説明

Gタンパク質結合受容体オリゴマーに関する物質及び方法

この発明は、Gタンパク質結合受容体(GPCR)オリゴマーに関する物質及び方法を提供する。Gタンパク質と結合した2つ以上のGPCRの複合体を提供する。また、GPCRとGタンパク質を含む融合タンパク質、核酸、発現ベクター及び宿主細胞を提供する。また、本発明の複合体及び融合タンパク質を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はGタンパク質結合受容体(GPCR)オリゴマーに関する物質及び方法に関する。特に、本発明はGPCRオリゴマーを含む生物学的試薬、生物学的試薬を製造する方法及びGPCRオリゴマーの機能を測定するアッセイを提供するが、これらに限られるものではない。また本発明は、GPCRオリゴマー、特にヘテロオリゴマーの機能を調節(modulate)する能力を有する化合物を測定するアッセイの方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
GPCRは、ヒトゲノムに存在する最も大きな遺伝子ファミリーのひとつであり、臨床的に有効な、小分子、医薬の開発におけるもっとも取り扱いやすい一連の標的であった。薬物の開発でおよそ40%の標的GPCRをヒトで臨床的に使用したと見積もられている。従ってGPCRが制御する下流のシグナル伝達カスケードだけでなく、GPCRの構造、調節及び活性化メカニズムの詳細にも非常に興味が持たれている。GPCRのクラスAまたはロドプシン様ファミリーは非常に大きく、全GPCRファミリーメンバーの80%超を含んでいる。GPCRをコードする800を超える遺伝子は、ヒトゲノム配列決定プログラムで同定されたが、現在のところおよそ25の遺伝子が臨床的に有効な医薬の標的になっている。従って、これを拡大し、最近同定されたGPCRを標的にする有用な医薬を見つけることに大きな可能性がある(Leeら、2001)。
【0003】
近年、二量体として存在するGPCRの概念は、急速に、仮説から明確に認められた概念に移った(総説について、Bouvier, 2001, Milligan, 2001, Georgeら, 2002を参照されたい)。ホモ二量体(すなわちある単一のGPCRのコピーを2つ含むダイマー)はもっともよく研究されているが、ヘテロ二量体化(すなわち2つの異なるGPCRそれぞれ1分子からなる二量体)が生じ、機能的、薬理学的後遺症の両方がありえることを示唆する証拠が増えている(Devi, 2001, Georgeら、2002)。しかしながら、そのようなヘテロ二量体形成の選択性に関して、また2つの異なるGPCRの同時発現によってホモ二量体対の生成も生じるにちがいない場合に、単離してヘテロ二量体の機能をどのように監視するかについて重要な疑問が残る。多くのGPCRが単一細胞で同時発現する場合、細胞中のGPCR二量体の一方は複雑であるようである。
【0004】
γ−アミノ酪酸(GABA)B型受容体(GABABR)について研究が行われた(Dutheyら、2002)。これは一般的でないGPCRである。なぜならば、2つのサブユニット、すなわちGB1とGB2が、機能にとって必要であるとこれまで知られている唯一のGPCRだからである。GB1サブユニットはGABA結合部位を含むが、Gタンパク質のみを活性化することはできない。GB2はGABAに結合しないが、Gタンパク質を活性化する能力を持っている。Dutheyらは、Gタンパク質結合におけるGB1-GB2ヘテロマー内の各サブユニットの役割を調べた。この研究にはGB1及びGB2の両方、特に第三の細胞内ループ内に突然変異を導入することが含まれていた。彼らは、GB2に対する突然変異はGタンパク質活性化を抑制するの対して、GB1に対する同様の突然変異は受容体機能に影響しないことを割り出した。GBGAB受容体に対する興味にもかかわらず、この研究は、残念ながら、同じタンパク質がリガンド結合とGタンパク質活性化の両方を担っているというGPCRについての情報を何ら提供していない。
【0005】
更なる研究により、ホルモン結合に欠陥があった第一の突然変異受容体と、シグナル発生に欠陥があった第二の突然変異受容体の同時発現が調べられた。2つの突然変異体の同時発現がホルモン活性化cAMP生成に導くことが報告された(Lee ら, J. Biol. Chem. Vol. 277, No. 18, 2002; Osugaら, J. Biol. Chem. Vol.272, No. 40, 1997)。
【0006】
しかしながら、GPCRは可能性のある薬物標的として非常に重要であると認識されているにもかかわらず、潜在的に天然に生じるGPCRオリゴマー、特にGPCRヘテロオリゴマーの機能特性、例えばリガンド結合特性について、信頼性のあるデータを集めることを可能にする、満足のいくスクリーニングアッセイが存在しない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は驚くべきことに、リガンド結合後に、GPCRが、第二のGPCRと結合するGタンパク質を、両方のGPCRがオリゴマーを形成した状態で活性化する能力を有することを見出した。
【0008】
具体的には、以下の実施例によって説明されるが、本発明者は、(A)GPCRとGタンパク質の融合タンパク質であって、GPCRがGタンパク質に関して非機能的にされた融合タンパク質及び(B)GPCRとGタンパク質の融合タンパク質であって、Gタンパク質が非機能的にされた、すなわちGPCRによって受け取られたシグナルに作用できない、融合タンパク質の細胞での同時発現によって、複合体A、B、AA、BB、AB及びBAが生成され、ABとBAだけが機能的である、すなわちGタンパク質が活性化されてGTPと結合してGPCRシグナル伝達カスケードが開始される、ことを見出した。
【0009】
GPCR/Gタンパク質αサブユニット融合タンパク質(Milligan, 2000; Milligan, 2002)は、両方の要素(GPCRとGタンパク質)の配列と機能的性質を含む二機能性(bi-functional)タンパク質だと考えられる事実の利点を、基本戦略に利用する。GPCRと融合する野生型Gタンパク質を活性化できなくするようにGPCRを突然変異させた第一の変異体、及び、Gタンパク質と結合された野生型GPCRによってGタンパク質が活性化されえないようにGタンパク質を突然変異させた第二の変異体からなる異なる突然変異体の対を生成することにより、これら2つの突然変異体が同時発現するとき機能を回復できることを本発明者は示す。従って、少なくとも各突然変異体を含むオリゴマーのみが機能的相補性を生み、アゴニストのリガンドに応答してシグナルを発生させることができる。
【0010】
本発明者は、GPCRオリゴマー、特にへテロオリゴマーの性質を決定する信頼性のあるスクリーニングアッセイを提供すること及びこのようなアッセイに使用するための生物学的試薬を提供することに上記の現象を利用できることを認識した。
【0011】
従って、もっとも一般には、本発明は、GPCRオリゴマーの機能的特性を決定するための物質及び方法を提供し、可能性のあるリガンドを決定することも包含する。用語GPCRは当業界でよく理解されており、細胞表面膜貫通タンパク質を指し、適切な化合物によって活性化されると順番にグアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化する。
【0012】
本発明の第一の態様において、
(a)第一Gタンパク質に結合した第一GPCRであって、該結合した第一Gタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び
(b)第二Gタンパク質に結合した第二GPCRであって、非機能的である第二GPCR、
を有するGPCRオリゴマーを含む生物学的試薬を提供する。
【0013】
用語「非機能的」とは、野生型と対照的に、タンパク質(GPCR又はGタンパク質)が特定の生物学的機能を果たすことができないことを意味する。従って、GPCRがGタンパク質に関して非機能的であるということは、Gタンパク質に関して野生型の生物学的機能を果たすことができないこと、即ち、リガンド結合後にGタンパク質を活性化することができないことを意味する。野生型の特徴を示す他の生物学的機能(例えばリガンド結合)は、好ましくは維持される。
【0014】
さらに、非機能的Gタンパク質は野生型の生物学的機能を果たすことができず、つまり、GPCRからの刺激後に細胞シグナル伝達カスケードを開始することができない。
【0015】
第一及び第二GPCRのオリゴマーを形成する能力は、機能的な第二GPCRを機能的な第一Gタンパク質の環境の中に持ち込む。そして機能的なGPCRは、その後で、細胞シグナル伝達カスケードを引き起こす機能的Gタンパク質を活性化することができる。
【0016】
第一及び第二GPCRは、同一、即ちホモオリゴマーでよく、例えばホモ二量体、ホモ三量体又はより高次のオリゴマーでよく、あるいは第一及び第二GPCRは、異なる、即ちヘテロオリゴマーでもよく、例えばヘテロ二量体、ヘテロ三量体又はより高次のオリゴマーでよい。
【0017】
理想的には、オリゴマーは細胞膜中に存在する。これは、第一及び第二GPCRとこれらに結合するGタンパク質が細胞中で同時発現される場合に、好都合に達成される。従って理想的には、該GPCRとそれらのGタンパク質は融合タンパク質として互いに結合する。しかしながら、当業者は他の結合手段が可能であることを理解するであろう。例えば、該タンパク質を、結合対、化学結合等の結合手段、又は単に細胞環境での自然な結合、により結合させることができる。
【0018】
また本発明は、第一の態様に従って生物学的試薬の製造に使用するため、特に本発明による方法に使用するため、突然変異GPCR/天然Gタンパク質の融合タンパク質(改変された非機能的GPCR/機能的Gタンパク質を含む)、並びに、対応する核酸構築物を提供する。マイナーな改変をタンパク質配列に対して行うことができ、例えば、GPCRタンパク質配列とGタンパク質配列間のギャップ及び/又は除去されたGタンパク質遺伝子の末端メチオニンを作るため、エピトープタグを受容体のN末端、導入されたスペーサーセグメントに付加することができる。多くのこのような改変は当業者に認識されており、受容体/Gタンパク質の融合タンパク質の使用における機能性は実質的に影響されないままである。
【0019】
更に、本発明は、本明細書で説明するように、本発明による方法において、突然変異GPCR/Gタンパク質の融合タンパク質(即ち改変された非機能的GPCR/機能的Gタンパク質、又は機能的GPCR/非機能的Gタンパク質のいずれかを含む)の使用を提供する。
【0020】
本発明の核酸構造物は、インフレームでGタンパク質をコードする適切な核酸配列と融合される、特定の受容体をコードする核酸、典型的にはDNA、RNA、mRNA又はcDNA を含む。一般的にいえば、核酸構築物は発現ベクターにより細胞内で発現される。
【0021】
従って、
(a)第一Gタンパク質に結合した第一GPCRであって、結合した第一Gタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び
(b)第二Gタンパク質に結合した第二GPCRであって、第二Gタンパク質が非機能的である、第二GPCR
を有するGPCRオリゴマーを含む細胞も提供する。
【0022】
典型的には、細胞は真核細胞起源であり、酵母を含み、例えば脊椎動物起源であり、両性類及び哺乳動物(特にヒト)を含み、選択された発現ベクターは特定の細胞型で発現するのに適切なベクターである。適切な細胞と発現ベクターは以下でより詳細に説明する。
【0023】
生物学的試薬がGPCRオリゴマーの天然の性質を決定するアッセイに使用できるためには、GPCRに存在するリガンド結合部位が維持されていることが重要である。従って、第一GPCRを、結合した第一Gタンパク質に関してのみ非機能的にすることが好ましい。換言すれば、第一GPCRはリガンドと結合しなければならないが、リガンド結合後にGタンパク質の活性化はできないという能力を維持する。もちろん、GPCRの実際の組み合わせはリガンド結合部位の性質を変えるであろうが、これはオリゴマー形成後に自然に起こるであろうことの反映であり、人為的操作の結果ではないであろう。
【0024】
第二Gタンパク質に関して、第二Gタンパク質は、第二GPCRに関して少なくとも非機能的にさせられている、即ちGPCRによって送られるシグナルに作用できないようにさせられている、ことが好ましい。従って、生物学的試薬がアッセイに有用であるためには、第二Gタンパク質が、細胞シグナルを活性化できない程度に、即ちGTPを機能的に結合できずGPCRシグナル伝達カスケードを開始できない程度に、少なくとも非機能的になることが重要である。
【0025】
本発明者は、G11αGタンパク質に関して、Gタンパク質を非機能的にするために、Gタンパク質に共通するグリシン208を例えば置換によって突然変異させうることを見出した。
【0026】
従って、第二Gタンパク質を少なくとも1つのアミノ酸置換によって改変することが好ましく、この少なくとも1つのアミノ酸はG11α中のグリシン208と同等のグリシンである。
【0027】
前述したように、第一GPCRはGタンパク質に関してのみ非機能的になるように改変されることが好ましい。分子生物学の分野は進歩しており、例えば、ある機能(例えばリガンドと結合する能力)を他の機能(例えばGタンパク質を活性化する能力)を崩壊させる一方で維持するように、非常に特異的にタンパク質のアミノ酸配列を改変することが可能である。本発明者は、GPCRの第二細胞内ループ中の高度に保存された残基が突然変異に特に適切であるということを見出した。これらの残基が受容体結合Gタンパク質に関して受容体を実質的に非機能的にするからである。具体的には、本発明者はこの領域の1つ以上の残基の突然変異がGPCRをGタンパク質に関して非機能的にする(即ちGタンパク質が活性化されない)が、それでもなおリガンドに結合できるということを見出した。GPCRに対する突然変異は以下に詳細に議論する。
【0028】
本発明の第二の態様において、第一の態様による生物学的試薬を製造する方法を提供する。この方法は以下の工程、
(a)第一GPCRと第一Gタンパク質の融合タンパク質をコードする第一核酸構築物を製造又は準備する工程であって、第一GPCRを、融合したGタンパク質に関して非機能的であるように、野生型と比較して変異する工程、
(b)第二GPCRと第二Gタンパク質の融合タンパク質をコードする第二核酸構築物を製造又は準備する工程であって、第二Gタンパク質を、非機能的になるように、野生型と比較して変異する工程、
(c)細胞中の第一及び第二核酸構築物を同時発現して第一及び第二GPCRを含むGPCRオリゴマーを製造する工程、
を含む。
【0029】
第一及び第二核酸構築物が既に製造された場合、次に、本発明の方法は以下の工程、
(a)細胞中で第一核酸構築物を発現する工程であって、該核酸構築物は第一GPCR/Gタンパク質の融合タンパク質をコードし、天然のGPCRと比較してGPCRを突然変異させることにより、Gタンパク質に関して非機能的にする工程、
(b)該細胞中で第二核酸構築物を発現する工程であって、第二核酸構築物は第二GPCR/Gタンパク質の融合タンパク質をコードし、Gタンパク質を天然Gタンパク質と比較して突然変異させることにより、非機能的にする工程、
(c)細胞膜中で第一と第二融合タンパク質をGPCRオリゴマーに組み立てることを可能にする工程、
を単に含めてもよい。
【0030】
本方法は更に、前記複合体を含む細胞膜の一部を単離する工程を含むことができる。これは、細胞を溶解して細胞膜を単離することによって達成することができる。
【0031】
前述したように、第一GPCR及び第二GPCRは同一でもよいし(ホモオリゴマー)、異なって_もよい(ヘテロオリゴマー)。
【0032】
本発明者は、第一及び第二GPCRがオリゴマーを形成するために、それらが互いにある程度の親和性を有さなければならないと思う。従って、本発明者はこれを決定できる方法を考案した。従って、本発明の第三の態様として、第一及び第二GPCRが複合体(GPCRオリゴマー)を形成するような、互いに対する親和性を有する第一及び第二GPCRを測定する方法を提供する。この方法は以下の工程、
(a)第一GPCRをコードする第一核酸構築物及び融合タンパク質としてGPCRと結合したGタンパク質を製造又は準備する工程であって、GPCRを野生型と比較して突然変異し、その結果GPCRがGPCRと結合したGタンパク質に関して非機能的である工程、
