GLP−1類似体医薬組成物
本発明は、液体;式[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2のペプチド類似体、二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに、酢酸塩及び/又は酢酸を含む制御放出液体医薬組成物に関する。本発明は又、医薬組成物及び製造方法医薬組成物を含む容器に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン様ペプチド−1のペプチド類似体及び/又はその医薬的に許容される塩を含む組成物の改良、医薬組成物、その組成物の製造方法並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド−1(7−36)アミド(GLP−1)は、グルカゴン前駆体のプレプログルカゴンの組織特異的な翻訳後プロセシングにより腸のL細胞において合成され(Varndell, J. M.ら, J. Histochem Cytochem, 1985:33:1080-6)、食事に応答して体循環中へ放出される。GLP−1の血漿濃度は、絶食レベルの約15pmol/Lから食後ピークレベルの40pmol/Lへ上昇する。血漿グルコース濃度における所定の上昇に対し、血漿インスリンの増加は、グルコースを経口で投与するとき、静脈内と比較して約3倍高いことが示されている(Kreymann, B.ら, Lancet 1987:2, 1300-4)。このインスリン放出の食事性の亢進は、インクレチン(incretin)効果として知られ、主として体液性であり、GLP−1は、ヒトにおいて最も強力な生理学的インクレチンであると考えられている。抗インスリン効果に加えて、GLP−1は、グルカゴン分泌を抑制し、胃の空洞化を遅らせ(Wettergren A.ら, Dig Dis Sci 1993:38:665-73)、末梢のグルコース処理を高める可能性がある(D'Alessio, D. A.ら, J. Clin Invest 1994:93:2293-6)。
【0003】
1994年に、GLP−1の単回皮下(s/c)投与によってインスリン非依存型真性糖尿病(NIDDM)の患者の食後血糖値が完全に正常化され得るという観察に従い、GLP−1の治療の潜在的能力が示唆された(Gutniak, M. K.ら, 糖尿病 Care 1994:17:1039-44)。この効果は、インスリン放出の増加とグルカゴン分泌の低下の両方により仲介されると考えられた。更に、GLP−1の静脈内注入は、NIDDMの患者において食後の胃空洞化を遅らせることが示された(Williams, B.ら, J. Clin Endo Metab 1996:81:327-32)。スルホニル尿素と異なり、GLP−1の抗インスリン作用は、血漿グルコース濃度に依存する(Holz, G. G. 4thら, Nature 1993: 361: 362-5)。従って、低い血漿グルコース濃度ではGLP−1仲介性インスリン放出がないために、重篤な低血糖症に対して保護される。この作用の組合せは、NIDDMを治療するために今日使用されている他の薬剤に優る独自の潜在的な治療上の利点をGLP−1に与える。
【0004】
数多くの研究により、GLP−1を健常被検体へ与えると、GLP−1はインスリン及びグルカゴンの濃度だけでなく、血糖値にも強力に影響を及ぼし(Orskov, C, Diabetologia 35:701-711, 1992; Holst, J.J.ら,「糖尿病管理におけるGLP-1の可能性、グルカゴン III」, Handbook of Experimental Pharmacology, Lefevbre PJ, Ed. Berlin, Springer Verlag, 1996, p. 311-326)、この効果がグルコース依存性である(Kreymann, B.ら, Lancet ii: 1300-1304, 1987; Weir, G.C.ら, Diabetes 38:338-342, 1989)ことが示された。更に、これは、糖尿病の患者にも有効であり(Gutniak, M., N. Engl J Med 226:1316-1322, 1992; Nathan, D.M.ら, Diabetes Care 15:270-276, 1992)、II型糖尿病の被検体の血糖値を正常化し(Nauck, M.A.ら, Diabetologia 36:741-744, 1993)、I型患者の血糖コントロールを改善し(Creutzfeldt, W.O.ら, Diabetes Care 19:580-586, 1996)、とりわけ、インスリン感受性を高める/インスリン抵抗性を抑えるその能力を実証している。
【0005】
GLP−1とそのアゴニストは、インスリン非依存型糖尿病を発症するリスクのある被検体における使用(WO00/07617を参照)、並びに妊娠性糖尿病の治療(米国特許公開公報番号:20040266670)のために挙げられている。
【0006】
上記に加えて、哺乳動物(例えば、ヒト)においてGLP−1とそのアゴニストが提示されている数多くの臨床使用があり、例えば、限定されるものではないが下記が挙げられる:学習を向上させること、神経保護を高めること、及び/又は中枢神経系の疾患又は障害(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、卒中、ADD、及び神経精神性の症候群)の症状を、例えば、神経組織発生の調節を介して緩和すること(米国特許公開公報番号:20050009742及び20020115605);肝臓の幹/始原細胞を機能的な膵臓細胞へ変換すること(WO03/033697);β細胞の悪化(米国特許公開公報番号:20040053819及び20030220251)及びβ細胞増殖の刺激(米国特許公開公報番号:20030224983)を防ぐこと;肥満を治療すること(米国特許公開公報番号:20040018975;WO98/19698);食欲を抑制して満腹感を誘発すること(米国特許公開公報番号:20030232754);過敏性腸症候群を治療すること(WO99/64060);心筋梗塞(米国特許公開公報番号:20040162241、WO98/08531)及び卒中(WO00/16797を参照)に関連した罹病率及び/又は死亡率を低下させること;Q波心筋梗塞の非存在を特徴とする急性冠症候群を治療すること(米国特許公開公報番号:20040002454);術後の異化変化を弱めること(米国特許第6,006,753号);冬眠心筋又は糖尿病性心筋症を治療すること(米国特許公開公報番号:20050096276);ノルエピネフリンの血漿レベルを抑制すること(米国特許公開公報番号:20050096276);尿ナトリウム排出を増加させ、尿カリウム濃度を減少させること(米国特許公開公報番号:20050037958);有毒な血液量過多症に関連した状態又は障害(例えば、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、及び高血圧症)を治療すること(米国特許公開公報番号:20050037958);変力応答を誘発して、心収縮を増加させること(米国特許公開公報番号:20050037958);多房性卵巣症候群を治療すること(米国特許公開公報番号:20040266678及び20040029784);呼吸窮迫を治療すること(米国特許公開公報番号:20040235726);非消化管経路を介した、即ち、静脈内、皮下、筋肉内、腹膜、又は他の注射又は注入を介した栄養摂取を改善すること(米国特許公開公報番号:20040209814);腎障害を治療すること(米国特許公開公報番号:20040209803);左心室収縮機能不全(例えば、異常な左心室駆出率を伴う)を治療すること(米国特許公開公報番号:20040097411);例えば、下痢、術後ダンピング症候群、及び過敏性腸管症候群等の胃腸障害の治療又は予防のために、そして内視鏡手技の前投薬として十二指腸洞の運動を阻害すること(米国特許公開公報番号:20030216292);重症疾患多発ニューロパシー(CIPN)及び全身性炎症反応症候群(SIRS)を治療すること(米国特許公開公報番号:20030199445);トリグリセリドレベルを調節して、異常脂質血症を治療すること(米国特許公開公報番号:20030036504及び20030143183);虚血後の血流の再灌流によって引き起こされる臓器組織損傷を治療すること(米国特許公開公報番号:20020147131);冠動脈性心疾患危険因子(CHDRF)症候群を治療すること(米国特許公開公報番号:20020045636)、その他。
【0007】
しかしながら、GLP−1は、代謝的に不安定であり、in vivoでは1〜2分の血漿半減期(t1/2)しか有さない。外因的に投与したGLP−1も又、速やかに分解される(Deacon, C.F.ら, Diabetes, 44:1126-1131, 1995)。この代謝不安定性により、天然GLP−1の治療ポテンシャルは制限される。
【0008】
GLP−1とその類似体の治療ポテンシャルを配合物における改善を通して改善するために、多くの試みがなされてきた。例えば、国際特許公開公報番号WO01/57084は、結晶と医薬的に許容されるキャリアを含んでなる、注射可能な医薬品等の医薬組成物の調製に有用であるとされるGLP−1類似体の結晶を調製する方法を記載する。GLP−1(7−37)OHの不均質な微結晶性クラスターを生理食塩水溶液から成長させて、亜鉛及び/又はm−クレゾールでの結晶浸漬処理の後で試験した(Kim及びHaren, Pharma. Res. Vol. 12 No. 11 (1995))。針状結晶と非結晶性の沈殿を含有するGLP(7−36)NH2の粗結晶懸濁液が亜鉛又はプロタミンを含有するリン酸溶液より調製された(Pridalら, International Journal of Pharmaceutics Vol. 136, pp. 53-59 (1996))。欧州特許公開公報番号EP0619322A2は、塩類と低分子量ポリエチレングリコール(PEG)のある種の組合せを含むpH7〜8.5の緩衝液において上記タンパク質の溶液を混合することによる、GLP−1(7−37)OHの微結晶型の調製を記載する。米国特許第6,566,490号は、精製ペプチド生成物の生成に役立つ、GLP−1の種となる微結晶について特に記載している。米国特許第6,555,521(US’521)号は、改善された純度を有して、延長されたin vivo活性を示す、正方晶系の平棒又は板状の形を有するGLP−1結晶を開示する。US’521号は、その結晶が、先行技術の、急速に固化し、共に凝集又は密集し、シリンジ針を詰まらせ、予測不能な投薬を概して悪化させる、結晶性クラスターや無定形の結晶性懸濁液よりも相対的に均質であり、より長い時間、懸濁状態を維持することを教示する。
【0009】
生物分解性トリブロックコポリマーのポリ[(dl−ラクチド−コグリコリド)−β−エチレングリコール−β−(−ラクチド−コグリコリド)]を、GLP−1の制御放出配合物において使用することも提案された。しかしながら、他のポリマー系と同じように、トリブロックコポリマーの製造には、複雑なプロトコールと一貫性のない微粒子形成が伴う。
【0010】
同様に、生物分解性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸−コグリコール酸)(PLGA)も、ペプチドの持続送達配合物における使用を示唆された。しかしながら、これら生物分解性ポリマーの使用は、一般に、これらのポリマーが水への溶解度が低く、水と混和不能の有機溶媒(例えば、塩化メチレン)及び/又は製造中に厳しい調製条件を必要とするので、当該技術分野では好ましくない。それらの有機溶媒及び/又は厳しい調製条件は、目的のペプチド又はタンパク質のコンホメーション変化を誘発するリスクを高めて、構造の完全性の減少と生物学的活性の低下をもたらすと考えられている(Choiら, Pharm. Research, Vol. 21, No. 5, (2004))。ポロキサマーも同様の問題があるとされている(同上)。
【0011】
上記参考文献に記載されたGLP−1組成物は、不純物を捕捉する傾向があり、及び/又は、他にも、再現可能的に製造して投与することが難しいので、GLPの医薬配合物を調製するのに理想的とは言えない。又、GLP類似体は、高い濃度で嘔吐を誘発することが知られているので、初期の血漿濃度が低くて持続的な医薬効果を提供する必要がある。(Ritzelら, Diabetologia, 38: 720-725 (1995); Gutniakら, Diabetes Care, 17(9): 1039-1044 (1994); Deaconら, Diabetes, 44: 1126-1131 (1995).)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許公開公報番号WO01/57084
【特許文献2】欧州特許公開公報番号EP0619322A2
【特許文献3】米国特許第6,566,490号
【特許文献4】米国特許第6,555,521号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kim及びHaren, Pharma. Res. Vol. 12 No. 11 (1995)
【非特許文献2】Pridalら, International Journal of Pharmaceutics Vol. 136, pp. 53-59 (1996)
【非特許文献3】Choiら, Pharm. Research, Vol. 21, No. 5, (2004)
【非特許文献4】Ritzelら, Diabetologia, 38: 720-725 (1995)
【非特許文献5】Gutniakら, Diabetes Care, 17(9): 1039-1044 (1994)
【非特許文献6】Deaconら, Diabetes, 44: 1126-1131 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、より容易にかつ安定的に製造され、より容易かつ再現可能的に患者へ投与され、低い初期血漿濃度を提供して望まれない副作用を低下又は消失させるGLP−1配合物へのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概略
本発明は、以下のパラグラフ、並びに特許請求の範囲において要約することができる。
1つの態様において、本発明は、下記を含む制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
下記式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに、
酢酸塩及び/又は酢酸。
別の態様では本発明は、上記医薬組成物を含む容器を提供する。
更に別の態様において、本発明は、下記ステップを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
A:液体、酢酸塩及び/又は酢酸、並びにペプチド類似体を組み合わせるステップ、及び
B:二価の金属及び/又は二価の金属塩を添加し溶解するステップ。
更に別の態様において、本発明は、II型糖尿病治療用の医薬組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】イヌへ約1mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。それぞれのケースでペプチドは、約1%(wt/vol)ペプチドを含み、ペプチド:Znモル比約1.5である水性亜鉛組成物として投与された。黒四角及び白四角は、pHをここに記載するとおりNaOHで調整した組成物を示す。黒三角は、pHをNaOHで調整されない組成物を示す。黒円は、AcOH/AcO−で緩衝された組成物を示す。
【図2】イヌへ約15mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。それぞれのケースでペプチドは、約10%(wt/vol)ペプチドを含み、ペプチド:Znモル比約1.5である水性亜鉛組成物として投与された。黒四角及び白四角は、pHをここに記載するとおりNaOHで調整した組成物を示す。黒三角は、pHをNaOHで調整されない組成物を示す。黒円は、AcOH/AcO−で緩衝された組成物を示す。
【図3】イヌへ約1mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。それぞれのケースでペプチドは、下記半固体(semisolid)水性亜鉛組成物として投与された。黒円:約5%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約5.4:1、pH調整せず;白円:約10%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約5.4:1、pH調整せず;白四角:約10%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約5.4:1、NaOHでpH調整;黒四角:約10%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約4:1、NaOHでpH調整。
【図4】本発明のある配合物を調製するのに有用な様々な装置の概略図を提供する。
【図5】イヌへ約1mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。ペプチドは、ペプチド濃度約2%でペプチド:Znモル比約1.5:1である水性亜鉛組成物として投与された。
【図6】イヌへ約15mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。ペプチドは、ペプチド濃度約25%でペプチド:Znモル比約4:1である半固体亜鉛組成物として投与された。
【図7】イヌへ約15mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。ペプチドは、ペプチド濃度約23%でペプチド:Znモル比約1.5:1である半固体亜鉛組成物として投与された。
【図8】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)のGLP−1類似体HCl塩試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。(1)CuCl2との(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2HCl塩:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/CuCl2のモル比は1.5:1である。ペプチド濃度は水(w/w)中10%(30mM)で約pH5.5である。(2)ZnCl2との(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2HCl塩:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は1.5:1である。ペプチド濃度は水(w/w)中10%(30mM)であり、約pH5.5である。
【図9】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)のGLP−1類似体酢酸塩試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。ZnCl2との(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は1.5:1である。ペプチド濃度は水(w/w)中10%(30mM)であり約pH5.5である。
【図10】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)の図8に示す試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。
【図11】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)の図9に示す試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。
【図12】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)の図8に示す3種の試験配合物を単回皮下(s.c.)投与した後に、注射部位に残っている(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の推定百分率を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明は、GLP−1類似体を含む医薬組成物を提供する。特に好ましくは、式(I)のGLP−1類似体:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2(I)又はその医薬的に許容される塩であり、上記組成物の配合物は、優れた製造、投与、薬物動態、及び薬力学特性を提供するだけでなく、負の副作用を弱める効果を提供する。好ましくは、本発明の医薬の組成物は、pH4を有し、上記[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2が濃度4mg/mlで存在し、上記ZnCl2が濃度0.5mg/mlで存在する澄明な水性ZnCl2溶液からなるものではない。
【0018】
好ましい態様では、本発明は、好ましくは初期バーストが抑制された、改善された薬物放出プロファイルを有する医薬組成物を提供する。
本発明は又、延長された作用時間を有する、式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明は、以下のパラグラフ、並びに特許請求の範囲において要約することができる。
1つの態様において、本発明は、下記を含む制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;及びに
酢酸塩及び/又は酢酸。
好ましくは、本発明は、下記を含む制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに
酢酸塩及び/又は酢酸;
但し、二価の金属及び/又は二価の金属塩は、亜鉛及び/又は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは4〜5の範囲内であり;
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約1:1〜6:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約6:1〜1:1である。
【0020】
好ましくは、ペプチド類似体の一部及び酢酸塩の一部は、ペプチド類似体の塩として存在する。
好ましくは、医薬的組成物の最終pHは3.5〜6の範囲内である。更に好ましくは、医薬的組成物の最終pHは4〜5の範囲内である。より更に好ましくは医薬的組成物の最終pHは4.5±0.1である。組成物の最終pHとは、投与可能である時点での組成物のpHである。
【0021】
好ましくは、酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約0.5:1〜約10:1である。更に、酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲が約1:1〜約6:1である医薬組成物が好ましい。より更に、酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲が約3.2:1(3.2±0.32)である医薬組成物が好ましい。
【0022】
好ましくは、二価の金属及び/又は二価の金属塩は、亜鉛及び/又は塩化亜鉛である。更に好ましくは、二価の金属及び/又は二価の金属塩は、塩化亜鉛である。
【0023】
好ましくは、ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約6:1〜約1:1.更に好ましくは、ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比は約1.5:1(1.5±0.15)である。
【0024】
好ましくは、本発明は、下記を含む上記制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに酢酸塩及び/又は酢酸;
但し、二価の金属及び/又は二価の金属塩は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1の範囲内であり;
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約3.2:1(3.2±0.32)であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約1.5:1(1.5±0.15)である。
【0025】
好ましくは、ペプチド類似体の濃度は、約10重量/容量%(mg/ml)である。
好ましくは、亜鉛範囲の濃度は、0.26重量/容量%〜2.35重量/容量%(mg/ml)である。
【0026】
好ましくは、組成物は、式(I)のペプチド類似体が被検体内で少なくとも約1週間放出されるように配合される。
好ましくは、組成物は、式(I)の化合物が被検体内で少なくとも約1週間、好ましくは2週間放出されるように配合される。
【0027】
好ましくは、組成物は液体(又は希釈剤)を更に含む。この液体(又は希釈剤)は、溶媒又は懸濁液のビヒクルとして使用される。
好ましくは、液体は無菌水又はNaCl等の等張剤を含む無菌水から選ばれる。
【0028】
好ましくは、医薬組成物は非経口的投与に適する。更に好ましくは、医薬組成物は注射による投与に適する。
好ましくは、医薬組成物は、温度5℃で少なくとも1年間の間使用可能状態での使用前貯蔵に適する。
好ましくは、医薬組成物は、全成分を、好ましくは全て一緒に混合して凍結乾燥無しに調製される。
【0029】
別の態様では本発明は、上記医薬組成物を含む容器を提供する。好ましくは、容器はプレフィルドシリンジである。
【0030】
好ましくは、本発明は、上記医薬組成物をプレフィルドしたシリンジを提供する。但し、この医薬組成物は下記を含む:
液体として水(qs210μl);
21mgの式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属塩として0.571mgの塩化亜鉛;及び
酢酸;
但し、上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1であり;
酢酸のペプチド類似体に対するモル比は約3.2:1(3.2±0.32)であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比は約1.5:1(1.5±0.15)である。
【0031】
別の態様では、本発明は、下記ステップを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
A:液体、酢酸塩及び/又は酢酸、並びにペプチド類似体を組み合わせるステップ、並びに
B:二価の金属及び/又は二価の金属塩を添加し溶解するステップ。
【0032】
好ましくは、上記方法は更に下記ステップを含む。
C:ステップBから得られる組成物を無菌ろ過するステップ、及び
D:容器へ組成物を充填するステップ。
【0033】
好ましくは、ステップAの前に、酢酸及び無菌水を組み合わせる。
更に好ましくは、上記方法は、更に無菌水を溶液に加える最終ステップを含む。
【0034】
別の態様では、本発明は、II型糖尿病治療用の医薬組成物の使用を提供する。.
