説明

CIP用脱臭剤組成物およびそれを用いた洗浄脱臭方法

【課題】 洗浄性、低泡性および貯蔵安定性に優れ、特に各種飲食料品の製造設備に付着したフレーバー臭に対する優れた脱臭効果を有し、製造機器類へのダメージや配管のパッキン等の重量減少が小さく、膨潤や劣化のないCIP用脱臭剤組成物およびそれを用いた洗浄脱臭方法。
【解決手段】 (A)特定の群から選ばれる非イオン界面活性剤であって、且つHLB値が8〜18である少なくとも一種の非イオン界面活性剤、(B)HLB値が8未満である非イオン界面活性剤、(C)25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤、および(D)水、さらに(E)アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシドを含有することを特徴とするCIP用脱臭剤組成物と、それを用いた洗浄脱臭方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種飲料または食品(以下、本明細書において「飲食料品」という。)の製造設備に付着したフレーバー臭、特にパッキン等に付着したフレーバー臭を効率よく除去するCIP用脱臭剤組成物およびそれを用いた洗浄脱臭方法に関する。
さらに詳しくは、このCIP用脱臭剤組成物に、酸性物質または酸性CIP洗浄剤組成物とを組み合わせて用いることにより、酸洗浄工程と脱臭工程の両工程をワンステップで実施しうる洗浄脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、嗜好の多様化に伴い、各種フレーバーを用いた飲料や食品が多く製造されている。
しかし、この種の飲食料品はフレーバー臭を有するため、フレーバー臭がこの製造設備、特にパッキン等に強固に付着してしまい、フレーバー臭の脱臭が大きな課題となっている。
【0003】
フレーバー臭の脱臭技術としては、従来、酸性洗浄剤および/またはアルカリ性洗浄剤を用いて、酸洗浄工程とアルカリ洗浄工程とを組み合わせる方法や繰り返し行う方法のほか、これらの方法で洗浄した後に、次亜塩素酸ナトリウム,過酢酸,過炭酸塩等の酸化剤やお茶エキス等を循環接触させて脱臭処理を行う方法等が採用されている。しかしながら、こうした洗浄方法や脱臭処理を行ってもなお、フレーバー臭に対する十分な脱臭効果が得られていない。
【0004】
特開2003−49193号公報には、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の特定の非イオン界面活性剤を主成分として含有するCIP洗浄用脱臭剤組成物(特許文献1を参照。)が開示されているが、製造設備への損傷が少なく、低泡ではあるものの、依然としてフレーバー臭に対する課題の解決に至っていない。
【0005】
また、特開2005−314580号公報には、アルキルポリグリコシド、アルキルグリセリルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルアミンから選ばれる非イオン界面活性剤を主成分として含有するCIP用洗浄剤組成物(特許文献2を参照。)が開示されているが、依然としてフレーバー臭に対する課題の解決に至っていない。
【0006】
さらに、特開2005−200627号公報には、炭素数5〜24の炭化水素化合物等の25℃におけるSP値が6〜9である溶剤及び非イオン界面活性剤等の界面活性剤を含有し、洗浄後に溶剤臭が殆ど残存しないCIP用洗浄剤組成物(特許文献3を参照。)が開示されているが、当該SP値の範囲にある溶剤は脱臭効果は認められるものの、配管のパッキン等の重量減少が大きい、あるいは膨潤や劣化がしやすいといった課題を有している。
【特許文献1】特開2003−49193号公報
【特許文献2】特開2005−314580号公報
【特許文献3】特開2005−200627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、洗浄性、低泡性および貯蔵安定性に優れることはもとより、特に各種飲食料品の製造設備に付着したフレーバー臭、特にパッキン等に付着したフレーバー臭に対する優れた脱臭効果を有するとともに、製造機器類へのダメージはもとより配管のパッキン等の重量減少が小さく、また膨潤や劣化のない(材質影響性)CIP用脱臭剤組成物およびそれを用いた洗浄脱臭方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討をおこなった結果、(A)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルバイド脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルグリセリルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれ且つHLB値が8〜18である少なくとも一種の非イオン界面活性剤、(B)HLB値が8未満である非イオン界面活性剤、(C)25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤、および(D)水を含有するCIP用脱臭剤組成物を第1の要旨とする。