(b)第二GPCR及びGPCRと結合したGタンパク質をコードする第二核酸構築物を製造又は準備する工程であって、Gタンパク質を野生型Gタンパク質と比較して突然変異し、その結果Gタンパク質が非機能的である工程、
(c)第一及び第二核酸構築物を細胞内で同時発現する工程、及び
(d)第一及び第二GPCRを含む複合体の存在を測定する工程
を含む。
【0033】
第一及び第二GPCRを含むGPCRオリゴマーの存在は、細胞を第二GPCRに対するリガンドに接触させ、第一Gタンパク質が活性化されるかどうかを測定することによって決定することができる。
【0034】
既に述べたように、第一及び第二GPCRは異なっていてもよい。これらが異なる場合、同一の細胞にこれらGPCRが自然に生じることが好ましい。このことにより、オリゴマーが自然に形成されうるという予想が妥当になる。この理由により、本方法は、GCPRが特定の細胞型に存在すること、即ちGPCRが同じ細胞に対して内生的であることを決定する最初の工程を更に含むことができる。多くのGPCRは十分に特徴付けられているので、これは、特定の細胞の遺伝子産物のスクリーニング、たとえばrt-PCR、その後の配列決定などのチップベースのスクリーニングや技術によって行うことができる。
【0035】
互いに親和性を有する、即ちオリゴマーを形成できるGPCRの測定は、薬理学的に非常に重要である。例えば、オリゴマー(ヘテロ又はホモ)を形成する2つの受容体の能力は、組織特異的である。従ってこれらの組織特異的GPCRオリゴマーは重要な薬物標的を形成することができる。表1は各細胞型に関連しうる例示的な意味のある医学的関係を示す。
【0036】
本発明による生物学的試薬の製造は、特にリガンド結合及びそれに続く細胞シグナル伝達カスケードに関してオリゴマーの機能を決定する便利で信頼できる方法を提供する、様々なスクリーニングアッセイの可能性を初めて開く。
【0037】
例えば、本発明の第四の態様において、化合物がGPCRオリゴマーに対して有する作用(effect)を測定する方法を提供し、この方法は、以下の工程、
a)本発明の第一の態様による生物学的試薬を含む細胞又は細胞膜を準備する工程、
b)該化合物を細胞又は細胞膜に接触させる工程、
c)該化合物がGPCRオリゴマー、特にGPCRオリゴマーのシグナル伝達に対して有する作用を観察する工程、
を含む。
【0038】
また本発明のこの態様に関して、GPCRオリゴマーと相互作用可能な化合物を同定する方法を提供し、その方法は以下の工程、
a)GPCRオリゴマーを発現する細胞を製造する工程であって、GPCRオリゴマーが(i)第一Gタンパク質に結合した第一GPCRであって、結合した第一Gタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び(ii)第二Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、第二Gタンパク質が非機能的である第二GPCRを含む、工程、
b)該細胞又はその単離された細胞膜を該化合物と接触させる工程、
c)該化合物がGPCRオリゴマーと相互作用するかどうかを測定する工程、
を含む。
【0039】
また、GPCRオリゴマーを含む細胞又は細胞膜は、非機能的又は実質的に非機能的なGPCR、例えば第一及び第二GPCRのいずれかを含む単量体(i又はii)、第一GPCRの二量体(i/i)、又は第二GPCRの二量体(ii/ii)を含むことができることは理解されるべきである。本発明の利点は、これらの単量体又は二量体の形成がスクリーニング方法の結果に影響を与えないことであり、なぜなら、第一及び第二GPCRになされた突然変異が原因で、(Gタンパク質を刺激でき、シグナル伝達カスケードを開始できる)機能的受容体だけが、第一及び第二GPCRの両方を少なくとも含んでいるオリゴマーだからである。従って単量体又はホモオリゴマー(即ち両方とも第一GPCR又は両方とも第二GPCR)はどれも、第一GPCR及び第二GPCRの両方を少なくとも含むオリゴマーと比較して、おそらくバックグラウンド活性以外の活性をもたないであろう。
【0040】
バックグラウンド活性は、天然又は野生型活性の20%、15%、10%又は好ましくは5%未満を意味すると理解される。
【0041】
テスト下での化合物のGPCRオリゴマーとの相互作用により、1種類以上の多数の生物学的事象が生じうる。例えば、相互作用により、リガンド結合部位での立体配置の変化が生じうる。これにより受容体の天然のリガンドの有効性(potency)を変えることができる。これとは別に、化合物とGPCRオリゴマー間の相互作用により、化合物が潜在的なアゴニストであることを示す細胞受容体シグナル伝達カスケードを起こすことができる。化合物は天然GPCR単量体に存在するリガンド結合部位に結合することができ、また化合物はGPCRオリゴマー形成の結果として生じた新しい結合部位に結合できる。
【0042】
本発明の第四の態様による方法は、GPCRオリゴマーと結合することができる新しいリガンド(アゴニスト、アンタゴニストなど)を測定するのに使用できる。これらのリガンドは、GPCRオリゴマーと結合できるリガンドと異なってもよい。これらのリガンドは、対応するGPCR単量体と結合して活性化できるリガンドと異なってもよいし、また結合の効果は個々の単量体の効果と比べて異なってもよい。例えば、オリゴマーに結合するリガンドは、対応する単量体とは対照的に、変化したシグナル、例えば増加した又は減少したシグナルを生じてもよいし、また活性化された異なる細胞経路を生じてもよい。これらの受容体オリゴマーの性質は、第四の態様による方法を使用してすべて決定できる。
【0043】
更に、テスト下の化合物は、GPCRオリゴマーの公知のリガンド、例えばアゴニストを遮断する能力を有してもよい。これを測定するため、化合物を、公知のリガンドの存在下で細胞と接触させ、GPCRを活性化するリガンドの能力を、化合物の不存在下でGPCRを活性化する能力と比較する。
【0044】
従って、更に本発明はGPCRオリゴマー及びそのリガンド間の結合を調節(modulate)する能力を有する化合物を同定する方法を提供し、その方法は、以下の工程、
a)GPCRオリゴマーを発現する細胞を製造又は準備する工程であって、GPCRオリゴマーは、(i)第一Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、結合した第一Gタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び(ii)第二Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、第二Gタンパク質が非機能的である第二GPCRを含む、工程、
b)リガンドの存在下で該細胞を該化合物に接触させる工程、
c)GPCRオリゴマーと結合するリガンドの能力を、比較可能な条件かつ化合物の不存在下でのGPCRと結合するリガンドの能力と比較する工程、
を含む。
【0045】
このように、化合物はリガンドのGPCRへの結合を競合的に抑制する能力を有してもよいし、あるいは、化合物は、リガンド結合の結果として実際に結合を増加及び/又は受容体刺激を増加してもよい、即ちリガンドの有効性を増加してもよい。
【0046】
ひとつの可能性は、第三のGPCRがGPCRオリゴマーと複合してアロステリック効果を有することである。これは化合物が第三のGPCRである場合に前述の方法で測定することができる。この状況下では、野生型第一及び第二GPCRと共に野生型第三GPCRが少なくとも1つの細胞型で内生的に同時発現されることが好ましい。
【0047】
前述したように、2つのGPCRがオリゴマーを形成する場合、それぞれのリガンド結合部位が変化するか及び/又は新しいリガンド結合部位が形成されうる。これらは非常に薬理学的重要性を有する。従って、更に本発明は、第5の態様として、対応する単量体に存在しないGPCRオリゴマーの新しい又は変化したリガンド結合部位の存在を測定する方法を提供し、本方法は、以下の工程、
a)化合物をGPCR複合体を発現する第一細胞に接触させる工程であって、GPCR複合体が、(i)Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、Gタンパク質に関して非機能的であるように改変された第一GPCRと、(ii)Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、Gタンパク質が非機能的であるように改変された第二GPCRを有する、工程、
b)該化合物を未改変第一GPCR単量体を発現する第二細胞に接触させる工程、
c)第一細胞及び第二細胞に対する該化合物の作用を比較し、GPCRオリゴマーによって作られた新しい又は変化したリガンド結合部位の存在を測定する工程、
を含む。
【0048】
GPCRオリゴマーがヘテロオリゴマーである場合、即ち少なくとも2つの異なるGPCRを含む場合、この方法は、未改変の第二GPCR単量体を発現する第三の細胞に化合物を接触させる工程を更に含めることができ、また再び、第三細胞に対する該化合物の作用を比較し、2つ以上のGPCRのオリゴマー形成の結果として作られた新しい又は変化したリガンド結合部位の存在を測定する工程を含めることができる。
【0049】
好ましくは、未改変の(即ち機能的な)第一及び第二GPCR単量体を、組換え手段により、第二又は第三細胞それぞれで発現させる。
【0050】
新しいリガンド結合部位の存在は、特定の化合物がオリゴマーと接触するが対応する単量体とは接触しないことで、細胞で受容体シグナル伝達カスケードを起こすことができるという事実によって測定することができる。
【0051】
変化したリガンド結合部位の存在は、オリゴマーと対応する単量体との間で受容体シグナル伝達カスケードが変化する、例えば、シグナルが増加したり減少したり、及び/又はシグナル伝達経路が変化する等の事実によって測定することができる。
【0052】
第一又は第二細胞に対する化合物の作用には、GPCRオリゴマーへの結合の能力(例えば、化合物を標識することにより測定される)及び細胞シグナル伝達カスケードを開始する能力(例えば、シグナル伝達経路の化合物の活性の変化を検出することにより測定される)が含まれる。
【0053】
受容体オリゴマー形成後、様々なリガンド結合部位が未変化のままであるとしても、受容体機能における他の変化が起こってもよい。
【0054】
従って、本発明は、GPCRオリゴマーを形成する結果、GPCRの機能の変化を測定する方法を更に提供し、本方法は以下の工程、
(a)化合物をGPCRオリゴマーを発現する第一細胞に接触させる工程であって、GPCRオリゴマーが、(i)Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、Gタンパク質に関して非機能的であるように改変された第一GPCR、及び(ii)Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、Gタンパク質を非機能的にするように改変した第二GPCRを含む、工程、
(b)未改変の第一GPCRを発現する第二細胞及び/又は未改変の第二GPCRを発現する第二細胞に、化合物を接触させる工程、及び
(c)GPCRオリゴマーの機能と、未改変の第一GPCRの機能及び/又は第二GPCRの機能とを比較し、オリゴマー形成から生じる受容体機能の変化を測定する工程、
を含む。
【0055】
GPCRオリゴマーを活性化できる化合物を測定する前述の方法(例えば第四の態様による)及びGPCRオリゴマー形成によって生じた新しい又は変化したリガンド結合部位の存在を測定する前述の方法(例えば第五の形態による)において、当業者は、リガンド結合の変化を更に測定するために、第一及び第二GPCRに更なる突然変異を追加することを選択することができる。GPCRタンパク質の操作は十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、本発明のすべての態様において、更にGPCR融合タンパク質を構成的に(constitutively)活性型に改変することが可能である。構成的にGPCR配列を活性化するための方法の例として、米国特許第6,555,339号公報(参照によって本明細書に組み込まれる)及びPCT/US98/07496号、国際公開第98/46995号公報(参照によって本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0056】
また本発明による生物学的試薬は、単量体、ホモオリゴマー及びヘテロオリゴマー間の示差的Gタンパク質結合の測定を可能にする。
【0057】
一例として、本発明は、ホモ二量体(例えばAA又はBB)がヘテロ二量体(例えばAA又はBA)よりも異なるGタンパク質に結合するかどうかを評価するために行われる方法を可能にし、以下の工程、
(a)1つのGPCR(例えばA及びB)をそれぞれ含む多数の融合タンパク質を製造又は準備する工程であって、GPCRが、すべての主要なGタンパク質クラス(例えばGs、Gq及びGi)をカバーする複数の異なるGタンパク質のうちの1つに融合されている工程、
を含む。例えば、1つの対は、Gsに融合された第二細胞内ループでの突然変異によって不活化された受容体を含むだろう。この対の第二受容体は、突然変異によりGタンパク質が不活化されるように変異したGsに融合された機能的受容体を有するであろう。
【0058】
第二の対は、Gqと融合される第二細胞内ループ中の突然変異によって不活化される受容体を含むであろう。この対の第二受容体は、突然変異によりGタンパク質を不活化するように変異したGqと融合された機能的受容体を有するであろう。
【0059】
第三の対は、Giと融合される第二細胞内ループ中の突然変異によって不活化される受容体を含むであろう。この対の第二受容体は、突然変異によってGタンパク質を不活化するように変異したGiと融合された機能的受容体を有するであろう。
【0060】
G12やG13のような他のGタンパク質を、同様の方法で評価することができる。
【0061】
本発明の上記方法はさらに、(b)未改変の十分に機能的な受容体(A又はB)及び未改変の十分に機能的なGタンパク質を有する各Gタンパク質に対する対照融合タンパク質を製造又は準備する工程を含む。
【0062】
従って、いずれかのGタンパク質について幾つかの構築物は以下のように作製されるだろう:
(a)変異型の受容体Aは、十分に機能的なGs、Gi及び/又はGqと融合される。
【0063】
(b)機能的な受容体Bは、変異型のGs、Gi及び/又はGqと融合される。
【0064】
(c)機能的な受容体Aは、変異型のGs、Gi及び/又はGqと融合される。
【0065】
(d)変異型の受容体Bは、十分に機能的なGs、Gi及び/又はGqと融合される。
【0066】
(e)Gs、Gi及びGqの十分に機能的な融合は、受容体A及びBのそれぞれに対して行われる。
【0067】
幾つかの細胞の形質移入(transfection)によって、相対的な結合を互いに比較することができる。例えば、ホモ二量体及びヘテロ二量体間のGsの結合の効率性を比較するために、以下のことが実施されるであろう:
(a)第一細胞は、前記a)及びb)の組み合わせで形質移入される。
【0068】
(b)第二細胞は、前記c)及びd)の組み合わせで形質移入される。
【0069】
(c)第三細胞は、受容体Aの十分に機能的な融合体で形質移入される。
【0070】
(d)第四細胞は、受容体Bの十分に機能的な融合体で形質移入される。
【0071】
受容体A及びBに対するアゴニストの有効性と構成的な活性を評価するために、各組み合わせの応答が比較される。この工程は、各Gタンパク質について繰り返されるであろう。
【0072】
参照によって本明細書に組み込まれるJurgen Wess (Pharm. Ther. vol. 80, No. 3 1998)は、受容体/Gタンパク質結合選択性の分子論的基礎の情報を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
本発明の態様及び実施形態を、具体例を通して添付した図面を参照しながら説明する。更なる態様及び実施形態は当業者に明らかであろう。本明細書で述べられているすべての参考文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0074】
詳細な説明
