説明

FPU用カバー

【課題】FPU装置の保護カバーであって、雨水に対し撥水性を有し直射日光による熱の蓄積や機器本体への熱伝導を防ぐことができ、機器本体の放熱性を損なわないFPU用カバーを提供することを目的とする。
【解決手段】前方にアンテナ8と後方に操作部7gとを備えるFPU装置の機器本体7の上面部、両側面部及び背面部を覆うFPU用カバー10であり、FPU用カバー10が、上面部を覆う上面シート部11と、上面シート部11の両側方向に延在し両側面部を覆う第1及び第2側面シート部と、上面シート部11の後方に設けられ、背面部を覆う背面カバー部14とからなり、上面シート部11の内側には機器本体7の上面部と上面シート部11との間に空隙を形成する緩衝部材18が設けられるとともに、上面シート部11の内側には環状の張力部材19が奥行き方向に一対設けられ、かつ第1及び第2側面シート部の内面には各々一個の張力部材19が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ中継用のマイクロ波局外中継機器(以下、FPU装置と称する)を覆って雨水や日除けとして用いるFPU用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ撮影用カメラでは、図6(a),(b)に示すように、カメラ本体を電磁波シールドカバーで覆ってカメラ本体内や外部からの電磁波を遮断している。同図を参照して説明すると、従来のシールドカバー1は、ナイロン生地に銀繊維を織り込んだシートを用い、開口部としてレンズフード被覆部2及びビューファインダー被覆部3及び裾部を有する。レンズフード被覆部2及びビューファインダー被覆部3の先端には各々ヒモ通し部が形成され、このヒモ通し部にヒモを通して絞れるようにしてある。シールドカバー1のビューファインダー部6側上部は、カメラ5のビューファインダー6が上下移動可能なようにゆとりをもたせている。シールドカバー1の裾部はマジックテープ(登録商標)4を有し、このシールドカバー1をカメラ5に保持できる。シールドカバー1には、アース部7を同じ材料で短冊状に縫いつけてあり、このアース部7はハトメを有し、このハトメ部分により、シールドカバー1が、カメラ5に備え付けられる移動用三脚に連結できるようにしてある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−172293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電磁波シールドカバーは、テレビ撮影用カメラを電磁波から保護して映像信号にノイズが混入するのを防止して良好な映像を得ることを主な目的とし、防水や日除けを行う場合にはこの電磁波シールドカバーの外面に防水性シートや日除け効果を有するシートを設けている。しかし、日除け効果を有するシートを電磁波シールドカバーに設けた場合、機器から発生する熱が蓄積されて好ましいものではないし、また、直射日光による熱が電磁波シールドカバーに蓄積されるおそれがあった。このように電磁波シールド以外の保護シートを複数使用すると、機器の放熱性や直射日光による熱の蓄積により機器に悪影響を与えるおそれがあった。一方、テレビ中継用に用いられるFPUは、戸外で使用することを前提とした装置であって、雨水に対し強い構造でもあり、防水性としては雨水に対し撥水性を有するものでよく、直射日光による熱の蓄積や機器本体への熱伝導を防止できるものが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、FPU装置の保護カバーであって、雨水に対し撥水性を有し直射日光による熱の蓄積や機器本体への熱伝導を防ぐことができ、機器本体の放熱性を損なわないFPU用カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を達成したものであり、請求項1の発明は、前方にアンテナと後方に操作部とを備えるFPU装置の機器本体の上面部、両側面部及び背面部を覆うFPU用カバーであって、
前記FPU用カバーが、撥水加工した樹脂製シートからなり、前記上面部を覆う上面シート部と、該上面シート部の両側方向に延在し前記両側面部を覆う第1及び第2側面シート部と、該上面シート部の後方に設けられ、前記背面部を覆う背面カバー部とからなり、 該上面シート部の内側には前記機器本体の上面部と該上面シート部との間に空隙を形成する緩衝部材が設けられるとともに、前記上面シート部の内側には環状の張力部材が奥行き方向に一対設けられ、かつ前記第1及び第2側面シート部の内面には各々一個の張力部材が設けられることを特徴とするFPU用カバーである。