好ましい態様では、本発明は又、制御放出医薬プロファイルのために、in vivoの生理学的なpHで沈殿して、その場で沈殿物(deposit)を生成する医薬組成物を提供する。
【0035】
本発明の更なる態様は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩と医薬的に許容されるキャリア又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、上記キャリア又は希釈剤は、水を含む。
【0036】
好ましい態様では、本発明は、GLP−1ペプチドの塩で、又はペプチドとその塩の混合物で製造される化合物又はGLP−1ペプチド類似体を含む医薬組成物を提供する。
【0037】
好ましくは、上記医薬組成物中のGLP−1ペプチド類似体の塩は、酢酸、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、メタンスルホン酸、又はトルエンスルホン酸等の、有機酸の塩の医薬的に許容される塩、又は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、又はリン酸等の、無機酸の塩の医薬的に許容される塩のリストより選択される。塩酸等の強酸の医薬的に許容される塩が特に好ましい。強酸は、4.5未満のpKAを有する酸として定義される。上記医薬組成物中の、追加的好ましいペプチド塩は、酢酸又はトリフルオロ酢酸、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、又はクエン酸の塩等の有機酸の塩である。
【0038】
1つの好ましい態様では、塩型GLP−1類似体の非塩型GLP−1類似体に対するモル比を調整することによって、医薬組成物の溶解性、pH、及び放出プロファイルを調節して、放出プロファイルを延長させて、GLP−1類似体濃度の初期スパイクを抑えることができる。
【0039】
好ましい態様において、医薬組成物は、二価金属を更に含み、該組成物の水溶性を低下させて、それにより放出プロファイルを延長させると同時に、血漿濃度における初期のバースト又はスパイクを抑えることができる。好ましい二価金属には、亜鉛と銅が含まれる。二価金属の塩型が特に好ましく、限定するものではないが、二価金属の塩化物及び酢酸塩(acetate)が含まれる。CuAc2、CuCl2、ZnAc2、及び/又はZnCl2が最も好ましい。好ましくは、上記医薬組成物中の二価金属及び/又は二価金属塩は、約0.0005mg/ml〜約50mg/mlの濃度で存在する。更に好ましくは、上記医薬組成物中の二価金属及び/又は二価金属塩は、約0.01mg/ml〜約0.50mg/mlの濃度で存在する。より好ましくは、上記医薬組成物は希釈剤を含み、ここで上記希釈剤は、医薬的に許容される水溶液を含む。希釈剤は、滅菌水又は等張剤としてNaCl等の塩の無菌水溶液を含む。
【0040】
文言「等張剤」は本明細書では、血液と同一の浸透圧を維持する、溶液中の塩又は賦形剤を意味する。
文言「医薬的に許容される」は本明細書では、哺乳類又はヒトにより生理学的に許容されることを意味する。
【0041】
更なる態様において、上記医薬組成物は、二価金属及び/又は二価金属塩を更に含み、ここで上記医薬組成物における上記GLP−1類似体の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比範囲は、約6:1〜約1:1である。好ましくは、上記比範囲は、約5.5:1〜約1:1である。より好ましくは、上記比範囲は、約5.4:1〜約1.5:1である。更により好ましくは、上記比範囲は、約5.4:1、4.0:1、又は1.5:1である。最も好ましくは、上記比範囲は、約1.5:1である。GLP−1類似体の、二価の金属及び/又は二価の金属塩に対するモル比は、医薬組成物中のペプチド類似体のモル割合の、二価の金属及び/又は二価の金属塩のモル割合に対する比を意味する。ペプチド類似体のモル割合は、ペプチド類似体塩の形で存在する全てのペプチドを含む。本発明でこの場合、「約」が意味するのは、1.5:1±10%の各目標値の比であるので、期待される比には、例えば、1.35〜1.65:0.85〜1.15を包含する比が含まれる。
【0042】
好ましくは、上記医薬組成物は、水性混合物、懸濁液、又は溶液を含み、GLP−1の上記類似体、式(I)の化合物、又はその塩は、約0.5%〜30%(w/w)の濃度で存在する。より好ましくは、上記GLP−1類似体及び/又はその塩の上記水性混合物、懸濁液、又は溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%,又は30%(w/w)である。より好ましくは、上記GLP−1類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、14%、15%、16%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、29%,又は30%(w/w)である。なおより好ましくは、GLP−1の上記類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、9%、10%、11%、22%、23%、24%、25%,又は26%(w/w)である。更により好ましくは、GLP−1の上記類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、10%、22%、23%、24%、25%,又は26%(w/w)である。なおより好ましくは、GLP−1の上記類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、5%、10%、23%又は25%(w/w)である。「約」は、以下のことを意味する:約0.5%〜約4%の濃度では、目標値の±0.5%が目的とする範囲である(例えば、0.5%〜1.5%は、約1%である);約5%以上の標的濃度では、目標値の20%が目的とする範囲である(例えば、8%〜12%は、約10%である)。
【0043】
好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2、GLP−1の類似体又はその塩の医薬組成物中の濃度は、約1%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。より好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記医薬組成物中の濃度は、約2%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。
なおより好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記医薬組成物中の濃度は、約10%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。最も好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記医薬組成物中の濃度は、約23%又は約25%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。
【0044】
好ましい態様において、GLP−1の類似体、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の医薬組成物中の濃度は、約5%(wt/vol)であり、該ペプチドの二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約5.4:1である。より好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記組成物中の濃度は、約5%(wt/vol)であり、上記比は、約4.0:1である。なおより好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記組成物中の濃度は、約10%(wt/vol)であり、上記比は、約5.4:1である。なお更に好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記組成物中の濃度は、約10%(wt/vol)であり、上記比は、約4.0:1である。
【0045】
好ましくは、上記二価金属及び/又は二価金属塩は、塩化亜鉛又は酢酸亜鉛として提供される。より好ましくは、上記酢酸亜鉛は、ZnAc2・2H2Oとして提供される。
代わりの態様において、上記二価金属及び/又は二価金属塩は、塩化銅又は酢酸銅として提供される。
【0046】
1つの態様において、上記医薬組成物のpHは、塩基を使用して上方へ調整される。より好ましくは、上記pH調整は、NaOHを使用してなされる。なおより好ましくは、上記医薬組成物のpHは、0.9%NaClを使用して約1/2の初期濃度へ希釈する場合、直接電位差定量法を使用して約5.0〜5.5のpH値が得られるように、NaOHで調整する。
【0047】
本発明の好ましい態様は、医薬組成物又は制御放出配合物を提供し、この組成物は、GLP−1のペプチド類似体又はその塩、例えば、式(I)の化合物又はその塩が、それが必要な被検体、例えば哺乳動物、好ましくはヒトの体内で、延長された期間の間放出されるように配合される。好ましくは、上記化合物の放出は、少なくとも1時間にわたり、より好ましくは、少なくとも4、6、12、又は24時間にわたる。なおより好ましくは、上記組成物は、式(I)の化合物が被検体の体内で少なくとも36、48、60、72、84、又は96時間の間放出されるように配合される。なおより好ましくは、上記組成物は、式(I)の化合物が被検体の体内で少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14日の間放出されるように配合される。なおより好ましくは、上記組成物は、式(I)の化合物が被検体の体内で少なくとも約2、3又は4週間放出されるように配合される。
【0048】
文言「制御放出」は本明細書では、少なくとも1週間、更に好ましくは少なくとも2週間、生物学的に活性なGLP−1類似体の測定可能な血中濃度を生じる放出を意味する。
【0049】
本発明の1つの態様において、GLP−1ペプチド類似体の上記医薬組成物中の塩含量の調節は、GLP−1ペプチド類似体の医薬組成物内での溶解性及び安定性を改善して、更に、初期バーストを減少させることによって、in vivo放出プロファイルに改善を提供する。
【0050】
上記明細書の文言「調節(調整)」は、塩型GLP−1類似体の、非塩型GLP−1類似体に対するモル比を調節することにより、塩含有量を調節(調整)することを意味する。
【0051】
なおより好ましくは、上記医薬組成物中のペプチド塩は、塩酸又は酢酸の塩、又は式(I)の上記ペプチドの塩化物又は酢酸塩である。上記医薬組成物において、酢酸塩又は塩化物は、酢酸塩又は塩化物の式(I)の上記化合物に対する最終モル比として、約0.5:1〜約10:1の範囲で存在する。より好ましくは、上記比は、約0.8:1〜約9:1である。なおより好ましくは、上記比は、約1:1〜約6:1である。最も好ましくは、上記比は、約3.0:1、特に3.2:1である。
【0052】
本発明のこの態様において、酢酸塩又は塩化物のペプチドに対するモル比は、医薬組成物中のペプチドのモル割合に対する、医薬組成物中の酢酸塩(CH3COO-)又は塩化物(Cl-)のモル割合を意味する。医薬組成物中3:1のモル比の例において、酢酸塩は、割合においてペプチドのモル含量の3倍である。これは、ある化合物の他の化合物に比較した化学量論比である。
【0053】
酢酸塩のモル割合及びペプチドのモル割合は、ペプチド類似体の塩として存在する全ての酢酸塩及びペプチドを含む。最初に調製されたペプチド中の酢酸塩濃度は、ペプチド調製に使用された方法に応じて変動する。従って、配合物へ添加される酢酸塩の量は、ペプチドの酢酸塩に対する適切な最終割合が得られるように調節される必要がある。
【0054】
別の態様では、本発明は哺乳類を治療するために上記組成物を使用する方法に関する。
【0055】
文言「約」は、この好ましい態様では、1.5:1±10%の各目標値の比を意味するので、期待される比には、例えば、1.35〜1.65:0.85〜1.15を包含する比が含まれる。
【0056】
本発明の追加的好ましい態様において、医薬組成物のpHは、組成物の酢酸塩含量の調節によって調整される。好ましくは、上記医薬組成物のpH範囲は、pH3〜pH6である。より好ましくは、上記医薬組成物のpH範囲は、pH3.5〜5.5である。最も好ましくは、上記医薬組成物のpH範囲は、pH4.2〜pH4.6である。
【0057】
好ましくは、医薬組成物を酸性化するために、酢酸塩含量を、酢酸を加えることによって増加できる。
【0058】
1つの態様において、上記医薬組成物のpHは、低い酢酸塩含有量又は酢酸塩を含まないGLP−1の類似体のペプチド塩より始めて、酢酸塩含量の調節により高めることができる。
【0059】
好ましい態様において、酢酸塩又は塩化物の含量の調節による、最終医薬組成物におけるpHの調整は、初期バーストを減少させることによって、ペプチド濃度、亜鉛濃度、化学安定性、物理安定性、及びin vivo放出プロファイル等の変数の調節を可能にする。
【0060】
本発明の1つの側面では、Zn又はCu含量を固定して、酢酸塩含量を調節することによってpHを制御する。酢酸塩の含量を増加させると、溶解性や物理安定性の改善が示され、酢酸塩の含量を減少させると、pHに対しては増加効果を、Cmaxに対しては減少効果を示す。
【0061】
好ましい態様において、上記医薬組成物は、水性混合物、懸濁液、又は溶液を含む。
【0062】
本発明は又、GLP−1アゴニスト効果を引き起こす方法を提供し、この方法は、GLP-1(7-36)NH2リガンドの受容体をGLP−1類似体又はその塩と直接的又は間接的に接触させるステップを含む。
【0063】
上記方法において、GLP−1(7−36)NH2リガンドの上記受容体は、動物被検体、好ましくは霊長動物、より好ましくはヒトに存在している。従って、この態様において、本発明は、それを必要とする被検体内でGLP−1受容体よりアゴニスト効果を引き起こす方法を提供し、該方法は、本発明の組成物を上記被検体へ投与するステップを含み、ここで上記組成物は、GLP−1類似体又はその医薬的に許容される塩の有効量を含む。
【0064】
上記方法の好ましい態様において、上記被検体は、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠性糖尿病、肥満、食欲過多、満腹感の不足、及び代謝障害からなる群より選択される疾患又は症状に罹患しているか又はそれらを発症するリスクのあるヒトである。好ましくは、上記疾患は、I型糖尿病又はII型糖尿病である。
【0065】
上記方法の別のより好ましい態様において、上記被検体は、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、高血圧症、及び摂食の抑制が所望される障害、中枢神経系の疾患又は障害(例えば、神経組織発生の変調による、及び、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、卒中、ADD、及び神経精神系の症候群)、過敏性腸管症候群、心筋梗塞(例えば、それに関連した罹病率及び/又は死亡率を低下させること)、卒中、急性冠症候群(例えば、Q波の非存在を特徴とする)心筋梗塞、術後の異化変化、冬眠心筋又は糖尿病性心筋症、不充分な尿ナトリウム排出、過度の尿カリウム濃度、有害な血液量過多症に関連した状態又は障害(例、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、及び高血圧症)、多房性卵巣症候群、呼吸窮迫、腎障害、左心室収縮機能不全(例えば、異常な左心室駆出率を伴う)、下痢、術後ダンピング症候群、及び過敏性腸管症候群等の胃腸障害(即ち、十二指腸洞の運動の阻害による)、重症疾患多発ニューロパシー(CIPN)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、異常脂質血症、虚血後の血流の再灌流によって引き起こされる臓器組織損傷、及び冠動脈性心疾患危険因子(CHDRF)症候群からなる群より選択される疾患に罹患しているか又はそれらを発症するリスクのあるヒトである。
【0066】
本発明の追加の態様において、本発明は、その必要な被検体において、肝臓の幹/始原細胞を機能的な膵臓細胞へ変換する、β細胞の悪化を防いでβ細胞増殖を刺激する、ノルエピネフリンの血漿レベルを抑制する、変力応答を誘発して心収縮を増加させる、非消化管経路を介した(即ち、静脈内、皮下、筋肉内、腹膜、又は他の注射又は注入経路を介した)栄養摂取を改善する、内視鏡手技を受ける被検体に前処置する、並びにトリグリセリドレベルを調節する方法を特徴とし、上記方法は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を含んでなる本発明の配合物を上記被検体へ投与することを含んでなる。好ましくは、上記被検体は、哺乳動物、より好ましくは霊長動物、なおより好ましくはヒトである。
【0067】
本発明のペプチド塩として利用する好ましいGLP−1ペプチドは、ここで例えば、以下の形式:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2で示され、天然の配列を置換したアミノ酸を最初の組括弧の間に置く(例えば、Aib8,35は、hGLP−1中のAla8及びGly35がAibで置換されていることを示す)。Aibは、α−アミノイソ酪酸の略語である。略語GLP−1は、グルカゴン様ペプチド−1を意味し;hGLP−1は、ヒトグルカゴン様ペプチド−1を意味する。二番目の組括弧の間にある数字は、ペプチド中に存在するアミノ酸の番号を意味する(例えば、hGLP−1(7−36)は、ヒトGLP−1のペプチド配列のアミノ酸7〜36を意味する)。hGLP−1(7−37)の配列は、Mojsov,S.,Int.J.Peptide Protein Res,.40,1992,pp.333−342に収載されている。hGLP−1(7−36)NH2中の表記:「NH2」は、このペプチドのC末端がアミド化していることを示す。hGLP−1(7−36)は、C末端が遊離酸であることを意味する。hGLP−1(7−38)中、37位と38位の残基は、特記無い場合はそれぞれGlyとArgである。
【0068】
本発明に使用される特に好ましいGLP−1ペプチド類似体は、医薬的に許容される塩の形態である。それらの塩の例として、限定されるものではないが、有機酸(例、酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、メタンスルホン酸、トリエンスルホン酸、又はパモ酸)、無機酸(例、塩酸、硫酸、又はリン酸)、及びポリマー酸(例、タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はポリ乳酸−グリコール酸の共重合体)とともに生成されるものが挙げられる。
本発明のペプチドの塩を調製する典型的な方法は当該技術分野で公知であり、塩交換の標準的方法によって達成できる。従って、本発明のペプチドのTFA塩(このTFA塩は、TFA含有緩衝溶液で溶出させる分取用HPLCを使用してペプチドを精製することにより生じる)は、該ペプチドを少量の0.25N酢酸水溶液に溶かすことによって、酢酸塩等の別の塩へ変換できる。得られた溶液をsemi-prep HPLCカラム(商品名Zorbax、300SB、C-8)へ適用する。このカラムを(1)0.1N酢酸アンモニウム水溶液で0.5時間、(2)0.25N酢酸水溶液で0.5時間、そして(3)流速4ml/分(30分間で20%〜100%の溶液B)での線形勾配(溶液Aは、0.25N酢酸水溶液であり;溶液Bは、アセトニトリル/水(80:20)中0.25N酢酸である)で溶出させる。該ペプチドを含有する分画を採取して、凍結乾燥させる。
【0069】
当業者に公知のとおり、GLP−1の既知の使用と潜在的な使用は多様であり、多数ある(Todd, J. F.ら, Clinical Science, 1998, 95, pp. 325-329; 及び Todd, J. F.ら, European Journal of Clinical Investigation, 1997, 27, pp. 533-536 を参照)。従って、アゴニスト効果を引き起こす目的のために本発明の化合物を投与すると、GLP−1それ自体と同じ効果及び用途を有し得る。これらのGLP−1の多様な使用は、以下のように要約できる:I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、高血圧症、摂食の抑制が所望される障害、並びに、本明細書で検討されるに様々な他の症状及び障害の治療。従って、本発明には、その範囲内に、式(I)の化合物を有効成分として含んでなる、本明細書記載の医薬組成物が含まれる。
【0070】
本発明の配合物中の有効成分の投与量は、変動してよいが、有効成分の量は、好適な投与量が得られるものであることが必要である。選択される投与量は、目的とする治療効果、投与経路、及び治療期間に依存し、通常は担当医が決定する。一般に、本発明の活性に有効な投与量は、1×10-7〜200mg/kg/日、好ましくは1×10-4〜100mg/kg/日の範囲にあり、これは、単回用量として投与しても、複数回の投与量で分割投与してもよい。
【0071】
本発明の配合物は、好ましくは、非経口的に、例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下等へ投与する。
【0072】
本発明による非経口投与用の調製物には、目的とするin vivo放出プロファイルが達成されるのならば、無菌の水溶液又は非水溶液、懸濁液、ゲル、又はエマルジョンが含まれる。非水溶媒又はビヒクルの例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油又はトウモロコシ油等の植物油、ゼラチン、及び、オレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。それらの剤形は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等のアジュバントを含有してもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターに通すろ過によって、滅菌剤を組成物へ配合することによって、組成物に照射することによって、又は組成物を加熱することによって無菌化できる。それらは又、無菌水や他の注射可能な無菌媒体中に、使用直前に溶かすことのできる無菌の固形組成物の形態で製造できる。
【実施例】
【0073】
ペプチドの合成:
本発明を実施するのに有用なペプチドは、標準の固相ペプチド合成によって製造可能であり、それにより製造した。例えば、Stewart, J. M.ら,Solid Phase Synthesis(ピアス・ケミカル社、第2版、1984年)を参照。
【0074】
下記実施例には、それにより本発明を有利に実施できるペプチドを作製するために使用可能であり、それを使用した合成法について記載するが、この合成法は、当業者に公知である。他の方法も当業者に知られている。実施例は、例示の目的のために提供するのであって、本発明の範囲をいかなるやり方でも限定するものではない。
【0075】
GLP−1類似体等の上記ペプチドは、当業者に公知の異なる合成法で入手可能であり、その方法はペプチドの最終沈殿、凍結乾燥法、真空乾燥、又は当分野で公知の他の乾燥法を含むこともできる。イオン交換クロマトグラフィー、緩衝液の浸透圧交換、及びダイフィルトレーション(difiltration)は、本発明において、異なる塩型の該ペプチドを精製又は選択するのに適した方法であり得る。
【0076】
Boc−βAla−OH、Boc−D−Arg(Tos)−OH、及びBoc−D−Asp(OcHex)は、Nova Biochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。Boc−Aun−OHは、Bachem社(ペンシルヴェニア州キング・オブ・プルシア)より購入した。Boc−Ava−OH及びBoc−Ado−OHは、Chem−Impex International社(イリノイ州ウッドデール)より購入した。Boc−2Nal−OHは、Synthetech Inc.社(オレゴン州オールバニー)より購入した。
【0077】
本明細書に使用する他の略語の完全名は、以下の通りである:Bocはt−ブチルオキシカルボニル、HFはフッ化水素、Fmはホルミル、Xanはキサンチル、Bzlはベンジル、Tosはトシル、DNPは2,4−ジニトロフェニル、DMFはジメチルホルムアミド、DCMはジクロロメタン、HBTUは2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン酸塩、DIEAはジイソプロピルエチルアミン、HOAcは酢酸、TFAはトリフルオロ酢酸、2ClZは2−クロロベンジルオキシカルボニル、2BrZは2−ブロモベンジルオキシカルボニル、OcHexはO−シクロヘキシル、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル、HOBtはN−ヒドロキシベンゾトリアゾール、PAM樹脂は4−ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、Trisはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、そしてBis−Trisはビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン(即ち、2−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)を表す。用語「ハロ」又は「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードが含まれる。
【0078】
他に定義のない限り、本明細書に使用するすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。又、本明細書で言及された出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、いずれも参照により組み込まれる。
【0079】
