説明

CCL2を含む医薬組成物および炎症の処置のためのその使用

炎症の処置を必要とする対象において炎症を処置する方法が提供される。その方法は、対象に治療有効量のCCL2を投与し、それによって炎症を処置することを含む。また、炎症の処置のための、CCL2を含む医薬組成物および単位投薬形態が提供される。本発明の好ましい実施形態よれば、処置される炎症はアレルギーまたは自己免疫疾患と関連し、このような自己免疫疾患としては、例えば、慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患が挙げられるが、これらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCL2を含む医薬組成物、および例えばアレルギーおよび自己免疫疾患に関連する炎症の処置のためにその医薬組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、喘息および自己免疫疾患に関連する炎症の処置に関してより詳細に本明細書において記載されるが、本発明がCCR2/CCL2依存性細胞遊走に関連するいかなる病状の処置にも適用可能であることは理解されるべきである。
【0003】
異種抗原に対する身体の監視は、免疫系の重要な機能である。抗原認識の重要な部分は、高内皮性小静脈(HEV)と呼ばれるリンパ器官の特定の領域に位置する血管の特殊化した内壁を横切る血流からのリンパ節内外へのB細胞およびT細胞の絶え間ない遊走である。この遊走は、抗原の認識および免疫反応の開始に欠くことができない、抗原と適切なB細胞およびT細胞との遭遇の確率を高める。リンパ節におけるホーミングおよび細胞遊走の概説については、von AdrianおよびMempel[Nature reviews,Immunology,3:867−876(2003)]を参照のこと。
【0004】
T細胞は、膜受容体およびそれらのリガンドを通しての種々の細胞型との細胞/細胞接触相互作用に加えて可溶性媒介物質の生成によって、炎症の開始および持続において重要な役割を果たす。一部のT細胞は、ホーミング分子の独特のパターンを示し、別個の標的組織への優先的な動員のために器官特異的細胞と相互作用する。実際、化学誘引物質および細胞活性化物質は特に、炎症を起こした組織への好中球トラフィッキングならびに慢性炎症の中心へのリンパ球ホーミングの原因である。
【0005】
免疫系の特定の機能不全は、リンパ球および好酸球が肺の気道壁に浸潤するときに生じ、最終的には喘息を引き起こす。この気管支気道の慢性炎症疾患は、気道の閉塞および喘鳴の間欠的な発作によって特徴付けられる。特定の症状としては、変化しやすい気流の閉塞、気道の過応答性(AHR)および気道炎症が挙げられる。喘息は機能不全を原因とするが、Tリンパ球、特にTh2パターンのサイトカインを生成するCD4T細胞がこの疾患の病因に顕著な影響を有し、一方Tヘルパー1細胞がアレルギー性の気道炎症および粘液生成を調節することが示唆されている[Cohn,L.ら,J.Exp.Med.190:1309(1999)]。
【0006】
喘息に対する現在の処置としては、症状の即時軽減をもたらすが疾患を治療しないβ2アドレナリン受容体アゴニストに基づく苦痛軽減の気管支拡張剤、および抗炎症処置に基づく長期の治療が挙げられる。しかしながら、喘息の処置は、大半の場合において生涯続き、多くの医薬または頻繁な医薬の投与を必要とする点で不満足なままである。これは、その不便さまたは医薬の長期使用に関連する副作用の増加のために、対象による処置の放棄または誤用のいずれかをもたらし、しばしば薬物耐性の危険を増大するのみならず患者の生活の質をも危うくする。βアゴニストの長期使用はまた、頻脈(速い心臓の鼓動)、骨格筋の震え、低カリウム血症、乳酸の増加、頭痛、および高血糖症を含む著しい副作用を伴う。
【0007】
免疫系の他の機能不全は、免疫細胞が身体自身の細胞および組織を攻撃するときに起こり、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ(RA)および炎症性腸疾患(IBD、例えば大腸炎))を生じる。慢性関節リウマチは、関節の慢性的な炎症性の自己免疫疾患である。RAの原因は現在不明であるが、いったん誘発されると、CD4+およびCD8+T細胞を含む免疫応答が滑膜の炎症を引き起こす。RAはまた、皮膚、血管、心臓、肺および筋肉を含む全身の関節以外の組織に影響する全身性疾患でもある。現在、慢性関節リウマチに対して知られている治療法は存在せず、処置の主な目的は、関節の炎症および痛みを低減させること、関節機能を最大化すること、ならびに関節の破壊および変形を予防することである。
【0008】
IBD、主にクローン病および潰瘍性大腸炎(UC)は、胃腸管に影響する自己免疫炎症状態である。IBDは現在、粘膜のTリンパ球、特にCD4+T細胞の活性化によって引き起こされると考えられている[Neurath,AGAH 2003,2:op019]。IBDの現在の処置としては、抗炎症剤および免疫抑制剤(ステロイドベースのものを含み、以下にさらに説明される)が挙げられる。しかしながら、これらの処置は満足できないままであり、IBDは多くの医薬の服用、そして時には頻繁な医薬の服用を必要とする生涯続く疾患のままである。
【0009】
特に喘息の処置のための、そして一般に自己免疫疾患のための抗炎症剤としては、吸入または経口のいずれかによって摂取され、ともに副作用を伴うステロイドベースの医薬が挙げられる。副作用としては、吸入投薬において、声がしゃがれることおよび喉がヒリヒリすること(通常、菌の感染を伴う)が挙げられ、そして長期の使用または経口投与に伴うより深刻な危険としては、副腎機能および(特に、子供の成長遅延をもたらす)成長ホルモン生成の消失、感染のしやすさの増大、遅い治癒、(脚の腫脹、血圧の上昇、体重の増大、および心臓疾患をもたらす)塩類の鬱滞、震え、眼疾患(特に緑内障および白内障)のかかりやすさの増大、挫傷しやすくなる皮膚の薄化(紫斑病)、骨の細化(骨粗鬆症)などが挙げられる。
【0010】
ロイコトリエン修飾因子での抗炎症処置は、それが明白な副作用を伴わない点で有利であると考えられたが、これらの薬物の効果は議論の余地がある。ロイコトリエン修飾因子は、喘息および自己免疫状態において典型的に起こり、かつ特定の一部の患者のみに限定されていると考えられる炎症カスケードの特定の部分を遮断する。さらに、他の処置と同様に、これらは予防薬として摂取されることが必要であり、不十分または非効率な自己投与はそれらの効率をさらに低減する。
【0011】
他の喘息治療は、ヒスタミンの放出を妨げるクロモリンナトリウムおよびネドクロミルナトリウムのようなマスト細胞阻害剤に基づく。しかしながら、これらの薬物は効力が強くなく、重篤な症状または既に現れている症状を軽減せず、一日に4回摂取されることが必要とされ、そして一ヶ月の期間の後にのみ効果が現れ始める。
【0012】
従って、喘息、慢性関節リウマチおよびIBDは、望ましくない副作用と共に薬物の不都合な使用を伴う生涯続く処置を必要とする慢性疾患のままである。
【0013】
喘息を含む炎症状態に対する従来の研究は、リンパ節(LN)または炎症の部位への白血球の動員に焦点を置いていた。しかしながら、これらの部位への細胞のホーミングを消極的に制御するかまたは防止し、それによって特定のリンパ組織および末梢組織で免疫応答の微調整に寄与する分子機構についてはほとんど知られていない。
【0014】
最近、リンパ節へのB細胞のホーミングを消極的に調節する二つの経路が特徴付けられた。未成熟なB細胞は、細胞外マトリクスへのB細胞自身のインテグリン媒介接着をダウンレギュレートすることができ、それによって非脾臓部位内へのそれらの遊走を抑制することが見出された[Flaishon,L.ら、J.Exp.Med.192:1381(2000)]。この阻害は、二つの独立した経路によって媒介されている。第一の経路は、未成熟なB細胞によるIFN−γの分泌に関係し、それは、その受容体と相互作用し、B細胞のインテグリン媒介接着および遊走を促進するために必要とされる細胞骨格の再配列の阻害を引き起こす。第二の経路は、ケモカイン受容体、CCR2によって調節される。CCR2欠損マウスで行われた分析において、CCR2がIFN−γの消極的な調節とは独立してリンパ節への未成熟なB細胞のホーミングをダウンレギュレートすることが見出された。これは、SDF−1刺激に対する応答としての細胞骨格の再配列および未成熟なCCR2−/−B細胞遊走の増大によって、およびLNへのCCR2−/−B細胞ホーミングの増大によって決定された。CCR2は通常、マウスの未成熟なB細胞上で発現され、その発現は成熟段階への分化の後にダウンレギュレートされる[Flaishon,L.ら、Blood 104:933.(2004)]。
【0015】
CCL2(マクロファージ化学走化タンパク質1またはMCP−Iとも呼ばれる)は、炎症時に特に高度に発現され、かつリンパ球化学誘因物質と同様に強力な単球である。CCL2は、回転する単球上のCCR2を活性化し、インテグリン媒介拘束を誘発する。CCL2はまた、最も強力なヒスタミン誘導因子のうちの1つである。
【0016】
CCL2/CCR2相互作用の研究および医療適用の大半は、癌[例えば、ovarian cancer:Sica,A.ら、J.Immunology(2000)164(2):733−8)]、炎症性疾患[例えば、human crescentic glomerulonephritis:Segererら、J.Am.Soc.Nephrol.11:2231−2242(2000)]および自己免疫反応[例えば、the significant role CCL2 appears to play during the early stages of allergic responses because of its ability to induce mast cell activation,directly inducing AHR(airways hyper−responsiveness;Campbellら、J Immunol 163:2160−2167(1999)]の処置に対する可能なモダリティーとしてCCL2/CCR2機能をダウンレギュレートすることを提案する。
【0017】
米国特許出願第20050232923号、同第20050058639号、同第20050054668号、同第20040138171号、同第20040047860号、同第20020106355号および同第20020099054号は、CCL2/CCR2相互作用を拮抗させることによって種々の疾患を処置するために提案された教示の多くの例のうちのごく一部である。CCL2/CCR2相互作用の拮抗の潜在的な治療価値は、例えば喘息を処置することにおいて利用された。オボアルブミン抗原投与されたマウスにおける中和抗体でのCCL2の隔離(sequestration)は、気道過敏性および炎症の顕著な減少をもたらした[Jose−Angel Gonzalo,ら、J.Exp.Med.1998,188,157]。別の研究において、MCP−1−/−マウスは、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)の虫卵での抗原投与に対する応答の減少を示した[Bao Luら、J.Exp.Med.1998,187,601]。
【0018】
従って、現在まで、CCL2の投与による炎症性疾患の処置は一度も提案されてこなかった。
【0019】
従って、上記の制限が無い、CCL2を含む医薬組成物、および炎症を処置するためにそれを使用する方法に対する広く認識された必要性が存在する。
【発明の概要】
【0020】
本発明の1つの側面によれば、炎症の処置を必要とする対象において炎症を処置する方法であって、対象に治療有効量のCCL2を投与し、それによって炎症を処置することを含む方法が提供される。
【0021】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、対象はヒト対象である。
【0022】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、治療有効量はキログラム体重/日あたり1ng〜1μgである。
【0023】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、治療有効量はCCL2の上昇した濃度と関連する望ましくない副作用を避けるように選択される。
【0024】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、治療有効量は細胞遊走または細胞ホーミングを阻害するように選択される。
【0025】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、細胞はCCR2発現細胞である。
【0026】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、細胞は免疫細胞または癌細胞である。
【0027】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、炎症はCCR2/CCL2依存性細胞遊走または細胞ホーミングと関連する。
【0028】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、細胞遊走または細胞ホーミングは、T細胞遊走またはT細胞ホーミングを含む。
【0029】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、炎症はアレルギーと関連する。
【0030】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、アレルギーは喘息である。
【0031】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、炎症は自己免疫疾患と関連する。
【0032】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、自己免疫疾患は慢性関節リウマチである。
【0033】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、自己免疫疾患は炎症性腸疾患である。
【0034】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、炎症は、癌、自己免疫、過敏症、糖尿病、感染、関連する移植およびアレルギーからなる群から選択される病状と関連する。
【0035】
