説明

EU−1ゼオライトの新規な調製方法

本発明は、10〜100のXO/Y比を有するゼオライトEU−1を調製する方法であって、a)水性媒体中で、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、少なくとも1種の酸化物Yの少なくとも1種の源および少なくとも1種の有機構造化剤Qを混合する工程であって、Xはケイ素および/またはゲルマニウムから選ばれ、Yはアルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素から選ばれる、工程と、b)工程a)から得られた反応媒体を200℃未満の温度で乾燥させる工程と、c)工程b)から得られた乾燥反応混合物をオートクレーブ中で水熱処理する工程であって、前記乾燥反応混合物はオートクレーブの底部において液相と接触しない、工程とを包含する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10〜100の範囲のXO/Y比、特に10〜100の範囲のSiO/Al比を有するEU−1ゼオライトを調製するための新規な方法であって、反応混合物を調製する工程の後および水熱処理工程c)の前に行われる乾燥工程b)を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造型EUOを有するEU−1ゼオライトは、従来技術(非特許文献1)において記載され、4.1×5.7Åの細孔径を有する一次元ミクロ孔骨格を有している(1Å=1オングストローム=1×10−10m)。N. A. Briscoeらは、そのような一次元チャネルは、8.1Åの深さおよび6.8×5.8Åの径を有するサイドポケットを有することを示した(非特許文献2)。
【0003】
特許文献1には、式:
少なくとも10のXO:Y:0.5−1.5R2/nO:0−100H
(式中、Rはn価を有するカチオンを示し、Xはケイ素および/またはゲルマニウムを示し、Yはアルミニウム、鉄、ガリウム、ホウ素から選択される少なくとも1種の元素を示す)
を有するEU−1ゼオライト並びにこのEU−1ゼオライトを調製する方法が記載されている。調製方法は、水溶性媒体中で元素Xの少なくとも1種の源、元素Yの少なくとも1種の源およびテンプレートQとしての機能を果たす窒素含有有機化合物(これは、α−ωジアンモニウムポリメチレンのアルキル化された誘導体または前記誘導体の分解生成物または前記誘導体の前駆体のいずれかである)を混合する工程を包含する。反応混合物は、次いで、自己生成圧力下、85〜250℃の範囲の温度でゼオライト結晶が形成されるまで置かれる。
【0004】
Dodwellらは、アルカリイオンを含有しない反応混合物によるEU−1ゼオライトの水熱合成を記載する(非特許文献3)。テンプレートとしての機能を果たす水酸化物形態のヘキサメトニウムカチオンは、十分な鉱化剤(mineralizing agent)を提供し、したがって、アルカリ水酸化物を加える必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0042226号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ダブリュー・エム・マイアー(W. M. Meier)およびディー・エイチ・オルソン(D. H. Olson)著、「アトラス・オヴ・ゼオライト・ストラクチャー・タイプス(Atlas of Zeolite Structure Types)」、第5版、2001年
【非特許文献2】エヌ・エイ・ブリスコ(N. A. Briscoe)ら著、「ゼオライツ(Zeolites)」、1988年、第8巻、p.74
【非特許文献3】ドッドウェル(Dodwell)ら著、「ゼオライツ(Zeolites)」、1985年5月、第5巻、p.153−157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の目的)
本発明は、10〜100の範囲のXO/Y比を有するEU−1ゼオライトを調製するための新規な方法であって、
a)水性媒体中、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、少なくとも1種の酸化物Yの少なくとも1種の源および少なくとも1種の有機テンプレートQを混合する工程であって、Xはケイ素および/またはゲルマニウムから選択され、Yはアルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素から選択される、工程と、
b)工程a)から得られた反応混合物を、200℃未満の温度で乾燥させる工程と、
c)工程b)から得られた乾燥反応混合物のオートクレーブ中の水熱処理の工程であって、前記反応混合物は、オートクレーブの底部において液相と接触しない、工程と
