DNA転写ユニットの接種による免疫化
【課題】本発明は、目的抗原(単数又は複数)をコードするDNAを含んでなるDNA転写ユニットを脊椎動物中に導入することを含んでなる、脊椎動物を免疫化する方法に関する。
【解決手段】宿主脊椎動物によるこの転写ユニットの取込みの結果として、目的の抗原(単数または複数)の発現が生じ、これにより体液性もしくは細胞性免疫応答、又は体液性及び細胞性免疫応答の両方が誘導される。誘導された体液性及び細胞性免疫応答は病原体による感染に対する防御を提供し、抗腫瘍応答を提供し、又は避妊を提供する。宿主は脊椎動物、鳥類、ヒトを含む哺乳動物のいずれでもよい。
【解決手段】宿主脊椎動物によるこの転写ユニットの取込みの結果として、目的の抗原(単数または複数)の発現が生じ、これにより体液性もしくは細胞性免疫応答、又は体液性及び細胞性免疫応答の両方が誘導される。誘導された体液性及び細胞性免疫応答は病原体による感染に対する防御を提供し、抗腫瘍応答を提供し、又は避妊を提供する。宿主は脊椎動物、鳥類、ヒトを含む哺乳動物のいずれでもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質、病原体、又は感染体に対し脊椎動物、特にヒトを含む哺乳動物を免疫化し、これにより該蛋白質の活性を妨害し、又は感染体の拡散及び増殖を制限し、そして病原体もしくは感染体によるその後のチャレンジに対する防御を可能とする体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不活性化生物もしくは減弱化生物又はそれらの産物でワクチン投与することは、宿主の耐性を強化する有効な方法であることが証明され、そして最終的にはある種の普通にみられる深刻な感染性疾病の根絶をもたらした。ワクチンの使用は宿主内の特異的免疫応答の刺激又は既に形成された抗体の移行に基づく。ある種の疾病、例えば灰白髄炎などのワクチンによる予防は免疫学の最大の勝利の一つである。
【0003】
効果的なワクチンは、家畜やヒトに病気を惹起する感染体のうちの比較的少数に対してしか開発されてこなかった。このことは病原体の毒性株の生育及び減弱化を巡る技術的問題を反映している。最近、サブユニットワクチン(病原体からの特定の抗原のみを宿主に提示するワクチン)の開発に努力が傾けられている。サブユニットワクチンは事実上の副作用の存在なしに高レベルの防御を達成する潜在能力を有する。サブユニットワクチンは安定な、投与し易い、そして広範な使用に対する十分な費用−効果性のあるワクチンの開発のための機会をも提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はサブユニットワクチン化の1方法を提供する。具体的には、本発明は個体を免疫化する方法であって、目的抗原(単数又は複数)をコードするDNA及び転写用プロモーター部分(単数又は複数)をコードするDNAを含んでなるDNA転写ユニット(単数又は複数)を個体中に導入することを含む方法に関する。単一の転写ユニット又は多重転写ユニットは、1個の抗原又は多重抗原に対する免疫化を達成するために個体に導入することができる。宿主細胞によるDNA転写ユニットの取込みの結果として目的の抗原(単数又は複数)の発現が生じ、これにより体液性免疫応答又は細胞性免疫応答又は体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方を誘導する。誘導された体液性及び細胞性免疫応答は病原体による感染に対する防御を提供し、抗腫瘍応答を提供し、又は避妊を提供することができる。宿主は脊椎動物、鳥類、又はヒトを含む哺乳動物のいずれでもよい。
【0005】
本発明は、免疫応答を高めることを目的とするDNA転写ユニットの使用に関する。一つの態様においては、個体は非経口的接種経路により免疫化される。非経口的接種経路としては、DNA転写ユニットの静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、及び皮下投与などが挙げられる。皮膚に投与されたDNAはDNA銃(DNA gun) を用いて送達することができる。第二の態様においては、DNA転写ユニットが粘膜表面により取り込まれる(すなわち、粘膜表面の細胞中に入る)ようにDNA転写ユニットを呼吸粘膜表面などの粘膜表面と接触させることにより個体を免疫化する。粘膜投与のためのDNAは微小体でカプセル化することができる。
【0006】
本発明の方法により導入されるDNA転写ユニットは、ウイルス、細菌、カビ、又は寄生体などの感染体によりコードされる抗原、並びに病原体による感染に対し個体を免疫化する際に有効であることが実験的に確認された抗原性断片及びペプチドを発現するために使用することができる。上述したように、DNA転写ユニットは避妊目的又は抗ガン治療の目的のためにも使用することができる。
【0007】
発現の対象となる目的抗原は、免疫原として使用される抗原が内部型、表面型、分泌型、又は出芽(budding) 型及び集合型となるように設計することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、
ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造における、プロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットの使用であって、この防御的免疫応答が目的抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答であるDNA転写ユニットの使用
に関する。
【発明の効果】
【0009】
免疫化のためにDNAを使用することの利点は多数ある。例えば、DNAによりコードされるいかなる抗原に対しても免疫化を行うことが可能となる。さらに、DNAにコードされた抗原はその天然状態における「純粋な」抗原として発現され、そして宿主細胞による正常な修飾を受ける。また、DNAは容易にそして安価に操作され、広範囲の温度にわたり乾燥産物として又は溶液状で安定である。従ってこの技術は、高度に効果的なサブユニットワクチンの開発に価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、蛋白質、病原体、又は感染体に対し脊椎動物、特にヒトを含む哺乳動物を免疫化し、これにより該蛋白質の活性を妨害し、又は感染体の拡散及び増殖を制限し、そして病原体もしくは感染体によるその後のチャレンジに対する防御を可能とする体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘導する方法に関する。本発明の方法においては、免疫化を必要とする個体にDNA転写ユニットが投与される。
【0011】
「免疫化」という言葉は、本明細書においては感染体によって惹起される感染(すなわち、病気)の発現を(部分的に又は完全に)防御する脊椎動物内での免疫応答の産生を指す。即ち、本発明により免疫化された脊椎動物は感染しないか又は免疫化されていない場合に起こるであろうよりもより軽度に感染する。
【0012】
DNA転写ユニットは、開始部位と終結部位とにより限界付けられるポリヌクレオチドであり、それは転写されて一次転写物を産生する。本明細書において用いられるとき、「DNA転写ユニット」とは、少なくとも二つの成分を含む。抗原コードDNAと転写プロモーター要素(単数又は複数)である。抗原コードDNAは1個の抗原又は多重HIV抗原や2又はそれ以上の異なる蛋白質もしくは感染体由来の抗原などの多重抗原をコードすることができる。このDNA転写ユニットは、このDNA転写ユニットの複製のための配列を含むベクター中に付加的に挿入することができる。DNA転写ユニットはエンハンサー要素、スプライシングシグナル、終結シグナルやポリアデニル化シグナル、ウイルスレプリコンや細菌のプラスミド配列などの付加的な配列を随時含めることができる。本発明の方法では、一つのDNA転写ユニット(即ち、転写ユニットの1タイプ)を投与することができ、あるいは2種以上のDNA転写ユニットの組み合わせを投与することもできる。
【0013】
DNA転写ユニットは幾つかの既知の方法により作成することができる。例えば、既知の方法を用いて目的抗原をコードするDNAを発現ベクター中に挿入することができる。マニアティス(Maniatis) ら、モレキュラー・クローニング,ア・ラボラトリー・マニュアル,2版、コールド・スプリングハーバーラボラトリープレス(1989)を見よ。
【0014】
DNA転写ユニットは、DNAの取込みを増進し接種部位の免疫系細胞を補充する能力を有するアジュバントもしくは他の物質の存在下に個体に投与もしくは接種することができる。DNA転写ユニットそれ自体は宿主細胞により提供される転写因子により又は転写ユニットにより提供される転写因子により宿主細胞中で発現させられることを理解すべきである。
【0015】
「目的抗原」とは感染体により発現されるいかなる抗原又は抗原の組み合わせでもよく、あるいは防御的応答を誘導する能力をもつことが明らかとなったいかなる抗原又は抗原の組み合わせであってもよい。目的抗原は腫瘍抗原又は妊娠に対する予防を提供する抗原であってもよい。抗原(単数又は複数)は、天然に生ずるものでも、突然変異を受けたもの又は特異的に修飾されたものでもよい。抗原(単数又は複数)は、感染体のサブグループ(clades) 、サブタイプ又は血清型などの異なる形をとることができる。これらの抗原は細胞又は感染体の構造的成分であってもよく、そうでなくてもよい。コードされる抗原は、翻訳産物すなわちポリペプチドである。ポリペプチドは種々の長さをとることができる。それらはグリコシレーション、ミリストイレーション(myristoylation )又はホスホリレーションなどの正常宿主細胞による修飾を受けることができる。また、それらは細胞内発現、細胞外発現又は細胞表面発現を受けるように設計することもできる。さらに、それらが集合(assembly) を受け、細胞から放出されるように設計することができる。
【0016】
それに対しDNA転写ユニットを用いることができる病原体の可能性のあるものとしては、ウイルス由来のDNAコード抗原、クラミディア、マイコプラズマ、細菌、寄生体、又はカビが挙げられる。ウイルスとしては、ヘルペスウイルス、オルトミクソウイルス、ライノウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、ブニアウイルス、ルベラウイルス、レオウイルス、ヘパドナウイルス、及びサル免疫不全ウイルス又はヒト免疫不全ウイルスなどを含むレトロウイルスが挙げられる。細菌としては、ミコバクテリア、スピロヘータ、リケッチャ、クラミディア、及びマイコプラズマが挙げられる。カビとしては、酵母及び糸状菌が挙げられる。寄生体としてはマラリアが挙げられる。このリストは、本明細書に記載された方法によりそれに対し防御的免疫応答を創出することができる、可能性のある病原体のすべてを網羅するものではない。
【0017】
個体には、いかなる非経口的経路により接種することもできる。例えば、個体には、静脈内、腹腔内、皮内、皮下又は筋肉内の諸方法により又は遺伝子銃により接種することができる。個体には粘膜経路により接種することができる。DNA転写ユニットは、DNA含有点鼻剤、吸入剤、座剤などの種々の方法により、又は微小体によりカプセル化したDNAにより粘膜表面に投与することができる。例えば、DNA転写ユニットは鼻孔や気管などの呼吸粘膜表面に投与することができる。
【0018】
生理食塩水などの生理学的に適合性のある適当な媒体は、いずれもDNA転写ユニットを個体に導入するのに適している。
【0019】
本明細書に記載されたような免疫化は、異なる蛋白質を発現する多様なDNA転写ユニット(例えば、ベクター)を用いて達成することができる。本明細書に記載されたDNA転写ユニットは、本発明に用い得る転写ユニットの型の代表である。DNA転写ユニットは、感染体の異なるサブグループ(clades) もしくは異なるサブタイプ由来の抗原などの単一感染体由来の抗原類をコードすることができ、そしてさらに2種以上の感染体由来の抗原類をコードすることができる。
【0020】
本発明の一つの態様では、免疫化はネズミロタウイルスの中和キャプシド蛋白質VP7をコードするDNA転写ユニットを用いて達成された。別の態様においては、インフルエンザウイルス血球凝集素糖蛋白質が用いられた。血球凝集素糖蛋白質はウイルスの吸着及び侵入を媒介しそして抗体を中和するための主要な標的である。インフルエンザウイルス血球凝集素蛋白質は14の異なる血清学的サブタイプを有する。特定の態様においては、(H7サブタイプ血球凝集素をコードするDNA転写ユニットを含んでなる)H7サブタイプのためのDNA発現ベクターを用いて、鳥類モデルのH7N7ウイルスでのチャレンジに対する防御を行った。別の特殊な態様においては、H1血球凝集素を発現するDNA転写ユニットを用い、ネズミモデルにおいてH1N1ウイルスに対する免疫化を行った。インフルエンザの異なるサブグループ(例えば、A及びB)及び/又は異なるサブタイプ(サブグループAのサブタイプ1〜14など)に由来する多様な抗原をコードするDNAを含んでなるDNA転写ユニットの混合物も本発明に使用することができる。
【0021】
また、マウス及び猿におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)DNA転写ユニット及びサル免疫不全ウイルス(SIVmac )DNA転写ユニットの免疫原性を試験するために実験を行った。免疫不全ウイルスに対するDNAワクチンは、広い細胞性及び体液性応答が得られるように設計される。これは、異種のHIV抗原をコードするDNAの混合物を用いることによって達成される。この混合物は二つの主要な成分を含む。第一はdpol構築物と呼ばれ、広範囲のHIV−1蛋白質に対する細胞障害性T細胞応答を惹起するのに役立つ。第二はEnv構築物と呼ばれ、風土性の感染に存在するEnvのスペクトラムに対する抗体応答を惹起するのに役立つ。
【0022】
dpolDNA構築物は、9種の蛋白質のうちの1種が構築物中に含まれていないから、非感染性DNAをコードする。この構築物は生ウイルス感染の特徴の多くを真似する。減弱化は幾つかの突然変異により達成することができる。1例としては、点突然変異、欠失又は切断により長末端反復(LTR)を非機能性とすること、及び点突然変異もしくは内部欠失によりポリメラーゼ遺伝子を非機能性とすることなどが挙げられる。他の遺伝子の発現の改変は任意である。こうして、これらの構築物は9種のHIV−1蛋白質のうちの8種(Gag、Env、Vif、Vpr、Vpu、Tat、Rev及びNef)又は9種のSIVmac 蛋白質のうちの8種(Gag、Env、Vif、Vpr、Vpx、Tat、Rev及びNef)を発現するための機会を与える。HIV−1蛋白質又はSIVmac 蛋白質のこの広範なレパートリーの発現により、様々な組織適合性タイプの個体における免疫系の細胞障害性アームの活性化が容易になる。発現されるエピトープの数が増えれば、個体の組織適合性タイプにより認識され得るエピトープが存在する機会が増大する。組織適合性タイプはそれぞれ発現されたエピトープのサブセットをおそらく認識しそして提示するのであろう。
【0023】
dpol構築物も、制御的及び構造的HIV−1蛋白質に対して向けられるCTL応答の上昇を容易にする。dpolDNAによる制御的蛋白質の発現は、感染の最初に発現しそして潜伏感染において最も活性な蛋白質に対する細胞障害性応答を上昇させる機会を与える。これはワクチン投与された宿主に細胞がウイルスを生産する前に細胞を除去する可能性を与える。それはまた潜伏感染している細胞を除去する機会を与える。
【0024】
Env構築物の混合物をdpol構築物と一緒に用いてEnvに対する広い抗体応答を生じさせる。細胞外ウイルスに曝される蛋白質はEnvであるから、Envに対する広い体液性応答は重要である。すなわち、Envに対する抗体は中和及び補体媒介溶解などのプロセスにより感染を防止することができる。感染したヒトにおいて最も顕著な発生を受けるHIV−1蛋白質はEnvであるから、Envに対する広い応答は重要である。Envの混合物は以下のものを含む。
(1)サブグループA〜FなどのHIV−1の異なるサブグループを表すEnv。これらは広い地理的防御を与えるために使用される(マイヤース(Myers) ら、Human Retrovirusesand AIDS, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos NM (1992))。
(2)感染の異なる相の指標となる生育特徴を示す又は異なる組織屈性(tissue tropisms) を有するサブグループ内からのEnv。これらは風土性の感染に存在するウイルスのスペクトラムに対する防御のために用いられる。
(3)異なる伝達経路に好ましいものの代表的なEnv。これらには、同性愛的伝達、異性愛的伝達、静脈内薬物使用による伝達、胎盤経由伝達又は新生児感染が挙げられる。
(4)目的の免疫応答を生起させるのに特に有効なEnvの突然変異型。このようなEnvの1例はヨゼフ ソドロスキー(Joseph Sodroski) 博士(ダナ・ファーバー・キャンサー・インスティテュート、ボストン、MA)によるV1、V2及びV3を欠失したHXB−2 Envである。このEnvはCD−4結合ドメインと関連するコンホーメーションを持つエピトープを保持しており、広い中和活性を持つ抗体を発生させるのに有効である(ワイアット(Wyatt) ら、1993、J. Virol. 67 4557-4565) 。
【0025】
Envの異なる構造型がワクチンに使用されるDNAにより発現される。これらの型はsgp120などのgp120の可溶性型を含み得る。この型はV3ループ決定基に対する抗体を発生させる場合に特に有効である(アール(Earl)ら、1994,J. Virol. 印刷中)。発現させ得る第二の型はsgp140などのgp140の可溶性型である。この型はEnvの細胞外成分のオリゴマーを表し、gp41に対する抗体並びにgp120に対する抗体を発生させ、そしてウイルス粒子上に見出される集合エンベロープスパイク中に存在するEnvのオリゴマー型を認識する抗体群をも発生させる(アール(Earl)ら、1994,J. Virol. 印刷中、ムーア(Moore) ら、J. Virol. 68, 469-484 (1994)) 。sgp120とsgp140は細胞から放出され、抗原提示の主要組織適合性クラスII依存性経路へのそれらの進入を容易にし、そしてT細胞依存性B細胞応答の上昇を容易にする。Env(gp160)の天然型も発現することができる。Envのこの膜定着型はビリオン及び感染細胞の表面に見出されるEnvの型を表す。
【0026】
下記の実施例には、インフルエンザウイルスモデル、ロタウイルスモデル、及び免疫不全ウイルスモデルに使用するために設計された直接DNA接種を用いるワクチン投与の試みを記述する。インフルエンザウイルスに対するワクチン投与の試みには、鳥類、ネズミ、及びフェレットをモデルとして用いる。鳥類及びネズミモデルでは、免疫化していない動物に対しては死をもたらすチャレンジの場合でも、致死的チャレンジに対する防御的免疫化が証明される。フェレットモデルの場合は、鼻孔におけるウイルス複製に対し防御的免疫化が証明されたが、免疫化されていない動物へのチャレンジの場合は鼻孔におけるウイルス複製が認められた。ロタウイルスに対するワクチン投与の試みにはネズミモデルが使用された。ネズミモデルでは、ロタウイルス蛋白質に対するDNA転写ユニットを投与された動物において抗体及び細胞障害性T細胞活性が証明された。この場合、対照DNAを投与された動物ではロタウイルスに対する抗体も細胞障害性T細胞活性も認められなかった。免疫不全ウイルスに対するワクチン投与の試みにはネズミモデルとサルモデルが用いられた。ネズミモデルでは、ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV−1)に対するDNA転写ユニットを投与された動物において中和抗体を含む抗体及び細胞障害性T細胞活性が証明されたが、対照DNAを投与された動物では抗体も細胞障害性T細胞活性も認められなかった。サルモデルは、サル免疫不全ウイルス−マカク(macaque) (SIVmac )の致死量チャレンジを防御する応答の発生を試験するために使用された。
【0027】
本発明は下記の実施例によって例示されるが、これらはいかなる意味でも制限的に解すべきではない。
【実施例】
【0028】
実施例1
インフルエンザウイルスに対するニワトリの免疫化
インフルエンザウイルス血球凝集素タイプ7(H7)遺伝子を発現する複製可能なトリ白血症ウイルスをコードする、pP1/H7(図1)と呼ぶDNA転写ユニットをハント (Hunt)ら、J. of Virology, 62(8), 3014-3019 (1988) の記載のように構築した。H7を発現するが鳥ウイルスベクターポリメラーゼ及びエンベロープ蛋白質を欠損しているpP1/H7の複製欠損誘導体をコードするDNAユニットp188(図2)を、pP1/H7からXbaI断片を欠失させることにより構築した。トリ白血症ウイルスベクターをコードし、インフルエンザウイルス挿入物を持たないDNAユニットpRCAS(図3)を、ヒューズ(Hughes)ら、J. of Virology, 61, 3004 (1987) に記載されたように構築した。DNAユットは接種のために0.2ml当たり100μgの濃度に食塩水で希釈した。
【0029】
接種されたDNAの致死的インフルエンザウイルスチャレンジに対する防御能力を試験するために、3週齢のニワトリの群にpP1/H7、p188、又はpRCASのDNAを接種した。トリ白血症ウイルスフリー群(SPAFAS、ノリウィッチ、CT)として維持されている特異的病原体フリーのニワトリを接種用に使用した。ニワトリそれぞれに100μgのDNAを静脈内に(iv)、100μgのDNAを腹腔内に(ip)、そして100μgのDNAを皮下に(sc)投与した。4週間後にニワトリを採血しそして300μgのDNA(100μgiv、100μgip及び100μgsc)でブーストした。ブースト後1週間目にニワトリを採血しそして高度に病原性の強いタイプH7トリインフルエンザウイルスであるA/ニワトリ/ビクトリア/1/85(H7N7)(Ck/Vic/85)の50%致死量の100倍量(100 leathal doses 50(1×104 卵感染投与量)で鼻孔からチャレンジした。Ck/Vic/85のH7遺伝子は、免疫原性H7の遺伝子とはそのコドンの約15%が異なっている(ハント(Hunt)ら、J. of Virology, 62 (6), 3014-3019 (1988)) 。従って、Ck/Vic/85のチャレンジは、H7サブタイプ内の広い交差防御を獲得する能力の試験となる。Ck/Vic/85はニワトリの内部器官及び脳の全体に素早く拡がり、4〜7日以内に死を惹起する。チャレンジ後、死の徴候についてニワトリを毎日10日間観察した。チャレンジの1週間後及び1.5週間後に生存しているトリから血清を採取した。これらをブースト前及びブースト後の血清と共に抗H7抗体について分析するために使用した(以下を見よ)。
【0030】
表1 H7血球凝集素をコードするDNAを用いた致死的H7N7インフルエンザウイルスに対する防御
【表1】
a(<.)は6羽のトリの中の1羽が10のHIタイターを持っていたことを意味する。
b(<)はすべてのトリが10未満のタイターを持つことを意味する。
c(+)はすべてのトリが死んだことを意味する。
【0031】
H7を発現するDNA転写ユニットは、pP1/H7又はp188を接種されたニワトリのすべてを防御した(表1)。対照的に、対照のDNAであるpRCASの接種は、致死量のウイルスチャレンジに対しニワトリを防御することはできなかった。対照群のトリはチャレンジ後2日目に死の徴候を示し始めた。第3日目までに6羽の対照トリのうちの3羽が死にそして5日目までには対照トリのすべてが死んだ。血球凝集素を発現するDNAを接種されたトリは病気の徴候を示さなかった。チャレンジ後1週間及び1.5週間までに、これらの群はすべて高レベルのHI抗体を発現した。
【0032】
付加的実験
複製欠損H7を発現するDNAで免疫化することにより誘導される防御の再現性を評価するために、p188及びpRCASのDNAのみを接種に用いて上述の実験を3回繰り返した。実験条件の相違は、最初の実験におけるブースト後1週間の代わりにブースト後2週間目にチャレンジしたことであった。3週齢のSPAFASニワトリに、3ルート(iv、ip及びsc)のそれぞれから100μgのDNAを接種した。4週間後にiv、ip及びsc投与により各100μgのDNAを接種してブーストした。2週間後に、ニワトリに鼻孔経由でCk/Vic/85(H7N7)の50%致死量の100倍量(100 lethal doses 50)をチャレンジした。
【0033】
反復実験の結果により、表2に示すように、H7を発現するp188DNAは致死的チャレンジに対する防御を与え得ることが確認された。
【0034】
表2 p188DNAを用いた免疫化による致死的H7ウイルスチャレンジに対する防御の再現性a
【表2】
a 実験1は表1に示したものと同一である。−はテストしていないことを示す。
【0035】
p188接種ニワトリのすべてが致死的チャレンジに対し生き残った最初の実験とは対照的に、第2、第3、及び第4の実験における免疫化では、ワクチン投与されたトリの28%〜83%で防御が認められるという結果であった。さらに、ワクチン投与されたトリが病気の徴候を示さなかった最初の実験とは対照的に、反復実験における生存トリの大部分はチャレンジ後の病気の一過性の徴候を示した。最初の実験の場合と同じように、対照のDNAは防御を示さなかった。これら4回の実験の結果をまとめると、56羽のp188ワクチン投与を受けたトリのうちの28羽が生き残り、55羽の対照のトリのうちの僅か1羽だけが生き残った。従って、高度に有意な防御が達成された。免疫化するH7遺伝子とチャレンジするH7遺伝子がアミノ酸配列において約15%の抗原性ドリフトを受けていることを考慮すると、このレベルの防御が得られたことは特に印象的である。
【0036】
実施例2
ワクチン投与された動物と投与されない動物のH7に対する抗体応答の分析
ワクチン投与されたニワトリとワクチン投与されないニワトリのH7に対する抗体応答の比較をするために、実施例1の実験2(表2を見よ)に抗インフルエンザAウイルス薬であるアマンタディン塩酸塩(ウエブスター(Webster), R. G.ら、J. Virol. 55, 173-176 (1985)) を投与したワクチン非投与群を含めた。5羽のアマンタディン処理トリのすべてが発病した。これらのうちの4羽は生き残り、それらから免疫化ニワトリと非免疫化ニワトリのH7に対する抗体応答を比較するために使用できる血清が得られた。
【0037】
第2の実験において、p188を接種されたトリ及びアマンタディン処理を受けたトリの血清を、H7及び他のインフルエンザウイルス蛋白質に対する抗体応答の経時変化を分析するために用いた。H7に対する抗体応答は、血球凝集阻止(HI)及びウイルス中和並びに酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を用いて定量した。血球凝集阻止試験では、パーマー(Palmer)ら、アドバーンスド・ラボラトリー・テクニークス・フォー・インフルエンザ・ダイアグノシス、p.51-52 、イミュノロジーシリーズ no.6、U.S. Department of Health, Education, and Welfare, Washington D.C. (1975)に記載されたように受容体を破壊する酵素で処理した血清を用いてマイクロタイタープレート中で分析した。中和抗体はニワトリ胚繊維芽細胞培養中で測定した。中和試験はウイルスの200TCID50に対するものであり、ウイルス複製の検出には細胞病理学及び血球凝集素を用いた。結果を下記の表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
ワクチン投与されたトリ及びアマンタディン処理を受けたトリにおける抗体応答の分析から、p188がH7に対する抗体応答を開始させたことが明らかとなった。実験1(表1)におけるように、DNAの投与及びDNAによるブーストはH7に対する抗体を低力価でしか誘導しなかった。しかし、チャレンジの1週間以内に、DNA免疫化群はHI及びH7に対する中和活性の高いタイターを持った。これらのタイターはその次の週にわたって(多少の増加はあるにしても)ほとんど増加しなかった。さらに、ワクチン投与されたトリのチャレンジ後の抗体の大部分はH7に対するものであった。この特異性はH7ウイルス(免疫原性血球凝集素タイプ)とH5ウイルス(このトリが曝されたことのない血球凝集素タイプ)に対するELISA抗体タイターを比較することによって示された。チャレンジ後の血清は、H5ウイルスに対するよりもH7ウイルスに対するELISA抗体を20倍多く含んでいた。対照的に、アマンタディン処理群では、抗体の大部分はH7特異的ではなく、H5ウイルス及びH7ウイルスに共通な蛋白質に対するものであった。このことは、H5及びH7インフルエンザウイルスに対するELISA抗体のタイターが同程度であったことにより証明された。
【0040】
実施例3
非レトロウイルス転写ユニットを用いるニワトリの免疫化
この実験は、レトロウイルスDNAを欠くDNA転写ユニットを本明細書に記載の方法により防御的免疫応答を形成させるために使用しても成功することを証明するために行われた。ニワトリにワクチン投与するためこの実験に用いたベクターを図4及び図5に示す。図4はサイトメガロウイルス(CMV)即時型プロモーターの転写制御の下にインフルエンザウイルスH7サブタイプ血球凝集素を発現することができるプラスミドである、pCMV/H7の図式的表示である。図5はインフルエンザ抗原を発現することができない対照のプラスミドである、pCMV/対照を示す。これらのプラスミドは、ブライアン カレン(Bryan Cullen)博士、デューク大学、ダーハム、ノースキャロライナ(Cullen, B.
R., Cell 45, 973-982 (1986)) のpBC12/CMVベクターの誘導体である。
【0041】
pCMV/H7(非レトロウイルスに基づくDNA転写ユニット)を用いる実験では、免疫応答を形成させるために、免疫化及びブーストは実施例1に記載したものと同じ接種スケジュールを用いたが、異なる接種ルートを用いた。具体的には、100μgのDNAを静脈内、腹腔内及び筋肉内の3種のルートのそれぞれから接種した。ブーストはワクチン投与の場合と同じDNA投与量及び同じ接種部位を用いた。チャレンジはブースト後1〜2週間であり、実質的に100%死滅が達成できるようにCk/Vic/85の50%致死量の100倍量(100 lethal doses 50)を用いた。pCMV/H7DNAの5回の独立の実験の結果を下記の表4に示す。
【0042】
表4 pCMV/H7DNAを用いる免疫化によるCk/Vic/85(H7N7)インフルエンザウイルスの致死量チャレンジに対する防御
【表4】
【0043】
ワクチン投与のためにpCMV/H7を用いる5回のニワトリの実験では、約60%のニワトリが防御された。このレベルの生存はレトロウイルスに基づくベクターp188で得られたレベル(表2)と極めて似ている。レトロウイルスに基づくベクターを用いる試みの場合と同様に、生存体の多くがインフルエンザの一過性の徴候を発現した。従って、レトロウイルスに基づくベクターで得られた防御に匹敵する防御が非レトロウイルスに基づくベクターでも得ることができる。
【0044】
非レトロウイルスに基づくベクターでの実験におけるH7への抗体応答も、レトロウイルスに基づくベクターでの抗体応答と類似していた(表3、表4)。具体的には、防御的応答は、チャレンジ後のH7特異的抗体の急激な上昇(1週間以内)と関連していた。ワクチン投与及びブースト後の血清は低レベルか検出不可能なレベルの抗H7抗体しか含んでいなかった。チャレンジ前の抗体が低レベルであることはチャレンジ後の抗体の急激な上昇と併せ考えると、防御はチャレンジ感染により移動可能とされ記憶応答を確立したDNA転写ユニットにより媒介されたものであることが示唆される。こうして、動物にワクチン投与するために非レトロウイルスDNA発現ベクター(ウイルス抗原をコードするDNA転写ユニットを含む)を用いて、かなりの防御が達成された。
【0045】
実施例4
pCMV/H1DNAを用いるワクチン投与によるマウスの免疫化:種々の接種ルートの分析
pCMV/H1と呼ぶDNA転写ユニットは、マウス適応A/PR/8/34H1N1インフルエンザウイルスでの致死量チャレンジに対しマウスを免疫化するために使用して成功した。この転写ユニットはCMV即時型プロモーターの転写調節の下にインフルエンザタイプH1血球凝集素をコードする。この構築に用いられたH1インフルエンザウイルス血球凝集素遺伝子は、ウインターズ(Winters) ら、Nature 292, 72 (1981) により詳細に記載されており、そしてチャレンジウイルスにおけるH1インフルエンザウイルス血球凝集素遺伝子と同一である。ベクターはH7の発現のために実施例3で使用したものと同一である(図5を見よ)。pCMV/H1転写ユニットは図6に図示してある。
【0046】
【表5】
【0047】
マウスにおけるワクチン投与の試みは6−から8−週齢のBALB/cマウスにDNAを投与することにより行われた。タイム0に1回及び4週間後に第2回目と、2回のDNA接種を行った。試験動物は実験中観察し、マウスはチャレンジ時を最初に以後規則的に秤量した。致死的チャレンジは、メトファン(ピットマン−ムーア、ムンデライン、IL)で麻酔をかけたマウスの肺にウイルスを吸入させることにより、第2回目の接種後10日目に投与した。チャレンジはマウス適応A/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスの250プラーク形成ユニット(50%致死量(LD50)の10〜100倍)を0.1%ウシ血清アルブミンを補填した食塩水100μlに含むものからなるものであった。チャレンジウイルスは気道中で局在化された複製を受け、1〜2週間以内に肺炎による死の原因となった。DNA接種のルートは次のものを含む。静脈内(尾部静脈)、腹腔内、筋肉内(両方とも四頭筋)、鼻内(メトファンで麻酔したマウスの鼻孔にDNAを滴下して投与)、皮内(足の裏)、及び皮下(うなじ)。一般にDNA100μgを試験部位当たり食塩水100μlに溶かして投与した。足の裏への接種はDNA50μgを25μlに溶かして投与した。
【0048】
表6は、食塩中のpCMV/H1DNAの接種によるA/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスの致死量チャレンジに対するマウスの防御を示す結果を表す。表6中のデータは4回の独立の実験の結果を集積したものである。示されたルートは静脈内(iv)、腹腔内(ip)、筋肉内(im)、鼻孔内(in)、皮内(id)、及び皮下(sc)である。インフルエンザの徴候には、体重減少、毛の乱れ(ruffled fur)、及び嗜眠状態(lethargy)が挙げられる。この徴候は次のようにスコアした。+は一過性の体重減少が見られたが毛は滑らかでありそして活動のレベルは正常のもの、++は一過性の体重減少と一部毛の乱れ及び嗜眠状態が見られたもの、+++は一過性の体重減少及びより激しい毛の乱れと嗜眠状態が見られたもの、++++はより大きな体重減少並びに激しい毛の乱れと嗜眠状態が見られたもの、+++++は体重減少及び死に至るインフルエンザの重篤な徴候が見られたものである。確率は対照群に対するワクチン投与群の生存率と死亡率を比較することによりフィッシャーの直接両側検定(Fisher's exact two-tailed test)を用いて計算した。
【0049】
表6 種々のルートからのpCMV/H1接種によるA/PR/8/34(H1N1)の致死量チャレンジに対する防御
【表6】
【0050】
筋肉内接種、静脈内接種、又は3種のルート(筋肉内、静脈内、及び腹腔内)のすべてによる接種の場合に優れた生存がみられた。これらの群の、比較的軽いインフルエンザは毛の乱れ及び一過性の体重減少に関連するものであった。鼻孔からDNAを投与されたマウスでは、生存率は良かったが、より激しいインフルエンザが発症した。皮内接種及び皮下接種を受けたマウスでは、生存率はさらに悪く(67〜75%)そしてインフルエンザのより厳しい徴候が発症した。腹腔内注射のみを受けたマウスは全く致死量チャレンジに生き残ることができなかった。対照群(pCMV/対照DNA又はDNAなしを接種)はインフルエンザの厳しい徴候が発症し、チャレンジに対し極めて僅かしか(13%)生き残れなかった。従って、筋肉内、静脈内、鼻孔内及び皮内の各投与ルートは良好な防御を提供した。
【0051】
これらの結果は、トランスフェクションの効率が必ずしもワクチン投与の効率を決定するものではないことを示すものである。げっ歯類動物の筋肉の高いDNA取込み能及び高いDNA発現能(ウオルフ(Wolff, J. A.)ら、Science 247, 1465-1468 (1990) 、ウオルフ(Wolff, J. A.)ら、BioTechniques 11, 474-485 (1991)、アクサディ(Acsadi, G.)ら、New Biol. 3, 71-81 (1991))は、筋肉内ワクチン投与の異常な効率と相関しなかった。筋肉内接種は良い結果を与えたが静脈内接種より良いということはなく、そしてDNAの鼻孔滴下投与よりも幾らか良いにすぎなかった。同様な結果が4種のルートに対するニワトリでの実験(以下に記す)でも得られた。この場合は、静脈内接種及び気管内接種が筋肉内接種により得られたものと同等な防御レベルを達成した。
【0052】
実施例5
ニワトリのインフルエンザモデルにおけるpCMV/H7の異種経路接種による防御的免疫化
DNAワクチン投与に対する接種経路の影響を、トリのインフルエンザウイルスモデルでさらに評価した。実施例1に記載したように、ニワトリにおける接種経路についてDNAワクチン投与実験を行った。接種経路としては次のものが含まれる。静脈内(羽根静脈)、筋肉内(胸筋肉)、気管内(DNA滴を気管内に投与)、皮下(うなじ)、粘液嚢内(ニワトリの肛門(vent)の直ぐ上に注射)、及び眼窩内(DNA滴を眼に投与)。一般に、100又は200μgのDNAを200μlの食塩水に溶かして投与した。結果を下記の表7に示す。p188DNA及びpRCASDNAのデータは3回の独立の実験の集計である。pCMV/H7DNA及びpCMV/対照DNAのデータは2回の独立の実験の集計である。確率は対照群に対するワクチン投与群の生存率及び死亡率を比較してフィッシャーの直接両側検定を用いて計算した。示された経路は、静脈内(iv)、腹腔内(ip)、皮下(sc)、筋肉内(im)、気管内(it)、粘液嚢内(ib)、及び眼窩内(io)である。
【0053】
表7 異種経路によるDNA接種後のCk/Vic/85(H7N7)の致死的チャレンジに対するニワトリの防御a
【表7】
a 対照のデータは表2及び表4のデータと同一である。
【0054】
接種経路についてのニワトリでの実験では、ワクチンDNAの静脈内投与、筋肉内投与、及び粘膜内投与に対して良い効率が証明された。これらの群は、3種の経路のそれぞれからDNA投与を受けた群(表2及び表4)のそれの約1/2の防御レベルを示した(24〜30%)。皮下、腹腔内、粘液嚢内、及び眼窩内における接種では悪い防御か全く防御を示さなかった。対照のDNAを投与されたニワトリは致死的インフルエンザを発症し、このチャレンジに対しほとんど生き残れなかった(約2%)。実験群内では、生き残ったニワトリでもインフルエンザ関連疾病の重症度はさまざまであった。
【0055】
実施例6
マウス表皮へのDNAの遺伝子銃送達(gene gun delivery) による防御的免疫化
表皮へDNAを送達するためにDNA銃を使用することができるか否かをテストするために、アクセル・パーティクル・ボムバードメント・デバイス(アグラセツス、ミドルトン、WI)を用いて、マウスの表皮にDNA被覆金ビーズを送達した。これらの実験はアグラセツス,インクのジョエル R.ヘインズ(Joel R. Haynes)博士と共同で行った。
【0056】
マウスへのDNAの遺伝子銃送達のために、0.95μmの金の粉末(デグッサ、サウスペインフィールド、NJ)の10mg及び適当量のプラスミドDNAを50μlの0.1Mスペルミディンを含む1.5ml遠心分離用チューブ中に添加してプラスミドDNAを金粒子に固定した。ボルテックス攪拌しながら2.5MのCaCl2 50μlを添加してプラスミドDNAと金を共沈澱させた後、沈澱物をアブソリュートエタノールで洗浄し、2.0mlのエタノール中に再懸濁した。金/DNA懸濁液をキャップ付きバイアルに移し、2〜5秒間音波発生水浴中に漬け、塊を溶解した。金/DNA懸濁液163μlを1.8cm×1.8cmマイラー(Mylar) シートに載せ、数分間放置した後、メニスカスを破壊し、過剰のエタノールを吸引して除いた。金/DNA被覆マイラーシートを真空下で乾燥し、保存した。シート当たりのDNAの総量はDNA/金の比の関数であり、シート当たり0.2〜0.0002μgの範囲であった。動物をケタセット/ロンプン(10:2)の30μlで麻酔した。腹部の標的部を剃り、剃り残しの皮膚角質層を除くため2分間ネール(Nair)( カーターワラス、NY)で処理した。遺伝子送達の前に水で標的部を徹底的に洗浄した。DNA被覆金粒子を、電気スパーク放電を起動力として用いるアクセルの装置を用いて腹部の皮膚内に送達した(ヤング(Yang, M. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 9568-9572 (1990))。各動物は、17kVの放電電圧で、免疫当たり2回の非重複送達を受けた。このビーズは細胞内へDNAを送達し、そこでDNAは溶解しそして発現することができる(ヤング(Yang, M. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 9568-9572 (1990)、ウイリアムズ(Williams, R. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 2726-2730 (1991))。発現は一過性であり、発現の大部分は表皮の通常の脱落により2〜3日以内に消失する(ウイリアムズ(Williams, R. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 2726-2730 (1991) 、未発表の観察) 。
【0057】
表皮中へのDNA被覆金粒子の遺伝子銃に基づく注入(acceleration)は、表8に示すようにDNA免疫化のこれまでに最も効率的な方法であることが分かった。データは4回の独立の実験の集計である。確率は、対照群に対するワクチン投与群の生存率及び死亡率を比較してフィッシャーの両側直接検定を用いて計算した。インフルエンザの徴候の記述については表6の上記の議論を見よ。
【0058】
表8 遺伝子銃送達pCMV/H1・DNA接種によるA/PR/8/34(H1N1)の致死量チャレンジに対する防御
【表8】
【0059】
ネズミモデルにおける銃送達DNAのこれらのテストは、95%生存率を達成するのに僅か0.4μgのDNAで十分であることを明らかにした。これらの生存体はチャレンジ後のインフルエンザの極めて限られた徴候を示すか全く徴候を示さなかった。0.04μgの銃送達pCMV/H1・DNAを受けたマウスは約65%の生存率を示しそしてかなり重いインフルエンザの徴候を呈した。0.004〜0.0004μgのpCMV/H1・DNAを受けたマウスは、チャレンジに屈伏した。生理食塩注射のテストの場合のように、対照DNAを受けたマウスは重いインフルエンザの徴候を呈し、生存は極限られていた(14%)。こうして、マウスの表皮へのDNAの遺伝子銃送達により免疫化の高い効率が達成された。この方法による免疫化は生理食塩接種よりも250〜2500倍少ないDNA(100〜200μgのDNAに対し0.4〜0.004μgのDNA)しか必要としなかった(表6及び表7を見よ)。
【0060】
実施例7
pCMV/H1のワクチン投与を受けたマウスにおける抗体応答
実施例4及び6に上記したネズミの実験において、各DNAの接種の直前と、チャレンジの直前と、及びチャレンジ後に2回、それぞれ血清を採取した。麻酔したマウスの眼の静脈から40μlの非ヘパリン化ミクロヘマトクリット管に採血した。同一グループ内のメンバーから得た血清をプールした。ニワトリの赤血球細胞及びカオリンで前処理してバックグラウンド活性を除去したマウスの血清を用いて血球凝集阻止試験を行った(ノバック(Novak M.)ら、Vaccine 11, 55-60 (1993)) 。血球凝集阻止タイターは血球凝集の完全阻止を与える最大血清希釈度の逆数である。マウス抗体のイソタイプは、標準プロトコールと精製A/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスで被覆されたミクロウエルプレートを用いる酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)により決定した。これらの検定は、タイターで類似の活性を持つイソタイプ特異的ペルオキシダーゼ結合抗体(シグマ・イムノケミカルズ)の1:1000希釈を使用した。血清分析のデータは下記の表9に示す。データは所与の条件に対し陽性のスコアであった血清プールの最終希釈の逆数の幾何平均である。
【0061】
表9 マウスへのpCMV/H1・DNAの接種経路をテストするワクチン投与実験における抗体応答
【表9】
* 3種の血清プールの一つのみについてHI活性を試験した。ワクチン投与前=DNAワクチン投与前の採血、10d PB=第2回目DNA接種後10日目に採血(チャレンジ前)、4d PC=チャレンジ後4日目に採血。#テスト=血清プールが試験された群の数(そのプールに寄与する動物の血清の数)。NT=試験しなかった。<=この試験で用いられた最小希釈度の血清でも活性は検出されなかった。
【0062】
さまざまな経路によるDNAワクチン投与は記憶抗体応答を引き起こすようであった。DNAワクチン投与及びブースター接種は検出不可能な程度に低い血球凝集阻止抗体及びELISA活性を発生させたにすぎなかった。これらの低レベルの活性はチャレンジ後に急速に増大した。ニワトリの実験(表3及び表5)の場合のように、チャレンジ前には動物中での防御は起こったが、抗インフルエンザ抗体のレベルは検出不可能であった。しかしながら、DNA接種がチャレンジ前抗体の検出可能なタイターを生じたグループでは、最上の防御が認められた。
【0063】
抗インフルエンザウイルス抗体のイソタイプをスコアするためにELISAを使用すると、免疫化がIgG応答の引金となったことが明らかとなった。DNAの銃送達、静脈内接種又は筋肉内接種によりワクチン投与を受けたマウスの血清では、チャレンジ前には抗インフルエンザIgGの低いタイターしか検出し得なかった。IgGの検出不可能タイターの境界線はDNAの鼻孔滴下を受けたマウスの血清中に存在した(このDNA投与経路により与えられるより貧弱な防御と一致している)。チャレンジ後4日目までに、最良の防御を受けたマウス中でIgGレベルの増加が検出された。対照的に、対照のDNAを受けたマウスは、チャレンジ後の第2回目の血清採取まで抗インフルエンザウイルスIgGのレベルは検出可能でなかった。これは、ワクチン投与群がチャレンジへの二次的抗体応答を受け、対照群が受けなかったことと一致した。
【0064】
これらの実験は、DNA接種がT−ヘルパー記憶及びB−細胞記憶の両方を引き起こしたことを示す。この記憶は、チャレンジされた動物中の二次的応答の上昇を支持することにより防御を与えるように見えた。記憶の惹起の証拠はIgGイソタイプに属する抗体を上昇させるDNA接種によって与えられる。なぜなら、IgGはT−細胞の助けに応答して免疫グロブリンの再配列を受けた分化したプラズマ細胞により産生されるからである(アバス(Abbas, A. K.)ら、セルラー アンド モレキュラー イムノロジー(サウンダース、フィラデルフィア、PA),pp. 187-197 (1991)) 。チャレンジへの応答における記憶の移動可能性に対する証拠が、チャレンジ後の血清IgGの急速な上昇に見出される。
【0065】
チャレンジ前及びチャレンジ後の血清の両方において、IgM及びIgAは検出限界ぎりぎりから検出不可能のレベルで検出された。この実験を通じて、これらの免疫グロブリンイソタイプが低レベルであったことから、DNA接種のどの経路も血清IgM又はIgAを上昇させるには効果的でなかったことが明らかであった。
【0066】
実施例8
A/PR/8/34(H1N1)インフルエンザチャレンジに対するフェレット獣を防御するためのpCMV/H1・DNA転写ユニットの使用
フェレット獣のインフルエンザモデルはヒトのインフルエザ感染に多くの類似性を有するので、このインフルエンザモデルにおけるpCMV/H1・DNA免疫化に関する研究を行った。最初の実験では、生理食塩水中の精製pCMV/H1のDNAを用い、1ヶ月間隔で筋肉内接種によりフェレットを免疫化した。若い雌成獣フェレットを前採血しついで後足それぞれに125μlずつ2回注射し総量500μlを接種することにより、食塩水中の500μgのpCMV/H1・DNA又はpCMV/対照DNAを用いてワクチン投与した。1頭のフェレットは1ヶ月間隔で500μgのpCMV/H1・DNAの筋肉内接種を3回受け、一方第2の動物は1ヶ月間隔で500μgのpCMV/H1・DNAの筋肉内接種を2回受けた。対照の動物は1ヶ月間隔で500μgのpCMV/対照DNAの筋肉内接種を3回受けた。
【0067】
メトファン麻酔をかけたフェレットを、最終DNA接種後1週間目に鼻孔経由でA/PR/8/34(H1N1)の107.7 卵感染投与量50を用いてチャレンジした。ケタミン麻酔下にチャレンジ後3、5及び7日目に鼻孔洗浄液を集めた。鼻孔洗浄液中のウイルスタイター測定は記載(カッツ(Katz, J. M.) 及びウエブスター(Webster, R.G.) 、J. Infect. Dis. 160, 191-198 (1989)) されたように卵中で行った。データは下記の表10に示す。
【0068】
表10 H1ウイルスに対する、pCMV/H1・DNAの筋肉内接種によるフェレットの防御
【表10】
【0069】
鼻孔洗浄液を分析すると、チャレンジ後3日目のフェレットのすべての洗浄液に同様に高いウイルスタイターが明らかとなった。興味あることに、pCMV/H1の3回接種を受けたフェレットはチャレンジ後5日目までに鼻孔感染がほとんど治癒し(cleared)、その5日目の鼻孔洗浄液はml当たり10卵感染投与量50のウイルス未満を含むにすぎなかった。この時点でpCMV/H1・DNAの2回接種を受けたフェレットではその鼻孔洗浄液中のウイルスのタイターが10倍減少していた。対照的に、対照DNAを受けたフェレットでは、その鼻孔洗浄液のウイルスタイターには、減少があるにしても僅かであった。チャレンジ後7日までにすべてのフェレットでその鼻孔感染が治癒した。対照DNAを受けた2頭のフェレットの場合と比べて、pCMV/H1・DNAの3回筋肉内接種を受けたフェレットではウイルスの遙に急速な治癒が認められ、pCMV/H1・DNAの2回筋肉内接種を受けたフェレットでもかなり早い治癒が認められたことから、pCMV/H1の筋肉内接種が何らかの抗インフルエンザ免疫を上昇させたことが示唆される。
【0070】
遺伝子銃接種
免疫誘導の効率を高めるために、フェレットでアクセル遺伝子銃を用いてDNA被覆金ビーズをフェレットの皮膚内に送達する第2の実験を行った。腹部表皮を遺伝子銃送達DNAの標的として用い、1ヶ月間隔で2回の遺伝子銃DNA投与をフェレットに行った。遺伝子銃接種をケタミンで麻酔した若い雌成獣フェレットに施した。皮膚は剃り、脱毛剤ネール(NAIR)(カーター−ワラス、ニューヨーク)で処理した。前述のように、DNAビーズ(1〜3ミクロン)を接種用に調製した(ファイナン(Fynan) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 11478-11482 (1993))。接種には、15kVの送達電圧を用いた。フェレットを2μg又は0.4μgのDNAで接種した。2μgのDNAを接種されたフェレットは0.2μgのDNAを被覆された0.8mgのビーズからなるショットを10回受けた。0.4μgのDNAを受けたフェレットは同様のショットを2回受けた。
【0071】
第2回目のDNA免疫化の1週間後に、メトファンで麻酔したフェレットに鼻孔を介して106.7 卵感染投与量のA/PR/8/34(H1N1)ウイルスを投与することによりチャレンジした。このチャレンジは、第1回目のチャレンジでのウイルス複製が高レベルであったので、筋肉内接種を用いた実験の場合よりも10倍低いものであった。チャレンジ後3日目及び5日目にケタミン麻酔下に鼻孔洗浄液を集め、上述のようにウイルスをタイター測定した。データを下記の表11に示す。
【0072】
表11 pCMV/H1・DNAの遺伝子銃接種によるH1ウイルスに対するフェレットの防御
【表11】
【0073】
遺伝子銃ワクチン投与を受けたフェレットのチャレンジ後の鼻孔洗浄液を分析することにより、2μgのDNAを受けた3頭のフェレット及び0.4μgのDNAを受けた3頭のフェレットのうちの1頭はこのチャレンジから完全に防御された。このことはチャレンジ後3日目のこれらの動物の鼻孔洗浄液中にウイルスを回収することができなかったことにより証明された。0.4μgのDNAを受けた残りの2頭の動物及び対照の動物は防御されず、チャレンジ後3日目の動物の鼻孔洗浄液中に存在するウイルスのタイターを容易に検出することができた。この実験では、すべての動物(対照およびワクチン投与されたもの)が感染後5日目までにそれらの鼻孔洗浄液中にウイルスを検出できなくなった。
【0074】
遺伝子銃実験に用いたフェレットを次にDNA投与及びウイルスチャレンジに対する抗体応答について分析した。これらの試験ではA/PR/8/34(H1N1)に対する中和活性を試験した。抗体のタイター測定は記載されたように行った(カッツ(Katz, J. M.) 及びウエブスター(Webster, R. G.)、J. Infect. Dis. 160, 191-198 (1989))。中和活性のタイターは、ウイルスの200 50%組織培養感染投与量を完全中和する血清の最大希釈度の逆数である。データは下記の表12に示す。
【0075】
表12 遺伝子銃送達pCMV/H1・DNAでワクチン投与されそしてA/Pr/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスでチャレンジされたフェレットにおける中和抗体
【表12】
【0076】
DNAブースト後チャレンジ前の中和抗体が、2μgの遺伝子銃送達DNAを受けた動物のうちの2頭に検出された。2μgのDNAを受けた第3の動物(鼻孔洗浄液中のウイルスの存在に対しては完全に防御された動物)のチャレンジ前の血清中には中和抗体は検出されなかった。鼻孔洗浄液中にウイルスを発生させなかった0.4μgのDNAを受けたフェレットの血清にも中和抗体は検出されなかった。
【0077】
チャレンジ前の抗体を有する動物では、防御はおそらく中和抗体の存在並びに中和抗体に対する記憶応答の動態化によるものであろう。検出可能なレベルのチャレンジ前抗体を持たずに防御された動物では、防御は感染による記憶応答の急速な動態化と感染を制御する動態化された応答とによるものであろう。ワクチン投与を受けた動物でチャレンジ前抗体の存在しない場合の防御も、マウスやニワトリでの予めDNAワクチン投与を行った研究(表3、5及び9を参照)(ファイナン(Fynan) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 11478-11482 (1993) 、ロビンソン(Robinson)ら、Vaccine 11, 957-960 (1993)) 及びレトロウイルスベクターやポックスウイルスベクターを用いてインフルエンザウイルス血球凝集素糖蛋白質を発現させるワクチン投与実験においても観察されている(ハント(Hunt)ら、J. Virol. 62, 3014-3019 (1988)、ウエブスター(Webster) ら、Vaccine 9, 303-308 (1991))。
【0078】
実施例9
粘膜投与のための微小体カプセル化DNA
致死量のインフルエンザウイルスチャレンジに対する防御的応答を発生させる微小体カプセル化DNAの能力を試験することにより、DNA接種のための粘膜経路をさらに発展させた。ネズミインフルエンザウイルスモデルをこれらの研究に使用した。ウイルス・リサーチ・インスティチュート,インク,ケムブリッジ,MAにおいて、pCMV/H1DNA及びpCMV/対照DNAをアルギン酸塩の微小体中にカプセル化した。各群が一次接種及びブーストを受ける実験を行った。A群は一次接種として遺伝子銃送達DNAの0.4μgを受け、ブーストは受けなかった。B群は一次接種及びブーストとして0.4μgの遺伝子銃送達DNAを受けた。C群は一次接種として0.4μgの遺伝子銃送達DNAを受けそしてブーストとしてアルギン酸塩カプセル化DNAの100μgを受けた。D群は一次接種及びブースト接種の両方において100μgのアルギン酸塩カプセル化DNAを受けた。アルギン酸塩カプセル化DNAの各投与はメトファンで麻酔されたマウスの鼻孔に100μlの水に懸濁して送達することにより行った。第2のDNA接種後10日目に、メトファンで麻酔したマウスの鼻孔にA/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスの500pfuを投与して致死量チャレンジを行った。4頭の対照群は同量のpCMV/対照DNAを受けた後pCMV/H1DNAを受けた群と同様の処理を受けた。この実験のデータを表13に示す。
【0079】
表13 インフルエンザウイルスの致死量チャレンジに対する微小体中ワクチンDNA投与によるマウスの防御
【表13】
*銃=遺伝子銃送達、ms i.n.=アルギン酸塩微小体にカプセル化されたDNA。
【0080】
アルギン酸塩カプセル化DNAの鼻孔内投与は良好な防御を与えた。アルギン酸塩カプセル化pCMV/H1・DNAを受けたワクチン投与群は、それぞれアルギン酸塩カプセル化pCMV/対照DNAを受けた群よりもはるかに良好な生存率を示した。アルギン酸塩カプセル化DNAのみを受けたマウス6頭のうちの4頭は生存し、インフルエンザの極めて軽度の徴候を示した。対照的に、アルギン酸塩カプセル化pCMV/対照DNAを受けたものは、4頭のうち僅かに1頭だけが生き残った。対照群はすべてインフルエンザの重い徴候を呈した。1回だけ銃接種を受けた群はインフルエンザの軽度の徴候を示し、50%の生存率(3/6マウス)であった。アルギン酸塩ブーストを付加するとインフルエンザの徴候に対しさらに良い防御及びさらに高い生存率(5/6マウス生存)がみられた。2回の遺伝子銃DNA送達は最も良い生存率を与え、すべてのマウスが生存しインフルエンザの徴候も全く示さなかった。
【0081】
実施例10
ロタウイルス蛋白質をコードするDNA転写ユニットを用いるマウスの免疫化
マウスを免疫化する能力についてロタウイルスDNA転写ユニットを試験した。マウスについてロタウイルスに対するワクチン投与のためにこの実験で用いたpCMV/VP7ベクターは、プラスミドpCMV/VP7がネズミロタウイルス中和キャプシド蛋白質VP7を発現することができるものである点を除き、図4及び6に示すものと類似している。VP7DNAはハリー グリーンバーグ(Harry Greenberg)博士、スタンフォード大学、Palo Alto, CA, USAから入手した。
【0082】
免疫応答を生ぜしめるためにpCMV/VP7を用いるマウスの実験において、0.4μgのDNAを腹部皮膚に(上述のように)遺伝子銃で送達した。すべてのワクチン投与の後4週間目にブーストを行った。このブーストはワクチン投与と同じDNA投与量で、同じ接種部位に行った。ブースト後1〜2週間に抗体及び細胞障害性T細胞(CTL)について試験した。データは表14及び図7に示す。
【0083】
表14 pCMV/VP7DNA接種マウスの血清中の抗VP7抗体
【表14】
*抗VP7抗体は全マウスEDIMロタウイルスに対しELISAにより検定した。
【0084】
pCMV/VP7DNAにより発生した全EDIMウイルスに対する抗体ELISAタイターを表14に示す。1:200の抗体タイターがVP7遺伝子(pCMV/VP7)に対するDNA転写ユニットにより発生した。生のEDIMネズミロタウイルスの1回接種により得られる抗体のタイターは1:800のタイターを与えた(示していない)。pCMV/対照プラスミドのみでは有意のタイターは得られなかった。
【0085】
プラスミドpCMV/VP7がネズミロタウイルス感染細胞に対する細胞障害性T細胞(CTL)応答を誘導することができることも見出された。クロミウム放出CTL試験の結果を図7に示す。pCMV/VP7を接種されたマウスの脾臓細胞における特異的溶解のパーセントは、EDIMロタウイルスを経口感染させたマウスで得られた45%溶解と比べて、エフェクター対標的比が60:1の場合で約30%であった。
【0086】
実施例11
HIV−1に対する免疫化のためのDNA構築物
HIV−1に対する免疫化のために2系列のDNA転写ユニットを調製する。その第一はpBC12/CMVベクター(上記及び図5を見よ)を用いてHIV−1配列のための転写制御要素を提供する。pBC12/CMVベクターにおいては、HIV−1蛋白質の発現はRev依存性である。第二の系列はJames I. Mullinsラボラトリー(スタンフォード大学)(Palo Alto, CA)で開発されたJW4303ベクターを用いる(図8を見よ)。これらのベクターはEnvのRev非依存性発現を支持する。JW4303ベクター及びそれに伴うオリゴヌクレオチドはHIV−1単離物すべてのEnvのPCR増幅断片のクローニングを容易にするように設計される。
【0087】
pBC12/CMVに基づくベクター
pBC12/CMVに基づくベクター中へのクローニングはすべてpBC12/CMV/IL−2中で行った。具体的には、挿入断片は、IL−2のcDNAのBamHIからHinDIII までの断片と置換された。これらのクローニングには3種の挿入物が用いられた(図10〜12)。
【0088】
pCMV/HIV−1−NL4−3.dpol(図10)
図9は、HIV−1−NL4−3(NL4−3)プロウイルスDNA及びその会合した長末端反復(LTR)配列及び読み取り枠(open reading frames) を図示する。pNL4−3はマルコーム(Malcolm, A.) 博士、マーチンス・ラボラトリー(National Institutes of Health, Bethesda, MD) から提供された( アダチ(Adachi)ら、J. Virol. 59, 284-291 (1986)) 。HIV.NL4−3株のジーンバンク受託番号はM1991である。NL4−3.dpol挿入物は非感染性HIV−1粒子をコードし、生のしかし非感染性の感染を真似るように構築された。非感染性の粒子をコードする挿入物を得るために、それぞれHaeII及びBanII消化を用いて5’−LTRのすべて及び3’−LTRの大部分をpNL4−3から欠失させた。1932bpの内部BalI欠失によりpol遺伝子を非機能性とした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析を用いてGag及びEnvの発現が証明された。Gag蛋白質とEnv蛋白質は細胞内及び培養基の中の両方に存在した。このことは、Gagが粒子形成に要求される唯一のHIV−1蛋白質であることからも予想された。
【0089】
pCMV/HIV−1−HXB−2.env(HXB−2.env)(図11)
HXB−2.envは完全なHXB−2Env及びRevを発現するように設計された。HIV.HXB2株のジーンバンク受託番号はK03455及びM38432である。正常なHIV−1のEnvの発現はRev依存性であるから、Revはこの構築物中に含まれる。この構築物はヨゼフ ソドロスキー(Joseph Sodroski) 博士(ダナ・ファーバー・キャンサー・インスティチュート,ボストン,MA)(ヘルゼート(Helseth) ら、J. Virol. 64, 2416-2420 (1990)) のpSVIII.env 構築物のSalIからXhoIまでの断片をpBC12/CMV/IL−2のIL−2のBamHIからHindIII 断片と置換することにより得られた。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、Envの発現が証明された。
【0090】
pCMV/HIV−NL4−3.env(NLV−3.env)(図12)
HIV−1Env及びRevを発現する構築物の第二の例であるNL4−3.envはHXB−2/NL4−3Env融合蛋白質及びRevを発現した。この構築物においては、HXB−2envの末端付近のユニークな制限部位であるKpnI及びBamHIを用いてNL4−3配列をpCMV/HXB−2.env内の相同的なHXB−2env配列と置換した。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析によりEnvの発現が証明された。
【0091】
JW4303に基づくベクター
JW4303プラスミドは、CMV即時型プロモーター由来の約2000bpとウシ成長ホルモン由来の配列を挿入物発現のために使用する(図8)。CMV即時型プロモーター由来の配列はCMVイントロンAをコードする配列を含む。このイントロンは挿入された遺伝子の発現を高めることができる(チャップマン(Chapman) ら、Nucleic Acids Research14, 3979-3986 (1991))。JW4303ベクターは組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA) 蛋白質に対する合成リーダー配列を含む。この合成リーダーはEnv発現の開始部位を提供する。組織プラスミノーゲン活性化因子のリーダーはグリコシル化蛋白質の合成及び分泌を加速する(ヘイグウッド(Haigwood)ら、Prot. Eng. 2, 611-620 (1989)) 。デザイナーオリゴヌクレオチドからのPCR増幅を用い、TPAリーダーとフレームを合わせて挿入されたenv断片を作成した。HIV−1の異なるサブグループの配列に共通な5’−オリゴヌクレオチドをHIV−1env配列のどれかと成熟Envの正常末端の又はその付近のTPAリーダーに融合させる。このオリゴヌクレオチドはJW4303中へのサブクローニングのために合成TPAリーダー内のユニークな制限部位を使用できるように設計される。例えば、5’−オリゴヌクレオチドJApcr503は、HIV−1のサブグループB単離物に対する成熟Envのアミノ酸6の直前でTPAリーダーの融合を可能とするXbaI部位を含む。
【0092】
3種のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてEnvの分泌型gp120(sgp120)、分泌型gp140(sgp140)、又は正常なgp160型を構築することができる(図13〜16を見よ)。Envのsgp120型をコードするDNA断片を、gp120とgp41の間のプロテアーゼ切断部位をコードする配列の又はその付近の共通アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて合成する。サブグループBウイルスのこのようなオリゴヌクレオチドの1例は、JApcr504(配列表の配列番号:2)である。Envのsgp140型をコードするDNAをgp41の膜結合領域 (membrane anchor domain)の又はその付近の共通配列のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて合成する。サブグループBウイルスのこのようなオリゴヌクレオチドの1例は、JApcr502(配列表の配列番号:3)である。完全EnvをコードするDNAを細胞質ドメイン内又はgp160のC末端の3’側の共通配列をコードするオリゴヌクレオチドを用いて合成する。サブグループB HIV−1のこのようなオリゴヌクレオチドの1例は、JApcr506である。アンチセンスオリゴヌクレオチドはJW4303又はJW4303の誘導体中へのクローニングを容易にするユニークな制限部位を有する。例えば、JApcr502及びJApcr504はJW4303内のユニークなBamHI部位内にクローニングするためのBamHI部位を含んでいる。
【0093】
JW4303/HIV−1−HXB−2.sgp120(HXB−2.sgp120)
HXB−2.sgp120(図14を見よ)は、JApcr503(gtcgctcctctagattgtgggtcacagtctattatggggtacc)(配列表の配列番号:1)とJApcr504(ggtcggatccttactgcaccactcttctctttgcc)(配列表の配列番号:2)を用いてpCMV/HXB−2.envからの配列を増幅して合成した。この増幅された断片をXbaIとBamHIで消化し、NheIとBamHIで消化したJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクトした細胞内及び培養基内の両方にsg120の存在が明らかにされた。
【0094】
JW4303/HIV−1−HXB−2.sgp140(HXB−2.sgp140)
HXB−2.sgp140(図15を見よ)は、JApcr503(配列表の配列番号:1)とJApcr502(cgacggatccttatgttatgtcaaaccaattccac)(配列表の配列番号:3)を用いてpCMV/HXB−2.envからの配列を増幅することにより構築した。増幅された断片をXbaIとBamHIで消化し、NheIとBamHIで消化したJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクトした細胞内及び培養基内の両方にsg120の存在が明らかにされた。
【0095】
実施例12
HIV−1−NL4−3 pBC12CMVに基づくベクターの免疫原性テスト
pBC12/CMVに基づくベクターで免疫化する試みをBALB/cマウスで行った。6〜8週齢のマウスを静脈内(iv)及び筋肉内(im)経路の両方でDNA200μgの一連の注射により免疫化した(免疫化のスケジュールは図17に示す)。6尾ずつのマウスからなる4実験群にDNAを投与した。A群は挿入物のないpCMV/対照DNAを投与された。B群はpCMV/NL4−3.envDNAを受けた。C群はpCMV/NL4−3.dpolDNAを受けた。D群はpCMV/NL4−3.envDNA100μgとpCMV/NL4−3.dpolDNA100μgの混合物を受けた。マウスを免疫化に先立って採血し、免疫化後の種々の時点で採血した。各採血時に同一テスト群のマウスからの血清をプールした。実験の終わりにマウスを屠殺し脾臓を採取し、BALB/cマウスのNL4−3Env内の既知の細胞障害性T細胞(CTL)エピトープに対するCTL活性について試験した。
【0096】
抗Env抗体のレベルを酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を用いて測定した。ミクロタイタープレートのウエルをウエル当たり0.4μgの精製gp120(アメリカン・バイオテクノロジー・インク、ケムブリッジ、MAから購入)で被覆した。マウスの血清をカオリンで前処理して非特異的活性を除去した(ノバク(Novak) ら、Vaccine 11, 55-60 (1993)) 。異なる希釈度の供試血清をウエル内でインキュベートし、そして抗gp120IgGの量をアルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGを用いて測定した。適当な基質を添加し、光学密度を測定するためELISAリーダーを用いて発色を評価した。対照群(A群)の血清について得られた光学密度値を実験群(B、C、D群)について得られた値から差し引いた。
【0097】
DNA免疫化はHIV−1エンベロープに対する長寿命の抗体応答を発生させた(図18、19及び20)。容易に検出される抗Env抗体のレベルは、採血4(第3のDNA免疫化の1.5週間後)に出現した(図18)。これらの抗体のレベルは持続し、採血5(第3のDNAインキュベーション後4週間)においても同様なレベルの抗体が存在した(図18)。DNA免疫化群4、5及び6は抗Env抗体のタイターを実質的に上昇させた(免疫化4、5及び6の1.5週間後の採血8を見よ)(図18)。これらのより高いレベルの抗体は持続し、経時的にゆるやかな減衰を示した。2回のショットのそれぞれ当たり0.4μgのDNAを用いた腹部表皮への2回の遺伝子銃接種は抗Env抗体のタイターを増加させなかった(図19)。実験動物を遺伝子銃接種後さらに14週間飼育した。この間に抗Env抗体の良好なタイターが持続した(図20)。
【0098】
pCMV/NL4−3.env DNA、pCMV/NL4−3.dpol DNA、及びpCMV/NL4−3.env DNAとpCMV/NL4−3.dpol DNAの混合物は全体的に同様な抗体上昇能力を有していた(図18)。これらのDNAのそれぞれにおいて、抗Env抗体の最高のレベルが採血8で得られた(図18及び図19)。これらの血清はすべて約1:3200の終点タイターを有していた(図21)。dpol DNA及びenv DNAの混合物は抗EnvIgGの最高のタイターを発生させた(図18、19及び21)。しかしながら、これらのより高いタイターは、DNAが単一種として与えられたときに発生したタイターとは4倍も異ならなかった(図21)。
【0099】
生理食塩水中の多重DNA接種及び遺伝子銃ブーストにより発生した抗Env・ELISA抗体のレベルを、アグラセトゥス,インク( ミドルトン、WI) のジョエル ヘインズ(Joel Haynes) によりEnv発現DNAの遺伝子銃送達のみを用いて得られた結果と比較した(図22)。図17の実験における、NL4−3.envを接種されたマウスからの採血8の血清プール中に存在するレベルは、遺伝子銃DNAのみを受けたマウスの高い応答マウスの血清で見出されたレベルと中程度の応答マウスの血清のレベルとの中間であった。このことは図17中で示された実験におけるテスト群からプールされた血清と一致し、この血清は腹部表皮への0.4μgDNAの3回遺伝子銃送達により発生したタイターと極めてよく似たタイターをもっていた。
【0100】
マウスから得た血清は、NL4−3に対する中和活性についても試験した。これらの試験は、50〜100感染ユニットのNL4−3を熱失活させそしてカオリン処理した各種希釈度のマウス血清とインキュベートすることにより行った。インキュベーションは37℃で1時間行った。インキュベーション後に対数増殖期のH9細胞を添加した。24時間後にこの細胞を洗浄し新鮮培地を与えた。4日後に培養物をトリトン−X100で溶解し抗原捕捉ELISAを用いてNL4−3の複製を分析した。このような試験3回の結果を表15に要約する。表15のデータはNL4−3複製の90%以上阻止を与える血清の最終希釈度の逆数である。HIV−IgはAIDS貯蔵所,ベセスダ,MDから入手したセロポジティブなヒトからのプールされた免疫グロブリンである。
【0101】
表15 DNA免疫化血清におけるNL4−3に対する中和抗体のタイター
【表15】
【0102】
中和試験により、DNA免疫化マウスにおいて極めて高い中和活性が示された。ELISAデータと一致して、NL4−3.env DNAで免疫化されたマウスとNL4−3.dpol DNAで免疫化されたマウスとは中和抗体のタイターが匹敵していた。これもELISAデータと一致して、中和抗体は極めて良好な持続性を示し、最後のDNA接種後14週間に4倍以下の低下しか受けなかった。こうして、DNA接種はNL4−3に対する顕著な中和活性を発生させた。これはDNA発現細胞によるHIV−1 Envの天然型の提示を反映している。
【0103】
ジョエル ヘインズ(Joel Haynes)博士、アグラセトゥス、インクにより細胞障害性T細胞(CTL)活性についての試験が行われた。CTL分析のために、マウスを殺し、応答体の脾臓細胞を採取し、10ユニット/mlのラットインターロイキン−2を含むRPMI1640、10%ウシ胎児血清、50μg/mlゲンタミシン(RPMI−10)中に再懸濁した。刺激因子である脾臓細胞は無経験動物からの脾臓細胞を1×107 細胞/mlの濃度でRPMI−10に懸濁し、マイトマイシンCを最終濃度25μg/mlまで添加することにより調製した。刺激細胞をマイトマイシンCの存在下に37℃で25分間インキュベートし、RPMI−10で洗浄し、次いでBALB/cマウスにより認識される既知のCTLエピトープを提示する合成ペプチド(RIQRGPGRAFVTIGK)(配列表の配列番号:4)でパルスした。およそ同数の刺激細胞と応答細胞とを5〜6日間同時培養した。イン・ビトロで刺激された応答細胞の、クロミウム51負荷ペプチドでパルスされたBALB/c 3T3標的細胞の溶解能を測定するために、細胞障害性試験が用いられた。
【0104】
DNA免疫化は実験の終了時に容易に検出される細胞障害性T細胞活性を発生させた(最後のDNA免疫化後14週目)(図23)。Env ペプチドパルス化標的細胞のCTL活性は、pCMV/NL4−3.env DNA、pCMV/NL4−3.dpol DNA、及びpCMV/NL4−3.env DNAとpCMV/NL4−3.dpol DNAの混合物で免疫化されたマウスについて同様であった。
【0105】
実施例13
SIVmac に対する免疫化のためのDNA構築物
SIV構築物
HIV−1の場合と同様に、SIVmac に対する免疫化のために2系列のDNA転写ユニットを調製した。これらの第1は、ブライアン R.クレン(Cullen)博士のpBC12/CMVベクターを使用する(上記及び図5を見よ)。第2の系列はジェームス I.ムリンス ラボラトリー(上記及び図8を見よ)で開発されたJW4303ベクターを用いた。
【0106】
pBC12/CMVに基づくSIVベクター
pBC12/CMVに基づくベクターへのクローニングはpBC12/CMV/IL−2中で行われた。SIV239挿入物はSIV239プロウイルスDNAをコードするプラスミドから調製された(図26)。これらのプラスミド(p239SpSp5’及びp239SpE3’)は、ロナルド C.デスロジアース(Desrosiers)博士、ニューイングランド・リージョナル・プライメート・リサーチ・センター(サウスボロー、MA)により提供された。具体的には、pCMV/SIV239.dpol(239.dpol)挿入物(図27)をpBC12/CMV/IL−2内のIL−2cDNAのBamHIからHindIII までの断片と置換した。この239.dpol挿入物は、NarI欠失により5’LTR非機能性とし、内部のBstEII欠失によりpol非機能性とし、そしてStuI消化でLTRの大部分を除去することにより構築した。p239SpE3’は、点彩により示された欠陥nef遺伝子をコードする。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析を用いてGag及びEnvの発現が証明された。Gag及びEnv蛋白質は細胞内及び培養基内の両方に存在した。このことはGagが粒子形成のために要求される唯一のSIV−1蛋白質であることから予期されたとおりであった。
【0107】
JW4303に基づくベクター
SIVに対するJW4303・DNA転写ユニットはSIVenv配列のPCR増幅断片を用いて構築した(図26−29)。5’センスプライマーはTPAリーダーとの融合蛋白質をコードするDNAの構築において役に立った。3’アンチセンス オリゴヌクレオチドを用いてsgp120、sgp140、及び全長SIVenv断片を作成した。
【0108】
JW4303/SIV239.sgp120(239.sgp120)(図27)
239.sgp120は、p239spE3’からの配列を増幅するためにオリゴヌクレオチドJApcr19及びオリゴヌクレオチドJWpcr8を用いて合成した。増幅された断片をNheI及びBamHIで消化し、NheI及びBamHIで消化したpJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクト細胞内及び培養基内の両方にsg120が見出された。SIV239は赤毛猿(macaques)におけるワクチン投与実験のための確立されたモデルであるから、この構築に239配列を使用した。SIV239はSIV251の突然変異体であり、後者も構築物の作成に使用される(以下を見よ)。SIV239株に対するジーンバンク受託番号はM33262、M61062、及びM61093である。SIV251株に対するジーンバンク受託番号はM19499及びX06393である。
【0109】
pJW4303/SIV239.sgp140(239.sgp140)(図28)
239.sgp140は、p239SpE3’からの配列を増幅するためにオリゴヌクレオチドJApcr19とオリゴヌクレオチドHKpcr2を用いて構築された。増幅された断片をNheIとBamHIで消化し、NheIとBamHIで消化したpJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクトした細胞内及び培養基内の両方にsg140が見出された。上に指摘したように、239配列が用いられたのは、239ウイルスが赤毛猿のワクチン投与実験のためのモデルとして確立されているからである。
【0110】
pJW4303/SIV251.sgp140(251.sgp140)(図28)
251.sgp140は、pM40KSIV251env(ロナルド C.デスロジアース(Desrosiers)博士、ニューイングランド・プライメート・リサーチ・センター、サウスボロー、MAから入手した)からの配列を増幅するためにオリゴヌクレオチドJapcr19とオリゴヌクレオチドHkpcr2を用いて構築した。増幅された断片をNheI及びBamHIで消化し、NheI及びBamHIで消化したJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクト細胞内及び培養基内の両方にsg140が見出された。
【0111】
pJW4303/SIV316.sgp140(316.sgp140)(図28)
316.sgp140は、ロナルド C.デスロジアース (Desrosiers)博士、ニューイングランド・プライメート・リサーチ・センターから入手したPCRenvクローン316−3からの配列を増幅するためオリゴヌクレオチドJapcr19とオリゴヌクレオチドHkpcr2を用いて構築した。増幅された断片をNheI及びBamHIで消化し、NheI及びBamHIで消化したpJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクト細胞内及び培養基内の両方にsg120が見出された。SIV316はSIV239の突然変異体であり、後者は単球/マクロファージ屈性 (tropism) を有する(モリ(Mori) K. ら、J. Virology 66(4), 2067-2075 (1992))。
【0112】
実施例14
SIV DNAワクチン投与実験の設計
赤毛猿を免疫化するためにSIVをコードするDNAを用いてワクチン投与実験を試みた。雄及び雌の若い免疫能力を有する動物をこの実験に用いる。三回のDNA接種が実験の1週と3週、11週と13週、及び21週と23週に行われる。最終DNA接種の2週間後に致死量チャレンジが投与される。このチャレンジは、静脈内接種により投与されるSIV239の10猿感染ユニットからなる。
【0113】
3群の猿を実験に用いる。各群は3種の異なるSIV239DNA、すなわち239.dpol、239.sgp120、及び239.sgp140(図25、27及び28)の投与を受ける。各DNA接種時に、第1群の4頭の赤毛猿はiv経路とim経路の両方からの接種によりこれらのDNAのそれぞれ500μg並びにふとももの皮膚に各3種のDNAからなる2回の遺伝子銃ショット(アクセル・インストルメント)及び腹部皮膚に3種のDNAからなる2回の銃ショットを受ける。第2の群の猿はふとももの皮膚に3種のDNAからなる2回の遺伝子銃ショット及び腹部皮膚に3種DNAからなる2回の銃ショットを受ける。第3群は500μgのpCMV/対照DNA及び1mgのpJW4303DNAを静脈内及び筋肉内接種経路の両方により、並びにふとももの皮膚に投与するpCMV/対照の2回遺伝子銃ショット及びpJW4303DNAの4回銃ショット及び腹部皮膚に投与されるpCMV/対照の2回遺伝子銃ショット及びpJW4303DNAの4回銃ショットを受ける。
【0114】
239.dpolの遺伝子銃ショットは、SIVmac Rev及び239.dpolに対するDNA転写ユニットの等モル量を負荷されたビーズを用いて行われた。皮膚細胞における付加的なRevの発現はGag及びEnvの発現レベルを増加させる。SIVmac Revに対する転写ユニットはグレゴリーA.ビグリアンティ(Viglianti)博士、マサチューセッツ大学メディカルセンター、ウースター、MAから入手した。
【0115】
11週と13週及び21週と23週の接種のために付加的なEnvコードDNAをワクチンに添加する。これらは感染動物で生ずるSIV突然変異体に対する応答を含めるように免疫応答を拡げるために付加される。応答の拡大を可能とするために、猿の二つのワクチン群(上記の1群及び2群)は、251.sgp140の2回の遺伝子銃ショット及び316.sgp140の2回の遺伝子銃ショットを受ける。これらは腹部表皮に送達される。これらのショットは実験の1週及び3週に受けた同じショットに付け加えて投与される。
【0116】
実施例15
ワクチン転写ユニットに使用するための患者単離物からのHIV−1env配列の分子クローニング
健康なセロポジティブな感染相に特徴的なゆっくりとした/低い、非シンシチウム誘導性の単球/マクロファージ屈性ウイルスを表すサブグループB HIV−1単離物に対するenv配列、並びにAIDS患者に見出される急速な/高い、シンシチウム誘導性のT細胞株屈性ウイルスを表すenv配列を得るために、2系列の一連の患者単離物をエバ マリア フェンヨ(Fenyo) 博士、カロリンスカ・インスティチュート、スエーデンから入手した(Von Gegerfelt, A. ら、Virol. 185, 162-168 (1991)( 表16を見よ)。これらの単離物は感染の健康なセロポジティブな相からAIDS相までの進行の期間の2〜3年間にわたって得られたものであった。一系列は患者5からのものであり、第2は患者6からのものであった。
【0117】
【表16】
【0118】
単離物からのエンベロープ配列はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により回収された。培養上清をマイトジェンで刺激したPBL上で一度増殖させた。感染後5日目でより激しい単離物に対する高レベルのシンシチウムが出現した時にDNAを調製した。次いでPCR増幅を用いて分子量約2.1kbのenvのKpnIからBamIII までの断片を回収した。この断片は実質的にgp120のすべてをコードし、gp120の13個のN末端アミノ酸だけに対するコドンを欠いている。それはまた、gp41の約340個のアミノ酸のうちの約240個をコードし、これはgp41の細胞外ドメイン及び貫膜ドメインのすべて並びに高度に酸性な配列を含む細胞内ドメインの部分を含んでいる。
【0119】
PCR反応のためのオリゴヌクレオチドプライマーは保存された制限エンドヌクレアーゼ部位を含むように、並びにマイヤースデータベース( マイヤース(Meyers) ら、Human Retrovirus and AIDS, Los Alamos National Laboratory, LosAlamos, NM, 1992)中の現在のHIV−1単離物中に完全に保存されている3’塩基の数を最大にするように選択される。実際の増幅は、250ngのDNA、25pmolの各プライマー、及び1ユニットのアムプリタックを用い、最終量100μlで行った。
【0120】
クローンを、ロナルド C.デスロジアース(Desrosiers)博士(ニューイングランド・プライメート・リサーチ・センター、サウスボロー、MA)により提供されたpNL4−3の右半分中にクローニングした。これは、(i)PCR増幅されたenv配列のKpnIからBamHIまでの2.1kb断片、(ii) pNL4−3からのEcoRIからKpnIまでの0.6kb断片(3’vprから5’envまでの配列)、及び(iii) pNL4−3の右半分のEcoRIからBamHIまでの断片(3’env配列、nef配列、LTR配列及びプラスミド配列を含む)の3片クローニングとして行われた。クローンが得られると、V3ループの配列及び隣接する配列が得られる(表17を見よ)。この配列は、このクローンが汚染物ではなく、さらなるサブクローニングをモニターするための指紋配列(signature sequence)を提供する。
【0121】
表17 患者5及び患者6からの一連の単離物由来のenvクローン、V3ループ配列及び隣接するC−末端配列、比較配列及び共通配列
【表17】
【0122】
次いで、クローンについて、コス−1細胞中へのpNL4−3の左半分と同時トランスフェクションし、マイトジェン刺激PBLと共に同時培養を行うことにより、その生物学的活性を試験した。p6B−1、p6A−1、p6C−1、p6D−1とNL4−3.env組換え体は機能性のenvをコードし、これらをそこから回収した培養物に特徴的な増殖を支える。これらのenvは疾病の異なるステージ及び患者単離物に特徴的な異なる増殖を表す。これらのenvはPCR増幅断片上を移動し、免疫原性テストのためのpJW4030ベクター中に移る(上記の図13〜16を見よ)。
【0123】
均等物
当技術分野に熟練せる者は単なる日常的実験を用いて本明細書に記載された発明の具体的態様に均等な多くの事を認識し又は確認することができるであろう。これらのそしてその他のこのような均等物は以下の請求の範囲に包含されるものである。
【0124】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1] ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造における、プロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットの使用であって、この防御的免疫応答が目的抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答であるDNA転写ユニットの使用。
[2] ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することにより脊椎動物を免疫化する方法であって、該方法はプロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットを脊椎動物に投与することを含んでなる方法であり、これによる防御的免疫応答が目的の抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答である方法。
[3] DNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、この転写ユニットがプロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、このDNAが微小体でカプセル化されている(microsphere encapsulated)ものである生産物。
[4] 目的の抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化における使用などの治療における使用のための、微小体でカプセル化されているDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、該転写ユニットがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものである生産物。
[5] 目的の抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造のための、微小体でカプセル化されているDNA転写ユニットの使用であって、該転写ユニットがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものである、使用。
[6] 脊椎動物を免疫化する方法であって、該方法が微小体でカプセル化されたDNA転写ユニットを脊椎動物に投与することを含み、このDNA転写ユニットがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものである、方法。
[7] 1個以上のDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、転写ユニットのそれぞれがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なるものである、生産物。
[8] 治療に使用するための1個以上のDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、転写ユニットのそれぞれがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっており、該治療における使用が、例えば該生産物を投与することにより脊椎動物を免疫化する方法であって、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が該目的抗原に対するものであり/又は該目的抗原に対して誘導されるものである、生産物。
[9] 脊椎動物に生産物を投与することによる該脊椎動物を免疫化するための医薬の製造における1個以上のDNA転写ユニットを含んでなる生産物の使用であって、該転写ユニットのそれぞれがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっているものである、使用。
[10] 脊椎動物を免疫化する方法であって、該方法は1個以上のDNA転写ユニットを脊椎動物に投与することを含んでなる方法であり、該転写ユニットはそれぞれプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっているものである、方法。
[11] 異なる抗原がインフルエンザウイルス由来の防御的応答を誘導するものである、前記[7]、[8]、[9]又は[10]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[12] 異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のものである前記[11]記載の生産物、使用又は方法。
[13] 異なる抗原がインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである前記[11]記載の生産物、使用又は方法。
[14] 異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のもの及びインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである前記[11]記載の生産物、使用又は方法。
[15] 異なる抗原が免疫不全ウイルス由来の防御的応答を誘導するものである、前記[7]、[8]、[9]又は[10]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[16] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なるサブグループを表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[17] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なる感染相(phases of infection)を表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[18] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なる組織屈性(tissue tropisms) を表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[19] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なる伝達ルートを表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[20] 転写ユニットが微小体でカプセル化されているものである、前記[1]、[2]、又は[7]〜[19]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[21] 1個以上の転写ユニットが脊椎動物に投与されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原又は複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっているものである、前記[1]〜[6]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[22] 前記[11]〜[19]のいずれかの特徴をさらに含む前記[21]記載の生産物、使用又は方法。
[23] 静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、及び皮下内からなる群より選択される投与経路を介して脊椎動物に投与するための先行する前記[1]〜[22]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[24] 粘膜表面への接触により脊椎動物へ投与するための前記[1]〜[22]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[25] 該粘膜表面が鼻粘膜表面又は気管粘膜表面などの呼吸器系粘膜表面である、前記[24]記載の生産物、使用又は方法。
[26] 転写ユニットのプロモーター領域がレトロウイルス起源のもの又は非レトロウイルス起源のものである、先行する前記[1]〜[25]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[27] 該脊椎動物がヒトなどの哺乳動物である、先行する前記[1]〜[26]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[28] 該転写ユニットが宿主細胞因子により直接発現されるものである、先行する前記[1]〜[27]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[29] 該目的抗原がウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することができるものである、先行する前記[1]〜[28]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[30] 該ウイルスがインフルエンザウイルスである前記[29]記載の生産物、使用又は方法。
[31] 該目的抗原がインフルエンザウイルスの赤血球凝集素である、前記[30]記載の生産物、使用又は方法。
[32] 該ウイルスがヒト免疫不全ウイルスである前記[29]記載の生産物、使用又は方法。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、複製可能なレトロウイルスベクターにより発現されるインフルエンザウイルス血球凝集素タイプ7(H7)遺伝子を含んでなるDNA転写ユニット(pP1/H7と呼ばれる)を含む細菌プラスミドの図式的表示である。
【図2】図2は、複製欠損レトロウイルスベクターにより発現されるインフルエンザウイルス血球凝集素タイプ7(H7)遺伝子を含んでなるDNA転写ユニット(p188)を含む細菌プラスミドの図式的表示である。
【図3】図3は、対照として使用された、H7挿入物を含まないレトロウイルスベクター(pRCAS)を含んでなる細菌プラスミドの図式的表示である。
【図4】図4は、サブタイプH7血球凝集素をコードするインフルエンザウイルス抗原DNA転写ユニットを含んでなる非レトロウイルスベクターの図式的表示である。
【図5】図5は、インフルエンザウイルス抗原をコードしていない対照DNA転写ユニットを含んでなる非レトロウイルスベクターの図式的表示である。
【図6】図6は、サブタイプH1血球凝集素をコードするインフルエンザウイルス抗原DNA転写ユニットを含んでなる非レトロウイルスベクターの図式的表示である。
【図7】図7は、対照との比較において、EDIM VP7ロタウイルスcDNAを遺伝子銃により接種されたマウスの細胞障害性T細胞応答を示す棒グラフである。黒棒は標的に対するエフェクターの比が60:1であり、縞の棒は標的に対するエフェクターの比が30:1である。
【図8】図8は、CMVイントロンA、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)蛋白質に対するリーダー配列、及びウシ成長ホルモンのポリA配列を含んでなるpJW4303ベクターの図式的表示である。
【図9】図9は、HIV−1プロウイルスDNAの図式的表示である。
【図10】図10は、NL4−3.dpol挿入物の図式的表示である。
【図11】図11は、HXB−2.env挿入物の図式的表示である。
【図12】図12は、NL4−3.env挿入物の図式的表示である。
【図13】図13は、HIV−1 envDNAの図式的表示である。
【図14】図14は、sgp120.env挿入物の図式的表示である。
【図15】図15は、sgp140.env挿入物の図式的表示である。
【図16】図16は、sgp160.env挿入物の図式的表示である。
【図17】図17は、HIV−1ベクターに対しマウスで用いられたDNA免疫化スケジュールを示す図である。
【図18】図18は、静脈接種及び筋肉内接種によりマウス中に発現された抗−gp120抗体の発現量を示す棒グラフである。点彩を施した棒はNL4−3.envDNAを投与されたマウスの血清であり、縞を施した棒はNL4−3.dpolDNAを投与されたマウスの血清であり、白棒はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。
【図19】図19は、静脈内接種及び筋肉内接種後に遺伝子銃接種を行ったマウス中で発現した抗−gp120抗体の量を図示する棒グラフである。点彩を施した棒はNL4−3.envDNAを投与されたマウスの血清であり、縞を施した棒はNL4−3.dpolDNAを投与されたマウスの血清であり、白棒はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。
【図20】図20は、NL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウス中におけるマウス抗−gp120タイターの長寿を示す棒グラフである。
【図21】図21はDNA接種後のマウス中に発現した抗−gp120抗体の力価を示す棒グラフである。点彩を施した棒はNL4−3.envDNAを投与されたマウスの血清であり、縞を施した棒はNL4−3.dpolDNAを投与されたマウスの血清であり、白棒はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。
【図22】図22は、遺伝子銃envDNA接種によりマウス中に発現した抗−env抗体の量を示す棒グラフである。薄い黒棒は遺伝子銃のみによってNL4−3.envを接種された高応答マウスから得られた結果であり、縞を施した棒は遺伝子銃のみによって接種された中程度応答マウスから得られた結果であり、黒色棒は静脈内経路及び筋肉内経路でNL4−3.envを接種されたマウスの採血8から得られた結果である。
【図23】図23は、HIV−1接種マウスの細胞障害性T細胞活性を示すグラフである。白丸はベクターを接種されたマウスからの結果であり、黒丸はNL4−3.envDNAを、黒三角はNL4−3.dpolDNAを、黒四角はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。E:Tは標的に対するエフェクターの比である。
【図24】図24は、SIV−239プロウイルスDNAの図式的表示である。
【図25】図25は、SIV−239.dpol挿入物の図式的表示である。
【図26】図26は、SIV−239.envDNAの図式的表示である。
【図27】図27は、SIVsgp120挿入物の図式的表示である。
【図28】図28は、SIVsgp140挿入物の図式的表示である。
【図29】図29は、SIVsgp160挿入物の図式的表示である。
【図30】図30は、PCR増幅に用いられた制限部位及びオリゴヌクレオチド並びにHIV−1患者単離物からのenvのサブクローニングを示す図式的表示である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質、病原体、又は感染体に対し脊椎動物、特にヒトを含む哺乳動物を免疫化し、これにより該蛋白質の活性を妨害し、又は感染体の拡散及び増殖を制限し、そして病原体もしくは感染体によるその後のチャレンジに対する防御を可能とする体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不活性化生物もしくは減弱化生物又はそれらの産物でワクチン投与することは、宿主の耐性を強化する有効な方法であることが証明され、そして最終的にはある種の普通にみられる深刻な感染性疾病の根絶をもたらした。ワクチンの使用は宿主内の特異的免疫応答の刺激又は既に形成された抗体の移行に基づく。ある種の疾病、例えば灰白髄炎などのワクチンによる予防は免疫学の最大の勝利の一つである。
【0003】
効果的なワクチンは、家畜やヒトに病気を惹起する感染体のうちの比較的少数に対してしか開発されてこなかった。このことは病原体の毒性株の生育及び減弱化を巡る技術的問題を反映している。最近、サブユニットワクチン(病原体からの特定の抗原のみを宿主に提示するワクチン)の開発に努力が傾けられている。サブユニットワクチンは事実上の副作用の存在なしに高レベルの防御を達成する潜在能力を有する。サブユニットワクチンは安定な、投与し易い、そして広範な使用に対する十分な費用−効果性のあるワクチンの開発のための機会をも提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はサブユニットワクチン化の1方法を提供する。具体的には、本発明は個体を免疫化する方法であって、目的抗原(単数又は複数)をコードするDNA及び転写用プロモーター部分(単数又は複数)をコードするDNAを含んでなるDNA転写ユニット(単数又は複数)を個体中に導入することを含む方法に関する。単一の転写ユニット又は多重転写ユニットは、1個の抗原又は多重抗原に対する免疫化を達成するために個体に導入することができる。宿主細胞によるDNA転写ユニットの取込みの結果として目的の抗原(単数又は複数)の発現が生じ、これにより体液性免疫応答又は細胞性免疫応答又は体液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方を誘導する。誘導された体液性及び細胞性免疫応答は病原体による感染に対する防御を提供し、抗腫瘍応答を提供し、又は避妊を提供することができる。宿主は脊椎動物、鳥類、又はヒトを含む哺乳動物のいずれでもよい。
【0005】
本発明は、免疫応答を高めることを目的とするDNA転写ユニットの使用に関する。一つの態様においては、個体は非経口的接種経路により免疫化される。非経口的接種経路としては、DNA転写ユニットの静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、及び皮下投与などが挙げられる。皮膚に投与されたDNAはDNA銃(DNA gun) を用いて送達することができる。第二の態様においては、DNA転写ユニットが粘膜表面により取り込まれる(すなわち、粘膜表面の細胞中に入る)ようにDNA転写ユニットを呼吸粘膜表面などの粘膜表面と接触させることにより個体を免疫化する。粘膜投与のためのDNAは微小体でカプセル化することができる。
【0006】
本発明の方法により導入されるDNA転写ユニットは、ウイルス、細菌、カビ、又は寄生体などの感染体によりコードされる抗原、並びに病原体による感染に対し個体を免疫化する際に有効であることが実験的に確認された抗原性断片及びペプチドを発現するために使用することができる。上述したように、DNA転写ユニットは避妊目的又は抗ガン治療の目的のためにも使用することができる。
【0007】
発現の対象となる目的抗原は、免疫原として使用される抗原が内部型、表面型、分泌型、又は出芽(budding) 型及び集合型となるように設計することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、
ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造における、プロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットの使用であって、この防御的免疫応答が目的抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答であるDNA転写ユニットの使用
に関する。
【発明の効果】
【0009】
免疫化のためにDNAを使用することの利点は多数ある。例えば、DNAによりコードされるいかなる抗原に対しても免疫化を行うことが可能となる。さらに、DNAにコードされた抗原はその天然状態における「純粋な」抗原として発現され、そして宿主細胞による正常な修飾を受ける。また、DNAは容易にそして安価に操作され、広範囲の温度にわたり乾燥産物として又は溶液状で安定である。従ってこの技術は、高度に効果的なサブユニットワクチンの開発に価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、蛋白質、病原体、又は感染体に対し脊椎動物、特にヒトを含む哺乳動物を免疫化し、これにより該蛋白質の活性を妨害し、又は感染体の拡散及び増殖を制限し、そして病原体もしくは感染体によるその後のチャレンジに対する防御を可能とする体液性及び/又は細胞性免疫応答を誘導する方法に関する。本発明の方法においては、免疫化を必要とする個体にDNA転写ユニットが投与される。
【0011】
「免疫化」という言葉は、本明細書においては感染体によって惹起される感染(すなわち、病気)の発現を(部分的に又は完全に)防御する脊椎動物内での免疫応答の産生を指す。即ち、本発明により免疫化された脊椎動物は感染しないか又は免疫化されていない場合に起こるであろうよりもより軽度に感染する。
【0012】
DNA転写ユニットは、開始部位と終結部位とにより限界付けられるポリヌクレオチドであり、それは転写されて一次転写物を産生する。本明細書において用いられるとき、「DNA転写ユニット」とは、少なくとも二つの成分を含む。抗原コードDNAと転写プロモーター要素(単数又は複数)である。抗原コードDNAは1個の抗原又は多重HIV抗原や2又はそれ以上の異なる蛋白質もしくは感染体由来の抗原などの多重抗原をコードすることができる。このDNA転写ユニットは、このDNA転写ユニットの複製のための配列を含むベクター中に付加的に挿入することができる。DNA転写ユニットはエンハンサー要素、スプライシングシグナル、終結シグナルやポリアデニル化シグナル、ウイルスレプリコンや細菌のプラスミド配列などの付加的な配列を随時含めることができる。本発明の方法では、一つのDNA転写ユニット(即ち、転写ユニットの1タイプ)を投与することができ、あるいは2種以上のDNA転写ユニットの組み合わせを投与することもできる。
【0013】
DNA転写ユニットは幾つかの既知の方法により作成することができる。例えば、既知の方法を用いて目的抗原をコードするDNAを発現ベクター中に挿入することができる。マニアティス(Maniatis) ら、モレキュラー・クローニング,ア・ラボラトリー・マニュアル,2版、コールド・スプリングハーバーラボラトリープレス(1989)を見よ。
【0014】
DNA転写ユニットは、DNAの取込みを増進し接種部位の免疫系細胞を補充する能力を有するアジュバントもしくは他の物質の存在下に個体に投与もしくは接種することができる。DNA転写ユニットそれ自体は宿主細胞により提供される転写因子により又は転写ユニットにより提供される転写因子により宿主細胞中で発現させられることを理解すべきである。
【0015】
「目的抗原」とは感染体により発現されるいかなる抗原又は抗原の組み合わせでもよく、あるいは防御的応答を誘導する能力をもつことが明らかとなったいかなる抗原又は抗原の組み合わせであってもよい。目的抗原は腫瘍抗原又は妊娠に対する予防を提供する抗原であってもよい。抗原(単数又は複数)は、天然に生ずるものでも、突然変異を受けたもの又は特異的に修飾されたものでもよい。抗原(単数又は複数)は、感染体のサブグループ(clades) 、サブタイプ又は血清型などの異なる形をとることができる。これらの抗原は細胞又は感染体の構造的成分であってもよく、そうでなくてもよい。コードされる抗原は、翻訳産物すなわちポリペプチドである。ポリペプチドは種々の長さをとることができる。それらはグリコシレーション、ミリストイレーション(myristoylation )又はホスホリレーションなどの正常宿主細胞による修飾を受けることができる。また、それらは細胞内発現、細胞外発現又は細胞表面発現を受けるように設計することもできる。さらに、それらが集合(assembly) を受け、細胞から放出されるように設計することができる。
【0016】
それに対しDNA転写ユニットを用いることができる病原体の可能性のあるものとしては、ウイルス由来のDNAコード抗原、クラミディア、マイコプラズマ、細菌、寄生体、又はカビが挙げられる。ウイルスとしては、ヘルペスウイルス、オルトミクソウイルス、ライノウイルス、ピコルナウイルス、アデノウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、ブニアウイルス、ルベラウイルス、レオウイルス、ヘパドナウイルス、及びサル免疫不全ウイルス又はヒト免疫不全ウイルスなどを含むレトロウイルスが挙げられる。細菌としては、ミコバクテリア、スピロヘータ、リケッチャ、クラミディア、及びマイコプラズマが挙げられる。カビとしては、酵母及び糸状菌が挙げられる。寄生体としてはマラリアが挙げられる。このリストは、本明細書に記載された方法によりそれに対し防御的免疫応答を創出することができる、可能性のある病原体のすべてを網羅するものではない。
【0017】
個体には、いかなる非経口的経路により接種することもできる。例えば、個体には、静脈内、腹腔内、皮内、皮下又は筋肉内の諸方法により又は遺伝子銃により接種することができる。個体には粘膜経路により接種することができる。DNA転写ユニットは、DNA含有点鼻剤、吸入剤、座剤などの種々の方法により、又は微小体によりカプセル化したDNAにより粘膜表面に投与することができる。例えば、DNA転写ユニットは鼻孔や気管などの呼吸粘膜表面に投与することができる。
【0018】
生理食塩水などの生理学的に適合性のある適当な媒体は、いずれもDNA転写ユニットを個体に導入するのに適している。
【0019】
本明細書に記載されたような免疫化は、異なる蛋白質を発現する多様なDNA転写ユニット(例えば、ベクター)を用いて達成することができる。本明細書に記載されたDNA転写ユニットは、本発明に用い得る転写ユニットの型の代表である。DNA転写ユニットは、感染体の異なるサブグループ(clades) もしくは異なるサブタイプ由来の抗原などの単一感染体由来の抗原類をコードすることができ、そしてさらに2種以上の感染体由来の抗原類をコードすることができる。
【0020】
本発明の一つの態様では、免疫化はネズミロタウイルスの中和キャプシド蛋白質VP7をコードするDNA転写ユニットを用いて達成された。別の態様においては、インフルエンザウイルス血球凝集素糖蛋白質が用いられた。血球凝集素糖蛋白質はウイルスの吸着及び侵入を媒介しそして抗体を中和するための主要な標的である。インフルエンザウイルス血球凝集素蛋白質は14の異なる血清学的サブタイプを有する。特定の態様においては、(H7サブタイプ血球凝集素をコードするDNA転写ユニットを含んでなる)H7サブタイプのためのDNA発現ベクターを用いて、鳥類モデルのH7N7ウイルスでのチャレンジに対する防御を行った。別の特殊な態様においては、H1血球凝集素を発現するDNA転写ユニットを用い、ネズミモデルにおいてH1N1ウイルスに対する免疫化を行った。インフルエンザの異なるサブグループ(例えば、A及びB)及び/又は異なるサブタイプ(サブグループAのサブタイプ1〜14など)に由来する多様な抗原をコードするDNAを含んでなるDNA転写ユニットの混合物も本発明に使用することができる。
【0021】
また、マウス及び猿におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)DNA転写ユニット及びサル免疫不全ウイルス(SIVmac )DNA転写ユニットの免疫原性を試験するために実験を行った。免疫不全ウイルスに対するDNAワクチンは、広い細胞性及び体液性応答が得られるように設計される。これは、異種のHIV抗原をコードするDNAの混合物を用いることによって達成される。この混合物は二つの主要な成分を含む。第一はdpol構築物と呼ばれ、広範囲のHIV−1蛋白質に対する細胞障害性T細胞応答を惹起するのに役立つ。第二はEnv構築物と呼ばれ、風土性の感染に存在するEnvのスペクトラムに対する抗体応答を惹起するのに役立つ。
【0022】
dpolDNA構築物は、9種の蛋白質のうちの1種が構築物中に含まれていないから、非感染性DNAをコードする。この構築物は生ウイルス感染の特徴の多くを真似する。減弱化は幾つかの突然変異により達成することができる。1例としては、点突然変異、欠失又は切断により長末端反復(LTR)を非機能性とすること、及び点突然変異もしくは内部欠失によりポリメラーゼ遺伝子を非機能性とすることなどが挙げられる。他の遺伝子の発現の改変は任意である。こうして、これらの構築物は9種のHIV−1蛋白質のうちの8種(Gag、Env、Vif、Vpr、Vpu、Tat、Rev及びNef)又は9種のSIVmac 蛋白質のうちの8種(Gag、Env、Vif、Vpr、Vpx、Tat、Rev及びNef)を発現するための機会を与える。HIV−1蛋白質又はSIVmac 蛋白質のこの広範なレパートリーの発現により、様々な組織適合性タイプの個体における免疫系の細胞障害性アームの活性化が容易になる。発現されるエピトープの数が増えれば、個体の組織適合性タイプにより認識され得るエピトープが存在する機会が増大する。組織適合性タイプはそれぞれ発現されたエピトープのサブセットをおそらく認識しそして提示するのであろう。
【0023】
dpol構築物も、制御的及び構造的HIV−1蛋白質に対して向けられるCTL応答の上昇を容易にする。dpolDNAによる制御的蛋白質の発現は、感染の最初に発現しそして潜伏感染において最も活性な蛋白質に対する細胞障害性応答を上昇させる機会を与える。これはワクチン投与された宿主に細胞がウイルスを生産する前に細胞を除去する可能性を与える。それはまた潜伏感染している細胞を除去する機会を与える。
【0024】
Env構築物の混合物をdpol構築物と一緒に用いてEnvに対する広い抗体応答を生じさせる。細胞外ウイルスに曝される蛋白質はEnvであるから、Envに対する広い体液性応答は重要である。すなわち、Envに対する抗体は中和及び補体媒介溶解などのプロセスにより感染を防止することができる。感染したヒトにおいて最も顕著な発生を受けるHIV−1蛋白質はEnvであるから、Envに対する広い応答は重要である。Envの混合物は以下のものを含む。
(1)サブグループA〜FなどのHIV−1の異なるサブグループを表すEnv。これらは広い地理的防御を与えるために使用される(マイヤース(Myers) ら、Human Retrovirusesand AIDS, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos NM (1992))。
(2)感染の異なる相の指標となる生育特徴を示す又は異なる組織屈性(tissue tropisms) を有するサブグループ内からのEnv。これらは風土性の感染に存在するウイルスのスペクトラムに対する防御のために用いられる。
(3)異なる伝達経路に好ましいものの代表的なEnv。これらには、同性愛的伝達、異性愛的伝達、静脈内薬物使用による伝達、胎盤経由伝達又は新生児感染が挙げられる。
(4)目的の免疫応答を生起させるのに特に有効なEnvの突然変異型。このようなEnvの1例はヨゼフ ソドロスキー(Joseph Sodroski) 博士(ダナ・ファーバー・キャンサー・インスティテュート、ボストン、MA)によるV1、V2及びV3を欠失したHXB−2 Envである。このEnvはCD−4結合ドメインと関連するコンホーメーションを持つエピトープを保持しており、広い中和活性を持つ抗体を発生させるのに有効である(ワイアット(Wyatt) ら、1993、J. Virol. 67 4557-4565) 。
【0025】
Envの異なる構造型がワクチンに使用されるDNAにより発現される。これらの型はsgp120などのgp120の可溶性型を含み得る。この型はV3ループ決定基に対する抗体を発生させる場合に特に有効である(アール(Earl)ら、1994,J. Virol. 印刷中)。発現させ得る第二の型はsgp140などのgp140の可溶性型である。この型はEnvの細胞外成分のオリゴマーを表し、gp41に対する抗体並びにgp120に対する抗体を発生させ、そしてウイルス粒子上に見出される集合エンベロープスパイク中に存在するEnvのオリゴマー型を認識する抗体群をも発生させる(アール(Earl)ら、1994,J. Virol. 印刷中、ムーア(Moore) ら、J. Virol. 68, 469-484 (1994)) 。sgp120とsgp140は細胞から放出され、抗原提示の主要組織適合性クラスII依存性経路へのそれらの進入を容易にし、そしてT細胞依存性B細胞応答の上昇を容易にする。Env(gp160)の天然型も発現することができる。Envのこの膜定着型はビリオン及び感染細胞の表面に見出されるEnvの型を表す。
【0026】
下記の実施例には、インフルエンザウイルスモデル、ロタウイルスモデル、及び免疫不全ウイルスモデルに使用するために設計された直接DNA接種を用いるワクチン投与の試みを記述する。インフルエンザウイルスに対するワクチン投与の試みには、鳥類、ネズミ、及びフェレットをモデルとして用いる。鳥類及びネズミモデルでは、免疫化していない動物に対しては死をもたらすチャレンジの場合でも、致死的チャレンジに対する防御的免疫化が証明される。フェレットモデルの場合は、鼻孔におけるウイルス複製に対し防御的免疫化が証明されたが、免疫化されていない動物へのチャレンジの場合は鼻孔におけるウイルス複製が認められた。ロタウイルスに対するワクチン投与の試みにはネズミモデルが使用された。ネズミモデルでは、ロタウイルス蛋白質に対するDNA転写ユニットを投与された動物において抗体及び細胞障害性T細胞活性が証明された。この場合、対照DNAを投与された動物ではロタウイルスに対する抗体も細胞障害性T細胞活性も認められなかった。免疫不全ウイルスに対するワクチン投与の試みにはネズミモデルとサルモデルが用いられた。ネズミモデルでは、ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV−1)に対するDNA転写ユニットを投与された動物において中和抗体を含む抗体及び細胞障害性T細胞活性が証明されたが、対照DNAを投与された動物では抗体も細胞障害性T細胞活性も認められなかった。サルモデルは、サル免疫不全ウイルス−マカク(macaque) (SIVmac )の致死量チャレンジを防御する応答の発生を試験するために使用された。
【0027】
本発明は下記の実施例によって例示されるが、これらはいかなる意味でも制限的に解すべきではない。
【実施例】
【0028】
実施例1
インフルエンザウイルスに対するニワトリの免疫化
インフルエンザウイルス血球凝集素タイプ7(H7)遺伝子を発現する複製可能なトリ白血症ウイルスをコードする、pP1/H7(図1)と呼ぶDNA転写ユニットをハント (Hunt)ら、J. of Virology, 62(8), 3014-3019 (1988) の記載のように構築した。H7を発現するが鳥ウイルスベクターポリメラーゼ及びエンベロープ蛋白質を欠損しているpP1/H7の複製欠損誘導体をコードするDNAユニットp188(図2)を、pP1/H7からXbaI断片を欠失させることにより構築した。トリ白血症ウイルスベクターをコードし、インフルエンザウイルス挿入物を持たないDNAユニットpRCAS(図3)を、ヒューズ(Hughes)ら、J. of Virology, 61, 3004 (1987) に記載されたように構築した。DNAユットは接種のために0.2ml当たり100μgの濃度に食塩水で希釈した。
【0029】
接種されたDNAの致死的インフルエンザウイルスチャレンジに対する防御能力を試験するために、3週齢のニワトリの群にpP1/H7、p188、又はpRCASのDNAを接種した。トリ白血症ウイルスフリー群(SPAFAS、ノリウィッチ、CT)として維持されている特異的病原体フリーのニワトリを接種用に使用した。ニワトリそれぞれに100μgのDNAを静脈内に(iv)、100μgのDNAを腹腔内に(ip)、そして100μgのDNAを皮下に(sc)投与した。4週間後にニワトリを採血しそして300μgのDNA(100μgiv、100μgip及び100μgsc)でブーストした。ブースト後1週間目にニワトリを採血しそして高度に病原性の強いタイプH7トリインフルエンザウイルスであるA/ニワトリ/ビクトリア/1/85(H7N7)(Ck/Vic/85)の50%致死量の100倍量(100 leathal doses 50(1×104 卵感染投与量)で鼻孔からチャレンジした。Ck/Vic/85のH7遺伝子は、免疫原性H7の遺伝子とはそのコドンの約15%が異なっている(ハント(Hunt)ら、J. of Virology, 62 (6), 3014-3019 (1988)) 。従って、Ck/Vic/85のチャレンジは、H7サブタイプ内の広い交差防御を獲得する能力の試験となる。Ck/Vic/85はニワトリの内部器官及び脳の全体に素早く拡がり、4〜7日以内に死を惹起する。チャレンジ後、死の徴候についてニワトリを毎日10日間観察した。チャレンジの1週間後及び1.5週間後に生存しているトリから血清を採取した。これらをブースト前及びブースト後の血清と共に抗H7抗体について分析するために使用した(以下を見よ)。
【0030】
表1 H7血球凝集素をコードするDNAを用いた致死的H7N7インフルエンザウイルスに対する防御
【表1】
a(<.)は6羽のトリの中の1羽が10のHIタイターを持っていたことを意味する。
b(<)はすべてのトリが10未満のタイターを持つことを意味する。
c(+)はすべてのトリが死んだことを意味する。
【0031】
H7を発現するDNA転写ユニットは、pP1/H7又はp188を接種されたニワトリのすべてを防御した(表1)。対照的に、対照のDNAであるpRCASの接種は、致死量のウイルスチャレンジに対しニワトリを防御することはできなかった。対照群のトリはチャレンジ後2日目に死の徴候を示し始めた。第3日目までに6羽の対照トリのうちの3羽が死にそして5日目までには対照トリのすべてが死んだ。血球凝集素を発現するDNAを接種されたトリは病気の徴候を示さなかった。チャレンジ後1週間及び1.5週間までに、これらの群はすべて高レベルのHI抗体を発現した。
【0032】
付加的実験
複製欠損H7を発現するDNAで免疫化することにより誘導される防御の再現性を評価するために、p188及びpRCASのDNAのみを接種に用いて上述の実験を3回繰り返した。実験条件の相違は、最初の実験におけるブースト後1週間の代わりにブースト後2週間目にチャレンジしたことであった。3週齢のSPAFASニワトリに、3ルート(iv、ip及びsc)のそれぞれから100μgのDNAを接種した。4週間後にiv、ip及びsc投与により各100μgのDNAを接種してブーストした。2週間後に、ニワトリに鼻孔経由でCk/Vic/85(H7N7)の50%致死量の100倍量(100 lethal doses 50)をチャレンジした。
【0033】
反復実験の結果により、表2に示すように、H7を発現するp188DNAは致死的チャレンジに対する防御を与え得ることが確認された。
【0034】
表2 p188DNAを用いた免疫化による致死的H7ウイルスチャレンジに対する防御の再現性a
【表2】
a 実験1は表1に示したものと同一である。−はテストしていないことを示す。
【0035】
p188接種ニワトリのすべてが致死的チャレンジに対し生き残った最初の実験とは対照的に、第2、第3、及び第4の実験における免疫化では、ワクチン投与されたトリの28%〜83%で防御が認められるという結果であった。さらに、ワクチン投与されたトリが病気の徴候を示さなかった最初の実験とは対照的に、反復実験における生存トリの大部分はチャレンジ後の病気の一過性の徴候を示した。最初の実験の場合と同じように、対照のDNAは防御を示さなかった。これら4回の実験の結果をまとめると、56羽のp188ワクチン投与を受けたトリのうちの28羽が生き残り、55羽の対照のトリのうちの僅か1羽だけが生き残った。従って、高度に有意な防御が達成された。免疫化するH7遺伝子とチャレンジするH7遺伝子がアミノ酸配列において約15%の抗原性ドリフトを受けていることを考慮すると、このレベルの防御が得られたことは特に印象的である。
【0036】
実施例2
ワクチン投与された動物と投与されない動物のH7に対する抗体応答の分析
ワクチン投与されたニワトリとワクチン投与されないニワトリのH7に対する抗体応答の比較をするために、実施例1の実験2(表2を見よ)に抗インフルエンザAウイルス薬であるアマンタディン塩酸塩(ウエブスター(Webster), R. G.ら、J. Virol. 55, 173-176 (1985)) を投与したワクチン非投与群を含めた。5羽のアマンタディン処理トリのすべてが発病した。これらのうちの4羽は生き残り、それらから免疫化ニワトリと非免疫化ニワトリのH7に対する抗体応答を比較するために使用できる血清が得られた。
【0037】
第2の実験において、p188を接種されたトリ及びアマンタディン処理を受けたトリの血清を、H7及び他のインフルエンザウイルス蛋白質に対する抗体応答の経時変化を分析するために用いた。H7に対する抗体応答は、血球凝集阻止(HI)及びウイルス中和並びに酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を用いて定量した。血球凝集阻止試験では、パーマー(Palmer)ら、アドバーンスド・ラボラトリー・テクニークス・フォー・インフルエンザ・ダイアグノシス、p.51-52 、イミュノロジーシリーズ no.6、U.S. Department of Health, Education, and Welfare, Washington D.C. (1975)に記載されたように受容体を破壊する酵素で処理した血清を用いてマイクロタイタープレート中で分析した。中和抗体はニワトリ胚繊維芽細胞培養中で測定した。中和試験はウイルスの200TCID50に対するものであり、ウイルス複製の検出には細胞病理学及び血球凝集素を用いた。結果を下記の表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
ワクチン投与されたトリ及びアマンタディン処理を受けたトリにおける抗体応答の分析から、p188がH7に対する抗体応答を開始させたことが明らかとなった。実験1(表1)におけるように、DNAの投与及びDNAによるブーストはH7に対する抗体を低力価でしか誘導しなかった。しかし、チャレンジの1週間以内に、DNA免疫化群はHI及びH7に対する中和活性の高いタイターを持った。これらのタイターはその次の週にわたって(多少の増加はあるにしても)ほとんど増加しなかった。さらに、ワクチン投与されたトリのチャレンジ後の抗体の大部分はH7に対するものであった。この特異性はH7ウイルス(免疫原性血球凝集素タイプ)とH5ウイルス(このトリが曝されたことのない血球凝集素タイプ)に対するELISA抗体タイターを比較することによって示された。チャレンジ後の血清は、H5ウイルスに対するよりもH7ウイルスに対するELISA抗体を20倍多く含んでいた。対照的に、アマンタディン処理群では、抗体の大部分はH7特異的ではなく、H5ウイルス及びH7ウイルスに共通な蛋白質に対するものであった。このことは、H5及びH7インフルエンザウイルスに対するELISA抗体のタイターが同程度であったことにより証明された。
【0040】
実施例3
非レトロウイルス転写ユニットを用いるニワトリの免疫化
この実験は、レトロウイルスDNAを欠くDNA転写ユニットを本明細書に記載の方法により防御的免疫応答を形成させるために使用しても成功することを証明するために行われた。ニワトリにワクチン投与するためこの実験に用いたベクターを図4及び図5に示す。図4はサイトメガロウイルス(CMV)即時型プロモーターの転写制御の下にインフルエンザウイルスH7サブタイプ血球凝集素を発現することができるプラスミドである、pCMV/H7の図式的表示である。図5はインフルエンザ抗原を発現することができない対照のプラスミドである、pCMV/対照を示す。これらのプラスミドは、ブライアン カレン(Bryan Cullen)博士、デューク大学、ダーハム、ノースキャロライナ(Cullen, B.
R., Cell 45, 973-982 (1986)) のpBC12/CMVベクターの誘導体である。
【0041】
pCMV/H7(非レトロウイルスに基づくDNA転写ユニット)を用いる実験では、免疫応答を形成させるために、免疫化及びブーストは実施例1に記載したものと同じ接種スケジュールを用いたが、異なる接種ルートを用いた。具体的には、100μgのDNAを静脈内、腹腔内及び筋肉内の3種のルートのそれぞれから接種した。ブーストはワクチン投与の場合と同じDNA投与量及び同じ接種部位を用いた。チャレンジはブースト後1〜2週間であり、実質的に100%死滅が達成できるようにCk/Vic/85の50%致死量の100倍量(100 lethal doses 50)を用いた。pCMV/H7DNAの5回の独立の実験の結果を下記の表4に示す。
【0042】
表4 pCMV/H7DNAを用いる免疫化によるCk/Vic/85(H7N7)インフルエンザウイルスの致死量チャレンジに対する防御
【表4】
【0043】
ワクチン投与のためにpCMV/H7を用いる5回のニワトリの実験では、約60%のニワトリが防御された。このレベルの生存はレトロウイルスに基づくベクターp188で得られたレベル(表2)と極めて似ている。レトロウイルスに基づくベクターを用いる試みの場合と同様に、生存体の多くがインフルエンザの一過性の徴候を発現した。従って、レトロウイルスに基づくベクターで得られた防御に匹敵する防御が非レトロウイルスに基づくベクターでも得ることができる。
【0044】
非レトロウイルスに基づくベクターでの実験におけるH7への抗体応答も、レトロウイルスに基づくベクターでの抗体応答と類似していた(表3、表4)。具体的には、防御的応答は、チャレンジ後のH7特異的抗体の急激な上昇(1週間以内)と関連していた。ワクチン投与及びブースト後の血清は低レベルか検出不可能なレベルの抗H7抗体しか含んでいなかった。チャレンジ前の抗体が低レベルであることはチャレンジ後の抗体の急激な上昇と併せ考えると、防御はチャレンジ感染により移動可能とされ記憶応答を確立したDNA転写ユニットにより媒介されたものであることが示唆される。こうして、動物にワクチン投与するために非レトロウイルスDNA発現ベクター(ウイルス抗原をコードするDNA転写ユニットを含む)を用いて、かなりの防御が達成された。
【0045】
実施例4
pCMV/H1DNAを用いるワクチン投与によるマウスの免疫化:種々の接種ルートの分析
pCMV/H1と呼ぶDNA転写ユニットは、マウス適応A/PR/8/34H1N1インフルエンザウイルスでの致死量チャレンジに対しマウスを免疫化するために使用して成功した。この転写ユニットはCMV即時型プロモーターの転写調節の下にインフルエンザタイプH1血球凝集素をコードする。この構築に用いられたH1インフルエンザウイルス血球凝集素遺伝子は、ウインターズ(Winters) ら、Nature 292, 72 (1981) により詳細に記載されており、そしてチャレンジウイルスにおけるH1インフルエンザウイルス血球凝集素遺伝子と同一である。ベクターはH7の発現のために実施例3で使用したものと同一である(図5を見よ)。pCMV/H1転写ユニットは図6に図示してある。
【0046】
【表5】
【0047】
マウスにおけるワクチン投与の試みは6−から8−週齢のBALB/cマウスにDNAを投与することにより行われた。タイム0に1回及び4週間後に第2回目と、2回のDNA接種を行った。試験動物は実験中観察し、マウスはチャレンジ時を最初に以後規則的に秤量した。致死的チャレンジは、メトファン(ピットマン−ムーア、ムンデライン、IL)で麻酔をかけたマウスの肺にウイルスを吸入させることにより、第2回目の接種後10日目に投与した。チャレンジはマウス適応A/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスの250プラーク形成ユニット(50%致死量(LD50)の10〜100倍)を0.1%ウシ血清アルブミンを補填した食塩水100μlに含むものからなるものであった。チャレンジウイルスは気道中で局在化された複製を受け、1〜2週間以内に肺炎による死の原因となった。DNA接種のルートは次のものを含む。静脈内(尾部静脈)、腹腔内、筋肉内(両方とも四頭筋)、鼻内(メトファンで麻酔したマウスの鼻孔にDNAを滴下して投与)、皮内(足の裏)、及び皮下(うなじ)。一般にDNA100μgを試験部位当たり食塩水100μlに溶かして投与した。足の裏への接種はDNA50μgを25μlに溶かして投与した。
【0048】
表6は、食塩中のpCMV/H1DNAの接種によるA/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスの致死量チャレンジに対するマウスの防御を示す結果を表す。表6中のデータは4回の独立の実験の結果を集積したものである。示されたルートは静脈内(iv)、腹腔内(ip)、筋肉内(im)、鼻孔内(in)、皮内(id)、及び皮下(sc)である。インフルエンザの徴候には、体重減少、毛の乱れ(ruffled fur)、及び嗜眠状態(lethargy)が挙げられる。この徴候は次のようにスコアした。+は一過性の体重減少が見られたが毛は滑らかでありそして活動のレベルは正常のもの、++は一過性の体重減少と一部毛の乱れ及び嗜眠状態が見られたもの、+++は一過性の体重減少及びより激しい毛の乱れと嗜眠状態が見られたもの、++++はより大きな体重減少並びに激しい毛の乱れと嗜眠状態が見られたもの、+++++は体重減少及び死に至るインフルエンザの重篤な徴候が見られたものである。確率は対照群に対するワクチン投与群の生存率と死亡率を比較することによりフィッシャーの直接両側検定(Fisher's exact two-tailed test)を用いて計算した。
【0049】
表6 種々のルートからのpCMV/H1接種によるA/PR/8/34(H1N1)の致死量チャレンジに対する防御
【表6】
【0050】
筋肉内接種、静脈内接種、又は3種のルート(筋肉内、静脈内、及び腹腔内)のすべてによる接種の場合に優れた生存がみられた。これらの群の、比較的軽いインフルエンザは毛の乱れ及び一過性の体重減少に関連するものであった。鼻孔からDNAを投与されたマウスでは、生存率は良かったが、より激しいインフルエンザが発症した。皮内接種及び皮下接種を受けたマウスでは、生存率はさらに悪く(67〜75%)そしてインフルエンザのより厳しい徴候が発症した。腹腔内注射のみを受けたマウスは全く致死量チャレンジに生き残ることができなかった。対照群(pCMV/対照DNA又はDNAなしを接種)はインフルエンザの厳しい徴候が発症し、チャレンジに対し極めて僅かしか(13%)生き残れなかった。従って、筋肉内、静脈内、鼻孔内及び皮内の各投与ルートは良好な防御を提供した。
【0051】
これらの結果は、トランスフェクションの効率が必ずしもワクチン投与の効率を決定するものではないことを示すものである。げっ歯類動物の筋肉の高いDNA取込み能及び高いDNA発現能(ウオルフ(Wolff, J. A.)ら、Science 247, 1465-1468 (1990) 、ウオルフ(Wolff, J. A.)ら、BioTechniques 11, 474-485 (1991)、アクサディ(Acsadi, G.)ら、New Biol. 3, 71-81 (1991))は、筋肉内ワクチン投与の異常な効率と相関しなかった。筋肉内接種は良い結果を与えたが静脈内接種より良いということはなく、そしてDNAの鼻孔滴下投与よりも幾らか良いにすぎなかった。同様な結果が4種のルートに対するニワトリでの実験(以下に記す)でも得られた。この場合は、静脈内接種及び気管内接種が筋肉内接種により得られたものと同等な防御レベルを達成した。
【0052】
実施例5
ニワトリのインフルエンザモデルにおけるpCMV/H7の異種経路接種による防御的免疫化
DNAワクチン投与に対する接種経路の影響を、トリのインフルエンザウイルスモデルでさらに評価した。実施例1に記載したように、ニワトリにおける接種経路についてDNAワクチン投与実験を行った。接種経路としては次のものが含まれる。静脈内(羽根静脈)、筋肉内(胸筋肉)、気管内(DNA滴を気管内に投与)、皮下(うなじ)、粘液嚢内(ニワトリの肛門(vent)の直ぐ上に注射)、及び眼窩内(DNA滴を眼に投与)。一般に、100又は200μgのDNAを200μlの食塩水に溶かして投与した。結果を下記の表7に示す。p188DNA及びpRCASDNAのデータは3回の独立の実験の集計である。pCMV/H7DNA及びpCMV/対照DNAのデータは2回の独立の実験の集計である。確率は対照群に対するワクチン投与群の生存率及び死亡率を比較してフィッシャーの直接両側検定を用いて計算した。示された経路は、静脈内(iv)、腹腔内(ip)、皮下(sc)、筋肉内(im)、気管内(it)、粘液嚢内(ib)、及び眼窩内(io)である。
【0053】
表7 異種経路によるDNA接種後のCk/Vic/85(H7N7)の致死的チャレンジに対するニワトリの防御a
【表7】
a 対照のデータは表2及び表4のデータと同一である。
【0054】
接種経路についてのニワトリでの実験では、ワクチンDNAの静脈内投与、筋肉内投与、及び粘膜内投与に対して良い効率が証明された。これらの群は、3種の経路のそれぞれからDNA投与を受けた群(表2及び表4)のそれの約1/2の防御レベルを示した(24〜30%)。皮下、腹腔内、粘液嚢内、及び眼窩内における接種では悪い防御か全く防御を示さなかった。対照のDNAを投与されたニワトリは致死的インフルエンザを発症し、このチャレンジに対しほとんど生き残れなかった(約2%)。実験群内では、生き残ったニワトリでもインフルエンザ関連疾病の重症度はさまざまであった。
【0055】
実施例6
マウス表皮へのDNAの遺伝子銃送達(gene gun delivery) による防御的免疫化
表皮へDNAを送達するためにDNA銃を使用することができるか否かをテストするために、アクセル・パーティクル・ボムバードメント・デバイス(アグラセツス、ミドルトン、WI)を用いて、マウスの表皮にDNA被覆金ビーズを送達した。これらの実験はアグラセツス,インクのジョエル R.ヘインズ(Joel R. Haynes)博士と共同で行った。
【0056】
マウスへのDNAの遺伝子銃送達のために、0.95μmの金の粉末(デグッサ、サウスペインフィールド、NJ)の10mg及び適当量のプラスミドDNAを50μlの0.1Mスペルミディンを含む1.5ml遠心分離用チューブ中に添加してプラスミドDNAを金粒子に固定した。ボルテックス攪拌しながら2.5MのCaCl2 50μlを添加してプラスミドDNAと金を共沈澱させた後、沈澱物をアブソリュートエタノールで洗浄し、2.0mlのエタノール中に再懸濁した。金/DNA懸濁液をキャップ付きバイアルに移し、2〜5秒間音波発生水浴中に漬け、塊を溶解した。金/DNA懸濁液163μlを1.8cm×1.8cmマイラー(Mylar) シートに載せ、数分間放置した後、メニスカスを破壊し、過剰のエタノールを吸引して除いた。金/DNA被覆マイラーシートを真空下で乾燥し、保存した。シート当たりのDNAの総量はDNA/金の比の関数であり、シート当たり0.2〜0.0002μgの範囲であった。動物をケタセット/ロンプン(10:2)の30μlで麻酔した。腹部の標的部を剃り、剃り残しの皮膚角質層を除くため2分間ネール(Nair)( カーターワラス、NY)で処理した。遺伝子送達の前に水で標的部を徹底的に洗浄した。DNA被覆金粒子を、電気スパーク放電を起動力として用いるアクセルの装置を用いて腹部の皮膚内に送達した(ヤング(Yang, M. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 9568-9572 (1990))。各動物は、17kVの放電電圧で、免疫当たり2回の非重複送達を受けた。このビーズは細胞内へDNAを送達し、そこでDNAは溶解しそして発現することができる(ヤング(Yang, M. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 9568-9572 (1990)、ウイリアムズ(Williams, R. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 2726-2730 (1991))。発現は一過性であり、発現の大部分は表皮の通常の脱落により2〜3日以内に消失する(ウイリアムズ(Williams, R. S.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 2726-2730 (1991) 、未発表の観察) 。
【0057】
表皮中へのDNA被覆金粒子の遺伝子銃に基づく注入(acceleration)は、表8に示すようにDNA免疫化のこれまでに最も効率的な方法であることが分かった。データは4回の独立の実験の集計である。確率は、対照群に対するワクチン投与群の生存率及び死亡率を比較してフィッシャーの両側直接検定を用いて計算した。インフルエンザの徴候の記述については表6の上記の議論を見よ。
【0058】
表8 遺伝子銃送達pCMV/H1・DNA接種によるA/PR/8/34(H1N1)の致死量チャレンジに対する防御
【表8】
【0059】
ネズミモデルにおける銃送達DNAのこれらのテストは、95%生存率を達成するのに僅か0.4μgのDNAで十分であることを明らかにした。これらの生存体はチャレンジ後のインフルエンザの極めて限られた徴候を示すか全く徴候を示さなかった。0.04μgの銃送達pCMV/H1・DNAを受けたマウスは約65%の生存率を示しそしてかなり重いインフルエンザの徴候を呈した。0.004〜0.0004μgのpCMV/H1・DNAを受けたマウスは、チャレンジに屈伏した。生理食塩注射のテストの場合のように、対照DNAを受けたマウスは重いインフルエンザの徴候を呈し、生存は極限られていた(14%)。こうして、マウスの表皮へのDNAの遺伝子銃送達により免疫化の高い効率が達成された。この方法による免疫化は生理食塩接種よりも250〜2500倍少ないDNA(100〜200μgのDNAに対し0.4〜0.004μgのDNA)しか必要としなかった(表6及び表7を見よ)。
【0060】
実施例7
pCMV/H1のワクチン投与を受けたマウスにおける抗体応答
実施例4及び6に上記したネズミの実験において、各DNAの接種の直前と、チャレンジの直前と、及びチャレンジ後に2回、それぞれ血清を採取した。麻酔したマウスの眼の静脈から40μlの非ヘパリン化ミクロヘマトクリット管に採血した。同一グループ内のメンバーから得た血清をプールした。ニワトリの赤血球細胞及びカオリンで前処理してバックグラウンド活性を除去したマウスの血清を用いて血球凝集阻止試験を行った(ノバック(Novak M.)ら、Vaccine 11, 55-60 (1993)) 。血球凝集阻止タイターは血球凝集の完全阻止を与える最大血清希釈度の逆数である。マウス抗体のイソタイプは、標準プロトコールと精製A/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスで被覆されたミクロウエルプレートを用いる酵素結合イムノソルベント検定(ELISA)により決定した。これらの検定は、タイターで類似の活性を持つイソタイプ特異的ペルオキシダーゼ結合抗体(シグマ・イムノケミカルズ)の1:1000希釈を使用した。血清分析のデータは下記の表9に示す。データは所与の条件に対し陽性のスコアであった血清プールの最終希釈の逆数の幾何平均である。
【0061】
表9 マウスへのpCMV/H1・DNAの接種経路をテストするワクチン投与実験における抗体応答
【表9】
* 3種の血清プールの一つのみについてHI活性を試験した。ワクチン投与前=DNAワクチン投与前の採血、10d PB=第2回目DNA接種後10日目に採血(チャレンジ前)、4d PC=チャレンジ後4日目に採血。#テスト=血清プールが試験された群の数(そのプールに寄与する動物の血清の数)。NT=試験しなかった。<=この試験で用いられた最小希釈度の血清でも活性は検出されなかった。
【0062】
さまざまな経路によるDNAワクチン投与は記憶抗体応答を引き起こすようであった。DNAワクチン投与及びブースター接種は検出不可能な程度に低い血球凝集阻止抗体及びELISA活性を発生させたにすぎなかった。これらの低レベルの活性はチャレンジ後に急速に増大した。ニワトリの実験(表3及び表5)の場合のように、チャレンジ前には動物中での防御は起こったが、抗インフルエンザ抗体のレベルは検出不可能であった。しかしながら、DNA接種がチャレンジ前抗体の検出可能なタイターを生じたグループでは、最上の防御が認められた。
【0063】
抗インフルエンザウイルス抗体のイソタイプをスコアするためにELISAを使用すると、免疫化がIgG応答の引金となったことが明らかとなった。DNAの銃送達、静脈内接種又は筋肉内接種によりワクチン投与を受けたマウスの血清では、チャレンジ前には抗インフルエンザIgGの低いタイターしか検出し得なかった。IgGの検出不可能タイターの境界線はDNAの鼻孔滴下を受けたマウスの血清中に存在した(このDNA投与経路により与えられるより貧弱な防御と一致している)。チャレンジ後4日目までに、最良の防御を受けたマウス中でIgGレベルの増加が検出された。対照的に、対照のDNAを受けたマウスは、チャレンジ後の第2回目の血清採取まで抗インフルエンザウイルスIgGのレベルは検出可能でなかった。これは、ワクチン投与群がチャレンジへの二次的抗体応答を受け、対照群が受けなかったことと一致した。
【0064】
これらの実験は、DNA接種がT−ヘルパー記憶及びB−細胞記憶の両方を引き起こしたことを示す。この記憶は、チャレンジされた動物中の二次的応答の上昇を支持することにより防御を与えるように見えた。記憶の惹起の証拠はIgGイソタイプに属する抗体を上昇させるDNA接種によって与えられる。なぜなら、IgGはT−細胞の助けに応答して免疫グロブリンの再配列を受けた分化したプラズマ細胞により産生されるからである(アバス(Abbas, A. K.)ら、セルラー アンド モレキュラー イムノロジー(サウンダース、フィラデルフィア、PA),pp. 187-197 (1991)) 。チャレンジへの応答における記憶の移動可能性に対する証拠が、チャレンジ後の血清IgGの急速な上昇に見出される。
【0065】
チャレンジ前及びチャレンジ後の血清の両方において、IgM及びIgAは検出限界ぎりぎりから検出不可能のレベルで検出された。この実験を通じて、これらの免疫グロブリンイソタイプが低レベルであったことから、DNA接種のどの経路も血清IgM又はIgAを上昇させるには効果的でなかったことが明らかであった。
【0066】
実施例8
A/PR/8/34(H1N1)インフルエンザチャレンジに対するフェレット獣を防御するためのpCMV/H1・DNA転写ユニットの使用
フェレット獣のインフルエンザモデルはヒトのインフルエザ感染に多くの類似性を有するので、このインフルエンザモデルにおけるpCMV/H1・DNA免疫化に関する研究を行った。最初の実験では、生理食塩水中の精製pCMV/H1のDNAを用い、1ヶ月間隔で筋肉内接種によりフェレットを免疫化した。若い雌成獣フェレットを前採血しついで後足それぞれに125μlずつ2回注射し総量500μlを接種することにより、食塩水中の500μgのpCMV/H1・DNA又はpCMV/対照DNAを用いてワクチン投与した。1頭のフェレットは1ヶ月間隔で500μgのpCMV/H1・DNAの筋肉内接種を3回受け、一方第2の動物は1ヶ月間隔で500μgのpCMV/H1・DNAの筋肉内接種を2回受けた。対照の動物は1ヶ月間隔で500μgのpCMV/対照DNAの筋肉内接種を3回受けた。
【0067】
メトファン麻酔をかけたフェレットを、最終DNA接種後1週間目に鼻孔経由でA/PR/8/34(H1N1)の107.7 卵感染投与量50を用いてチャレンジした。ケタミン麻酔下にチャレンジ後3、5及び7日目に鼻孔洗浄液を集めた。鼻孔洗浄液中のウイルスタイター測定は記載(カッツ(Katz, J. M.) 及びウエブスター(Webster, R.G.) 、J. Infect. Dis. 160, 191-198 (1989)) されたように卵中で行った。データは下記の表10に示す。
【0068】
表10 H1ウイルスに対する、pCMV/H1・DNAの筋肉内接種によるフェレットの防御
【表10】
【0069】
鼻孔洗浄液を分析すると、チャレンジ後3日目のフェレットのすべての洗浄液に同様に高いウイルスタイターが明らかとなった。興味あることに、pCMV/H1の3回接種を受けたフェレットはチャレンジ後5日目までに鼻孔感染がほとんど治癒し(cleared)、その5日目の鼻孔洗浄液はml当たり10卵感染投与量50のウイルス未満を含むにすぎなかった。この時点でpCMV/H1・DNAの2回接種を受けたフェレットではその鼻孔洗浄液中のウイルスのタイターが10倍減少していた。対照的に、対照DNAを受けたフェレットでは、その鼻孔洗浄液のウイルスタイターには、減少があるにしても僅かであった。チャレンジ後7日までにすべてのフェレットでその鼻孔感染が治癒した。対照DNAを受けた2頭のフェレットの場合と比べて、pCMV/H1・DNAの3回筋肉内接種を受けたフェレットではウイルスの遙に急速な治癒が認められ、pCMV/H1・DNAの2回筋肉内接種を受けたフェレットでもかなり早い治癒が認められたことから、pCMV/H1の筋肉内接種が何らかの抗インフルエンザ免疫を上昇させたことが示唆される。
【0070】
遺伝子銃接種
免疫誘導の効率を高めるために、フェレットでアクセル遺伝子銃を用いてDNA被覆金ビーズをフェレットの皮膚内に送達する第2の実験を行った。腹部表皮を遺伝子銃送達DNAの標的として用い、1ヶ月間隔で2回の遺伝子銃DNA投与をフェレットに行った。遺伝子銃接種をケタミンで麻酔した若い雌成獣フェレットに施した。皮膚は剃り、脱毛剤ネール(NAIR)(カーター−ワラス、ニューヨーク)で処理した。前述のように、DNAビーズ(1〜3ミクロン)を接種用に調製した(ファイナン(Fynan) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 11478-11482 (1993))。接種には、15kVの送達電圧を用いた。フェレットを2μg又は0.4μgのDNAで接種した。2μgのDNAを接種されたフェレットは0.2μgのDNAを被覆された0.8mgのビーズからなるショットを10回受けた。0.4μgのDNAを受けたフェレットは同様のショットを2回受けた。
【0071】
第2回目のDNA免疫化の1週間後に、メトファンで麻酔したフェレットに鼻孔を介して106.7 卵感染投与量のA/PR/8/34(H1N1)ウイルスを投与することによりチャレンジした。このチャレンジは、第1回目のチャレンジでのウイルス複製が高レベルであったので、筋肉内接種を用いた実験の場合よりも10倍低いものであった。チャレンジ後3日目及び5日目にケタミン麻酔下に鼻孔洗浄液を集め、上述のようにウイルスをタイター測定した。データを下記の表11に示す。
【0072】
表11 pCMV/H1・DNAの遺伝子銃接種によるH1ウイルスに対するフェレットの防御
【表11】
【0073】
遺伝子銃ワクチン投与を受けたフェレットのチャレンジ後の鼻孔洗浄液を分析することにより、2μgのDNAを受けた3頭のフェレット及び0.4μgのDNAを受けた3頭のフェレットのうちの1頭はこのチャレンジから完全に防御された。このことはチャレンジ後3日目のこれらの動物の鼻孔洗浄液中にウイルスを回収することができなかったことにより証明された。0.4μgのDNAを受けた残りの2頭の動物及び対照の動物は防御されず、チャレンジ後3日目の動物の鼻孔洗浄液中に存在するウイルスのタイターを容易に検出することができた。この実験では、すべての動物(対照およびワクチン投与されたもの)が感染後5日目までにそれらの鼻孔洗浄液中にウイルスを検出できなくなった。
【0074】
遺伝子銃実験に用いたフェレットを次にDNA投与及びウイルスチャレンジに対する抗体応答について分析した。これらの試験ではA/PR/8/34(H1N1)に対する中和活性を試験した。抗体のタイター測定は記載されたように行った(カッツ(Katz, J. M.) 及びウエブスター(Webster, R. G.)、J. Infect. Dis. 160, 191-198 (1989))。中和活性のタイターは、ウイルスの200 50%組織培養感染投与量を完全中和する血清の最大希釈度の逆数である。データは下記の表12に示す。
【0075】
表12 遺伝子銃送達pCMV/H1・DNAでワクチン投与されそしてA/Pr/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスでチャレンジされたフェレットにおける中和抗体
【表12】
【0076】
DNAブースト後チャレンジ前の中和抗体が、2μgの遺伝子銃送達DNAを受けた動物のうちの2頭に検出された。2μgのDNAを受けた第3の動物(鼻孔洗浄液中のウイルスの存在に対しては完全に防御された動物)のチャレンジ前の血清中には中和抗体は検出されなかった。鼻孔洗浄液中にウイルスを発生させなかった0.4μgのDNAを受けたフェレットの血清にも中和抗体は検出されなかった。
【0077】
チャレンジ前の抗体を有する動物では、防御はおそらく中和抗体の存在並びに中和抗体に対する記憶応答の動態化によるものであろう。検出可能なレベルのチャレンジ前抗体を持たずに防御された動物では、防御は感染による記憶応答の急速な動態化と感染を制御する動態化された応答とによるものであろう。ワクチン投与を受けた動物でチャレンジ前抗体の存在しない場合の防御も、マウスやニワトリでの予めDNAワクチン投与を行った研究(表3、5及び9を参照)(ファイナン(Fynan) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 11478-11482 (1993) 、ロビンソン(Robinson)ら、Vaccine 11, 957-960 (1993)) 及びレトロウイルスベクターやポックスウイルスベクターを用いてインフルエンザウイルス血球凝集素糖蛋白質を発現させるワクチン投与実験においても観察されている(ハント(Hunt)ら、J. Virol. 62, 3014-3019 (1988)、ウエブスター(Webster) ら、Vaccine 9, 303-308 (1991))。
【0078】
実施例9
粘膜投与のための微小体カプセル化DNA
致死量のインフルエンザウイルスチャレンジに対する防御的応答を発生させる微小体カプセル化DNAの能力を試験することにより、DNA接種のための粘膜経路をさらに発展させた。ネズミインフルエンザウイルスモデルをこれらの研究に使用した。ウイルス・リサーチ・インスティチュート,インク,ケムブリッジ,MAにおいて、pCMV/H1DNA及びpCMV/対照DNAをアルギン酸塩の微小体中にカプセル化した。各群が一次接種及びブーストを受ける実験を行った。A群は一次接種として遺伝子銃送達DNAの0.4μgを受け、ブーストは受けなかった。B群は一次接種及びブーストとして0.4μgの遺伝子銃送達DNAを受けた。C群は一次接種として0.4μgの遺伝子銃送達DNAを受けそしてブーストとしてアルギン酸塩カプセル化DNAの100μgを受けた。D群は一次接種及びブースト接種の両方において100μgのアルギン酸塩カプセル化DNAを受けた。アルギン酸塩カプセル化DNAの各投与はメトファンで麻酔されたマウスの鼻孔に100μlの水に懸濁して送達することにより行った。第2のDNA接種後10日目に、メトファンで麻酔したマウスの鼻孔にA/PR/8/34(H1N1)インフルエンザウイルスの500pfuを投与して致死量チャレンジを行った。4頭の対照群は同量のpCMV/対照DNAを受けた後pCMV/H1DNAを受けた群と同様の処理を受けた。この実験のデータを表13に示す。
【0079】
表13 インフルエンザウイルスの致死量チャレンジに対する微小体中ワクチンDNA投与によるマウスの防御
【表13】
*銃=遺伝子銃送達、ms i.n.=アルギン酸塩微小体にカプセル化されたDNA。
【0080】
アルギン酸塩カプセル化DNAの鼻孔内投与は良好な防御を与えた。アルギン酸塩カプセル化pCMV/H1・DNAを受けたワクチン投与群は、それぞれアルギン酸塩カプセル化pCMV/対照DNAを受けた群よりもはるかに良好な生存率を示した。アルギン酸塩カプセル化DNAのみを受けたマウス6頭のうちの4頭は生存し、インフルエンザの極めて軽度の徴候を示した。対照的に、アルギン酸塩カプセル化pCMV/対照DNAを受けたものは、4頭のうち僅かに1頭だけが生き残った。対照群はすべてインフルエンザの重い徴候を呈した。1回だけ銃接種を受けた群はインフルエンザの軽度の徴候を示し、50%の生存率(3/6マウス)であった。アルギン酸塩ブーストを付加するとインフルエンザの徴候に対しさらに良い防御及びさらに高い生存率(5/6マウス生存)がみられた。2回の遺伝子銃DNA送達は最も良い生存率を与え、すべてのマウスが生存しインフルエンザの徴候も全く示さなかった。
【0081】
実施例10
ロタウイルス蛋白質をコードするDNA転写ユニットを用いるマウスの免疫化
マウスを免疫化する能力についてロタウイルスDNA転写ユニットを試験した。マウスについてロタウイルスに対するワクチン投与のためにこの実験で用いたpCMV/VP7ベクターは、プラスミドpCMV/VP7がネズミロタウイルス中和キャプシド蛋白質VP7を発現することができるものである点を除き、図4及び6に示すものと類似している。VP7DNAはハリー グリーンバーグ(Harry Greenberg)博士、スタンフォード大学、Palo Alto, CA, USAから入手した。
【0082】
免疫応答を生ぜしめるためにpCMV/VP7を用いるマウスの実験において、0.4μgのDNAを腹部皮膚に(上述のように)遺伝子銃で送達した。すべてのワクチン投与の後4週間目にブーストを行った。このブーストはワクチン投与と同じDNA投与量で、同じ接種部位に行った。ブースト後1〜2週間に抗体及び細胞障害性T細胞(CTL)について試験した。データは表14及び図7に示す。
【0083】
表14 pCMV/VP7DNA接種マウスの血清中の抗VP7抗体
【表14】
*抗VP7抗体は全マウスEDIMロタウイルスに対しELISAにより検定した。
【0084】
pCMV/VP7DNAにより発生した全EDIMウイルスに対する抗体ELISAタイターを表14に示す。1:200の抗体タイターがVP7遺伝子(pCMV/VP7)に対するDNA転写ユニットにより発生した。生のEDIMネズミロタウイルスの1回接種により得られる抗体のタイターは1:800のタイターを与えた(示していない)。pCMV/対照プラスミドのみでは有意のタイターは得られなかった。
【0085】
プラスミドpCMV/VP7がネズミロタウイルス感染細胞に対する細胞障害性T細胞(CTL)応答を誘導することができることも見出された。クロミウム放出CTL試験の結果を図7に示す。pCMV/VP7を接種されたマウスの脾臓細胞における特異的溶解のパーセントは、EDIMロタウイルスを経口感染させたマウスで得られた45%溶解と比べて、エフェクター対標的比が60:1の場合で約30%であった。
【0086】
実施例11
HIV−1に対する免疫化のためのDNA構築物
HIV−1に対する免疫化のために2系列のDNA転写ユニットを調製する。その第一はpBC12/CMVベクター(上記及び図5を見よ)を用いてHIV−1配列のための転写制御要素を提供する。pBC12/CMVベクターにおいては、HIV−1蛋白質の発現はRev依存性である。第二の系列はJames I. Mullinsラボラトリー(スタンフォード大学)(Palo Alto, CA)で開発されたJW4303ベクターを用いる(図8を見よ)。これらのベクターはEnvのRev非依存性発現を支持する。JW4303ベクター及びそれに伴うオリゴヌクレオチドはHIV−1単離物すべてのEnvのPCR増幅断片のクローニングを容易にするように設計される。
【0087】
pBC12/CMVに基づくベクター
pBC12/CMVに基づくベクター中へのクローニングはすべてpBC12/CMV/IL−2中で行った。具体的には、挿入断片は、IL−2のcDNAのBamHIからHinDIII までの断片と置換された。これらのクローニングには3種の挿入物が用いられた(図10〜12)。
【0088】
pCMV/HIV−1−NL4−3.dpol(図10)
図9は、HIV−1−NL4−3(NL4−3)プロウイルスDNA及びその会合した長末端反復(LTR)配列及び読み取り枠(open reading frames) を図示する。pNL4−3はマルコーム(Malcolm, A.) 博士、マーチンス・ラボラトリー(National Institutes of Health, Bethesda, MD) から提供された( アダチ(Adachi)ら、J. Virol. 59, 284-291 (1986)) 。HIV.NL4−3株のジーンバンク受託番号はM1991である。NL4−3.dpol挿入物は非感染性HIV−1粒子をコードし、生のしかし非感染性の感染を真似るように構築された。非感染性の粒子をコードする挿入物を得るために、それぞれHaeII及びBanII消化を用いて5’−LTRのすべて及び3’−LTRの大部分をpNL4−3から欠失させた。1932bpの内部BalI欠失によりpol遺伝子を非機能性とした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析を用いてGag及びEnvの発現が証明された。Gag蛋白質とEnv蛋白質は細胞内及び培養基の中の両方に存在した。このことは、Gagが粒子形成に要求される唯一のHIV−1蛋白質であることからも予想された。
【0089】
pCMV/HIV−1−HXB−2.env(HXB−2.env)(図11)
HXB−2.envは完全なHXB−2Env及びRevを発現するように設計された。HIV.HXB2株のジーンバンク受託番号はK03455及びM38432である。正常なHIV−1のEnvの発現はRev依存性であるから、Revはこの構築物中に含まれる。この構築物はヨゼフ ソドロスキー(Joseph Sodroski) 博士(ダナ・ファーバー・キャンサー・インスティチュート,ボストン,MA)(ヘルゼート(Helseth) ら、J. Virol. 64, 2416-2420 (1990)) のpSVIII.env 構築物のSalIからXhoIまでの断片をpBC12/CMV/IL−2のIL−2のBamHIからHindIII 断片と置換することにより得られた。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、Envの発現が証明された。
【0090】
pCMV/HIV−NL4−3.env(NLV−3.env)(図12)
HIV−1Env及びRevを発現する構築物の第二の例であるNL4−3.envはHXB−2/NL4−3Env融合蛋白質及びRevを発現した。この構築物においては、HXB−2envの末端付近のユニークな制限部位であるKpnI及びBamHIを用いてNL4−3配列をpCMV/HXB−2.env内の相同的なHXB−2env配列と置換した。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析によりEnvの発現が証明された。
【0091】
JW4303に基づくベクター
JW4303プラスミドは、CMV即時型プロモーター由来の約2000bpとウシ成長ホルモン由来の配列を挿入物発現のために使用する(図8)。CMV即時型プロモーター由来の配列はCMVイントロンAをコードする配列を含む。このイントロンは挿入された遺伝子の発現を高めることができる(チャップマン(Chapman) ら、Nucleic Acids Research14, 3979-3986 (1991))。JW4303ベクターは組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA) 蛋白質に対する合成リーダー配列を含む。この合成リーダーはEnv発現の開始部位を提供する。組織プラスミノーゲン活性化因子のリーダーはグリコシル化蛋白質の合成及び分泌を加速する(ヘイグウッド(Haigwood)ら、Prot. Eng. 2, 611-620 (1989)) 。デザイナーオリゴヌクレオチドからのPCR増幅を用い、TPAリーダーとフレームを合わせて挿入されたenv断片を作成した。HIV−1の異なるサブグループの配列に共通な5’−オリゴヌクレオチドをHIV−1env配列のどれかと成熟Envの正常末端の又はその付近のTPAリーダーに融合させる。このオリゴヌクレオチドはJW4303中へのサブクローニングのために合成TPAリーダー内のユニークな制限部位を使用できるように設計される。例えば、5’−オリゴヌクレオチドJApcr503は、HIV−1のサブグループB単離物に対する成熟Envのアミノ酸6の直前でTPAリーダーの融合を可能とするXbaI部位を含む。
【0092】
3種のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてEnvの分泌型gp120(sgp120)、分泌型gp140(sgp140)、又は正常なgp160型を構築することができる(図13〜16を見よ)。Envのsgp120型をコードするDNA断片を、gp120とgp41の間のプロテアーゼ切断部位をコードする配列の又はその付近の共通アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて合成する。サブグループBウイルスのこのようなオリゴヌクレオチドの1例は、JApcr504(配列表の配列番号:2)である。Envのsgp140型をコードするDNAをgp41の膜結合領域 (membrane anchor domain)の又はその付近の共通配列のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて合成する。サブグループBウイルスのこのようなオリゴヌクレオチドの1例は、JApcr502(配列表の配列番号:3)である。完全EnvをコードするDNAを細胞質ドメイン内又はgp160のC末端の3’側の共通配列をコードするオリゴヌクレオチドを用いて合成する。サブグループB HIV−1のこのようなオリゴヌクレオチドの1例は、JApcr506である。アンチセンスオリゴヌクレオチドはJW4303又はJW4303の誘導体中へのクローニングを容易にするユニークな制限部位を有する。例えば、JApcr502及びJApcr504はJW4303内のユニークなBamHI部位内にクローニングするためのBamHI部位を含んでいる。
【0093】
JW4303/HIV−1−HXB−2.sgp120(HXB−2.sgp120)
HXB−2.sgp120(図14を見よ)は、JApcr503(gtcgctcctctagattgtgggtcacagtctattatggggtacc)(配列表の配列番号:1)とJApcr504(ggtcggatccttactgcaccactcttctctttgcc)(配列表の配列番号:2)を用いてpCMV/HXB−2.envからの配列を増幅して合成した。この増幅された断片をXbaIとBamHIで消化し、NheIとBamHIで消化したJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクトした細胞内及び培養基内の両方にsg120の存在が明らかにされた。
【0094】
JW4303/HIV−1−HXB−2.sgp140(HXB−2.sgp140)
HXB−2.sgp140(図15を見よ)は、JApcr503(配列表の配列番号:1)とJApcr502(cgacggatccttatgttatgtcaaaccaattccac)(配列表の配列番号:3)を用いてpCMV/HXB−2.envからの配列を増幅することにより構築した。増幅された断片をXbaIとBamHIで消化し、NheIとBamHIで消化したJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクトした細胞内及び培養基内の両方にsg120の存在が明らかにされた。
【0095】
実施例12
HIV−1−NL4−3 pBC12CMVに基づくベクターの免疫原性テスト
pBC12/CMVに基づくベクターで免疫化する試みをBALB/cマウスで行った。6〜8週齢のマウスを静脈内(iv)及び筋肉内(im)経路の両方でDNA200μgの一連の注射により免疫化した(免疫化のスケジュールは図17に示す)。6尾ずつのマウスからなる4実験群にDNAを投与した。A群は挿入物のないpCMV/対照DNAを投与された。B群はpCMV/NL4−3.envDNAを受けた。C群はpCMV/NL4−3.dpolDNAを受けた。D群はpCMV/NL4−3.envDNA100μgとpCMV/NL4−3.dpolDNA100μgの混合物を受けた。マウスを免疫化に先立って採血し、免疫化後の種々の時点で採血した。各採血時に同一テスト群のマウスからの血清をプールした。実験の終わりにマウスを屠殺し脾臓を採取し、BALB/cマウスのNL4−3Env内の既知の細胞障害性T細胞(CTL)エピトープに対するCTL活性について試験した。
【0096】
抗Env抗体のレベルを酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を用いて測定した。ミクロタイタープレートのウエルをウエル当たり0.4μgの精製gp120(アメリカン・バイオテクノロジー・インク、ケムブリッジ、MAから購入)で被覆した。マウスの血清をカオリンで前処理して非特異的活性を除去した(ノバク(Novak) ら、Vaccine 11, 55-60 (1993)) 。異なる希釈度の供試血清をウエル内でインキュベートし、そして抗gp120IgGの量をアルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGを用いて測定した。適当な基質を添加し、光学密度を測定するためELISAリーダーを用いて発色を評価した。対照群(A群)の血清について得られた光学密度値を実験群(B、C、D群)について得られた値から差し引いた。
【0097】
DNA免疫化はHIV−1エンベロープに対する長寿命の抗体応答を発生させた(図18、19及び20)。容易に検出される抗Env抗体のレベルは、採血4(第3のDNA免疫化の1.5週間後)に出現した(図18)。これらの抗体のレベルは持続し、採血5(第3のDNAインキュベーション後4週間)においても同様なレベルの抗体が存在した(図18)。DNA免疫化群4、5及び6は抗Env抗体のタイターを実質的に上昇させた(免疫化4、5及び6の1.5週間後の採血8を見よ)(図18)。これらのより高いレベルの抗体は持続し、経時的にゆるやかな減衰を示した。2回のショットのそれぞれ当たり0.4μgのDNAを用いた腹部表皮への2回の遺伝子銃接種は抗Env抗体のタイターを増加させなかった(図19)。実験動物を遺伝子銃接種後さらに14週間飼育した。この間に抗Env抗体の良好なタイターが持続した(図20)。
【0098】
pCMV/NL4−3.env DNA、pCMV/NL4−3.dpol DNA、及びpCMV/NL4−3.env DNAとpCMV/NL4−3.dpol DNAの混合物は全体的に同様な抗体上昇能力を有していた(図18)。これらのDNAのそれぞれにおいて、抗Env抗体の最高のレベルが採血8で得られた(図18及び図19)。これらの血清はすべて約1:3200の終点タイターを有していた(図21)。dpol DNA及びenv DNAの混合物は抗EnvIgGの最高のタイターを発生させた(図18、19及び21)。しかしながら、これらのより高いタイターは、DNAが単一種として与えられたときに発生したタイターとは4倍も異ならなかった(図21)。
【0099】
生理食塩水中の多重DNA接種及び遺伝子銃ブーストにより発生した抗Env・ELISA抗体のレベルを、アグラセトゥス,インク( ミドルトン、WI) のジョエル ヘインズ(Joel Haynes) によりEnv発現DNAの遺伝子銃送達のみを用いて得られた結果と比較した(図22)。図17の実験における、NL4−3.envを接種されたマウスからの採血8の血清プール中に存在するレベルは、遺伝子銃DNAのみを受けたマウスの高い応答マウスの血清で見出されたレベルと中程度の応答マウスの血清のレベルとの中間であった。このことは図17中で示された実験におけるテスト群からプールされた血清と一致し、この血清は腹部表皮への0.4μgDNAの3回遺伝子銃送達により発生したタイターと極めてよく似たタイターをもっていた。
【0100】
マウスから得た血清は、NL4−3に対する中和活性についても試験した。これらの試験は、50〜100感染ユニットのNL4−3を熱失活させそしてカオリン処理した各種希釈度のマウス血清とインキュベートすることにより行った。インキュベーションは37℃で1時間行った。インキュベーション後に対数増殖期のH9細胞を添加した。24時間後にこの細胞を洗浄し新鮮培地を与えた。4日後に培養物をトリトン−X100で溶解し抗原捕捉ELISAを用いてNL4−3の複製を分析した。このような試験3回の結果を表15に要約する。表15のデータはNL4−3複製の90%以上阻止を与える血清の最終希釈度の逆数である。HIV−IgはAIDS貯蔵所,ベセスダ,MDから入手したセロポジティブなヒトからのプールされた免疫グロブリンである。
【0101】
表15 DNA免疫化血清におけるNL4−3に対する中和抗体のタイター
【表15】
【0102】
中和試験により、DNA免疫化マウスにおいて極めて高い中和活性が示された。ELISAデータと一致して、NL4−3.env DNAで免疫化されたマウスとNL4−3.dpol DNAで免疫化されたマウスとは中和抗体のタイターが匹敵していた。これもELISAデータと一致して、中和抗体は極めて良好な持続性を示し、最後のDNA接種後14週間に4倍以下の低下しか受けなかった。こうして、DNA接種はNL4−3に対する顕著な中和活性を発生させた。これはDNA発現細胞によるHIV−1 Envの天然型の提示を反映している。
【0103】
ジョエル ヘインズ(Joel Haynes)博士、アグラセトゥス、インクにより細胞障害性T細胞(CTL)活性についての試験が行われた。CTL分析のために、マウスを殺し、応答体の脾臓細胞を採取し、10ユニット/mlのラットインターロイキン−2を含むRPMI1640、10%ウシ胎児血清、50μg/mlゲンタミシン(RPMI−10)中に再懸濁した。刺激因子である脾臓細胞は無経験動物からの脾臓細胞を1×107 細胞/mlの濃度でRPMI−10に懸濁し、マイトマイシンCを最終濃度25μg/mlまで添加することにより調製した。刺激細胞をマイトマイシンCの存在下に37℃で25分間インキュベートし、RPMI−10で洗浄し、次いでBALB/cマウスにより認識される既知のCTLエピトープを提示する合成ペプチド(RIQRGPGRAFVTIGK)(配列表の配列番号:4)でパルスした。およそ同数の刺激細胞と応答細胞とを5〜6日間同時培養した。イン・ビトロで刺激された応答細胞の、クロミウム51負荷ペプチドでパルスされたBALB/c 3T3標的細胞の溶解能を測定するために、細胞障害性試験が用いられた。
【0104】
DNA免疫化は実験の終了時に容易に検出される細胞障害性T細胞活性を発生させた(最後のDNA免疫化後14週目)(図23)。Env ペプチドパルス化標的細胞のCTL活性は、pCMV/NL4−3.env DNA、pCMV/NL4−3.dpol DNA、及びpCMV/NL4−3.env DNAとpCMV/NL4−3.dpol DNAの混合物で免疫化されたマウスについて同様であった。
【0105】
実施例13
SIVmac に対する免疫化のためのDNA構築物
SIV構築物
HIV−1の場合と同様に、SIVmac に対する免疫化のために2系列のDNA転写ユニットを調製した。これらの第1は、ブライアン R.クレン(Cullen)博士のpBC12/CMVベクターを使用する(上記及び図5を見よ)。第2の系列はジェームス I.ムリンス ラボラトリー(上記及び図8を見よ)で開発されたJW4303ベクターを用いた。
【0106】
pBC12/CMVに基づくSIVベクター
pBC12/CMVに基づくベクターへのクローニングはpBC12/CMV/IL−2中で行われた。SIV239挿入物はSIV239プロウイルスDNAをコードするプラスミドから調製された(図26)。これらのプラスミド(p239SpSp5’及びp239SpE3’)は、ロナルド C.デスロジアース(Desrosiers)博士、ニューイングランド・リージョナル・プライメート・リサーチ・センター(サウスボロー、MA)により提供された。具体的には、pCMV/SIV239.dpol(239.dpol)挿入物(図27)をpBC12/CMV/IL−2内のIL−2cDNAのBamHIからHindIII までの断片と置換した。この239.dpol挿入物は、NarI欠失により5’LTR非機能性とし、内部のBstEII欠失によりpol非機能性とし、そしてStuI消化でLTRの大部分を除去することにより構築した。p239SpE3’は、点彩により示された欠陥nef遺伝子をコードする。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析を用いてGag及びEnvの発現が証明された。Gag及びEnv蛋白質は細胞内及び培養基内の両方に存在した。このことはGagが粒子形成のために要求される唯一のSIV−1蛋白質であることから予期されたとおりであった。
【0107】
JW4303に基づくベクター
SIVに対するJW4303・DNA転写ユニットはSIVenv配列のPCR増幅断片を用いて構築した(図26−29)。5’センスプライマーはTPAリーダーとの融合蛋白質をコードするDNAの構築において役に立った。3’アンチセンス オリゴヌクレオチドを用いてsgp120、sgp140、及び全長SIVenv断片を作成した。
【0108】
JW4303/SIV239.sgp120(239.sgp120)(図27)
239.sgp120は、p239spE3’からの配列を増幅するためにオリゴヌクレオチドJApcr19及びオリゴヌクレオチドJWpcr8を用いて合成した。増幅された断片をNheI及びBamHIで消化し、NheI及びBamHIで消化したpJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクト細胞内及び培養基内の両方にsg120が見出された。SIV239は赤毛猿(macaques)におけるワクチン投与実験のための確立されたモデルであるから、この構築に239配列を使用した。SIV239はSIV251の突然変異体であり、後者も構築物の作成に使用される(以下を見よ)。SIV239株に対するジーンバンク受託番号はM33262、M61062、及びM61093である。SIV251株に対するジーンバンク受託番号はM19499及びX06393である。
【0109】
pJW4303/SIV239.sgp140(239.sgp140)(図28)
239.sgp140は、p239SpE3’からの配列を増幅するためにオリゴヌクレオチドJApcr19とオリゴヌクレオチドHKpcr2を用いて構築された。増幅された断片をNheIとBamHIで消化し、NheIとBamHIで消化したpJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクトした細胞内及び培養基内の両方にsg140が見出された。上に指摘したように、239配列が用いられたのは、239ウイルスが赤毛猿のワクチン投与実験のためのモデルとして確立されているからである。
【0110】
pJW4303/SIV251.sgp140(251.sgp140)(図28)
251.sgp140は、pM40KSIV251env(ロナルド C.デスロジアース(Desrosiers)博士、ニューイングランド・プライメート・リサーチ・センター、サウスボロー、MAから入手した)からの配列を増幅するためにオリゴヌクレオチドJapcr19とオリゴヌクレオチドHkpcr2を用いて構築した。増幅された断片をNheI及びBamHIで消化し、NheI及びBamHIで消化したJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクト細胞内及び培養基内の両方にsg140が見出された。
【0111】
pJW4303/SIV316.sgp140(316.sgp140)(図28)
316.sgp140は、ロナルド C.デスロジアース (Desrosiers)博士、ニューイングランド・プライメート・リサーチ・センターから入手したPCRenvクローン316−3からの配列を増幅するためオリゴヌクレオチドJapcr19とオリゴヌクレオチドHkpcr2を用いて構築した。増幅された断片をNheI及びBamHIで消化し、NheI及びBamHIで消化したpJW4303中にサブクローニングした。トランスフェクトしたコス細胞のウエスタンブロット分析により、トランスフェクト細胞内及び培養基内の両方にsg120が見出された。SIV316はSIV239の突然変異体であり、後者は単球/マクロファージ屈性 (tropism) を有する(モリ(Mori) K. ら、J. Virology 66(4), 2067-2075 (1992))。
【0112】
実施例14
SIV DNAワクチン投与実験の設計
赤毛猿を免疫化するためにSIVをコードするDNAを用いてワクチン投与実験を試みた。雄及び雌の若い免疫能力を有する動物をこの実験に用いる。三回のDNA接種が実験の1週と3週、11週と13週、及び21週と23週に行われる。最終DNA接種の2週間後に致死量チャレンジが投与される。このチャレンジは、静脈内接種により投与されるSIV239の10猿感染ユニットからなる。
【0113】
3群の猿を実験に用いる。各群は3種の異なるSIV239DNA、すなわち239.dpol、239.sgp120、及び239.sgp140(図25、27及び28)の投与を受ける。各DNA接種時に、第1群の4頭の赤毛猿はiv経路とim経路の両方からの接種によりこれらのDNAのそれぞれ500μg並びにふとももの皮膚に各3種のDNAからなる2回の遺伝子銃ショット(アクセル・インストルメント)及び腹部皮膚に3種のDNAからなる2回の銃ショットを受ける。第2の群の猿はふとももの皮膚に3種のDNAからなる2回の遺伝子銃ショット及び腹部皮膚に3種DNAからなる2回の銃ショットを受ける。第3群は500μgのpCMV/対照DNA及び1mgのpJW4303DNAを静脈内及び筋肉内接種経路の両方により、並びにふとももの皮膚に投与するpCMV/対照の2回遺伝子銃ショット及びpJW4303DNAの4回銃ショット及び腹部皮膚に投与されるpCMV/対照の2回遺伝子銃ショット及びpJW4303DNAの4回銃ショットを受ける。
【0114】
239.dpolの遺伝子銃ショットは、SIVmac Rev及び239.dpolに対するDNA転写ユニットの等モル量を負荷されたビーズを用いて行われた。皮膚細胞における付加的なRevの発現はGag及びEnvの発現レベルを増加させる。SIVmac Revに対する転写ユニットはグレゴリーA.ビグリアンティ(Viglianti)博士、マサチューセッツ大学メディカルセンター、ウースター、MAから入手した。
【0115】
11週と13週及び21週と23週の接種のために付加的なEnvコードDNAをワクチンに添加する。これらは感染動物で生ずるSIV突然変異体に対する応答を含めるように免疫応答を拡げるために付加される。応答の拡大を可能とするために、猿の二つのワクチン群(上記の1群及び2群)は、251.sgp140の2回の遺伝子銃ショット及び316.sgp140の2回の遺伝子銃ショットを受ける。これらは腹部表皮に送達される。これらのショットは実験の1週及び3週に受けた同じショットに付け加えて投与される。
【0116】
実施例15
ワクチン転写ユニットに使用するための患者単離物からのHIV−1env配列の分子クローニング
健康なセロポジティブな感染相に特徴的なゆっくりとした/低い、非シンシチウム誘導性の単球/マクロファージ屈性ウイルスを表すサブグループB HIV−1単離物に対するenv配列、並びにAIDS患者に見出される急速な/高い、シンシチウム誘導性のT細胞株屈性ウイルスを表すenv配列を得るために、2系列の一連の患者単離物をエバ マリア フェンヨ(Fenyo) 博士、カロリンスカ・インスティチュート、スエーデンから入手した(Von Gegerfelt, A. ら、Virol. 185, 162-168 (1991)( 表16を見よ)。これらの単離物は感染の健康なセロポジティブな相からAIDS相までの進行の期間の2〜3年間にわたって得られたものであった。一系列は患者5からのものであり、第2は患者6からのものであった。
【0117】
【表16】
【0118】
単離物からのエンベロープ配列はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により回収された。培養上清をマイトジェンで刺激したPBL上で一度増殖させた。感染後5日目でより激しい単離物に対する高レベルのシンシチウムが出現した時にDNAを調製した。次いでPCR増幅を用いて分子量約2.1kbのenvのKpnIからBamIII までの断片を回収した。この断片は実質的にgp120のすべてをコードし、gp120の13個のN末端アミノ酸だけに対するコドンを欠いている。それはまた、gp41の約340個のアミノ酸のうちの約240個をコードし、これはgp41の細胞外ドメイン及び貫膜ドメインのすべて並びに高度に酸性な配列を含む細胞内ドメインの部分を含んでいる。
【0119】
PCR反応のためのオリゴヌクレオチドプライマーは保存された制限エンドヌクレアーゼ部位を含むように、並びにマイヤースデータベース( マイヤース(Meyers) ら、Human Retrovirus and AIDS, Los Alamos National Laboratory, LosAlamos, NM, 1992)中の現在のHIV−1単離物中に完全に保存されている3’塩基の数を最大にするように選択される。実際の増幅は、250ngのDNA、25pmolの各プライマー、及び1ユニットのアムプリタックを用い、最終量100μlで行った。
【0120】
クローンを、ロナルド C.デスロジアース(Desrosiers)博士(ニューイングランド・プライメート・リサーチ・センター、サウスボロー、MA)により提供されたpNL4−3の右半分中にクローニングした。これは、(i)PCR増幅されたenv配列のKpnIからBamHIまでの2.1kb断片、(ii) pNL4−3からのEcoRIからKpnIまでの0.6kb断片(3’vprから5’envまでの配列)、及び(iii) pNL4−3の右半分のEcoRIからBamHIまでの断片(3’env配列、nef配列、LTR配列及びプラスミド配列を含む)の3片クローニングとして行われた。クローンが得られると、V3ループの配列及び隣接する配列が得られる(表17を見よ)。この配列は、このクローンが汚染物ではなく、さらなるサブクローニングをモニターするための指紋配列(signature sequence)を提供する。
【0121】
表17 患者5及び患者6からの一連の単離物由来のenvクローン、V3ループ配列及び隣接するC−末端配列、比較配列及び共通配列
【表17】
【0122】
次いで、クローンについて、コス−1細胞中へのpNL4−3の左半分と同時トランスフェクションし、マイトジェン刺激PBLと共に同時培養を行うことにより、その生物学的活性を試験した。p6B−1、p6A−1、p6C−1、p6D−1とNL4−3.env組換え体は機能性のenvをコードし、これらをそこから回収した培養物に特徴的な増殖を支える。これらのenvは疾病の異なるステージ及び患者単離物に特徴的な異なる増殖を表す。これらのenvはPCR増幅断片上を移動し、免疫原性テストのためのpJW4030ベクター中に移る(上記の図13〜16を見よ)。
【0123】
均等物
当技術分野に熟練せる者は単なる日常的実験を用いて本明細書に記載された発明の具体的態様に均等な多くの事を認識し又は確認することができるであろう。これらのそしてその他のこのような均等物は以下の請求の範囲に包含されるものである。
【0124】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1] ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造における、プロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットの使用であって、この防御的免疫応答が目的抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答であるDNA転写ユニットの使用。
[2] ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することにより脊椎動物を免疫化する方法であって、該方法はプロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットを脊椎動物に投与することを含んでなる方法であり、これによる防御的免疫応答が目的の抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答である方法。
[3] DNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、この転写ユニットがプロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、このDNAが微小体でカプセル化されている(microsphere encapsulated)ものである生産物。
[4] 目的の抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化における使用などの治療における使用のための、微小体でカプセル化されているDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、該転写ユニットがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものである生産物。
[5] 目的の抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造のための、微小体でカプセル化されているDNA転写ユニットの使用であって、該転写ユニットがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものである、使用。
[6] 脊椎動物を免疫化する方法であって、該方法が微小体でカプセル化されたDNA転写ユニットを脊椎動物に投与することを含み、このDNA転写ユニットがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものである、方法。
[7] 1個以上のDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、転写ユニットのそれぞれがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なるものである、生産物。
[8] 治療に使用するための1個以上のDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、転写ユニットのそれぞれがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっており、該治療における使用が、例えば該生産物を投与することにより脊椎動物を免疫化する方法であって、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が該目的抗原に対するものであり/又は該目的抗原に対して誘導されるものである、生産物。
[9] 脊椎動物に生産物を投与することによる該脊椎動物を免疫化するための医薬の製造における1個以上のDNA転写ユニットを含んでなる生産物の使用であって、該転写ユニットのそれぞれがプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっているものである、使用。
[10] 脊椎動物を免疫化する方法であって、該方法は1個以上のDNA転写ユニットを脊椎動物に投与することを含んでなる方法であり、該転写ユニットはそれぞれプロモーター領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、これによる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答が目的抗原に対するもの/又は目的抗原に対して誘導されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原もしくは複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっているものである、方法。
[11] 異なる抗原がインフルエンザウイルス由来の防御的応答を誘導するものである、前記[7]、[8]、[9]又は[10]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[12] 異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のものである前記[11]記載の生産物、使用又は方法。
[13] 異なる抗原がインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである前記[11]記載の生産物、使用又は方法。
[14] 異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のもの及びインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである前記[11]記載の生産物、使用又は方法。
[15] 異なる抗原が免疫不全ウイルス由来の防御的応答を誘導するものである、前記[7]、[8]、[9]又は[10]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[16] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なるサブグループを表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[17] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なる感染相(phases of infection)を表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[18] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なる組織屈性(tissue tropisms) を表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[19] 異なる抗原が免疫不全ウイルスの異なる伝達ルートを表すものである、前記[15]記載の生産物、使用又は方法。
[20] 転写ユニットが微小体でカプセル化されているものである、前記[1]、[2]、又は[7]〜[19]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[21] 1個以上の転写ユニットが脊椎動物に投与されるものであり、一つの転写ユニットに対する目的抗原が他の転写ユニットの目的抗原又は複数の他の転写ユニットそれぞれの目的抗原とは異なっているものである、前記[1]〜[6]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[22] 前記[11]〜[19]のいずれかの特徴をさらに含む前記[21]記載の生産物、使用又は方法。
[23] 静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、及び皮下内からなる群より選択される投与経路を介して脊椎動物に投与するための先行する前記[1]〜[22]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[24] 粘膜表面への接触により脊椎動物へ投与するための前記[1]〜[22]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[25] 該粘膜表面が鼻粘膜表面又は気管粘膜表面などの呼吸器系粘膜表面である、前記[24]記載の生産物、使用又は方法。
[26] 転写ユニットのプロモーター領域がレトロウイルス起源のもの又は非レトロウイルス起源のものである、先行する前記[1]〜[25]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[27] 該脊椎動物がヒトなどの哺乳動物である、先行する前記[1]〜[26]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[28] 該転写ユニットが宿主細胞因子により直接発現されるものである、先行する前記[1]〜[27]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[29] 該目的抗原がウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することができるものである、先行する前記[1]〜[28]いずれか記載の生産物、使用又は方法。
[30] 該ウイルスがインフルエンザウイルスである前記[29]記載の生産物、使用又は方法。
[31] 該目的抗原がインフルエンザウイルスの赤血球凝集素である、前記[30]記載の生産物、使用又は方法。
[32] 該ウイルスがヒト免疫不全ウイルスである前記[29]記載の生産物、使用又は方法。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、複製可能なレトロウイルスベクターにより発現されるインフルエンザウイルス血球凝集素タイプ7(H7)遺伝子を含んでなるDNA転写ユニット(pP1/H7と呼ばれる)を含む細菌プラスミドの図式的表示である。
【図2】図2は、複製欠損レトロウイルスベクターにより発現されるインフルエンザウイルス血球凝集素タイプ7(H7)遺伝子を含んでなるDNA転写ユニット(p188)を含む細菌プラスミドの図式的表示である。
【図3】図3は、対照として使用された、H7挿入物を含まないレトロウイルスベクター(pRCAS)を含んでなる細菌プラスミドの図式的表示である。
【図4】図4は、サブタイプH7血球凝集素をコードするインフルエンザウイルス抗原DNA転写ユニットを含んでなる非レトロウイルスベクターの図式的表示である。
【図5】図5は、インフルエンザウイルス抗原をコードしていない対照DNA転写ユニットを含んでなる非レトロウイルスベクターの図式的表示である。
【図6】図6は、サブタイプH1血球凝集素をコードするインフルエンザウイルス抗原DNA転写ユニットを含んでなる非レトロウイルスベクターの図式的表示である。
【図7】図7は、対照との比較において、EDIM VP7ロタウイルスcDNAを遺伝子銃により接種されたマウスの細胞障害性T細胞応答を示す棒グラフである。黒棒は標的に対するエフェクターの比が60:1であり、縞の棒は標的に対するエフェクターの比が30:1である。
【図8】図8は、CMVイントロンA、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)蛋白質に対するリーダー配列、及びウシ成長ホルモンのポリA配列を含んでなるpJW4303ベクターの図式的表示である。
【図9】図9は、HIV−1プロウイルスDNAの図式的表示である。
【図10】図10は、NL4−3.dpol挿入物の図式的表示である。
【図11】図11は、HXB−2.env挿入物の図式的表示である。
【図12】図12は、NL4−3.env挿入物の図式的表示である。
【図13】図13は、HIV−1 envDNAの図式的表示である。
【図14】図14は、sgp120.env挿入物の図式的表示である。
【図15】図15は、sgp140.env挿入物の図式的表示である。
【図16】図16は、sgp160.env挿入物の図式的表示である。
【図17】図17は、HIV−1ベクターに対しマウスで用いられたDNA免疫化スケジュールを示す図である。
【図18】図18は、静脈接種及び筋肉内接種によりマウス中に発現された抗−gp120抗体の発現量を示す棒グラフである。点彩を施した棒はNL4−3.envDNAを投与されたマウスの血清であり、縞を施した棒はNL4−3.dpolDNAを投与されたマウスの血清であり、白棒はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。
【図19】図19は、静脈内接種及び筋肉内接種後に遺伝子銃接種を行ったマウス中で発現した抗−gp120抗体の量を図示する棒グラフである。点彩を施した棒はNL4−3.envDNAを投与されたマウスの血清であり、縞を施した棒はNL4−3.dpolDNAを投与されたマウスの血清であり、白棒はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。
【図20】図20は、NL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウス中におけるマウス抗−gp120タイターの長寿を示す棒グラフである。
【図21】図21はDNA接種後のマウス中に発現した抗−gp120抗体の力価を示す棒グラフである。点彩を施した棒はNL4−3.envDNAを投与されたマウスの血清であり、縞を施した棒はNL4−3.dpolDNAを投与されたマウスの血清であり、白棒はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。
【図22】図22は、遺伝子銃envDNA接種によりマウス中に発現した抗−env抗体の量を示す棒グラフである。薄い黒棒は遺伝子銃のみによってNL4−3.envを接種された高応答マウスから得られた結果であり、縞を施した棒は遺伝子銃のみによって接種された中程度応答マウスから得られた結果であり、黒色棒は静脈内経路及び筋肉内経路でNL4−3.envを接種されたマウスの採血8から得られた結果である。
【図23】図23は、HIV−1接種マウスの細胞障害性T細胞活性を示すグラフである。白丸はベクターを接種されたマウスからの結果であり、黒丸はNL4−3.envDNAを、黒三角はNL4−3.dpolDNAを、黒四角はNL4−3.envDNAとNL4−3.dpolDNAの両方を投与されたマウスの血清である。E:Tは標的に対するエフェクターの比である。
【図24】図24は、SIV−239プロウイルスDNAの図式的表示である。
【図25】図25は、SIV−239.dpol挿入物の図式的表示である。
【図26】図26は、SIV−239.envDNAの図式的表示である。
【図27】図27は、SIVsgp120挿入物の図式的表示である。
【図28】図28は、SIVsgp140挿入物の図式的表示である。
【図29】図29は、SIVsgp160挿入物の図式的表示である。
【図30】図30は、PCR増幅に用いられた制限部位及びオリゴヌクレオチド並びにHIV−1患者単離物からのenvのサブクローニングを示す図式的表示である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造における、プロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットの使用であって、この防御的免疫応答が目的抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答であるDNA転写ユニットの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の免疫化に使用するためのDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、該DNA転写ユニットは、プロモータ領域を含むDNAに作動可能に連結したロタウイルスの抗原をコードしているDNAを含み、該生産物がロタウイルス抗原に対して体液性免疫応答、細胞性免疫応答、または体液性免疫応答および細胞性免疫応答の双方を誘導する、生産物。
【請求項2】
DNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、この転写ユニットが、プロモータ領域を含むDNAに作動可能に連結した抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、このDNAが微小体でカプセル化されている(microsphere encapsulated)ものである生産物。
【請求項3】
1個を超えるDNA転写ユニットを含んでなる脊椎動物免疫化に使用するための生産物であって、転写ユニットのそれぞれがプロモータ領域を含むDNAに作動可能に連結した抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、該生産物が抗原に対して体液性免疫応答、細胞性免疫応答、または体液性免疫応答および細胞性免疫応答の双方を誘導し、一つの転写ユニットに対する抗原が別の転写ユニット(1つまたは複数)の抗原とは異なるものである、生産物。
【請求項4】
異なる抗原がインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するものである、請求項3記載の生産物。
【請求項5】
異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のものである請求項4記載の生産物。
【請求項6】
異なる抗原がインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである請求項4記載の生産物。
【請求項7】
異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のもの及びインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである請求項4記載の生産物。
【請求項8】
静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、及び皮下からなる群より選択される投与経路を介して脊椎動物に投与するために適合させる、請求項1〜7いずれか記載の生産物。
【請求項9】
粘膜表面への接触により脊椎動物へ投与するために適合させる、請求項1〜7いずれか記載の生産物。
【請求項10】
転写ユニットのプロモータ領域がレトロウイルス起源のものである、請求項1〜9いずれか記載の生産物。
【請求項11】
転写ユニットのプロモータ領域が非レトロウイルス起源のものである、請求項1〜9いずれか記載の生産物。
【請求項1】
ロタウイルス又は免疫不全ウイルスに対する防御的免疫応答を誘導することによる脊椎動物免疫化に使用するための医薬の製造における、プロモータ領域のDNAに機能的に連結しかつ目的抗原をコードしているDNAを含んでなるDNA転写ユニットの使用であって、この防御的免疫応答が目的抗原に対して誘導される体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答であるDNA転写ユニットの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の免疫化に使用するためのDNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、該DNA転写ユニットは、プロモータ領域を含むDNAに作動可能に連結したロタウイルスの抗原をコードしているDNAを含み、該生産物がロタウイルス抗原に対して体液性免疫応答、細胞性免疫応答、または体液性免疫応答および細胞性免疫応答の双方を誘導する、生産物。
【請求項2】
DNA転写ユニットを含んでなる生産物であって、この転写ユニットが、プロモータ領域を含むDNAに作動可能に連結した抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、このDNAが微小体でカプセル化されている(microsphere encapsulated)ものである生産物。
【請求項3】
1個を超えるDNA転写ユニットを含んでなる脊椎動物免疫化に使用するための生産物であって、転写ユニットのそれぞれがプロモータ領域を含むDNAに作動可能に連結した抗原をコードしているDNAを含んでなるものであり、該生産物が抗原に対して体液性免疫応答、細胞性免疫応答、または体液性免疫応答および細胞性免疫応答の双方を誘導し、一つの転写ユニットに対する抗原が別の転写ユニット(1つまたは複数)の抗原とは異なるものである、生産物。
【請求項4】
異なる抗原がインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するものである、請求項3記載の生産物。
【請求項5】
異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のものである請求項4記載の生産物。
【請求項6】
異なる抗原がインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである請求項4記載の生産物。
【請求項7】
異なる抗原がインフルエンザの異なるサブタイプ由来のもの及びインフルエンザの異なるサブグループ由来のものである請求項4記載の生産物。
【請求項8】
静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、及び皮下からなる群より選択される投与経路を介して脊椎動物に投与するために適合させる、請求項1〜7いずれか記載の生産物。
【請求項9】
粘膜表面への接触により脊椎動物へ投与するために適合させる、請求項1〜7いずれか記載の生産物。
【請求項10】
転写ユニットのプロモータ領域がレトロウイルス起源のものである、請求項1〜9いずれか記載の生産物。
【請求項11】
転写ユニットのプロモータ領域が非レトロウイルス起源のものである、請求項1〜9いずれか記載の生産物。
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2006−316072(P2006−316072A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222713(P2006−222713)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【分割の表示】特願平7−520142の分割
【原出願日】平成7年1月25日(1995.1.25)
【出願人】(506280889)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ メディカル センター (1)
【出願人】(503235651)セント ジュード チルドレンズ リサーチ ホスピタル (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【分割の表示】特願平7−520142の分割
【原出願日】平成7年1月25日(1995.1.25)
【出願人】(506280889)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ メディカル センター (1)
【出願人】(503235651)セント ジュード チルドレンズ リサーチ ホスピタル (2)
【Fターム(参考)】
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