説明

CO酸化触媒及びそれを用いた排ガス浄化方法

【課題】200℃程度の低温から十分に高度なCO酸化性能を発揮でき、800℃程度の高温に晒された場合においても触媒のCO酸化性能の低下を十分に抑制することが可能であり、しかも十分に高度なCO転化率を十分に低い温度から達成することが可能なCO酸化触媒を提供すること。
【解決手段】セリアとジルコニアとアルミナとを含有する複合金属酸化物からなり且つ前記複合金属酸化物中のセリアの含有量が50質量%以上である担体と、該担体に担持された酸化銅とを備えることを特徴とするCO酸化触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO酸化触媒及びそれを用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関等から排出されるガス中に含まれる一酸化炭素(CO)を酸化して浄化するために種々のCO酸化触媒が用いられてきており、低温条件下におけるCO酸化性能の向上を目的として様々な検討がなされている。このようなCO酸化触媒としては、例えば、活性種として白金族元素を使用した触媒が知られている。しかしながら、このようなCO酸化触媒の分野において、近年では、希少金属の危機管理の観点や価格の面から、白金族元素の使用を抑制することが要求されている。特に、CO酸化触媒を自動車の排ガス浄化装置に用いる場合、その装置中において、通常、NOx還元浄化用触媒と組み合わせて用いられることが多く、かかるNOx還元浄化用触媒にPtなどの白金族元素が含まれることが一般的であるため、CO酸化触媒にも白金族元素を利用した場合には、装置中に含まれる白金族元素の全量は多大なものとなってしまう。そのため、Pt、Rh等の白金族元素を使用しない構成のCO酸化触媒の研究が進められてきた。
【0003】
例えば、1993年に発行されたJournal of Catalysis(vol.144)の177頁〜195頁に記載されたHarutaらが著者の“Low-Temperature Oxidation of CO over Gold supported on TiO2, Fe2O3, and CO3O4(非特許文献1)”においては、チタニアからなる担体等に金(Au)を担持する触媒等が開示されている。また、特開平1−266850号公報(特許文献1)においては、酸化銅と二酸化セリウムの混合物からなるCO酸化触媒が開示されている。更に、2008年に発行されたApplied Catalysis B: Environmental(vol.78)の120頁〜128頁に記載されたJian-Liang Caoらが著者の“Preparation, Characterization and Catalytic behavior of nanostructured mesoporous CuO/Ce0.8Zr0.2O2 catalyst for low temperature CO oxidation(非特許文献2)”においては、セリアとジルコニアの固溶体に酸化銅を担持したCO酸化触媒が開示されている。また、特開2008−222501号公報(特許文献2)においては、酸化セリウムに、酸化アルミニウムを、セリウム及びアルミニウムに換算したモル百分率で20mol%以下の混合率で混合してなる担体に酸化銅を担持させたCO選択酸化触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1〜2及び非特許文献1〜2に記載のような従来のCO酸化触媒においては、触媒が800℃程度の高温に曝されるとCO酸化性能が低下してしまうという問題があった。また、このような従来のCO酸化触媒においては、比較的低い温度では高度なCO転化率を達成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−266850号公報
【特許文献2】特開2008−222501号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Haruta et al.,“Low-Temperature Oxidation of CO over Gold supported on TiO2, Fe2O3, and CO3O4”,Journal of Catalysis,1993年,vol.144,177頁〜195頁
【非特許文献2】Jian-Liang Cao et al.,“Preparation, Characterization and Catalytic behavior of nanostructured mesoporous CuO/Ce0.8Zr0.2O2 catalyst for low temperature CO oxidation”,Applied Catalysis B: Environmental,2008年,vol.78,120頁〜128頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、200℃程度の低温から十分に高度なCO酸化性能を発揮でき、800℃程度の高温に晒された場合においても触媒のCO酸化性能の低下を十分に抑制することが可能であり、しかも十分に高度なCO転化率を十分に低い温度から達成することが可能なCO酸化触媒並びにそれを用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、担体をセリアとジルコニアとアルミナとを含有する複合金属酸化物からなり且つ前記複合金属酸化物中のセリアの含有量が50質量%以上であるものとし、しかもその担体に担持する触媒の活性種を酸化銅としてCO酸化触媒を前記担体に酸化銅が担持された構成とすることにより、驚くべきことに、200℃程度の低温から十分に高度なCO酸化性能を発揮でき、触媒が800℃程度の高温でのCO酸化性能の低下が十分に抑制させることができ、しかも十分に高度なCO転化率(例えば転化率90%等)を十分に低い温度から達成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のCO酸化触媒は、セリアとジルコニアとアルミナとを含有する複合金属酸化物からなり且つ前記複合金属酸化物中のセリアの含有量が50質量%以上である担体と、該担体に担持された酸化銅とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記本発明にかかる複合金属酸化物においては、前記セリアと前記ジルコニアと前記アルミナとがnmスケールで分散していることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明にかかる複合金属酸化物においては、前記ジルコニアが前記セリアに固溶したセリア−ジルコニア固溶体を形成していることが好ましい。
【0011】
さらに、上記本発明のCO酸化触媒においては、前記酸化銅の含有量が前記担体及び前記酸化銅の総量に対して0.5〜30質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明のCO酸化触媒に対して排ガスを接触せしめ、該排ガス中の一酸化炭素ガスを酸化して除去することを特徴とする方法である。
【0013】
なお、本発明のCO酸化触媒並びに排ガス浄化方法によって、200℃程度の低温から十分に高度なCO酸化性能を発揮でき、800℃程度の高温に晒された場合においても触媒のCO酸化性能の低下を十分に抑制することが可能であり、しかも十分に高度なCO転化率を十分に低い温度から達成することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、CuOが活性種となるCO酸化触媒におけるCO酸化反応について検討すると、そのCO酸化反応は、下記反応式(1)及び(2):