本発明の別の側面によれば、有効成分としてCCL2を含み、さらに医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0036】
本発明のさらに別の側面によれば、炎症を処置するために特定された医薬の製造のためのCCL2の使用が提供される。
【0037】
本発明のさらに別の側面によれば、CCL2を含む単位投薬形態が提供される。
【0038】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、単位投薬形態は1ng〜200μgのCCL2を含む。
【0039】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、単位投薬形態は経口単位投薬形態である。
【0040】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、単位投薬形態は注入可能な単位投薬形態または吸入される単位投薬形態である。
【0041】
本発明のさらに別の側面によれば、細胞遊走を調節する方法であって、細胞遊走を阻害するように選択された一定量のCCL2を含む培地と細胞を接触させ、それによって細胞遊走を調節することを含む方法が提供される。
【0042】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、細胞はCCR2発現細胞である。
【0043】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、細胞は免疫細胞または癌細胞である。
【0044】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、培地は細胞遊走促進剤をさらに含む。
【0045】
本発明は、CCL2を含む医薬組成物、およびアレルギーと関連するような炎症を処置するためにそれを使用する方法を提供することによって、現在知られている構成の欠点に対処することに成功している。
【0046】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0047】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1a〜bは、ナイーブT細胞およびエフェクターT細胞におけるCCR2の発現を示すPCR画像である。図1aは、示されるように、精製されたCD4+T細胞およびCD8+T細胞から生成されたCCR2およびコントロール遺伝子(HPRT)の発現を示す。図1bは、ナイーブCD4+細胞およびそこから偏らせられた(skewed)Th1集団またはTh2集団から生成されたCCR2の発現を示す。提示された結果は3つの異なる実験を表す。ナイーブT細胞またはCD4+T細胞集団から偏らせられたTh1およびTh2と比較して、CD4+T細胞群におけるCCR2のより高い発現に注目されたい。
【図2】図2a〜eは、ナイーブT細胞の細胞骨格の再配列および遊走に対するCCL2の阻害効果を示す棒グラフである。図2aおよび図2bは、トランスウェル遊走アッセイの結果を示す。培地またはCCL2で前処理されたナイーブT細胞は、CXCL12(図2a)またはSLC(CCL21、図2b)の存在下でトランスウェルプレートの上部ウェルに入れられた。3時間後、下部チャンバにおいて見出された遊走細胞の数がFACS分析によって評価された。3つの異なる実験からの結果が、上部チャンバに投入された細胞の数に対する下部チャンバにおける遊走細胞の数である遊走百分率割合で示された。図2c〜eは、細胞骨格の再配列に対するCCL2の影響を示す。ナイーブT細胞は、CCL2(0.1ng/ml)の存在下または不在下でCXCL12(図2c)またはSLC(CCL21、図2d)で刺激された。ナイーブT細胞は、Rantes、Miplβ、Eotoxin、またはCXCL12(0.1ng/ml、図2e)の存在下または不在下でCCL21(0.4mg/ml)で刺激された。その後、細胞は固定および浸透処理され、それらの細胞内FアクチンがFITCファロイジンで染色された。重合されたアクチンの変化がFACSによって分析された。これらの3つの異なる実験からの結果が、ケモカイン刺激から生じるアクチン重合(百分率割合)の増加として示される。
【図3】図3は、ERKリン酸化のCCL2阻害を示す図表である。ナイーブT細胞は、CCL2で30分間前処理され、次いで、CCL21によって30秒または60秒間刺激され、細胞は洗浄され、溶解され、そして(実施例1に詳述されるように)SDS−PAGEによって分離された。タンパク質は、ニトリセルロース膜に電気移動され、抗リン−ERKと反応されられた後に、ペルオキシダーゼ標識されたヤギ抗マウスと反応させられるか、またはポリクローナル抗チューブリンと反応されられた後に、ペルオキシダーゼ抗ウサギと反応されられた。
【図4】図4a〜bは、LNへのナイーブT細胞のホーミングを示す棒グラフである。CCL2有りまたはCCL2無しでインキュベートされ、蛍光色素CFDA−SEで標識された等量のT細胞が、マウスに注射された。3時間後、末梢リンパ節(PLN、図4a)または脾臓(図4b)が回収され、FITC陽性集団がFACSによって分析された。提示された結果は4つの異なる実験の代表値である。
【図5】図5a〜gは、CCL2によるマウスPLNにおけるHEV壁に対するインテグリンが媒介するリンパ球の強固な接着の阻害を示す図表である。図5aは、低倍率(5倍)での生体内顕微鏡写真およびその代表的な腸骨下部LNのスケッチである。LN静脈血は、LOV(序列I、IIの小静脈、および序列IIIの小静脈のいくつか)およびHEV(序列III、IV、およびVの小静脈)を介して浅腹壁静脈のリンパ外側枝内に流れ出る。図5bは、腸骨下部LNの小静脈ツリー(venular tree)におけるカルセイン標識ナイーブコントロールまたはCCL2処理リンパ球の回転画分を示し、図5c〜eはそれらの固着画分を示す。リンパ球は、CCL2(1ng/ml、30秒間)で前処理されたか、または未処理のままであり、そして大腿動脈に注射された。回転画分は、100×回転細胞の数/固着細胞の数によって計算される。固着画分は、100×(10秒以上、30秒以上または1分以上)拘束された細胞の数/回転細胞の数によって計算される。データは、マウス(n=3匹の動物が分析された)あたり3〜5個の小静脈の平均±SEMである。図5f〜gは、PLN小静脈ツリーにおいて拘束されたリンパ球の生体内顕微鏡写真(10倍)を示す。PLN小静脈におけるCCL2処理リンパ球(図5f)またはコントロールリンパ球(図5g)の蓄積は、蛍光的に標識された細胞の静脈注射の30分後に分析された。
【図6】図6a〜dは、低用量CCL2がどのようにしてCCL21によるLFA−1またはVLA−4の急速な活性化を妨げずに拘束後の接着強化を損なうかを示すグラフである。図6aおよび6cは、各々単独でコーティングされたか、あるいは0.5dyn/cmおよび0.75dyn/cmの剪断応力でそれぞれ熱不活性CCL21または機能的CCL21で共固定された、ICAM−1(図6a)またはVCAM−1(図6c)と相互作用する(インタクトのまたはCCL2前処理された)ヒトT細胞間の接着係留(adhesive tether)の頻度および強度を示す。図6bおよび6dは、2分間蓄積された(インタクトのまたはCCL2前処理された)ヒトT細胞を示し、示された時点について、高い剪断応力(5dyn/cm)の継続的な適用によるそれらの接着持続性(分離に耐える能力)が評価された。ICAM−1(図6b)またはVCAM−1(図6d)の結果は、低い剪断流(shear flow)で最初に蓄積された細胞の%として示される。
【図7】図7a〜eは、エフェクターT細胞上でのCCR2発現および生体外でのエフェクターT細胞遊走のCCL2阻害を示す図表である。図7aは、Th1およびTh2細胞集団を示す。RNAが単離され、CCL2、T−bet、GATA−3またはHPRTのmRNAレベルが分析された。図7b〜cは、CCL21(0.4mg/ml、図7b)またはCXCL12(0.1ng/ml、図7c)で、CCL2(0.1ng/ml)の存在下または不在下で15秒間刺激され、固定および浸透処理され、そしてそれらの細胞内FアクチンがFITCファロイジンで染色された、エフェクター(Th1)細胞を示す。重合されたアクチンの変化がFACSによって分析された。アクチン重合の百分率割合の増加は、[ケモカイン刺激の存在下でのアクチン重合−ケモカイン無しのアクチン重合]/ケモカイン無しのアクチン重合として計算された。図7d〜eは、CXCL12(0.1mg/ml、図7d)またはCCL21(0.4mg/ml、図7e)で、CCL2(0.1ng/ml)の存在下または不在下で15秒間刺激され、固定および浸透処理され、そしてそれらの細胞内FアクチンがFITCファロイジンで染色された、エフェクター(Th2)細胞を示す。重合されたアクチンの変化がFACSによって分析された。アクチン重合の百分率割合の増加は、[ケモカイン刺激の存在下でのアクチン重合−ケモカイン無しのアクチン重合]/ケモカイン無しのアクチン重合として計算された。提示される結果は3つの異なる実験の代表値である。
【図8】図8a〜eは、マウス喘息モデルにおけるCCL2によるアレルギー応答の阻害を示す図表である。図8aは、15日目の気道応答性について分析されたコントロールマウス(PBS処置)、OVA抗原刺激マウス(OVA)およびCCL2(60ng)を腹腔内注射されたOVA抗原刺激マウスを示す。示される値はΔPennを表し、それは後期抗原投与または初期抗原投与の後のPenn測定値から抗原投与前のPenn測定値を引くことによって計算された。ベース線のPennレベルは、PBS処置コントロールマウス、OVA抗原刺激マウス、およびCCL2で処置されたOVA抗原刺激マウス間で同等であった。結果は、処置あたり9匹の動物の平均を表す。図8b〜dは、CCL2処置マウスの肺の組織構造を示す。コントロール(PBS、図8b)、OVA抗原刺激(OVA、図8c)およびCCL2で処置されたOVA抗原刺激(CCL2、図8d)の組織学的特徴が示される。主に好酸球およびリンパ球からなる多形性の気管支周囲および血管周囲の浸潤物が、OVA抗原刺激マウス(図8c)由来の肺組織においてのみ見られ、PBS抗原刺激またはCCL2処置マウスにおいては見られないことに注目されたい。図8eは、コントロール(PBS処置)マウス、OVA抗原刺激(OVA)マウスおよびOVA抗原刺激かつCCL2注射された(CCL2)マウスにおける、病理学者によって1〜4の炎症スコアが与えられた気管支周囲および血管周囲の炎症性浸潤物を示す。グラフは、9匹の動物のスコアを表す。
【図9】図9は、ラットモデルにおけるCCL2によるアジュバント関節炎(AA)の阻害を示すグラフである。AAは実施例6において記載されるようにラットにおいて誘発され、低用量CCL2またはPBSでの処置によって分類された。関節の炎症、赤み、および変形の度合いに基づいて、0〜4の相対的スコアが各肢に与えられた;従って、個々の動物に対して最大の考えられうるスコアは16であった。グラフは、1日おきに測定された9匹の動物の疾患スコアを表す。
【図10】図10は、マウスモデルにおけるCCL2によるTNBS大腸炎の阻害を示すグラフである。TNBS大腸炎は、実施例6において記載されるようにマウスにおいて誘発され、以下のように投薬法によって分類された:0日目(TNBS誘発直後)〜6日目までの異なるCCL2濃度(30ng、60ngまたは180ng)での毎日の腹腔内注射。コントロール群は、PBSのみで、またはデキサメタゾン(Dexa)で毎日腹腔内注射され、あるいは未処置のままの負のコントロールであった。大腸は、Wallace基準に従って(充血、腸管の肥厚および潰瘍形成の範囲のような炎症を反映する基準に基づいて0〜16の点数で)病変について顕微鏡的に評価された。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、CCL2を含む医薬組成物、およびアレルギーに関連するような炎症の処置のためにそれを使用する方法の発明である。
【0050】
本発明の原理および作用が、図面および付随する説明を参照してより十分に理解されることができる。
【0051】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0052】
単球化学誘因タンパク質(MCP−1)とも呼ばれるCCL2は、単球および記憶T細胞を特異的に誘引することがよく知られている。その発現は、細胞遊走によって特徴付けられる種々の疾患において起こり、炎症性疾患におけるその本質的な役割についての実質的な生物学的証拠および遺伝学的証拠が存在する。多くの研究は、炎症性疾患(例えば、アレルギーおよび癌。背景技術の節を参照のこと)の処置のためにCCL2/CCR2を拮抗させることを提案する。
【0053】
しかしながら、現在まで、炎症の処置のためにCCL2を使用することが提案されたことは一度も無かった。
【0054】
本発明を実施に移す際に、本発明者らは驚くべきことに、(CCL2の阻害よりもむしろ)CCL2の低用量の投与がT細胞遊走を効果的に低減するために使用されることができ、従って炎症の処置のために使用されることができることを発見した。
【0055】
本明細書中下記においておよび以下の実施例の節において示されるように、本発明者らは、低レベルのCCL2が、生体外でナイーブT細胞およびエフェクターT細胞の細胞骨格の再配列および遊走を特異的にダウンレギュレートすること(実施例1および5)、そして生体内でリンパ節へのT細胞ホーミングを阻害すること(実施例2)を示した。さらに、CCL2処置は、T細胞を、VCAM−1に対するCCL21誘発VLA−4依存性接着の強化に欠けるものにする(実施例3)。特に、CCL2前処理は、回転、およびインテグリンを媒介とする拘束の最も初期の事象に影響せず、むしろマウス末梢リンパ節におけるインテグリン依存性リンパ球のHEV壁に対する強固な接着およびHEV壁を横切る管外遊出を阻害する後期の段階に影響を及ぼした(実施例3)。その結果はさらに、CCL2での前処理が、T細胞の接着の強化を発現できなくし、従って、T細胞が高剪断応力に連続的さらされたときにそれらのインテグリンリガンドから容易に分離されることを示した(実施例4)。生体内モデルは、CCL2が、喘息、慢性関節リウマチおよび炎症性腸疾患(大腸炎、実施例6)において劇的な抗炎症効果を有することを示した。
【0056】
これらの結果は、炎症の処置のためのCCL2ポリペプチドの使用を初めて支持する。
【0057】
