説明

Fc含有タンパク質の精製方法

本発明は、青色色素親和性クロマトグラフィを介する、Fc含有タンパク質の精製のため、特に、Fc含有タンパク質調製物における遊離Fc部分の量を低減するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質精製に分野に属する。より具体的には、これは、青色色素親和性クロマトグラフィを介し、具体的には、Fc含有タンパク質調製において遊離のFc部分の量を減少させるための、Fc含有タンパク質の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、いわゆる「生物学的製剤」である薬物として商業上重要になっている。最も大きな挑戦の1つは、商業的スケールでのタンパク質の精製のための費用効率が高く、且つ高効率な方法の開発である。現在多くの方法は、タンパク質の大スケール調製用に利用できるが、細胞培養上清等の粗生成物は、所望の生成物だけでなく、当該所望の生成物から分離が困難な不純物も含有する。細胞発現組み換えタンパク質制生物の細胞培養物上清は、不純物含量がより少ない可能性があるが、当該細胞が血清未含有培地で増殖する場合、当該宿主細胞タンパク質(HCP)は、まだなお精製プロセスの間に除去されるような状態のままである。さらに保健機関は、ヒト投与を意図するタンパク質の純度について、高い基準を要求する。
【0003】
タンパク質を精製するために幅広く使用される、多数のクロマトグラフ法が知られている。親和性クロマトグラフィ等の方法が一般的に使用されている。
【0004】
青色色素親和性クロマトグラフィは、マトリクス(例えば、セファロース又はアガロース)に結合する、色素−リガンド、シバクロン・ブルー(Cibacron Blue)をベースとする。ブルーセファロース(Blue Sepharose)樹脂において、当該リガンドのシバクロン・ブルーF3G−Aは、クロロトリアジン環(Vlatakis G et al., 1987)を介して、セファロース(商標)に共有結合する。ブルーセファロースは、主にインターフェロンベータ(Vlatakis G et al., 1987)及びアルブミンの精製に使用されている。市販の青色色素親和性マトリクスの例としては、ブルーセファロース6FF樹脂(GE Healthcare)、ブルーセファロースCL−6B(GE Healthcare)、ブルートリサクリル(Blue Trisacryl)M(Pall/BioSepra)、Toyopearl AF-Blue (Tosoh Bioscience)、又はシバクロン・ブルー F3GA (Polysciences Inc.)がある。
【0005】
イオン交換クロマトグラフィシステムは、主に電荷の違いに基づいてタンパク質の分離のために使用される。
【0006】
親和性クロマトグラフィは、クロマトグラフィ樹脂に固定化される別のタンパク質に対する、注目のタンパク質の親和性に基づく。当該固定化リガンドの例は、特定の免疫グロブリン(Ig)のFc部分に特異性を有する、細菌細胞壁タンパク質、タンパク質A及びタンパク質Gである。タンパク質A及びタンパク質Gの両方とも、IgG抗体への強い親和性を有するが、他の免疫グロブリンクラス及びアイソタイプに同様に様々な親和性を有する。
【0007】
タンパク質A、タンパク質G、及びタンパク質L親和性クロマトグラフィは、抗体の単離及び精製に一般的に使用される。タンパク質A及びタンパク質Gのための結合部位が、免疫グロブリンのFc領域にあるため、タンパク質A及びタンパク質G(又はタンパク質A/G)親和性クロマトグラフィは、いわゆるFc融合タンパク質の精製も可能である。タンパク質Lは、Ig軽鎖に結合するので、軽鎖を含む抗体の精製に使用される。
【0008】
抗体、又は免疫グロブリン(Ig)は、ジスルフィド結合で共に結合された軽鎖及び重鎖からなる。各鎖のアミノ末端に位置する第一のドメインは、アミノ酸配列が可変であり、抗体結合特異性の幅広いスペクトルを提供する。これらのドメインは、可変重領域(VH)及び可変軽領域(VL)として知られている。各鎖のその他のドメインは、アミノ酸配列において比較的不変であり、定常重領域(CH)及び定常軽領域(CL)として知られる。抗体の主要なクラスは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり;及びこれらのクラスは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられる。例えば、IgGクラスには、4つのサブクラス、特に、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4がある。
【0009】
抗体クラス間における違いは、免疫グロブリンクラスによって、1〜4個の定常ドメイン(CH1〜CH4)を含む、重鎖定常領域における違いに由来する。いわゆるヒンジ領域は、CH1ドメインとCH2ドメインとの間に位置する。当該ヒンジ領域は、特にタンパク質分解性の開裂に感受性があり、当該タンパク質分解により、開裂の正確な部位によって、2又は3つのフラグメントが生じる。CH2及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域の一部は、免疫グロブリンの「Fc」部分とも呼ばれる。すなわち、抗体はFc含有タンパク質である。Fc含有タンパク質の別のタイプは、いわゆるFc融合タンパク質である。
【0010】
治療用タンパク質として使用される複数の抗体が知られる。市販の組み換え抗体の例としては、例えば、アルキシシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、アダリムマブ、セツキシマブ、エファリズマブ、イブリツモマブ、ベバシズマブ、又はオマリズマブがある。
【0011】
Fc含有タンパク質の別のタイプは、いわゆるFc融合タンパク質である。Fc融合タンパク質は、抗体のFab領域、又は受容体の結合領域等のタンパク質のエフェクター領域からなるキメラタンパク質であり、多くの場合免疫グロブリンG(IgG)である免疫グロブリンのFc領域に融合する。Fc融合タンパク質は、Fc領域によりに与えられる利点を呈するような治療剤として一般に使用される。Fc領域によりに与えられる利点としては、例えば以下のものがある。
IgGアイソタイプにより変化する親和性を有する、タンパク質A又はタンパク質Gアフィニティクロマトグラフィを用いる精製能力。ヒトIgG1、IgG2及びIgG4は、タンパク質Aに強く結合し、IgG3を含む全てのヒトIgGはタンパク質Gに強く結合する;
リソソーム分解から保護するサルベージレポーターFcRnにFc領域が結合するため、循環系における半減期の増加;
Fc融合タンパク質の医療的使用によって、Fcエフェクター機能が所望されてもよい。当該エフェクター機能には、Fc受容体(FcR)との相互作用を介する抗体依存性細胞毒性(ADCC)、及び補体成分1q(C1q)に結合することによる補体依存性細胞毒性(CDC)がある。IgGアイソフォームは、異なるレベルのエフェクター機能を発揮する。ヒトIgG1及びIgG3は、強いADCC及びCDC効果をもたらすが、IgG2は、弱いADCC及びCDC効果をもたらす。
【0012】
血清半減期及びエフェクター機能は、Fc融合タンパク質として意図される治療的使用により、それぞれFcRn、FcvRn及びC1qへの結合を増加又は減少させるようFc領域を操作することにより調整できる。
【0013】
ADCCにおいて、抗体のFc領域は、ナチュラルキラー及びマクロファージ等の免疫エフェクターの表面上のFc受容体(FcvR)に結合し、標的細胞のファゴサイトーシス又は分解をもたらす。
【0014】
CDCにおいて、当該抗体は、細胞表面での補体カスケードを引き起こすことにより標的細胞を死滅させる。IgGアイソフォームは、IgG4<IgG2<IgG1≦IgG3の順で増加する、異なるレベルのエフェクター機能を発揮する。ヒトIgG1は、高いADCC及びCDCを示し、病原及び癌細胞に対する治療的使用に最も適する。
【0015】
特定環境下、例えば、標的細胞の枯渇が望まれない場合、エフェクター機能の抑制が必要である。逆に、腫瘍学的使用が意図される抗体の場合、エフェクター機能の増加は、その治療活性を向上させてもよい(Carter et al., 2006)。
【0016】
エフェクター機能の修正は、FcvR又は補体因子の結合を増加させるか、又は減少させるようFc領域を操作することにより達成できる。
【0017】
活性化FcvR(FcγRI、FcvRIIa、FcvRIIIa及びFcvRIIIb)及び阻害FcvR(FcvRIIb)、又は第一補体成分(C1q)へのIgGの結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基に依存する。CH2ドメインの2つの領域は、FcvR及び補体C1q結合にとって重要であり、IgG2及びIgG4において特有の配列を有する。例えば、Kabat et al. (Kabat, E. A., Wu, T. T., Perry, H. M., Gottesman, K. S., and Foeller, C. (1991 )により定義されるEU位置指数による、233〜236の位置におけるIgG2残基のヒトIgG1への置換は、ADCC及びCDC大きく減少させる(Armour et al., 1999 and Shields et al., 2001)。
【0018】
IgGのCH2ドメインにおける多数の変異導入がなされており、ADCC及びCDCに対するその影響が、インビトロ(in vitro)で試験された(Shields et al., 2001 , ldusogie et al., 2001及び2000, Steurer et al., 1995)。特に、E333におけるアラニンへの変異は、ADCC及びCDCの両方を増加させることが報告されている(Idusogie et al., 2001 and 2000)。
【0019】
治療抗体の血清半減期の増加は、その効果を向上させ、血中濃度をより高くさせ、投与品頻度の低下及び用量の低下が可能となる、別の方法である。これは、新生児FcR(FcR)へのFc領域の結合を促進させることにより達成できる。内皮細胞表面で発現するFcRnは、pH依存的な方法でIgGに結合し、分解からそれを保護する。CH2及びCH3ドメイン間の接合に位置する複数の変異は、IgG1の半減期を増加させることがわかっている(Hinton et al., 2004 and Vaccaro et al., 2005)
【0020】
以下の表1は、既知のIgG Fc領域の各種変異の要約である(インビトロジェンのウェブサイトから引用)。
【0021】
【表1】

【0022】