【0007】
また、請求項2の発明は、前記第1及び第2側面シート部が、前記機器本体の後方主要部を覆う側面保護部と該機器本体の前端部を覆うベルト部とからなり、該側面保護部と該ベルト部との下端縁部に、前記FPU用カバーを前記機器本体に保持するためのマジックテープを備える帯状部がそれぞれ設けられ、前記背面カバー部と前記第1及び第2側面シート部とを切り離し自在としたファスナーが設けられ、前記背面カバー部には前記機器本体の背面側の操作部を視認できる透明窓が設けられ、かつ、該背面カバー部を折り返して前記上面シート部に載置できる傾斜面部を有することを特徴とする請求項1に記載のFPU用カバーである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、撥水加工した樹脂製シートからなり、FPU用カバーの上面シート部と第1及び第2側面シート部とのそれぞれの内側に環状の張力部材が内蔵されて、上面シート部と両側面シート部はこの環状の張力部材により弛んだり撓むことなく張った状態に張設されており、かつ上面シート部の内面に緩衝部材を設けることで、上面シート部は緩衝部材で支持され、FPU装置の機器本体の上面部と上面シート部との間に空隙が形成され、この空隙によって、上面シート部等に直射日光による熱が機器本体に直接伝導して機器本体へ悪影響を与えるのを軽減することができる利点がある。また、上面シート部と機器本体の上面部との空隙には、外気が流入して直射日光による熱が蓄積し難くなるし、直射日光からFPU装置を保護することができる。また、この空隙に外気が流入することによって、機器本体を外気で空冷し、機器本体自体の放熱性を損なうことがない利点がある。また、FPU用カバーが撥水加工した樹脂製シートであり、上面シート部と第1及び第2側面シート部が張力部材で張設されているので、雨水が溜まったりするのを軽減することができるし、また、雨水を弾いてFPU装置を保護することができる利点がある。
【0009】
また、請求項2の発明によれば、第1と第2側面シート部がFPU装置の機器本体の後方主要部を覆う側面保護部と機器本体の前端部を覆うベルト部とからなり、側面保護部とベルト部と間の切欠部からは機器本体の側面部が露出しており、機器自体の放熱性を損なうことがない。また、側面保護部とベルト部との下縁部には、マジックテープを備える帯状部が設けられ、この帯状部によりFPU用カバーを機器本体に保持することができる。また、背面カバー部に設けた透明窓を通して操作部が視認できるし、FPU装置の操作時には、ファスナーを開けて第1及び第2側面シートから背面カバー部のみを切り離し、機器本体の背面側の操作部を露出させて操作することができる。また、操作部と背面カバー部との下方の空間を通して操作することも可能である。また、ファスナーを開けて背面カバー部を裏返すように上方に折り返して背面カバー部の傾斜面部を上面シート部の後端縁部に接触させ、背面カバー部を上面シート部に載置することができるので、操作部の操作がし易い利点がある。また、FPU用カバーを使用しない場合には、ファスナーを開けて背面カバー部を内側に折り曲げてコンパクトに畳み込んで保管することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るFPU用カバーの一実施例の使用例を示す側面図である。
【図2】(a)は図1の使用例の上面図、(b)はその側面図、(c)はその背面図、(d)はその前面図である。
【図3】本実施例の外観を示し、(a)は本実施例のFPU用カバーの一部切欠上面図、(b)はその一部切欠側面図、(c)はその一部切背面図である。
【図4】(a)は本実施例のFPU用カバーの上面図、(b)はその背面図、(c)はFPU用カバーの上面シート部の内面図、(d)はFPU用カバーの側面図、(e)はFPU用カバーの側面シート部の内面図である。
【図5】本実施例の折り畳み図であり、(a)はベルト部を折り畳み、上面シート部の前方部を折り曲げる過程を示す側面図、(b)は背面シート部と上面シート部の前方部とを折り畳んだ側面図、(c)は帯状部を折り畳む過程の側面図、(d)はFPU用カバーの折り畳みが完了した上面図とその側面図である。
【図6】(a)は従来の電磁波シールドカバーの使用例を示す側面図、(b)はその背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るFPU用カバーの一実施例について説明する。先ず、本実施例のFPU用カバーの使用例を示す図1,図2と本実施例の外観を示す図3とを参照し説明する。FPU装置は三脚9に装着され、FPU装置の機器本体7の前面部7aにアンテナ8が設けられ、機器本体7の背面部7eに操作部7gが設けられている。FPU用カバー10は、機器本体7の前面部7a、側面部7c,7dの一部、及び底面部7fを除き、機器本体7の上面部7b、側面部7c,7d、及び背面部7eを覆う保護カバーである。
