説明

CMPスラリー廃液処理装置及びCMPスラリー廃液処理方法

【課題】コンパクトに構成でき低コストに排水基準をクリアーすることができるCMPスラリー廃液処理装置及びCMPスラリー廃液処理方法を提供する。
【解決手段】CMPスラリー廃液処理装置1を用い、特殊フィルタ2にて固形物を除去する固形物除去工程と、COD吸着塔3によってCODを上昇させる界面活性剤及び有機物を活性炭にて吸着除去するCOD吸着工程と、Cu除去イオン交換樹脂塔4によってCuイオンを除去するCuイオン除去工程とをスラリー廃液流路5によって連続して行い、Cuイオン除去工程よりも上流側で固形物除去工程及びCOD吸着工程を行うことによってCMPスラリー廃液のみをスラリー廃液流路5によって連続して単独処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨(CMP)スラリー廃液の個別処理装置及び処理方法に関し、特には現状のCMPスラリー廃液の産業廃棄物処理に代わる、CMPスラリー廃液処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMPスラリーは液晶や半導体製造の平坦化処理に用いられ、研磨剤、有機化合物(界面活性剤、防色剤)、酸化剤、pH調整剤(無機酸またはアルカリ)を主成分とする。CMPスラリー廃液は、工業排水基準が規定された銅やCOD、窒素成分を含む。
このCMPスラリー廃液に関しては、従来から、例えばろ過などによって処理することによってろ液が排出路に放出される前に固形物(研磨凝集体)の分離を行なう処理が行われている。また固形物分離から得られたろ液をイオン交換処理することによって廃棄物排出路への放出前に溶解金属の除去を行なう処理も行われている。
【0003】
このCMPスラリー廃液処理装置及び処理方法に関し、特許文献1には大量の未処理の処理廃液の廃棄物排出路への放出、毒性またはそうでない場合には環境に有害な金属の廃棄物流への放出、有害な固形廃棄物スラッジの発生及びその廃棄に伴う問題、ならびに半導体ウェハの「バックエンド」メタライゼーション処理中に用いられる高価な金属の損失を免れる処理方法及びCMPスラリー廃液処理装置が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−534252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の特許文献1に開示されたCMPスラリー廃液処理装置及び処理方法をはじめとして、現状は、CMPスラリー廃液を他の廃液と混合して処理しているので多くの調合処理が必要となり、また、沈殿槽、ポンプなどは大型の設備及び広大なスペースを必要としている。さらに、抜気攪拌を行うための動力費が負担となっている。
加えて運転管理、薬液の管理、ケーキ汚泥産業廃棄物処理の手続きなど資格を要する作業者の採用による人件費が負担となる場合もある。
さらに加えて、Na、K、など排水基準に要求されていないCuやZn以外の金属も凝集沈殿するため不要な凝集剤が消費される。
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、コンパクトに構成でき低コストに排水基準をクリアーすることができるCMPスラリー廃液処理装置及びCMPスラリー廃液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のCMPスラリー廃液処理装置は、CMPスラリー廃液のみを単独処理することを特徴とする。係るCMPスラリー廃液処理装置は、固形物を除去する特殊フィルタとCODを上昇させる界面活性剤及び有機物(以下、CODと記述する)を活性炭にて吸着除去する吸着塔(以下、COD吸着塔と記述する)と金属イオンを除去するイオン交換樹脂塔とをスラリー廃液流路によって接続してなり、特殊フィルタ及びCOD吸着塔を金属イオンを除去するイオン交換樹脂塔の上流側に接続してなるようにしてもよい。
【0007】
イオン交換樹脂塔で除去する金属イオンは、例えば半導体製造技術においては、能動および受動素子領域または半導体基板内もしくは上に形成される構成要素への導電性を有するコンタクトを形成するため、ならびにビア孔、階層間メタライゼーションおよび相互接続経路付けパターンを充填してそれら構成要素および/または領域を配線してつなぐために用いられる金属膜を形成する目的で用いられる、チタニウム、タンタル、アルミニウム、ニッケル、コバルト、銀、金、銅、、タングステンのイオンである。
【0008】
金属イオンを除去するイオン交換樹脂塔の下流側にNHイオンを除去するイオン交換樹脂塔を接続してもよい。
【0009】
スラリー廃液流路によって接続した特殊フィルタとCOD吸着塔とイオン交換樹脂塔の各々が密閉容器とされ、各密閉容器をスラリー廃液流路によって連続して接続して単一のポンプによってスラリー廃液を流通することを可能にすることができる。