実施例1;(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の詳細な合成手順は、その内容がその全体において本明細書に組み込まれる、国際特許公開公報番号WO00/34331(PCT/EP99/09660)で提供されている。簡潔には、該化合物は、加速Boc化学固相ペプチド合成を行うように変更したアプライド・バイオシステムズ社(カリフォルニア州フォスターシティ)商品名モデル430Aペプチド合成機で合成した。Schnolzerら, Int. J. Peptide Protein Res., 40:180 (1992) を参照。0.91mmol/gの置換された4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂(Peninsula社,カリフォルニア州ベルモント)を使用した。Bocアミノ酸(Bachem社,カリフォルニア州トーランス;Nova Biochem社,カリフォルニア州ラホヤ)を側鎖保護を以下のとおり行って使用した:Boc−Ala−OH、Boc−Arg(Tos)−OH、Boc−Asp(OcHex)−OH、Boc−Tyr(2BrZ)−OH、Boc−His(DNP)−OH、Boc−Val−OH、Boc−Leu−OH、Boc−Gly−OH、Boc−Gln−OH、Boc−Ile−OH、Boc−Lys(2CIZ)−OH、Boc−Thr(Bzl)−OH、Boc−Ser(Bzl)−OH、Boc−Phe−OH、Boc−Aib−OH、Boc−Glu(OcHex)−OH、及びBoc−Trp(Fm)−OH。
Boc基は、100% TFA、2×1分間の処理により外した。Bocアミノ酸(2.5mmol)は、4mLのDMF中のHBTU(2.0mmol)及びDIEA(1.0mL)で予め活性化して、ペプチド−樹脂TFA塩の中和に先立つことなくカップリングさせた。カップリング時間は5分であった。但し、Boc−Aib−OH残基と以下の残基:Boc−Lys(2CIZ)−OH及びBoc−His(DNP)−OHではカップリング時間は2時間であった。
【0080】
ペプチド鎖の組立ての最後に、樹脂を20%メルカプトエタノール/10% DIEAのDMF溶液で2×30分間処理して、His側鎖上のDNP基を外した。次いで、100% TFAで2×2分間の処理によりN末端Boc基を外した。DMF中10% DIEAでのペプチド−樹脂の中和(1×1分)の後で、15%エタノールアミン/15%水/70% DMFの溶液で2×30分間の処理により、Trpの側鎖上のホルミル基を外した。このペプチド−樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、減圧下乾燥させた。1mLのアニソール及びジチオスレイトール(24mg)を含有する10mLのHF中で、ペプチド−樹脂を0℃で75分間撹拌することによって、最終の開裂を行った。窒素流によってHFを除去した。残渣をエーテル(6×10mL)で洗浄し、4N HOAc(6×10mL)で抽出した。
【0081】
水性抽出液中のペプチド混合物を、逆相VYDAC(登録商標)C18カラム(Nest Group社,マサチューセッツ州サウスバラ)を使用する逆相分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した。10ml/分の流速の線形勾配(105分にわたり20%〜50%のB溶液)(A溶液=0.1% TFAを含有する水;B溶液=0.1%のTFAを含有するアセトニトリル)でカラムを溶出させた。分画を採取して、分析用HPLCで確認した。純粋な生成物を含有する分画を合わせて、凍結乾燥させた。この化合物の合成の1例では、135mgの白色固形物を得た。純度は、分析用HPLC分析に基づけば98.6%であった。エレクトロスプレー質量分光計(MS(ES))S分析によると、分子量は3339.7であった(3339.7の計算分子量と一致)。
【0082】
実施例2
配合手順I
2.1;材料、ストック溶液、計算:
A)材料:ZnCl2、NaOHペレット、及び塩酸(35%)をPanreac Quimica社(スペイン、バルセロナ)より入手した。WFI(注射/灌注用無菌水:sterile water for injection/irrigation)をB.Braun Medical社(スペイン、バルセロナ)より入手した。
【0083】
B)ストック溶液:
(i)ZnCl2,pH=3:
1.撹拌しながら、35% HClをWFIへ加えて、pH=3とする。
2.容量フラスコに、秤量した量のZnCl2を移す。撹拌しながら、pH=3 HClを加えて、約1〜4mg ZnCl2/mlの最終濃度とする。
【0084】
(ii)ZnCl2,pH=2:
1.撹拌しながら、35%HClをWFIへ加えて、pH=2とする。
2.容量フラスコに、秤量した量のZnCl2を移す。撹拌しながら、pH=2のHClを加えて、約4〜12mg ZnCl2/mlの最終濃度とする。
【0085】
(iii)NaOH,0.1〜10mg/ml:
1.容量フラスコに、秤量した量のNaOHを移す。撹拌しながら、WFIIを加えて、約0.1〜10mg NaOH/mlの最終濃度とする。
【0086】
(iv)凍結乾燥20mgアリコート(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/バイアル:
1.酢酸及びWFIの0.04%(v/v)希釈液を調製する。
2.容量フラスコに、秤量した量の(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(酢酸塩)を移す。撹拌しながら、充分な0.04%酢酸を加えて、最終濃度を20mg(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/mlとする。0.45ミクロンフィルターを使用するろ過滅菌に続いて、この溶液の1mlアリコートを凍結乾燥バイアルへ移し、凍結乾燥させて、乾燥生成物を−22℃で保存する。
【0087】
(v)凍結乾燥50mgアリコート(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/バイアル:
1.酢酸及びWFIの0.1%(v/v)希釈液を調製する。
2.容量フラスコに、秤量した量の(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(酢酸塩)を移す。撹拌しながら、充分な0.1%酢酸を加えて、最終濃度を50mg(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/mlとする。ろ過滅菌に続いて、この溶液の1mlアリコートを凍結乾燥バイアルへ移して、凍結乾燥させる。
【0088】
C)計算:
(i)組成物の全重量/賦形剤の容量(E)を決定するには下記式を使用する:
E=(A×100/T)−(A/P)
ここで:
E=賦形剤(mg)
A=純粋なペプチドの含量(mg);
T=組成物の標的濃度;例えば、標的が2%であるならば、2;及び
P=純粋なペプチドの濃度(mgペプチド/100mg配合物)。
賦形剤の全容量に関しては、1ml=1gという前提を適用する。
【0089】
(ii)組成物溶液の各ml又はgへ加えるべきZnCl2の容量/重量(W)を決定するには:
a)pH調整をしない組成物では、W=100% E;
b)ペプチドが約1%又は約2%又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する液体配合物では、W=80% E;
c)ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=50% E;
d)ペプチドが約25%であり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=66.66% E;
e)ペプチドを凍結乾燥調製品より復元して、塩基を使用してpHを調整する配合物では、W=90% E。
【0090】
(iii)組成物溶液の各ml又はgへ加えるべきNaOHの容量/重量(W)を決定するには:
a)ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する配合物では、W=20% E;
b)ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=50% E;
c)ペプチドが約25%であり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=33.33% E;
d)ペプチドを凍結乾燥調製品より復元して、塩基を使用してpHを調整する配合物では、W=10% E。
【0091】
(iv)各組成物において使用すべきZnCl2の濃度(mg/ml又はmg/g)を決定するには:
[ZnCl2]=(136.29×A)/(W×3339.76×R)
ここで:
A=純粋なペプチドの含量(mg);
R=ペプチド/Znのモル比
ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%、又は約23%までである配合物では、R=1.5;
ペプチドが約25%である配合物では、R=4.0;及び、
W=組成物溶液の各g又はmlへ加えるべきZnCl2溶液の重量(g)又は容量(ml)。
【0092】
2.2;1〜10%の凍結乾燥ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整なしの組成物の調製:
本明細書に使用される、ある割合のペプチドを含む配合物は、組成物の全重量に対しある重量のペプチドを含む配合物を記載するものであり、例えば、1%ペプチドは、100gの全組成物につき1gのペプチドを含む配合物を記載する。約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む配合物は、以下のように調製した。上記のように製造した(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の凍結乾燥試料を、100%の全賦形剤容量と[ペプチド:Zn]=1.5:1でZnCl2ストック溶液(pH3)と完全に混合した。
【0093】
A)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を2mlのZnCl2溶液(0.272mg/ml;上記2.1B(i)を参照)と混合して1%組成物を調製する。
【0094】
B)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を1mlのZnCl2溶液(0.544mg/ml;上記2.1B(i)を参照)と混合して2%組成物を調製する。
【0095】
C)50mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(v)を参照)を0.45mlのZnCl2溶液(3.023mg/ml;上記2.1B(i)を参照)と混合して10%組成物を調製する。
【0096】
凍結乾燥ペプチドと溶液をそのまま室温まで平衡化した。凍結乾燥ペプチドを含有するバイアルへ指定容量のZnCl2溶液を注入して、1%又は2%ペプチド組成物では約2分間、10%ペプチド組成物では約60分間、又はすべての凍結乾燥ペプチドが完全に水和して溶液にペプチドの塊がなくなるまで、水和を進行させた。水和に続き、復元したペプチドを約1分間振り混ぜる。
【0097】
溶かしたペプチドの適正量を投薬のために取り出すことができる。例えば、上記Aで調製した1%ペプチド溶液の100μlは、1mg用量に相当し、上記Bで調製した2%ペプチド溶液の50μlは、1mg用量に相当し、上記Cで調製した10%ペプチド溶液の150μlは、15mg用量に相当する。
【0098】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチドとZnCl2の量を変動させて、下記に詳述する1%、2%、及び10%組成物以外の組成物、並びに目的とする投与量とすることができる。
【0099】
2.3;1〜10%の凍結乾燥ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整有りの組成物の調製:
約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む配合物は、以下のように調製した。上記のように製造した(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の凍結乾燥試料を全賦形剤容量の90%でZnCl2ストック溶液(pH3)と完全に混合した。希釈NaOH溶液の添加によって、溶液の目的とするpHとする。
【0100】
A)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を1.8mlのZnCl2溶液(上記2.1B(i)を参照)と混合して1%組成物を調製する。
B)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を0.9mlのZnCl2溶液(上記2.1B(i)を参照)と混合して2%組成物を調製する。
C)50mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(v)を参照)を0.40mlのZnCl2溶液(上記2.1B(i)を参照)と混合して10%組成物を調製する。
【0101】
希釈NaOH溶液の必要量(全賦形剤容量の10%)を上記溶液へ加えて、標的濃度及びpHそれぞれとする。例えば:
1%組成物へは:適正濃度のNaOH溶液の0.2mlを加え、
2%組成物へは:適正濃度のNaOH溶液の0.1mlを加え、
10%組成物へは:適正濃度のNaOH溶液の0.05mlを加える。
【0102】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、下記1%、2%、及び10%組成物以外の組成物とすることができる。
【0103】
2.4;1〜10%のペプチド及びZnCl2を含む、pH調整なしの液体組成物の調製:
約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む液体配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量し、ZnCl2ストック溶液(pH3)と混合して、1%、2%、10%までのペプチドの標的濃度とした。混合に続き、組成物をろ過滅菌して、使用まで保存する。
【0104】
2.5;1〜10%ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整有りの液体組成物の調製:
約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む液体配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量し、全賦形剤容量の80%でZnCl2ストック溶液(pH3)と完全に混合した。この亜鉛溶液は、ZnCl2でもZnAc2・2H2Oでもよい。希釈NaOH溶液の添加によって、溶液の目的とするpHとする。この方法を使用して、調製物:C5〜C13を調製した。
【0105】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、本明細書に記載する1%、2%、及び10%以外の組成物とすることができる。
【0106】
2.6;25%ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整なしの半固体/ゲル組成物の調製:
約25%のペプチドを含む半固体又はゲルの配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量して、全賦形剤容量の66.66%でZnCl2ストック溶液(pH2)と完全に混合した。この亜鉛溶液は、ZnCl2でもZnAc2・2H2Oでもよい。この方法を使用して、調製物:C1及びC2を調製した。
【0107】
より具体的には、この半固体又はゲル組成物は、「プッシュ−プル」混合法を使用して調製した:
a)所望量のペプチドを、特殊な双方向手動バルブ「HV」(内径=0.5mm)を予め取り付けた使い捨てシリンジ「S1」の筒へ秤量して、シリンジルアーホール(Luer hole)の内側に管(tubing)を入れた;
b)シリンジプランジャーをステンレススチールロッド「SR」で留めた;
c)「S1」中の「HV」を真空源へ連結して、「HV」を開いた。10分後、HVを閉じた;
d)第二の使い捨てシリンジ「S2」の筒へ亜鉛溶液を正確に秤量した;
e)次いで、「S2」を「HV」の開放部分へ連結した;
f)「HV」を開いて、ペプチド粉末を含有する筒「S1」へ真空によって溶媒を引き入れた;
g)「HV」を閉じて、溶媒シリンジ「S2」を外し、それにより「S1」中のペプチド粉末を水和させた;
h)「SR」を外して、シリンジプランジャーをゆっくり解放した;
i)「HV」を開けずにシリンジプランジャーを動かし(押して引く)、粉末の塊が溶媒に完全に浸るようにする;
j)双方向ステンレスコネクタ「SC」(内径=1.0mm)を、管がシリンジルアーホールの内側に入ったシリンジ「S2」に入れて、そのプランジャーを先端まで押した;
k)「S1」中の「HV」を開いて真空を換気しててから、「HV」を外した。シリンジプランジャーを動かして、シリンジ筒中の空気を最少化した;並びに
l)「S1」及び「S2」を「SC」により連結して、組成物を、「SC」を通して「S1」から「S2」へ混練した。
【0108】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、本明細書に記載する25%以外の組成物とすることができる。
【0109】
2.7;25%ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整有りの半固体/ゲル組成物の調製:
約25%のペプチドを含む半固体又はゲルの配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量して、全賦形剤容量の66.66%でZnCl2ストック溶液(pH2)と完全に混合した。この亜鉛溶液は、ZnCl2でもZnAc2・2H2Oでもよい。希釈NaOH溶液の添加によって、溶液の目的とするpHとする。この実施例では、該粉末へ加える液体の全容量を亜鉛溶液とNaOH溶液の間で分割しなければならない。従って、亜鉛溶液の濃度を調整して、必要とされる亜鉛溶液の全容量を、ペプチド粉末へ加える全液体容量の50%へ減少させた(工程d)。ペプチド粉末へ加える全液体容量の残りの50%は、下記に詳述するように、NaOH溶液として加えた。この方法を使用して、調製物:C3及びC4を調製した。
【0110】
このpH調整した半固体又はゲル組成物は、「プッシュ−プル」混合法を使用して調製した:
a)所望量のペプチドを、特殊な双方向手動バルブ「HV」(内径=0.5mm)を予め取り付けた使い捨てシリンジ「S1」の筒へ秤量して、シリンジルアーホールの内側に管を入れた;
b)シリンジプランジャーをステンレススチールロッド「SR」で留めた;
c)「S1」中の「HV」を真空源へ連結して、「HV」を開いた。10分後、HVを閉じた;
d)第二の使い捨てシリンジ「S2」の筒へ亜鉛溶液を正確に秤量した;
e)次いで、「S2」を「HV」の開放部分へ連結した;
f)「HV」を開いて、ペプチド粉末を含有する筒「S1」へ真空によって溶媒を引き入れた;
g)「HV」を閉じて、溶媒シリンジ「S2」を外し、それにより「S1」中のペプチド粉末を水和させた;
h)「SR」を外して、シリンジプランジャーをゆっくり解放した;
i)「HV」を開けずにシリンジプランジャーを動かし(押して引く)、粉末の塊が溶媒に完全に浸るようにする;
j)双方向ステンレスコネクタ「SC」(内径=1.0mm)を、管がシリンジルアーホールの内側に入ったシリンジ「S2」に入れて、そのプランジャーを先端まで押した;
k)「S1」中の「HV」を開いて真空を換気してから、「HV」を外した。シリンジプランジャーを動かして、シリンジ筒中の空気を最少化した;
l)「S1」及び「S2」を「SC」により連結して、組成物を、「SC」を通して「S1」から「S2」へ混練した;
m)ホモジェナイゼーションの後で、混合した生成物のアリコートを取り出して、ペプチドの濃度を定量した;
n)残りの中間バルク生成物を正確に秤量して、目的とするpHに達するために必要とされるNaOH溶液の量を計算した;
o)第三の使い捨てシリンジ「S3」へNaOH溶液を正確に秤量した;及び
p)シリンジプランジャーをゆっくり圧縮して、シリンジチャンバ中の空気を最少化した。両方のシリンジを「SC」により連結して、組成物を、「SC」を通して練り込んだ。
【0111】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、本明細書に記載する25%以外の組成物とすることができる。
【0112】
【表1】
【0113】
3.0.;GLP−1受容体アフィニティーの定量:
本発明を実施するのに有用な化合物について、以下の手順を使用して、GLP−1受容体へ結合するその能力を試験することができる。
【0114】
細胞培養:
GLP−1受容体を発現しているRIN 5Fラットインスリノーマ細胞(ATCC−#CRL−2058,American Type Culture Collection,バージニア州マナッサス)を、10%胎仔ウシ血清を含有するダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)内で培養して、5% CO2/95%空気の加湿雰囲気中に約37℃で維持した。
【0115】
放射リガンド結合:
商品名Brinkman Polytron(ニューヨーク州ウェストベリー)(設定6、15秒)により、20mlの氷冷50mM Tris−HClにおけるRIN細胞のホモジェナイゼーションによって、放射リガンド結合試験用の膜を調製した。このホモジェネートを遠心分離(39,000g/10分)によって2回洗浄して、最終ペレットを、2.5mM MgCl2,0.1mg/ml商品名バシトラシン(シグマケミカル社、ミズーリ州セントルイス)、及び0.1% BSAを含有する50mM Tris−HClに再懸濁させた。分析のために、0.05mlの非標識競合試験ペプチドを含めて、及び含めずに、アリコート(0.4ml)を0.05nM(125I)GLP−1(7−36)(約2200Ci/mmol、New England Nuclear社,マサチューセッツ州ボストン)とともにインキュベートした。100分のインキュベーション(25℃)の後、結合した(125I)GLP−1(7−36)を、0.5%ポリエチレンイミンに浸しておいた商品名GF/Cフィルター(Brandel社,メリーランド州ゲイサースブルグ)を通す急速ろ過によって、遊離型から分離した。次いで、このフィルターを、氷冷50mM Tris−HClの5mlアリコートで3回洗浄して、フィルター上に捕捉された結合放射活性をγ線スペクトロメトリー(Wallac LKB社,メリーランド州ゲイサースブルグ)によって計数した。特異的結合は、「結合した(125I)GLP−1(7−36)全量」から「1000nM GLP−1(7−36)(Bachem社,カリフォルニア州トーレンス)の存在下に結合した(125I)GLP−1(7−36)量」を引いたものとして定義した。
【0116】
4.;pHに対する溶解度の定量:
4.1.リン酸緩衝食塩水(PBS)でのpHに対する化合物溶解度の定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、PBS中のその溶解度を異なるpH及び温度で測定することができる。
1パケットのプレミックス粉末(シグマ社製、製品番号:P−3813)を1リットルの脱イオン水に溶かしてストックPBS緩衝化溶液を作製して、138mM NaCl、2.7mM KClを含み、pH7.4である10mMリン酸緩衝食塩水を得た。このストック溶液のpHをリン酸及び/又は水酸化ナトリウムで調整することによって、異なるpH値のPBS緩衝液を作製した。
【0117】
試験する化合物の2mg試料、例えば、実施例1の化合物の2mgをガラスバイアルへ秤量した。各バイアルへある一定のpHでPBS緩衝液の50μlアリコートを加えた。この溶液を激しく撹拌して、澄明になるまで、必要ならば音波処理した。試験する各pHについて、2mgの化合物を溶かすのに必要とした緩衝液の全容量記録して、溶解度を計算した。
室温(20〜25℃)で澄明であるペプチド溶液を冷蔵庫(4℃)に一晩入れてから、該ペプチドの4℃での溶解度を測定した。
【0118】
4.2.生理食塩水におけるpHに対する化合物溶解度の定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、生理食塩水中のその溶解度を、異なるpH値及び温度で定量することができる。
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによってストック生理食塩水溶液を調製する。このストック溶液のpHを、HCl及び/又はNaOHで調整することによって、異なるpH値の生理食塩水溶液を作製する。
【0119】
試験する化合物の2mg試料、例えば、実施例1の化合物の2mgをガラスバイアル内へ秤量する。各バイアルへある一定のpHで生理食塩水溶液の50μlアリコートを加える。このバイアルを激しく撹拌して、澄明になるまで、必要ならば音波処理する。試験する各pHについて、2mgの化合物を溶かすのに必要とする緩衝液の全容量を記録して、溶解度を計算する。
室温(20〜25℃)で澄明溶液を冷蔵庫(4℃)に一晩入れてから、4℃での溶解度を測定する。
【0120】
4.3.生理食塩水中の化合物溶解度のpH7.0での定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、pH=7を有する生理食塩水中、室温での溶解度を定量することができる。
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによって生理食塩水溶液を調製する。試験する化合物、例えば実施例1の化合物、の2mg試料をガラスバイアル内へ秤量して、激しい撹拌と音波処理を伴いながら、生理食塩水の1mlアリコートを、澄明になるまで加える。2mgのペプチドを溶かすのに必要とする生理食塩水の全容量を記録して、室温での溶解度を計算する。
【0121】
4.4.生理食塩水中の化合物溶解度の様々なpHでの定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、様々なpH値を有する生理食塩水中の、室温での溶解度を定量することができる。
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによってストック生理食塩水溶液を調製する。このストック生理食塩水溶液のアリコートをHCl及びNaOHで処理することによって、様々なpH値を有する生理食塩水溶液を入手する。
試験する化合物、例えば実施例1の化合物の、2mg試料をガラスバイアル内へ秤量する。生理食塩水緩衝液の50μlのアリコートを、ある一定のpHで加える。この溶液を、澄明になるまで激しく撹拌して音波処理する。2mgのペプチドを溶かすのに使用する緩衝液の全容量を記録して、溶解度を計算する。
【0122】
5.亜鉛濃度に対する化合物の水溶解度の定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、pH7の水中のその溶解度を異なる亜鉛濃度で定量することができる。
ZnCl2を脱イオン水に100mg/mlの濃度へ溶かして、HClを使用してpHを2.7へ調整することによって、ストック亜鉛溶液を調製した。このストック溶液の滴正な希釈液を作製することによって、様々なZnCl2濃度を有する溶液(「Zn試験溶液」)を調製した。
【0123】
