CD20結合分子
【課題】本発明は、CD20結合分子およびCD20結合分子をコード化する核酸配列に関する。特に本発明は、ヒトのCD20に対し高い結合親和力と低い解離速度を有するCD20結合分子に関する。
【解決手段】本発明のCD20結合分子は、完全にヒト型のフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含むことが望ましい。
【解決手段】本発明のCD20結合分子は、完全にヒト型のフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含むことが望ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年5月20日に出願された米国仮特許出願連続番号60/471,958の優先権を主張する。
本発明は、CD20結合分子およびCD20結合分子をコード化する核酸配列に関する。特に本発明は、ヒトのCD20に対して高い結合親和力と低い解離速度を有するCD20結合分子に関する。本発明のCD20結合分子は、完全にヒトのフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでいるのが望ましい。
【背景技術】
【0002】
B細胞リンパ腫のような疾病の診断および/または治療薬としてCD20抗原の抗体を使用する方法は、以前にも報告されている。CD20は悪性のB細胞、すなわちその無制限な増幅がB細胞リンパ腫の原因となるB細胞の表面に高密度で発現する抗原であるため、B細胞リンパ腫のマーカーまたは標的として有用である。
【0003】
CD20(Bp35としても知られる)は、B前駆体細胞成長の初期に発現し、血漿の細胞分化まで残留する、Bリンパ球に制限された分化抗原である。CD20分子は細胞サイクルの開始および分化に必要なB細胞活性化プロセスの一段階を調整していると考えている者もいる。さらに上述のように、通常CD20は新生物形成(「腫瘍」)B細胞上に、極めて高レベルで発現する。CD20抗原は[他の物質を]削減、調整、または吸収したりしないため、標的治療に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗CD20抗体に関する、これまでに報告されている治療法には、治療用抗CD20抗体の単独投与、あるいは第二の放射線標識抗CD20抗体または化学療法薬との併用投与が含まれている。米国食品医薬品局は、以前に治療され再発した低悪性度の非ホジキンスリンパ腫(NHL)の治療における、このような抗CD20抗体の一つであるリツキサン(RITUXAN)の使用を承認した。しかしながら、リツキサンはB細胞リンパ腫の治療に効果的であると一般に報告されてはいるものの、治療を受けた患者はしばしば再発する傾向がある。
【0005】
最近、全身性エリテマトーデス(SLE)の18人の患者(非免疫抑制患者)の治療に対するリツキサンの安全性、許容性、予備臨床の治療効果が試験された。この研究結果の一部は、2002年10月、米国リウマチ学会(ACR)第66回年次学会で発表された。治療を受けた18人の患者のうち、6人の患者には週1回100mg/m2(低用量)のリツキサン注入を、6人の患者には週1回375mg/m2(中用量)のリツキサン注入を、そして6人の患者には週1回375mg/m2(高用量)のリツキサン注入が4週間与えられた。低用量または中用量の投与を受けた12人中の3人(25%)には2ヶ月でヒト抗キメラ抗体(HACA)が高濃度で発現したが、高用量の患者は現在なお評価中である。
【0006】
従って、治療を受けたB細胞リンパ腫の患者が再発しないように、結合親和力が高く解離定数の低いCD20結合分子、および免疫抑制されていない患者に投与された場合HACA反応を引き起こさない、あるいは引き起こす可能性を小さくするようなCD20結合分子が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、CD20結合分子およびCD20結合分子をコード化する核酸配列を提供する。特に本発明は、ヒトのCD20に対して高い結合親和力と低い解離速度を有するCD20結合分子を提供する。本発明のCD20結合分子は、完全にヒトのフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでいることが望ましい。
【0008】
ある実施形態では、本発明はCD20結合分子を含む組成物を提供し、このとき当該CD20結合分子はa)軽鎖可変領域、あるいは軽鎖可変領域の一部を含み、このとき当該軽鎖可変領域(または軽鎖可変領域の一部)はi)配列番号1、配列番号3、配列番号5から成るグループから選択されたCDRL1アミノ酸配列、ii)配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13から成るグループから選択されたCDRL2アミノ酸配列、およびiii)配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含み、また、b)重鎖可変領域、あるいは重鎖可変領域の一部を含み、このとき当該重鎖可変領域(または重鎖可変領域の一部)はi)配列番号23および配列番号25から成るグループから選択されたCDRH1アミノ酸配列、ii)配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39から成るグループから選択されたCDRH2アミノ酸配列、およびiii)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDRH3アミノ酸配列を含んでいる。
【0009】
別の実施形態では、本発明は軽鎖可変領域(またはその一部)、あるいは軽鎖可変領域をコード化する核酸配列(またはその一部)を含む組成物を提供し、このとき当該軽鎖可変領域(またはその一部)は、a)配列番号1、配列番号3、配列番号5から成るグループから選択されたCDRL1アミノ酸配列、b)配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13から成るグループから選択されたCDRL2アミノ酸配列、およびc)配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0010】
ある実施形態では、本発明は重鎖可変領域(またはその一部)あるいは重鎖可変領域をコード化する核酸配列(またはその一部)を含む組成物を提供し、このとき当該重鎖可変領域(またはその一部)は、a)配列番号23および配列番号25から成るグループから選択されたCDRH1アミノ酸配列、b)配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39から成るグループから選択されたCDRH2アミノ酸配列、およびc)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDR−H3アミノ酸配列を含む。
【0011】
別の実施形態では、本発明はa)軽鎖可変領域あるいは軽鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該軽鎖可変領域が配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含むもの、およびb)重鎖可変領域あるいは重鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該重鎖可変領域が配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDRH3アミノ酸配列を含むもの、を含んだ組成物を提供する。
【0012】
ある実施形態では、本発明はCD20結合分子の軽鎖可変領域をコード化する核酸分子を含む組成物を提供し、このときその核酸分子は、a)配列番号2、配列番号4、配列番号6から成るグループから選択されたCDRL1核酸配列、b)配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14から成るグループから選択されたCDRL2核酸配列、およびc)配列番号18、配列番号20、配列番号22から成るグループから選択されたCDRL3核酸配列を含む。別の実施形態では、本発明はCD20結合分子の重鎖可変領域をコード化する核酸分子を含む組成物を提供し、このときその核酸分子は、a)配列番号24および配列番号26から成るグループから選択されたCDRH1核酸分子、b)配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40から成るグループから選択されたCDRH2核酸分子、およびc)配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58から成るグループから選択されたCDRH3核酸分子を含む。
【0013】
特定の実施形態では、本発明はCD20結合分子を含む組成物を提供し、このとき当該CD20結合分子は、a)配列番号5を含むCDRL1アミノ酸配列、b)配列番号13を含むCDRL21アミノ酸配列、c)配列番号19を含むCDRL31アミノ酸配列、d)配列番号25を含むCDRH11アミノ酸配列、e)配列番号39を含むCDRH21アミノ酸配列、およびf)配列番号57を含むCDRH31アミノ酸配列を含む。別の実施形態では、本発明はCD20結合分子の軽鎖可変領域をコード化する核酸分子を含み、このときその核酸分子は、a)配列番号6を含むCDRL1核酸配列、b)配列番号14を含むCDRL2核酸配列、およびc)配列番号20を含むCDRL3核酸配列を含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明はCD20結合分子の重鎖可変領域をコード化する核酸分子を含み、このときその核酸分子は、a)配列番号26を含むCDRH1核酸配列、b)配列番号40を含むCDRH2核酸配列、およびc)配列番号58を含むCDRH3核酸配列を含む。別の実施形態では、本発明は、a)軽鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該第1核酸配列が配列番号18、配列番号20および配列番号22から成るグループから選択されたCDRL3核酸配列を含むもの、およびb)重鎖可変領域をコード化する第2核酸配列であり、このとき当該第2核酸配列が配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56および配列番号58から成るグループから選択されたCDRH3核酸配列を含むもの、を含む組成物を提供する。
【0015】
ある実施形態では、本発明は、a)軽鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該軽鎖可変領域が、i)配列番号1、配列番号3、配列番号5から成るグループから選択されたCDRL1アミノ酸配列、ii)配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13から成るグループから選択されたCDRL2アミノ酸配列、およびiii)配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含むもの、およびb)重鎖可変領域をコード化する第2核酸配列であり、このとき当該重鎖可変領域が、i)配列番号23および配列番号25から成るグループから選択されたCDRH1アミノ酸配列、ii)配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39から成るグループから選択されたCDRH2アミノ酸配列、およびiii)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDRH3アミノ酸配列を含む)、を含む組成物を提供する。
【0016】
ある実施形態では、本発明は配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択された、少なくとも二つ(あるいは少なくとも三つまたは四つ)のCDRを含むペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択された、少なくとも二つ(あるいは少なくとも三つまたは四つ)のCDRを含むペプチドを提供する。
【0017】
ある実施形態では、本発明は軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含む組成物を提供し、このとき当該軽鎖可変領域は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたアミノ酸配列を含み、またこのとき当該重鎖可変領域は、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたアミノ酸配列を含む。
【0018】
ある実施形態では、軽鎖可変領域はフレームワークの一部(例えばFR2やFR3などの2つから三つの準領域)を含む。ある実施形態では、軽鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、軽鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。特定の実施形態では、軽鎖可変領域は配列番号59および63から選択されたアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、重鎖可変領域はフレームワークの一部(例えばFR2やFR3などの二つから三つの準領域)を含む。ある実施形態では、重鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、重鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。別の実施形態では、重鎖可変領域は61および65から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0019】
ある実施形態では、CD20結合分子は抗体または抗体の断片(例えばFv、Fabなど)を含む。特定の実施形態では、CD20結合分子はAME 33 FvまたはFabを含む。別の実施形態では、CD20結合分子はAME 5 FvまたはFabを含む。さらに別の実施形態では、CD20結合分子は、AME 21E1 Hum、AME 6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5から成るグループから選択されたFvまたはFabを含む。
【0020】
特定の実施形態では、本発明はCD20結合分子(例えば抗体や抗体の断片)を含む融合構成物、および酵素、検出可能な標識、炭水化物分子、脂質などの融合パートナーを提供する。ある実施形態では、融合構成物はヒトのCD20に結合するFabまたはFab’2、およびプロドラッグを活性形に変換する酵素を含む。
【0021】
ある実施形態では、CD20結合分子は宿主細胞(例えば真核生物または原核生物の宿主細胞)内に含まれている。別の実施形態では、軽鎖および/または重鎖をコード化する核酸はプラスミドや他の発現ベクター内に含まれている。
【0022】
ある実施形態では、本発明はヒトのCD20に対し結合親和力(Kd)が5.0X10−10Mまたはそれ以下(例えば5.0X10−10M〜5.0X10−11M)であるCD20結合分子を含む組成物を提供する。別の実施形態では、本発明はCD20結合分子を含む組成物を提供し、このとき当該CD20結合分子はヒトのCD20に対し5.0X10−10Mまたはそれ以下の結合親和力(Kd)、および5.0X10−4s−1またはそれ以下である解離速度(koff)を有する。
【0023】
別の実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.5X10−10Mまたはそれ以下の結合親和力(Kd)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.0X10−10Mまたはそれ以下の結合親和力(Kd)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し2.5X10−4s−1またはそれ以下の解離速度(koff)を有する。特定の実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.0X10−4s−1またはそれ以下(例えば1.0X10−4s−1〜1.0X10−5s−1)の解離速度(koff)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し8.0X10−5s−1またはそれ以下の解離速度(koff)を有する。さらに別の実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.0X105M−1s−1またはそれ以上(例えば1.0X105M−1s−1〜1.0X106M−1s−1)の会合速度(kon)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し5.0X105M−1s−1またはそれ以上の会合速度(kon)を有する。
【0024】
ある実施形態では、本発明は、a)i)被験者およびii)本発明のCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)その組成物の被験者への投与、からなるB細胞リンパ腫の治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、a)i)疾病の症状を訴える被験者およびii)本発明のCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)当該症状を軽減または排除するための、当該被験者への当該組成物の投与からなる、疾病の治療法を提供する。特定の実施形態では、疾病は、再発したホジキンス病、高悪性度の抵抗性ホジキンス病、低悪性度および中悪性度の非ホジキンスリンパ腫(NHL)、B細胞慢性リンパ球白血病(B−CLL)、リンパ形質細胞性悪性リンパ腫(LPL)、被膜細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、瀰漫性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、エイズ関連リンパ腫、単球性B細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ節症、小リンパ球型、濾胞性びまん性大型細胞、びまん性小型開裂細胞、大細胞免疫芽球性リンパ腫、小非開裂型、バーキットおよび非バーキット型、濾胞性の主に大型の細胞、主に小型の濾胞性開裂細胞、および濾胞性の小型及び大型混合細胞リンパ腫から成るグループから選択される。
【0025】
ある実施形態では、本発明は本発明のCD20結合分子の有効量をその動物に投与することからなる治療を必要としている動物における疾病(例えば癌)の治療方法を提供している。ある実施形態では、本発明は薬剤として使用するための本発明のCD20結合分子を提供する。他の実施形態では、本発明は疾病(例えばNHL)治療用の薬剤の製造において、本発明のCD20結合分子を提供する。特定の実施形態では、本発明は疾病(例えば癌)の治療のために、本発明のCD20結合分子を活性成分として含むことを特徴とする薬剤を提供する。
【0026】
好適な実施形態において、被験者(患者)は免疫抑制されていない。例えば、患者は全身性エリテマトーデス(SLE)のような病気にかかっている。非免疫抑制の被験者にCD20結合分子を投与した場合、HACA反応(ヒト抗キメラ抗体反応)が生じない(あるいは生じても無視できる程度である)ことが望ましい。ある実施形態では、被験者に投与される用量は週に約375mg/m2ずつ4週間(HACA反応を生じる事なく)である。ある実施形態では、投与量は(例えば慢性リンパ球白血病(CLL)などに対し)、週に約50〜300mg/m2または週に約100〜200mg/m2ずつ4週間である。
【0027】
ある実施形態では、本発明は、a)i)被験者およびii)ヒトのCD20に対する結合親和力(Kd)が5.0X10−10Mまたはそれ以下であり、またヒトのCD20に対する解離速度(koff)が5.0X10−4s−1またはそれ以下であるCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)その組成物の被験者への投与、からなるB細胞リンパ腫の治療方法を提供する。
【0028】
ある実施形態では、本発明は上述の治療を必要としている被験者において、末梢B細胞を枯渇させる、a)i)被験者およびii)ヒトのCD20に対する結合親和力(Kd)が5.0X10−10Mまたはそれ以下であり、またヒトのCD20に対する解離速度(koff)が5.0X10−4s−1またはそれ以下であるCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)その組成物の被験者への投与、からなる方法を提供する。
【0029】
ある実施形態では、軽鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、軽鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号59および63から選択されたアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、重鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、重鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。さらに別の実施形態では、重鎖可変領域は61および65から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0030】
ある実施形態では、CD20結合分子は抗体または抗体の断片(例えばFv、Fabなど)を含む。特定の実施形態では、CD20結合分子はAME 33 FvまたはFabを含む。別の実施形態では、CD20結合分子はAME 5 FvまたはFabを含む。さらに別の実施形態では、CD20結合分子は、AME 21E1 Hum、AME 6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5から成るグループから選択されたFvまたはFabを含む。
【0031】
他の実施形態では、CD20結合分子はC2B8抗体とほぼ同じEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。さらに別の実施形態では、CD20結合分子はヒトの末梢血管単核細胞を作動体としまたBリンパ腫を標的として、C2B8抗体とほぼ同じEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。ある実施形態では、CD20結合分子はC2B8抗体の約1.5から2倍のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する(当該C2B8抗体は番号69119としてATCCに蒸着している)。また別の実施形態では、CD20結合分子はヒトの末梢血管単核細胞を作動体としまたBリンパ腫を標的として、C2B8抗体の約1.5から2倍のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。さらに別の実施形態では、CD20結合分子はC2B8抗体の10倍またはそれ以上のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。また別の実施形態では、CD20結合分子はヒトの末梢血管単核細胞を作動体としまたBリンパ腫を標的として、C2B8抗体の10倍またはそれ以上のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。
【0032】
ある実施形態では、CD20結合分子にはヒトの生殖細胞系軽鎖フレームワークが含まれる。ある実施形態では、このヒト生殖細胞系軽鎖フレームワークは、V1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4、V5−6から選択される。
【0033】
別の実施形態では、CD20結合分子にはヒトの生殖細胞系重鎖フレームワークが含まれる。特定の実施形態では、この重鎖ヒト生殖細胞系フレームワークは、VH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−3、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1およびVH7−81から選択される。
【0034】
ある実施形態では、CD20結合分子はCD20結合ペプチドまたはポリペプチドである。ある実施形態では、CD20結合ペプチドは抗CD20抗体または抗CD20抗体の断片(例えばFv、Fab、F(ab’)2など)を含む。別の実施形態では、ペプチドには軽鎖および/または重鎖可変領域が含まれる。特定の実施形態では、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域にはフレームワーク領域または少なくともフレームワーク領域の一部(例えばFR2やFR3などの二つから三つの準領域)が含まれる。ある実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3またはFRL4は完全にヒト型である。別の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3またはFRH4は完全にヒトである。ある実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3またはFRL4は生殖細胞系(例えばヒトの生殖細胞)の配列である。別の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3またはFRH4は生殖細胞系(例えばヒトの生殖細胞)の配列である。好ましい実施形態では、フレームワーク領域は完全にヒト型のフレームワーク領域(例えば図4−5および8−9に示されているヒト型のフレームワーク領域)である。ある実施形態では、フレームワーク領域には配列番号71、72、73、74、79、80、81、82またはそれらの組み合わせが含まれる。別の実施形態では、フレームワーク領域には配列番号87、88、89、90、95、96、97、98またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0035】
ある実施形態では、本発明は核酸、アミノ酸、配列番号1−70から選択される配列またはその補体の発現をコード化するコンピュータ可読媒体を提供する。ある実施形態では、コンピュータ処理装置に送られた場合、これらの配列の発現はユーザーに(例えばインターネットを通して)表示される。
【0036】
ある実施形態では、本発明は、配列番号1−70に見られる核酸配列、または配列番号1−70に見られるアミノ酸配列をコード化する核酸配列と、(厳密性の低い、中程度、あるいは高い条件下で)ハイブリダイズする核酸配列を提供する。
【0037】
ある実施形態では、本発明は本出願に記載の核酸配列の補体を提供する(例えば表1−2および図2、3、6、7、10および11を参照)。ある実施形態では、本発明は厳密性の高い、中程度、あるいは低い条件下で本出願に記載の核酸配列とハイブリダイズを行なう配列を提供する(例えば表1−2および図2、3、6、7、10および11を参照)。
【0038】
ある実施形態では、親和性定数(Kd)および会合速度(Kon)は、KinExa平衡ソフト(例えばセパダイン・インスツルメンツ(Sapidyne Instruments)、アイダホ州ボイジー(Boise,Idaho))を使って、IgG細胞結合分析(つまり表面にヒトのCD20を発現する細胞)で決定される。ある実施形態では、親和性定数および会合速度定数は動的排除分析(kinetic exclusion assay)で決定される(例えば、チュー(Chiu)ら、Anal.Chem.、73、5477−5484(2001)、ブレーク(Blake)ら、生物化学ジャーナル(Journal of Biological Chemistry)、271、27677−27685(1996)、ホンゴウ(Hongo)ら、ハイブリドーマ(Hybridoma)、19、303−315(2000)、コスラビアニ(Khosraviani)ら、Bioconjugate Chemistry、11、267−277(2000)、パワーズ(Powers)ら、免疫方法ジャーナル(Journal of Immunological Methods)、251、123−135(2001)を参照、これらは全て参照として本出願に組み込まれている)。特定の実施形態では、動的排除分析(kinetic exclusion assay)はKinExA装置(例えばセパダイン・インスツルメンツ(Sapidyne Instruments)製KinExA(登録商標)3000、アイダホ州ボイジー(Boise,Idaho))または類似の機器を使用して行なわれる。
【0039】
他の実施形態では、CD20結合分子にはFabが含まれ、さらに一つまたはそれ以上の定常領域(例えばCH2および/またはCH3、図10−11を参照)が含まれる。特定の実施形態では、CD20結合分子には抗体(例えば合成CDR配列を有し、完全にヒト型のフレームワークを含む抗体)が含まれる。ある実施形態では、抗体には変質した(例えば突然変異した)Fc領域が含まれる。例えばある実施形態では、抗体のエフェクター機能を向上または低下させるためにFc領域が変更されている。ある実施形態では、Fc領域はIgM、IgA、IgG、IgE、その他から選択されるアイソタイプである。
【0040】
ある実施形態では、CD20結合分子のFc領域のCH2ドメインにアミノ酸修飾が導入される。Fcγ受容体(FcγR)の結合親和力または活性が変化したIgG Fc変異領域を作成するための修飾に有用なアミノ酸の位置には、CD20結合分子のFc領域の268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、300、301、303、305、307、309、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、416、419、430、434、435、437、438または439のアミノ酸位置の一つあるいはそれ以上が含まれる。好適な実施形態では、そのような変異体を作成するためのテンプレートとして使用される親Fc領域は、ヒトのIgG Fcを含む。ある実施形態では、FcγRとの結合力の低下したFc領域変異体を生成するために、CD20結合分子のFc領域の252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、298、300、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438または439、のアミノ酸位置の一つまたはそれ以上にアミノ酸修飾を導入することができる。特定の実施形態では、一つまたはそれ以上のFcγRsとの結合が向上したFc領域変異体が生成されることもある。そのようなFc領域変異体は、CD20結合分子のFc領域の280、283、285、286、290、294、295、298、300、301、305、307、309、312、315、331、333、334、337、340、360、378、398または430、のアミノ酸位置の一つまたはそれ以上にアミノ酸修飾を含む。ある実施形態では、アミノ酸修飾はY300Iである。
【0041】
別の実施形態では、アミノ酸修飾はY300Lである。ある実施形態では、アミノ酸修飾はQ295KまたはQ295Lである。ある実施形態では、アミノ酸修飾はE294Nである。別の実施形態では、296の位置のアミノ酸修飾はY296Pである。ある実施形態では、298の位置のアミノ酸修飾はS298Pである。別の実施形態では、アミノ酸修飾はS298N、S298P、S298VまたはS298Dである。
【0042】
ある実施形態では、CD20結合分子は重鎖定常領域の突然変異を含む。別の実施形態では、CD20結合分子はD280HおよびK290Sから選択された、突然変異を起こした重鎖定常領域を含む。
【0043】
代替的あるいは追加的に、アミノ酸修飾と、C1q結合および/またはCD20結合分子のFc領域の補体依存性細胞毒性機能を変化させる一つまたはそれ以上のさらなるアミノ酸修飾とを組み合わせることが有用である。特に関連する出発ポリペプチドは、C1qと結合し補体依存性細胞毒性機能(CDC)を示すものであり得る。本出願に記載のアミノ酸置換は、C1qと結合するおよび/または補体依存性細胞毒性機能を修正する(例えばこれらの作動体の機能を減少、及び望ましくは取り除く)出発ポリペプチドの機能を変化させる働きをする。しかしながら、上述の一つまたはそれ以上の位置に、より優れたC1q結合および/または補体依存性細胞毒性機能(CDC)を備えた置換体を含むポリペプチドも本出願では考慮されている。例えば、出発ポリペプチドは、C1qを結合するおよび/またはCDCを媒介することはできないかもしれないし、またこれらのエフェクター機能を取得するべく、本出願の内容に従って修正されるかもしれない。さらに、既存のC1q結合活性、さらに任意的にCDC媒介機能を有するポリペプチドが、これらの活性のうち一つまたは両方の活性を向上させるべく修正されることもある。C1qを変化させるおよび/またはその補体依存性細胞毒性機能を修正するアミノ酸修飾が、例えば参照としてここに組み込まれているWO0042072に記載されている。
【0044】
上述のように、変更されたエフェクター機能を備えたCD20結合分子のFc地域を、例えばC1q結合および/またはFcγR結合を修正し、その結果CDCの活性および/またはADCC活性を変化させることによって設計することが可能である。例えば、改善されたC1q結合および改善されたFcγRIII結合を備えた(例えば、改善されたADCC活性および改善されたCDC活性の両方を備えた)CD20結合分子の様々なFc地域を生成することが可能である。
【0045】
あるいはエフェクター機能を減退または除去したい場合は、減退したCDC活性および/または減退したADCC活性を有するFc変異領域を作成してもよい。別の実施形態では、これらの活性のいずれか一方だけを向上させ、他の活性を任意的に減退させること(例えばADCC活性を向上させCDC活性を減退させること、あるいはその逆によるFc変異領域の作成)も可能である。
【0046】
Fc変異体を本発明のCD20結合分子に導入し、新生児Fc受容体(FcRn)との相互作用を変化させ、薬物速度論的特性を改善することもできる。抗体のFc領域とFcRnとの間の相互作用が血清免疫グロブリンの持続性に何らかの役割を演じている事がいくつかの実験で示されている。例えば、機能性FcRnが欠如しているマウスのIgG分子において、血清の異常に短い半減期が観察されている。FcRnとの結合を改善するFcの変異により血清の半減期が長くなると思われ、一方、IgG結合の強化をもたらすラットのFcRnにおける変異もまた血清の半減期を向上させる。FcRnとの結合が改善されたヒトFc変異体のコレクションも記載されている(シールズ(Shields)ら、ヒトIgGIのFCγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcRn結合領域の高解像度マッピング、およびFcγRとの結合が改善されたIgG1変異体のデザイン、J.Biol.Chem.、276、6591−6604(2001))。低pHで観察される(例えば飲作用あるいは血清からのIgG分子による液相飲食作用中)IgG分子とFcRnの結合親和性の増大が血清の半減期に影響を及ぼすことが報告されている(ゲティー(Ghetie)ら、ランダム変異誘発によるIgG断片の血清持続性の増加、Nat.Biotechnol.15、637−640(1997)、メデサン(Medesan)ら、Fc:FcRn相互作用領域を説明するためのラットIgGの比較研究、Eur.J.Immunol.28、2092−2100(1998)、キム(Kim)ら、MHCクラスI関連受容体の結合に関するヒトIgG領域マッピング、FcRn、Eur.J.Immunol.29、2819−2825(1999)、ダーラクア(Dall’Acqua)ら、新生児Fc受容体に関するヒトIgGIの親和力増大:生物学的結果、J.Immunol.169、5171−5180(2002))。しかし、高pHで結合を増強させる突然変異は血清の半減期に悪い影響を及ぼすと思われる(ダーラクアら、新生児Fc受容体に関するヒトIgGIの親和力増大:生物学的結果、J.Immunol.169、5171−5180(2002))。上述の文献は全て参照として本出願に編入されている。従って、低pHでFcRnの親和性を増大させ、高pHでFcRnの親和性を維持または減少させるように、Fc変異体を本発明のCD20結合分子に導入することができる。
【0047】
別のタイプのアミノ酸置換は、CD20結合分子Fc領域の糖鎖形成パターンを変更する働きをする。これは例えば、ポリペプチド内の一つまたはそれ以上の糖鎖形成領域を除去することにより、および/またはポリペプチド内に存在しない一つまたはそれ以上の糖鎖形成領域を加える事によって達成できる。Fc領域の糖鎖形成は通常N−リンクまたはO−リンクである。N−リンクは炭水化物の一部をアスパラギン残基の側鎖に結合させる事を意味する。ペプチド配列であるアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(Xはプロリン以外のアミノ酸)は、炭水化物の一部がアスパラギン側鎖に酵素結合する際の認識配列である。従って、ポリペプチド中におけるこのようなペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的な糖鎖形成領域を形成する事になる。O−リンク糖鎖形成は、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち一つの糖が、ヒドロキシアミノ酸(通常はセリンまたはトレオニンであるが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンが使用されることもある)と結合する事を意味する。
【0048】
CD20結合分子のFc領域への糖鎖形成領域の付加は、上述のトリペプチド配列(N−リンク糖鎖形成領域)の一つまたはそれ以上を含むようにアミノ酸配列を変化させることにより容易に達成できる。典型的な糖鎖形成変異体は、重鎖の残基Asn297のアミノ酸置換を有する。最初のポリペプチド(O−リンク糖鎖形成領域用)の配列に一つまたはそれ以上のセリンまたはトレオニン残基を付加する、あるいはそれらで置換する事によって変更することもできる。
【0049】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)を発現する細胞において、GnT IIIがGlcNAcをCD20結合分子に付加する形で発現する。結合分子をこのような形で作成する方法は、これらの全てが完全なものとして参照用に本出願に組み込まれている、WO9954342、WO03011878、出願公告20030003097A1、およびウマナ(Umana)ら、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、17、176−180、1999年2月発行に記載されている。