【0009】
また、さらに(E)アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシドを含有するCIP用脱臭剤組成物を第2の要旨とする。
【0010】
なかでも、上記(B)成分のHLB値が8未満である非イオン界面活性剤が、脂肪族アルコールアルコキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルおよびグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種であるCIP用脱臭剤組成物を第3の要旨とする。
【0011】
そして、上記(C)成分の25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であるCIP用脱臭剤組成物を第4の要旨とする。
【0012】
また、上記要旨1〜4のいずれかのCIP用脱臭剤組成物と、酸性物質または酸性CIP洗浄剤組成物とを混合調整した酸性脱臭洗浄剤希釈液を用いて、飲食料品の製造設備における酸洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行う洗浄脱臭方法を第5の要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、(A)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルバイド脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルグリセリルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれ且つHLB値が8〜18である少なくとも一種の非イオン界面活性剤、(B)HLB値が8未満である非イオン界面活性剤、(C)25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤、および(D)水、さらに(E)アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシドを含有することを特徴とするCIP用脱臭剤組成物とそれを用いた洗浄脱臭方法を提供することができる。
特に、上記洗浄脱臭方法においては、上記CIP用脱臭剤組成物に、酸性物質または酸性CIP洗浄剤組成物とを組み合わせて用いることにより、酸洗浄工程と脱臭工程の両工程をワンステップで実施することができる。
【0014】
したがって、本発明の目的は、洗浄性、低泡性および貯蔵安定性に優れることはもとより、特に各種飲食料品の製造設備に付着したフレーバー臭、特にパッキン等に付着したフレーバー臭に対する優れた脱臭効果を有するとともに、製造機器類へのダメージはもとより配管のパッキン等の重量減少が小さく、また膨潤や劣化のないCIP用脱臭剤組成物およびそれを用いた洗浄脱臭方法を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明は、(A)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルバイド脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルグリセリルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれ且つHLB値が8〜18である少なくとも一種の非イオン界面活性剤、(B)HLB値が8未満である非イオン界面活性剤、(C)25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤、および(D)水、さらに(E)アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシドを含有することを特徴とするCIP用脱臭剤組成物とそれを用いた洗浄脱臭方法にあり、特に、上記洗浄脱臭方法においては、上記CIP用脱臭剤組成物と、酸性物質または酸性CIP洗浄剤組成物とを組み合わせて用いることにより、酸洗浄工程と脱臭工程の両工程をワンステップで実施するものである。
【0016】
まずはじめに、本発明のCIP用脱臭剤組成物について説明する。
本発明のCIP用脱臭剤組成物(以下、「本組成物」ともいう。)に用いられる(A)成分のHLB値が8〜18である非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルバイド脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルグリセリルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。これらは、単独で用いることも、あるいは二種以上を併用して用いることもできる。なかでも、脱臭性能の点から、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステルが好ましい。