試験する化合物の1mg、例えば、実施例1の化合物の1mgを250μlの各Zn試験溶液に溶かして、4mg/mlの化合物を有する溶液を得る。次いで、0.2N NaOHを使用して、白色沈殿の形成が観察されるまでこの溶液のpHを調整した。この沈殿溶液を遠心分離して、HPLCを使用して母液を分析した。試験化合物ピークのUV吸収領域を測定して、試験化合物の母液中の濃度を較正曲線との比較により定量した。
本発明を実施するために使用できる化合物の代表例として、実施例1の化合物について直前に記載した分析方法で試験して、以下の結果を入手した(水性、pH7.0、室温):
【0124】
【表2】
【0125】
6.IEFゲルを使用する、等電点(pI)の決定:
Invitrogen社の商品名Novex IEF pH3−10ゲルを使用して、GLP−1ペプチド、例えば実施例1の化合物のpIを測定した。試験するペプチジル化合物を0.5mg/mlの濃度まで水に溶解した。それぞれの化合物について、得られた溶液の5μlを5μlのNovex(登録商標)Sample Buffer 2X(20mMアルギニン遊離基、20mMリジン遊離基、及び15%グリセロールを含む)と混合して、生じる10μl試料溶液をタンパク質標準試料とともにこのゲル上へロードした。
【0126】
ランニング緩衝液もInvitrogen社より入手して、製造業者の製品説明書に従って、概ね以下のようにゲルを泳動した:100V一定1時間、続いて200V一定1時間、続いて500V一定30分間。
次いで、このゲルを、3.5%スルホサリチル酸を含有する12% TCA中に30分間固定してから、Novex(登録商標)Colloidal Blue Kit用製品説明書に従って、コロイド状クマッシーブルーで2時間染色してから、水中で一晩脱染色した。
【0127】
ゲルを走査して、プログラム:商品名Fragment Analysis 1.2によって分析した。10.7、9.5、8.3、8.0、7.8、7.4、6.9、6.0、5.3、5.2、4.5、4.2及び3.5のpI値を有する標準化合物のpIと比較して、未知ペプチドのpIを計算した。
実施例1の化合物の測定pIは、7.60であった。
【0128】
7.ラットでのin vivoアッセイ:
本発明の組成物について、以下のアッセイを使用して試験して、効果をin vivoで促進及び強化する能力を判定することができる。
【0129】
7.1.実験手順:
実験の前日、約300〜350gの重量を有する成体雄Sprague−Dawleyラット(Taconic社,ニューヨーク州ジャーマンタウン)にクロロヒドレート麻酔下で右心房頚静脈カニューレを移植した。次いで、このラットを18時間絶食させた後で、適正な試験組成物又はビヒクル対照を時点0で注射した。ラットは、実験全体を通して絶食状態であった。
100mg/ml ZnCl2の溶液のpH2.7を有するHCl水溶液での希釈によって、0.5mg/ml ZnCl2溶液を調製した。この溶液の250μlに式(I)の化合物((Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2)の1mgを溶かして、該化合物4mg/ml及びZn0.5mg/mlをpH4で有する澄明溶液を得た。
【0130】
時点0で、(a)(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2)の直前の(immediately forgoing)溶液又はビヒクル対照のいずれかをラットに皮下(sc)注射した。両方の場合で注射容量はごく少なく(4〜6μL)、被検体へ投与したGLP−1化合物の用量は、75μg/kgであった。sc注射後の適正な時間に、500μlの血液試料を静脈内(iv)カニューレより吸引して、ラットにivグルコースチャレンジを与えて、亢進したインスリン分泌の存在を試験した。グルコースチャレンジの時間は、化合物注射後0.25、1、6、12、及び24時間であった。最初の血液試料を吸引採取した後で、グルコース(1g/kg)をiv注射して、500μlヘパリン添加生理食塩水(10U/ml)を流した(flushed in)。その後、グルコース注射後2.5、5、10、及び20分で500μlの血液試料を吸引採取した。これらのいずれの後も、カニューレを介した500μlヘパリン添加生理食塩水(10U/ml)のiv注射を直ぐに行った。血液試料は遠心分離させ、各試料より血漿を採取して、インスリン含量をアッセイするまで、その試料を−20℃に保存した。ラットインスリン酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(American Laboratory Products社、ニューハンプシャー州ウィンダム)を使用して、各試料中のインスリンの量を定量した。
【0131】
7.1.1.結果:
グルコース注射によって誘導される、持続されたインスリン亢進活性が本実験の全24時間にわたり観測された。
【0132】
8.イヌでのin vivoアッセイ:
当業者が、活性化合物のin vivo延長放出を促進する組成物の能力を定量可能とする、多くのin vivoアッセイが当分野で公知である。
【0133】
8.1.;1%ペプチド組成物:
例えば、1%(w/w)の式(I)の化合物をZnCl2の緩衝化溶液に含んでなる(ペプチド:Zn比=1.5:1.0)水性試験配合物を調製した。
全6頭の雄ビーグル犬(42〜78月齢で、体重14〜21kg)を、水及び1日1回の食餌(約400gの乾燥標準食(SAFE 125)への自由摂取で維持した。これらイヌは、試験組成物の投与前18時間絶食させた。
試験組成物は、皮下経路によって、肩甲骨間の領域付近で投与した。投与の容量(各動物につき約20μl)は、0.33〜12mmの0.3mlテルモ社シリンジ(BS=30M2913)によって作製した。このようにして、約0.2mgペプチドの理論用量を達成した。
【0134】
血液試料を周期的に、投与後約0、8、15、30及び45分、1、2、4、8及び12時間、並びに1、2、3、4、5及び6日の時点で採取した。サンプリング後から遠心分離までの間、血液を速やかに冷却し、血漿をデカントして、継続中のアッセイまでは速やかに凍結させた。ペプチド血漿濃度の定量は、オフライン固相抽出の後、LC−MS/MSを備えたオンライン相抽出により行い、得られたデータは、商品名Analyst v1.2ソフトウェアによって管理処理した。
上記組成物は、活性ペプチドの少なくとも2日間の持続放出を示した。
【0135】
8.2.;1%(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2溶液:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の組成物について、主題のペプチドを延長された期間の間放出するその能力を検証した。以下の4種の組成物のそれぞれで、ペプチドの濃度は、約1%(重量/重量)であり、ペプチドの亜鉛に対する比は約1.5:1であり、投与したペプチドの用量は、約1mgであった。
溶液8.2.A:(i)90% ZnCl2(0.298mg/ml)及び(ii)10% NaOH(0.975mg/ml)を含有する溶液中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.2.B:ZnCl2の溶液(0.286mg/ml)中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.2.C:溶液8.2.Bに実質的に類似して、AcOH/AcO-を使用して緩衝化されている;
溶液8.2.D:溶液8.2.Aに実質的に類似。
【0136】
これらの組成物は、図1に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0137】
8.3.;1%(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2溶液:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。以下の組成物では、ペプチドの濃度は、約2%(重量/重量)であり、ペプチドの亜鉛に対する比は約1.5:1であり、投与したペプチドの用量は、約1mgであった。
溶液8.3:(i)80% ZnCl2(0.695mg/ml)及び(ii)20% NaOH(1.75mg/ml)を含有する溶液中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
【0138】
この組成物は、図5に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0139】
8.4.;10%ペプチド溶液:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。以下の4種の組成物のそれぞれで、ペプチドの濃度は、約10%(重量/重量)であり、ペプチドの亜鉛に対する比は約1.5:1であり、投与したペプチドの用量は、約15mgであった。
溶液8.4.A:(i)90% ZnCl2(3.367mg/ml)及び(ii)10% NaOH(5.01mg/ml)を含有する溶液中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.4.B:ZnCl2の溶液(2.993mg/ml)中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.4.C:溶液8.4.Bに実質的に類似して、AcOH/AcO-を使用して緩衝化されている;
溶液8.4.D:溶液8.4.Aに実質的に類似。
【0140】
これらの組成物は、図2に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0141】
8.5.;半固体組成物:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の半固体組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。組成物8.5.Aでは、ペプチドの濃度は約5%であり、組成物8.5.B、8.4.C、及び8.5.Dでは、ペプチドの濃度は、約10%(重量/重量)であった。ペプチドの亜鉛に対する比は、組成物8.5.A、8.5.B、及び8.5.Cで約5.4:1であり、組成物8.5.Dでは、その比は約4.0:1であった。4種の組成物すべてで、投与したペプチドの用量は、約1mgであった。
【0142】
組成物8.5.A:WFI中のZnCl2(0.40mg/ml)を含有する半固体組成物中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
組成物8.5.B:組成物8.5.Aに実質的に類似するが、ZnCl2濃度を上方へ調整して、ペプチド:Zn比を約5.4:1に維持した。
組成物8.5.C:(i)50% ZnCl2(1.69mg/ml)及び(ii)50% NaOH(1mg/ml)を含有する半固形物中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
組成物8.5.D:(i)50% ZnCl2(2.28mg/ml)及び(ii)50% NaOH(1mg/ml)を含有する半固形物中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2。
【0143】
これらの組成物は、図3に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0144】
8.6.;半固体組成物:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の半固体組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。この組成物は、5.22mg/ml ZnCl2溶液をpH=2.0で使用して配合した。充分なペプチドを提供して、ペプチドの亜鉛に対する比約4:1を有する25%ペプチド半固体組成物を得た。この組成物のpHを、10mg/ml NaOHを使用して本明細書記載のとおり調整した。投与したペプチドの用量は、約15mgであった。
【0145】
組成物8.6は、図6に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0146】
8.7.;半固体組成物:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の半固体組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。この組成物は、8.5mg/ml ZnCl2溶液をpH=2.0で使用して配合した。充分なペプチドを提供して、ペプチドの亜鉛に対する比約1.5:1を有する23%ペプチド半固体組成物を得た。上記2.6節に詳述した方法に従って、この組成物を配合した。投与したペプチドの用量は、約15mg(組成物の約65μlに相当する)であった。
【0147】
組成物8.6は、図7に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0148】
開示した配合物の様々な置換物(permutations)を用いた更なるアッセイを同様にin vivoアッセイへ適用して、本発明の組成物が式(I)の化合物に有用な医薬送達プラットフォームを提供することが確かめられ。本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド、ZnCl2の量及びpHを変動させて、本明細書に記載の本発明の組成物を調製することができる。
【0149】
実施例9:
1.:10%ペプチド溶液中の酢酸塩含量によるPKプロファイル調節
本実施例は、雄ビーグル犬における(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の薬物動態試験を開示し、それは10%(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2及び塩化亜鉛を含有する2種の即時調合組成物[(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2:Zn=1.5:1]の15mg/イヌの用量レベルでの単回皮下投与の後に行われた。
このin vivoアッセイを行う方法は、パラグラフ8.1で開示したものと同じである。
【0150】
本実施例は、医薬組成物中の酢酸塩含量によるPKプロファイル調節、従って、医薬組成物中の[酢酸塩/ペプチド]比のpHに対する影響を明らかにする。
このpH調節は、酢酸塩含量の調節により制御されて、酢酸塩含量の減少は、pHの増加効果を示す。
酢酸塩の変動は又、Cmaxに対する効果を示す。一般に、酢酸塩含量の減少は、Cmax値を減少させる。
酢酸塩含量の増加は、溶解性と物理安定性の改善を示す。
【0151】
選択した配合物によれば、酢酸塩/ペプチド比の調節による溶解性又は安定性に対する改善は、ペプチド/Zn比の例えばCmaxに対する調節によって補償される。このことは、安定性、溶解性、pH又はCmaxを調整する3つの可能な変数のシステムとして理解できる。
【0152】
本実施例では、略語「SD」は、標準偏差を意味する。「AUC」は、血漿濃度−時間曲線下のアルテミシニン(Artemisinin)面積を意味する。
略語「MRT」の意味は、平均滞留時間(MRT)であり、ピーク薬物濃度の時間であるtmaxとMRTを比較してバイオアベイラビリティ率を推定するための変数である。時点0より最終サンプリング時間までのデータを使用して、MRTを計算した。
【0153】
表3には、異なる[酢酸塩/ペプチド]比を有する10%ペプチド組成物バッチとビーグル犬における皮下投与の結果をまとめてある。血中薬物濃度のピーク値、(Cmax)は、[3.7:1]の[酢酸塩/ペプチド]モル比では8.10ng/ml(SD=1.80ng/ml)であり、一方、より低い比[3.2:1]を有するバッチは、5.65ng/ml(SD=2.61ng/ml)のCmax値をもたらした。
【0154】
【表3】
【0155】
10.;GLP−1ペプチド塩/二価金属配合物:
10.1.方法:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2 1mg/mL水の溶液とPBS溶液を調製して、pHを7.0へ調整した。CaCl2、CuCl2、MgCl2、及びZnCl2の10mg/mLストック水溶液を調製した.CaCl2、MgCl2、及びZnCl2溶液のpHは、7.0へ調整した。CuCl2溶液のpHは、Cuが析出したので、塩基性にすることができなかった。従って、pH4.4のCuCl2溶液を使用した。
【0156】
200μLの(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2(1mg/mL)溶液へ4μLの金属イオン水溶液又はPBS溶液を加えて、200μg/mLの最終金属イオン濃度とした。得られた溶液を混合して、沈殿を確認した。沈殿が生成したならば、懸濁液を遠心分離させた。上清中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2濃度をHPLCによって定量した。
【0157】
10.2.結果:
表4.二価金属イオンの存在下での(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の溶解度
【0158】
【表4】
【0159】
10.3.;(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/二価金属(pH5.5)澄明溶液配合物の薬物動態試験:
以下の手順を使用することによって、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の3種の異なる配合物を調製した。
(1)CuCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩
(2)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩
(3)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩
【0160】
GLP−1類似体のTFA塩(このTFA塩は、分取用HPLCを使用してTFA含有緩衝溶液で溶出させるペプチドの精製により生じる)は、該ペプチドを少量の0.25N酢酸水溶液に溶解させることによって、酢酸塩等の別の塩へ変換することができる。得られた溶液をsemi-prepHPLCカラム(Zorbax社,300SB,C−8)へ適用する。このカラムを(1)0.1N酢酸アンモニウム水溶液で0.5時間、(2)0.25N酢酸水溶液で0.5時間、そして(3)4ml/分の流速の線形勾配(30分にわたり20%〜100%の溶液B)(溶液Aは、0.25N酢酸水溶液であり;溶液Bは、アセトニトリル/水(80:20)中0.25N酢酸である)で溶出させる。該ペプチドを含有する分画を採取して、凍結乾燥させる。
【0161】
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩は、凍結乾燥法によって製造した。20mgの(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩を4mLの20mM HCl水溶液に溶かして、室温で10分間インキュベートした。この試料を凍結させて、一晩凍結乾燥させた。凍結乾燥を更に2回実施して、最終生成物の塩化物含量を定量した。定量され塩化物含量は、5.38%であった。
【0162】
(1)CuCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl(5.3mg;ペプチド含量は95%)を50μLの20mM CuCl2水溶液に溶かした。pHを約2μLの1N NaOHで約5.5へ調整した。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/CuCl2のモル比は、1.5:1であった。ペプチド濃度は、水中10%(w/w)(30mM)で、約5.5のpHであった。
【0163】
(2)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl(5.3mg;ペプチド含量は95%である)を50μLの20mM ZnCl2水溶液に溶かした。pHを約2μLの1N NaOHで約5.5へ調整した。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は、1.5:1であった。ペプチド濃度は、水中10%(w/w)(30mM)で、約5.5のpHであった。
【0164】
(3)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩(5.5mg;ペプチド含量は92%である)を50μLの20mM ZnCl2水溶液に溶かした。得られた溶液を一晩凍結乾燥させて、50μLの水に再び溶かした。pHを約1μLの1N NaOHで約5.5へ調整した。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は、1.5:1であった。ペプチド濃度は、水中10%(w/w)(30mM)で、約5.5のpHであった。
【0165】
10.4.投薬と血液試料採取:
ラットに上記3種の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2配合物を0.3mg/ラット(10%溶液の3μL)で皮下投与した。5、10、15、30分、1、2、4、8時間、及び1、2、3、4、7、10日目に血液試料を採取した。この血液から遠心分離により血漿を採取して、−80℃で保存した。注射部位での組織も採取し、5×メタノール中でホモジェナイズして、−80℃で保存した。
2匹のラットを5、10、15、30分と1、2、4、8時間のデータ点のために使用した。1匹のラットを1、2、3、4、7、10日のデータ点のために使用した。
【0166】
10.5.;LC−MS/MS試料調製:
血漿(200μL)を10μLのギ酸で酸性化して、600μLのアセトニトリルで沈殿させた。遠心分離により上清を採取して、真空で濃縮乾固させた。残渣を150μLの30%アセトニトリル水溶液に溶かして、遠心分離した。50μLの上清をLC−MS/MS分析用に注入した。
組織メタノール抽出物(10μL)を1mLの30%アセトニトリル水溶液へ希釈して、50μLをLC−MS/MS分析用に注入した。
【0167】
10.6.;LC−MS/MS分析:
LC−MS/MS分析は、商品名Turboイオンスプレープローブを取り付けたAPI4000質量分析計システムで行った。分子イオン検出のMRMモードを、668.9及び136.1のイオン対で使用した。
HPLC分離は、0.30mL/分の流速で10分間、10% B〜90% Bへ勾配をかけてLuna C8(2) 2×30mm 3μカラムで実施した。緩衝液Aは、1%ギ酸水溶液であり、緩衝液Bは、1%ギ酸アセトニトリル溶液である。
LOQは、0.5ng/mLであった。
【0168】
10.7.結果と要約:
ペプチドの血漿濃度は、その標準較正プロットを用いて計算した。0.06mg/mLの(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2(5mLメタノール抽出物中0.3mg/ラット)を100%として使用して、注射部位に残った割合を計算した。
【0169】
【表5】
【0170】
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2のHCl塩配合物の薬物動態プロファイルの全体経時変化プロットを図8に示す。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2のHCl塩配合物の薬物動態プロファイルの初期経時変化プロットを図9に示す。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の酢酸塩配合物の薬物動態プロファイルの全体経時変化プロットを図10に示す。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の酢酸塩配合物の薬物動態プロファイルの初期経時変化プロットを図11に示す。
【0171】
【表6】
【0172】
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の注射部位での組織蓄積プロファイルを図12に更に示す。
【0173】
【表7】
【0174】
上記結果は、GLP−1類似体塩型の、特に二価金属塩との組み合わせが、初期血漿濃度が抑えられ、即ち、望まれない副作用を抑制又は消失させる可能性がある、許容される持続放出配合物を提供することを示す。
上記データは、GLP−1類似体の強酸塩、例えばHCl塩が、初期血漿濃度において更なる低下を示すことを示す。本発明は下記理論に制限されるものではないが、GLP−1類似体のHCl塩の初期血漿濃度における優れた低下は、in vivoでの中和プロセスに関連すると考えられている。上記組成物(1)及び(2)では、pH5.5で酸の100%が塩化物の形であり、遊離酸は存在しない。従って、皮下注射後に、体液はこの溶液剤をより速やかに中和して、この溶液剤を更に急速に沈殿させることができる。中和時間におけるこれらの減少は、より少なく、より顕著でない初期血漿濃度又はスパイクをもたらす。
【0175】
実施例11;10%ペプチド類似体(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2、酢酸及び塩化亜鉛を含む液体組成物の調製:
【0176】
【表8】
【0177】
WFI(又は注射用水)は、無菌水又はNaCl等の等張剤を含む無菌水を示す。
シリンジを10μlで完全充填した。実施例11.1では、バイアルは0.3mlの10%ペプチド類似体溶液を含む。実施例11.2では、シリンジは0.11mlの10%ペプチド類似体溶液を含む。実施例11.3では、シリンジは0.21mlの10%ペプチド類似体溶液を含む。ペプチド類似体の量は医薬物質の分析に基づき調整された。酢酸塩のペプチドに対する割合を3.2:1mol当量とするのに充分な、酢酸を添加した。ペプチド類似体の塩化亜鉛に対する割合を1.5:1mol当量とするのに充分な、塩化亜鉛を添加した。溶液中のペプチド類似体の重量割合を10%とするのに充分な、注入用の水を添加した。
【0178】
方法:
酢酸をWFIの約90%に添加した。
ペプチド類似体を添加した。
得られた組成物を完全に溶解するまで攪拌した。
塩化亜鉛を添加した。
WFIの必要量を添加した。
得られた組成物を完全に溶解するまで攪拌した。
溶解された溶液を、0.22μm(商品名MILLIPAK20)で2回滅菌ろ過した。
ろ過した溶液を、0.3ml/バイアル=0.310g/バイアル(密度=1.033)バイアル内、又はデッドボリューム10μlのシリンジ内に充填した。
【0179】
上記に引用した出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の追加の態様は前述の開示から明らかであり、それらは、本明細書に充分記載され、下記特許請求の範囲で特定される本発明に含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0180】