図1は、本発明者が、突然変異体の対によって機能の再構成を起こすことができ、その結果機能的オリゴマーを形成するということをどのように想定したかの説明を示す。図に示すように、機能的オリゴマーは、天然GPCR及び突然変異Gタンパク質を含む第一融合タンパク質(a)、突然変異GPCRと天然Gタンパク質を含む第二融合タンパク質(b)から構成される。これらの2つの融合タンパク質が組合わさるときに、GPCRシグナル伝達カスケードの機能的活性化が、第一融合タンパク質の天然GPCRに結合するアゴニストリガンドと第二融合タンパク質のGタンパク質を介する機能的な結合とシグナル伝達によって起こる。
【0075】
図2は、非機能的ホモ二量体の形成がどのように想定されるかを示す。非機能的ホモ二量体は、2つの天然GPCR及び2つの突然変異Gタンパク質を含み(a)、又は2つの突然変異GPCRと2つの天然Gタンパク質を含む(b)。それぞれの場合において、ホモ二量体の2つの型は、適切なリガンドがGPCRに結合しても、機能的なシグナル伝達を導くことはできない。
【0076】
GPCR及び結合されるGタンパク質
GPCR及びGタンパク質は、適切なGPCR/Gタンパク質の組み合わせであってよい。GPCRの非独占リストをhttp://www/gpcr.org/7tm/で見ることができる。好ましくはGPCR及びGタンパク質は、哺乳動物起源であり、より好ましくはヒト起源である。典型的なGタンパク質結合受容体は、例えばドーパミン受容体、ムスカリン性コリン作用性受容体、α-アドレナリン作用性受容体、β-アドレナリン作用性受容体、アヘン剤受容体、カンナビノイド受容体、セロトニン受容体、ソマトスタチン受容体、アデノシン受容体、内皮受容体、ケモカイン受容体、メラノコルチン受容体、神経ペプチドY(NPY)受容体、GnRH受容体、GHGH受容体、TSH受容体、LH受容体及びFSH受容体である。本発明に従って使用できる他のGPCRは、Trends in Pharmacological Sciences: Ion Channel Nomenclature Supplement compiled by S. P. H. Alexaqnder & J. A. Peters, 11th Edition, Current Trends, London, UK 2000,及びThe RBI Hnadbook of Receptor Classification and Signal Transduction, K. J. Watling, J. W. Kebabian, J. L. Neumeyer, eds. Research Biomedicals International, Natick, Mass., 1995. Vassilatis et al. PNAS, April 2003, vol.100, 4903-4908で(それらのリガンドと共に)記載されている。これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0077】
本発明のすべての態様にとって、好ましくは、第一及び第二GPCRが異なり、これらが少なくとも1つの細胞型によって内生的に同時発現される。
【0078】
GPCRは、現在のところ、A、B及びCの3つの主要なクラスにグループ分けされている。また、クラスAは、ロドプシン様又はロドプシンファミリー受容体と呼ばれており、クラスBは、セクレチン様受容体であり、クラスCは、代謝向性(metabotropic)受容体である。すべてGPCRでありながら、3つのファミリーは配列類似性がなく、収束進化の一例であったと思われる。クラスAの例には、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミン及びセロトニンなどのカテコールアミンの受容体及びオピオイドペプチド、ニューロキニン、オレキシンなどを含む(神経)ペプチドに対する受容体が含まれる。嗅覚受容体もまたこのグループの一部である。クラスB受容体は全部で約65、クラスC受容体は約18であり、これらにはGABAb受容体、カルシウムセンシング受容体及び7つの代謝向性グルタミン酸受容体のファミリーが含まれる。GPCRとして最終的にいまだクラス分けされていないタンパク質の他のファミリーが存在する。これらには「縮んだ(frizzled)」受容体ファミリーと「メトセラ(Methuselah)」受容体が含まれる。
【0079】
Gタンパク質は、GPCRと会合/結合することが可能などんなGタンパク質でもよい。好ましくは、Gタンパク質はCa2+、cAMP、cGMP、イノシトール1,4,5-三リン酸、ジアシルグリセロール、プロテインキナーゼC活性、またはMAPキナーゼ活性の細胞内レベルを調節する能力を有する。
【0080】
例えば、Gi、Go又はGzの活性化は、cAMPの細胞内レベルの減少に導く。Gq、G11、G15又はG16は、イノシトール1,4,5-三リン酸及びCa2+の細胞内レベルの増加に導く。
【0081】
またGタンパク質は、Gi、Go、Gz、G11、G12、G13、G14、G16、Gs及びGqから成る群から選択されてもよい。
【0082】
ここで同定されたこれらのGタンパク質に加えて、配列情報に基づいた更なるGPCRを同定することは、熟練した読み手の専門家にとって十分にやっていける。すべてのGPCRは、形質膜を横断するのに十分な長さ(20−25アミノ酸)である、7つの高疎水性領域を有する。これらのうち、幾つかのアミノ酸は実質的にいつもそこに存在する。例えば、クラスAのGPCRでは、アスパラギン酸-アルギニン-チロシンの配列又は非常に近い配列が事実上いつも存在する(これはアスパラギン酸(D)-アルギニン(R)-チロシン(Y)の一文字のアミノ酸コードなので、DRYドメインと呼ばれる)。また当業者は、更なるGPCRを同定するための「隠れマルコフ(Hidden Markov)」方法などの数学的アルゴリズムで調査を行うことができる。
【0083】
好都合なことに、GPCRはクラスAのGPCRでよく、GPCR結合Gタンパク質と一緒に、その具体例を図3に示す。
【0084】
GPCRとGタンパク質の改変
また、図3は、例えば突然変異するのに適切な、及びGPCRを実質的に非機能的にするのに適切な、GPCRの第二細胞内ループの高保存残基を示す。これらの残基の突然変異は、GPCRを不活性にするがいまだリガンドと結合できるようにするのに特に有効であることが本発明者によって示された。更に、疎水性残基は、高く保存され、すべてのクラスAのGPCRを、この方法で突然変異して不活性にすることができると考えられる。典型的には、残基は疎水性残基であり、例えばこの分野で公知の部位特異的突然変異誘発技術によって酸性残基に変異してもよい。しかしながら、GPCRを機能的に不活性又は実質的に機能的に不活性にする別の突然変異を行ってもよく、それらの活性/活性の欠失を、ヘテロ二量体活性のアッセイに関する後述のアッセイを使用してテストしてもよい。つまり、突然変異誘発後に活性の程度がどのくらい残るかを確認するために、天然のGPCRに対する機能的アッセイを突然変異誘発されたGPCRで行ってもよい。突然変異誘発の第一ラウンドがGPCRを不活化するのに十分でなければ、突然変異誘発の更なるラウンドを行い、その後活性をテストしてもよい。
【0085】
また、ランダムな突然変異誘発又は適用された分子進化を行い、次にその突然変異体の活性をテストすることが可能である。更に、Gタンパク質の結晶構造は公知であり、重要な残基がそれから同定されるため、標的の突然変異誘発を行うことができる。
【0086】
公に利用可能なウエブサイト(http://www.cbs.dtu.dk/services/tmhmm/)は、GPCR構造を有する膜貫通型ドメインを同定するために、当業者に使用されうる。これにより、GPCRを不活性にするが依然としてリガンドと結合できるようにした変異体を測定するために行なわれる、部位特異的突然変異誘発が可能になる。第二細胞内ループ(IC2)は、膜貫通(TM)3及びTM4の間のポリペプチドセグメントとして定義されよう。このサイトは、類似の突然変異体を作る目的で図3のIC2配列と整列比較さたいGPCRアミノ酸配列の周辺を特定することに関するガイダンスを少なくとも提供するだろう。
【0087】
本明細書で述べられている膜GPCRは、典型的には、結合したGタンパク質が受容体に融合することによって改変される。典型的には、Gタンパク質をコードする核酸は、インフレームで、ストップコドンが削除されている特定のGPCRをコードする遺伝子の3’末に融合されてもよい。このようにして、核酸の発現では、レポータータンパク質が機能的に発現されて、GPCRのC末端に融合される。受容体の改変は、膜受容体の機能性がGタンパク質の受容体への融合によって実質的に影響されない程度である。
【0088】
Gタンパク質に対して行なわれる突然変異は、Gタンパク質を非機能的にする(即ち、GTPと機能的に結合できず、GPCRシグナル伝達カスケードを開始できない)どんな適切な突然変異でもよい。また、これを、本明細書で説明されるアッセイを使用して当業者がテストするのは容易であろう。作られる適切な突然変異は、G11αの208位のグリシンを、例えばアラニンに変異することである。すべてのGタンパク質は、208位にグリシン又は同等の部位/残基を有するので、同等の突然変異は他のGタンパク質を不活化すると考えられる。他の適切な突然変異体は、タンパク質がGTPと結合し加水分解可能できる配列をもたらす変異体として容易に同定されうる。今までのところ、Gタンパク質配列は進化を通じて高く保存されていると観察され、またタンパク質がGTPと結合し加水分解できることに関連していると同定された配列が高く保存されている。
【0089】
従って、受容体(天然又は突然変異)を適切なGタンパク質(天然又は突然変異)に結合できることは、比較的明白なタスクである。
【0090】
構成的に活性なGPCRと機能的ゲノミクス
おそらく、今日の薬剤開発における非常にやりがいのある工程は、標的の検証に関連している。大きな公的な及び私的な、ここ数年で達成されたヒトゲノム配列決定の試みは、医薬品開発の前例のない数の遺伝子ターゲットを提供した。機能性の解析及び、最も重要なことに、遺伝子ターゲットの潜在的な治療の関連性は、次の世代の治療の開発の基本として高い優先度を有する。この課題は、多数の新規遺伝子が同定されているGPCR遺伝子ファミリーよりも重要性は大きくない。目的とする組織内で高く又は選択的な発現を示すGPCRを同定することにより、細胞レベルの分析を更に洗練することが可能である。これには、RNAプローブ及び抗体の両方を使用して、目的とするGPCRを発現する組織内の細胞集団をマッピングすることを含めることができる。
【0091】
リガンドが同定されていないオーファンGPCRについて、次に、受容体の構成的活性型を道具として使用して、オーファンGPCRの機能的な役割を更に調査することができる。このようなアプローチは、本質的に、標的GPCRに対するリガンド刺激の作用をシュミレートする。例えば、インシュリンの分泌を調節する潜在的な標的を同定する手段として、すい臓B細胞内で選択的に発現されるオーファンGPCRが同定された。このような受容体の構成的活性型の一例、すなわち「島受容体1」により、インビトロ系において、受容体が適切な細胞シグナル伝達分子(アデニル酸シクラーゼ)に結合し、インシュリン放出を調節することが確認される。更に、インシュリン産生細胞系統におけるこの構成的に活性な受容体の利用により、受容体の活性型がグルコース感受性インシュリン放出を増強することが確認される。これらのデータは、インシュリン放出を調節するための手段として「島1」GPCRアゴニストの開発を支持する非常に示唆的な情報を提供する。
【0092】
GPCR発現を包括的に試験するため、オリゴヌクレオチドGPCRチップがArena Pharmaceuticals Inc., 6166 Nancy Ridge Drive, San Diego, CA 92121, USAによって合成され、細胞の機能及び病気の状態に対するマーカーだけでなく、すべての利用可能なヒトGPCR配列を含んでいる。このアプローチは、マクロスケールでの広範多様なヒト組織を横切るGPCRの遺伝子発現プロフィールの迅速な同定を可能にする。クラスター分析もまた、機能的役割を示すことができる遺伝子発現の組織特異的パターンを同定するのに適用することができる。従って、GPCRと関連するシグナル伝達分子の組織分布の評価は、受容体シグナル伝達が細胞外刺激を変換することによる分子メカニズムの複雑さを明確にすることができる。ヒトゲノムの配列決定は、グローバルアプローチによりGPCRシグナル伝達の大きさの調査に着手できることによる新しい手段をもたらした。GPCRスーパーファミリーは600-1000の受容体からなると現在のところ見積もられている。マイクロアレイ技術の出現は、行われるべき受容体ファミリーの多数のサンプリングを可能にする。この技術は、与えられたサンプルで同時に数千の遺伝子のメッセージレベルをモニターする技術を可能にする。従って、大きな組織パネルを横切るこれらの遺伝子の転写活性レベルの評価により、人体でのGPCRシグナル伝達のグローバルな見解が提供される。
【0093】
改変されたGPCR及びGタンパク質の発現に適切な細胞
様々な細胞を、本発明の融合タンパク質をコードする核酸構築物を発現するのに使用することができる。改変されたGPCRを発現するために形質移入され得るすべての細胞は、本発明の範囲内に入ると考えられる。このような細胞の例として、新生児の細胞、内分泌細胞、腫瘍細胞、腺房細胞、島細胞、免疫細胞、神経内分泌細胞、ニューロン細胞及び下垂体細胞が挙げられる。また、本発明に従って改変されたGPCRを発現することができる他の細胞系統、例えばCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞(CHO-K1)及びHEK(ヒト胎児由来腎臓)細胞を決定することは、当業者の能力の十分に範囲内である。
【0094】
本発明のアッセイを行うときには、内生のGPCRを高レベルに発現しない細胞系統を使用することが好ましいであろう。CHO-K1はこのような細胞系統の一例である。
【0095】
GPCRシグナル伝達カスケードに対して反応するGPCRオリゴマーの能力のため、特定の細胞が本発明のGPCRオリゴマーを発現するのに選択される。例えば、GPCRオリゴマーのリガンドを測定するアッセイでは、受容体活性化において特徴的に検出可能な変化を有する細胞、例えば色素細胞でGPCRを発現するのが都合がよいであろう。米国特許第5,462,856号公報(参照によって本明細書に組み込まれる)は、色素細胞を使用したGPCRに対する新しいアゴニスト及びアンタゴニストを評価する迅速かつ感度のいいバイオアッセイを開発する方法を述べている。GPCR活性を測定するアッセイについて、以下で更に詳細に議論する。本発明による核酸構築物で形質移入され得る色素細胞には、例えば色素胞、メラニン保有細胞又はメラニン形成細胞、黄色素胞、赤色素胞、白色素胞、虹色素胞が挙げられる。このような細胞は、例えば爬虫類(Reptilia)、例えばアノールトカゲ(Anolis sp)、両生類(Amphibia)、例えばアフリカツメガエル(Xenopus laevis);魚類(Pieces)、例えばカワムツ(Zacco temmincki);甲殻類(Crustacia)、例えばシオマネキ(Uca pugilator);棘皮動物(Echinodermata)、例えばウニ(Diadema antillarum)及び刺胞動物(Cinidaria)例えばナノンサ・カラ(Nanomsa cara)が挙げられる。本発明に使用するのに特に好ましい色素細胞は、アフリカツメガエルから培養されたメラニン保有細胞である(Pigment Cell 1985, ed. Bagnara et al., University of Tokyo Press, pages 219-227)及び Lerner et al. (1988) P.N.A.S. USA, 85: 261-264)。
【0096】
細胞を形質移入するのに核酸構築物を使用することは、当業者の能力の十分に範囲内である。標準的な方法として、リポフェクタミン、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔法、遺伝子銃、リポソーム及びウイルスベクターなどが挙げられる。
【0097】
例えばプラスミドやウイルスベクターなどの発現ベクターは複製可能なDNA構築物であり、構築物では、特定の細胞での膜受容体/レポーター融合の発現をもたらすことができる適切な制御配列に、核酸が作動可能に結合される。典型的には、制御配列には、転写プロモーター、転写を調節する任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び/又は翻訳の停止を制御する配列を含めることができる。典型的には、発現ベクターは、例えばプラスミド、バクテリオファージ又はウイルスを挙げることができ、このようなベクターは、宿主のゲノムに一体化でき、又は特定の細胞で自律的に複製できる。
