説明

EL表示装置

【課題】装置を複雑化せずに経時変化による発光輝度変化を制御し、長寿命化を実現するEL表示装置を提供する。
【解決手段】EL表示装置は、EL発光素子及びEL発光素子を介して対向配置された一対の電極を有するEL発光素子基板と、EL発光素子基板に電流を供給する電源線と、を備えたEL表示装置であって、電源線が、磁性金属層を有すると共に、その経路が曲げられることにより平行に延びる箇所が少なくとも一つ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置に用いられるEL素子は、電流が流れることにより、経時劣化が発生し、抵抗値が増加する。印加する電圧を一定にしてEL素子を発光させるとき、経時劣化によるEL素子の抵抗値の増大により、EL素子に流れる電流は減少する。ここで、EL素子の発光輝度は供給される電流の大きさに比例するため、流れる電流が減少すると、図3に示すように、それだけ発光輝度も低下するという問題がある。
【0003】
このような問題に対する技術として、例えば、特許文献1には、各々が発光素子を備えた複数の画素を備えた表示装置であって、発光素子を流れる駆動電流の電流量を測定する電流量測定部を含み、電流量測定部で得られた結果に基づいて発光素子の駆動電流の電流量を調整することを特徴とする表示装置が開示されている。そして、これによると、発光素子の劣化等による輝度の低下を抑制することができる、と記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数の画素を有し、画素のそれぞれが複数のサブピクセルを有する表示パネルと、タイミング信号を入力し、表示位置を指定するライン制御信号を出力するライン制御部と、表示パネルの通電時間を計測する時間計測部と、通電時間を積算した積算通電時間を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された積算通電時間を入力し、積算通電時間に応じた係数を出力する関数部と、サブピクセルの発光量を指定する入力信号を係数に基づいて補正する補正部と、補正された入力信号を入力し、補正された入力信号に応じたサブピクセルの駆動信号を出力するデータ駆動部と、を有することを特徴とする表示装置が開示されている。そして、これによると、電流制御型発光素子を用いた表示パネルの輝度や色温度の経時変化補正を自動的に行う表示装置を提供することができる、と記載されている。
【特許文献1】特開2004-038209号公報
【特許文献2】特開2002-258792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示される技術では、発光素子に流れる電流の測定部、測定した電流と所望電流との比較部、所望電流を供給するための電源(電圧)調整部等の特別なフィードバック回路が必要となり、回路が複雑且つ大型化してしまう。
【0006】
また、上記特許文献2に示される技術では、発光素子の発光時間を計測する時間計測部、計測した時間を積算して記憶する記憶部、及び、駆動電流値計算部等が必要となり、これも同様に回路が複雑且つ大型化してしまう。
【0007】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置を複雑化せずに経時変化による発光輝度変化を制御し、長寿命化を実現するEL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るEL表示装置は、EL発光素子及びEL発光素子を介して対向配置された一対の電極を有するEL発光素子基板と、EL発光素子基板に電流を供給する電源線と、を備えたEL表示装置であって、電源線が、磁性金属層を有すると共に、その経路が曲げられることにより平行に延びる箇所が少なくとも一つ設けられたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るEL表示装置は、電源線に、平行に延びる箇所が複数設けられていてもよい。
【0010】
さらに、本発明に係るEL表示装置は、電源線が、磁性金属層と非磁性金属層との積層構造を有してもよい。
【0011】
また、本発明に係るEL表示装置は、電源線の磁性金属層と非磁性金属層との間に、絶縁層がさらに設けられていてもよい。
【0012】
さらに、本発明に係るEL表示装置は、電源線の磁性金属層が、複数の磁性金属材料で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置を複雑化せずに経時変化による発光輝度変化を制御し、長寿命化を実現するEL表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下の実施形態では、EL発光素子として有機EL発光素子を用いる有機EL表示装置について説明する。尚、本発明に係るEL表示装置は、これに限らず無機EL発光素子を用いた無機EL表示装置であってもよい。
【0015】
(実施形態1)
(有機EL表示装置10の構成)
図1は本実施形態に係る有機EL表示装置10の断面図である。
【0016】
本実施形態に係る有機EL表示装置10は、素子基板11と、素子基板11上に形成された第1電極12及び第1絶縁層13、第1電極12上に形成され、ホール輸送層14及び発光層15を備えた発光有機層16、発光有機層16上に形成された第2電極17、第2電極17上に形成された第2絶縁層18、第2絶縁層18上に形成された対向基板19、第2電極17に電気的に接続するように形成された電源線20等で構成されている。
