説明

EGFL8アンタゴニストを使用する血管新生阻害方法

本発明は、血管発生を阻害し、関連した疾患を治療するために、EGFL8アンタゴニストを使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
この出願は、出典明示によりその開示の全体をここに援用する2008年1月14日出願の米国仮出願第61/020960号の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に血管新生に関連した症状及び疾患の治療に有用な組成物及び方法に関する。詳細には、本発明は、EGF−様ドメイン8(EGFL8)のアンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0003】
血管新生が様々な疾患の病因に対する重要な寄与要因であることは現在十分に証明されている。これらには、固形腫瘍及び転移、アテローム性動脈硬化、水晶体後線維増殖、血管腫、慢性炎症、増殖性網膜症などの眼内新生血管性疾患、例えば糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症(RVO)、加齢性黄斑変性(AMD)、新血管性緑内障、移植した角膜組織及び他の組織の免疫拒絶反応、関節リウマチ及び乾癬が含まれる。Duda等 J. Clin. Oncology 25(26): 4033-42 (2007);Kesisis等 Curr. Pharm. Des. 13: 2795-809 (2007);Zhang及びMa Prog. Ret. & Eye Res. 26: 1-37 (2007)。
【0004】
腫瘍増殖の場合、血管新生は、正常細胞と比較して増殖優位性及び増殖自律性を腫瘍細胞に獲得せしめる。腫瘍は利用できる毛細管床からの距離のため、数立方ミリメートルのサイズまでしか増殖できない単一の異常細胞として通常始まり、更なる増殖又は転移をせずに長期間「休止中の」ままで存在しうる。ついで、幾つかの腫瘍細胞は血管新生の表現型に切り替わって内皮細胞(ECs)を活性化し、その内皮細胞が増殖して、新規な毛細血管に成熟する。これらの新しく形成された血管は原発性腫瘍の継続した増殖を許容するだけでなく、転移性腫瘍細胞の転移及び再コロニー形成化を許容する。血管新生の切り替わりを制御するメカニズムは十分には理解されていないが、腫瘍質量の新血管新生が多数の血管新生刺激因子及びインヒビターの正味のバランスから生じると考えられている。
【0005】
今日まで、有意な数の分子、主に周辺細胞によって産生される分泌因子が、索状構造へのEC分化、増殖、移動及び合体を調節することが示されている。例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管新生の刺激及び血管透過の誘導に関与する重要な因子として同定されている。Ferrara等, Endocr. Rev. 18: 4-25 (1997)。また、上皮増殖因子様7(EGFL7)と命名されたECM関連タンパク質が内皮細胞によって発現され、血管新生においてある役割を担っていることが示されている。Parker等, Nature 428: 754-58 (2004);Fitch等, Dev. Dynamics 230: 316-24 (2004);Campagnolo等, Am. J Path. 167(1): 275-284 (2005);Schmidt等, Development, 134(16): 2913-23 (2007)、米国特許出願公開第2007/0031437号。Fitch等はまたEgfl8と命名されたEgfl7のパラログを記述しており、その発現はEgfl7のものと同様であるが、EGFL7及びEGFL8は機能に関してオーバーラップしないであろうことを示している。
【0006】
血管新生の分野の多くの進歩にもかかわらず、標的を同定し、既存の抗血管新生療法の効果を補充し又は亢進することができる手段を開発する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、少なくとも部分的には、EGF様ドメイン8(EGFL8)が血管新生に関与しているという発見に基づいている。従って、本発明は血管新生要素を持つ病理過程を阻害するための新規組成物及びその使用を提供する。
【0008】
一態様では、本発明は、血管新生に関連した病理症状を持つ患者において血管新生を減少させ又は阻害する方法であって、EGFL8アンタゴニストを患者に投与することを含む方法を提供する。ある実施態様では、EGFL8アンタゴニストは抗EGFL8抗体である。ある実施態様では、病理症状は腫瘍、例えば癌腫である。ある実施態様では、該方法は化学療法剤を投与することを更に含む。ある実施態様では、病理症状は眼に関連している。ある実施態様では、病理症状は眼内新生血管性疾患である。
【0009】
ある実施態様では、該方法は、第二の抗血管新生剤を患者に投与することを更に含む。ある実施態様では、第二の抗血管新生剤は、EGFL8アンタゴニストの投与前又は投与後に投与される。ある実施態様では、第二の抗血管新生剤はEGFL8アンタゴニストと同時に投与される。ある実施態様では、第二の抗血管新生剤はEGFL7のアンタゴニスト又は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のアンタゴニスト、例えば抗EGFL7抗体又は抗VEGF抗体(例えばベバシズマブ)である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A及び図1Bは、E10.5マウス胚頭蓋脈管構造におけるEgfl7及びEgfl8の発現パターンを示す。
【図2】Egfl8ノックアウトマウスを生産するために用いた方策を示す。
【図3】Egfl7+/−、Egfl8−/−及びEgfl7−/−、Egfl8−/−マウスの網膜中の血管表現型を示す。
【図4】Egfl8ノックアウトマウスにおける角膜微小ポケット血管新生表現型を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
特に別に定義しない限り、ここで使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。例えば、Singleton等, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2版, J. Wiley & Sons (New York, NY 1994);Sambrook等, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (Cold Spring Harbor, NY 1989)を参照のこと。本発明の目的に対して、ある用語は以下に定義する。
【0012】
ここで使用される場合、「EGFL8」及び「EGFL8ポリペプチド」なる用語は、その調製態様又は種にかかわらず、天然から得られたEGFL8ポリペプチドのアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。よって、EGFL8は、天然に生じるヒトEGFL8、マウス(murine)EGFL8、又は任意の他の種由来のEGFL8のアミノ酸配列を有しうる。完全長ヒトEGFL8アミノ酸配列は、
MGSRAELCTLLGGFSFLLLLIPGEGAKGGSLRESQGVCSKQTLVVPLHYNESYSQPVYKPYLTLCAGRRICSTYRTMYRVMWREVRREVQQTHAVCCQGWKKRHPGALTCEAICAKPCLNGGVCVRPDQCECAPGWGGKHCHVDVDECRTSITLCSHHCFNTAGSFTCGCPHDLVLGVDGRTCMEGSPEPPTSASILSVAVREAEKDERALKQEIHELRGRLERLEQWAGQAGAWVRAVLPVPPEELQPEQVAELWGRGDRIESLSDQVLLLEERLGACSCEDNSLGLGVNHR(配列番号:1)
である。
完全長マウスEGFL8アミノ酸配列は、
MGLWAELCISLRGLSFFLVLMTGEGTRGGSFKESLGVCSKQTLLVPLRYNESYSQPVYKPYLTLCAGRRICSTYRTTYRVAWREVRREVPQTHVVCCQGWKKPHPGALTCDAICSKPCLNGGVCTGPDRCECAPGWGGKHCHVDVDECRASLTLCSHGCLNTLGSFLCSCPHPLVLGLDGRTCAGGPPESPTSASILSVAVREADSEEERALRWEVAELRGRLEKLEQWATQAGAWVRAVLPMPPEELRPEQVAELWGRGDRIESLSDQVLLLEERLGACACEDNSLGPSLRG(配列番号:2)
である。
【0013】
かかるEGFL8ポリペプチドは天然から単離することができ、又は組換え及び/又は合成手段によって生産することができる。
【0014】
「単離されたEGFL8」は、EGFL8源から生成されたか又は組換えもしくは合成方法によって調製され精製されたEGFL8を意味する。精製されたEGFL8は他のポリペプチド又はペプチドを実質的に含まない。ここでの「実質的に含まない」は、他の供給源のタンパク質での汚染が約5%未満、好ましくは約2%未満、より好ましくは約1%未満、更により好ましくは0.5%未満、最も好ましくは約0.1%未満であることを意味する。
【0015】
「アンタゴニスト」なる用語は、最も広い意味で用いられ、EGFL8の生物学的活性を部分的に又は完全に阻止(ブロック)し、阻害し、又は中和する任意の分子を含む。適切なアンタゴニスト分子は、特にアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然EGFL8ポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、EGFL8レセプターの可溶型断片、ペプチド、アンチセンスRNA、リボザイムRNAi、小有機分子等々を含む。EGFL8ポリペプチドのアンタゴニストを同定する方法は、EGFL8ポリペプチドと候補アンタゴニスト分子を接触させ、通常はEGFL8ポリペプチドに関連している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含みうる。
【0016】
ここでの目的のための「活性な」又は「活性」とは、EGFL8の生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するEGFL8の形態を意味し、その中で、「生物学的」活性とは、EGFL8が保持する抗原性エピトープに対する抗体の生産を誘導する能力以外の、EGFL8によって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を指す。EGFL8の主要な生物学的活性は、血管形成を促進し内皮細胞接着及び遊走を支援するその能力である。
【0017】
「EGFL8レセプター」は、EGFL8に結合し、その生物学的活性を媒介する分子である。
「抗体」という用語は最も広義に使用され、特にヒト、非ヒト(例えばマウス)及びヒト化モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片も含む。
【0018】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0019】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を持ち、抗原になお架橋できるF(ab’)断片を生じる。
【0020】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。
【0021】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab’に対するここでの命名である。F(ab’)抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生産された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた知られている。