【0098】
様々な発現ベクターが当業者に利用可能である。好ましいベクターはpCMVであり、受託番号ATCC#203351でATCCに寄託されている。
【0099】
特定の細胞が突然変異GPCR/Gタンパク質の融合タンパク質を発現するために、細胞を適切な発現ベクターによって形質転換しなければならない。本明細書で使用される「形質転換」とは、宿主細胞の中へ異種のポリヌクレオチドフラグメントを導入することをいい、使用方法、例えば直接的な取り込みや、形質移入又は形質導入を問わない。
【0100】
従って、本発明は、本発明の突然変異GPCR/Gタンパク質の融合体を含む核酸構築物によって形質転換され、突然変異GPCR/Gタンパク質の融合タンパク質を発現する細胞にも関する。本発明の方法において、細胞を使用する前に溶解してもよく、GPCRが局在する細胞膜のみを使用してもよい。
【0101】
GPCR活性を測定するためのアッセイ
改変されたGPCRをコードする核酸構築物で細胞を同時形質移入した場合、少なくとも機能的(第二の)GPCRに特異的な、少なくとも1つのリガンドの結合を評価することができる。本発明によるGPCRオリゴマーの機能的活性は、たくさんの標準物質によって測定することができ、周知の技術である。GPCRは、アデニリルシクラーゼ活性に影響を与え、電位によるゲート開閉型カルシウムチャンネルの伝導性を調節し、カリウムチャンネルを調節し、MAPキナーゼ経路を活性化し、ホスホリパーゼC(PLC)-IP3経路を活性化し、ホスホチロシンホスファターゼを活性化し、有糸分裂誘発を刺激し、開口分泌を刺激し、細胞分裂停止を刺激し、走化作用を刺激し、アポトーシスを誘発することが知られている。これらの活性を、日常的な標準的方法を使用して当業者は測定することができる。また機能的活性を、GPCRのリガンドを決定するためのアッセイにおいてこれらの技術を使用して測定することができる(以下を参照のこと)。
【0102】
前記化合物がGPCRへテロ二量体の機能に対して有する作用の観察は、前記GPCRシグナル伝達カスケードの下流構成要素のレベルをアッセイすることにより行うことができる。検出するための1つの便利な要素は、カルシウムレベルのレベル/変化である。典型的には、カルシウムイオンである。カルシウム検出の代わりに、検出試薬として、また当業者に知られたレポーター遺伝子アッセイとして、活性Gタンパク質に結合するGTPの類似体を利用することも可能である。
【0103】
正常又は異常な細胞内の細胞質のカルシウムのレベルは、細胞質のカルシウムレベルをモニターする、当業者に公知の方法によって測定することができる。指示色素を使用することができ、例えば蛍光プローブ(fura-2、fluo-3又は-4、indo-1、quin-2など)は結合カルシウムにスペクトル反応を示し、例えば蛍光顕微鏡検査法、フローサイトメトリーや蛍光分光法を使用して、細胞内の遊離カルシウム濃度の変化を検出することができる。前記蛍光指示薬のほとんどは、非蛍光カルシウムキレート剤EGTA及びBAPTAのバリエーションである。その他の例は、例えばMoleclar Probes, Oregon, USAから入手できる。
【0104】
更に、本発明の方法は、検出を例えばCCDカメラ、照度計又は他の適切な光検出システムを用いて行うことができる高速処理スクリーニングの開発に特に適している。このようにして、細胞/細胞膜を、例えば細胞内カルシウムの検出に必要な試験物質と試薬を添加してもよいマルチウエルプレートに供給する。更に、市販の「FLIPR- flumetric imaging based plate reader」(Molecular Devices Corp, Sunnyvale, CA, USA)などの装置を使用できる。「カメレオン」と呼ばれるカルシウム用の新しい蛍光指示薬も使用することができ、それらの指示薬は補因子無しで遺伝子的にコードされ、かつ特定の細胞内の位置にターゲティング可能である。これらのいわゆる「カメレオン」は、緑色蛍光タンパク質(GHP)の青又はシアン発光性突然変異体、カルモジュリン、カルモジュリン結合ペプチドM13、及び増強された緑色又は黄色発光性GFP、のタンデム融合体からなる。カルシウムの結合は、M13ドメインの周りにカルモジュリンラップを作り、隣接するGFP間の蛍光共鳴エネルギー移動を増加(Miyawakiら 1997)又は減少(Romoserら 1997)させる。
【0105】
細胞内カルシウム濃度測定の別の方法は、Sheuら (1993)で説明されているような、GPCRとアポエクオリンを過剰発現する細胞系統の使用である。この系において、アポエクオリンを発現する細胞を、エクオリンの補因子であるコエレンテラジン(coelenterazine)とインキュベートする。このインキュベーション中に、コエレンテラジンは細胞に入ってアポエクオリンと結合して、酵素の活性型であるエクオリンを形成する。細胞とGPCRのアゴニストとのインキュベーションで、細胞内カルシウム濃度が増加する。この増加はエクオリンの触媒活性の活性化に導き、コエレンテラジンを酸化し、アポエクオリン、コエレンテラミド、CO2及び光を産生する。光子が放出されると、複合体が解離して、アポエクオリンが新しいコエレンテラジン分子と再結合して再び光を放出できるはずである。従って、この系において、アゴニスト添加後の光発光の測定は、GPCRを活性化し、細胞内カルシウム濃度を増加させる能力を反映する。
【0106】
他の適切な検出メカニズムには、Ca2+以外の他の第二のメッセンジャーの検出が含まれ、例えばcAMPレベル、cGMPレベル、イノシトール1,4,5-三リン酸レベル、ジアシルグリセロールレベル、プロテインキナーゼC活性又はMAPキナーゼ活性である。またレポーター遺伝子を使用することが可能である。なぜならば一般的に、GPCRの活性化により、経時的に遺伝子発現の変化が起こるからである(これは、cAMPレベルの変化又はキナーゼの活性化に対して反応するプロモーター要素に結合したレポーターによって起こりうる)。更なる方法は、米国特許第5,462,856号公報(参照によって本明細書に組み込まれる)及び米国特許第6,051,386号公報(参照によって本明細書に組み込まれる)に述べられているメラニン形成細胞を利用する。該公報は、GPCRの機能的活性化により生成されたシグナルが細胞中の色素の凝集状態を変えて、細胞が色素沈着によるくすみの増加又は減少のどちらかを示し、例えば比色分析手段で容易に検出する方法を説明する。凝集状態の変化により、増加した凝集又は逆に凝集の減少(分散)が生じることも可能である。
【0107】
レポーターアッセイ
GPCRオリゴマーからのシグナル伝達は、様々なレポーター系を使用して評価することもできる。細胞内cAMPレベルの変化を測定するためには、環状AMP応答エレメント(CRE)を含むプロモーターによって駆動されるレポーター構築物が好ましいであろう。プロテインキナーゼCの活性化に導くGq経路から放出された応答を測定するためには、PKC感受性レポーター系が好ましく、PKCプロモーター配列にあるAP1部位を含む。MAPキナーゼ活性化に感受性の他のレポーター及び血清応答エレメント(SRE)を含むレポーターもまたGPCRオリゴマーからの応答を測定するのに使用できる。レポーター分子自体は、動くことができ、これらの例には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼ、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質及びその他が含まれる。
【0108】
リガンド結合の測定
本発明は、オリゴマー形成の結果としてGPCRに結合する新しいリガンドを決定するのに特に適切である。当業者に周知の天然のリガンド及び合成リガンドをテストすることができる。適切な試験リガンドは、コンビナトリアルライブラリー、ペプチド及びペプチド模倣物、確定した化学物質、オリゴヌクレオチド及び活性についてスクリーニングできる天然物ライブラリーからのものである。1つの可能なアプローチにおいて、候補物質は、バッチで、例えば1反応につき10個の物質で、また個別に試験された効果を示すこれら物質のバッチで、最初のスクリーニングを行うのに使用することができる。
【0109】
典型的には、特定の膜GPCRに対する化合物の作用について、その化合物をスクリーニングするのにアッセイを使用することができる。特定の膜受容体に作用を有すると特定された化合物は、例えば野生型及び/又は突然変異膜受容体の活性を調節するのに有用である。また、化合物は特定の膜受容体の生物学的機能を詳細に詰めるのに使用でき、及び/又は正常な膜受容体相互作用を崩壊する又はそのような相互作用をそれ自体で崩壊できる化合物を特定するためのスクリーニングに使用することができる。
【0110】
このアッセイは、膜受容体のインバースアゴニスト、アンタゴニスト又はアゴニストとして働く化合物の検出に特に適切である。用語インバースアゴニストとは、インバースアゴニストが受容体に結合したときに、選択的に安定化して、立体構造(conformation)または下流のシグナルを誘発できない立体構造の受容体の割合を豊富にする化合物を意味すると理解される。アゴニストは、アゴニストが受容体に結合したときに、選択的に安定化して、立体構造又は下流のシグナルを誘発できる立体構造の受容体の割合を豊富にする化合物を意味すると理解される。アンタゴニストは、アンタゴニストが受容体に結合したときに、活性又は不活性立体構造のどちらかを豊富にする選択的能力がなく、それらの間の平衡を変えない化合物を意味すると理解される。
【0111】
従って、本発明は、本発明による、アッセイを使用して同定された受容体タンパク質のインバースアゴニスト、アンタゴニスト又はアゴニストに関し、また二量体又はオリゴマーGPCRの機能又は治療の研究でのこのようなインバースアゴニスト、アンタゴニスト又はアゴニストの使用に関する。
【0112】
以下に、本発明を実施するための具体例を提供し、本発明を生んだ本発明者により行われた研究の概要を説明する。
【実施例】
【0113】
材料と方法
組合わせGαq/Gα11ダブルノックアウトマウス(Offermansら、1998)由来の線維芽細胞細胞系統(EF88)(Gohlaら、1999)が、Dr. M.I. Simon、 California Institute of Technology, Pasadena CAから恵与された。組織培養のためのすべての材料は、Life Technologies Inc. (Paisley, Strathclyde, UK)により供給された。[3H]プラゾシン(80Ci/mmol),[3H]メピラミン(30Ci/mmol)及び[35S]GTPγS(1250Ci/mmol)はNEN/Perkin Elmerから得た。オリゴヌクレオチドは、Cruachem (Glasgow, Strathclyde, UK)から購入した。時間分解蛍光共鳴エネルギー移動用の試薬はWallacから得た。受容体リガンドは、RBI(Gillingham, Kent,英国)から購入した。抗Gq/G11抗血清CQの製造と特徴づけは、Mitchellら, 1991; Mitchellら, 1993によって説明されたGq/G11の広範囲に及ぶ分布は、予想されたC末端デカペプチドに対する抗ペプチド抗血清によって免疫学的に検出された(FEBS Lett. 287, 171-174)。
【0114】
他のすべての化学物質は、Sigma(Poole, Dorset, UK)から入手し、入手可能な最も高いグレードであった。
【0115】
融合タンパク質の構築
野生型及び突然変異型α1b-アドレナリン作用性受容体-Gα11融合タンパク質の製造及びサブクローニングは、Carrilloら、2002に説明されているように行った。ヒトヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質の製造及びサブクローニングを2つの分かれたステージで行った。第一の工程では、アミノ末端プライマー5'-GATACTGGGCTATCCAAGCTTATGAGCCTCCCCAATTCCTC-3'を使用し、HindIII制限酵素認識部位(下線)をヒトヒスタミンH1受容体のコード配列の上流にPCRで導入した。カルボキシル末端プライマー5'-AAGGAAAAAAGCGGCCGCTGGAGCGAATATGCAGAATTCTCT -3'を使用して、3つのアミノ酸スペーサー(Ser-Gly-Arg)とNotI制限酵素認識部位を停止コドンのすぐ上流に導入した。同様に、マウスG11α配列を、アミノ末端プライマー5'-AAGGAAAAAAGCGGCCGCATGACTCTGGAGTCCATGATGGC-3'及びカルボキシル末端プライマー5'-ATGAAACCGCTCGAGTCACACCAGGTTGTACTCCTTCAG-3'を使用してPCRによって増幅した。これにより、G11αコード配列にそれぞれ隣接したNotI及びXhoI制限酵素認識部位を導入した。第二の工程では、増幅された受容体フラグメントをHindIII/NotIで消化し、G11αフラグメントをNotI/XhoIで消化した。これらのフラグメントを精製して、フラグメントをあらかじめHindIII/XhoIで消化したpcDNA3ベクター(Invitrogen)に連結した。細胞内ループ2LeuからAspへの突然変異体への選択は、Greasleyら、2001の研究に基づいた。また、クラスAのGPCRの大部分において、同等の位置に疎水性のアミノ酸がある(図2を参照のこと)。このような突然変異を、部位特異的突然変異誘発の標準的な方法によってPCR突然変異誘発を用いて融合タンパク質構築物の中に導入した(Sambrookら及びCarrilloら, Manufacturers Kit等)。
【0116】
同時免疫沈降及びtrFRET研究のために、c-myc(EQKLISEEDL)又はFLAG (DYKDDDDK)エピトープをNH2末端メチオニンのすぐ後ろに導入した。各構築物を、その発現と分析の前に完全に配列決定した(Mitchellら, 1991;Mitchellら, 1993)。
【0117】
HEK293細胞の一時的な形質移入
HEK293細胞を、37℃、5%CO2の加湿した大気中で、0.292g/lのL-グルタミン及び10%(v/v)の仔ウシ血清を補ったDMEM中に維持した。細胞を一時的な形質移入の前に60mm皿に60-80%の集密度(confluency)に増殖した。形質移入を、製造者の指示に従ってリポフェクタミン(LipofectAMINE)試薬(Life Technologies, Inc.)を用いて行った。
【0118】
[35S]GTPγS 結合
35S]GTPγS結合の実験を、融合構築物の規定された量を含む膜(詳細は結果を参照のこと)を指示された濃度の受容体リガンドを含むアッセイバッファー(20mM HEPES (pH 7.4), 3mM MgCl2, 100mM NaCl, 1 μMグアノシン5'-二リン酸, 0.2mM アスコルビン酸, 50nCi [35S]GTPγS)に添加することにより開始した。非特異的結合を、100μM GTPγSの存在下以外は同じ条件で測定した。反応物を15分30℃でインキュベートし、20 mM HEPES (pH7.4), 3mM MgCl2及び100mM NaClを含む0.5mlの氷冷バッファーを添加して停止した。サンプルを16,000gで15分、4℃で遠心分離し、得られたペレットを可溶化バッファー(100mM Tris, 200mM NaCl, 1mM EDTA, 1.25%Nonidet P-40)に0.2%のドデシル硫酸ナトリウムを加えたものに再懸濁した。サンプルをパンソルビン(Calbiochem)で澄明にし、続いてCQ抗血清で免疫沈降を行った(Mitchellら, 1993)。
【0119】
最後に、免疫複合体を2回可溶化バッファーで洗浄し、液体シンチレーション分光分析で結合[35S]GTPγSを測定した。
【0120】
[3H]リガンド結合の研究