従って、本発明の1つの側面によれば、炎症の処置を必要とする対象において炎症を処置する方法が提供される。その方法は、治療有効量のCCL2ポリペプチドを対象に投与し、それによって炎症を処置することを含む。
【0058】
本明細書中において使用される用語「必要とする対象」は、本発明の処置モダリティーの恩恵を受けることができる哺乳動物、特にヒト対象を示す。好ましくは、対象は炎症と関連しない病状に罹患していない。
【0059】
本明細書中で使用される用語「処置する」は、炎症の有害な影響を防止し、治療し、逆転させ、弱め、緩和し、最小限にし、抑制し、または、停止させることを示す。
【0060】
本明細書中で使用される用語「炎症」は、CCR2を発現する細胞の遊走が炎症の開始または進行に寄与する炎症性応答を含むいかなる病状をも示す。好ましくは、炎症はアレルギー、喘息、IBD(例えば、大腸炎)または慢性関節リウマチと関連する。
【0061】
炎症性応答を含む多くの疾患および状態が、本明細書中上記に記載される方法論を使用して処置されることができる。このような疾患および状態の例が下に要約される。
【0062】
炎症性疾患−この疾患としては、慢性の炎症性疾患および急性の炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
過敏症に関連する炎症性疾患
過敏症の例としては、I型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時過敏症、抗体媒介過敏症、免疫複合体媒介過敏症、Tリンパ球媒介過敏症およびDTHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
I型過敏症または即時過敏症、例えば、喘息など。
【0065】
II型過敏症としては、リウマチ様疾患、リウマチ様自己免疫疾患、慢性関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol 2000 Jul;15(3):791)、脊椎炎、強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001;3(3):189)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Erikson J.ら、Immunol Res 1998;17(1−2):49)、硬化症、全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol.1999 Mar;6(2):156);Chan OT.ら、Immunol Rev 1999 Jun;169:107)、腺疾患、腺の自己免疫疾患、膵臓の自己免疫疾患、糖尿病、I型糖尿病(Zimmet P.Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、甲状腺疾患、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス病(Orgiazzi J.Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29(2):339)、甲状腺炎、自発性自己免疫性甲状腺炎(Braley−Mullen H.およびYu S、J Immunol 2000 Dec 15;165(12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999 Aug;57(8):1810)、粘液水腫、特発性粘液水腫(Mitsuma T.Nippon Rinsho.1999 Aug;57(8):1759)、自己免疫性生殖疾患、卵巣疾患、卵巣の自己免疫性(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、自己免疫性抗精子不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol.2000 Mar;43(3):134)、反復した胎児消失(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107−9)、神経変性疾患、神経学的疾患、神経学的自己免疫疾患、多発性硬化症(Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112(1−2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl.1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.およびKraig E、Int Rev Immunol 1999;18(1−2):83)、運動神経障害(Kornberg AJ.J Clin Neurosci.2000 May;7(3):191)、ギラン・バレー症候群、神経障害および自己免疫性神経障害(Kusunoki S.、Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):234)、筋無力症疾患、ランバード・イートン筋無力症症候群(Takamori M.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):204)、腫瘍随伴性神経学的疾患、小脳萎縮症、腫瘍随伴性小脳萎縮症、腫瘍非随伴性スティッフマン症候群、小脳萎縮症、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シドナム舞踏病、ジル・ド・ラ・ツレット症候群、多発性内分泌腺症、自己免疫性多発性内分泌腺症(Antoine JC.およびHonnorat J.Rev Neurol(Paris)2000 Jan;156(1):23)、神経障害、異常免疫性神経障害(Nobile−Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419);ニューロミオトニー、後天性ニューロミオトニー、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci.1998 May 13;841:482)、心臓血管疾患、心臓血管の自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化(Matsuura E.ら、Lupus.1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O.Lupus.1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107−9)、肉芽腫症、ヴェーゲナー肉芽腫症、動脈炎、高安動脈炎および川崎症候群(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112(15−16):660);抗第VIII因子の自己免疫疾患(Lacroix−Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000;26(2):157);血管炎、壊死性小血管血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、糸球体腎炎、少免疫性巣状壊死性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH.Ann Med Interne(Paris).2000 May;151(3):178);抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis、1999;14(4):171);心不全、心不全におけるアゴニスト様β−アドレナリン作動性受容体抗体(Wallukat G.ら、Am J Cardiol、1999 Jun 17;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F.Ann Ital Med Int.1999 Apr−Jun;14(2):114);溶血性貧血、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998 Jan;28(3−4):285)、胃腸疾患、胃腸管の自己免疫疾患、腸疾患、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol.2000 Jan;23(1):16)、セリアック病(Landau YE.およびShoenfeld Y.Harefuah 2000 Jan 16;138(2):122)、筋組織の自己免疫疾患、筋炎、自己免疫性筋炎、シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123(1):92);平滑筋の自己免疫疾患(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999 Jun;53(5−6):234)、肝疾患、肝臓の自己免疫疾患、自己免疫性肝炎(Manns MP.J Hepatol 2000 Aug;33(2):326)および原発性胆汁性肝硬変(Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol、1999 Jun;11(6):595)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
IV型過敏症またはT細胞媒介過敏症としては、リウマチ様疾患、慢性関節リウマチ(Tisch R、McDevitt HO.Proc Natl Acad Sci USA 1994 Jan 18;91(2):437)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Datta SK.、Lupus 1998;7(9):591)、腺疾患、腺の自己免疫疾患、膵臓疾患、膵臓の自己免疫疾患、I型糖尿病(Castano L.およびEisenbarth GS.Ann.Rev.Immunol.8:647)、甲状腺疾患、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス病(Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92(1):77)、卵巣疾患(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、前立腺炎、自己免疫性前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology、1997 Dec;50(6):893)、多腺性症候群、自己免疫性多腺性症候群、I型自己免疫性多腺性症候群(Hara T.ら、Blood、1991 Mar 1;77(5):1127)、神経学的疾患、自己免疫性神経学的疾患、多発性硬化症、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry、1994 May;57(5):544)、重症筋無力症(Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990 Dec;20(12):2563)、スティッフマン症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2001 Mar 27;98(7):3988)、心臓血管疾患、シャガス病における心臓の自己免疫性(Cunha−Neto E.ら、J Clin Invest 1996 Oct 15;98(8):1709)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(Semple JW.ら、Blood 1996 May 15;87(10):4245)、抗ヘルパーTリンパ球自己免疫性(Caporossi AP.ら、Viral Immunol 1998;11(1):9)、溶血性貧血(Sallah S.ら、Ann Hematol、1997 Mar;74(3):139)、肝疾患、肝臓の自己免疫疾患、肝炎、慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54(3):382)、胆汁性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE.、Clin Sci(Colch)1996 Nov;91(5):551)、腎疾患、腎臓の自己免疫疾患、腎炎、間質性腎炎(Kelly CJ.J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1(2):140)、結合組織疾患、耳疾患、自己免疫性結合組織疾患、自己免疫性耳疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994 Aug;157(1):249)、内耳の疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)、皮膚疾患、皮膚病、真皮の疾患、水疱性皮膚疾患、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および落葉状天疱瘡が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
遅発型過敏症の例としては、接触性皮膚炎および薬疹が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
Tリンパ球媒介過敏症型の例としては、ヘルパーTリンパ球および細胞障害性Tリンパ球が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
ヘルパーTリンパ球媒介過敏症の例としては、T1リンパ球媒介過敏症およびT2リンパ球媒介過敏症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
自己免疫疾患
自己免疫疾患としては、心臓血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経学的疾患、筋疾患、腎疾患、生殖関連疾患、結合組織疾患および全身性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