を包含する方法に関する。
【0008】
本発明の1つの利点は、前記EU−1ゼオライトのための合成時間を短縮することができる、EU−1ゼオライトを調製するための新規な方法が提供されることである。
【0009】
本発明の別の利点は、EU−1ゼオライトを調製するための新規な方法が提供されることであり、このことは、当業者に知られている調製方法によって得られたEU−1ゼオライトより高い結晶化度を有するEU−1ゼオライトが得られ得ることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の説明)
本発明によると、10〜100の範囲、好ましくは2〜60の範囲、非常に好ましくは30〜50の範囲のXO/Y比を有するEU−1ゼオライトを調製するための方法の工程a)は、水性反応混合物を調製する工程であって、該水性反応混合物は、少なくとも1種の酸化物XO(Xはケイ素および/またはゲルマニウムから選択され、Xは好ましくはケイ素である)の少なくとも1種の源および少なくとも1種の酸化物Y(Yはアルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素から選択され、Yは好ましくはアルミニウムである)の少なくとも1種の源および少なくとも1種の有機テンプレートQ(Qは好ましくはヘキサメトニウムヒドロキシドである)を含む、工程からなる。
【0011】
前記反応混合物は、有利には、以下のモル組成を有する。
【0012】
【化1】

【0013】
ここで、Mは元素XおよびYの源に由来する一価カチオンを示し、アルカリ金属またはアンモニウムから選択される。好ましくは、MはナトリウムNaである。
【0014】
本発明の調製方法の工程a)の好ましい実施形態によると、前記混合物は、低価数のカチオンM(好ましくはNaアルカリイオン)の含有量によって特徴付けられる。好ましくは、前記混合物は、0〜0.3の範囲、好ましくは0〜0.2の範囲、非常に好ましくは0〜0.15の範囲、一層より好ましくは0.01〜0.12の範囲のNa/SiO比によって特徴付けられる。
【0015】
元素Xの源は、有利には、元素Xを含み、水溶液中に活性な形態で当該元素を遊離させ得るあらゆる化合物であり得る。元素Xがケイ素である好ましい実施形態によると、ケイ素源は、ゼオライト合成において日常的に用いられるもののいずれか一つであり得、例えば、固体の粉体状シリカ、ケイ酸、コロイダルシリカまたは溶解シリカ、または、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane:TEOS)がある。用いられ得る粉体状シリカの例は、沈降シリカ、特に、アルカリ金属シリカートの溶液からの沈降によって得られたもの、焼成シリカ(pyrogenic silica)、例えば、「Aerosil(登録商標)」およびシリカゲルである。種々の粒子サイズを有するコロイダルシリカを用いることが可能であり、例えば、10〜15nmの範囲または40〜50nmの範囲の平均等価径を有するもの、例えば、「LUDOX(登録商標)」の商標名で販売されているものである。
【0016】
元素Yの源は、有利には、元素Yを含み、水溶液中に活性な形態で当該元素を遊離させ得るあらゆる化合物であり得る。Yがアルミニウムである好ましい実施形態によると、アルミニウム源は好ましくはアルミン酸ナトリウムまたはアルミニウム塩、例えば塩化物、硝酸塩、水酸化物または硫酸塩、アルミニウムアルコキシドまたは適切なアルミナ(好ましくは、水和されたまたは水和可能な形態)、例えば、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、ガンマアルミナまたはアルファまたはベータ三水和物である。上記に挙げられた源の混合物を用いることも可能である。
【0017】
本発明の調製方法の工程a)の好ましい実施形態によると、シリカ、アルミン酸ナトリウムおよびヘキサメトニウムヒドロキシドを含む水性混合物が反応させられ得る。
【0018】
本発明の調製方法の工程a)の別の好ましい実施形態によると、シリカ、アルミニウムアルコキシドおよびヘキサメトニウムヒドロキシドを含む水性混合物が反応させられる。
【0019】
上記に規定された前記試薬の量は、前記反応混合物に、それがEU−1ゼオライトに結晶化することを可能にする組成を提供するように調節される。
【0020】