[反応式(1)] 2CuO + CO → CuO + CO
[反応式(2)] CuO + O → 2CuO
に表される反応により進行する。このような反応式(1)及び(2)中のCuOはCuの価数が2価であり且つCuOはCuの価数が1価である。また、このようなCO酸化反応における律速段階は、反応式(1)に記載の反応であると推察される。このようなCuOがセリア(CeO)を含有する担体に担持されると、CuOはCeOと相互作用し、CeOの酸素貯蔵放出機能(OSC)により還元され易くなる。また、担体中にCeOとジルコニア(ZrO)とを含有した場合において、CeOとZrOとの固溶体(CeO−ZrO固溶体)が形成されると担体のOSC性能がより向上するため、担体上のCuOはより還元され易くなる。そのため、CeOからなる担体又はCeO−ZrO固溶体からなる担体においては、CO酸化反応のうちの上記反応式(1)で表される反応(律速段階の反応)が促進される傾向にある。しかしながら、CeOからなる担体又はCeO−ZrO固溶体からなる担体は、通常、800℃以上の高温に曝されると酸化物粒子が粒成長して比表面積が低下してしまう。そのため、活性種としてCuOを利用している上記特許文献1〜2及び非特許文献2に記載のような従来の酸化触媒においては、800℃以上の高温に曝されると、担体との相互作用によって還元され易い状態のCuOの量が減少して、担体上のCO酸化反応の活性種(CuO)が減少してしまうことから、CO酸化活性が低下するものと推察される。なお、活性種としてAuを利用した非特許文献1に記載のような従来のCO酸化触媒においては、触媒が800℃程度の高温に曝されるとAu粒子が粒成長し、これに起因して触媒活性が低下するものと推察される。
【0014】
これに対して、本発明においては、担体中にCeO及びZrOとともに、アルミナ(Al)を含有する。このようなAlはCeO、ZrO及びCeO−ZrO固溶体に固溶しないものである。そのため、Alの粒子と、CeO粒子、ZrO粒子及びCeO−ZrO固溶体の粒子とは、互いに同一の酸化物粒子どうしが凝集することを防止する障壁として作用する。そして、Al粒子が隔壁となってCeO粒子どうしやCeO−ZrO固溶体粒子どうしの凝集が防止されると、これらの粒子どうしの固相反応が阻止されるため、高温に晒された場合においても担体(複合金属酸化物)の粒成長が抑制され、担体の比表面積が十分に維持される。このように、高温時における担体(複合金属酸化物)の粒成長が抑制されると、その担体上に担持された酸化銅の粒成長も十分に抑制される。更に、本発明においては、担体中にCeOが50質量%以上の割合で含有されているため、担体中のCeOと相互作用を有するCuO活性種の数(活性サイト数)が十分に確保され、十分に高度なCO酸化性能を発揮できる。そのため、本発明においては、200℃程度の低温から十分に高度なCO酸化性能を発揮でき、触媒が800℃程度の高温に晒されても十分に高度なCO触媒活性を維持できるものと本発明者らは推察する。
【0015】
また、酸化銅は温度が高くなるほどCuOよりもCuOの方が熱力学的により安定化する傾向にある。このような酸化銅がCeOからなる担体又はCeO−ZrO固溶体からなる担体に担持された場合、上述のように、担体との相互作用により酸化銅がより還元され易くなるため、酸化銅がCuOとなって安定化する傾向はより顕著となる。そのため、酸化銅の担持担体としてCeOからなる担体又はCeO−ZrO固溶体からなる担体を用いた場合、通常は、温度が高くなるほど、上記CO酸化反応のうちの反応式(1)で表される反応が促進される一方で反応式(2)で表される反応が抑制されるようになり、温度が高くなるとともに活性種(CuO)の数(活性サイト数)が減少してCO酸化性能が低下していた。そのため、低温から十分にCO酸化活性が発揮されるものの、そこから少し温度が高くなっても、高度なCO転化率(例えば90%)に到達することが困難であった。これに対して、本発明においては、酸化銅の担持担体として、CeO及びZrOとともにAlを含有する複合金属酸化物を用いているため、担体中において、Alの表面と一部のCuOとが固相反応してスピネル型複合酸化物CuAlあるいはそれに類似した複合酸化物が形成されて、Al上で酸化銅がCuOとして安定化される(スピネル型複合酸化物CuAlが完全に形成されなくともAl担体上ではCuOが安定な傾向になる。)。そのため、CeO及びZrOとともにAlを含有する担体上においては、周囲の温度条件に関わらず、銅の価数が1価に固定化されるようなことがなく、2価と1価との間で適度に変化する。従って、CeOとZrOとAlとを含有する複合金属酸化物からなる担体に酸化銅を担持することで、CO酸化反応(前記反応式(1)及び(2))を効率よく進行させることが可能となり、これにより活性種(CuO)の減少が防止されて高温でも安定して高いCO酸化性能を発揮させることができるとともに、十分に低い温度においても十分に高度なCO転化率を達成できるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、200℃程度の低温から十分に高度なCO酸化性能を発揮でき、800℃程度の高温に晒された場合においても触媒のCO酸化性能の低下を十分に抑制することが可能であり、しかも十分に高度なCO転化率を十分に低い温度から達成することが可能なCO酸化触媒並びにそれを用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】初期状態の実施例1〜2及び比較例1〜7で得られたCO酸化触媒の50%CO転化温度を示すグラフである。
【図2】初期状態の実施例1〜2、比較例1並びに比較例4〜5で得られたCO酸化触媒の90%CO転化温度を示すグラフである。
【図3】耐熱試験後の実施例1〜2及び比較例1〜7で得られたCO酸化触媒の50%CO転化温度を示すグラフである。
【図4】耐熱試験後の実施例1〜2、比較例1並びに比較例4〜5で得られたCO酸化触媒の90%CO転化温度を示すグラフである。
【図5】初期状態の実施例1〜2及び比較例1〜3で得られたCO酸化触媒のH−TPRスペクトル(出ガス中のH濃度と温度との関係のグラフ)である。
【図6】初期状態及び上記耐熱試験後の実施例1〜2及び比較例1〜7で得られたCO酸化触媒の比表面積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明のCO酸化触媒について説明する。すなわち、本発明のCO酸化触媒は、セリアとジルコニアとアルミナとを含有する複合金属酸化物からなり且つ前記複合金属酸化物中のセリアの含有量が50質量%以上である担体と、該担体に担持された酸化銅とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
本発明のCO酸化触媒において前記担体として利用される前記複合金属酸化物はセリアを含有するものである。このようなセリアの含有量は複合金属酸化物の総量に対して50質量%以上である。このようなセリアの含有量が前記下限未満では、CeOとの相互作用により還元され易くなるCuOが十分に形成されず、触媒のCO酸化性能が低下する。また、前記複合金属酸化物におけるセリアの含有量としては、50〜95質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることが更に好ましい。このようなセリアの含有量が前記下限未満では還元され易いCuOが十分に形成されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると高温に曝されると担体の酸化物粒子が粒成長し易くなり、耐熱性が低下する傾向にある。
