説明

GPS端末のウォームスタート情報管理方式

【課題】GPSユニットに電源を供給し続けることを不要にして、最新のウォームスタート情報の確保が容易になる。
【解決手段】移動体GPS端末10のGPSユニット11に保存されているウォームスタート情報をCPU12によって不揮発性メモリ13に定期的に保存しておき、この情報を再起動時にGPSユニットに書き込んでGPS衛星の捕捉および測位に使用する。
不揮発性メモリは、ウォームスタート情報の保存は最新のものとひとつ前のものを保存しておくことで、最新のウォームスタート情報に異常が検出された場合は、一つ前のウォームスタート情報を使用可能にする。さらに、不揮発性メモリに保存されるウォームスタート情報をCFメモリカードに取り込んで他の移動体GPS端末に保存可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Global Positioning System)を使ったサーバ・クライアント方式の移動体管理システムに係り、特にクライアント側になる移動体が搭載するGPS端末がGPS衛星を捕捉するために使用するウォームスタート情報の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、GPSを使ったサーバ・クライアント方式の移動体管理システムの概略図を示す。本システムの構成は、管理対象となる各移動体にそれぞれ搭載される移動体GPS端末10は、GPSユニット・CPU(コンピュータ)・CF(コンパクトフラッシュ(登録商標)メモリ)スロットを備え、GPS衛星からの電波を受け取り、GPS衛星の捕捉および測位情報から位置情報を求め、これに付加情報を加えた後、CFスロットにセット可能なCF通信カードを使って、移動体通信システム(移動体通信網・接続サービス・インターネットまたは専用線)20経由でサーバ30へ位置情報等を送付する。
【0003】
サーバ30は、ADSLや光回線などを使って、インターネットまたは専用線を介して、GPS端末10から位置情報等を取得(移動対通信網とインターネットや専用線間は、回線業者が提供する接続サービスを使用)する。サーバ30は、取得した位置情報等を使って、GPS端末10の現在位置を地図上に表示およびデータベースヘの保存等の処理を行う。
【0004】
GPS端末10は、GPS衛星の捕捉情報を基に、軌道上を周回しているGPS衛星のうち、GPSアンテナ上空に位置するGPS衛星を3つ以上捕捉して距離を測定するだけでなく、衛星捕捉に必要なGPS衛星の軌道情報などを内部に保存しておき、再度GPS衛星の捕捉が必要な場合には、この情報を使ってGPS衛星の捕捉時間を短くする機能も持つ。
【0005】
また、軌道情報としてはアルマナックと呼ばれるGPS衛星の概略軌道情報があり、それに電離層補正係数、静止の時計の補正数等を加えて、ウォームスタート情報としてGPSユニット内部に保存されることで、1分程度で測位に必要なGPS衛星の補足が可能となる(測位を行う周りの環境によって測位時間は変動する)。但し、この情報を保存するためには、GPSユニットヘ電源を供給し続ける必要があり、GPS端末の停止時にもGPSユニットヘの電源供給できるように、蓄電池(起動時に充電される)を使用している。
【0006】
GPSユニットヘ電源を供給し続けることなく、GPS衛星の概略軌道情報の有効性を判定する方法として、観測可能であったGPS衛星を識別するための衛星識別データと衛星軌道データとを保存し、電源が投下されたときに測位可能であるGPS衛星と衛星識別データによって識別されるGPS衛星とが一致するか否かを比較し、一致しているときは保存された衛星軌道データが有効であると判定して、ウォームスタート情報として利用する方法もある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−106720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(1)ウォームスタート情報をGPSユニット内部に保存するために蓄電池を使用する場合、電源の供給時間に限りがあり、長時間GPS端末を使用しない場合は、電源が供給できなくなり、折角保存したウォームスタート情報を使用できない。
【0008】
(2)ウ才一ムスタート情報をGPSユニット内部に保存するために蓄電池を使用する場合、蓄電池の寿命による交換が必要になる。
【0009】
(3)GPSユニットに保存されているウォームスタート情報は、最新の位置情報を週に一度程度更GPSから収集しなければ、データが古くなり、GPS衛星の捕捉に時間がかかるようになる。
【0010】
(4)初回起動時、または上記の(1)〜(3)が原因で、ウォームスタート情報が保存できない、保存した情報が古いなどで、GPS衛星の捕捉に時間がかかるようになる。
【0011】
(5)GPSユニットヘ電源を供給し続けることなく、GPS衛星の軌道情報の有効性を判定する方法は、ウォームスタート情報が常に新しいことが前提となり、ウォームスタート情報が古くなると、上記の(3)、(4)と同様の問題がある。