【0022】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンには5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり、更にこれらの幾つかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分けられうる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置はよく知られている。
【0023】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般にはその抗原結合又は可変ドメインを含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片を含む。
【0024】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、少量で存在しうる可能な天然に生じる変異を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む一般的な(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0025】
ここでのモノクローナル抗体は具体的に、特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するか又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖が、他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致するか又は類似するものである「キメラ」抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を表す限り、そのような抗体の断片を含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0026】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含みうる。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRの全て又は実質的に全てである少なくとも一又は典型的には二の可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0027】
ここで使用される場合、「治療」は有益な又は所望される臨床結果を得るためのアプローチである。この発明の目的では、有益な又は所望される臨床結果は、限定しないが、検出できても検出できなくても、症状の軽減、疾患の程度の減弱、疾患の安定した(つまり悪化しない)状態、疾患進行の遅延化又は速度低減、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解(部分的であろうと全体的であろうと)を含む。「治療」は、治療を受けない場合の予想される生存期間に比較して生存を長くすることをまた意味しうる。「治療」は、疾患の病理の進展防止又は変更を意図して実施される介入である。従って、「治療」は治療的処置及び予防的又は保護的手段の両方を指す。治療が必要な者は、既に疾患に罹患している者並びに疾患が防止されるべき者を含む。すなわち、治療は、癌治療における腫瘍細胞の病理のような細胞変性又は損傷の病理を直接防止し、遅延させ又はその他減少させうるか、又は細胞を他の治療剤による治療に対してより敏感にし得る。
【0028】
「慢性」投与とは、急性様式とは異なり連続的な様式での薬剤を投与し、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持することを意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ周期的な性質の処置である。
【0029】
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性にかかわらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、並びに全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。
【0030】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌及び様々なタイプの頭頸部癌、並びにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症に関連した異常な血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連したもの)、及びメイグス症候群が含まれる。
【0031】
「化学療法剤」は癌の治療に有用な化学化合物である。この定義にまた含まれるものは、腫瘍に対するホルモン作用を調節し又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMs)である。
【0032】
「眼内新生血管性疾患」は眼新血管新生によって特徴付けられる疾患である。眼内新生血管性疾患の例は、限定しないが、増殖網膜症、例えば増殖糖尿病網膜症、脈絡膜新生血管(CNV)、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、分岐網膜中心静脈閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、高血圧性網膜症等々を含む。
【0033】
疾患の「病理状態」には、患者の健康を損なうあらゆる現象が含まれる。癌の場合には、これは、限定されるものではないが、異常な又は制御不能な細胞増殖、転移、隣接細胞の正常機能の妨害、サイトカイン又は他の分泌産物の異常なレベルでの放出、炎症又は免疫反応の抑制又は悪化等々を含む。
【0034】
一又は複数の更なる治療剤「との併用での」投与は同時の(同時発生的)投与及び任意の順序の連続投与を含む。
【0035】
ここで用いられる「担体」は、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤を含む。生理学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容可能な担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
【0036】
「小分子」は約500ダルトン以下の分子量を有するものとここでは定義される。
【0037】
発明を実施するための方法
EGFL8
ヒトEgfl8遺伝子は、進化的に保存されている〜32kDの分泌タンパク質をコードする。ヒト(Homo sapiens)アミン酸配列(配列番号:1)はマウスのもの(Mus musculus;配列番号:2)と約80%の相同性を共有する。EGFL8ポリペプチドの受託番号は、NM_030652(Homo sapiens)、NM_152922(Mus musculus)である。
【0038】
EGFL8活性のアンタゴニストの調製と同定
アンタゴニスト薬剤候補のスクリーニングアッセイはEGFL8ポリペプチドに結合し又はそれと複合化するか、又はEGFL8の他の細胞性タンパク質との相互作用を妨害等する化合物を同定するために設計される。
【0039】
小分子はEGFL8アンタゴニストとして作用する能力を有している場合があり、よって治療的に有用である場合がある。かかる小分子は、天然に生じる小分子、合成有機又は無機化合物及びペプチドを含みうる。しかし、本発明における小分子はこれらの形態に限られない。小分子の広範なライブラリーが商業的に利用可能で、所望の活性についてこれらの分子をスクリーニングするための広範囲のアッセイが当該分野でよく知られている。
【0040】
ある実施態様では、EGFL8の生物学的活性の一又は複数を阻害するその能力によって、小分子EGFL8アンタゴニストが同定される。而して、候補化合物がEGFL8と接触させられる。ついで、EGFL8の生物学的活性が評価される。一実施態様では、内皮細胞接着及び遊走を支持するEGFL8の能力である。EGFL8の生物学的活性が阻害される化合物がアンタゴニストとして同定される。
EGFL8アンタゴニストとして同定される化合物を本発明の方法で使用することができる。例えば、EGFL8アンタゴニストを、癌を治療するために使用することができる。
【0041】
癌の場合、様々なよく知られた動物モデルを、腫瘍の発生及び病因におけるEGFL8の役割を更に理解するため、また天然EGFL8ポリペプチドの抗体及び他のアンタゴニスト、例えば小分子アンタゴニストを含む候補治療剤の効果を試験するために使用することができる。かかるモデルのインビボ特性はヒト患者における応答を特に予測できるようにする。腫瘍及び癌(例えば、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌など)の動物モデルには、非組換え動物及び組換え(トランスジェニック)動物の両方を含む。非組換え動物モデルには、例えばマウスなどの齧歯類のモデルを含む。このようなモデルは、腫瘍細胞を、標準の技術、例えば皮下注入、尾部静脈注入、脾臓移植、腹膜内移植、腎臓莢膜下への移植又はオルソピン(orthopin)移植、例えば結腸組織へ移植した大腸癌細胞を用いて同系のマウスに導入することによって作製することができる。例えば1997年9月18日公開のPCT公開公報WO97/33551を参照。おそらく、腫瘍学的な研究において最も頻繁に用いられた動物種は、免疫不全マウス、特にヌードマウスである。胸腺低/形成不全を持つヌードマウスがヒト腫瘍異種移植片のための宿主として成功裏に作用することができたという知見により、この目的のために広範囲に使用するに至った。常染色体劣性のnu遺伝子をヌードマウスの非常に多くの数の異なるコンジェニック系統、例えば、ASW、A/He、AKR、BALB/c、B10.LP、C17、C3H、C57BL、C57、CBA、DBA、DDD、I/st、NC、NFR、NFS、NFS/N、NZB、NZC、NZW、P、RIII及びSJLに導入した。更に、遺伝的な免疫不全を持つヌードマウス以外の広範な他の動物が生育され、腫瘍異種移植のレシピエントとして用いられた。更なる詳細については、The Nude Mouse in Oncology Research, E. Boven 及び B. Winograd 編(CRC Press, Inc., 1991)を参照。
【0042】
そのような動物に導入される細胞は、上に列挙された腫瘍細胞系の何れか、例えばB104−1−1細胞系(neuプロトオンコジーンが形質移入された安定NIH−3T3細胞系);ras形質移入NIH−3T3細胞;Caco−2(ATCC(登録商標)HTB−37);又は中程度に分化したグレードIIのヒト大腸癌細胞系であるHT−29(ATCC(登録商標)HTB−38)等の既知の腫瘍/癌細胞系;あるいは腫瘍及び癌から採取することができる。腫瘍又は癌細胞の試料は、液体窒素中での冷凍及び保存を用いる標準的条件を用いて、手術を受けている患者から採取することができる。Karmali等, Br. J. Cancer 48:689-696 (1983)。
【0043】
腫瘍細胞は、様々な手順によりヌードマウス又はEGFL8ノックアウトマウスなどの動物に導入することができる。マウスの皮下(s.c.)スペースは腫瘍移植に非常に適している。腫瘍は、固形ブロック、外套針(trochar)を用いた針生検、又は細胞懸濁液として皮下移植可能である。固形ブロック又は外套針移植の場合、適切な大きさの腫瘍組織断片を皮下スペースに導入する。細胞懸濁液は、原発腫瘍又は適切な腫瘍細胞系から新鮮なものを準備し、皮下注射する。腫瘍細胞はまた皮下移植体として注入することもできる。この位置では、接種材料を皮下結合組織の下部と皮下組織の間に配置する。
【0044】
乳癌の動物モデルは、本質的にDrebin等 Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 83:9129-9133(1986)に記載されているように、例えば、(始めにneuオンコジーンを単離した)ラットの神経芽腫細胞、又はneu形質変換NIH−3T3細胞をヌードマウスに移植することにより生産することができる。
【0045】