【0021】
また、前記複合金属酸化物はジルコニアを含有する。このようなジルコニアは、セリアとアルミナに対して中性の性質を有する担体であり、これを含有させることによりセリアを単独で用いた場合と比較して、より高度なOSC性能によりCuOを還元され易くすることが可能となる。このようなジルコニアの含有量としては、複合金属酸化物の総量に対して2〜45質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。このようなジルコニアの含有量が前記下限未満では、OSC性能によりCuOを還元され易くする効果が減少する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、CeOとの相互作用により還元され易くなるCuO活性種の数(活性サイト数)が減少する傾向にある。また、このような複合金属酸化物においては、より高度なOSC性能が得られることから、前記セリアと前記ジルコニアとが固溶体を形成していることが好ましい。すなわち、このような複合金属酸化物においては、セリアの少なくとも一部とジルコニアの少なくとも一部とが、立方晶系のセリア−ジルコニア固溶体を形成していることが好ましい。
【0022】
さらに、前記複合金属酸化物はアルミナを含有する。このようなアルミナは、セリア、ジルコニア及びこれらの固溶体に、固溶しない性質を有する。そのため、担体中におけるアルミナと、セリア、ジルコニア及びこれらの固溶体とは、互いに拡散の障壁となり、これにより同種の酸化物どうしの凝集が抑制され、更には、担持させた酸化銅の粒成長を抑制することが可能となる。このようなアルミナの含有量としては、複合金属酸化物の総量に対して2〜45質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。このようなアルミナの含有量が前記下限未満になると、複合金属酸化物(担体)の熱安定性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、還元され易いCuO活性種の数(活性サイト数)が減少する傾向にある。
【0023】
また、このような複合金属酸化物においては、高いCO酸化活性の発現と高い耐熱性との両立の観点から、前記セリアと前記ジルコニアと前記アルミナとがnmスケールで分散していることが好ましい。ここで、「nmスケールの分散」とは、複合金属酸化物を断面の直径が1nm以下の複数の微小領域に分割してその組成を高分解能を有するミクロ分析装置を用いて測定した場合に、前記微小領域の大部分(好ましくは全測定点のうちの90%以上の部分)が複数の成分によって形成されている状態をいう。このようなミクロ分析が可能な装置としては、例えば、日立製作所製「HD−2000」などの電界放射型走査透過顕微鏡(FE−STEM)が挙げられる。さらに、ここにいう「断面の直径が1nm以下の微小領域」とは、ミクロ分析装置を用いた測定において直径が1nm以下のビームを複合金属酸化物に照射した場合に、このビームが透過した複合金属酸化物中の領域を意味する。また、このようなミクロ分析装置を用いた測定においては、複合金属酸化物上の任意の5点以上の測定点において測定することが好ましい。
【0024】
また、このような複合金属酸化物としては、この複合金属酸化物を断面の直径が1nm以下の複数の微小領域に分割した場合に、前記微小領域内のセリウム、ジルコニウム及びアルミニウムの含有率がそれぞれセリウム、ジルコニウム及びアルミニウムの仕込み比率±20%(好ましくは±10%)の範囲内にあり且つこのような微小領域が全微小領域(全測定点)のうちの90%以上の割合で存在するものが好ましい。このように大部分の微小領域の組成が仕込み組成とほぼ同一である複合金属酸化物は、組成がほぼ均一なもの(各金属酸化物が均一に分散されているもの)となり、より高度なCO酸化活性を示す傾向にある。なお、「セリウム、アルミニウム及びジルコニウムの仕込み比率」とは、複合金属酸化物を形成する金属原子の全仕込み量に対するセリウム、アルミニウム及びジルコニウムのそれぞれの仕込み量の割合(元素数の比、単位:%)を意味する。また、「仕込み比率±20%の範囲内」とは、例えば、仕込み比率が70%の場合には50〜90%を意味する。
【0025】
また、このような複合金属酸化物においては、セリア粒子とジルコニア粒子とアルミナ粒子との凝集体(なお、凝集体中において前記セリア粒子と前記ジルコニア粒子の一部又は全部がセリア−ジルコニア固溶体の粒子となっていてもよい。)であることが好ましい。このような粒子の凝集体により、より高度な比表面積が得られるとともに、粒子同士の空隙として細孔が形成され、細孔内にCOを拡散させて効率よくCOを酸化して浄化することが可能となる。
【0026】
また、このような複合金属酸化物の比表面積としては特に制限されないが、10〜1000m/gであることが好ましく、20〜500m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記上限を超えると、担体が焼結し易くなり、得られる触媒の耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、CeOと相互作用を有するCuOが十分に形成されなくなる傾向にある。また、このような複合金属酸化物の比表面積としては、高温に晒された後においても十分にCO酸化活性を維持するという観点から、800℃で5時間の焼成後においても2〜200m/gの範囲にあることが好ましい。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0027】
さらに、このような複合金属酸化物に細孔が形成されている場合には、かかる細孔がメソ細孔であることが好ましい。ここにいう「メソ細孔」とは、水銀ポロシメータを用いて測定可能な下限値3.5nmから100nmまでの範囲の細孔直径を有する細孔を意味する。
【0028】
また、このような複合金属酸化物においては、メソ細孔の細孔容積が600℃で5時間の焼成後においても0.07cm/g以上であり且つ800℃で5時間の焼成後においても0.04cm/g以上であるものが好ましく、600℃で5時間の焼成後においても0.13cm/g以上であり且つ800℃で5時間の焼成後においても0.10cm/g以上であるものがより好ましく、600℃で5時間の焼成後においても0.19cm/g以上であり且つ800℃で5時間の焼成後においても0.15cm/g以上であるものが特に好ましい。このように細孔容積が十分に確保された複合金属酸化物を含む担体に酸化銅を担持させることで、酸化銅をメソ細孔内に高分散な状態で担持することが可能となる。そして、このようにして酸化銅を担持した触媒においては、メソ細孔がCO酸化反応の反応場となるため、より高度なCO酸化活性を達成することが可能となる。なお、前記複合金属酸化物においては、アルミナ粒子の障壁作用により、高温に曝露された後においても、複合金属酸化物中において同一金属酸化物同士の凝集のよる粒成長が十分に抑制されているため、その細孔の細孔容量等を十分に維持することが可能である。
【0029】
また、このような複合金属酸化物においては、X線回折によるCeO(220)のピークの半値幅から計算したセリアの結晶子径が、600℃で5時間の焼成後において5〜10nmであり、800℃で5時間の焼成後において10〜20nmであるものが好ましい。セリア結晶子径が前記範囲にあると高温時のシンタリングがより一層抑制され、高温に曝露された後においても十分な細孔容積を確保することができる傾向にある。
【0030】