構築物を含むα1b-アドレナリン作用性受容体の発現をモニターするため、[3H]プラゾシン結合の研究をCarilloら、2002に説明されるように行った。構築物を含むヒスタミンH1受容体の発現をモニターするため、[3H]メピラミン結合アッセイを、[3H]メピラミン(0.1-10nM)を含むアッセイバッファー(50mM Tris-HCl, 100mM NaCl, 3mM MgCl2, pH7.4)に3μgの細胞膜を添加して開始した。非特異的結合を100μMメピラミンの存在下で測定した。反応物を30分25℃でインキュベートし、GF/Bフィルターを通して真空ろ過により結合したリガンドを遊離のものから分離した。フィルターを2回アッセイバッファーで洗浄し、結合したリガンドを液体シンチレーション分光分析により評価した。
【0121】
[Ca2+]i画像化
EF88細胞を、95%空気及び5%CO2の雰囲気中で37℃で、10%(v/v)の熱不活化ウシ胎児血清とL-グルタミン(1mM)を補ったDMEMで増殖した。トリプシン処理中に回収した細胞の一部をカバーガラスに載せて、24時間の増殖期間後、細胞をリポフェクタミンを使って(Life Technologies Inc.)製造業者の指示に従って形質移入した。3時間後、細胞を2回OPTIMEM1で洗浄して、更に24時間DMEM増殖培地で培養した。関連のcDNA種を含む合計3μgのpcDNA3を各カバーガラスで形質移入するのに使用した。色素の膜浸透性アセトキシメチルエステル(1.5μM)を含むDMEM増殖培地で、減少した光の下でインキュベーション(15-20分、37℃)することにより、形質移入されたEF88細胞をCa2+感受性色素Fura-2でロードした。画像化研究の詳細及びその分析については、Liuら、2002に説明されている。
【0122】
GPCR同時免疫沈降の研究
α1b-アドレナリン作用性受容体及びヒスタミンH1受容体構築物のFLAG及びc-myc標識形態を使用した同時免疫沈降の研究を、McVeyら、2001で述べられているように行った。ヒスタミンH1受容体での研究において、30U/mlのエンドグリコシダーゼFを添加した。
【0123】
時間分解蛍光共鳴エネルギー移動
時間分解(time resolved)蛍光共鳴エネルギー移動を、McVeyら、2001で説明されているように、Eu3+-標識抗c-myc抗体とアロフィコシアニン標識抗FLAG抗体を使用して、無傷のHEK293細胞で行った。
【0124】
結果
本発明者は、α1b-アドレナリン作用性受容体と、[3H]プラゾシンを含むアゴニスト及びアンタゴニストリガンドの両方に結合するG11のαサブユニットとの間に融合タンパク質をあらかじめ生成した。この構築物発現するように形質移入したHEK293細胞の膜にアゴニストフェニレフリンを添加することにより、G11αのC末端デカペプチドに対する抗血清を使用した免疫沈降のアッセイの終了につづいてモニターされた[35S]GTPγSの結合の大きな刺激が生じた(図4Aを参照のこと)。
【0125】
Gly208AlaG11α変異体を融合タンパク質に導入することよって、この構築物の等量を発現する膜を用いた場合に、[35S]GTPγS結合のフェニレフリン刺激が本質的に排除された(図4A(2))。なぜならばGタンパク質のこの形は、結合したGDPを放出することができないからである。しかしながら、この変異は、[3H]プラゾシン又はフェニレフリンのどちらかの結合特性を変えなかった。
【0126】
前述の研究により、α1b-アドレナリン作用性受容体の細胞内ループ2の疎水性アミノ酸の突然変異は、アゴニスト仲介シグナル伝達を排除することができる(Greasleyら、2001)。従って、本発明者は、Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体及びG11αの間で融合タンパク質を生成した。これは、野生型融合タンパク質(示さず)として[3H]プラゾシン及びフェニレフリンの両方と結合したが、フェニレフリンは[35S]GTPγSの結合を再び刺激できなかった(図4A(3))。しかしながら、2つの非機能的突然変異体の同時発現は、[35S]GTPγSのフェニレフリン仲介結合を再構成し(図4A(4))、使用された膜の量が個々の各構築物に使用されたものより2倍多い[3H]プラゾシン結合部位を含む場合、アゴニスト仲介[35S]GTPγSのレベルは、野生型融合構築物を用いた場合とほとんど同じ高さであった(図4A(5))。
【0127】
機能の再構成は、2つの突然変異融合体の同時発現を必要とした。2つの構築物を、別々の細胞集団で発現した場合、及び膜調製の前に混合した細胞又は個々に膜を調製してアッセイの前に組合せた場合のどちらかで発現した場合、[35S]GTPγSのアゴニスト刺激結合は観察されなかった(図4B)。このような結果は、GPCR二量体化がアゴニスト機能のために必要であるという仮説と一致する。更に、二量体の中で、1つのGPCRエレメントは、パートナーGPCRに物理的に結合したGタンパク質を活性化する。
【0128】
この基本的な概念を広げるため、同等の実験セットをヒスタミンH1受容体とG11α間の融合体を使って行った。基本的な結果は同じであった。GPCRとGタンパク質の両方の野生型を含む融合は、ヒスタミン存在下で[35S]GTPγS結合の大きな刺激を生じさせた(図5(1))。これは、ヒスタミンH1受容体-Gly208Ala G11α融合タンパク質(図5(2))又はLeu133AspヒスタミンH1受容体と野生型G11αの間の融合体(図5(3))のどちらかの個別の発現の際にはなかった。これらの2つの突然変異体の同時発現は、Gタンパク質のアゴニスト活性化を再び再構成した(図5(4))。再度、2つの突然変異体の同時発現後に、[3H]アンタゴニスト結合部位の2倍多い数を発現する膜は、単離して発現した野生型ヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質と同じくらいの高さの、アゴニストヒスタミンの添加における[35S]GTPγS結合のレベルを生じさせた(図5(5))。
【0129】
これらの研究の拡大として、本発明者らは、単一細胞での機能的再構成と二量体化をモニターすることを試みた。そうするために、本発明者らはEF88細胞を使ったCa2+画像化を用いた。EF88細胞は、Gqα/G11αダブルノックアウトマウス由来のマウス胚線維芽細胞の系統である(Mao et al., 1998; Yu and Hinkle, (1999)。従って、EF88細胞は機能的GPCRと機能的Ca2+移動性Gタンパク質の両方の発現を必要とし、細胞内の[Ca2+]の上昇を生む(Liu et al., 2002; Stevens et al., 2001)。ヒスタミンH1受容体又はα1b-アドレナリン作用性受容体のどちらかの野生型とG11αアゴニストとの間に融合を導入してみると、細胞内の[Ca2+]の上昇が生じた(図6)。これは、確実に形質移入された細胞にのみ起こった。EF88細胞は形質移入に背くので、本発明者らは、確実に形質移入された細胞の視覚化を可能にする増強された緑色蛍光タンパク質(GFP)で同時形質移入した。GFP陽性だったこれらの細胞のみがアゴニストリガンドに応答した(図6b)。ヒスタミンH1受容体及びα1b-アドレナリン作用性受容体の両方において、非アゴニスト応答性GPCR又はGタンパク質突然変異体のどちらかを含む融合体は、細胞内の[Ca2+]を上昇させなかった。しかしながら、非機能的融合体の対の同時発現により、効果的なシグナル発生が再び生じた(図6a、6b、7a及び7b)。
【0130】
本発明はまた、単離したGPCR及びGPCR/Gタンパク質の融合体の両方の二量体/オリゴマーを形成する能力を直接示した。構築物は、N末端にc-myc又はFLAGタグのどちらかでエピトープ標識されていた。α1b-アドレナリン作用性受容体の両方の標識形態のHEK293での同時発現に続いて(しかし別個の発現のあとに細胞の混合が続くのではない)抗FLAG抗体での免疫沈降により、沈殿物中の抗c-myc免疫反応性の存在が示された(図8A)。SDS-PAGEは、α1b-アドレナリン作用性受容体の単量体及び二量体の形態と一致する見かけのサイズ53KDaと110KDaのc-myc抗体によって同定されたバンドの存在を示した。また、抗c-myc免疫反応性は、ゲルのトップの近くで観察され、このことは、より高次のオリゴマー又は凝集したタンパク質のどちらかを示しうる(図8A)。同等の実験をα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合タンパク質で行ったとき、抗c-myc反応性バンドが今度は見かけの質量が90KDa及び200KDaであった以外は、同様の結果が得られ、この融合タンパク質の単量体及び二量体の形態の予想されたサイズと一致した(図8A)。同様の結果がヒスタミンH1受容体のFLAG及びc-myc標識形態について得られた(図8B)。単離された受容体の単量体形態は、およそ100KDaのポリペプチドに予想されたような、二量体形態で移動する約50KDaのポリペプチドとして移動した(図8B)。更にまた、α1b-アドレナリン作用性受容体と同様に、一連の高分子量種が検出された。ヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質を使用すると、単量体及び二量体の種の両方とも容易に検出された(図8B)。
【0131】
同時免疫沈降をもっぱら基にしたGPCR二量体化データの意義と妥当性について一連の課題が挙げられていた(Milligan G, 2001; Salimら, 2002)。従って、本発明者らは、無傷のHEK293細胞で単離されたα1b-アドレナリン作用性受容体及びα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合タンパク質の両方の二量体化/オリゴマー化を、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(tr-FRET)を用いてモニターした。単離されたGPCR又は融合タンパク質のどちらかのc-myc及びFLAG標識形態を同時発現したとき、エネルギー供与体としてのEu3+標識抗c-myc抗体とエネルギー受容器としてのアロフィコシアニン(APC)標識抗FLAG抗体の組合わせを添加して、はっきりとしたエネルギー移動シグナルを観察した(図9A)。GPCR構築物の標識形態を、抗体の添加前に混合した細胞の別々の集団で発現したときは、エネルギー移動シグナルは観察されなかった。ヒスタミンH1受容体及びヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質の両方のN末端でのc-mycとFLAG標識形態を発現するHEK293細胞で、同等の結果が得られた(図9B)。
【0132】
ヒスタミンH1受容体及びα1b-アドレナリン作用性受容体間のヘテロ二量体化の可能性と、GPCR二量体によるGタンパク質の活性化のメカニズムを調べるため、本発明者は、ヒスタミンH1受容体のFLAG標識形態とα1b-アドレナリン作用性受容体のc-myc標識形態を同時発現した。抗FLAG抗体を用いた免疫沈降とSDS-PAGEの後に、使用した電気泳動条件によって部分的にのみ分離された、ヒスタミンH1受容体-α1b-アドレナリン作用性受容体へテロ二量体の免疫沈降と一致する、見かけの分子量50及び100KDaのポリペプチドにおいて、c-myc免疫反応性が検出された(図11A)。ヒスタミンH1受容体のFLAG標識形態とα1b-アドレナリン作用性受容体のc-myc標識形態の同時発現に続くtr-HRETの研究により、細胞表面のヒスタミンH1受容体/α1b-アドレナリン作用性受容体へテロ二量体の存在が確認されたが(図11B)、シグナルの絶対的なレベルは、対応するホモ二量体の対よりもこれらのヘテロ二量体の方が効率悪く形成されたことを示した(図11Bと比較した図9Aと9BのY軸を参照されたい)。ホモ二量体の研究の場合のように、これらの受容体のそれぞれを発現する別個の細胞集団を分析前に混合したとき、tr-FRETシグナルは観察されなかった(図11B)。
【0133】
Leu133AspヒスタミンH1受容体-G11αが、α1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208Ala G11αとともにEF88細胞で同時発現された場合、フェニレフリンは細胞内[Ca2+]を上昇させることができたが、ヒスタミンは上昇させることができなかった(図12A)。これは、α1b-アドレナリン作用性受容体が、Leu133AspヒスタミンH1受容体に物理的に結合したGタンパク質を活性化する場合にのみ起こる。プロトコルが、Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体-G11αとヒスタミンH1受容体Gly208Ala G11αの同時発現によって逆にされたとき、ヒスタミンは、今度は細胞内の[Ca2+]の上昇を引き起こしたが、フェニレフリンは起こさなかった(図7B)。このタイプの分析を拡大するため、ヒスタミンH1受容体-G11α融合体を、Gタンパク質を活性化して[35S]GTPγSの結合を刺激することができない単離されたLeu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体と共に同時発現した。[35S]GTPγS結合のヒスタミン刺激は、同じレベルのヒスタミンH1受容体-G11α融合体のみを発現する膜と比較して、実質的に減少した(図12A)。このようなデータは、Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体がヒスタミンH1受容体-G11αとともに不活化ヘテロ二量体を生じさせることと一致し、ヘテロ二量体のヒスタミンH1受容体が受容体と物理的に結合しているGタンパク質を活性化しないということを示す。同時形質移入でヒスタミンによって生成された残りのシグナルは、ある機能的なヒスタミンH1受容体-G11αホモ二量体がLeu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体の存在下でいまだ形成されることを反映している。実際には、本発明者が、増加量のLeu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体cDNAを用いてヒスタミンH1受容体-G11αを同時発現したとき、同じ数のヒスタミンH1受容体結合部位を発現する膜での[35S]GTPγS結合を起こすヒスタミンの能力は、Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体cDNAのレベルを増加させると減少した(図12A)。EF88細胞でのヒスタミンH1受容体-G11αとともにLeu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体を同時形質移入した後、同様の結果が得られた。細胞内の[Ca2+]ヒスタミン刺激は顕著に減少した(図12B)。
【0134】
2つの異なるGPCRの同時発現は、ヘテロ二量体形成の可能性を提供するとともに、それぞれのホモ二量体の存在を生じさせるにちがいない。本発明者は、Leu133AspヒスタミンH1受容体-G11αとα1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11αとの同時発現で観察されたCa2+シグナル伝達の再構成が、α1b-アドレナリン作用性受容体及びヒスタミンH1受容体ホモ二量体のみが存在したこと及びα1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11αホモ二量体がLeu133AspヒスタミンH1受容体-G11αホモ二量体に結合したG11αに接触して簡単に活性化できることを反映していなかったということを確認したかった。適切に膜にターゲティングするGタンパク質のレベルを上げるため、本発明者は構築物を生成して、α1b-アドレナリン作用性受容体(c-myc-Nt-TM1α1b-G11α)のN末端及び最初の膜貫通領域のc-myc標識された形態のC末端に、G11αを結合した。これがHEK293細胞に形質移入されると、膜分画のイムノブロットは、検出が抗c-myc(図13A)又は抗Gタンパク質抗血清(データは示さず)を介したであろうとなかろうと、53KDaと47KDaの一対として発現をはっきりと示した。抗c-myc抗体による免疫検出に基づいて、c-myc-Nt-TM1α1b-G11αのレベルは、c-myc-α1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合タンパク質のレベルよりも有意に高かった(図13A)。[35S]GTPγS結合アッセイにより、c-myc-Nt-TM1α1b-G11α構築物が抗c-myc抗体で免疫沈降されおわった時に、この構築物はフェニレフリンに応答にして[35S]GTPγSと結合しなかったことが確認された(図13B)。並行した実験は、抗c-myc抗体が、全長c-myc標識α1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合タンパク質への[35S]GTPγS結合を刺激したフェニレフリンを捕捉したことを示した(図13B)。しかしながら、c-myc-Nt-TM1α1b-G11αと単離されたα1b-アドレナリン作用性受容体との同時発現は、抗c-myc免疫沈降での[35S]GTPγS結合の有意な刺激を同等に起こさず(図13B)、これはc-myc-Nt-TM1α1b-G11αをα1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11α融合タンパク質と同時発現した場合にも真実であった(図13B)。従って、膜結合Gタンパク質の濃度を単純に上げることによっては、α1b-アドレナリン作用性受容体又はα1b-アドレナリン作用性受容体融合タンパク質ホモ二量体がこのGタンパク質を活性化することはできなかった。これは、ヘテロ二量体内のトランス活性化により、不活化ヒスタミンH1受容体及びα1b-アドレナリン作用性受容体-Gタンパク質融合体の対の同時発現からデータが得られるにちがいないことを強く主張する。
