説明

CT投影データの差分画像再構成方法及び装置

【課題】差分(CT)画像の計算時間を短縮し、リアルタイムに観察可能とする。
【解決手段】CT投影データ14から差分画像20を再構成する際に、投影データのままで時系列の投影データ14とマスク投影データ10の差分(18)をとり、該差分(18)から差分画像20を再構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT投影データから差分画像を再構成するための方法及び装置に係り、特に、256列CTで血管造影検査を行なう際に用いるのに好適な、リアルタイムに造影血管の観察が可能なCT投影データの差分画像再構成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CT装置の技術の進歩により、256列検出器を搭載したCTの開発が行なわれている。これは、1回転128mmの撮像視野を持ち、従来の多列検出器CTよりも3〜4倍広い範囲を取得でき、リアルタイムに3次元画像を観察することができる。それ故、様々な角度から被写体を観察することができる。
【0003】
透視装置等を用いて、心臓や脳等の臓器の血管造影をする際に、骨や他の臓器があると、観察したい血管が正確に診断できない。そのため、造影血管のみを抽出するために、造影前の画像をマスク画像として、造影画像から差分画像を得ている(特許文献1、2参照)。
【0004】
CT装置を用いても、投影装置と同様に血管造影検査が行なわれるが、血管を3次元又は4次元で観察できるところが異なる。CT画像を用いて、マスクCT画像と造影CT画像の差分をとることでも、造影血管のみを抽出することが可能である(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−292086号公報
【特許文献2】特開2002−199279号公報
【特許文献3】特開2000−201921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来は、図1の右上破線部A及び図2に例示する如く、CTを駆動(ステップ100)して、例えば10回転分の投影データを取得(ステップ102)した後、先にボリュームデータを再構成(ステップ104)し、次いで各ボリュームの差分処理(ステップ106)を最後(ステップ108)迄行なって、差分CT画像(ステップ110)を得て表示(ステップ112)していたので、処理に時間がかかる。特に、256列CTとなると、データ量が大きく、しかも時系列にCT画像を作成するため、そのデータ量は膨大になり、計算時間がかかる。例えば10秒撮影を行ない、0.1秒ずつ時間をずらして再構成すると、100個のボリュームデータが作成される。1ボリュームに256枚のCT画像が含まれているので、25600枚のデータとなる。このように、処理に時間がかかる差分計算のデータ量が多いために、計算量が多く、従来は、リアルタイムに造影血管の観察を行うのは困難であった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、CT差分画像の計算時間を短縮し、リアルタイムに観察可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、CT投影データから差分画像を再構成する際に、投影データのままで時系列の投影データとマスク投影データの差分をとり、該差分からCT画像を再構成するようにして、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明は、又、CT投影データから差分画像を再構成するための差分画像再構成装置であって、投影データのままで時系列の投影データとマスク投影データの差分をとる手段と、該差分からCT画像を再構成する手段と、を備えることにより、同じく前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、CT画像を作成する元のデータである投影データ(生データとも称する)の時点で、CT画像を再構成する前に、マスク投影データと投影データの差分をとり、該差分からCT画像を再構成するようにしたので、計算時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
例えばCTの回転時間1秒で10秒撮影した場合、1秒目の投影データをマスク投影データとして、残りの9回転分の差分計算を行ない、通常のCT画像再構成を行なうようにした場合には、時間がかかる差分計算は9個のデータ処理でよく、再構成も短時間で行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
従来の方法で、造影血管のみを抽出する場合、図1中に破線部Aで示したように、造影無しのCT画像(マスクCT画像)と、時系列撮影した造影CT画像の差分をとっていた。即ち、図2で説明したように、まず造影無しの投影データ(マスク生データ)10を例えばBP(Backprojection)により再構成し、マスクCT画像12のボリュームを作成する。次に、造影CT撮影を時系列に行なって、生の投影データ(生データ)14を得、シネCT画像16のボリュームを得て、マスクCT画像12との差分(CT)画像(CTA(angiography)画像)20のボリュームを得ていた。この場合、CT画像を再構成する時間間隔を短くするほど、又、撮影時間が長くなるほど、シネCT画像16の枚数は増加するので、差分計算量も増加する。
【0014】
これに対して、図1の左下実線部B及び図3に示すように、本発明により、投影データ14の時点でマスク生データ10との差分計算(ステップ120)を行うようにして、CTの回転数分の差分処理(ステップ122)を行ない、差分投影データ18を得、これを時系列に再構成(ステップ124)して差分(CT)画像20とすることで、計算量を大幅に減らすことができる。両方法で作成したCT画像は、後で説明するように、同じ画質を有する。