【0050】
ある実施形態では、本発明は、a)本発明のCD20結合分子、およびb)被験者の疾病を治療するためのCD20結合分子の使用手引書または科学的研究あるいは診断目的(例えばELISA分析など)のためのCD20結合分子の使用手引書を含む道具一式を提供する。ある実施形態では、本発明は、本発明のCD20結合分子をコード化する核酸配列が永続的または一時的にトランスフェクトされた細胞株を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は標識された種々の領域およびセクションを有するIgG分子の概念図である。CDRおよび二つの可変領域軽鎖のうちの一つ、また二つの可変領域重鎖のうちの一つのフレームワークも標識されている。
【0052】
【図2】図2AはAME33(配列番号59)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示し、図2BはAME33(配列番号60)の軽鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0053】
【図3】図3AはAME33(配列番号61)の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示し、図3BはAME33(配列番号62)の重鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0054】
【図4】図4AはCDRが散在した完全にヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkIII(A27)(DPK22)のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される:FRL1(配列番号71)、FRL2(配列番号72)、FRL3(配列番号73)およびFRL4(配列番号74)。図4BはCDRが散在したヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkIII(A27)(DPK22)の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される。FRL1(配列番号75)、FRL2(配列番号76)、FRL3(配列番号77)およびFRL4(配列番号78)。
【0055】
【図5】図5AはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域VH5−51(DP−73)のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される。FRH1(配列番号79)、FRH2(配列番号80)、FRH3(配列番号81)およびFRH4(配列番号82)。図5BはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域V5−51(DP−73)の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される:FRH1(配列番号83)、FRH2(配列番号84)、FRH3(配列番号85)およびFRH4(配列番号86)。
【0056】
【図6】図6AはAME5(配列番号63)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。図6BはAME5(配列番号64)の軽鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0057】
【図7】図7AはAME5(配列番号65)の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。図7BはAME5(配列番号66)の重鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0058】
【図8】図8AはCDRが散在したヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkI(DPK4)(A20)のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRL1(配列番号87)、FRL2(配列番号88)、FRL3(配列番号89)およびFRL4(配列番号90)のように標識される。図8BはCDRが散在したヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkI(DPK4)(A20)の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRL1(配列番号91)、FRL2(配列番号92)、FRL3(配列番号93)およびFRL4(配列番号94)のように標識される。
【0059】
【図9】図9AはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域VHI DP7/21−2のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRH1(配列番号95)、FRH2(配列番号96)、FRH3(配列番号97)およびFRH4(配列番号98)のように標識される。図9BはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域VHI DPI7/21−2の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRH1(配列番号99)、FRH2(配列番号100)、FRH3(配列番号101)およびFRH4(配列番号102)のように標識される。
【0060】
【図10】図10AはAME33(配列番号67)の軽鎖の完全アミノ酸配列を示し、図10BはAME33(配列番号68)の軽鎖の完全核酸配列を示す。
【0061】
【図11】図11AはAME33(配列番号69)の重鎖の完全アミノ酸配列を示し、図11BはAME33(配列番号70)の重鎖の完全核酸配列を示す。
【0062】
【図12】図12は実施例2に記載のELISA結合分析の結果を示す。
【0063】
【図13】図13は実施例2に記載のELISA結合分析の結果を示す。
【0064】
【図14】図14は実施例3に記載の生体Bリンパ腫Fab結合分析の結果を示す。
【0065】
【図15】図15は実施例5に記載のADCC分析の結果を示す。
【0066】
【図16】図16は実施例6に記載の糖鎖合成CD20結合分子のADCC活性を示している。
【0067】
【図17】図17は実施例9に記載の、AME33抗体およびC2B8抗体に関わる生体内腫瘍阻害分析の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
定義
本発明の理解を助ける目的で、多くの用語が以下のように定義される。
【0069】
本出願で使用されている「抗体」という用語は、四つのペプチド鎖、つまりジスルフィド結合で連結された二つの重(H)鎖および二つの軽(L)鎖で構成される免疫グロブリン分子を意味する。各重鎖は重鎖可変領域(本出願ではHCVRまたはVHと略)と重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は三つのドメインCH1、CH2およびCH3(図1を参照)で構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本出願ではLCVRまたはVLと略)と軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は一つのドメインCL(図1を参照)で構成される。VHおよびVL領域はさらに、より保存された、フレームワーク領域(FR)とよばれる領域が組み込まれた、相補性決定領域(CDR)とよばれる超可変性の領域に細分される。各可変領域(VHまたはVL)はCDR1、CDR2およびCDR3に指定される三つのCDRを含んでいる(図1、4および5を参照)。各可変領域はFR1、FR2、FR3およびFR4に指定される四つの準領域であるフレームワークを含んでいる(図1、4および5を参照)。
【0070】
本出願で使用されている「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部分を意味する。抗体断片の例として、これだけに限定されるものではないが、線形抗体、単鎖抗体分子、Fv、FabおよびF(ab’)2断片、抗体断片から形成される多特異的抗体などが含まれる。抗体断片は重鎖および/または軽鎖可変領域の少なくとも一部を保持していることが望ましい。
【0071】
本出願で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗原結合で主な働きをする領域である。軽鎖可変領域に三つのCDR(CDRL1、CDRL2およびCDRL3)、重鎖可変領域に三つのCDR(CDRH1、CDRH2およびCDRH3)が存在する。これら六つのCDRを構成している残基は、カバット(Kabat)およびコチア(Chothia)により次のように特徴付けられている:軽鎖可変領域の残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)および89〜97(CDRL3)、そして重鎖可変領域の31〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)および95〜102(CDRH3);カバット(Kabat)など、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest) (1991)、第5版、国立衛生研究所公衆衛生サービス(Public Health Service、National Institutes of Health)、メリーランド州ベセスダ(Bethesda、MD)(参照として本出願に編入)、および軽鎖可変領域の残基26〜32(CDRL1)、50〜52(CDRL2)および91〜96(CDRL3)、そして重鎖可変領域の26〜32(CDRH1)、53〜55(CDRH2)および96〜101(CDRH3);コチア(Chothia)およびレスク(Lesk)J.Mol.Biol.196、901〜917(1987)(参照として本出願に組み込まれている)。特別の断りがない限り、本出願で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、カバット(Kabat)とコチア(Chothia)の両方に含まれる残基を含んでいる(すなわち軽鎖可変領域の残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)および89〜97(CDRL3)、そして26〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)および95〜102(CDRH3)である)。本出願では、指定されていない限り、CDR残基の番号はカバット(Kabat)の方法に基づいている。
【0072】
本出願で使用される「フレームワーク」という用語は、本出願で定義されるCDR残基以外の可変領域の残基を意味する。フレームワークを構成する、FR1、FR2、FR3およびFR4の四つの準領域が存在する(図1、4および5を参照)。フレームワークの準領域が軽鎖可変領域であるか重鎖可変領域であるかを区別するために、準領域の略号に「L」か「H」を付けることもできる(例えば「FRL1」は軽鎖可変領域のフレームワーク準領域1を示す)。特に指定されていない限り、CDR残基の番号はカバット(Kabat)の方法に基づいている。ある実施形態において、本出願のCD20結合分子が完全ではないフレームワークを有する場合がある(例えばCD20結合分子が四つの準領域のうち一つだけあるいは一つ以上を含むフレームワークの一部を有する場合がある)ことが知られている。
【0073】
本出願で使用される「完全にヒト型のフレームワーク」という用語は、ヒトに自然に見られるアミノ酸配列を有するフレームワークを意味する。完全にヒト型のフレームワークの例には、これだけに限定されるものではないが、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、POMなどが含まれる(例えばカバット(Kabat)ら、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)(1991)、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH、USA、およびウー(Wu)ら、J.Exp.Med.132,211−250(1970)を参照、両方とも参照として本出願に組み込まれている))。
【0074】
本出願で使用される「被験者」および「患者」という用語は、犬、猫、鳥、家畜などの哺乳類を含む動物で、ヒトであるのが望ましい。
【0075】
本出願で使用される「コドン」または「トリプレット」という用語は、ポリペプチドに含まれる天然アミノ酸の一つを特定する、隣り合った三つのヌクレオチド・モノマーのグループを意味する。この用語には、どのアミノ酸も特定しないコドンも含まれる。遺伝子コドンの縮退のため、同じアミノ酸をコード化するコドンが複数存在する事も知られている。従って、本発明の核酸配列の多くの塩基(例えば表1および2を参照)を、コード化されている実際のアミノ酸配列を変えることなく変更することができる。本発明はそのような核酸配列を全て含むことを意図している。
【0076】
本出願で使用される「ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」、「ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」および「ペプチドをコード化する核酸配列」という用語は、特定のポリペプチドのコード領域を含む核酸配列を意味する。当該コード領域はcDNA、ゲノムDNAまたはRNAの形で存在する。DNAの形で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖(すなわちセンス鎖)であっても二本鎖であってもよい。転写の適切な開始および/または1次RNA転写物の正しいプロセッシングを必要とされている場合、エンハンサー・プロモーター、スプライス部位、ポリアデニレーション・シグナルなどの適切な調節要素を遺伝子のコード領域の直ぐ近くに配置することもできる。あるいは、本発明の発現ベクターに使用されるコード領域は、内因性のエンハンサー・プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニレーション・シグナルなど、または内因性と外因性の調節要素の組み合わせを含んでいることもある。
【0077】
本出願で使用される「オリゴヌクレオチド」と「ポリヌクレオチド」という用語の間には大きさの制限や区別はない。どちらの用語も単にヌクレオチドからなる分子を意味する。同様に、「ペプチド」と「ポリペプチド」という用語の間にも大きさの区別は存在しない。両用語とも単にアミノ酸残基で構成される分子を意味する。
【0078】
本出願で使用される「相補的な」または「相補性」という用語は、塩基対合則によって関連した、ポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチドの配列)について使用される。例えば配列「5’−A−G−T−3’」は配列「3’−T−C−A−5’」に相補的である。相補性は塩基対合則に従って核酸塩基の一部だけが一致している「部分的」なものでも、核酸間で「完全に」あるいは「全体に」相補的なものでもよい。核酸鎖間の相補性の度合いは、ハイブリダイゼーションの効果および強度に重要な影響を及ぼす。
【0079】
本出願で使用される、所定の配列の「補体」という用語は、その全長にわたる配列に完全に相補的である配列に関して使用される。例えば配列「5’−A−G−T−3’」は配列「3’−T−C−A−5’」の「補体」である。本発明は、本出願に記載の配列の補体(例えば配列番号1−70の核酸配列の補体)も提供する。
【0080】
本出願で使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対合に関連して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち核酸間の結合の強さ)は、核酸間の相補性の度合い、条件の厳しさの度合い、形成されたハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比などの要因の影響を受ける。
【0081】
本出願で使用される「厳密性」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行なわれる温度、イオン強度、有機溶媒のような他の化合物の存在などの条件に関連して使用される。上述のパラメーターを単独でまたは組み合わせて変えることにより条件の「厳密性」変化させる事ができることを、当技術分野に精通した技術者は理解している。「厳密性の高い」条件では、核酸塩基の対形成は、相補的な塩基配列の頻度が高い核酸断片の間でのみ生じる(例えば「厳密性の高い」)条件下のハイブリダイゼーションは、約85〜100%同一、望ましくは約70〜100%同一の相同体間で生じる)。厳密性が中度の条件下では、核酸塩基の対形成は、相補的な塩基配列の頻度が中位の核酸断片の間で生じる(例えば「厳密性が中度の」条件下のハイブリダイゼーションは、約50〜70%同一の相同体の間で生じる)。従って、厳密性が「弱い」または「低い」条件下では、相補的な塩基配列の頻度が低いため、通常遺伝的に多様性のある有機体から導かれる核酸が要求される。
【0082】
「厳密性の高い条件」という用語が核酸ハイブリダイゼーションとの関連で使用される場合、長さ約500のヌクレオチドのプローブを使用する時は、5XSSPE(NaOHでpHを7.4に調整した43.8g/lのNaCl、6.9g/lのNaH2PO4・H2Oおよび1.85g/lのEDTA)、0.5%SDS、5Xデンハーツ溶液(50Xデンハーツ溶液は500ml当たり5gのFicoll(タイプ400、ファーマシア(Pharmacia)、5gのBSA(画分V、シグマ(Sigma)を含む))、および100μg/mlの変性サケ精子DNAの溶液中、42℃で結合またはハイブリダイズし、その後0.1XSSPEおよび1.0%SDSの溶液中、42℃で洗浄する条件が含まれる。
【0083】
「中程度の厳密性の条件」という用語が核酸ハイブリダイゼーションとの関連で使用される場合、長さ約500のヌクレオチドのプローブを使用する時は、5XSSPE、0.5%SDS、5Xデンハーツ溶液、および100μg/mlの変性サケ精子DNAの溶液中、42℃で結合またはハイブリダイズし、その後1.0XSSPEおよび1.0%SDSの溶液中、42℃で洗浄する条件が含まれる。
【0084】
「厳密性の低い条件」という用語が核酸ハイブリダイゼーションとの関連で使用される場合、長さ約500のヌクレオチドのプローブを使用する時は、5XSSPE、0.1%SDS、5Xのデンハーツ溶液、および100g/mlの変性サケ精子DNAの溶液中、42℃で結合またはハイブリダイズし、その後5XSSPEおよび0.1%SDS溶液中、42℃で洗浄する条件が含まれる。
【0085】
「単離される」という用語が、「単離されたオリゴヌクレオチド」、「単離されたポリヌクレオチド」、「CD20結合分子をコード化する単離された核酸配列」(例えば表1−2を参照)など、核酸との関連で使用される場合、識別された、またそれが通常関係している(例えば宿主細胞の蛋白質)少なくとも一つの汚染物である核酸から分離された核酸配列を意味する。
【0086】
本出願で使用される「一部」という用語は、ヌクレオチド配列との関係で使用される場合(例えば「あるヌクレオチド配列の一部」)、その配列の断片を意味する。断片の大きさは10ヌクレオチドから全ヌクレオチド配列マイナス一つのヌクレオチドまで様々であってよい(例えば10、20、30、40、50、100、200ヌクレオチドなど)。
【0087】
本出願で使用される「一部」という用語は、アミノ酸配列との関係で使用される場合(例えば「あるアミノ酸配列の一部」)、その配列の断片を意味する。断片の大きさは六つのアミノ酸から全アミノ酸配列マイナス一つのアミノ酸まで様々であってよい(例えば6、10、20、30、40、75、200アミノ酸など)。
【0088】
本出願で使用される「精製される」または「精製する」という用語は、サンプルから汚染物を除去する事を意味する。例えばCD20特異的な抗体は、汚染物である非免疫グロブリン蛋白質を除去する事により精製される。これらはまたあるいは同じ抗原と結合しない免疫グロブリンを除去する事によっても精製される。非免疫グロブリン蛋白質および/または特定の抗原と結合しない免疫グロブリンを除去する事により、サンプル中の抗原特異的な免疫グロブリンの比率が高まる結果となる。別の例では、抗原特異的な組み換えポリペプチドが細菌の宿主細胞で発現し、また宿主細胞の蛋白質を除去する事によりそのポリペプチドが精製され、サンプル中の抗原特異的な組み換えポリペプチドの比率が高まる。
【0089】
本出願で使用される「ベクター」という用語は、DNA断片を一つの細胞から別の細胞へ移す核酸分子に関連して使用される。「ビヒクル」という用語が、「ベクター」と同じ意味で使用される場合もある。
【0090】
本出願で使用される「発現ベクター」という用語は、希望のコード配列および特別の宿主生物内の機能的に連結したコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含む、組み換えDNA分子を意味する。原核生物における発現に必要な核酸配列には、プロモーター、オペレーター(任意)およびリボソーム結合部位が、他の配列とともに含まれる。真核細胞はプロモーター、エンハンサー、終止シグナル、そしてポリアデニレーション・シグナルを使用することが知られている。
【0091】
本出願で使用される「宿主細胞」という用語は、生体内または生体外のあらゆる原核細胞または真核細胞をさす(例えば大腸菌(E.coli)などの細菌、酵母、PER.C6(登録商標)(クルセル社(Crucell)、オランダ)やCHO細胞などの哺乳類の細胞、鳥の細胞、両生類の細胞、植物細胞、魚の細胞および昆虫の細胞)。例えば、宿主細胞は遺伝子導入動物中に存在することもある。
【0092】
本出願で使用される「コンピュータ・メモリ」および「コンピュータ・メモリ装置」という用語は、コンピュータ・プロセッサで読取り可能なあらゆる記憶媒体を意味する。コンピュータメモリには、これだけに限定されるものではないが、例えばRAM、ROM、コンピュータ・チップ、デジタル・ビデオ・ディスク(DVD)、コンパクト・ディスク(CD)、ハードディスク・ドライブ(HDD)、磁気テープなどが含まれる。
【0093】
本出願で使用される「コンピュータ読取り可能媒体」という用語は、コンピュータ・プロセッサに情報(例えばデータや指示)を保存および提供するあらゆる装置またはシステムを意味する。コンピュータ読取り可能媒体の例には、これだけに限定されるものではないが、例えばDVD、CD、ハードディスク・ドライブ、磁気テープ、ネットワークのストリーム媒体用サーバーなどが含まれる。
【0094】
本出願で使用される、核酸またはアミノ酸配列の「発現をコード化するコンピュータ読取り可能媒体」という用語は、プロセッサに配信されたときに、核酸またはアミノ酸配列をユーザーに表示(例えばプリントアウトや画面表示)することを可能にする情報を記憶している、コンピュータ読取り可能媒体を意味する。
【0095】
本出願で使用される「プロセッサ」および「中央処理装置」あるいは「CPU」という用語は同じ意味で使用され、コンピュータ・メモリ(例えばROMまたは他のメモリ)からプログラムを読取り、そのメモリに従って一連のステップを行なう事のできる装置を意味する。
【0096】
本出願で使用される「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する(例えば表1を参照)。「Fc領域」は天然配列のFc領域であってもよいし、変異体のFc領域(例えば作動体の機能が減少または増大したもの)であってもよい。
【0097】
本出願で使用されるように、Fc領域は(例えば被験者の)生物活性の活発化あるいは減退の原因である「作動体の機能」を有していてもよい。作動体の機能には、これだけに限定されるものではないが、例えばC1q結合、補体依存性細胞障害作用(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)、食細胞活動、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体(BCR))のダウンレギュレーションなどが含まれる。このような作動体の機能は、Fc領域が結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と結合することを必要とし、また種々の分析(例えばFc結合分析、ADCC分析、CDC分析など)を使って評価される。
【0098】
本出願で使用される「単離された」ペプチド、ポリペプチド、または蛋白質とは、識別され、自然環境の成分から分離および(または)回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、当該ポリペプチドの診断または治療のための使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、他の蛋白様または非蛋白様溶質が含まれる。ある実施形態では、単離されたポリペプチドは、(1)ロウリー(Lawry)法で測定してポリペプチドの重量比で95%以上、好ましくは重量比で99%以上になるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)を使ってN−末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、あるいは(3)クマシー・ブルーまたは銀染色を使い還元または非還元条件下でSDS−pageにより均一になるまで、のレベルまで精製される。そのポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドには、組み換え細胞内の本来の位置のポリペプチドが含まれる。しかし、単離されたポリペプチドは通常、少なくとも一つの精製ステップを経て生成される。
【0099】
本出願で使用される「治療」という用語は、治療を目的とした処置および予防的治療の両方を意味する。治療を必要とする人には、既に疾病に罹っている人およびその疾病の予防を希望する人が含まれる。
【0100】
「症状が軽減する条件の下に」という用語は、CD20結合分子で治療可能なあらゆる疾病の検出可能な症状の、あらゆる程度の質的あるいは量的な軽減を意味し、これには、決してこれだけに限定されるものではないが、疾病の回復速度に対する検出可能な影響(例えば体重の増加率)、あるいは特定の疾病に通常関連する症状の少なくとも一つの軽減が含まれる。
【0101】
本出願で使用される「ヒトのCD20」(本出願ではhCD20と略)という用語は、ヒトのBリンパ球制限分化抗原(Bp35とも呼ばれる)を意味する。CD20はB前駆体細胞成長の初期に発現し、血漿の細胞分化まで残る。CD20分子は、細胞サイクルの開始および分化に必要なB細胞活性化プロセスの一段階を規制することもあり、新生物形成B細胞において通常極めて高レベルで発現する。CD20は「正常な」B細胞にも「悪性の」B細胞(すなわち無制限の増幅がB細胞リンパ腫の原因となるB細胞)にも存在する。
【0102】
「親和性」、「結合親和性」および「Kd」という用語は、CD20結合分子・CD20蛋白の複合体に関連した解離平衡定数(濃度の単位で表現される)を意味する。結合親和性は、オフレート定数(一般に時間の逆数、例えば秒−1の単位で報告される)とオンレート(一般に時間単位当たりの濃度の単位、例えばモル/秒で報告される)の比に直接関係している。結合親和性は、例えばELISA分析、動的排除分析(kinetic exclusion assay)、表面プラズモン共鳴などにより決定される。あるエピトープは細胞表面で繰り返し(多価性)生じる場合があり、抗体と反復エピトープとの結合の解離定数(koff)は、一価のリガンドと同抗体の反応の解離定数と比べて大幅に縮小する場合があることが知られている。一つの抗体・リガンド結合が解離すると、他の結合が二価(または多価)の抗体を多価のリガンドに繋ぎ止め、解離した結合が再び形成されるため、解離定数の縮小が起きる。二価(または多価)のAbと多価のリガンドとの反応の解離定数は、抗体の代表的な部位の会合定数である内因性の親和性と区別するために、機能的親和性と呼ばれる。
【0103】
本出願で使用される「解離」、「解離速度」および「koff」という用語は、抗原・抗体複合体からCD20結合分子が解離するオフレート定数を意味する。
【0104】
本出願で使用される「会合」、「会合速度」および「kon」という用語は、CD20結合分子が抗原と会合し抗原抗体複合体を作るオンレート定数を意味する。
【0105】
本出願で使用される「有効濃度」および「EC50」という用語は、十分な量のCD20分子と相互作して、処理された細胞の約50%に影響を及ぼす事のできるCD20結合分子の濃度を意味する。
【0106】
発明の説明
本発明は、CD20結合分子およびCD20結合分子をコード化する核酸配列を提供する。特に本発明は、ヒトのCD20に関して高い結合親和力と低い解離速度を有するCD20結合分子を提供する。本発明のCD20結合分子は、完全にヒト型のフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでいるのが望ましい。発明の説明は、便宜上、I.CD20結合分子、II.CD20結合分子の作成、III.治療用の調剤および使用、およびIV.それ以外のCD20結合分子の使用、に分類される。
【0107】
I.CD20結合分子
本発明は望ましい性質をもったCD20結合分子を提供する。特にある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し高い結合親和性(Kd)を有している。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し低い解離速度(koff)を有している。好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は、高い親和性と低い解離速度を有し、低濃度で有効である。従って、当発明を実践または理解する必要なくして、高親和性と低解離速度を有する本発明のCD20結合分子が特にヒトの治療用に優れており、リツキサン(C2B8)のような他の抗CD20分子と比べてHACA反応を引き起こす可能性が小さい事が理解される。
【0108】
さらに別の実施形態では、本発明のCD20結合分子はヒトのCD20に結合する。別の実施形態では、本発明のCD20結合分子はカニクイザル(Cynomolgus macaques)のB細胞表面のCD20と結合する。
【0109】
好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでおり、完全にヒト型のフレームワークを有していることが望ましい。特に好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでおり、ヒトの生殖細胞系フレームワークを有していることが望ましい。従って、本発明を実践または詳細に理解する必要なくして、フレームワーク領域が完全にヒトであるならば、ヒトに投与(例えば疾病の治療)した場合、本発明のCD20結合分子(例えば後述の実施例を参照)は免疫原性反応を殆どあるいは全く引き起こさないと考えられる。
【0110】
以下の表1および2に示されているように、本発明はCD20結合分子を作成するのに有効な数多くのCDRを提供する。例えば、CD20結合ペプチドまたはCD20結合ペプチドをコード化する核酸配列を作成するため、表示されている一つまたはそれ以上のCDRをフレームワークの準領域(例えば完全にヒトのFR1、FR2、FR3またはFR4)と組み合わせることができる。あるいは、以下の表に示されているCDRを、例えば、三つのCDRが軽鎖可変領域に存在するように、および/または三つのCDRが重鎖可変領域に存在するように組み合わせてもよい。
【0111】
CD20結合分子またはCD20結合分子をコード化する核酸配列を作成するため、以下に示されているCDRを(例えば組み換え技術を使って)ヒト型のフレームワーク、つまり図4−5および8−9に示されているような軽鎖および重鎖フレームワークに挿入してもよい。例えば、図4A(または8A)に示されているCDRL1を、表1に示されるように配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21で置き換えることができる。同様に、図4B(または8B)に示されているCDRL1を、表1に示されているように配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22で置き換えることができる。同じ方法が表1−2に示されている全てのCDRに関して使用できる。以下に表1および2を示す。
表1 軽鎖CDR
【表1】
* 残基の番号付けにはカバット(Kabat)の方法を採用した。CDRはカバット(Kabat)およびコチア(Chothia)の残基を含む。
表2 重鎖CDR
【表2】
* 残基の番号付けにはカバット(Kabat)の方法を採用した。CDRはカバット(Kabat)およびコチア(Chothia)の残基を含む。
【0112】
本発明は、上の表に示されているCDR配列(アミノ酸および核酸)と実質的に同じ配列も提供する。例えば、表に示されている配列の中の一つまたは二つのアミノ酸を置き換えてもよい。さらに例えば、表に示されている配列において多数のヌクレオチド塩基を置き換えることもできる。アミノ酸配列の変更は、そのアミノ酸配列をコード化している核酸配列を変えることによって行われてもよい。所定のCDRの変異体をコード化する核酸配列は、特定の配列に関する本明細のガイダンスを使い、当業者に知られている方法でも生成される。これらの方法には、これだけに限定されるものではないが、部位特異的(またはオリゴヌクレオチド媒介)変異誘発、PCR変異誘発、CDRをコード化する以前に生成した核酸のカセット変異誘発などによる生成が含まれる。置換変異体を生成する方法としては、部位特異的変異誘発が望ましい。この方法は当技術分野ではよく知られている(例えばカーター(Carter)ら、Nucleic Acids Res.13、4431−4443(1985)、クンケル(Kunkel)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、488−492(1985)を参照。両方とも参照として本出願に組み込まれている)。
【0113】
簡単に説明すると、DNAの部位特異的変異誘発を行う際、目的の変異をコード化しているオリゴヌクレオチドを出発DNAの一本鎖とまずハイブリダイズする事により、当該出発DNAが変質される。ハイブリダイゼーションの後、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドをプライマーとして、また出発DNAの一本鎖をテンプレートとして用いて、DNAポリメラーゼによって二本目の鎖全体が合成される。このようにして、目的の変異をコード化するオリゴヌクレオチドが結果として得られる二本鎖のDNAに取り込まれる。
【0114】
出発CDRのアミノ酸配列変異体を作成するには、PCR変異誘発も適している(例えばバレット(Vallette)ら、Nucleic Acids Res.17、723−733(1989)、参照として本出願に組み込まれている)。簡単に説明すると、PCRにおいて僅かな量のテンプレートDNAを出発物質として使用する場合、テンプレートDNA内の対応する領域とわずかに配列が異なるプライマーを使用して、プライマーとテンプレートが相違している位置だけテンプレート配列と異なるDNA断片を比較的大量に作成できる。
【0115】
変異体を生成する別の方法であるカセット式変異誘発は、ウェルス(Wells)ら、遺伝子(Gene)34、315−323(1985)(参照として本出願に組み込まれている)に記載の技術に基づいている。出発物質は、変異される出発CDR DNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。変異される出発DNAのコドンが同定される。同定された変異部位の両側に、独特の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しなくてはならない。そのような制限部位が存在しない場合には、上述のオリゴヌクレオチド媒介変異誘発方法を使って、出発ポリペプチドDNAの適切な場所に制限部位を導入してもよい。プラスミドDNAは、線形化するため当該の部位で切断される。制限部位間のDNA配列をコード化し、また目的の突然変異を含んでいる二本鎖オリゴヌクレオチドが標準の方法を使って合成される。この場合、オリゴヌクレオチドの二本鎖は別々に合成され、標準技術を使ってハイブリダイズされる。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと呼ばれる。このカセットは、プラスミドと直接連結できるよう、線形化されたプラスミドの両端と適合する5’および3’末端を持つようにデザインされる。このようにして、突然変異DNA配列を含むプラスミドが作成される。
【0116】
代替的にまたは追加的に、ポリペプチド変異体をコード化する目的アミノ酸配列を決定し、そのようなアミノ酸配列の変異体をコード化する核酸配列を合成してもよい。CDRのアミノ酸配列に保存的な修飾を施してもよい。天然の残基は側鎖の特性を基にいくつかのクラスに分類される。
(1) 疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile
(2) 中性親水性:cys、ser、thr
(3) 酸性:asp、glu
(4) 塩基性:asn、gln、his、lys、arg
(5) 鎖の方向付けに影響を与える残基:gly、pro
(6) 芳香族:trp、tyr、phe
同類置換は、あるクラスのメンバーを同じクラスの別のメンバーで置き換える。本発明は、表1および2に示されている核酸配列の補体、および減密度が低い、中程度、また高い条件下でこのような核酸配列とハイブリダイズする核酸配列も提供する。
【0117】