治療用途を有するFc融合タンパク質のあるクラスにおいて、Fc領域は腫瘍壊死因子受容体(TNF−R)スーパーファミリーに属するある受容体の細胞外ドメインに融合している(Locksley et al., 2001 , Bodmer et al., 2002, Bossen et al., 2006)。TNFRファミリーのメンバーの特質は、Naismith and Sprang, 1998等に記載される通り、細胞外ドメインにおけるシステイン豊富な偽性反復(pseudo-repeat)が存在することである。
【0023】
2つのTNF受容体、p55(TNFR1)及びp75(TNFR2)は、TNFスーパーファミリーのメンバーの例である。エタネルセプトは、p75 TNFRの可溶性部分を含むFc融合タンパク質である(例えば、国際公開第91/03553号、国際公開第94/06476号)。商標名エンブレル(Enbrel、登録商標)で、以下の疾患の治療用に市販されており、疾患には子宮内膜症、C型肝炎ウイルス感染、HIV感染、乾癬性関節炎、乾癬、リウマチ様関節炎、喘息、強直性脊椎炎、心不全、移植片対宿主病、肺線維症、クローン病がある。レネルセプトは、ヒトp55 TNF受容体の細胞外成分とヒトIgGのFc部分を含有する融合タンパク質であり、重篤な敗血症及び多発性硬化症の潜在的な治療とされる。
【0024】
OX40も、TNFRスーパーファミリーのメンバーである。OX40−IgG1及びOX40−hIG4mut融合タンパク質は、クローン病等の炎症性及び自己免疫性疾患の治療のために調製されている。
【0025】
BR3とも呼ばれ、BR3−Fcと呼ばれるBAFF−RのFc融合タンパク質は、BAFF(TNFファミリーのB細胞活性化因子)の阻害因子の群由来の可溶性デコイ受容体であり、リウマチ様関節炎(RA)及び全身性エリテマトーデス(SLE)等の自己免疫性疾患の潜在的治療用として開発されている。
【0026】
BCMAは、TNFRスーパーファミリーに属するさらなる受容体である。BCMA−Ig融合タンパク質は、自己免疫疾患を阻害すると報告されている(Melchers, 2003)。
【0027】
TNF−Rスーパーファミリーの別の受容体は、膜貫通活性化因子及びCAML−相互作用物質であるTACIであり(von Bulow and Bram, 1997; 米国特許第5,969,102号, Gross et al., 2000)、これは、2つのシステイン豊富な偽性反復を含む細胞外ドメインを有する。TACIは、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーの2つのメンバーに結合する。リガンドは、BLyS、BAFF、ニュートカイン(neutrokine)−α、TALL−1、zTNF4、又はTHANK(Moore et al., 1999)と呼ばれる。その他のリガンドはAPRIL、TNRFデスリガンド−1又はZTNF2(Hahne et al., 1998)と呼ばれる。
【0028】
IgG Fc領域に融合したTACI受容体の可溶体を含む融合タンパク質が既知であり、TACI−Fcと命名された(国際公開第00/40716号、国際公開第02/094852号)。TACI−Fcは、B細胞へのBLyS及びARPILの結合を阻害する(Xia et al., 2000)。これは自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ様関節炎(RA)及び血液系悪性腫瘍等の治療のため、並びに多発性硬化症(MS)の治療のために開発されている。これに加え、アタシセプト(atacicept)と呼ばれるTACI−Fcは、多発性骨髄腫(MM)(Novak et al., 2004)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)及びヴァルデンストレームマクロ・グロブリン血症(WM)のために開発されている。
【0029】
Fc融合タンパク質の別の例は、単一のインターフェロンベータタンパク質に結合したFc領域からなる。インターフェロンベータ(インターフェロン−β又はIFN−β)は、サイトカインのクラスに属する天然の可溶性糖タンパク質である。インターフェロン(IFN)は、抗ウイルス、抗増殖性及び免疫調節性特性等の幅広い生物的活性を有する。インターフェロンベータは、いわゆる生物学的製剤である、治療タンパク質薬物として、例えば、多発性硬化症、癌、又はSARS又はC型肝炎ウイルス感染等のウイルス性疾患等の多数の疾患において使用される。
【0030】
IgG Fc領域に融合した生物学的に活性な分子としてのIFN−βを含有する融合タンパク質は、国際公開第2005/001025号で報告されている。
【0031】
Fc含有タンパク質、特に抗体及びFc融合タンパク質の治療用途があるため、ヒト投与のために十分な、大量の高純度なタンパク質が必要である。
【発明の概要】
【0032】
Fc含有タンパク質の製造において直面する可能性のある問題の1つは、「遊離のFc部分」、すなわちFc含有タンパク質由来のポリペプチド断片であって、抗体可変領域にも、通常Fc融合タンパク質に存在する他の特定のタンパク質又はドメインにも融合しない、断片の存在である。当該遊離のFc部分は、ヘテロ二量体の融合タンパク質、例えばFc領域に融合した単一のタンパク質の発現、又は注目のタンパク質のタンパク質分解性開裂が原因である可能性がある。
【0033】
本発明は、本問題に言及する。これは、不純物として存在する遊離のFc部分の量を低減させることにより、Fc含有タンパク質の液体、組成物又は調製物の精製方法の開発に基づく。
【0034】
従って、本発明は、Fc含有タンパク質を含んでなる液体における遊離のFc部分の濃度を低減させる方法であって、当該液体をブルーセファロースクロマトグラフィに供すること、そしてpH約4.0〜6.0のpH範囲で樹脂を洗浄することにより、遊離のFc部分を除去することを含んでなる方法に関する。
【0035】
第二の態様によれば、本発明は、Fc含有タンパク質調製における遊離Fcの低減のためのブルーセファロースクロマトグラフィの使用に関する。第三の態様によれば、本発明は、遊離Fc部分を、約5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満、又は約0.5%未満、又は約0.2%未満、又は約0.1%未満含んでなる、精製Fc含有タンパク質に関する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実施例1.(1)ピーク1;(2)ピーク2において記載されるブルーセファロースクロマトグラフィのクロマトグラフプロファイルを示す。
【図2】図2は、非還元(A)及び還元(B)条件下、実施例1において記載されるブルーセファロースクロマトグラフィから得られることなるフラクションの銀染色SDS−PAGEを示す。レーン1:分子量マーカー、レーン2:精製TACI−Fc、レーン3:ロード、レーン4:ピーク1、レーン5:ピーク2、レーン6:ピーク1+2、レーン7:分子量マーカー。
【図3】図3は、抗−TACI抗体、及び実施例1に記載されるブルーセファロースクロマトグラフィから得られるフラクションの抗−Fc抗体を用いる、ウェスタン免疫ブロッティング分析の写真を示す(レーン2〜5及び9〜12のみ;レーン6〜8及び13〜15は異なる条件での洗浄から得られるフラクションを表す):図3Aは、非還元(レーン2〜5)及び還元(レーン9〜12)条件下での抗−TACI検出を示す。図3Bは、非還元(レーン2〜5)及び還元(レーン9〜12)条件下での抗−Fc検出を示す。レーン2及び9:精製TACI−F;レーン3、10:ロード;レーン4、11:ピーク1;レーン5、12:ピーク2
【図4】実施例1から得られた、ロード(図4A)、ピーク1(図4B)及びピーク2(図4C)のMALDI−MS分析スペクトルを表し、ここで、ピーク(a)は遊離のFc、ピーク(b)はハイブリッドTACI−Fc/Fc及びピーク(c)はTACI−Fcを表す。
【図5】図5は、実施例3で記載したブルーセファロースクロマトグラフィのクロマトグラフプロファイルを示す。(i)280 nmでのOD(mAU)、(ii)KCl濃度、(iii)伝導率、(iv)pHである。1−ロード、2−洗浄1、3−洗浄2、4−洗浄3、5−洗浄4、6−洗浄5、7−洗浄6、8−溶出、9−再生である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の詳細な説明
本発明は、青色色素親和性クロマトグラフィが、Fc含有タンパク質の液体又は組成物に存在する可能性のある遊離のFc部分の量及び程度を有効に低減し、その結果Fc含有タンパク質の純度を向上させる、便利且つ単純な方法を提供できるという発見に基づく。当該遊離のFc部分は、ヘテロ二量体融合タンパク質、例えば、Fc領域に融合した単一のタンパク質の発現により、又は注目のタンパク質のタンパク質分解性開裂により得られるのもであってもよい。
【0038】
従って、本発明は、Fc含有タンパク質を含んでなる液体に存在する遊離のFc部分から、Fc含有タンパク質を精製するための方法であって、以下のステップ:
(a)青色色素親和性クロマトグラフィ樹脂に当該液体をロードするステップ;
(b)pH約4.0〜約6.0のバッファで当該樹脂を洗浄し、それにより当該樹脂から遊離のFc部分を除去するステップ;及び
(c)当該樹脂からFc含有タンパク質を溶出するステップ、
を含んでなる方法に関する。
【0039】
Fc含有タンパク質を含んでなる液体は、ヒト又は動物由来の体液等、又は細胞培養上清又は細胞培養回収物等の細胞培養物由来の液体等、任意の組成物又は調製物であってもよい。液体は、別の精製ステップ由来の液体であってもよく、例えば、捕捉ステップから得られる溶出液又はフロースルー等か、又はブルーセファロースクロマトグラフィの前の由来の液体、例えば、タンパク質Aクロマトグラフィの溶出液等でもよい。
【0040】
前記液体は、好ましくは細胞培養物、例えば可溶化細胞、より好ましくは細胞培養上清であってもよい。本明細書で使用される場合、「細胞培養上清」なる用語は、培地であって、その中で細胞が培養され、且つ、タンパク質が適切な細胞シグナル、いわゆるシグナルペプチドを含む場合は、その中にタンパク質が分泌される培地のことを言う。Fc含有タンパク質発現細胞を、血清未含有培養条件下で培養することが好ましい。すなわち、好ましくは、当該細胞培養上清は、動物由来成分を欠くものである。最も好ましくは、当該細胞培養培地は、化学的に規定される培地である。
【0041】
好ましくは、当該本発明の精製タンパク質は、例えば、抗体、より好ましくは、ヒト、ヒト化又はヒト定常領域を含んでなるキメラ抗体、好ましくはIgG抗体等のFc含有タンパク質であり、それはまた、好ましくはFc融合タンパク質の可能性もある。Fc含有タンパク質は、例えば抗体のFab領域、又は受容体の結合領域等の、多くの場合免疫グロブリンG(IgG)である、免疫グロブリンのFc領域と融合したタンパク質のエフェクター領域からなるキメラタンパク質である。