【0017】
上記(A)成分は、本組成物中において純分換算で3〜40質量%、好ましくは10〜30質量%である。
3質量%未満では脱臭性能に乏しく、また、40質量%を超えて配合した場合には、他成分とのバランスによるフレーバー臭の脱臭性能が飽和となり、また低泡性も低下し、経済的にも好ましくない。
【0018】
また、本組成物に用いられる(B)成分のHLB値が8未満である非イオン界面活性剤としては、脂肪族アルコールアルコキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルおよびグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらは、単独で用いることも、あるいは二種以上を併用して用いることもできる。なかでも、脱臭性能および低泡性の点から、脂肪族アルコールアルコキシレートが好ましい。
【0019】
また、(B)成分のHLB値が8未満である非イオン界面活性剤は、本組成物中において純分換算で3〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。
3質量%未満では脱臭性能および低泡性に乏しくなり、また、50質量%を超えて配合した場合には、貯蔵安定性が乏しくなり、また、経済的にも好ましくない。
【0020】
そして、本組成物に用いられる(C)成分の25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。これらは、単独で用いることも、あるいは二種以上を併用して用いることもできる。
【0021】
なかでも、上記(C)成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0022】
また、(C)成分の25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤は、本組成物中において純分換算で4〜50質量%、好ましくは10〜35質量%である。
4質量%未満では脱臭性能および貯蔵安定性に乏しく、また、50質量%を超えて配合した場合には、パッキン等の材質に対する影響が高まり、好ましくない。
なお、SP値が9以下であるとパッキン等の材質に対する影響が高まり、好ましくない。
【0023】
そして、本組成物に用いられる(D)成分である水としては、例えば、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性及び貯蔵安定性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。なお、「水」は、本組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、その他の外から加えられる水との総和であり、本組成物全体が100質量%となるように配合される。
【0024】
さらに本組成物に用いられる(E)成分としては、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルグルコシドあるいはアルキルポリグルコシドが挙げられる。これらは、単独で用いることも、あるいは二種以上を併用して用いることもできる。
【0025】
上記(E)成分は、本組成物中において純分換算で1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%である。
1質量%未満では脱臭性能に乏しく、また、20質量%を超えて配合した場合には、他成分とのバランスによるフレーバー臭の脱臭性能が飽和となり、また低泡性も低下し、経済的にも好ましくない。
【0026】
そしてまた、本発明のCIP用脱臭剤組成物には、必要に応じて、腐食防止剤、防腐剤、殺菌剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、脂肪酸、キレート剤、色素等を任意に含有することもできる。
【0027】
上記任意成分のうち、腐食防止剤としては、ゴムパッキンに効果のある尿素、ジメチル尿素等が挙げられる。また、カチオン界面活性剤としては、各種第四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムスルホネート、ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート、ヘキサデシルトリブチルフォスフォニウムが挙げられる。特に殺菌力の強さの点からアルキル基の炭素数は10〜16に設定することが好ましい。また、ビグアナイド系カチオン界面活性剤としては、ポリヘキサメチレンビグアナイドなどが挙げられる。