HV:双方向手動バルブ
S1、S2、S3:シリンジ
SR:ロッド
SC:双方向コネクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン様ペプチド−1のペプチド類似体及び/又はその医薬的に許容される塩を含む組成物の改良、医薬組成物、その組成物の製造方法並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド−1(7−36)アミド(GLP−1)は、グルカゴン前駆体のプレプログルカゴンの組織特異的な翻訳後プロセシングにより腸のL細胞において合成され(Varndell, J. M.ら, J. Histochem Cytochem, 1985:33:1080-6)、食事に応答して体循環中へ放出される。GLP−1の血漿濃度は、絶食レベルの約15pmol/Lから食後ピークレベルの40pmol/Lへ上昇する。血漿グルコース濃度における所定の上昇に対し、血漿インスリンの増加は、グルコースを経口で投与するとき、静脈内と比較して約3倍高いことが示されている(Kreymann, B.ら, Lancet 1987:2, 1300-4)。このインスリン放出の食事性の亢進は、インクレチン(incretin)効果として知られ、主として体液性であり、GLP−1は、ヒトにおいて最も強力な生理学的インクレチンであると考えられている。抗インスリン効果に加えて、GLP−1は、グルカゴン分泌を抑制し、胃の空洞化を遅らせ(Wettergren A.ら, Dig Dis Sci 1993:38:665-73)、末梢のグルコース処理を高める可能性がある(D'Alessio, D. A.ら, J. Clin Invest 1994:93:2293-6)。
【0003】
1994年に、GLP−1の単回皮下(s/c)投与によってインスリン非依存型真性糖尿病(NIDDM)の患者の食後血糖値が完全に正常化され得るという観察に従い、GLP−1の治療の潜在的能力が示唆された(Gutniak, M. K.ら, 糖尿病 Care 1994:17:1039-44)。この効果は、インスリン放出の増加とグルカゴン分泌の低下の両方により仲介されると考えられた。更に、GLP−1の静脈内注入は、NIDDMの患者において食後の胃空洞化を遅らせることが示された(Williams, B.ら, J. Clin Endo Metab 1996:81:327-32)。スルホニル尿素と異なり、GLP−1の抗インスリン作用は、血漿グルコース濃度に依存する(Holz, G. G. 4thら, Nature 1993: 361: 362-5)。従って、低い血漿グルコース濃度ではGLP−1仲介性インスリン放出がないために、重篤な低血糖症に対して保護される。この作用の組合せは、NIDDMを治療するために今日使用されている他の薬剤に優る独自の潜在的な治療上の利点をGLP−1に与える。
【0004】
数多くの研究により、GLP−1を健常被検体へ与えると、GLP−1はインスリン及びグルカゴンの濃度だけでなく、血糖値にも強力に影響を及ぼし(Orskov, C, Diabetologia 35:701-711, 1992; Holst, J.J.ら,「糖尿病管理におけるGLP-1の可能性、グルカゴン III」, Handbook of Experimental Pharmacology, Lefevbre PJ, Ed. Berlin, Springer Verlag, 1996, p. 311-326)、この効果がグルコース依存性である(Kreymann, B.ら, Lancet ii: 1300-1304, 1987; Weir, G.C.ら, Diabetes 38:338-342, 1989)ことが示された。更に、これは、糖尿病の患者にも有効であり(Gutniak, M., N. Engl J Med 226:1316-1322, 1992; Nathan, D.M.ら, Diabetes Care 15:270-276, 1992)、II型糖尿病の被検体の血糖値を正常化し(Nauck, M.A.ら, Diabetologia 36:741-744, 1993)、I型患者の血糖コントロールを改善し(Creutzfeldt, W.O.ら, Diabetes Care 19:580-586, 1996)、とりわけ、インスリン感受性を高める/インスリン抵抗性を抑えるその能力を実証している。
【0005】
GLP−1とそのアゴニストは、インスリン非依存型糖尿病を発症するリスクのある被検体における使用(WO00/07617を参照)、並びに妊娠性糖尿病の治療(米国特許公開公報番号:20040266670)のために挙げられている。
【0006】
上記に加えて、哺乳動物(例えば、ヒト)においてGLP−1とそのアゴニストが提示されている数多くの臨床使用があり、例えば、限定されるものではないが下記が挙げられる:学習を向上させること、神経保護を高めること、及び/又は中枢神経系の疾患又は障害(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、卒中、ADD、及び神経精神性の症候群)の症状を、例えば、神経組織発生の調節を介して緩和すること(米国特許公開公報番号:20050009742及び20020115605);肝臓の幹/始原細胞を機能的な膵臓細胞へ変換すること(WO03/033697);β細胞の悪化(米国特許公開公報番号:20040053819及び20030220251)及びβ細胞増殖の刺激(米国特許公開公報番号:20030224983)を防ぐこと;肥満を治療すること(米国特許公開公報番号:20040018975;WO98/19698);食欲を抑制して満腹感を誘発すること(米国特許公開公報番号:20030232754);過敏性腸症候群を治療すること(WO99/64060);心筋梗塞(米国特許公開公報番号:20040162241、WO98/08531)及び卒中(WO00/16797を参照)に関連した罹病率及び/又は死亡率を低下させること;Q波心筋梗塞の非存在を特徴とする急性冠症候群を治療すること(米国特許公開公報番号:20040002454);術後の異化変化を弱めること(米国特許第6,006,753号);冬眠心筋又は糖尿病性心筋症を治療すること(米国特許公開公報番号:20050096276);ノルエピネフリンの血漿レベルを抑制すること(米国特許公開公報番号:20050096276);尿ナトリウム排出を増加させ、尿カリウム濃度を減少させること(米国特許公開公報番号:20050037958);有毒な血液量過多症に関連した状態又は障害(例えば、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、及び高血圧症)を治療すること(米国特許公開公報番号:20050037958);変力応答を誘発して、心収縮を増加させること(米国特許公開公報番号:20050037958);多房性卵巣症候群を治療すること(米国特許公開公報番号:20040266678及び20040029784);呼吸窮迫を治療すること(米国特許公開公報番号:20040235726);非消化管経路を介した、即ち、静脈内、皮下、筋肉内、腹膜、又は他の注射又は注入を介した栄養摂取を改善すること(米国特許公開公報番号:20040209814);腎障害を治療すること(米国特許公開公報番号:20040209803);左心室収縮機能不全(例えば、異常な左心室駆出率を伴う)を治療すること(米国特許公開公報番号:20040097411);例えば、下痢、術後ダンピング症候群、及び過敏性腸管症候群等の胃腸障害の治療又は予防のために、そして内視鏡手技の前投薬として十二指腸洞の運動を阻害すること(米国特許公開公報番号:20030216292);重症疾患多発ニューロパシー(CIPN)及び全身性炎症反応症候群(SIRS)を治療すること(米国特許公開公報番号:20030199445);トリグリセリドレベルを調節して、異常脂質血症を治療すること(米国特許公開公報番号:20030036504及び20030143183);虚血後の血流の再灌流によって引き起こされる臓器組織損傷を治療すること(米国特許公開公報番号:20020147131);冠動脈性心疾患危険因子(CHDRF)症候群を治療すること(米国特許公開公報番号:20020045636)、その他。
【0007】
しかしながら、GLP−1は、代謝的に不安定であり、in vivoでは1〜2分の血漿半減期(t1/2)しか有さない。外因的に投与したGLP−1も又、速やかに分解される(Deacon, C.F.ら, Diabetes, 44:1126-1131, 1995)。この代謝不安定性により、天然GLP−1の治療ポテンシャルは制限される。
【0008】
GLP−1とその類似体の治療ポテンシャルを配合物における改善を通して改善するために、多くの試みがなされてきた。例えば、国際特許公開公報番号WO01/57084は、結晶と医薬的に許容されるキャリアを含んでなる、注射可能な医薬品等の医薬組成物の調製に有用であるとされるGLP−1類似体の結晶を調製する方法を記載する。GLP−1(7−37)OHの不均質な微結晶性クラスターを生理食塩水溶液から成長させて、亜鉛及び/又はm−クレゾールでの結晶浸漬処理の後で試験した(Kim及びHaren, Pharma. Res. Vol. 12 No. 11 (1995))。針状結晶と非結晶性の沈殿を含有するGLP(7−36)NH2の粗結晶懸濁液が亜鉛又はプロタミンを含有するリン酸溶液より調製された(Pridalら, International Journal of Pharmaceutics Vol. 136, pp. 53-59 (1996))。欧州特許公開公報番号EP0619322A2は、塩類と低分子量ポリエチレングリコール(PEG)のある種の組合せを含むpH7〜8.5の緩衝液において上記タンパク質の溶液を混合することによる、GLP−1(7−37)OHの微結晶型の調製を記載する。米国特許第6,566,490号は、精製ペプチド生成物の生成に役立つ、GLP−1の種となる微結晶について特に記載している。米国特許第6,555,521(US’521)号は、改善された純度を有して、延長されたin vivo活性を示す、正方晶系の平棒又は板状の形を有するGLP−1結晶を開示する。US’521号は、その結晶が、先行技術の、急速に固化し、共に凝集又は密集し、シリンジ針を詰まらせ、予測不能な投薬を概して悪化させる、結晶性クラスターや無定形の結晶性懸濁液よりも相対的に均質であり、より長い時間、懸濁状態を維持することを教示する。
【0009】
生物分解性トリブロックコポリマーのポリ[(dl−ラクチド−コグリコリド)−β−エチレングリコール−β−(−ラクチド−コグリコリド)]を、GLP−1の制御放出配合物において使用することも提案された。しかしながら、他のポリマー系と同じように、トリブロックコポリマーの製造には、複雑なプロトコールと一貫性のない微粒子形成が伴う。
【0010】
同様に、生物分解性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸−コグリコール酸)(PLGA)も、ペプチドの持続送達配合物における使用を示唆された。しかしながら、これら生物分解性ポリマーの使用は、一般に、これらのポリマーが水への溶解度が低く、水と混和不能の有機溶媒(例えば、塩化メチレン)及び/又は製造中に厳しい調製条件を必要とするので、当該技術分野では好ましくない。それらの有機溶媒及び/又は厳しい調製条件は、目的のペプチド又はタンパク質のコンホメーション変化を誘発するリスクを高めて、構造の完全性の減少と生物学的活性の低下をもたらすと考えられている(Choiら, Pharm. Research, Vol. 21, No. 5, (2004))。ポロキサマーも同様の問題があるとされている(同上)。
【0011】
上記参考文献に記載されたGLP−1組成物は、不純物を捕捉する傾向があり、及び/又は、他にも、再現可能的に製造して投与することが難しいので、GLPの医薬配合物を調製するのに理想的とは言えない。又、GLP類似体は、高い濃度で嘔吐を誘発することが知られているので、初期の血漿濃度が低くて持続的な医薬効果を提供する必要がある。(Ritzelら, Diabetologia, 38: 720-725 (1995); Gutniakら, Diabetes Care, 17(9): 1039-1044 (1994); Deaconら, Diabetes, 44: 1126-1131 (1995).)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許公開公報番号WO01/57084
【特許文献2】欧州特許公開公報番号EP0619322A2
【特許文献3】米国特許第6,566,490号
【特許文献4】米国特許第6,555,521号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kim及びHaren, Pharma. Res. Vol. 12 No. 11 (1995)
【非特許文献2】Pridalら, International Journal of Pharmaceutics Vol. 136, pp. 53-59 (1996)
【非特許文献3】Choiら, Pharm. Research, Vol. 21, No. 5, (2004)
【非特許文献4】Ritzelら, Diabetologia, 38: 720-725 (1995)
【非特許文献5】Gutniakら, Diabetes Care, 17(9): 1039-1044 (1994)
【非特許文献6】Deaconら, Diabetes, 44: 1126-1131 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、より容易にかつ安定的に製造され、より容易かつ再現可能的に患者へ投与され、低い初期血漿濃度を提供して望まれない副作用を低下又は消失させるGLP−1配合物へのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概略
本発明は、以下のパラグラフ、並びに特許請求の範囲において要約することができる。
1つの態様において、本発明は、下記を含む制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
下記式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに、
酢酸塩及び/又は酢酸。
別の態様では本発明は、上記医薬組成物を含む容器を提供する。
更に別の態様において、本発明は、下記ステップを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
A:液体、酢酸塩及び/又は酢酸、並びにペプチド類似体を組み合わせるステップ、及び
B:二価の金属及び/又は二価の金属塩を添加し溶解するステップ。
更に別の態様において、本発明は、II型糖尿病治療用の医薬組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】イヌへ約1mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。それぞれのケースでペプチドは、約1%(wt/vol)ペプチドを含み、ペプチド:Znモル比約1.5である水性亜鉛組成物として投与された。黒四角及び白四角は、pHをここに記載するとおりNaOHで調整した組成物を示す。黒三角は、pHをNaOHで調整されない組成物を示す。黒円は、AcOH/AcO−で緩衝された組成物を示す。
【図2】イヌへ約15mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。それぞれのケースでペプチドは、約10%(wt/vol)ペプチドを含み、ペプチド:Znモル比約1.5である水性亜鉛組成物として投与された。黒四角及び白四角は、pHをここに記載するとおりNaOHで調整した組成物を示す。黒三角は、pHをNaOHで調整されない組成物を示す。黒円は、AcOH/AcO−で緩衝された組成物を示す。
【図3】イヌへ約1mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。それぞれのケースでペプチドは、下記半固体(semisolid)水性亜鉛組成物として投与された。黒円:約5%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約5.4:1、pH調整せず;白円:約10%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約5.4:1、pH調整せず;白四角:約10%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約5.4:1、NaOHでpH調整;黒四角:約10%(wt/vol)ペプチド、ペプチド:Znモル比=約4:1、NaOHでpH調整。
【図4】本発明のある配合物を調製するのに有用な様々な装置の概略図を提供する。
【図5】イヌへ約1mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。ペプチドは、ペプチド濃度約2%でペプチド:Znモル比約1.5:1である水性亜鉛組成物として投与された。
【図6】イヌへ約15mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。ペプチドは、ペプチド濃度約25%でペプチド:Znモル比約4:1である半固体亜鉛組成物として投与された。
【図7】イヌへ約15mgの[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)を図示する。ペプチドは、ペプチド濃度約23%でペプチド:Znモル比約1.5:1である半固体亜鉛組成物として投与された。
【図8】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)のGLP−1類似体HCl塩試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。(1)CuCl2との(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2HCl塩:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/CuCl2のモル比は1.5:1である。ペプチド濃度は水(w/w)中10%(30mM)で約pH5.5である。(2)ZnCl2との(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2HCl塩:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は1.5:1である。ペプチド濃度は水(w/w)中10%(30mM)であり、約pH5.5である。
【図9】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)のGLP−1類似体酢酸塩試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。ZnCl2との(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は1.5:1である。ペプチド濃度は水(w/w)中10%(30mM)であり約pH5.5である。
【図10】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)の図8に示す試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。
【図11】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)の図9に示す試験配合物単回皮下(s.c.)投与した後に得られた血漿プロファイル(メジアン値)の全体経時変化を図示する。
【図12】ラットへ0.3mg(3μLの10%溶液)の図8に示す3種の試験配合物を単回皮下(s.c.)投与した後に、注射部位に残っている(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の推定百分率を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明は、GLP−1類似体を含む医薬組成物を提供する。特に好ましくは、式(I)のGLP−1類似体:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2(I)又はその医薬的に許容される塩であり、上記組成物の配合物は、優れた製造、投与、薬物動態、及び薬力学特性を提供するだけでなく、負の副作用を弱める効果を提供する。好ましくは、本発明の医薬の組成物は、pH4を有し、上記[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2が濃度4mg/mlで存在し、上記ZnCl2が濃度0.5mg/mlで存在する澄明な水性ZnCl2溶液からなるものではない。
【0018】
好ましい態様では、本発明は、好ましくは初期バーストが抑制された、改善された薬物放出プロファイルを有する医薬組成物を提供する。
本発明は又、延長された作用時間を有する、式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明は、以下のパラグラフ、並びに特許請求の範囲において要約することができる。
1つの態様において、本発明は、下記を含む制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;及びに
酢酸塩及び/又は酢酸。
好ましくは、本発明は、下記を含む制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに
酢酸塩及び/又は酢酸;
但し、二価の金属及び/又は二価の金属塩は、亜鉛及び/又は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは4〜5の範囲内であり;
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約1:1〜6:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約6:1〜1:1である。
【0020】
好ましくは、ペプチド類似体の一部及び酢酸塩の一部は、ペプチド類似体の塩として存在する。
好ましくは、医薬的組成物の最終pHは3.5〜6の範囲内である。更に好ましくは、医薬的組成物の最終pHは4〜5の範囲内である。より更に好ましくは医薬的組成物の最終pHは4.5±0.1である。組成物の最終pHとは、投与可能である時点での組成物のpHである。
【0021】
好ましくは、酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約0.5:1〜約10:1である。更に、酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲が約1:1〜約6:1である医薬組成物が好ましい。より更に、酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲が約3.2:1(3.2±0.32)である医薬組成物が好ましい。
【0022】
好ましくは、二価の金属及び/又は二価の金属塩は、亜鉛及び/又は塩化亜鉛である。更に好ましくは、二価の金属及び/又は二価の金属塩は、塩化亜鉛である。
【0023】
好ましくは、ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約6:1〜約1:1.更に好ましくは、ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比は約1.5:1(1.5±0.15)である。
【0024】
好ましくは、本発明は、下記を含む上記制御放出液体医薬組成物を提供する:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに酢酸塩及び/又は酢酸;
但し、二価の金属及び/又は二価の金属塩は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1の範囲内であり;
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約3.2:1(3.2±0.32)であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約1.5:1(1.5±0.15)である。
【0025】
好ましくは、ペプチド類似体の濃度は、約10重量/容量%(mg/ml)である。
好ましくは、亜鉛範囲の濃度は、0.26重量/容量%〜2.35重量/容量%(mg/ml)である。
【0026】
好ましくは、組成物は、式(I)のペプチド類似体が被検体内で少なくとも約1週間放出されるように配合される。
好ましくは、組成物は、式(I)の化合物が被検体内で少なくとも約1週間、好ましくは2週間放出されるように配合される。
【0027】
好ましくは、組成物は液体(又は希釈剤)を更に含む。この液体(又は希釈剤)は、溶媒又は懸濁液のビヒクルとして使用される。
好ましくは、液体は無菌水又はNaCl等の等張剤を含む無菌水から選ばれる。
【0028】
好ましくは、医薬組成物は非経口的投与に適する。更に好ましくは、医薬組成物は注射による投与に適する。
好ましくは、医薬組成物は、温度5℃で少なくとも1年間の間使用可能状態での使用前貯蔵に適する。
好ましくは、医薬組成物は、全成分を、好ましくは全て一緒に混合して凍結乾燥無しに調製される。
【0029】
別の態様では本発明は、上記医薬組成物を含む容器を提供する。好ましくは、容器はプレフィルドシリンジである。
【0030】
好ましくは、本発明は、上記医薬組成物をプレフィルドしたシリンジを提供する。但し、この医薬組成物は下記を含む:
液体として水(qs210μl);
21mgの式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属塩として0.571mgの塩化亜鉛;及び
酢酸;
但し、上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1であり;
酢酸のペプチド類似体に対するモル比は約3.2:1(3.2±0.32)であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比は約1.5:1(1.5±0.15)である。
【0031】
別の態様では、本発明は、下記ステップを含む医薬組成物の製造方法を提供する。
A:液体、酢酸塩及び/又は酢酸、並びにペプチド類似体を組み合わせるステップ、並びに
B:二価の金属及び/又は二価の金属塩を添加し溶解するステップ。
【0032】
好ましくは、上記方法は更に下記ステップを含む。
C:ステップBから得られる組成物を無菌ろ過するステップ、及び
D:容器へ組成物を充填するステップ。
【0033】
好ましくは、ステップAの前に、酢酸及び無菌水を組み合わせる。
更に好ましくは、上記方法は、更に無菌水を溶液に加える最終ステップを含む。
【0034】
別の態様では、本発明は、II型糖尿病治療用の医薬組成物の使用を提供する。.