また、このような複合金属酸化物が粉末状である場合には、その粉末(前記複合金属酸化物が凝集体である場合には二次粒子)の平均粒子径は、特に制限されないが、0.1〜100μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では、高温条件下において担体が焼結し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、COが拡散し難くなってCO酸化触媒活性が低下する傾向にある。なお、このような複合金属酸化物の平均粒子径は定法(例えば乳鉢で粉砕する方法や冷間等方圧プレス法(CIP)等)により適宜変更できる。また、CO酸化触媒を製造後に、その触媒の平均粒子径を定法により変更することにより、触媒中における前記複合金属酸化物(担体)の粉末の平均粒子径を変更してもよい。
【0031】
また、このような複合金属酸化物からなる担体を製造するための方法としては特に制限されず、例えば、市販のセリアとジルコニアの固溶体の粉末と市販のアルミナ粉末とを十分に撹拌することにより複合金属酸化物からなる担体を得る方法(I)や、セリウム化合物、ジルコニウム化合物およびアルミニウム化合物が溶解した水溶液又は水を含む溶液を調製した後、その水溶液又は溶液中にアルカリ性溶液を添加してセリア前駆体、ジルコニア前駆体及びアルミナ前駆体を沈殿物として析出させ、得られた沈殿物(前駆体の沈殿物)を焼成することにより複合金属酸化物からなる担体を得る方法(II)を採用することができる。このような複合金属酸化物からなる担体を製造するための方法の中でも、セリアとジルコニアとアルミナとがnmスケールで分散している複合金属酸化物からなる担体を得ることが可能となることから前記方法(II)を採用することが好ましい。また、前記方法(II)を採用する場合には、セリア前駆体とジルコニア前駆体を沈殿物(前駆体の沈殿物)として同時に析出させた後に、その共沈殿物を焼成するため、少なくとも、セリアの一部とジルコニアの一部とにより、セリアとジルコニアの固溶体が形成される。以下、このような複合金属酸化物からなる担体を得る方法(II)について具体的に説明する。
【0032】
このような方法(II)に用いられるセリウム化合物、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物としては、それぞれ、その金属の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩などの塩を用いることができる。また、このような塩を溶解する溶媒としては水及びアルコール類が挙げられる。更に、例えば、硝酸アルミニウムを含む水溶液として水酸化アルミニウムと硝酸と水とを混合したものを使用してもよい。なお、このようなセリウム化合物、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物の使用量としては、得られる担体中におけるセリアの含有量が50質量%以上となるようにする以外は特に制限されず、目的の設計に応じて、その使用量を適宜変更することができる。
【0033】
また、前記前駆体の沈殿物は、セリウム化合物、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物が溶解した前記水溶液又は水を含む溶液に対して、前記アルカリ性溶液を添加して前記水溶液又は水を含む溶液のpHを調節することによって析出させることができる。また、このようにして前記前駆体の沈殿物を析出させる際に、各前駆体の沈殿物がより均一に分散した状態となるように、各前駆体の沈殿物をほぼ同時に析出させるような方法を好適に採用することができ、このような方法としては、例えば、前記水溶液又は前記溶液に対してアルカリ性溶液を瞬時に添加して強く撹拌する方法や、前記水溶液又は前記溶液に対して過酸化水素水等を添加して前記水溶液又は前記溶液のpHを各前駆体が沈殿し始めるpHに調節した後、前記アルカリ性溶液を添加する方法を採用することができる。また、前記前駆体の沈殿物を析出させる際には、アルミナ前駆体の沈殿物を他の前駆体の沈殿物よりも先に(またはその逆)析出させるような方法を採用してもよく、この場合には、例えば、前記アルカリ性溶液の添加に時間をかけて(好ましくは10分以上の時間をかけて)中和時間を長くする方法、前記水溶液又は前記溶液のpHをモニタリングして各前駆体の沈殿物が析出するpHに段階的に調節する方法、あるいは、前記水溶液又は前記溶液のpHが各前駆体の沈殿物が析出するpHに保たれるように緩衝溶液を添加する方法を採用してもよい。
【0034】
また、このような方法(II)に用いられるアルカリ性溶液としては、アンモニア水や、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が溶解した水溶液又はアルコール溶液が挙げられる。このようなアルカリ性溶液の中でも、複合金属酸化物を焼成する際に揮発させて除去することが容易であることから、アンモニア水、炭酸アンモニウムの水溶液又はアルコール溶液がより好ましい。また、前記前駆体の沈殿物の析出反応を促進させるという観点から、アルカリ性溶液のpHは9以上に調整することが好ましい。
【0035】
また、このような担体を製造する方法(II)においては、前記前駆体の沈殿物を焼成する前に、必要に応じて前記前駆体の沈殿物を熟成させる工程を施してもよい。このような熟成工程としては、前記前駆体の沈殿物が析出した前記水溶液又は前記溶液を室温以上(より好ましくは100〜200℃、更に好ましくは100〜150℃)の熟成温度に加熱する工程を採用することが好ましい。このようにして、前駆体の沈殿物を熟成させると、加温の熱によって、前記水溶液又は前記溶液中における沈殿物の溶解、再析出が促進されるとともに、得られる複合金属酸化物中のセリアの粒子を成長させることができ、比較的結晶性が高く適度な粒子径(好ましくは5〜10nm)を有する各金属酸化物の粒子が凝集した複合金属酸化物を得ることが可能となる。ここで、このような熟成温度が前記下限未満になると熟成による促進効果が小さく、熟成に要する時間が長くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると水蒸気圧が極めて高くなるため、耐圧容器が必要となり製造コストが高くなる傾向にある。また、このような熟成温度での加熱時間としては、0.5〜10時間程度とすることが好ましい。
【0036】
さらに、このような担体を製造する方法(II)においては、前記前駆体の沈殿物を得た後に、その沈殿物を焼成する。このような焼成は大気中で行なってもよい。また、このような焼成工程における焼成温度としては、300〜800℃が好ましい。かかる焼成温度が前記下限未満になると、得られる複合金属酸化物からなる担体の熱に対する安定性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる複合金属酸化物の比表面積が低下する傾向にある。
【0037】
以上、本発明に用いられる複合金属酸化物からなる担体を製造するための好適な方法として、前記複合金属酸化物からなる担体を製造する方法(II)について具体的に説明したが、前記複合金属酸化物からなる担体を製造するための方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記方法(II)と同様にして前駆体の沈殿物を含む溶液を得た後、その溶液をそのまま加熱して溶媒を蒸発させて沈殿物を乾固させ、その後、焼成する方法を採用してもよい。この場合、沈殿物の乾固中に沈殿物を熟成させることを可能とするため、沈殿物の乾固を前記熟成温度で実施することが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲でCO酸化触媒に利用可能な他の成分を別途利用してもよい。