【0042】
そのため、Fc領域は、Fc断片又はFcドメインと呼んでもよい。そのため、「Fc領域」、「Fc断片」又は「Fcドメイン」なる用語は、相互変換可能であり、同じ意味を有するものと解すべきである。
【0043】
本明細書で使用する場合、「Fc含有タンパク質」なる用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン定常ドメイン、好ましくは、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、CH4ドメイン、又はその任意の組み合わせ、及び好ましくはヒンジ、CH2及びCH3ドメインから選択されるヒト定常領域を有する任意のタンパク質のことを言う。
【0044】
免疫グロブリン定常ドメインは、IgG、IgA、IgE、IgM、又はその組み合わせ又はそのアイソタイプの任意のものに由来してもよい。好ましくはそれは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4等のIgGである。より好ましくは、それはIgG1である。
【0045】
本発明によると、すなわちFc含有タンパク質は、例えば抗体又はFc融合タンパク質、又はその変異体、例えば抗体又はFc融合タンパク質の断片、変異タンパク質又は機能的誘導体であってもよい。
【0046】
本発明のFc含有タンパク質は、単量体、二量体又は多量体であってもよい。当該Fc含有タンパク質は、二量化Fc部分(例えば、2つのジスルフィド架橋ヒンジ−CH2−CH3構築物の二量体)を含んでなる「偽性二量体」(pseudo-dimer)(「単量体」と呼ばれることもある)であってもよく、そのうち1つは、免疫グロブリン可変ドメイン、受容体のリガンド結合断片、又は任意の他のタンパク質等のさらなる部分と融合してもよい。当該偽性二量体の例としては、例えば国際公開第2005/001025号に記載の、2つのIgGヒンジ−CH2−CH3構築物のうち1つと融合した、インターフェロン−βを有するFc融合タンパク質である。
【0047】
Fc含有タンパク質はまた、2つの異なる非免疫グロブリン部分又は免疫グロブリンドメインを含むヘテロ二量体か、又は単一の非免疫グロブリン部分又は免疫グロブリン可変ドメインの同じ2つを含有するホモ二量体である。
【0048】
好ましくは、Fc含有タンパク質は二量体である。本発明のFc含有タンパク質がホモ二量体であることも好ましい。
【0049】
本発明によれば、Fc含有タンパク質のFc部分は、エフェクター機能を調整するために改変することもできる。例えば、EU位置指数(Kabat et al., 1991)によると、Fc部分はIgG1由来である場合、以下のFc変異が誘導できる。
T250Q/M428L
M252Y/S254T/T256E+H433kiro/N434F
E233P/L234V/L235A/ΔG236+A327G/A330S/P331S
E333A;K322A
【0050】
さらに、Fc変異体は、例えば、330、331、234、又は235、又はその組み合わせから選択されるEU位置指数で置換されてもよい。CH2ドメインに位置するEU位置指数297でのアミノ酸置換を、本発明の文脈において、N結合型炭水化物付加の潜在的部分を取り除くように、Fc部分に導入してもよい。さらに、EU位置指数220のシステイン残基も、免疫グロブリン軽鎖定常領域と共に通常ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を取り除くように、セリン残基に置換してもよい。
【0051】
好ましい実施態様によれば、Fc含有タンパク質は、免疫グロブリン可変領域、例えば1又は複数の重鎖可変ドメイン及び/又は1又は複数の軽鎖可変ドメインを含んでなる。好ましくは、当該抗体は、1又は2個の重鎖可変ドメインを含有する。より好ましくは、当該抗体は、さらに1又は2個の軽鎖定常及び/又は可変ドメインを含有する。
【0052】
本発明のより好ましい実施態様によれば、本発明により精製できるFc含有タンパク質は抗体である。好ましくは、当該抗体は、モノクローナル抗体である。当該抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。当該抗体は、当該抗体をコードする1、2、又はそれ以上のポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換して作製しても、ハイブリドーマにより作製してもよい。
【0053】
本明細書で使用する場合、「抗体」なる用語は、当該治療部分が、免疫グロブリン(Ig)の少なくとも1つの可変ドメインを含んでなるFc含有タンパク質のことを言う。好ましい免疫グロブリンは、哺乳類の免疫グロブリンである。より好ましい免疫グロブリンは、げっ歯類、特にラット又はマウスの免疫グロブリンである。最も好ましい免疫グロブリンは、霊長類の免疫グロブリンであり、特にヒト免疫グロブリンである。
【0054】
「抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続する、少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖、又はその抗原結合部分からなる糖タンパク質のことを言う。各々の重鎖は、重鎖可変領域(ここではVHと略記する)及び重鎖定常領域を含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではVLと略記する)及び軽鎖定常領域を含む。VH及びVL領域は、超可変的な領域と、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域に分けることができる。CDRは、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域に分散する。各々のVH及びVLは、以下の順にアミノ末端からカルボキシ末端まで並べられた3つのCDR及び4つのフレームワークからなる。FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0055】
本発明により精製できる抗体の例には、CD3(例えば、OKT3、NI−0401)、CD11a(例えば、エファリズマブ)、CD4(例えば、ザノリムマブ、TNX−355)、CD20(例えばイブリツモマブ・チウキセタン、リツキシマブ、トシツモマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、IMMU−106、TRU−015、AME−133、GA−101)、CD23(例えば、ルミリキシマブ)、CH22(例えば、エピラツズマブ)、CD25(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、上皮増殖因子受容体(EGFR))(例えば、パニツムマブ、セツキシマブ、ザルツムマブ、MDX−214)、CD30(例えば、MDX−060)、細胞表面糖タンパク質CD52(例えば、アレムツズマブ)、CD80(例えば、ガリキシマブ)、血小板GPIIb/IIIa受容体(例えば、アブシキシマブ)、TNFアルファ(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ)、インターロイキン−6−受容体(例えば、トシリズマブ)、癌胎児抗原(CEA)(例えば、99mTc−ベシレソマブ)、アルファ−4/ベータ−1インテグリン(VLA4)(例えば、ナタリズマブ)、アルファ−5/ベータ−1インテグリン(VLA5)(例えば、ボロシキシマブ)、VEGF(例えば、ベバシズマブ、ラニビズマブ)、免疫グロブリンE(IgE)(例えば、オマリズマブ)、HER−2/neu(例えば、トラスツズマブ)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)(例えば、111ln−カプロマブ・ペンデチド、MDX−070)、CD33(例えば、ゲマツズマブ・オゾガミシン)、GM−CSF(例えば、KB002、MT203)、GM−CSF受容体(例えば、CAM−3001)、EpCAM(例えば、アデカツムマブ)、IFN−ガンマ(例えば、NI−0501)、IFN−アルファ(例えば、MEDI−545/MDX−1103)、RANKL(例えば、デノスマブ)、肝細胞増殖因子(例えば、AMG479、R1507)、IL−4及びIL13(例えば、AMG317)、BAFF/BLyS受容体3(BR3)(例えば、CB1)、CTLA−4(例えば、イピリムマブ)、からなる群から選択されるタンパク質に対する抗体である。
【0056】
好ましくは、本発明により精製できる当該抗体は、CD3、CD4、CD11a、CD25、IFN−ガンマ、EpCAM、TACIからなる群から選択されるタンパク質に対する抗体である。
【0057】
最も好ましくは、当該抗体は、抗CD4抗体(例えば、国際公開第97/13852号参照)、抗CD−11a抗体(例えば、国際公開第98/23761号参照)、及び抗CD25抗体(例えば、国際公開第2004/045512号参照)からなる群から選択される抗体である。
【0058】
TNF、Blys、又はインターフェロン−γに対する抗体は、治療的に興味深い抗体のさらなる例である。
【0059】
Fc融合タンパク質は、好ましくは本発明の方法を受ける、Fc含有タンパク質である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「Fc融合タンパク質」なる用語は、本明細書で「Fc部分」と呼ばれる免疫グロブリン誘導部分、及び本明細書で「治療部分」と呼ばれる第二の非免疫グロブリンタンパク質由来の部分を含んでなる、タンパク質、特に治療用タンパク質を包含する意味し、疾患の治療を意図するか否かにかかわらない。
【0061】
治療Fc融合タンパク質、すなわち、動物の疾患の治療又は予防を意図した、又はヒト治療又は投与に適するFc融合タンパク質は、本発明による精製に特に適する。
【0062】
任意のFc融合タンパク質は、本発明により精製してもよく、例えば、インターフェロン−β−含有融合タンパク質などがある。好ましくは、本発明の方法は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーの、細胞外ドメインの全て又は一部等のリガンド結合断片を含んでなる、Fc融合タンパク質を精製するためのものである。Fc融合タンパク質の治療部分は、EPO、TPO、成長ホルモン、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、PDGF−ベータ、VEGF、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−8、IL−10、IL−12、IL−18、IL−18結合タンパク質、TGF−ベータ、TNF−アルファ、又はTNF−ベータであるか、又はこれらに由来してもよい。
