説明

GPCR142およびリラキシン3若しくはINSL5の複合体、ならびにそれらの製造および使用

GPCR142/リラキシン3およびGPCR142/INSL5複合体が記述される。該複合体はGPCR142受容体活性の調節物質のスクリーニングのためのアッセイ試薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への交差引用
本出願は、“Relaxin3−GPR142 Complexes And Their Production And Use(リラキシン3−GPR142複合体ならびにそれらの製造および使用)”と題された2003年8月7日出願の米国仮出願第60/493,941号明細書に対する優先権の利益を主張する。本出願は、“GPCR142−INSL5 Complexes And Their Production And Use(GPCR142−INSL5複合体ならびにそれらの製造および使用)”と題された2004年6月16日出願の米国仮出願第60/580,083号明細書に対する優先権の利益もまた主張する。これらの優先出願の開示は引用することにより本明細書に組込まれる。
【0002】
本発明は、GPCR142/リラキシン3複合体およびGPCR142/INSL5複合体に関する。本発明はまた、こうした複合体の製造方法およびそれらの使用方法にも関する。本発明はさらに、異なる種からのGPCR142ペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に記述されるとおり、リラキシン3はGタンパク質共役型受容体(GPCR)の1種、GPCR135の天然のリガンドである、GPCR135がリラキシン3(INSL7(Genbank受託番号:NM_173184)ともまた称される)の内因性受容体であることが発見され、アミノ酸レベルでGPCR135に対する40%の相同性をもつ遺伝子を含有するDNA配列連結断片(Genbank受託番号:AL355388)が発見され、GPCR142と命名されている。
【0004】
GPCRは、ホルモン、神経伝達物質、ペプチド、脂質、イオン、光、匂い物質、ヌクレオチド、脂肪酸誘導体および他の化学物質メディエーターを包含する多彩な細胞外シグナルの伝達の原因である膜貫通受容体タンパク質である。例えば特許文献2を参照されたい。GPCRは優れた薬物標的として確立されているため、それらは薬物発見にとりわけ重要である。すなわち、それらは市販の薬物の50%の標的である。増大する数の疾患がGPCRと関連することが見出された。GPCRを標的とする薬物は心血管系ないし胃腸からCNSおよび他者までの広範な障害を治療するのに使用されている(非特許文献1)。
【0005】
GPCRに媒介されるシグナル伝達事象は、しばしばGPCRへの特異的リガンドの結合に際して開始される。各GPCRは、細胞外N末端ドメイン、7個の異なる膜貫通セグメントおよび細胞内C末端ドメインから構成される。GPCRの細胞外N末端ドメイン、膜貫通ドメイン若しくは細胞内ループへのリガンドの結合は、GPCRと結合した細胞内ヘテロ三量体GTP結合タンパク質(Gタンパク質)の活性化に至るコンホメーション変化をもたらす。これらの活性化されたGタンパク質は順に細胞生理学を調節する多様な細胞内応答を媒介する。従って、リガンドは、GPCRの生理学的機能の解明手段ならびにGPCRのシグナル伝達活性を調節する化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0006】
現時点で、約200種のみのGPCRが、約70種の既知のリガンドにより活性化される既知のGPCRとして分類されている。配列分析により、GPCRがヒトゲノムの最大のスーパーファミリーの1つに属することが発見された。すなわち、GPCRをコードする1000を超える遺伝子で評価された(非特許文献2)。多数の推定のGPCRが、それらの天然のリガンドが未知であるためにオーファン受容体として記述されている。これらの特徴付けられていないオーファンGPCRのいくつかは治療上の標的として有用でありうる。GPCRに対する特定のリガンドの同定は、これらのオーファンGPCRの潜在的な治療上の利益を利用するための手掛かりである(非特許文献3)。
【0007】
上に示されたとおり、リラキシン3(INSL7としてもまた知られる)がGPCR135ならびにGPCR142のリガンドであることが見出された。非特許文献4;および
非特許文献5を参照されたい。リラキシン3はインスリン/リラキシンス―パーファミリーの1メンバーである。このファミリーのメンバーは3個のジスルフィド結合により結合されたペプチドサブユニット(A鎖およびB鎖)を特徴とする。該3個のジスルフィド結合のうち2個はサブユニット間結合であり、そして別の1個はB鎖中の鎖内結合である。該ファミリーで、インスリン、IGF1およびIGF2は、1回膜貫通する受容体であるチロシンキナーゼ/成長因子受容体による糖代謝およびシグナルの調節に関与していると報告されている。該ファミリーの2種の他のメンバーは、N末端細胞外ドメインにロイシン豊富な反復配列をもつGPCRであるLGR7および/若しくはLGR8のリガンド、リラキシンおよびINSL3である。リラキシン3はLGR7の付加的なリガンドであることもまた報告された。リラキシン/インスリンスーパーファミリーの別のメンバーはINSL5である(非特許文献6)。
【0008】
GPCR135がINSL7(Genbank受託番号:NM_173184)ともまた称されるリラキシン3の内因性受容体であることを発見したので、われわれは、アミノ酸レベルでGPCR135に対する40%の相同性をもつ遺伝子を含有するDNA配列連結断片(Genbank受託番号:AL355388)を見出し、われわれはGPCR142と命名した。しかしながら、GPCR142のリガンドは以前に同定されていなかった。
【特許文献1】2004年2月25日出願の国際出願第PCT/US2004/005666号明細書
【特許文献2】WIPO公開第WO 02/00719号明細書
【非特許文献1】Wilsonら、1998、Brithish J.of Pharmacology 125:1387−1392
【非特許文献2】Civelliら、2001、Trends in Neurosciences 24:230−237
【非特許文献3】Howardら、2001、Trends in Pharmacological Sciences 22:132−140
【非特許文献4】Liuら、2003a、“Identification of relaxin−3 as an endogenous ligand for the orphan G−protein coupled receptor GPCR135”、JBC 278:50754−50764
【非特許文献5】Liuら(2003b)、“Identification of a second relaxin−3 receptor,GPCR142”、JBC 278:50765−50770
【非特許文献6】Conklinら 1999、Genomics 60(1):50−56
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
今や、GPCR142がリラキシン3により選択的に活性化されることが発見され;さらに、今や、GPCR142がINSL5により選択的に活性化されるがしかしGPCR135はされないことが発見された。
【0010】
一般的な一局面において、本発明は従って、リラキシン3若しくはリラキシン3の活性フラグメント、またはINSL5若しくはINSL5の活性フラグメントから選択されるリガンド成分に結合されたGPCR142若しくはGPCR142の活性フラグメントを含有する受容体成分を含んでなる受容体−リガンド複合体に関し、ここで、受容体およびリガンド成分の少なくとも一方が実質的に純粋な形態にある。
【0011】
他の一般的な局面において、本発明は:配列番号1に対応するヌクレオチド配列を有する単離されたポリヌクレオチド若しくはその相補物;配列番号2、4、7、8および9に対応するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド;こうしたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなるベクター;ならびにこうしたベクターを含んでなる組換え宿主細胞に関する。
【0012】
本発明のさらなる一般的な局面はアッセイ若しくはスクリーニング方法に関する。例えば、GPCR142/リラキシン3複合体若しくはGPCR142/INSL5複合体のいずれかの生物学的活性を増大若しくは減少させる化合物の一般的な一同定方法は:化合物および緩衝溶液を含んでなる試験サンプルを、本発明の受容体−リガンド複合体を含んでなるアッセイ試薬と接触させること;受容体−リガンド複合体の生物学的活性を測定すること;および、その測定で得られた測定値を、受容体−リガンド複合体を緩衝溶液と接触させた対照の測定値と比較することを含んでなる。GPCR142若しくはその活性フラグメントに結合する化合物の同定の別の一般的なアッセイ方法は:GPCR142若しくはその活性フラグメントを、試験化合物および標識したリラキシン3若しくはその活性フラグメント、または標識したINSL5若しくはその活性フラグメントのいずれかと接触させること:およびGPCR142若しくはその活性フラグメントに結合する標識したリガンド成分若しくはその活性フラグメントの量を測定すること、ならびにその後、その量を、GPCR142若しくはその活性フラグメントを試験化合物の非存在下で標識したリガンド成分若しくはその活性フラグメントと接触させた対照の測定値と比較することを含んでなる。さらなる一般的な一アッセイは:試験化合物を、GPCR142若しくはその活性フラグメントを含んでなるアッセイ試薬と接触させること;GPCR142若しくはその活性フラグメントの生物学的活性を測定すること;および、この結果を、GPCR142若しくはその活性フラグメントを試験化合物の非存在下でリラキシン3若しくはその活性フラグメント、またはINSL5若しくはその活性フラグメントのいずれかと接触させた対照の測定値のものと比較することを含んでなる、GPCR142を結合しかつリラキシン3若しくはINSL5のいずれかを模倣する化合物の同定方法に関する。
【0013】
本発明の他の局面、特徴および利点は、本発明の詳細な記述およびその好ましい態様、ならびに付属として付けられる請求の範囲を包含する以下の開示から明らかであろう。
[発明の詳細な記述]
下に引用される全部の刊行物の開示はこれにより本明細書に引用することにより組込まれる。別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される全部の技術的および科学的用語は、本発明が関する当業者に一般に理解されると同一の意味するところを有する。
【0014】
以下は、下で本明細中でときに使用される略語である:bp=塩基対;Ca2+=カルシウムイオン;cAMP=環状アデノシン一リン酸;cDNA=相補DNA;CNS=中枢神経系;kb=キロ塩基対;1000塩基対;kDa=キロダルトン;GPCR=Gタンパク質共役型受容体;Gタンパク質=GTP結合タンパク質;GTP=グアノシン5’−三リン酸;nt=ヌクレオチド;PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動;PCR=ポリメラーゼ連鎖反応;SDS=ドデシル硫酸ナトリウム;SiRNA=低分子干渉RNA;およびUTR=非翻訳領域。
【0015】
「包含すること」、「含んでなること」および「含有すること」という用語は本明細書でそれらの公然の制限しない意味で使用される。
【0016】
ポリペプチド若しくは核酸の「活性」、「生物学的活性」若しくは「機能的活性」は、標準的技術に従ってin vivo若しくはin vitroで測定されるところのポリペプチド若しくは核酸分子により発揮される活性を指す。こうした活性は、第二のタンパク質との結合若しくはそれに対する酵素活性のような直接活性、または第二のタンパク質との該タンパク質の相互作用により媒介される細胞のシグナル伝達活性のような間接的活性であり得る。例えば、リラキシン3の具体的に説明する一生物学的活性は、GPCR135若しくはGPCR142を結合しかつそれらにより実施されるシグナル伝達事象(1種若しくは複数)を開始するその能力である。GPCR142の例示的一生物学的活性は、GPCR135のように、リラキシン3への結合に際してそれがGTPに対する高親和性を有するGタンパク質を活性化することを介して環状AMPおよびカルシウムのような細胞内シグナル伝達分子(セカンドメッセンジャー分子)の濃度を変える一連の事象を活性化することである。これらの細胞内シグナル伝達分子は順に該細胞の生理学および挙動を変える。
【0017】
「クローン」は単一の細胞すなわち共通の祖先から有糸分裂により派生する細胞の一集
団である。「細胞株」は多くの世代の間in vitroで安定な増殖が可能である初代細胞のクローンである。
【0018】
「リラキシン3およびGPCR142の複合体に関する障害」は、リラキシン3およびGPCR142の複合体の過活性若しくは不十分な活性を伴う障害若しくは疾患、ならびにこうした障害若しくは疾患に付随して起こる状態を意味している。「過活性」という用語は、リガンドおよび受容体の複合体の増大された発現若しくは該複合体の増大された生物学的活性のいずれも指す。「不十分な活性」という用語は、リガンドおよび受容体の複合体の減少された発現若しくは該複合体の減少された生物学的活性のいずれも指す。
【0019】
「遺伝的バリアント」若しくは「バリアント」は、一集団の最低1個体の特定の一遺伝子座に存在しかつ野性型と異なる特定の遺伝的バリアントを意味している。
【0020】
本明細書で使用されるところの「GPCR142」は、ヒトGPCR142(配列番号4)、マウスGPCR142(配列番号2)、サルGPCR142(配列番号7)、ウシGPCR142(配列番号8)若しくはブタGPCR142(配列番号9)に対応するか、または本明細書に記述されるヒト、マウス、サル、ウシ若しくはブタGPCR142タンパク質に対し生じられた抗体、例えばポリクローナル若しくはモノクローナル抗体に結合することが可能であるポリペプチドを指す。ヒトGPCR142のcDNA若しくはタンパク質配列は、米国特許第5,955,309号明細書ならびにWIPO公開第WO 01/36471号、同第WO 02/61087号および同第WO 02/00719号明細書(それらの開示は本明細書に引用することにより組込まれる)に提供されている。
【0021】
本明細書で使用されるところの「宿主細胞」という用語は、ベクター上か若しくは細胞染色体に組み込まれたかのいずれかのDNA分子を含有する細胞を指す。宿主細胞は、該DNA分子を内因性に含有する天然の宿主細胞若しくは組換え宿主細胞のいずれでもあり得る。
【0022】
「単離された」核酸分子は、異なる核酸配列を含む核酸分子から実質的に分離されているものである。本発明の単離された核酸分子の態様は、好ましくはヒト起源のcDNAおよびゲノムDNAならびにRNAを包含する。
【0023】
「単離された」若しくは「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性のフラグメント若しくは部分は、該タンパク質が産生かつ単離される細胞若しくは組織供給源からの細胞性物質若しくは他の汚染するタンパク質を実質的に含まないか、または該タンパク質が化学的に合成される場合は化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。例えば、細胞性物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、若しくは好ましくは20%、若しくはより好ましくは10%、若しくはなおより好ましくは5%(乾燥重量)未満の汚染するタンパク質を有するタンパク質の調製物を包含し得る。タンパク質若しくはその生物学的に活性の部分が組換え的に産生される場合、それはまた、好ましくは培地を実質的に含まず、例えば、培地はタンパク質調製物の容量の約20%、若しくはより好ましくは10%、若しくはなおより好ましくは5%未満に相当する。タンパク質が化学合成により製造される場合、それは、好ましくは化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。すなわち、それは該タンパク質の合成に関与する化学的前駆体若しくは他の化学物質から分離されている。従って、タンパク質のこうした調製物は、目的のポリペプチド以外に約30%、若しくは好ましくは20%、若しくはより好ましくは10%、若しくはなおより好ましくは5%(乾燥重量)未満の化学的前駆体若しくは化合物を有する。
【0024】
単離された生物学的に活性のポリペプチドはいくつかの異なる物理的形態を有し得る。単離されたポリペプチドは完全長の新生すなわちプロセシングされていないポリペプチド、または部分的にプロセシングされたポリペプチド若しくはプロセシングされたポリペプチドの組合せとして存在し得る。完全長の新生ポリペプチドは、特異的タンパク質分解性切断事象により翻訳後に改変されて該完全長の新生ポリペプチドのフラグメントの形成をもたらし得る。フラグメント若しくはフラグメントの物理的結合が完全長のポリペプチドに関連した生物学的活性を有し得;もちろん、個々のフラグメントに関連する生物学的活性の程度は変動し得る。
【0025】
「リンカー領域」若しくは「リンカードメイン」という用語は、クローニングベクター若しくは融合タンパク質の構築で使用される1種若しくはそれ以上のポリヌクレオチド若しくはポリペプチド配列を指す。リンカー領域の機能は、ヌクレオチド配列中へのクローニング部位の導入、2個のタンパク質ドメイン間への可動成分若しくは空間創製領域の導入、または特異的分子相互作用を助長するための親和性タグの創製を包含し得る。リンカー領域を、所望の場合はポリペプチド若しくはヌクレオチド配列の構築の間に融合タンパク質に導入し得る。
【0026】
本明細書で使用されるところの「核酸」という用語は、1個若しくはそれ以上のヌクレオチド、すなわちリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド若しくは双方から構成される分子を指す。該用語はリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの単量体および多量体を包含し、リボヌクレオチドおよび/若しくはデオキシリボヌクレオチドは、多量体の場合、5’から3’の結合を介して一緒に結合される。リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの多量体は一本鎖若しくは二本鎖でありうる。しかしながら、結合は例えば5’から3’の結合を含んでなる核酸を包含する当該技術分野で既知の結合のいずれも包含しうる。ヌクレオチドは天然に存在しうるか、若しくは天然に存在する塩基対と塩基対の関係を形成することが可能である合成で製造されたアナログでありうる。塩基対形成の関係を形成することが可能である天然に存在しない塩基の例は、アザおよびデアザピリミジンアナログ、アザおよびデアザプリンアナログ、ならびにピリミジン環の炭素および窒素原子の1個若しくはそれ以上がヘテロ原子、例えば酸素、イオウ、セレン、リンなどにより置換されている他の複素環塩基アナログを包含する。さらに、「核酸配列」という用語は相補配列を企図し、そして該核酸配列およびその相補物双方に実質的に相同であるいかなる核酸配列も包含する。
【0027】
「ポリヌクレオチド」はホスホジエステル結合により一緒に結合された最低2ヌクレオチドの直鎖状多量体を指し、そしてリボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチドを含みうる。
【0028】
「多形」は一集団中の個体間の特定の一遺伝子座での一組の遺伝的バリアントを指す。
【0029】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合により直鎖に相互に結合された2個若しくはそれ以上のアミノ酸を含んでなるいかなるペプチド若しくはタンパク質も指す。本明細書で使用されるところの該用語は、例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーともまた当該技術分野で称される短い鎖、ならびに多くの型が存在する当該技術分野でタンパク質としばしば称されるより長い鎖の双方を指す。ポリペプチドがしばしば、20種の天然に存在するアミノ酸と一般に称される20種のアミノ酸以外のアミノ酸を含有すること、ならびに、末端アミノ酸を包含する多くのアミノ酸が、プロセシングおよび他の翻訳後修飾のような天然の過程ならびに当該技術分野で既知の化学修飾技術のいずれかにより所定のポリペプチド中で改変され得ることが認識されるであろう。ポリペプチド中に天然に存在する一般的な修飾はここで網羅的に列挙するには多すぎるが、しかし、基礎的な教科書および詳述されたモノグラフ、ならびに研究論文に記述されており、そして従って当業者の範囲内にある。本発明のポリペプチド中に存在し得る既知の修飾のうち、具体的に2〜3例を挙げると、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド若しくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質若しくは脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化のようなタンパク質へのアミノ酸の転写RNA媒介性の付加、およびユビキチン化である。
【0030】
グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、水酸化およびADPリボシル化のようないくつかの一般的な修飾は、PROTEINS――STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES、第2版、T.E.