同様に、結腸癌の動物モデルは、動物、例えばヌードマウスの結腸癌細胞の継代を行って、これら動物に腫瘍を出現させることにより生産できる。ヌードマウスへのヒト結腸癌の同所性移植は、例えばWang等, Cancer Research, 54:4726-4728 (1994)及びToo等, Cancer Research, 55:681-684 (1995)に記載されている。このモデルは、AntiCancer社(San Diego, California)から市販されている所謂「METAMOUSE(登録商標)」をベースにしている。
【0046】
動物に発生する腫瘍は、除去しインビトロで培養できる。ついで、インビトロ培地から回収した細胞を動物に継代することができる。このような腫瘍は更なる実験又は薬物スクリーニングの標的となり得る。あるいは、継代から得られた腫瘍を単離し、継代前の細胞由来のRNAと、一又は複数の継代を行った後で単離した細胞由来のRNAとを、対象とする遺伝子の差次的発現について分析することができる。このような継代技術を任意の既知の腫瘍又は癌細胞系で実施することができる。
【0047】
例えば、MethA、CMS4、CMS5、CMS21、及びWEHI−164はBALB/c雌マウスの化学的に誘発した繊維肉腫であり(DeLeo等, J. Exp. Med., 146:720 (1977))、様々な薬剤の抗腫瘍活性の研究に対して高度に制御可能なモデルシステムを提供する。Palladino等, J. Immunol., 138:4023-4032 (1987)。簡単に述べると、腫瘍細胞を細胞培地中においてインビトロで増殖させる。動物への注入に先立ち、細胞系を洗浄し、約10×10〜10×10の細胞密度で緩衝液に懸濁させる。次に動物に10〜100μlの細胞懸濁液を皮下感染させ、1〜3週間かけて腫瘍を発生させる。
【0048】
加えて、最も深く研究されている実験的腫瘍の一つであるマウスのルイス肺癌を調査用腫瘍モデルとして使用することができる。この腫瘍モデルの有効性は、肺の小細胞癌(SCCL)と診断されたヒト患者の治療における薬効と相関している。この腫瘍は、罹患したマウス由来の腫瘍断片又は培養に維持された細胞を注射することにより正常マウスに導入することができる。Zupi等, Br. J. Cancer, 41: suppl. 4, 30 (1980)。単一の細胞を注入しただけでも腫瘍が起こり得ること、また感染した腫瘍細胞は非常に高い割合で生存することが証明されている。この腫瘍モデルに関する更なる情報は、Zacharski, Haemostasis, 16:300-320 (1986)を参照のこと。
【0049】
腫瘍を移植した動物モデルにおける試験化合物の有効性を評価する一つの方法は、治療の前後で腫瘍の大きさを測定することである。伝統的には、移植された腫瘍のサイズは、2次元又は3次元でノギスを用いて測定される。2次元に限定された測定は腫瘍の大きさを正確に反映しないので、通常は数式を用いて対応する体積に変換する。しかしながら、腫瘍サイズの測定は非常に不正確である。候補薬剤の治療的効果は、治療による成長の鈍化及び特定の成長遅延としてより良好に説明されうる。腫瘍成長における別の重要な変数は、腫瘍体積の倍加時間である。腫瘍成長の計算及び記述のためのコンピュータプログラムも、Rygaard及びSpang-Thomsen, Proc. 6th Int. Workshop on Immune-Deficient Animals, Wu及びShengeds. (Basel, 1989), p. 301に報告されているプログラム等が入手可能である。しかしながら、治療後のネクローシス及び炎症反応は、実際には、少なくとも初期の腫瘍の増大に繋がる場合があることに注意されたい。従って、形態測定法とフローサイトメトリー分析の組合せにより、これらの変化を注意深くモニターする必要がある。
【0050】
ここに同定されるEGFL8に特異的に結合する抗体及び他の候補薬の有効性はまた自然発生の動物腫瘍の治療において調べることができる。このような研究のための適切な標的は、ネコ口腔扁平上皮癌(SCC)である。ネコ口腔SCCは高度に浸潤性の悪性腫瘍で、ネコに最も普通に見られる口腔悪性腫瘍であり、この種に報告される口腔腫瘍の60%以上を占める。それは、離れた部位には殆ど転移しないが、この転移の低い発生率は単にこの腫瘍を持つネコの短い生存期間を反映しているにすぎない。これらの腫瘍は、主にネコの口腔の解剖学的形状のため、通常手術できない。現在では、この腫瘍の有効な治療法は存在しない。研究に入る前に、各々のネコに完全な臨床検査、生体組織検査を施し、コンピュータ断層撮影(CT)によりスキャンした。舌下口腔扁平上皮細胞腫瘍を持つと診断されたネコは研究から排除した。舌はこの腫瘍のために麻痺し始め、治療によりこの腫瘍が消滅した後でも、動物は自分で餌を取ることができないであろう。各々のネコを長期に渡って繰り返し治療する。治療期間中、毎日及び引き続き行われる再チェックの時点で腫瘍の写真を撮影した。治療の後、各ネコに再度CTスキャンを施した。CTスキャン及び胸部レントゲンは、その後8週間ごとに評価した。データは、コントロール群と比較した生存数、反応性及び毒性における相違について評価した。ポジティブ反応は、好ましくは生活の質の向上又は生存期間の延長を伴う腫瘍の縮小の証拠を必要としうる。
【0051】
加えて、他の自発的動物腫瘍、例えばイヌ、ネコ、及びヒヒの線維肉腫、腺癌、リンパ腫、軟骨腫、又は平滑筋肉腫も試験できる。これらのうち、イヌ及びネコの乳腺癌は、その外観及び挙動がヒトのものに極めて類似しているので、好ましいモデルである。しかし、このモデルの使用は動物におけるこのタイプの腫瘍の希な発生率によって制限される。
【0052】
当該分野において知られている他のインビトロ及びインビボでの循環器系、内皮、及び血管新生試験がまたここで適切である。
【0053】
抗体結合研究
循環器系、内皮、及び血管新生アッセイにおいて使用される内皮細胞又は他の細胞に対するEGFL8の効果を阻害する抗EGFL8抗体の能力が試験される。例示的な抗体は、その調製がここに記載されているポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びヘテロコンジュゲート抗体を含む。
【0054】
抗体結合の研究は、競合結合アッセイ、直接的及び間接的サンドイッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイのような任意の既知のアッセイ法で実施されうる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques (CRC Press, Inc., 1987), pp.147-158。
【0055】
競合的結合アッセイは、限られた量の抗体との結合について標識標準物が試験分析物と競合する能力による。試験試料中の標的タンパク質の量は、抗体に結合し始める標準物の量に逆比例する。結合し始める標準物の量の測定を促進するために、抗体は好ましくは競合の前又は後に不溶化し、抗体に結合した標準物及び分析物が未結合のまま残っている標準物及び分析物から簡便に分離できるようにする。
【0056】
サンドイッチアッセイは二つの抗体の使用を含み、各々が検出すべきタンパク質の異なる免疫原部分、又はエピトープに結合可能である。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料分析物は固体支持体上に固定化された第一の抗体に結合し、その後第二の抗体が分析物に結合し、よって不溶性の3成分複合体が形成される。例えば米国特許第4376110号参照。第二の抗体はそれ自体が検出可能部分で標識され(直接サンドイッチアッセイ)、あるいは検出可能部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されうる(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの一形態はELISAアッセイであり、その場合、検出可能部分は酵素である。
【0057】
免疫組織学の場合、組織試料は新鮮でも凍結したものでもよく、あるいはパラフィンに包埋して、例えばホルマリン等の保存料で固定してもよい。
循環器、内皮、及び血管新生疾患の治療に有用な組成物には、限定するものではないが、標的遺伝子産物の発現及び/又は活性を阻害する抗体、小有機及び無機分子、ペプチド、リンペプチド、アンチセンス、siRNA及びリボザイム分子、トリプルへリックス分子等が含まれる。
【0058】
潜在的なアンタゴニストのより特定の例は、EGFL8に結合するオリゴヌクレオチド、特に、限られないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、レセプターを認識するが効果を付与せず、それによりEGFL8の作用を競合的に阻害するEGFL8の変異型であってもよい。
【0059】
他の潜在的なEGFL8アンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されるアンチセンスRNA又はDNAコンストラクトであり、例えば、アンチセンスRNA又はDNA分子は、標的mRNAにハイブリッド形成してタンパク質翻訳を妨害することによりmRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。アンチセンス技術は、トリプルへリックス形成又はアンチセンスDNA又はRNAを通して遺伝子発現を制御するのに使用でき、それらの方法は共にポリヌクレオチドのDNA又はRNAへの結合に基づく。例えば、ここでの成熟EGFL8ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5’コード化部分は、約10から40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの設計に使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に関与する遺伝子の領域に相補的であるように設計され(トリプルへリックス−Lee等, Nucl, Acids Res., 6: 3073 (1979);Cooney等, Science, 241: 456 (1988);Dervan等, Science, 251: 1360 (1991)を参照)、それによりEGFL8の転写と生産を防止する。ここで述べる、RNAの一部と「相補的な」配列とは、RNAとハイブリダイズ可能なように十分な相補性を持ち、安定な二重鎖を形成する配列を意味し;二重鎖アンチセンス核酸の場合、二重鎖DNAの一本鎖がよって試験され、三重鎖へリックス形成がアッセイされうる。ハイブリダイズする能力は相補性の度合いとアンチセンス核酸の長さの双方に依存するであろう。一般に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長い程、より多くのRNAとの塩基ミスマッチを包含することとなり、さらに安定二重鎖(又は場合によっては三重鎖)を形成する。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融解温度を決定するため、標準的な手法の使用により、ミスマッチの許容できる度合いを確認することができる。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリッド形成してmRNA分子のEGFL8への翻訳を阻止する(アンチセンス−Okano, Neurochem., 56: 560 (1991);Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression (CRC Press: Boca Raton, FL, 1988))。
