説明

DNAチップ

【課題】信頼性の高く検出精度の向上を図ることが可能な電流検出型のDNAチップを提供する。
【解決手段】DNAチップは、絶縁性を有する基板30と、それぞれ基板上に形成された導電性の金属層で形成された作用極32および測定極34aと、基板上に形成され作用極と測定極との間を電気的に接続した配線40と、作用極および配線を覆っているとともに、作用極の少なくとも一部を露出させた開口部を有した絶縁層42と、作用極の露出部分に固定化されたDNAプローブ41と、を備えている。作用極は、絶縁層を挟んで積層された複数の金属層43a、43b、43cにより形成され、作用極を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線を介して測定極に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の塩基配列あるいは特定の遺伝子の存在を検出するための、核酸等よりなるプローブを固定化した電流検出型のDNAチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲノム医学やゲノム薬理学の進歩により、特定の塩基配列あるいは特定の遺伝子の存在を検出することによって、薬に対する効果や副作用、発病の可能性や病気の進行程度等が診断できるようになってきた。この特定の塩基配列あるいは特定の遺伝子の存在を手軽に検出する手法として、DNAチップ(DNAマイクロアレイ)を用いる手法が提供されている。DNAチップには、大別して蛍光検出法、及び電流検出法を用いたものがある。
【0003】
このうち、電流検出法は優れた再現性および定量性を発揮できる手法であり、この電流検出法を用いて特定の塩基配列あるいは特定の遺伝子の存在を検出する電流検出型のDNAチップが提案されている(例えば、特許文献1)。このような電流検出型のDNAチップは、ガラス等の絶縁基板上に金等の導電性金属薄膜からなる複数の電極と、これらの電極を接続し電気化学的な測定回路を形成する配線と、さらに電極および配線の上面を覆った絶縁層と、電極の一部が露出するように絶縁層に形成された開口部と、を有し、開口部の電極上に配列が既知の核酸等からなる一本鎖の核酸プローブが固定化されている。そして、核酸プローブが固定化された開口部付近に検体から抽出、増幅した一本鎖の核酸を滴下して、核酸プローブと検体の核酸とをハイブリダイゼーション反応させる。この時、核酸プローブと相補的な配列を持つ検体の核酸は反応して2本鎖になる。次いで、二本鎖になった核酸にだけ選択的に結合し、かつ電気化学的に活性な核酸挿入剤を添加し、電圧を印加する。この時、二本鎖になったプローブでは、結合した核酸挿入剤が酸化され、酸化電流が核酸挿入剤と電極の間に流れる。この反応電流がどの電極に流れたかを測定すれば、電極上の核酸プローブの配列は既知であり、検体中の検体DNAの配列を判定することができる。
【特許文献1】特許第2573443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように構成されたDNAチップでは、基体表面にパターン形成された電極および配線を絶縁膜にて保護し、露出した一部の電極の表面のみに核酸プローブが固定化されている。そのため、下記のような問題が発生すると検体DNAの配列を判定することが不可能となり、あるいは、高精度の判定が困難となり、判定精度が低下する。
【0005】
1)電極間での配線の断線
2)異なる電極間、配線でのショート
3)絶縁膜の欠損
4)電極上の汚染
5)電極表面上での核酸プローブの固定化不良
6)電流検出用プローブの接触が阻害される要因
また、検出される微弱な信号量は、電極上に固定化されているDNAプローブの量に比例するため、信号強度を上げ検出精度を上げるためには、DNAプローブの固定量を増やす必要がある。簡易な方法として、電極の表面積を増やす方法が考えられるが、この場合、精細度が低下し、同時に検出できるDNAプローブの数が少なくなるという問題がある。
【0006】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、信頼性の高く検出精度の向上を図ることが可能な電流検出型のDNAチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、この発明の態様に係るDNAチップは、絶縁性を有する基板と、それぞれ前記基板上に形成された導電性の金属層で形成された作用極および測定極と、前記基板上に形成され前記作用極と測定極との間を電気的に接続した配線と、前記作用極および配線を覆っているとともに、作用極の少なくとも一部を露出させた開口部を有した絶縁層と、前記作用極の露出部分に固定化されたDNAプローブと、を備え、前記作用極は、絶縁層を挟んで積層された複数の金属層により形成され、前記作用極を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線を介して前記測定極に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、作用極および配線は、それぞれ絶縁層を介して積層された複数の金属層で形成されていることから、いずれかの金属層で、配線の断線、ショートなどが起きた場合でも、他の金属層により測定が可能となり、信頼性の向上したDNAチップが得られる。