本発明の調製方法の工程a)の好ましい実施形態によると、結晶の形成に必要な時間および/または全体的な結晶化期間を短縮するために反応混合物に種結晶を加えることが有利であり得る。不純物なく固体結晶EU−1の形成を促すために種結晶を用いることも有利であり得る。そのような種結晶は、結晶固体、特に、構造型LTA、LTL、FAU、MOR、MAZ、OFF、FER、ERI、BEA、MFI、MTW、MTT、LEW、TON、NESまたはEUOを有するゼオライトの結晶を含む。種結晶は、一般的には、重量で0.0001〜0.1XOの範囲の種結晶/XOの比で加えられる。本発明の調製方法の工程b)によると、工程a)からの反応混合物は、200℃未満、好ましくは120℃未満、非常に好ましくは100℃未満の温度で、水を蒸発させることによって乾燥させられる。前記乾燥は、当業者に知られているあらゆる技術を用いて、好ましくは加熱することによって行われ、これは、有利には120℃未満、好ましくは100℃未満の温度で行われる。前記乾燥の終了時に、乾燥させられた反応混合物が得られ、このものはEU−1ゼオライト前駆体の固相によって構成され、前記乾燥反応混合物の全重量に対して40重量%未満、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満の重量による量hの水を含有している。
【0021】
本発明の調製方法の工程c)によると、本調製方法の工程b)からの前記乾燥反応混合物は、オートクレーブ中の水熱処理を経るが、前記乾燥反応混合物は、オートクレーブの底部において液相と接触させられない。
【0022】
EU−1ゼオライトの前駆体の固相によって構成される本発明の調製方法の工程b)からの質量mの乾燥反応混合物は、有利には、容積Vを有するオートクレーブの上部または中央部に位置する非酸化性担体上に置かれ、質量Hの蒸留水に対応する容積の蒸留水が底部に導入される。
【0023】
蒸留水の密度は1であるので、オートクレーブの底部に導入され、導入される蒸留水の容積に対応する質量Hの蒸留水は、オートクレーブの容積Vの関数として表される。
【0024】
オートクレーブの底部に導入される質量Hの蒸留水は、有利には0〜0.5Vの範囲、好ましくは0〜0.1Vの範囲、非常に好ましくは0〜0.06Vの範囲である。オートクレーブの底部における水は、EU−1ゼオライトの前駆体の固相によって構成された乾燥反応混合物と接触しない。
【0025】
EU−1ゼオライトが生じることを可能にするために、本発明の調製方法の工程c)は、液相の存在下に行われる。用語「液相」は、乾燥反応混合物を構成するEU−1ゼオライトの固体前駆体の固相またはオートクレーブの底部に導入された蒸留水のいずれかまたはその両方中に存在する水を意味する。
【0026】
オートクレーブの内側の温度が上がるにつれて、オートクレーブの底部に導入され得た蒸留水、並びに乾燥反応混合物を構成するEU−1ゼオライトの固体前駆体の固相中に依然として含まれ得る水は蒸発する。本発明の調製方法の工程c)によると、オートクレーブ中の水の全量(EU−1ゼオライトの固体前駆体の固相中に含まれ、オートクレーブの底部に導入される所定量の蒸留水によって補われる水の量に対応し、0.01m+Hに等しい)は、水蒸気によって生じた圧力が飽和蒸気圧に少なくとも達するようにされ、水は、再凝結し得る。
【0027】
本発明の調製方法の工程c)によると、乾燥反応混合物は、オートクレーブの底部において液相と接触しない、すなわち、それは、水の再凝結に由来するものは別としてあらゆる他の液相と接触しない。EU−1ゼオライトの固体前駆体の固相中に含まれる重量による量hの水およびオートクレーブの底部に導入される質量Hの蒸留水は、それ故に、同時にゼロではない。
【0028】
必要である水の全体的な最小限の量は、以下のファンデルワールス式を用いて推定され得る:
【0029】
【数1】

【0030】
(式中、Pvapは、温度Tにおける水の飽和蒸気圧(Pa)であり、Tは水熱処理の温度(K)であり、Vは、オートクレーブの容積であり、nは、オートクレーブ中に存在する水のモル数であり、この場合、nは、(0.01m+H)/Mに等しく、ここで、Mは、水のモル質量(18g/mol)であり、Rは、気体定数(8.314472(15)J/mol・K)であり、aおよびbは、水の特性定数であり、以下の関係式を用いて計算される:
【0031】
【数2】

【0032】
および
【0033】
【数3】

【0034】
ここで、Tは、水の臨界温度(647.24K)であり、Pは、水の臨界圧力(22064Pa)である(CRC Handbook of Chemistry and Physics,82nd edition)。
【0035】
より正確には、本発明の調製方法の工程c)の3つの好ましい実施形態が利用され得る。
【0036】
本発明の調製方法の工程c)の第1の好ましい実施形態によると、工程b)からの完全に乾燥した反応混合物がオートクレーブに導入され、すなわち、それは、0%に等しい重量による量hの水を含有し、質量Hの蒸留水がオートクレーブの底部に導入される。水の全体的な導入は、オートクレーブ中の水の全量がファンデルワールス式を満足する水の量以上になるようにされる。