【0063】
Fc融合タンパク質の治療部分は、例えば膜貫通受容体等の受容体に由来してもよく、好ましくは、受容体の細胞外ドメイン、特に所与の受容体の細胞外部分又はドメインのリガンド結合断片に由来する。治療的に興味深い受容体の例としては、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD11b、CD14、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD40、CD44、CD52、CD80、CD86、CD147、CD164、IL−2受容体、IL−4受容体、IL−6受容体、IL−12受容体、IL−18受容体サブユニット(IL−18R−アルファ、IL−18R−ベータ)。EGF受容体、VEGF受容体、インテグリンアルファ4 10ベータ7、インテグリンVLA4、B2インテグリン、TRAIL受容体1、2、3及び4、RANK、RANKリガンド、上皮細胞接着分子(EpCAM)、細胞間接着分子−3(ICAM−3)、CTLA4(細胞毒性Tリンパ球関連抗原である)、Fc−ガンマ−I、II又はIII受容体、HLA−DR10ベータ、HLA−DR抗原、L−セレクチンがある。
【0064】
治療部分はTNFRスーパーファミリーに属する受容体由来であることは、非常に好ましい。当該治療部分は、例えば、TNFR1(p55)、TNFR2(p75)、OX40、オステオプロテジェリン、CD27、CD30、CD40、RANK、DR3.Fasリガンド、TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRAIL−R3、TRAIL−R4、NGFR、AITR、BAFFR、BCMA、TACIの細胞外ドメインであるか、これらに由来してもよい。
【0065】
本発明によれば、TNFRスーパーファミリーのメンバー由来である治療部分は、好ましくはTNFRのメンバーの細胞外ドメインのすべて又は一部を含んでなるか、又は当該物からなり、より好ましくは、TNFRのかかるメンバーのリガンド結合断片を含んでなる。以下の表2には、本発明による治療部分が由来してもよい、TNFRスーパーファミリーのメンバー、及びそのそれぞれのリガンドを列挙する。TNFRファミリーのメンバーの「リガンド結合断片」は、当業者が容易に決定でき、例えば、単純なものとしては、所与の受容体のタンパク質断片とそれぞれのリガンドとの間の結合を測定するインビトロ(in vitro)アッセイがある。当該アッセイは、例えば、単純なインビトロRIA−又はELISA型サンドイッチアッセイがあり得るが、ここで、タンパク質の1つ、例えば受容体断片が、担体(例えばELISAプレート)に固定化され、インキュベートされ、その後、当該担体上のタンパク質結合部位を、第二のタンパク質、例えばリガンド等で適切にブロックする。インキュベーション後、リガンド結合を、適切に洗浄後、例えば、シンチレーションカウンターにおいて、リガンドを放射標識し、結合した放射能を決定することにより検出する。リガンドの結合は、標識抗体でも、又は第一リガンド特異的抗体と、当該第一抗体の定常部分に対する第二の標識抗体でも決定できる。すなわち、リガンド結合は、例えば色素反応等の標識使用により、容易に決定できる。
【0066】
好ましくは、本発明の方法は、表1に挙げたものから選択されるTNFRスーパーファミリーのメンバーに由来する治療部分を含んでなる、Fc融合タンパク質を精製するためのものである。
【0067】
表2:TNFRスーパーファミリー(Locksley et al., 2001及びBossen et al., 2006による)
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
好ましい実施態様によれば、Fc融合タンパク質は、TNFR1の細胞外ドメイン、TNFR2、又はそのTNF結合断片から選択される治療部分を含んでなる。
【0071】
さらなる好ましい実施態様によれば、Fc融合タンパク質は、BlysもしくはAPRILの少なくとも1つと結合する、BAFF−Rの細胞外ドメイン、BCMA、TACI、又はその断片から選択される治療部分を含んでなる。
【0072】
Blys又はAPRILへの結合能を試験するためのアッセイは、例えばHymowitz et al., 2005に記載されている。
【0073】
さらに好ましい実施態様によれば、Fc融合タンパク質の治療部分は、配列番号1のシステイン豊富な偽性反復を含んでなる。
【0074】
当該治療部分は、TACIに由来することがさらに好ましい。TACIは、好ましくはヒトTACIである。より好ましくは、当該治療部分は、TACIの可溶性部分を含んでなり、好ましくはTACIの細胞外ドメイン由来である(ヒト全長TACI受容体のアミノ酸配列はSwissProt登録014836に対応する)。本発明により精製される非常に好ましいFc融合タンパク質は、配列番号2を含んでなるか、これからなるか、又は配列番号3のポリヌクレオチドによりコードされる。
【0075】
これにより、Fc融合タンパク質が、
(a)配列番号2;
(b)高ストリンジェント条件下で、配列番号3の補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;及び
(c)前記(a)のポリペプチドと、少なくとも80%又は85%又は90%又は95%の相同性を有する、(a)の変異タンパク質;
ここで前記ポリペプチドは、Blys又はAPRILの少なくとも1つに結合する、
から選択されるポリペプチドを含んでなることが非常に好ましい。
【0076】
治療用Fc融合タンパク質、すなわち、動物の疾患の治療又は予防のための、又は好ましくはヒト治療又は投与のためのFc融合タンパク質は、発明により精製され、本発明のフレームにおける使用に特に適する。
【0077】
最も好ましくは、当該Fc融合タンパク質が、TACI受容体の断片か(例えば、国際公開第02/094852号参照)、又はIFN−ベータの断片(例えば、国際公開第2005/001025号参照)のいずれかを含んでなる。
【0078】
本発明によれば、IFN−βを含んでなる融合タンパク質は、好ましくは
(a)配列番号4;
(b)高ストリンジェント条件下で、配列番号5の補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;及び
(c)前記(a)のポリペプチドと、少なくとも80%又は85%又は90%又は95%の相同性を有する、(a)の変異タンパク質;
から選択されるポリペプチドを含んでなる。
【0079】
本発明によれば、Fc含有タンパク質が、遊離のFc部分を、好ましくはFc含有タンパク質の少なくとも5%、2%、1%、0.5%、0.2%又は0.1%、減少、低減、又は除去するために、ブルーセファロースクロマトグラフィに供される。
【0080】
本明細書で使用される場合、「遊離のFc部分」、「1つの遊離のFc部分」、又は単に「遊離のFc」なる用語は、完全なさらなるドメインを含まない、免疫グロブリン定常領域由来の、本発明により精製されるFc含有タンパク質の任意の部分を包含することを意味する。すなわち、Fc含有タンパク質が免疫グロブリン可変ドメインを含んでなる場合、遊離のFcは、可変ドメインの重要な部分を含有しない。Fc含有タンパク質がFc融合タンパク質である場合、遊離FcはFc融合タンパク質の治療部分の重要な部分を含有しない。遊離Fcは、例えば、IgGヒンジの二量体、つまり治療部分又は免疫グロブリン可変ドメインの重要な部分に結合しないCH2及びCH3ドメインを含んでもよく、例えばパパイン開裂により生じるFc部分等がある。
【0081】
Fc部分由来のモノマーは、遊離のFc断片に含まれてもよい。遊離Fcが、治療部分の又はIg可変ドメイン由来の多数のアミノ酸残基、例えば、Fc部分まだ融合する治療部分又は可変部分に属する、1〜50個、又は1〜20個、又は1〜10個、又は1〜5個のアミノ酸、又は単一のアミノ酸であってもよいと解される。
【0082】
本発明によれば、青色色素親和性クロマトグラフィは、任意の好適な樹脂で行ってもよく、好ましくは当該樹脂は、シバクロン・ブルーF3G−Aリガンドを含んでなる。好ましくは、当該青色色素親和性クロマトグラフィは、ブルーセファロース樹脂で行われる。ブルーセファロース6FF樹脂(GE Healthcare)の商品名で購入可能な樹脂は、本方法のステップ(a)に特に好適な親和性樹脂の例である。ブルーセファロースFFの技術的特徴は以下の通りである。
【0083】
【表4】

【0084】
他の好適な購入可能な青色色素親和性カラムは、ブルーセファロースCL−6B(GE Healthcare)、ブルートリスアクリルM(Blue Trisacryl M)(Pall/BioSepa)、Affi-Gel Blue(Bio- Rad)、エコノ−パック・ブルー・カートリッジ(Econo-Pac blue cartridges)(Bio-Rad)、SwellGel Blue (Pierce)、Toyopearl AF-Blue (Tosoh Bioscience)、又はシバクロン・ブルーF3GA (Polysciences Inc.)から選択される。
【0085】
本発明の精製方法のステップ(a)において、青色色素樹脂にFc含有タンパク質を含んでなる液体をロードする前に、当該液体をpH6未満、好ましくは約5に調整し、必要ならば水で希釈し、pH約5で約20 mS/cm未満の伝導率とする。これにより、Fc含有タンパク質を青色色素樹脂に結合させる。
【0086】
pH6未満とは、例えば、約6.0、5.9、5.8、5.7、5.6、5.5、5.4、5.3、5.2、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1又は約2.0があり得る。
【0087】
本発明の方法のステップ(b)において、遊離のFc部分は、pH約4.0〜約6.0のバッファにより、青色色素樹脂から洗われる。当該pHは、例えば、約4.0、4.1 、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1 、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9又は約6.0があり得る。
【0088】
ステップ(b)において、遊離Fc部分は、任意の好適な塩を使用するブルーセファロース樹脂から洗い出される。塩化カリウム又は塩化ナトリウムから選択される塩が好ましい。pH5で、塩化カリウムが約0〜約0.5 Mのグラジエント範囲での増加が好ましい。
【0089】
好ましい実施態様によれば、遊離Fc部分は、KClが約0〜約5 Mの、増加する塩グラジエント範囲で、ステップ(b)におけるブルーセファロース樹脂から溶出される。当該増加する塩グラジエントは、例えばpH5で、KClが、約0〜約500、50〜500、100〜500、150〜500 mMであり得る。
