説明

Criptoをブロックする抗体およびその使用

【課題】Criptoブロッキング抗体、またはその生物学的機能フラグメント、およびその使用を提供すること。
【解決手段】Criptoと結合し、Criptoシグナル伝達を調節する抗体が提供される。Criptoと結合し、CriptoとALK4との間の相互作用をブロックする抗体が提供される。Criptoと結合し、腫瘍増殖を調節する抗体もまた提供される。Criptoと結合し、シグナル伝達を調節し、腫瘍増殖を調節する抗体もまた提供される。Criptoと結合し、CriptoとALK4との間の相互作用をブロックし、腫瘍増殖を調節する抗体が提供される。本発明はまた、これらの抗体を治療、診断および研究への適用で使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2002年3月22日に出願された、米国特許出願第60/367,002号の継続出願であり、それは、2001年6月26日に出願された米国特許出願第60/301,091号の一部継続出願であり、それは、2001年5月17日に出願された米国特許出願第60/293,020号の一部継続出願であり、それは、2001年4月26日に出願された米国特許出願第60/286,782号の一部継続出願である。前述の特許出願の各々の全ての開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、一般的に遺伝学ならびに細胞生物学および分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、Criptoに結合し、そしてCriptoのシグナル伝達を調節する抗体、このような抗体を含むキット、ならびにこれらの抗体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
Criptoは、ヒト胚癌腫ライブラリー(Ciccodicolaら1989、EMBO J.,8巻、7号、pp.1987−1991)のcDNAスクリーニングにおいて思いがけなくも単離された188のアミノ酸残基の細胞表面タンパク質である。このCriptoタンパク質は、以下の少なくとも2種類の注目すべきドメインを有する:システインリッチドメイン、および上皮増殖因子(EGF)ファミリー中に見出されたドメインと類似するとして最初に特徴づけられたドメイン。Criptoは、このEGFファミリーのメンバーとして、元々分類され(Ciccodicolaら、前記);しかし、引き続く分析は、Criptoが公知のEGFレセプターのいずれにも結合せず、そしてこのEGF様ドメインは実際には、このEGFファミリーと相違したことを示した(Biancoら、1999,J.Biol.Chem.,274:8624−8629)。
【0004】
Criptoのシグナル伝達経路は、以下を含むいくつかの異なる経路の活性化を支持する文献での継続的な研究にもかかわらず、理解しにくいままである:MAPキナーゼ経路(DeSantisら、1997,Cell Growth Differ.,8:1257−1266;Kannnanら,1997,J.Biol.Chem.,272:3330−3335)、TGF−β経路(Gritsmanら,1999,Development,127:921−932;Schierら、2000,Nature,403:385−389),Wnt経路との潜在的な相互作用(Salmonら,Endocr Relat Cancer.2000 Dec;7(4):199−226;およびEGF経路とのクロストーク(Biancoら、1999,J.Biol.Chem,274:8624−8629)。
【0005】
米国特許第5,256,643号、およびこれに関する2つの分割出願(米国特許第5,654,140号および同第5,792,616号)は、ヒトのCripto遺伝子、Criptoタンパク質、およびCriptoに対する抗体を開示する。
【0006】
米国特許第5,264,557号、およびこれに関する3つの分割出願(米国特許第5,620,866号、同第5,650,285号および同第5,854,399号)は、ヒトのCripto関連遺伝子、およびCripto関連タンパク質を開示する。Cripto関連タンパク質に結合するが、Criptoタンパク質自体に結合することによって交差反応しない抗体もまた、開示される。
【0007】
Criptoタンパク質の過剰発現は、小さなcriptoペプチドに対して惹起されたウサギポリクローナル抗体を用いるヒト組織の免疫染色によって、実証されるように、以下の多くの腫瘍型と関連するが、これらに限定されない:乳、精巣、結腸、肺、卵巣、膀胱、子宮、頸部、膵臓、および胃。Panicoら、1996,Int.J.Cancer,65:51−56;Byrneら、1998,J Pathology,185:108−111;De Angelisら、1999,Int J Oncology,14:437−440。従って、この分野は、このような過剰発現の制御手段、制限手段、および/または予防手段、Criptoのシグナル伝達の調節手段、ならびにCripto発現の結果の調節(すなわち、細胞形質転換の促進および/または維持)手段を必要としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
Criptoのリガンド/レセプター結合ドメインのエピトープと特異的に結合する抗体(項目2)
前記Criptoが、配列番号1または配列番号2からなる群から選択される、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記エピトープがEGF様ドメインである、項目2に記載の抗体。
(項目4)
前記エピトープがcysリッチドメインである、項目2に記載の抗体。
(項目5)
A6C12.11、A6F8.6、A7H1.19、A8F1.30、A8G3.5、A8H3.1、A8H3.2、A19A10.30、A10B2.18、A27F6.1、A40G12.8、A2D3.23、A7A10.29、A9G9.9、A15C12.10、A15E4.14、A17A2.16、A17C12.28、A17G12.1、A17H6.1、A18B3.11、A19E2.7、B3F6.17、およびB6G7.10からなる群から選択される、項目2に記載の抗体。
(項目6)
A40G12.8、A8H3.1、A27F6.1、B6G7.10、A17G12.1およびA18B3.11からなる群から選択される、項目3に記載の抗体。
(項目7)
A19A10.30、A8G3.5、A6F8.6およびA6C12.11からなる群から選択される、項目4に記載の抗体。
(項目8)
Criptoのアミノ酸残基46〜62にまたがるドメインに含まれるエピトープと特異的に結合する抗体。
(項目9)
A10B2.18およびB3F6.17である、項目8に記載の抗体。
(項目10)
抗体A6C12.11、A6F8.6、A7H1.19、A8F1.30、A8G3.5、A8H3.1、A8H3.2、A19A10.30、A10B2.18、A27F6.1、A40G12.8、A2D3.23、A7A10.29、A9G9.9、A15C12.10、A15E4.14、A17A2.16、A17C12.28、A17G12.1、A17H6.1、A18B3.11、A19E2.7、B3F6.17、およびB6G7.10が結合する、エピトープの群から選択されたエピトープと特異的に結合する抗体。
(項目11)
Criptoと特異的に結合し、Criptoシグナル伝達を調節し得る抗体。
(項目12)
CriptoのEGF様ドメインのエピトープと特異的に結合する、項目11に記載の抗体。
(項目13)
A40G12.8、A8H3.1およびA27F6.1から選択される、項目12に記載の抗体。
(項目14)
Criptoのcysリッチドメインのエピトープと特異的に結合する、項目11に記載の抗体。
(項目15)
A6C12.11である、項目14に記載の抗体。
(項目16)
A40G12.8、A8H3.1、A27F6.1、およびA6C12.11からなる群から選択される、項目11に記載の抗体。
(項目17)
Criptoと特異的に結合し、腫瘍増殖を調節し得る抗体。
(項目18)
CriptoのEGF様ドメインのエピトープと特異的に結合する、項目17に記載の抗体。
(項目19)
Criptoのcysリッチドメインのエピトープと特異的に結合する、項目17に記載の抗体。
(項目20)
A27F6.1、A8G3.5およびB6G7.10からなる群から選択される、項目17に記載の抗体。
(項目21)
Criptoと特異的に結合し、Criptoシグナル伝達を調節し得、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体。
(項目22)
CriptoのEGF様ドメインのエピトープと特異的に結合する、項目21に記載の抗体。
(項目23)
Criptoのcysリッチドメインのエピトープと特異的に結合する、項目21に記載の抗体。
(項目24)
A27F6.1である、項目21に記載の抗体。
(項目25)
A6F8.6(ATCC登録番号PTA−3318)、A8G3.5(ATCC登録番号PTA−3317)、A8H3.1(ATCC登録番号PTA−3315)、A10B2.18(ATCC登録番号PTA−3311)、A27F6.1(ATCC登録番号PTA−3310)、A40G12.8(ATCC登録番号PTA−3316)、A17G12.1(ATCC登録番号PTA−3314)、A18B3.11(ATCC登録番号PTA−3312)、B3F6.17(ATCC登録番号PTA−3319)、およびB6G7.10(ATCC登録番号PTA−3313)からなる群から選択される、ハイブリドローマによって生成される抗体。
(項目26)
Criptoと特異的に結合し、CriptoとALK4との間の相互作用をブロックし得る抗体。
(項目27)
CriptoのEGF様ドメインのエピトープと特異的に結合する、項目26に記載の抗体。
(項目28)
Criptoのcysリッチドメインのエピトープと特異的に結合する、項目26に記載の抗体。
(項目29)
A8G3.5、A6F8.6およびA6C12.11からなる群から選択される、項目26に記載の抗体。
(項目30)
Criptoと特異的に結合し、CriptoとALK4との間の相互作用をブロックし得、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体。
(項目31)
CriptoのEGF様ドメインのエピトープと特異的に結合する、項目30に記載の抗体。
(項目32)
Criptoのcysリッチドメインのエピトープと特異的に結合する、項目30に記載の抗体。
(項目33)
A8G3.5である、項目30に記載の抗体。
(項目34)
Criptoをインターナライズし得るCripto抗体。
(項目35)
前記抗体が化学療法剤に結合されている、項目34に記載の抗体。
(項目36)
A27F6.1およびB3F6.17から選択される、項目34に記載の抗体。
(項目37)
項目1〜35のいずれかに記載の抗体の少なくとも1つを含む、Criptoを発現する腫瘍を有する被験体に投与するための組成物。
(項目38)
前記被験体がヒトである、項目37に記載の組成物。
(項目39)