【0135】
細胞内カルシウム濃度の測定のための蛍光画像プレートリーダー(FLIPR)アッセイの実施例
それぞれのクローン系統由来の標的受容体(実験用)及びpCMV(陰性コントロール)で安定に形質移入した細胞を、次の日のアッセイのために、ポリ-D-リジン前処理96ウエルプレート(Becton-Dickinson,#356640)に、完全培地(10%FBS、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムの入ったDMEM)に5.5×104細胞/ウエルで蒔く。Fluo4-AM(Molecular Prove、#F14202)インキュベーションバッファーストックを調製するために、1mgのFluo4-AMをDMSO467μlとプルロン酸(Pluoronic acid)467μl(Molecular Probe, #P3000)に溶解し、1ヶ月間-20℃で保存できるように1mMストック溶液を得る。Fluo4-AMは、蛍光カルシウム指示色素である。
【0136】
候補化合物を洗浄バッファー(1X HBSS/2.5mMプロベニシド(Probenicid)/20mM HEPES、pH7.4)中で調製する。
【0137】
アッセイのときに、培地をウエルから除去し、4μM Fluo4-AM/2.5mMプロベニシド(Sigma,#P8761)/20mM HEPES/完全培地、pH7.4の100μlに細胞をロードする。37℃/5%CO2でのインキュベーションを60分間続けるようにする。
【0138】
1時間のインキュベーション後、Fluo4-AMインキュベーションバッファーを除去し、細胞を100μlの洗浄バッファーで2回洗浄する。各ウエルには、100μlの洗浄バッファーが残る。プレートをインキュベーターに戻して37℃/5%CO2で60分間インキュベートする。
【0139】
FLIPR(蛍光画像プレートリーダー;Molecular Device)をプログラムし、候補化合物50μlを30秒めに添加して、別の150秒間に候補化合物によって誘引される細胞内カルシウム濃度([Ca2+])の一過的変化を記録する。全蛍光変化のカウントは、FLIPRソフトウエアを用いてアゴニスト活性を決定するのに使用される。機器ソフトウエアは、ゼロで同等の初期読み取り値を与えるように蛍光読み取り値を標準化する。
【0140】
幾つかの実施形態において、標的受容体を含む細胞は、入り混じったGα15/16又はキメラGq/Giαユニットを更に含む。
【0141】
先に、安定に形質移入した細胞を用いるアゴニスト活性のFLIPRアッセイを提供したが、当業者は、アンタゴニスト活性を特徴づけるため、アッセイを変えることは簡単にできるであろう。当業者はまた、代わりに、一時的に形質移入した細胞を使用できることを容易に理解するであろう。
【0142】
リガンド結合を検出するメラニン保有細胞アッセイの実施例
メラニン保有細胞は下等の脊椎動物に見られる皮膚細胞である。該細胞は、メラノソームと呼ばれる色素性細胞小器官を含む。メラニン保有細胞は、Gタンパク質結合受容体(GPCR)活性化で微小管網状構造に沿ってこれらのメラノソームを再分配することができる。この色素移動の結果、細胞を見かけ上明るくしたり、暗くしたりする。メラニン保有細胞では、Gi結合受容体の活性化の結果、細胞内cAMPのレベルが減少することにより、メラノソームが細胞の中心に移動し、劇的に色が明るくなる。次に、cAMPレベルが上がると、Gs結合受容体の活性化に続いて、メラノソームは再分散されて、細胞が再び暗くなったように見える。Gq結合受容体の活性化の結果、レベルが上昇したジアシルグリセロールは、この再分散を誘発することもできる。更に、この技術はまた、特定の受容体チロシンキナーゼの研究に適切である。メラニン保有細胞の反応は、数分内で受容体活性化を起こし、単純な、しっかりとした色変化を起こす。この反応は、従来の吸光度マイクロプレートリーダー又は中程度のビデオ画像システムを用いて簡単に検出できる。他の皮膚細胞とは違って、メラニン保有細胞は神経堤に由来し、シグナル伝達タンパク質の全部を発現すると思われる。特に細胞は非常に広い範囲のGタンパク質を発現し、ほとんどすべてのGPCRを機能的に発現することができる。
【0143】
メラニン保有細胞は、GPCRに対する天然のリガンドを含む化合物を同定するのに使用することができる。この方法は、特定の刺激に応答して色素細胞の色素を分散又は凝集させることができ、またGPCRをコードする外因性クローンを発現することができる色素細胞系統の試験細胞を導入することにより実施することができる。刺激物、例えばメラトニンは、色素の性質(disposition)の初期状態を設定し、色素は、GPCRの活性化により色素の分散が誘発される場合に、試験細胞内で凝集する。しかしながら、細胞を刺激物で刺激して、色素の性質を初期状態に設定すると、GPCRの活性化により色素の凝集が誘発されるとしても、色素が分散する。次に試験細胞を化学物質と接触させ、細胞の色素の性質が色素の性質の初期状態から変化するかどうかを測定する。GPCRと結合する候補化合物(非限定的にリガンドを含む)に起因する細胞での色素の分散は、ペトリ皿の上で暗くなるように見える一方で、色素細胞の凝集は明るく見えるであろう。
【0144】
材料及び方法は、米国特許第5,462,856号及び第6,051,386号公報の開示に従う。これらの特許の開示の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0145】
96ウエルプレートで細胞を平板培養する(1プレート当たり1受容体)。形質移入後48時間で、各プレートの細胞の半分を10nMメラトニンで処理する。メラトニンはメラニン保有細胞で内生的Gi結合受容体を活性化し、色素の凝集を起こす。細胞の残り半分を無血清培地0.7X L-15(Gibco)に移す。1時間後、メラトニン処理細胞は色素凝集状態であるが、無血清培地中の細胞は色素分散状態に保たれる。その時点で、細胞を、選択した試験化合物の反応用量で処理する。平板培養されたGPCRが選択した試験化合物に結合した場合、メラニン保有細胞は、化合物に応答して色変化を受けることが予想される。受容体がGs又はGq結合受容体のどちらかであった場合、メラトニンが凝集したメラニン保有細胞は、色素分散するであろう。その一方で、受容体がGi結合受容体であった場合、色素分散細胞は、用量依存的色素凝集をすると予想される。
【0146】
考察
α1b-アドレナリン作用性受容体及びヒスタミンH1受容体の両方とGタンパク質G11αとの間の融合タンパク質を使用することによって、本発明らは、いまや、これらのGPCRが二量体化すること、及びこれはGPCRのC末端尾部にGタンパク質を付加することによって危うくならないことを示す。同等に、無傷の細胞でGPCR二量体/オリゴマーを検出するtrFRETを使用することにより、無傷の細胞は、細胞表面にGPCR二量体/オリゴマーの複合体の存在を示すことができた。これはまた、GPCRにGタンパク質配列を付加することによって危うくならなかった。更に、GPCR又はGタンパク質のどちらかにGタンパク質のアゴニスト活性化を防ぐ突然変異を導入することによって、本発明者らは、同時発現した場合にアゴニスト介在機能を回復させることができる非機能的融合タンパク質の対を製造した。機能的再構成を2つの方法でモニターした。第一は、アゴニストは、単離状態でそれぞれ非機能的であった2つの突然変異体の同時発現後にのみ、EF88細胞で細胞内[Ca2+]の上昇を起こすことができた。EF88細胞は、ホスホリパーゼC結合Gタンパク質の発現を欠き、従って、Ga2+シグナルを発生させるにはEF88細胞に適切なGPCRとGタンパク質の両方を導入する必要がある。このアッセイは、本発明者にCa2+画像化が単一細胞での機能的二量体化をモニターすることを可能にしたという明らかな利益を有する。シグナル伝達カスケードで測定することができる最初の工程のひとつは、アゴニストで誘発されたGタンパク質でのグアニンヌクレオチド交換である。これは、[35S]GTPγSの結合によって便利にモニターできる。[35S]GTPγS結合アッセイのすべてにおいて、本発明者らは、最初に、飽和[3H]アンタゴニスト結合の研究によってGPCR Gタンパク質融合体のそれぞれの発現レベルを測定した。これにより、構築物の決められた量を含む膜量をアッセイに添加できるようになった。本発明者らは、増加した量のGPCR-G11α融合タンパク質の添加で、アゴニストで刺激された[35S]GTPγS結合の直線的増加があることを先に示した(Stevensら、2001)。ヒスタミンH1受容体-Gly208AlaG11α及びLeu133AspヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質を同時発現したとき、野生型ヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質のみを発現したときとほぼ同量の、アゴニストで刺激された[35S]GTPγS結合を生成するためには、[3H]アンタゴニスト結合部位の数の2倍の存在が必要であった。これは、機能的要素が二量体又はより高次のオリゴマーであるというよい証拠を提供する。機能的ヒスタミンH1受容体が二量体である場合、確率論的には、2つの非機能的突然変異融合体を同時発現するとき、生成された二量体の半分は非機能的であるだろう。なぜならば、この二量体は、ヒスタミンH1受容体-Gly208Ala G11α又はLeu133AspヒスタミンH1受容体-G11αのどちらかのホモ二量体であろうからである。二量体の50%だけが、1つのヒスタミンH1受容体-Gly208Ala G11αの複製物、及び1つのLeu133AspヒスタミンH1受容体-G11αを含む機能的なヘテロ二量体であると予想される(図10)。またこれらの研究は、クラスCのGPCRに関して、トランス活性化メカニズムを介したアミン作用性のクラスAのGPCRの機能を有するという考えを支持する。GPCRの機能的な形態は非機能的Gタンパク質に結合しているのに対して、活性化され得る二量体のGタンパク質の複製物は、GPCRの非機能的な形態に結合する。
【0147】
このメカニズムを更に支持するために、本発明者は、構造的に関連したGPCRの公知の能力の利点を利用して、ヘテロ二量体を形成した。初期の研究では、同時発現するとヒスタミンH1受容体とα1b-アドレナリン作用性受容体を同時免疫沈降できたということを示した。更に、Leu133AspヒスタミンH1受容体-G11α及びα1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11αのEF88細胞での同時発現により、フェニレフリンを生じるが、ヒスタミンが仲介する[Ca+2]iの上昇は生じなかった。これは、α1b-アドレナリン作用性受容体が不活化ヒスタミンH1受容体に物理的に結合したGタンパク質を活性化する場合にのみ起こりえる(図2)。例えば不活化α1b-アドレナリン作用性受容体が、野生型Gタンパク質及び突然変異Gタンパク質に結合した野生型ヒスタミンH1受容体に結合したというような、実験が逆にされた場合、ヒスタミンは機能的だがフェニレフリンは機能的ではなかった。本発明者は、ヒスタミンH1受容体融合タンパク質を、単離されているが不活性の増加量のLeu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体とともに同時発現したときに[35S]GTPγSの結合を刺激するヒスタミンの有効性を試験することによってこの考えを拡張した。ヒスタミンの作用は減少した。このような情報は、ヒスタミンH1受容体-G11α-Leu151Asp α1b-アドレナリン作用性受容体ヘテロ二量体のレベルの増加は、ヒスタミンH1受容体-G11αホモ二量体の量を減らし、ヘテロ二量体へのヒスタミン結合は、ヒスタミンH1受容体と物理的に結合するGタンパク質を活性化できないという概念に一致する。この状況において、Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体はGタンパク質を刺激できないので、フェニレフリンは不活性であった。多くの報告が、GPCR-Gタンパク質融合体は、融合体のGタンパク質要素及び内生的に発現したGタンパク質と相互作用して活性化できるということを示している(Burtら, 1998, J. Biol. Chem 273, 10367-10375; Molinariら, 2003 J. Biol. Chem 278, 15778-15788)。しかしながら、これらの研究では、GPCR-Gタンパク質融合体は、膜に物理的に近接し
ているため、非特異的「傍観者(bystander)」(Mercierら, 2002 J. Biol. Chem 277, 44925-44931)作用が報告された範囲内の非常に高いレベルで発現した。EF88細胞の使用により、内生的Gタンパク質との相互作用の可能性が排除され、EF88細胞がGqα又はG11αを発現しないと、効果は融合されたGタンパク質の活性化を反映せざるを得ない。更に、Gly208Ala突然変異を融合体のGタンパク質要素に導入した後で、形質移入されたHEK293の膜の[35S]GTPγS結合のアゴニスト刺激はほとんど廃止された。これは、達成された発現のレベルにおいて、HEK293細胞の内生的Gqα又はG11αの活性化が、両方が発現されたにもかかわらず、ほとんどなかったことを示す。HEK293細胞のヘテロ二量体化実験において、過剰なGタンパク質は、融合体により規定された1:1の化学量論のGPCR及びGタンパク質のために、第二GPCRと1:1モル比で導入された。この結果は、単に余分なGタンパク質の存在に起因しうるかどうかを評価するために、本発明者は代わりのストラテジーを通して余分なGタンパク質を提供した。そのようにすることによって、本発明者は、α1b-アドレナリン作用性受容体のN末端及び第一膜貫通領域に結合したG11αの形成物を作製した。他のGタンパク質に関する同等の構築物は、既に使用されており(Leeら, 1999 Biochemistry 38, 13801-13809, Guzziら, 2001 Biochem J. 355, 323-331, Molinariら, 2003 J. Biol. Chem 278, 15778-15788)、膜貫通αへリックスへの連結により、活性化に対して特に効果的な方向性でGタンパク質が提供されることを示唆していた(Molinariら, 2003 前述)。この構築物は、α1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合体よりも著しく高いレベルに発現できるにもかかわらず、単独で発現しても、また、単離されたα1b-アドレナリン作用性受容体又はα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合体のどちらかとの組合わせて発現しても、Gタンパク質はフェニレフリンによって活性化されなかった。これらの研究により、GPCR-Gタンパク質融合体の非機能的な対の同時発現によりシグナルを再構成することは、再構成された二量体内での内部トランス活性化(internal transactivation)を反映するはずであることが確認された。
【表1】