【0010】
特殊フィルタが逆洗機能付セラミックフィルタ及びマイクロフィルタ及び沈殿槽のうちの少なくともいずれか一であるようにすることができる。
【0011】
また本発明のCMPスラリー廃液処理方法は、CMPスラリー廃液のみをスラリー廃液流路によって連続して単独処理することを特徴とする。係るCMPスラリー廃液処理方法は、特殊フィルタによって固形物を除去する固形物除去工程とCOD吸着塔によってCODを活性炭にて吸着除去するCOD吸着工程とイオン交換樹脂によって金属イオンを除去する金属イオン除去工程とをスラリー廃液流路によって連続して行い、金属イオン除去工程よりも上流側で固形物除去工程及びCOD吸着工程を行うようにすることができる。
【0012】
金属イオン除去工程の後に、スラリー廃液流路の下流側でイオン交換樹脂によってNHイオンを除去するNHイオン除去工程を行うことができる。
【0013】
金属イオンを除去するイオン交換樹脂塔が少なくともCuイオンを除去するイオン交換樹脂塔であり、金属イオン除去工程で少なくともCuイオンを除去する様にしてもよい。
【0014】
[作用]
本発明のCMPスラリー廃液処理装置及びCMPスラリー廃液処理方法では、CODを活性炭にて吸着除去するCOD吸着塔と少なくとも金属イオンを除去するCu除去イオン交換樹脂塔と少なくともNHイオンを除去するNH除去イオン交換樹脂塔とを設け他の廃液と混合することなくCMPスラリー廃液のみを個別処理とすることで、装置の小型化が可能となり、廃液に含まれる金属がプロセスの変更によって種類が変更されてもCuなど選択金属の除去が可能となった。
【0015】
また少なくとも特殊フィルタとCOD吸着塔とCu除去イオン交換樹脂塔とNH除去イオン交換樹脂塔の各々が密閉容器とされ、CMPスラリー廃液を流通させるスラリー廃液流路によって各密閉容器を連続して接続したことで圧力損出を抑えることができ、1台のポンプによる運転が可能となり、併せてアンモニア除去を抜気攪拌によらずイオン交換樹脂吸着によって行うことで低い消費電力の低負荷運転が可能となった。
また、本発明のCMPスラリー廃液処理装置及びCMPスラリー廃液処理方法では密閉した容器による装置構成としたこと及び添加する薬液が無いため、特別な資格を要する作業者の必要が無く、管理費,人件費を低く設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のCMPスラリー廃液処理装置及びCMPスラリー廃液処理方法はコンパクトに構成でき、消費電力を節減可能とし低コストで排水基準をクリアーするCMPスラリー廃液処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態のCMPスラリー廃液処理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施の形態のCMPスラリー廃液処理装置1を示す。
CMPスラリー廃液処理装置1は、固形物を除去する特殊フィルタ2とCODを活性炭にて吸着除去するCOD吸着塔3と金属イオンとしてCuイオンを除去するイオン交換樹脂塔4とをスラリー廃液流路5によって接続してなり、特殊フィルタ2及びCOD吸着塔3をCu除去イオン交換樹脂塔4の上流側に接続してなる。
【0019】
スラリー廃液流路5の一部であり、廃液スラリーが流入する入口管6に接続される特殊フィルタ2は逆洗機能付セラミックフィルタ及び/又はマイクロフィルタ及び/又は沈殿槽である。特殊フィルタ2を通過することによって、廃液スラリーの固形物は除去される。
【0020】
また特殊フィルタ2をスラリー廃液流路5によってポンプ7及び流量計8に接続し、さらにCOD吸着塔3に連続して接続する。そのCOD吸着塔3には少なくともCuイオンを除去するイオン交換樹脂塔4と少なくともNHイオンを除去するイオン交換樹脂塔9とをスラリー廃液流路5によって順次連続して接続する。したがってCMPスラリー廃液処理装置1では、特殊フィルタ2を通過した廃液スラリーは連続して順次、COD吸着塔3及びCu除去イオン交換樹脂塔4及びNH除去イオン交換樹脂塔9に供給される。
【0021】
係るCMPスラリー廃液処理装置1を用い、特殊フィルタ2にて固形物を除去する固形物除去工程と、COD吸着塔3によってCODを活性炭にて吸着除去するCOD吸着工程と、Cu除去イオン交換樹脂塔4によって金属イオンとしてCuイオンを除去するCuイオン除去工程とをスラリー廃液流路5によって連続して行い、Cuイオン除去工程よりも上流側で固形物除去工程及びCOD吸着工程を行うことによってCMPスラリー廃液のみをスラリー廃液流路5によって連続して単独処理する。
【0022】
またCuイオン除去工程の後に、スラリー廃液流路5の下流側でNH除去イオン交換樹脂塔9によってNHイオンを除去するNHイオン除去工程を行う。