また、積層された複数の金属層で作用極を形成することにより、信号量を容易に増やすことが可能となり、検出精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る電流検出型のDNAチップついて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るDNAチップを内蔵したカセットの外観を示し、図2は、このカセットを分解して示し、図3はDNAチップを含むカセットの断面を示している。図1ないし図3に示すように、DNAチップ10は、複数の電極を有している。DNAチップ10は、シリコン樹脂等で形成された流路パッキン12と共に、ポリカーボネート等の樹脂で形成されたカセット14内に組み込まれている。流路パッキン12は、DNAチップ10と接する側に流路12aを有し、この流路を通してDNAチップ10の電極に検体を導くとともに、反応容器を形成する。
【0010】
カセット14は、トップカバー16aと、このトップカバーに嵌合された矩形板状のボトムカバー16bとを有している。ボトムカバー16bとトップカバー16aとの間に、DNAチップ10および流路パッキン12が収納され、流路パッキンは、DNAチップ10の電極側の表面に密着した状態で保持されている。
【0011】
トップカバー16aには、検体及び薬液の注入孔20および排出孔21、並びに、矩形状の測定開口22が形成されている。注入孔20および排出孔21は流路パッキン12の流路12aに連通している。注入孔20から注入された検体は、流路パッキン12の流路を通してDNAチップ10の電極部に供給された後、他方から排出孔21から排出される。また、測定開口22は、DNAチップ10の後述する測定極に対向して設けられている。カセット14の外側から測定開口22を通して、電流検出用プローブおよび給電端子をカセット14内に挿入し、DNAチップ10の測定極に接触させることができる。
【0012】
図4は、DNAチップ10を概略的に示し、図5、図6は、DNAチップの異なる断面をそれぞれ示している。
図4に示すように、DNAチップ10は、ガラス、Si、樹脂等により矩形状に形成された絶縁性を有する基板30と、基板の一方の表面上に金等の導電性を有する金属層で形成された複数の電極、つまり、複数の作用極32、測定極34a、34b、対極36、および参照極38と、電極間を電気的に接続し測定回路を構成した複数の配線40と、を有している。
【0013】
作用極32は例えば2つ設けられ、基板30の一辺と平行な第1方向Xに沿って並んで配置されている。対極36および参照極38は、作用極32の両側に基板30の第1方向Xに並んで配置されている。それぞれ作用極32に対応する2つの第1測定極34a、および対極36、参照極38に対応する2つの第2測定極34bが設けられている。これらの第1および第2測定極34a、34bは、基板30の第1方向Xに隙間をおいて並んで設けられている。また、第1および第2測定極34a、34bは、作用極32、対極36、参照極38に対して、第1方向と直交する基板30の第2方向Yに離間して配置されている。
【0014】
基板30の上面は、電極を除いて、例えば有機レジスト等からなる絶縁層42によって覆われている。絶縁層42は、それぞれ作用極32、対極36、参照極38、測定極34に対向して形成された複数の開口部を有し、作用極32、対極36、参照極38および測定極34は、それぞれ開口部を介して外部に露出している。
【0015】
図4ないし図6に示すように、各作用極32の露出した表面には、例えば既知の配列を持ち一本鎖にした合成オリゴDNAがDNAプローブ、ここでは、核酸プローブ41として固定されている。
【0016】
各作用極32は、絶縁層を挟んで積層された複数の金属層により形成され、絶縁層42は、複数、例えば、3層の絶縁層、つまり、第1絶縁層42a、第2絶縁層42b、第3絶縁層42cを積層して形成されている。本実施形態において、作用極32は、第1絶縁層42aおよび第2絶縁層42bを挟んで積層された、例えば、3層の第1金属層43a、第2金属層43b、第3金属層43cにより形成されている。
【0017】
第1金属層43aは円形に形成され、基板30の表面上に形成されている。第2金属層43bは、第1絶縁層42aを介して第1金属層43a上に形成されている。この第2金属層43bおよび第1絶縁層42aには、第1金属層43aと同軸な円形の開口部44aが形成されている。これにより、第2金属層43bは第1金属層43aとほぼ等しい外径を有した環状に形成され、第1金属層43aの周縁部に重なって、かつ、第1金属層43aと同芯状に配置されている。そして、第1金属層43aの中央部は、開口部44aを通して外部に露出している。
【0018】