【0038】
また、本発明のCO酸化触媒においては、前記担体とともに、前記担体に担持された酸化銅を備える。このような酸化銅の担持量としては特に制限されないが、前記担体及び前記酸化銅の総量に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることが特に好ましい。このような酸化銅の担持量が前記下限未満では、得られるCO酸化触媒に十分な活性を付与することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複合金属酸化物を含む担体の上に担持されていない粗大なCuO粒子が多くなり、活性が低下する傾向にある。
【0039】
このような酸化銅の担持方法としては、例えば、銅(Cu)の化合物を所定の濃度で含有する溶液を前記複合金属酸化物を含む担体に含浸させることにより、所定量の銅の化合物を含む溶液を前記担体に担持させた後、これを焼成する方法を採用することができる。このとき、前記複合金属酸化物を含む担体は、ペレットなどの粉末状の形態にして使用してもよいし、予め、前記複合金属酸化物を含む担体をコージェライト製ハニカム基材などの公知の基材にコーティングなどにより固定化した形態にして使用してもよい。また、このような銅(Cu)の化合物としては、特に制限されず、銅の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩などの塩を用いることができる。
【0040】
また、このような酸化銅の担持方法における焼成工程は大気中で実施してもよい。また、このような焼成工程における焼成温度としては200〜600℃が好ましい。このような焼成温度が前記下限未満になると、前記銅の化合物が十分に熱分解せず、担体に酸化銅を担持することが困難となり、十分なCO酸化活性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担持させた酸化銅が粒成長してしまい、CO酸化活性が低下する傾向にある。また、焼成時間としては0.1〜100時間が好ましい。このような焼成時間が前記下限未満になると前記銅の化合物が十分に熱分解されず、酸化銅を担持することが困難となり、得られる触媒のCO酸化活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えても、それ以上の効果は得られず、触媒を調製するためのコストの増大に繋がる。
【0041】
また、このような本発明のCO酸化触媒の形態は特に制限されず、用途に応じて各種の形態に適宜成形して用いることができ、例えば、ペレット状、モノリス状、ハニカム状またはフォーム状等の各種形態に成形(コージェライト製ハニカム基材等の公知の基材に担持してた形態としてもよい。)して用いてもよい。
【0042】
また、このような本発明のCO酸化触媒は、COを酸化して除去することが要求される用途に適宜利用することができ、特に、低温から高度なCO酸化性能が得られるとともに、高温条件下におけるCO酸化性能の劣化が十分に抑制されているため、自動車の内燃機関(特に好ましくはディーゼルエンジン)からの排ガスを浄化するための触媒として好適に利用できる。
【0043】
以上、本発明のCO酸化触媒について説明したが、以下、本発明の排ガス浄化方法について説明する。
【0044】
本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明のCO酸化触媒に対して排ガスを接触せしめ、該排ガス中の一酸化炭素ガス(COガス)を酸化して除去することを特徴とする方法である。
【0045】
このような排ガス浄化方法は、排ガス中のCOガスを浄化するために上記本発明のCO酸化触媒を用いる方法であり、上記本発明のCO酸化触媒に前記排ガスを接触させることにより、CO酸化触媒の有する酸化活性を利用して一酸化炭素ガス(COガス)を酸化して除去する方法である。また、排ガスを接触させる方法は特に制限されず、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に上記本発明のCO酸化触媒を配置することにより、上記本発明のCO酸化触媒に対して前記内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。また、このような排ガス浄化方法においては、上記本発明のCO酸化触媒を用いているため、COを比較的に低温の温度条件下においても十分に浄化することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
先ず、硝酸アルミニウム9水和物0.2モル(75.1g)を2000mlのイオン交換水に添加し、プロペラ撹拌器で5分間撹拌して溶解して溶液を得た。次に、この溶液にCeO換算の濃度が28質量%の硝酸セリウム水溶液265g(CeO換算で0.43モルに相当)を添加して5分間撹拌して混合水溶液を得た。次いで、前記混合水溶液に、硝酸ジルコニル2水和物0.068モル(18.1g)をイオン交換水30gに溶解した水溶液を添加して5分間撹拌して混合水溶液を得た。そして、得られた混合水溶液に25質量%のアンモニア水177gを瞬時に添加し、10分間撹拌して沈殿物を析出せしめ、沈殿物を含む水溶液を得た。次いで、前記沈殿物を含む水溶液を2気圧の加圧下、120℃で2時間加熱処理し、沈殿物を熟成させた。次に、このようにして熟成させた沈殿物を含む水溶液を100℃/時間の昇温速度で400℃まで加熱し、その温度(400℃)で5時間仮焼成した後、600℃で更に5時間焼成してセリアとジルコニアとアルミナとを含有する複合金属酸化物の粉末を得た。なお、このようにして得られた複合金属酸化物の粉末(担体)は、約80質量%のCeOと約9質量%のZrOと約11質量%のAlによって構成されている。
【0048】
このようにして得られた複合金属酸化物の粉末を40g用い、前記複合金属酸化物の粉末に対して、硝酸銅(II)三水和物を9.9g溶解させた水溶液(約200mL)を含浸させて、前記水溶液を前記複合金属酸化物の粉末に担持させて硝酸銅担持担体を得た。次に、前記硝酸銅担持担体を約200℃のホットスターラーの上で約5時間加熱することにより、前記担体に担持された水溶液中の水分を蒸発させて硝酸銅担持担体を乾固せしめた。次いで、前記蒸発乾固後の硝酸銅担持担体を、更に110℃で一晩(約16時間)乾燥させた後、大気中において350℃の温度条件で3時間焼成し、前記複合金属酸化物の粉末に酸化銅(CuO)が担持されたCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒中のCuOの担持量は7.5質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0049】
なお、以下、実施例1で製造した担体の特性(比表面積、各金属原子の分散性)について記載する。
【0050】
〈比表面積〉
実施例1で得られた複合金属酸化物の粉末の比表面積を、全自動比表面積測定装置(MICRO・DATA社製の商品名「MICRO SORP4232II」)を用い、液体窒素温度(−196℃)におけるN吸着を利用したBET一点法により算出した。その結果、このようにして得られた複合金属酸化物の粉末の比表面積は100m/gであることが確認された。
【0051】
〈細孔分布〉
実施例1で得られた複合金属酸化物の粉末の細孔分布を水銀ポロシメータを用いて測定したところ、複合金属酸化物の粉末はメソ細孔(平均細孔直径30nm)を有し、細孔容量は0.20mL/gであることが分かった。
【0052】
〈一次粒子の平均粒子径〉