さらに医薬的に容認可能な賦形剤を含む、項目37に記載の組成物。
(項目40)
前記抗体が化学療法剤に結合されている、項目37に記載の組成物。
(項目41)
さらに非結合化学療法剤を含む、項目37に記載の組成物。
(項目42)
サンプルに項目37の組成物を添加する工程を含む、サンプル中でのインビトロの腫瘍細胞の増殖を調節する方法。
(項目43)
被験体に、有効な量の項目37に記載の組成物を投与する工程を含む、被験体のインビトロでの腫瘍細胞の増殖を調節する方法。
(項目44)
前記被験体がヒトである、項目43に記載の方法。
(項目45)
Criptoを過剰発現する腫瘍を有する被験体を処置する方法であって、有効な量で項目37に記載の組成物を該被験体に投与することを含む、方法。
(項目46)
Criptoを過剰発現する腫瘍を有する患者を処置する方法であって、有効な量で項目39に記載の組成物を該患者に投与することを含む、方法。
(項目47)
Criptoを過剰発現する腫瘍を有する患者を処置する方法であって、有効な量で項目40に記載の組成物を該患者に投与することを含む、方法。
(項目48)
Criptoを過剰発現する腫瘍を有する患者を処置する方法であって、有効な量で項目41に記載の組成物を該患者に投与することを含む、方法。
(項目49)
前記腫瘍細胞が、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞からなる群から選択される、項目42に記載の方法。
(項目50)
前記腫瘍細胞が、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞からなる群から選択される、項目43に記載の方法。
(項目51)
前記腫瘍細胞が、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞からなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目52)
前記腫瘍細胞が、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞からなる群から選択される、項目45に記載の方法。
(項目53)
前記腫瘍細胞が、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞からなる群から選択される、項目46に記載の方法。
(項目54)
前記腫瘍細胞が、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞からなる群から選択される、項目47に記載の方法。
(項目55)
前記腫瘍細胞が、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞からなる群から選択される、項目48に記載の方法。
(項目56)
項目1〜37のいずれかに記載の抗体を用いるイムノアッセイにおいて、被験体由来の組織を分析する工程を含む、組織がCriptoを発現するかどうかを決定する方法。
(項目57)
項目1〜37のいずれかに記載の抗体を用いるイムノアッセイで細胞株を分析する工程を含む、細胞株がCriptoを発現するかどうかを決定する方法。
(項目58)
前記抗体がモノクローナル抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目59)
前記抗体がヒト化抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目60)
前記抗体がヒト抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目61)
所望でない細胞増殖と関与する状態のための被験体を処置する方法であり、該方法が、項目37の組成物を前記被験体に投与することを含む方法。
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、Criptoに特異的に結合する新規の抗体、ならびにこのような抗体の製造方法および使用方法を提供する。本発明はまた、Criptoに結合し、そしてCriptoのシグナル伝達またはタンパク質相互作用を調節する抗体(例えば、Criptoと結合し、その結果、Criptoとのタンパク質の相互作用から生じるシグナルが、下方に調節される抗体)を提供する。本発明はまた、Criptoに結合し、そしてCriptoとALK4との間の相互作用をブロックする抗体を提供する。本発明はまた、Criptoに結合し、そして腫瘍増殖を調節する抗体を提供する。本発明はまた、Criptoに結合し、Criptoのシグナル伝達を調節し、そして腫瘍増殖を調節する抗体を提供する。本発明はまた、Criptoに結合し、CriptoとALK4との間の相互作用をブロックし、そして腫瘍増殖を調節する抗体を提供する。
【0010】
本発明の一つの局面においては、本発明の抗体は、以下の抗体が結合するエピトープの群から選択されたエピトープに特異的に結合する:A6C12.11,A6F8.6(ATCC受託番号PTA−3318)、A7H1.19,A8F1.30,A8G3.5(ATCC受託番号PTA−3317),A8H3.1(ATCC受託番号PTA−3315),A8H3.2,A19A10.30,A10B2.18(ATCC受託番号PTA−3311),A27F6.1(ATCC受託番号PTA−3310),A40G12.8(ATCC受託番号PTA−3316),A2D3.23,A7A10.29,A9G9.9,A15C12.10,A15E4.14,A17A2.16,A17C12.28,A17G12.1(ATCC受託番号PTA−3314),A17H6.1,A18B3.11(ATCC受託番号PTA−3312),A19E2.7,B3F6.17(ATCC受託番号PTA−3319),B6G7.10(ATCC受託番号PTA−3313),B11H8.4。
【0011】
本発明の別の局面においては、本発明の抗体は、Criptoのリガンド/レセプター結合ドメイン中のエピトープに特異的に結合する。Criptoは、CR−1(配列番号1)またはCR−3(配列番号2)から選択され得る。さらに特定の実施形態においては、リガンド/レセプター結合ドメイン中のこのエピトープに特異的に結合する抗体としては、例えば、以下が挙げられる:A6C12.11、A6F8.6(ATCC受託番号PTA−3318),A8G3.5(ATCC受託番号PTA−3317),A19A10.30,A8H3.1(ATCC受託番号PTA−3315),A27F6.1(ATCC受託番号PTA−3310),A40G12.8(ATCC受託番号PTA−3316),A17G12.1(ATCC受託番号PTA−3314),A18B3.11(ATCC受託番号PTA−3312),およびB6G7.10(ATCC受託番号PTA−3313)。
【0012】
一つの実施形態においては、本発明の抗体が結合するエピトープは、EGF様ドメイン中にある。EGF様ドメイン中のこのエピトープに特異的に結合する抗体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:A40G12.8(ATCC受託番号PTA−3316),A8H3.1(ATCC受託番号PTA−3315),A27F6.1(ATCC受託番号PTA−3310),B6G7.10(ATCC受託番号PTA−3313)、A17G12.1(ATCC受託番号PTA−3314),およびA18B3.11(ATCC受託番号PTA−3312)。
【0013】
別の実施形態においては、本発明の抗体が結合するエピトープは、cysリッチドメイン中にある。このcysリッチドメイン中のこのエピトープに特異的に結合する抗体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:A19A10.30,A8G3.5(ATCC受託番号PTA−3317),A6F8.6(ATCC受託番号PTA−3318)およびA6C12.11。
【0014】
別の実施形態においては、本発明の抗体が結合するこのエピトープは、Criptoのアミノ酸残基46〜62に及ぶドメイン中にある。Criptoのアミノ酸残基46〜62に及ぶドメイン中のエピトープに特異的に結合する抗体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:A10B2.18(ATCC受託番号PTA−3311),B3F6.17(ATCC受託番号PTA−3319),およびA17A2.16。
【0015】
本発明はまた、Criptoに特異的に結合し、そしてCriptoのシグナル伝達を調節し得る抗体を意図する。Criptoに特異的に結合し、そしてCriptoのシグナル伝達を調節し得る抗体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:A40G12.8(ATCC受託番号PTA−3316),A8HG3.1(ATCC受託番号PTA−3315),A27F6.1(ATCC受託番号PTA−3310),およびA6C12.11。一つの実施形態においては、Criptoに特異的に結合し、そしてCriptoのシグナル伝達を調節し得る本発明の抗体は、CriptoのEGF様ドメイン中、またはcysリッチドメイン中のエピトープに結合する。
【0016】
本発明はまた、Criptoに特異的に結合し、そしてCriptoとALK4との間の相互作用をブロックする抗体を意図する。Criptoに特異的に結合し、そしてCriptoとALK4との間の相互作用をブロックし得る抗体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:A8G3.5(ATCC受託番号PTA−3317)およびA6F8.6(ATCC受託番号PTA−3318)、およびA6C12.11。1つの実施形態においては、Criptoに特異的に結合し、そしてCriptoとALK4との間の相互作用をブロックし得る本発明の抗体は、CriptoのEGF様ドメインまたはcysリッチドメイン中のエピトープに結合する。
【0017】
別の局面においては、本発明は、Criptoに特異的に結合し、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体を意図する。Criptoに特異的に結合し、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:A27F6.1(ATCC受託番号PTA−3310),B6G7.10(ATCC受託番号PTA−3313)およびA8G3.5(ATCC受託番号PTA−3317)。
【0018】
一つの実施形態においては、Criptoに特異的に結合し、そして腫瘍増殖を調節し得る本発明の抗体は、CriptoのEGF様ドメインまたはcysリッチドメイン中のエピトープに結合する。
【0019】
さらなる別の局面においては、本発明は、Criptoに特異的に結合し、Criptoのシグナル伝達を調節し得、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体を意図する。Criptoに特異的に結合し、Criptoのシグナル伝達を調節し得、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体としては、A27F6.1(ATCC受託番号PTA−3310)が挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