【0060】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNA又はそのキメラ混合物又は誘導体又は修飾型であり得、一本鎖又は二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格において、例えば、分子、ハイブリダイゼーションなどの安定性を改善するために修飾されうる。オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボにおいて、宿主細胞レセプターを標的化するための)、又は細胞膜(例えば、Letsinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553-6556 (1989);Lemaitre等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:648-652 (1987);1988年12月15日公開のPCT公報WO88/09810を参照のこと)又は血管−脳関門(例えば、1988年4月25日公開のPCT公報WO89/10134を参照のこと)を越えた輸送を促進する薬剤、ハイブリダイゼーショントリガー切断剤(例えば、Krol等, BioTechniques 6:958-976 (1988)を参照のこと)又はインターカレーティング剤(Zon, Pharm. Res. 5:539-549 (1988))などの付加的な他の群を含んでもよい。このために、オリゴヌクレオチドは他の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーショントリガー架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーショントリガー切断剤などと結合されうる。
【0061】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定はしないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンを含む群から選択される少なくとも一つの修飾された塩基部分を含んでいてもよい。
【0062】
また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定はしないが、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、及びヘキソースを含む群から選択される少なくとも一の修飾された糖部分を含みうる。
更に他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミドチオエート、ホスホラミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル及びホルムアセタール又はその類似体からなる群から選択される少なくとも一の修飾されたリン酸骨格を含む。
【0063】
更に他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはα-アノマーオリゴヌクレオチドである。α-アノマーオリゴヌクレオチドは、相補的なRNAと特異的な二重鎖ハイブリッドを形成するが、そこでは、通常のユニットとは異なり、鎖が互いに平行に並ぶ(Gautier等, Nucl. Acids. Res. 15:6625-6641(1987))。オリゴヌクレオチドは2’−O−メチルリボヌクレオチド(Inoue等, Nucl. Acids Res. 15:6131-6148(1987))、又はキメラRNA−DNAアナログである(Inoue等, FEBS Lett. 215:327-330(1987))。
【0064】
ある実施態様では、アンタゴニストは阻害性二本鎖RNA、例えばsiRNA、shRNA等である。
本発明のオリゴヌクレオチドは当該分野において既知の標準的な方法、例えば、自動DNA合成機(Biosearch, Applied Biosystemsなどから購入できるような)の使用により合成することができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Stein等の方法(Nucl. Acids Res. 16:3209(1988))によって合成され得、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、調整孔ガラスポリマー支持体の使用によって調製することができる(Sarin 等, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85:7448-7451(1988))等である。
【0065】
上述のオリゴヌクレオチドは、細胞に輸送され、アンチセンスRNA又はDNAをインビボで発現させて、EGFL8の生産を阻害することもできる。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の約−10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0066】
潜在的アンタゴニストは、EGFL8に結合し、それによりその活性を阻止する小分子を更に含む。小分子の例は、限定しないが、小ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成の非ペプチジル有機又は無機化合物を含む。
【0067】
更なる潜在的アンタゴニストはリボザイムであるが、これはRNAの特異的な切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリッド形成と、続くヌクレオチド鎖切断的切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)及びPCT公報WO97/33551号(1997年9月18日公開)を参照のこと。
【0068】
特異的な認識部位でmRNAを切断するリボザイムを、標的遺伝子mRNAを破壊するために使用することができるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的な塩基対を形成する隣接領域によって決定される位置でmRNAを切断する。唯一の条件は、標的mRNAが以下の2塩基配列:5’−UG−3’を持つことである。ハンマーヘッドリボザイムの構築及び生産は当該分野においてよく知られており、その全体を出典明示によりここに援用するMyers, Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, New York (1995)(特に833ページの図4を参照のこと)、及びHaseloff及びGerlach, Nature, 334:585-591 (1988)により十分に記載されている。
【0069】
好ましくは、リボザイムは、切断認識部位が標的遺伝子mRNAの5’末端近くに位置するように、すなわち、効率を増大し、非機能的なmRNA転写の細胞内蓄積を最小にするために操作される。
【0070】
また、本発明のリボザイムは、テトラヒメナ・サーモフィラ(IVS、又はL-19 IVSRNAとして知られる)において天然に生じ、Thomas Cech及び共同研究者(Zaug等, Science, 224:574-578 (1984);Zaug及びCech, Science, 231:470-475(1986);Zaug等, Nature, 324:429-433(1986);University Patents Inc.による、公開された国際特許出願番号WO88/04300;Been及びCech, Cell, 47:207-216(1986))により広く記述されてきたRNAエンドリボヌクレアーゼ(以下「Cech-タイプリボザイム」)も含む。Cech-タイプリボザイムは、標的RNA配列とハイブリダイズした後、標的RNAの切断が生じる8塩基対の活性部位を持つ。本発明は標的遺伝子中に存在する8塩基対の活性配列を標的とするCech-タイプリボザイムを包含する。
【0071】
アンチセンスアプローチの場合のように、リボザイムは、修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば、改善された安定、標的化などのために)で構成され得、インビボで標的遺伝子を発現する細胞へ送達されなければならない。送達の好ましい方法は、形質移入された細胞が、内在性の標的遺伝子メッセージを破壊し、翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを生産するように、強力な構成的pol III又はpol IIプロモーターのコントロール下において、リボザイムを「コードする」DNAコンストラクトを用いることを含む。アンチセンス分子とは異なり、リボザイムは触媒的であるため、低い細胞内濃度が効率化のために要求される。
【0072】
転写阻害に用いられるトリプルヘリックス形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、一般に二重鎖の一方の鎖上にかなりのプリン又はピリミジンの伸展を必要とするフーグスティーン塩基対則を介するトリプルヘリックス形成を促進するように設計される。更なる詳細は、例えば、上掲のPCT公報WO97/33551号を参照のこと。
【0073】
EGFL8アンタゴニストの他の用途は、腫瘍を増殖させ及び/又は転移させる腫瘍の血管新生を含む腫瘍血管新生の予防にある。このプロセスは新しい血管の成長に依存する。腫瘍血管新生を含む腫瘍及び関連症状の例には、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌及び様々なタイプの頭頸部癌、並びにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症に関連した異常な血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連したもの)、及びメイグス症候群が含まれる。
【0074】
EGFL8アンタゴニストはまた限定しないが、増殖網膜症、例えば増殖糖尿病網膜症、脈絡膜新生血管(CNV)、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病的近視、フォンヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、分岐網膜中心静脈閉塞症(BRVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、結膜下出血、高血圧性網膜症等々を含む眼内新生血管性疾患を治療するのに有用でありうる。
【0075】
関節リウマチは更なる適応症である。血管増殖及び脈管構造を通した炎症細胞の標的化は関節炎のリウマチ及び血清陰性形態の病因における重要な成分である。
【0076】
上記に鑑みると、内皮細胞機能及び遊走を変化させ又は影響することが知られているEGFL8、ここに記載のそのアンタゴニストは、上に記載の疾患の多く又は全ての原因及び病原において重要な役割を担っている可能性があり、よってこれらのプロセスを阻害するか又はこれらの疾患における血管関連薬標的化のための治療標的となり得る。
【0077】
投与プロトコル、スケジュール、用量、及び製剤
EGFL8アンタゴニストは上に記載した様々な疾患及び疾病のための予防及び治療剤として薬学的に有用である。
【0078】
EGFL8アンタゴニストの治療用組成物は、適切な純度を持つ所望の分子を、任意成分の生理学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤を混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, Osol, A.編(1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に調製されて保存される。許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0079】
このような担体の更なる例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、バッファー物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、及びポリエチレングリコールを含む。アンタゴニストの局所又はゲルベースの形態用の担体は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びモクロウアルコールを含む。あらゆる投与に対して、一般的なデポー形態が好適に用いられる。このような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、及び徐放性製剤を含む。EGFL8アンタゴニストは典型的には約0.1mg/mlから100mg/mlの濃度でそのようなビヒクルで製剤化される。