好ましい態様では、本発明は又、制御放出医薬プロファイルのために、in vivoの生理学的なpHで沈殿して、その場で沈殿物(deposit)を生成する医薬組成物を提供する。
【0035】
本発明の更なる態様は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩と医薬的に許容されるキャリア又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、上記キャリア又は希釈剤は、水を含む。
【0036】
好ましい態様では、本発明は、GLP−1ペプチドの塩で、又はペプチドとその塩の混合物で製造される化合物又はGLP−1ペプチド類似体を含む医薬組成物を提供する。
【0037】
好ましくは、上記医薬組成物中のGLP−1ペプチド類似体の塩は、酢酸、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、メタンスルホン酸、又はトルエンスルホン酸等の、有機酸の塩の医薬的に許容される塩、又は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、又はリン酸等の、無機酸の塩の医薬的に許容される塩のリストより選択される。塩酸等の強酸の医薬的に許容される塩が特に好ましい。強酸は、4.5未満のpKAを有する酸として定義される。上記医薬組成物中の、追加的好ましいペプチド塩は、酢酸又はトリフルオロ酢酸、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、又はクエン酸の塩等の有機酸の塩である。
【0038】
1つの好ましい態様では、塩型GLP−1類似体の非塩型GLP−1類似体に対するモル比を調整することによって、医薬組成物の溶解性、pH、及び放出プロファイルを調節して、放出プロファイルを延長させて、GLP−1類似体濃度の初期スパイクを抑えることができる。
【0039】
好ましい態様において、医薬組成物は、二価金属を更に含み、該組成物の水溶性を低下させて、それにより放出プロファイルを延長させると同時に、血漿濃度における初期のバースト又はスパイクを抑えることができる。好ましい二価金属には、亜鉛と銅が含まれる。二価金属の塩型が特に好ましく、限定するものではないが、二価金属の塩化物及び酢酸塩(acetate)が含まれる。CuAc2、CuCl2、ZnAc2、及び/又はZnCl2が最も好ましい。好ましくは、上記医薬組成物中の二価金属及び/又は二価金属塩は、約0.0005mg/ml〜約50mg/mlの濃度で存在する。更に好ましくは、上記医薬組成物中の二価金属及び/又は二価金属塩は、約0.01mg/ml〜約0.50mg/mlの濃度で存在する。より好ましくは、上記医薬組成物は希釈剤を含み、ここで上記希釈剤は、医薬的に許容される水溶液を含む。希釈剤は、滅菌水又は等張剤としてNaCl等の塩の無菌水溶液を含む。
【0040】
文言「等張剤」は本明細書では、血液と同一の浸透圧を維持する、溶液中の塩又は賦形剤を意味する。
文言「医薬的に許容される」は本明細書では、哺乳類又はヒトにより生理学的に許容されることを意味する。
【0041】
更なる態様において、上記医薬組成物は、二価金属及び/又は二価金属塩を更に含み、ここで上記医薬組成物における上記GLP−1類似体の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比範囲は、約6:1〜約1:1である。好ましくは、上記比範囲は、約5.5:1〜約1:1である。より好ましくは、上記比範囲は、約5.4:1〜約1.5:1である。更により好ましくは、上記比範囲は、約5.4:1、4.0:1、又は1.5:1である。最も好ましくは、上記比範囲は、約1.5:1である。GLP−1類似体の、二価の金属及び/又は二価の金属塩に対するモル比は、医薬組成物中のペプチド類似体のモル割合の、二価の金属及び/又は二価の金属塩のモル割合に対する比を意味する。ペプチド類似体のモル割合は、ペプチド類似体塩の形で存在する全てのペプチドを含む。本発明でこの場合、「約」が意味するのは、1.5:1±10%の各目標値の比であるので、期待される比には、例えば、1.35〜1.65:0.85〜1.15を包含する比が含まれる。
【0042】
好ましくは、上記医薬組成物は、水性混合物、懸濁液、又は溶液を含み、GLP−1の上記類似体、式(I)の化合物、又はその塩は、約0.5%〜30%(w/w)の濃度で存在する。より好ましくは、上記GLP−1類似体及び/又はその塩の上記水性混合物、懸濁液、又は溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%,又は30%(w/w)である。より好ましくは、上記GLP−1類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、14%、15%、16%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、29%,又は30%(w/w)である。なおより好ましくは、GLP−1の上記類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、9%、10%、11%、22%、23%、24%、25%,又は26%(w/w)である。更により好ましくは、GLP−1の上記類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、10%、22%、23%、24%、25%,又は26%(w/w)である。なおより好ましくは、GLP−1の上記類似体及び/又はその塩の上記水溶液中の濃度は、約1%、2%、5%、10%、23%又は25%(w/w)である。「約」は、以下のことを意味する:約0.5%〜約4%の濃度では、目標値の±0.5%が目的とする範囲である(例えば、0.5%〜1.5%は、約1%である);約5%以上の標的濃度では、目標値の20%が目的とする範囲である(例えば、8%〜12%は、約10%である)。
【0043】
好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2、GLP−1の類似体又はその塩の医薬組成物中の濃度は、約1%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。より好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記医薬組成物中の濃度は、約2%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。
なおより好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記医薬組成物中の濃度は、約10%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。最も好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記医薬組成物中の濃度は、約23%又は約25%(wt/vol)であり、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約1.5:1である。
【0044】
好ましい態様において、GLP−1の類似体、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の医薬組成物中の濃度は、約5%(wt/vol)であり、該ペプチドの二価金属及び/又は二価金属塩に対するモル比は、約5.4:1である。より好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記組成物中の濃度は、約5%(wt/vol)であり、上記比は、約4.0:1である。なおより好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記組成物中の濃度は、約10%(wt/vol)であり、上記比は、約5.4:1である。なお更に好ましくは、[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2又はその塩の上記組成物中の濃度は、約10%(wt/vol)であり、上記比は、約4.0:1である。
【0045】
好ましくは、上記二価金属及び/又は二価金属塩は、塩化亜鉛又は酢酸亜鉛として提供される。より好ましくは、上記酢酸亜鉛は、ZnAc2・2H2Oとして提供される。
代わりの態様において、上記二価金属及び/又は二価金属塩は、塩化銅又は酢酸銅として提供される。
【0046】
1つの態様において、上記医薬組成物のpHは、塩基を使用して上方へ調整される。より好ましくは、上記pH調整は、NaOHを使用してなされる。なおより好ましくは、上記医薬組成物のpHは、0.9%NaClを使用して約1/2の初期濃度へ希釈する場合、直接電位差定量法を使用して約5.0〜5.5のpH値が得られるように、NaOHで調整する。
【0047】
本発明の好ましい態様は、医薬組成物又は制御放出配合物を提供し、この組成物は、GLP−1のペプチド類似体又はその塩、例えば、式(I)の化合物又はその塩が、それが必要な被検体、例えば哺乳動物、好ましくはヒトの体内で、延長された期間の間放出されるように配合される。好ましくは、上記化合物の放出は、少なくとも1時間にわたり、より好ましくは、少なくとも4、6、12、又は24時間にわたる。なおより好ましくは、上記組成物は、式(I)の化合物が被検体の体内で少なくとも36、48、60、72、84、又は96時間の間放出されるように配合される。なおより好ましくは、上記組成物は、式(I)の化合物が被検体の体内で少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14日の間放出されるように配合される。なおより好ましくは、上記組成物は、式(I)の化合物が被検体の体内で少なくとも約2、3又は4週間放出されるように配合される。
【0048】
文言「制御放出」は本明細書では、少なくとも1週間、更に好ましくは少なくとも2週間、生物学的に活性なGLP−1類似体の測定可能な血中濃度を生じる放出を意味する。
【0049】
本発明の1つの態様において、GLP−1ペプチド類似体の上記医薬組成物中の塩含量の調節は、GLP−1ペプチド類似体の医薬組成物内での溶解性及び安定性を改善して、更に、初期バーストを減少させることによって、in vivo放出プロファイルに改善を提供する。
【0050】
上記明細書の文言「調節(調整)」は、塩型GLP−1類似体の、非塩型GLP−1類似体に対するモル比を調節することにより、塩含有量を調節(調整)することを意味する。
【0051】
なおより好ましくは、上記医薬組成物中のペプチド塩は、塩酸又は酢酸の塩、又は式(I)の上記ペプチドの塩化物又は酢酸塩である。上記医薬組成物において、酢酸塩又は塩化物は、酢酸塩又は塩化物の式(I)の上記化合物に対する最終モル比として、約0.5:1〜約10:1の範囲で存在する。より好ましくは、上記比は、約0.8:1〜約9:1である。なおより好ましくは、上記比は、約1:1〜約6:1である。最も好ましくは、上記比は、約3.0:1、特に3.2:1である。
【0052】
本発明のこの態様において、酢酸塩又は塩化物のペプチドに対するモル比は、医薬組成物中のペプチドのモル割合に対する、医薬組成物中の酢酸塩(CH3COO-)又は塩化物(Cl-)のモル割合を意味する。医薬組成物中3:1のモル比の例において、酢酸塩は、割合においてペプチドのモル含量の3倍である。これは、ある化合物の他の化合物に比較した化学量論比である。
【0053】
酢酸塩のモル割合及びペプチドのモル割合は、ペプチド類似体の塩として存在する全ての酢酸塩及びペプチドを含む。最初に調製されたペプチド中の酢酸塩濃度は、ペプチド調製に使用された方法に応じて変動する。従って、配合物へ添加される酢酸塩の量は、ペプチドの酢酸塩に対する適切な最終割合が得られるように調節される必要がある。
【0054】
別の態様では、本発明は哺乳類を治療するために上記組成物を使用する方法に関する。
【0055】
文言「約」は、この好ましい態様では、1.5:1±10%の各目標値の比を意味するので、期待される比には、例えば、1.35〜1.65:0.85〜1.15を包含する比が含まれる。
【0056】
本発明の追加的好ましい態様において、医薬組成物のpHは、組成物の酢酸塩含量の調節によって調整される。好ましくは、上記医薬組成物のpH範囲は、pH3〜pH6である。より好ましくは、上記医薬組成物のpH範囲は、pH3.5〜5.5である。最も好ましくは、上記医薬組成物のpH範囲は、pH4.2〜pH4.6である。
【0057】
好ましくは、医薬組成物を酸性化するために、酢酸塩含量を、酢酸を加えることによって増加できる。
【0058】
1つの態様において、上記医薬組成物のpHは、低い酢酸塩含有量又は酢酸塩を含まないGLP−1の類似体のペプチド塩より始めて、酢酸塩含量の調節により高めることができる。
【0059】
好ましい態様において、酢酸塩又は塩化物の含量の調節による、最終医薬組成物におけるpHの調整は、初期バーストを減少させることによって、ペプチド濃度、亜鉛濃度、化学安定性、物理安定性、及びin vivo放出プロファイル等の変数の調節を可能にする。
【0060】
本発明の1つの側面では、Zn又はCu含量を固定して、酢酸塩含量を調節することによってpHを制御する。酢酸塩の含量を増加させると、溶解性や物理安定性の改善が示され、酢酸塩の含量を減少させると、pHに対しては増加効果を、Cmaxに対しては減少効果を示す。
【0061】
好ましい態様において、上記医薬組成物は、水性混合物、懸濁液、又は溶液を含む。
【0062】
本発明は又、GLP−1アゴニスト効果を引き起こす方法を提供し、この方法は、GLP-1(7-36)NH2リガンドの受容体をGLP−1類似体又はその塩と直接的又は間接的に接触させるステップを含む。
【0063】
上記方法において、GLP−1(7−36)NH2リガンドの上記受容体は、動物被検体、好ましくは霊長動物、より好ましくはヒトに存在している。従って、この態様において、本発明は、それを必要とする被検体内でGLP−1受容体よりアゴニスト効果を引き起こす方法を提供し、該方法は、本発明の組成物を上記被検体へ投与するステップを含み、ここで上記組成物は、GLP−1類似体又はその医薬的に許容される塩の有効量を含む。
【0064】
上記方法の好ましい態様において、上記被検体は、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠性糖尿病、肥満、食欲過多、満腹感の不足、及び代謝障害からなる群より選択される疾患又は症状に罹患しているか又はそれらを発症するリスクのあるヒトである。好ましくは、上記疾患は、I型糖尿病又はII型糖尿病である。
【0065】
上記方法の別のより好ましい態様において、上記被検体は、I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、高血圧症、及び摂食の抑制が所望される障害、中枢神経系の疾患又は障害(例えば、神経組織発生の変調による、及び、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS、卒中、ADD、及び神経精神系の症候群)、過敏性腸管症候群、心筋梗塞(例えば、それに関連した罹病率及び/又は死亡率を低下させること)、卒中、急性冠症候群(例えば、Q波の非存在を特徴とする)心筋梗塞、術後の異化変化、冬眠心筋又は糖尿病性心筋症、不充分な尿ナトリウム排出、過度の尿カリウム濃度、有害な血液量過多症に関連した状態又は障害(例、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、及び高血圧症)、多房性卵巣症候群、呼吸窮迫、腎障害、左心室収縮機能不全(例えば、異常な左心室駆出率を伴う)、下痢、術後ダンピング症候群、及び過敏性腸管症候群等の胃腸障害(即ち、十二指腸洞の運動の阻害による)、重症疾患多発ニューロパシー(CIPN)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、異常脂質血症、虚血後の血流の再灌流によって引き起こされる臓器組織損傷、及び冠動脈性心疾患危険因子(CHDRF)症候群からなる群より選択される疾患に罹患しているか又はそれらを発症するリスクのあるヒトである。
【0066】
本発明の追加の態様において、本発明は、その必要な被検体において、肝臓の幹/始原細胞を機能的な膵臓細胞へ変換する、β細胞の悪化を防いでβ細胞増殖を刺激する、ノルエピネフリンの血漿レベルを抑制する、変力応答を誘発して心収縮を増加させる、非消化管経路を介した(即ち、静脈内、皮下、筋肉内、腹膜、又は他の注射又は注入経路を介した)栄養摂取を改善する、内視鏡手技を受ける被検体に前処置する、並びにトリグリセリドレベルを調節する方法を特徴とし、上記方法は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を含んでなる本発明の配合物を上記被検体へ投与することを含んでなる。好ましくは、上記被検体は、哺乳動物、より好ましくは霊長動物、なおより好ましくはヒトである。
【0067】
本発明のペプチド塩として利用する好ましいGLP−1ペプチドは、ここで例えば、以下の形式:(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2で示され、天然の配列を置換したアミノ酸を最初の組括弧の間に置く(例えば、Aib8,35は、hGLP−1中のAla8及びGly35がAibで置換されていることを示す)。Aibは、α−アミノイソ酪酸の略語である。略語GLP−1は、グルカゴン様ペプチド−1を意味し;hGLP−1は、ヒトグルカゴン様ペプチド−1を意味する。二番目の組括弧の間にある数字は、ペプチド中に存在するアミノ酸の番号を意味する(例えば、hGLP−1(7−36)は、ヒトGLP−1のペプチド配列のアミノ酸7〜36を意味する)。hGLP−1(7−37)の配列は、Mojsov,S.,Int.J.Peptide Protein Res,.40,1992,pp.333−342に収載されている。hGLP−1(7−36)NH2中の表記:「NH2」は、このペプチドのC末端がアミド化していることを示す。hGLP−1(7−36)は、C末端が遊離酸であることを意味する。hGLP−1(7−38)中、37位と38位の残基は、特記無い場合はそれぞれGlyとArgである。
【0068】
本発明に使用される特に好ましいGLP−1ペプチド類似体は、医薬的に許容される塩の形態である。それらの塩の例として、限定されるものではないが、有機酸(例、酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、メタンスルホン酸、トリエンスルホン酸、又はパモ酸)、無機酸(例、塩酸、硫酸、又はリン酸)、及びポリマー酸(例、タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はポリ乳酸−グリコール酸の共重合体)とともに生成されるものが挙げられる。
本発明のペプチドの塩を調製する典型的な方法は当該技術分野で公知であり、塩交換の標準的方法によって達成できる。従って、本発明のペプチドのTFA塩(このTFA塩は、TFA含有緩衝溶液で溶出させる分取用HPLCを使用してペプチドを精製することにより生じる)は、該ペプチドを少量の0.25N酢酸水溶液に溶かすことによって、酢酸塩等の別の塩へ変換できる。得られた溶液をsemi-prep HPLCカラム(商品名Zorbax、300SB、C-8)へ適用する。このカラムを(1)0.1N酢酸アンモニウム水溶液で0.5時間、(2)0.25N酢酸水溶液で0.5時間、そして(3)流速4ml/分(30分間で20%〜100%の溶液B)での線形勾配(溶液Aは、0.25N酢酸水溶液であり;溶液Bは、アセトニトリル/水(80:20)中0.25N酢酸である)で溶出させる。該ペプチドを含有する分画を採取して、凍結乾燥させる。
【0069】
当業者に公知のとおり、GLP−1の既知の使用と潜在的な使用は多様であり、多数ある(Todd, J. F.ら, Clinical Science, 1998, 95, pp. 325-329; 及び Todd, J. F.ら, European Journal of Clinical Investigation, 1997, 27, pp. 533-536 を参照)。従って、アゴニスト効果を引き起こす目的のために本発明の化合物を投与すると、GLP−1それ自体と同じ効果及び用途を有し得る。これらのGLP−1の多様な使用は、以下のように要約できる:I型糖尿病、II型糖尿病、肥満、グルカゴノーマ、気道の分泌障害、代謝障害、関節炎、骨粗鬆症、中枢神経系疾患、再狭窄、神経変性疾患、腎不全、鬱血性心不全、ネフローゼ症候群、肝硬変、肺水腫、高血圧症、摂食の抑制が所望される障害、並びに、本明細書で検討されるに様々な他の症状及び障害の治療。従って、本発明には、その範囲内に、式(I)の化合物を有効成分として含んでなる、本明細書記載の医薬組成物が含まれる。
【0070】
本発明の配合物中の有効成分の投与量は、変動してよいが、有効成分の量は、好適な投与量が得られるものであることが必要である。選択される投与量は、目的とする治療効果、投与経路、及び治療期間に依存し、通常は担当医が決定する。一般に、本発明の活性に有効な投与量は、1×10-7〜200mg/kg/日、好ましくは1×10-4〜100mg/kg/日の範囲にあり、これは、単回用量として投与しても、複数回の投与量で分割投与してもよい。
【0071】
本発明の配合物は、好ましくは、非経口的に、例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下等へ投与する。
【0072】
本発明による非経口投与用の調製物には、目的とするin vivo放出プロファイルが達成されるのならば、無菌の水溶液又は非水溶液、懸濁液、ゲル、又はエマルジョンが含まれる。非水溶媒又はビヒクルの例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油又はトウモロコシ油等の植物油、ゼラチン、及び、オレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。それらの剤形は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等のアジュバントを含有してもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターに通すろ過によって、滅菌剤を組成物へ配合することによって、組成物に照射することによって、又は組成物を加熱することによって無菌化できる。それらは又、無菌水や他の注射可能な無菌媒体中に、使用直前に溶かすことのできる無菌の固形組成物の形態で製造できる。
【実施例】
【0073】
ペプチドの合成:
本発明を実施するのに有用なペプチドは、標準の固相ペプチド合成によって製造可能であり、それにより製造した。例えば、Stewart, J. M.ら,Solid Phase Synthesis(ピアス・ケミカル社、第2版、1984年)を参照。
【0074】
下記実施例には、それにより本発明を有利に実施できるペプチドを作製するために使用可能であり、それを使用した合成法について記載するが、この合成法は、当業者に公知である。他の方法も当業者に知られている。実施例は、例示の目的のために提供するのであって、本発明の範囲をいかなるやり方でも限定するものではない。
【0075】
GLP−1類似体等の上記ペプチドは、当業者に公知の異なる合成法で入手可能であり、その方法はペプチドの最終沈殿、凍結乾燥法、真空乾燥、又は当分野で公知の他の乾燥法を含むこともできる。イオン交換クロマトグラフィー、緩衝液の浸透圧交換、及びダイフィルトレーション(difiltration)は、本発明において、異なる塩型の該ペプチドを精製又は選択するのに適した方法であり得る。
【0076】
Boc−βAla−OH、Boc−D−Arg(Tos)−OH、及びBoc−D−Asp(OcHex)は、Nova Biochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。Boc−Aun−OHは、Bachem社(ペンシルヴェニア州キング・オブ・プルシア)より購入した。Boc−Ava−OH及びBoc−Ado−OHは、Chem−Impex International社(イリノイ州ウッドデール)より購入した。Boc−2Nal−OHは、Synthetech Inc.社(オレゴン州オールバニー)より購入した。
【0077】
本明細書に使用する他の略語の完全名は、以下の通りである:Bocはt−ブチルオキシカルボニル、HFはフッ化水素、Fmはホルミル、Xanはキサンチル、Bzlはベンジル、Tosはトシル、DNPは2,4−ジニトロフェニル、DMFはジメチルホルムアミド、DCMはジクロロメタン、HBTUは2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン酸塩、DIEAはジイソプロピルエチルアミン、HOAcは酢酸、TFAはトリフルオロ酢酸、2ClZは2−クロロベンジルオキシカルボニル、2BrZは2−ブロモベンジルオキシカルボニル、OcHexはO−シクロヘキシル、Fmocは9−フルオレニルメトキシカルボニル、HOBtはN−ヒドロキシベンゾトリアゾール、PAM樹脂は4−ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、Trisはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、そしてBis−Trisはビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン(即ち、2−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)を表す。用語「ハロ」又は「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードが含まれる。
【0078】
他に定義のない限り、本明細書に使用するすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。又、本明細書で言及された出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、いずれも参照により組み込まれる。
【0079】
実施例1;(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の詳細な合成手順は、その内容がその全体において本明細書に組み込まれる、国際特許公開公報番号WO00/34331(PCT/EP99/09660)で提供されている。簡潔には、該化合物は、加速Boc化学固相ペプチド合成を行うように変更したアプライド・バイオシステムズ社(カリフォルニア州フォスターシティ)商品名モデル430Aペプチド合成機で合成した。Schnolzerら, Int. J. Peptide Protein Res., 40:180 (1992) を参照。0.91mmol/gの置換された4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂(Peninsula社,カリフォルニア州ベルモント)を使用した。Bocアミノ酸(Bachem社,カリフォルニア州トーランス;Nova Biochem社,カリフォルニア州ラホヤ)を側鎖保護を以下のとおり行って使用した:Boc−Ala−OH、Boc−Arg(Tos)−OH、Boc−Asp(OcHex)−OH、Boc−Tyr(2BrZ)−OH、Boc−His(DNP)−OH、Boc−Val−OH、Boc−Leu−OH、Boc−Gly−OH、Boc−Gln−OH、Boc−Ile−OH、Boc−Lys(2CIZ)−OH、Boc−Thr(Bzl)−OH、Boc−Ser(Bzl)−OH、Boc−Phe−OH、Boc−Aib−OH、Boc−Glu(OcHex)−OH、及びBoc−Trp(Fm)−OH。
Boc基は、100% TFA、2×1分間の処理により外した。Bocアミノ酸(2.5mmol)は、4mLのDMF中のHBTU(2.0mmol)及びDIEA(1.0mL)で予め活性化して、ペプチド−樹脂TFA塩の中和に先立つことなくカップリングさせた。カップリング時間は5分であった。但し、Boc−Aib−OH残基と以下の残基:Boc−Lys(2CIZ)−OH及びBoc−His(DNP)−OHではカップリング時間は2時間であった。
【0080】
ペプチド鎖の組立ての最後に、樹脂を20%メルカプトエタノール/10% DIEAのDMF溶液で2×30分間処理して、His側鎖上のDNP基を外した。次いで、100% TFAで2×2分間の処理によりN末端Boc基を外した。DMF中10% DIEAでのペプチド−樹脂の中和(1×1分)の後で、15%エタノールアミン/15%水/70% DMFの溶液で2×30分間の処理により、Trpの側鎖上のホルミル基を外した。このペプチド−樹脂をDMF及びDCMで洗浄し、減圧下乾燥させた。1mLのアニソール及びジチオスレイトール(24mg)を含有する10mLのHF中で、ペプチド−樹脂を0℃で75分間撹拌することによって、最終の開裂を行った。窒素流によってHFを除去した。残渣をエーテル(6×10mL)で洗浄し、4N HOAc(6×10mL)で抽出した。
【0081】
水性抽出液中のペプチド混合物を、逆相VYDAC(登録商標)C18カラム(Nest Group社,マサチューセッツ州サウスバラ)を使用する逆相分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した。10ml/分の流速の線形勾配(105分にわたり20%〜50%のB溶液)(A溶液=0.1% TFAを含有する水;B溶液=0.1%のTFAを含有するアセトニトリル)でカラムを溶出させた。分画を採取して、分析用HPLCで確認した。純粋な生成物を含有する分画を合わせて、凍結乾燥させた。この化合物の合成の1例では、135mgの白色固形物を得た。純度は、分析用HPLC分析に基づけば98.6%であった。エレクトロスプレー質量分光計(MS(ES))S分析によると、分子量は3339.7であった(3339.7の計算分子量と一致)。
【0082】
実施例2
配合手順I
2.1;材料、ストック溶液、計算:
A)材料:ZnCl2、NaOHペレット、及び塩酸(35%)をPanreac Quimica社(スペイン、バルセロナ)より入手した。WFI(注射/灌注用無菌水:sterile water for injection/irrigation)をB.Braun Medical社(スペイン、バルセロナ)より入手した。
【0083】
B)ストック溶液:
(i)ZnCl2,pH=3:
1.撹拌しながら、35% HClをWFIへ加えて、pH=3とする。
2.容量フラスコに、秤量した量のZnCl2を移す。撹拌しながら、pH=3 HClを加えて、約1〜4mg ZnCl2/mlの最終濃度とする。