第3金属層43cは、第2絶縁層42bを介して第2金属層43b上に形成されている。この第3金属層43cおよび第2絶縁層42aには、第1金属層43aと同軸な円形であって開口部44aよりも大径の開口部44bが形成されている。これにより、第3金属層43cは第1金属層43aとほぼ等しい外径を有した環状に形成され、第2金属層43bの周縁部に重なって、かつ、第1金属層43aと同芯状に配置されている。そして、第2金属層43bの内周部分は、開口部44bを介して外部に露出している。
【0019】
第3絶縁層42cは、第3金属層43cに重ねて形成されている。第3絶縁層42cには、第1金属層43aと同軸な円形であって開口部44bよりも大径の開口部44cが形成されている。これにより、第3金属層43cの内周部分は、開口部44cを介して外部に露出している。
【0020】
核酸プローブ41は、作用極32において、第1金属層43aの露出部分、第2金属層43bの露出部分、および第3金属層43cの露出部分にそれぞれ固定化されている。核酸プローブ41は所望の配列、つまり、既知の配列を有した核酸プローブが固定化されている。また、2つの作用極32には、配列の異なる核酸プローブが固定化され、各作用極32の第1、第2、第3金属層上には、同一配列の核酸プローブが固定化されている。
【0021】
図4ないし図6に示すように、第1および第2測定極34a、34bの各々は、絶縁層を介して積層された複数の金属層により形成されている。すなわち、各測定極34a、34bは、基板30の表面上に形成された矩形状の第1金属層35a、第1絶縁層42a上に形成された矩形状の第2金属層35b、および第2絶縁層42b上に形成された矩形状の第3金属層35cを有している。これら第1、第2、第3金属層は、基板30の第2方向Yに沿って互いにずれて配置されている。そして、第1金属層35aの表面は、第1、第2、第3絶縁層42a、42b、42cに形成された開口部46aを通して外部に露出している。第2金属層35bの表面は、第2、第3絶縁層42b、42cに形成された開口部46bを通して外部に露出している。第3金属層35cの表面は、第3絶縁層42cに形成された開口部46cを通して外部に露出している。
【0022】
作用極32を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線40を介して第1測定極34aに電気的に接続されている。すなわち、作用極32を形成する第1金属層43aは、基板30上に形成された配線40を介して第1測定極34aの第1金属層35aに電気的に接続されている。作用極32を形成する第2金属層43bは、第1絶縁層42a上に形成された配線40を介して第1測定極34aの第2金属層35bに電気的に接続されている。作用極32を形成する第3金属層43cは、第2絶縁層42b上に形成された配線40を介して第1測定極34aの第3金属層35cに電気的に接続されている。これにより、作用極32を形成する第1、第2、第3金属層は、それぞれ独立して、第1測定極34aの第1、第2、第3金属層に接続されている。
【0023】
図4および図6に示すように、対極36および参照極38の各々は、絶縁層を挟んで積層された複数の金属層により形成され、対極を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線40を介して対応する第2測定極34bに電気的に接続されている。同様に、参照極38を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線40を介して、対応する第2測定極34bに電気的に接続されている。
【0024】
参照極38を代表して説明する。参照極38は、第1絶縁層42aおよび第2絶縁層42bを挟んで積層された、例えば、3層の第1金属層50a、第2金属層50b、第3金属層50cにより形成されている。
【0025】
第1金属層50aは細長い矩形状に形成され、基板30の表面上に形成されている。第2金属層50bは、第1金属層50aと同一寸法を有し、第1絶縁層42aを介して第1金属層50a上に形成されている。この第2金属層50bおよび第1絶縁層42aには、第1金属層50aと同芯状の矩形の開口部52aが形成されている。これにより、第2金属層50bは環状、ここでは、矩形枠状、に形成され、第1金属層50aの周縁部に重なって、かつ、第1金属層50aと同芯状に配置されている。そして、第1金属層50aの中央部は、開口部52aを通して外部に露出している。
【0026】
第3金属層50cは、第1金属層50aと同一寸法を有し、第2絶縁層42bを介して第2金属層50b上に形成されている。この第3金属層50cおよび第2絶縁層42bには、第1金属層50aと同軸な矩形状であって開口部52aよりも大径の開口部52bが形成されている。これにより、第3金属層50cは環状、ここでは、矩形枠状、に形成され、第2金属層50bの周縁部に重なって、かつ、第1金属層50aと同芯状に配置されている。そして、第2金属層50bの内周部分は、開口部52bを介して外部に露出している。
【0027】