【0012】
FPU用カバー10は、上面部7bを覆う上面シート部11と、上面シート部11の両側方向に延在し、側面部7c,7dを覆う側面シート部12,13と、上面シート部11の後方の背面部7eを覆う蓋状の背面カバー部14とからなり、上面シート部11は前方に庇状部11aを有する。また、側面シート部12,13には、折り畳みの際に妨げとなるシート部分を略U字状に切り欠いた切欠部を有し、この切欠部から機器本体7の側面部7c,7dの一部が露出し、この露出部は外気による機器本体7自体の放熱にも有効である。
【0013】
また、FPU用カバー10にはその両側面側にファスナー15が設けられ、背面カバー部14が側面シート部12,13から切り離し自在であり、一側方のファスナー15は、その一方のファスナー片が側面シート部12の端縁に縫製され、他側方のファスナー片が背面カバー部14の一側端縁に縫製され、このファスナー15の終端部が上面シート部11の側縁部に至る。また、他側方のファスナー15は、同様に、その一方のファスナー片が側面シート部13の端縁に縫製され、他側方のファスナー片が背面カバー部14の他側端縁に縫製され、ファスナー15の終端部が上面シート部11の側縁部に至る。
【0014】
背面カバー部14は、機器本体7の上面部7bを覆って背面部側に張り出す上面シート部11の後端縁部に設けられ、その上部が傾斜面部14aであり、その底部が開口した蓋状であり、背面カバー部14の背面側には機器本体7の操作部7gが視認できるように、ビニール等の透明樹脂シートによる透明窓14bが設けられる。背面カバー部14は、操作部7gを操作する際に両ファスナー15を開けて、図1に示すように、背面カバー部14を矢印A方向に裏返して上面シート部11側へと折り返し、背面カバー部14の傾斜面部14aを上面シート部11の後端縁部に接触させて載置することができる。
【0015】
側面シート部12は、上記U字状の切欠部を挟んで機器本体7の後方主要部を覆う側面保護部12aと機器本体7の前端部側のベルト部12bとからなり、同様に、側面シート部13は、切欠部を挟んで機器本体7の後方主要部を覆う側面保護部13aと機器本体7の前端部側のベルト部13bとからなる。側面保護部12a,13aとベルト部12b,13bのそれぞれの下端縁部には、FPU用カバー10を機器本体7に保持するためのマジックテープ16a,17aをそれぞれ設けた帯状部16,17が縫製される(図3(b))。
【0016】
また、FPU用カバー10には、図4(a)〜(e)を参照し説明すると、上面シート部11の内面側にポケット部11bが設けられ、これらのポケット部11bに緩衝部材18が装着される。ポケット部11bは、上面シート部11の前後にそれぞれ二箇所設けられ、これらのポケット部11bに緩衝部材18が装着される。機器本体7の上面部7bと上面シート部11との間には緩衝部材18による空隙が形成される。また、緩衝部材18は、例えば、発泡性樹脂等が用いられ、緩衝部材18はポケット部11bに装着される以外に接着或いは縫製等により固定してもよく、実施例に限定するものではない。
【0017】
さらに、上面シート部11と側面シート部12,13には、弛みや撓みが生じないように、それぞれの内面側に張力部材19が内蔵されている。張力部材19は、ナイロンチューブやナイロン製の軸状部材を環状とした弾性を有するスリーブ部材である。張力部材19は、上面シート部11の内面側の前端縁部、後端縁部、両側縁部、及び中央部に設けたポケット部11cに、張力部材19を挿通して装着され、張力部材19が上面シート部11内面にその奥行き方向に一対設けられている。上面シート部11には、張力部材19が二箇所設けられて弛みや撓みが生じないようにしている。また、側面シート部12,13の側面保護部12a,13aの内面側にもポケット部12c,13cがそれぞれ設けられ、これらのポケット部12c,13cに張力部材19を挿通し、側面保護部12a,13aのそれぞれに一個の張力部材19が張設され、側面シート部12,13が弛みや撓みが生じないようにしている。
【0018】