【0090】
さらなる好ましい実施態様によれば、Fc部分は、pH5で、200〜300 mMの等張塩濃度範囲で、ブルーセファロースカラムから洗われる。当該等張塩濃度は、pH5で、KClが、例えば200、210、220、230、240、250、260、270、280、290 mMであり得る。pH5で、KClが240 mMが好ましい。
【0091】
さらに好ましい実施態様によれば、ステップ(b)は、酢酸ナトリウムが約10〜約100、好ましくは15〜90、より好ましくは20〜80 mM含まれるバッファ中で行われる。当該バッファは、酢酸ナトリウムを、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100 mM含んでもよい。
【0092】
好ましい実施態様によれば、当該ブルーセファロースクロマトグラフィは、1又は複数の追加のステップを有する精製方法、好ましくは、親和性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、又は限外濾過から選択される方法において使用されてもよい。非常に好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、Fc含有タンパク質の精製スキームの第二ステップとして使用され、ここで、ステップ(a)でブルーセファロース樹脂にロードされる溶液は、当該Fc含有タンパク質を含んでなる液体が初めに通される、タンパク質A、又はタンパク質G、又はタンパク質L親和性クロマトグラフィの溶出液である。
【0093】
本発明によれば、Fc含有タンパク質を含んでなる液体は、タンパク質A、又はタンパク質G、又はタンパク質L、又はタンパク質A/G親和性クロマトグラフィに最初に通される。当該液は、好ましくは、細胞培養物質であってもよく、例えば可溶化細胞、より好ましくは細胞培養上清である。
【0094】
親和性クロマトグラフィのために使用される、タンパク質A、G、A/G、又はLは、例えば、組み換えたいであってもよい。その特性を向上させるために、それを改変してもよい(例えば、GE Healthcare から購入可能な、MabSelect SuReと呼ばれる樹脂において)。好ましい実施態様によれば、当該捕捉ステップは、組み換えタンパク質Aで改変された架橋アガロースを含んでなる樹脂で行う。MabSelect Xtra (GE Healthcare製)の商品名に購入可能なカラムは、本方法のステップ(a)に特に適する親和性樹脂の例である。
【0095】
タンパク質A又はG又はL親和性クロマトグラフィは、好ましくは捕捉ステップで使用され、特に宿主細胞タンパク質及びFc含有タンパク質凝集体の除去において、Fc含有タンパク質の精製のために、そしてFc含有タンパク質調製物の濃縮のために提供される。
【0096】
ステップ(c)におけるFc含有タンパク質の溶出は、pH範囲約4.0〜約9のバッファにおいて行われる。好ましい実施態様によれば、当該溶出は、酢酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウムから選択されるバッファ中で、そこに塩を添加して行われる。好適なバッファ濃度は、例えば、約25 mM、又は約50 mM、又は約100 mM、又は約150 mM、又は約200 mM、又は約250 mM、又は約250 mMから選択される。ステップ(c)における溶出バッファの塩濃度は、例えば、KClが、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0 Mがあり得る。
【0097】
本発明によれば、ステップ(c)のブルーセファロースクロマトグラフィの溶出液は、その後、さらなる精製のために使用される。
【0098】
本発明の好ましい実施態様によれば、ステップ(a)は、充填されたブルーセファロース樹脂1ミリリットル当たりFc含有タンパク質約20 mgの動的容量で、ブルーセファロース樹脂をロードすることを含んでなる。当該樹脂は、好ましくは、pH5でロードされる。
【0099】
さらに、本発明のブルーセファロースクロマトグラフィは、SDS−PAGEにより決定される検出レベル未満まで遊離のFc部分のレベルを低減させる。したがって、本発明の好ましい実施態様によれば、青色色素クロマトグラフィの溶出液は、1 mcgのFc含有タンパク質をロードする場合、遊離のFc部分レベルは、非還元条件下のSDS−PAGE及び銀染色により検出されない。
【0100】
当該樹脂の容量、使用するカラムの長さ及び直径、並びに動的容量及び流速は、処理される液体の容量、本発明のプロセスに供する液体におけるタンパク質の濃度等の複数のパラメータに依存する。各ステップについてのこれらのパラメータの決定は、当業者の平均的な能力の範囲内である。
【0101】
本精製プロセスの好ましい実施態様によれば、1又は複数の限外濾過ステップが行われる。限外濾過は、その前のクロマトグラフのステップから得られた溶出液中の、有機小分子又は塩の除去ため、バルクのバッファにFc含有タンパク質を平衡化するため、又はFc含有タンパク質を所望の濃度に濃縮するために有用である。当該限外濾過は、例えば、分子量が、5、10、15、20、25、30 kDa又はそれ以上の成分を除去する孔サイズの限外濾過膜で行ってもよい。本発明のプロセスにより精製されるタンパク質が、ヒトへの投与を意図するものである場合、当該プロセスに、1又は複数のウイルス除去ステップを含む場合に都合が良い。
【0102】
貯蔵又は輸送を容易にするために、例えば、当該物質を、本発明の任意の精製ステップの前及び/又は後に、凍結及び融解させてもよい。本発明によれば、組み換えFc含有タンパク質は、グリコシル化Fc含有タンパク質が得られる、酵母、虫、又は哺乳類細胞等の真核生物発現系において産生されてもよい。
【0103】
本発明によれば、動物等の哺乳類細胞系、又はヒト細胞系において、Fc含有タンパク質を発現することが最も好ましい。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はマウス骨髄腫細胞系列NSOは、精製されるFc含有タンパク質の例として特に適する細胞系列の例である。Fc含有タンパク質は、例えば、ヒト線維肉腫HT1080細胞系列、ヒト眼膜芽腫細胞系列PERC6、又はヒト胚腎臓細胞系列293、又は例えば欧州特許第1,230,354号に記載の耐久羊膜細胞系列等、ヒト細胞系列において作製することもできる。
【0104】
精製されるFc含有タンパク質が、哺乳類細胞がそれを分泌することにより発現される場合、本発明の精製プロセスの出発物質は、細胞培養上清、いわゆる回収物(harvest)又は粗回収物である。細胞が、動物血清含有培地において培養される場合、当該細胞培養上清は、不純物として血清蛋白質も含有する。好ましくは、Fc含有タンパク質が発現及び分泌する細胞は、血清未含有条件下で培養される。Fc含有タンパク質は、化学的に規定される培地で産生されてもよい。この場合、本発明の精製プロセスの出発物質は、おもに不純物として宿主細胞タンパク質を含有する、血清未含有細胞培養上清である。インスリン等の成長因子を当該培養培地に添加する場合、例えば、これらのタンパク質は、精製プロセスの間、同様に除去されることになる。
【0105】
細胞培養上清に関連する、可溶性分泌型Fc含有タンパク質を作製するために、Fc含有タンパク質の治療部分の天然シグナルペプチドを使用するか、又は好ましくは異種接合型ペプチド、つまり使用される特定の発現系において有効である、別の分泌型タンパク質由来のシグナルペプチド、例えばウシ又はヒト成長ホルモンシグナルペプチド、又は免疫グロブリンシグナルペプチド等を使用する。
【0106】
上記の通り、本発明により精製される好ましいFc含有タンパク質は、ヒトTACI(SwissProt登録014836)由来の治療部分及び、特にその細胞外ドメイン由来の断片(アミノ酸1〜165)を有する融合タンパク質である。以下には、TACIの細胞外ドメイン由来の治療部分は、「可溶性TACI」又は「sTACI」と呼ばれる。好ましいFc部分は、以下「TACI−Fc」とよぶ、配列番号2のFc融合タンパク質を含んでなる。本明細書で使用される場合、TACI−Fcなる用語は、TACI−Fcの変異体も包含する。
【0107】
本明細書で使用される場合、「変異タンパク質(mutein)」なる用語は、sTACI、TACI−Fc又はIFNβ−Fcの類似体であって、sTACI、TACI−Fc又はIFNβ−Fcのアミノ酸の1又は複数が、異なるアミノ酸残基で置換されるか、又は削除され、あるいは元のsTACI、TACI−Fc又はIFNβ−Fcと比較して、得られる産物の活性を大きく変えることなく、1又は複数のアミノ酸残基がsTACI、TACI−Fc又はIFNβ−Fcの元の配列に添加される類似体のことを言う。これらの変異たんぱく質は、既知の合成法により、及び/又は部位特異的変異導入法、又は任意の他の既知の好適な方法により調製する。
【0108】
本発明による変異タンパク質には、配列番号2のTACI−Fc又は配列番号4のIFNβ−FcをコードするDNA及びRNAと、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするDNA又はRNA等の核酸によりコードされるタンパク質がある。TACI−FcをコードするDNA配列の例は配列番号3があり、IFNβ−Fcをコードする例には配列番号5がある。
【0109】
「ストリンジェント条件」なる用語は、当業者が従来「ストリンジェント」と呼ぶ、ハイブリダイゼーション及びそれに続く洗浄のことを言う。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N.Y., §§6.3 and 6.4 (1987, 1992)を参照のこと。限定するものではないが、ストリンジェント条件の例には、例えば、2×SSC及び0.5%SDSで5分、2×SSC及び0.1%SDSで15分;0.1×SSC及び0.5%SDS、37℃で30〜60分、その後0.1×SSC及び0.5%SDS、68℃で30〜60分等における研究で、ハイブリッドのTm計算値以下の、12〜20℃の条件で洗浄することが挙げられる。当業者は、ストリンジェンシー条件は、DNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、10〜40塩基)、又は混合したオリゴヌクレオチドプローブの長さに依存することも理解する。混合プローブを使用する場合、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubel, supra.を参照されたい。
【0110】
相同性は、2以上のポリペプチド配列間、又は2以上のポリヌクレオチド配列間の関係を、当該配列を比較することにより決定して、反映する。一般的に、相同性は、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド配列の、比較される配列の長さにわたる、それぞれある正確なヌクレオチドとヌクレオチド、又はアミノ酸とアミノ酸の一致のことを言う。