【0028】
そして、アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム,アルキルベンゼンスルホン酸カリウム,アルキルベンゼンスルホン酸ジエタノールアミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ヤシ脂肪酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸トリエタノールアミン、ラウリン酸トリエタノールアミン、ミリスチン酸トリエタノールアミン、牛脂脂肪酸トリエタノールアミン、ヤシ脂肪酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、牛脂脂肪酸カリウム、などの高級脂肪酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム,α−オレフィンスルホン酸カリウム等のα−オレフィンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレン(3モル付加物)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン(3モル付加物)ヤシ油脂肪酸アミド硫酸ナトリウム等のアミドエーテル硫酸塩、モノドデシルエーテルリン酸ナトリウム、ジ−(ポリオキシエチレン(6モル付加物)ヤシ油脂肪酸アミド)−リン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリン塩、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム等のアシルイセチオン酸塩、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレン(1〜4モル付加物)スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレン(5モル付加物)ラウリン酸モノエタノールアミドスルホコハク酸二ナトリウム等のスルホコハク酸型界面活性剤、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、アミドカルボン酸型界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
さらに、両性界面活性剤としては、ラウリルベタインなどのアルキルベタイン型両性界面活性剤、ラウロイルアミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型両性イオン界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型両性イオン界面活性剤、アルキルスルホベタイン型両性イオン界面活性剤、ヤシ脂肪酸アミドジメチルヒドロキシプロピルスルホベタインなどのアミドスルホベタイン型両性界面活性剤、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、β−アラニン型両性界面活性剤、グリシンn−(3−アミノプロピル)−C10〜16誘導体等のアルキルポリアミノエチルグリシンのナトリウム塩や塩酸塩などが挙げられる。
【0030】
つぎに、本発明の洗浄脱臭方法について説明する。
本発明の洗浄脱臭方法においては、上記本発明のCIP用脱臭剤組成物と、酸性物質または酸性CIP洗浄剤組成物とを混合調整した酸性脱臭洗浄剤希釈液を用いて、飲食料品の製造設備における酸洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行うものである(以下、「酸性脱臭洗浄工程」という。)。
【0031】
また、本発明の洗浄脱臭方法において、本組成物と組み合わせて用いられる「酸性物質」としては、無機酸および/または有機酸(ただし、高級脂肪酸を除く。)としては、例えば、無機酸では、スルファミン酸、燐酸、硝酸等が挙げられ、また、有機酸であれば、ギ酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、アジピン酸、琥珀酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、ヘプトン酸、グルコン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いることも、あるいは二種以上を併用して用いることもできる。
【0032】
さらに、本発明の洗浄脱臭方法において、本組成物と組み合わせて用いられる「酸性CIP洗浄剤組成物」としては、市販のものを使用することができ、例えば、商品名:パンケレートMS1(大三工業社製)、商品名:パンケレートVC(大三工業社製)、商品名:パンケレートV40(大三工業社製)、商品名:パンケレートVP(大三工業社製)、商品名:パンケレートMS2(大三工業社製)、商品名:パンケレートVS10(大三工業社製)などが挙げられる。