実施例1で得られた複合金属酸化物の粉末中の各金属酸化物の粒子(一次粒子)の平均粒子径をX線回折によるCeO(220)のピークの半値幅から計算したところ、複合金属酸化物中のセリアの粒子(一次粒子)の平均粒子径は7nmであることが分かった。
【0053】
〈複合金属酸化物の粉末中の各金属原子の分散性〉
実施例1で得られた複合金属酸化物の粉末の金属原子の分散性を、電界放射型走査透過顕微鏡(FE−STEM、(株)日立製作所製「HD−2000」)を用いて、以下の方法により観察した。すなわち、前記FE−STEMにおいて、複合金属酸化物粉末中の重なりのない1つの粒子(セリアの一次粒子)に直径0.5nmの電子線ビームを加速電圧200kVで照射し、試料から発生した特性X線を、前記FE−STEMに装着されたEDX検出器(NCRAN社製「Vatage EDX system」)により検出して、複合金属酸化物粒子について、断面の直径が0.5nmの微小領域内の元素分析を行なった。なお、このような元素分析は任意の5箇所の微小領域について行なった。なお、「断面の直径が0.5nmの微小領域」とは、前記複合金属酸化物粒子に照射された直径0.5nmの電子線ビームが透過した複合金属酸化物中の領域を意味する。このような断面の直径が0.5nmの微小領域内の元素分析を行なった結果、得られた複合金属酸化物粉末は、元素分析を行なったいずれの微小領域においてもCe、ZrおよびAlの含有率がそれぞれこれらの仕込み比率(Ce=61%、Zr=10%、Al=29%)±約10%の範囲内となっていることが確認された。すなわち、前記複合金属酸化物粉末は、断面の直径が0.5nmの微小領域のいずれにおいても、ほぼ仕込み比率の金属元素を含むものであり、セリアとジルコニアとアルミナがnmスケールで分散されていることが確認された。
【0054】
(実施例2)
先ず、イオン交換水200gに、CeO−ZrO固溶体の粉末(日揮社製:CeO含有量87重量%、ZrO含有量13重量%、比表面積150m/g、平均粒子径9nm)35.6gとAl粉末(日揮ユニバーサル社製:比表面積150m/g、平均粒子径10nm)4.4gとを添加し、マグネットスターラで1時間撹拌した後、更に、硝酸銅(II)三水和物9.9gを添加して1時間撹拌し、混合液を得た。次に、前記混合液を約200℃のホットスターラーの上で約5時間加熱して水分を蒸発させて、前記混合液中の固形分を乾固せしめた後、得られた固形分を110℃で一晩(約16時間)乾燥させた後、大気中において350℃の温度条件で3時間焼成し、CO酸化触媒を得た。このようなCO酸化触媒においては、担体がCeO−ZrO固溶体とAl粉末との混合物(複合金属酸化物)により形成され、触媒中のCuO担持量は7.5質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は、定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0055】
(比較例1)
担体としてCeO粉末(阿南化成社製:比表面積150m/g、平均粒子径16nm)を40g用い、前記担体に前記硝酸銅(II)三水和物9.9gを溶解させた水溶液(約200mL)を含浸、担持して硝酸銅担持担体を得た後、前記硝酸銅担持担体を約200℃のホットスターラーの上で約5時間加熱することにより、前記水溶液中の水分を蒸発させて硝酸銅担持担体を乾固せしめた。次に、前記蒸発乾固後の硝酸銅担持担体を、更に110℃で一晩(約16時間)乾燥させた後、大気中において350℃の温度条件で3時間焼成し、前記CeO粉末(担体)に酸化銅(CuO)が担持された比較のためのCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒中のCuOの担持量は7.5質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0056】
(比較例2)
CeO粉末(40g)の代わりにZrO粉末(第一稀元素化学工業社製:比表面積100m/g、40g)を担体として用いた以外は、比較例1と同様にして比較のためのCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒中のCuOの担持量は7.5質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0057】
(比較例3)
CeO粉末(40g)の代わりにAl粉末(日揮ユニバーサル社製:比表面積150m/g、平均粒子径10nm、40g)を担体として用いた以外は、比較例1と同様にして比較のためのCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒中のCuOの担持量は7.5質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0058】
(比較例4)
CeO粉末(40g)の代わりにCeO−ZrO固溶体の粉末(日揮社製:CeO含有量87重量%、ZrO含有量13重量%、比表面積150m/g、平均粒子径9nm、40g)を担体として用いた以外は、比較例1と同様にして比較のためのCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒中のCuOの担持量は7.5質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0059】
(比較例5)
先ず、硝酸アルミニウム9水和物0.2モル(75.1g)を2000mlのイオン交換水に添加し、プロペラ撹拌器で5分間撹拌して溶解して溶液を得た。次に、この溶液にCeO換算の濃度が28質量%の硝酸セリウム水溶液304g(CeO換算で0.5モルに相当)を添加して5分間撹拌して混合水溶液を得た。そして、得られた混合水溶液に25質量%のアンモニア水177gを添加して10分間撹拌し、沈殿物を含む水溶液を得た。次いで、前記沈殿物を含む水溶液を2気圧の加圧下、120℃で2時間加熱処理し、沈殿物を熟成させた。次に、このようにして熟成させた沈殿物を含む水溶液を100℃/時間の昇温速度で400℃まで加熱し、その温度(400℃)で5時間仮焼成した後、600℃で更に5時間焼成してセリアとアルミナとを含有する比較のための複合金属酸化物の粉末を得た。なお、このようにして得られた比較のための複合金属酸化物の粉末(担体)は、約89質量%のCeOと約11質量%のAlによって構成されている。
【0060】
このようにして得られた複合金属酸化物の粉末を40g用い、前記複合金属酸化物の粉末に対して、硝酸銅三水和物を9.9g溶解させた水溶液(約200mL)を含浸させて、前記水溶液を前記複合金属酸化物の粉末に担持させて硝酸銅担持担体を得た。次に、前記硝酸銅担持担体を約200℃のホットスターラーの上で約5時間加熱することにより、前記水溶液中の水分を蒸発させて硝酸銅担持担体を乾固せしめた。次いで、前記蒸発乾固後の硝酸銅担持担体を、更に110℃で一晩乾燥させた後、大気中において350℃の温度条件で3時間焼成し、前記複合金属酸化物の粉末に酸化銅(CuO)が担持されたCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒中のCuOの担持量は7.5質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0061】
また、実施例1で採用した担体の特性(比表面積、細孔容量、細孔分布、平均粒子径、各金属原子の分散性)の評価方法と同様の方法を採用して、比較例5で製造された比較のための複合金属酸化物の粉末(担体)の特性を評価したところ、比表面積が90m/gであり、担体中にメソ細孔(平均細孔直径30nm)が形成されており、一次粒子の平均粒子径が7nmであり、細孔容量は0.20mL/gであることが確認されるとともに、各金属原子の分散性がその元素分析を行なったいずれの微小領域においても仕込み比率(Ce=71%、Al=29%)±約10%の範囲内となっており、担体中においてセリアとアルミナがnmスケールで分散されていることが分かった。