一つの実施形態においては、Criptoに特異的に結合し、Criptoのシグナル伝達を調節し得、そして腫瘍増殖を調節し得る本発明の抗体は、criptのEGF様ドメインまたはcysリッチドメイン中のエピトープに結合する。
【0021】
さらなる局面においては、本発明は、Criptoに特異的に結合し、CriptoとALK4との間の相互作用をブロックし得、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体を意図する。Criptoに特異的に結合し、CriptoとALK4との間の相互作用をブロックし得、そして腫瘍増殖を調節し得る抗体としては、A8G3.5(ATCC受託番号PTA−3317)が挙げられるが、これに限定されない。
【0022】
別の実施形態においては、本発明は、以下からなる群から選択されるハイブリドーマによって生成される抗体を提供する:A6F8.6(ATCC受託番号PTA−3318)、A8G3.5(ATCC受託番号PTA−3317)、A8H3.1(ATCC受託番号PTA−3315)、A10B2.18(ATCC受託番号PTA−3311)、A27F6.1(ATCC受託番号PTA−3310)、A40G12.8(ATCC受託番号PTA−3316)、A17G12.1(ATCC受託番号PTA−3314)、A18B3.11(ATCC受託番号PTA−3312)、B3F6.17(ATCC受託番号PTA−3319)、およびB6G7.10(ATCC受託番号PTA−3313)。
【0023】
本発明の抗体としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、およびヒト抗体。
【0024】
本発明はまた、上記される少なくとも1個の抗体を含む、Criptoを発現する腫瘍を有する被験体への投与用組成物を提供する。さらに特定の実施形態においては、この被験体は、ヒトである。この組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。上記される抗体は、化学療法剤と結合体化され得るか、または結合体化していない化学療法剤との組み合わせで提供され得る。
【0025】
本発明の別の局面で意図されることは、サンプル中のインビトロでの腫瘍細胞の増殖を調節する方法であり、この方法は、このサンプルに、上記される組成物に添加する工程を包含する。
【0026】
また意図されることは、被験体におけるインビボでの腫瘍細胞の増殖を調節する方法であり、この方法は、この被験体に、上記される組成物の有効量を投与する工程を包含する。特定の実施形態においては、この被験体は、ヒトである。
【0027】
本発明の別の局面は、Criptoを過剰発現する腫瘍を有する被験体を処置する方法であり、この方法は、この被験体に、上記される組成物を有効量で投与する工程を包含する。投与用組成物は、以下を含み得る:薬学的に受容可能な賦形剤、化学療法剤に結合体化した抗体、および結合体化されない化学療法剤との組み合わせで投与される抗体。
【0028】
本発明の方法は、腫瘍細胞の増殖の調節および/または腫瘍を有する被験体(すなわち、ヒト)の処置において特に有用であり、ここで腫瘍細胞は、乳癌細胞、精巣腫瘍細胞、結腸癌細胞、肺癌細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、頸部腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞から選択される。
【0029】
さらなる別の実施形態においては、本発明は、組織がCriptoを発現するか否かを決定する方法を意図し、上記される抗体のいずれかを使用して、イムノアッセイで被験体に由来する組織を分析する工程を含む。また意図されることは、細胞株がCriptoを過剰発現するか否かを決定する方法であり、上記される抗体のいずれかを使用するイムノアッセイにおいて細胞株を分析する工程を含む。
【0030】
本発明のこれらおよび他の局面は、下記の発明の詳細な説明において、今まで以上に詳しく記載している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】なし
【図2】なし
【図3】なし
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
Criptoに特異的に結合する抗体、およびCriptoのシグナル伝達もしくはタンパク質の相互作用を調節するための抗体の使用、ならびに/またはCriptoとALK4との間の相互作用をブロックする抗体、ならびに/または腫瘍細胞の増殖を調節する抗体が発見されている。Criptoに特異的に結合する種々のクラスの抗体が発見されており、この抗体としては,例えば、以下が挙げられる:天然Criptoタンパク質、またはCriptoの変性形態のいずれかのリガンド/レセプター結合ドメイン中のエピトープに特異的に結合する抗体;EGF様ドメイン、cysリッチドメイン、またはアミノ酸残基46〜150を含む領域からのペプチド(例えば、約3個〜約20個のアミノ酸)を結合する抗体;Criptoに結合し、そしてCriptoのシグナル伝達を調節する抗体;Criptoに結合し、そして腫瘍細胞の増殖を調節する抗体;およびCriptoに結合し、Criptoのシグナル伝達を調節し、そして腫瘍細胞の増殖を調節する抗体。これらの抗体は、リガンド/レセプター結合ドメインに結合し、Criptoシグナル伝達を調節し、または腫瘍細胞の増殖を調節する抗体を選択するために、従来のインビトロアッセイを使用して、選択される。
【0033】
本発明の方法は、腫瘍の増殖速度(これは、正常組織に対する異常な速度である)が少なくとも部分的にCriptoに依存する場合、哺乳動物の悪性腫瘍または良性腫瘍の治療において有用である。異常な増殖速度は、正常ホメオスタシスのために必要な増殖速度を超え、そして同起源の正常組織の増殖速度を超える増殖速度である。
【0034】
(定義)
種々の定義は、この文書全体にわたってなされる。ほとんどの語は、当業者によりその語が有するとみなされる意味を有する。この文書の、以下または他のいずれかで具体的に定義された語は、全体として、そして当業者によって代表的に理解されるように本発明に関連して提供される意味を有する。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「領域」とは、生体分子の一次構造に関する物理的に隣接した部分を意味する。タンパク質の場合においては、領域は、このタンパク質のアミノ酸配列に関する隣接した部分によって、規定される。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「ドメイン」とは、公知の生体分子機能または疑わしい生体分子機能に貢献する、生体分子の構造部分をいう。ドメインは、これらの領域、またはこれらの部分と同一の広がりを持ち得る;ドメインはまた、特定領域部分の全てまたは部分に加えて、特定領域と区別される生体分子部分を組み込み得る。タンパク質ドメインの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:細胞外ドメイン(Criptoの残基約31から残基約188に及び、Cripto、CR−1(配列番号1)およびCR−3(配列番号2)を含む)および膜貫通ドメイン(Criptoの残基約169から残基約188に及び、Cripto、CR−1(配列番号1)およびCR−3(配列番号2)を含む)。このCriptoタンパク質のリガンド/レセプター結合ドメインは、Criptoの残基約75から残基約150に及び、Cripto、CR−1(配列番号1)およびCR−3(配列番号2)を含み、そして例えば、Cripto、CR−1(配列番号1)およびCR−3(配列番号2)を含み、Criptoの残基約75から残基約112に及ぶ、CriptoのEGF様ドメイン、そして例えば、Cripto、CR−1(配列番号1)およびCR−3(配列番号2)を含む、Criptoの残基約114から残基約150に及ぶ、Criptoのシステインリッチドメインを含む。例えば、本発明の多くのモノクローナル抗体は、このEFGF様ドメインまたはcysリッチドメインに結合すると同定されている。さらに、モノクローナル抗体A10B2.18(ATCC受託番号PTA−3311)、B3F6.17(ATCC受託番号PTA−3319)およびA17A2.16は、アミノ酸残基46〜62(EGF様ドメインの上流にある)に及ぶ領域内のドメイン中に形成された、エピトープに結合すると同定されている。下記の実施例3を参照のこと。リガンド/レセプター結合ドメイン中のエピトープは、コンホメーションの天然Criptoタンパク質で形成されるか、または変性Criptoタンパク質で形成されるエピトープであり、このエピトープに抗体が結合し得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、完全なインタクトの抗体、およびこれらのFab、Fab’、F(ab)2、ならびに他のフラグメントをいうことを意味する。完全なインタクトの抗体は、以下を含むがこれらに限定されない:モノクローナル抗体(例えば、マウスのモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、およびヒト化抗体。抗体の種々の形態は、標準的な組換えDNA技術(WinterおよびMilstein,Nature 349:293−99,1991)を使用して、製造され得る。例えば、動物の抗体に由来する抗原結合ドメインが、ヒト定常ドメインに連結された「キメラ」抗体(組換えDNA技術を用いて対応するヒト免疫グロブリン軽鎖または重鎖に由来する領域で、重鎖のヒンジ領域および定常領域、ならびに/または軽鎖の定常領域の全てまたは部分を置換されている、最初に非ヒトの哺乳動物に由来する抗体)が構成され得る。(例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−55,1984を参照のこと)。キメラ抗体は、ヒトの臨床処置に使用される場合、動物の抗体によって惹起される免疫応答を減少させる。
【0038】
さらに、組換え「ヒト化」抗体は、合成され得る。ヒト化抗体は、最初は非ヒトの哺乳動物に由来する抗体であり、ここで組換えDNA技術は、ヒト免疫グロブリン軽鎖または重鎖の対応する領域からの、アミノ酸と結合する抗原を必要としないアミノ酸のいくつかまたは全てを置換するために使用されている。すなわち、これらは、主にヒト免疫グロブリン配列を含むキメラであり、この中に特異的な抗原結合に関与する領域が挿入されている(例えば、PCT特許出願WO 94/04679を参照のこと)。動物は、所望される抗原を用いて、免疫され、この対応する抗体は、単離され、そして特異的な抗原結合に関与する可変領域の配列に関する部分は、除去される。動物に由来する抗原に結合する領域は次いで、ヒト抗体遺伝子の適切な位置の中にクローン化され、ここでこの抗原を結合する領域は、除去されている。ヒト化抗体は、ヒト治療に使用される抗体における異種(種間)配列の使用を最小化し、そして望まれない免疫応答をほとんど惹起しない。霊長類化(Primatized)抗体は、同様に生成され得る。