本発明のCDRは、どのタイプのフレームワークと共に使用してもよい。CDRは完全にヒト型のフレームワーク、またはフレームワークの準領域と一緒に使用するのが望ましい。特に好適な実施形態では、フレームワークはヒトの生殖細胞系配列である。完全にヒト型のフレームワークの例は、図4−5および8−9に示してある。その他の完全にヒト型のフレームワークまたはフレームワークの準領域を使用してもよい。例えばNCBIウェブサイトには、現在知られているフレームワーク領域の配列が含まれている。ヒトのVH配列は、これだけに限定されるものではないが、例えばVH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−53、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1、VH7−81などであり、これらは参照として本出願に編入されているマツダ(Matsuda)ら、J.Exp.Med.188、1973−1975(1998)に記載されており、ヒトの免疫グロブリン鎖可変領域座の完全なヌクレオチド配列を含んでいる。ヒトのVK配列は、これだけに限定されるものではないが、例えばAl、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、O8などであり、これらは参照として本出願に組み込まれているカワサキ(Kawasaki)ら、Eur.J.Immunol.31、1017−1028(2001)、シェーブル(Schable)およびツァッハウ(Zachau)、Biol.Chem.Hoppe Seyler374、1001−1022(1993)、およびブレンシン−クッパース(Brensing−Kuppers)ら、遺伝子(Gene)191、173−181(1997)に記載されている。ヒトのVL配列は、これだけに限定されるものではないが、例えばV1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4、V5−6などであり、これらは参照として本出願に編入されているカワサキ(Kawasaki)ら、Genome Res.7、250−261(1997)に記載されている。完全にヒト型のフレームワークは、これらの機能的生殖細胞系遺伝子から選択される。通常これらのフレームワークは制限された数のアミノ酸の変更により互いに異なっている。これらのフレームワークを本出願に記載のCDRと共に使用してもよい。本発明のCDRと共に使用されるヒト型のフレームワークの追加的な例には、これだけに限定されるわけではないが、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、POMなどがある(例えば、両方とも参照として本出願に編入されている、カバット(Kabat)ら、(1991)免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH、USA、およびウー(Wu)ら、J.Exp.Med.、132、211−250(1970)参照)。
【0118】
再び本発明を実践または理解する必要なくして、生殖細胞系の配列の使用がほとんどの個人において有害な免疫反応を排除すると期待されている理由は、以下の通りであると考えられている。通常の免疫反応中に生じる親和性成熟ステップの結果、免疫グロブリンの可変領域に体細胞の突然変異が頻繁に生じる。これらの突然変異は主に超可変的なCDRの周りに生じるが、フレームワーク領域の残基にも影響を及ぼす。これらのフレームワークの突然変異は生殖細胞系の遺伝子には存在せず、また患者の免疫原性になる可能性は少ない。一方、一般集団は生殖細胞系の遺伝子によって発現されるフレームワーク配列の大多数に晒されており、免疫寛容の結果、これらの生殖細胞系のフレームワークは患者において免疫原性が低いあるいは被免疫原性であると予想される。免疫寛容の可能性を最大にするため、可変領域をコード化する遺伝子を普通に存在する機能的生殖細胞系遺伝子の集合から選択することができ、またさらにVHおよびVL領域をコード化する遺伝子を免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖間の既知の関連性と一致させるために選択することもできる。
【0119】
II.CD20結合分子の作成
好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は抗体または抗体断片(例えば本出願に記載の一つまたはそれ以上のCDR)を含む。本発明の抗体または抗体断片は、例えば、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖遺伝子を宿主細胞内で組み換え・発現させる事により生成できる。抗体を組み換え・発現させるため、例えば、軽鎖および重鎖が宿主細胞の中で表現され、また望ましくは宿主細胞が培養され、そこから抗体が回収されるような培地中に分泌されるように抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコード化するDNA断片を含んだ、一つ以上の組み換え発現ベクターが宿主細胞に導入されることがある。標準の組み換えDNA技術を使用して、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子が得られ、これらの遺伝子を組み換え・発現ベクターに挿入し、そのベクターを宿主細胞に導入することもできる。このような方法は、いずれも参照として本出願に編入されている、サムブルック(Sambrook)、フリッチュ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)編、分子クローニング(Molecular Cloning)、実験室手引書(A Laboratory Manual)、第2版、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,N.Y.)、(1989)、オースベル(Ausubel、F.M.)ら編、分子生物学の現在の実験記録(Current Protocols in Molecular Biology)、グリーン・パブリッシング・アソシエーツ(Greene Publishing Associates)(1989)、およびボス(Boss)らによる米国特許番号4,816,397などに記載されている。
【0120】
本発明の一つまたはそれ以上のCDRを有する抗体を発現させるには、軽鎖および重鎖可変領域をコード化するDNA断片をまず入手する。このようなDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使って、生殖細胞系の軽鎖および重鎖可変配列を増幅および修飾する事により入手できる。ヒト型の重鎖および軽鎖可変領域の遺伝子に関する生殖細胞系DNA配列は、当技術分野で良く知られている(上述参照)。
【0121】
生殖細胞系のVHおよびVL断片を入手したら、本出願開示のCDRアミノ酸配列の一つまたはそれ以上をコード化するように配列を変異させることができる(例えば表1−2を参照)。生殖細胞系VHおよびVL DNA配列でコード化されたアミノ酸配列が、生殖細胞系の配列とは異なるアミノ酸残基を識別するためのCDR配列と比較される。次に、どのヌクレオチドを変異させるかを決定する遺伝子コードを使用し、変異した生殖細胞系配列が選択されたCDR(例えば表1−2から選択された六つのCDR)をコード化するように、生殖細胞系DNA配列の適切なヌクレオチドが変異される。生殖細胞系配列の変異誘発は、(PCR産物が突然変異体を含むように、変異したヌクレオチドがPCRプライマーに導入されるような)PCR−媒介変異誘発や、部位特異的変異誘発などの標準の方法を使って行なわれてもよい。別の実施形態では、可変領域は新たに合成される(例えば核酸合成機を使用)。
【0122】
目的のVHおよびVL部分をコード化するDNA断片が(例えば上述したように生殖細胞系VHおよびVL遺伝子の増幅および変異誘発または合成などを使用)入手できたら、例えば、可変領域の遺伝子を抗体の全長鎖遺伝子、Fab断片遺伝子、あるいはscFv遺伝子などに変換するなど、このようなDNA断片を標準の組み換えDNA技術を使ってさらに操作することができる。のような操作では、VLまたはVHをコード化しているDNA断片は、抗体の定常領域やフレキシブルリンカーなどの他のポリペプチドをコード化するDNA断片と操作可能な状態で連結される。VH領域をコード化している単離されたDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3、図10−11を参照)をコード化している別のDNA分子に操作可能な状態で連結させる事により、全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト型の重鎖定常領域の遺伝子の配列は当技術分野で良く知られており(例えばカバット(Kabat)、E.A.ら、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH出版物No.91−3242)(1991)、またこのような領域を含むDNA断片は標準のPCR増幅により入手できる。重鎖定常領域は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であるが、最も好ましいのはIgG1またはIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子に関しては、VHをコード化するDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコード化する別のDNA分子と操作可能な状態で連結される。好適な実施形態では、重鎖定常領域は図11に示される定常領域に類似しているかまたはそれと同一である。
【0123】
VL領域をコード化している単離されたDNAは、軽鎖定常領域CLをコード化している別のDNA分子と操作可能な状態で連結する事により、全長の軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変更することができる。ヒト型の軽鎖定常領域の遺伝子の配列は当技術分野で良く知られており(例えばカバット(Kabat)、E.A.ら、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH出版物No.91−3242(1991))、またこのような領域を含むDNA断片は、標準のPCR増幅により入手できる。軽鎖定常領域は、例えばκまたはλ定常領域であるが、より好ましいのはκ定常領域である。好適な実施形態では、軽鎖定常領域は図10に示される定常領域に類似しているかまたはそれと同一である。
【0124】
scFv遺伝子を作成するには、VHおよびVL配列が隣接する一本鎖蛋白質として発現し、VLおよびVHがそのフレキシブルリンカーで連結される様な状態で(例えば、全て参照として本出願に編入されている、ハストン(Huston)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、5879−5883(1988)、およびマッカファティ(McCafferty)ら、ネーチャー(Nature)、348、552−554(1990)参照)、VHおよびVLをコード化するDNA断片が、フレキシブルリンカーをコード化(例えばアミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコード化)する別の断片に操作可能な状態で連結される。
【0125】
抗体または抗体の断片を発現させるには、その遺伝子が転写および翻訳調節配列に操作可能な状態で連結されるように、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコード化する(例えば上述の方法で得られる)DNAが発現ベクターに挿入される。ここで「操作可能な状態で連結」という用語は、ベクター内の転写および翻訳調節配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節できるように、つまりその本来の機能を発揮できるようなやり方で、抗体遺伝子をベクターに連結する事を意味する。発現ベクターおよび発現調節配列は、通常使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子を別々のベクターに挿入することができるが、より一般的には両方とも同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は標準的な方法を使って発現ベクターに挿入してもよい(例えば抗体遺伝子断片への相補的制限部位の連結、あるいは制限部位がない場合は平滑末端連結)。軽鎖または重鎖配列を挿入する以前に、発現ベクターは既に抗体定常領域を含んでいる場合がある。例えば、VHおよびVL配列を全長の抗体遺伝子に変える一つの方法は、H部分がベクター内でCH部分と操作可能な状態で連結し、VL部分がベクター内でCL部分と操作可能な状態で連結するように、重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にコード化している発現ベクターにそれぞれを挿入する事である。代替的または追加的に、組み換え発現ベクターが、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナル・ペプチドをコード化することもできる。シグナル・ペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にフレーム単位で連結するように、抗体鎖の遺伝子をベクターにクローン化することができる。当該シグナル・ペプチドは免疫グロブリン・シグナル・ペプチドであってもよいし、異種のシグナル・ペプチド(すなわち非免疫グロブリン蛋白由来のシグナル・ペプチド)であってもよい。
【0126】
抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組み換え・発現ベクターは、宿主細胞内で抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を含んでいてもよい。この「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を調節するその他の発現調節要素(例えばポリアデニレーション・シグナル)を含むことを意図している。このような調節配列は、例えば、参照として本出願に編入されているゲッデル(Goeddel)、遺伝子発現技術(Gene Expression Technology):酵素学の方法(Methods in Enzymology)、185(1990)、アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,Calif.)に記載されている。調節配列の選択を含んだ発現ベクターのデザインが、形質転換される宿主細胞、目的の蛋白質の発現レベルなどの要因に依存している事が、当技術分野に精通した技術者により評価される。哺乳類の宿主細胞発現にとって好ましい調節配列には、哺乳類の細胞で蛋白質の発現を高レベルで方向付けするウィルス要素、例えばサイトメガロウィルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウィルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオマウィルスなどのプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。ウィルスの調節要素およびその配列に関する詳細は、全て参照として本出願に編入されているスティンスキ(Stinski)による米国特許番号5,168,062、クーセンス(Cousens)などによる米国特許番号4,510,245およびコジンスキー(Koszinowski)による米国特許番号4,968,615を参照のこと。
【0127】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加え、本発明の組み換え・発現ベクターは、宿主細胞(例えば複製源)でベクターの複製を調節する配列や選択可能マーカー遺伝子などの配列を含んでいてもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターを導入する宿主細胞の選択を容易にする(例えばアクセル(Axel)らによる米国特許番号4,399,216、4,634.665および5,179,017を参照)。例えば、選択可能なマーカー遺伝子は、典型的に、ベクターが導入された宿主細胞上で、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキセートなどの医薬品への抵抗力を付与する。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択・増幅と共にdhfr宿主細胞で使用)およびネオマイシン遺伝子(G418選択)を含んでいる。
【0128】
軽鎖および重鎖の発現に関しては、重鎖および軽鎖をコード化する発現ベクターを標準技術を使って宿主細胞に形質移入してもよい。「形質移入」という用語の様々な形態は、原核生物や真核生物の宿主細胞に外因性のDNAを導入するのに一般に使用される多種多様な技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE−デキストラン形質移入などを含むことを意図している。
【0129】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子を発現させるのに使用される発現ベクターは、レトロウィルス・ベクターなどのウィルス・ベクターである。このようなウィルス・ベクターを、安定して形質導入された細胞株の生成に利用してもよい(例えばCD20結合分子の継続提供源)。ある実施形態では、CD20結合分子(およびCD20結合分子を発現する安定した細胞株)を生成するために、GPEX遺伝子生成物発現技術(ガラ・デザイン・インク(Gala Design,Inc.)、ウィスコンシン州ミドルトン(Middleton、WI))を利用する。特定の実施形態では、ブレック(Bleck)による、WO0202783およびWO0202738(いずれも参照として全て本出願に編入されている)に記載の発現技術が利用される。
【0130】
本発明の組み換え抗体を発現させる哺乳類の好ましい宿主細胞には、例えばPER.C6(登録商標)細胞(クルセル社(Crucell)、オランダ)、チャイニーズハムスターの子宮(CHO細胞)(ウアラウプ(Urlaub)およびチェイシン(Chasin)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77、4216−4220(1980)に記載され、例えばR.J.カウフマン(Kaufman)およびP.A.シャープ(Sharp)、Mol.Biol.、159、601−621(1982)に記載のごとくDHFR選択可能マーカーと共に使用されるdhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞などが含まれる。他の好適な実施形態では、両方とも参照として本出願に編入されているWO9954342および米国特許出願公告20030003097に記載されているように、発現したCD20結合分子がADCC活性を向上させるような形で、宿主細胞がGnT IIIを発現する。抗体の遺伝子をコード化している組み換え・発現ベクターを哺乳類の宿主細胞に導入する場合、抗体は通常、宿主細胞内で抗体の発現に必要な期間宿主細胞を培養することにより、あるいはさらに好ましくは、宿主細胞を培養する培地に抗体を分泌させるにより生成される。抗体は、標準的な蛋白質精製方法を使って培地から回収される。
【0131】
また、Fab断片やscFv分子など無傷の抗体の一部を生産するために宿主細胞を利用することもできる。上述の方法の変形体も本発明の範囲内にあることが理解されている。例えば、本発明の抗体の軽鎖または重鎖のいずれかをコード化するDNAを宿主細胞に形質移入することが望ましい。また、hCD20との結合に必要でない軽鎖および/または重鎖をコード化するDNAの一部または全部を除去するために、組み換えDNA技術を使ってもよい。このような切断DNA分子から発現した分子もまた本発明の抗体に含まれる。さらに、一つの重鎖と一つの軽鎖が本発明の抗体であり、もう一つの重鎖および軽鎖がhCD20以外の抗原に特異的であるような二機能抗体を生産してもよい(例えば標準的な化学架橋結合技術を使って、本発明の抗体を第2の抗体に架橋結合させる)。
【0132】
抗体またはその断片の組み換え・発現にとって好ましいシステムの一つにおいて、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコード化する組み換え・発現べクターが、リン酸カルシウム媒介の形質移入により、dhfr−CHO細胞に導入される。組み換え・発現べクター内で、抗体重鎖および軽鎖の遺伝子はそれぞれエンハンサー・プロモーター調節要素(例えばCMVエンハンサー・AdMLPプロモーター調節要素やSV40エンハンサー・AdMLPプロモーター調節要素などの、SV40、CMV、アデノウィルスから派生し多要素)と操作可能な状態で連結し、遺伝子の転写レベルを高めている。組み換え・発現べクターはまたHFR遺伝子を含むこともあり、この遺伝子は、メトトレキセートの選択・増幅を利用して、ベクターが形質移入されたCHO細胞の選択を可能にする。選択された形質転換宿主細胞は、抗体重鎖および軽鎖の発現のために培養され、当該培地から無傷の抗体が回収される。組み換え・発現べクターの生成、宿主細胞への形質移入、形質転換体の選択、宿主細胞の培養および培地からの抗体の回収のため、分子生物学の標準技術が使用される。
【0133】
ある実施形態では、本発明の抗体および抗体の断片が遺伝子導入動物中で生成される。例えば、遺伝子導入羊や雌牛を使って、そのミルクの中に抗体または抗体の断片を生成することもできる(例えば、参照として本出願に編入されているポラック(Pollock)DPら、組み換え抗体生産の一方法である遺伝子導入ミルク、J.Immunol.Methods、231、147−157(1999)参照)。本発明の抗体または抗体の断片を植物中で生成してもよい(例えば参照として本出願に編入されているラリック(Larrick)ら、植物を使ったIgA分泌抗体の生産、Biomol.Eng.、18、87−94(2001)参照)。これ以外の方法や精製プロトコルは、参照として本出願に編入されているハンフリーズ(Humphreys)ら、治療用抗体生産技術:分子応用、発現および精製、Curr.Opin.Drug Discov.Devel.、4、172−185(2001)に記載されている。ある実施形態では、本発明の抗体または抗体の断片は遺伝子導入されたニワトリにより生成される(例えば、両方とも本出願に組み込まれている米国特許出願公告20020108132および20020028488を参照)。
【0134】
III.治療用調剤および使用
本発明のCD20結合分子(例えば抗体および抗体の断片)は疾病に罹った被験者を治療するのに有効である。CD20結合分子はまた診断にも使用される(例えば標識付きCD20結合分子を組織の画像化に使用)。好適な実施形態では、CD20結合分子はB細胞の増殖が無限に継続することを特徴とするB細胞リンパ腫の患者に投与される。
【0135】
ある実施形態では、診断および治療目的で、CD20結合分子が種々の放射標識物質と結合される。放射標識物質は腫瘍および他の組織の「画像化」を可能にし、腫瘍の放射線治療に役立つ。典型的放射標識物質には、これだけに限定されるものではないが、例えば131I、125I、123I、99Tc、67Ga、111In、188Re、186Reなどがあり、好ましくは90Yである。
【0136】
ある実施形態で治療された疾病は非ホジキンスリンパ腫(NHL)である。ある実施形態では疾病は、再発ホジキンス病、悪性度の高い抵抗性ホジキンス病、低悪性度および中悪性度の非ホジキンスリンパ腫(NHL)、B細胞慢性リンパ球白血病(B−CLL)、リンパ形質細胞性悪性リンパ腫(LPL)、被膜細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、瀰漫性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、エイズ関連リンパ腫、単球性B細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ節症、小リンパ球型、濾胞性瀰漫性大細胞型、彌慢性小開裂細胞型、大細胞免疫芽球性リンパ腫、小非開裂型、バーキットおよび非バーキット型、濾胞性大細胞型、濾胞性小開裂細胞型、濾胞性小開裂・大細胞混合型リンパ腫、および全身性エリテマトーデス(SLE)から選択される。特定の実施形態では、治療される疾病はヴァルデンストローム・マクログロブリン血症(WM)または慢性リンパ球白血病(CLL)である。
【0137】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子はCD20+細胞の枯渇が治療面で有益である場合に、例えば、ヴァルデンストローム・マクログロブリン血症、多発性骨髄腫、プラズマ細胞悪液質、慢性リンパ球白血病、移植組織の処置、ヘアリー・セル白血病、ITP、幹細胞移植後のエプスタイン・バー・ウィルス・リンパ腫、腎臓移植などの疾病の治療に使用される。本出願に編入されている米国特許出願公告20020128448を参照のこと。別の実施形態では、本発明のCD20結合分子は、B細胞リンパ腫、白血病、骨髄腫、自己免疫疾患、移植、移植片対宿主病、B細胞に関係する感染症およびリンパ球増殖病から成るグループから選択された疾病の治療、およびB細胞活性および/または体液性免疫の抑制が望まれる疾病や症状の治療に使用される。ある実施形態では、本発明のCD20結合分子は、B細胞リンパ腫、白血病、骨髄腫、移植、移植片対宿主病、自己免疫疾患、リンパ球増殖症状から成るグループから選択された疾病の治療、あるいは体液性免疫、B細胞機能および/または増殖の阻害が治療面で有益である疾病や症状の治療に使用される。さらに別の実施形態では、本発明のCD20結合分子は、B−ALL、ヘアリー・セル白血病、多発性骨髄腫、リクター症候群、獲得第VIII因子阻害遺伝子、抗リン脂質症候群、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少症、水疱性類天疱瘡、寒冷赤血球凝集素病、エバンス症候群、グッドパスチャー症候群、特発性膜性腎症、特発性血小板減少紫斑病、IgM関連多発性神経障害、カポージ肉腫関連ヘルペスウィルス(KSHV)関連多中心型キャッスルマン病(MCD)、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、赤芽球癆、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性免疫複合体脈管炎、全身性エリテマトーデス、II型混合寒冷グロブリン症、ウェジナー肉芽腫、同種異系移植片拒絶および移植後リンパ球増殖病の治療、または骨髄移植のための幹細胞の浄化のために使用される。
【0138】
好適な実施形態では、治療される被験者は免疫不全ではない(例えばSLE患者)。いかなるメカニズムにも制限されることなく、本発明のCD20結合分子は、これまで知られている抗CD20抗体と比べ、特に非免疫抑制患者において、HACA反応を引き出す可能性が少ないと考えられている。従って、有害なHACA反応の心配をしないで非免疫抑制患者を治療することができる。また、本発明のCD20結合分子の結合能力は改善されているため、患者に低用量を投与してもよいし(HACA反応の危険性をさらに回避)、あるいは生死に関わるHACA反応の危険性なしに高用量を投与することもできる。別の好適な実施形態では、被験者は慢性関節リウマチまたはその他の自己免疫疾患に罹っている(例えば、本出願に編入されたエドワーズ(Edwards)ら、リウマチ病学(Rheumatology)(オックスフォード)2001年2月;40(2):205−11を参照)。
【0139】
本発明のCD20結合分子を、他の治療用の物質と共に投与してもよい。例えば、CD20結合分子を化学療法プログラムの一環として投与してもよい(例えばCHOP)。またCD20結合分子を、サイトカイン、G−CSFまたはIL−2と共に投与してもよい(本出願に編入されている米国特許6,455,043を参照)。
【0140】
本発明のCD20結合分子は、例えば非経口、経口、皮下、局所、腹腔内、肺内、鼻腔内、病変内投与(例えば局部免疫抑制治療)などを含む、いかなる方法で投与してもよい。非経口注入には、これだけに限定されるものではないが、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下投与などが含まれる。さらに、CD20結合分子は、特に低用量で、パルス注入によって投与してもよい。投与が短期的なものであるか長期的なものであるかにある程度基づき、投与は注射により、あるいは最も好ましくは静脈内または皮下注射によって行なわれる。
【0141】
投与計画は、最も望ましい反応(例えば治療面または予防面の反応)が得られるように調整される。例えば、ボーラスを単回投与しても、時間をかけ数回に分けて投与してもよいし、あるいは治療状態の必要にあわせて投与量を増やしたり減らしたりしてもよい。非経口組成物を用量単位形式で調剤すると、投与も容易となり、用量の均一性も保たれて有利である。本発明のCD20結合分子の用量は通常、(a)活性成分の独自の性質および目的としている治療的または予防的効果、および(b)個人の感受性の治療のためにこのような活性成分を合成する技術に固有の限界によって決定される。
【0142】
抗体または抗体の断片(または本発明の他のCD20結合分子)の治療的または予防的有効量の、典型的で被限定的な範囲は、0.1〜20mg/kg、さらに好ましくは1〜10mg/kgである。ある実施形態では、当該用量は50〜600mg/m2(例えば375mg/m2)である。緩和される症状のタイプおよび重篤度により投与量が変化することに注意しなくてはならない。またさらに、どのような被験者についてもその人のニーズ、そして組成物を投与したり投与を監督する人の専門家としての判断に従って、時が経つと共に用量を調整すべきであること、また本出願に説明されている用量の範囲は単に例示であり、本発明を制限するものではない点にも注意しなくてはならない。
【0143】
投与量は勿論、特定の薬の薬物動態学的な特徴、投与方法および経路、被投与者の年齢、健康状態、そして体重、症状の性質および重篤度、併用療法の種類、治療の頻度、目的とする効果などの既知の要因により変化する。例えば、活性成分の1日の投与量は体重1kg当たり約0.01mgから100mgである。通常、1日に体重1kg当たり1.0mgから5mg、好ましくは1mgから10mgを1から6回に分けるか、持続放出形式で投与する方が、希望する結果を得るのに有効な場合がある。
【0144】
本発明のCD20結合分子、被験者への投与に適した薬剤組成物に組み込むこともできる。例えば薬剤組成物は、CD20結合分子(例えば抗体または抗体の断片)および製薬的に容認できる担体を含んでいてもよい。本出願で使用される「製薬的に容認できる担体」という用語には、生理学的適合性のある、溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌薬、等張性薬剤、吸収遅延薬などが含まれる。製薬的に容認できる担体には、次の物質の一つまたはそれ以上が含まれる。水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよびその組み合わせ。多くの場合、組成物の中に砂糖、マンニトールなどのポリアルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどのなどの等張性薬剤が含まれることが望ましい。製薬的に容認できる担体にはさらに、CD20結合分子の貯蔵寿命または効果を向上させる、加湿薬、乳化剤、保存剤、緩衝液などの補助物質が少量含まれることもある。
【0145】
本発明の組成物は様々な形態で存在する。これらには、例えば溶液(例えば注射および注入可能な溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、小丸剤、粉末、リポソームおよび座薬などの、液体、半固体および固体の投薬形態が含まれる。好ましい形態は、投与方法および治療アプリケーションの内容に基づいて決められる。通常好まれる組成物は、例えば他の抗体によるヒトの受動免疫に使用されるものと同様の組成物のような、注射および注入可能な溶液である。
【0146】
治療用の組成物は通常、製造および貯蔵条件下で無菌でありしかも安定している。組成物は溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、あるいはその他の高濃度の薬剤に適した秩序形態に調剤することができる。注射可能な無菌溶液は、要求量の活性化合物(つまり抗体または抗体の断片)を上述の成分またはその組み合わせと一緒に適切な溶媒に組み入れ、要求に応じて、その後無菌濾過する事により生成できる。一般に分散液は、分散媒体や上述の必要成分を含む無菌溶剤に活性化合物を組み入れる事により生成される。注射可能な無菌溶液の生成に使用される無菌粉末の好ましい生成方法は、活性成分に加え以前に無菌濾過された溶液から得られる追加的な望ましい成分の粉末を生成する、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は粒子の規定のサイズの保持、また表面活性剤の使用により維持される。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物の中にモノステアリン酸塩やゼラチンなどの吸収を遅らせる物質を含める事により達成できる。
【0147】
ある実施形態では、当該活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、マイクロカプセル化された送達システムを含む放出制御製剤のような、化合物の急速な放出を防ぐ担体を使用して生成される。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生物分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。このような調剤の調製方法の多くは特許を受けており、当業者には一般的に知られている(例えば、持続的および放出調節医薬品送達システム、J.R.ロビンソン(Robinson)版、マルセル・デッカー・インク(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、1978を参照)。
【0148】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子は、例えば不活性の希釈剤や同化可能な食用の担体などと共に経口投与される。当該化合物(および必要ならば他の成分)はまた、硬質または軟質のゼラチン・カプセルに被包化されたり、錠剤に圧縮されたり、あるいは直接被験者の食事に混入されることもある。治療用経口投与の場合、当該化合物は賦形剤と共に組み入れられ、服用可能な錠剤、頬錠剤、トローチ剤、カプセル、エリクシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの形態で使用される。非経口投与以外の方法で本発明の化合物を投与するため、不活性化を防止する物質と共に投与する、あるいはそのような物質でコーティングする必要があるかもしれない。
【0149】
本発明の薬剤組成物には、本発明の抗体または抗体断片の「治療面での有効量」または「予防面での有効量」が含まれる。「治療面での有効量」とは、用量および期間の点で、好ましい治療結果を得るための有効量を意味する。抗体または抗体断片の治療面での有効量は、個人の疾病の状態、年齢、性別および体重、好ましい反応を引き出す抗体または抗体断片の効果などの要因により異なる。さらに治療面での有効量とは、治療効果が抗体または抗体断片の毒性または有害作用を凌駕する量でもある。「予防面での有効量」とは、用量および期間の点で、好ましい予防結果を得るための有効量を意味する。一般に、予防用の用量は疾病に罹る前または疾病の初期に被験者に使用されるため、予防面での有効量は通常治療面での有効量より少ない。
【0150】
IV.CD20結合分子の他の使用方法
本発明のCD20結合分子、例えば抗CD20ペプチドおよび/または抗体は、サンプル中またはCD20を含むB細胞中のCD20を検出または定量する免疫測定に有効である。CD20の免疫測定には通常、検出可能な標識付けのされた高親和性の抗CD20ペプチドおよび/または選択的にCD20に結合することのできる本発明の抗体の存在下における成体サンプルの培養、およびサンプル中で結合した標識のついたペプチドあるいは抗体の検出が含まれる。種々の臨床分析方法は当技術分野で知られている。
【0151】
従って、抗CD20ペプチドまたは抗体を、ニトロセルロースまたは溶解性の蛋白質を固定できる他の固体支持体上で捕獲することが可能である。次にCD20を含むサンプルを支持体に加え、その後適切な緩衝液を使って洗浄して結合しなかった蛋白質を除去する。二番目の検出可能な標識付けをされたCD20特異的なペプチドまたは抗体をその固体相支持体に加え、さらに緩衝液で再び洗浄して検出可能な標識付けをされた結合しなかったペプチドまたは抗体を除去する。固体支持体に結合した標識化合物の量は既知の方法を使って検出できる。
【0152】
「固体相支持体」または「担体」とは、ペプチド、抗原または抗体に結合できるあらゆる支持体を意味する。よく知られている支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾したセルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱などが含まれる。本発明の目的では、担体はある程度溶解性であってもよいし、不溶性であってもよい。支持体の物質は、結合した分子がCD20との結合能力を維持できる限り、実質的にどのような構造体であってもよい。従って、支持体の構造は、ビーズのように球体であってもよいし、試験管の内面または棒の外面のような円筒状であってもよい。あるいは表面は、プレート、培養皿、試験用細片、マイクロタイター用プレートなどのように平たいものであってもよい。好ましい支持体にはポリスチレン・ビーズが含まれる。当業者は、抗体、ペプチド、または抗原と結合する適切な担体をその他にも数多く知っており、通常の実験を通してそれを確認することができる。抗CD20ペプチドおよび/または抗体の結合活性を測定するのに、既知の方法を使用することができる。当業者は、通常の実験を通して、実施可能で最適な分析条件を決定することができる。
【0153】
CD20特異的なペプチドおよび/または抗体のCD20結合分子の検出可能な標識化は、酵素免疫測定(EIA)または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で使用される酵素との結合により達成できる。結合した酵素は露呈した基質と反応して、例えば分光光度計、蛍光光度計、あるいは可視的に検出することのできる化学物質を生産する。本発明のCD20結合分子の検出可能な標識化に使用される酵素には、これだけに限定されるものではないが、例えばリンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌核酸分解酵素、δ−5−ステロイド異性化酵素、酵母アルコール脱水素酵素、α−グリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸異性化酵素、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、RNA分解酵素、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどが含まれる。