【0062】
(比較例6)
金(Au)の含有量が30重量%の塩化金酸水溶液(田中貴金属工業製)1.48gを約90℃のイオン交換水(3000mL)に溶解して溶液を得た後、この溶液をロータリースターラで撹拌しながら、1規定のNaOH水溶液を滴下し、pHが約9.0になるように調整した。次に、前記溶液に対して、チタニア(TiO)粉末(デグサ社製:アナターゼ−ルチル混合相、比表面積60m/g)を11.8g添加した後、更に、1規定のNaOH水溶液を添加し、pHを約9.0に保持しながら1時間撹拌した。次いで、前記溶液をろ過し、固形分を取り出した後、前記固形分を室温(25℃)の温度条件下において減圧乾燥させた。そして、乾燥後の固形分を大気中において350℃の温度条件で3時間焼成し、TiO粉末にAuが担持されてなる比較のためのCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒中のAuの担持量は3.6質量%であった。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0063】
(比較例7)
担体としてAl粉末(日揮ユニバーサル社製:比表面積150m/g、平均粒子径10nm)を40g用い、前記担体に対して所定量のジニトロジアンミン白金水溶液をPtの担持量が1質量%となるようにして含浸担持して白金担持担体を得た後、前記白金担持担体を約200℃のホットスターラーの上で約5時間加熱することにより、前記担体に担持されている白金水溶液中の水分を蒸発させて、白金担持担体を乾固せしめた。次いで、前記蒸発乾固後の白金担持担体を、更に110℃で一晩乾燥させた後、大気中において500℃の温度条件で3時間焼成し、前記Al粉末にPtが担持された比較のためのCO酸化触媒を得た。なお、このようなCO酸化触媒におけるPtの担持量は1質量%である。また、このようにして得られたCO酸化触媒は定法により圧粉成形した後、破砕して直径0.5〜1mmのペレット状に成形した。
【0064】
[実施例1〜2及び比較例1〜7で得られたCO酸化触媒の性能の評価]
<耐熱試験>
実施例1〜2及び比較例1〜7で得られた各CO酸化触媒(初期状態)をそれぞれ2.5gづつ用い、各触媒をそれぞれ別々に15mlの磁性るつぼに入れ、空気を1000ml/分で供給しながら800℃の温度条件で5時間加熱する処理を施して、耐熱試験後の触媒をそれぞれ製造した。
【0065】
<CO酸化活性の測定試験>
初期状態の実施例1〜2及び比較例1〜7で得られた各CO酸化触媒及び耐熱試験の実施例1〜2及び比較例1〜7で得られた各CO酸化触媒をそれぞれ用いて、各触媒のCO酸化活性を測定した(ここにいう「初期状態」とは触媒の製造後において上記耐熱試験を施していない状態をいう。)。すなわち、先ず、固定床流通式反応装置を用い、内径15mmの石英反応管に充填した触媒1.0gに対して、CO(0.4容量%)、O(10容量%)、CO(10容量%)、HO(10容量%)およびN(残部)からなるモデルガスを7000ml/分で供給しながら、触媒の床温(触媒への入りガス温度)を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温し、350℃で10分間加熱した後、触媒の床温(触媒への入りガス温度)が70℃となるまで冷却する処理(前処理)を施した。次いで、前記前処理後の触媒に対して前記モデルガスを7000ml/分で供給しながら、触媒の床温(触媒への入りガス温度)を10℃/分の昇温速度で70℃から520℃まで昇温した。そして、このような昇温中における触媒からの出ガス(触媒に接触した後に石英反応管から排出されるガス)中のCO濃度を連続ガス分析計を用いて測定し、モデルガス中のCO濃度と出ガス中のCO濃度とからCO転化率を算出し、CO転化率が50%に到達したときの温度(50%CO転化温度)及びCO転化率が90%に到達したときの温度(90%CO転化温度)をそれぞれ求めた。なお、得られた結果のうち、初期状態の実施例1〜2及び比較例1〜7で得られた各CO酸化触媒の50%CO転化温度を図1に示し、初期状態の実施例1〜2、比較例1並びに比較例4〜5で得られた各CO酸化触媒の90%CO転化温度を図2に示し、耐熱試験後の実施例1〜2及び比較例1〜7で得られた各CO酸化触媒の50%CO転化温度を図3に示し、耐熱試験後の実施例1〜2、比較例1並びに比較例4〜5で得られた各CO酸化触媒の90%CO転化温度を図4に示す。
【0066】
図1に示す結果(初期状態の触媒の50%CO転化温度)からも明らかなように、初期状態の実施例1〜2で得られたCO酸化触媒、初期状態の比較例1及び比較例4〜5で得られたCO酸化触媒は、初期状態の比較例2、3、7で得られたCO酸化触媒と比較して、CO酸化活性が高いことが確認された。このような結果から、CuOを活性種としてCeOを含む担体を用いたCO酸化触媒(実施例1〜2、比較例1及び比較例4〜5)においては、ZrO担体を用いた場合(比較例2)及びAl担体を用いた場合(比較例3)に得られる触媒と比べて、低温条件下において、より高いCO酸化活性が得られることが分かった。
【0067】
また、図2に示す結果(初期状態の触媒の90%CO転化温度)からも明らかなように、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は、比較のためのCO酸化触媒(比較例1及び比較例4〜5)と比較して、90%CO転化温度が十分に低く、より低温から高度なCO酸化活性が得られることが確認された。このような結果から、CeOを含む担体の中でもCeO、ZrO及びAlを含む担体を用いた本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は、CeOのみを含む担体を用いた場合(比較例1)、CeOとZrOを含む担体を用いた場合(比較例4)又はCeOとAlを含む担体を用いた場合(比較例5)に得られる触媒と比べて、低温から高度なCO酸化活性が得られ、CO転化率がより高くなる温度域(通常180〜250℃程度)においても十分に高いCO酸化活性を発現することが分かる。
【0068】
更に、図3に示す結果(耐熱試験後の触媒の50%CO転化温度)からも明らかなように、800℃の耐熱試験を施した後においては、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は、比較のためのCO酸化触媒(比較例1〜7)よりも50%CO転化温度が低く、また、その50%CO転化温度が十分に低い温度であることから、耐熱性に優れ、高温に晒された場合でも十分に高度なCO酸化性能を有することが分かった。また、比較例6で得られたCO酸化触媒(Au/TiO)は、初期状態では非常に高い活性を発現(図1参照)するものの、800℃という高温に曝されると著しく活性が低下することから、実用には不十分なものであることが分かった。なお、このような比較例6で得られたCO酸化触媒の活性の低下は、Au粒子が粒成長し、CO酸化活性の発現に必要な2〜3nmのAu微粒子が消失したためであると本発明者らは推察する。また、図1及び図3に示す結果から、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)が、比較例7で得られたCO酸化触媒よりも、初期状態及び800℃の耐熱試験後のいずれにおいても50%CO転化温度が低いことが確認された。このような結果から、卑金属の酸化物であるCuOを用いた本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)が貴金属であるPtを用いた触媒(比較例7)よりも優れたCO酸化性能を示すことが分かり、本発明のCO酸化触媒がコスト面で非常に有意義なものであることが分かった。