自己免疫性による心臓血管疾患の例としては、アテローム性動脈硬化(Matsuura E.ら、Lupus.1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O.Lupus.1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107〜9)、ヴェーゲナー肉芽腫症、高安動脈炎および川崎症候群(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112(15−16):660)、抗第VIII因子による自己免疫疾患(Lacroix−Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000;26(2):157)、壊死性小血管血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、少免疫性巣状壊死性糸球体腎炎および半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH.Ann Med Interne(Paris).2000 May;151(3):178)、抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis 1999;14(4):171)、抗体誘導の心不全(Wallukat G.ら、Am J Cardiol.1999 Jun 17;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F.Ann Ital Med Int.1999 Apr−Jun;14(2):114;Semple JW.ら、Blood 1996 May 15;87(10):4245)、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998 Jan;28(3−4):285;Sallah S.ら、Ann Hematol 1997 Mar;74(3):139)、シャガス病における心臓の自己免疫性(Cunha−Neto E.ら、J Clin Invest 1996 Oct 15;98(8):1709)、および、抗ヘルパーTリンパ球による自己免疫性(Caporossi AP.ら、Viral Immunol、1998;11(1):9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
自己免疫によるリウマチ様疾患の例としては、慢性関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol 2000 Jul;15(3):791;Tisch R、McDevitt HO.Proc Natl Acad Sci units S A 1994 Jan 18;91(2):437)および強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001;3(3):189)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
自己免疫による腺疾患の例としては、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーヴス病、甲状腺炎、突発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣の自己免疫性、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎およびI型自己免疫性多腺性症候群が挙げられるが、これらに限定されない。疾患としては、膵臓の自己免疫疾患、I型糖尿病(Castano L.およびEisenbarth GS.Ann.Rev.Immunol.8:647;Zimmet P.Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、自己免疫性甲状腺疾患、グレーヴス病(Orgiazzi J.Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29(2):339;Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92(1):77)、突発性自己免疫性甲状腺炎(Braley−Mullen H.およびYu S、J Immunol 2000 Dec 15;165(12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999 Aug;57(8):1810)、特発性粘液水腫(Mitsuma T.Nippon Rinsho.1999 Aug;57(8):1759)、卵巣の自己免疫性(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998 Feb;37(2):87)、自己免疫性抗精子不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol.2000 Mar;43(3):134)、自己免疫性前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology 1997 Dec;50(6):893)およびI型自己免疫性多腺性症候群(Hara T.ら、Blood.1991 Mar 1;77(5):1127)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
自己免疫による胃腸疾患の例には、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol.2000 Jan;23(1):16)、セリアック病(Landau YE.およびShoenfeld Y.Harefuah 2000 Jan 16;138(2):122)、大腸炎、回腸炎およびクローン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
自己免疫による皮膚疾患の例としては、自己免疫による水疱性の皮膚疾患(例えば、尋常性天疱瘡、水疱性天疱瘡および落葉状天疱瘡など、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
自己免疫による肝疾患の例としては、肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54(3):382)、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE.Clin Sci(Colch) 1996 Nov;91(5):551;Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol.1999 Jun;11(6):595)および自己免疫性肝炎(Manns MP.J Hepatol 2000 Aug;33(2):326)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
自己免疫による神経学的疾患の例としては、多発性硬化症(Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112(1−2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl.1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.およびKraig E、Int Rev Immunol 1999;18(1−2):83;Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990 Dec;20(12):2563)、神経障害、運動神経障害(Kornberg AJ.J Clin Neurosci.2000 May;7(3):191);ギラン・バレー症候群および自己免疫性神経障害(Kusunoki S.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):234)、筋無力症、ランバード・イートン筋無力症症候群(Takamori M.Am J Med Sci.2000 Apr;319(4):204);腫瘍随伴性神経学的疾患、小脳萎縮症、腫瘍随伴性の小脳萎縮症およびスティッフマン症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci units S A 2001 Mar 27;98(7):3988);腫瘍非随伴性スティッフマン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シドナム舞踏病、ジル・ド・ラ・ツレット症候群および自己免疫性多発性内分泌腺症(Antoine JC.およびHonnorat J.Rev Neurol(Paris)2000 Jan;156(1):23);異常免疫による神経障害(Nobile−Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419);後天性ニューロミオトニー、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci.1998 May 13;841:482)、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994 May;57(5):544)および神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
自己免疫による筋疾患の例としては、筋炎、自己免疫性筋炎および原発性シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123(1):92)、および、平滑筋の自己免疫疾患(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999 Jun;53(5−6):234)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
自己免疫による腎疾患の例としては、腎炎、および、自己免疫性間質性腎炎(Kelly CJ.J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1(2):140)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
生殖に関連する自己免疫疾患の例としては、反復した胎児消失(Tincani A.ら、Lupus 1998;7 Suppl 2:S107〜9)が挙げられるが、これに限定されない。
【0081】
自己免疫による結合組織疾患の例としては、耳の疾患、自己免疫による耳の疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994 Aug;157(1):249)、および、内耳の自己免疫疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
自己免疫全身性疾患の例としては、全身性エリテマトーデス(Erikson J.ら、Immunol Res 1998;17(1−2):49)および全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol.1999 Mar;6(2):156;Chan OT.ら、Immunol Rev 1999 Jun;169:107)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
感染性疾患
感染性疾患の例としては、慢性の感染性疾患、亜急性の感染性疾患、急性の感染性疾患、ウイルス疾患、細菌疾患、原虫疾患、寄生虫疾患、真菌疾患、マイコプラズマ疾患およびプリオン疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
移植片拒絶疾患
移植片の移植に関連する疾患の例としては、移植片拒絶、慢性の移植片拒絶、亜急性の移植片拒絶、超急性の移植片拒絶、急性の移植片拒絶および移植片対宿主病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
アレルギー性疾患
アレルギー性疾患の例としては、喘息、皮疹、じんま疹、花粉アレルギー、ほこり・ダニアレルギー、毒液アレルギー、化粧品アレルギー、ラテックスアレルギー、化学物質アレルギー、薬物アレルギー、昆虫咬傷アレルギー、動物鱗屑アレルギー、刺毛植物アレルギー、ツタウルシアレルギーおよび食物アレルギーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
癌性疾患
癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。癌性疾患の具体的な例としては、骨髄性白血病、例えば、慢性骨髄性白血病、成熟に伴う急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、増大した好塩基球を伴う急性非リンパ球性白血病、急性単球性白血球、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病など;悪性リンパ腫、例えば、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫など;リンパ性白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病など;骨髄増殖性疾患、例えば、固形腫瘍、良性髄膜腫、唾液腺の混合腫瘍、慢性腺腫など;腺癌、例えば、小細胞肺癌、腎臓癌、子宮癌、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、結腸癌、肉腫、脂肪肉腫、粘液様肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫(肺胞)、骨外性粘液様軟骨肉腫、ユーイング肉腫などが挙げられ、他の癌には、精巣および卵巣の未分化胚細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、悪性メラノーマ、中皮腫、乳癌、皮膚癌、前立腺癌および卵巣癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本明細書中上記で述べたように、本発明のこの側面の方法は、治療有効量のCCL2を対象に投与し、それによって炎症を処置することによって行われる。
【0088】