【0154】
CD20結合分子を放射活性物質で標識化する事により、放射性免疫検定法(RIA)を使用してCD20を検出することが可能となる(例えばワーク(Work)ら、分子生物学に於ける実験技術および生化学(Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology)(1978)、ノース・ホランド出版社(North Holland Publishing Company)、ニューヨークを参照)。放射性同位元素は、ガンマ計数器、シンチレーション計数器、オートラジオグラフィなどを使用した方法で検出される。
【0155】
CD20結合分子を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識分子が適切な波長の光に晒されると、蛍光性の故にその存在が検出できる。最も一般的に使用される蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド、フルオレスカミンなどである。
【0156】
125Euや他のランタニド系列の蛍光放射金属を使ってCD20結合分子に検出可能な標識付けをすることもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート化グループを使ってCD20結合分子に結合される。
【0157】
また、ケミルミネセンス化合物と結合させる事によりCD20結合分子に検出可能な標識付けをすることもできる。ケミルミネセンス標識分子の存在は次に、化学反応中に生じる発光の存在を検出する事により決定される。特に有効なケミルミネセンス標識化合物の例には、例えばルミノール、イソルミノール、テロマチック・アクリジニウム・エステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステルなどがある。
【0158】
同様に、生物発光性の化合物を本発明のCD20結合分子の標識に使用することができる。生物発光とは、触媒タンパク質が化学発光の反応効率を増加させる生物システム内に見られる一種の化学発光である。生物発光性のタンパク質の存在は、発光の存在を検出する事により決定される。標識に使用される重要な生物発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0159】
CD20結合分子の検出は、例えば検出可能な標識が放射性ガンマエミッターの場合はシンチレーション計数器、例えば標識が蛍光物質の場合は蛍光光度計により達成できる。酵素標識の場合、検出は酵素基質を利用した比色法によって行なわれる。基質の酵素反応の程度を同様に生成した標準物質と目視で比較する事によっても検出を行なうことも可能である。
【0160】
本発明のある実施形態では、上述の分析で検出されるCD20は生物サンプルの中に存在することができる。CD20を含むあらゆるサンプルが使用可能である。サンプルは例えば、血液、血清、リンパ、尿、脳脊髄液、羊水、滑液、組織エキス、ホモジェネートなどの生物液体であることが望ましい。しかし、当技術分野における通常の技術を有した技術者であれば、他のサンプルの使用を可能とする適切な条件を決定することができるため、当発明はこれらのサンプルのみを使用する分析に限定されるものではない。
【0161】
患者から組織学的標本を採取し、本発明の標識CD20結合分子をその標本と組み合わせる事により現場(in situ)検出を達成することができる。生物サンプルに適合またはその上に重ね合わせることにより標識CD20結合分子を提供することが望ましい。そのような方法を使うことにより、CD20の存在だけでなく、試験される組織の中のCD20の分布をも決定することができる。本発明を利用し、当業者は、現場検出を達成するために、多様な(染色方法などの)組織学的方法のいずれもが修正可能であることを理解する。
【0162】
「two−site」または「サンドイッチ」分析としても知られる免疫測定法において利用できるように本発明のCD20結合分子を調整することができる。通常の免疫測定法では、無標識のCD20結合分子(抗CD20抗体など)の適量を試験液体に不溶性の固体支持体に結合させ、それに検出可能な方法で標識した可溶性の抗体を適量加え、固体相の抗体、抗原と標識抗体の間に形成される三成分複合体を検出および/または定量する。
【0163】
通常のそして好ましい免疫測定法には、固体相に結合したCD20結合分子(例えば抗体)をまず試験サンプルと接触させ、二成分の固体相抗体CD20複合体を形成してサンプルからCD20を抽出する、「順向」分析が含まれる。適切な培養期間の後、固体支持体を洗浄して、存在していれば未反応のCD20も含み、液体サンプルの残渣を除去する。次に既知の量の標識抗体(「レポーター分子」として機能)を含む溶液と接触させる。二度目の培養期間により無標識の抗体を通して固体支持体に結合したCD20と標識抗体との間で複合体を形成させた後、個体支持体をもう一度洗浄し、未反応の標識抗体を除去する。このタイプの順向サンドイッチ分析は、CD20の存在を決定する単純な「イエス・ノー」型の分析であってもよいが、既知の量のCD20を含む標準サンプルと標識抗体の測定値を比較する事による定量とすることも可能である。
【0164】
CD20にとって有効な別のタイプの「サンドイッチ」分析は、いわゆる「同時」または「逆行」分析である。同時分析には、固体支持体に結合した抗体と標識抗体を同時に試験サンプルに加える、一度の培養が含まれる。培養が終了した後、固体支持体を洗浄し、液体サンプルの残渣および複合体を形成しなかった標識抗体を除去する。固体支持体と結合した標識抗体の存在が、通常の「順向」サンドイッチ分析で行なわれるように決定される。「逆行」分析では、まず流動性サンプルに標識抗体溶液を加え、次に適切な培養期間の後固体サンプルに標識されていない抗体を加えるという、段階的な追加法が使用される。二回目の培養期間の後、固体相を従来の方法で洗浄し、試験サンプルの残渣と未反応標識抗体の溶液を除去する。次に、固体支持体に結合した標識抗体を「同時」および「順向」分析と同様の方法で決定する。
【0165】
ある実施形態では、固体支持体と結合した本発明のCD20結合分子を、流体、組織または細胞エキスからCD20(またはCD20を含むB細胞)を除去するために利用することができる。好適な実施形態では、これらは血液または血漿生成物からCD20を除去するために使用される。別の好適な実施形態では、当技術分野で知られている体外免疫吸着装置においてCD20結合分子が有効に使用される(例えば血液学セミナー(Seminars in Hematology)、26(2 Suppl.1)(1989)を参照)。患者の血液や他の体液を付着したCD20結合分子に接触させることで、循環しているCD20(遊離体または免疫複合体)を部分的あるいは完全に除去する結果となり、その後で流体が体に戻される。この免疫吸着法を、途中の細胞遠心分離段階の有無に関わらず、連続フロー処理において行なうことができる。例えばターマン(Terman)ら、J.Immunol.、117、1971−1975(1976)を参照。
【実施例】
【0166】
以下の実施例は、いくつかの好適な実施形態と本発明のいろいろな側面を証明し、さらに詳しく説明する目的で提供されるものであり、決して本発明の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0167】
以下に開示される実験では、次のような略語が使用される:M(モル)、mM(ミリモル)、nM(ナノモル)、pM(ピコモル)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、pg(ピコグラム)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、℃(摂氏)、OD(光学密度)、nm(ナノメーター)、BSA(ウシの血清アルブミン)およびPBS(リン酸緩衝生理食塩水)。
【0168】
<実施例1> CD20結合分子
この実施例はいくつかのCD20結合分子の作成方法を説明する。特にこの実施例は、11の異なるCD20結合分子(AME 21E1 Hum、AME 6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 33、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5およびAME 5)の作成方法、および例えばFabや完全なIgGとして発現させる方法を説明する。
【0169】
11の異なるCD20結合分子の軽鎖および重鎖可変領域は以下のようにして構成される。各CD20結合分子の六つのCDRのコレクションが表3に示してある。アミノ酸配列の配列番号が最初に、核酸配列の配列番号が次に示してある。
表3 典型的なCD20結合分子における軽鎖および重鎖CDR
【表3】
【0170】
可変領域(例えばFvsとして発現する場合もある)を作成するため、表3のCDRが、ヒトの生殖細胞系フレームワークなどのあらゆるフレームワークと組み合わせられる。例えば、本実施例で名前のつけられている11の抗CD20分子の可変領域を作成するため、表4に示される方法で、表3のCDRがヒトの生殖細胞系フレームワークと組み合わせられた。
表4 名前のついたCD20結合分子の生産に使用されるヒトの生殖細胞系フレームライン
【表4】
【0171】
11のCD20結合分子のうちの二つに関して、完全な軽鎖および重鎖可変領域の配列が図2−3および6−7に示してある。特に図2および3は、AME33の軽鎖および重鎖可変領域のアミノ酸および核酸配列を示している(両方でAME33の完全Fv配列を提供)。図6および7は、AME5の軽鎖および重鎖可変領域のアミノ酸および核酸配列を示している。
【0172】
本実施例で説明している11のCD20結合分子の軽鎖および重鎖可変領域を、軽鎖および重鎖定常領域と組み合わせ、Fabまたは完全な抗体(例えばIgG)として発現させてもよい。これらの配列は望ましくはリーダー配列と結合する(例えば軽鎖配列の最初のリーダー配列)。リーダー配列の一つの例はMETPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号105)である。他のリーダー配列を使用してもよい。又、ヒトの定常領域アロタイプであればどれでも使用して構わない。例えば、図10および11はAME33の完全な軽鎖および重鎖を示しており、これには軽鎖および重鎖の定常領域も含まれる。これらの図はまた、本実施例で指定された他のCD20結合分子のFabおよびIgGを作成するために使用された定常領域の出典ともなる。図10Aおよび11Aでは、定常領域には下線が引いてある。さらに本実施例の抗CD20分子は、Fc領域のアミノ酸置換を例外として、図10および11に示している重鎖定常領域を選択的に使用してもよい。特に、図11に示されている重鎖定常領域には、D280H突然変異またはK290S突然変異が含まれていてもよい(図11Aは突然変異のない280および290を太字で示してある)。図11Bは太字で下線の付いた「GAC」を示している。この「GAC」を、D280H突然変異をコード化するため「CAT」に代えてもよい。
【0173】
本実施例で抗CD20結合分子を(FabまたはIgGとして)発現させるため、当技術分野で周知の方法を使用してもよい。例えば、シングルベクターかダブルベクター・システムを使い、哺乳類発現システム(あるいは細菌、真菌、植物発現システム)の中で、本実施例の11のCD20結合分子をFabまたはIgGとして発現させてもよい。シングルベクター・システムでは、発現に必要な全ての調節要素を含んでいる発現カセットの中で、重鎖と軽鎖の両方が製造またはクローン化される。ダブルベクター・システムは単に別々のプラスミドの中にこの二つの発現カセットを有している。当技術分野で周知のように、単一プラスミドまたはダブルベクター・システムの併用プラスミドをチャイニーズハムスターの子宮(CHO)細胞、あるいは網膜細胞株PerC6などの宿主細胞に形質移入し、選択、拡張および培養して、FabまたはIgG蛋白質を発現させてもよい(抗体発現および処理:米国化学会第207回全国大会、生化学技術部門主催シンポジウムより、サンディエゴ(San Diego)[ACSシンポジウム・シリーズ、604]を参照)。
【0174】
Fabは哺乳類システムよりも時間も費用も少なくて済むことから、細菌の発現システムで発現させてもよい。ここで、FabをM13ウイルス発現システムに挿入し発現させることができる。細菌が発現するFabは、細菌の細胞壁と細胞膜の間の周辺細胞質空間に分泌・蓄積される。低張液ショックや凍結融解法など当技術分野において一般的である多くの技術を使って、Fabを周辺細胞質空間から放出させることができる。Fabは、パパインなどのプロテアーゼを使って蛋白質を分解し、無傷のIgGからも生成される。分解産物のFab部分は、次に分解産物のFc部分から精製される。FabおよびIgGは、これもまた当技術分野では周知の種々のクロマトグラフィ技術や特異吸着技術を使って精製される(抗体:実験室手引書、エド・ハーロウ(Ed Harlow)(編集員)、デイビッド・レーン(David Lane)(編集員)、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)参照)。例えばIgGは、rProtein Aアフィニティークロマトグラフィ、そしてそれに続いてMono S陽イオン交換クロマトグラフィを使用した特異結合により、細胞の上清から容易に精製される。
【0175】
<実施例2> 固定ラモス細胞ELISA
本実施例では、CD20結合分子を使った固定ラモス細胞ELISA結合分析を説明する。本実施例では、FabおよびIgGとして発現するAME 4H5、AME 15、AME 18、AME 33およびAME 1D10を検定し、全体的な結合、オフレートおよびオンレートを特に測定した。本実施例は、当社のC2B8 fabおよび全抗体、および比較のために市販のリツキサン(オンコロジー・サプライ社(Oncology Supply Co.))を同じ分析条件下で試験した。C2B8抗体は保管番号69119でATCCに保管されている。
【0176】
ラモス細胞(ATCC)を、10%加熱不活性の牛胎児血清を含むRPMI 1640の中で成長させた。ラモス細胞50μl(2〜4X106/ml)をPoly−D−Lysineコートした96ウェルのプレート(BIOCATべクトン・ディキンソン・ラブウェア(BIOCAT Becton Dickinson Labware))の各ウェルにピペットを使って注入し、37℃、5% CO2の条件下で18時間培養した。培地は穏やかに吸引し、100mlの緩衝亜鉛ホルマリン水溶液(アナテク社(Anatech,Ltd.))を室温で15分間各ウェルに添加した。Z−fixを除き、プレートを0.05%Tween20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。プレートをPBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロックした。FabまたはIgGの希釈液を室温で1時間、固定およびブロック・ラモス細胞と一緒に培養した。プレートをPBS0.05%Tween20で3回洗浄し、抗His6ペルオキシダーゼ・マウス・モノクローナル抗体(ロッシュ・ダイアグノスティックス社(Roche Diagnostics Corporation))(1:500希釈)50mlをウェルに加え、室温で1時間培養した。プレートを上述の方法で洗浄し、テトラメチルベンジジンで発色させ、反応は5NのH2SO4を使って停止した。プレート吸光度はOD450nmで読み取った。Fabおよび複合体の希釈には1%BSA/PBSを使った。
【0177】
IgG分析も同様にして行なったが、IgG結合はヤギ抗ヒトIgG−HRPを使って検出した。抗体オフレートの比較では、FabまたはIgGと共に培養した後、プレートをPBS/BSA中で一夜培養してから、第二の抗体ステップに進んだ。抗体オンレートの比較では、Fab/IgG結合の培養期間も第二抗体ステップも5分であった。
【0178】
本実施例の結果は図12および13に示してある。図の通りFab AME 4H5、15、18、33および1D10の全体的な結合はC2B8 Fabよりも効果的である。AME抗体の用量応答曲線はC2B8抗体および市販のリツキサンと比べて左に移動しており、最大ODもC2B8抗体の約1.5倍である。オフレートに関しては、AME 4H5、15、18、33および1D10のFabはC2B8 Fabと比べて大幅に減少している(図12B)。全IgGとして発現したAME抗体のオフレートは、C2B8抗体および市販のリツキサンのそれと似ている(図13A)。オンレートに関しては、AME 4H5、15、18、33および1D10のFabはC2B8 Fabのそれと似ており、結合が全体的に増大している(最大ODが達成)(図12C)。全IgGとして発現したAME抗体の用量応答曲線は、全C2B8抗体の左へ移動している(図13B)。
【0179】
<実施例3> 免疫蛍光生体Bリンパ腫結合分析
本実施例は免疫蛍光生体Bリンパ腫結合分析を記述する。特に、以下に示すように、AME 33、AME 5およびC2B8のFabを分析した。
【0180】
CD20 FACS分析のためのPBMCのFab染色
末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficol−Hypaque(Sigma−1077)上で浮遊法により正常なヒトの血液から単離した。細胞を計数し、再びPBS+1%BSAに懸濁して、2〜5X106細胞/mlが得られた。100μlの希釈細胞をポリスチレン・チューブ(ファルコン(Falcon)#2058)に入れ、PBS+1%BSAで希釈した抗CD20 Fab抗体を加えた。チューブを室温で1時間培養した。PBS+1%BSA4mlを各チューブに加え、300XGで10分遠心分離した。上清を除き、細胞を再びPBS100μl+1%BSAに懸濁した。Anti−Penta−His AlexaFluor 488複合体(キアゲン(Qiagen)#35310)をチューブ当たり2μlずつ加え、混合し、室温、暗室で、1時間培養した。サンプルを前出の方法で洗浄した。上清を除き、細胞を再びPBS+1%BSA+2μg/mlヨウ化プロピジウムに懸濁した。蛍光性をBecton Dickinson FACScanまたはFACSortフローサイトメーターで分析し、データをCell Quest(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))またはWinMDIソフトを使って解析した。
【0181】
結果は図14に示してある。Daudi細胞の結果は図14A、Wi12−S細胞の結果は図14B、そしてラモス細胞の結果は図14Cに示してある。図に示されているように、AME5および33のFabは、生体Bリンパ腫細胞腫との結合の面でC2B8よりも有効である。AME5およびAME33の用量応答曲線はC2B8と比べて左に移動している。
【0182】
<実施例4> KinExA測定によるIgG結合
本実施例は、種々のCD20 IgGのKd、KonおよびKoffを測定するための分析を記述する。特に本分析は、SKW6.4 Bリンパ腫細胞との結合の面で、AME 33、AME 5、AME 6F1およびC2B8抗体を試験し、KinExa平衡ソフトを使ってこのような分子のKd、KonおよびKoffを測定した。さらに、AME 33およびC2B8については、原発性ヒト末梢血B細胞との結合を試験した。
【0183】
Kd測定:
SKW6.4細胞を10%FCS添加のDMEM培地で成長させ、5〜10X105細胞/mlで収穫した。細胞を5容積のPBSで洗浄し、1%BSAを含むPBSに再び懸濁した(1X108細胞/ml)。ヒト末梢血B細胞は、新鮮なCD19選別B細胞をオールセルズ社(Allcells)から入手した。細胞を1%BSAを含むPBSで2度洗浄し、濃度8X107/mlで再び懸濁した。
【0184】
3倍連続希釈を12回行い、各希釈液100μlを96ウェルのプレートに加えた。各希釈液に抗体100mlを加え(100ng/ml)、プレートを37℃、5%CO2の条件下で4時間培養した。サンプルは96ウェル1μフィルター(ミリポア(Millipore))で濾過し、細胞および結合抗体を除いた。溶液の中の遊離抗体をELISAを使って定量した。簡単にいうと、遊離IgGを1mg/mlの抗ヒトκ抗体(サザン・バイオテクノロジー(Southern Biotechnology))でコートした96ウェルのプレートで捕獲し、HRPと結合した抗ヒトFc抗体(サザン・バイオテクノロジー(Southern Biotechnology))を使ってそれを検出した。プレートはFast TMB基質(ピアース(Pierce))を使って発色させ、450nmで読み取った。
【0185】
つぎに、未知の抗原濃度を被験者にKinExA平衡ソフトを使って抗体のKdを測定した。各連続希釈液のOD450値は、推定抗原濃度および実際の抗体濃度と一致した。Kdおよび実際の抗原濃度を計算した。SKW6.4細胞分析の結果は表5に示してある。結果は、AME 33およびAME 5のKdがC2B8抗体と比べて10倍向上している事を示している。原発性ヒト末梢血B細胞の結果は、AME 33のKdが113pM、そしてC2B8のKdが1500pMである事を示している。ここでもAME 33のKdがC2B8抗体のKdの10倍以上(ほぼ15倍)である事が示されている。
表5
【表5】
【0186】
反応速度測定:
SKW6.4細胞を10%のFCSを添加したDMEM培地で成長させ、5〜10X105細胞/mlで収穫した。細胞を5容量のPBSで洗浄し、1%のBSAを含むPBSに再び懸濁(約lX107細胞/ml)し、37℃の水浴に維持した。同容積の抗体(1%BSAを含むPBSに100ng/ml)を37℃で加え、実験の計時が開始された。60秒から10800秒の間隔で抗体細胞溶液のサンプルを採取し、濾過し、細胞と結合抗体を除去した。残っている遊離抗体を各時間単位に上述のELISAを使って定量した。
【0187】
抗体細胞の反応速度は、直接反応速度KinExAソフトを使って計算した。各時間でのOD450値は、以前計算したKd、抗原濃度、反応の計算値KonおよびKoffを使って調整した。結果は表5に示してある。
【0188】
<実施例5> CD20結合細胞を使ったADCC分析
本実施例では、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する能力に関して、作動体としてヒト末梢血単核細胞、標的としてBリンパ腫細胞株を使って、AME5、AME33、AME6F1 IgGおよびC2B8抗体を試験した。この分析は以下に記述する方法で行った。
【0189】
PBMC(末梢血単核細胞)の単離:
健康なドナーから得た末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.0)を使って1:2に希釈した。Histopaque−1077(シグマ(Sigma)、カタログ番号1077−1)12mlを希釈サンプルの下の相に注意して置き、水平ローター付きSorvall RT6000B遠心分離機を使い(ブレーキ・オフ)、1000rpmで10分間遠心分離した。PBMCを含む中間相を集め、ハンクス液(ギブコ(Gibco))で3度洗浄した。洗浄した細胞ペレットを、10%の牛胎児血清(FBS)(オメガ・サイエンティフィック(Omega Scientific))を含むRPMI 1640培地(ATCC)20mLに懸濁した。再懸濁したPBMCを二つのT−175培養フラスコに分け、それぞれにRPMI/10%FBS30mLを加えた。フラスコを37℃/5%CO2インキュベーターで培養した。翌日、付着していないPBMCを集め、上述のように遠心分離し、1%FBSを含むRPMIに再懸濁し、血球計数器を使って計数した。
【0190】
標的細胞株:
Bリンパ腫細胞株をATCCから入手し、手引書に従って成長させた。実験の前日細胞を1:2に分けた。翌日濃度を0.5から1X106細胞/mLに調整し、50μL(25,000から50,000細胞/ウェル)をベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)96ウェルU底組織培養プレートに加えた。
【0191】
IgG滴定:
1%FBSを含むRPMIでサンプルを希釈する事により、IgG希釈液を生成した。IgG50μlを96ウェル・マイクロタイター・プレートの標的細胞に加え、ピペットを使って穏やかに混合した。作動体細胞を加える前に、37℃/5%CO2の条件下で、IgGを標的細胞と一緒に15分培養した。
【0192】
作動体細胞:
再懸濁したPBMC100μlを標的細胞/IgGプレートの各ウェルに加えた。作動体と標的の比が10〜20:1になるようにPBMCの濃度を調整した。プレートを37℃/5%CO2の条件下で3〜4時間培養した。
【0193】
LDH放出検出:
培養の後、プレートを1000〜2000rpmで5〜10分間遠心分離した。ペレット状の細胞を避けながら、上清50μlを注意して除去した。ウェル当たりPBS50plを含むDynex Immulon 2HB平底プレートにこの上清を直接加えた。このプレートにLDH検出試薬(ロシュ(Roche))100μlを加えた。プレートを約15〜30分間培養し、Molecular Devices Vmax Kinetic Microplate Readerを使って、490nmでODを読み取った。
【0194】
データの解析:
データは対数IgG濃度対A490として記された(図15参照)。A490は次の式を使って細胞障害作用%に転換された。
細胞障害作用%=(実験A490−基底A490)/(最大A490−基底A490)X100
ここで最大A490は標的細胞に2%Triton X−100を加える事により決定された。基底−放出は、感作IgGの不在下に作動体および標的細胞の混合物に関して測定された。図15に示されるデータによると、Fc変異体D280HおよびK290Sを含むAME33のEC50は、C2B8よりも一貫して1.5〜2.0倍低かったことが示されている。このデータは以下の表6にも示されている。
表6 推定EC50s, μg/ml(標的:Wil−2細胞)
【表6】
【0195】
<実施例6> CD20結合分子の糖鎖工学
本実施例は、ある種のCD20結合分子に適用した糖鎖工学法を説明する。特に、野生型または突然変異(D280HまたはK290S)Fc領域を含むAME 1C2 IgGをβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII酵素と一緒にCHO細胞の中で発現させる事により、Fc領域で切断されたオリゴ糖の発現を増加させた。糖鎖工学とFc変異領域の組み合わせは、修飾していない1C2または市販のリツキサン抗体と比べ、ADCC分析において1C2のEC50を減少させた。方法は以下に記載する。
【0196】
ラットの腎臓cDNA(クロンテク(Clontech)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA))から得たβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII遺伝子をPCRで増幅した。PCRプライマーはその遺伝子の5’末端にNheI部位を導入し、3’末端にEcoRI部位を導入した(正プライマーは5’−GGCGGCTAGCATGAGACGCTACAAGCTTTTTCTCATGTTCTG−3’、配列番号103、逆プライマーは5’−GGCGGAATTCCTAGCCCTCCGTTGTATCCAACTTGC−3’、配列番号104)。PCR生成物の制限消化および精製の後、同じように開裂したpcDNA3.1 NEO(生体外ゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))とそれとを連結させた。連結したプラスミドDNAはエレクトロポレーションによる大腸菌の形質転換に使用された。コロニーPCRを使い、ラットのβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII遺伝子の存在を検出するため、アンピシリン抵抗性の大腸菌コロニーをスクリーニングした。プラスミドDNAはポジティブクローンから単離され、配列が決定された。配列決定により、プラスミドDNAがBspHIと線形になっている事が確認された。リポフェクタミン2000(Lipofectamine2000)(生体外ゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))を使い、製造元の実験記録に従って、約10mgの線形DNAがCHO K1細胞への形質移入に使用された。G418選択の後、単離した抵抗性のコロニーを組織培養で増殖した。mRNAが単離され、ラットβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIImRNA生産の定性的なスクリーニングが行なわれた。形質移入された細胞株は予期されたサイズのPCR生成物を産出したが、形質移入されていないCHOK1細胞は産出しなかった。抗CD20 IgGをコード化するDNAが安定な細胞株の形質移入に使用された。形質移入の約3日後、細胞培養の上清が集められ、蛋白質Aクロマトグラフィを使ってIgG類縁物質を精製した。蛋白質AカラムからIgGを溶出した後、サンプルを透析し、280nmで吸収度を測定する事により蛋白質の濃度を定量した。
【0197】
実施例5に記載の方法を使い、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)の効果に関して、種々のCHOK1細胞株で発現したIgGサンプルを試験した。この実験では、新鮮なヒトの血液から単離された抹消血リンパ球が作動体細胞として使用され、WIL.2s B細胞が標的細胞として使用された。標的細胞の溶解量は、標準の乳酸脱水素酵素放出分析を使って測定した。ADCCを引き出す効果に関して、加工されたCHOK1細胞株で発現したIgGと加工していないCHOK1細胞株で発現したIgGおよび市販のリツキサン抗体が直接比較された。さらに、切断されたN−アセチルグルコサミン糖の存在が、直接糖鎖形成分析により確認された。AME 1C2に関するADCC分析の結果は図16に示されている。
【0198】
<実施例7> 生体外アポプトシス分析
本実施例は、種々のCD20結合分子を使って行なった生体外アポプトシス分析について記述する。特にAME 5、AME 33、AME 6F1(全て抗体全体)およびC2B8抗体を使い、抗ヒトIgGとの架橋結合によりラモスBリンパ腫細胞株のアポプトシスを誘発する能力を試験した。分析の方法は以下の通りである。
【0199】
アネキシンV−FITC染色:
ラモスBリンパ腫細胞株(ATCC)を、使用の24時間前に1:2に分けた。分析の当日、ラモス細胞を遠心分離し(1,000rpmで5分)、PBSで洗浄し、RPMIおよび10%の加熱不活性FBS(培地)に再び懸濁した(細胞濃度:5X105細胞/ml)。6ウェル組織培養プレートにウェル当たり100万の細胞を加えた。一次抗体を指定濃度で細胞に加え、プレートを15分間穏やかに振盪し、さらに45分間37℃に戻した。予め温めておいたヤギの抗ヒトIgG(10μg/ml)または培地を特定のウェルに加え、プレートを37℃で6時間培養した。
【0200】
細胞は遠心分離で採取し(1,000rpmで5分)、冷却1X結合緩衝液(10X株から水で希釈)100μlおよびアネキシンV−FITC(サザン・バイオテク(Southern Biotech))10μlに再懸濁した。サンプルをポリスチレン製の丸底チューブ(ファルコン(Falcon)2058)に移し、室温、暗所で、15分培養した。ヨウ化プロピジウム(2μg/ml)を含む結合緩衝液を加え、サンプルをベクトン・ディッキンソン・ファクスキャン(Becton Dickinson Facscan)フローサイトメーターで分析し、セルクエスト(CellQuest)またはWinMDIソフトを使ってデータを解析した。細胞の死(アポプトシスおよび壊死の細胞の%)は、アネキシンVで染色する細胞の%を測定する事により決定された。この分析の結果、AME 5、33および6F1はC2B8抗体処理の場合と同じようなレベルで細胞の死を誘発する事が証明された。
【0201】
<実施例8> 補体媒介の細胞障害活性分析
本実施例は、ヒトの補体およびWil−2Bリンパ腫細胞株(標的)を使い、補体依存性細胞障害作用を媒介する効果に関して、C2B8抗体、シナジス(対照)およびAME抗体である6F1、2C2、1D10、15、18および33を試験した結果を記載する。
【0202】
Wil2−SBリンパ腫細胞(ATCC)をRPMI+10%加熱不活性FBSに再懸濁した(5X105/ml)。Wil2−S細胞懸濁液50μl、IgG(濃度範囲:1ng/mlから75μg/ml)50μl、およびヒトの希釈[1:5]補体50μlを96ウェルのプレート(コスター(Costar)3917)で混合した。抗体も補体もRPMI+10%FBSで希釈した。細胞は37℃、5%CO2で90分培養した。アラマーブルーをウェル当たり15μl加え、プレートを37℃、5%CO2で一晩培養した。蛍光(生きた細胞の数を反映)を560nmで励起し590nmで検出する事により記録した。分析の結果は、全AME抗体のEC50がC2B8抗体のそれに似ている事を示していた。
【0203】
<実施例9> CD20結合分子の生体内投与
本実施例では、多くのCD20結合分子を生体内で試験するために使用された分析について説明する。
【0204】
抗体AME45H、1C2、5−3およびC2B8抗体をマウスにより以下のように分析した。5X106ラジ細胞(ATCC)を6〜8週齢のC.B.17−SCIDマウスの雄(タコニック(Taconic))の左右の脇腹に注射した(s.c.)。約2〜3時間後(0日)、抗体を腹腔内に注射した(0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kgおよび0.5mg/kg)。腫瘍の長さ、幅、そして高さを毎週月、水、金にカルパスで測定し、腫瘍の体積を計算した。用量応答曲線からEC50値を決定した。AME4H5、1C2および5−3のEC50は、C2B8のEC50と一貫して異なっているわけではなかった。
【0205】
抗体AME33およびC2B8抗体もまた、5X106ラジ細胞が注射されたマウスを使って分析された。マウスは3日目に0.5mg/kgのAME 33またはC2B8で処置された。対照群のマウスには生理食塩水が与えられた。結果(図17に示す)は、AME 33およびC2B8が同じようにラジ腫瘍を阻害し、C2B8に比べるとAME 33の方が長期的に見て腫瘍の成長が少ない事を示している。
【0206】
<実施例10> ヒトの疾病の治療にCD20結合分子を使用
本実施例は、これだけに限定されるものではないが、非ホジキンスリンパ腫(NHL)および全身性エリテマトーデス(SLE)から選択され、これらに限定されない疾病を含む、ヒトの患者の疾病の治療および予防的治療のためのCD20結合分子の用法にについて記述する。
【0207】
例えば上述の疾病のいずれかに罹っている患者に、AME 21E1 Hum、AME6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 33、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5またはAME 5などのCD20結合分子を0.4から体重1kgあたり20.0mg静脈内注射する。典型的な投与計画は、例えば緩徐静脈内注入として投与される抗体375mg/m2を週1回、4または8用量である。別の投与計画は、完全なものとして参照用に本出願に編入されているアンダーソン(Anderson)による米国特許6,399,061に記載されている。治療および/または生体内撮像法のため、抗体またはFab断片を放射性同位元素(例えばイットリウム[90])で標識してもよい(米国特許6,399,061参照)。治療に対する反応はモニターされ、投与量を増やすべきか減らすべきか、あるいは反復治療の必要があるかどうかが決定される。治療に対する反応および投与計画に関する追加的な指示は、米国特許6,399,061に記載されている。
【0208】
上述の明細に記載されている出版物および特許は、全て参照として本出願に編入されている。本発明の範囲および精神から逸脱する事なく、本発明の方法およびシステムを様々に調整および変更できることは、当業者には明白である。本発明は特定の望ましい実施例との関連で記載されてはいるが、請求されている発明はそれらの具体的な実施例により不当に制限されるべきではない。本発明の実施のために記載された方法のうち、化学、医学、分子生物学、あるいは当業者にとって明白な種々の変更は、以下の請求項の範囲内に含まれている。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年5月20日に出願された米国仮特許出願連続番号60/471,958の優先権を主張する。
本発明は、CD20結合分子およびCD20結合分子をコード化する核酸配列に関する。特に本発明は、ヒトのCD20に対して高い結合親和力と低い解離速度を有するCD20結合分子に関する。本発明のCD20結合分子は、完全にヒトのフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでいるのが望ましい。
【背景技術】
【0002】
B細胞リンパ腫のような疾病の診断および/または治療薬としてCD20抗原の抗体を使用する方法は、以前にも報告されている。CD20は悪性のB細胞、すなわちその無制限な増幅がB細胞リンパ腫の原因となるB細胞の表面に高密度で発現する抗原であるため、B細胞リンパ腫のマーカーまたは標的として有用である。
【0003】
CD20(Bp35としても知られる)は、B前駆体細胞成長の初期に発現し、血漿の細胞分化まで残留する、Bリンパ球に制限された分化抗原である。CD20分子は細胞サイクルの開始および分化に必要なB細胞活性化プロセスの一段階を調整していると考えている者もいる。さらに上述のように、通常CD20は新生物形成(「腫瘍」)B細胞上に、極めて高レベルで発現する。CD20抗原は[他の物質を]削減、調整、または吸収したりしないため、標的治療に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗CD20抗体に関する、これまでに報告されている治療法には、治療用抗CD20抗体の単独投与、あるいは第二の放射線標識抗CD20抗体または化学療法薬との併用投与が含まれている。米国食品医薬品局は、以前に治療され再発した低悪性度の非ホジキンスリンパ腫(NHL)の治療における、このような抗CD20抗体の一つであるリツキサン(RITUXAN)の使用を承認した。しかしながら、リツキサンはB細胞リンパ腫の治療に効果的であると一般に報告されてはいるものの、治療を受けた患者はしばしば再発する傾向がある。
【0005】