【0017】
素子基板11は、有機EL表示装置10の機械的強度を担保できるものであれば何ら限定されるものではない。素子基板11は、例えば、ガラス、石英等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティック、繊維強化プラスティック(FRP)又は、アルミナ等のセラミックス等の絶縁性材料からなる基板、若しくは、アルミニウム、鉄等の金属基板にSiOや有機絶縁性材料等の絶縁材料をコートした基板、若しくは、アルミニウム、鉄等の金属基板の表面を陽極酸化法等により絶縁化処理を施した基板等により構成することができる。尚、有機EL表示装置10が発光層15からの光を素子基板11側から出射させるボトムエミッション構造のものである場合は、素子基板11は、例えば、ガラスやプラスティック材料等の光透過性材料により形成することがより好ましい。
【0018】
第1電極12は、何ら限定されるものではなく、公知の電極材料により形成することができるが、発光有機層16への高いホール注入効率を実現する観点から、仕事関数が大きい材料により形成することが好ましい。仕事関数が大きい材料としては、例えば、金(Au)、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0019】
また、有機EL素子が、発光層15からの光を素子基板11側から取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子である場合には、第1電極12は、光透過率の高い材料により形成することが好ましい。このような材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO)等が挙げられる。
【0020】
一方、有機EL表示装置10が発光層15からの光を第2電極17側から取り出すトップエミッション方式のものである場合には、第1電極12は、光反射性の材料により形成することが好ましい。光反射性の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)やプラチナ(Pt)等が挙げられる。また、有機EL表示装置10がトップエミッション方式である場合は、第1電極12は、仕事関数が大きい材料からなる層と光反射率が高い材料からなる層との複層構造としてもよい。
【0021】
第2電極17は、何ら限定されるものではなく、公知の電極材料により形成することができるが、発光有機層16への高い電子注入効率を実現する観点から、仕事関数の小さい材料により形成することが好ましい。尚、仕事関数の小さい材料としては、例えば、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)等が挙げられる。
【0022】
また、有機EL表示装置10が、第2電極17側から発光層15の光を取り出すトップエミッション方式のものである場合には、第2電極17は、光透過率の高い材料により形成することが好ましい。このような材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO)等が挙げられる。
【0023】
一方、有機EL表示装置10が発光層15からの光を素子基板11側から取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子である場合には、第2電極17は、光反射性の材料により形成することが好ましい。尚、光反射性を有する第2電極17の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)やプラチナ(Pt)、銀(Ag)等が挙げられる。
【0024】
また、第2電極17は、例えばカルシウム(Ca)等の仕事関数の小さな材料からなる層と、例えばアルミニウム(Al)等の酸素に対して安定であり導電率の高い層との積層構造(Ca層/Al層、Ce層/Al層、Cs層/Al層、Ba層/Al層等)、若しくは、仕事関数の小さな材料と酸素に対して安定であり導電率の高い材料との合金からなる層(Ca:Al合金、Mg:Ag合金、Li:Al合金等)としてもよい。
【0025】
また、第2電極17を、薄膜化した低い導電率を有する材料からなる層と低い仕事関数を有する層との積層構造(LiF層/Al層、LiF層/Ca層/Al層、BaF層/Ba層/Al層等)、若しくは、透明導電性材料に仕事関数の低い材料をドープした層(ITO:Cs層、IDIXO:Cs層、SnO:Cs層等)、若しくは、透明導電性材料からなる層と、仕事関数の低い材料からなる層との積層構造(Ba層/ITO層、Ca層/IDIXO層、Ba層/SnO層等)に構成してもよい。
【0026】
発光有機層16は、ホール輸送層14と発光層15とからなる。しかし、本発明は、何らこれに限定されず、発光有機層16を、発光層15のみにより構成してもよい。また、発光有機層16を、発光層15と、ホール注入層、ホール輸送層14、電子輸送層、及び、電子注入層のうち1層以上と、からなる積層構造に構成してもよい。
【0027】
ホール輸送層14は、何ら限定されるものではなく、公知のホール輸送材料により構成することができる。ホール輸送材料としては、例えば、ポルフィリン化合物、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPD)等が挙げられる。
【0028】