【0111】
正確な一致が存在しない配列について「相同性%」を決定してもよい。一般的には、比較される2つの配列を、配列間で最も相関するよう配列比較する。これには、1つ又は2つの配列のいずれかにおいて、配置比較の度合いを向上させるため、「ギャップ」を挿入することが含まれる。相同性%は、比較される各々の配列の全長にわたって(いわゆる包括的配列比較(global alignment))決定されてもよく、これは同じ又は非常に類似する長さの配列に特に適するものであり、又はより短く規定された長さにわたって(いわゆる部分的配列比較(local alignment))決定されてもよく、これは長さの等しくない配列により適する。
【0112】
2以上の配列の相同性及びホモロジーを比較するための方法は、当業者に周知である。例えば、ウィスコンシン配列解析パッケージ第9.1版(Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1)(Devereux J et al., 1984)で使用できるプログラム、例えば、プログラムBESTFIT及びGAPは、2つのポリヌクレオチド間の相同性%、及び2つのポリペプチド間の相同性%とホモロジー%を決定するために使用してもよい。BESTFITは、Smith及びWaterman(1981)の「局所ホモロジー」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性が最高である単一領域を見つけ出す。配列間の相同性及び/又は類似性を決定するための他のプログラムも当業者に既知であり、例えばプログラムのBLASTファミリー(Altschul S F et al, 1990, Altschul S F et al, 1997, NCBIのホームページwww.ncbi.nlm.nih.gov から利用可能である)及びFASTA(Pearson W R, 1990)がある。
【0113】
好ましくは任意の当該変異タンパク質は、配列番号2のタンパク質と、実質的に類似するリガンド結合活性を有するような、例えばsTACI又はTACI−Fcの、十分に重複するアミノ酸配列を有する。例えば、TACIのある活性は、そのBlys又はARPILへの結合能である(Hymowitz et al., 2005)。当該変異タンパク質が相当なAPRIL又はBlys結合活性を有する限り、TACIに実質的に類似する活性を有すると考えられる。すなわち、当業者は、定常実験により、任意の所与の変異タンパク質が、配列番号2のタンパク質と実質的に同じ活性を有するか否かを容易に決定できる。
【0114】
好ましい実施態様によれば、任意の当該変異タンパク質は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性又はホモロジーを有する。
【0115】
本発明による変異タンパク質に対する好ましい変化は、「保存的」置換として知られるものである。sTACI又はTACI−Fcの保存的アミノ酸置換には、ある群の構成アミノ酸間の置換が分子の生物的機能を保存する、十分に類似する物理化学的特性を有する群内における同義アミノ酸が含まれてもよい(Grantham, 1974)。特に、挿入又は削除が少数のアミノ酸、例えば30個未満、20個未満、又は好ましくは10個未満のみに関連し、機能的コンフォメーションにとって重要なアミノ酸、例えばシステイン残基の除去又は置換をしない場合、アミノ酸の挿入及び削除が、その機能を変更することなく上で規定した配列においてなされてもよいことは明らかである。タンパク質及び当該削除及び/又は挿入により作製された変異タンパク質は、本発明の範囲内である。
【0116】
好ましくは、当該保存的アミノ酸群は、表3に規定されるものである。より好ましくは、当該同義アミノ酸群は、表4に規定されるものであり;そして最も好ましくは、当該同義アミノ酸群は、表5に規定されるものである。
【0117】
【表5】

【0118】
【表6】

【0119】
【表7】

【0120】
本明細書で使用される「機能的誘導体」は、本発明により精製されるFc−含有タンパク質に及び、これは、当業界で既知の方法により残基の側鎖、又はNもしくはC末端の基として存在する官能基から調製してもよく、そして例えば、医薬的に許容される状態である限り、すなわち、それらが上記の改変Fc含有タンパク質の活性と実質的に類似するタンパク質の活性を破壊せず、それを含有する組成物に毒性を与えない限り、本発明に含まれる。Fc含有タンパク質の機能的誘導体は、例えば安定性、半減期、バイオアベイラビリティ、人体への耐性、又は免疫原性等のタンパク質の特性を向上させるためにポリマーと複合化ができる。この目標に到達するために、Fc含有タンパク質を、例えばポリエチレングリコール(PEG)と結合させてもよい。PEG化は、例えば国際公開第92/13095号に記載の、既知の方法により行ってもよい。機能的誘導体は、例えば、カルボキシルキの脂肪酸エステル、アンモニア又は第一級もしくは第二級アミンとの反応によるカルボキシルキのアミド、アシル部分(例えば、アルカノイル又はカルボシクリルアロイル基)と共に形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、又はアシル部分と共に形成される遊離のヒドロキシル基(例えば、セリル又はスレオニル残基)のO−アシル誘導体であってもよい。
【0121】
第三の態様によれば、本発明は、本発明による精製プロセスにより精製されるタンパク質に関する。以下では、当該タンパク質を「精製Fc含有タンパク質」とも呼ぶ。
【0122】
当該精製Fc含有タンパク質は、好ましくは高精製のFc含有タンパク質である。高精製のFc融合タンパク質は、例えば、1レーン当たり2 mcg量でタンパク質をロード後、銀染色した非還元SDS−PAGEゲルにおける単一バンドの存在により決定される。精製Fc含有タンパク質は、HPLCにおいて単一ピークとして溶出するものとして規定されてもよい。
【0123】
精製Fc含有タンパク質は、治療用途、特にヒト患者への投与を意図されてもよい。精製Fc含有タンパク質が患者に投与される場合、全身的に、好ましくは皮下又は筋肉内、又は局所的に、例えば局在的に投与されることが好ましい。直腸又は髄腔内投与は、精製Fc含有たんぱく質の特定の医療的使用によって好適であってもよい。
【0124】
このために本発明の好ましい実施態様によれば、当該精製Fc含有タンパク質は、例えば医薬的に許容される担体、賦形剤等と一緒に、医薬組成物として処方してもよい。
【0125】
「医薬的に許容される」の定義は、活性成分の生物活性の有効性を干渉することなく、それが投与される宿主に毒性でない、任意の担体を包含することを意味する。例えば、非経口的投与で、(1又は複数の)活性タンパク質は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー溶液等の媒体中の、注射用の単位剤型で処方されてもよい。
【0126】
本発明による医薬組成物の活性成分は、様々な方法で個体に投与することができる。投与経路には、皮内、経皮(例えば、徐放性処方剤)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、頭蓋内、硬膜外、局所、直腸、及び鼻腔内経路がある。任意の他の治療的有効な投与経路は、例えば、上皮もしくは内皮組織からの吸収に、又は当該活性剤をコードするDNA分子を患者に投与し(例えば、ベクターを介して)、それがインビボ(in vivo)で発現及び分泌される活性剤をもたらす、遺伝子治療に使用することができる。さらに、本発明の(1又は複数の)タンパク質は、医薬的に許容される界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤及び媒体等の生物活性剤の他の成分と共に投与することができる。
【0127】
非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)投与では、(1又は複数の)活性剤を、医薬的に許容される非経口用媒体(例えば、水、生理食塩水、デキストロース溶液)、及び等張性を維持する添加剤(例えば、マンニトール)又は化学的安定化剤(例えば、保存剤及びバッファ)と一緒に、溶液、懸濁物、エマルション又は凍結乾燥粉末として処方することができる。当該処方剤は、従来技術により滅菌される。
【0128】
治療有効量の(1又は複数の)活性タンパク質は、Fc含有タンパク質のタイプ、Fc含有タンパク質のそのリガンドに対する親和性、投与経路、患者の臨床的症状等の多くの変数の関数であるはずである。「治療有効量」は、上記で説明し、特に上述の表2で言及したように、投与されると、Fc含有タンパク質がFc融合タンパク質の治療部分のそのリガンドの阻害をもたらすような量である。
【0129】
単回又は複数回で個体に投与される投薬は、Fc融合タンパク質の薬物動力学特性、投与経路、患者の症状及び特性(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、最近の治療、治療頻度及び所望される影響等の様々な因子に依存して変化するはずである。確率した投薬範囲の調整及び操作は、十分に当業者の能力の範囲内であり、個体における治療部位の天然リガンドの阻害を決定するインビトロ(in vitro)及びインビボ法も範囲内となる。
【0130】
精製Fc含有タンパク質は、体重1kg当たり約0.001〜100 mg、又は体重1kg当たり約0.01〜10 mg、又は体重1kg当たり約0.1〜5 mg、又は体重1kg当たり約1〜3 mg、又は体重1kg当たり約2mgの量で使用してもよい。
【0131】
さらなる好ましい実施態様によれば、当該精製Fc含有タンパク質は、毎日、又は一日おき、又は一週間に3回、又は1週間に1回投与する。
【0132】
一日用量は通常、所望の結果を得るために有効な、分割用量又は持続放出形態で投与する。第二のもしくはその後の投与は、当該個体に投与された初回もしくは前の用量と、同じであっても、少なくても、又は多くてもよい用量で行うことができる。第二もしくはその後の投与は、疾患前又は発病の期間に投与することができる。
【0133】
本発明はさらに、Fc含有タンパク質を含んでなる組成物における遊離Fc部分の濃度の低減のためのブルーセファロース親和性クロマトグラフィの使用に関する。
【0134】
好ましい実施態様によれば、遊離Fcの濃度は、当該組成物の総タンパク質濃度のうち、約5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満、又は約0.5%未満、又は約0.2%未満、又は約0.1%未満まで低減される。
【0135】