【0039】
本発明の別の実施形態は、非ヒト動物(例えば、1個以上のヒト免疫グロブリン導入遺伝子を保有するトランスジェニック動物)中で生成され得るヒト抗体の使用を含む。このような動物は、米国特許第5,569,825号に記載されているようにハイブリドーマを生成するための脾細胞の供給源として、使用され得る。
【0040】
抗体フラグメントおよび一価抗体もまた、本発明の方法および組成物において使用され得る。一価抗体は、第二の重鎖のFc(または幹)領域に結合した重鎖/軽鎖ダイマーを含む。「Fab領域」とは、重鎖のY枝部分を含む配列に対して、および軽鎖の全体に対しておおよそ等価、または類似である鎖の部分をいい、そして、集団的に(凝集体で)、抗体活性を示すことが示されている。Fabタンパク質は、1個の重鎖および1個の軽鎖の凝集体(一般にFab’として公知)、ならびに抗体Yの2個の分枝セグメントに対応するテトラマー(一般にF(ab)2として公知)を含む(この凝集体が特定抗原、または特定抗原ファミリーと特異的に反応し得る限りは、上記のいずれかが、共有結合的に凝集されるか、または非共有結合的に凝集される)。
【0041】
本発明の抗体のいずれかは、必要に応じて、以下で規定されるような化学療法剤に結合体化され得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「結合」とは、2個のタンパク質間もしくは2個の化合物間、または関連タンパク質間もしくは関連化合物間、またはこれらの組み合わせ間の物理的相互作用または化学的相互作用を意味し、抗原とタンパク質との間の相互作用を含む。結合としては、以下が挙げられる:イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用など。物理的相互作用、結合は、直接的または間接的のいずれかであり得る(間接的とは、別のタンパク質もしくは化合物の影響を介するか、または影響を原因とする)。直接結合とは、別のタンパク質もしくは化合物の影響を介するか、または影響を原因して起こらないだけでなく、代わりに他の実質的な化学的中間体がない相互作用をいう。結合は、多くの異なった様式で検出され得る。結合を検出する方法は、当業者に対して周知である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「Criptoをインターナライズし得る抗体」とは、Criptoを細胞表面から除去する一方、この細胞に入る抗体を意味する。蛍光標識したCriptoのモノクローナル抗体を使用することによって、Criptoをインターナライズし得るCripto抗体についてスクリーニングし得る。Cripto陽性細胞中にインターナライズする抗体を測定するために、蛍光顕微鏡および/または共焦点顕微鏡下で、細胞を見ることによって、この細胞への抗体の蛍光シグナルの取り込みについてアッセイし得る。インターナライズしたこれらの抗体は、細胞質および/または(and or)細胞の小胞中の蛍光シグナルとして見られる。Criptoをインターナライズし得るCripto抗体の非限定的な例としては、A27F6.1およびB3F6.17が挙げられる。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「化合物」とは、以下が挙げられるが、これらに限定されない、任意の同定可能な化学物質または分子を意味する:イオン、原子、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸であり、そしてこのような化合物は、天然または合成であり得る。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「調節する」または用語「改変する」とは、特定の活性またはタンパク質の量、質、または影響における増大または低下を意味する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「Criptoシグナル伝達を調節する」とは、以下のCripto活性の量、質、または影響における増大または減少を意味する:約5%、好ましくは約10%、さらに好ましくは約20%、さらに好ましくは約30%、さらに好ましくは約40%、さらに好ましくは約50%、さらに好ましくは約60%、さらに好ましくは約70%、さらに好ましくは約80%、さらに好ましくは約90%、そして最も好ましくは約100%。活性は、当該分野で公知のアッセイ(例えば、実施例3に示されるヌル細胞アッセイ)によって測定され得る。別の実施形態においては、Criptoタンパク質と別のタンパク質との間のタンパク質相互作用は、本発明の抗体の結合を介して、同様に下方に調節される。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「CriptoとALK4との間の相互作用をブロックする」とは、相互作用(すなわち、CriptoとALK4との間の結合)における以下の増大または低下を意味する:約5%、好ましくは約10%、さらに好ましくは約20%、さらに好ましくは約30%、さらに好ましくは約40%、さらに好ましくは約50%、さらに好ましくは約60%、さらに好ましくは約70%、さらに好ましくは約80%、さらに好ましくは約90%、そして最も好ましくは約100%。活性は、当該分野で公知のアッセイ(例えば、実施例8に示される結合アッセイ)によって、測定され得る。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「インビトロで腫瘍細胞の増殖を調節する」とは、以下のインビトロでの腫瘍細胞数における増大または低下を意味する:約5%、好ましくは約10%、さらに好ましくは約20%、さらに好ましくは約30%、さらに好ましくは約40%、さらに好ましくは約50%、さらに好ましくは約60%、さらに好ましくは約70%、さらに好ましくは約80%、さらに好ましくは約90%、そして最も好ましくは約100%。インビトロでの腫瘍細胞の増殖の調節は、当該分野で公知のアッセイ(例えば、実施例4に示されるGEO細胞の軟寒天アッセイ)によって測定され得る。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「インビボでの腫瘍細胞の増殖を調節する」とは、以下のインビボで腫瘍細胞数における増大または低下を意味する:約5%、好ましくは約10%、さらに好ましくは約20%、さらに好ましくは約30%、さらに好ましくは約40%、さらに好ましくは約50%、さらに好ましくは約60%、さらに好ましくは約70%、さらに好ましくは約80%、さらに好ましくは約90%、そして最も好ましくは約100%。インビボでの腫瘍細胞の増殖の調節は、当該分野で公知のアッセイ(例えば、実施例5に示されるアッセイ)によって測定され得る。
【0050】
用語「予防」は、生物が、異常な状態になる、または異常な状態を進展させる可能性を減少させることを称する。
【0051】
用語「処置」は、生物において、治療効果を有することおよび少なくとも部分的に生物における異常な状態を緩和するもしくは抑制することを称する。処置としては、抑制された腫瘍の増殖を維持すること、および緩解の誘導が挙げられる。
【0052】
用語「治療効果」とは、異常な状態の阻害を称する。治療効果は異常な状態の1以上の症状をある程度まで軽減する。異常な状態の治療に関して、治療効果は、下記のうちの1以上を称し得る:(a)細胞の増殖、成長、および/または分化における増加または減少;(b)細胞死の阻害(すなわち、緩徐化もしくは停止)もしくは促進;(c)変性の阻害;(d)異常な状態に関係する1以上の症状をある程度まで軽減;および(e)細胞の集団の機能を増強。異常な状態に対して効力を示す化合物は、本明細書中に記載されるように同定され得る。
【0053】
用語「投与」は、生物の細胞中もしくは組織中に化合物を取り込む方法に関連する。生物の細胞もしくは組織が生物内に存在する場合、またはその生物の外部に存在する場合に、異常な状態は予防もしくは処置され得る。生物の外部に存在する細胞は、細胞培養ディッシュの中もしくは別の生物の中で、維持または育成され得る。生物内に宿る(harbor)細胞に対して、当該分野に存在する化合物を投与するための多くの技術には、経口、非経口、経皮、およびエアロゾルの適用(これらに限定されない)が挙げられる。生物の外部にある細胞に対し、化合物を投与するための複数の技術が当該分野に存在し、この技術としては、細胞マイクロインジェクション技術、形質転換技術およびキャリア技術(これらに限定されない)が挙げられる。投与は、当該分野で公知である多くの様式(例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内など)により、実施され得る。インビボ療法において使用される場合、本発明の抗体は、有効量で、患者に投与される。本明細書中で使用される「有効量」は、有益な臨床結果もしくは所望される臨床結果をもたらすために十分な量(すなわち、患者の負担を除去する量、もしくは軽減する量)である。有効量は、1以上の投与において、投与され得る。本発明の目的として、本発明の抗体の有効量は、Cripto関連疾患状態、特にCripto関連腫瘍の進展を改善、安定化もしくは遅延するために十分な抗体量である。これらの有効性の指標の検出および測定は、下記に記載される。代表的な処置レジメンの例として、毎週のスケジュールにおいて、約2〜5mg/kgの用量で本発明の対象の抗体の静脈内注射よる投与が挙げられる。患者が入院を望まない場合は、抗体は、外来患者化学療法注入単位(chemoinfusion unit)において、投与される。当該分野で公知である他の投与レジメンもまた、検討される。
【0054】
異常状態はまた、生物へのシグナル伝達経路に異常を有する細胞群に本発明の抗体を投与することにより、予防もしくは処置され得る。その後、生物の機能における化合物の投与の効果は、モニターされ得る。この生物は、好ましくは、ヒトである。
【0055】
「Cripto過剰発現」は、発現が、統計学的に有意な量において、隣接する正常組織のCriptoの発現より強い組織によるCriptoの発現を意味することを意図される。
【0056】
「化学療法剤」は、腫瘍の増殖の阻害、腫瘍抑制の維持、および/もしくは緩解の誘導において治療効果を有する(天然化合物、合成化合物、タンパク質、修飾されたタンパク質、および放射性化合物のような)当該分野で同定される任意の薬剤を称する。本明細書中で企図される化学療法剤は、本発明の抗体と結合され得る薬剤、もしくは別に、それらの抗体と結合体化されることなく、本発明の抗体と併用され得る薬剤を包含する。本発明の抗体と結合体化され得る例示的な化学療法剤として、放射性結合体(90Y、131I、99mTc、111In、186Rhなど)、腫瘍活性化プロドラッグ(メイタンシノイド(maytansinoid)、CC−1065アナログ、クリケアマイシン(clicheamicin)誘導体、アントラサイクリン、ビンカアルカロイドなど)、リシン(ricin)、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(これらに限定されない)が挙げられる。