【0033】
本発明の洗浄脱臭方法は、前すすぎ工程→アルカリ洗浄工程→すすぎ工程→酸性脱臭洗浄工程→すすぎ工程の手順、あるいは、前すすぎ工程→酸性脱臭洗浄工程→すすぎ工程→アルカリ洗浄工程→すすぎ工程の手順でおこなわれるものであって、従来、前すすぎ工程→アルカリ洗浄工程→すすぎ工程→酸洗浄工程→すすぎ工程→脱臭工程→すすぎ工程の手順、あるいは、前すすぎ工程→酸洗浄工程→すすぎ工程→アルカリ洗浄工程→すすぎ工程→脱臭工程→すすぎ工程の手順でおこなった場合と較べて、飲食料品の製造設備における酸洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行うものであるから、飲食料品の製造設備における洗浄脱臭作業にかかる作業時間を短縮することになるとともに、飲食料品の生産効率を高めることにつながるものである。
【0034】
また、上記の洗浄脱臭方法の手順以外に、上記酸性脱臭洗浄剤希釈液あるいは本発明のCIP用脱臭剤組成物を、スポンジ、たわし、ブラシ等を用いた手洗いあるいは浸漬による各種食品・飲料等の製造工程に用いられる機械器具の分解された部品の脱臭・洗浄に用いることもできる。また、高圧洗浄機用としても用いることができる。
【実施例】
【0035】
つぎに、実施例について比較例と併せて記載し説明する。
【0036】
後記表1〜9に示す実施例1〜45、および後記表10、表11に示す比較例1〜10の組成(各表の数値の単位は質量%である。)の供試CIP用脱臭剤組成物を調整し、その脱臭性、低泡性、貯蔵安定性、洗浄性および材質影響性試験の5項目について試験し評価した。表中における各成分は有り姿の数値にて、質量(質量%)で示した。また、各種試験の結果を後記表1〜11に併せて示した。
なお、各試験項目の試験方法、評価基準は、以下に示すとおりである。
【0037】
〔脱臭性試験1〕
・試験方法
(1)着香テストピースの調整
脱臭試験に供される着香テストピースは次のようにして調製した。
まず、EPDMパッキン(日阪製作所EX15PKG)を長さ40mmに裁断し、次いで、この裁断片をスポーツ飲料に全浸漬し、95℃の温度で8時間加熱した。その後、裁断片を取り出し、60℃の温度の流水で5分間濯いだ後、室温で乾燥し、スポーツ飲料のフレーバー臭の移った着香テストピースとした。
(2)操作
上記着香テストピースを、供試CIP用脱臭剤組成物の0.3質量%希釈液200mlに対し1本づつ投入し、70℃の温度で保温しながら20分間攪拌した。その後、着香テストピースを取り出し、60℃の温度の流水で20分間濯いだ後、室温で乾燥し、フレーバー臭の臭気判定を行った。
(3)判定
臭気判定は10名のパネラーによる官能テストにより、各着香テストピースのフレーバー臭の脱臭洗浄後の度合いを以下の4段階の評価基準で評価した。
【0038】
・評価基準
◎:フレーバー臭を感じない
○:かすかにフレーバー臭を感じる
△:ややフレーバー臭を感じる
×:かなりフレーバー臭を感じる
とし、◎、○および△を実用性のあるものと判定した。
【0039】
〔脱臭性試験2〕
・試験方法
(1)着香テストピースの調整
脱臭試験に供される着香テストピースは次のようにして調製した。
まず、EPDMパッキン(日阪製作所EX15PKG)を長さ40mmに裁断し、次いで、この裁断片をスポーツ飲料に全浸漬し、95℃の温度で8時間加熱した。その後、裁断片を取り出し、60℃の温度の流水で5分間濯いだ後、室温で乾燥し、スポーツ飲料のフレーバー臭の移った着香テストピースとした。
(2)操作
上記着香テストピースを、脱臭洗浄剤希釈液全体に対して0.3質量%となる供試CIP用脱臭剤組成物と、2質量%となる酸性CIP洗浄剤組成物(商品名:「パンケレートV40)とを混合した水溶液からなる脱臭洗浄剤希釈液200mlに対して、1本づつ投入し、70℃の温度で保温しながら20分間攪拌した。その後、着香テストピースを取り出し、60℃の温度の流水で20分間濯いだ後、室温で乾燥し、フレーバー臭の臭気判定を行った。
(3)判定
臭気判定は10名のパネラーによる官能テストにより、各着香テストピースのフレーバー臭の度合いを上記脱臭性試験1と同じ4段階の評価基準で評価した。
【0040】
〔低泡性試験1〕
・試験方法
供試CIP用脱臭剤組成物の0.3質量%希釈液を、100ml容量の有栓メスシリンダーに50ml量り取り、70℃の温浴中に10分間配置した後、取り出して上下に10回振とうさせ静置する。そして、静置1分後の泡量(ml)を量り、以下の評価基準で評価した。
【0041】
・評価基準
○:泡量が5ml未満。
△:泡量が5ml以上、10ml未満。
×:泡量が10ml以上。
とし、評価基準が○および△を実用性のあるものと判定した。
【0042】
〔低泡性試験2〕
・試験方法