最近、全身性エリテマトーデス(SLE)の18人の患者(非免疫抑制患者)の治療に対するリツキサンの安全性、許容性、予備臨床の治療効果が試験された。この研究結果の一部は、2002年10月、米国リウマチ学会(ACR)第66回年次学会で発表された。治療を受けた18人の患者のうち、6人の患者には週1回100mg/m2(低用量)のリツキサン注入を、6人の患者には週1回375mg/m2(中用量)のリツキサン注入を、そして6人の患者には週1回375mg/m2(高用量)のリツキサン注入が4週間与えられた。低用量または中用量の投与を受けた12人中の3人(25%)には2ヶ月でヒト抗キメラ抗体(HACA)が高濃度で発現したが、高用量の患者は現在なお評価中である。
【0006】
従って、治療を受けたB細胞リンパ腫の患者が再発しないように、結合親和力が高く解離定数の低いCD20結合分子、および免疫抑制されていない患者に投与された場合HACA反応を引き起こさない、あるいは引き起こす可能性を小さくするようなCD20結合分子が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、CD20結合分子およびCD20結合分子をコード化する核酸配列を提供する。特に本発明は、ヒトのCD20に対して高い結合親和力と低い解離速度を有するCD20結合分子を提供する。本発明のCD20結合分子は、完全にヒトのフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでいることが望ましい。
【0008】
ある実施形態では、本発明はCD20結合分子を含む組成物を提供し、このとき当該CD20結合分子はa)軽鎖可変領域、あるいは軽鎖可変領域の一部を含み、このとき当該軽鎖可変領域(または軽鎖可変領域の一部)はi)配列番号1、配列番号3、配列番号5から成るグループから選択されたCDRL1アミノ酸配列、ii)配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13から成るグループから選択されたCDRL2アミノ酸配列、およびiii)配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含み、また、b)重鎖可変領域、あるいは重鎖可変領域の一部を含み、このとき当該重鎖可変領域(または重鎖可変領域の一部)はi)配列番号23および配列番号25から成るグループから選択されたCDRH1アミノ酸配列、ii)配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39から成るグループから選択されたCDRH2アミノ酸配列、およびiii)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDRH3アミノ酸配列を含んでいる。
【0009】
別の実施形態では、本発明は軽鎖可変領域(またはその一部)、あるいは軽鎖可変領域をコード化する核酸配列(またはその一部)を含む組成物を提供し、このとき当該軽鎖可変領域(またはその一部)は、a)配列番号1、配列番号3、配列番号5から成るグループから選択されたCDRL1アミノ酸配列、b)配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13から成るグループから選択されたCDRL2アミノ酸配列、およびc)配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含む。
【0010】
ある実施形態では、本発明は重鎖可変領域(またはその一部)あるいは重鎖可変領域をコード化する核酸配列(またはその一部)を含む組成物を提供し、このとき当該重鎖可変領域(またはその一部)は、a)配列番号23および配列番号25から成るグループから選択されたCDRH1アミノ酸配列、b)配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39から成るグループから選択されたCDRH2アミノ酸配列、およびc)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDR−H3アミノ酸配列を含む。
【0011】
別の実施形態では、本発明はa)軽鎖可変領域あるいは軽鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該軽鎖可変領域が配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含むもの、およびb)重鎖可変領域あるいは重鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該重鎖可変領域が配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDRH3アミノ酸配列を含むもの、を含んだ組成物を提供する。
【0012】
ある実施形態では、本発明はCD20結合分子の軽鎖可変領域をコード化する核酸分子を含む組成物を提供し、このときその核酸分子は、a)配列番号2、配列番号4、配列番号6から成るグループから選択されたCDRL1核酸配列、b)配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14から成るグループから選択されたCDRL2核酸配列、およびc)配列番号18、配列番号20、配列番号22から成るグループから選択されたCDRL3核酸配列を含む。別の実施形態では、本発明はCD20結合分子の重鎖可変領域をコード化する核酸分子を含む組成物を提供し、このときその核酸分子は、a)配列番号24および配列番号26から成るグループから選択されたCDRH1核酸分子、b)配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40から成るグループから選択されたCDRH2核酸分子、およびc)配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58から成るグループから選択されたCDRH3核酸分子を含む。
【0013】
特定の実施形態では、本発明はCD20結合分子を含む組成物を提供し、このとき当該CD20結合分子は、a)配列番号5を含むCDRL1アミノ酸配列、b)配列番号13を含むCDRL21アミノ酸配列、c)配列番号19を含むCDRL31アミノ酸配列、d)配列番号25を含むCDRH11アミノ酸配列、e)配列番号39を含むCDRH21アミノ酸配列、およびf)配列番号57を含むCDRH31アミノ酸配列を含む。別の実施形態では、本発明はCD20結合分子の軽鎖可変領域をコード化する核酸分子を含み、このときその核酸分子は、a)配列番号6を含むCDRL1核酸配列、b)配列番号14を含むCDRL2核酸配列、およびc)配列番号20を含むCDRL3核酸配列を含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明はCD20結合分子の重鎖可変領域をコード化する核酸分子を含み、このときその核酸分子は、a)配列番号26を含むCDRH1核酸配列、b)配列番号40を含むCDRH2核酸配列、およびc)配列番号58を含むCDRH3核酸配列を含む。別の実施形態では、本発明は、a)軽鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該第1核酸配列が配列番号18、配列番号20および配列番号22から成るグループから選択されたCDRL3核酸配列を含むもの、およびb)重鎖可変領域をコード化する第2核酸配列であり、このとき当該第2核酸配列が配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56および配列番号58から成るグループから選択されたCDRH3核酸配列を含むもの、を含む組成物を提供する。
【0015】
ある実施形態では、本発明は、a)軽鎖可変領域をコード化する第1核酸配列であり、このとき当該軽鎖可変領域が、i)配列番号1、配列番号3、配列番号5から成るグループから選択されたCDRL1アミノ酸配列、ii)配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13から成るグループから選択されたCDRL2アミノ酸配列、およびiii)配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたCDRL3アミノ酸配列を含むもの、およびb)重鎖可変領域をコード化する第2核酸配列であり、このとき当該重鎖可変領域が、i)配列番号23および配列番号25から成るグループから選択されたCDRH1アミノ酸配列、ii)配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39から成るグループから選択されたCDRH2アミノ酸配列、およびiii)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたCDRH3アミノ酸配列を含む)、を含む組成物を提供する。
【0016】
ある実施形態では、本発明は配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択された、少なくとも二つ(あるいは少なくとも三つまたは四つ)のCDRを含むペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択された、少なくとも二つ(あるいは少なくとも三つまたは四つ)のCDRを含むペプチドを提供する。
【0017】
ある実施形態では、本発明は軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含む組成物を提供し、このとき当該軽鎖可変領域は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号17、配列番号19、配列番号21から成るグループから選択されたアミノ酸配列を含み、またこのとき当該重鎖可変領域は、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57から成るグループから選択されたアミノ酸配列を含む。
【0018】
ある実施形態では、軽鎖可変領域はフレームワークの一部(例えばFR2やFR3などの2つから三つの準領域)を含む。ある実施形態では、軽鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、軽鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。特定の実施形態では、軽鎖可変領域は配列番号59および63から選択されたアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、重鎖可変領域はフレームワークの一部(例えばFR2やFR3などの二つから三つの準領域)を含む。ある実施形態では、重鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、重鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。別の実施形態では、重鎖可変領域は61および65から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0019】
ある実施形態では、CD20結合分子は抗体または抗体の断片(例えばFv、Fabなど)を含む。特定の実施形態では、CD20結合分子はAME 33 FvまたはFabを含む。別の実施形態では、CD20結合分子はAME 5 FvまたはFabを含む。さらに別の実施形態では、CD20結合分子は、AME 21E1 Hum、AME 6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5から成るグループから選択されたFvまたはFabを含む。
【0020】
特定の実施形態では、本発明はCD20結合分子(例えば抗体や抗体の断片)を含む融合構成物、および酵素、検出可能な標識、炭水化物分子、脂質などの融合パートナーを提供する。ある実施形態では、融合構成物はヒトのCD20に結合するFabまたはFab’2、およびプロドラッグを活性形に変換する酵素を含む。
【0021】
ある実施形態では、CD20結合分子は宿主細胞(例えば真核生物または原核生物の宿主細胞)内に含まれている。別の実施形態では、軽鎖および/または重鎖をコード化する核酸はプラスミドや他の発現ベクター内に含まれている。
【0022】
ある実施形態では、本発明はヒトのCD20に対し結合親和力(Kd)が5.0X10−10Mまたはそれ以下(例えば5.0X10−10M〜5.0X10−11M)であるCD20結合分子を含む組成物を提供する。別の実施形態では、本発明はCD20結合分子を含む組成物を提供し、このとき当該CD20結合分子はヒトのCD20に対し5.0X10−10Mまたはそれ以下の結合親和力(Kd)、および5.0X10−4s−1またはそれ以下である解離速度(koff)を有する。
【0023】
別の実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.5X10−10Mまたはそれ以下の結合親和力(Kd)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.0X10−10Mまたはそれ以下の結合親和力(Kd)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し2.5X10−4s−1またはそれ以下の解離速度(koff)を有する。特定の実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.0X10−4s−1またはそれ以下(例えば1.0X10−4s−1〜1.0X10−5s−1)の解離速度(koff)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し8.0X10−5s−1またはそれ以下の解離速度(koff)を有する。さらに別の実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し1.0X105M−1s−1またはそれ以上(例えば1.0X105M−1s−1〜1.0X106M−1s−1)の会合速度(kon)を有する。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し5.0X105M−1s−1またはそれ以上の会合速度(kon)を有する。
【0024】
ある実施形態では、本発明は、a)i)被験者およびii)本発明のCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)その組成物の被験者への投与、からなるB細胞リンパ腫の治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、a)i)疾病の症状を訴える被験者およびii)本発明のCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)当該症状を軽減または排除するための、当該被験者への当該組成物の投与からなる、疾病の治療法を提供する。特定の実施形態では、疾病は、再発したホジキンス病、高悪性度の抵抗性ホジキンス病、低悪性度および中悪性度の非ホジキンスリンパ腫(NHL)、B細胞慢性リンパ球白血病(B−CLL)、リンパ形質細胞性悪性リンパ腫(LPL)、被膜細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、瀰漫性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、エイズ関連リンパ腫、単球性B細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ節症、小リンパ球型、濾胞性びまん性大型細胞、びまん性小型開裂細胞、大細胞免疫芽球性リンパ腫、小非開裂型、バーキットおよび非バーキット型、濾胞性の主に大型の細胞、主に小型の濾胞性開裂細胞、および濾胞性の小型及び大型混合細胞リンパ腫から成るグループから選択される。
【0025】
ある実施形態では、本発明は本発明のCD20結合分子の有効量をその動物に投与することからなる治療を必要としている動物における疾病(例えば癌)の治療方法を提供している。ある実施形態では、本発明は薬剤として使用するための本発明のCD20結合分子を提供する。他の実施形態では、本発明は疾病(例えばNHL)治療用の薬剤の製造において、本発明のCD20結合分子を提供する。特定の実施形態では、本発明は疾病(例えば癌)の治療のために、本発明のCD20結合分子を活性成分として含むことを特徴とする薬剤を提供する。
【0026】
好適な実施形態において、被験者(患者)は免疫抑制されていない。例えば、患者は全身性エリテマトーデス(SLE)のような病気にかかっている。非免疫抑制の被験者にCD20結合分子を投与した場合、HACA反応(ヒト抗キメラ抗体反応)が生じない(あるいは生じても無視できる程度である)ことが望ましい。ある実施形態では、被験者に投与される用量は週に約375mg/m2ずつ4週間(HACA反応を生じる事なく)である。ある実施形態では、投与量は(例えば慢性リンパ球白血病(CLL)などに対し)、週に約50〜300mg/m2または週に約100〜200mg/m2ずつ4週間である。
【0027】
ある実施形態では、本発明は、a)i)被験者およびii)ヒトのCD20に対する結合親和力(Kd)が5.0X10−10Mまたはそれ以下であり、またヒトのCD20に対する解離速度(koff)が5.0X10−4s−1またはそれ以下であるCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)その組成物の被験者への投与、からなるB細胞リンパ腫の治療方法を提供する。
【0028】
ある実施形態では、本発明は上述の治療を必要としている被験者において、末梢B細胞を枯渇させる、a)i)被験者およびii)ヒトのCD20に対する結合親和力(Kd)が5.0X10−10Mまたはそれ以下であり、またヒトのCD20に対する解離速度(koff)が5.0X10−4s−1またはそれ以下であるCD20結合分子を含むことを特徴とする組成物の提供、およびb)その組成物の被験者への投与、からなる方法を提供する。
【0029】
ある実施形態では、軽鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、軽鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号59および63から選択されたアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、重鎖可変領域は完全にヒト型のフレームワークを含む。別の実施形態では、重鎖可変領域はヒトの生殖細胞系フレームワークを含む。さらに別の実施形態では、重鎖可変領域は61および65から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0030】
ある実施形態では、CD20結合分子は抗体または抗体の断片(例えばFv、Fabなど)を含む。特定の実施形態では、CD20結合分子はAME 33 FvまたはFabを含む。別の実施形態では、CD20結合分子はAME 5 FvまたはFabを含む。さらに別の実施形態では、CD20結合分子は、AME 21E1 Hum、AME 6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5から成るグループから選択されたFvまたはFabを含む。
【0031】
他の実施形態では、CD20結合分子はC2B8抗体とほぼ同じEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。さらに別の実施形態では、CD20結合分子はヒトの末梢血管単核細胞を作動体としまたBリンパ腫を標的として、C2B8抗体とほぼ同じEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。ある実施形態では、CD20結合分子はC2B8抗体の約1.5から2倍のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する(当該C2B8抗体は番号69119としてATCCに蒸着している)。また別の実施形態では、CD20結合分子はヒトの末梢血管単核細胞を作動体としまたBリンパ腫を標的として、C2B8抗体の約1.5から2倍のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。さらに別の実施形態では、CD20結合分子はC2B8抗体の10倍またはそれ以上のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。また別の実施形態では、CD20結合分子はヒトの末梢血管単核細胞を作動体としまたBリンパ腫を標的として、C2B8抗体の10倍またはそれ以上のEC50レベルで抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する。
【0032】
ある実施形態では、CD20結合分子にはヒトの生殖細胞系軽鎖フレームワークが含まれる。ある実施形態では、このヒト生殖細胞系軽鎖フレームワークは、V1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4、V5−6から選択される。
【0033】
別の実施形態では、CD20結合分子にはヒトの生殖細胞系重鎖フレームワークが含まれる。特定の実施形態では、この重鎖ヒト生殖細胞系フレームワークは、VH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−3、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1およびVH7−81から選択される。
【0034】
ある実施形態では、CD20結合分子はCD20結合ペプチドまたはポリペプチドである。ある実施形態では、CD20結合ペプチドは抗CD20抗体または抗CD20抗体の断片(例えばFv、Fab、F(ab’)2など)を含む。別の実施形態では、ペプチドには軽鎖および/または重鎖可変領域が含まれる。特定の実施形態では、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域にはフレームワーク領域または少なくともフレームワーク領域の一部(例えばFR2やFR3などの二つから三つの準領域)が含まれる。ある実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3またはFRL4は完全にヒト型である。別の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3またはFRH4は完全にヒトである。ある実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3またはFRL4は生殖細胞系(例えばヒトの生殖細胞)の配列である。別の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3またはFRH4は生殖細胞系(例えばヒトの生殖細胞)の配列である。好ましい実施形態では、フレームワーク領域は完全にヒト型のフレームワーク領域(例えば図4−5および8−9に示されているヒト型のフレームワーク領域)である。ある実施形態では、フレームワーク領域には配列番号71、72、73、74、79、80、81、82またはそれらの組み合わせが含まれる。別の実施形態では、フレームワーク領域には配列番号87、88、89、90、95、96、97、98またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0035】
ある実施形態では、本発明は核酸、アミノ酸、配列番号1−70から選択される配列またはその補体の発現をコード化するコンピュータ可読媒体を提供する。ある実施形態では、コンピュータ処理装置に送られた場合、これらの配列の発現はユーザーに(例えばインターネットを通して)表示される。
【0036】
ある実施形態では、本発明は、配列番号1−70に見られる核酸配列、または配列番号1−70に見られるアミノ酸配列をコード化する核酸配列と、(厳密性の低い、中程度、あるいは高い条件下で)ハイブリダイズする核酸配列を提供する。
【0037】
ある実施形態では、本発明は本出願に記載の核酸配列の補体を提供する(例えば表1−2および図2、3、6、7、10および11を参照)。ある実施形態では、本発明は厳密性の高い、中程度、あるいは低い条件下で本出願に記載の核酸配列とハイブリダイズを行なう配列を提供する(例えば表1−2および図2、3、6、7、10および11を参照)。
【0038】
ある実施形態では、親和性定数(Kd)および会合速度(Kon)は、KinExa平衡ソフト(例えばセパダイン・インスツルメンツ(Sapidyne Instruments)、アイダホ州ボイジー(Boise,Idaho))を使って、IgG細胞結合分析(つまり表面にヒトのCD20を発現する細胞)で決定される。ある実施形態では、親和性定数および会合速度定数は動的排除分析(kinetic exclusion assay)で決定される(例えば、チュー(Chiu)ら、Anal.Chem.、73、5477−5484(2001)、ブレーク(Blake)ら、生物化学ジャーナル(Journal of Biological Chemistry)、271、27677−27685(1996)、ホンゴウ(Hongo)ら、ハイブリドーマ(Hybridoma)、19、303−315(2000)、コスラビアニ(Khosraviani)ら、Bioconjugate Chemistry、11、267−277(2000)、パワーズ(Powers)ら、免疫方法ジャーナル(Journal of Immunological Methods)、251、123−135(2001)を参照、これらは全て参照として本出願に組み込まれている)。特定の実施形態では、動的排除分析(kinetic exclusion assay)はKinExA装置(例えばセパダイン・インスツルメンツ(Sapidyne Instruments)製KinExA(登録商標)3000、アイダホ州ボイジー(Boise,Idaho))または類似の機器を使用して行なわれる。
【0039】
他の実施形態では、CD20結合分子にはFabが含まれ、さらに一つまたはそれ以上の定常領域(例えばCH2および/またはCH3、図10−11を参照)が含まれる。特定の実施形態では、CD20結合分子には抗体(例えば合成CDR配列を有し、完全にヒト型のフレームワークを含む抗体)が含まれる。ある実施形態では、抗体には変質した(例えば突然変異した)Fc領域が含まれる。例えばある実施形態では、抗体のエフェクター機能を向上または低下させるためにFc領域が変更されている。ある実施形態では、Fc領域はIgM、IgA、IgG、IgE、その他から選択されるアイソタイプである。
【0040】
ある実施形態では、CD20結合分子のFc領域のCH2ドメインにアミノ酸修飾が導入される。Fcγ受容体(FcγR)の結合親和力または活性が変化したIgG Fc変異領域を作成するための修飾に有用なアミノ酸の位置には、CD20結合分子のFc領域の268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、300、301、303、305、307、309、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、416、419、430、434、435、437、438または439のアミノ酸位置の一つあるいはそれ以上が含まれる。好適な実施形態では、そのような変異体を作成するためのテンプレートとして使用される親Fc領域は、ヒトのIgG Fcを含む。ある実施形態では、FcγRとの結合力の低下したFc領域変異体を生成するために、CD20結合分子のFc領域の252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、298、300、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438または439、のアミノ酸位置の一つまたはそれ以上にアミノ酸修飾を導入することができる。特定の実施形態では、一つまたはそれ以上のFcγRsとの結合が向上したFc領域変異体が生成されることもある。そのようなFc領域変異体は、CD20結合分子のFc領域の280、283、285、286、290、294、295、298、300、301、305、307、309、312、315、331、333、334、337、340、360、378、398または430、のアミノ酸位置の一つまたはそれ以上にアミノ酸修飾を含む。ある実施形態では、アミノ酸修飾はY300Iである。
【0041】
別の実施形態では、アミノ酸修飾はY300Lである。ある実施形態では、アミノ酸修飾はQ295KまたはQ295Lである。ある実施形態では、アミノ酸修飾はE294Nである。別の実施形態では、296の位置のアミノ酸修飾はY296Pである。ある実施形態では、298の位置のアミノ酸修飾はS298Pである。別の実施形態では、アミノ酸修飾はS298N、S298P、S298VまたはS298Dである。
【0042】
ある実施形態では、CD20結合分子は重鎖定常領域の突然変異を含む。別の実施形態では、CD20結合分子はD280HおよびK290Sから選択された、突然変異を起こした重鎖定常領域を含む。
【0043】
代替的あるいは追加的に、アミノ酸修飾と、C1q結合および/またはCD20結合分子のFc領域の補体依存性細胞毒性機能を変化させる一つまたはそれ以上のさらなるアミノ酸修飾とを組み合わせることが有用である。特に関連する出発ポリペプチドは、C1qと結合し補体依存性細胞毒性機能(CDC)を示すものであり得る。本出願に記載のアミノ酸置換は、C1qと結合するおよび/または補体依存性細胞毒性機能を修正する(例えばこれらの作動体の機能を減少、及び望ましくは取り除く)出発ポリペプチドの機能を変化させる働きをする。しかしながら、上述の一つまたはそれ以上の位置に、より優れたC1q結合および/または補体依存性細胞毒性機能(CDC)を備えた置換体を含むポリペプチドも本出願では考慮されている。例えば、出発ポリペプチドは、C1qを結合するおよび/またはCDCを媒介することはできないかもしれないし、またこれらのエフェクター機能を取得するべく、本出願の内容に従って修正されるかもしれない。さらに、既存のC1q結合活性、さらに任意的にCDC媒介機能を有するポリペプチドが、これらの活性のうち一つまたは両方の活性を向上させるべく修正されることもある。C1qを変化させるおよび/またはその補体依存性細胞毒性機能を修正するアミノ酸修飾が、例えば参照としてここに組み込まれているWO0042072に記載されている。
【0044】
上述のように、変更されたエフェクター機能を備えたCD20結合分子のFc地域を、例えばC1q結合および/またはFcγR結合を修正し、その結果CDCの活性および/またはADCC活性を変化させることによって設計することが可能である。例えば、改善されたC1q結合および改善されたFcγRIII結合を備えた(例えば、改善されたADCC活性および改善されたCDC活性の両方を備えた)CD20結合分子の様々なFc地域を生成することが可能である。
【0045】
あるいはエフェクター機能を減退または除去したい場合は、減退したCDC活性および/または減退したADCC活性を有するFc変異領域を作成してもよい。別の実施形態では、これらの活性のいずれか一方だけを向上させ、他の活性を任意的に減退させること(例えばADCC活性を向上させCDC活性を減退させること、あるいはその逆によるFc変異領域の作成)も可能である。
【0046】
Fc変異体を本発明のCD20結合分子に導入し、新生児Fc受容体(FcRn)との相互作用を変化させ、薬物速度論的特性を改善することもできる。抗体のFc領域とFcRnとの間の相互作用が血清免疫グロブリンの持続性に何らかの役割を演じている事がいくつかの実験で示されている。例えば、機能性FcRnが欠如しているマウスのIgG分子において、血清の異常に短い半減期が観察されている。FcRnとの結合を改善するFcの変異により血清の半減期が長くなると思われ、一方、IgG結合の強化をもたらすラットのFcRnにおける変異もまた血清の半減期を向上させる。FcRnとの結合が改善されたヒトFc変異体のコレクションも記載されている(シールズ(Shields)ら、ヒトIgGIのFCγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcRn結合領域の高解像度マッピング、およびFcγRとの結合が改善されたIgG1変異体のデザイン、J.Biol.Chem.、276、6591−6604(2001))。低pHで観察される(例えば飲作用あるいは血清からのIgG分子による液相飲食作用中)IgG分子とFcRnの結合親和性の増大が血清の半減期に影響を及ぼすことが報告されている(ゲティー(Ghetie)ら、ランダム変異誘発によるIgG断片の血清持続性の増加、Nat.Biotechnol.15、637−640(1997)、メデサン(Medesan)ら、Fc:FcRn相互作用領域を説明するためのラットIgGの比較研究、Eur.J.Immunol.28、2092−2100(1998)、キム(Kim)ら、MHCクラスI関連受容体の結合に関するヒトIgG領域マッピング、FcRn、Eur.J.Immunol.29、2819−2825(1999)、ダーラクア(Dall’Acqua)ら、新生児Fc受容体に関するヒトIgGIの親和力増大:生物学的結果、J.Immunol.169、5171−5180(2002))。しかし、高pHで結合を増強させる突然変異は血清の半減期に悪い影響を及ぼすと思われる(ダーラクアら、新生児Fc受容体に関するヒトIgGIの親和力増大:生物学的結果、J.Immunol.169、5171−5180(2002))。上述の文献は全て参照として本出願に編入されている。従って、低pHでFcRnの親和性を増大させ、高pHでFcRnの親和性を維持または減少させるように、Fc変異体を本発明のCD20結合分子に導入することができる。
【0047】
別のタイプのアミノ酸置換は、CD20結合分子Fc領域の糖鎖形成パターンを変更する働きをする。これは例えば、ポリペプチド内の一つまたはそれ以上の糖鎖形成領域を除去することにより、および/またはポリペプチド内に存在しない一つまたはそれ以上の糖鎖形成領域を加える事によって達成できる。Fc領域の糖鎖形成は通常N−リンクまたはO−リンクである。N−リンクは炭水化物の一部をアスパラギン残基の側鎖に結合させる事を意味する。ペプチド配列であるアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(Xはプロリン以外のアミノ酸)は、炭水化物の一部がアスパラギン側鎖に酵素結合する際の認識配列である。従って、ポリペプチド中におけるこのようなペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的な糖鎖形成領域を形成する事になる。O−リンク糖鎖形成は、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち一つの糖が、ヒドロキシアミノ酸(通常はセリンまたはトレオニンであるが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンが使用されることもある)と結合する事を意味する。
【0048】
CD20結合分子のFc領域への糖鎖形成領域の付加は、上述のトリペプチド配列(N−リンク糖鎖形成領域)の一つまたはそれ以上を含むようにアミノ酸配列を変化させることにより容易に達成できる。典型的な糖鎖形成変異体は、重鎖の残基Asn297のアミノ酸置換を有する。最初のポリペプチド(O−リンク糖鎖形成領域用)の配列に一つまたはそれ以上のセリンまたはトレオニン残基を付加する、あるいはそれらで置換する事によって変更することもできる。
【0049】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)を発現する細胞において、GnT IIIがGlcNAcをCD20結合分子に付加する形で発現する。結合分子をこのような形で作成する方法は、これらの全てが完全なものとして参照用に本出願に組み込まれている、WO9954342、WO03011878、出願公告20030003097A1、およびウマナ(Umana)ら、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、17、176−180、1999年2月発行に記載されている。
【0050】
ある実施形態では、本発明は、a)本発明のCD20結合分子、およびb)被験者の疾病を治療するためのCD20結合分子の使用手引書または科学的研究あるいは診断目的(例えばELISA分析など)のためのCD20結合分子の使用手引書を含む道具一式を提供する。ある実施形態では、本発明は、本発明のCD20結合分子をコード化する核酸配列が永続的または一時的にトランスフェクトされた細胞株を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は標識された種々の領域およびセクションを有するIgG分子の概念図である。CDRおよび二つの可変領域軽鎖のうちの一つ、また二つの可変領域重鎖のうちの一つのフレームワークも標識されている。
【0052】
【図2】図2AはAME33(配列番号59)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示し、図2BはAME33(配列番号60)の軽鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0053】
【図3】図3AはAME33(配列番号61)の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示し、図3BはAME33(配列番号62)の重鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0054】
【図4】図4AはCDRが散在した完全にヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkIII(A27)(DPK22)のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される:FRL1(配列番号71)、FRL2(配列番号72)、FRL3(配列番号73)およびFRL4(配列番号74)。図4BはCDRが散在したヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkIII(A27)(DPK22)の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される。FRL1(配列番号75)、FRL2(配列番号76)、FRL3(配列番号77)およびFRL4(配列番号78)。
【0055】