【0148】
参考文献
1. Bouvier, M. (2001) Nat. Rev. Neurosci. 2, 274-286.
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【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】突然変異体の対による機能の再構成がどのように起こるかを想定した模式図である。この図は、細胞内カルシウム濃度の上昇を典型的に生じさせるGタンパク質に融合したGPCRの使用を例示する。
【図2】オリゴマー(この場合は二量体)GPCR/Gタンパク質の融合体のみが、どのように機能的で、ホモマー型がどのように非機能的であるかを示す模式図である。
【図3】様々なクラスAのGPCRとそれらに結合したGタンパク質、及び突然変異に適切なGPCRの第二細胞内ループ中の残基(強調部分)の代表例を示す。
【図4】α1b-アドレナリン作用性受容体(adrenoceptor)-G11α融合タンパク質の異なる非機能的突然変異体の対が、機能を再構成することを示す図である。A. 40(I-IV)又は80(V)fmolの様々なα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合タンパク質を発現するHEK293細胞の膜を、10μMフェニレフリンの不存在下(白いバー)又は存在下(黒いバー)での[35S]GTPγSの結合を測定するのに使用した。(1)野生型α1b-アドレナリン作用性受容体-G11α、(2)α1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11α、(3)Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α、(4及び5)α1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11α+Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α。B. Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α及びα1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11αは、これらが同時発現した場合にのみ機能を再構成する。10μMフェニレフリンの不存在下(白いバー)又は存在下(黒いバー)での[35S]GTPγSの結合を、HEK293細胞膜で測定し、Leu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体-G11α及びα1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11αが同時発現する(1)か、又は膜調製よりも先に混合した別々の細胞集団で2つの構築物が発現される(2)か、又は細胞から膜が分離され、次にアッセイの前に混合される(3)。
【図5】ヒスタミンH1受容体G11α融合タンパク質の異なる非機能的突然変異体の対も機能を再構成することを示す。25(1〜4)又は50(5)fmolの様々なヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質を発現するHEK293細胞の膜を、1mMヒスタミンの不存在下(白いバー)又は存在下(黒いバー)での[35S]GTPγSの結合を測定するのに使用した。(1)野生型ヒスタミンH1受容体-G11α、(2)ヒスタミンH1受容体-Gly208AlaG11α、(3)Leu133AspヒスタミンH1受容体-G11α、(4及び5)ヒスタミンH1受容体-Gly208AlaG11α+Leu133AspヒスタミンH1受容体-G11α。
【図6】単一細胞でのGPCRの二量体化及び機能的再構成を示す。EF88(動物由来のマウス胚線維芽細胞であって、カルシウム可動化Gタンパク質Gqα及びG11αをコードする遺伝子が不活化された)細胞が、GPCR-G11α融合タンパク質とGFP、及びモニターされる細胞内Ca2+を上昇させるアゴニストリガンドの能力を発現するように形質移入された。A. EF88細胞を、GFPと、ヒスタミンH1受容体-G11α(黒、n=6)、ヒスタミンH1受容体-Gly208AlaG11α(青、n=10)、Leu133AspヒスタミンH1受容体-G11α(緑、n=12)とで、またヒスタミンH1受容体-Gly208AlaG11αとLeu133AspヒスタミンH1受容体-G11α(赤、n=8)とで形質移入した。次に、GFP陽性細胞の1mMヒスタミンに対する応答を測定した。N=定量した個々の細胞の数。B. 確実に形質移入された細胞のみアゴニストに対して反応する。細胞を、野生型ヒスタミンH1受容体-G11α融合体及びGFPで同時形質移入した。画面には、GFPを発現した単一細胞のみが示された(左)。次に、基準(中央)及びCa2+で刺激された1mMヒスタミン(右)をこれらの細胞でモニターした。より暖かい色は、上昇した[Ca2+]を示す。蛍光の増加(より暖かい色)のみがGFPを発現した細胞で観察された。
【図7a】単一細胞でのGPCR二量体化及び機能の再構成を示す。具体的には、この図は、オリゴマー、即ちヘテロオリゴマーを形成する2つの異なるGPCRの能力を示す。EF88細胞を、野生型G11αに融合したヒスタミンH1受容体の非機能型(Leu133Asp)と、G11αの不活性型(Gly208Ala)に融合したα1b-アドレナリン作用性受容体の野生型とを同時発現させるように形質移入した。これらのGPCR-Gタンパク質融合体のいずれもが、単独で発現された場合には不活性である。なぜならば、それぞれが非機能的ホモ二量体を形成するからである。GFPの同時形質移入は、明確に形質移入された細胞の検出を可能にした。フェニレフリン(10μM)の添加は、細胞内のカルシウム濃度を上昇させたが、ヒスタミン(1mM)の添加は、カルシウム濃度をほとんど又はまったく変化させなかった。これは、アゴニストのフェニレフリンによるα1b-アドレナリン作用性受容体の占領によって、不活性ヒスタミンH1受容体に物理的に結合して機能的α1b-アドレナリン作用性受容体-ヒスタミンH1受容体へテロ二量体の存在を反映する野生型G11αの活性化が起こることを単に示す。
【図7b】単一細胞でのGPCR二量体化及び機能の再構成を示す。具体的には、この図は、オリゴマー、即ちヘテロオリゴマーを形成する2つの異なるGPCRの能力を示す。また、類似の様式で、EF88細胞を、野生型G11αに融合したα1b-アドレナリン作用性受容体の非機能型(Leu151Asp)と、G11αの不活性型(Gly208Ala)に融合されたヒスタミンH1受容体の野生型とを同時発現させるように形質移入した。この方式では、フェニレフリン(10μM)の添加は、カルシウム濃度にほとんど又はまったく変化を起こさせず、一方、ヒスタミン(1mM)の添加は、細胞内カルシウムの上昇を起こした。
【図8】GPCRとGPCR-Gタンパク質融合体の両方に示差的にエピトープ標識した形態の同時免疫沈降を示し、またGPCRのC末端尾部へのGタンパク質の付加は二量体化を妨げないということを示す。A. α1b-アドレナリン作用性受容体構築物。B. ヒスタミンH1受容体構築物。HEK293細胞を、偽の形質移入(コントロール)又はFLAG、c-myc、又は単離されたGPCR又はGPCR-Gタンパク質融合体の両方のエピトープ標識形態の組み合わせ(FLAG+myc)、のいずれかを発現するように形質移入した。また、FLAG又はc-myc標識形態のどちらかを発現する細胞を混合した(混合)。サンプルを抗-FLAG抗体で免疫沈降し、これらの沈殿物をSDS-PAGEで分離して抗c-myc抗体でイムノブロットした。
【図9】trFRETがGPCRとGPCR-Gタンパク質融合体の両方の細胞表面オリゴマーを証明することを示す。A. α1b-アドレナリン作用性受容体構築物。B. ヒスタミンH1受容体構築物。HEK293細胞を、単離したGPCR又はGPCR-Gタンパク質融合体のFLAG又はc-myc標識形態のいずれかを発現するように、個々に(混ぜて)形質移入した。次に、これらの細胞を一緒に混合した。また、HEK293細胞を、単離したGPCR又はGPCR-Gタンパク質融合体のFLAG及びc-mycエピトープ標識形態を同時発現するように、形質移入した(同時形質移入、cotransf)。次に細胞をEu3+-標識抗c-myc抗体及びアロフィコシアニン標識抗FLAG抗体に暴露させる(方法を参照のこと)。次にエネルギー移動をMcVeyら(2001)が説明しているようにモニターした。エネルギー移動は、物理的複合体(二量体)を形成するFLAG及びc-myc標識ポリペプチドに一致する。異なる細胞で発現した場合、FLAG及びc-myc標識ポリペプチド間の距離が大きすぎて効果的なエネルギー移動が可能ではなく、異なる細胞での場合、FLAG及びc-myc標識ポリペプチドは相互作用できない。従ってこれらの実験はネガティブコントロールとなる。
【図10】非機能的GPCR-Gタンパク質融合体の対の同時発現により、活性二量体の50%が生じるべきであることを示す。2つの異なるGPCR又はGPCR-Gタンパク質の融合タンパク質が単一細胞で同時発現し、AとAとの相互作用の親和性はAとBとの間と同じ場合、確率論的には、AA、AB、BA及びBBは等モル量で存在するであろうことが予想されるはずである。図2で示したように、本発明者によって開発された方法論により、AAとBBは、A又はBのいずれかのリガンドの添加に対して機能上は応答しないことが保証される。しかしながら、AB及びBAの両方は、A又はBのいずれかのリガンドの添加に際して潜在的に機能的である(図7C参照)。従って、AとBの同時発現に続いて形成される二量体の50%だけが、機能的であると予想される。この二量体は、差別的に突然変異した融合タンパク質のそれぞれの組合わせ、例えばAB又はBAである。
【図11】α1b-アドレナリン作用性受容体とヒスタミンH1受容体がヘテロ二量体複合体を形成できることを示す。A. ヒスタミンH1受容体のFLAG標識形態(flag H1)及びα1b-アドレナリン作用性受容体のc-myc-標識形態(myc α1b)を、HEK293細胞で別個に又は一緒に(flag+myc)発現した。また、2つの構築物を個々に発現する細胞を、分析前に混合した。サンプルを抗FLAGで免疫沈降して、SDS-PAGE及び転写後、抗c-myc抗体でイムノブロットした。B. FLAG H1及びc-mycα1bの同時発現する細胞(黒いバー)又は2つの構築物のいずれかを発現する細胞の別々の集団を混合し、添加されたEu3+標識抗c-myc抗体とAPC標識抗FLAG抗体の組み合わせ物で処理し、tr-FRETを測定した。
【図12】α1b-アドレナリン作用性受容体の不活性型の同時発現が、ヒスタミンH1受容体G11α融合タンパク質によるシグナル伝達を抑制することを示す。HEK293細胞を、ヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質を発現するように、単離された不活性のLeu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体をコードする増加量のcDNAの量を用いて、形質移入した。(A)これらの細胞の膜を、ヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質の発現を測定するのに使用し、25fmolの特異的[3H]メピラミン結合部位を含む量を、基準(basal)及び1mMヒスタミン-刺激[35S]GTPγS結合を測定するのに使用した。(B)EF88細胞をヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質(1)を発現するように、又はLeu151Aspα1b-アドレナリン作用性受容体とヒスタミンH1受容体-G11α融合タンパク質を同時発現するように、形質移入した。次に、細胞の[Ca2+]iを上昇させる1mMヒスタミンの能力を評価した。データは平均±S.E.M.、n=6を示す。
【図13】過剰の膜標的G11αの供給が、非機能的突然変異体の対を発現する細胞での機能の再構成の原因とならないことを示す。HEK293細胞を形質移入して、c-myc標識α1b-アドレナリン作用性受容体-G11α融合タンパク質(1)、α1b-アドレナリン作用性受容体のN末端と第一膜貫通領域のc-myc標識形態のC-末端に結合させたG11α(2)、α1b-アドレナリン作用性受容体とc-myc-Nt-TM1α1b-G11α構築形態の両方(3)、又はc-myc-Nt-TM1α1b-G11α及びα1b-アドレナリン作用性受容体-Gly208AlaG11α融合タンパク質(4)を発現させた。(A)膜サンプルをSDS-PAGEで分離して、抗c-myc抗体でイムノブロットした。(B)基礎(白いバー)及び[35S]GTPγSの結合の10μMフェニレフリン刺激(黒いバー)は、抗c-myc免疫沈降で回復した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一Gタンパク質に結合した第一GPCRであって、結合した第一Gタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び
(b)非機能的な第二Gタンパク質に結合した第二GPCR、
を有する複合体を含む、生物学的試薬。
【請求項2】
前記複合体が細胞膜に存在する、請求項1に記載の生物学的試薬。
【請求項3】
前記第一GPCR及び第一Gタンパク質が融合タンパク質として結合し、前記第二GPCR及び第二Gタンパク質が融合タンパク質として結合している、請求項1又は2に記載の生物学的試薬。
【請求項4】
前記第一GPCRを第一Gタンパク質に関して非機能的にするために、第一GPCRが天然のGPCR配列と比較して改変されたアミノ酸配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物学的試薬。
【請求項5】
前記第一GPCRのアミノ酸配列が第二細胞内ループ内で改変されている、請求項4に記載の生物学的試薬。
【請求項6】
前記第一GPCRのアミノ酸配列がアミノ酸残基置換により改変されている、請求項4又は5に記載の生物学的試薬。
【請求項7】
前記第一GPCRのアミノ酸配列が、疎水性アミノ酸残基を酸性アミノ酸残基に置換することにより改変されている、請求項6に記載の生物学的試薬。
【請求項8】
前記第一GPCRが図3に示されたグループから選択された第二細胞内ループアミノ酸配列を有し、かつ図3の強調されたアミノ酸残基の1つ以上が改変されている、請求項4〜7のいずれか1項に記載の生物学的試薬。
【請求項9】
前記第二Gタンパク質を非機能的にするために、第二Gタンパク質が、天然のGタンパク質と比較して改変されたアミノ酸配列を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の生物学的試薬。
【請求項10】
前記第二Gタンパク質が、少なくとも1つのアミノ酸残基置換により、天然のアミノ酸配列と比較して改変されている、請求項9に記載の生物学的試薬。
【請求項11】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項10に記載の生物学的試薬。
【請求項12】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の生物学的試薬。
【請求項13】
前記クラスAのGPCRが図3に提供されたグループから選択される、請求項12に記載の生物学的試薬。
【請求項14】
前記第一GPCRが第二GPCRと異なる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の生物学的試薬。
【請求項15】
GPCR及びGタンパク質を含む融合タンパク質であって、GPCRがリガンドと結合する能力を維持しているが、リガンド結合後にGタンパク質を刺激することができないように、GPCRが野生型GPCRに関して改変されている、融合タンパク質。
【請求項16】
前記GPCRのアミノ酸配列が第二細胞内ループ内で改変されている、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記GPCRのアミノ酸配列がアミノ酸残基置換により改変されている、請求項15又は16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
前記GPCRのアミノ酸配列が、疎水性アミノ酸残基を酸性アミノ酸残基に置換することにより改変されている、請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
前記GPCRが図3に示されたグループから選択された第二細胞内ループアミノ酸配列を有し、図3の1つ以上の強調されたアミノ酸残基が改変されている、請求項15〜18のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
GPCR及びGタンパク質を含む融合タンパク質であって、Gタンパク質が非機能的であるように野生型に関して改変されている、融合タンパク質。
【請求項21】
前記Gタンパク質を非機能的にするために、Gタンパク質が、野生型Gタンパク質と比較して改変されたアミノ酸配列を有する、請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記Gタンパク質が、少なくとも1つのアミノ酸残基置換により野生型アミノ酸配列と比較して改変されている、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれか1項に記載された融合タンパク質をコードする、単離された核酸配列。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項26】
請求項24に記載の核酸配列又は請求項25に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
以下の工程、
(a)細胞中で第一核酸構築物を発現させる工程であって、第一核酸構築物が第一GPCR/Gタンパク質の融合タンパク質をコードし、第一GPCRを野生型GPCRと比較して突然変異させ、それにより第一GPCRを融合タンパク質のGタンパク質に関して非機能的にする工程、
(b)該細胞中で第二核酸構築物を発現させる工程であって、第二核酸構築物が第二GPCR/Gタンパク質の融合タンパク質をコードし、Gタンパク質を野生型GPCRタンパク質と比較して突然変異させ、それによりGタンパク質を非機能的にする工程、及び
(c)該細胞膜中で第一及び第二融合タンパク質を複合体に組み立てることを可能にする工程を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の生物学的試薬の製造方法。
【請求項28】
以下の工程、
(a)第一GPCR及び第一Gタンパク質の融合タンパク質をコードする第一核酸構築物を製造する工程であって、融合したGタンパク質に関して第一GPCRが非機能的であるように、第一GPCRを野生型と比較して突然変異させる工程、
(b)第二GPCR及び第二Gタンパク質の融合タンパク質をコードする第二核酸構築物を製造する工程であって、第二Gタンパク質を野生型と比較して突然変異させ、Gタンパク質を非機能的にする工程、及び
(c)細胞内で第一及び第二核酸構築物を同時発現して第一及び第二GPCRを含む複合体を生成する工程、
を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の生物学的試薬の製造方法。
【請求項29】
(d)前記複合体を含む細胞膜の一部を単離する工程、
を更に含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより野生型GPCRと比較して突然変異させる、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つのアミノ酸がGPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸残基であり、かつ酸性アミノ酸残基に置換される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第二細胞内ループが図3に示されるグループから選択された配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基を図3の強調されたアミノ酸残基から選択する、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型Gタンパク質と比較して突然変異させる、請求項27〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項27〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記クラスAのGPCRを図3に提供されたグループから選択する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第一GPCRが第二GPCRと異なる、請求項27〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
第一及び第二GPCRがGPCRオリゴマーを形成するように、互いに親和性を有する第一及び第二GPCRを測定する方法であって、以下の工程、
(a)第一GPCR及び融合タンパク質として第一GPCRに結合したGタンパク質をコードする第一核酸構築物を製造する工程であって、第一GPCRに結合したGタンパク質に関して第一GPCRを非機能的にするために、第一GPCRを天然のGPCRと比較して突然変異させる工程、
(b)第二GPCR及び融合タンパク質として第二GPCRに結合したGタンパク質をコードする第二核酸構築物を製造する工程であって、Gタンパク質を非機能的にするために、Gタンパク質を天然のGタンパク質と比較して突然変異させる工程、
(c)細胞内で第一及び第二核酸構築物を同時発現させる工程、及び
(d)第一及び第二GPCRを含む複合体の存在を測定する工程、
を含む、方法。
【請求項40】
前記細胞を第二GPCRに対するリガンドと接触させること及び前記第一Gタンパク質が活性化されているかどうかを測定することにより、複合体の存在を決定する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより天然のGPCRと比較して突然変異させる、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つのアミノ酸がGPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸残基であって、かつ酸性アミノ酸に置換される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第二細胞内ループが図3に示されたグループから選択した配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基を図3の強調されたアミノ酸残基から選択する、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、天然のGタンパク質と比較して突然変異させる、請求項39〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項39〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記クラスAのGPCRを図3に提供されたグループから選択する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第一及び第二GPCRが異なる、請求項39〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記野生型第一及び第二GPCRを、少なくとも1つの細胞型により内生的に同時発現させる、請求項39〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
GPCRオリゴマー形成により生じた新しい又は変化したリガンド結合部位の存在を測定する方法であって、以下の工程、
a)化合物を、GPCRオリゴマーを発現する第一細胞に接触させる工程であって、ここでGPCRオリゴマーが、(i)Gタンパク質に結合した第一GPCRであって、Gタンパク質に関して非機能的であるように改変された第一GPCR、及び(ii)Gタンパク質に結合した第二GPCRであって、Gタンパク質が非機能的であるように改変された第二GPCRを有する工程、
b)該化合物を未改変の第一GPCRを発現する第二細胞に接触させる工程及び/又は該化合物を未改変の第二GPCRを発現する第二細胞に接触させる工程、及び
c)第一細胞及び第二細胞に対する該化合物の作用を比較して、GPCRオリゴマーにより作られた新しい又は改変されたリガンド結合部位の存在を測定する工程、
を含む、方法。
【請求項52】