本明細書中に使用される用語「CCL2」は、哺乳動物(例えば、ヒト)CCL2タンパク質(ポリぺプチドと交換可能に用いられる)、またはGenBankアクセッション番号NM_002982またはNP_002973に記載されるようなCCL2タンパク質の模倣物を示す。CCL2は、組換えDNA技術または固相技術を用いて合成されることができる。CCL2はまた、市販されている(例えば、Peprotech Inc.Rocky Hill,NJ)。本発明のCCL2は臨床適用のために使用されるので、それは、好ましくは滅菌されているか、または有りうる汚染因子を除去される(例えば、細菌がフィルターによって除去される)ことができる。
【0089】
本発明のCCL2は、それ自体で、または、CCL2が好適なキャリアまたは賦形剤と混合される医薬組成物において対象に投与されることができる。
【0090】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分(CCL2)の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、対象に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0091】
本明細書中で使用される用語「有効成分」は、意図される生物学的効果を担うCCL2を示す。
【0092】
以降、交換可能に使用されることができる表現「生理学的に許容され得るキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は、対象に対する著しい刺激を生じさせず、しかも投与された化合物の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。
【0093】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0094】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に完全に組み込まれる。
【0095】
好適な投与経路としては、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達、または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が挙げられることができる。
【0096】
あるいは、例えば、患者の組織領域に直接的に医薬組成物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に医薬組成物を投与することができる。
【0097】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0098】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0099】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な生理的食塩緩衝液など)において配合されることができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0100】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのようなキャリアは、医薬組成物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0101】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0102】
経口使用され得る医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0103】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0104】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0105】
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0106】
非経口投与される医薬組成物としては、水溶性形態の活性調製物の水溶液が挙げられる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0107】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0108】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0109】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物としては、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、「治療有効量」は、治療されている対象の疾患の症状(例えば、アレルギー)を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、治療されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(例えば、CCL2)の量を意味する。本発明のCCL2の治療有効量は、CCR2依存性の細胞遊走または細胞ホーミングを少なくとも部分的に阻害するように選択される。
【0110】
治療有効量の決定は、特に、本明細書中に与えられる詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0111】
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外アッセイおよび細胞培養アッセイ(例えば、本明細書中以下にさらに記載されるような遊走アッセイ)から最初に推定されることができる。例えば、投与量は、望ましい濃度または力価を達成するために動物モデル(以下の実施例の節において示されるような動物モデル。アレルギーの他のモデルとしては、例えば、化合物48/80によって誘発される結膜炎および皮膚アレルギーが挙げられる。PCT WO 00/78346を参照のこと)において決定されることができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0112】
薬物および栄養補助食品を製造するための1kgあたりの質量での投与量の計算は、FDAによって公開されるような、体表面積に基づく動物投与量のヒト等価投与量(HED)への変換に基づいて行われることができる[Guidance for industry and reviewers,estimating the safe starting dose in clinical trials for therapeutics in adult healthy volunteers;ウェブサイト:http://www.fda.gov/cber/guidelines.htm]。下記の表1を参照のこと。

【0113】
従って、上記表1によれば、マウスに与えられた有効投与量は、実施例の節の実施例2において記載されるように1日あたり60ngのCCL2であった。従って、本発明の有効投与量は、(マウス重量:25グラムに対して)2.4μg CCL2/Kg体重であった。従って、マウス体重が11〜34グラムの範囲であることを考慮し、かつ標準のヒト重量が70kgであると仮定されることを考慮すると、HEDは、マウスに与えられた投与量に0.081を掛け算することによって達成され、0.2μg/Kg体重となる。従って、標準的なヒト重量は50〜100Kgの範囲であるので、与えられるであろう投与量は1日あたり10〜20μgのCCL2である。標準範囲外の重量については、HEDは、式:HED=(動物投与量(mg/Kg))×[(動物重量(Kg))/(ヒト重量(Kg)]0.33によって計算されることができる。
【0114】
あるいは、計算は血液量に関して行われることもでき[Bussi SおよびMorisetti A.、Safety margins of intravascular contrasts Arh Hig Rada Toksikol 56:157−160,(2005)を参照のこと]、その場合、平均的なマウス血液量は2〜4mlであり、平均的なヒト血液量は5Lである。本発明においてマウスに与えられた有効投与量は60ng/2〜5ml=15〜30μg/L血液量であるので、ヒトに投与される有効CCL2投与量は、1日あたり75〜150μgになるであろう。子供および動物に対する投与量は、それに応じて計算されることができる[Bussi SおよびMorisetti A.、Safety margins of intravascular contrasts Arh Hig Rada Toksikol 2005;56:157−160,2004]。
【0115】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における、生体外での標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外での細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Fingl,E.ら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1p.1参照のこと)。
【0116】
投薬量および投薬間隔は、生物学的効果を誘発または抑制するのに十分な有効成分の血漿レベルまたは脳レベル(すなわち、最小有効濃度、MEC)を提供するために個々に調節されることができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、生体外でのデータから推定されることができる。MECを達成するために必要な投与量は、個体の特性および投与経路に依存する。検出アッセイは、血漿濃度を測定するために使用されることができる。
【0117】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行われることができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0118】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
【0119】
本発明によれば、CCL2は、本発明に従って炎症を処置するために、1日につき体重1kgあたり、約1ng〜100μg、約10ng〜100μg、約100ng〜100μg、約100ng〜300ng、約1μg〜100μg、約1ng〜50ng、約1ng〜200ng、約1ng〜300ng、約1ng〜500ngまたは約1ng〜1μgのレベルで投与されるが、これらに限定されない。
【0120】
上記にかかわらず、CCL2は、CCL2の上昇した濃度に関連する望ましくない副作用(例えば、免疫応答のアップレギュレート)を避けるように選択された量で投与される。
【0121】
本発明のCCL2は、例えば経口投与または直腸投与のための、あるいは注射のための投薬単位において配合されることができる。このような投薬単位は、例えば、1日につき体重1kgあたり、約1ng〜100μg、約1ng〜200μg、約10ng〜100μg、約100ng〜100μg、約100ng〜300ng、約1μg〜100μg、約1ng〜50ng、約1ng〜200ng、約1ng〜300ng、約1ng〜500ngまたは約1ng〜1μgのCCL2を含むことができる。
【0122】
本発明の組成物は、もし望むなら、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供されることができる。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随しうる。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。医薬的に許容され得るキャリア中に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記にさらに詳述されるように、調製され、適切な容器に入れられ、示される状態の処置についてラベル書きされることができる。
【0123】
本発明の知見は、遊走調節因子を同定するためおよび細胞型(攻撃性/侵襲性)を分析するために利用されるような、種々の培養物アッセイにおいて使用されることができる重要な抗遊走因子としてCCL2を位置づける。
【0124】
従って、本発明の別の側面によれば、細胞遊走を調節する方法が提供される。その方法は、細胞遊走を阻害するように選択された一定量のCCL2を含む培地と細胞を接触させ、それによって細胞遊走を調節することによって行われる。
【0125】
本明細書中で使用される場合、細胞は、CCR2を発現するいかなる細胞をも示す(例えば、癌細胞、T細胞のような免疫細胞)。
【0126】
本発明のこの側面の方法は、以下の実施例の節において記載されるような、好ましくは高スループット分析のために小型化された、遊走チャンバにおいて実行されることができる。細胞は、自動検出(CCDカメラ)に適合することができる顕微鏡によって視覚化されることができる。
【0127】
CCL2は、細胞増殖に好適な培地中に入れられることができる。
【0128】
遊走促進因子は、同じチャンバか、または並列チャンバに入れられることができ、コントロールとして役立つことができる(例えば、SDF)。
【0129】
従って、本発明は、細胞遊走をダウンレギュレートするための新規なツールであるCCL2を初めて提供する。本明細書中において効果的に示されるように、CCL2は、アレルギーと関連するような炎症を阻害するために使用されることができる。
【0130】
本明細書中において使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0131】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。加えて、本明細書中上記に描かれるような、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0132】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0133】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験手順には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻(1994)Ausubel,R.M.編;Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0134】