【0084】
(ii)ZnCl2,pH=2:
1.撹拌しながら、35%HClをWFIへ加えて、pH=2とする。
2.容量フラスコに、秤量した量のZnCl2を移す。撹拌しながら、pH=2のHClを加えて、約4〜12mg ZnCl2/mlの最終濃度とする。
【0085】
(iii)NaOH,0.1〜10mg/ml:
1.容量フラスコに、秤量した量のNaOHを移す。撹拌しながら、WFIIを加えて、約0.1〜10mg NaOH/mlの最終濃度とする。
【0086】
(iv)凍結乾燥20mgアリコート(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/バイアル:
1.酢酸及びWFIの0.04%(v/v)希釈液を調製する。
2.容量フラスコに、秤量した量の(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(酢酸塩)を移す。撹拌しながら、充分な0.04%酢酸を加えて、最終濃度を20mg(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/mlとする。0.45ミクロンフィルターを使用するろ過滅菌に続いて、この溶液の1mlアリコートを凍結乾燥バイアルへ移し、凍結乾燥させて、乾燥生成物を−22℃で保存する。
【0087】
(v)凍結乾燥50mgアリコート(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/バイアル:
1.酢酸及びWFIの0.1%(v/v)希釈液を調製する。
2.容量フラスコに、秤量した量の(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(酢酸塩)を移す。撹拌しながら、充分な0.1%酢酸を加えて、最終濃度を50mg(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2/mlとする。ろ過滅菌に続いて、この溶液の1mlアリコートを凍結乾燥バイアルへ移して、凍結乾燥させる。
【0088】
C)計算:
(i)組成物の全重量/賦形剤の容量(E)を決定するには下記式を使用する:
E=(A×100/T)−(A/P)
ここで:
E=賦形剤(mg)
A=純粋なペプチドの含量(mg);
T=組成物の標的濃度;例えば、標的が2%であるならば、2;及び
P=純粋なペプチドの濃度(mgペプチド/100mg配合物)。
賦形剤の全容量に関しては、1ml=1gという前提を適用する。
【0089】
(ii)組成物溶液の各ml又はgへ加えるべきZnCl2の容量/重量(W)を決定するには:
a)pH調整をしない組成物では、W=100% E;
b)ペプチドが約1%又は約2%又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する液体配合物では、W=80% E;
c)ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=50% E;
d)ペプチドが約25%であり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=66.66% E;
e)ペプチドを凍結乾燥調製品より復元して、塩基を使用してpHを調整する配合物では、W=90% E。
【0090】
(iii)組成物溶液の各ml又はgへ加えるべきNaOHの容量/重量(W)を決定するには:
a)ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する配合物では、W=20% E;
b)ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%までであり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=50% E;
c)ペプチドが約25%であり、塩基を使用してpHを調整する半固体又はゲル配合物では、W=33.33% E;
d)ペプチドを凍結乾燥調製品より復元して、塩基を使用してpHを調整する配合物では、W=10% E。
【0091】
(iv)各組成物において使用すべきZnCl2の濃度(mg/ml又はmg/g)を決定するには:
[ZnCl2]=(136.29×A)/(W×3339.76×R)
ここで:
A=純粋なペプチドの含量(mg);
R=ペプチド/Znのモル比
ペプチドが約1%又は約2%、又は約10%、又は約23%までである配合物では、R=1.5;
ペプチドが約25%である配合物では、R=4.0;及び、
W=組成物溶液の各g又はmlへ加えるべきZnCl2溶液の重量(g)又は容量(ml)。
【0092】
2.2;1〜10%の凍結乾燥ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整なしの組成物の調製:
本明細書に使用される、ある割合のペプチドを含む配合物は、組成物の全重量に対しある重量のペプチドを含む配合物を記載するものであり、例えば、1%ペプチドは、100gの全組成物につき1gのペプチドを含む配合物を記載する。約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む配合物は、以下のように調製した。上記のように製造した(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の凍結乾燥試料を、100%の全賦形剤容量と[ペプチド:Zn]=1.5:1でZnCl2ストック溶液(pH3)と完全に混合した。
【0093】
A)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を2mlのZnCl2溶液(0.272mg/ml;上記2.1B(i)を参照)と混合して1%組成物を調製する。
【0094】
B)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を1mlのZnCl2溶液(0.544mg/ml;上記2.1B(i)を参照)と混合して2%組成物を調製する。
【0095】
C)50mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(v)を参照)を0.45mlのZnCl2溶液(3.023mg/ml;上記2.1B(i)を参照)と混合して10%組成物を調製する。
【0096】
凍結乾燥ペプチドと溶液をそのまま室温まで平衡化した。凍結乾燥ペプチドを含有するバイアルへ指定容量のZnCl2溶液を注入して、1%又は2%ペプチド組成物では約2分間、10%ペプチド組成物では約60分間、又はすべての凍結乾燥ペプチドが完全に水和して溶液にペプチドの塊がなくなるまで、水和を進行させた。水和に続き、復元したペプチドを約1分間振り混ぜる。
【0097】
溶かしたペプチドの適正量を投薬のために取り出すことができる。例えば、上記Aで調製した1%ペプチド溶液の100μlは、1mg用量に相当し、上記Bで調製した2%ペプチド溶液の50μlは、1mg用量に相当し、上記Cで調製した10%ペプチド溶液の150μlは、15mg用量に相当する。
【0098】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチドとZnCl2の量を変動させて、下記に詳述する1%、2%、及び10%組成物以外の組成物、並びに目的とする投与量とすることができる。
【0099】
2.3;1〜10%の凍結乾燥ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整有りの組成物の調製:
約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む配合物は、以下のように調製した。上記のように製造した(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の凍結乾燥試料を全賦形剤容量の90%でZnCl2ストック溶液(pH3)と完全に混合した。希釈NaOH溶液の添加によって、溶液の目的とするpHとする。
【0100】
A)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を1.8mlのZnCl2溶液(上記2.1B(i)を参照)と混合して1%組成物を調製する。
B)20mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(iv)を参照)を0.9mlのZnCl2溶液(上記2.1B(i)を参照)と混合して2%組成物を調製する。
C)50mgの凍結乾燥(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2(上記2.1B(v)を参照)を0.40mlのZnCl2溶液(上記2.1B(i)を参照)と混合して10%組成物を調製する。
【0101】
希釈NaOH溶液の必要量(全賦形剤容量の10%)を上記溶液へ加えて、標的濃度及びpHそれぞれとする。例えば:
1%組成物へは:適正濃度のNaOH溶液の0.2mlを加え、
2%組成物へは:適正濃度のNaOH溶液の0.1mlを加え、
10%組成物へは:適正濃度のNaOH溶液の0.05mlを加える。
【0102】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、下記1%、2%、及び10%組成物以外の組成物とすることができる。
【0103】
2.4;1〜10%のペプチド及びZnCl2を含む、pH調整なしの液体組成物の調製:
約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む液体配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量し、ZnCl2ストック溶液(pH3)と混合して、1%、2%、10%までのペプチドの標的濃度とした。混合に続き、組成物をろ過滅菌して、使用まで保存する。
【0104】
2.5;1〜10%ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整有りの液体組成物の調製:
約1%、又は約2%、約10%までのペプチドを含む液体配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量し、全賦形剤容量の80%でZnCl2ストック溶液(pH3)と完全に混合した。この亜鉛溶液は、ZnCl2でもZnAc2・2H2Oでもよい。希釈NaOH溶液の添加によって、溶液の目的とするpHとする。この方法を使用して、調製物:C5〜C13を調製した。
【0105】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、本明細書に記載する1%、2%、及び10%以外の組成物とすることができる。
【0106】
2.6;25%ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整なしの半固体/ゲル組成物の調製:
約25%のペプチドを含む半固体又はゲルの配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量して、全賦形剤容量の66.66%でZnCl2ストック溶液(pH2)と完全に混合した。この亜鉛溶液は、ZnCl2でもZnAc2・2H2Oでもよい。この方法を使用して、調製物:C1及びC2を調製した。
【0107】
より具体的には、この半固体又はゲル組成物は、「プッシュ−プル」混合法を使用して調製した:
a)所望量のペプチドを、特殊な双方向手動バルブ「HV」(内径=0.5mm)を予め取り付けた使い捨てシリンジ「S1」の筒へ秤量して、シリンジルアーホール(Luer hole)の内側に管(tubing)を入れた;
b)シリンジプランジャーをステンレススチールロッド「SR」で留めた;
c)「S1」中の「HV」を真空源へ連結して、「HV」を開いた。10分後、HVを閉じた;
d)第二の使い捨てシリンジ「S2」の筒へ亜鉛溶液を正確に秤量した;
e)次いで、「S2」を「HV」の開放部分へ連結した;
f)「HV」を開いて、ペプチド粉末を含有する筒「S1」へ真空によって溶媒を引き入れた;
g)「HV」を閉じて、溶媒シリンジ「S2」を外し、それにより「S1」中のペプチド粉末を水和させた;
h)「SR」を外して、シリンジプランジャーをゆっくり解放した;
i)「HV」を開けずにシリンジプランジャーを動かし(押して引く)、粉末の塊が溶媒に完全に浸るようにする;
j)双方向ステンレスコネクタ「SC」(内径=1.0mm)を、管がシリンジルアーホールの内側に入ったシリンジ「S2」に入れて、そのプランジャーを先端まで押した;
k)「S1」中の「HV」を開いて真空を換気しててから、「HV」を外した。シリンジプランジャーを動かして、シリンジ筒中の空気を最少化した;並びに
l)「S1」及び「S2」を「SC」により連結して、組成物を、「SC」を通して「S1」から「S2」へ混練した。
【0108】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、本明細書に記載する25%以外の組成物とすることができる。
【0109】
2.7;25%ペプチド及びZnCl2を含む、pH調整有りの半固体/ゲル組成物の調製:
約25%のペプチドを含む半固体又はゲルの配合物は、以下のように調製した。(Aib8,35)HGLP−1(7−36)NH2の試料を秤量して、全賦形剤容量の66.66%でZnCl2ストック溶液(pH2)と完全に混合した。この亜鉛溶液は、ZnCl2でもZnAc2・2H2Oでもよい。希釈NaOH溶液の添加によって、溶液の目的とするpHとする。この実施例では、該粉末へ加える液体の全容量を亜鉛溶液とNaOH溶液の間で分割しなければならない。従って、亜鉛溶液の濃度を調整して、必要とされる亜鉛溶液の全容量を、ペプチド粉末へ加える全液体容量の50%へ減少させた(工程d)。ペプチド粉末へ加える全液体容量の残りの50%は、下記に詳述するように、NaOH溶液として加えた。この方法を使用して、調製物:C3及びC4を調製した。
【0110】
このpH調整した半固体又はゲル組成物は、「プッシュ−プル」混合法を使用して調製した:
a)所望量のペプチドを、特殊な双方向手動バルブ「HV」(内径=0.5mm)を予め取り付けた使い捨てシリンジ「S1」の筒へ秤量して、シリンジルアーホールの内側に管を入れた;
b)シリンジプランジャーをステンレススチールロッド「SR」で留めた;
c)「S1」中の「HV」を真空源へ連結して、「HV」を開いた。10分後、HVを閉じた;
d)第二の使い捨てシリンジ「S2」の筒へ亜鉛溶液を正確に秤量した;
e)次いで、「S2」を「HV」の開放部分へ連結した;
f)「HV」を開いて、ペプチド粉末を含有する筒「S1」へ真空によって溶媒を引き入れた;
g)「HV」を閉じて、溶媒シリンジ「S2」を外し、それにより「S1」中のペプチド粉末を水和させた;
h)「SR」を外して、シリンジプランジャーをゆっくり解放した;
i)「HV」を開けずにシリンジプランジャーを動かし(押して引く)、粉末の塊が溶媒に完全に浸るようにする;
j)双方向ステンレスコネクタ「SC」(内径=1.0mm)を、管がシリンジルアーホールの内側に入ったシリンジ「S2」に入れて、そのプランジャーを先端まで押した;
k)「S1」中の「HV」を開いて真空を換気してから、「HV」を外した。シリンジプランジャーを動かして、シリンジ筒中の空気を最少化した;
l)「S1」及び「S2」を「SC」により連結して、組成物を、「SC」を通して「S1」から「S2」へ混練した;
m)ホモジェナイゼーションの後で、混合した生成物のアリコートを取り出して、ペプチドの濃度を定量した;
n)残りの中間バルク生成物を正確に秤量して、目的とするpHに達するために必要とされるNaOH溶液の量を計算した;
o)第三の使い捨てシリンジ「S3」へNaOH溶液を正確に秤量した;及び
p)シリンジプランジャーをゆっくり圧縮して、シリンジチャンバ中の空気を最少化した。両方のシリンジを「SC」により連結して、組成物を、「SC」を通して練り込んだ。
【0111】
本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド及びZnCl2の量を変動させて、本明細書に記載する25%以外の組成物とすることができる。
【0112】
【表1】
【0113】
3.0.;GLP−1受容体アフィニティーの定量:
本発明を実施するのに有用な化合物について、以下の手順を使用して、GLP−1受容体へ結合するその能力を試験することができる。
【0114】
細胞培養:
GLP−1受容体を発現しているRIN 5Fラットインスリノーマ細胞(ATCC−#CRL−2058,American Type Culture Collection,バージニア州マナッサス)を、10%胎仔ウシ血清を含有するダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)内で培養して、5% CO2/95%空気の加湿雰囲気中に約37℃で維持した。
【0115】
放射リガンド結合:
商品名Brinkman Polytron(ニューヨーク州ウェストベリー)(設定6、15秒)により、20mlの氷冷50mM Tris−HClにおけるRIN細胞のホモジェナイゼーションによって、放射リガンド結合試験用の膜を調製した。このホモジェネートを遠心分離(39,000g/10分)によって2回洗浄して、最終ペレットを、2.5mM MgCl2,0.1mg/ml商品名バシトラシン(シグマケミカル社、ミズーリ州セントルイス)、及び0.1% BSAを含有する50mM Tris−HClに再懸濁させた。分析のために、0.05mlの非標識競合試験ペプチドを含めて、及び含めずに、アリコート(0.4ml)を0.05nM(125I)GLP−1(7−36)(約2200Ci/mmol、New England Nuclear社,マサチューセッツ州ボストン)とともにインキュベートした。100分のインキュベーション(25℃)の後、結合した(125I)GLP−1(7−36)を、0.5%ポリエチレンイミンに浸しておいた商品名GF/Cフィルター(Brandel社,メリーランド州ゲイサースブルグ)を通す急速ろ過によって、遊離型から分離した。次いで、このフィルターを、氷冷50mM Tris−HClの5mlアリコートで3回洗浄して、フィルター上に捕捉された結合放射活性をγ線スペクトロメトリー(Wallac LKB社,メリーランド州ゲイサースブルグ)によって計数した。特異的結合は、「結合した(125I)GLP−1(7−36)全量」から「1000nM GLP−1(7−36)(Bachem社,カリフォルニア州トーレンス)の存在下に結合した(125I)GLP−1(7−36)量」を引いたものとして定義した。
【0116】
4.;pHに対する溶解度の定量:
4.1.リン酸緩衝食塩水(PBS)でのpHに対する化合物溶解度の定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、PBS中のその溶解度を異なるpH及び温度で測定することができる。
1パケットのプレミックス粉末(シグマ社製、製品番号:P−3813)を1リットルの脱イオン水に溶かしてストックPBS緩衝化溶液を作製して、138mM NaCl、2.7mM KClを含み、pH7.4である10mMリン酸緩衝食塩水を得た。このストック溶液のpHをリン酸及び/又は水酸化ナトリウムで調整することによって、異なるpH値のPBS緩衝液を作製した。
【0117】
試験する化合物の2mg試料、例えば、実施例1の化合物の2mgをガラスバイアルへ秤量した。各バイアルへある一定のpHでPBS緩衝液の50μlアリコートを加えた。この溶液を激しく撹拌して、澄明になるまで、必要ならば音波処理した。試験する各pHについて、2mgの化合物を溶かすのに必要とした緩衝液の全容量記録して、溶解度を計算した。
室温(20〜25℃)で澄明であるペプチド溶液を冷蔵庫(4℃)に一晩入れてから、該ペプチドの4℃での溶解度を測定した。
【0118】
4.2.生理食塩水におけるpHに対する化合物溶解度の定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、生理食塩水中のその溶解度を、異なるpH値及び温度で定量することができる。
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによってストック生理食塩水溶液を調製する。このストック溶液のpHを、HCl及び/又はNaOHで調整することによって、異なるpH値の生理食塩水溶液を作製する。
【0119】
試験する化合物の2mg試料、例えば、実施例1の化合物の2mgをガラスバイアル内へ秤量する。各バイアルへある一定のpHで生理食塩水溶液の50μlアリコートを加える。このバイアルを激しく撹拌して、澄明になるまで、必要ならば音波処理する。試験する各pHについて、2mgの化合物を溶かすのに必要とする緩衝液の全容量を記録して、溶解度を計算する。
室温(20〜25℃)で澄明溶液を冷蔵庫(4℃)に一晩入れてから、4℃での溶解度を測定する。
【0120】
4.3.生理食塩水中の化合物溶解度のpH7.0での定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、pH=7を有する生理食塩水中、室温での溶解度を定量することができる。
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによって生理食塩水溶液を調製する。試験する化合物、例えば実施例1の化合物、の2mg試料をガラスバイアル内へ秤量して、激しい撹拌と音波処理を伴いながら、生理食塩水の1mlアリコートを、澄明になるまで加える。2mgのペプチドを溶かすのに必要とする生理食塩水の全容量を記録して、室温での溶解度を計算する。
【0121】
4.4.生理食塩水中の化合物溶解度の様々なpHでの定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、様々なpH値を有する生理食塩水中の、室温での溶解度を定量することができる。
9グラムのNaClを1リットルの脱イオン水に溶かすことによってストック生理食塩水溶液を調製する。このストック生理食塩水溶液のアリコートをHCl及びNaOHで処理することによって、様々なpH値を有する生理食塩水溶液を入手する。
試験する化合物、例えば実施例1の化合物の、2mg試料をガラスバイアル内へ秤量する。生理食塩水緩衝液の50μlのアリコートを、ある一定のpHで加える。この溶液を、澄明になるまで激しく撹拌して音波処理する。2mgのペプチドを溶かすのに使用する緩衝液の全容量を記録して、溶解度を計算する。
【0122】
5.亜鉛濃度に対する化合物の水溶解度の定量:
本発明を実施するのに有利に使用できる化合物について、以下の手順を使用して試験して、pH7の水中のその溶解度を異なる亜鉛濃度で定量することができる。
ZnCl2を脱イオン水に100mg/mlの濃度へ溶かして、HClを使用してpHを2.7へ調整することによって、ストック亜鉛溶液を調製した。このストック溶液の滴正な希釈液を作製することによって、様々なZnCl2濃度を有する溶液(「Zn試験溶液」)を調製した。
【0123】
試験する化合物の1mg、例えば、実施例1の化合物の1mgを250μlの各Zn試験溶液に溶かして、4mg/mlの化合物を有する溶液を得る。次いで、0.2N NaOHを使用して、白色沈殿の形成が観察されるまでこの溶液のpHを調整した。この沈殿溶液を遠心分離して、HPLCを使用して母液を分析した。試験化合物ピークのUV吸収領域を測定して、試験化合物の母液中の濃度を較正曲線との比較により定量した。
本発明を実施するために使用できる化合物の代表例として、実施例1の化合物について直前に記載した分析方法で試験して、以下の結果を入手した(水性、pH7.0、室温):
【0124】
【表2】
【0125】
6.IEFゲルを使用する、等電点(pI)の決定:
Invitrogen社の商品名Novex IEF pH3−10ゲルを使用して、GLP−1ペプチド、例えば実施例1の化合物のpIを測定した。試験するペプチジル化合物を0.5mg/mlの濃度まで水に溶解した。それぞれの化合物について、得られた溶液の5μlを5μlのNovex(登録商標)Sample Buffer 2X(20mMアルギニン遊離基、20mMリジン遊離基、及び15%グリセロールを含む)と混合して、生じる10μl試料溶液をタンパク質標準試料とともにこのゲル上へロードした。
【0126】
ランニング緩衝液もInvitrogen社より入手して、製造業者の製品説明書に従って、概ね以下のようにゲルを泳動した:100V一定1時間、続いて200V一定1時間、続いて500V一定30分間。
次いで、このゲルを、3.5%スルホサリチル酸を含有する12% TCA中に30分間固定してから、Novex(登録商標)Colloidal Blue Kit用製品説明書に従って、コロイド状クマッシーブルーで2時間染色してから、水中で一晩脱染色した。
【0127】
ゲルを走査して、プログラム:商品名Fragment Analysis 1.2によって分析した。10.7、9.5、8.3、8.0、7.8、7.4、6.9、6.0、5.3、5.2、4.5、4.2及び3.5のpI値を有する標準化合物のpIと比較して、未知ペプチドのpIを計算した。
実施例1の化合物の測定pIは、7.60であった。
【0128】
7.ラットでのin vivoアッセイ:
本発明の組成物について、以下のアッセイを使用して試験して、効果をin vivoで促進及び強化する能力を判定することができる。
【0129】
7.1.実験手順:
実験の前日、約300〜350gの重量を有する成体雄Sprague−Dawleyラット(Taconic社,ニューヨーク州ジャーマンタウン)にクロロヒドレート麻酔下で右心房頚静脈カニューレを移植した。次いで、このラットを18時間絶食させた後で、適正な試験組成物又はビヒクル対照を時点0で注射した。ラットは、実験全体を通して絶食状態であった。
100mg/ml ZnCl2の溶液のpH2.7を有するHCl水溶液での希釈によって、0.5mg/ml ZnCl2溶液を調製した。この溶液の250μlに式(I)の化合物((Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2)の1mgを溶かして、該化合物4mg/ml及びZn0.5mg/mlをpH4で有する澄明溶液を得た。
【0130】
時点0で、(a)(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2)の直前の(immediately forgoing)溶液又はビヒクル対照のいずれかをラットに皮下(sc)注射した。両方の場合で注射容量はごく少なく(4〜6μL)、被検体へ投与したGLP−1化合物の用量は、75μg/kgであった。sc注射後の適正な時間に、500μlの血液試料を静脈内(iv)カニューレより吸引して、ラットにivグルコースチャレンジを与えて、亢進したインスリン分泌の存在を試験した。グルコースチャレンジの時間は、化合物注射後0.25、1、6、12、及び24時間であった。最初の血液試料を吸引採取した後で、グルコース(1g/kg)をiv注射して、500μlヘパリン添加生理食塩水(10U/ml)を流した(flushed in)。その後、グルコース注射後2.5、5、10、及び20分で500μlの血液試料を吸引採取した。これらのいずれの後も、カニューレを介した500μlヘパリン添加生理食塩水(10U/ml)のiv注射を直ぐに行った。血液試料は遠心分離させ、各試料より血漿を採取して、インスリン含量をアッセイするまで、その試料を−20℃に保存した。ラットインスリン酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(American Laboratory Products社、ニューハンプシャー州ウィンダム)を使用して、各試料中のインスリンの量を定量した。
【0131】
7.1.1.結果:
グルコース注射によって誘導される、持続されたインスリン亢進活性が本実験の全24時間にわたり観測された。
【0132】
8.イヌでのin vivoアッセイ:
当業者が、活性化合物のin vivo延長放出を促進する組成物の能力を定量可能とする、多くのin vivoアッセイが当分野で公知である。
【0133】
8.1.;1%ペプチド組成物:
例えば、1%(w/w)の式(I)の化合物をZnCl2の緩衝化溶液に含んでなる(ペプチド:Zn比=1.5:1.0)水性試験配合物を調製した。
全6頭の雄ビーグル犬(42〜78月齢で、体重14〜21kg)を、水及び1日1回の食餌(約400gの乾燥標準食(SAFE 125)への自由摂取で維持した。これらイヌは、試験組成物の投与前18時間絶食させた。
試験組成物は、皮下経路によって、肩甲骨間の領域付近で投与した。投与の容量(各動物につき約20μl)は、0.33〜12mmの0.3mlテルモ社シリンジ(BS=30M2913)によって作製した。このようにして、約0.2mgペプチドの理論用量を達成した。
【0134】
血液試料を周期的に、投与後約0、8、15、30及び45分、1、2、4、8及び12時間、並びに1、2、3、4、5及び6日の時点で採取した。サンプリング後から遠心分離までの間、血液を速やかに冷却し、血漿をデカントして、継続中のアッセイまでは速やかに凍結させた。ペプチド血漿濃度の定量は、オフライン固相抽出の後、LC−MS/MSを備えたオンライン相抽出により行い、得られたデータは、商品名Analyst v1.2ソフトウェアによって管理処理した。
上記組成物は、活性ペプチドの少なくとも2日間の持続放出を示した。
【0135】
8.2.;1%(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2溶液:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の組成物について、主題のペプチドを延長された期間の間放出するその能力を検証した。以下の4種の組成物のそれぞれで、ペプチドの濃度は、約1%(重量/重量)であり、ペプチドの亜鉛に対する比は約1.5:1であり、投与したペプチドの用量は、約1mgであった。
溶液8.2.A:(i)90% ZnCl2(0.298mg/ml)及び(ii)10% NaOH(0.975mg/ml)を含有する溶液中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.2.B:ZnCl2の溶液(0.286mg/ml)中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.2.C:溶液8.2.Bに実質的に類似して、AcOH/AcO-を使用して緩衝化されている;
溶液8.2.D:溶液8.2.Aに実質的に類似。
【0136】
これらの組成物は、図1に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0137】