【0069】
図4に示す結果(耐熱試験後の触媒の90%CO転化温度)から、耐熱試験後においても、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は、比較のためのCO酸化触媒(比較例1及び比較例4〜5)と比較して90%CO転化温度が十分に低く、その90%CO転化温度が十分に低い温度であることから、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は800℃の高温に晒されても十分に高度なCO酸化性能を有することが確認された。また、図3及び図4に示す結果からも明らかなように、耐熱試験後においては、CeO、ZrOおよびAlを含む担体にCuOを担持した本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は、CeOのみを含む担体を用いた場合(比較例1)、CeOとZrOを含む担体を用いた場合(比較例4)又はCeOとAlを含む担体を用いた場合(比較例5)に得られる触媒と比べて低温から高度なCO酸化活性が得られており、CO転化率がより高くなる温度域(通常200〜350℃程度)においても十分に高いCO酸化活性を発現することが分かる。
【0070】
〈水素昇温還元(H−TPR)試験〉
実施例1〜2及び比較例1〜3で得られた各CO酸化触媒(初期状態)に対して、H−TPR試験を行った。すなわち、固定床流通式反応装置を用い、内径10mmの石英反応管に充填した触媒0.080gに対して、O(60容量%)/Ar(残部)からなるガス(A)を50ml/分で供給し、触媒の床温を20℃/分の昇温速度で350℃まで昇温し、350℃で20分間保持する処理(酸化前処理)を施した後、ガス(A)で触媒の床温が30℃になるまで冷却し、その後、供給ガス種をAr(100容量%)からなるガス(B)に切り替えて、ガス(B)を50ml/分の供給速度で30分間供給する処理(パージ処理)を施した。次に、供給ガス種をH(1%)/Ar(残部)からなるガス(C)に切り替えて、ガス(C)を50ml/分の供給速度で5分間供給した後、ガス(C)を供給しながら触媒の床温を20℃/分の昇温速度で30℃から600℃まで昇温した。そして、このような昇温中における出ガス中のH濃度を質量分析計を用いて測定した。出ガス中のH濃度と温度との関係を示すグラフを図5に示す。なお、Hの消費が開始される温度から触媒中のCuO活性種の還元され易さが分かり、Hの消費量からCuO活性種の還元量が分かる。
【0071】
図5に示す結果からも明らかなように、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2:初期状態)及び比較例1で得られたCO酸化触媒(初期状態)は、比較例2〜3で得られたCO酸化触媒(初期状態)と比較して、十分に低温からHが消費されていることが確認され、触媒中のCuOがより還元され易いことが分かった。このような結果と、図1に示す初期状態の触媒の50%CO転化温度の結果とに基づいて、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)及び比較例1で得られたCO酸化触媒が初期状態において十分に高度な酸化活性を示すことは、触媒中のCuOが還元され易いことに起因するものであると本発明者らは推察する。すなわち、触媒中のCuOがより還元され易い状態にあることが高度なCO酸化活性を達成するための要因の一つとして挙げられると本発明者らは推察する。
【0072】
<比表面積の測定>
実施例1〜2及び比較例1〜7で得られた各CO酸化触媒について、初期状態の触媒の比表面積及び上記耐熱試験後の触媒の比表面積を、全自動比表面積測定装置(MICRO・DATA社製の商品名「MICRO SORP4232II」)を用いて、液体窒素温度(−196℃)におけるN吸着を利用したBET一点法により、それぞれ求めた。得られた結果を図6に示す。
【0073】
図6に示す結果からも明らかなように、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は、比較例1及び比較例4〜5で得られたCO酸化触媒と比べて、耐熱試験後の比表面積が十分に大きな値となることが確認された。このような結果に基づいてCeOを含む担体を利用してCO酸化触媒を製造した場合について検討すると、CeO、ZrO及びAlを含む担体にCuOを担持した本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)は、CeOのみを含む担体を用いた場合(比較例1)、CeOとZrOを含む担体を用いた場合(比較例4)又はCeOとAlを含む担体を用いた場合(比較例5)に得られる触媒と比べて、800℃の高温に曝されるときの担体の比表面積の低下割合が十分に小さいことが分かる。このような結果と図3〜4に示す結果から、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)が耐熱試験後においても十分に高度な酸化活性を示す要因の一つとして、本発明のCO酸化触媒(実施例1〜2)が800℃という高温に晒されても比表面積の低下が十分に抑制されていることが挙げられると本発明者らは推察する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、200℃程度の低温から十分に高度なCO酸化性能を発揮でき、800℃程度の高温に晒された場合においても触媒のCO酸化性能の低下を十分に抑制することが可能であり、しかも十分に高度なCO転化率を十分に低い温度から達成することが可能なCO酸化触媒並びにそれを用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。したがって、本発明のCO酸化触媒は、自動車の内燃機関(特に好ましくはディーゼルエンジン)からの排ガスを浄化するための触媒等として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリアとジルコニアとアルミナとを含有する複合金属酸化物からなり且つ前記複合金属酸化物中のセリアの含有量が50質量%以上である担体と、該担体に担持された酸化銅とを備えることを特徴とするCO酸化触媒。
【請求項2】
前記複合金属酸化物において、前記セリアと前記ジルコニアと前記アルミナとがnmスケールで分散していることを特徴とする請求項1に記載のCO酸化触媒。
【請求項3】
前記酸化銅の含有量が前記担体及び前記酸化銅の総量に対して0.5〜30質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のCO酸化触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のCO酸化触媒に対して排ガスを接触せしめ、該排ガス中の一酸化炭素ガスを酸化して除去することを特徴とする排ガス浄化方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−183280(P2011−183280A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49474(P2010−49474)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】