第3絶縁層42cは、第3金属層50cに重ねて形成されている。第3絶縁層42cには、第1金属層50aと同軸な矩形であって開口部52bよりも大径の開口部52cが形成されている。これにより、第3金属層50cの内周部分は、開口部52cを介して外部に露出している。
【0028】
参照極38を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線(第2配線)40を介して対応する第2測定極34bに電気的に接続されている。すなわち、参照極38を形成する第1金属層50aは、基板30上に形成された配線40を介して第2測定極34bの第1金属層35aに電気的に接続されている。参照極38を形成する第2金属層50bは、第1絶縁層42a上に形成された配線40を介して第2測定極34bの第2金属層35bに電気的に接続されている。参照極38を形成する第3金属層50cは、第2絶縁層42b上に形成された配線40を介して第2測定極34bの第3金属層35cに電気的に接続されている。これにより、参照極38を形成する第1、第2、第3金属層は、それぞれ独立して、第2測定極34bの第1、第2、第3金属層に接続されている。
【0029】
なお、対極36も参照極38と同様に形成され、対応する第2測定極34bに配線40を介して電気的に接続されている。
【0030】
作用極32の第1金属層43a、対極36および参照極38の第1金属層50a、第1および第2測定極34a、34bの第1金属層35a、並びに基板30上に形成された配線40は、例えば、基板30の表面上に成膜された金属層をパターニングすることにより、共通の金属層によって形成することができる。作用極32の第2金属層43b、対極36および参照極38の第2金属層50b、第1および第2測定極34a、34bの第2金属層35b、並びに第1絶縁層42a上に形成された配線40は、例えば、第1絶縁層42aの表面上に成膜された金属層をパターニングすることにより、共通の金属層によって形成することができる。同様に、作用極32の第3金属層43c、対極36および参照極38の第3金属層50c、第1および第2測定極34a、34bの第3金属層35c、並びに基板30上に形成された配線40は、例えば、基板30の表面上に成膜された金属層をパターニングすることにより、共通の金属層で形成することができる。
【0031】
図3に示すように、上記のように構成されたDNAチップ10は、カセット14内に組み込まれている。そして、DNAチップ10の作用極32、対極36および参照極38を含む電極部分は、流路パッキン12によって覆われ、基板30の上面と流路パッキンとにより流路12aが形成されている。この流路12aに検体あるいは電解液等を充填し流すことにより、電極部にこれらの検体、電解液を供給することができる。
【0032】
また、DNAチップ10の第1および第2測定極34a、34bは、カセット14の測定開口22に対向して位置している。これにより、外部から測定開口22を通して、第1および第2測定極34a、34bに接触可能となっている。
【0033】
上記のように構成されたDNAチップ10を用いて検査を行う場合、まず、検体から抽出し、増幅した検体DNAを、カセット14の注入孔20から流路パッキン12の流路12a内に注入し、作用極32に供給する。また、核酸プローブ41が固定化された作用極32の部分をDNAチップ10の背面側から加熱し、核酸プローブ41と検体DNAとをハイブリダイゼーション反応させる。この際、核酸プローブ41と検体DNAとが相補的な配列を有していれば、これらが結合して二本鎖のDNAとなる。
【0034】
その後、DNAチップ10を所定の加熱温度に維持した状態で、反応に関与せず一本鎖のままの検体DNAを洗い流す。続いて、DNAチップ10を室温に冷却した後、二本鎖になったDNAにだけ選択的に結合し、かつ電気化学的に活性な性質を持つ核酸挿入剤を、カセット14の注入孔20から流路パッキン12の流路12a内に注入し、作用極32、対極36、参照極38に供給する。
【0035】
この状態で、カセット14の外側から測定開口22を通して、例えば、給電端子を第2測定極34bの第1、第2、第3金属層35a、35b、35cに接触させ、対極36と参照極38とに電圧を印加する。また、カセット14の外側から測定開口22を通して、例えば、複数の電流検出用プローブピンをカセット14内に挿入し、各第1測定極34aの第1、第2、第3金属層35a、35b、35cにそれぞれ接触させる。この際、核酸挿入剤は酸化反応を起こし、核酸挿入剤と作用極32との間に酸化電流が流れる。そして、三端子法により、電流検出用プローブピンを介して、作用極32に流れる電流を検出する。
【0036】
核酸挿入剤は二本鎖になった核酸プローブにのみ選択的に結合している。また、各作用極32に固定化されている核酸プローブ41の配列は予め既知となっている。そのため、どの作用極32に電流が流れたかを電流検出用プローブピンで検出することにより、検体DNAと結合した核酸プローブを検出でき、その結果として、検体DNAの配列を判定することができる。