【図5】図5AはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域VH5−51(DP−73)のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される。FRH1(配列番号79)、FRH2(配列番号80)、FRH3(配列番号81)およびFRH4(配列番号82)。図5BはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域V5−51(DP−73)の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は次のように標識される:FRH1(配列番号83)、FRH2(配列番号84)、FRH3(配列番号85)およびFRH4(配列番号86)。
【0056】
【図6】図6AはAME5(配列番号63)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。図6BはAME5(配列番号64)の軽鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0057】
【図7】図7AはAME5(配列番号65)の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。図7BはAME5(配列番号66)の重鎖可変領域の核酸配列を示す。
【0058】
【図8】図8AはCDRが散在したヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkI(DPK4)(A20)のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRL1(配列番号87)、FRL2(配列番号88)、FRL3(配列番号89)およびFRL4(配列番号90)のように標識される。図8BはCDRが散在したヒト型の軽鎖フレームワーク領域VkI(DPK4)(A20)の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRL1(配列番号91)、FRL2(配列番号92)、FRL3(配列番号93)およびFRL4(配列番号94)のように標識される。
【0059】
【図9】図9AはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域VHI DP7/21−2のアミノ酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRH1(配列番号95)、FRH2(配列番号96)、FRH3(配列番号97)およびFRH4(配列番号98)のように標識される。図9BはCDRが散在したヒト型の重鎖フレームワーク領域VHI DPI7/21−2の核酸配列を示す。フレームワークの四つの準領域は、FRH1(配列番号99)、FRH2(配列番号100)、FRH3(配列番号101)およびFRH4(配列番号102)のように標識される。
【0060】
【図10】図10AはAME33(配列番号67)の軽鎖の完全アミノ酸配列を示し、図10BはAME33(配列番号68)の軽鎖の完全核酸配列を示す。
【0061】
【図11】図11AはAME33(配列番号69)の重鎖の完全アミノ酸配列を示し、図11BはAME33(配列番号70)の重鎖の完全核酸配列を示す。
【0062】
【図12】図12は実施例2に記載のELISA結合分析の結果を示す。
【0063】
【図13】図13は実施例2に記載のELISA結合分析の結果を示す。
【0064】
【図14】図14は実施例3に記載の生体Bリンパ腫Fab結合分析の結果を示す。
【0065】
【図15】図15は実施例5に記載のADCC分析の結果を示す。
【0066】
【図16】図16は実施例6に記載の糖鎖合成CD20結合分子のADCC活性を示している。
【0067】
【図17】図17は実施例9に記載の、AME33抗体およびC2B8抗体に関わる生体内腫瘍阻害分析の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
定義
本発明の理解を助ける目的で、多くの用語が以下のように定義される。
【0069】
本出願で使用されている「抗体」という用語は、四つのペプチド鎖、つまりジスルフィド結合で連結された二つの重(H)鎖および二つの軽(L)鎖で構成される免疫グロブリン分子を意味する。各重鎖は重鎖可変領域(本出願ではHCVRまたはVHと略)と重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は三つのドメインCH1、CH2およびCH3(図1を参照)で構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本出願ではLCVRまたはVLと略)と軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は一つのドメインCL(図1を参照)で構成される。VHおよびVL領域はさらに、より保存された、フレームワーク領域(FR)とよばれる領域が組み込まれた、相補性決定領域(CDR)とよばれる超可変性の領域に細分される。各可変領域(VHまたはVL)はCDR1、CDR2およびCDR3に指定される三つのCDRを含んでいる(図1、4および5を参照)。各可変領域はFR1、FR2、FR3およびFR4に指定される四つの準領域であるフレームワークを含んでいる(図1、4および5を参照)。
【0070】
本出願で使用されている「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部分を意味する。抗体断片の例として、これだけに限定されるものではないが、線形抗体、単鎖抗体分子、Fv、FabおよびF(ab’)2断片、抗体断片から形成される多特異的抗体などが含まれる。抗体断片は重鎖および/または軽鎖可変領域の少なくとも一部を保持していることが望ましい。
【0071】
本出願で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗原結合で主な働きをする領域である。軽鎖可変領域に三つのCDR(CDRL1、CDRL2およびCDRL3)、重鎖可変領域に三つのCDR(CDRH1、CDRH2およびCDRH3)が存在する。これら六つのCDRを構成している残基は、カバット(Kabat)およびコチア(Chothia)により次のように特徴付けられている:軽鎖可変領域の残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)および89〜97(CDRL3)、そして重鎖可変領域の31〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)および95〜102(CDRH3);カバット(Kabat)など、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest) (1991)、第5版、国立衛生研究所公衆衛生サービス(Public Health Service、National Institutes of Health)、メリーランド州ベセスダ(Bethesda、MD)(参照として本出願に編入)、および軽鎖可変領域の残基26〜32(CDRL1)、50〜52(CDRL2)および91〜96(CDRL3)、そして重鎖可変領域の26〜32(CDRH1)、53〜55(CDRH2)および96〜101(CDRH3);コチア(Chothia)およびレスク(Lesk)J.Mol.Biol.196、901〜917(1987)(参照として本出願に組み込まれている)。特別の断りがない限り、本出願で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、カバット(Kabat)とコチア(Chothia)の両方に含まれる残基を含んでいる(すなわち軽鎖可変領域の残基24〜34(CDRL1)、50〜56(CDRL2)および89〜97(CDRL3)、そして26〜35(CDRH1)、50〜65(CDRH2)および95〜102(CDRH3)である)。本出願では、指定されていない限り、CDR残基の番号はカバット(Kabat)の方法に基づいている。
【0072】
本出願で使用される「フレームワーク」という用語は、本出願で定義されるCDR残基以外の可変領域の残基を意味する。フレームワークを構成する、FR1、FR2、FR3およびFR4の四つの準領域が存在する(図1、4および5を参照)。フレームワークの準領域が軽鎖可変領域であるか重鎖可変領域であるかを区別するために、準領域の略号に「L」か「H」を付けることもできる(例えば「FRL1」は軽鎖可変領域のフレームワーク準領域1を示す)。特に指定されていない限り、CDR残基の番号はカバット(Kabat)の方法に基づいている。ある実施形態において、本出願のCD20結合分子が完全ではないフレームワークを有する場合がある(例えばCD20結合分子が四つの準領域のうち一つだけあるいは一つ以上を含むフレームワークの一部を有する場合がある)ことが知られている。
【0073】
本出願で使用される「完全にヒト型のフレームワーク」という用語は、ヒトに自然に見られるアミノ酸配列を有するフレームワークを意味する。完全にヒト型のフレームワークの例には、これだけに限定されるものではないが、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、POMなどが含まれる(例えばカバット(Kabat)ら、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)(1991)、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH、USA、およびウー(Wu)ら、J.Exp.Med.132,211−250(1970)を参照、両方とも参照として本出願に組み込まれている))。
【0074】
本出願で使用される「被験者」および「患者」という用語は、犬、猫、鳥、家畜などの哺乳類を含む動物で、ヒトであるのが望ましい。
【0075】
本出願で使用される「コドン」または「トリプレット」という用語は、ポリペプチドに含まれる天然アミノ酸の一つを特定する、隣り合った三つのヌクレオチド・モノマーのグループを意味する。この用語には、どのアミノ酸も特定しないコドンも含まれる。遺伝子コドンの縮退のため、同じアミノ酸をコード化するコドンが複数存在する事も知られている。従って、本発明の核酸配列の多くの塩基(例えば表1および2を参照)を、コード化されている実際のアミノ酸配列を変えることなく変更することができる。本発明はそのような核酸配列を全て含むことを意図している。
【0076】
本出願で使用される「ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」、「ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」および「ペプチドをコード化する核酸配列」という用語は、特定のポリペプチドのコード領域を含む核酸配列を意味する。当該コード領域はcDNA、ゲノムDNAまたはRNAの形で存在する。DNAの形で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖(すなわちセンス鎖)であっても二本鎖であってもよい。転写の適切な開始および/または1次RNA転写物の正しいプロセッシングを必要とされている場合、エンハンサー・プロモーター、スプライス部位、ポリアデニレーション・シグナルなどの適切な調節要素を遺伝子のコード領域の直ぐ近くに配置することもできる。あるいは、本発明の発現ベクターに使用されるコード領域は、内因性のエンハンサー・プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニレーション・シグナルなど、または内因性と外因性の調節要素の組み合わせを含んでいることもある。
【0077】
本出願で使用される「オリゴヌクレオチド」と「ポリヌクレオチド」という用語の間には大きさの制限や区別はない。どちらの用語も単にヌクレオチドからなる分子を意味する。同様に、「ペプチド」と「ポリペプチド」という用語の間にも大きさの区別は存在しない。両用語とも単にアミノ酸残基で構成される分子を意味する。
【0078】
本出願で使用される「相補的な」または「相補性」という用語は、塩基対合則によって関連した、ポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチドの配列)について使用される。例えば配列「5’−A−G−T−3’」は配列「3’−T−C−A−5’」に相補的である。相補性は塩基対合則に従って核酸塩基の一部だけが一致している「部分的」なものでも、核酸間で「完全に」あるいは「全体に」相補的なものでもよい。核酸鎖間の相補性の度合いは、ハイブリダイゼーションの効果および強度に重要な影響を及ぼす。
【0079】
本出願で使用される、所定の配列の「補体」という用語は、その全長にわたる配列に完全に相補的である配列に関して使用される。例えば配列「5’−A−G−T−3’」は配列「3’−T−C−A−5’」の「補体」である。本発明は、本出願に記載の配列の補体(例えば配列番号1−70の核酸配列の補体)も提供する。
【0080】
本出願で使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対合に関連して使用される。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち核酸間の結合の強さ)は、核酸間の相補性の度合い、条件の厳しさの度合い、形成されたハイブリッドのTm、および核酸内のG:C比などの要因の影響を受ける。
【0081】
本出願で使用される「厳密性」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行なわれる温度、イオン強度、有機溶媒のような他の化合物の存在などの条件に関連して使用される。上述のパラメーターを単独でまたは組み合わせて変えることにより条件の「厳密性」変化させる事ができることを、当技術分野に精通した技術者は理解している。「厳密性の高い」条件では、核酸塩基の対形成は、相補的な塩基配列の頻度が高い核酸断片の間でのみ生じる(例えば「厳密性の高い」)条件下のハイブリダイゼーションは、約85〜100%同一、望ましくは約70〜100%同一の相同体間で生じる)。厳密性が中度の条件下では、核酸塩基の対形成は、相補的な塩基配列の頻度が中位の核酸断片の間で生じる(例えば「厳密性が中度の」条件下のハイブリダイゼーションは、約50〜70%同一の相同体の間で生じる)。従って、厳密性が「弱い」または「低い」条件下では、相補的な塩基配列の頻度が低いため、通常遺伝的に多様性のある有機体から導かれる核酸が要求される。
【0082】
「厳密性の高い条件」という用語が核酸ハイブリダイゼーションとの関連で使用される場合、長さ約500のヌクレオチドのプローブを使用する時は、5XSSPE(NaOHでpHを7.4に調整した43.8g/lのNaCl、6.9g/lのNaH2PO4・H2Oおよび1.85g/lのEDTA)、0.5%SDS、5Xデンハーツ溶液(50Xデンハーツ溶液は500ml当たり5gのFicoll(タイプ400、ファーマシア(Pharmacia)、5gのBSA(画分V、シグマ(Sigma)を含む))、および100μg/mlの変性サケ精子DNAの溶液中、42℃で結合またはハイブリダイズし、その後0.1XSSPEおよび1.0%SDSの溶液中、42℃で洗浄する条件が含まれる。
【0083】
「中程度の厳密性の条件」という用語が核酸ハイブリダイゼーションとの関連で使用される場合、長さ約500のヌクレオチドのプローブを使用する時は、5XSSPE、0.5%SDS、5Xデンハーツ溶液、および100μg/mlの変性サケ精子DNAの溶液中、42℃で結合またはハイブリダイズし、その後1.0XSSPEおよび1.0%SDSの溶液中、42℃で洗浄する条件が含まれる。
【0084】
「厳密性の低い条件」という用語が核酸ハイブリダイゼーションとの関連で使用される場合、長さ約500のヌクレオチドのプローブを使用する時は、5XSSPE、0.1%SDS、5Xのデンハーツ溶液、および100g/mlの変性サケ精子DNAの溶液中、42℃で結合またはハイブリダイズし、その後5XSSPEおよび0.1%SDS溶液中、42℃で洗浄する条件が含まれる。
【0085】
「単離される」という用語が、「単離されたオリゴヌクレオチド」、「単離されたポリヌクレオチド」、「CD20結合分子をコード化する単離された核酸配列」(例えば表1−2を参照)など、核酸との関連で使用される場合、識別された、またそれが通常関係している(例えば宿主細胞の蛋白質)少なくとも一つの汚染物である核酸から分離された核酸配列を意味する。
【0086】
本出願で使用される「一部」という用語は、ヌクレオチド配列との関係で使用される場合(例えば「あるヌクレオチド配列の一部」)、その配列の断片を意味する。断片の大きさは10ヌクレオチドから全ヌクレオチド配列マイナス一つのヌクレオチドまで様々であってよい(例えば10、20、30、40、50、100、200ヌクレオチドなど)。
【0087】
本出願で使用される「一部」という用語は、アミノ酸配列との関係で使用される場合(例えば「あるアミノ酸配列の一部」)、その配列の断片を意味する。断片の大きさは六つのアミノ酸から全アミノ酸配列マイナス一つのアミノ酸まで様々であってよい(例えば6、10、20、30、40、75、200アミノ酸など)。
【0088】
本出願で使用される「精製される」または「精製する」という用語は、サンプルから汚染物を除去する事を意味する。例えばCD20特異的な抗体は、汚染物である非免疫グロブリン蛋白質を除去する事により精製される。これらはまたあるいは同じ抗原と結合しない免疫グロブリンを除去する事によっても精製される。非免疫グロブリン蛋白質および/または特定の抗原と結合しない免疫グロブリンを除去する事により、サンプル中の抗原特異的な免疫グロブリンの比率が高まる結果となる。別の例では、抗原特異的な組み換えポリペプチドが細菌の宿主細胞で発現し、また宿主細胞の蛋白質を除去する事によりそのポリペプチドが精製され、サンプル中の抗原特異的な組み換えポリペプチドの比率が高まる。
【0089】
本出願で使用される「ベクター」という用語は、DNA断片を一つの細胞から別の細胞へ移す核酸分子に関連して使用される。「ビヒクル」という用語が、「ベクター」と同じ意味で使用される場合もある。
【0090】
本出願で使用される「発現ベクター」という用語は、希望のコード配列および特別の宿主生物内の機能的に連結したコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含む、組み換えDNA分子を意味する。原核生物における発現に必要な核酸配列には、プロモーター、オペレーター(任意)およびリボソーム結合部位が、他の配列とともに含まれる。真核細胞はプロモーター、エンハンサー、終止シグナル、そしてポリアデニレーション・シグナルを使用することが知られている。
【0091】
本出願で使用される「宿主細胞」という用語は、生体内または生体外のあらゆる原核細胞または真核細胞をさす(例えば大腸菌(E.coli)などの細菌、酵母、PER.C6(登録商標)(クルセル社(Crucell)、オランダ)やCHO細胞などの哺乳類の細胞、鳥の細胞、両生類の細胞、植物細胞、魚の細胞および昆虫の細胞)。例えば、宿主細胞は遺伝子導入動物中に存在することもある。
【0092】
本出願で使用される「コンピュータ・メモリ」および「コンピュータ・メモリ装置」という用語は、コンピュータ・プロセッサで読取り可能なあらゆる記憶媒体を意味する。コンピュータメモリには、これだけに限定されるものではないが、例えばRAM、ROM、コンピュータ・チップ、デジタル・ビデオ・ディスク(DVD)、コンパクト・ディスク(CD)、ハードディスク・ドライブ(HDD)、磁気テープなどが含まれる。
【0093】
本出願で使用される「コンピュータ読取り可能媒体」という用語は、コンピュータ・プロセッサに情報(例えばデータや指示)を保存および提供するあらゆる装置またはシステムを意味する。コンピュータ読取り可能媒体の例には、これだけに限定されるものではないが、例えばDVD、CD、ハードディスク・ドライブ、磁気テープ、ネットワークのストリーム媒体用サーバーなどが含まれる。
【0094】
本出願で使用される、核酸またはアミノ酸配列の「発現をコード化するコンピュータ読取り可能媒体」という用語は、プロセッサに配信されたときに、核酸またはアミノ酸配列をユーザーに表示(例えばプリントアウトや画面表示)することを可能にする情報を記憶している、コンピュータ読取り可能媒体を意味する。
【0095】
本出願で使用される「プロセッサ」および「中央処理装置」あるいは「CPU」という用語は同じ意味で使用され、コンピュータ・メモリ(例えばROMまたは他のメモリ)からプログラムを読取り、そのメモリに従って一連のステップを行なう事のできる装置を意味する。
【0096】
本出願で使用される「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する(例えば表1を参照)。「Fc領域」は天然配列のFc領域であってもよいし、変異体のFc領域(例えば作動体の機能が減少または増大したもの)であってもよい。
【0097】
本出願で使用されるように、Fc領域は(例えば被験者の)生物活性の活発化あるいは減退の原因である「作動体の機能」を有していてもよい。作動体の機能には、これだけに限定されるものではないが、例えばC1q結合、補体依存性細胞障害作用(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)、食細胞活動、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体(BCR))のダウンレギュレーションなどが含まれる。このような作動体の機能は、Fc領域が結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と結合することを必要とし、また種々の分析(例えばFc結合分析、ADCC分析、CDC分析など)を使って評価される。
【0098】
本出願で使用される「単離された」ペプチド、ポリペプチド、または蛋白質とは、識別され、自然環境の成分から分離および(または)回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、当該ポリペプチドの診断または治療のための使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、他の蛋白様または非蛋白様溶質が含まれる。ある実施形態では、単離されたポリペプチドは、(1)ロウリー(Lawry)法で測定してポリペプチドの重量比で95%以上、好ましくは重量比で99%以上になるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)を使ってN−末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、あるいは(3)クマシー・ブルーまたは銀染色を使い還元または非還元条件下でSDS−pageにより均一になるまで、のレベルまで精製される。そのポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離されたポリペプチドには、組み換え細胞内の本来の位置のポリペプチドが含まれる。しかし、単離されたポリペプチドは通常、少なくとも一つの精製ステップを経て生成される。
【0099】
本出願で使用される「治療」という用語は、治療を目的とした処置および予防的治療の両方を意味する。治療を必要とする人には、既に疾病に罹っている人およびその疾病の予防を希望する人が含まれる。
【0100】
「症状が軽減する条件の下に」という用語は、CD20結合分子で治療可能なあらゆる疾病の検出可能な症状の、あらゆる程度の質的あるいは量的な軽減を意味し、これには、決してこれだけに限定されるものではないが、疾病の回復速度に対する検出可能な影響(例えば体重の増加率)、あるいは特定の疾病に通常関連する症状の少なくとも一つの軽減が含まれる。
【0101】
本出願で使用される「ヒトのCD20」(本出願ではhCD20と略)という用語は、ヒトのBリンパ球制限分化抗原(Bp35とも呼ばれる)を意味する。CD20はB前駆体細胞成長の初期に発現し、血漿の細胞分化まで残る。CD20分子は、細胞サイクルの開始および分化に必要なB細胞活性化プロセスの一段階を規制することもあり、新生物形成B細胞において通常極めて高レベルで発現する。CD20は「正常な」B細胞にも「悪性の」B細胞(すなわち無制限の増幅がB細胞リンパ腫の原因となるB細胞)にも存在する。
【0102】
「親和性」、「結合親和性」および「Kd」という用語は、CD20結合分子・CD20蛋白の複合体に関連した解離平衡定数(濃度の単位で表現される)を意味する。結合親和性は、オフレート定数(一般に時間の逆数、例えば秒−1の単位で報告される)とオンレート(一般に時間単位当たりの濃度の単位、例えばモル/秒で報告される)の比に直接関係している。結合親和性は、例えばELISA分析、動的排除分析(kinetic exclusion assay)、表面プラズモン共鳴などにより決定される。あるエピトープは細胞表面で繰り返し(多価性)生じる場合があり、抗体と反復エピトープとの結合の解離定数(koff)は、一価のリガンドと同抗体の反応の解離定数と比べて大幅に縮小する場合があることが知られている。一つの抗体・リガンド結合が解離すると、他の結合が二価(または多価)の抗体を多価のリガンドに繋ぎ止め、解離した結合が再び形成されるため、解離定数の縮小が起きる。二価(または多価)のAbと多価のリガンドとの反応の解離定数は、抗体の代表的な部位の会合定数である内因性の親和性と区別するために、機能的親和性と呼ばれる。
【0103】
本出願で使用される「解離」、「解離速度」および「koff」という用語は、抗原・抗体複合体からCD20結合分子が解離するオフレート定数を意味する。
【0104】
本出願で使用される「会合」、「会合速度」および「kon」という用語は、CD20結合分子が抗原と会合し抗原抗体複合体を作るオンレート定数を意味する。
【0105】
本出願で使用される「有効濃度」および「EC50」という用語は、十分な量のCD20分子と相互作して、処理された細胞の約50%に影響を及ぼす事のできるCD20結合分子の濃度を意味する。
【0106】
発明の説明
本発明は、CD20結合分子およびCD20結合分子をコード化する核酸配列を提供する。特に本発明は、ヒトのCD20に関して高い結合親和力と低い解離速度を有するCD20結合分子を提供する。本発明のCD20結合分子は、完全にヒト型のフレームワーク(例えばヒトの生殖細胞系フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでいるのが望ましい。発明の説明は、便宜上、I.CD20結合分子、II.CD20結合分子の作成、III.治療用の調剤および使用、およびIV.それ以外のCD20結合分子の使用、に分類される。
【0107】
I.CD20結合分子
本発明は望ましい性質をもったCD20結合分子を提供する。特にある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し高い結合親和性(Kd)を有している。ある実施形態では、CD20結合分子はヒトのCD20に対し低い解離速度(koff)を有している。好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は、高い親和性と低い解離速度を有し、低濃度で有効である。従って、当発明を実践または理解する必要なくして、高親和性と低解離速度を有する本発明のCD20結合分子が特にヒトの治療用に優れており、リツキサン(C2B8)のような他の抗CD20分子と比べてHACA反応を引き起こす可能性が小さい事が理解される。
【0108】
さらに別の実施形態では、本発明のCD20結合分子はヒトのCD20に結合する。別の実施形態では、本発明のCD20結合分子はカニクイザル(Cynomolgus macaques)のB細胞表面のCD20と結合する。
【0109】
好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでおり、完全にヒト型のフレームワークを有していることが望ましい。特に好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は軽鎖および/または重鎖可変領域を含んでおり、ヒトの生殖細胞系フレームワークを有していることが望ましい。従って、本発明を実践または詳細に理解する必要なくして、フレームワーク領域が完全にヒトであるならば、ヒトに投与(例えば疾病の治療)した場合、本発明のCD20結合分子(例えば後述の実施例を参照)は免疫原性反応を殆どあるいは全く引き起こさないと考えられる。
【0110】
以下の表1および2に示されているように、本発明はCD20結合分子を作成するのに有効な数多くのCDRを提供する。例えば、CD20結合ペプチドまたはCD20結合ペプチドをコード化する核酸配列を作成するため、表示されている一つまたはそれ以上のCDRをフレームワークの準領域(例えば完全にヒトのFR1、FR2、FR3またはFR4)と組み合わせることができる。あるいは、以下の表に示されているCDRを、例えば、三つのCDRが軽鎖可変領域に存在するように、および/または三つのCDRが重鎖可変領域に存在するように組み合わせてもよい。
【0111】
CD20結合分子またはCD20結合分子をコード化する核酸配列を作成するため、以下に示されているCDRを(例えば組み換え技術を使って)ヒト型のフレームワーク、つまり図4−5および8−9に示されているような軽鎖および重鎖フレームワークに挿入してもよい。例えば、図4A(または8A)に示されているCDRL1を、表1に示されるように配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21で置き換えることができる。同様に、図4B(または8B)に示されているCDRL1を、表1に示されているように配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22で置き換えることができる。同じ方法が表1−2に示されている全てのCDRに関して使用できる。以下に表1および2を示す。
表1 軽鎖CDR
【表1】
* 残基の番号付けにはカバット(Kabat)の方法を採用した。CDRはカバット(Kabat)およびコチア(Chothia)の残基を含む。
表2 重鎖CDR
【表2】
* 残基の番号付けにはカバット(Kabat)の方法を採用した。CDRはカバット(Kabat)およびコチア(Chothia)の残基を含む。
【0112】
本発明は、上の表に示されているCDR配列(アミノ酸および核酸)と実質的に同じ配列も提供する。例えば、表に示されている配列の中の一つまたは二つのアミノ酸を置き換えてもよい。さらに例えば、表に示されている配列において多数のヌクレオチド塩基を置き換えることもできる。アミノ酸配列の変更は、そのアミノ酸配列をコード化している核酸配列を変えることによって行われてもよい。所定のCDRの変異体をコード化する核酸配列は、特定の配列に関する本明細のガイダンスを使い、当業者に知られている方法でも生成される。これらの方法には、これだけに限定されるものではないが、部位特異的(またはオリゴヌクレオチド媒介)変異誘発、PCR変異誘発、CDRをコード化する以前に生成した核酸のカセット変異誘発などによる生成が含まれる。置換変異体を生成する方法としては、部位特異的変異誘発が望ましい。この方法は当技術分野ではよく知られている(例えばカーター(Carter)ら、Nucleic Acids Res.13、4431−4443(1985)、クンケル(Kunkel)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、488−492(1985)を参照。両方とも参照として本出願に組み込まれている)。
【0113】
簡単に説明すると、DNAの部位特異的変異誘発を行う際、目的の変異をコード化しているオリゴヌクレオチドを出発DNAの一本鎖とまずハイブリダイズする事により、当該出発DNAが変質される。ハイブリダイゼーションの後、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドをプライマーとして、また出発DNAの一本鎖をテンプレートとして用いて、DNAポリメラーゼによって二本目の鎖全体が合成される。このようにして、目的の変異をコード化するオリゴヌクレオチドが結果として得られる二本鎖のDNAに取り込まれる。
【0114】
出発CDRのアミノ酸配列変異体を作成するには、PCR変異誘発も適している(例えばバレット(Vallette)ら、Nucleic Acids Res.17、723−733(1989)、参照として本出願に組み込まれている)。簡単に説明すると、PCRにおいて僅かな量のテンプレートDNAを出発物質として使用する場合、テンプレートDNA内の対応する領域とわずかに配列が異なるプライマーを使用して、プライマーとテンプレートが相違している位置だけテンプレート配列と異なるDNA断片を比較的大量に作成できる。
【0115】
変異体を生成する別の方法であるカセット式変異誘発は、ウェルス(Wells)ら、遺伝子(Gene)34、315−323(1985)(参照として本出願に組み込まれている)に記載の技術に基づいている。出発物質は、変異される出発CDR DNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。変異される出発DNAのコドンが同定される。同定された変異部位の両側に、独特の制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しなくてはならない。そのような制限部位が存在しない場合には、上述のオリゴヌクレオチド媒介変異誘発方法を使って、出発ポリペプチドDNAの適切な場所に制限部位を導入してもよい。プラスミドDNAは、線形化するため当該の部位で切断される。制限部位間のDNA配列をコード化し、また目的の突然変異を含んでいる二本鎖オリゴヌクレオチドが標準の方法を使って合成される。この場合、オリゴヌクレオチドの二本鎖は別々に合成され、標準技術を使ってハイブリダイズされる。この二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと呼ばれる。このカセットは、プラスミドと直接連結できるよう、線形化されたプラスミドの両端と適合する5’および3’末端を持つようにデザインされる。このようにして、突然変異DNA配列を含むプラスミドが作成される。
【0116】
代替的にまたは追加的に、ポリペプチド変異体をコード化する目的アミノ酸配列を決定し、そのようなアミノ酸配列の変異体をコード化する核酸配列を合成してもよい。CDRのアミノ酸配列に保存的な修飾を施してもよい。天然の残基は側鎖の特性を基にいくつかのクラスに分類される。
(1) 疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile
(2) 中性親水性:cys、ser、thr
(3) 酸性:asp、glu
(4) 塩基性:asn、gln、his、lys、arg
(5) 鎖の方向付けに影響を与える残基:gly、pro
(6) 芳香族:trp、tyr、phe
同類置換は、あるクラスのメンバーを同じクラスの別のメンバーで置き換える。本発明は、表1および2に示されている核酸配列の補体、および減密度が低い、中程度、また高い条件下でこのような核酸配列とハイブリダイズする核酸配列も提供する。
【0117】
本発明のCDRは、どのタイプのフレームワークと共に使用してもよい。CDRは完全にヒト型のフレームワーク、またはフレームワークの準領域と一緒に使用するのが望ましい。特に好適な実施形態では、フレームワークはヒトの生殖細胞系配列である。完全にヒト型のフレームワークの例は、図4−5および8−9に示してある。その他の完全にヒト型のフレームワークまたはフレームワークの準領域を使用してもよい。例えばNCBIウェブサイトには、現在知られているフレームワーク領域の配列が含まれている。ヒトのVH配列は、これだけに限定されるものではないが、例えばVH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−53、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1、VH7−81などであり、これらは参照として本出願に編入されているマツダ(Matsuda)ら、J.Exp.Med.188、1973−1975(1998)に記載されており、ヒトの免疫グロブリン鎖可変領域座の完全なヌクレオチド配列を含んでいる。ヒトのVK配列は、これだけに限定されるものではないが、例えばAl、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、O8などであり、これらは参照として本出願に組み込まれているカワサキ(Kawasaki)ら、Eur.J.Immunol.31、1017−1028(2001)、シェーブル(Schable)およびツァッハウ(Zachau)、Biol.Chem.Hoppe Seyler374、1001−1022(1993)、およびブレンシン−クッパース(Brensing−Kuppers)ら、遺伝子(Gene)191、173−181(1997)に記載されている。ヒトのVL配列は、これだけに限定されるものではないが、例えばV1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4、V5−6などであり、これらは参照として本出願に編入されているカワサキ(Kawasaki)ら、Genome Res.7、250−261(1997)に記載されている。完全にヒト型のフレームワークは、これらの機能的生殖細胞系遺伝子から選択される。通常これらのフレームワークは制限された数のアミノ酸の変更により互いに異なっている。これらのフレームワークを本出願に記載のCDRと共に使用してもよい。本発明のCDRと共に使用されるヒト型のフレームワークの追加的な例には、これだけに限定されるわけではないが、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、POMなどがある(例えば、両方とも参照として本出願に編入されている、カバット(Kabat)ら、(1991)免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH、USA、およびウー(Wu)ら、J.Exp.Med.、132、211−250(1970)参照)。
【0118】
再び本発明を実践または理解する必要なくして、生殖細胞系の配列の使用がほとんどの個人において有害な免疫反応を排除すると期待されている理由は、以下の通りであると考えられている。通常の免疫反応中に生じる親和性成熟ステップの結果、免疫グロブリンの可変領域に体細胞の突然変異が頻繁に生じる。これらの突然変異は主に超可変的なCDRの周りに生じるが、フレームワーク領域の残基にも影響を及ぼす。これらのフレームワークの突然変異は生殖細胞系の遺伝子には存在せず、また患者の免疫原性になる可能性は少ない。一方、一般集団は生殖細胞系の遺伝子によって発現されるフレームワーク配列の大多数に晒されており、免疫寛容の結果、これらの生殖細胞系のフレームワークは患者において免疫原性が低いあるいは被免疫原性であると予想される。免疫寛容の可能性を最大にするため、可変領域をコード化する遺伝子を普通に存在する機能的生殖細胞系遺伝子の集合から選択することができ、またさらにVHおよびVL領域をコード化する遺伝子を免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖間の既知の関連性と一致させるために選択することもできる。