Creighton、W.H.Freeman and Company、ニューヨーク(1993)を包含する多くの基礎的な教科書に記述されている。POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS、Johnson(編)、Academic Press、ニューヨーク(1983)中、Wold、“Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects”、1〜12ページ;Seifterら(1990)、Meth.Enzymol.182、626−646;およびRattanら、“Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging”(1992)、Ann.N.Y.Acad.Sci.663、48−62により提供されるもののような多くの総説もまたこの主題に関して利用可能である。
【0031】
既知であるとおりかつ上で示されたとおり、ポリペプチドは常に完全に直鎖状ではないことが認識されるであろう。例えば、ポリペプチドは(天然のプロセシング若しくは人的操作を介してを包含する)翻訳後に修飾され得る。環状、分枝状および分枝環状ポリペプチドを、翻訳によらない天然の過程および完全に合成の方法により同様に合成し得る。修飾は、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖およびアミノ若しくはカルボキシル末端を包含するポリペプチド中のどこでも起こり得る。例えば、共有修飾によるポリペプチド中のアミノ若しくはカルボキシル基または双方の封鎖は天然に存在するおよび合成のポリペプチド中で一般的であり、そしてこうした修飾は本発明のポリペプチド中に存在し得る。例えば、大腸菌(E.coli)若しくは他の細胞中で作成されたポリペプチドのアミノ末端残基は、タンパク質分解性プロセシングの前にほとんど常にN−ホルミルメチオニンであることができる。該ペプチドの翻訳後修飾の間にNH末端のメチオニン残基が欠失され得る。従って、本発明は、該タンパク質のメチオニンを含有するおよびメチオニンなしの双方のアミノ末端バリアントの使用を企図している。
【0032】
ポリペプチド中に存在する修飾は、しばしば、それがどのように作成されるかの関数であることができる。例えば、宿主中でのクローン化された遺伝子の発現により作成されるポリペプチドについて、修飾の性質および程度は大部分、宿主細胞の翻訳後修飾能力および該ポリペプチドのアミノ酸配列中に存在する修飾シグナルにより決定されることができる。例えば、既知であるとおり、グリコシル化は、しばしば、例えば大腸菌(E.coli)のような細菌宿主中で起こらない。従って、グリコシル化が望ましい場合は、ポリペプチドをグリコシル化する宿主、一般には真核生物細胞中で発現させるべきである。昆虫細胞はしばしば哺乳動物細胞と同一の翻訳後グリコシル化を実施し、そして、この理由上、昆虫細胞発現系がとりわけ天然のグリコシル化パターンを有する哺乳動物タンパク質を効率的に発現させるために開発された。類似の考慮が他の修飾に当てはまる。同一の型の修飾が所定のポリペプチドのいくつかの部位で同一若しくは変動する程度で存在し得ることが認識されるであろう。また、所定のポリペプチドは多くの型の修飾を含有し得る。一般に、本明細書で使用されるところの「ポリペプチド」という用語は、宿主細胞中でポリヌクレオチドを発現させることにより組換えで合成されたポリペプチド中に存在するものを包含する全部のこうした修飾を包含する。
【0033】
「プロホルモン転換酵素(PC)」は、その全部が細菌のエンドプロテアーゼ、ズブチリシン(細菌)および酵母ケキシンに対する相同性を有するCa2+依存性セリンプロテアーゼの一ファミリーを指す。フリン/paired basic amino−acid−cleaving enzyme(PACE)としてもまた知られるこのファミリーは、例えばPC1/PC3、PC2、PC4、PACE4、PC5/PC6およびPC7/PC8/リンパ腫プロタンパク質転換酵素ならびにSKI−1を包含する。それらはそれらの触媒ドメイン内で50〜70%のアミノ酸同一性の程度を共有する(PCに関する総説については、Seidahら、1999、Brain Res、27:848(1−2)、45−62を参照されたい)。
【0034】
「プロモーター」は、遺伝子の転写を開始するためのRNAポリメラーゼの結合に関与するDNAの制御配列である。プロモーターはしばしば遺伝子の転写開始部位の上流(す
なわち5’から3’)にある。「遺伝子」は、コーディング領域、コーディング領域に先行する(「5’UTR」)および後に続く(「3’UTR」)非コーディング領域、ならびに個々のコーディングセグメント(「エキソン」)の間の介在非コーディング配列(「イントロン」)を包含する、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質の産生に関与するDNAのセグメントである。「コーディング」はDNA若しくはmRNAの三塩基トリプレット(「コドン」)中の特定のアミノ酸若しくは終止シグナルの指定を指す。
【0035】
「組換え宿主細胞」は、外因性DNA配列により形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞である。本明細書で使用されるところの細胞は、外因性DNAが細胞膜の内側に導入された場合にこうした外因性DNAにより「形質転換」されている。外因性DNAは細胞のゲノムを構成する染色体DNA中に組み込まれ(共有結合され)ても組み込まれなくてもよい。例えば、原核生物および酵母中では、外因性DNAはプラスミドのようなエピソーム要素上で維持されうる。真核生物細胞に関して、安定に形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞は、該外因性DNAが染色体の複製により娘細胞により遺伝されるようにそれが染色体に組み込まれたようになったものである。この安定性は、該外因性DNAを含有する娘細胞の一集団から構成される細胞株すなわちクローンを樹立する真核生物細胞の能力により示される。組換え宿主細胞は、大腸菌(E.coli)のような細菌、酵母のような真菌細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サルおよびげっ歯類起源の細胞株のような哺乳動物細胞、ならびにショウジョウバエ属(Drosophila)およびカイコ由来の細胞株のような昆虫細胞を包含する原核生物でも真核生物でもありうる。「組換え宿主細胞」という用語が特定の主題の細胞のみならずしかしまたこうした細胞の子孫若しくは潜在的な子孫も指すことがさらに理解される。ある種の修飾が、突然変異若しくは環境の影響いずれかにより後の世代で起こり得るため、こうした子孫は実際には親細胞に同一でないことがあるが、しかしなお本明細書で使用されるところの該用語の範囲内に包含される。
【0036】
「組換えポリペプチド」は組換えDNA技術により製造される、すなわち所望のポリペプチドをコードする外因性DNA構築物により形質転換された細胞から産生されるポリペプチドを指す。「合成ポリペプチド」は化学合成により製造されるものを指す。
【0037】
「リラキシン3」は:(1)ヒトリラキシン3(配列番号6)(Bathgateら、2002.J.Biol.Chem.277:1148−1157、GenBankタンパク質受託番号:NP_543140)に対する約60%以上のアミノ酸配列の同一性を有する;(2)ヒトリラキシン3(本明細書に記述されるタンパク質)に対し生じられた抗体、例えばポリクローナル若しくはモノクローナル抗体に結合することが可能である;または(3)緊縮性のハイブリダイゼーション条件下で、ヒトリラキシン3 cDNA(GenBankヌクレオチド受託番号:NM_080864)に対する約60%以上のヌクレオチド配列の同一性を有する配列を有する核酸分子に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを指す。
【0038】
「INSL5」は:(1)ヒトINSL5(配列番号5)(GenBank受託番号AF133816)に対する約60%以上のアミノ酸配列の同一性を有する;(2)本明細書で記述されるヒトINSL5タンパク質に対し生じられた抗体、例えばポリクローナル若しくはモノクローナル抗体に結合することが可能である;または(3)緊縮性のハイブリダイゼーション条件下で、ヒトINSL5 cDNAに対する約60%以上のヌクレオチド配列の同一性を有する配列を有する核酸分子に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを指す。
【0039】
「リガンド成分」は、リラキシン3若しくはその活性フラグメント、またはINSL5若しくはその活性フラグメントのいずれかを指す。
【0040】
好ましい態様において、リガンド成分は、ヒトリラキシン3若しくはヒトINSL5いずれかに対する65、70、75、80、85、90若しくは95パーセント以上のアミノ酸配列の同一性を有するポリペプチドである。他の好ましい態様において、リガンド成分は、緊縮性のハイブリダイゼーション条件下で、ヒトリラキシン3 cDNA若しくはヒトINSL5 cDNAいずれかに対する65、70、75、80、85、90若しく
は95パーセント以上のヌクレオチド配列の同一性を有する配列を有する核酸分子に特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
【0041】
例示的リラキシン3リガンドは、ヒト(GenBankタンパク質受託番号:NP_543140)、ラット(Burazinら、2002、J.Neurochem.82:1553−1557;GenBankタンパク質受託番号NP_733767;ヒトのものに対する76.4%の配列の同一性)、マウス(Bathgateら、2002.J.Biol.Chem.277:1148−1157;GenBankタンパク質受託番号XP_146603;ヒトのものに対する78.7%の配列の同一性)、ならびにブタおよびサルを包含する他の動物で同定されたリラキシン3オルソログを包含する。「リラキシン3」は、リラキシン3の全3種の形態、すなわちリラキシン3プレプロペプチドすなわち前駆体(シグナル配列およびリラキシン3プロペプチド配列よりなる細胞内ポリペプチド);リラキシン3プロペプチド(プロテアーゼ切断部位により結合されたリラキシン3の鎖A、CおよびBの配列を有する分泌型ポリペプチド);ならびに成熟リラキシン3ペプチド(ジスルフィド架橋により結合されたリラキシン3ポリペプチドの鎖AおよびBよりなる分泌型タンパク質)を包含する。「リラキシン3の活性フラグメント」は、GPCR142への結合のようなリラキシン3の生物学的活性を維持するリラキシン3タンパク質のいかなるフラグメントも包含する。ヒトリラキシン3のタンパク質若しくはcDNA配列は、WIPO公開第WO 01/68862号、同第WO 01/81562号および同第WO 02/22802号明細書に開示されている。ラット若しくはマウスのリラキシン3のタンパク質若しくはcDNA配列はWIPO公開第WO 01/81562号明細書に開示されている。
【0042】
例示的INSL5リガンドはヒトINSL5を包含する。「INSL5」はその形態の全部(例えばプレプロペプチドすなわち前駆体;プロペプチド;および成熟ペプチド)を包含する。「INSL5の活性フラグメント」は、GPCR142への結合によりINSL5の生物学的活性を維持するINSL5タンパク質のいかなるフラグメントも包含する。
【0043】
「細胞のセカンドメッセンジャー応答」は、発明のリガンド成分の結合に際してGPCR142の活性化により媒介される細胞の細胞性応答を指す。それは、例えば、シグナル伝達事象、またはプロトン(pH)、カルシウム若しくはcAMPのようなセカンドメッセンジャー分子の細胞内濃度の変化を包含しうる。
【0044】
「配列」は多量体中に存在する単量体の直線的順序、例えばポリペプチド中のアミノ酸の順序若しくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序を意味している。
【0045】
当該技術分野で既知のところの「配列の同一性若しくは類似性若しくは相同性」は、配列を比較することにより決定されるところの2種若しくはそれ以上のポリペプチド配列または2種若しくはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」は、場合によっては、一連のポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列間の適合により決定されるところのこうした配列間の配列の関係性の程度もまた意味している。
【0046】
2種のアミノ酸配列若しくは2種の核酸の同一性若しくは類似性パーセントを決定するために、該配列を至適の比較の目的上整列する(例えば、第二のアミノ酸若しくは核酸配列との至適のアライメントのために第一のアミノ酸の配列若しくは核酸配列中にギャップを導入し得る)。対応するアミノ酸位置若しくはヌクレオチド位置のアミノ酸残基若しくはヌクレオチドをその後比較する。第一の配列中のある位置が第二の配列中の対応する位置と同一若しくは類似のアミノ酸残基若しくはヌクレオチドにより占有される場合には、該分子はその位置で同一若しくは類似である。2配列間の同一性若しくは類似性パーセントは、該配列により共有される同一若しくは類似の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数(例えばオーバーラップする位置)×100)。
【0047】
同一性および類似性の双方は容易に計算し得る。同一性パーセントの計算においては正確な適合のみをカウントする。配列間の同一性若しくは類似性を決定するのに一般に使用される方法は、例えばCarilloら(1988)、SIAM J.Applied
Math.48、1073に開示されるものを包含する。同一性の好ましい決定方法は、試験される配列間の最大の適合を与えるように設計する。同一性および類似性の例示的決定方法はまた商業的コンピュータプログラムにも提供される。2配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい一例は、Karlinら(1993)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877でのように改変されたKarlinら(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2263−2268のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムは、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.215:403−410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。比較の目的上ギャップを導入したアライメントを得るために、Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res.25:3389−3402に記述されるところのGapped BLASTを利用し得る。あるいは、分子間の離れた関係性を検出するPSI−Blastを使用して統合型検索(interated search)を実施し得る。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI−Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用し得る。例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。加えて、FASTA法(Atschulら(1990)、J.Mol.Biol.215、403)を使用し得る。配列の比較に有用な数学的アルゴリズムの別の好ましい例はMyersら(1988)、CABIOS 4:11−17のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージ(Devereuxら(1984)、Nucleic Acids Res.12(1)、387)の一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。
【0048】
ポリヌクレオチド若しくはポリペプチド配列に関して本明細書で使用されるところの「実質的に類似の」という用語は、同一の配列、ならびに所望の生物学的活性部分を維持しかつその保存されたモチーフを有する改変された配列をもたらすそれに対する欠失、置換若しくは付加を包含する。
【0049】
本明細書で使用されるところの「被験体」という用語は、処置、観察若しくは実験の対象である動物若しくはヒトを指す。好ましくは、被験体は哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0050】
受容体若しくはリガンド成分に関して本明細書で使用されるところの「実質的に純粋な形態」という用語は、リガンド−受容体結合を妨害しうる汚染物質を本質的に含まない生物学的試薬として有用なポリペプチドを意味している。実質的に純粋な形態のポリペプチドは例えば単離、精製、ペプチド合成若しくは組換え発現により製造しうる。例示的態様において、リガンド成分は単離若しくは組換え発現により製造し、また、受容体成分は全細胞の表面上で発現されたGPCR142である。他の態様において、受容体およびリガンド双方の成分は、生じる複合体のいずれも、コンホメーション研究で使用しうる複合体の共結晶構造を生じるためのx線結晶学、またはリラキシン3/GPCR142若しくはINSL5/GPCR142の相互作用の調節(例えば受容体活性化作用若しくは拮抗作用)により媒介される障害の治療において有用な薬物の設計において補助するためのコンピュータモデル化のような応用で使用し得るように、実質的に純粋な形態にある。
【0051】
本明細書で使用されるところの「タグ」という用語は、タグを含有するタンパク質の単離、精製若しくは検出を助長するアミノ酸配列若しくはアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を指す。多様なこうしたタグが当業者に既知であり、そして本発明での使用に適する。適するタグは、例えばHAペプチド、ポリヒスチジンペプチド、ビオチン/アビジン、FLAGおよび多様な抗体エピトープ結合部位を包含する。
【0052】
本明細書で使用されるところの「治療上有効な量」という用語は、処置されている疾患若しくは障害の症状の軽減のような、研究者、獣医師、医師若しくは他の臨床家により探求されている組織系、動物若しくはヒトにおいて生物学的若しくは医学的応答を導き出す活性成分若しくは製薬学的剤の量を意味している。製薬学的組成物の治療上有効な用量の慣例の決定方法が当該技術分野で既知である。
【0053】
「ベクター」という用語は、それが結合されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントを挿入し得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の型のベクターは、付加的なDNAセグメントを挿入し得るウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律複製が可能である(例えば細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、そしてそれにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクター(発現ベクター)は、それらが操作可能に連結されている遺伝子の発現を指図することが可能である。組換えDNA技術で有用なベクターはプラスミドの形態にありうる。あるいは、同等な機能を供するウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような他の形態のベクターを使用しうる。