【0057】
化学療法剤は、本発明の抗体に結合されるよりむしろ、抗体と組み合わせて(すなわち、非結合体化化学療法剤)使用され得、以下を含み得る:白金(すなわち、シスプラチン)、アントラサイクリン、ヌクレオシドアナログ(プリンおよびピリミジン)、タキサン、カンプトテシン、エピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxin)、DNAアルキル化剤、葉酸塩拮抗薬、ビンカアルカロイド、リボヌクレオチドレダクターゼインヒビター、エストロゲンインヒビター、プロゲステロンインヒビター、アンドロゲンインヒビター、アロマターゼインヒビター、インターフェロン、インターロイキン、モノクローナル抗体、タキソール、カンプトサール(camptosar)、アドリアマイシン(dox)、5−FUおよびゲムシタビン(gemcitabine)。このような化学療法剤は、抗体および非結合化化学療法剤の同時投与により、本発明の抗体と組合せ、本発明の実施において使用され得る。
【0058】
「薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤」は、当該分野で公知である生物学的に不活性な化合物を称し、本発明の抗体の投与において使用される。受容可能なキャリアは、当該分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,Gennaro編,Mark Publishing Co.,1990において記載される。受容可能なキャリアは、生体適合性塩、不活性塩もしくは生体吸収性塩、緩衝化薬剤、オリゴ糖もしくは多糖、ポリマー、ヒアルロン酸のような粘弾性の化合物、防腐剤などを包含し得る。
【0059】
「被験体」は、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーを称し、そして被験体には、家畜、スポーツ動物、およびヒトを含む霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
(本発明の抗体)
本発明の抗体は、Criptoに特異的に結合する。本明細書中に使用されるように、Criptoは、CR−1 Criptoタンパク質、CR−3 Criptoタンパク質、およびそれらのフラグメントを含む。これらのフラグメントは、細胞外ドメインもしくは細胞内ドメイン、EGF様ドメイン、cysリッチドメイン、レセプター結合ドメインなどのような完全なドメインであり得る。このようなフラグメントは、Criptoタンパク質の任意のドメインにおける隣接するエピトープおよび非隣接のエピトープも含み得る。
【0061】
【化1】

一つの実施形態において、本発明の抗体は、CriptoのEGF様ドメイン中のエピトープに結合する。EGF様ドメインは、成熟Criptoタンパク質のアミノ酸残基75あたり〜アミノ酸残基112あたりに及ぶ。EGF様ドメイン中のエピトープは、アミノ酸残基の直鎖状もしくは非直鎖状の範囲を含み得る。企図される直鎖状エピトープの例として、おおよそ残基75〜85、80〜90、85〜95、90〜100、95〜105、100〜110、または105〜112が挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態において、EGFドメイン中のエピトープは、変性されたCriptoタンパク質に対して、高次構造上、ネイティブのCriptoタンパク質において形成されるエピトープである。
【0062】
別の実施形態において、本発明の抗体は、Criptoのcysリッチドメイン中のエピトープに結合する。cysリッチドメインは、成熟Criptoタンパク質のおおよそアミノ酸残基114〜アミノ酸残基150に及ぶ。cysリッチドメイン中のエピトープは、アミノ酸残基の直鎖状もしくは非直鎖状の範囲を含み得る。企図される直鎖状エピトープの例として、おおよそ残基114〜125、120〜130、125〜135、130〜140、135〜145、または140〜150が挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態において、cysリッチドメインのエピトープは、変性されたCriptoタンパク質に対して、高次構造上、ネイティブのCriptoタンパク質において形成されるエピトープである。
【0063】
一旦、抗体が作成されれば、Criptoへの抗体の結合は、ELISAのような当該分野において公知の標準的な技術を使用してアッセイされ得、一方、細胞表面上のCriptoの存在は、実施例2に示されるように、フローサイトメトリー(FACS)を使用して、アッセイされ得る。このような結合を測定する任意の他の技術が、代わりとして使用され得る。
【0064】
本発明は、Criptoまたはそのフラグメントに特異的な抗体(例えば、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、二官能性/二特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および相補性決定領域(CDR)グラフト抗体(本発明のポリペプチドを特異的に認識するCDR配列を含有する化合物を含む)を提供する。Fab、Fab’、F(ab’)、およびFを含む抗体フラグメントもまた、本発明により提供される。用語「特異的」および「選択的」は、本発明の抗体の結合を記述するため使用される場合、本発明の抗体の可変領域がCriptoポリペプチドを認識し、結合することを示す。本発明の特異的抗体がまた、この抗体の可変領域外の配列(特に、この分子の定常領域の配列)との相互作用を介して、他のタンパク質(例えば、S.aureusプロテインAもしくはELISA技術における他の抗体)とも相互作用し得ることが、理解される。本発明の抗体(すなわち、エピトープ、リガンド/レセプター結合ドメインおよびアミノ酸残基46〜62に及ぶドメインに特異的に結合する抗体)の結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは、当該分野において周知であり、ルーチンとして実施される。このようなアッセイの包括的な考察に関して、Harlowら(編)、Antibodies A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor,NY(1988)、6章を参照のこと。Criptoタンパク質のフラグメントを認識および結合する抗体もまた企図されるが、但し、この抗体はCriptoポリペプチドに対して特異的である。本発明の抗体は、当該分野において周知の任意の方法を使用して作製され得、ルーチンとして実施され得る。
【0065】
一つの実施形態において、本発明は、Criptoのリガンド/レセプター結合ドメイン中のエピトープと特異的に結合する抗体を提供する。抗体の特異性は、下記により詳細に記載される。しかしながら、以前に文献に記載され、都合よく(例えば、両方のペプチド中における類似したエピトープの偶然の存在により)Criptoと交差反応する能力がある他のポリペプチドから作製され得る抗体は、「交差反応性」抗体とみなされることは強調されるべきである。このような交差反応性抗体は、Criptoに対し「特異的」な抗体でない。抗体が特異的にCriptoのエピトープに結合するかどうかの決定は、当該分野いおいて周知であるウェスタンブロットアッセイのようないくつかのアッセイのうちの任意のものを使用して達成される。Criptoを発現する細胞を同定するために、そしてまたCriptoリガンド/レセプター結合活性を調節するためにも、Criptoタンパク質の細胞外エピトープ(すなわち、細胞の外側に見られるCriptoタンパク質の部分)と特異的に結合する抗体は、特に有用である。
【0066】
一つの実施形態において、本発明は、ポリクローナル抗体(ここで、これらの抗体の少なくとも一つは、Criptoに特異的な本発明の抗体である)を含む無細胞組成物を提供する。動物から単離された抗血清は、例示的な組成物であり、この組成物は、水もしくは他の希釈液、賦形剤、またはキャリア中に再懸濁された抗血清の抗体分画を含む組成物である。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体を提供する。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原性部位に向けられている。さらに、代表的に異なるエピトープに向けられた異なる抗体を含有するポリクローナル調製物と対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原の単一の決定因子に向けられている。モノクローナル抗体は、抗原−抗体結合を使用する診断的アッセイ方法および分析的アッセイ方法の選択性および特異性を改善するために有用である。モノクローナル抗体の別の利点は、それがハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンの混入がないことである。このような抗体を産生するハイブリドーマもまた、本発明の局面として意図される。
【0068】
さらに別の関連した実施形態において、本発明は、Criptoに特異的な抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体を提供する。抗イディオタイプ抗体のさらに詳細な記載に関しては、例えば、米国特許第6,063,379号および米国特許第5,780,029号を参照のこと。
【0069】
抗体が、化学的にかまたは組換え技術により単離され得る比較的小さい抗原結合ドメインを含むことは、周知である。このようなドメインは、有用なCripto結合分子そのものであり、そしてまた、ヒト抗体へ再導入され得るか、または化学療法剤もしくはポリペプチドと融合され得る。それ故、さらに別の実施形態において、本発明は、Cripto特異的抗体のフラグメントを含むポリペプチドを提供する。ここで、このフラグメントおよび結合された分子は、いくらかでもCriptoに結合する。限定されない例として、本発明は、単鎖抗体およびCDRグラフト抗体であるポリペプチドを提供する。CDRグラフト抗体のさらに詳細な記載に関しては、例えば、米国特許第5,859,205号を参照のこと。
【0070】
別の実施形態において、非ヒト抗体は、当該分野において公知の方法のいずれかより、ヒト化され得る。ヒト化抗体は、インビボ治療適用のために有用である。さらに、組換え型「ヒト化」抗体が、合成され得る。ヒト化抗体は、初めに非ヒト哺乳動物に由来する抗体であり、抗原結合に必要のないアミノ酸のいくらかもしくは全部を、ヒト免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖の対応する領域由来のアミノ酸で置換するため、組換えDNA技術が使用される。つまり、それらは、特異的な抗原結合の原因である領域が挿入されたヒト免疫グロブリン配列を大部分に含むキメラである(例えば、PCT特許出願番号WO94/04679を参照のこと)。動物は、所望される抗原で免疫され、対応する抗体は、単離され、そして、特異的な抗原結合の原因である可変領域配列の部分は、取り出される。次いで、動物由来抗原結合領域は、抗原結合領域が欠失されたヒト抗体遺伝子の適切な位置にクローニングされる。ヒト化抗体は、ヒトの治療における使用ために、抗体の非相同(種間)配列の使用を最小化し、望まれない免疫応答を引き起こしそうにない。霊長類化抗体は、霊長類(例えば、アカゲザル、ヒヒおよびチンパンジー)抗体遺伝子を使用して、同様に産生し得る。その後、さらなる変化が、アフィニティもしくは免疫原性を調節するために、抗体のフレームワークに導入され得る。例えば、米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、および第6,180,370号を参照のこと。