脱臭洗浄剤希釈液全体に対して0.3質量%となる供試CIP用脱臭剤組成物と、2質量%となる酸性CIP洗浄剤組成物(商品名:「パンケレートV40)とが混合した水溶液からなる脱臭洗浄剤希釈液を、100ml容量の有栓メスシリンダーに50ml量り取り、70℃の温浴中に10分間配置した後、取り出して上下に10回振とうさせ静置する。そして、静置1分後の泡量(ml)を量り、低泡性試験1と同じ評価基準で評価した。
【0043】
〔洗浄性試験〕
・試験方法
(1)供試脱臭洗浄剤希釈液の調整
脱臭洗浄剤希釈液全体に対して0.3質量%となる供試CIP用脱臭剤組成物と、2質量%となる酸性CIP洗浄剤組成物(商品名:「パンケレートV40)とを混合した水溶液からなる脱臭洗浄剤希釈液とする。
(2)操作
上記各種脱臭洗浄剤希釈液100mlを200mlビーカーにとり、これに炭酸カルシウム100mgを加えて20℃にて5分間攪拌する。
攪拌後、濾過し、濾液中のカルシウム量をEDTA標準溶液およびNN試薬を用いてキレート滴定して、炭酸カルシウムの溶解量を算出し、以下の評価基準で評価した。
【0044】
・評価基準
○:脱臭洗浄剤希釈液1,000ml当たりの炭酸カルシウム溶解量が100mg以上。
△:脱臭洗浄剤希釈液1,000ml当たりの炭酸カルシウム溶解量が5mg以上、100mg未満。
×:脱臭洗浄剤希釈液1,000ml当たりの炭酸カルシウム溶解量が5mg未満。
とし、評価基準が○および△を実用性のあるものと判定した。
【0045】
〔貯蔵安定性〕
・試験方法
供試CIP用脱臭剤組成物について、貯蔵安定性試験を次のようにして行った。
250ml容量のポリエチレン製容器に、供試CIP用脱臭剤組成物200mlを入れて、30℃に設定されたインキュベーター(型式:バイテック500/島津製作所社製)に、1週間配置後の浮遊物、沈殿および濁りの有無について、以下の基準により評価した。
【0046】
・評価基準
○:浮遊物、沈殿および分離もなく良好である。
△:僅かな浮遊物、沈殿および分離が認められる。
×:明らかに浮遊物、沈殿および分離が認められる。
とし、評価基準が○および△を実用性のあるものと判定した。
【0047】
〔材質影響性試験1〕
・試験方法
(1)被試験体
EPDMシートを50mm×20mm(厚さ2mm、重量2.3g前後)に裁断したものをテストピースとした。
(2)操作
供試CIP用脱臭剤組成物の1%希釈液100mlを、120ml容量のスクリュー管に入れ、上記の被試験体のテストピース1枚を全体が浸漬するように投入した後、80℃に設定された恒温乾燥器(型式:MOV−212(U)/三洋電機株式会社製)において、24時間浸漬した。
(3)判定
一日後に、被試験体のシートを取り出し、水洗し、105℃に設定された恒温乾燥器(型式:MOV−212(U)/三洋電機株式会社製)で2時間乾燥後、重量減少率を求め、さらに乾燥前後のシートの状態変化の有無も確認して以下の評価基準により評価した。
(式1)
重量減少率(%)=(テスト前のシート重量(g)−テスト後のシート重量(g))/テスト前のシート重量(g)×100
【0048】
・評価基準
○:重量減少率が0.05%未満であり、シートに変化が見られない。
△:重量減少率が0.05%以上0.2%未満であり、シートに変化が見られない。
×:重量減少率が0.2%以上、あるいはシートに変化が見られる。
【0049】
〔材質影響性試験2〕
・試験方法
(1)被試験体
EPDMシートを50mm×20mm(厚さ2mm、重量2.3g前後)に裁断したものをテストピースとした。
(2)操作
脱臭洗浄剤希釈液全体に対して0.3質量%となる供試CIP用脱臭剤組成物と、2質量%となる酸性CIP洗浄剤組成物(商品名:「パンケレートV40)とが混合した水溶液からなる脱臭洗浄剤希釈液100mlを、120ml容量のスクリュー管に入れ、上記の被試験体のテストピース1枚を全体が浸漬するように投入した後、80℃に設定された恒温乾燥器(型式:MOV−212(U)/三洋電機株式会社製)において、24時間浸漬した。
(3)判定
一日後に、被試験体のシートを取り出し、水洗し、105℃に設定された恒温乾燥器(型式:MOV−212(U)/三洋電機株式会社製)で2時間乾燥後、重量減少率を求め、さらに乾燥前後のシートの状態変化の有無も確認して上記材質影響性試験1と同じ評価基準により評価した。
【0050】
〔(A)成分〕
・ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル
ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン脂肪酸エステル
商品名:「レオドールTW−L120」、花王社製(HLB16.7)
・ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル
ポリオキシエチレン(60モル)ソルビトール脂肪酸エステル
商品名:「レオドール430」、花王社製(HLB10.5)
・ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル
商品名:「エマノーン4110」、旭電化工業社製(HLB11.6)
・ポリグリセリン脂肪酸エステル