実施例1
低レベルのCCL2は、生体外でのナイーブT細胞の細胞骨格の再配列および遊走をダウンレギュレートする
T細胞のインテグリン媒介接着および遊走におけるCCR2/CCL2相互作用の役割、および、それらが生体内でのリンパ節(LN)および炎症部位へのT細胞のホーミングを調節できるかどうかを決定するために、T細胞におけるCCR2の発現がPCRによって測定された。T細胞の遊走および細胞骨格の再配列に対するCCL2の効果は、トランスウェル遊走アッセイおよびアクチン重合アッセイによって測定された。
【0135】
材料および実験手順
動物−6〜8週齢のC57BL/6マウスまたはBalb/cマウスが使用された。動物に対する全ての処置は、イスラエル、レホヴォトのWeizmann Institute of ScienceにおけるAnimal Research Committeeによって認証された。
【0136】
T細胞ソーティング−既に記載されるようにして[Shachar I.およびFlavell R.A.,Science 274:106(1996)]、脾臓および脾臓細胞がマウスから得られた。T細胞は、製造元のプロトコルに従って、MACSシステム(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して富化された。脾臓細胞は、抗CD45R(B220)磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)と共にインキュベートされ、CD45陰性細胞が回収された。CD8+T細胞は、抗CD8磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して精製された。CD4+T細胞は、抗CD4磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して富化された。Th1およびTh2細胞を得るために、T細胞富化集団は、上清からのTh1細胞の回収のためにコンカナバリンA(250μg/ml;Roche,Basel,スイス)およびIL−12(3.5ng/ml;Gibco BRL/Invitrogen,Gaithersburg MD)と共に96時間インキュベートされるか、または、上清からのTh2細胞の回収のためにIL−4(103ユニット/ml;Gibco BRL/Invitrogen,Gaithersburg MD)と共にインキュベートされた。
【0137】
RNAの単離および逆転写(RT−PCR)−全RNAは、Tri試薬キット(MRC)を使用して細胞から単離された。逆転写は、Superscript II RT(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して行われた。異なるT細胞集団においてCCR2の発現を検出するために、PCRは、CD8+、ナイーブCD4+、あるいはCD4+細胞のTh1またはTh2集団からのcDNAテンプレート上で、CCR2に特異的なプライマー(順方向プライマー−5’−ATGTTACCTCAGTTCATCCAC−3’、配列番号1;逆方向プライマー−5’−GCCCACAAAACCAAAGATGAAT−3’、配列番号2)および陽性コントロールとしてヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)に特異的なプライマー(順方向プライマー−5’−GAGGGTAGGCTGGCCTATGGCT−3’、配列番号3;逆方向プライマー−5’−GTTGGATACAGGCCAGACTTTGTTG−3’、配列番号4)を使用して実施された。
【0138】
T細胞の刺激−既に記載されるようにして[Flaishonら、J Biol Chem.(2001)276:46701−46706]、細胞刺激を行った。簡潔に言うと、1×10個のT細胞が、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を含有する1mlのDMEM細胞培地に懸濁された。次に、0.1ng/mlのCCL2(CytoLab)が各チューブに添加され、チューブはすぐに37℃に30分間置かれた。刺激の直後に、細胞は、洗浄され、本明細書中下記に記載されるように取り扱われた。
【0139】
細胞抽出物の調製−刺激された細胞は、プロテアーゼ阻害剤(10mg/ml ロイペプチン;10mg/ml アプロチニン;10mg/ml ペプスタチン;10mg/ml キモスタチン(Roche);1mM PMSF(Sigma);および20mM N−エチルメラミド(N−etheyl−melamide)(Sigma))の存在下で、25mM トリス(pH7.4);2mM バナジウム酸塩;75mM 糖リン酸(glycophosphate)(pH7.2);2mM EDTA;2mM EGTA;10mM NaPPi;および0.5% NP−40を含有する溶解緩衝液中に溶解された。
【0140】
ERK検出−細胞溶解物は、10%(wt/vol)SDS−PAGE上で分離された。タンパク質はニトロセルロース膜に電気移動され、抗リン特異的細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)1または2(イスラエル、レホヴォト、Weizmann InstituteのRony Seger博士より寄贈)と反応させた後に、ペルオキシダーゼ標識されたヤギ抗マウス(Jackson Labs)と反応させられるか、またはポリクローナル抗チューブリンと反応させた後に、ペルオキシダーゼ抗ウサギ(Jackson Labs)と反応させられた。
【0141】
トランスウェル遊走アッセイ−走化性は、既に記載されているような[Flaishon,L.F.ら、J.Biol.Chem.276:46701(2001)]トランスウェルチャンバを使用してアッセイされた。ナイーブT細胞は、CCL2(0.1ng/ml、Peprotech Inc.,Rocky Hill,NJ)の有りまたは無しでRPMI培地で30分間懸濁され、その後24ウェルのトランスウェルプレートの上部チャンバに入れられ、下部チャンバに入れられたCXCL12(SDF−1、0.1mg/ml PeproTech,Inc.,Rocky Hill,NJ)または二次リンパ系組織ケモカイン(SLC,CCL21,0.4mg/ml;PeproTech,Inc.,Rocky Hill,NJ)の方へと遊走させられた。3時間後に、下部チャンバにおいて見出された遊走細胞の数が、FACS(FACS calibur,BD biosceince)によって評価された。アッセイは3回繰り返され、結果は上部チャンバに投入された細胞の数に対する下部チャンバにおける遊走細胞の数である遊走百分率割合として分析された。
【0142】
細胞骨格の再配列−T細胞は、CCL2(0.1ng/ml)の存在下または不在下で30分間予備インキュベートされ、次いで、CXCL12(0.1mg/ml PeproTech,Inc.,Rocky Hill NJ)、SLC(CCL21,0.4mg/ml,PeproTech,Inc.,Rocky Hill,NJ)、Rantes(0.1mg/ml,R&D systems Minneapolis,MN)、MIP−lβ(0.1mg/ml,R&D systems Minneapolis,MN)、またはEotoxin(0.1mg/ml R&D systems Minneapolis,MN)のいずれかで15秒間刺激された。次いで、細胞は、既に記載されるようにして[Flaishon,L.F.ら、J.Biol.Chem.276:46701(2001)]、パラホルムアルデヒドで直ちに固定され、浸透処理され、それらの細胞内F−アクチンがFITCファロイジン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)で染色され、次いで、それらの細胞骨格の状態を決定するためにフローサイトメトリーによって分析された。
【0143】
結果
CCR2は、ナイーブT細胞およびエフェクターT細胞上で発現される−T細胞亜集団におけるCCR2転写の分析が行われた。結果は、CCR2のmRNAがナイーブT細胞において現れ、その発現がCD8T細胞集団に比べてCD4T細胞集団において劇的に高かったことを示す(図1a)。Th1またはTh2集団のいずれかへと偏らせられたCD4T細胞はCCR2転写を示したが、低いレベルであった(図1b)。そのことは、エフェクターT細胞が、より低いレベルのCCR2を発現することを示唆する。
【0144】
CCL2は、生体外でのナイーブT細胞の遊走を阻害する−CCL2がT細胞のホーミングを調節しているかどうか決定するために、T細胞遊走に対するCCL2の阻害効果が、ケモカインであるCXCL12またはSLCに対するナイーブT細胞の遊走応答のトランスウェルアッセイ分析によって試験された。二次リンパ系組織ケモカイン(SLC、CCL21)は、LNにおいて高内皮性小静脈(HEV)によって高レベルで発現され、LNへのT細胞の動員において機能する[Cyster,J.G.Science 286:2098.(1999)]。CXCL12(SDF−1)は、種々の細胞および組織によって構成的に発現され、T細胞に対する高効率かつ強力な化学誘引物質として役立つ。結果は、低レベルのCCL2がCXCL12(図2a)およびCCL21(図2b)の方へのナイーブT細胞の遊走を約40〜50%阻害したことを示す。これらの結果は、低レベルのCCL2がT細胞遊走を阻害するのに十分であることを示す。
【0145】
CCL2は、アクチン重合を特異的にダウンレギュレートする−インテグリン媒介遊走のための必要条件には、アクチン重合の割合の増大、およびアクチンベースの細胞骨格の広範囲な再編成がある。
【0146】
CCL2がT細胞の細胞骨格の再配列を調節するかどうか決定するために、ナイーブT細胞のアクチン重合が追跡された。図2c〜dにおいて示されるように、CXCL12(図2c)刺激またはCCL21(図2d)刺激は、アクチン重合を実際に誘導し、それはCCL2で前処理された細胞において約40〜50%阻害された。
【0147】
(pM濃度での)さらなるケモカインがT細胞の細胞骨格の再配列に対して阻害効果を有するかどうかを評価するために、ナイーブT細胞のアクチン重合が種々のケモカインに供された後に追跡された。図2eに示されるように、低レベルのRantes、Mip1β、EotoxinまたはCXCL12は、ナイーブT細胞のアクチン重合に対して阻害効果を全く有さなかった。
【0148】
本発明者らは、未成熟なB細胞がCCL2で前処理されたときに、ERK1/2の活性化が阻害されたことを既に示した[Flaishonら、Blood(2004)104:933−941]。従って、本発明者らは、CCL2がT細胞においても同様にERKリン酸化を阻害したかどうかを決定することを望んだ。図3において見られるように、CCL21はERK1/2のリン酸化を誘導した。この活性化は、CCL2で前処理された細胞において阻害された。従って、CCL2は、ERK1/2に関わるシグナル伝達カスケードを調節し、細胞骨格の再配列および遊走の阻害をもたらす。
【0149】
総合すると、これらの結果は、CCR2/CCL2相互作用がT細胞のインテグリン媒介接着および遊走を制御することを示唆する。CCL2は、T細胞のERK1/2に関わるシグナル伝達経路におけるアクチンを重合する能力をダウンレギュレートすることによって、T細胞の遊走を阻害することが示された。
【0150】
実施例2
CCL2は、リンパ節へのナイーブT細胞ホーミングを阻害する
生体外でのTリンパ球の、CCL21およびCXCL12ケモカインが誘発した遊走に対するCCL2の強力な阻害効果は、このサイトカインが、生体内でのナイーブT細胞遊走およびリンパ節(LN)へのホーミングをも妨げることが可能であり、従って、抗炎症化合物として役立つことを示唆した。ナイーブT細胞のホーミングに対するCCL2の生体内効果を決定するために、末梢リンパ節(PLN)内へのT細胞侵入が分析された。
【0151】
材料および実験手順
動物−本明細書上記の実施例1に詳述される通りである。
【0152】
生体内での細胞の追跡−CCL2(0.1ng/ml RPMI)の存在下または不在下で30分間予備インキュベートされたT細胞は、洗浄され、5mMの蛍光色素CFDA−SE(Molecular Probes/Invitrogen,Carlsbad,CA,米国)で15分間室温で標識された。その後、等量(0.33×10)のCCL2で処理された細胞または処理されていない細胞が、C57BL/6マウスに静脈内(i.v.)注射された。3時間後、LNおよび脾臓が回収され、FITC陽性集団がFACSによって分析された。LNおよび脾臓から回収された標識された細胞の割合は、4つの異なる実験(各群において10匹のマウス)において既に記載されるようにして測定された[Flaishon,L.R.,J.Exp.Med.192:1381(2000)]。
【0153】
結果
(PBSで処理された)コントロール集団と比較して、LNへのCCL2処理されたナイーブT細胞のホーミングにおいて50%の劇的な減少があった(図4a)。興味深いことに、脾臓に対するこれらのT細胞の遊走において差異は無かった(図4b)。脾臓へのリンパ球の侵入は、インテグリン活性化が要求されない方法であると最近まで認識されていたが[Saito S.,Pathobiology(1995)63:305;Kraal G.,Am.J.Pathol.(1995)147:763;Nolte M.A.,Immunology(2002)106:299]、最近の結果は、インテグリン活性化が白脾髄への成熟B細胞の侵入においても役割を果たすことを示した[Lo C.G.,J.Exp.Med.(2003)197:353]。しかしながら、単一インテグリン(例えば、LFA−1)の阻害は、リンパ節へのT細胞およびB細胞のホーミングの劇的な阻害をもたらすが、それは白脾髄へのリンパ球の侵入に対する小さな効果でしかなく、二重のインテグリンの阻害のみが白脾髄へのリンパ球の侵入を阻害できた[Lo C.G.,前出]。従って、結論として、CCL2は、おそらくケモカインが誘導したインテグリン媒介接着および遊走に対するその抑制効果のために、生体内でのLNへのナイーブT細胞の遊走を阻害する。
【0154】
実施例3
CCL2は、マウスの末梢リンパ節における高内皮性小静脈壁に対するLFA−1インテグリンが媒介するリンパ球の強固な接着を阻害する