8.3.;1%(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2溶液:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。以下の組成物では、ペプチドの濃度は、約2%(重量/重量)であり、ペプチドの亜鉛に対する比は約1.5:1であり、投与したペプチドの用量は、約1mgであった。
溶液8.3:(i)80% ZnCl2(0.695mg/ml)及び(ii)20% NaOH(1.75mg/ml)を含有する溶液中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
【0138】
この組成物は、図5に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0139】
8.4.;10%ペプチド溶液:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。以下の4種の組成物のそれぞれで、ペプチドの濃度は、約10%(重量/重量)であり、ペプチドの亜鉛に対する比は約1.5:1であり、投与したペプチドの用量は、約15mgであった。
溶液8.4.A:(i)90% ZnCl2(3.367mg/ml)及び(ii)10% NaOH(5.01mg/ml)を含有する溶液中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.4.B:ZnCl2の溶液(2.993mg/ml)中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
溶液8.4.C:溶液8.4.Bに実質的に類似して、AcOH/AcO-を使用して緩衝化されている;
溶液8.4.D:溶液8.4.Aに実質的に類似。
【0140】
これらの組成物は、図2に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0141】
8.5.;半固体組成物:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の半固体組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。組成物8.5.Aでは、ペプチドの濃度は約5%であり、組成物8.5.B、8.4.C、及び8.5.Dでは、ペプチドの濃度は、約10%(重量/重量)であった。ペプチドの亜鉛に対する比は、組成物8.5.A、8.5.B、及び8.5.Cで約5.4:1であり、組成物8.5.Dでは、その比は約4.0:1であった。4種の組成物すべてで、投与したペプチドの用量は、約1mgであった。
【0142】
組成物8.5.A:WFI中のZnCl2(0.40mg/ml)を含有する半固体組成物中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
組成物8.5.B:組成物8.5.Aに実質的に類似するが、ZnCl2濃度を上方へ調整して、ペプチド:Zn比を約5.4:1に維持した。
組成物8.5.C:(i)50% ZnCl2(1.69mg/ml)及び(ii)50% NaOH(1mg/ml)を含有する半固形物中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2;
組成物8.5.D:(i)50% ZnCl2(2.28mg/ml)及び(ii)50% NaOH(1mg/ml)を含有する半固形物中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2。
【0143】
これらの組成物は、図3に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0144】
8.6.;半固体組成物:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の半固体組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。この組成物は、5.22mg/ml ZnCl2溶液をpH=2.0で使用して配合した。充分なペプチドを提供して、ペプチドの亜鉛に対する比約4:1を有する25%ペプチド半固体組成物を得た。この組成物のpHを、10mg/ml NaOHを使用して本明細書記載のとおり調整した。投与したペプチドの用量は、約15mgであった。
【0145】
組成物8.6は、図6に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0146】
8.7.;半固体組成物:
上記8.1節の記載と実質的に同じin vivoアッセイ手順を使用して、以下の半固体組成物について、主題のペプチドを延長された期間にわたり放出する能力を検証した。この組成物は、8.5mg/ml ZnCl2溶液をpH=2.0で使用して配合した。充分なペプチドを提供して、ペプチドの亜鉛に対する比約1.5:1を有する23%ペプチド半固体組成物を得た。上記2.6節に詳述した方法に従って、この組成物を配合した。投与したペプチドの用量は、約15mg(組成物の約65μlに相当する)であった。
【0147】
組成物8.6は、図7に図示するように、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の持続放出をもたらした。
【0148】
開示した配合物の様々な置換物(permutations)を用いた更なるアッセイを同様にin vivoアッセイへ適用して、本発明の組成物が式(I)の化合物に有用な医薬送達プラットフォームを提供することが確かめられ。本出願の教示を使用すれば、当業者は、ペプチド、ZnCl2の量及びpHを変動させて、本明細書に記載の本発明の組成物を調製することができる。
【0149】
実施例9:
1.:10%ペプチド溶液中の酢酸塩含量によるPKプロファイル調節
本実施例は、雄ビーグル犬における(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の薬物動態試験を開示し、それは10%(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2及び塩化亜鉛を含有する2種の即時調合組成物[(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2:Zn=1.5:1]の15mg/イヌの用量レベルでの単回皮下投与の後に行われた。
このin vivoアッセイを行う方法は、パラグラフ8.1で開示したものと同じである。
【0150】
本実施例は、医薬組成物中の酢酸塩含量によるPKプロファイル調節、従って、医薬組成物中の[酢酸塩/ペプチド]比のpHに対する影響を明らかにする。
このpH調節は、酢酸塩含量の調節により制御されて、酢酸塩含量の減少は、pHの増加効果を示す。
酢酸塩の変動は又、Cmaxに対する効果を示す。一般に、酢酸塩含量の減少は、Cmax値を減少させる。
酢酸塩含量の増加は、溶解性と物理安定性の改善を示す。
【0151】
選択した配合物によれば、酢酸塩/ペプチド比の調節による溶解性又は安定性に対する改善は、ペプチド/Zn比の例えばCmaxに対する調節によって補償される。このことは、安定性、溶解性、pH又はCmaxを調整する3つの可能な変数のシステムとして理解できる。
【0152】
本実施例では、略語「SD」は、標準偏差を意味する。「AUC」は、血漿濃度−時間曲線下のアルテミシニン(Artemisinin)面積を意味する。
略語「MRT」の意味は、平均滞留時間(MRT)であり、ピーク薬物濃度の時間であるtmaxとMRTを比較してバイオアベイラビリティ率を推定するための変数である。時点0より最終サンプリング時間までのデータを使用して、MRTを計算した。
【0153】
表3には、異なる[酢酸塩/ペプチド]比を有する10%ペプチド組成物バッチとビーグル犬における皮下投与の結果をまとめてある。血中薬物濃度のピーク値、(Cmax)は、[3.7:1]の[酢酸塩/ペプチド]モル比では8.10ng/ml(SD=1.80ng/ml)であり、一方、より低い比[3.2:1]を有するバッチは、5.65ng/ml(SD=2.61ng/ml)のCmax値をもたらした。
【0154】
【表3】
【0155】
10.;GLP−1ペプチド塩/二価金属配合物:
10.1.方法:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2 1mg/mL水の溶液とPBS溶液を調製して、pHを7.0へ調整した。CaCl2、CuCl2、MgCl2、及びZnCl2の10mg/mLストック水溶液を調製した.CaCl2、MgCl2、及びZnCl2溶液のpHは、7.0へ調整した。CuCl2溶液のpHは、Cuが析出したので、塩基性にすることができなかった。従って、pH4.4のCuCl2溶液を使用した。
【0156】
200μLの(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2(1mg/mL)溶液へ4μLの金属イオン水溶液又はPBS溶液を加えて、200μg/mLの最終金属イオン濃度とした。得られた溶液を混合して、沈殿を確認した。沈殿が生成したならば、懸濁液を遠心分離させた。上清中の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2濃度をHPLCによって定量した。
【0157】
10.2.結果:
表4.二価金属イオンの存在下での(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の溶解度
【0158】
【表4】
【0159】
10.3.;(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/二価金属(pH5.5)澄明溶液配合物の薬物動態試験:
以下の手順を使用することによって、(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の3種の異なる配合物を調製した。
(1)CuCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩
(2)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩
(3)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩
【0160】
GLP−1類似体のTFA塩(このTFA塩は、分取用HPLCを使用してTFA含有緩衝溶液で溶出させるペプチドの精製により生じる)は、該ペプチドを少量の0.25N酢酸水溶液に溶解させることによって、酢酸塩等の別の塩へ変換することができる。得られた溶液をsemi-prepHPLCカラム(Zorbax社,300SB,C−8)へ適用する。このカラムを(1)0.1N酢酸アンモニウム水溶液で0.5時間、(2)0.25N酢酸水溶液で0.5時間、そして(3)4ml/分の流速の線形勾配(30分にわたり20%〜100%の溶液B)(溶液Aは、0.25N酢酸水溶液であり;溶液Bは、アセトニトリル/水(80:20)中0.25N酢酸である)で溶出させる。該ペプチドを含有する分画を採取して、凍結乾燥させる。
【0161】
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩は、凍結乾燥法によって製造した。20mgの(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩を4mLの20mM HCl水溶液に溶かして、室温で10分間インキュベートした。この試料を凍結させて、一晩凍結乾燥させた。凍結乾燥を更に2回実施して、最終生成物の塩化物含量を定量した。定量され塩化物含量は、5.38%であった。
【0162】
(1)CuCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl(5.3mg;ペプチド含量は95%)を50μLの20mM CuCl2水溶液に溶かした。pHを約2μLの1N NaOHで約5.5へ調整した。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/CuCl2のモル比は、1.5:1であった。ペプチド濃度は、水中10%(w/w)(30mM)で、約5.5のpHであった。
【0163】
(2)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl塩:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2・HCl(5.3mg;ペプチド含量は95%である)を50μLの20mM ZnCl2水溶液に溶かした。pHを約2μLの1N NaOHで約5.5へ調整した。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は、1.5:1であった。ペプチド濃度は、水中10%(w/w)(30mM)で、約5.5のpHであった。
【0164】
(3)ZnCl2及び(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩:
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2酢酸塩(5.5mg;ペプチド含量は92%である)を50μLの20mM ZnCl2水溶液に溶かした。得られた溶液を一晩凍結乾燥させて、50μLの水に再び溶かした。pHを約1μLの1N NaOHで約5.5へ調整した。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2/ZnCl2のモル比は、1.5:1であった。ペプチド濃度は、水中10%(w/w)(30mM)で、約5.5のpHであった。
【0165】
10.4.投薬と血液試料採取:
ラットに上記3種の(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2配合物を0.3mg/ラット(10%溶液の3μL)で皮下投与した。5、10、15、30分、1、2、4、8時間、及び1、2、3、4、7、10日目に血液試料を採取した。この血液から遠心分離により血漿を採取して、−80℃で保存した。注射部位での組織も採取し、5×メタノール中でホモジェナイズして、−80℃で保存した。
2匹のラットを5、10、15、30分と1、2、4、8時間のデータ点のために使用した。1匹のラットを1、2、3、4、7、10日のデータ点のために使用した。
【0166】
10.5.;LC−MS/MS試料調製:
血漿(200μL)を10μLのギ酸で酸性化して、600μLのアセトニトリルで沈殿させた。遠心分離により上清を採取して、真空で濃縮乾固させた。残渣を150μLの30%アセトニトリル水溶液に溶かして、遠心分離した。50μLの上清をLC−MS/MS分析用に注入した。
組織メタノール抽出物(10μL)を1mLの30%アセトニトリル水溶液へ希釈して、50μLをLC−MS/MS分析用に注入した。
【0167】
10.6.;LC−MS/MS分析:
LC−MS/MS分析は、商品名Turboイオンスプレープローブを取り付けたAPI4000質量分析計システムで行った。分子イオン検出のMRMモードを、668.9及び136.1のイオン対で使用した。
HPLC分離は、0.30mL/分の流速で10分間、10% B〜90% Bへ勾配をかけてLuna C8(2) 2×30mm 3μカラムで実施した。緩衝液Aは、1%ギ酸水溶液であり、緩衝液Bは、1%ギ酸アセトニトリル溶液である。
LOQは、0.5ng/mLであった。
【0168】
10.7.結果と要約:
ペプチドの血漿濃度は、その標準較正プロットを用いて計算した。0.06mg/mLの(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2(5mLメタノール抽出物中0.3mg/ラット)を100%として使用して、注射部位に残った割合を計算した。
【0169】
【表5】
【0170】
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2のHCl塩配合物の薬物動態プロファイルの全体経時変化プロットを図8に示す。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2のHCl塩配合物の薬物動態プロファイルの初期経時変化プロットを図9に示す。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の酢酸塩配合物の薬物動態プロファイルの全体経時変化プロットを図10に示す。(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の酢酸塩配合物の薬物動態プロファイルの初期経時変化プロットを図11に示す。
【0171】
【表6】
【0172】
(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2の注射部位での組織蓄積プロファイルを図12に更に示す。
【0173】
【表7】
【0174】
上記結果は、GLP−1類似体塩型の、特に二価金属塩との組み合わせが、初期血漿濃度が抑えられ、即ち、望まれない副作用を抑制又は消失させる可能性がある、許容される持続放出配合物を提供することを示す。
上記データは、GLP−1類似体の強酸塩、例えばHCl塩が、初期血漿濃度において更なる低下を示すことを示す。本発明は下記理論に制限されるものではないが、GLP−1類似体のHCl塩の初期血漿濃度における優れた低下は、in vivoでの中和プロセスに関連すると考えられている。上記組成物(1)及び(2)では、pH5.5で酸の100%が塩化物の形であり、遊離酸は存在しない。従って、皮下注射後に、体液はこの溶液剤をより速やかに中和して、この溶液剤を更に急速に沈殿させることができる。中和時間におけるこれらの減少は、より少なく、より顕著でない初期血漿濃度又はスパイクをもたらす。
【0175】
実施例11;10%ペプチド類似体(Aib8,35)hGLP−1(7−36)NH2、酢酸及び塩化亜鉛を含む液体組成物の調製:
【0176】
【表8】
【0177】
WFI(又は注射用水)は、無菌水又はNaCl等の等張剤を含む無菌水を示す。
シリンジを10μlで完全充填した。実施例11.1では、バイアルは0.3mlの10%ペプチド類似体溶液を含む。実施例11.2では、シリンジは0.11mlの10%ペプチド類似体溶液を含む。実施例11.3では、シリンジは0.21mlの10%ペプチド類似体溶液を含む。ペプチド類似体の量は医薬物質の分析に基づき調整された。酢酸塩のペプチドに対する割合を3.2:1mol当量とするのに充分な、酢酸を添加した。ペプチド類似体の塩化亜鉛に対する割合を1.5:1mol当量とするのに充分な、塩化亜鉛を添加した。溶液中のペプチド類似体の重量割合を10%とするのに充分な、注入用の水を添加した。
【0178】
方法:
酢酸をWFIの約90%に添加した。
ペプチド類似体を添加した。
得られた組成物を完全に溶解するまで攪拌した。
塩化亜鉛を添加した。
WFIの必要量を添加した。
得られた組成物を完全に溶解するまで攪拌した。
溶解された溶液を、0.22μm(商品名MILLIPAK20)で2回滅菌ろ過した。
ろ過した溶液を、0.3ml/バイアル=0.310g/バイアル(密度=1.033)バイアル内、又はデッドボリューム10μlのシリンジ内に充填した。
【0179】
上記に引用した出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の追加の態様は前述の開示から明らかであり、それらは、本明細書に充分記載され、下記特許請求の範囲で特定される本発明に含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0180】
HV:双方向手動バルブ
S1、S2、S3:シリンジ
SR:ロッド
SC:双方向コネクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む制御放出液体医薬組成物であって:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに
酢酸塩及び/又は酢酸;
下記により特徴付けられる医薬組成物;
上記二価の金属及び/又は二価の金属塩は亜鉛及び/又は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは、4〜5の範囲であり;
上記酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約1:1〜6:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約6:1〜1:1である。
【請求項2】
ペプチド類似体の一部及び酢酸塩の一部は、ペプチド類似体の塩として存在する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬的組成物の最終pHは4.5±0.1である請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
液体は無菌水又は、NaCl等の等張剤を含む無菌水から選ばれる請求項1〜3いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比は約3.2:1である請求項1〜4いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約1.5〜1である請求項1〜5いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
二価の金属及び/又は二価の金属塩は塩化亜鉛である請求項1〜6いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
二価の金属及び/又は二価の金属塩は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1の範囲であり;
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約3.2:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約1.5:1である請求項1〜7いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
ペプチドの濃度は10重量/容量%である請求項1〜8いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
亜鉛の濃度範囲は0.26重量/容量%〜2.35重量/容量%である請求項1〜9いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
組成物は温度5℃で少なくとも1年間安定である請求項1〜10いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
式(I)の化合物が被検体内で少なくとも約1週間、好ましくは2週間放出されるように上記組成物が配合されている請求項1〜11いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物は、全成分の凍結乾燥無しに、好ましくは全て一緒に混合して調製された請求項1〜12いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
容器、好ましくはプレフィルドシリンジ内に保存されている請求項1〜13いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項15】
下記ステップを含む請求項1〜14いずれか1項記載の医薬組成物の製造方法:
A:液体、酢酸塩及び/又は酢酸、並びにペプチド類似体を組み合わせるステップ、及び
B:二価の金属及び/又は二価の金属塩を添加し溶解するステップ。
【請求項16】
更に下記ステップを含む請求項15記載の医薬組成物の製造方法:
C:ステップBから得られる組成物を無菌ろ過するステップ、及び
D:容器へ組成物を充填するステップ。
【請求項17】
請求項1〜9いずれか1項記載の医薬組成物でプレフィルドされたシリンジであって:上記組成物は下記を含むシリンジ:
液体としての水(qs210μl);
21mgの式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属塩としての0.571mgの塩化亜鉛;及び
酢酸;
但し、上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1であり;
酢酸のペプチド類似体に対するモル比は約3.2:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比は約1.5:1である。
【請求項1】
下記を含む制御放出液体医薬組成物であって:
液体;
式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属及び/又は二価の金属塩;並びに
酢酸塩及び/又は酢酸;
下記により特徴付けられる医薬組成物;
上記二価の金属及び/又は二価の金属塩は亜鉛及び/又は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは、4〜5の範囲であり;
上記酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約1:1〜6:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約6:1〜1:1である。
【請求項2】
ペプチド類似体の一部及び酢酸塩の一部は、ペプチド類似体の塩として存在する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬的組成物の最終pHは4.5±0.1である請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
液体は無菌水又は、NaCl等の等張剤を含む無菌水から選ばれる請求項1〜3いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比は約3.2:1である請求項1〜4いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約1.5〜1である請求項1〜5いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
二価の金属及び/又は二価の金属塩は塩化亜鉛である請求項1〜6いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
二価の金属及び/又は二価の金属塩は塩化亜鉛であり;
上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1の範囲であり;
酢酸塩及び/又は酢酸の、ペプチド類似体に対するモル比範囲は約3.2:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比範囲は約1.5:1である請求項1〜7いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
ペプチドの濃度は10重量/容量%である請求項1〜8いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
亜鉛の濃度範囲は0.26重量/容量%〜2.35重量/容量%である請求項1〜9いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
組成物は温度5℃で少なくとも1年間安定である請求項1〜10いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
式(I)の化合物が被検体内で少なくとも約1週間、好ましくは2週間放出されるように上記組成物が配合されている請求項1〜11いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物は、全成分の凍結乾燥無しに、好ましくは全て一緒に混合して調製された請求項1〜12いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
容器、好ましくはプレフィルドシリンジ内に保存されている請求項1〜13いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項15】
下記ステップを含む請求項1〜14いずれか1項記載の医薬組成物の製造方法:
A:液体、酢酸塩及び/又は酢酸、並びにペプチド類似体を組み合わせるステップ、及び
B:二価の金属及び/又は二価の金属塩を添加し溶解するステップ。
【請求項16】
更に下記ステップを含む請求項15記載の医薬組成物の製造方法:
C:ステップBから得られる組成物を無菌ろ過するステップ、及び
D:容器へ組成物を充填するステップ。
【請求項17】
請求項1〜9いずれか1項記載の医薬組成物でプレフィルドされたシリンジであって:上記組成物は下記を含むシリンジ:
液体としての水(qs210μl);
21mgの式(I)のペプチド類似体:[Aib8,35]hGLP−1(7−36)NH2;
二価の金属塩としての0.571mgの塩化亜鉛;及び
酢酸;
但し、上記医薬的配合物の最終pHは4.5±0.1であり;
酢酸のペプチド類似体に対するモル比は約3.2:1であり;
ペプチド類似体の亜鉛に対するモル比は約1.5:1である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−517419(P2012−517419A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548809(P2011−548809)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000420
【国際公開番号】WO2010/089672
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(509120469)イプセン ファルマ ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000420
【国際公開番号】WO2010/089672
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(509120469)イプセン ファルマ ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】
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