の中和に使用するための、請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
HIV−1又はAIDS又はHIV−1感染の処置に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項記載のキメラペプチドもしくはいくつかのキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
HIV−1に対する中和抗体を誘導するため又はHIV−1を処置するため又はHIV−1感染を処置するための医薬の製造のための、請求項1〜8のいずれか一項記載の少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは1つのキメラペプチドもしくは複数のキメラペプチドの使用。
【請求項22】
HIV−1を中和するため、HIV−1を処置するため、又はHIV−1感染を処置するために使用するための、請求項9記載のモノクローナル抗体。
【請求項23】
HIV−1感染の予防法に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の少なくとも1つのキメラペプチド、好ましくは1つのキメラペプチド若しくは複数のキメラペプチド、又は請求項9記載のモノクローナル抗体。
【図2】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【公表番号】特表2012−500829(P2012−500829A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524382(P2011−524382)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061083
【国際公開番号】WO2010/023247
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061083
【国際公開番号】WO2010/023247
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]