【0037】
上記のように構成された電流検出型のDNAチップ10によれば、作用極、対極、参照極、および測定極は、それぞれ複数層の金属層で形成されているため、いずれかの金属層で、断線、ショート、などが起きた場合でも、あるいは、いずれかの金属層で核酸プローブの固定化不良が生じた場合でも、他の金属層により測定することができる。これにより、信頼性の向上したDNAチップが得られる。また、同芯的に積層された複数の金属層で作用極を形成し、各金属層上に核酸プローブを固定化することにより、得られる信号量を容易に増やすことが可能となり、検出精度の向上を図ることができる。
【0038】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、DNAチップにおける作用極の数は2つに限らず、必要に応じて増減可能である。作用極、測定極を形成する金属層は、3層に限らず、2層あるいは4層以上としてもよい。また、作用極を除いて、測定極、対極、参照極は、複数層の金属層に限らず、単層の金属層で形成してもよい。作用極、測定極、対極、参照極の形状は、上述した円形あるいは矩形に限らず、種々選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、この発明の実施形態にDNAチップを内蔵するカセットを示す斜視図。
【図2】図2は、前記カセットを分解して示す分解斜視図。
【図3】図3は、図1の線C−Cに沿った前記カセットおよびDNAチップの断面図。
【図4】図4は、前記DNAチップを拡大して模式的に示す平面図。
【図5】図5は、図4の線A−Aに沿った前記DNAチップの断面図。
【図6】図6は、図4の線B−Bに沿った前記DNAチップの断面図。
【符号の説明】
【0040】
10…DNAチップ、12…流路パッキン、14…カセット、30…基板、
32…作用極、34a…第1測定極、34b…第2測定極、36…対極、
38…参照極、40…配線、42…絶縁層、42a…第1絶縁層、
42b…第2絶縁層、42c…第3絶縁層、
43a、35a、50a…第1金属層、43b、35b、50b…第2金属層、
43c、35c、50c…第3金属層、44a、44b、44c…開口部、
46a、46b、46c…開口部、52a、52b、52c…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する基板と、
それぞれ前記基板上に形成された導電性の金属層で形成された作用極および測定極と、
前記基板上に形成され前記作用極と測定極との間を電気的に接続した配線と、
前記作用極および配線を覆っているとともに、作用極の少なくとも一部を露出させた開口部を有した絶縁層と、
前記作用極の露出部分に固定化されたDNAプローブと、を備え、
前記作用極は、絶縁層を挟んで積層された複数の金属層により形成され、
前記作用極を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線を介して前記測定極に電気的に接続されているDNAチップ。
【請求項2】
前記作用極を形成した複数の金属層は、それぞれ前記絶縁層および金属層に形成された開口部を通して露出した露出部を有し、前記DNAプローブは、前記各金属層の露出部上に固定化されている請求項1に記載のDNAチップ。
【請求項3】
前記作用極を形成した複数の金属層は、前記基板上に形成された最下層の金属層が円形に形成され、2層目以降の金属層は、環状に形成され前記最下層と同軸的に設けられている請求項2に記載のDNAチップ。
【請求項4】
前記測定極は、絶縁層を介して積層された複数の金属層により形成され、
前記作用極を形成する複数の金属層は、前記複数の配線を介して、前記測定極を形成する複数の金属層にそれぞれ電気的に接続されている請求項2に記載のDNAチップ。
【請求項5】
それぞれ前記基板上に導電性の金属層で形成され前記作用極の両側に設けられた対極および参照極と、それぞれ前記基板上に形成された導電性の金属層で形成され前記対極および参照極に電圧を印加する複数の第2測定極と、前記基板上に形成され前記対極と第2測定極との間および前記参照極と第2測定極との間を電気的に接続した複数の第2配線と、を有している請求項1に記載のDNAチップ。
【請求項6】
前記対極および参照極の各々は、絶縁層を挟んで積層された複数の金属層により形成され、前記対極を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線を介して前記第2測定極に電気的に接続され、前記参照極を形成する複数の金属層は、絶縁層を介して層状に形成された複数の配線を介して前記第2測定極に電気的に接続されている請求項5に記載のDNAチップ。
【請求項7】
前記対極を形成した複数の金属層は、前記基板上に形成された最下層の金属層と、2層目以降の金属層は、前記最下層と同芯的に設けられた環状に形成された2層目以降の金属層とを含んでいる請求項6に記載のDNAチップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate