説明

DPC処理制御装置、基地局装置およびDPC処理制御方法

【課題】マルチユーザMIMOシステムにおいて、DPCによって電波干渉による通信品質への影響を除去する効果を維持しつつ、DPC処理による負荷を軽減することを図る。
【解決手段】基地局が、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて該複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する際に、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を該複数の移動局の総数未満に限定し、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPCを行うマルチユーザMIMOシステムにおいて、DPCスイッチ20は、移動局間の電波干渉による通信品質への影響がDPCの有無に左右されないほどに小さい場合に、"DPC encoding"部13に対してDPC処理を実行しないように指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPC(Dirty Paper Coding)処理制御装置、基地局装置およびDPC処理制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の無線通信システムでは、複数の送受信アンテナを用いるMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムが幅広く用いられようとしている。MIMOシステムでは、送信側で伝搬チャネルの状態に応じた事前処理を行うことで、MIMOシステムの性能を大幅に向上させることができる。特に複数の移動局が空間多重されるマルチユーザMIMOシステムにおいては、送信側で伝搬チャネルの状態に応じた事前処理を行うことが必須である。
【0003】
特許文献1に記載される従来のマルチユーザMIMOシステムでは、基地局は、移動局から送信される信号の到来方向を推定し、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて該複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する。このとき、基地局は、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を一つに限定する。そして、基地局は、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPC(Dirty Paper Coding)を行うことによって、電波干渉による通信品質への影響を除去するようにしている。
【0004】
図5は、従来のマルチユーザMIMOシステムの概略構成図である。図5において、各移動局(MS1〜N)200では、"User DOA initialization"部210がDOA(Direction of Arrival)を決定し、"Uplink user data generation"部211がDOAを有する上り送信信号を生成して送信する。この上り送信信号は、上り伝搬チャネルを介して基地局100で受信される。
【0005】
基地局100では、"DOA estimation by MUSIC"部11が、受信した上り送信信号を用いて、MUSIC(Multiple signal classification)アルゴリズムにより、各移動局(MS1〜N)200からの上り送信信号の到来方向を推定する。各移動局(MS1〜N)200の到来方向推定値(DOA Information)は、"DPC encoding"部130及び"Beam forming"部16に通知される。"DPC encoding"部130は、"Downlink user data generation"部12が生成した各移動局(MS1〜N)200宛の下り送信信号に対し、"DOA Information"に基づいてDPC処理を行う。
【0006】
"Modulo Operation"部14は、"DPC encoding"部130から出力された下り送信信号に対し、Modulo処理を行う。"Pilot multiplexing"部15は、"Modulo Operation"部14から出力された下り送信信号に対し、パイロット信号を多重する。"Beam forming"部16は、"Pilot multiplexing"部15から出力された下り送信信号に対し、送信ビーム形成処理を行う。"OFDM modulation"部17は、"Beam forming"部16から出力された下り送信信号に対し、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調処理を行う。OFDM変調処理後の下り送信信号は、下り伝搬チャネルを介して各移動局(MS1〜N)200で受信される。各移動局(MS1〜N)200では、"MS receiver"部220、"Channel estimation and FDE"部221、"Modulo Operation"部222及び"Detection and BER cal."部223によって、受信した下り送信信号に対し、信号検出処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−157805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来のマルチユーザMIMOシステムの基地局100では、"DPC encoding"部130が行うDPC処理にかかる演算量やメモリ量が多いという課題がある。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、マルチユーザMIMOシステムにおいて、DPCによって電波干渉による通信品質への影響を除去する効果を維持しつつ、DPC処理による負荷を軽減することができるDPC処理制御装置、基地局装置およびDPC処理制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るDPC処理制御装置は、基地局が、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて前記複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する際に、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を前記複数の移動局の総数未満に限定し、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPC(Dirty Paper Coding)を行うマルチユーザMIMOシステムにおいて、前記DPCの実行を制御するDPC処理制御装置であり、前記DPC処理制御装置は、移動局間の電波干渉による通信品質への影響がDPCの有無に左右されないほどに小さい場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るDPC処理制御装置において、前記DPC処理制御装置は、前記複数の移動局についての到来角度差が全て閾値を越えている場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るDPC処理制御装置において、前記DPC処理制御装置は、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対して、電波干渉を受ける全ての移動局との到来角度差が閾値を超えている場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るDPC処理制御装置において、前記DPC処理制御装置は、各移動局の到来方向推定値から得られるステアリングベクターをLQ分解して得られる下三角行列の対角成分以外の成分のうち一つでも成分値が閾値以下である場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るDPC処理制御装置において、前記DPC処理制御装置は、前記複数の移動局についての受信品質が全て閾値を越えている場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る基地局装置は、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて前記複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する際に、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を前記複数の移動局の総数未満に限定し、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPC(Dirty Paper Coding)を行うマルチユーザMIMOシステムの基地局装置において、前述のいずれかのDPC処理制御装置を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るDPC処理制御方法は、基地局が、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて前記複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する際に、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を前記複数の移動局の総数未満に限定し、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPC(Dirty Paper Coding)を行うマルチユーザMIMOシステムにおいて、前記DPCの実行を制御するDPC処理制御装置を備え、前記DPC処理制御装置は、移動局間の電波干渉による通信品質への影響がDPCの有無に左右されないほどに小さい場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マルチユーザMIMOシステムにおいて、DPCによって電波干渉による通信品質への影響を除去する効果を維持しつつ、DPC処理による負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチユーザMIMOシステムの概略構成図である。
【図2】本発明に係るDPCスイッチ20の実施例1である。
【図3】本発明に係るDPCスイッチ20の実施例3である。
【図4】本発明に係るDPCスイッチ20の実施例4である。
【図5】従来のマルチユーザMIMOシステムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチユーザMIMOシステムの概略構成図である。この図1において図5の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図1に示すマルチユーザMIMOシステムにおいて、図5に示す従来のマルチユーザMIMOシステムと異なる点は、DPCスイッチ20(DPC処理制御装置)を基地局10に設けてDPCの実行を制御するようにした点である。
【0020】
図1の基地局10において、DPCスイッチ20は、"DPC encoding"部13(DPC実行部)に対し、DPC制御信号(DPC encoding on/off)を出力する。DPCスイッチ20は、DPC処理を実行させるときにはDPC制御信号をオン(DPC encoding on)にし、DPC処理を実行させないときにはDPC制御信号をオフ(DPC encoding off)にする。又、DPCスイッチ20は、DPC処理を実行させるときには、"DOA Information"を"DPC encoding"部13へ出力する。
【0021】
"DPC encoding"部13は、DPC制御信号がオン(DPC encoding on)である場合に、"Downlink user data generation"部12が生成した各移動局(MS1〜N)200宛の下り送信信号に対し、"DOA Information"に基づいてDPC処理を行う。一方、"DPC encoding"部13は、DPC制御信号がオフ(DPC encoding off)である場合には、"Downlink user data generation"部12が生成した各移動局(MS1〜N)200宛の下り送信信号に対し、DPC処理を行わず、該下り送信信号をそのまま"Modulo Operation"部14へ出力する。
【0022】
以下、本実施形態に係るDPCスイッチ20の各実施例を説明する。
【実施例1】
【0023】
図2は、本実施形態に係るDPCスイッチ20の実施例1である。実施例1では、各移動局(MS1〜N)200からの到来方向の角度差に基づいて、DPC処理を実行させるか否かを判断する。DPCスイッチ20には、"DOA estimation by MUSIC"部11から、各移動局(MS1〜N)200の到来方向推定値(DOA Information)が入力される。
【0024】
図2において、ステップS11では、DPCスイッチ20は、各移動局(MS1〜N)200の到来方向推定値(DOA Information)の角度差(DOA差)を計算する。ステップS12では、DPCスイッチ20は、それぞれのDOA差を所定の閾値と比較する。
【0025】
ステップS12の比較の結果、全てのDOA差が閾値を越えている場合にはステップS13に進む。ステップS13では、DPCスイッチ20は、DPC制御信号をオフ(DPC encoding off)にして"DPC encoding"部13へ出力する。これにより、"DPC encoding"部13は、DPC処理を実行しない。
【0026】
一方、ステップS12の比較の結果、一つでもDOA差が閾値以下である場合にはステップS14に進む。ステップS14では、DPCスイッチ20は、DPC制御信号をオン(DPC encoding on)にして"DPC encoding"部13へ出力する。これにより、"DPC encoding"部13は、DPC処理を実行する。
【0027】
本実施例1では、複数の移動局(MS1〜N)200についての到来方向の角度差(到来角度差)が全て閾値を越えている場合には、DPC処理を実行しないようにしている。この理由を以下に説明する。
【0028】
本マルチユーザMIMOシステムの基地局は、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて該複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成するが、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を一つに限定する。そして、基地局は、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPCを行うことによって、電波干渉による通信品質への影響を除去するようにしている。
【0029】
ここで、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局であっても、移動局間の到来角度差がある程度(閾値)を超える場合には、各移動局の到来方向推定値に基づいて形成される送信ビームによって移動局間の電波干渉量を十分に小さくすることができるので、電波干渉による通信品質への影響をDPCの有無に左右されないほどに小さくすることができる。したがって、そのように閾値を設定すれば、複数の移動局(MS1〜N)200についての到来角度差が全て閾値を越えている場合には、移動局間の電波干渉による通信品質への影響がDPCの有無に左右されないほどに小さくなり、DPCを実行しても実行しなくても、電波干渉による通信品質への影響は変わらないので、DPCを実行しないようにする。これにより、マルチユーザMIMOシステムにおいて、DPCによって電波干渉による通信品質への影響を除去する効果を維持しつつ、DPC処理による負荷を軽減することができる。
【実施例2】
【0030】
実施例2は、上記実施例1の変形例である。実施例2では、全ての移動局(MS1〜N)200に対して一括でDPC処理の実行の有無を決めるのではなく、移動局ごとに到来角度差に応じてDPC処理の実行の有無を決める。
【0031】
ここでは、4台の移動局(MS1〜4)200を例に挙げて説明する。4台の移動局(MS1〜4)200に対する送信ビーム形成処理によって、移動局(MS1)200は干渉無し、移動局(MS2)200は移動局(MS1)200からの干渉有り、移動局(MS3)200は移動局(MS1)200と移動局(MS2)200からの干渉有り、移動局(MS4)200は移動局(MS1)200と移動局(MS2)200と移動局(MS3)200からの干渉有り、であるとする。
【0032】
この場合、DPCスイッチ20は、以下に示すように、移動局間の電波干渉が残る各移動局(MS2〜4)200に対するDPC処理の実行の有無を決定する。
移動局(MS2)200に対しては、移動局(MS1)200との到来角度差が閾値を超えている場合に、DPC処理の実行無しとする。
移動局(MS3)200に対しては、移動局(MS1)200との到来角度差及び移動局(MS2)200との到来角度差の両方が閾値を超えている場合に、DPC処理の実行無しとする。
移動局(MS4)200に対しては、移動局(MS1)200との到来角度差、移動局(MS2)200との到来角度差及び移動局(MS3)200との到来角度差の全てが閾値を超えている場合に、DPC処理の実行無しとする。
【0033】
このように本実施例2では、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対して、電波干渉を受ける全ての移動局との到来角度差が閾値を超えている場合に、DPC処理の実行無しとする。
【実施例3】
【0034】
図3は、本実施形態に係るDPCスイッチ20の実施例3である。実施例3では、各移動局(MS1〜N)200の到来方向推定値(DOA Information)から得られるステアリングベクターをLQ分解して得られる下三角行列の対角成分以外の成分の値の大きさに基づいて、DPC処理を実行させるか否かを判断する。DPCスイッチ20には、"DOA estimation by MUSIC"部11から、各移動局(MS1〜N)200の到来方向推定値(DOA Information)が入力される。
【0035】
図3において、ステップS21では、DPCスイッチ20は、各移動局(MS1〜N)200の到来方向推定値(DOA Information)から得られるステアリングベクターをLQ分解する。このLQ分解の結果として下三角行列が得られる。
【0036】
ステップS22では、DPCスイッチ20は、下三角行列の対角成分以外の成分の値を所定の閾値と比較する。
【0037】
ステップS22の比較の結果、一つでも成分値が閾値以下である場合にはステップS23に進む。ステップS23では、DPCスイッチ20は、DPC制御信号をオフ(DPC encoding off)にして"DPC encoding"部13へ出力する。これにより、"DPC encoding"部13は、DPC処理を実行しない。
【0038】
一方、ステップS22の比較の結果、全ての成分値が閾値を越えている場合にはステップS24に進む。ステップS24では、DPCスイッチ20は、DPC制御信号をオン(DPC encoding on)にして"DPC encoding"部13へ出力する。これにより、"DPC encoding"部13は、DPC処理を実行する。
【0039】
なお、本実施例3においても、上記実施例2と同様に、移動局ごとに閾値判定してDPC処理の実行の有無を決めるようにすることができる。
【実施例4】
【0040】
図4は、本実施形態に係るDPCスイッチ20の実施例4である。実施例4では、各移動局(MS1〜N)200における受信品質(例えば、SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio))に基づいて、DPC処理を実行させるか否かを判断する。
【0041】
本マルチユーザMIMOシステムでは、各移動局(MS1〜N)200は、CQI(Channel Quality Indicator)を用いてSINRを基地局10へ通知する。DPCスイッチ20には、各移動局(MS1〜N)200からのCQIが入力される。このCQIはSINRを表す。
【0042】
図4において、ステップS31では、DPCスイッチ20は、各移動局(MS1〜N)200からのCQIを受け取る。
【0043】
ステップS32では、DPCスイッチ20は、それぞれのCQIを所定の閾値と比較する。ここで、閾値は、選択可能なMCS(Modulation and Coding Scheme)のうち最も周波数利用効率が高いMCSを選択することができるCQIの下限値である。例えば、最も周波数利用効率が高いMCSが「変調方式:64QAM」と「誤り訂正符号の符号化率:11/12」の組であって、このMCSが選択されるためのCQIの下限値が30dBである場合には、閾値を30dBに設定する。
【0044】
ステップS32の比較の結果、全てのCQIが閾値を越えている場合にはステップS33に進む。ステップS33では、DPCスイッチ20は、DPC制御信号をオフ(DPC encoding off)にして"DPC encoding"部13へ出力する。これにより、"DPC encoding"部13は、DPC処理を実行しない。
【0045】
一方、ステップS32の比較の結果、一つでもCQIが閾値以下である場合にはステップS34に進む。ステップS34では、DPCスイッチ20は、DPC制御信号をオン(DPC encoding on)にして"DPC encoding"部13へ出力する。これにより、"DPC encoding"部13は、DPC処理を実行する。
【0046】
なお、本実施例4においても、上記実施例2と同様に、移動局ごとに閾値判定してDPC処理の実行の有無を決めるようにすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、基地局が送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数は、空間多重する移動局の総数未満の複数であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…基地局、13…"DPC encoding"部(DPC実行部)、20…DPCスイッチ(DPC処理制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局が、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて前記複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する際に、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を前記複数の移動局の総数未満に限定し、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPC(Dirty Paper Coding)を行うマルチユーザMIMOシステムにおいて、前記DPCの実行を制御するDPC処理制御装置であり、
前記DPC処理制御装置は、移動局間の電波干渉による通信品質への影響がDPCの有無に左右されないほどに小さい場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、
ことを特徴とするDPC処理制御装置。
【請求項2】
前記DPC処理制御装置は、前記複数の移動局についての到来角度差が全て閾値を越えている場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のDPC処理制御装置。
【請求項3】
前記DPC処理制御装置は、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対して、電波干渉を受ける全ての移動局との到来角度差が閾値を超えている場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のDPC処理制御装置。
【請求項4】
前記DPC処理制御装置は、各移動局の到来方向推定値から得られるステアリングベクターをLQ分解して得られる下三角行列の対角成分以外の成分のうち一つでも成分値が閾値以下である場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のDPC処理制御装置。
【請求項5】
前記DPC処理制御装置は、前記複数の移動局についての受信品質が全て閾値を越えている場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、
ことを特徴とする請求項1に記載のDPC処理制御装置。
【請求項6】
空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて前記複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する際に、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を前記複数の移動局の総数未満に限定し、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPC(Dirty Paper Coding)を行うマルチユーザMIMOシステムの基地局装置において、
請求項1から5のいずれか1項に記載のDPC処理制御装置を備えたことを特徴とする基地局装置。
【請求項7】
基地局が、空間多重する複数の移動局に関する到来方向推定値を用いて前記複数の移動局に各各対応する送信ビームを形成する際に、送信ビームによって移動局間の電波干渉を起こさせないようにする移動局の数を前記複数の移動局の総数未満に限定し、移動局間の電波干渉が起こり得る移動局に対し事前処理として送信信号にDPC(Dirty Paper Coding)を行うマルチユーザMIMOシステムにおいて、前記DPCの実行を制御するDPC処理制御装置を備え、
前記DPC処理制御装置は、移動局間の電波干渉による通信品質への影響がDPCの有無に左右されないほどに小さい場合に、DPC実行部に対してDPC処理を実行しないように指示する、
ことを特徴とするDPC処理制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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