リガンド/受容体複合体
本発明のリガンドおよび受容体の複合体の好ましい態様において、リガンド成分はヒト、マウス若しくはラットに由来するリラキシン3であるか、または、リガンド成分はヒトに由来するINSL5であるかのいずれかである。好ましくは、リガンド成分は組換えで発現されたリラキシン3若しくはINSL5のいずれかである。
【0054】
本発明のリガンドおよび受容体の複合体の他の好ましい態様において、リガンド成分は、放射性同位元素若しくは蛍光分子のような検出可能な剤で標識される。標識技術は使用される標識剤の型に基づき選択され、そして当業者の範囲内にある。例えば、標識は、リガンド分子の原子の1個を対応する放射活性同位元素で置換することにより達成し得る。水素原子はトリチウムすなわちHで置換し得;炭素原子は炭素−14すなわち14Cで置換し得るか;若しくは、ストロンチウム原子をストロンチウム−38すなわち38Srで置換し得る。別の例示的標識方法においては、リガンドのいずれかの原子を放射活性同位元素で置換することよりもむしろ同位元素をリガンド分子に付加し得る。こうした放射活性同位元素は例えばヨウ素−125すなわち125Iおよび鉄−59すなわち59Feを包含する。なお別の例示的標識方法において、標識は、in vivo若しくはin vitroいずれかでのペプチドの合成の間にメチオニン−35(35S)若しくはリン酸−33(33P、タンパク質リン酸化の)のような適切に放射標識した前駆体を使用することにより実施し得る。好ましくは、本発明のリガンド成分はヨウ素−125すなわち125Iで標識する。
【0055】
複合体の受容体はヒトGPCR142でありうる。他の種を探求するために、マウスおよびラットゲノムデータベース情報を、クエリとしてヒトGPCR142配列を使用して検索し、そしてマウスおよびラットGPCR142遺伝子を同定した。マウスGPCR142遺伝子をクローン化し、そしてオープンリーディングフレームをDNAシークェンシングにより確認した。マウスGPCR142の完全なコーディング領域をGenBankに寄託した(GenBank受託番号:AY633765)。全体として、マウスGPCR142はヒトのものに対し74%の配列の同一性を共有する。ヒトGPCR142は374アミノ酸を有する一方、マウスの同等物はより長く414アミノ酸をもつ。C末端で、マウスGPCR142はヒトGPCR142と異なりかつはるかにより長いC末端尾部を有する。ラットゲノムデータベースを検索して、GPCR142に対応するラット遺伝子の存在を確認した。しかしながら、該ラット遺伝子は機能的GPCRをコードするオープンリーディングフレームを有さず、そして従ってラットGPCR142は偽遺伝子であるようである。サル、ウシおよびブタからのGPCR142遺伝子もまたクローン化した。DNAシークェンシング結果は、サル、ウシおよびブタからのGPCR142遺伝子が全部オープンリーディングフレームを有しかつヒトGPCR142に対する高い相同性をもつ推定の受容体をコードすることを示した。異なる種からのGPCR142間の相同性を図2に示す。サル、ウシおよびブタからのGPCR142の完全なコーディング領域をGenBankに寄託した(それぞれ受託番号AY633766、AY633767およびAY633768)。
【0056】
ヒトGPCR142のリガンド結合特性に対し組換えサル、マウス、ウシおよびブタGPCR142のリガンド結合特性を比較するため、競合結合実験を実施した。該結果は、試験した全部の種からのGPCR142が、ウシについて0.87±0.64nM、サルについて1.34±0.32nM、ヒトについて1.45±0.22nM、ブタについて1.59±0.45nM、およびマウスについて5.45±1nMのIC50値を伴う高親和性でヒトリラキシン3を結合することを示した。特異的結合は擬似トランスフェクトしたCOS−7細胞で観察されなかった。異なる種からのGPCR142をGTPγS結合およびCa2+可動化アッセイでもまた比較した。GTPγS結合アッセイにおいて、ヒトリラキシン3は、それぞれウシについて0.45±0.07nM、ブタについて0.96±0.15nM、ヒトについて0.98±0.23nM、サルについて1.1±0.2nM、およびマウスについて3.5±0.76nMのEC50値を伴い、全部のGPCR142受容体を強く刺激した。以前に、リラキシン3がヒトGPCR142およびGα16を発現する細胞中でのCa2+シグナル伝達を刺激することが示された(Liuら、2003b)。サル、ウシおよびブタGPCR142は、Gα16と共発現される場合に、50から100nMまでの範囲にわたるEC50値を伴いヒトGPCR142のものに類似に挙動した。しかしながら、リラキシン3は、マウスGPCR142およびGα16を発現する細胞中で検出可能なCa2+応答を刺激しなかった。
【0057】
従って、本発明のリガンドおよび受容体複合体は、好ましくはヒト、マウス、サル、ウシ若しくはブタに由来するGPCR142を含んでなる。従って、好ましい一態様において、GPCR142ポリペプチドは、配列番号4、配列番号2、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9から選択される。
【0058】
ある好ましい一態様において、GPCR142はGPCR142宿主細胞、好ましくは組換えGPCR142宿主細胞の細胞表面上で発現される。別の好ましい態様において、GPCR142はGPCR142宿主細胞、好ましくは組換えGPCR142宿主細胞からの単離された細胞膜と結合している。なお別の好ましい態様において、該複合体の受容体成分は、リラキシン3リガンド若しくはINSL5リガンドに結合することが可能なGPCR142のフラグメントである。
【0059】
該複合体のリガンド成分は、完全長のリラキシン3、若しくはGPCR142に結合することがなお可能であるその活性フラグメントのいずれでもあり得る。図2Cおよび3に示される結果から明らかなとおり、B鎖はGPCR142を結合しかつ活性化することが可能である。該複合体のリガンド成分はまた、完全長のINSL5、若しくはGPCR142に結合することがなお可能であるその活性フラグメントのいずれでもあり得る。
【0060】
当業者に既知のリガンド成分および受容体の複合体のいずれの適する構成方法を使用してもこうした複合体を形成しうる。一般に、該方法は、リガンド成分を含んでなるサンプルを、受容体成分を含んでなるサンプルと混合することを含んでなる。
【0061】
リガンド成分を含んでなるサンプルは、リガンド成分を含有する組織若しくは細胞抽出物、または精製したリガンド成分であり得る。本サンプルは、リガンド成分の天然の供給源、例えば、ヒトを包含する温血動物のリガンド成分の内因性宿主細胞若しくは組織から調製し得る。好ましくは、リガンド成分を含んでなるサンプルは、増大された量のリガンド成分を発現する組換え宿主細胞から調製する。リガンド成分の組換え宿主細胞は、機能的リガンド成分を発現することが可能なDNA分子を細胞中に導入することにより構築しうる。
【0062】
ヒト若しくは他の温血動物の組織若しくは細胞からの製造において、リガンド成分のポリペプチドは、ヒト若しくは他の温血動物の組織若しくは細胞をホモジェナイズすること、該ホモジェネートを酸若しくは別の適する抽出剤で抽出すること、ならびに、例えば逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー処置の組合せを介して抽出物からリガンド成分のポリペプチドを単離することを含んでなる方法により精製かつ単離し得る。
【0063】
本発明のリガンド成分は既知のペプチド合成手順によってもまた製造し得る。ペプチド合成方法は、適する固相合成および液相合成技術から選択しうる。例えば、所望のペプチ
ドを、該タンパク質を構成することが可能な部分的ペプチド若しくはアミノ酸をその残余の部分と縮合すること、および、該生成物が保護基を有する場合には該保護基を除去することにより製造し得る。ペプチド合成の間の縮合および脱保護方法は、文献に、例えば:BodanszkyとOndetti、“Peptide Synthesis”、Interscience Publishers、ニューヨーク、1966;ShroederとLuebke、“The Peptide”、Academic Press、ニューヨーク、1965;Izumiyaら、“Fundamentals and Experiments in Peptide Synthesis”、Maruzen、1975;YajimaとSakakibara、“Biochemical Experiment Series 1、Protein Chemistry IV”、205、1977;and Yajima(編)、“Development of Drugs−Continued、14、Peptide Synthesis”、Hirokawa Shotenに記述されている。
【0064】
ペプチド合成反応後、タンパク質生成物は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーおよび再結晶のような慣習的精製技術の適する組合せにより精製かつ単離し得る。単離されたタンパク質が遊離の形態にある場合には、それを既知の方法により適する塩に転化し得る。逆に、単離された生成物が塩である場合は、それを当該技術分野で既知の方法から選択される適する方法により遊離のペプチドに転化し得る。
【0065】
ポリペプチドのアミドは、アミド化に適するペプチド合成のための樹脂を使用することにより得ることができる。例示的樹脂は、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニル−アセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニルヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂および4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂を包含する。こうした樹脂を使用して、そのα−アミノ基および機能的側鎖基(R基)が適して保護されているアミノ酸を、当業者に既知である多様な縮合技術により目的のペプチドの配列に従って樹脂上で縮合する。一連の反応の終了時に、ペプチド若しくは保護されたペプチドを樹脂から分離し、そして保護基を除去して目的のポリペプチドを得る。
【0066】
GPCR142受容体を含んでなるサンプルは、細胞表面上で発現された受容体を含む無傷の宿主細胞、該受容体の宿主細胞からの単離された細胞膜、若しくは該リガンドに結合することが可能である該受容体の精製されたフラグメントを含み得る。GPCR142受容体の内因性の宿主細胞を使用し得るとは言え、細胞表面上で増大された量のGPCR142を発現する組換え宿主細胞が好ましい。
【0067】
GPCRがときにその細胞外ドメインでその内因性リガンドに結合することが既知である。こうした結合ドメインは、配列分析、タンパク質−タンパク質相互作用分析、タンパク質構造解析のような当業者に既知の多様な方法、若しくはこれらの方法の組合せにより同定し得る。例えば、代謝調節型グルタミン酸受容体中のリガンド結合ドメインが、その細胞外ドメイン中のVenus flytrapモジュール(VFTM)として同定された(O’Haraら、1993、Neuron、11(1):41−52;Davidら、1999、J.Biol.Chem.、274:33488−33495)。好ましい一態様において、GPCR142のリガンド成分結合ドメインが上の方法を使用して最初に同定され得、そしてこうしたリガンド成分結合ドメインを組換え発現させ、精製しかつ本発明の複合体の形成において使用し得る。
【0068】
所望の種のGPCR142は、下の実施例に記述されるもののような技術を使用してクローン化しうる。当該技術分野で既知の多様な手順のいずれも、本発明の核酸分子を単離するのに使用し得る。例えば、cDNA若しくはゲノムDNAライブラリー、または上で同定された適する細胞からの全mRNAを鋳型として、および適切なオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、本発明の核酸分子を標準的なPCR増幅技術に従って増幅し得る。PCRからそのように増幅された核酸を適切なベクター中にクローン化し得、そ
してDNA配列分析により特徴付け得る。プライマーは標準的合成技術により、例えば自動DNA合成機を使用して製造し得る。
【0069】
本発明の核酸分子の別の単離方法は、当業者に利用可能な手順を使用して、1種若しくはそれ以上の天然の若しくは人工的に設計したプローブでゲノム若しくはcDNAライブラリーまたは全mRNAをプロービングすることである。例えば“Current Protocols in Molecular Biology”、Ausubelら(編)、Greene Publishing Accosiation and John
Wiley Interscience、ニューヨーク1992を参照されたい。好ましいプローブは30から50塩基までを有することができる。こうしたプローブを、プローブの同定を助長するために分析で検出可能な試薬で標識し得る。有用な試薬は、例えば放射性同位元素、蛍光色素、若しくは検出可能な産物の形成を触媒することが可能な酵素を包含する。該プローブは、マウスならびにヒト、ラット、サル、ウシおよびブタのようなGPCR142をコードするゲノムDNA、cDNA若しくはRNAポリヌクレオチドの相補的コピーを当業者が単離することを可能にする。
【0070】
核酸分子の別の製造方法は標準的な合成技術による(例えば自動DNA合成機を使用することである)。ゲノムDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーの調製、若しくは同定された供給源細胞からの全mRNAの単離は、当該技術分野で既知の標準的技術により実施し得る。これらの技術は例えばManiatisら、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989)に見出し得る。
【0071】
別の局面において、本発明は、マウスGPCR142を発現することが可能である核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターを提供する。本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での核酸の発現に適する形態の本発明の核酸を含んでなる。従って、該組換え発現ベクターは、発現されるべき核酸配列に作動可能に連結された、発現に使用されるべき宿主細胞に基づいて選択された1個若しくはそれ以上の制御配列を包含する。組換え発現ベクターに関して使用される場合、「作動可能に連結された」は、(例えば、in
vitro転写/翻訳系、若しくはベクターが宿主細胞中に導入される場合は宿主細胞中で)目的のヌクレオチド配列が該ヌクレオチド配列の発現を見込む様式で制御配列(1個若しくは複数)に連結されることを意味することを意図している。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択および所望のタンパク質の発現のレベルのような因子に依存し得ることが当業者により認識されるであろう。本発明の発現ベクターは、宿主細胞中に導入されてそれにより本明細書に記述されるところの核酸によりコードされる融合タンパク質若しくはペプチドを包含するタンパク質若しくはペプチドを産生し得る。
【0072】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物(例えば大腸菌(Escherichia coliE.coli)))または真核生物細胞(例えば昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞若しくは哺乳動物細胞)中での本発明のポリペプチドの発現のため設計し得る。適する宿主細胞は慣例で決定しうる。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを使用してin vitroで転写かつ翻訳し得る。
【0073】
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合若しくは非融合いずれかのタンパク質の発現を指図する構成的若しくは誘導可能なプロモーターを含有するベクターを用い大腸菌(E.coli)中で実施しうる。融合ベクターは、タンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。こうした融合ベクターは、典型的には以下の目的、すなわち組換えタンパク質の発現を増大させるため;組換えタンパク質の溶解性を増大させるため;アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製で補助するため;およびマーカーとしてはたらくことにより組換えタンパク質の検出を助長するための1種若しくはそれ以上に使用される。しばしば、融合発現ベクター中では、タンパク質分解性切断部位が、該融合タンパク質の精製の後の融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にするために、融合部分および組換えタンパク質
の接合部に導入される。こうした酵素およびそれらの同族の認識配列は、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを包含する。典型的な融合発現ベクターは、標的組換えタンパク質にそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、プロテインA若しくはポリHisを融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smithら、(1988)、Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs、マサチューセッツ州ビバリー)、pRIT5(Pharmacia、ニュージャージー州ピスカタウェイ)若しくはpQE(Qiagen)を包含する。
【0074】
適する誘導可能な非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの例は、pTrc(Amannら、(1988)、Gene 69:301−315)およびpETIId(Studierら、“Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185”、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)60−89)を包含する。大腸菌(E.coli)中での組換えタンパク質発現を最大限にするために一戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する損なわれた能力を伴う宿主細菌中でタンパク質を発現させることである。別の戦略は、各アミノ酸の個々のコドンが大腸菌(E.coli)中で優先的に利用されるものになるように、発現ベクター中に挿入されるべき核酸の核酸配列を変えることである。本発明の核酸配列のこうした変化は標準的DNA合成技術により実施し得る。
【0075】