発光層15は、何ら限定されるものではなく、公知の発光材料により形成することができる。発光材料としては、例えば、4,4’‐ビス(2,2’‐ジフェニルビニル)‐ビフェニル(DPVBi)等の芳香族化合物、オキサジアゾール化合物、3‐(4‐ビフェニルイル)‐4‐フェニル‐5‐t‐ブチルフェニル‐1,2,4‐トリアゾール(TAZ)等のトリアゾール誘導体、1,4‐ビス(2‐メチルスチリル)ベンゼン等のスチリルベンゼン化合物等が挙げられる。
【0029】
第1絶縁層13及び第2絶縁層18は、それぞれ、何ら限定されるものではなく、公知の絶縁性材料により形成することができる。第1絶縁層13及び第2絶縁層18は、例えば、SiNx(窒化シリコン)、SiOx(酸化シリコン)、AlOx(酸化アルミニウム)等の無機絶縁性材料、或いは、ポリイミド樹脂等の有機絶縁性材料等で形成することができる。
【0030】
対向基板19は、素子基板11に封止用樹脂21により接着されており、発光有機層16は、対向基板19と、素子基板11とにより封止されている。
【0031】
対向基板19は、水分や酸素の透過率が低いものであれば何ら限定されるものではなく、例えば、ソーダライムガラス等のガラス基板 、石英基板 、プラスティック基板等により構成することができる。
【0032】
封止用樹脂21は、対向基板19を素子基板11に確実に固定することができ、水分及び酸素の透過率が低いものであれば何ら限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0033】
電源線20は、素子基板11上に形成され、一方の端部で第2電極17に電気的に接続され、他方の端部に異方性導電膜22を介して電源からの電流を供給する接続配線23が電気的に接続されている。電源線20の構成材料は、磁性金属であれば特に限定されないが、例えば、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Ni−Fe、又は、Fe−Co等の強磁性体が好ましい。
【0034】
また、電源線20は、複数種類の磁性金属を積層して形成されていてもよい。
【0035】
さらに、有機EL表示装置10における全ての電源線20にこれらの磁性金属が用いられていても良いが、Al(アルミニウム)等の一般的な配線材料と比較すると導電性が低いため、所望の装置寿命を踏まえ、磁性金属の全体に占める割合を調整するのが良い。
【0036】
電源線20は、図2に示すように、素子基板11上において、その経路が曲げられることにより平行に延びる箇所が設けられている。具体的には、電源線20は、その経路が一方向から約90度の角度で曲げられて延び、さらに今度は戻る方向に約90度の角度で曲げられるように延びる。
【0037】
ここで、このような構成による効果を以下に述べる。まず、初めに、磁気抵抗効果について説明する。磁気抵抗効果とは、磁性体の磁化の向きと電流との向きの角度によって、磁性体の抵抗値が変化することである。また、本発明に利用する磁気抵抗効果は異方性磁気抵抗効果であり、これは、磁性体単層膜において発現する効果で、磁性体の磁化と電流の向きとが垂直のとき抵抗値は最大となり、磁性体の磁化と電流の向きとが平行のとき抵抗値は最小となる。本実施形態に係る有機EL表示装置10の電源線20では、図2に示すように、電流を供給する電源線20に平行に延びる箇所(ラインI及びラインII)が設けられている。この電源線20に電流が流れることにより、ラインIで発生する磁界がラインIIの磁化の向きを変化させる。また、ラインIIで発生する磁界がラインIの磁化の向きを変化させる。これにより、磁気抵抗効果が発現し、電源線20の抵抗値が変化する。抵抗値の変化の割合は、流れる電流値の大きさによって決まり、電流値が大きいほど磁化の向きと電流の向きが垂直に近くなるため高抵抗化する。
【0038】
次に、この原理を式を用いてより詳細に説明する。有機ELに印加する電圧(一定)をV、初期時の有機ELの抵抗値をR1、経時変化後の有機ELの抵抗値をR2とする。このとき、R1<R2である。初期時の電流I1 はI1=V/R1、経時変化後の電流I2はI2=V/R2であり、R1<R2より I1>I2となる。I1のときの磁気抵抗効果による電源線20の抵抗変化量をVR1、I2のときの抵抗変化量をVR2とするとI1>I2より VR1>VR2(式1)となる。
【0039】
また、輝度低下の度合いは電流値の変化量に比例する。定電圧駆動時では、電流値の変化量は抵抗値の変化量によって規定される。すなわちR1とR2との差が小さいほど輝度低下の度合いは軽減される。磁気抵抗効果を利用しないときは、初期時と経時変化後の抵抗値の変化量はR2−R1(式2)であり、磁気抵抗効果を利用したときは(R2+VR2)−(R1+VR1)(式3)である。
【0040】
式1及び3より、
(R2+VR2)−(R1+VR1)=(R2−R1)+(VR2−VR1)<R2−R1
となる。すなわち、式3<式2となる。
【0041】
よって、磁気抵抗効果を利用すると初期時と経時変化後の抵抗値の変化量が、磁気抵抗効果を利用しないときと比べて小さくなる。従って、図3に示すような従来の有機EL表示装置における輝度の経時変化が、図4に示すような経時変化となり、輝度の経時変化による低下は抑制され、有機ELの長寿命化が実現される。また、抵抗値の変化量を調整するために、所望電流を供給する電源(電圧)調整部等の特別なフィードバック回路等が不要であり、装置の大型化・複雑化を避けることができる。
【0042】