GPCRオリゴマーの形成の結果としてのGPCRの機能の変化を測定する方法であって、以下の工程、
a)化合物を、GPCRオリゴマーを発現する第一細胞に接触させる工程であって、ここでGPCRオリゴマーが、(i)Gタンパク質に結合した第一GPCRであって、第一GPCRをGタンパク質に関して非機能的であるように改変した第一GPCR、及び(ii)Gタンパク質に結合した第二GPCRであって、非機能的であるようにGタンパク質が改変された、第二GPCRを有する工程、
b)化合物を、未改変の第一GPCRを発現する第二細胞及び/又は未改変の第二GPCRを発現する第二細胞に接触させる工程、及び
c)GPCRオリゴマーの機能を、未改変の第一GPCRの機能及び/又は第二GPCRの機能と比較して、オリゴマー形成により生じた受容体の機能の変化を測定する工程、
を含む、方法。
【請求項53】
前記受容体の機能の変化が化合物の有効性の変化である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記受容体の機能の変化が、前記化合物による受容体の活性化により生じた細胞シグナル伝達経路の変化である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、天然のGPCRと比較して突然変異させる、請求項51〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つのアミノ酸がGPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸残基であり、かつ酸性アミノ酸残基に置換される、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記第二細胞内ループが図3に示されたグループから選択した配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基を図3の強調されたアミノ酸残基から選択する、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、天然のGタンパク質と比較して突然変異させる、請求項51〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項51〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記クラスAのGPCRを図3に提供されたグループから選択する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第一及び第二GPCRが異なる、請求項51〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
化合物がGPCRオリゴマーに対して有する作用を測定する方法であって、以下の工程、
a)該化合物を、GPCRオリゴマーを発現する第一細胞に接触させる工程であって、ここでGPCRオリゴマーが、(i)Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、第一Gタンパク質に関して非機能的になるように改変した第一GPCR、及び(ii)Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、非機能的であるようにGタンパク質が改変された、第二GPCRを有する工程、
b)該化合物と該GPCRオリゴマー間の接触により生じた細胞シグナルの存在を検出する工程、及び
c)化合物がGPCRオリゴマーに対して有する作用を測定する工程、
を含む、方法。
【請求項65】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型GPCRと比較して突然変異させる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1つのアミノ酸がGPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸であり、かつ酸性アミノ酸残基に置換される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記第二細胞内ループが、図3に示したグループから選択した配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基を図3の強調されたアミノ酸残基から選択する、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項69】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型Gタンパク質と比較して変異する、請求項64〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項64〜70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記クラスAのGPCRを図3に提供されたグループから選択する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第一及び第二GPCRが異なる、請求項64〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記作用を、化合物と未改変の第一GPCR間の接触により生じる作用及び/又は化合物と未改変の第二GPCR間の接触により生じる作用と比較する工程を更に含む、請求項64〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
GPCRオリゴマーと相互作用できる化合物を同定する方法であって、以下の工程、
a)請求項1〜14のいずれか1項に記載の生物学的試薬を発現する細胞を提供する工程、
b)生物学的試薬を該化合物に接触させる工程、及び
c)該化合物がGPCRオリゴマーと相互作用するかどうかを測定する工程、
を含む、方法。
【請求項76】
前記化合物と前記GPCRオリゴマー間の相互作用を、相互作用により生じる細胞シグナルの存在を同定することにより測定する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞シグナルを、Ca2+、cAMP、イノシトール1,4,5-三リン酸レベル、プロテインキナーゼC活性、MAPキナーゼ活性の存在により測定する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記細胞シグナルを、レポーターアッセイを使用して測定する、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記細胞が色素細胞であり、前記細胞シグナルを細胞中の色素の凝集状態の変化により測定する、請求項75又は76に記載の方法。
【請求項80】
前記色素細胞がメラニン形成細胞である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記化合物が、アゴニスト、アンタゴニスト又はインバースアゴニストとして前記GPCRオリゴマーと相互作用する、請求項75〜80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型GPCRと比較して突然変異させる、請求項75〜81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記少なくとも1つのアミノ酸がGPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸残基であり、かつ酸性アミノ酸残基に置換される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記第二細胞内ループが図3に示されたグループから選択した配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基を図3の強調されたアミノ酸残基から選択する、請求項82又は83に記載の方法。
【請求項86】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型Gタンパク質と比較して突然変異させる、請求項75〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項75〜87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記クラスAのGPCRを図3に提供されたグループから選択する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
GPCRオリゴマーとそのリガンド間の結合を調節する能力を有する化合物を同定する方法であって、以下の工程、
a)GPCRオリゴマーを発現する細胞を提供する工程であって、GPCRオリゴマーが、(i)第一Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、Gタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び(ii)第二Gタンパク質に結合した第二GPCRであって、第二Gタンパク質が非機能的である第二GPCRを含む工程、
b)該細胞を該リガンドの存在下で試験化合物と接触させる工程、及び
c)GPCRオリゴマーと結合する該リガンドの能力を、該化合物は存在しないが比較できる条件下でGPCRオリゴマーと結合するリガンドの能力と比較する工程、
を含む、方法。
【請求項91】
前記化合物がタンパク質である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記タンパク質が第三GPCRである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】

前記第一、第二及び第三GPCRを少なくとも1つの細胞型で内生的に同時発現する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記リガンドが、請求項51及び55〜74のいずれか1項に記載の方法によりオリゴマー上に存在すると決定された新しい又は変化したリガンド結合部位に結合する、請求項90〜93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換により、野生型GPCRと比較して突然変異させる、請求項90〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、前記GPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸残基であり、かつ酸性アミノ酸残基に置換される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記第二細胞内ループが図3に示されたグループから選択した配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基を図3の強調されたアミノ酸残基から選択する、請求項95又は96に記載の方法。
【請求項99】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型Gタンパク質と比較して突然変異させる、請求項90〜98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項90〜100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記クラスAのGPCRを図3に提供されたグループから選択する、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
示差的Gタンパク質結合を評価する方法であって、以下の工程、
(a)GPCRオリゴマーを発現する第一細胞を準備する工程であって、GPCRオリゴマーが、(i)第一Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、ここでGタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び(ii)第二Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、第二Gタンパク質が非機能的である第二GPCRを含む、工程、
(b)GPCRオリゴマーを発現する第二細胞を準備する工程であって、GPCRオリゴマーが、(i)第一Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、ここで第一GPCRが機能的であり、第一Gタンパク質が非機能的である第一GPCR、及び(ii)第二Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、Gタンパク質に関して非機能的である第二GPCRを含む、工程、
(c)第一Gタンパク質と結合した第一GPCRの単量体を発現する対照細胞を準備する工程であって、GPCR及びGタンパク質の両方が機能的である、工程、
(d)第一、第二及び対照細胞を、第一及び/又は第二GPCRに存在するリガンド結合部位に結合できる化合物と接触させる工程、
(e)異なる第一及び/又は第二Gタンパク質を用いて、工程(a)〜(d)を繰り返す工程、及び
(f)示差的Gタンパク質結合を評価する工程、
を含む、方法。
【請求項104】
前記第一及び第二Gタンパク質を、Gs、Gi、Gq、G11、G12、G13、G15、G16、Go又はGzから選択する、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記第一及び第二Gタンパク質を、Ca2+、cAMP、cGMP、イノシトール1,4,5-三リン酸、ジアシルグリセロール、プロテインキナーゼC活性又はMAPキナーゼ活性から選択した細胞内レベルを調節するGタンパク質から選択する、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記第一及び第二GPCRが同じである、請求項103〜105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記第一及び第二GPCRが異なる、請求項103〜106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記野生型第一及び第二GPCRを、少なくとも1つの細胞で内生的に同時発現させる、請求項103に記載の方法。
【請求項109】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型GPCRと比較して突然変異させる、請求項103〜108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記少なくとも1つのアミノ酸がGPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸残基であり、かつ酸性アミノ酸残基に置換される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記第二細胞内ループが図3に示されたグループから選択した配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基が図3の強調されたアミノ酸残基から選択される、請求項109又は110に記載の方法。
【請求項113】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型Gタンパク質と比較して突然変異させる、請求項103〜112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項103〜114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記クラスAのGPCRを図3で提供されたグループから選択する、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
GPCRに対する示差的Gタンパク質結合を評価する方法であって、以下の工程、
(a)GPCRオリゴマーを発現する第一細胞を準備する工程であって、ここでGPCRオリゴマーが、(i)第一Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、第一Gタンパク質に関して非機能的である第一GPCR、及び(ii)第二Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、第二Gタンパク質が非機能的である第二GPCRを含む、工程
(b)第一Gタンパク質と結合した第二GPCRを発現する第二細胞を準備する工程であって、第二GPCRと第一Gタンパク質の両方が機能的である、工程、
(c)第一及び第二細胞を、第二GPCRに存在するリガンド結合部位に結合できる化合物と接触させる工程、
(d)異なる第一Gタンパク質を用いて、1回以上、工程(a)〜(c)を繰り返す工程、
(e)場合により、異なる第一GPCRを用いて、1回以上、工程(a)〜(d)を繰り返す工程、及び
(f)第二GPCRにより、示差的Gタンパク質結合を評価する工程、
を含む、方法。
【請求項118】
前記第一及び第二Gタンパク質を、Gs、Gi、Gq、G11、G12、G13、G15、G16、Go又はGzから選択する、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記第一及び第二Gタンパク質を、Ca2+、cAMP、cGMP、イノシトール1,4,5-三リン酸、ジアシルグリセロール、プロテインキナーゼC活性又はMAPキナーゼ活性から選択した細胞内レベルを調節するGタンパク質から選択する、請求項117に記載の方法。
【請求項120】
前記第一及び第二GPCRが異なる、請求項117〜119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記野生型第一及び第二GPCRを、少なくとも1つの細胞型で内生的に同時発現する、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記第一GPCRを、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型GPCRと比較して突然変異させる、請求項117〜121のいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
前記少なくとも1つのアミノ酸がGPCRの第二細胞内ループに存在する、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、疎水性アミノ酸残基であって、かつ酸性アミノ酸残基に置換される、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記第二細胞内ループが図3に示されたグループから選択した配列を有し、前記少なくとも1つのアミノ酸残基を図3の強調されたアミノ酸残基から選択する、請求項122又は123に記載の方法。
【請求項126】
前記第二Gタンパク質を、少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより、野生型Gタンパク質と比較して突然変異させる、請求項117〜125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記置換されるアミノ酸残基がグリシンである、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記第一及び第二GPCRがクラスAのGPCRである、請求項117〜127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記クラスAのGPCRを図3に提供されたグループから選択する、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
GPCRオリゴマーと相互作用できる化合物を含む医薬組成物を製造する方法であって、以下の工程、
a)請求項1〜14のいずれか1項に記載の生物学的試薬を発現する細胞を準備する工程、
b)生物学的試薬を該化合物と接触させる工程、
c)該化合物がGPCRオリゴマーと相互作用するかどうかを測定する工程、及び
d)該化合物を製薬上許容できる担体と混合して医薬組成物を製造する工程、
を含む方法。
【請求項131】
GPCRオリゴマーとそのリガンド間の結合を調節する能力を有する化合物を含む医薬組成物を製造する方法であって、以下の工程、
a)GPCRオリゴマーを発現する細胞を製造する工程であって、ここでGPCRオリゴマーが、(i)第一Gタンパク質と結合した第一GPCRであって、第一Gタンパク質に関して非機能的である、第一GPCR、及び(ii)第二Gタンパク質と結合した第二GPCRであって、第二Gタンパク質が非機能的である第二GPCRを含む、工程、
b)該リガンドの存在下で該細胞を試験化合物と接触させる工程、
c)GPCRオリゴマーと結合する該リガンドの能力と、該化合物は存在しないが比較できる条件下でGPCRオリゴマーと結合するリガンドの能力を比較する工程、及び
d)該化合物を製薬上許容できる担体と混合して医薬組成物を製造する工程、
を含む方法。
【請求項132】
個体の疾患を治療する方法であって、請求項75又は90に記載の同定された有効量の化合物を個体に投与することを含み、疾患が、第一GPCRと第二GPCRを内生的に同時発現することが知られている細胞型に関連している、方法。
【請求項133】
前記第一GPCR及び第二GPCRを、表1に挙げられた細胞型により同時発現する、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記化合物がアゴニストであり、前記疾患をオリゴマーの活性を増加させることにより軽減する、請求項132又は133に記載の方法。
【請求項135】
前記化合物がアンタゴニストであり、前記疾患をオリゴマーの活性を減少させることにより軽減する、請求項132又は133に記載の方法。
【請求項136】
前記化合物がインバースアゴニストであり、前記疾患をオリゴマーの活性を減少させることにより軽減する、請求項132又は133に記載の方法。
【請求項137】
個体の疾患を治療する方法であって、請求項75又は90に記載の方法により同定された有効量の化合物を個体に投与することを含み、疾患が、第一GPCR及び第二GPCRを内生的に同時発現することが知られている細胞型に関連している方法。
【請求項138】
前記第一GPCR及び第二GPCRを、表1に挙げられた細胞型により同時発現する、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記リガンドがアゴニストであり、前記化合物がアゴニストのオリゴマーへの結合を増加させ、前記疾患をオリゴマーの活性を増加させることにより軽減する、請求項137又は138に記載の方法。
【請求項140】
前記リガンドがアゴニストであり、前記化合物がアゴニストのオリゴマーへの結合を減少させ、前記疾患をオリゴマーの活性を減少させることにより軽減する、請求項137又は138に記載の方法。
【請求項141】
前記リガンドがアンタゴニストであり、前記化合物がアンタゴニストのオリゴマーへの結合を増加させ、前記疾患をオリゴマーの活性を減少させることにより軽減する、請求項137又は138に記載の方法。
【請求項142】
前記リガンドがアンタゴニストであり、前記化合物がアンタゴニストのオリゴマーへの結合を減少させ、前記疾患をオリゴマーの活性を増加させることにより軽減する、請求項137又は138に記載の方法。
【請求項143】
前記リガンドがインバースアゴニストであり、前記化合物がインバースアゴニストのオリゴマーへの結合を増加させ、前記疾患をオリゴマーの活性を減少させることにより軽減する、請求項137又は138に記載の方法。
【請求項144】
前記リガンドがインバースアゴニストであり、前記化合物がインバースアゴニストのオリゴマーへの結合を減少させ、前記疾患をオリゴマーの活性を増加させることにより軽減する、請求項137又は138に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−537707(P2007−537707A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530515(P2006−530515)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002150
【国際公開番号】WO2004/104041
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500214624)ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ グラスゴウ (2)
【Fターム(参考)】