【0037】
本発明の調製方法の工程c)の第2の好ましい実施形態によると、工程b)からの部分的に乾燥した反応混合物、すなわち、重量による量hの水を含有している反応混合物がオートクレーブに導入され、質量Hの蒸留水がオートクレーブの底部に導入される。水の全体的な導入は、オートクレーブ中の水の全量が、ファンデルワールス式を満足する水の量以上になるようにされる。
【0038】
本発明の調製方法の工程c)の第3の好ましい実施形態によると、オートクレーブに導入される工程b)からの反応混合物は、水の重量含有量hに部分的に乾燥させられる。水の全体的な導入は、オートクレーブ中の水の全量、すなわち、乾燥反応混合物を構成するEU−1ゼオライトの固体前駆体の固相中に含まれる水の量が、ファンデルワールス式を満足する水の量以上となるようにされる。
【0039】
第3の好ましい実施形態によると、蒸留水はオートクレーブの底部に導入されない。
【0040】
本発明の調製方法の工程c)は、好ましくは、上記の第1および第2の実施形態に従って行われる。
【0041】
本発明の調製方法の工程b)からの乾燥反応混合物は、有利には、工程c)のために以下の水熱条件に付される:固体EU−1の結晶が生ずるまでの、自己生成反応圧力、120〜220℃の範囲、好ましくは140〜200℃の範囲、非常に好ましくは150〜190℃の範囲の温度。
【0042】
EU−1ゼオライトの結晶を得るために必要な反応時間は、反応混合物中の試薬の組成および反応温度に応じて、一般的には1時間と数月の間で変動するが、好ましくは1日〜3週間の範囲であり、より好ましくは2〜8日の範囲である。
【0043】
本発明の調製方法の工程c)の終了時に、得られた固体結晶相は洗浄される。本発明の調製方法を用いて得られた構造型EUOを有するEU−1ゼオライトは、合成時(as-synthesized)であると言われる。それは、次いで、いつでも次の工程、例えば、乾燥、脱水および焼成および/またはイオン交換をする状態になっている。これらの工程のために、当業者に知られているあらゆる従来の方法が利用され得る。
【0044】
そのようにして得られたEU−1ゼオライトは、X線回折法によって確認される。その結晶化度は、回折図から、所与の結晶化度を有する構造型EUOを有する基準ゼオライトとの比較によって計算される。本願の実施例において、構造型EUOを有する基準ゼオライトは、実施例1の本発明の方法を用いて調製されたEU−1ゼオライトであるように選択された;その結晶化度は、それ故に、100%に固定された。結晶化度は、バックグランドノイズの減算後の、13〜32°の回折角2θの範囲での、構造型EUOを有する基準ゼオライトのピークの表面積に対する、分析された固体のピークの表面積の比に対応する。
【0045】
本発明の調製方法によって得られたEU−1ゼオライトは、構造型EUOを有するゼオライトの回折図に従う回折図を有し、それは、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、非常に好ましくは98%超である結晶化度を有する。
【0046】
本発明の10〜100の範囲のXO/Y比を有するEU−1ゼオライトを調製する方法は、それ故に、当業者に知られている調製方法により得られたEU−1ゼオライトの結晶化度より大きい結晶化度を有するEU−1ゼオライトが得られ得ることを意味する。
【0047】
本発明の調製方法によって得られたEU−1ゼオライトは、好ましくは、本発明の方法の工程b)も工程c)も包含しない調製方法によって得られたEU−1ゼオライトの結晶化度より10%高い、好ましくは20%高い結晶化度を有する。
【0048】
以下の実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0049】
(実施例)
(実施例1:本発明の調製方法を用いた、40のSiO/Al比および0.09のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
ヘキサメトニウムヒドロキシドの水溶液が、臭化ヘキサメトニウム(Acros)6gを酸化銀(Alfa Aesar)4.6gと蒸留水12g中において反応させることによって調製された。この混合物は、遮光下に終夜攪拌された。ろ過によってAgBr沈殿を分離除去した後、25%のヘキサメトニウムヒドロキシドを含有する溶液が回収された。次に、この溶液9.41gが、コロイダルシリカ(Ludox(登録商標)HS40,Sigma Aldrich)9.97gおよび蒸留水26.9gに加えられた。30分間にわたって激しく攪拌した後、アルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)0.31gおよび蒸留水13.4gによって形成された溶液が加えられた。この混合物は、2時間にわたって成熟させられた。