ここで本発明を十分に記載したので、等価なパラメータ、濃度及び条件の幅広い範囲内で、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、且つ過度の実験を要さずに、当業者が同じ発明を行えることが理解されるはずである。
【0136】
本発明は、その特定の実施態様との関連で記載されるが、さらなる修正は可能であることが理解されるはずである。本出願は、任意のバリエーション、使用、又は一般的には、本発明の原理への適合、本発明が属する技術分野で既知もしくは習慣的やり方の範囲内にあり、そして以下の添付の請求の範囲において、上記で説明した基本的特徴に応用してもよいような、本発明からの逸脱等に及ぶことが意図される。
【0137】
本明細書で引用される全ての参考文献、例えば論文もしくは要約、発行もしくは未発行の米国もしくは他国の特許出願、米国もしくは他国の許可された特許等は、本明細書に参照により全体として組み込まれ、ここに引用文献に示される全てのデータ、表、図、及び文が含まれる。さらに、本明細書で引用される文献内で引用される全ての文脈も、参照により全体として組み込まれる。既知の方法ステップ、従来の方法ステップ、既知の方法、又は従来方法の参照は、本発明の任意の態様、記載もしくは実施態様が、関連技術において開示、教示もしくは示唆されると決して認められるものではない。
【0138】
特定の実施態様のここまでの記載は、当業者の能力の範囲内の知識(本明細書で引用される文献の内容等)を応用することにより、他者が、過度の実験をすることなく、本発明の一般的概念から逸脱せずに、当該特定の実施態様を多様な応用に、容易に修正及び/又は適合できるという、本発明の一般的性質を十分に開示することになる。したがって、当該適合及び修正は、本明細書に示される教示及び誘導に基づく、開示される実施態様の様々な等価物を意味することを意図する。本明細書の用語もしくは技術用語は、限定するものでははく、本明細書の技術用語もしくは用語が、本明細書に示す教示及び誘導を考慮し、通常の当業者の知識と組み合わせて当業者により解釈されるよう、記載の目的であると解されるべきである。
【実施例】
【0139】
実施例全体で頻繁に使用される略号のリスト
【0140】
【表8】

【0141】
実施例1:ブルーセファロースクロマトグラフィ(グラジエント溶出)を介するTACI−Fcの精製
Fc含有タンパク質の開裂から得られる遊離のFc断片の除去のために、ブルーセファロースクロマトグラフィを開発した。
血清未含有条件下で培養したCHO細胞クローンを発現するTACI−Fc(Fc融合タンパク質のホモ二量体、各サブユニットのアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列に対応する)の遠心分離回収物を、捕捉ステップとして、タンパク質A親和性クロマトグラフィに通した。タンパク質Aでの捕捉ステップからの溶出液を、ブルーセファロースクロマトグラフィのための出発物質として使用した。
【0142】
全ての操作は室温で行い、流速は175 cm/時間で一定に維持した。全ての時間で、280 nmでのUVシグナルを記録した。
【0143】
カラム
ブルーセファロース6FF樹脂(GE Healthcare)を、121 ml容量、内径3.2 cm、総高さ(bed height)15 cmのカラムに充填した。
【0144】
平衡化
前記カラムを25 mMの酢酸ナトリウムpH5.0を5BV用いて平衡化した。
【0145】
ロード
前記カラムに、充填樹脂の1ml当たり約20 mgのTACI−Fcの容量で、タンパク質A捕捉カラム溶出液を、pH5でロードした。
【0146】
洗浄1
前記カラムを、25 mMの酢酸ナトリウムpH5.0を少なくとも3BV用いて、安定なベースラインに到達するまで洗浄した。
【0147】
溶出
グラジエント溶出を、25 mMの酢酸ナトリウムpH5.0中の0〜3 Mの塩化カリウムを20BV用いて達成した。
【0148】
再生及び衛生化
前記カラムを、逆流モードにおいて、0.5 MのNaOHを5BV用いて衛生化し、その後平衡化バッファを5BV用いて洗浄し、その後20%エタノールの3BV中で保存する。
【0149】
異なるフラクションを回収し、SDS−PAGE分析、ウェスタン免疫ブロッティング、MALDI−MS分光法、及びN末端配列解析に供した。
【0150】
結果
図1のクロマトグラフプロファイルで示す通り、ブルーセファロースはグラジエント溶出の間に分離ピークに分けた。分離ピークであるピーク1は、SDS−PAGE、ウェスタンブロット、MALDI−MA及びN末端配列解析により、分子量約55 kDの遊離のFcと同定された。この断片は、ヒンジ領域の接合部のちょうど前の、TACIドメインのアミノ酸、80位のアルギニン及び81位のセリンとの間での分子の開裂によりもたらされる。第二の溶出ピークであるピーク2は、精製TACI−Fcを表す。
【0151】
SDS−PAGE分析
図2Aの非還元条件下での銀染色SDS−PAGEゲルで示すように、そのロードに相当するレーン3に、未処理のTACI−Fcの主要なバンドと、遊離Fcに想到するより低分子量の少ないバンドが見えた。レーン4では、ピーク1に対応する、そのより低分子量のバンド(遊離Fc)のみが見えたが、レーン5(ピーク2)では、遊離Fcの混入のない、純粋なTACI−Fcに相当するバンドが見えた。還元条件下(図2B)では、ハイブリッドTACI−Fc/Fc体に相当する微量のFc断片が、ピーク2(レーン5)に検出された。
【0152】
ウェスタン免疫ブロッティング解析
抗TACI免疫検出では、非還元条件(図3A、レーン2〜5)及び還元条件(図3A、レーン9〜12)下で、ピーク1(レーン4及び11)にTACIドメインは検出されなかった。
抗Fc免疫検出では、非還元条件(図3B、レーン2〜5)及び還元条件(図3B、レーン9〜12)下で、Fcドメインが以下の通りに検出された。
ピーク1(レーン4及び11)において、低分子量(55 kDa)のバンドは、遊離Fcに対応する。
ロード(レーン3及び10)において、高分子量及び低分子量の2つのバンドは、それぞれ未処理のTACI−Fcと遊離Fcに対応する。
ピーク2(レーン5及び12)において、高分子量(73 kDa)のバンドは、TACI−Fcに対応する。
レーン6〜8、及び13〜15は、詳細は定められていない異なる条件下で、洗浄から得られるフラクションを表す。
【0153】
MALDI−MS解析
図4のMALDI−MSスペクトルに示すように、遊離Fcは、ロード(図4A)及びピーク1フラクション(図4B)では約55 kDaのピークとして確認された(ピークa)が、ピーク2フラクション(図4C)では確認されなかった。未処理のTACI−Fcは、ロード(図4A)及びピーク2(図4C)フラクションにおいて、約74 kDaのピーク(ピークb)として確認された。ハイブリッドTACI−Fc/Fcは、ロード(図4A)及びピーク2(図4C)フラクションにおいて、約64.5 kDaのピークとして確認された。
【0154】
N末端配列解析
ピーク1において、Ser81から出発する配列のみが、遊離Fc相当物として検出された。
【0155】
結論
ブルーセファロースからのTACI−Fc溶出液は、純粋な遊離Fcであることがわかった。ブルーセファロースカラムを、25 mM酢酸ナトリウム(pH5.0)中の0〜3 Mの塩化カリウムでグラジエント溶出することにより、遊離Fcフラクション(ピーク1)及び精製TACI−Fcフラクション(ピーク2)を表す2つのピークが確実に分離される。ブルーセファロースステップからのTACI−Fc回復は90%超であった。
【0156】
0〜3 MのKClにおけるグラジエント溶出は、25 mM酢酸ナトリウム(pH4.5及び5.5)中でも行い、遊離Fcのピークが完全に分離した。
【0157】
実施例2:ブルーセファロースクロマトグラフィ(段階的溶出)−TACI−Fc
実施例1に記載したものと同じプロトコールで、グラジエント溶出ステップを段階的溶出(「洗浄2」及び「溶出」ステップ)に置き換えた点のみ変更したプロトコールを実行した。
【0158】
カラム
ブルーセファロース6FF樹脂(GE Healthcare)を、121 ml容量、内径3.2 cm、総高さ(bed height)15 cmのカラムに充填した。
【0159】
平衡化
前記カラムを25 mMの酢酸ナトリウム(pH5.0)を5BV用いて平衡化した。
【0160】
ロード
前記カラムに、充填樹脂の1ml当たり約20 mgのTACI−Fcの容量で、タンパク質A捕捉カラム溶出液(pH5)をロードした。
【0161】
洗浄1
前記カラムを、25 mMの酢酸ナトリウム(pH5.0)を少なくとも3BV用いて、安定なベースラインに到達するまで洗浄した。
【0162】
洗浄2
前記カラムを、25 mMの酢酸ナトリウム+240 mMの塩化カリウム(pH5.0)を5BV用いて洗浄した。
【0163】
溶出
TACI−Fcの溶出を、25 mMの酢酸ナトリウム+2 Mの塩化カリウム(pH5.0)を10BV用いて達成した。
【0164】
再生及び衛生化
前記カラムを、0.5 MのNaOH、5BVを逆流で衛生化し、その後平衡化バッファ5BVで洗浄し、20%エタノール3BV中で保存した。
【0165】
結果
この結果は、実施例1で得られたものと同じであった。得られた遊離Fcフラクションを、25 mMの酢酸ナトリウム、240 mMの塩化カリウム(pH5.0中)の段階的溶出により除去し、一方未処理TACI−Fc分子を、25 mMの酢酸ナトリウム、及び2 Mの塩化カリウム(pH5.0)で溶出した。
【0166】
実施例3:ブルーセファロースクロマトグラフィ−IFN−ベータ−Fc
血清未含有条件下で培養される、CHO細胞クローン発現IFN−β−Fcの浄化(clarified)回収物を、捕捉ステップとしてタンパク質A親和性クロマトグラフィに供した。IFN−β−Fcは、インターフェロン−ベータタンパク質及びFcドメインの融合により作製されるFc融合タンパク質である。免疫グロブリンのFc断片又は領域ともよばれる、Fcドメインは、ヒンジ領域(H)及び抗体の重鎖の第二(CH2)及び第三(CH3)ドメインを含んでなる2つの同じアーム(arm)からなる。IFN−β−Fcは2つのサブユニットを含有し、第一のサブユニットは、単一のIFN−βタンパク質(配列番号4)と結合した変異IgG Fcアームを含んでなり、第二のサブユニットは、変異IgG Fcアーム(配列番号4のアミノ酸167〜393)を含んでなる。タンパク質Aの捕捉ステップからの溶出液は、最初に濾過し、そしてブルーセファロースクロマトグラフィの出発物質としてさらに使用し、この場合以下のステップに従って行う。
【0167】
【表9】

【0168】
前記ブルーセファロース樹脂(充填樹脂当たり、2.5 g/LのIFN−Fcの動的容量で)へタンパク質A溶出液をロード後、塩化カリウム濃度を上昇させながら、pH5の、50 mMの酢酸ナトリウムバッファで洗浄を行った。1 Mの水酸化アンモニウムpH12で溶出を行った。