より生理学的な設定において(実施例2に記載される)生体外での知見を確認するために、すなわち末梢リンパ節(PLN)における高内皮性小静脈(HEV)を通るリンパ球遊走およびホーミングに対する低用量CCL2の効果を確認するために、微小循環が生体内顕微鏡法(IVM)によって利用された。
【0155】
材料および実験手順
動物−5〜7週齢のメスC57BL/6マウスが、Charles River laboratories(フランス)から購入された。マウスは、特定の無菌動物施設において飼育および交配された。実験は、動物の取扱いに関するフランスの手順指針に従って行なわれた。
【0156】
マウス腸骨下部LNの生体内顕微鏡法−マウスは、1mg/mlのキシラジンおよび5mg/mlのケタミンの腹腔内注射によって麻酔された。右大腿動脈にカテーテルが入れられた。左腸骨下部LNが、既に記載されるようにして[Carriereら、Cancer Res.(2005)65:11639−11648;M’Riniら、J Exp Med.(2003)198:1301−1312]IVMのために準備され、マウスは次いで、液浸対物レンズ(HCX APO;Leica Microsystems SA,Rueil−Malmaison,フランス)を備えた特別注文による生体内ビデオ顕微鏡設備(INM 100;Leica Microsystems SA,Rueil−Malmaison,フランス)に移された。LN微小循環における蛍光事象は、視覚化され、シリコン増倍型ターゲットカメラ(Hamamatsu Photonics,Massy,フランス)によって記録され、DVCAMビデオテープ(DSR−11 Sony,IEC−ASV,Toulouse,フランス)に保存された。
【0157】
LN血管内皮とのナイーブリンパ球の相互作用を視覚化するために、腸骨下部のLN、腋窩のLN、上腕のLN、および腸間膜のLNのコントロールC57BL/6プールの単一T細胞およびB細胞懸濁液から得られたナイーブリンパ球が、CCL2(R&D Systems,Lille,フランス;1ng/ml、30分間、37℃)の存在下または不在下でインキュベートされ、カルセインAM(Molecular Probes−Invitrogen,Cergy Pontoise,フランス;0.25μM、5分間、37℃)によって蛍光的に標識され、次いで、右大腿動脈に注射された。LN小静脈における細胞挙動が、既に記載されるようにして[Carriereら、前出;M’Riniら、前出]評価された。回転画分は、小静脈あたりの全流入細胞中の血管の内側に沿って回転した細胞の百分率割合として測定された。固着画分は、回転する細胞内の少なくとも10秒間または1分間強固に接着した細胞の百分率割合として測定された。
【0158】
結果
正常なマウス腸骨下部LNのこれまでのIVM観察は、LN小静脈ツリーが5つまでの枝分かれ序列からなることを確立し[Carriereら、前出;M’Riniら、前出;von Andrian,Microcirculation.(1996)3:287−300]、ここで下位小静脈(LOV)は、門部における大きな集合小静脈(序列I)および髄における上流の分岐(序列IIおよび序列IIIのうちのいくつか)を含む。高位の分岐(序列IIIの大半および序列IVおよびVの小静脈の全て)は、LN毛細血管に直接的に接続され、かつLNの皮質下および副皮質の方へと流れるHEVである(図5a)。LOV(序列II)およびHEV(序列III、IVおよびV)におけるコントロールリンパ球およびCCL2処理リンパ球の挙動(例えば、回転、固着)の分析が行なわれた。結果から明らかなように、低用量CCL2での処理は、リンパ球がHEVにおいてL−セレクチン媒介回転を受ける能力を顕著には変更しなかった(図5b)。同様に、HEV内での回転後少なくとも10秒間留まったナイーブリンパ球(10秒間の固着画分)の百分率割合は、コントロールリンパ球およびCCL2処理リンパ球と同等であり(図5c)、これはCCL2前処理が、生体内でのCCL21が誘発したインテグリン媒介拘束の初期事象に影響しなかったことを示す。しかしながら、低用量CCL2で処理されたリンパ球は、分離する前にHEV壁において数秒間のみ拘束されたままであり、従って、コントロールリンパ球と比較した場合に、それらの初期拘束後に30秒間または1分間(それぞれ図5dおよび5e)接着したままである細胞の百分率割合の猛烈な低減を導く。CCL2処理されたリンパ球がHEVに接着しながらもそれらが受ける持続的な力による分離に耐える能力をこのように損なうことは、蛍光細胞の注射の30分後に、PLN小静脈ツリー内の強固に結合したリンパ球の数の著しい低減をもたらした(図5fおよび5g)。HEV標的血管上の初期集積後に数分間接着し続ける重要な能力がなければ、リンパ球は、これらの血管から管外に遊出できないだろう。従って、低用量のCCL2は、マウスPLN微小循環においてHEV壁へのインテグリン依存性のリンパ球の強固な接着およびHEV壁を通り抜ける管外遊出を阻害した。成熟B細胞がCCR2を発現しないこと[Flaishon Lら、前出]を考慮すれば、観察された劇的なダウンレギュレーションが主としてT細胞集団のダウンレギュレーションであると考えられる。
【0159】
実施例4
CCL2は、共固定されるCCL21によって誘発される、ICAM−1およびVCAM−1に対するTリンパ球の拘束後のインテグリン依存性接着強化を阻害する
リンパ球遊走に対するCCL2の阻害効果についてのさらなる機械的データを提供し、そしてその所見をヒトT細胞に拡大するために、精製された成分でのフローチャンバアッセイによって分析が生体外で行われた。
【0160】
材料および実験手順
層流接着アッセイ−精製されたVCAM−1またはICAM−1−Fc(共にR&D Systems,Minneapolis,MNから購入)が、既に記載されるようにして[Grabovskyら、J Exp Med.(2000)192:495−506;Sigalら、J Immunol.(2000)165:442−452]ポリスチレンプレート上にCCL21(R&D Systems)の有りまたは無しでコーティングされた。ポリスチレンプレートは各々、既に記載されるようにして[Feigelsonら、J Biol Chem.(2001)276:13891−13901]フローチャンバの下部壁上に集められた。全てのフロー実験は、37℃で行われた。細胞は、カチオン不含H/H培地で洗浄され、結合培地(1mMのCaClおよび1mMのMgClを補充したH/H培地)中に再懸濁され、低い剪断応力(0.5〜0.75dyn/cm)で2分間フローチャンバを通して灌流された。係留(tethers)は、もし細胞が基板に短い時間(<2秒間)接着するならば移動または回転と定義され、もしすぐに拘束され、連続的な流れのうち少なくとも5秒間静止したままであるならば拘束と定義された。異なって前処理された細胞内での接着カテゴリーの頻度は、既に記載されるようにして[Grabovskyら、前出]、基板上を即時に流れる細胞の百分率割合として決定された。分離に対する耐性を経時的に評価するために、蓄積された細胞は、5dyn/cmの剪断応力に5分間供された。示された時点で、結合したままの細胞の数は、アッセイの最初の2分間において元々蓄積されたT細胞集団に対して表現された。VCAM−1またはICAM−1に対する細胞係留(cellular tethers)の90%以上が、VLA−4またはLFA−1ブロッカーのそれぞれで細胞を前処理することによってブロックされた。
【0161】
結果
分析は、低用量CCL2へのヒトTリンパ球の短い暴露が、2つの主要なT細胞インテグリンであるLFA−1およびVLA−4が表面結合CCL21からのその場のシグナルによって活性化される能力を損ないうるかどうかを試験するために確立された。CCL21は、ICAM−1またはVCAM−1のいずれかと共固定されるときに、Giが媒介する強いLFA−1またはVLA−4媒介リンパ球接着のそれぞれを、剪断流条件下で誘発する[Grabovskyら、前出]。
【0162】
CCL2処理されたT細胞がCCL21の存在下でLFA−1およびVLA−4リガンドであるICAM−1およびVCAM−1の両方とそれぞれ相互作用する正常な能力から明らかなように、ヒトT細胞のCCL2処理は、表面結合CCL21によるリンパ球上のLFA−1またはVLA−4活性化を妨げなかった(図6aおよび6c)。それにもかかわらず、いったんCCL21シグナルに応答して、正常に捕捉され、これらのリガンド上に拘束されると、CCL2前処理されたT細胞は接着強化を発展できず、高剪断応力に連続的にさらされたときにそれらのインテグリンリガンドから容易に分離される(図6bおよび6d)。低用量CXCL12でのTリンパ球の同様の前処理は、同一の条件下でインテグリン媒介拘束およびその後の接着の強化の両方を保持した(図6a〜d)。
【0163】
総合すると、これらの結果は、低用量のCCL2が、その場のCCL21による初期のLFA−1およびVLA−4活性化に影響を及ぼすことなく、拘束工程後のこのケモカインによって誘発される重要な細胞骨格の再配列を妨げることを示した。これらの再配列無しに、CCL21シグナルに応答してLFA−1およびVLA−4リガンドの両方の上に蓄積した正常に拘束されたT細胞は、剪断力の長期の適用に供されたとき、これらの接着表面に対してその後の接着強化を発展させることができない。
【0164】
実施例5
CCL2は、エフェクターT細胞の細胞骨格の再配列およびトランスウェル遊走を阻害する
エフェクターCD4T細胞におけるCCR2転写、およびエフェクターT細胞の細胞骨格の再配列および遊走に対するCCL2の阻害効果が分析された。
【0165】
材料および実験手順
T細胞ソーティング−既に記載されるようにして[Shachar I.およびFlavell R.A.,Science 274:106(1996)]脾臓および脾臓細胞がマウスから得られた。製造元のプロトコルに従って、T細胞は、MACSシステム(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して富化された。脾臓細胞は、抗CD45R(B220)磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)と共にインキュベートされ、CD45陰性細胞が回収された。CD4+T細胞は、抗CD4磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して富化された。Th1およびTh2細胞を得るために、T細胞富化集団は、上清からのTh1細胞の回収のためにコンカナバリンA(250μg/ml;Roche,Basel,スイス)およびIL−12(3.5ng/ml;Gibco BRL/Invitrogen,Gaithersburg MD)と共に96時間インキュベートされ、または、上清からのTh2細胞の回収のためにIL−4(103ユニット/ml;Gibco BRL/Invitrogen,Gaithersburg MD)と共に96時間インキュベートされた。
【0166】
RNAの単離および逆転写(RT−PCR)−全RNAは、Tri試薬キット(MRC)を使用して細胞から単離された。逆転写は、Superscript II RT(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して行われた。異なるT細胞集団においてCCR2の発現を検出するために、PCRは、CD4+細胞のTh1またはTh2集団からのcDNAテンプレート上で、CCR2に特異的なプライマー(順方向プライマー:5’−ATGTTACCTCAGTTCATCCAC−3’、配列番号1;逆方向プライマー:5’−GCCCACAAAACCAAAGATGAAT−3’、配列番号2)および陽性コントロールとしてヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)に特異的なプライマー(順方向プライマー:5’−GAGGGTAGGCTGGCCTATGGCT−3’、配列番号3;逆方向プライマー:5’−GTTGGATACAGGCCAGACTTTGTTG−3’、配列番号4)、T−betに特異的なプライマー(順方向プライマー:5’−TTCCCATTCCTGTCCTTCACCG−3’、配列番号5;逆方向プライマー:5’−GGAAGGTCGGGGTAAAAAC−3’、配列番号6)およびGATA−3に特異的なプライマー(順方向プライマー:5’−TCTGGAGGAAACGCTAATGG−3’、配列番号7;逆方向プライマー:5’−GAACTCTTCGCACACTTGGAGACTC−3’、配列番号8)を使用してPCRが実施された。
【0167】
細胞骨格の再配列−T細胞は、CCL2(0.1ng/ml)の存在下または不在下で30分間予備インキュベートされ、次いで、CXCL12(0.1mg/ml PeproTech,Inc.,Rocky Hill NJ)またはSLC(CCL21,0.4mg/ml,PeproTech,Inc.,Rocky Hill,NJ)のいずれかで15秒間刺激された。次いで、細胞は、既に記載されるようにして[Flaishon,L.F.ら、J.Biol.Chem.276:46701(2001)]、パラホルムアルデヒドで直ちに固定され、浸透処理され、それらの細胞内F−アクチンがFITCファロイジン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)で染色され、次いで、それらの細胞骨格の状態を決定するためにフローサイトメトリーによって分析された。
【0168】
結果
CD4T細胞は、Th1集団またはTh2集団のいずれかへと偏らせられた。両集団は、CCR2を転写することが見出され、一方、転写因子T−betおよびGATA−3はそれぞれ、Th1およびTh2細胞における優先的な発現を示した(図7A)。
【0169】
さらに、低用量のCCL2は、CCL21(図7bおよび7d)またはCXCL12(図7cおよび7e)が誘導したエフェクター細胞の細胞骨格の再配列およびトランスウェル遊走をダウンレギュレートし(データは示されていない)、pMレベルのCCL2がナイーブT細胞およびエフェクターT細胞の遊走を消極的に制御することを示す。従って、低用量CCL2は、Th1、Th2およびナイーブT細胞の接着および遊走に対して同様の阻害効果を示す。
【0170】
実施例6
CCL2は、生体内で抗炎症性の役割を果たす
生体外および生体内でのTリンパ球のケモカイン誘発遊走およびインテグリン依存性接着に対するCCL2の強力な阻害効果は、このサイトカインが抗炎症性の化合物として役立ちうることを示唆した。CCL2の抗炎症効果を生体内で決定するために、マウス喘息モデル、慢性関節リウマチラットモデル、および炎症性腸疾患マウスモデルが行われた。