【0080】
他の製剤は、成形品中にEGFL8アンタゴニストを導入することを含む。そのような製品は内皮細胞増殖及び血管形成の調節に使用することができる。加えて、腫瘍浸潤及び転移をこれらの製品で調節できる。
【0081】
インビボ投与に用いられるEGFL8アンタゴニストは無菌でなければならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。凍結乾燥形態にある場合、EGFL8アンタゴニストは典型的には使用時に適当な希釈剤を用いて再構成するために他の成分と組み合わせて製剤化される。EGFL8アンタゴニストの液体製剤の例は、無菌の、透明な、無色の生鮮溶液で、皮下注射用の1回投与バイアルに充填されている。繰り返し使用に適切な保存料含有薬学的組成物は、例えばポリペプチドの適応及びタイプに主として依存し、
EGFL8アンタゴニスト;
溶液中のポリペプチド又は他の分子の安定性を最大にする範囲、好ましくは約4−8にpHを維持可能なバッファー;
主として、撹拌誘発性凝集に対しポリペプチド又は分子を安定化させる洗浄剤/界面活性剤;
等張剤;
フェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物の群から選択される保存料;及び

を含みうる。
【0082】
用いられる洗浄剤が非イオン性であるならば、それは、例えばポリソルベート(例えば、POLYSORBATETM(TWEENTM)20、80等)、又はポロキサマー(例えば、POLOXAMERTM188等)でありうる。非イオン性界面活性剤を使用することにより、タンパク質の変性を引き起こすことなく、剪断表面応力に製剤をさらすことができる。更に、このような界面活性剤含有製剤は、エアゾール装置、例えば肺投与、及びニードレスジェット注入ガンに使用されるものにおいて、使用され得る(例えば、EP257956を参照)。
【0083】
等張剤は、EGFL8アンタゴニストの液体組成物の等張性を確保するために存在し得、多価糖アルコール、好ましくは3価以上の高級糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールが含まれる。これらの糖アルコールは、単独で又は組合せて使用することもできる。あるいは、塩化ナトリウム又は他の適切な無機塩を、溶液を等張にするために使用してもよい。
【0084】
バッファーは、所望されるpHに応じて、アセテート、シトレート、スクシネート又はホスフェートバッファーでありうる。本発明の液体製剤の一タイプのpHは、約4から8、好ましくはほぼ生理学的pHの範囲に緩衝される。
保存料のフェノール、ベンジルアルコール及びベンゼトニウムハロゲン化物、例えば塩化物は、使用可能な既知の抗菌剤である。
【0085】
治療用ポリペプチド組成物は、一般的に無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを具備するバイアルに配される。製剤は、好ましくは静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、又は筋肉内(i.m.)の繰り返し注射として、あるいは鼻内又は肺内送達に適したエアロゾル製剤として投与される(肺内送達については、例えばEP257956参照)。
【0086】
治療用ポリペプチドは持続放出調製物の形態で投与することもできる。持続放出調製物の好適な例は、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、当該マトリクスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langer等, J. Biomed. Mater. Res., 15: 167-277 (1981)及びLanger, Chem. Tech., 12: 98-105 (1982)に記載されたようなポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号、EP58481)、L-グルタミン酸及びガンマエチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidman等, Biopolymers, 22: 547-556 (1983))、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langer等, 上掲)、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133988)を含む。
【0087】
エチレン−酢酸ビニルや乳酸−グリコール酸等のポリマーは100日以上分子を放出できるが、ある種のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化タンパク質は、長時間体内に残存すると、37℃で水分に曝されることで、変性又は凝集し、生理活性の喪失や免疫原生の変化の虞がある。関与した機構に応じてタンパク質の安定化に対して合理的な処置が案出できる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合であることが発見されたら、スルフヒドリル残基を変更し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定のポリマーマトリクス組成物を開発することで安定化を達成することができる。
【0088】
持続放出EGFL8アンタゴニスト組成物は、リポソーム的に包括されたアンタゴニストをまた含む。このようなリポソームは、それ自体知られた方法、例えば、DE3218121、Epstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692 (1985)、Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4034 (1980)、EP52322、EP36676、EP88046、EP143949、EP142641、日本国特許出願83−118008、米国特許第4485045号及び第4544545号、及びEP102324等による方法によって調製される。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル%以上コレステロールであり、選択される割合がポリペプチドによる最適な治療法に対して調整される微小(約200−800オングストローム)な単ラメラ状のものである。
【0089】
EGFL8アンタゴニストの治療的有効量は、当然のことながら、治療(予防を含む)すべき病理症状、投与方法、治療に用いられる化合物のタイプ、関与する任意の同時治療法、患者の年齢、体重、一般的な医学的状態、病歴などの要因によって変化し、その決定は担当医師の技量の範囲内で良好になされる。従って、治療専門家は、最大の治療効果が得られるように、投与量を滴定し投与経路を修正する必要がある。
【0090】
上記の指針では、有効投与量は、一般的に約0.001から約1.0mg/kg、より好ましくは約0.01−1.0mg/kg、最も好ましくは約0.01−0.1mg/kgの範囲内である。
【0091】
EGFL8アンタゴニスト投与の経路は、既知の方法に従い、例えば静脈内、筋肉内、脳内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、眼内、関節内、滑膜内、包膜内、経口、局所又は吸入経路による注射又は注入、あるいは以下に記載する持続放出系による。またEGFL8アンタゴニストは腫瘍内、腫瘍周辺、病巣内、又は病巣周辺経路で好適に投与され、局所的並びに全身に治療効果を発揮する。腹腔内経路は、例えば卵巣腫瘍の治療に特に有用であることが予想される。
【0092】
ペプチド又は小分子がアンタゴニストとして使用される場合、好ましくは、液体又は固体の形態で経口的又は非経口的に哺乳動物に投与される。
【0093】
塩を形成し下記において有用な分子の薬理学的に許容可能な塩の例には、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニウム塩、有機塩基塩(例えばピリジン塩、トリエチルアミン塩)、無機酸塩(例えば塩酸、硫酸塩、硝酸塩)、及び有機酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、p−トルエンスルホン酸塩)が含まれる。
【0094】
組合せ治療
当該疾患の防止又は治療におけるEGFL8アンタゴニストの効力は、同じ組成物又は別個の組成物において、その目的に有効な他の薬剤と組合せるか、又は活性剤を連続して投与することにより改善されうる。
【0095】
例えば、癌や眼の疾患のような血管新生関連症状を治療するために使用されるEGFL8アンタゴニストを細胞傷害剤、化学療法剤、又は抗血管新生剤と組み合わせうる。他の抗血管新生剤との併用でEGFL8アンタゴニストを使用することが望ましい。ある実施態様では、EGFL8アンタゴニストはVEGFアンタゴニスト、例えば抗体、例えばベバシズマブとの併用で使用される。ある実施態様では、EGFL8アンタゴニストがEGFL7アンタゴニストと併用で使用される。
【0096】
EGFL8アンタゴニスと組合せて投与される治療剤の有効量は、医師又は獣医の裁量による。投与量とその調節は、治療される病状に最大の治療効果が達成されるようになされる。例えば、高血圧の治療の場合、これらの量は、利尿剤又はジギタリスの使用、及び血圧上昇又は血圧低下、腎機能低下等の状態を理想的には考慮する。用量は、治療される特定の患者及び使用される治療剤の種類等の因子にまた依存する。典型的には、使用される量は、与えられた治療剤がEGFL8なしに投与される場合と同じ用量である。
【0097】
EGFL8抗体
本発明に係る最も有望な薬剤候補の幾つかは、EGFL8の生産を阻害し、及び/又はEGFL8の活性を減少させうる抗体及び抗体断片である。
【0098】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫剤、所望されるならばアジュバントを、一又は複数回注射することで産生させることができる。典型的には、免疫剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫剤は、EGFL8ポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫剤を、免疫化される哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質にコンジュゲートさせるのが有用である場合がある。このような免疫原タンパク質の例には、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコレート)が含まれる。免疫化プロトコルは、過度の実験をしないで当業者により選択されうる。
【0099】
モノクローナル抗体
抗EGFL8抗体は、あるいはモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用して調製されうる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫剤により免疫化することで、免疫剤に特異的に結合する抗体を生産るか又は生産可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0100】
免疫剤は、典型的には対象とするEGFL8ポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれる場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。ついで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (New York: Academic Press, 1986), pp. 59-103。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスのミエローマ株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は増殖を阻害する一又は複数の物質を含む適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠損細胞の増殖を阻止する。