【0071】
本発明の別の実施形態は、1以上のヒト免疫グロブリントランスジーンを有するトランスジェニック動物のような、非ヒト動物において産生され得るヒト抗体の使用を含む。このような動物は、米国特許第5,569,825号、WO00076310、WO00058499およびWO00037504に記載されるように、そして本明細書中に参考として援用されるように、ハイブリドーマを産生するための脾細胞の供給源として、使用され得る。
【0072】
(シグナル調節)
別の実施形態において、本発明の抗体は、Criptoに結合し、そしてCriptoシグナル伝達もしくはCripto−タンパク質相互作用を調節する。Cripto活性の過剰発現は、間葉細胞の特性を促進する脱分化状態、増大された増殖、および細胞移動(Salomonら、BioEssays 21:61−70,1999;Ciardielloら、Oncogene 9:291−298,1994;およびBaldassarreら、Int.J.Cancer 66:538−543,1996)、腫瘍形成において見られる細胞の形質転換に関連する表現型を導き得る。
【0073】
抗Cripto抗体の活性およびそのCriptoシグナル伝達を調節する能力を試験する一つの方法は、F9−Criptoノックアウト(KO)細胞株(Minchiottiら、Meth.Dev.90:133−142,2000)を用いた方法である。Criptoは、Xenopus胚中でsmad2リン酸化および転写因子FASTを刺激し、そして転写因子FASTの活性は、FAST調節エレメント−ルシフェラーゼレポーター遺伝子からのルシフェラーゼ活性を測定することにより観測され得る(Saijoら、Mol.Cell 5:35−47,2000)。F9−Cripto KO細胞は、Cripto遺伝子を欠失され、故にCriptoおよびCripto依存的シグナル伝達に対してヌルである(Minchiottiら,Mech.Dev.90:133−142,2000)。Criptoシグナル伝達は、Cripto遺伝子コンストラクト、FAST遺伝子コンストラクト、およびFAST調節エレメント−ルシフェラーゼ遺伝子コンストラクトをトランスフェクトすることにより、F9Cripto KO細胞において評価され得る。これらの細胞株中で、Cripto cDNA、およびFASTA cDNAがその中へトランスフェクトされなければ、Cripto依存的FASTルシフェラーゼ活性は、見られない。Cripto依存的なNodalのシグナル伝達を遮断し得る抗体は、Criptoシグナル伝達機能を遮断する抗体である。
【0074】
軟寒天アッセイにおける増殖(下記の実施例4を参照のこと)のような、Criptoの活性を測定し得る他のアッセイは、当業者により使用され得る。軟寒天中で細胞が増殖する能力は、細胞の形質転換と関連し、そして、このアッセイは、腫瘍細胞増殖の阻害を測定するための古典的なインビトロアッセイである。活性の阻害を決定する際に有用な他のアッセイには、プラスチック上のインビトロアッセイなどが挙げられる。
【0075】
(治療用途)
本発明の抗体は、腫瘍細胞増殖の調節などの治療目的、Criptoを検出するかもしくはCriptoを定量するための診断目的、およびCriptoの精製のためにも有用である。
【0076】
本発明の一つの実施形態において、Criptoに特異的に結合し得、患者における腫瘍細胞の増殖を調節する抗体が、提供される。一つの実施形態において、腫瘍細胞は、精巣腫瘍細胞、乳房腫瘍細胞、精巣腫瘍細胞、結腸腫瘍細胞、肺腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、膀胱腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、子宮頸部腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、および胃腫瘍細胞である。
【0077】
別の実施形態において、Criptoに特異的に結合し得、Criptoを過剰発現する腫瘍細胞の増殖を調節する抗体が、提供される。一つの実施形態において、腫瘍細胞は、乳癌、精巣癌、結腸癌、肺癌、卵巣癌、膀胱癌、子宮癌、子宮頸癌、膵臓癌、および胃癌由来の細胞株のようなCriptoを過剰発現する細胞株である。
【0078】
抗Cripto抗体は、下記の実施例4に例示されるように、当業者により使用される標準的なプロトコルについて、潜在的な抗癌剤としてのインビボ活性に対し、スクリーニングされ得る。このようなプロトコルの例は、National Cancer Institute(NCI)により、「in vivo cancer models screening」プロトコル、NIH 出版番号84−2635(Feb 1984)中に、概要を述べられている。
【0079】
本発明の別の実施形態において、本発明の抗体は、癌性の腫瘍を有する患者の処置のために使用される。
【0080】
本発明の抗体は、薬学的に受容可能な賦形剤と組み合され得、治療上有効な用量で、患者に投与され得る。腫瘍の増殖を阻害する方法の考察に関しては、例えば、米国特許第6,165,464号を参照のこと。
【0081】
Criptoの異常なレベル(すなわち、上昇されたレベルもしくは欠失されたレベル)に関連した障害に罹患した被験体を処置する方法もまた、意図される。ここで、この方法は、Criptoのリガンド/レセプター結合ドメイン(エピトープがCriptoのEGF様ドメインもしくはcysリッチドメイン中にあるドメインを含むが、限定されない)中のエピトープに特異的に結合する有効量の抗体を患者に投与する工程を包含する。
【0082】
Criptoの異常なレベル(すなわち、上昇されたレベルもしくは欠失されたレベル)に関連した障害に罹患した被験体を処置する方法もまた、意図される。ここで、この方法は、Criptoと特異的に複合体を形成し、A6C12.11、A6F8.6(ATCC 登録番号PTA−3318)、A7H1.19、A8F1.30、A8G3.5(ATCC 登録番号PTA−3317)、A8H3.1(ATCC 登録番号PTA−3315)、A8H3.2、A19A10.30、A10B2.18(ATCC 登録番号PTA−3311)、A27F6.1(ATCC 登録番号PTA−3310)、A40G12.8(ATCC 登録番号PTA−3316)、A2D3.23、A7A10.29、A9G9.9、A15C12.10、A15E4.14、A17A2.16、A17C12.28、A17G12.1(ATCC 登録番号PTA−3314)、A17H6.1、A18B3.11(ATCC 登録番号PTA−3312)、A19E2.7、B3F6.17(ATCC 登録番号PTA−3319)、およびB6G7.10(ATCC 登録番号PTA−3313)から成る群から選択される抗体が向けられるエピトープに向けられる有効量の抗体を被験体に投与すること工程を包含する。
【0083】
Criptoの検出を介した診断は、本発明の新規抗体を使用した標準的な結合アッセイにより容易に達成され、このことは、当業者が多種多様なサンプル、培養物中などで特異的にCriptoの存在を検出することを可能にする。
【0084】
本明細書中に記載される任意の目的のために、本発明の抗体を備えるキットもまた、包含される。一般に、本発明のキットはまた、抗体が免疫特異的であるコントロール抗原も備える。実施形態は、全ての試薬およびその使用のための指示書きを備えるキットを含む。
【0085】
本発明のさらなる特徴は、下記の例示的な実施例から明らかある。
【実施例】
【0086】
(実施例1:Criptoの発現および精製)
pSGS480で示される発現プラスミドを、ヒトIgG Fcドメイン(すなわち、「CR(del C)−Fc」)と融合された、CriptoのヒトCriptoアミノ酸残基1〜169[配列番号1のアミノ酸1〜169]をコードするcDNAの、ベクターpEAG1100へのサブクローニングにより構築された。
このベクターのさらに詳細な記載に関しては、同時係属の米国特許出願番号60/233,148、2000年9月18日出願を参照のこと。ベクターpEAG1100は、GIBCO−BRL Life TechnologiesのプラスミドpCMV−Sport−betagalの誘導体であり、CHO一過性トランスフェクトにおけるその使用は、Schifferliら、1999,Focus 21:16により記載された。プラスミドpCMV−Sport−Betagal(カタログ番号10586−014)からレポーター遺伝子β−ガラクトシダーゼNotIフラグメントを除去することにより、以下のようにそれを作製した:このプラスミドを、NotIおよびEcoRVで消化し、4.38kb NotIベクター骨格(backbone)フラグメントを、ゲル精製し、連結した。連結されたDNAを、コンピテントE.coli DH5αに形質転換した。pEAG1100を、単離されたシングルコロニーから、所望される組換え体を含むプラスミドとして単離した。プロモーター、ポリリンカー、および転写終結シグナルに及ぶpEAG1100の配列を、確認した。
【0087】
プラスミドpSGS480を、CHO細胞に一過性にトランスフェクトし、そしてこの細胞を、28℃で7日間、増殖させた。これらの細胞内および馴化培地におけるCR(del C)−Fcタンパク質の存在を、ウェスタンブロット解析により試験した。ウェスタンブロット解析のため、馴化培地およびCriptoトランスフェクト細胞由来の細胞を、還元条件下で4〜20%勾配ゲルでSDS−PAGEに供し、ニトロセルロースに電気泳動的に移し、そしてCripto融合タンパク質を、Cripto 17マーペプチド(配列番号1の残基97〜113を含む)−キーホールリンペットヘモシアニン結合体に対して惹起されたウサギポリクローナル抗血清で検出した。細胞を除去するための遠心後、ウェスタンブロット解析により、CR(del C)−Fcタンパク質が、効率的に馴化培地(上清)中に分泌されたことを示した。上清を、プロテインA−セファロース(Pharmacia)に適用し、結合されたタンパク質を、25mMリン酸ナトリウム(pH2.8)、100mM NaClで溶出した。溶出されたタンパク質を、0.5Mリン酸ナトリウム(pH8.6)で中和し、そして240〜340nmでの吸光度測定により総タンパク質含量を解析し、SDS−PAGEにより純度を解析した。溶出されたタンパク質を、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過し、−70℃で保存した。
【0088】
(実施例2:抗体の作製とスクリーニング)