このNH除去イオン交換樹脂塔9からの排出液のpHを計測するpH計10を経て、処理後の廃液スラリーはスラリー廃液流路5の一部である出口管11を介して排出される。
【0023】
図1に示す実施の形態のCMPスラリー廃液処理装置1はスラリー廃液流路5によって接続した特殊フィルタ2とCOD吸着塔3とCu除去イオン交換樹脂塔4とNH除去イオン交換樹脂塔9の各々が密閉容器とされ、各密閉容器を接続するスラリー廃液流路5によって各密閉容器が連続して接続されて単一のポンプ7によってスラリー廃液を流通することを可能にしてなる。各密閉容器は合金若しくはFRP製の密閉容器とされ、その様に密閉容器とすることによって、誰でも容易に取り扱いができる様に構成されている。
【0024】
CMPスラリー廃液処理装置1では特殊フィルタ2で固形物除去を行う工程とCOD吸着塔3において活性炭にてCODを吸着除去する工程と、Cu除去イオン交換樹脂塔4によってCu除去処理を行う工程とNH除去イオン交換樹脂塔9でNH除去を行う各工程を各密閉容器内で単一のポンプ7によってCMPスラリー廃液をスラリー廃液流路5を流通させて連続的に行う。その際、ポンプ7以外の駆動源は特には不要であり単一のポンプ7による運転が可能となり、併せてアンモニア除去を抜気攪拌によらずイオン交換樹脂吸着によって行うことで、CMPスラリー廃液処理装置1がコンパクトに構成できるのみならず、消費電力を節減可能とし低コストでCMPスラリー廃液処理を行うことができる。
しかも特別な資格を要する作業者によって以上の各工程を実施する必要はない。
【符号の説明】
【0025】
1・・・CMPスラリー廃液処理装置、2・・・特殊フィルタ、7・・・ポンプ、3・・・COD吸着塔、3a,4a,9a・・・流入口、3b,4b,9b・・・流出口、4・・・Cu除去イオン交換樹脂塔、9・・・NH除去イオン交換樹脂塔。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMPスラリー廃液のみを単独処理することを特徴とするCMPスラリー廃液処理装置。
【請求項2】
固形物を除去する特殊フィルタとCODを上昇させる界面活性剤及び有機物を活性炭にて吸着除去する吸着塔(以下、COD吸着塔と記述する)と金属イオンを除去するイオン交換樹脂塔とをスラリー廃液流路によって接続してなり、特殊フィルタ及びCOD吸着塔をイオン交換樹脂塔の上流側に接続してなる請求項1に記載のCMPスラリー廃液処理装置。
【請求項3】
金属イオンを除去するイオン交換樹脂塔の下流側にNHイオンを除去するイオン交換樹脂塔を接続してなる請求項2に記載のCMPスラリー廃液処理装置。
【請求項4】
スラリー廃液流路によって接続した特殊フィルタとCOD吸着塔とイオン交換樹脂塔の各々が密閉容器とされ、各密閉容器を接続するスラリー廃液流路によって各密閉容器が連続して接続されて単一のポンプによってスラリー廃液を流通することを可能にした請求項1〜請求項3のいずれか一に記載のCMPスラリー廃液処理装置。
【請求項5】
特殊フィルタが逆洗機能付セラミックフィルタ及びマイクロフィルタ及び沈殿槽のうちの少なくともいずれか一であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一に記載のCMPスラリー廃液処理装置。
【請求項6】
金属イオンを除去するイオン交換樹脂塔が少なくともCuイオンを除去するイオン交換樹脂塔である請求項2〜請求項5のいずれか一に記載のCMPスラリー廃液処理装置。
【請求項7】
CMPスラリー廃液のみをスラリー廃液流路によって連続して単独処理することを特徴とするCMPスラリー廃液処理方法。
【請求項8】
特殊フィルタによって固形物を除去する固形物除去工程とCOD吸着塔によってCODを上昇させる界面活性剤及び有機物を活性炭にて吸着除去するCOD吸着工程と金属イオンを除去する金属イオン除去工程とをスラリー廃液流路によって連続して行い、金属イオン除去工程よりも上流側で固形物除去工程及びCOD吸着工程を行う請求項7に記載のCMPスラリー廃液処理方法。
【請求項9】
金属イオン除去工程の後に、スラリー廃液流路の下流側でNHイオンを除去するNHイオン除去工程を行う請求項7又は請求項8に記載のCMPスラリー廃液処理方法。
【請求項10】
金属イオン除去工程で少なくともCuイオンを除去する請求項7〜請求項9のいずれか一に記載のCMPスラリー廃液処理方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−279933(P2010−279933A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137372(P2009−137372)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(302008467)エコサイクル株式会社 (9)
【出願人】(509161819)
【Fターム(参考)】