【0101】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生産細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウスミエローマ株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマ及びマウス-ヒト異種ミエローマ株化細胞も開示されている。Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications (Marcel Dekker, Inc.: New York, 1987) pp. 51-63。
【0102】
ついでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、EGFL8ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在について検定することができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード解析法によって決定することができる。
【0103】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法で増殖させることができる。上掲のGoding。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳動物中で腹水としてインビボで成長させることもできる。
【0104】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の一般的な免疫グロブリン精製法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製されうる。
【0105】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4816567号に記載された方法により作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、一般的な手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これがついで宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生産等しないミエローマ細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(上掲のMorrison等, 米国特許第4816567号)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
【0106】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
【0107】
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。その断片、特にFab断片を生産するための抗体の消化は、当該分野で知られている常套的技術を使用して達成することができる。
【0108】
ヒト及びヒト化抗体
抗EGFL8抗体は、更にヒト化抗体又はヒト抗体を含みうる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントのCDR由来の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは殆ど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは殆ど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。好ましくは、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)。
【0109】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそこに導入された一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(Winter)及び共同研究者(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより本質的に実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基と場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0110】
ヒト化抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む当該分野で知られている様々な技術を用いてまた産生することができる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。Cole等及びBoerner等の技術がまたヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる。Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウス中に導入することにより産生することができる。暴露時に、遺伝子再構成、構築、及び抗体レパートリーを含む、あらゆる点でヒトに見られるものと密接に類似しているヒト抗体の産生が観察される。このアプローチ法は、例えば米国特許第5545807号;第5545806号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;及び第5661016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368: 856-859 (1994);Morrison等, Nature 368: 812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)に記載されている。
【0111】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なった抗原に対して結合特異性を有しているモノクローナルの、好ましくはヒト又はヒト化抗体である。本件では、結合特異性の一つはEGFL8ポリペプチドに対するものであり、他のものは任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対するものである。
【0112】
二重特異性抗体を生産する方法は当該分野において知られている。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の発現に基づく。Millstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開93/08829、及びTraunecker等, EMBO,10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0113】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくはヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコード化するDNAと、所望ならば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体の生産の更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照のこと。
【0114】
ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療のために提案されている。国際公開第91/00360号;国際公開第92/200373号;欧州特許出願公開第03089号。該抗体は、架橋剤が関与するものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されたものが含まれる。
【0115】
免疫複合体
本発明は、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞傷害剤、あるいは放射性同位体(つまり、放射性コンジュゲート)とコンジュゲートした抗体を含む免疫複合体にも関する。
【0116】
このような免疫複合体の生成に有用な化学療法剤は上述した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲート抗体の生産には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。
【0117】
抗体及び細胞傷害薬の複合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作製できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
【0118】
他の実施態様では、腫瘍の予備標的化で使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)にコンジュゲートされてもよく、抗体-レセプターコンジュゲートは患者に投与され、ついで除去剤を用いて未結合コンジュゲートを循環から除去し、次に細胞傷害剤(例えば、放射性ヌクレオチド等)にコンジュゲートされた「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0119】
免疫リポソーム
ここで開示されている抗体は、免疫リポソームとして製剤化することもできる。抗体を含むリポソームは、例えばEpstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4485045号及び同第4544545号に記載されているように、当該分野において既知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは米国特許第5013556号に開示されている。
【0120】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは孔径が定められたフィルターを通して押出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288(1982)に記載されているようにしてリポソームにコンジュゲートされうる。場合によっては、化学療法剤がリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19)1484(1989)を参照のこと。
【0121】
抗体の薬学的組成物
ここで同定されたEGFL8ポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びに上に開示されたスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、薬学的組成物の形態で上述し以下に記載される様々な疾患の治療のために投与されうる。
【0122】
ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に一より多い活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものもまた含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞傷害剤、サイトカイン、化学療法剤、又は成長阻害剤のようなその機能を高める薬剤を含んでもよい。このような分子は、適切には、意図する目的に有効な量で組み合わせて存在する。