別の好ましい態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母、ビール酵母菌(S.cerivisae)中での発現のためのベクターの例は、pYepSec1(Baldariら(1987)、EMBO J 6:229−234)、pMFa(KurJanら(1982)、Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州サンディエゴ)およびpPicZ若しくはPichia(Invitrogen Corp、カリフォルニア州サンディエゴ)を包含する。
【0076】
あるいは、発現ベクターはバキュロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞中でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターは、例えば、pAcシリ―ズ(Smithら(1983)、Mol.Cell.Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(Lucklowら(1989)、Virology 170:31−39)を包含する。組換え発現に有用な商業的に入手可能な昆虫細胞発現ベクターはpBlueBacII(Invitrogen)を包含する。
【0077】
なお別の好ましい態様において、発現ベクターは哺乳動物発現ベクターである。哺乳動物細胞中で使用される場合、発現ベクターの制御機能はしばしばウイルスの調節エレメントにより提供される。例えば、一般に使用されるプロモーターはポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびSV40由来である。哺乳動物発現ベクターの例は、例えばpCDM8(Seed(1987)、Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufinanら、(1987)、EMBO J 6:187−195)を包含する。組換えプロテアーゼCOX−3発現に適し得る商業的に入手可能な哺乳動物発現ベクターは、例えば、pMAMneo(Clontech)、pcDNA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC
37593)pBPV−1(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)および1ZD35(ATCC 37565)を包含する。
【0078】
別の態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型中で優先的に核酸の発現を指図することが可能である(例えば、組織特異的調節エレメントを使用して核酸を発現させる)。組織特異的調節エレメントは当該技術分野で既知である。適する組織特異
的プロモーターの例は、アルブミンプロモーター(肝特異的;Pinkertら(1987)、Genes Dev.1:268−277)、リンパ系特異的プロモーター(Calameら(1988)、Adv.Immunol.43:235−275)、とりわけT細胞受容体(Winotoら(1989)、EMBO J 8:729−733)および免疫グロブリン(BaneiJiら(1983)、Cell 33:729−740;Queenら、(1983)、Cell 33:741−748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば神経フィラメントプロモーター;Bymeら(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵特異的プロモーター(Edlundら(1985)、Science 230:912−916)ならびに乳腺特異的プロモーター(例えばミルクホエイプロモーター;米国特許第4,873,316号明細書および欧州特許公開第264,166号明細書)を包含する。発達的に調節されるプロモーター、例えば海生(marine)hoxプロモーター(Kesselら(1990)、Science 249:374−379)およびβ−フェトプロテインプロモーター(Campesら(1989)、Genes Dev.3:537−546)もまた包含する。
【0079】
本発明はさらに、ベクター中にアンチセンスの向きでクローン化された本発明のDNA分子を含んでなる組換えベクターを提供する。すなわち、DNA分子が、本発明のポリペプチドをコードするmRNAに対しアンチセンスであるRNA分子の(DNA分子の転写による)発現を見込む様式で制御配列に作動可能に連結されている。多様な細胞型においてアンチセンスRNA分子の継続的発現を指図する、アンチセンスの向きでクローン化された核酸に作動可能に連結された制御配列、例えばウイルスプロモーターおよび/若しくはエンハンサーを選び得るか、または、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的若しくは細胞型特異的発現を指図する制御配列を選び得る。アンチセンス発現ベクターは、ベクターが導入される細胞型によりその活性が決定され得る高効率制御領域の制御下にアンチセンス核酸が産生される組換えプラスミド、ファージミド若しくは弱毒ウイルスの形態であり得る。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節の考察については、Weintraubら(“Reviews−Trends in Genetics”、Vol.1(1)1986)を参照されたい。
【0080】
本発明はまた、好ましい一態様において、哺乳動物細胞中での低分子干渉RNA(siRNA)の合成を指図する組換えベクター系も提供する。多くの生物体は、遺伝子に対応する二本鎖RNA(dsRNA)が細胞中に存在する場合にRNA干渉として知られる過程によりいかなる遺伝子発現も阻害する機構を有する。特定の一遺伝子の活性を低下させるためのdsRNAの使用の技術は、線虫C.エレガンス(C.elegans)を使用して最初に開発され、そしてRNA干渉すなわちRNAiと称されている(Fireら(1998)、Nature 391:806−811)。RNAiは以来多くの生物体で有用であることが見出され、そして最近、培養物中の哺乳動物細胞に拡大された(Moss(2001)、Curr Biol 11:R772−5による総説を参照されたい)。RNAiが21〜25ヌクレオチドの低分子RNAの生成を巻き込むことが示された場合に重要な進歩がなされた(Hammondら(2000)、Nature 404:293−6;Zamoreら、(2000)Cell 101:25−33)。これらの低分子干渉RNAすなわちsiRNAは、当初、該過程を開始するより大きなdsRNAに由来するとみられ、そして最終的には分解される標的RNAに相補的である。siRNAはそれら自身が各端で短いオーバーハングを伴う二本鎖であり;それらは相補領域中での標的の単一の切断を指図するガイドRNAとして作用する(Elbashirら(2001)、Genes Dev.15:188−200;Zamoreら(2000)、Cell 101:25−33)。
【0081】
マウスGPCR142に相補的であるヌクレオチドを含んでなるsiRNAは、in vitroで、例えばWIPO公開第WO 01/75164号明細書に記述される方法を使用して製造しうるか、若しくは安定な発現系を使用して哺乳動物細胞からin vivoで産生させ得る。哺乳動物細胞中でのsiRNAの合成を指図する例示的一ベクター
系はpSUPER(Brummelkampら(2002)、Science 296:550−3)である。
【0082】
本発明の例示的ベクターはまた、細菌−酵母若しくは細菌−動物細胞若しくは細菌−真菌細胞若しくは細菌−無脊椎動物細胞のような宿主間のDNAシャトリング(shuttling)を可能にする特別に設計されたベクターも包含する。多数のクローニングベクターが当業者に既知であり、かつ、適切なクローニングベクターの選択は当業者の範囲内にある。原核生物および真核生物双方の細胞のための他の適する発現系については、例えばManiatisら、上記の第16および17章を参照されたい。
【0083】
本発明はまた、本発明の組換えベクターが導入された組換え宿主細胞も提供する。トランスフェクションに適し得かつ商業的に入手可能である哺乳動物種由来の細胞株は、例えばCV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、MRC−5(ATCC CCL 171)、ショウジョウバエ属(Drosophila)若しくはネズミのL細胞、およびHEK293(ATCC CRL1573)、ならびにサル腎細胞を包含する。
【0084】
ベクターDNAは、慣習的な形質転換若しくはトランスフェクション技術を介して原核生物若しくは真核生物細胞に導入し得る。本明細書で使用されるところの「形質転換」若しくは「トランスフェクション」という用語は、細胞が外来DNAを取り込みかつその外来DNAをそれらの染色体中に組み込んでも組み込まなくてもよい過程を指す。トランスフェクションは、例えば、リン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔法若しくはプロトプラスト融合を包含する多様な技術により達成し得る。宿主細胞に適する形質転換若しくはトランスフェクション方法は例えばManiatisら(上記)に見出し得る。
【0085】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについて、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して細胞の小画分のみが外来DNAをそれらのゲノム中に組み込みうることが既知である。これらの組み込み体を同定かつ選択するために、(例えば抗生物質に対する耐性についての)選択可能なマーカーをコードする遺伝子を目的の遺伝子と一緒に宿主細胞に導入しうる。好ましい選択可能なマーカーはG418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートのような薬物に対する耐性を付与するものを包含する。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞を薬物選択により同定し得る(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生き残ることができる一方、他の細胞は死ぬ)。
【0086】
別の態様において、細胞、細胞株若しくは微生物内の内因性核酸の発現の特徴を、挿入された調節エレメントが内因性遺伝子と効果的に連結されかつ該内因性遺伝子を制御、調節若しくは活性化するような、細胞、安定細胞株若しくはクローン化した微生物のゲノム中に目的の内因性遺伝子に対し異種のDNA調節エレメントを挿入することにより改変し得る。例えば、米国特許第5,272,071号明細書およびWIPO公開第WO 91/06667号明細書に記述されるところの標的を定めた相同的組換えのような技術を使用して、異種調節エレメントが内因性遺伝子と効果的に連結されかつその発現を活性化するような安定細胞株若しくはクローン化した微生物に異種調節エレメントを挿入し得る。
【0087】
本発明の好ましい一態様は、本質的に配列番号7、8若しくは9のアミノ酸配列よりなる実質的に精製されたポリペプチドを提供する。本発明はまた、発明のポリペプチドの発現若しくは単離方法にも関する。
【0088】
一態様において、ポリペプチドは、標準的タンパク質精製技術を使用する適切な精製スキームにより、それを天然に発現する細胞若しくは組織供給源から単離し得る。別の態様において、本発明のポリペプチドは組換えDNA技術により製造する。あるいは、本発明のポリペプチドはin vitro翻訳および/若しくは転写系中で合成し得る。さらにあるいは、本発明のポリペプチドは標準的ペプチド合成技術を使用して化学合成し得る。
【0089】
本発明のポリペプチドは、本発明のDNA分子を上述された発現ベクター中にクローン化すること、こうしたベクターを本明細書で記述されるところの原核生物若しくは真核生物宿主細胞に導入すること、および組換えタンパク質の製造に適する条件下で該宿主細胞を増殖させることにより組換え的に発現し得る。発現ベクターを含有する細胞をクローン的に繁殖させ、そして個々に分析してそれらが本発明のポリペプチドを産生するかどうかを決定する。動物のGPCR142を発現する宿主細胞クローンの同定は、抗動物GPCR142抗体との免疫学的反応性、およびリラキシン3結合若しくはINSL5結合のような宿主細胞に関連したGPCR142の活性の存在を包含するいくつかの手段により行ない得る。適切な増殖条件および回収方法の選択は当該技術の熟練内にある。ポリペプチドを組換え的に発現させる技術は例えばManiatisら、上記に記述されている。
【0090】
本発明のポリペプチドは、当該技術分野で既知のin vitro翻訳および/若しくは転写系を使用してもまた製造し得る。例えば、合成のサル、ラット、ウシ若しくはブタGPCR142 mRNA若しくは細胞から単離されたmRNAを、コムギ胚芽抽出物および網状赤血球抽出物を包含する多様な細胞を含まない系で効率的に翻訳し得る。あるいは、サル、ラット、ウシ若しくはブタGPCR142 cDNAのコーディング配列をT7プロモーターの制御下にクローン化し得る。その後、この構築物を鋳型として使用して、in vitro転写および翻訳系で、例えばPromega(ウィスコンシン州マディソン)から商業的に入手可能なもののようなTNT T7を組み合わせた網状赤血球ライセート系を使用してタンパク質を製造し得る。
【0091】
本発明のポリペプチドは、上述されたところの方法を使用する化学合成によってもまた製造し得る。
【0092】
マウスGPCR142タンパク質は当業者に既知の方法により精製し得る。例えば、それは、塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、HPLCおよびFPLC、ならびに抗体/リガンドアフィニティークロマトグラフィーの多様な組合せ若しくは個別の適用により、天然の若しくは組換えの宿主細胞からの細胞ライセートおよび抽出物から精製し得る。
組換え細胞からのリラキシン3の製造
リラキシン3はジスルフィド架橋により結合された2本のポリペプチド鎖(A鎖およびB鎖)から構成される分泌型タンパク質であるため、リラキシン3のプレプロペプチドからの成熟リラキシン3の産生にプロテアーゼが関与している。シグナル配列ペプチダーゼが該プロペプチドからシグナル配列を切断分離してリラキシン3プロペプチドをもたらす。該プロペプチドはその後、プロホルモン転換酵素によりリラキシン3の鎖A、BおよびCに切断される。A鎖およびB鎖は最終の成熟リラキシン3を形成し、そしてC鎖は該成熟リラキシン3の部分でない。プロホルモン転換酵素は若干のニューロン細胞若しくは内分泌細胞のようなホルモンを分泌するある細胞型でのみ選択的に発現されるため、リラキシン3プロペプチドは、COS7のような他の細胞型から組換え的にそれが発現される場合にしばしば効率的にプロセシングされない。
【0093】
リラキシン3は:リラキシン3プロペプチドの鎖AとCとの間および/若しくは鎖CとBとの間のペプチド接合部に挿入された1個のプロテアーゼ切断部位を伴う改変リラキシン3プロペプチドをコードすることが可能なDNA分子を構築すること;該改変リラキシン3プロペプチドを発現することが可能なベクターを構築すること;挿入されたプロテアーゼ切断部位(1個若しくは複数)で該改変リラキシン3プロペプチドを切断し得るプロテアーゼを発現することが可能な別のベクターを構築すること;双方のベクターを宿主細胞中に導入すること;ならびに、該プロテアーゼが改変リラキシン3プロペプチドの鎖AとC若しくは鎖CとBとの間でペプチド結合を効率的に切断することができるように、改変リラキシンプロペプチドおよびプロテアーゼ双方の発現に適する条件下で該宿主細胞を増殖させることを含んでなる段階により、組換え細胞から製造しうる。
【0094】
配列分析は、プロホルモン転換酵素の1メンバー、フリンが天然のリラキシン3プロペプチドの鎖CとBとの間のペプチド結合を切断し、また、別の同定されていないプロテア
ーゼが天然のプロペプチドの鎖AとCとの間のペプチド結合を切断することを示唆した。arg−gly−arg−arg(RGRR)のアミノ酸配列をもつフリン切断部位を鎖AとCのペプチド接合部に挿入しうる。この変異体リラキシン3の発現ベクターおよびフリンの別の発現ベクターを宿主細胞中にコトランスフェクトする。適する増殖条件下で、リラキシン3プロペプチドはほとんど完全に成熟ペプチドA、BおよびCにプロセシングされる。フリンの代わりに他のプロテアーゼもまた使用し得る。同一のプロテアーゼ切断部位をプロペプチドの鎖AとCおよび鎖CとBとの間に挿入し得る。使用し得るプロテアーゼの例は、例えば、フリン、PC1およびPC2のようなプロホルモン転換酵素を包含する(Hosakaら、1991、J.Biol.Chem.266:12127−12130;Benjannetら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:3564−3568;Thomasら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5297−5301)。
【0095】
リラキシン3に対するその高い相同性のため、INSL5がGPCR135、GPCR142、LGR7若しくはLGR8の付加的なリガンドであり得ることが推測された。従って、ヒトINSL5ペプチドを組換え的に発現させた。INSL5がGPCR142のアゴニストであるがしかしGPCR135のアゴニストでないことが見出された。
【0096】
GPCR142とINSL5との間の同定された相互作用は、GPCR142遺伝子および/若しくはINSL5遺伝子が導入若しくは破壊されているノックアウトマウスのようなトランスジェニック動物の開発を見込む。該受容体とリガンドとの間の同定された相互作用はまた、INSL5およびGPCR142の複合体に関する障害の治療におけるそれらの潜在的な有効性について化合物を同定するためのスクリーニング方法若しくはアッセイにおけるGPCR142若しくはGPCR142/INSL5複合体の使用も見込む。
【0097】
好ましい一態様において、タンパク質の単離若しくは精製を助長するために、HA、ポリHis若しくはFLAGのようなタグを、改変リラキシン3プロペプチド若しくはINSL5のいずれかに付加し得る。PCRのような、こうしたDNA分子によりコードされるアミノ酸のある種の所望の変化を引き起こすようにDNA分子を改変することが既知の技術を使用しうる。
リラキシン3/GPCR142若しくはINSL5/GPCR142複合体いずれかの活性の調節物質の同定方法
本発明の別の一般的な局面は、リラキシン3/GPCR142複合体若しくはINSL5/GPCR142複合体いずれかの生物学的活性を増大するか若しくは減少するかのいずれかである調節物質の同定方法に関する。こうした調節物質は、CNS障害(不安、統合失調症、うつ、気分、睡眠/覚醒)、代謝障害、摂食/飲酒障害、水および栄養素の恒常性、ならびに内分泌障害のような、リラキシン3/GPCR142複合体若しくはINSL5/GPCR142複合体いずれかに関する疾患若しくは障害に苦しめられている被験体の処置において治療薬として有用であるはずである(Gotoら、2001、J.Comp.Neurol.438:86−122を参照されたい)。
【0098】
「阻害剤」は、リラキシン3/GPCR142複合体の発現若しくは活性またはINSL5/GPCR142複合体の発現若しくは活性のいずれかを減少、予防、不活性化、脱感作若しくはダウンレギュレートする化合物を指す。「活性化物質」は、リラキシン3/GPCR142複合体の発現若しくは活性またはINSL5/GPCR142複合体の発現若しくは活性を増大、活性化、助長、感作若しくはアップレギュレートする化合物である。「調節物質」は「阻害剤」および「活性化物質」双方を包含する。