【0119】
II.CD20結合分子の作成
好適な実施形態では、本発明のCD20結合分子は抗体または抗体断片(例えば本出願に記載の一つまたはそれ以上のCDR)を含む。本発明の抗体または抗体断片は、例えば、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖遺伝子を宿主細胞内で組み換え・発現させる事により生成できる。抗体を組み換え・発現させるため、例えば、軽鎖および重鎖が宿主細胞の中で表現され、また望ましくは宿主細胞が培養され、そこから抗体が回収されるような培地中に分泌されるように抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコード化するDNA断片を含んだ、一つ以上の組み換え発現ベクターが宿主細胞に導入されることがある。標準の組み換えDNA技術を使用して、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子が得られ、これらの遺伝子を組み換え・発現ベクターに挿入し、そのベクターを宿主細胞に導入することもできる。このような方法は、いずれも参照として本出願に編入されている、サムブルック(Sambrook)、フリッチュ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)編、分子クローニング(Molecular Cloning)、実験室手引書(A Laboratory Manual)、第2版、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,N.Y.)、(1989)、オースベル(Ausubel、F.M.)ら編、分子生物学の現在の実験記録(Current Protocols in Molecular Biology)、グリーン・パブリッシング・アソシエーツ(Greene Publishing Associates)(1989)、およびボス(Boss)らによる米国特許番号4,816,397などに記載されている。
【0120】
本発明の一つまたはそれ以上のCDRを有する抗体を発現させるには、軽鎖および重鎖可変領域をコード化するDNA断片をまず入手する。このようなDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使って、生殖細胞系の軽鎖および重鎖可変配列を増幅および修飾する事により入手できる。ヒト型の重鎖および軽鎖可変領域の遺伝子に関する生殖細胞系DNA配列は、当技術分野で良く知られている(上述参照)。
【0121】
生殖細胞系のVHおよびVL断片を入手したら、本出願開示のCDRアミノ酸配列の一つまたはそれ以上をコード化するように配列を変異させることができる(例えば表1−2を参照)。生殖細胞系VHおよびVL DNA配列でコード化されたアミノ酸配列が、生殖細胞系の配列とは異なるアミノ酸残基を識別するためのCDR配列と比較される。次に、どのヌクレオチドを変異させるかを決定する遺伝子コードを使用し、変異した生殖細胞系配列が選択されたCDR(例えば表1−2から選択された六つのCDR)をコード化するように、生殖細胞系DNA配列の適切なヌクレオチドが変異される。生殖細胞系配列の変異誘発は、(PCR産物が突然変異体を含むように、変異したヌクレオチドがPCRプライマーに導入されるような)PCR−媒介変異誘発や、部位特異的変異誘発などの標準の方法を使って行なわれてもよい。別の実施形態では、可変領域は新たに合成される(例えば核酸合成機を使用)。
【0122】
目的のVHおよびVL部分をコード化するDNA断片が(例えば上述したように生殖細胞系VHおよびVL遺伝子の増幅および変異誘発または合成などを使用)入手できたら、例えば、可変領域の遺伝子を抗体の全長鎖遺伝子、Fab断片遺伝子、あるいはscFv遺伝子などに変換するなど、このようなDNA断片を標準の組み換えDNA技術を使ってさらに操作することができる。のような操作では、VLまたはVHをコード化しているDNA断片は、抗体の定常領域やフレキシブルリンカーなどの他のポリペプチドをコード化するDNA断片と操作可能な状態で連結される。VH領域をコード化している単離されたDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3、図10−11を参照)をコード化している別のDNA分子に操作可能な状態で連結させる事により、全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト型の重鎖定常領域の遺伝子の配列は当技術分野で良く知られており(例えばカバット(Kabat)、E.A.ら、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH出版物No.91−3242)(1991)、またこのような領域を含むDNA断片は標準のPCR増幅により入手できる。重鎖定常領域は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であるが、最も好ましいのはIgG1またはIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子に関しては、VHをコード化するDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコード化する別のDNA分子と操作可能な状態で連結される。好適な実施形態では、重鎖定常領域は図11に示される定常領域に類似しているかまたはそれと同一である。
【0123】
VL領域をコード化している単離されたDNAは、軽鎖定常領域CLをコード化している別のDNA分子と操作可能な状態で連結する事により、全長の軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変更することができる。ヒト型の軽鎖定常領域の遺伝子の配列は当技術分野で良く知られており(例えばカバット(Kabat)、E.A.ら、免疫学的関心の蛋白質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、米国保健福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH出版物No.91−3242(1991))、またこのような領域を含むDNA断片は、標準のPCR増幅により入手できる。軽鎖定常領域は、例えばκまたはλ定常領域であるが、より好ましいのはκ定常領域である。好適な実施形態では、軽鎖定常領域は図10に示される定常領域に類似しているかまたはそれと同一である。
【0124】
scFv遺伝子を作成するには、VHおよびVL配列が隣接する一本鎖蛋白質として発現し、VLおよびVHがそのフレキシブルリンカーで連結される様な状態で(例えば、全て参照として本出願に編入されている、ハストン(Huston)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、5879−5883(1988)、およびマッカファティ(McCafferty)ら、ネーチャー(Nature)、348、552−554(1990)参照)、VHおよびVLをコード化するDNA断片が、フレキシブルリンカーをコード化(例えばアミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコード化)する別の断片に操作可能な状態で連結される。
【0125】
抗体または抗体の断片を発現させるには、その遺伝子が転写および翻訳調節配列に操作可能な状態で連結されるように、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコード化する(例えば上述の方法で得られる)DNAが発現ベクターに挿入される。ここで「操作可能な状態で連結」という用語は、ベクター内の転写および翻訳調節配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節できるように、つまりその本来の機能を発揮できるようなやり方で、抗体遺伝子をベクターに連結する事を意味する。発現ベクターおよび発現調節配列は、通常使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子を別々のベクターに挿入することができるが、より一般的には両方とも同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は標準的な方法を使って発現ベクターに挿入してもよい(例えば抗体遺伝子断片への相補的制限部位の連結、あるいは制限部位がない場合は平滑末端連結)。軽鎖または重鎖配列を挿入する以前に、発現ベクターは既に抗体定常領域を含んでいる場合がある。例えば、VHおよびVL配列を全長の抗体遺伝子に変える一つの方法は、H部分がベクター内でCH部分と操作可能な状態で連結し、VL部分がベクター内でCL部分と操作可能な状態で連結するように、重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にコード化している発現ベクターにそれぞれを挿入する事である。代替的または追加的に、組み換え発現ベクターが、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナル・ペプチドをコード化することもできる。シグナル・ペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にフレーム単位で連結するように、抗体鎖の遺伝子をベクターにクローン化することができる。当該シグナル・ペプチドは免疫グロブリン・シグナル・ペプチドであってもよいし、異種のシグナル・ペプチド(すなわち非免疫グロブリン蛋白由来のシグナル・ペプチド)であってもよい。
【0126】
抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組み換え・発現ベクターは、宿主細胞内で抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を含んでいてもよい。この「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を調節するその他の発現調節要素(例えばポリアデニレーション・シグナル)を含むことを意図している。このような調節配列は、例えば、参照として本出願に編入されているゲッデル(Goeddel)、遺伝子発現技術(Gene Expression Technology):酵素学の方法(Methods in Enzymology)、185(1990)、アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,Calif.)に記載されている。調節配列の選択を含んだ発現ベクターのデザインが、形質転換される宿主細胞、目的の蛋白質の発現レベルなどの要因に依存している事が、当技術分野に精通した技術者により評価される。哺乳類の宿主細胞発現にとって好ましい調節配列には、哺乳類の細胞で蛋白質の発現を高レベルで方向付けするウィルス要素、例えばサイトメガロウィルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウィルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオマウィルスなどのプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。ウィルスの調節要素およびその配列に関する詳細は、全て参照として本出願に編入されているスティンスキ(Stinski)による米国特許番号5,168,062、クーセンス(Cousens)などによる米国特許番号4,510,245およびコジンスキー(Koszinowski)による米国特許番号4,968,615を参照のこと。
【0127】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加え、本発明の組み換え・発現ベクターは、宿主細胞(例えば複製源)でベクターの複製を調節する配列や選択可能マーカー遺伝子などの配列を含んでいてもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターを導入する宿主細胞の選択を容易にする(例えばアクセル(Axel)らによる米国特許番号4,399,216、4,634.665および5,179,017を参照)。例えば、選択可能なマーカー遺伝子は、典型的に、ベクターが導入された宿主細胞上で、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキセートなどの医薬品への抵抗力を付与する。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択・増幅と共にdhfr宿主細胞で使用)およびネオマイシン遺伝子(G418選択)を含んでいる。
【0128】
軽鎖および重鎖の発現に関しては、重鎖および軽鎖をコード化する発現ベクターを標準技術を使って宿主細胞に形質移入してもよい。「形質移入」という用語の様々な形態は、原核生物や真核生物の宿主細胞に外因性のDNAを導入するのに一般に使用される多種多様な技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE−デキストラン形質移入などを含むことを意図している。
【0129】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子を発現させるのに使用される発現ベクターは、レトロウィルス・ベクターなどのウィルス・ベクターである。このようなウィルス・ベクターを、安定して形質導入された細胞株の生成に利用してもよい(例えばCD20結合分子の継続提供源)。ある実施形態では、CD20結合分子(およびCD20結合分子を発現する安定した細胞株)を生成するために、GPEX遺伝子生成物発現技術(ガラ・デザイン・インク(Gala Design,Inc.)、ウィスコンシン州ミドルトン(Middleton、WI))を利用する。特定の実施形態では、ブレック(Bleck)による、WO0202783およびWO0202738(いずれも参照として全て本出願に編入されている)に記載の発現技術が利用される。
【0130】
本発明の組み換え抗体を発現させる哺乳類の好ましい宿主細胞には、例えばPER.C6(登録商標)細胞(クルセル社(Crucell)、オランダ)、チャイニーズハムスターの子宮(CHO細胞)(ウアラウプ(Urlaub)およびチェイシン(Chasin)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77、4216−4220(1980)に記載され、例えばR.J.カウフマン(Kaufman)およびP.A.シャープ(Sharp)、Mol.Biol.、159、601−621(1982)に記載のごとくDHFR選択可能マーカーと共に使用されるdhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞などが含まれる。他の好適な実施形態では、両方とも参照として本出願に編入されているWO9954342および米国特許出願公告20030003097に記載されているように、発現したCD20結合分子がADCC活性を向上させるような形で、宿主細胞がGnT IIIを発現する。抗体の遺伝子をコード化している組み換え・発現ベクターを哺乳類の宿主細胞に導入する場合、抗体は通常、宿主細胞内で抗体の発現に必要な期間宿主細胞を培養することにより、あるいはさらに好ましくは、宿主細胞を培養する培地に抗体を分泌させるにより生成される。抗体は、標準的な蛋白質精製方法を使って培地から回収される。
【0131】
また、Fab断片やscFv分子など無傷の抗体の一部を生産するために宿主細胞を利用することもできる。上述の方法の変形体も本発明の範囲内にあることが理解されている。例えば、本発明の抗体の軽鎖または重鎖のいずれかをコード化するDNAを宿主細胞に形質移入することが望ましい。また、hCD20との結合に必要でない軽鎖および/または重鎖をコード化するDNAの一部または全部を除去するために、組み換えDNA技術を使ってもよい。このような切断DNA分子から発現した分子もまた本発明の抗体に含まれる。さらに、一つの重鎖と一つの軽鎖が本発明の抗体であり、もう一つの重鎖および軽鎖がhCD20以外の抗原に特異的であるような二機能抗体を生産してもよい(例えば標準的な化学架橋結合技術を使って、本発明の抗体を第2の抗体に架橋結合させる)。
【0132】
抗体またはその断片の組み換え・発現にとって好ましいシステムの一つにおいて、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコード化する組み換え・発現べクターが、リン酸カルシウム媒介の形質移入により、dhfr−CHO細胞に導入される。組み換え・発現べクター内で、抗体重鎖および軽鎖の遺伝子はそれぞれエンハンサー・プロモーター調節要素(例えばCMVエンハンサー・AdMLPプロモーター調節要素やSV40エンハンサー・AdMLPプロモーター調節要素などの、SV40、CMV、アデノウィルスから派生し多要素)と操作可能な状態で連結し、遺伝子の転写レベルを高めている。組み換え・発現べクターはまたHFR遺伝子を含むこともあり、この遺伝子は、メトトレキセートの選択・増幅を利用して、ベクターが形質移入されたCHO細胞の選択を可能にする。選択された形質転換宿主細胞は、抗体重鎖および軽鎖の発現のために培養され、当該培地から無傷の抗体が回収される。組み換え・発現べクターの生成、宿主細胞への形質移入、形質転換体の選択、宿主細胞の培養および培地からの抗体の回収のため、分子生物学の標準技術が使用される。
【0133】
ある実施形態では、本発明の抗体および抗体の断片が遺伝子導入動物中で生成される。例えば、遺伝子導入羊や雌牛を使って、そのミルクの中に抗体または抗体の断片を生成することもできる(例えば、参照として本出願に編入されているポラック(Pollock)DPら、組み換え抗体生産の一方法である遺伝子導入ミルク、J.Immunol.Methods、231、147−157(1999)参照)。本発明の抗体または抗体の断片を植物中で生成してもよい(例えば参照として本出願に編入されているラリック(Larrick)ら、植物を使ったIgA分泌抗体の生産、Biomol.Eng.、18、87−94(2001)参照)。これ以外の方法や精製プロトコルは、参照として本出願に編入されているハンフリーズ(Humphreys)ら、治療用抗体生産技術:分子応用、発現および精製、Curr.Opin.Drug Discov.Devel.、4、172−185(2001)に記載されている。ある実施形態では、本発明の抗体または抗体の断片は遺伝子導入されたニワトリにより生成される(例えば、両方とも本出願に組み込まれている米国特許出願公告20020108132および20020028488を参照)。
【0134】
III.治療用調剤および使用
本発明のCD20結合分子(例えば抗体および抗体の断片)は疾病に罹った被験者を治療するのに有効である。CD20結合分子はまた診断にも使用される(例えば標識付きCD20結合分子を組織の画像化に使用)。好適な実施形態では、CD20結合分子はB細胞の増殖が無限に継続することを特徴とするB細胞リンパ腫の患者に投与される。
【0135】
ある実施形態では、診断および治療目的で、CD20結合分子が種々の放射標識物質と結合される。放射標識物質は腫瘍および他の組織の「画像化」を可能にし、腫瘍の放射線治療に役立つ。典型的放射標識物質には、これだけに限定されるものではないが、例えば131I、125I、123I、99Tc、67Ga、111In、188Re、186Reなどがあり、好ましくは90Yである。
【0136】
ある実施形態で治療された疾病は非ホジキンスリンパ腫(NHL)である。ある実施形態では疾病は、再発ホジキンス病、悪性度の高い抵抗性ホジキンス病、低悪性度および中悪性度の非ホジキンスリンパ腫(NHL)、B細胞慢性リンパ球白血病(B−CLL)、リンパ形質細胞性悪性リンパ腫(LPL)、被膜細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、瀰漫性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、エイズ関連リンパ腫、単球性B細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ節症、小リンパ球型、濾胞性瀰漫性大細胞型、彌慢性小開裂細胞型、大細胞免疫芽球性リンパ腫、小非開裂型、バーキットおよび非バーキット型、濾胞性大細胞型、濾胞性小開裂細胞型、濾胞性小開裂・大細胞混合型リンパ腫、および全身性エリテマトーデス(SLE)から選択される。特定の実施形態では、治療される疾病はヴァルデンストローム・マクログロブリン血症(WM)または慢性リンパ球白血病(CLL)である。
【0137】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子はCD20+細胞の枯渇が治療面で有益である場合に、例えば、ヴァルデンストローム・マクログロブリン血症、多発性骨髄腫、プラズマ細胞悪液質、慢性リンパ球白血病、移植組織の処置、ヘアリー・セル白血病、ITP、幹細胞移植後のエプスタイン・バー・ウィルス・リンパ腫、腎臓移植などの疾病の治療に使用される。本出願に編入されている米国特許出願公告20020128448を参照のこと。別の実施形態では、本発明のCD20結合分子は、B細胞リンパ腫、白血病、骨髄腫、自己免疫疾患、移植、移植片対宿主病、B細胞に関係する感染症およびリンパ球増殖病から成るグループから選択された疾病の治療、およびB細胞活性および/または体液性免疫の抑制が望まれる疾病や症状の治療に使用される。ある実施形態では、本発明のCD20結合分子は、B細胞リンパ腫、白血病、骨髄腫、移植、移植片対宿主病、自己免疫疾患、リンパ球増殖症状から成るグループから選択された疾病の治療、あるいは体液性免疫、B細胞機能および/または増殖の阻害が治療面で有益である疾病や症状の治療に使用される。さらに別の実施形態では、本発明のCD20結合分子は、B−ALL、ヘアリー・セル白血病、多発性骨髄腫、リクター症候群、獲得第VIII因子阻害遺伝子、抗リン脂質症候群、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少症、水疱性類天疱瘡、寒冷赤血球凝集素病、エバンス症候群、グッドパスチャー症候群、特発性膜性腎症、特発性血小板減少紫斑病、IgM関連多発性神経障害、カポージ肉腫関連ヘルペスウィルス(KSHV)関連多中心型キャッスルマン病(MCD)、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、赤芽球癆、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性免疫複合体脈管炎、全身性エリテマトーデス、II型混合寒冷グロブリン症、ウェジナー肉芽腫、同種異系移植片拒絶および移植後リンパ球増殖病の治療、または骨髄移植のための幹細胞の浄化のために使用される。
【0138】
好適な実施形態では、治療される被験者は免疫不全ではない(例えばSLE患者)。いかなるメカニズムにも制限されることなく、本発明のCD20結合分子は、これまで知られている抗CD20抗体と比べ、特に非免疫抑制患者において、HACA反応を引き出す可能性が少ないと考えられている。従って、有害なHACA反応の心配をしないで非免疫抑制患者を治療することができる。また、本発明のCD20結合分子の結合能力は改善されているため、患者に低用量を投与してもよいし(HACA反応の危険性をさらに回避)、あるいは生死に関わるHACA反応の危険性なしに高用量を投与することもできる。別の好適な実施形態では、被験者は慢性関節リウマチまたはその他の自己免疫疾患に罹っている(例えば、本出願に編入されたエドワーズ(Edwards)ら、リウマチ病学(Rheumatology)(オックスフォード)2001年2月;40(2):205−11を参照)。
【0139】
本発明のCD20結合分子を、他の治療用の物質と共に投与してもよい。例えば、CD20結合分子を化学療法プログラムの一環として投与してもよい(例えばCHOP)。またCD20結合分子を、サイトカイン、G−CSFまたはIL−2と共に投与してもよい(本出願に編入されている米国特許6,455,043を参照)。
【0140】
本発明のCD20結合分子は、例えば非経口、経口、皮下、局所、腹腔内、肺内、鼻腔内、病変内投与(例えば局部免疫抑制治療)などを含む、いかなる方法で投与してもよい。非経口注入には、これだけに限定されるものではないが、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下投与などが含まれる。さらに、CD20結合分子は、特に低用量で、パルス注入によって投与してもよい。投与が短期的なものであるか長期的なものであるかにある程度基づき、投与は注射により、あるいは最も好ましくは静脈内または皮下注射によって行なわれる。
【0141】
投与計画は、最も望ましい反応(例えば治療面または予防面の反応)が得られるように調整される。例えば、ボーラスを単回投与しても、時間をかけ数回に分けて投与してもよいし、あるいは治療状態の必要にあわせて投与量を増やしたり減らしたりしてもよい。非経口組成物を用量単位形式で調剤すると、投与も容易となり、用量の均一性も保たれて有利である。本発明のCD20結合分子の用量は通常、(a)活性成分の独自の性質および目的としている治療的または予防的効果、および(b)個人の感受性の治療のためにこのような活性成分を合成する技術に固有の限界によって決定される。
【0142】
抗体または抗体の断片(または本発明の他のCD20結合分子)の治療的または予防的有効量の、典型的で被限定的な範囲は、0.1〜20mg/kg、さらに好ましくは1〜10mg/kgである。ある実施形態では、当該用量は50〜600mg/m2(例えば375mg/m2)である。緩和される症状のタイプおよび重篤度により投与量が変化することに注意しなくてはならない。またさらに、どのような被験者についてもその人のニーズ、そして組成物を投与したり投与を監督する人の専門家としての判断に従って、時が経つと共に用量を調整すべきであること、また本出願に説明されている用量の範囲は単に例示であり、本発明を制限するものではない点にも注意しなくてはならない。
【0143】
投与量は勿論、特定の薬の薬物動態学的な特徴、投与方法および経路、被投与者の年齢、健康状態、そして体重、症状の性質および重篤度、併用療法の種類、治療の頻度、目的とする効果などの既知の要因により変化する。例えば、活性成分の1日の投与量は体重1kg当たり約0.01mgから100mgである。通常、1日に体重1kg当たり1.0mgから5mg、好ましくは1mgから10mgを1から6回に分けるか、持続放出形式で投与する方が、希望する結果を得るのに有効な場合がある。
【0144】
本発明のCD20結合分子、被験者への投与に適した薬剤組成物に組み込むこともできる。例えば薬剤組成物は、CD20結合分子(例えば抗体または抗体の断片)および製薬的に容認できる担体を含んでいてもよい。本出願で使用される「製薬的に容認できる担体」という用語には、生理学的適合性のある、溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌薬、等張性薬剤、吸収遅延薬などが含まれる。製薬的に容認できる担体には、次の物質の一つまたはそれ以上が含まれる。水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよびその組み合わせ。多くの場合、組成物の中に砂糖、マンニトールなどのポリアルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどのなどの等張性薬剤が含まれることが望ましい。製薬的に容認できる担体にはさらに、CD20結合分子の貯蔵寿命または効果を向上させる、加湿薬、乳化剤、保存剤、緩衝液などの補助物質が少量含まれることもある。
【0145】
本発明の組成物は様々な形態で存在する。これらには、例えば溶液(例えば注射および注入可能な溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、小丸剤、粉末、リポソームおよび座薬などの、液体、半固体および固体の投薬形態が含まれる。好ましい形態は、投与方法および治療アプリケーションの内容に基づいて決められる。通常好まれる組成物は、例えば他の抗体によるヒトの受動免疫に使用されるものと同様の組成物のような、注射および注入可能な溶液である。
【0146】
治療用の組成物は通常、製造および貯蔵条件下で無菌でありしかも安定している。組成物は溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、あるいはその他の高濃度の薬剤に適した秩序形態に調剤することができる。注射可能な無菌溶液は、要求量の活性化合物(つまり抗体または抗体の断片)を上述の成分またはその組み合わせと一緒に適切な溶媒に組み入れ、要求に応じて、その後無菌濾過する事により生成できる。一般に分散液は、分散媒体や上述の必要成分を含む無菌溶剤に活性化合物を組み入れる事により生成される。注射可能な無菌溶液の生成に使用される無菌粉末の好ましい生成方法は、活性成分に加え以前に無菌濾過された溶液から得られる追加的な望ましい成分の粉末を生成する、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は粒子の規定のサイズの保持、また表面活性剤の使用により維持される。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物の中にモノステアリン酸塩やゼラチンなどの吸収を遅らせる物質を含める事により達成できる。
【0147】
ある実施形態では、当該活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、マイクロカプセル化された送達システムを含む放出制御製剤のような、化合物の急速な放出を防ぐ担体を使用して生成される。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生物分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。このような調剤の調製方法の多くは特許を受けており、当業者には一般的に知られている(例えば、持続的および放出調節医薬品送達システム、J.R.ロビンソン(Robinson)版、マルセル・デッカー・インク(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、1978を参照)。
【0148】
ある実施形態では、本発明のCD20結合分子は、例えば不活性の希釈剤や同化可能な食用の担体などと共に経口投与される。当該化合物(および必要ならば他の成分)はまた、硬質または軟質のゼラチン・カプセルに被包化されたり、錠剤に圧縮されたり、あるいは直接被験者の食事に混入されることもある。治療用経口投与の場合、当該化合物は賦形剤と共に組み入れられ、服用可能な錠剤、頬錠剤、トローチ剤、カプセル、エリクシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの形態で使用される。非経口投与以外の方法で本発明の化合物を投与するため、不活性化を防止する物質と共に投与する、あるいはそのような物質でコーティングする必要があるかもしれない。
【0149】
本発明の薬剤組成物には、本発明の抗体または抗体断片の「治療面での有効量」または「予防面での有効量」が含まれる。「治療面での有効量」とは、用量および期間の点で、好ましい治療結果を得るための有効量を意味する。抗体または抗体断片の治療面での有効量は、個人の疾病の状態、年齢、性別および体重、好ましい反応を引き出す抗体または抗体断片の効果などの要因により異なる。さらに治療面での有効量とは、治療効果が抗体または抗体断片の毒性または有害作用を凌駕する量でもある。「予防面での有効量」とは、用量および期間の点で、好ましい予防結果を得るための有効量を意味する。一般に、予防用の用量は疾病に罹る前または疾病の初期に被験者に使用されるため、予防面での有効量は通常治療面での有効量より少ない。
【0150】
IV.CD20結合分子の他の使用方法
本発明のCD20結合分子、例えば抗CD20ペプチドおよび/または抗体は、サンプル中またはCD20を含むB細胞中のCD20を検出または定量する免疫測定に有効である。CD20の免疫測定には通常、検出可能な標識付けのされた高親和性の抗CD20ペプチドおよび/または選択的にCD20に結合することのできる本発明の抗体の存在下における成体サンプルの培養、およびサンプル中で結合した標識のついたペプチドあるいは抗体の検出が含まれる。種々の臨床分析方法は当技術分野で知られている。
【0151】
従って、抗CD20ペプチドまたは抗体を、ニトロセルロースまたは溶解性の蛋白質を固定できる他の固体支持体上で捕獲することが可能である。次にCD20を含むサンプルを支持体に加え、その後適切な緩衝液を使って洗浄して結合しなかった蛋白質を除去する。二番目の検出可能な標識付けをされたCD20特異的なペプチドまたは抗体をその固体相支持体に加え、さらに緩衝液で再び洗浄して検出可能な標識付けをされた結合しなかったペプチドまたは抗体を除去する。固体支持体に結合した標識化合物の量は既知の方法を使って検出できる。
【0152】
「固体相支持体」または「担体」とは、ペプチド、抗原または抗体に結合できるあらゆる支持体を意味する。よく知られている支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾したセルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱などが含まれる。本発明の目的では、担体はある程度溶解性であってもよいし、不溶性であってもよい。支持体の物質は、結合した分子がCD20との結合能力を維持できる限り、実質的にどのような構造体であってもよい。従って、支持体の構造は、ビーズのように球体であってもよいし、試験管の内面または棒の外面のような円筒状であってもよい。あるいは表面は、プレート、培養皿、試験用細片、マイクロタイター用プレートなどのように平たいものであってもよい。好ましい支持体にはポリスチレン・ビーズが含まれる。当業者は、抗体、ペプチド、または抗原と結合する適切な担体をその他にも数多く知っており、通常の実験を通してそれを確認することができる。抗CD20ペプチドおよび/または抗体の結合活性を測定するのに、既知の方法を使用することができる。当業者は、通常の実験を通して、実施可能で最適な分析条件を決定することができる。
【0153】
CD20特異的なペプチドおよび/または抗体のCD20結合分子の検出可能な標識化は、酵素免疫測定(EIA)または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で使用される酵素との結合により達成できる。結合した酵素は露呈した基質と反応して、例えば分光光度計、蛍光光度計、あるいは可視的に検出することのできる化学物質を生産する。本発明のCD20結合分子の検出可能な標識化に使用される酵素には、これだけに限定されるものではないが、例えばリンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌核酸分解酵素、δ−5−ステロイド異性化酵素、酵母アルコール脱水素酵素、α−グリセロリン酸脱水素酵素、トリオースリン酸異性化酵素、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、RNA分解酵素、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどが含まれる。
【0154】
CD20結合分子を放射活性物質で標識化する事により、放射性免疫検定法(RIA)を使用してCD20を検出することが可能となる(例えばワーク(Work)ら、分子生物学に於ける実験技術および生化学(Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology)(1978)、ノース・ホランド出版社(North Holland Publishing Company)、ニューヨークを参照)。放射性同位元素は、ガンマ計数器、シンチレーション計数器、オートラジオグラフィなどを使用した方法で検出される。
【0155】
CD20結合分子を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識分子が適切な波長の光に晒されると、蛍光性の故にその存在が検出できる。最も一般的に使用される蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド、フルオレスカミンなどである。
【0156】
125Euや他のランタニド系列の蛍光放射金属を使ってCD20結合分子に検出可能な標識付けをすることもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート化グループを使ってCD20結合分子に結合される。
【0157】
また、ケミルミネセンス化合物と結合させる事によりCD20結合分子に検出可能な標識付けをすることもできる。ケミルミネセンス標識分子の存在は次に、化学反応中に生じる発光の存在を検出する事により決定される。特に有効なケミルミネセンス標識化合物の例には、例えばルミノール、イソルミノール、テロマチック・アクリジニウム・エステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステルなどがある。
【0158】
同様に、生物発光性の化合物を本発明のCD20結合分子の標識に使用することができる。生物発光とは、触媒タンパク質が化学発光の反応効率を増加させる生物システム内に見られる一種の化学発光である。生物発光性のタンパク質の存在は、発光の存在を検出する事により決定される。標識に使用される重要な生物発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0159】
CD20結合分子の検出は、例えば検出可能な標識が放射性ガンマエミッターの場合はシンチレーション計数器、例えば標識が蛍光物質の場合は蛍光光度計により達成できる。酵素標識の場合、検出は酵素基質を利用した比色法によって行なわれる。基質の酵素反応の程度を同様に生成した標準物質と目視で比較する事によっても検出を行なうことも可能である。
【0160】
本発明のある実施形態では、上述の分析で検出されるCD20は生物サンプルの中に存在することができる。CD20を含むあらゆるサンプルが使用可能である。サンプルは例えば、血液、血清、リンパ、尿、脳脊髄液、羊水、滑液、組織エキス、ホモジェネートなどの生物液体であることが望ましい。しかし、当技術分野における通常の技術を有した技術者であれば、他のサンプルの使用を可能とする適切な条件を決定することができるため、当発明はこれらのサンプルのみを使用する分析に限定されるものではない。
【0161】