【0123】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセルに、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に封入されうる。このような技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0124】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0125】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)等の分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に亘って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下と起こりうる免疫原性の変化が生じる。安定化のための合理的な方法を、関与する機構に応じて、案出することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0126】
抗体を使用する治療方法
EGFL8ポリペプチドに対する抗体は、上述のように様々な血管新生関連症状を治療するために使用することができると考えられる。
抗体は、既知の方法に従って、例えば静脈内投与、例えばボーラス又は一定期間中の連続注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、クモ膜下腔内、経口、局所、又は吸入経路により、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。抗体の静脈内投与が好ましい。
【0127】
他の治療計画を、上述のような本発明の抗体の投与と組み合わせることができる。例えば、抗体が癌を治療するものである場合、そのような抗体で治療される患者は放射線療法をまた受けうる。あるいは、又は加えて、化学療法剤を患者に投与することができる。そのような化学療法剤に対する調製及び投薬スケジュールは製造者の指示書に従って使用されうるか又は熟練した医師によって経験的に決められる通りである。そのような化学療法のための調製及び投薬スケジュールはまたChemotherapy Service, M.C. Perry編(Williams及びWilkins: Baltimore, MD, 1992)に記載されている。化学療法剤は、抗体の投与の前か又は後であり、あるいは抗体と同時に投与されうる。
【0128】
抗体を癌の治療に使用する場合、他の腫瘍関連抗原に対する抗体、例えば一又は複数のErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、又はVEGFレセプターに結合する抗体を投与することもまた望ましい。これらはまた上に記載した薬剤を含む。また、抗体は連続して又は放射性物質の投与か照射を含むかにかかわらず放射線学的治療との併用で好適に投与される。あるいは、又はそれに加えて、ここで開示された、同じか又は二又はそれ以上の異なる抗原に結合する二又はそれ以上の抗体を、患者に同時投与してもよい。しばしば、患者に一又は複数のサイトカインを投与することもまた有益である場合がある。好ましい実施態様では、ここでの抗体は、成長阻害剤と同時投与される。例えば、先ず成長阻害剤を投与し、続いて本発明の抗体を投与する。しかしながら、同時投与、又は本発明の抗体を最初に投与することも考えられる。成長阻害剤の適切な用量は現在用いられている量であるが、成長阻害剤とここでの抗体の併用作用(相乗性)のため減少させ得る。
【0129】
一実施態様では、腫瘍の血管新生は、併用療法で攻撃される。抗EGFL8抗体及び他の抗体(例えば抗VEGF)が、例えば腫瘍又はある場合にはその転移病巣の壊死を観察することにより決定された治療的有効量で、腫瘍を持つ患者に投与される。更なる抗腫瘍剤、例えばアルファ-、ベータ-又はガンマ-インターフェロン、抗HER2抗体、ヘレグリン(heregulin)、抗ヘレグリン抗体、D因子、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、又は腫瘍中の微細血管凝固促進剤、例えば抗プロテインC抗体、抗プロテインS抗体、又はC4b結合プロテイン(1991年2月21日公開のWO91/01753を参照)、又は熱又は照射が更に投与されうる。
【0130】
他の実施態様では、FGF又はPDGFアンタゴニスト、例えば抗FGF又は抗PDGF中和抗体が、抗EGFL8抗体との併用で患者に投与される。抗EGFL8抗体での治療は、好ましくは創傷治癒又は望ましい新血管新生の期間中中止されうる。
【0131】
循環器、内皮、及び血管新生疾患の予防又は治療のための、ここでの抗体の適切な用量は、上で定義された治療される疾患の型、疾患の重篤さ及び経過、抗体が予防又は治療目的で投与されるか否か、過去の治療法、患者の病歴及び抗体に対する反応、及び主治医の裁量に依存する。抗体は、適切には患者に一回又は一連の治療によって適切に投与される。
【0132】
例えば、疾患の型及び重篤さに応じて、約1μg/kgから50mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)の抗体が、例えば、一又は複数の別々の投与、あるいは連続注入の何れにしても、患者に投与するための最初の候補用量である。典型的な毎日又は毎週の用量は、上記の要因に応じて約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲であるかも知れない。数日以上に渡る繰り返し投与の場合、状態に応じて、疾患の徴候に所望の抑制が現れるまで治療が繰り返され又は持続される。しかしながら、他の用量計画が有用であることもある。この治療の進行は、一般的な技術及びアッセイ、例えばX線腫瘍検査イメージングによって容易に監視される。
【0133】
次の実施例は単に例証のために提供するもので、決して本発明の範囲を限定する意図はない。
本明細書中で引用した全ての特許及び文献参考資料の開示はその全体を出典明示によりここに援用する。
【実施例】
【0134】
実施例において言及される市販の試薬は、特段の記載をしない限り、製造者の指示書に従って使用した。ATCC(登録商標)受託番号によってここで特定される細胞の供給源は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(マナッサス,バージニア州20108)である。
ここで引用した全て文献は出典明示によりここに援用する。
【0135】
実施例1.Egfl8は脈管構造に発現
我々はEgfl8の発現パターンを決定し、特にその発現をEgfl7のものと比較するために実験を実施した。インサイツハイブリダイゼーションのためのアンチセンスリボプローブは次の通りであった:
Egfl7に対して、
GTAGGGCTCTGCCGGGACCTGGGTCTTCCCTCTCCTGGAGCTGCAGAGGCCAGAAGTTCAGTGGTGAGGGGTCCAAGGAGAGTCCGGGGAGACCAGGGAGGCTCTGTCCATCCCCTGTCCCTGTCCCTGTGGGAAGCCCCCGGCAGCAGCAAGACGCTGGCTGTTCCACCTGCCCACAAGAACAGCCACCACCAGTACCCAGGGGATGACAAGCGGCCGGACCACAGGCCACAAAAAGAAGAAGGCTACCCCACTTACAGATGCAGACCATGTGGGGCTCCGGAGAACTGCTTGTAGCATGGTTTCTAGTGTTGGCAGCAGATGGTACTACTGAGCATGTCTACAGACCCAGCCGTAGAGTGTGTACTGTGGGGATTTCCGGAGGTTCCATCTCGGAGACCTTTGTGCAGCGTGTATACCAGCCTTACCTCACCACTTGCGACGGACACAGAGCCTGCAGCACCTACCGAACCATCTACCGGACTGCCTATCGCCGTAGCCCTGGGGTGACTCCCGCAAGGCCTCGCTATGCTTGCTGCCCTGGTTGGAAGAGGACCAGTGGGCTCCCTGGGGCTTGTGGAGCAGCAATATGCCAGCCTCCATGTGGGAATGGAGGGAGTTGCATCCGCCCAGGACACTGCCGCTGCCCTGTGGGATGGCAGGGAGATACTTGCCAGACAGATGTTGATGAATGCAGTACAGGAGAGGCCAGTTGTCCCCAGCGCTGTGTCAATACTGTGGGAAGTTACTGGTGCCAGGGATGGGAGGGACAAAGCCCATCTGCAGATGGGACGCGCTGCCTGTCTAAGGAGGGGCCCTCCCCGGTGGCCCCAAACCCCACAGCAGGAGTGGACAGCATGGCGAGAGAGGAGGTGTACAGGCTGCAGGCTCGGGTTGATGTGCTAGAACAGAAACTGCAGTTGGTGCTGGCCCCACTGCACAGCCTGGCCTCTCGGTCCACAGAGCATGGGCTACAAGATCCTGGCAGCCTGCTGGCCCATTCCTTCCAGCAGCTGGACCGAATTGATTCACTGAGTGAGCAGGTGTCCTTCTTGGAGGAACATCTGGGGTCCTGCTCCTGCAAAAAAGATCTGTGATAACCTCTCACCACCCAGGCTGGATAGAGCAGTCATCCCTAGATCCCTTGTAGCCAGAGTTCAGGCGCTGTCTGGTGGTGCCTATGAGCAGAAGGCCCTGCCTCATTGTCCCTCTTTCTTAGGAGGTTCCTAGGACTTGGGCATGGGGAGTGGGGTCTTGTGTGACTCTTCAGTGGGGCTCCCTGTCTAAGTGGTAAGGTGGGGATTGTCTCCATCTTTGTCATAATAAAGCTGAGACTT(配列番号:3)
【0136】
Egfl8に対して、
GGAGGATCTTTCAAAGAGAGTTTGGGAGTGTGCTCCAAGCAGACGCTGCTGGTTCCTCTCCGTTACAACGAGTCCTATAGTCAACCGGTGTACAAACCCTACCTGACCTTGTGTGCGGGGAGGCGCATATGTAGCACCTACAGGACCACATACCGTGTGGCCTGGCGGGAGGTGAGGCGGGAGGTACCACAGACACACGTGGTGTGCTGTCAGGGCTGGAAGAAGCCACACCCAGGAGCTCTCACCTGTGATGCCATCTGCTCCAAGCCTTGTCTTAATGGAGGTGTCTGCACTGGACCAGACCGGTGCGAGTGTGCCCCAGGCTGGGGAGGAAAGCATTGCCACGTGGATGTCGATGAATGCAGGGCCAGCCTTACCCTCTGCTCTCATGGCTGCCTCAACACACTGGGCAGCTTCTTGTGCAGCTGTCCACACCCCCTGGTGCTGGGTCTCGATGGACGCACCTGTGCAGGAGGCCCACCGGAGAGTCCAACCAGCGCG(配列番号:4)。
【0137】
マウス胚を子宮から切取り、PBS(RNase非含有)中で洗浄した。E10.5CD1マウス胚をPBS中の新鮮に調製した4%のパラホルムアルデヒド中に室温(RT)で4時間固定し、PBT(PBS+0.1%のTweenTM20)で2×5分洗浄し、それぞれ5−10分間、PBT中の25%、50%、75%、2×100%メタノールを用いて氷上で脱水した。胚をメタノール/H(4:1)中で室温にて1時間ブリーチし、氷上で100%メタノールで2×10分洗浄し、ハイブリダイゼーションの準備が整うまで−20℃の100%メタノール中に保存した。
【0138】
胚を次のバッファー中で順次インキュベートした:PBT中の75%、50%、25%のメタノールで、それぞれ氷上で5−10分間。胚を氷上のPBTで3×5分洗浄し、ついで室温で穏やかに揺らしながらPBT中の20μg/mlのプロテイナーゼKで30分間洗浄し、冷PBTで注意深く2回すすぎ、穏やかに揺らしながら室温にて0.2%のグルタルアルデヒド+4%のPFAで20分間固定し、室温にてPBTで3×5分洗浄した。ついで、それらを、50%PBT+50%プレハイブリダイゼーションミックス(25mlの超高純度脱イオン化ホルムアミド;12.5mlの20XSSC(最終5X);40μlの50mg/mlヘパリン;500μlの10mg/mlサケ精子DNA;125μlの20mg/ml酵母tRNA;500μlの10%TweenTM20;〜2−4mlの1M無水クエン酸(pH=4.5−5まで);50mlにするRNase非含有水)中で5分間、ついでプレハイブリダイゼーションミックス中で5分間、インキュベートした。溶液を除去した後、それらを揺らしながら68−70℃にてプレハイブリダイゼーションミックス中で3−6時間プレハイブリダイズした後、50μlのホルムアミド及び1μg/mlのdig−リボプローブ(ハイブリダイゼーション混合物に加える前に80℃で5−10分間の変性リボプローブ)を含む2mlのプレハイブリダイゼーションミックス中で振とうさせながら70℃で一晩ハイブリダイズした。