【0099】
化合物の同定方法は慣習的な実験室の形式を使用して若しくはハイスループットに適合されたアッセイで実施し得る。「ハイスループット」という用語は、同時に複数のサンプル若しくは単一サンプルの迅速な容易なスクリーニングを可能にするアッセイ設計を指し、そしてロボット操作の能力を包含し得る。ハイスループットアッセイの別の所望の特徴は、所望の分析を達成させるための試薬の使用を低下させるか若しくは操作の回数を最小限にするよう至適化されているアッセイ設計である。アッセイ形式の例は、96ウェル若
しくは384ウェルプレート、浮揚液滴、および液体を取扱う実験に使用される「チップ実験室(lab on a chip)」マイクロチャンネルチップを包含する。もちろん、プラスチック型および液体取扱い装置の小型化が進歩する際に、若しくは改良されたアッセイ装置が設計される際に、より多数のサンプルが発明のアッセイを使用してより効率的にスクリーニングされることが可能になるであろう。
【0100】
スクリーニングの候補化合物は多数の化学的分類、好ましくは有機化合物の分類から選択し得る。候補化合物は巨大分子であり得るとは言え、好ましくは、候補化合物は小分子有機化合物、すなわち50以上かつ2500未満の分子量を有するものである。候補化合物はポリペプチドとの構造的相互作用に必要な1個若しくはそれ以上の機能的化学基を有する。好ましい候補化合物は、最低1個のアミン、カルボニル、ヒドロキシル若しくはカルボキシル基、好ましくは最低2個のこうした官能基、およびより好ましくは最低3個のこうした官能基を有する。候補化合物は、上で例示された官能基の1個若しくはそれ以上で置換された環状炭素若しくは複素環構造部分および/または芳香族若しくは多環芳香族構造部分を含み得る。候補化合物はまた、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジンのような生体分子、上の誘導体若しくは構造アナログ、またはそれらの組合せなどでもあり得る。化合物が核酸である場合、該化合物は好ましくはDNA若しくはRNA分子であるが、とは言え非天然の結合若しくはサブユニットを有する修飾核酸もまた企図している。
【0101】
候補化合物は合成若しくは天然の化合物のライブラリーを包含する多様な供給源から得ることができる。例えば、無作為化オリゴヌクレオチドの発現、合成有機コンビナトリアルライブラリー、ランダムペプチドのファージディスプレイライブラリーなどを包含する多数の手段が、多様な有機化合物および生体分子の無作為および定方向合成に利用可能である。候補化合物はまた:生物学的ライブラリー;空間的に接近可能な平行固相若しくは溶液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物(one−bead one−compound)」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を包含する当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法の多数のアプローチのいずれを使用しても得ることができる(例えばLam(1997)、Anti−Cancer Drug Des.12:145を参照されたい)。あるいは、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態の天然の化合物のライブラリーが利用可能であるか、若しくは慣例に製造しうる。加えて、天然のおよび合成で製造したライブラリーおよび化合物を、慣習的な化学的、物理的および生化学的手段により慣例で改変し得る。
【0102】
さらに、既知の薬理学的剤を、該剤の構造的アナログを製造するために、アシル化、アルキル化、エステル化およびアミド化(amidification)のような定方向若しくは無作為の化学修飾にかけ得る。候補化合物は無作為に選択し得るか、または、GPCRに結合しかつ/またはその機能若しくは活性を調節する既存の化合物に基づき得る。従って、候補の剤の供給源は、GPCR142に類似の構造をもつGPCRの活性化物質若しくは阻害剤を包含する分子の既知の若しくはスクリーニングされたライブラリーである。こうした化合物の構造は、該分子の1個若しくはそれ以上の位置により多い若しくは少ない化学的部分または多様な化学的部分を含有するように変化させうる。アナログ活性化物質/阻害剤のライブラリーの創製において該分子に対しなされる構造変化は、定方向、無作為、または定方向および無作為双方の置換および/若しくは付加の組合せであり得る。
【0103】
多様な他の試薬もまたアッセイ混合物中に包含し得る。これらは、塩、緩衝剤、中立のタンパク質(例えばアルブミン)のような試薬、ならびに至適のタンパク質−タンパク質および/若しくはタンパク質−核酸結合を助長するのに使用し得る洗剤を包含する。こうした試薬はまた、反応成分の非特異的すなわちバックグラウンドの相互作用も低下させ得る。ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌薬などのようなアッセイの効率を向上させる他の試薬もまた使用し得る。
【0104】
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該技術分野で、例えばZuckermannら
(1994)、J.Med.Chem.37:2678に見出し得る。化合物のライブラリーは、溶液中に(例えばHoughten(1992)、Biotechniques
13:412−421)、またはビーズ(Lam(1991)、Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)、Nature 364:555−556)、細菌(米国特許第5,223,409号明細書)、胞子(米国特許第5,571,698号明細書)、プラスミド(Cullら(1992)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)若しくはファージ(例えばScottとSmith(1990)、Science 249:386−390を参照されたい)上に提示し得る。
【0105】
従って、一般的な一局面において、本発明は:
(a)緩衝剤および候補若しくは試験化合物を含んでなる溶液を、リラキシン3およびGPCR142の複合体を含んでなるアッセイ試薬と接触させる段階;
(b)リラキシン3およびGPCR142の複合体の生物学的活性を測定する段階;ならびに
(c)段階(b)の結果を、リラキシン3およびGPCR142の複合体を緩衝液のみと接触させた対照のものと比較する段階
を含んでなる、リラキシン3/GPCR142複合体の生物学的活性を増大若しくは減少させる化合物の同定方法に関する。
【0106】
好ましい一態様において、該方法におけるリラキシン3およびGPCR142の複合体は、細胞表面上にGPCR142を発現する細胞と結合されている。
【0107】
別の一般的局面の本発明は:
(a)緩衝剤および候補若しくは試験化合物を含んでなる溶液を、INSL5およびGPCR142の複合体を含んでなるアッセイ試薬と接触させる段階;
(b)INSL5およびGPCR142の複合体の生物学的活性を測定する段階;ならびに
(c)段階(b)の結果を、INSL5およびGPCR142の複合体を緩衝液のみと接触させた対照のものと比較する段階
を含んでなる、INSL5/GPCR142複合体の生物学的活性を増大若しくは減少させる化合物の同定方法に関する。
【0108】
好ましい一態様において、該方法におけるINSL5とGPCR142の複合体は、細胞表面上にGPCR142を発現する細胞と結合されている。
【0109】
「細胞」という用語は、検出方法の感度に適切な最低1個の細胞若しくは複数の細胞を指す。本発明に適する細胞は細菌細胞でありうるが、しかし好ましくは酵母、昆虫若しくは哺乳動物のような真核生物である。細胞は、細胞表面上で大量の哺乳動物のGPCR142を発現する内因性のGPCR142の天然の宿主細胞、好ましくはGPCR142の組換え宿主細胞であり得る。
【0110】
リラキシン3/GPCR142複合体若しくはINSL5/GPCR142複合体のいずれも、それぞれリラキシン3若しくはINSL5いずれかを、精製されたタンパク質の形態、またはリラキシン3若しくはINSL5いずれかを含有する細胞若しくは組織抽出物の形態でGPCR142宿主細胞に添加することにより形成させ得る。リラキシン3若しくはINSL5のいずれも、完全長の成熟ポリペプチド、若しくはGPCR142に結合することがなお可能であるフラグメントであり得る。
【0111】
好ましい態様において、本発明のリガンド成分/GPCR142複合体の生物学的活性は、細胞のセカンドメッセンジャー応答により測定し得る。例えば、該複合体の生物学的活性は、活性化されたGPCR142により誘発されるシグナル伝達事象により測定し得る。このシグナル伝達事象は、当該技術分野で既知の1種若しくはそれ以上の適する方法を使用して、細胞の形態学、移動若しくは走化性のような細胞生理学の1種若しくはそれ以上の変化を測定することによって間接的に測定し得る。それは、シグナル伝達経路に関与するタンパク質のリン酸化、例えばGTP結合タンパク質(Gタンパク質)のリン酸化を測定することにより直接にもまた測定し得る。例えばγ−リン酸上で放射標識されてい
るATP若しくはGTP分子を使用することによるタンパク質リン酸化の測定方法が当該技術分野で既知である。
【0112】
本発明のリガンド成分/GPCR142複合体の生物学的活性は、当該技術分野で既知の多数の適する技術のいずれかを使用して、セカンドメッセンジャー分子の細胞内濃度によってもまた測定し得る。例えば、pHの変化はアクリジンオレンジのようなpH感受性色素を使用して測定し得る。カルシウム濃度は、蛍光定量的画像化プレートリーダー(FLIPR)若しくは共焦点顕微鏡を使用して、fluo−3(五カリウム塩、細胞不浸透性の形態;Molecular Probes)若しくはfluo−3(AM)(アセトキシメチルエステルの形態のfluo−3、Teflabs)のようなCa2+に対し感受性の蛍光指示薬(例えばLiuら、2001、J.Pharmacol.Exp.Ther.299:121−30を参照されたい)の光学的画像化を介して測定し得る。cAMP濃度は、商業的に入手可能なELISAキット(FLASHPLATE環状AMPアッセイ系(125I)、カタログ番号:SMP001A、NEN;Shimomuraら、2002、J.Biol.Chem.277:35826−32もまた参照されたい)を使用して、若しくは、β−ガラクトシダーゼのようなレポーター遺伝子の発現がcAMP応答性エレメント(CRE)の制御下にあるレポーター系(Montminyら、1990、Trends Neurosci.、13(5):184−8)を介して検出し得る。
【0113】
試験化合物は、2種の細胞(機能的GPCR142を含有する第一の細胞および機能的GPCR142を欠くことを除き第一のものに同一の第二の細胞)に対するその影響を比較することによりさらに特徴付け得る。この技術は、これらのアッセイのバックグラウンドノイズの確立においてもまた有用である。当業者は、この対照機構が、機能的GPCR142の調節に応答性である細胞性変化の容易な選択もまた可能にすることを認識するであろう。従って、好ましい態様において、該スクリーニング法は:(a)細胞表面上で発現されたGPCR142を有する第一の細胞をリガンド成分および試験化合物と接触させる段階;(b)試験化合物に対する第一の細胞中でのセカンドメッセンジャー応答を測定する段階、および、第一の細胞がリガンド成分とのみ接触されしかし試験化合物と接触されない対照のものとそれを比較する段階;(c)第二の細胞をリガンド成分および試験化合物と接触させる段階(ここで、該第二の細胞はそれが細胞表面上でGPCR142を発現しないことを除きそれ以外は第一の細胞に同一である);(d)試験化合物に対する第二の細胞のセカンドメッセンジャー応答を測定する段階、および、該第二の細胞がリガンド成分とのみ接触されしかし試験化合物と接触されない対照のものと該セカンドメッセンジャー応答を比較する段階;ならびに(e)(b)の結果の(d)のものとの比較を比較する段階を含んでなる。
【0114】
一方がその細胞表面上でGPCR142を発現しかつ他方がしないことを除きそれ以外は同一である2種の細胞を得るための多数の方法が存在する。一態様において、第一の細胞は、その細胞表面上にGPCR142を構成的に発現するGPCR142の組換え宿主細胞であり、そして、第二の細胞は、GPCR142組換え細胞がそれから構築される親細胞である。別の態様において、細胞表面上でのその発現が誘導可能なプロモーターの制御下にあるようなGPCR142の組換え宿主細胞が構築される。第一の細胞は、その細胞表面上でのGPCR142の発現を可能にする誘導可能な条件下で増殖させた組換え細胞であり、また、第二の細胞は、GPCR142の発現を可能にしない誘導可能でない条件下で増殖させた該組換え細胞である。なお別の態様において、第一の細胞は、その細胞表面上に該ポリペプチドを発現するGPCR142の天然の宿主細胞であり、そして、第二の細胞は、GPCR142遺伝子が突然変異誘発により不活性化された天然の宿主由来の変異体細胞である。標準的分子生物学の方法を使用して、GPCR142の組換え宿主細胞を構築若しくはGPCR142遺伝子を不活性化し得る。
【0115】
他の好ましい態様において、本発明は:(a)リガンド成分とともにGPCR142を含んでなる単離された膜調製物を、試験化合物およびγ−リン酸上で標識したGTP分子と接触させる段階;ならびに(b)膜調製物に結合された標識の量を測定する段階;なら
びに(c)(b)での標識の量を、膜調製物がリガンド成分および標識GTPとのみ接触されしかし試験化合物と接触されない対照のものと比較する段階を含んでなる、リガンド成分/GPCR142複合体の活性を増大若しくは減少させる化合物の同定方法を提供する。
【0116】
該膜調製物は、その細胞表面上でGPCR142を発現する天然の宿主細胞から、若しくは、好ましくは、その細胞表面上で増大された量のGPCR142を発現する組換え宿主細胞から単離し得る。それはまたGPCR142宿主細胞を含んでなる組織からも単離し得る。
【0117】
蛍光分子、若しくは35S、32Pなどのような放射活性同位元素のような多様な標識を使用して、γ−リン酸上でGTP分子を標識し得る。
【0118】
なお他の態様において、本発明は:a)GPCR142を試験化合物および標識したリガンド成分と接触させる段階;b)GPCR142に結合する標識したリガンド成分の量を測定する段階;およびc)(b)の測定された量を、GPCR142が標識したリガンド成分とのみ接触されしかし試験化合物と接触されない対照のものと比較する段階を含んでなる、GPCR142に結合する化合物の同定方法を提供する。
【0119】
好ましい一態様において、細胞表面上にGPCR142を発現するGPCR142宿主細胞(組換え若しくは天然)を結合アッセイに使用し得る。別の好ましい態様において、GPCR142を含んでなる単離された膜調製物を結合アッセイに使用し得る。なお別の好ましい態様において、リラキシン3に結合することが可能であるGPCR142の実質的に精製された細胞外フラグメントを結合アッセイに使用し得る。
【0120】
GPCR142に結合する標識したリガンド成分若しくはそのフラグメントの量は、最初に未結合の標識したリガンド成分若しくはフラグメントをGPCR142から分離すること、およびその後GPCR142と結合している標識の量を測定することにより測定し得る。
【0121】
未結合の標識したリガンド成分若しくはそのフラグメントからのGPCR142タンパク質の分離は多様な方法で達成し得る。便宜的には、GPCR142を固体支持体上に固定することができ、それからリガンド成分を容易に分離し得る。固体支持体は多様な素材からおよび多様な形状に(例えばマイクロタイタープレート、マイクロビーズ、ディップスティックおよび樹脂粒子)作成し得る。該支持体は、好ましくは、S/N比を最大にするように、主としてバックグラウンド結合を最小限にするように、ならびに分離の容易さおよび費用のため選ばれる。
【0122】
分離は、例えばビーズ若しくはディップスティックを液貯めから取り出すこと、マイクロタイタープレートのウェルのような液貯めを空にする若しくは希釈すること、またはビーズ、粒子、クロマトグラフィーカラム若しくはフィルターを洗浄溶液若しくは溶媒ですすぐことにより遂げ得る。該分離段階は、好ましくは複数のすすぎ若しくは洗浄を包含する。例えば、固体支持体がマイクロタイタープレートである場合、該ウェルを、例えば塩、緩衝剤、洗剤、非特異的タンパク質などのような特異的結合に参画しないインキュベーション混合物の成分を包含する洗浄溶液で数回洗浄し得る。固体支持体が磁性ビーズである場合、該ビーズを洗浄溶液で1回若しくはそれ以上洗浄し得、そして磁石を使用して単離し得る。
【0123】
GPCR142は多数の方法を使用して固体支持体に固定し得る。一態様において、GPCR142タンパク質をマトリックスに結合させるドメインを付加する融合タンパク質を提供し得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質若しくはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)若しくはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させ得、それをその後試験化合物および標識したリガンド成分と結合させ、そして複合体形成につながる条件下で(例えば塩およびpHについて生理学的条件で)該混合物をインキュベートする。インキュベーション後に、ビーズ若しくはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄していかなる未結合の化合物も除去し、そして、複合体形成を例えば上述されたとおり直接若しくは間接的にのいずれかで
測定する。あるいは、複合体をマトリックスから解離させ得、そして標識したリガンド成分のGPCR142への結合のレベルを、標準的技術を使用して測定し得る。
【0124】
マトリックスにタンパク質を固定するための他の技術もまた本発明のスクリーニングアッセイで使用し得る。例えば、GPCR142をビオチンおよびストレプトアビジンの結合を利用して固定し得る。ビオチニル化ポリペプチドを、当該技術分野で既知の技術(例えばPierce Chemicals、イリノイ州ロックフォードから入手可能なビオチニル化キット)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から製造し得、そしてストレプトアビジン被覆した96ウェルプレート(Pierce Chemicals)のウェルに固定し得る。
【0125】
あるいは、GPCR142と反応性しかしリガンド成分若しくは試験化合物へのGPCR142の結合を妨害しない抗体を、プレートのウェルに結合させ得、そしてGPCR142をその後、抗体結合によりウェル中で捕捉し得る。
【0126】
直接検出(例えば放射活性、発光、光学若しくは電子密度)または間接検出(例えばFLAGエピトープのようなエピトープタグ若しくはワサビペルオキシダーゼのような酵素タグ)を提供するもののような多様な標識を使用して、リガンド成分若しくはそのフラグメントのいずれかを標識し得る。
【0127】
候補化合物の存在および非存在下でのリガンド成分に対するGPCR142の相互作用は、反応体を含有するのに適するいかなる容器中でも達成し得る。こうした容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管および微小遠沈管を包含する。
【0128】
別の一般的な局面において、本発明は:
(a)試験化合物を、GPCR142若しくはその活性フラグメントを含んでなるアッセイ試薬と接触させる段階;
(b)GPCR142若しくはその活性フラグメントの生物学的活性を測定する段階;および
(c)段階(b)の結果を、GPCR142若しくはその活性フラグメントを試験化合物の非存在下でリガンド成分若しくはその活性フラグメントと接触させた対照のものと比較する段階
を含んでなる、GPCR142を結合しかつリガンド成分を模倣する化合物の同定方法に関する。
【0129】
本方法の好ましい一態様において、GPCR142若しくはその活性フラグメントは組換え細胞から、好ましくは細胞表面上で発現される。別の好ましい態様において、GPCR142若しくはその活性フラグメントは単離された細胞膜調製物内にある。
【0130】
生物学的活性は、活性化されたGPCR142により誘発されるシグナル伝達事象若しくはセカンドメッセンジャー分子の細胞内濃度の変化のような、受容体およびリガンド成分の複合体と関連する生物学的活性、若しくはGPCR142およびこうしたリガンド成分の相互作用のいずれでもあり得る。これらの生物学的活性は上述された方法を使用して測定し得る。リガンド成分を「模倣する」試験化合物は、こうしたリガンド成分の変化と類似のGPCR142の生物学的活性の変化を導き出す。
【0131】
さらに、受容体は構成的活性を生じるように改変し得る。この構成的活性はインバースアゴニストにより抑制され得る。
【0132】
以下の実施例は本発明の多様な局面およびその好ましい態様をさらに具体的に説明する。
実施例
以下の実験プロトコルにおいて、ヒトインスリン、IGF1およびIGF2はSigma(ミズーリ州セントルイス)から購入した。ヒトINSL3、INSL4、INSL6、酸化されたリラキシン3のA鎖およびB鎖ペプチドはPhoenix Pharmaceuticals,Inc(カリフォルニア州ベルモント)から購入した。ブタリラキシンはNational Hormone & Peptide Program(カリフォルニア州トーランス)から購入した。ヒトリラキシン3はLiuら、2003aにより記述されたとおり組換えで製造した。別の方法で示されない限り、ポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)は、Expand High Fidelity DNAポリメラーゼ(Roche Biosciences)を使用して:変性のため94℃、30秒;アニーリングのため65℃、30秒;および伸長のため72℃3分の条件で40周期、実施した。
【0133】
他のペプチドの全部は組換えで製造した。
【実施例1】
【0134】
多様な種のGPCR142の分子クローニング
ヒトGPCR142配列の配列(Genbank受託番号:AL355388)を、GPCR135に対するその相同性に基づいてヒトゲノムから同定した。ヒトGPCR142の完全なコーディング領域を、2種のプライマー、すなわちフォワードプライマー(配列番号10)=5’ACT GGA ATT CGC CAC CAT GCC CAC
ACT CAA TAC TTC TGC C 3’;リバースプライマー(配列番号11)=5’ACT GAC GCG GCC GCT CAC CCG GGT GTC CCT CTG TCC AGG T 3’を使用して、ヒトゲノムDNAからPCR増幅した。
【0135】
完全なコーディング領域、5’非翻訳領域(UTR)および3’UTRを含有するサルGPCR142遺伝子は、ヒトGPCR142遺伝子配列に従って設計した2種のプライマー(フォワードプライマー(配列番号12):5’AGG TGG TGG GTT GTC CTT TCC ACA 3’;リバースプライマー(配列番号13):5’CTC AAG GAT CCT ACA CTT GGT G 3’)を使用して、ブタオザル(Macaca Nemestrina)のゲノムDNAからPCR増幅した。PCRは55℃のアニーリング温度を除き上述されたとおり実施した。サルGPCR142のコーディング領域配列をPCR産物の直接シークェンシングにより得た。サルGPCR142のコーディング領域をその後、新たに集成したサルGPCR142配列に従って設計したフォワードプライマー(配列番号39)(5’ACT AGA GAA TTC GCC ACC ATG CCC ACA CTC AAT ACT TCT GCC T 3’)およびリバースプライマー(配列番号40)(5’ACT AGA GCG GCC GCT TAC CCG GGT GTC CCT CCG TCC AGG T 3’)を使用してサルゲノムDNAからPCR増幅した。PCR産物を哺乳動物発現ベクターpCIneoにEcoR1とNot1部位との間にクローン化した。挿入物領域をシークェンシングして配列の同一性を確認した。
【0136】
マウスGPCR142コーディング領域を、フォワードプライマー(配列番号14)5’ACG ATA GAA TTC GCC ACC ATG GCC ACA TCC
AAT TCT TCT GCC TC 3’およびリバースプライマー(配列番号15)5’ACG ATA GCG GCC GCT CAG ACT TCT CCT GGG GAC ACA GCA G 3’を使用してBalb/cマウスゲノムDNAからPCR増幅し、そして該PCR産物を哺乳動物発現ベクターpCIneoにEcoR1とNot1部位との間にクローン化した。該プラスミドの挿入物領域をシークェンシングして配列の同一性を確認した。
【0137】
ウシおよびブタのGPCR142遺伝子は、ヒトGPCR142遺伝子の5’端および3’端のUTRに従って設計した2種のプライマー(フォワードプライマー(配列番号41):5’ACC AAT CTC TGA TGC CCT GCG 3’;リバースプライマー:(配列番号42)5’GAG TTG GGG ATC AAA GAT CAG ACT 3’)を使用してそれぞれウシおよびブタのゲノムDNAからPCR増幅した。PCRはアニーリング温度として55℃を使用して上述されたとおり実施した。PCR産物をシークェンシングし、そしてその後ウシおよびブタのGPCR142遺伝子のコーディング領域を集成した。ウシGPCR142の完全なコーディング領域をその後、新たに集成したウシGPCR142配列に従って設計した2種のプライマー(フォワードプライマー(配列番号16):5’ACT AGA GAA TTC GCC ACC
ATG CCC ACG CCC AAC ACC TCT GC 3’;リバースプライマー(配列番号17):5’ACT AGA GCG GCC GCC CAG A
AA GAG GAG GGG GTT TAA CTT GC 3’)を使用してウシゲノムDNAからPCR増幅し、そして該PCR産物をpCIneoにクローン化した。同様に、ブタGPCR142の完全なコーディング領域を、新たに集成したブタGPCR142配列に従って設計した2種のプライマー(フォワードプライマー(配列番号18):5’ATG ATA GAA TTC GCC ACC ATG CCC ACA CCC AAT ACC TCT GC 3’;リバースプライマー(配列番号19):5’ACT AGA GCG GCC GCC CAG AAA GAG GGG GAT
TAG CTT GCT C 3’)を使用してブタゲノムDNAからPCR増幅し、そしてpCIneoにクローン化した。生じるクローンの挿入物をシークェンシングしてそれらの同一性を確認した。
【実施例2】
【0138】
ヒトリラキシン3の発現、精製およびヨウ化
ヒトリラキシン3の完全なコーディング配列を、フォワードプライマー(配列番号20)、5’ACG ATC GTC GAC GCC ACC ATG GCC AGG TAC ATG CTG CTG CTG CTC 3’、およびリバースプライマー(配列番号21)、5’ACG ATA AAG CTT CTA GCA AAG GCT ACT GAT TTC ACT TTT GC 3’を使用して、ヒト脳cDNAライブラリー(Clontech)からPCR増幅した。PCR産物を哺乳動物発現ベクターpCMV−sport1(Invitrogen)にSal1とBamH1部位との間にクローン化した。クローン化したcDNAをシークェンシングして同一性を確認した。
【0139】
発現ベクターを、製造元の説明書に従ってリポフェクタミン(LipofectAmine)(Invitrogen)を使用してCOS−7細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション3日後に、トランスフェクトした細胞の上清を収集し、pHを3.0に調節し、そして混合物をセファデックス(Sephadex)C−25陽イオン交換カラムに負荷した。カラムを1M酢酸で洗浄し、そして2Mピリジンおよび1M酢酸で溶出した。溶出されたタンパク質をC−18 BondElutカラムに負荷し、0.1%TFAで洗浄し、そして60%アセトニトリルおよび0.1%TFAで溶出した。溶出されたタンパク質を凍結乾燥し、50mMトリス−HCl、pH7.5中で再構成し、そしてGTPγS結合アッセイで試験した。
【0140】
リラキシン3ペプチドの精製を助長するため、リラキシン3ペプチドおよびリラキシン3のN末端のFLAGタグを含んでなる分泌型融合タンパク質をコードする発現ベクターを構築した。こうした発現ベクターは、リラキシン3のシグナル配列を、αペプチドシグナル配列、次いでFLAG配列で置換することにより構築する。
【0141】
ヒトリラキシン3のプロペプチドのコーディング領域は、ヒトリラキシン3 cDNAを鋳型として用い、フォワードプライマー(配列番号22)、5’ACG ATA GAA TTC GAT GAC GAC GAT AAG CGG GCA GCG CCT TAC GGG GTC AGG C 3’およびリバースプライマー(配列番号23)、5’ACT ATA GGA TCC CTA GCA AAG GCT ACT
GAT TTC ACT TTT GCT AC 3’を使用してPCR増幅した。PCR産物を、改変したpCMV−sport1(Pst1とEcoR1部位との間の配列を、αペプチドシグナル配列、次いでFLAGタグをコードする配列、すなわち5’CTG CAG GCC GCC ATG CTG ACC GCA GCG TTG CTG AGC TGT GCC CTG CTG CTG GCA CTG CCT GCC ACG CGA GGA GAC TAC AAG GAC GAC GAT GAC AAG GAA TTC 3’で置換することによりポリクローニング部位を改変した)にクローン化した。ヒトリラキシン3プロペプチドのコーディング領域をその後、FLAGタグの下流のEcoR1とBamH1部位との間にクローン化した。生じるクローンをシークェンシングして同一性を確認した。
【0142】
FLAG−リラキシン3融合ペプチドを発現するプラスミドをCOS−7細胞にトラン
スフェクトした。トランスフェクション2日後に、抗FLAGアフィニティーゲル(Sigma)を使用して、組換え融合ペプチドを細胞培地からアフィニティー精製した。簡潔には、培地を抗FLAGアフィニティーカラムに負荷した。該カラムをリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)溶液で洗浄し、そして0.1Mグリシン−HCl、pH2.8で溶出した。溶出されたタンパク質を1Mトリス−HCl、pH7.5で中和した。N末端のFLAGタグをエンテロキナーゼ(Novagen)で融合ペプチドから切断し、そして、野性型リラキシン3ペプチドを、C−18カラムおよび0.1%TFA/アセトニトリル勾配を使用する逆相HPLCによりさらに精製しかつGTPγS結合アッセイで試験した。
【0143】
プロホルモン転換酵素によるプロリラキシン3の成熟リラキシン3へのプロセシング効率を増大させるため、アミノ酸配列RGRRよりなるフリン切断部位を、プロリラキシン3中でC鎖およびA鎖の接合部に創製した。この突然変異は2段階のオーバーラップするPCR反応により創製した。5’端を、FLAG−リラキシン3 cDNAを鋳型として用い、フォワードプライマー(P1)(配列番号24)、ACG ATA CTG CAG GCC GCC ATG CTG ACC GCA GCG TTG CTG A 3’およびリバースプライマー(P2)(配列番号25)、5’CAG CCA GGA
CAT CTC GTC GGC CCC GAA GAA CCC CAG GGG
TTC CTT G 3’を使用してPCR増幅した。3’端は、FLAG−リラキシン3 cDNAを鋳型として用いて、フォワードプライマー(P3)(配列番号26)、5’GGT TCT TCG GGG CCG ACG AGA TGT CCT GGC TGG CCT TTC CAG CAG C 3’およびリバースプライマー(P4)(配列番号27)、5’ACT ATA GGA TCC CTA GCA AAG
GCT ACT GAT TTC ACT TTT GCT AC 3’を使用してPCR増幅した。5’端および3’端のPCR産物を精製し、そして上述されたところのフォワードプライマー(P1)およびリバースプライマー(P4)を使用する第二段階のPCRの鋳型として一緒に混合した。最終PCR産物をpCMV−sport1にPst1とBamH1部位との間にクローン化し、そして挿入物領域をシークェンシングして同一性を確認した。
【0144】
新たなリラキシン3発現ベクターを、トランスフェクション試薬としてリポフェクタミン(LipofectAmine)を使用して、ヒトプロホルモン転換酵素フリン発現ベクターとともにCOS−7細胞にコトランスフェクトした。該ヒトフリン発現ベクターは、フォワードプライマー(配列番号28)、5’GAC TAG AAG CTT GCC ACC ATG GAG CTG AGG CCC TGG TTG CTA TG
3’およびリバースプライマー(配列番号29)、5’GAC GAT AGC GGC CGC AGT GGG CTC ATC AGA GGG CGC TCT G 3’を伴う2種のプライマーを使用して、ヒトcDNAライブラリーからヒトフリンcDNAをPCR増幅することにより構築した。PCR産物をpcDNA3.1/zeo(Invitrogen)にHind IIIとNot1部位との間にクローン化した。フリン発現ベクターの挿入物領域をシークェンシングしてその同一性を確認した。分泌型リラキシン3をその後、上述されたとおり抗FLAGアフィニティーカラムを使用して精製し、エンテロキナーゼで切断しそして逆相HPLCにかけた。トランスフェクトした細胞の培地から精製したリラキシン3を再度GTPγS結合アッセイで試験した。SDS−PAGEは精製されたタンパク質の単一バンドを示した。HPLC分析は、リラキシン3プロホルモンが成熟ペプチドに完全にプロセシングされかつ保持時間が均一であったことを示した。
【0145】
精製したリラキシン3を、Na125I(PerkinElmer Life Sciences)の存在下にクロラミンTを使用して標識した。
【実施例3】
【0146】
ヒト組換えINSL5の発現および精製
ヒトINSL5 cDNAをヒト結腸cDNA(Clontech)からPCR精製し、そして、C鎖とA鎖との間にフリン切断部位を付加することにより2個の好ましいフリ
ンプロテアーゼ切断部位(B鎖とC鎖との間の天然の部位「RWRR」、およびC鎖とA鎖との間の人工的な部位「RWWRR」)を有するよう工作した。これは2段階PCR反応により達成した。第一段階は、鋳型としてヒト結腸cDNA、および2種のプライマー(フォワードプライマー(P5)(配列番号30):5’ATA TAG GAA TTC GAC GAC GAC GAC AAG AAG GAG TCT GTG AGA CTC TGT GGG C 3’;リバースプライマー(P6)(配列番号31):5’GTG CAA CAC AAA GTT TGT AAA TCT TGT CTT CGC CAA CGT GAA TGC TTC TTT GAC TTC CAA AGC TC 3’を使用して実施した。PCR反応は、94℃30秒、65℃30秒および72℃1分の条件で40周期実施した。第一段階からの生じるPCR産物を、2種のプライマー(フォワードプライマー(P7)(配列番号32):5’ATA TAG GAA TTC GAC GAC GAC GAC AAG AAG GAG TCT GTG AGA CTC TGT GGG C 3’;リバースプライマー((P8)(配列番号33):5’ACT AGA AAG CTT TTA GCA AAG AGC ACT CAA ATC AGT CAT GGA ACA GCC ATC AGT GCA ACA CAA AGT TTG TAA ATC TTG TC 3’)を使用する第二段階のPCRの鋳型として使用した。該PCR反応は、94℃30秒、65℃30秒および72℃1分の条件で20周期実施した。該第二段階のPCR反応の産物をその後EcoR1およびHind IIIで消化し、そしてpCMV−signal−FLAG(Liuら、2003、Journal of Biological Chemistry 278(50):50754−50764))(分泌のためのシグナルペプチドおよび組換えペプチドの精製のためのN末端FLAGタグのコーディング領域を含有する改変したバージョンの哺乳動物発現ベクターpCMV−sport1(Invitrogen))にクローン化した。生じるINSL5 DNA発現構築物をシークェンシングして同一性を確認し、そしてその後フリン発現プラスミド(Liuら、2003a)とともにCOS−7細胞にコトランスフェクトした。細胞培地中に分泌された組換えINSL5ペプチドを抗FLAGアフィニティーカラム(Sigma)により精製した。アフィニティー精製したペプチドをエンテロキナーゼで切断してFLAGタグを除去した。タグのついていないINSL5ペプチドをその後、C18カラムを使用する逆相HPLCによりさらに精製した。
【実施例4】
【0147】
放射リガンド受容体結合アッセイ
ヒトリラキシン3を125Iで標識しかつ逆相HPLCにより精製した。GPCR142を一過性に発現するCOS−7細胞からの細胞膜を、結合緩衝液すなわち50mMトリス−HCl(pH7.4)、2mM EDTAおよび0.5%BSA中200μLの最終容量で、96ウェルプレート中、多様な濃度の多様な競合物質の存在若しくは非存在下のいずれかで125I−リラキシンとともにインキュベートした。結合混合物を室温で1時間インキュベートし、そしてその後96ウェルGFCプレート(Packard)を通して濾過し、かつ氷冷洗浄緩衝液すなわち50mMトリス−HCl、pH7.4で洗浄した。50マイクロリットルのMicroscint−40を各ウェルに添加し、そしてプレートをTopcounter NTX(Packard)でカウントした。放射リガンド結合の結果はGraphPad PRISMソフトウェアを使用して解析した。
【0148】
この結合アッセイはGPCR135を使用してもまた実施した。
【実施例5】
【0149】
GTPγS結合アッセイ
上述されたGPCR142発現ベクターを、製造元の説明書に従ってリポフェクタミン(Lipofectamin)(Invitrogen)を使用してCHO細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション2日後に細胞を収集し、そして冷50mMトリス−HCl、5mM EDTA、pH7.5中で細胞をホモジェナイズすること、次いで4℃ 1000gで10分間の遠心分離により細胞膜を調製した。上清を4℃ 20,00