溶出されたCR(del C)−Fcタンパク質を、マウスに注射し、そして当業者に公知の標準的なハイブリドーマ技術を使用して、モノクローナル抗体を作製する。
【0089】
(A.抗体の作製)
具体的には、メスのロバートソニアンマウス(Jackson Labs)を、完全フロイントアジュバント(GibcoBRL#15721−012)で乳化された25μgの精製ヒトCR del C−Fcで腹腔内に免疫した。マウスを、不完全フロイントアジュバント(GibcoBRL#15720−014)で乳化された25μgのCR del C−Fcで2回、およびプロテインAビーズで1回腹腔内に追加免疫した。血清を、スクリーニングし、最後の追加免疫から3週間後に、最高の力価を有するマウスを、融合の3日前、50μgの可溶性CR del C−Fcで、腹腔内に追加免疫した。融合の前日に、マウスを、50μgのCR del C−Fcで、静脈内に追加免疫した。マウス脾臓細胞を、FL653ミエローマ細胞と、1脾臓細胞:6ミエローマ細胞の比率で融合し、そして選択培地で96ウェルの組織培養プレートに1ウェルあたり100,000細胞、33,000細胞および11,000細胞でプレートした。増殖に関して陽性のウェルを、FACSでスクリーニングし、1週間後、ELASAでスクリーニングした。2回の融合を、実施した。
【0090】
(B.抗体のスクリーニング)
第1の融合もしくは第2の融合から生じた上清を、Cripto del Cおよび/もしくはCripto EGF様ドメインタンパク質の認識に関して、まずELISAプレートでスクリーニングした。コントロール融合タンパク質(LT−βレセプター−Fc)を、ヒトFcエピトープを認識するモノクローナル抗体を捨てるために、ELISAプレートにコーティングした。ELASAを、下記の節Cに記載されるように、実施した。第1の融合において、最初の上清を、FACSにより、精巣腫瘍細胞株、NCCITにおける細胞表面のCriptoタンパク質を認識する能力に関しても、スクリーニングした。第2の融合の場合、2種の腫瘍細胞株、NCCITおよび乳癌株、DU4475におけるCriptoを認識する上清の能力を、FACsにより解析した。2次スクリーニングは、腫瘍細胞株のパネルにおける細胞表面Criptoを認識するモノクローナル抗体上清の能力(結果は、表1および表2を参照のこと)、ヒト乳房腫瘍およびヒト結腸腫瘍組織切片において免疫組織化学的に、ヒトCriptoを認識するモノクローナル抗体の能力、Cripto−Nodalシグナル伝達アッセイでブロックするモノクローナル抗体の能力、プラスチック上もしくは軟寒天アッセイにおいて、腫瘍細胞株の増殖をブロックする能力、および細胞表面Criptoをインターナライズする能力を試験すること包含した。
【0091】
(C.ELISA)
ELISAアッセイが以下のように実施された:
材料:
プレート:Costar high−binding Easy−wash 96W プレート(07−200−642)
2’抗体:Pierce Gt anti−Ms IgG(H+L)−HRP(P131430)
基質:Pierce TMB Substrate Kit(34021)
停止液:1N H2SO4
緩衝液:
結合緩衝液:0.1M NaHPO4 pH9.0
ブロッキング緩衝液:PBS+10%ドナー子ウシ血清
洗浄緩衝液:PBS+0.1% tween−20
抗原CR−del−C−FcおよびCR−EGF−fc(コントロールhu IgG1融合タンパク質)を結合緩衝液で500ng/mlに希釈した。100μlを各ウェルに添加し、37℃で1時間または4℃で一晩、インキュベートした。液体をデカントし、プレートを反転させ、乾燥するまでブロットした。次いで、250μ/ウェルのブロッキング緩衝液を添加し、その後37℃で30分間インキュベートした。再び、液体をデカントし、プレートを反転させ、乾燥するまでブロットした。上清を洗浄緩衝液で1:50に希釈し、50μl/ウェルでプレートし、その後、室温で1時間インキュベートした。プレートを250μl/ウェルの洗浄緩衝液を用いて3回、激しく洗浄した。次いで、洗浄緩衝液で1:10,000に希釈した2’抗体(100μl/ウェル)を添加し、その後室温で30分間、インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液(250μl/ウェル)を用いて、3回、激しく洗浄し、次いで、基質を100μl/ウェルで添加した。色が、十分に濃くなるまで発色させ、次いで、停止液(100μl/ウェル)を添加し、プレートを450nmの吸光度で読み取った。
【0092】
(D.フローサイトメトリー)
Criptoポジティブ細胞株は、以下のように、細胞表面染色およびフローサイトメトリーを用いて、Criptoとの結合について、モノクローナル抗体をアッセイするために使用され得る:
5mM EDTAを含有する2mlPBSが入っている、T162フラスコから37℃で10分、細胞を放出する。細胞をバラバラにするため、数回ピペットで吸い上げたり吸い出したりしながら、血清を有する培地で20mlにする。1200rpmで5分間スピンさせる。0.1% BSA(洗浄緩衝液)を含有する4℃のPBS(5〜10ml)で細胞を洗浄する。1200rpmで5分間、スピンさせる。洗浄緩衝液に4×10〜10/mlで再懸濁する。氷の上で維持する。
【0093】
染色用の抗体を調整する。洗浄緩衝液に、精製された抗体を1〜10μg/mlまで希釈する。50μlの細胞を、96−ウェル Linbro V底プレート(ICN 7632105)に添加する。分析すべき各細胞株に対する、各コントロールのために1ウェルの細胞をプレートする。これらの細胞に対するコントロールとしては、抗体なし、二次抗体のみ、ハイブリドーマ培地、ポジティブコントロール抗体上清(または、入手可能な場合は、精製されたもの)、およびIgGサブクラスコントロール(精製された抗体を使用する場合)が挙げられる。
【0094】
分析すべき各細胞株について、各実験用サンプルに対して1ウェルの細胞をプレートする。4℃で卓上遠心分離機を用いて、5分間1200rpmでプレートをスピンさせる。プレートを反転させることによって緩衝液を飛ばし、液体が実質的に除去されるまで、振盪する。40−50μlの抗体(または、抗体なしのコントロールウェルおよび二次抗体のみのコントロールウェルについては洗浄緩衝液)をウェルに添加する。4℃で少なくとも30分〜1時間、インキュベートする。1200rpmで5分間、プレートをスピンする、抗体溶液を飛ばす。1ウェルあたり200μlの洗浄緩衝液で2回ずつウェルを洗浄し、各洗浄後にスピンする。緩衝液を飛ばす。
【0095】
R−PE標識化ヤギ抗マウスIgG(Fc特異的)(Jackson Immunoresearch Laboratories カタログ番号115−116−071)の1:200希釈物(洗浄緩衝液中)の50μlを含む各ウェルに細胞を再懸濁する。暗闇で、4℃で20分間、インキュベートする。各ウェルの細胞に、150μlの洗浄緩衝液を添加する。1200rpmで5分間、プレートをスピンする。1ウェルあたり200μlの洗浄緩衝液で1回洗浄する。PBS中1% PFAの150μlに細胞を再懸濁する。各ウェルの内容物を別のチューブ(5ml Falcon ポリスチレン丸底チューブ−352052)に移す。チューブをスズ箔で包む。
【0096】
次いで、チューブの内容物をフローサイトメトリーにより読み取る。
【0097】
この方法によって得られた、モノクローナル抗体の2回のスクリーニングの結果は、以下の表1および表2に要約された、以下の結果を生じ、ここで第一列は、バイブリドーマサブクローンの指定された名前を提供し、次の2つの列は、ELISAスクリーンの結果を示し、残りの列は、4つのCripto−ポジティブ細胞株についてのフローサイトメトリー分析結果を示す。これらの結果は、平均蛍光係数の単位(MFI)で与えられる。
【0098】
(表1:抗Criptoモノクローナル抗体の特性づけ)
【0099】
【表1】

(表2:抗Criptoモノクローナル抗体の特性づけ)
【0100】
【表2】

(実施例3:Criptoシグナル伝達の阻害についてのヌル細胞アッセイ)
以下は、Criptoシグナル伝達の阻害を評価するために使用される、F9 Criptoヌル細胞シグナル伝達アッセイを記載する。
【0101】
第0日目 15分間37℃で、1ウェルあたり2mlの0.1%ゼラチンで6個のウェルプレートをコーティングする。1ウェルあたり6×10個のF9 CRIPTO NULL細胞で播種する。
【0102】
第1日目 トランスフェクション:
以下サンプルの各々を300μlのOptiMemlに添加し、各サンプルについての溶液Aを生成する:
サンプル1:0.5μg(NルシフェラーゼFASTレポーターcDNA+1.5μg空ベクターcDNA。
サンプル2:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg FAST、および1μg空ベクターcDNA。
サンプル3:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg Cripto ADD
0.5 FAST、および0.5μg空ベクターcDNA。
サンプル4:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg Cripto、0.5
FAST、および0.5μg空ベクターcDNA。
サンプル5:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg Cripto、0.5
FAST、および0.5μg空ベクターcDNA。
サンプル6:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg Cripto、0.5
FAST、および0.5μg空ベクターcDNA。
サンプル7:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg Cripto、0.5
FAST、および0.5μg空ベクターcDNA。
サンプル8:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg Cripto、0.5
FAST、および0.5μg空ベクターcDNA。
サンプル9:0.5μg(Nルシフェラーゼ、0.5μg Cripto、0.5
FAST、および0.5μg空ベクターcDNA。
溶液Bは、30μlのリポフェクタミン+270μlのOptiMem1を含む。
【0103】
各サンプルについて、溶液Aと溶液Bを一緒に混合する。室温で45分間インキュベートする。2ml/ウェルのOptiMem1でウェルをリンスする。次の工程の直前に吸引する。
溶液A+Bの各混合物に2.4mlのOptiMem1を添加し、混合し、二組のウェルに1ウェルあたり1.5mlを加える。37℃で5時間、インキュベートする。1ウェルあたり1.5mlのDMEM+20%FCS、2mM Gln、P/Sを、サンプル1〜3を受けるウェルに添加する。以下のように、抗Cripto抗体を添加する:サンプル4ウェル:A27F6.1(10μg/ml);サンプル5ウェル:A27F6.1(2μg/ml);サンプル6ウェル:A40G12.8(10μg/ml)、サンプル7ウェル:A40G12.8(2μg/ml);サンプル8ウェル:A10B2.18(10μg/ml);サンプル9ウェル:A10B2.18(2μg/ml)。