【0050】
反応混合物のモル組成は以下の通りであった。
【0051】
【化2】

【0052】
反応混合物は、次いで、攪拌しながら、痕跡量の水も有しない(h=0%)乾燥粉体が得られるまで80℃で加熱することによって乾燥させられた。この乾燥粉体5gがステンレス鋼支持体の上に置かれ、このステンレス鋼支持体は、容積V=100mLを有するステンレス鋼製オートクレーブの中央部分に位置していた。蒸留水(H=5g)5mLが、オートクレーブの底部に導入された。オートクレーブ中の水の全量は、5gに等しかった。ファンデルワールス式により、0.5gの水の量は、180℃で100mLのオートクレーブ中に液相を生じさせるために十分である。それ故に、水熱処理の間、液相が存在していた。水熱処理は、オートクレーブを換気型50Lバインダオーブン(Binder oven)に導入することによって180℃で7日の期間にわたって行われた。生成物が回収され、蒸留水500mLにより洗浄され、100℃で乾燥させられた。
【0053】
X線回折分析により、サンプルは、EU−1ゼオライトに完全に変換されたことが示された。このサンプルの結晶化度は、基準として利用され、任意に100%に固定された。
【0054】
(比較例2)
このサンプルは、オートクレーブの底部に蒸留水が導入されなかった(H=0g)ことおよびオートクレーブ中の水の全量が0mLに等しかったことを除き実施例1(h=0%)において記載された操作手順を用いて調製された。
【0055】
180℃での水熱処理7日の後、X線回折分析により、サンプルは依然として完全に無定形であることが示された。
【0056】
(実施例3:本発明の調製方法を用いた、40のSiO/Al比および0.09のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
このサンプルは、実施例1において記載された操作手順を用いて調製されたが、乾燥は、乾燥反応混合物が水の重量による水含有量h=15%を有していた時に停止させられた。蒸留水は、オートクレーブの底部に導入されなかった(H=0g)。オートクレーブ中の水の全量は0.75gに等しかった。180℃での水熱処理7日の後、X線回折分析により、サンプルは、EU−1ゼオライトに完全に変換されたことが示された。サンプルの結晶化度は、実施例1において生じさせられた基準サンプルと比較して95%であった。
【0057】
(実施例4:本発明の調製方法を用いた、40のSiO/Al比および0.09のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
このサンプルは、180℃での水熱処理が3日後に停止させられたことを除き、実施例1において記載された操作手順を用いて調製された(h=0%およびH=5g)。X線回折分析により、サンプルはEU−1ゼオライトに変換されたことおよびサンプルの結晶化度は、実施例1において生じさせられた基準サンプルと比較して99%であったことが示された。
【0058】
(実施例5:本発明の調製方法を用いた、30のSiO/Al比および0.15のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
ヘキサメトニウムヒドロキシド溶液は、実施例1において記載されたようにして調製された。次に、この溶液9.36gが、コロイダルシリカ(Ludox(登録商標)HS40,Sigma Aldrich)9.92gおよび蒸留水26.7gに加えられた。30分間にわたって激しく攪拌した後、アルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)0.62gおよび蒸留水13.3gによって形成された溶液が加えられた。この混合物は、2時間にわったって成熟させられた。
【0059】
反応混合物のモル組成は以下の通りであった。
【0060】
【化3】

【0061】
乾燥および水熱処理は、実施例1において記載されたようにして行われた(h=0%およびH=5g)。生成物は回収され、蒸留水(500mL)により洗浄され、100℃で乾燥させられた。
【0062】
X線回折分析により、サンプルは、EU−1ゼオライトに完全に変換されたことが示された。このサンプルの結晶化度は、実施例1において生じさせられた基準サンプルと比較して90%であった。
【0063】
(実施例6:本発明の調製方法を用いた、60のSiO/Al比および0.06のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