0gで30分間遠心分離し、そして、ポリトロン組織ホモジェナイザーを使用してペレットをGTPγS結合緩衝液すなわち50mMトリス−HCl、pH7.4、10mM MgCl2、1mM EDTA、pH8.0および100mM NaClに再懸濁した。プロテアーゼ阻害剤を、1mM PMSF、10μg/mlのペプスタチンA、10μg/mlのロイペプチンの濃度の緩衝液に添加した。細胞膜および多様な濃度のリガンドを96ウェルプレートに添加し、そして室温で20分間インキュベートした。35S−GTPγS(NEN)をその後、200μLの最終容量中200pMの最終濃度で各ウェルに添加した。反応を室温で1時間進行させ、そしてその後、96ウェルGFCフィルタープレート(Packard)を通して混合物を濾過し、そして冷洗浄緩衝液すなわち50mMトリス−HCl、pH7.4、10mM MgClで洗浄した。50マイクロリットルのMicroscint−40(Packard)を各ウェルに添加し、そしてプレートをトップカウンター(TopCount NTX、Packard)でカウントした。
【0150】
同一のアッセイを、GPCR142の代わりにGPCR135を使用することを除き上述されたとおり実施した。
【0151】
図3に具体的に説明されるGTPγS結合アッセイの結果は、ヒト組換えリラキシン3がGPCR142発現膜およびGPCR135発現膜中でGTPγS結合を刺激したことを示す。図12に具体的に説明されるGTPγS結合アッセイの結果は、ヒト組換えリラキシン3がGPCR142発現膜およびGPCR135発現膜中でのGTPγS結合を刺激した一方、ヒト組換えINSL5はGPCR142発現膜中でのGTPγS結合を刺激したがしかしGPCR135発現膜中でしなかったことを示す。
【実施例6】
【0152】
細胞内のcAMPの蓄積および測定
GPCR142を安定に発現するSK−N−MC細胞を、複数のcAMP応答配列の制御下にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子をもつSK−N−MC細胞へのGPCR142を発現するプラスミドのトランスフェクションにより樹立した。トランスフェクトした細胞をG418選択(400mg/L)下で培養することにより安定なトランスフェクタントを選択した。受容体を発現する細胞を、30,000細胞/ウェルの細胞密度で96ウェルプレートに接種した。24時間後にフォルスコリンまたは多様なペプチドで細胞を刺激した。細胞を追加の6時間培養し、そして、細胞内のcAMP蓄積を表す細胞内β−gal活性をLiuら(2000)、Mol.Pharmacol.、59、420−426により記述されるとおり測定した。
【0153】
同一の実験を、GPCR135を使用して実施した。
【0154】
図4に描かれる結果は、リラキシン3がGPCR142を安定に発現するSK−N−MC細胞中でのフォルスコリンに誘導されたβ−ガラクトシダーゼ発現を用量依存的に阻害することを示す。図13に描かれる結果は、リラキシン3は、GPCR142を安定に発現するSK−N−MC細胞およびGPCR135を安定に発現する細胞中でのフォルスコリンに誘導されたβ−ガラクトシダーゼ発現を用量依存的に阻害する一方、INSL5はGPCR142を安定に発現するSK−N−MC細胞中のフォルスコリンに誘導されたβ−ガラクトシダーゼ発現を用量依存的阻害するがしかしGPCR135を発現する細胞ではしないことを示す。
【実施例7】
【0155】
Ca2+可動化アッセイ
ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞を、リポフェクタミン(LipofectAmine)を使用して、GPCR135、GPCR142を発現するプラスミドでトランスフェクトしたか、またはGqi5(Conklinら(1993)、Nature 363、274−280)若しくはGα16(Amatrudaら(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88、5587−5591)を発現するプラスミドとコトランスフェクトした。トランスフェクション2日後に細胞をPBSおよび10mM EDTAで剥離した。剥離させた細胞をDMEM−F12培地(フェノールレッドを含まない、Invitrogen)で洗浄し、そして50,000細胞/ウェルの細
胞密度で黒色ポリDリシン被覆96ウェルプレート(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)に接種した。カルシウム色素Fluo−3(AM)(TEFLABS、テキサス州オースチン)を4μMの最終濃度で細胞に負荷し、そしてリガンドに刺激されたCa2+可動化を、FLIPR(Molecular Devices)を使用してモニターした。
【0156】
図5に描かれる結果は、リラキシン3が、Gα16およびGPCR135若しくはGPCR142いずれかを共発現する細胞中でのCa2+可動化を刺激したが、しかしGα16単独を発現する細胞中ではしなかったことを示す。図14に描かれる結果は、リラキシン3が、Gα16およびGPCR135若しくはGPCR142いずれかを共発現する細胞中でのCa2+可動化を刺激した一方、INSL5はGα16およびGPCR142を共発現する細胞中でCa2+可動化を刺激したが、しかしGα16およびGPCR135を共発現する細胞若しくはGα16単独を発現する細胞ではしなかったことを示す。
【実施例8】
【0157】
多様なヒト組織中でのGPCR142 mRNA発現のPCR検出
ヒトGPCR142のコーディング領域に従って設計したGPCR142のフォワードプライマー(配列番号34):5’TTC ACT GGC CCT TCG GAG GTG CCC T 3’およびリバースプライマー(配列番号35):5’CAG AGA GTG ACC ACA TGG TTG GGA A 3’を使用して、多様な組織からのヒトcDNA(Clontech)をPCR増幅した。同時の実験において、フォワードプライマー(配列番号36)(5’ATA TCG CCG CGC TCG
TCG TCG ACA ACG GCT 3’)およびリバースプライマー(配列番号37)(5’TTT GCG GTG GAC GAT GGA GGG GCC GGA CTC 3’)を伴うヒトβ−アクチンプライマーを使用して、内部対照としてヒトβ−アクチンmRNAを増幅した。PCR反応は、94℃40秒間、60℃40秒間および72℃2分間で35周期実施した。PCR産物を2%アガロースゲル中で泳動し、臭化エチジウムで染色しかつUV照射下に写真撮影した。
【実施例9】
【0158】
in situハイブリダイゼーション
Balb/cマウスを4%パラホルムアルデヒドで灌流し、そして全脳の30μm厚の冠状切片を滑走式ミクロトームで切断しそしてスライドガラスにマウントした。組織をプロテイナーゼKで消化し、脱水しかつ約10cpm/mLの濃度のGPCR142アンチセンス若しくはセンスプローブと一夜ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後のため、組織をRNアーゼAで処理し、洗浄し、脱水しかつ富士イメージングプレートに2日間露出させた。スライドガラスをその後脱脂し、NBT2原子核乳剤(Kodak)に浸積しかつ17日後に発色した。自由裁量で、正に標識される細胞は、細胞の大きさの領域内のシルバーグレインのなんらかの蓄積(バックグラウンドレベルの3〜5倍であった)と定義した。
【実施例10】
【0159】
cRNAプローブ
マウスGPCR142の標識したアンチセンスおよびセンスプローブを、それぞれBamHIおよびHindIIIでの直線化後、およびそれぞれT7若しくはT3 RNAポリメラーゼを使用して、pBluscript(Stratagene)中のクローン化したcDNAフラグメントから合成した。プローブを35S−UTPで標識した。標識したセンス鎖が対照としてはたらき、そして細胞の局在化のいかなる特異的標識も示さなかった。35S−UTPプローブの比活性はおよそ2〜3×10cpm/μgであった。
【実施例11】
【0160】
放射リガンド競合結合アッセイ
INSL5をGPCR135およびGPCR142の可能なリガンドとして特徴付けるため、ヒトGPCR135若しくはGPCR142を一過性に発現するCOS−7細胞からの細胞膜を、Liuら(2003a、2003b)により記述されるところの放射リガ
ンドとして[125I]−リラキシン3を使用する放射リガンド結合アッセイで使用した。簡潔には、多様な濃度の未標識のリラキシン3、INSL5若しくは他のペプチドを、放射リガンドとしての100pMの[125I]−リラキシン3の存在下に、競合物質として、GPCR135若しくはGPCR142いずれかを発現するCOS−7細胞からの膜に添加した。結合アッセイを室温で1時間のインキュベーション時間の間実施した。結合混合物をその後、0.3ポリエチレンイミン(Sigma)で予め飽和させたGFCフィルターを通して濾過し、そして冷結合緩衝液で洗浄した。結合した放射リガンドは、Microscint−40を用いてトップカウンター(TopCount/NTX、Packard)でカウントした。結果をPrism 3.0ソフトウェアにより解析した。
【0161】
IC50値は特異的結合全体の50%を阻害する未標識リガンドの濃度である。図15に描かれる結果は、未標識のリラキシン3がGPCR142およびGPCR135双方への125I−リラキシン3の結合を特異的に置換した一方、未標識のINSL5は125I−リラキシン3のGPCR142への結合を特異的に置換したがしかしGPCR135への結合はしなかったことを示す。
多様な結果の論考
GPCR142の同定および配列分析
GPCR142はGPCR135に対する43%の配列の同一性を有する。膜貫通ドメイン領域で、該2種の受容体は50%以上のアミノ酸配列の同一性を共有する(図1)。ヒトGPCR142の完全なコーディング領域を、上述されたところのPCR増幅を使用してヒトゲノムDNAからクローン化し、そして、クローン化したDNAのDNA配列が、GPCR142の推定のオープンリーディングフレームを確認したことを見出した。Genbankの検索は、GPCR142配列がNCBI特許データベース中のオーファンGPCR(Genbank受託番号AX148192)に同一でありかつ単一塩基の差違を除き別のGenbank提出物(Genbank受託番号AY288415)にほぼ同一であることを示した。1個のオープンリーディングフレームがマウスゲノム中で見出された。ラットゲノム中に高度に関係したDNA配列が存在するとは言え、その配列は、GPCR142の機能的受容体をコードするオープンリーディングフレームを有しない。
放射リガンド結合アッセイを使用するGPCR142の特徴付け
125I−リラキシン3、およびGPCR142を一過性に発現するCOS−7からの細胞膜を使用して、飽和結合および競合結合アッセイを上述されたとおり実施した。結果は、125I−リラキシン3がGPCR142を発現する細胞膜に特異的に結合することを示した。対照細胞膜は特異的結合を示さなかった(図2A)。飽和等温実験において、125I−リラキシン3が1.9±0.2nMのK値を伴い飽和可能な様式でGPCR142を結合したことが見出された(図2B)。競合結合アッセイにおいて、GPCR142への125I−リラキシン3の結合は、未標識のリラキシン3およびリラキシン3のB鎖によってのみ置換される(図2C)が、しかしリラキシン、INSL3、INSL4(Komanら(1996)、J.Biol.Chem.271、20238−20241)、INSL6(Lokら(2000)、Biol.Reprod.62、1593−1599)、インスリンおよびリラキシン3のA鎖を包含する他のインスリン/リラキシンファミリーのメンバーのいずれによっても置換されないことが見出された。競合結合アッセイにおけるリラキシン3およびリラキシン3のB鎖のK値はそれぞれ1.2±0.15nMおよび85±15nMであった。
GTPγS結合およびcAMP蓄積阻害アッセイによるGPCR142の機能的特徴付け
GTPγS結合アッセイからの結果は、リラキシン3およびリラキシン3のB鎖が、GPCR142を発現する細胞膜中での35S−GTPγSの結合をリガンド濃度依存性の様式で刺激することを示した。他のインスリン/リラキシンファミリーのメンバーのいずれも、GPCR142を発現する細胞膜への検出可能な35S−GTPγSの結合を刺激しなかった。GPCR142発現を伴わない対照細胞膜は、類似のアッセイにおいてリラキシン3刺激に応答しなかった。GTPγS結合アッセイで観察されたEC50値はリラキシン3について0.93±0.12nMであった(図3)。リラキシン3のB鎖は、お
よそ100nMのEC50値を伴うはるかにより弱いアゴニスト活性を示した。リラキシン/インスリンファミリーの他のメンバーはアゴニスト活性を示さなかった。
【0162】
GPCR142を、それがcAMP阻害に結びつけられるかどうかを知るためにさらに特徴付けした。CREエレメントの制御下にβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)遺伝子をもつSK−N−MC細胞を宿主細胞として使用した(SK−N−MC/β−gal)。該細胞中では、細胞内cAMP濃度がβ−ガラクトシダーゼ活性により反映される。該結果は、リラキシン3が、0.85±0.09nMのEC50値を伴い、GPCR142を過剰発現する細胞中でフォルスコリンに刺激されたβ−gal活性を用量依存的に阻害することを示した(図4)。リラキシン3のB鎖は、有意により低い効力を伴うにもかかわらずリガンド活性を示した。GPCR142発現を伴わないSK−N−MC/β−galはリラキシン3刺激に応答しなかった。
Ca2+可動化アッセイによるGPCR142の特徴付け
Gqi5は、GPCRのシグナル伝達をcAMP阻害からカルシウム可動化に移動させることが可能であることが報告されている(Liuら(2000)、Mol.Pharmacol.59、420−426)。リラキシン3が、GPCR135およびGqi5を共発現する293細胞中でCa2+可動化を刺激することが見出されたので、GPCR142を用いて類似の実験を実施した。リラキシン3に刺激されたCa2+シグナル伝達は、GPCR142およびGqi5を共発現する293細胞中で観察されなかった。Gα16は、通常はCa2+シグナル伝達に結びつけられない多くのGPCRと結合しかつそれらのシグナル伝達をCa2+シグナル伝達に移動させることが可能である(Offermannsら(1995)、J.Biol.Chem.270、15175−15180)ことが報告された(Amatrudaら(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88、5587−5591)。GPCR142を293細胞中でGα16と共発現させた場合、リラキシン3は、トランスフェクトした細胞中の強いCa2+シグナルを用量依存性の様式で刺激した。Ca2+可動化アッセイで観察されたGPCR142へのリラキシン3結合のEC50はおよそ50nMであった(図5)。リラキシン3はまた、およそ5nMのEC50値を伴い、GPCR135およびGα16を共発現する293細胞中でのCa2+可動化も刺激した。Gα16単独によりトランスフェクトしたHEK293細胞はリラキシン3刺激に応答しなかった。
GPCR142 mRNAの組織発現プロファイル
RT−PCRを使用して、多様なヒト組織中でのGPCR142 mRNA発現を研究した。該結果は、GPCR142 mRNAが脳、腎、精巣、胸腺、胎盤、前立腺、唾液腺、甲状腺および結腸を包含する多くの組織で検出されることを示した(図6)。in situハイブリダイゼーションを使用して、脳中のGPCR142のmRNA発現をさらに研究した。GPCR142遺伝子はラットにおいて偽遺伝子であるようであるため、GPCR142 mRNAの脳の発現パターンを、マウスGPCR142プローブを使用してマウスで研究した。該結果は、GPCR142 mRNAの少ない分布が視床の中隔領域で検出されることを示した(図7)。
【0163】
要約すれば、GPCR142は全体としてGPCR135に類似に挙動した。放射リガンド結合アッセイにおいて、リラキシン3は高親和性でGPCR142に結合した。GPCR135に比較して、GPCR142に対する結合はより低いS/N比をもたらし、これはわずかにより低い親和性若しくはより低い受容体発現レベルによると思われる。GTPγS結合アッセイにおいて、GPCR142でトランスフェクトしたCHO細胞膜はリラキシン3刺激に応答した。リガンドに刺激されたGTPγSの取り込みは、再度、GPCR135でトランスフェクトした細胞からのものに比較して一貫してより低く、これは受容体発現レベル若しくは受容体/Gタンパク質結合効率によると思われる。SK−N−MC/CRE−β−gal細胞で実施したcAMP蓄積アッセイにおいて、リラキシン3はフォルスコリンで刺激されたcAMP蓄積を阻害し、GPCR142がGi/oタンパク質に結合することを示唆した。cAMP蓄積およびGTPγS結合アッセイから派生したEC50値は、結合アッセイから得られたKおよびK値(1から2nMまでの範囲
にわたる)と一致する。
【0164】
Gqi5がCPGR135のシグナル伝達をCa2+可動化に移動させることが可能であることが示された。GPCR142とGPCR135との間の1つの差違は、GPCR142がGqi5と結合しないことである。リラキシン3は、GPCR142およびGqi5を共発現する293細胞中でいかなる検出可能なCa2+シグナルも刺激しない。1つの理由は、人工的キメラGタンパク質Gqi5が全部のG結合型(Gi−linked)GPCRに結合するわけでないことであり得る。類似の現象は、GPR7およびGPR8(cAMP阻害に結びつけられる2種の高度に関連したNPW受容体)を研究した場合に観察された(Shimomuraら(2002)、J.Biol.Chem.277、35826−35832;Brezillonら(2003)、J.Biol.Chem.278、776−783)。NPWはGPR7およびGqi5を共発現する293細胞中でCa2+シグナルを刺激した一方、それはGPR8およびGqi5を共発現する細胞に同じことをしなかった。Gα16は、GPCR142およびGPCR135双方と結合しかつそれらのシグナル伝達をCa2+シグナル伝達に移動させることが可能であると思われる。しかしながら、リラキシン3は、GPCR142およびGPCR135双方についての他のアッセイ由来の効力に比較して、Ca2+アッセイで有意により低い効力を示した。数種の他のG結合型受容体について類似の現象が観察され(Liuら(2001)、J.Pharmacology and Experimental Therapeutics 299、121−130;Chenら(2003)、European
J.Pharmacology 467、57−65)、そして該差違が非天然の受容体/Gタンパク質結合若しくはCa2+アッセイが前平衡アッセイであるという事実のいずれかにより得ることが理由付けられている。
【0165】
GPCR142とGPCR135との間の別の差違はそれらのmRNA発現パターンである。GPCR135 mRNAは脳中での顕著な発現を伴い制限された組織中で発現される(Matsumoto(2000)、Gene 248、183−189)一方、GPCR142 mRNAはより広範な末梢組織中で発現され、GPCR142がGPCR135の生理学的役割と異なるものを有しうることを示唆している。
【0166】
本発明の多様な局面を実施例および好ましい態様を参照することにより上に具体的に説明したとは言え、本発明の範囲は前述の記述により定義されず、しかし特許法の原理のもとで適正に解釈されるところの以下の請求の範囲により定義されることが認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】ヒトGPCR142(配列番号2)とGPCR135(配列番号38)との間のアミノ酸配列の比較を提供する。推定の膜貫通領域TM1ないしTM7に下線が付けられている。
【図2】図2A−2C 放射リガンド結合アッセイによるGPCR142の特徴付けを示す。