患者から組織学的標本を採取し、本発明の標識CD20結合分子をその標本と組み合わせる事により現場(in situ)検出を達成することができる。生物サンプルに適合またはその上に重ね合わせることにより標識CD20結合分子を提供することが望ましい。そのような方法を使うことにより、CD20の存在だけでなく、試験される組織の中のCD20の分布をも決定することができる。本発明を利用し、当業者は、現場検出を達成するために、多様な(染色方法などの)組織学的方法のいずれもが修正可能であることを理解する。
【0162】
「two−site」または「サンドイッチ」分析としても知られる免疫測定法において利用できるように本発明のCD20結合分子を調整することができる。通常の免疫測定法では、無標識のCD20結合分子(抗CD20抗体など)の適量を試験液体に不溶性の固体支持体に結合させ、それに検出可能な方法で標識した可溶性の抗体を適量加え、固体相の抗体、抗原と標識抗体の間に形成される三成分複合体を検出および/または定量する。
【0163】
通常のそして好ましい免疫測定法には、固体相に結合したCD20結合分子(例えば抗体)をまず試験サンプルと接触させ、二成分の固体相抗体CD20複合体を形成してサンプルからCD20を抽出する、「順向」分析が含まれる。適切な培養期間の後、固体支持体を洗浄して、存在していれば未反応のCD20も含み、液体サンプルの残渣を除去する。次に既知の量の標識抗体(「レポーター分子」として機能)を含む溶液と接触させる。二度目の培養期間により無標識の抗体を通して固体支持体に結合したCD20と標識抗体との間で複合体を形成させた後、個体支持体をもう一度洗浄し、未反応の標識抗体を除去する。このタイプの順向サンドイッチ分析は、CD20の存在を決定する単純な「イエス・ノー」型の分析であってもよいが、既知の量のCD20を含む標準サンプルと標識抗体の測定値を比較する事による定量とすることも可能である。
【0164】
CD20にとって有効な別のタイプの「サンドイッチ」分析は、いわゆる「同時」または「逆行」分析である。同時分析には、固体支持体に結合した抗体と標識抗体を同時に試験サンプルに加える、一度の培養が含まれる。培養が終了した後、固体支持体を洗浄し、液体サンプルの残渣および複合体を形成しなかった標識抗体を除去する。固体支持体と結合した標識抗体の存在が、通常の「順向」サンドイッチ分析で行なわれるように決定される。「逆行」分析では、まず流動性サンプルに標識抗体溶液を加え、次に適切な培養期間の後固体サンプルに標識されていない抗体を加えるという、段階的な追加法が使用される。二回目の培養期間の後、固体相を従来の方法で洗浄し、試験サンプルの残渣と未反応標識抗体の溶液を除去する。次に、固体支持体に結合した標識抗体を「同時」および「順向」分析と同様の方法で決定する。
【0165】
ある実施形態では、固体支持体と結合した本発明のCD20結合分子を、流体、組織または細胞エキスからCD20(またはCD20を含むB細胞)を除去するために利用することができる。好適な実施形態では、これらは血液または血漿生成物からCD20を除去するために使用される。別の好適な実施形態では、当技術分野で知られている体外免疫吸着装置においてCD20結合分子が有効に使用される(例えば血液学セミナー(Seminars in Hematology)、26(2 Suppl.1)(1989)を参照)。患者の血液や他の体液を付着したCD20結合分子に接触させることで、循環しているCD20(遊離体または免疫複合体)を部分的あるいは完全に除去する結果となり、その後で流体が体に戻される。この免疫吸着法を、途中の細胞遠心分離段階の有無に関わらず、連続フロー処理において行なうことができる。例えばターマン(Terman)ら、J.Immunol.、117、1971−1975(1976)を参照。
【実施例】
【0166】
以下の実施例は、いくつかの好適な実施形態と本発明のいろいろな側面を証明し、さらに詳しく説明する目的で提供されるものであり、決して本発明の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0167】
以下に開示される実験では、次のような略語が使用される:M(モル)、mM(ミリモル)、nM(ナノモル)、pM(ピコモル)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、pg(ピコグラム)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、℃(摂氏)、OD(光学密度)、nm(ナノメーター)、BSA(ウシの血清アルブミン)およびPBS(リン酸緩衝生理食塩水)。
【0168】
<実施例1> CD20結合分子
この実施例はいくつかのCD20結合分子の作成方法を説明する。特にこの実施例は、11の異なるCD20結合分子(AME 21E1 Hum、AME 6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 33、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5およびAME 5)の作成方法、および例えばFabや完全なIgGとして発現させる方法を説明する。
【0169】
11の異なるCD20結合分子の軽鎖および重鎖可変領域は以下のようにして構成される。各CD20結合分子の六つのCDRのコレクションが表3に示してある。アミノ酸配列の配列番号が最初に、核酸配列の配列番号が次に示してある。
表3 典型的なCD20結合分子における軽鎖および重鎖CDR
【表3】
【0170】
可変領域(例えばFvsとして発現する場合もある)を作成するため、表3のCDRが、ヒトの生殖細胞系フレームワークなどのあらゆるフレームワークと組み合わせられる。例えば、本実施例で名前のつけられている11の抗CD20分子の可変領域を作成するため、表4に示される方法で、表3のCDRがヒトの生殖細胞系フレームワークと組み合わせられた。
表4 名前のついたCD20結合分子の生産に使用されるヒトの生殖細胞系フレームライン
【表4】
【0171】
11のCD20結合分子のうちの二つに関して、完全な軽鎖および重鎖可変領域の配列が図2−3および6−7に示してある。特に図2および3は、AME33の軽鎖および重鎖可変領域のアミノ酸および核酸配列を示している(両方でAME33の完全Fv配列を提供)。図6および7は、AME5の軽鎖および重鎖可変領域のアミノ酸および核酸配列を示している。
【0172】
本実施例で説明している11のCD20結合分子の軽鎖および重鎖可変領域を、軽鎖および重鎖定常領域と組み合わせ、Fabまたは完全な抗体(例えばIgG)として発現させてもよい。これらの配列は望ましくはリーダー配列と結合する(例えば軽鎖配列の最初のリーダー配列)。リーダー配列の一つの例はMETPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号105)である。他のリーダー配列を使用してもよい。又、ヒトの定常領域アロタイプであればどれでも使用して構わない。例えば、図10および11はAME33の完全な軽鎖および重鎖を示しており、これには軽鎖および重鎖の定常領域も含まれる。これらの図はまた、本実施例で指定された他のCD20結合分子のFabおよびIgGを作成するために使用された定常領域の出典ともなる。図10Aおよび11Aでは、定常領域には下線が引いてある。さらに本実施例の抗CD20分子は、Fc領域のアミノ酸置換を例外として、図10および11に示している重鎖定常領域を選択的に使用してもよい。特に、図11に示されている重鎖定常領域には、D280H突然変異またはK290S突然変異が含まれていてもよい(図11Aは突然変異のない280および290を太字で示してある)。図11Bは太字で下線の付いた「GAC」を示している。この「GAC」を、D280H突然変異をコード化するため「CAT」に代えてもよい。
【0173】
本実施例で抗CD20結合分子を(FabまたはIgGとして)発現させるため、当技術分野で周知の方法を使用してもよい。例えば、シングルベクターかダブルベクター・システムを使い、哺乳類発現システム(あるいは細菌、真菌、植物発現システム)の中で、本実施例の11のCD20結合分子をFabまたはIgGとして発現させてもよい。シングルベクター・システムでは、発現に必要な全ての調節要素を含んでいる発現カセットの中で、重鎖と軽鎖の両方が製造またはクローン化される。ダブルベクター・システムは単に別々のプラスミドの中にこの二つの発現カセットを有している。当技術分野で周知のように、単一プラスミドまたはダブルベクター・システムの併用プラスミドをチャイニーズハムスターの子宮(CHO)細胞、あるいは網膜細胞株PerC6などの宿主細胞に形質移入し、選択、拡張および培養して、FabまたはIgG蛋白質を発現させてもよい(抗体発現および処理:米国化学会第207回全国大会、生化学技術部門主催シンポジウムより、サンディエゴ(San Diego)[ACSシンポジウム・シリーズ、604]を参照)。
【0174】
Fabは哺乳類システムよりも時間も費用も少なくて済むことから、細菌の発現システムで発現させてもよい。ここで、FabをM13ウイルス発現システムに挿入し発現させることができる。細菌が発現するFabは、細菌の細胞壁と細胞膜の間の周辺細胞質空間に分泌・蓄積される。低張液ショックや凍結融解法など当技術分野において一般的である多くの技術を使って、Fabを周辺細胞質空間から放出させることができる。Fabは、パパインなどのプロテアーゼを使って蛋白質を分解し、無傷のIgGからも生成される。分解産物のFab部分は、次に分解産物のFc部分から精製される。FabおよびIgGは、これもまた当技術分野では周知の種々のクロマトグラフィ技術や特異吸着技術を使って精製される(抗体:実験室手引書、エド・ハーロウ(Ed Harlow)(編集員)、デイビッド・レーン(David Lane)(編集員)、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)参照)。例えばIgGは、rProtein Aアフィニティークロマトグラフィ、そしてそれに続いてMono S陽イオン交換クロマトグラフィを使用した特異結合により、細胞の上清から容易に精製される。
【0175】
<実施例2> 固定ラモス細胞ELISA
本実施例では、CD20結合分子を使った固定ラモス細胞ELISA結合分析を説明する。本実施例では、FabおよびIgGとして発現するAME 4H5、AME 15、AME 18、AME 33およびAME 1D10を検定し、全体的な結合、オフレートおよびオンレートを特に測定した。本実施例は、当社のC2B8 fabおよび全抗体、および比較のために市販のリツキサン(オンコロジー・サプライ社(Oncology Supply Co.))を同じ分析条件下で試験した。C2B8抗体は保管番号69119でATCCに保管されている。
【0176】
ラモス細胞(ATCC)を、10%加熱不活性の牛胎児血清を含むRPMI 1640の中で成長させた。ラモス細胞50μl(2〜4X106/ml)をPoly−D−Lysineコートした96ウェルのプレート(BIOCATべクトン・ディキンソン・ラブウェア(BIOCAT Becton Dickinson Labware))の各ウェルにピペットを使って注入し、37℃、5% CO2の条件下で18時間培養した。培地は穏やかに吸引し、100mlの緩衝亜鉛ホルマリン水溶液(アナテク社(Anatech,Ltd.))を室温で15分間各ウェルに添加した。Z−fixを除き、プレートを0.05%Tween20を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。プレートをPBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロックした。FabまたはIgGの希釈液を室温で1時間、固定およびブロック・ラモス細胞と一緒に培養した。プレートをPBS0.05%Tween20で3回洗浄し、抗His6ペルオキシダーゼ・マウス・モノクローナル抗体(ロッシュ・ダイアグノスティックス社(Roche Diagnostics Corporation))(1:500希釈)50mlをウェルに加え、室温で1時間培養した。プレートを上述の方法で洗浄し、テトラメチルベンジジンで発色させ、反応は5NのH2SO4を使って停止した。プレート吸光度はOD450nmで読み取った。Fabおよび複合体の希釈には1%BSA/PBSを使った。
【0177】
IgG分析も同様にして行なったが、IgG結合はヤギ抗ヒトIgG−HRPを使って検出した。抗体オフレートの比較では、FabまたはIgGと共に培養した後、プレートをPBS/BSA中で一夜培養してから、第二の抗体ステップに進んだ。抗体オンレートの比較では、Fab/IgG結合の培養期間も第二抗体ステップも5分であった。
【0178】
本実施例の結果は図12および13に示してある。図の通りFab AME 4H5、15、18、33および1D10の全体的な結合はC2B8 Fabよりも効果的である。AME抗体の用量応答曲線はC2B8抗体および市販のリツキサンと比べて左に移動しており、最大ODもC2B8抗体の約1.5倍である。オフレートに関しては、AME 4H5、15、18、33および1D10のFabはC2B8 Fabと比べて大幅に減少している(図12B)。全IgGとして発現したAME抗体のオフレートは、C2B8抗体および市販のリツキサンのそれと似ている(図13A)。オンレートに関しては、AME 4H5、15、18、33および1D10のFabはC2B8 Fabのそれと似ており、結合が全体的に増大している(最大ODが達成)(図12C)。全IgGとして発現したAME抗体の用量応答曲線は、全C2B8抗体の左へ移動している(図13B)。
【0179】
<実施例3> 免疫蛍光生体Bリンパ腫結合分析
本実施例は免疫蛍光生体Bリンパ腫結合分析を記述する。特に、以下に示すように、AME 33、AME 5およびC2B8のFabを分析した。
【0180】
CD20 FACS分析のためのPBMCのFab染色
末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficol−Hypaque(Sigma−1077)上で浮遊法により正常なヒトの血液から単離した。細胞を計数し、再びPBS+1%BSAに懸濁して、2〜5X106細胞/mlが得られた。100μlの希釈細胞をポリスチレン・チューブ(ファルコン(Falcon)#2058)に入れ、PBS+1%BSAで希釈した抗CD20 Fab抗体を加えた。チューブを室温で1時間培養した。PBS+1%BSA4mlを各チューブに加え、300XGで10分遠心分離した。上清を除き、細胞を再びPBS100μl+1%BSAに懸濁した。Anti−Penta−His AlexaFluor 488複合体(キアゲン(Qiagen)#35310)をチューブ当たり2μlずつ加え、混合し、室温、暗室で、1時間培養した。サンプルを前出の方法で洗浄した。上清を除き、細胞を再びPBS+1%BSA+2μg/mlヨウ化プロピジウムに懸濁した。蛍光性をBecton Dickinson FACScanまたはFACSortフローサイトメーターで分析し、データをCell Quest(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))またはWinMDIソフトを使って解析した。
【0181】
結果は図14に示してある。Daudi細胞の結果は図14A、Wi12−S細胞の結果は図14B、そしてラモス細胞の結果は図14Cに示してある。図に示されているように、AME5および33のFabは、生体Bリンパ腫細胞腫との結合の面でC2B8よりも有効である。AME5およびAME33の用量応答曲線はC2B8と比べて左に移動している。
【0182】
<実施例4> KinExA測定によるIgG結合
本実施例は、種々のCD20 IgGのKd、KonおよびKoffを測定するための分析を記述する。特に本分析は、SKW6.4 Bリンパ腫細胞との結合の面で、AME 33、AME 5、AME 6F1およびC2B8抗体を試験し、KinExa平衡ソフトを使ってこのような分子のKd、KonおよびKoffを測定した。さらに、AME 33およびC2B8については、原発性ヒト末梢血B細胞との結合を試験した。
【0183】
Kd測定:
SKW6.4細胞を10%FCS添加のDMEM培地で成長させ、5〜10X105細胞/mlで収穫した。細胞を5容積のPBSで洗浄し、1%BSAを含むPBSに再び懸濁した(1X108細胞/ml)。ヒト末梢血B細胞は、新鮮なCD19選別B細胞をオールセルズ社(Allcells)から入手した。細胞を1%BSAを含むPBSで2度洗浄し、濃度8X107/mlで再び懸濁した。
【0184】
3倍連続希釈を12回行い、各希釈液100μlを96ウェルのプレートに加えた。各希釈液に抗体100mlを加え(100ng/ml)、プレートを37℃、5%CO2の条件下で4時間培養した。サンプルは96ウェル1μフィルター(ミリポア(Millipore))で濾過し、細胞および結合抗体を除いた。溶液の中の遊離抗体をELISAを使って定量した。簡単にいうと、遊離IgGを1mg/mlの抗ヒトκ抗体(サザン・バイオテクノロジー(Southern Biotechnology))でコートした96ウェルのプレートで捕獲し、HRPと結合した抗ヒトFc抗体(サザン・バイオテクノロジー(Southern Biotechnology))を使ってそれを検出した。プレートはFast TMB基質(ピアース(Pierce))を使って発色させ、450nmで読み取った。
【0185】
つぎに、未知の抗原濃度を被験者にKinExA平衡ソフトを使って抗体のKdを測定した。各連続希釈液のOD450値は、推定抗原濃度および実際の抗体濃度と一致した。Kdおよび実際の抗原濃度を計算した。SKW6.4細胞分析の結果は表5に示してある。結果は、AME 33およびAME 5のKdがC2B8抗体と比べて10倍向上している事を示している。原発性ヒト末梢血B細胞の結果は、AME 33のKdが113pM、そしてC2B8のKdが1500pMである事を示している。ここでもAME 33のKdがC2B8抗体のKdの10倍以上(ほぼ15倍)である事が示されている。
表5
【表5】
【0186】
反応速度測定:
SKW6.4細胞を10%のFCSを添加したDMEM培地で成長させ、5〜10X105細胞/mlで収穫した。細胞を5容量のPBSで洗浄し、1%のBSAを含むPBSに再び懸濁(約lX107細胞/ml)し、37℃の水浴に維持した。同容積の抗体(1%BSAを含むPBSに100ng/ml)を37℃で加え、実験の計時が開始された。60秒から10800秒の間隔で抗体細胞溶液のサンプルを採取し、濾過し、細胞と結合抗体を除去した。残っている遊離抗体を各時間単位に上述のELISAを使って定量した。
【0187】
抗体細胞の反応速度は、直接反応速度KinExAソフトを使って計算した。各時間でのOD450値は、以前計算したKd、抗原濃度、反応の計算値KonおよびKoffを使って調整した。結果は表5に示してある。
【0188】
<実施例5> CD20結合細胞を使ったADCC分析
本実施例では、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を媒介する能力に関して、作動体としてヒト末梢血単核細胞、標的としてBリンパ腫細胞株を使って、AME5、AME33、AME6F1 IgGおよびC2B8抗体を試験した。この分析は以下に記述する方法で行った。
【0189】
PBMC(末梢血単核細胞)の単離:
健康なドナーから得た末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.0)を使って1:2に希釈した。Histopaque−1077(シグマ(Sigma)、カタログ番号1077−1)12mlを希釈サンプルの下の相に注意して置き、水平ローター付きSorvall RT6000B遠心分離機を使い(ブレーキ・オフ)、1000rpmで10分間遠心分離した。PBMCを含む中間相を集め、ハンクス液(ギブコ(Gibco))で3度洗浄した。洗浄した細胞ペレットを、10%の牛胎児血清(FBS)(オメガ・サイエンティフィック(Omega Scientific))を含むRPMI 1640培地(ATCC)20mLに懸濁した。再懸濁したPBMCを二つのT−175培養フラスコに分け、それぞれにRPMI/10%FBS30mLを加えた。フラスコを37℃/5%CO2インキュベーターで培養した。翌日、付着していないPBMCを集め、上述のように遠心分離し、1%FBSを含むRPMIに再懸濁し、血球計数器を使って計数した。
【0190】
標的細胞株:
Bリンパ腫細胞株をATCCから入手し、手引書に従って成長させた。実験の前日細胞を1:2に分けた。翌日濃度を0.5から1X106細胞/mLに調整し、50μL(25,000から50,000細胞/ウェル)をベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)96ウェルU底組織培養プレートに加えた。
【0191】
IgG滴定:
1%FBSを含むRPMIでサンプルを希釈する事により、IgG希釈液を生成した。IgG50μlを96ウェル・マイクロタイター・プレートの標的細胞に加え、ピペットを使って穏やかに混合した。作動体細胞を加える前に、37℃/5%CO2の条件下で、IgGを標的細胞と一緒に15分培養した。
【0192】
作動体細胞:
再懸濁したPBMC100μlを標的細胞/IgGプレートの各ウェルに加えた。作動体と標的の比が10〜20:1になるようにPBMCの濃度を調整した。プレートを37℃/5%CO2の条件下で3〜4時間培養した。
【0193】
LDH放出検出:
培養の後、プレートを1000〜2000rpmで5〜10分間遠心分離した。ペレット状の細胞を避けながら、上清50μlを注意して除去した。ウェル当たりPBS50plを含むDynex Immulon 2HB平底プレートにこの上清を直接加えた。このプレートにLDH検出試薬(ロシュ(Roche))100μlを加えた。プレートを約15〜30分間培養し、Molecular Devices Vmax Kinetic Microplate Readerを使って、490nmでODを読み取った。
【0194】
データの解析:
データは対数IgG濃度対A490として記された(図15参照)。A490は次の式を使って細胞障害作用%に転換された。
細胞障害作用%=(実験A490−基底A490)/(最大A490−基底A490)X100
ここで最大A490は標的細胞に2%Triton X−100を加える事により決定された。基底−放出は、感作IgGの不在下に作動体および標的細胞の混合物に関して測定された。図15に示されるデータによると、Fc変異体D280HおよびK290Sを含むAME33のEC50は、C2B8よりも一貫して1.5〜2.0倍低かったことが示されている。このデータは以下の表6にも示されている。
表6 推定EC50s, μg/ml(標的:Wil−2細胞)
【表6】
【0195】
<実施例6> CD20結合分子の糖鎖工学
本実施例は、ある種のCD20結合分子に適用した糖鎖工学法を説明する。特に、野生型または突然変異(D280HまたはK290S)Fc領域を含むAME 1C2 IgGをβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII酵素と一緒にCHO細胞の中で発現させる事により、Fc領域で切断されたオリゴ糖の発現を増加させた。糖鎖工学とFc変異領域の組み合わせは、修飾していない1C2または市販のリツキサン抗体と比べ、ADCC分析において1C2のEC50を減少させた。方法は以下に記載する。
【0196】
ラットの腎臓cDNA(クロンテク(Clontech)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA))から得たβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII遺伝子をPCRで増幅した。PCRプライマーはその遺伝子の5’末端にNheI部位を導入し、3’末端にEcoRI部位を導入した(正プライマーは5’−GGCGGCTAGCATGAGACGCTACAAGCTTTTTCTCATGTTCTG−3’、配列番号103、逆プライマーは5’−GGCGGAATTCCTAGCCCTCCGTTGTATCCAACTTGC−3’、配列番号104)。PCR生成物の制限消化および精製の後、同じように開裂したpcDNA3.1 NEO(生体外ゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))とそれとを連結させた。連結したプラスミドDNAはエレクトロポレーションによる大腸菌の形質転換に使用された。コロニーPCRを使い、ラットのβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII遺伝子の存在を検出するため、アンピシリン抵抗性の大腸菌コロニーをスクリーニングした。プラスミドDNAはポジティブクローンから単離され、配列が決定された。配列決定により、プラスミドDNAがBspHIと線形になっている事が確認された。リポフェクタミン2000(Lipofectamine2000)(生体外ゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))を使い、製造元の実験記録に従って、約10mgの線形DNAがCHO K1細胞への形質移入に使用された。G418選択の後、単離した抵抗性のコロニーを組織培養で増殖した。mRNAが単離され、ラットβ(1−4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIImRNA生産の定性的なスクリーニングが行なわれた。形質移入された細胞株は予期されたサイズのPCR生成物を産出したが、形質移入されていないCHOK1細胞は産出しなかった。抗CD20 IgGをコード化するDNAが安定な細胞株の形質移入に使用された。形質移入の約3日後、細胞培養の上清が集められ、蛋白質Aクロマトグラフィを使ってIgG類縁物質を精製した。蛋白質AカラムからIgGを溶出した後、サンプルを透析し、280nmで吸収度を測定する事により蛋白質の濃度を定量した。
【0197】
実施例5に記載の方法を使い、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)の効果に関して、種々のCHOK1細胞株で発現したIgGサンプルを試験した。この実験では、新鮮なヒトの血液から単離された抹消血リンパ球が作動体細胞として使用され、WIL.2s B細胞が標的細胞として使用された。標的細胞の溶解量は、標準の乳酸脱水素酵素放出分析を使って測定した。ADCCを引き出す効果に関して、加工されたCHOK1細胞株で発現したIgGと加工していないCHOK1細胞株で発現したIgGおよび市販のリツキサン抗体が直接比較された。さらに、切断されたN−アセチルグルコサミン糖の存在が、直接糖鎖形成分析により確認された。AME 1C2に関するADCC分析の結果は図16に示されている。
【0198】
<実施例7> 生体外アポプトシス分析
本実施例は、種々のCD20結合分子を使って行なった生体外アポプトシス分析について記述する。特にAME 5、AME 33、AME 6F1(全て抗体全体)およびC2B8抗体を使い、抗ヒトIgGとの架橋結合によりラモスBリンパ腫細胞株のアポプトシスを誘発する能力を試験した。分析の方法は以下の通りである。
【0199】
アネキシンV−FITC染色:
ラモスBリンパ腫細胞株(ATCC)を、使用の24時間前に1:2に分けた。分析の当日、ラモス細胞を遠心分離し(1,000rpmで5分)、PBSで洗浄し、RPMIおよび10%の加熱不活性FBS(培地)に再び懸濁した(細胞濃度:5X105細胞/ml)。6ウェル組織培養プレートにウェル当たり100万の細胞を加えた。一次抗体を指定濃度で細胞に加え、プレートを15分間穏やかに振盪し、さらに45分間37℃に戻した。予め温めておいたヤギの抗ヒトIgG(10μg/ml)または培地を特定のウェルに加え、プレートを37℃で6時間培養した。
【0200】
細胞は遠心分離で採取し(1,000rpmで5分)、冷却1X結合緩衝液(10X株から水で希釈)100μlおよびアネキシンV−FITC(サザン・バイオテク(Southern Biotech))10μlに再懸濁した。サンプルをポリスチレン製の丸底チューブ(ファルコン(Falcon)2058)に移し、室温、暗所で、15分培養した。ヨウ化プロピジウム(2μg/ml)を含む結合緩衝液を加え、サンプルをベクトン・ディッキンソン・ファクスキャン(Becton Dickinson Facscan)フローサイトメーターで分析し、セルクエスト(CellQuest)またはWinMDIソフトを使ってデータを解析した。細胞の死(アポプトシスおよび壊死の細胞の%)は、アネキシンVで染色する細胞の%を測定する事により決定された。この分析の結果、AME 5、33および6F1はC2B8抗体処理の場合と同じようなレベルで細胞の死を誘発する事が証明された。
【0201】
<実施例8> 補体媒介の細胞障害活性分析
本実施例は、ヒトの補体およびWil−2Bリンパ腫細胞株(標的)を使い、補体依存性細胞障害作用を媒介する効果に関して、C2B8抗体、シナジス(対照)およびAME抗体である6F1、2C2、1D10、15、18および33を試験した結果を記載する。
【0202】
Wil2−SBリンパ腫細胞(ATCC)をRPMI+10%加熱不活性FBSに再懸濁した(5X105/ml)。Wil2−S細胞懸濁液50μl、IgG(濃度範囲:1ng/mlから75μg/ml)50μl、およびヒトの希釈[1:5]補体50μlを96ウェルのプレート(コスター(Costar)3917)で混合した。抗体も補体もRPMI+10%FBSで希釈した。細胞は37℃、5%CO2で90分培養した。アラマーブルーをウェル当たり15μl加え、プレートを37℃、5%CO2で一晩培養した。蛍光(生きた細胞の数を反映)を560nmで励起し590nmで検出する事により記録した。分析の結果は、全AME抗体のEC50がC2B8抗体のそれに似ている事を示していた。
【0203】
<実施例9> CD20結合分子の生体内投与
本実施例では、多くのCD20結合分子を生体内で試験するために使用された分析について説明する。
【0204】
抗体AME45H、1C2、5−3およびC2B8抗体をマウスにより以下のように分析した。5X106ラジ細胞(ATCC)を6〜8週齢のC.B.17−SCIDマウスの雄(タコニック(Taconic))の左右の脇腹に注射した(s.c.)。約2〜3時間後(0日)、抗体を腹腔内に注射した(0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kgおよび0.5mg/kg)。腫瘍の長さ、幅、そして高さを毎週月、水、金にカルパスで測定し、腫瘍の体積を計算した。用量応答曲線からEC50値を決定した。AME4H5、1C2および5−3のEC50は、C2B8のEC50と一貫して異なっているわけではなかった。
【0205】
抗体AME33およびC2B8抗体もまた、5X106ラジ細胞が注射されたマウスを使って分析された。マウスは3日目に0.5mg/kgのAME 33またはC2B8で処置された。対照群のマウスには生理食塩水が与えられた。結果(図17に示す)は、AME 33およびC2B8が同じようにラジ腫瘍を阻害し、C2B8に比べるとAME 33の方が長期的に見て腫瘍の成長が少ない事を示している。
【0206】
<実施例10> ヒトの疾病の治療にCD20結合分子を使用
本実施例は、これだけに限定されるものではないが、非ホジキンスリンパ腫(NHL)および全身性エリテマトーデス(SLE)から選択され、これらに限定されない疾病を含む、ヒトの患者の疾病の治療および予防的治療のためのCD20結合分子の用法にについて記述する。
【0207】
例えば上述の疾病のいずれかに罹っている患者に、AME 21E1 Hum、AME6F1、AME 2C2、AME 1D10、AME 15、AME 18、AME 33、AME 5−3、AME 1C2、AME 4H5またはAME 5などのCD20結合分子を0.4から体重1kgあたり20.0mg静脈内注射する。典型的な投与計画は、例えば緩徐静脈内注入として投与される抗体375mg/m2を週1回、4または8用量である。別の投与計画は、完全なものとして参照用に本出願に編入されているアンダーソン(Anderson)による米国特許6,399,061に記載されている。治療および/または生体内撮像法のため、抗体またはFab断片を放射性同位元素(例えばイットリウム[90])で標識してもよい(米国特許6,399,061参照)。治療に対する反応はモニターされ、投与量を増やすべきか減らすべきか、あるいは反復治療の必要があるかどうかが決定される。治療に対する反応および投与計画に関する追加的な指示は、米国特許6,399,061に記載されている。
【0208】
上述の明細に記載されている出版物および特許は、全て参照として本出願に編入されている。本発明の範囲および精神から逸脱する事なく、本発明の方法およびシステムを様々に調整および変更できることは、当業者には明白である。本発明は特定の望ましい実施例との関連で記載されてはいるが、請求されている発明はそれらの具体的な実施例により不当に制限されるべきではない。本発明の実施のために記載された方法のうち、化学、医学、分子生物学、あるいは当業者にとって明白な種々の変更は、以下の請求項の範囲内に含まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD20結合分子がヒトCD20に対して5.0×10−10M以下の結合親和性(Kd)を有し、ヒトCD20に対して5.0×10−4s−1以下の解離速度(koff)を有し、CD20結合分子が:
a)i)配列番号5のCDRL1アミノ酸配列;
ii)配列番号13のCDRL2アミノ酸配列;および
iii)配列番号19のCDRL3アミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域と;
b)i)配列番号25のCDRH1アミノ酸配列;
ii)配列番号39のCDRH2アミノ酸配列;および
iii)配列番号57のCDRH3アミノ酸配列
を含む重鎖可変領域
とを含む、CD20結合分子を含む組成物。
【請求項2】
軽鎖可変領域が完全にヒト型のフレームワークまたはヒトの生殖細胞系フレームワークを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
重鎖可変領域が完全にヒト型のフレームワークまたはヒトの生殖細胞系フレームワークを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
軽鎖可変領域が配列番号59のアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域が配列番号61のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
軽鎖可変領域が配列番号59のアミノ酸配列からなり、重鎖可変領域が配列番号61のアミノ酸配列からなる、請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
B細胞リンパ腫治療用組成物の調製のための請求項1〜5のいずれか記載の組成物の使用。
【請求項7】
非ホジキンリンパ腫の治療用組成物の調製のための請求項1〜5のいずれか記載の組成物の使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の組成物および医薬的に許容される担体を含む、医薬製剤。
【請求項1】
CD20結合分子がヒトCD20に対して5.0×10−10M以下の結合親和性(Kd)を有し、ヒトCD20に対して5.0×10−4s−1以下の解離速度(koff)を有し、CD20結合分子が:
a)i)配列番号5のCDRL1アミノ酸配列;
ii)配列番号13のCDRL2アミノ酸配列;および
iii)配列番号19のCDRL3アミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域と;
b)i)配列番号25のCDRH1アミノ酸配列;
ii)配列番号39のCDRH2アミノ酸配列;および
iii)配列番号57のCDRH3アミノ酸配列
を含む重鎖可変領域
とを含む、CD20結合分子を含む組成物。
【請求項2】
軽鎖可変領域が完全にヒト型のフレームワークまたはヒトの生殖細胞系フレームワークを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
重鎖可変領域が完全にヒト型のフレームワークまたはヒトの生殖細胞系フレームワークを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
軽鎖可変領域が配列番号59のアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域が配列番号61のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
軽鎖可変領域が配列番号59のアミノ酸配列からなり、重鎖可変領域が配列番号61のアミノ酸配列からなる、請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
B細胞リンパ腫治療用組成物の調製のための請求項1〜5のいずれか記載の組成物の使用。
【請求項7】
非ホジキンリンパ腫の治療用組成物の調製のための請求項1〜5のいずれか記載の組成物の使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の組成物および医薬的に許容される担体を含む、医薬製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図17】
【公開番号】特開2011−57704(P2011−57704A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276131(P2010−276131)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【分割の表示】特願2006−533234(P2006−533234)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(501061858)アプライド モレキュラー エボリューション,インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Applied Molecular Evolution,Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【分割の表示】特願2006−533234(P2006−533234)の分割
【原出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【出願人】(501061858)アプライド モレキュラー エボリューション,インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Applied Molecular Evolution,Inc.
【Fターム(参考)】
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