ヘキサメトニウムヒドロキシド水溶液は実施例1において記載されたようにして調製された。次に、この溶液9.42gがコロイダルシリカ(Ludox(登録商標)HS40,Sigma Aldrich)9.98gおよび蒸留水27.0gに加えられた。30分間にわたって激しく攪拌した後、アルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)0.21gおよび蒸留水13.5gによって形成された溶液が加えられた。この混合物は、2時間にわたって成熟させられた。
【0064】
反応混合物のモル組成は以下の通りであった。
【0065】
【化4】

【0066】
乾燥および水熱処理は、実施例1において記載されたようにして行われた(h=0%およびH=5g)。生成物が回収され、蒸留水(500mL)により洗浄され、100℃で乾燥させられた。
【0067】
X線回折分析により、サンプルは、EU−1ゼオライトに完全に変換されたことが示された。このサンプルの結晶化度は、実施例1において生じさせられた基準サンプルと比較して99%であった。
【0068】
(実施例7:本発明の調製方法を用いた、40のSiO/Al比および0のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
ヘキサメトニウムヒドロキシド水溶液は実施例1において記載されたようにして調製された。次に、この溶液9.44gが、焼成シリカ(Areosil(登録商標) 380,Degussa)4.00gおよび蒸留水31.0gに加えられた。30分間にわたって激しく攪拌した後、アルミニウムイソプロポキシド(Aldrich)0.68gおよび蒸留水15.5gによって形成された溶液が加えられた。この混合物は、2時間にわたって成熟させられた。
【0069】
反応混合物のモル組成は次の通りであった。
【0070】
【化5】

【0071】
乾燥および水熱処理は、実施例1において記載されたようにして行われた(h=0%およびH=5g)。生成物は回収され、蒸留水(500mL)により洗浄され、100℃で乾燥させられた。
【0072】
X線回折分析により、サンプルは、EU−1ゼオライトに完全に変換されたことが示された。このサンプルの結晶化度は、実施例1において生じさせられた基準サンプルと比較して98%であった。
【0073】
(比較例8:本発明の方法の乾燥工程b)も工程c)も包含しないが、従来の水熱処理を包含する方法を用いた、40のSiO/Al比および0.09のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
ヘキサメトニウムヒドロキシド水溶液は、実施例1において記載されたようにして調製された。次に、この溶液9.97gが、コロイダルシリカ(Ludox(登録商標)HS40,Sigma Aldrich)9.41gおよび蒸留水26.9gに加えられた。30分間にわたって激しく攪拌した後、アルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)0.31gおよび蒸留水13.4gによって形成された溶液が加えられた。この混合物は、2時間にわたって成熟させられた。
【0074】
反応混合物のモル組成は以下の通りであった。
【0075】
【化6】

【0076】
反応混合物は、容積V=100mLを有するステンレス鋼製のオートクレーブ(オートクレーブ炉)に移された。水熱処理は、オートクレーブを換気型50Lバインダオーブン(Binder oven)に導入することによって、攪拌することなく7日の期間にわたって180℃で行われた。生成物は回収され、蒸留水(500mL)により洗浄され、100℃で乾燥させられた。
【0077】
X線回折分析により、サンプルは、EU−1ゼオライトに完全に変換されたことが示された。このサンプルの結晶化度は、実施例1において生じさせられた基準サンプルと比較して81%であった。
【0078】
(比較例9:本発明の方法の乾燥工程b)も工程c)も包含しないが、従来の水熱処理を包含する方法を用いた、40のSiO/Al比および0.09のNa/SiO比を有するEU−1ゼオライトの調製)
このサンプルは、比較例8において記載された操作手順を用いて調製された。対照的に、180℃での水熱処理は、3日後に停止させられた。X線回折分析により、サンプルは、EU−1ゼオライトに部分的に変換されたことが示された。サンプルの一部は、依然として無定形であった。結晶化度は、実施例1において生じさせられた基準サンプルと比較して49%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜100の範囲のXO/Y比を有するEU−1ゼオライトを調製する方法であって、
a)水性媒体中で、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、少なくとも1種の酸化物Yの少なくとも1種の源および少なくとも1種の有機テンプレートQを混合する工程であって、Xはケイ素および/またはゲルマニウムから選択され、Yはアルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素から選択され、前記反応混合物は、