【0168】
図2A
GPCR142を発現するCOS−7細胞からの膜へのリラキシン3の結合を具体的に説明する。125I−リラキシン3を放射リガンドとして最終濃度として100pMで使用した。GPCR142を発現するCOS−7細胞からの膜を125I−リラキシン3(配列番号6)とともにインキュベートし、そしてその後GFCフィルターを通して濾過した。結合された125I−リラキシン3をTopCount NTXでカウントした。非特異的結合対照は5μMの未標識リラキシン3の存在下で同一条件で実施した。擬似トランスフェクトしたCOS−7細胞を、同一条件下での平行実験で陰性対照として使用した。
【0169】
図2B
GPCR142の飽和結合アッセイの結果を描く。GPCR142を発現するCOS−
7細胞からの膜を、結合アッセイにおいて多様な濃度の125I−リラキシン3とともにインキュベートした。非特異的結合対照は5μMの未標識リラキシン3の存在下で同一条件で結合実験を実施することにより得た。特異的結合は、総結合から非特異的結合を差し引くことにより計算した。
【0170】
図2C
GPCR142の競合結合アッセイの結果を示す。結合アッセイにおいて、GPCR142を発現するCOS−7細胞からの膜を、多様な濃度の多様な競合物質の存在下で100pMの125I−リラキシン3とともにインキュベートした。
【図3】GPCR142を発現する細胞での35S−GTPγS結合のリラキシン3刺激を示す。多様な濃度を伴う多様なペプチドを、ヒトGPCR142を発現する細胞膜に添加して、GTPγSの取り込みを刺激した。特異的な35S−GTPγS取り込みは、リガンドを伴うカウントからリガンドを伴わないカウントを差し引くことにより得た。
【図4】フォルスコリン刺激されたcAMP産生のリラキシン3による阻害を具体的に説明する。GPCR142を安定に発現する細胞を、CREプロモーターの制御下にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子をもつSK−N−MC細胞(SK−N−MC/CRE−β−gal)で樹立した。多様な濃度を伴う多様なペプチドを細胞に添加した。その後、フォルスコリンを5μMの最終濃度で全サンプルに添加した。細胞中のcAMP濃度を反映するサンプル中のβ−gal活性を、β−gal活性アッセイを使用して測定した。
【図5】GPCR142およびGα16を共発現するHEK293細胞中でのCa2+可動化のリラキシン3刺激を描く。Gα16単独(Gα16)でトランスフェクトしたか若しくはヒトGPCR142およびGα16(GPCR142/Gα16)によりコトランスフェクトしたかいずれかのHEK293細胞を、リガンドとして多様な濃度のリラキシン3を使用するCa2+可動化アッセイに使用した。リガンドで刺激された細胞内Ca2+可動化をFLIPRによりモニターした。Gα16およびGPCR135によりコトランスフェクトしたHEK293細胞(GPCR135/Gα16)を比較のため同一の実験で使用した。
【図6】多様なヒト組織中でのGPCR142 mRNA発現プロファイルのRT−PCR検出を示す。PCR産物を2%アガロースゲル中で泳動し、臭化エチジウムで染色し、そしてUV照射下で可視化した。
【図7】in situハイブリダイゼーションによるGPCR142 mRNAの発現を示す脳切片の画像を提供する。切片は富士フィルムバイオイメージングアナライザー装置で処理したオートラジオグラムからの擬似カラー画像である。矢状脳切片を、アンチセンスプローブ(A)およびセンスプローブ(B)を使用してGPCR142プローブとハイブリダイズさせた。冠状脳切片は、中隔領域(C)および視床領域(D)中でのGPCR142 mRNAの少ない分布を示す。
【図8】ヒトINSL5(配列番号5)およびヒトリラキシン3(配列番号6)のポリペプチド配列間の相同性を具体的に説明する配列アライメントである。
【図9】ヒトGPCR142(配列番号4)、サルGPCR142(配列番号7)、ウシGPCR142(配列番号8)、ブタGPCR142(配列番号9)およびマウスGPCR142(配列番号2)のアミノ酸配列比較を提供する。コンセンサス配列を太字で示す。推定の7個の膜貫通ドメインは下線を付けられ、そしてTM1ないしTM7を示す。マウス、サル、ウシ(乳牛)およびブタ(porcine)(ブタ(pig))のGPCR142のDNA配列はGenbankに寄託された(受託番号:それぞれAY633765;AY633766;AY633767;AY633768)。
【図10】ヒトGPCR142 DNAのヌクレオチド配列(配列番号3)を提供する。
【図11】マウスGPCR142 DNAのヌクレオチド配列(配列番号1)を提供する。
【図12】ヒト組換えINSL5がGPCR142発現膜でのGTPγS結合を刺激するがしかしGPCR135膜ではしないことを示す、GTPγS結合アッセイの結果のプロットである。
【図13】GPCR135およびGPCR142双方についてのINSL5およびリラキシン3のそれぞれを用いるβ−ガラクトシダーゼアッセイからの比較結果のプロットである。
【図14】GPCR135およびGPCR142双方についてのINSL5およびリラキシン3のそれぞれを用いるCa2+可動化アッセイからの比較結果のプロットである。
【図15】GPCR135およびGPCR142双方の競合物質としてのINSL5およびリラキシン3のそれぞれとともにトレーサーとして125I−リラキシン3を使用する競合結合アッセイからの比較結果を描く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リラキシン3若しくはリラキシン3の活性フラグメントを含有するリガンド成分に結合されたGPCR142若しくはGPCR142の活性フラグメントを含有する受容体成分を含んでなり、かつ、該受容体および該リガンド成分の少なくとも一方が実質的に純粋な形態にある、受容体−リガンド複合体。
【請求項2】
受容体成分がヒト、マウス、ラット、サル、ウシ若しくはブタに由来し、かつ、リガンド成分がヒト、マウス、ラットに由来する、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項3】
前記リガンド成分が放射性同位元素標識を担持する、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項4】
GPCR142が配列番号2および配列番号4から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項5】
前記受容体成分が、組換えGPCR142宿主細胞の細胞表面上での発現の産物である、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項6】
前記受容体成分が、単離された細胞膜若しくは脂質小胞と結合したGPCR142若しくはGPCR142の活性フラグメントを含有する、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項7】
前記受容体成分および前記リガンド成分の双方が実質的に純粋な形態にある、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項8】
前記リガンド成分が、組換え発現の産物として実質的に純粋な形態にある、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項9】
受容体およびリガンド成分の前記少なくとも一方が、単離、ペプチド合成若しくは組換え発現の産物として実質的に純粋な形態にある、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項10】
前記リガンド成分が、ペプチド合成の産物として実質的に純粋な形態にある、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項11】
配列番号2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列若しくはその相補物を有する単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号2のアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなるベクター。
【請求項14】
配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項15】
(a)化合物および緩衝溶液を含む試験サンプルを、請求項1に記載の受容体−リガンド複合体を含むアッセイ試薬と接触させる段階;
(b)受容体−リガンド複合体の生物学的活性を測定する段階;ならびに
(c)段階(b)で測定された結果を、受容体−リガンド複合体が緩衝溶液と接触された対照の測定値と比較する段階
を含んでなる、GPCR142/リラキシン3複合体の生物学的活性を増大若しくは減少させる化合物の同定方法。
【請求項16】
受容体−リガンド複合体のGPCR142成分が組換えGPCR142宿主細胞の細胞表面上での発現の産物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
受容体−リガンド複合体の生物学的活性の前記測定がセカンドメッセンジャー応答を測定することを含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記セカンドメッセンジャー応答が、細胞内pH、細胞内カルシウムイオン濃度若しくは細胞内cAMP濃度により測定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アッセイ試薬が、GPCR142若しくはその活性フラグメントを含有する単離された膜調製物を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
受容体−リガンド複合体の生物学的活性の前記測定が、単離された膜調製物のタンパク質リン酸化の量を測定することを含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
単離された膜調製物のタンパク質リン酸化の量が、γ−リン酸標識GTP分子を使用して測定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
γ−リン酸標識GTP分子が、35S−GTPγS、33P−GTPγPおよび32P−GTPγPから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)GPCR142若しくはその活性フラグメントを、試験化合物および標識したリラキシン3若しくはその活性フラグメントと接触させる段階;
(b)GPCR142若しくはその活性フラグメントに結合する標識したリラキシン3若しくはその活性フラグメントの量を測定する段階;ならびに
(c)段階(b)で測定された量を、GPCR142若しくはその活性フラグメントが試験化合物の非存在下で標識したリラキシン3若しくはその活性フラグメントと接触された対照の測定値と比較する段階
を含んでなる、GPCR142若しくはその活性フラグメントに結合する化合物の同定方法。
【請求項24】
標識したリラキシン3若しくはその活性フラグメントが放射性同位元素標識で標識されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(a)試験化合物を、GPCR142若しくはその活性フラグメントを含んでなるアッセイ試薬と接触させること;
(b)GPCR142若しくはその活性フラグメントの生物学的活性を測定すること;および
(c)段階(b)で測定された結果を、GPCR142若しくはその活性フラグメントが試験化合物の非存在下でリラキシン3若しくはその活性フラグメントと接触された対照の測定値のものと比較すること
を含んでなる、GPCR142を結合しかつリラキシン3を模倣する化合物の同定方法。
【請求項26】
GPCR142若しくはその活性フラグメントが組換え細胞の表面に由来現される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
GPCR142若しくはその活性フラグメントが単離された細胞膜調製物内にある、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
INSL5若しくはINSL5の活性フラグメントを含有するリガンド成分に結合されたGPCR142若しくはGPCR142の活性フラグメントを含有する受容体成分を含んでなり、かつ、該受容体および該リガンド成分の少なくとも一方が実質的に純粋な形態にある、受容体−リガンド複合体。
【請求項29】
受容体成分がヒト、マウス、ラット、サル、ウシ若しくはブタに由来し、また、リガンド成分がヒト、マウス若しくはラットに由来する、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項30】
前記リガンド成分が放射性同位元素標識を担持する、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項31】
GPCR142が、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号9および配列番号2から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項32】
前記受容体成分が、組換えGPCR142宿主細胞の細胞表面上での発現の産物である、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項33】
前記受容体成分が、単離された細胞膜若しくは脂質小胞と結合したGPCR142若しくはGPCR142の活性フラグメントを含有する、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項34】
前記受容体成分および前記リガンド成分の双方が実質的に純粋な形態にある、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項35】
前記リガンド成分が組換え発現の産物として実質的に純粋な形態にある、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項36】
受容体およびリガンド成分の前記少なくとも一方が、単離、ペプチド合成若しくは組換え発現の産物として実質的に純粋な形態にある、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項37】
前記リガンド成分がペプチド合成の産物として実質的に純粋な形態にある、請求項28に記載の受容体−リガンド複合体。
【請求項38】
配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9に対応するアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
【請求項39】
配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドよりなるベクター。
【請求項40】
配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項41】
(a)化合物および緩衝溶液を含んでなる試験サンプルを、請求項28で定義されたところの受容体−リガンド複合体を含んでなるアッセイ試薬と接触させる段階;
(b)受容体−リガンド複合体の生物学的活性を測定する段階;ならびに
(c)段階(b)で測定された結果を、受容体−リガンド複合体が緩衝溶液と接触された対照の測定値と比較する段階
を含んでなる、GPCR142/INSL5複合体の生物学的活性を増大若しくは減少させる化合物の同定方法。
【請求項42】
受容体−リガンド複合体のGPCR142成分が組換えGPCR142宿主細胞の細胞表面上での発現の産物である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
受容体−リガンド複合体の生物学的活性の前記測定が、セカンドメッセンジャー応答を測定することを含んでなる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記セカンドメッセンジャー応答が、細胞内pH、細胞内カルシウムイオン濃度若しくは細胞内cAMP濃度により測定される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
アッセイ試薬が、GPCR142若しくはその活性フラグメントを含有する単離された膜調製物を含んでなる、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
受容体−リガンド複合体の生物学的活性の前記測定が、単離された膜調製物のタンパク質リン酸化の量を測定することを含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
単離された膜調製物のタンパク質リン酸化の量が、γ−リン酸標識GTP分子を使用して測定される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
γ−リン酸標識GTP分子が、35S−GTPγS、33P−GTPγPおよび32P−GTPγPから選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
(a)GPCR142若しくはその活性フラグメントを、試験化合物および標識したINSL5若しくはその活性フラグメントと接触させる段階;
(b)GPCR142若しくはその活性フラグメントに結合する標識したINSL5若しくはその活性フラグメントの量を測定する段階;ならびに
(c)段階(b)で測定された量を、GPCR142若しくはその活性フラグメントが試験化合物の非存在下で標識したINSL5若しくはその活性フラグメントと接触された対照の測定値と比較する段階
を含んでなる、GPCR142若しくはその活性フラグメントに結合する化合物の同定方法。
【請求項50】
標識したINSL5若しくはその活性フラグメントが放射性同位元素で標識されている、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
(a)試験化合物を、GPCR142若しくはその活性フラグメントを含んでなるアッセイ試薬と接触させること;
(b)GPCR142若しくはその活性フラグメントの生物学的活性を測定すること;および
(c)段階(b)で測定された結果を、GPCR142若しくはその活性フラグメントが試験化合物の非存在下でINSL5若しくはその活性フラグメントと接触された対照の測定値のものと比較すること
を含んでなる、GPCR142を結合しかつINSL5を模倣する化合物の同定方法。
【請求項52】
GPCR142若しくはその活性フラグメントが組換え細胞の表面に由来現される、請
求項51に記載の方法。
【請求項53】
GPCR142若しくはその活性フラグメントが単離された細胞膜調製物内にある、請求項51に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2007−509602(P2007−509602A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522770(P2006−522770)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/025549
【国際公開番号】WO2005/014616
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】