上記のように、本実施例のFPU用カバー10は、上面シート部11に緩衝部材18と張力部材19とが内蔵され、かつ側面シート部12,13に張力部材19が内蔵されることによって、張力部材19が上面シート部11及び側面シート部12,13を弛みや撓みが生じないように張設し、かつ緩衝部材18を介在させることにより、機器本体7の上面部7bと上面シート部11との間に空隙を形成している。この空隙には、FPU用カバー10に直射日光が当たったとしても、外気が常に流入して機器本体7を外気により空冷することができるし、機器本体7自体の放熱性を損なうことがない。
【0019】
上記実施例では、FPU用カバー10の材質が紫外線吸収剤を練り込んだ樹脂製シートからなり、樹脂製シートの表面にはフッ素系樹脂加工による撥水加工或いは吸水防止加工を施したものである。例えば、この樹脂製シートはPETフィルムが用いられ、日光の反射効率の良い銀色でその厚さは25〜150μmのものが用いられる。なお、FPU用カバー10は、紫外線に強く、その表面に撥水加工或いは吸水防止加工が施された樹脂製シートであれば、この実施例に限定するものではない。
【0020】
次に、本実施例の保管時の折り畳み例について図5を参照し説明する。先ず、同図(a)に示すように、両側のファスナー15を開けてFPU用カバー10の背面カバー部14を内側に畳み込むとともに、FPU用カバー10のベルト部12b,13bと帯状部16とを内側に畳み込み、上側シート部11の前方部分を矢印C方向に折り曲げて上側シート部11の後方部分に合わせて、同図(b)に示すように、畳み込む。続いて、側面保護部12a,13aを内側に畳み込み、帯状部16を同図(c)に示すように、左右から畳み込み、マジックテープ17aで固定し、同図(d)に示すように、板状形状に畳み込むことができる。このように保管時には、FPU用カバー10をコンパクトに畳み込んで略方形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の利用分野は、FPU装置の機器本体における保護カバーであり、FPU装置の機器本体を雨水や直射日光から保護し、直射日光による熱の蓄積や熱伝導を防止し、機器本体自体の放熱性を損なうことがないFPU用カバーとして利用することができる。
【符号の説明】
【0022】
7 FPU装置の機器本体
8 アンテナ
9 三脚
10 FPU用カバー
11 上面シート部
11a 庇状部
11b,11c,12c,13c ポケット部
12,13 側面シート部
12a,13a 側面保護部
12b,13b ベルト部
14 背面カバー部
14a 傾斜面部
14b 透明窓
15 ファスナー
16,17 帯状部
16a,17a マジックテープ
18 緩衝部材
19 張力部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方にアンテナと後方に操作部とを備えるFPU装置の機器本体の上面部、両側面部及び背面部を覆うFPU用カバーであって、
前記FPU用カバーが、撥水加工した樹脂製シートからなり、前記上面部を覆う上面シート部と、該上面シート部の両側方向に延在し前記両側面部を覆う第1及び第2側面シート部と、該上面シート部の後方に設けられ、前記背面部を覆う背面カバー部とからなり、 該上面シート部の内側には前記機器本体の上面部と該上面シート部との間に空隙を形成する緩衝部材が設けられるとともに、前記上面シート部の内側には環状の張力部材が奥行き方向に一対設けられ、かつ前記第1及び第2側面シート部の内面には各々一個の張力部材が設けられることを特徴とするFPU用カバー。
【請求項2】
前記第1及び第2側面シート部が、前記機器本体の後方主要部を覆う側面保護部と該機器本体の前端部を覆うベルト部とからなり、該側面保護部と該ベルト部との下端縁部に、前記FPU用カバーを前記機器本体に保持するためのマジックテープ(登録商標)を備える帯状部がそれぞれ設けられ、前記背面カバー部と前記第1及び第2側面シート部とを切り離し自在としたファスナーが設けられ、前記背面カバー部には前記機器本体の背面側の操作部を視認できる透明窓が設けられ、かつ、該背面カバー部を折り返して前記上面シート部に載置できる傾斜面部を有することを特徴とする請求項1に記載のFPU用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−267644(P2010−267644A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115255(P2009−115255)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000209751)池上通信機株式会社 (123)
【Fターム(参考)】