【0169】
全ての操作は室温で行われ、流速は150 cm/時間の一定値に保った。全ての時間で280 nmでのODシグナルを記録した。
【0170】
結果
図5のクロマトグラフプロファイルで示すように、カラムを50 mMの酢酸ナトリウム及び0〜500 mMの塩化カリウム(pH5)のグラジエントを22BV用いて洗浄すると、洗浄ステップ2で溶出するピークは遊離Fcと同定された。シバクロン・ブルーリガンドに対し非常に高い親和性を有するインターフェロンドメインである、精製IFN−Fcを、1 Mの水酸化アンモニウム、pH12を用いて、ブルーセファロースカラムから溶出させた。
【0171】
全体的結論
遊離Fcの除去は、グラジエント(0〜3 MのKCl、pH5)によるか、又はブルーセファロースカラムのpH4.5、pH5.5又はpH5.5での段階的溶出のいずれかにより達成することができる。当該段階的溶出は、遊離Fc除去に適する条件下でのカラムの洗浄、すなわち、25 mMの酢酸ナトリウム(pH5.0)中、240〜300 mMのKClでカラムポストロードを洗浄すること、そして未処理のTACI−Fc回復に影響を及ぼさない最適な遊離Fc除去をもたらす別の条件設定を用いるTACI−Fcを溶出すること、を含んでなる、2段階の方法で、TACI−Fcのために最適化された。IFN−β−Fcについては、当該遊離Fc断片を、50 mMの酢酸ナトリウム、及び0〜500 mMの塩化カリウムのグラジエント(pH5)による、洗浄ステップにおいて除去し、その後IFNβ−Fcを、1 M水酸化アンモニウム(pH12)で溶出した。
【0172】
したがって、試験するFc融合タンパク質、TACI−Fc及びIFN−β−Fcの両方については、当該遊離Fc断片を、ブルーセファロースカラムから同じ条件で、すなわちpH4.5〜5.5で溶出又は洗浄した。
【0173】
【表10】

【0174】
【表11】

【0175】
【表12】

【配列表フリーテキスト】
【0176】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、TNFRスーパーファミリーのメンバーに共通するシステイン・フィンガープリント配列である。
配列番号2は、TACIの細胞外部分及びヒトIgG1 Fc部分由来の配列を含んでなる、本発明のFc−融合タンパク質のことを言う(例えば、国際公開第02/094852号に記載がある)。
配列番号3は、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
配列番号4は、IFNβ−Fcアミノ酸配列のことを言う。アミノ酸1〜166は、成熟ヒトインターフェロンベータを表し、アミノ酸167〜393は、成熟ヒト免疫グロブリン重鎖配列の部分を表す。
配列番号5は、配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fc含有タンパク質を含んでなる液体に存在する遊離のFc部分から、Fc含有タンパク質を精製するための方法であって、
(a)青色色素親和性クロマトグラフィ樹脂に当該液体をロードするステップ;
(b)pH約4.0〜約6.0のバッファで当該樹脂を洗浄し、それにより当該樹脂から遊離のFc部分を除去するステップ;及び
(c)当該樹脂からFc含有タンパク質を溶出するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)において、前記バッファが塩化カリウム又は塩化ナトリウムから選択される塩を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)において、前記Fc部分を、青色色素親和性クロマトグラフィ樹脂から、約0〜約0.5 MのKClで塩グラジエントを増加させて洗い流す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、前記Fc部分を、青色色素親和性クロマトグラフィ樹脂から、均一な塩濃度範囲200〜300 mMのKClで洗い流す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)において、前記バッファが、約10〜約100 mMで酢酸ナトリウムを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)の色素親和性クロマトグラフィが、固定化シバクロン・ブルー(Cibacron Blue)F3G−Aを有する樹脂を用いて行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記樹脂が、ブルーセファロースである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、充填されたブルーセファロース樹脂の1ミリリットル当たりFc含有タンパク質約20 mgの動的容量で、ブルーセファロース樹脂をロードすることを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)の前記液体が、pH5で前記樹脂にロードされる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)から得られる青色色素親和性クロマトグラフィ樹脂の溶出液の遊離Fc部分のレベルが、1 mcgのFc含有タンパク質をロードする場合、非還元条件下でのSDS−PAGE及び銀染色により検出できないレベルである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)において、前記Fc含有液体が、タンパク質Aクロマトグラフィ溶出液である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
親和性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ又は限外濾過のうちの1又は複数のステップをさらに含んでなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
精製Fc含有タンパク質を医薬組成物に組み込んで処方することをさらに含んでなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記Fc含有タンパク質が免疫グロブリン(Ig)定常領域を含んでなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記定常領域がヒト定常領域である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫グロブリンがIgGである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記定常領域がCH2及びCH3ドメインを含んでなる、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記Fc含有タンパク質が免疫グロブリン可変領域を含んでなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記Fc含有タンパク質が抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Fc含有タンパク質がFc融合タンパク質である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記Fc融合タンパク質が、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーのリガンド結合部分を含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リガンド結合部分が、TNFR1の細胞外ドメイン、TNFR2、又はそのTNF結合断片から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記リガンド結合部分が、BlysもしくはAPRILの少なくとも1つと結合する、BAFF−Rの細胞外ドメイン、BCMA、TACI、又はその断片から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記Fc融合タンパク質が、
(a)配列番号2;
(b)高ストリンジェント条件下で、配列番号3の補体にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;及び
(c)前記(a)のポリペプチドと、少なくとも80%、又は85%、又は90%、又は95%の相同性を有する(a)の変異タンパク質;
から選択されるポリペプチドを含んでなり、
ここで前記ポリペプチドは、Blys又はAPRILの少なくとも1つに結合する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記Fc融合タンパク質がIFN−βを含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記Fc融合タンパク質が、
(a)配列番号4;
(b)配列番号4のアミノ酸22〜422;
(c)高ストリンジェント条件下で、配列番号5の補体とハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;及び
(d)前記(a)又は(b)のポリペプチドと、少なくとも80%、又は85%、又は90%、又は95%の相同性を有する(a)又は(b)のいずれかの変異タンパク質;
から選択されるポリペプチドを含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Fc含有タンパク質を含んでなる組成物における、遊離Fc部分の濃度の低減のための、青色色素親和性クロマトグラフィの使用。
【請求項28】
前記遊離Fcの濃度が、前記組成物の総タンパク質濃度の、約5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満、又は約0.5%未満、又は約0.2%未満、又は約0.1%未満まで低減される、請求項27に記載の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−500757(P2011−500757A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530429(P2010−530429)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064210
【国際公開番号】WO2009/053360
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(309025524)メルク セローノ ソシエテ アノニム (49)
【Fターム(参考)】