商品名:「サンソフトQ−171S」、太陽化学社製(HLB13.0)
・ショ糖脂肪酸エステル
商品名:「DKエステルS−110」、第一工業製薬社製(HLB11.0)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
ポリオキシエチレン(5モル)アルキルエーテル
商品名:「エマルミンCO−50」、三洋化成工業社製(HLB9.0)
・ポリオキシアルキレンアルキルアミン
ポリオキシエチレンアルキルアミン
商品名:「アミート105A」、花王社製(HLB10.8)
【0051】
〔(B)成分〕
・脂肪族アルコールアルコキシレート
商品名:「プルラファックLF403」、BASF社製(HLB5以下)
・ソルビタン脂肪酸エステル
商品名:「ソルゲン30V」、第一工業製薬社製(HLB3.7)
・グリセリン脂肪酸エステル
商品名:「エキセル300」、花王社製(HLB2.8)
【0052】
〔(C)成分〕
・プロピレングリコール
商品名:「プロピレングリコール」、旭電化工業社製(SP値11.3)
・ヘキシレングリコール
商品名:「ヘキシレングリコール」、エルフ・アトケム・ジャパン社製(SP値9.8)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル
商品名:「ブチセノール20」、協和発酵ケミカル社製(SP値10.2)
・エチルアルコール
商品名:「エタノール」、和光純薬社製(SP値12.7)
・エチレングリコール
商品名:「エチレングリコール」、和光純薬社製(SP値14.6)
・n−ウンデカン(比較例成分として)
商品名:「ウンデカン」、和光純薬社製(SP値7.7)
【0053】
〔(E)成分〕
・アルキルグリコシド
商品名:「AG6206」、ライオンアクゾ社製
・アルキルポリグリコシド
商品名:「マイドール12」、花王社製
【0054】
〔酸性CIP洗浄剤組成物〕
・商品名:「パンケレートV40」、大三工業社製(硝酸を主剤)
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

【0065】
【表11】

【0066】
表1〜9の結果より、実施例品1〜45のCIP用脱臭剤組成物は、いずれも、脱臭性、低泡性、貯蔵安定性、洗浄性および材質影響性試験の全ての評価項目において、優れた性能を有していることがわかる。また、酸性CIP洗浄剤組成物と併用した場合であっても、各種評価項目において優れた性能を有していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルバイド脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルグリセリルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれ且つHLB値が8〜18である少なくとも一種の非イオン界面活性剤、(B)HLB値が8未満である非イオン界面活性剤、(C)25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤、および(D)水を含有することを特徴とするCIP用脱臭剤組成物。
【請求項2】
さらに、(E)アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシドを含有することを特徴とする請求項1記載のCIP用脱臭剤組成物。
【請求項3】
上記(B)成分のHLB値が8未満である非イオン界面活性剤が、脂肪族アルコールアルコキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルおよびグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCIP用脱臭剤組成物。
【請求項4】
上記(C)成分の25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のCIP用脱臭剤組成物。
【請求項5】
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載のCIP用脱臭剤組成物と、酸性物質または酸性CIP洗浄剤組成物とを混合調整した酸性脱臭洗浄剤希釈液を用いて、飲食料品の製造設備における酸洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行うことを特徴とする洗浄脱臭方法。




【公開番号】特開2007−262258(P2007−262258A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90023(P2006−90023)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000205683)大三工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】