電源線20の幅及び厚さは、一般的なLSIの配線と同様でもよいが、これらを変化させて形状磁気異方性を持たせることにより磁気抵抗効果の割合を制御することが可能となる。
【0043】
例えば、図2の辺aと辺bとのアスペクト比b/aを大きくすると、磁化は辺bの方向が磁化容易方向になるので、流れる電流が大きくても磁化は辺aの方向には向き難くなり、本発明の効果は減少する。逆にアスペクト比b/aを小さくすると磁化の流れる電流によって辺aの方向に向きやすくなり、本発明の効果を利用しやすくなる。つまり、アスペクト比b/aを調整することにより、本発明の効果の割合を制御することが可能となる。
【0044】
また、電源線20は、平行になる箇所(ラインI及びラインII)の長さを変化させることによっても、抵抗変化の割合(磁気抵抗効果の割合)を調整することが可能となる。
【0045】
(有機EL表示装置10の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法について詳細に説明する。
【0046】
まず、ガラス等からなる素子基板11上に、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等の電極材料をスパッタ法等の公知の成膜技術により成膜し、続いてフォトリゾグラフィー技術等の公知のパターニング方法により所望の電極構造にパターニングすることにより第1電極12を形成する。
【0047】
次に、第1電極12を形成した素子基板11上に、ホール輸送材料等をスピンコート法やインクジェット法等の公知の成膜技術により成膜することによりホール輸送層14を形成する。次に、ホール輸送層14の上に、例えば、ポリ[2,5‐ビス‐[2‐(N,N,N‐トリエチルアンモニウム)エトキシ]‐1,4‐フェニル‐アルト‐1,4‐フェニレン]ジブロマイド等の発光材料をスピンコート法やインクジェット法等の公知の成膜技術により成膜して発光層15を形成することによりホール輸送層14と発光層15とからなる発光有機層16を形成する。
【0048】
次に、電源線20を、素子基板11上に、例えば、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Ni−Fe、又は、Fe−Co等を蒸着させてスパッタリングで成膜し、その後、リソグラフィーによりパターニングを行うことで形成する。
【0049】
次に、第1絶縁層13を、素子基板11上に、例えば、ポリイミド樹脂等を用いて成膜し、その後リソグラフィーによりパターニングを行うことで形成する。
【0050】
次に、第2電極17を、電源線20に電気的に接続するように、且つ、発光有機層16上に、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等の電極材料をスパッタ法等の公知の成膜技術により成膜し、続いてフォトリゾグラフィー技術等の公知のパターニング方法により所望の電極構造にパターニングすることにより形成する。
【0051】
次に、第2絶縁層18を、第2電極17上に、例えば、ポリイミド樹脂等を用いて成膜し、その後リソグラフィーによりパターニングを行うことで形成する。
【0052】
次に、例えば、サンドブラスト法等の公知の物理的加工技術を用いて平坦なガラス基板 に発光有機層16を収納する発光有機層収納部を形成することにより、対向基板19を形成する。
【0053】
次に、上述の方法で形成した対向基板19を発光有機層16を形成した素子基板11上に、例えば、エポキシ樹脂等の封止用樹脂21を用いて接着する。
【0054】
次に、電源線20の端部に異方性導電膜22を介して電源からの接続配線23を電気的に接続させることにより、有機EL表示装置10を製造する。
【0055】
また、本実施形態では、電源線20の形状として図2に示すものを挙げたが、これに限られず、例えば、図5に示すように、平行に延びる箇所が複数設けられた電源線30であってもよい。
【0056】
具体的には、電源線30は、例えばミアンダ型(ジグザグ形状)に形成され、これにより平行に延びる箇所が複数設けられている。
【0057】
このような構成によれば、電源線30の複数箇所で、抵抗変化の割合(磁気抵抗効果の割合)を調整することができる。このため、例えば、表示装置にRGBの絵素が設けられている場合に、それぞれの絵素における図に示したような発光素子の経時劣化による輝度劣化の傾きを同じくすることができる。従って、経時変化による色度ずれを緩和させることができ、有機EL表示装置10の長寿命化を図ることができる。
【0058】
さらに、電源線20は、図6に示すように、磁性金属層41と非磁性金属層42との積層構造を有する電源線40であってもよい。
【0059】
具体的には、電源線40は、例えば、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Ni−Fe、又は、Fe−Co等からなる磁性金属層41と、Al(アルミニウム)、Cu(銅)等からなる非磁性金属層42との積層構造を有している。
【0060】
このような構成によれば、非磁性金属層42に流れる電流によって生成される磁界によって磁性体の磁化の向きが変化し、磁気抵抗効果によって、磁性金属層41の抵抗値が変化する。このため、電源線20の初期時と経時変化後の抵抗値の変化量が、磁気抵抗効果を利用しないときと比べて小さくなり、有機EL表示装置10の長寿命化を図ることができる。
【0061】