【0139】
ハイブリダイゼーション後、胚を複数回洗浄した:68−70℃に前もって温められた溶液I(125mlのホルムアミド;62.5mlの20×SSC(最終5X);2.5mlの10%TweenTM20;250mlとする水)で2回;次に揺らしながら68−70℃の前もって温められた溶液Iで2×30分;次に揺らしながら68−70℃の溶液II(125mlのホルムアミド;25mlの20×SSC(最終2X);2.5mlの10%TweenTM20;250mlとする水)で3×60分;室温で揺らしながらTBST(8gのNaCl;0.2gのKCl;2.5mlの1M Tris pH7.4又は7.5;10mlの10%TweenTM20;1リットルまで水を加える)で3×5分;ついで、室温で揺らしながらTBST/10%の熱失活ヒツジ(又は子ヒツジ)血清で60分すすいだ。ついでTBST/1%熱失活ヒツジ血清中の1/2000希釈のヒツジ抗Dig抗体(Roche Molecular Diagnostics製)を加え、揺らしながら4℃で一晩インキュベートした。
【0140】
ついで胚を室温で揺らしながらTBSTで3×5分洗浄し、室温で揺らしながら終日洗浄し、TBSTを毎時に変化させ、ついで4℃で揺らしながらTBSTで一晩洗浄した。ついで、それらを、室温で揺らしながら新鮮に調製したAPバッファー(2mlの5M NaCl、0.2gのKCl、2.5mlの1M Tris pH7.4又は7.5、10mlの10%TweenTM20、100mlとする水)で2×20分洗浄した。ついで、10mlのAPバッファー+200μlのNBT/BCIP溶液を加え、管をホイルでラップし、揺らすことによって、色を発現させた。反応をPBT/1mMのEDTAで3回洗浄して停止させ、胚を室温で20分間、PBS中の4%PFAで後固定し、PBTで二三回洗浄し、胚をPBS中の80%グリセロール+0.1%のNaN中に4℃で保存した。
【0141】
我々は、Egfl7が動脈及び静脈を含む頭蓋血管の大半において発現されたが、頭蓋動脈のあるサブセットのみがEgfl8を発現したことを観察した。(図1A及び図1B)。すなわち、Egfl8は動脈分岐階層のあるセグメントに限られているようである。.加えて、我々はインビボマウス腫瘍モデルを使用して同様の実験を実施し、Egfl8が腫瘍のある種の血管において発現されることを観察する。
【0142】
実施例2 Egfl8ノックアウトマウスは血管新生に欠陥を示す
LacZ及びネオマイシン耐性遺伝子と置換されたEgfl8のエキソン2−7でコンストラクトを作製し、標準的な相同組換え法を使用してEgfl8ノックアウトマウスを生成するために使用した(図2参照)。得られたノックアウト対立遺伝子はEGFL8の最初の35アミノ酸をコードするのみであり、その28がシグナル配列をコードする。Egfl8ヘテロ接合性ノックアウトマウス(Egfl8+/−)をEgfl7+/−マウス(Schmidt等, Development, 134(16): 2913-23. (2007)に記載)に交雑させて、二重のヘテロ接合性マウス(Egfl7−/−Egfl8−/−)を作製した。
【0143】
我々は網膜脈管構造に対するEgfl7及び/又はEgfl8における変異の効果を決定するために全載染色を最初に行った。我々は(異なった遺伝子型の)出生後8日のマウスを犠牲にし、眼球を摘出し、それを4℃でPBS(リン酸緩衝生理食塩水,pH7.4)中の4%PFAで一晩固定した。ついで、我々はPBS中で3×洗浄し、網膜を切取り、硝子体血管を除去し、それらを染色のために48又は96ウェルプレートに配した。我々はPBST(PBS+0.5%トリトン(登録商標)X100)で1時間透過処理し、ブロッキングバッファー(PBS中の5%の正常なヤギ血清+0.5%のトリトン(登録商標)X100+0.01%のNaN)と共に網膜を4℃で2−16時間インキュベートした。我々はブロッキングバッファーを除去した後、ローテーターで一次染色と共に4℃で一晩インキュベートした(一次染色はビオチン化イソレクチンB4:Sigma製,カタログ番号=L2140であった。イソレクチンB4は血管内皮に特異的に結合する)。ビオチン化イソレクチンB4原液は次のようにして製造した:1mg/mlの濃度まで0.9%(0.15MのNaCl)に溶解し、少量のアリコートを−20℃で保存する。原液を50×(作業濃度=20μg/ml)として使用する。我々はそれぞれ4℃で1時間PBSTで少なくとも6回洗浄した後、PBST+10%ヤギ血清中の二次染色(Molecular Probes製のストレプトアビジンAlexa488(1:150))と共に回転プレートにおいて4℃で一晩インキュベートした。ついで、我々はローテーター上でそれぞれ4℃にて1時間、PBSTで少なくとも6回洗浄した後、DAPIを含むPBSで1×洗浄した。我々はPBS中の4%パラホルムアルデヒドで1×5分以下の間、組織を固定し、ついで、 PFAが組織から完全にすすぎ取られるまで(約30分−1時間)、PBSで少なくとも4回すすいだ。
【0144】
我々は、PBSを含む小さなペトリ皿に各網膜を移し、端から半径の約2/3まで放射軸にそって4−5スリットを切り取った。我々は硝子体側を上にしてガラススライド上に網膜を配し、できる限り多くの液体を除去した後、一対のピンセットを用いてスライド上の網膜を平坦にした。ついで、我々は素早く1−2滴のFluoromount−Gを加え、試料にカバーガラスを装着した。網膜に小さな折り畳み部分があった場合、網膜が完全に平坦になるまでカバーガラスを穏やかに動かした。我々はまた気泡が組織内に見出せないことを確認した。我々はZeiss共焦点顕微鏡を使用して写真を撮り、各網膜の全厚みをカバーするように連続的な光学画像を撮り、ついで、Zeissソフトウェアを使用して連続のシングルフレーム画像から3D画像を再構築した。
【0145】
野生型及びEgfl7−/−網膜(データは示さず)、並びにEgfl7+/−、Egfl8−/−網膜(図3の左側パネル)において、我々は、NFL血管から血管新生を発芽させることによって形成される個々の垂直の出芽の正常な分布と形態を観察した。しかしながら、Egfl7−/−、Egfl8−/−網膜(図3の右側パネル)では、垂直な出芽は共にクラスター化し、異常に大きい出芽を形成していた。よって、これらの結果は、Egfl7とEgfl8が一緒になって網膜のより深い層での出芽血管新生を制御するように作用することを示している。何れかの遺伝子だけの喪失は血管形成異常を引き起こすには不十分である。
【0146】
次に、我々は、マウス角膜における血管新生のモデルでEgfl8変異体の表現型を分析した(例えば、Kenyon等, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 37: 1625-32 (1996)を参照)。手順の全体にわたって無菌技術を使用した。7−10週齢の成体マウスを2.5%のAvertin(登録商標)の腹腔内注射で麻酔した。全身麻酔に加えて、眼を、0.5%のプロパラカイン(Allergan, Irvine, CA)を用いて局所麻酔した。外科用顕微鏡下で作業して、中央基質内の直線状の角膜切開術を、外側直筋の挿入に平行に外科用ブレードを用いて実施した。改良されたフォン・グレーフェメスを使用して、こめかみ縁に向けて層状の微小ポケットを切開した。bFGFを含むHydronペレット(40から50ng/ペレット)を宝石商のピンセットを用いてポケットの基部の角膜表面に配し、ピンセットの一アームを使用して、ペレットを辺縁血管から1mmのポケットの側頭端まで進めた。抗生物質軟膏(0.5%エリスロマイシン;E. Fougera & Co)を眼に適用し、感染を防止するだけでなく、不規則な眼表面による刺激を低減させた。マウスの両眼を我々の研究では利用した。
【0147】
ペレット移植から6日後に、デジタルカメラ(AxioCam MRc5, Zeiss)を組み合わせた解剖顕微鏡(Stemi 2000-C, Zeiss)を使用してマウスの眼の写真を撮った。安楽死のときに、マウスに10mlのHBSS−ヘパリンとついで10mLのFITC−デキストラン/5.5mg/mLのポリ−L−リジン溶液を灌流した。角膜全マウントは除核した眼から構成された。フルオセインを取った新しい血管のイメージを顕微鏡下で取った。FITCによって標識された新血管領域並びに角膜サイズをコンピュータ支援画像解析(Image-Pro Plus 6.0, MediaCybernetics)を使用して測定した。血管領域の割合は、式:(新血管面積/角膜サイズ)×100に従って計算した。
【0148】
我々は、Egfl8−/−マウスの角膜血管密度が野生型マウスのものの半分より僅かに少ないことを知見した(図4)。これらの結果から、Egfl8が単独で血管新生においてある役割を担っていることが確認される。
【0149】
上記の文書による明細書は当業者が発明を実施するのに十分であると考えられる。しかしながら、ここに示され記載されたものに加えて、発明の様々な変形が前記明細書から当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲に入るであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生に関連した病理症状を持つ患者において血管新生を減少させ又は阻害する方法において、EGFL8アンタゴニストを患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
EGFL8アンタゴニストが抗EGFL8抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
病理症状が腫瘍である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
腫瘍が癌腫である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
化学療法剤を投与することを更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
病理症状が眼に関連している請求項1に記載の方法。
【請求項7】
病理症状が眼内新生血管性疾患である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第二の抗血管新生剤を患者に投与することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
EGFL8アンタゴニストの投与前又は投与後に第二の抗血管新生剤を投与する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
EGFL8アンタゴニストと同時に第二の抗血管新生剤を投与する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第二の抗血管新生剤がEGFL7のアンタゴニスト又は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のアンタゴニストである請求項8に記載の方法。
【請求項12】
EGFL7アンタゴニストが抗EGFL7抗体である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
抗VEGF抗体がベバシズマブである請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−510011(P2011−510011A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543215(P2010−543215)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/030969
【国際公開番号】WO2009/091810
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】