【0104】
第2日目 培地を取り除き、PBS(2ml/ウェル)で細胞を洗浄する。DMEM+0.5% FCS、2mM Gln、前日と同量のCripto抗体を含有するP/Sを、同じウェルに添加する。
【0105】
第3日目 ルシフェラーゼシグナルを発生させる。PBS+Ca2+およびPBS+Mg2+(2ml/ウェル)でウェルを洗浄する。LucLiteキット(カタログ番号6016911)を使用する。緩衝液および基質を室温にする。明かりを暗くする。10mlの緩衝液で基質を再構成(reconstitute)する。PBS+Ca2+およびPBS+Mg2+で1:1希釈する。ウェルを吸引する。反復ピペッタを用いて、1ウェルあたり250μlの希釈した基質を素早く添加する。溶液を旋回させ、200μlを、96ウェルの白い不透明な底のプレート(Falcon 35−3296)のウェルに移す。Winglowを用いて照度計のプレートを読み取り、エクセルにデータを書き出す。
【0106】
このアッセイの結果を以下の表3に要約する。
【0107】
(表3:Criptoシグナル伝達アッセイ:抗Criptoモノクローナル抗体での阻害)
【0108】
【表3】

(実施例4:腫瘍細胞増殖のインビトロ阻害についてのアッセイ)
Criptoシグナル伝達の阻害はまた、軟寒天中のGEO細胞の増殖を測定することによって、アッセイされ得る。例えば、Ciardielloら、Oncogene.1994年1月;9(1):291−8;Ciardielloら、Cancer Res.1991年2月1日;51(3)1051−4を参照のこと。
【0109】
初めに、3% バクトアガー(bactoagar)を溶かす。水浴中に42℃で保存する。次いで、予め温めた完全培地と3%バクトアガー溶液とを混合し、42℃で維持しながら、0.6% バクトアガーの溶液を作製する。6cm皿に4mlの溶液をプレートし、少なくとも30分間冷却させ、底面寒天層を形成させる。GEO細胞をトリプシン処理し、完全培地で10細胞/mlまで再懸濁する。アッセイされるべき抗体(またはコントロール)を、抗体(20μg〜1μg)を適定しながら、細胞懸濁物に添加する。等量のGEO細胞懸濁液と0.6%バクトアガーとを混合し、そして2mlを底面寒天層の上部にかぶせる。少なくとも1時間冷却させる。COインキュベーターで、37℃で14日間インキュベートする。顕微鏡を使用せず可視的なコロニーを数える。ネガティブコントロールと比較して、コロニーの非存在は、試験した抗体がインビトロ腫瘍細胞増殖を阻害することを示す。
【0110】
このアッセイは、抗体A27F6.1およびB6G7.10について、表4に示す結果を得るために使用され、これらの抗体は共に、GEO細胞コロニーの増殖を低減させる能力を実証している。
(表4:軟寒天アッセイにおける増殖の結果)
【0111】
【表4】

(実施例5:腫瘍細胞増殖のインビトロ阻害についてのアッセイ)
腫瘍細胞増殖の阻害を評価するために、ヒト腫瘍細胞株を胸腺欠損ヌードマウスの皮下に移植し、そして本発明の抗体の効果は、腫瘍阻害へ相乗効果または相加効果を提供し得るさらなる化学療法処置の有無にかかわらず観察された。
【0112】
このアッセイは、異なる腫瘍細胞株(例えば、GEO(American Tissue Type Collection(ATCC)から得られる、ウェル分化型ヒト結腸癌インビトロ細胞株)、DU−4475(ATCCから得られた乳癌インビトロ細胞株)、NCCTT(ATCCから得られた精巣腫瘍細胞株)または当該分野に公知の他の細胞株)を用いて代替的に実施され得る。このようなアッセイの1つの例は以下のとおりである:
動物に、耳パンチによって個々に印を付ける。GEO細胞株は、1〜4継代にわたって、インビトロまたはインビボで継代する。動物の右腹部位の皮下にGEO細胞を移植する。以下の動物集団を使用し得る:
【0113】
【表5】

第0日目:腫瘍を移植し、動物の初期の体重を記録する。
【0114】
第1日目:上記に示すように、処置を開始する。
【0115】
第5日目:腫瘍サイズおよび体重の測定を開始し、実験が終了するまで、週に2回続ける。
【0116】
初期体重、腫瘍サイズおよび体重の測定、屠殺での組織学、および腫瘍における免疫組織化学的分析法が試験され、Cripto発現、腫瘍増殖、およびその阻害を分析する。
【0117】
(実施例6:インビトロ異種移植片腫瘍モデル−Cysリッチブロッキング抗Cripto抗体)
NCCITの応答を評価するために、ヒト精巣癌腫細胞株を、CriptoのCysリッチドメインに結合する抗体とともに皮下に移植した。実験方法を以下に記載する。結果を図1に示す。
【0118】
(方法および材料)
動物:胸腺欠損ヌード雄マウスを使用した。耳パンチによって、動物を個々に番号を付けた。
腫瘍:NCCIT(元々、American Tissue Type Collectionから入手した、縦隔混合型生殖(mediastinal mixed germ)細胞ヒト精巣癌インビトロ細胞株)。細胞株を、抗生物質を有さないRPMI−1640/10% FBSでの、6継代にわたって、インビトロで継代した。動物の右腹部に5x10細胞/0.2ml マトリゲル(matrigel)を皮下移植した。
【0119】
【表6】

第1日目に処置を開始する。
試験日程
第−1日目:マウスを無作為にコントロールと処置グループに分けた。動物の初期体重を記録した。抗体グループに最初の処置をほどこした。投与溶液を生成した。アッセイが終了するまで、処置は技術者には見せなかった。
第0日目:腫瘍を移植した。マウスに移植された腫瘍に、細菌培養を流した。
第1日目:ポジティブ化学療法グループに対して最初の処置を投与した。
第4日目:マトリゲル(matrigel)の腫瘍基準についての初期腫瘍サイズの測定値を記録した。週に2回、マウスの腫瘍サイズおよび体重を記録し続けた。毎日、研究を観測し、動物のいかなる異常な観察をも記録した。
指標:初期の体重
腫瘍サイズおよび体重測定
(実施例7:インビトロ異種移植片腫瘍モデル−EGF様ドメインブロッキング抗Cripto抗体)
NCCITの応答を評価するために、ヒト精巣癌細胞株に、CriptoのEGF様ドメインに結合する抗体を皮下移植した。実験方法を以下に記載する。結果を図2に示す。
【0120】
(方法および材料):
動物:胸腺欠損ヌード雄マウスを使用した。耳パンチによって、動物に個々に番号を付けた。
腫瘍:NCCIT(元々American Tissue Type Collectionから入手した、縦隔混合型生殖細胞ヒト精巣癌インビトロ細胞株)。細胞株を、抗体を含まないRPMI−1640/10% FBSで、8継代にわたってインビトロで継代した。動物の右腹部に5x10細胞/0.2ml matrigelを皮下に移植された動物。
【0121】
【表7】

第1日目に処置を開始する。
試験日程:
第−1日目:マウスを無作為にコントロールと処置グループに分けた。動物の初期体重を記録した。抗体グループに最初の処置をほどこした。投与溶液を生成した。アッセイが終了するまで、処置は技術者には見せなかった。
第0日目:腫瘍を移植した。マウスに移植された腫瘍に、細菌培養物を流した。細菌培養物は、サンプリング後24時間および48時間で、混入についてネガティブだった。
第1日目:ポジティブ化学療法グループに対して最初の処置をほどこした。
第4日目:マトリゲル(matrigelの腫瘍基準についての初期腫瘍サイズの測定値を記録した。週に2回、マウスの腫瘍サイズおよび体重を記録し続けた。毎日、研究を観測し、動物のいかなる異常な観察をも記録した。
指標:初期の体重
腫瘍サイズおよび体重の測定値
(実施例8:ALK4結合をブロックするCripto mabs)
Cripto特異的モノクローナル抗体が、Alk4(アクチビンI型レセプター)に結合するCriptoの能力を阻害し得るかどうかを評価するために、Alk4を安定に発現する293細胞株を用いてフローサイトメトリー分析を使用した。この細胞株を発生するために、293細胞を、HAエピトープを用いてC末端でタグされたAlk4を発現するプラスミドおよび、10:1の割合で薬剤(ピューロマイシン)を発現するプラズミドで同時トランスフェクトした。次いで、トランスフェクトされた細胞を、コロニーが形成されるまで、ピューロマイシンで選択した。次いで、コロニーを取り、増殖させ、そして、HAについてウェスタンブロット法を用いてAlk4発現を分析した。コントロール(トランスフェクトされなかった293細胞)と比較して、クローン21(293−Alk4−21)はAlk4を高いレベルで発現することが見いだされた。
【0122】
フローサイトメトリーによりCripto−Alk4結合を分析するために、ヒトIgG(CrdelC−Fc)のFc部分と融合した、精製された、可溶性形態のヒトCripto(aa 1−169)を使用した。約5μg/mlのCrdelC−FcまたはコントロールのFcタンパク質を、30分間氷上で、50μl総容量のFACS緩衝液(0.1% BSAを含むPBS)中の3x10 293−Alk4−21細胞と共に、インキュベートした。抗Cripto抗体を含むサンプルについて、5μg/ml CrdelC−Fcを、細胞を添加する前に氷上で、50μ/mlの各Cripto抗体(A10.B2.18、A40.G12.8、A27.F6.1、A8.H3.1、A19.A10.30、A6.F8.6、A8.G3.5、A6.C12.11)と共に、予めインキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、R−フィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトIgG(Fcフラグメント特異的)(Jackson Immunologics製)と共に細胞をインキュベートすることによって、結合Fcタンパク質を検出した。次いで、サンプルを再び洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含むPBS中で固定し、標準的なフローサイトメトリー手順を用いて分析した。FACSアッセイの結果を図3に示す。
【0123】
上記の本発明のいくつかの実施形態は、以下で概説され、次の実施形態を含むが、これらに限定されない。当業者が理解するように、本発明の精神から逸脱することなく、本発明の様々な実施形態に、多くの変更と修正がなされ得る。このような可変のすべてが本発明の範囲内に含まれることを意図する。
【0124】
本明細書に引用される各刊行物の開示全体が、参考として本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−163438(P2010−163438A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30683(P2010−30683)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2009−25420(P2009−25420)の分割
【原出願日】平成14年4月17日(2002.4.17)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】