【0171】
材料および実験手順
動物−6〜8週齢のC57BL/6またはBalb/cマウスが使用された。メスのLewisラットが、Animal Breeding Centerにおいて無菌条件下で飼育および維持された。動物に対する全ての処置は、Weizmann InstituteにおけるAnimal Research Committeeによって認証された。
【0172】
オボアルブミン(OVA)感作、抗原投与、およびCCL2での処置−OVA感作および抗原投与が、既に記載されるプロトコル[Flaishon,L.ら、J.Immunol:Cutting edge 168:3707(2002)]に従って行われた。BALB/cマウス(平均9匹のマウス/群)は、300μlのPBS中で2mgの水酸化アルミニウム(Pierce,Rockford,IL)と混合された100μgの鶏の卵オボアルブミン(OVA;Sigma− Aldrich,St.Louis,MO)での腹腔内注射によってOVAについて感作された(コントロール群マウスはPBSのみで注射された)。注射は、最初の感作後、0、7および14、15日目に与えられ、その後、動物は、20分間超音波ネブライザー(DeVilbiss,Somersel,PA)によって投与される、PBS中の4%OVAを吸入することによって5日間毎日(15日目〜19日目)抗原投与され、一方、コントロール群はPBSのみで抗原投与された。
【0173】
OVAによって注射および抗原投与された群のうちの1つは、OVA吸入の初日(15日目)から5日間、各吸入の前に20分間、300μlのPBSでさらに腹腔内注射され、別の群は、マウスCCL2(1日あたり動物1匹につき60ngのCCL2)でさらに注射された。PBS処置されたコントロール群は、PBS抗原投与およびPBS注射された。18日目、吸入の2時間後に、マウスは0.2mlのケタミン/キサラジンの腹腔内注射で麻酔され、呼息中に体積変動記録ボックスにおいて測定された、高まった呼吸休止(Penh)、最大呼気流量と最大吸気流量の比率の関数、および呼気のタイミングの関数を計算することによって気道の過応答性(AHR)が決定された。ΔPenhは、抗原投与後のPenh測定値から抗原投与前のコントロールPenh測定値を引くことによって計算された。ベース線のPenhレベルは、PBS処置コントロール、OVA抗原刺激マウス、および15日目にCCL2で処置したOVA抗原刺激マウスの間で同等であった。19日目、マウスは最後の吸入の2時間後に犠牲にされた。
【0174】
肺の組織学−OVA感作および抗原投与アッセイに関与するマウスからの肺が、膨張するまで1mlの10%ホルマリンで膨らまされた。パラフィン切片のためのサンプルは、10%ホルマリンに漬けられ、48時間固定された。組織は、次いで、パラフィンに包埋され、2〜3μm切片が調製された。ヘマトキシリン/エオシン染色切片が、光学顕微鏡によって調べられた。各群において9匹の動物からの肺スライドの、目隠し評価およびスコア付け(スコア範囲:1〜4;リンパ球浸潤および気管支壁厚に基づく)が病理学者によって与えられた。
【0175】
アジュバント関節炎(AA)誘導、評価およびCCL2での処置−AAは、ラット1匹あたり1mgの熱殺菌されたMt株H37Ra(Difco)を使用して、既に記載されるようにして[Kannan,Theor Biol Med Model.(2005)2:17]誘導された。各実験群およびコントロール群は、少なくとも8匹のラットを含んでいた。AA誘導の日は0日目とされ、疾患の重篤度は各々の動物における全ての四肢の直接観察によって評価された。実験手順を知らされていない観察者が、疾患の臨床的徴候についてAAをスコア付けした。0〜4の相対スコアが、関節の炎症、赤み、および変形の度合いに基づいて、各肢に割り当てられた。個々の動物について最大の考えられうるスコアは16であった[Kannan,、前出]。
【0176】
AA誘導の直後に、ラットは、毎日(0日目〜5日目)、低用量CCL2(300μlのPBS中に240ng)を注射される群か、またはコントロールとしてPBSを注射される群の2つの群に分けられた。誘導後10日目から開始して、疾患は本明細書中上記に記載されるようにスコア付けされた。
【0177】
結果は、各群における全ての動物についての2つの値の間の差の平均±SEMとして表された。実験は少なくとも3回繰り返され、同様の結果を生じた。
【0178】
TNBS大腸炎モデルおよびCCL2での処置−TNBS大腸炎は、既に記載されるようにして誘導された[Ohkawaraら(2002)Gastroenterology,123:256]。簡単に言うと、マウスは、85%ケタミンおよび15%キシラジンを含有する混合物(20mg/ml)の腹腔内注射(マウス1匹あたり35μl)によって麻酔された。次に、100μlのTNBS[45容量%のTNBS溶液(トリニトロベンゼン硫酸;Sigma−Aldrich)と混合された50%エタノールの55容量%]が、給餌針に取り付けられた1mlシリンジによって結腸の管腔に注入された。処置されたマウスは、毎日計量され、直腸出血および下痢のような臨床的症状について視覚的に検査された。
【0179】
TNBSマウスは、6群に分けられた。CCL2群(各群において10匹のマウス)は、0日目(TNBS誘導の直後)から6日目まで、200μlのPBS中の異なるCCL2濃度(30ng、60ngまたは180ng)で毎日腹腔内注射された。コントロール群(各群において10匹のマウス)は、毎日200μlのPBSのみで腹腔内注射された。さらに、5匹のマウスが、デキサメタゾンで毎日腹腔内注射され;そして1匹のマウスは処置されずに将来の組織学および計量のための陰性コントロールとして役立たせた。
【0180】
大腸炎の巨視的評価および組織学的評価−実験手順を知らされていない観察者が、疾患の臨床的徴候について大腸炎をスコア付けした。結腸は、巨視的に調べられ(×5倍率)、Wallace基準に従って巨視的な病変を評価した。Wallaceスコアは、充血、腸管の肥厚および潰瘍形成の範囲のような炎症を反映する基準に基づいて0〜16のスコアで巨視的な結腸病変をランク付けする。結腸は縦に切断され、将来の組織学のために4%パラホルムアルデヒド中に固定された。
【0181】
統計学的分析−対にされたサンプルの統計学的な比較のために、スチューデントTの両側検定が使用された。差異は、P<0.05()、P<0.01(**)またはP<0.001(***)のときに統計的に有意であると考えられた。データは、平均値±SEMで表される。
【0182】
結果
CCL2は、喘息モデルにおいて抗炎症性の役割を果たす−アレルギー性の気道応答性に対するCCL2の考えられうる抗炎症効果を調べるために、OVA感作、およびCCL2の腹腔内注射に対するその応答を使用し、オボアルブミン(OVA)吸入の初日から開始する処置アッセイが行われた。麻酔された、自発的に呼吸するマウスの気道応答性は、OVA吸入後5日目に評価された。図8aに示されるように、OVA抗原投与マウスは、抗原投与に対するその気道応答性を有意に増大した。しかしながら、(PBSを抗原投与された)コントロールマウスにおいて、またはCCL2で処置されたOVA抗原投与マウスにおいては、気道の過応答性は観察されなかった。
【0183】
OVA処置マウスからの肺組織の組織病理学的な検査(図8b〜d)(図中の小さな紫色の点は組織に浸潤する細胞である)は、主に好酸球およびリンパ球からなる多形性気管支周囲浸潤物および血管周囲浸潤物を現し(喘息マウス、図8c)、それはコントロールのPBS抗原投与マウス(コントロールマウス 図8b)またはCCL2処置マウス(CCL2処置マウス 図8d)においては見出されなかった。さらに、気管支周囲および血管周囲の炎症性浸潤物は、マウスがさらされてきた異なる処置を知らされていない病理学者によって1〜4の範囲の炎症性スコアを与えられた(図8e)。OVA処置マウスにおける気管支周囲の炎症性浸潤物は、コントロール動物と比較して有意に増大したが、OVAおよびCCL2処置マウスの肺における組織学的変化はわずかに検出できる程度であり、炎症性浸潤物は有意に低減された。
【0184】
CCL2は、AAにおいて抗炎症性の役割を果たす−ヒトの慢性関節リウマチのいくつかの特徴を模倣する実験的自己免疫疾患[Kannan、前出]であるアジュバント関節炎(AA)に対するCCL2の考えられうる抗炎症効果を調べるために、CCL2がAA誘導ラットに投与された。図9において示されるように、低容量CCL2の注射は、炎症の重篤度を低減することによって疾患の発症を有意に阻害した。
【0185】
CCL2は、大腸炎において抗炎症性の役割を果たす−炎症性腸疾患(IBD)に対するCCL2の考えられうる抗炎症効果を調べるために、IBDについての動物モデルであるTNBS大腸炎の誘導後に、CCL2がマウスに投与された。本明細書中下記の表2および図10において明確に示されるように、CCL2は、下痢の減少および結腸短縮の減少によってみられるように炎症の重篤度を低減することによって疾患を有意に阻害した。

【0186】
総合すると、生体内の研究は、主要なヒトの炎症性疾患のうちの3つである慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患および喘息の動物モデルにおいて、CCL2が有意な抗炎症活性を表すことを示す。
【0187】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0188】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願ならびにGenBankアクセッション番号はすべて、個々の刊行物、特許もしくは特許願またはGenBankアクセッション番号が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【配列表フリーテキスト】
【0189】
配列番号1〜8は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症の処置を必要とする対象において炎症を処置する方法であって、対象に治療有効量のCCL2を投与し、それによって炎症を処置することを含む方法。
【請求項2】
対象はヒト対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療有効量は、キログラム体重/日あたり1ng〜1μgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療有効量は、CCL2の上昇した濃度と関連する望ましくない副作用を避けるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療有効量は、細胞遊走または細胞ホーミングを阻害するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞はCCR2発現細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞は免疫細胞または癌細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
炎症はCCR2/CCL依存性細胞遊走または細胞ホーミングと関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞遊走または細胞ホーミングは、T細胞遊走またはT細胞ホーミングを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
炎症はアレルギーと関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アレルギーは喘息である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炎症は自己免疫疾患と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記自己免疫疾患は慢性関節リウマチである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記自己免疫疾患は大腸炎である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
炎症は、癌、自己免疫、過敏症、糖尿病、感染、関連する移植およびアレルギーからなる群から選択される病状と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
有効成分としてCCL2を含み、さらに医薬的に許容され得るキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項17】
炎症を処置するために特定された医薬の製造のためのCCL2の使用。
【請求項18】
CCL2を含む単位投薬形態。
【請求項19】
1ng〜200μgのCCL2を含む、請求項18に記載の単位投薬形態。
【請求項20】
経口単位投薬形態である、請求項18に記載の単位投薬形態。
【請求項21】
注入可能なまたは吸入される単位投薬形態である、請求項18に記載の単位投薬形態。
【請求項22】
細胞遊走を調節する方法であって、細胞遊走を阻害するように選択された量のCCL2を含む培地と細胞を接触させ、それによって細胞遊走を調節することを含む方法。
【請求項23】
細胞はCCR2発現細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
細胞は免疫細胞または癌細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記培地は、細胞遊走促進剤をさらに含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−544690(P2009−544690A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521410(P2009−521410)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000806
【国際公開番号】WO2008/012796
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(502379147)イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】