【0015】
本発明を実施するための装置の構成例を図4に示す。
【0016】
図において、30は、X線発生部32、投影像収集部34、CT駆動部36及びCT制御部38を含むCT、40は、CPU42、ROM44及びRAM46を含む画像取得出力部、50は例えばCRTモニタである。
【0017】
前記CPU42は、例えば投影像取得手段42Aと、差分処理手段42Bと、再構成手段42Cと、表示手段42Dの機能を含む。
【0018】
前記RAM46は、取得画像メモリ46Aと、差分画像メモリ46Bと、再構成画像メモリ46Cの機能を含む。
【実施例1】
【0019】
水ファントムのCT撮影を行なってマスク画像とした。次に、水ファントムに球を入れて同様にCT撮影を行なった。差分法にて画像を作成すると、水ファントムが取り除かれ、球のみのCT画像が作成されるはずである。ここで、本発明による投影データ差分法の投影データとマスク投影データ、そしてそれらの差分投影データの例を図5に示す。投影データ画像(a)の真ん中にある丸が球である。マスク投影データ(b)には水ファントムのみが映っている。そして、差分投影データ(c)では、球のみが抽出されている。
【0020】
本発明と従来の差分法にて画像を作成したものを図6に示す。いずれの差分法でも球の抽出が可能である。
【0021】
ここで、この差分法の画質を定量的に評価した。即ち、水ファントムを2秒間撮影し、1枚目をマスクデータとし、2秒目のデータと差分計算を行なった。このようにして得られたCT画像の画像ノイズとCT値均一性を調べた。評価には、図7に示すように、直径17mmのROI(Region of Intrest)を8個、22mmの等間隔に置き、このROI内のCT値の標準偏差をCT画像ノイズ、平均値をCT値均一性とした。
【0022】
結果を図8に示す。画像ノイズは、本発明法で17.9HU(Hounsfield Uuit)、従来法は18.6HUである。CT値均一性は本発明法が0.67HU、従来法が0.46HUで、画質はほとんど同じであり、画質を損なうことなく、計算時間を短縮できることが確認できた。
【実施例2】
【0023】
臨床評価を行なうために、豚の頭部血管造影を行なった。24秒間のCT撮影を行ない、再構成時間間隔は0.1秒とした。よって、240個のボリュームデータが作成され、CT画像枚数は61440枚となる。
【0024】
ここで、本発明を行なった投影データを図9に示す。造影血管のみがきれいに抽出されていることがわかる。
【0025】
次に、CT画像、従来のCT画像差分法、本発明の投影データ差分法で作成したCT画像を、時系列的に図10に示す。一番上のCT画像(A)では、骨や組織が邪魔で造影血管が全て見えないが、差分を行なうと、造影血管の染まり方が正確に観察できる。このときの差分の計算時間は、従来のCT画像差分法(B)で76分(=239ボリューム×19秒/ボリューム)、本発明の生データ差分法(C)で11.5分(23回転×30秒/回転)であり、計算時間は1/7であった。
【0026】
なお、前記実施形態では、ソフトウェアで差分計算を行ない、CT画像再構成はハードウェアを使用したが、将来的には差分計算もハードウェアを用いたとしても、7倍の計算時間の差は短縮されない。
【0027】
又、前記説明においては、本発明が256列CTによる造影検査に適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、カテーテル検査等において、診断対象以外の物体を消し、診断並びに治療領域のリアルタイムの観察にも同様に適用できる。適用製品も256列CTに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来法及び本発明法を比較して示す線図
【図2】従来の処理手順を示す流れ図
【図3】本発明の処理手順を示す流れ図
【図4】本発明を実施するための装置の構成例を示すブロック図
【図5】画質評価に用いた投影データとマスク投影データ及び差分投影データを示す図
【図6】図5の画像を従来法及び本発明法により画像作成した例を示す図
【図7】画質評価に用いた例を示す図
【図8】画質評価結果を示す図
【図9】臨床評価に際して本発明法を行なった投影データを示す図
【図10】図9から(A)CT画像、(B)従来のCT画像差分法、(C)本発明の投影データ差分法で作成した差分CT画像を時系列に示す図
【符号の説明】
【0029】
10…マスク投影データ(生データ)
12…マスクCT画像
14…投影データ(生データ)
16…シネCT画像
18…差分投影データ(生データ)
20…差分CT画像
30…CT
32…X線発生部
34…投影像収集部
36…CT駆動部
38…CT制御部
40…画像取得出力部
50…CRTモニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT投影データから差分画像を再構成する際に、
投影データのままで時系列の投影データとマスク投影データの差分をとり、
該差分からCT画像を再構成することを特徴とするCT投影データの差分画像再構成方法。
【請求項2】
CT投影データから差分画像を再構成するための差分画像再構成装置であって、
投影データのままで時系列の投影データとマスク投影データの差分をとる手段と、
該差分からCT画像を再構成する手段と、
を備えたことを特徴とするCT投影データの差分画像再構成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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