XO/Y :10〜100;
OH/XO :0.1〜6.0;
(M+Q)/Y :0.5〜100;
Q/(M+Q) :0.1〜1;
O/XO :1〜100;
/XO :0〜0.2
(式中、Mはアルカリ金属およびアンモニウムから選択される一価カチオンを示す)
のモル組成を有する、工程と、
b)工程a)から得られた反応混合物を200℃未満の温度で乾燥させる工程と、
c)工程b)から得られた乾燥反応混合物をオートクレーブ中で水熱処理する工程であって、該乾燥反応混合物は、オートクレーブの底部において液相と接触しない、工程と
を包含する方法。
【請求項2】
Xはケイ素であり、Yはアルミニウムであり、Qはヘキサメトニウムヒドロキシドである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
/XOは0〜0.15の範囲である、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
/XOは0.01〜0.12の範囲である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項5】
はナトリウムNaである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項6】
Na/SiO比は0.01〜0.12の範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項7】
LTA、LTL、FAU、MOR、MAZ、OFF、FER、ERI、BEA、MFI、MTW、MTT、LEV、TON、NESまたはEUOの構造型を有する結晶固体を含む種結晶が用いられ、結晶種は、一般的に、0.0001〜0.1XOの範囲の種結晶/XOの重量比で加えられる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項8】
反応混合物を乾燥させる工程b)は、120℃未満の温度で行われる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項9】
反応混合物を乾燥させる工程b)は、100℃未満の温度で行われる、請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
工程b)から得られた、完全に乾燥させられた反応混合物、すなわち、0%に等しい重量による量hの水を含有する反応混合物がオートクレーブに導入され、質量Hの蒸留水がオートクレーブの底部に導入される、請求項1〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項11】
工程b)から得られた、部分的に乾燥させられた反応混合物、すなわち、重量による量hの水を含有する反応混合物がオートクレーブに導入され、質量Hの蒸留水がオートクレーブの底部に導入される、請求項1〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項12】
水の質量含有量hに部分的に乾燥させられた工程b)から得られた反応混合物が、オートクレーブに導入される、請求項1〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項13】
工程c)は、自己生成反応圧力および120〜200℃の範囲の温度の水熱条件下に行われる、請求項1〜12のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項14】
反応時間は、1時間と数月との間で変動する、請求項1〜13のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項15】
反応時間は、1日と3週間との間で変動する、請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
反応時間は、2〜8日の範囲である、請求項14または15に記載の調製方法。

【公表番号】特表2010−527902(P2010−527902A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509858(P2010−509858)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000525
【国際公開番号】WO2008/152214
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】