また、この場合、磁性金属層41と非磁性金属層42との膜厚の割合を変化させることにより磁性金属層41の磁気抵抗効果の割合を変化させることができる。例えば、磁性金属層41の膜厚:非磁性金属層42の膜厚=1:1のもの(α)と1:10のもの(β)とを比較すると、βはαに比べて非磁性金属層42の膜厚が厚いために多くの電流が流れ、より大きな磁界を発生することができる。従って、磁気抵抗効果の割合を制御することができる。すなわち、経時変化による色度ずれを緩和させることができ、有機EL表示装置10の長寿命化を図ることができる。
【0062】
また、電源線20は、図7に示すように、磁性金属層51と非磁性金属層52との間に、絶縁層53がさらに形成された電源線50であってもよい。
【0063】
具体的には、電源線50は、上述した材料でそれぞれ構成される磁性金属層51と非磁性金属層52との間に、例えば、SiNx(窒化シリコン)、SiOx(酸化シリコン)、AlOx(酸化アルミニウム)等の無機絶縁性材料、或いは、ポリイミド樹脂等の有機絶縁性材料等で構成される絶縁層53が設けられている。
【0064】
このような構成によれば、磁性金属層51と非磁性金属層52との間に絶縁層53を挟むことにより、磁性金属層51と非磁性金属層52との距離を変化させて、磁気抵抗効果の割合を制御することができる。このため、経時変化による色度ずれを緩和させることができ、有機EL表示装置10の長寿命化を図ることができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、EL表示装置として、EL発光素子に有機EL発光素子を用いた有機EL表示装置について説明したが、これに限らず、EL発光素子に無機EL発光素子を用いた無機EL表示装置であってもよい。
【0066】
(作用効果)
本発明の実施形態に係る有機EL表示装置10は、EL発光素子16及びEL発光素子16を介して対向配置された一対の電極12,17を有するEL発光素子基板11と、EL発光素子基板11に電流を供給する電源線20と、を備えたEL表示装置であって、電源線20が、磁性金属層を有すると共に、その経路が曲げられることにより平行に延びる箇所(ラインI及びラインII)が少なくとも一つ設けられたことを特徴とする。
【0067】
このような構成によれば、装置を複雑化せずに経時変化による発光輝度変化を制御し、長寿命化を実現する有機EL表示装置10を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、EL表示装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置10の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電源線20の模式図である。
【図3】従来の電源線を用いたEL素子の発光輝度の経時変化を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る電源線20を用いたEL素子の発光輝度の経時変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る電源線30の模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電源線40の模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電源線50の模式図である。
【符号の説明】
【0070】
10 有機EL表示装置
11 素子基板(EL発光素子基板)
12 第1電極
13 第1絶縁層
14 ホール輸送層
15 発光層
16 発光有機層(EL発光素子)
17 第2電極
18 第2絶縁層
19 対向基板
20,30,40,50 電源線
21 封止用樹脂
22 異方性導電膜
23 接続配線
41,51 磁性金属層
42,52 非磁性金属層
53 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EL発光素子及び該EL発光素子を介して対向配置された一対の電極を有するEL発光素子基板と、該EL発光素子基板に電流を供給する電源線と、を備えたEL表示装置であって、
上記電源線は、磁性金属層を有すると共に、その経路が曲げられることにより平行に延びる箇所が少なくとも一つ設けられたEL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたEL表示装置において、
上記電源線は、上記平行に延びる箇所が複数設けられているEL表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたEL表示装置において、
上記電源線は、上記磁性金属層と非磁性金属層との積層構造を有するEL表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたEL表示装置において、
上記電源線は、上記磁性金属層と上記非磁性金属層との間に、絶縁層がさらに設けられているEL表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載されたEL表示装置において、
上記電源線の磁性金属層は、複数の磁性金属材料で形成されているEL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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