【0012】
本発明の目的は、GPSユニットに電源を供給し続けることを不要にして、最新のウォームスタート情報の確保を容易にしたウォームスタート情報管理方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記の課題を解決するため、移動体GPS端末のGPSユニットに保存されているウォームスタート情報を不揮発性メモリに定期的に保存しておき、この情報を再起動時にGPSユニットに書き込んでGPS衛星の捕捉および測位に使用し、このウォームスタート情報の保存は最新のものとひとつ前のものを保存しておくことで、最新のウォームスタート情報に異常が検出された場合は、一つ前のウォームスタート情報を使用可能にし、さらに不揮発性メモリに保存されるウォームスタート情報をCFメモリカードに取り込んで他の移動体GPS端末に保存可能とするもので、以下の方式を特徴とする。
【0014】
(1)GPSユニットに保存するウォームスタート情報を使ってGPS衛星の捕捉および測位を行う移動体GPS端末において、
前記GPSユニットに保存されているウォームスタート情報を不揮発性メモリに定期的に保存しておき、この情報を再起動時にGPSユニットに書き込んでGPS衛星の捕捉および測位に使用するウォームスタート情報管理手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
(2)前記不揮発性メモリは2面構成とし、ウォームスタート情報管理手段はウォームスタート情報の最新のものとひとつ前のものを前記不揮発性メモリに保存しておくことを特徴とする。
【0016】
(3)不揮発性メモリに保存されるウォームスタート情報は、CFメモリカードに取り込んで他の移動体GPS端末の不揮発性メモリに保存可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、移動体GPS端末のGPSユニットに保存されているウォームスタート情報を不揮発性メモリに定期的に保存しておき、この情報を再起動時にGPSユニットに書き込んでGPS衛星の捕捉および測位に使用し、このウォームスタート情報の保存は最新のものとひとつ前のものを保存しておくことで、最新のウォームスタート情報に異常が検出された場合は、一つ前のウォームスタート情報を使用可能にし、さらに不揮発性メモリに保存されるウォームスタート情報をCFメモリカードに取り込んで他の移動体GPS端末に保存可能としたため、GPSユニットに電源を供給し続けることを不要にして、最新のウォームスタート情報の確保が容易になる。
【0018】
具体的には、
(1)GPS端末は、GPSユニットに保存されているウォームスタート情報を内蔵の不揮発性メモリに保存できるため、停止時にGPSユニットヘの電源を供給する必要がなく、蓄電池が不要となりメンテナンス性が向上する。
【0019】
(2)ウォームスタート情報の保存は、移動体GPS端末の起動中に定期的に行うことが可能であるため、新しいウォームスタート情報の保存とGPS測位環境にあった収集時間の設定が可能となる。
【0020】
(3)不揮発性メモリに保存するウォームスタート情報は2面持ちとして、最新とひとつ前のウォームスタート情報を保存し、最新のウォームスタート情報に異常が検出された場合は、一つ古いウォームスタート情報を使用することができ、安定したウォームスタート情報の供給が可能である。
【0021】
(4)CFメモリカードを使って、移動体GPS端末から最新のウォームスタート情報を収集し、そのウォームスタート情報を別の移動体GPS端末の不揮発性メモリに保存することが可能であるため、初回の起動およびウォームスタート情報が古くなった移動体GPS端末であっても、起動中であった移動体GPS端末と同等の短い時間でのGPS衛星捕捉が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)
図1は、本実施形態を示すウォームスタート情報管理方式の要部構成図である。移動体GPS端末10は、ウォームスタート情報管理に、GPSユニット11とCPU12および不揮発性メモリ13を使用する。
【0023】
GPSユニット11は、GPS衛星からの電波を受け取り、GPS衛星の捕捉および測位情報の算出などを行い、さらにGPS衛星のウォームスタート情報を保存しておくことで、測位に必要なGPS衛星の補足時間を短くする。
【0024】
CPU12は、例えば、LINUX系の組み込みOSを搭載し、GPS端末10の動作中に、GPSユニット11に保存されているウォームスタート情報を取込んで、不揮発性メモリ(以下、FLASH−ROMと記載)13に保存しておく。このウォームスタート情報の保存は、GPS端末の起動中に定期的(測位開始後、1回とその後定期的に行い、その保存間隔は外部から変更可能とする)に行う。
【0025】
FLASH−ROM13は、2面持ちとし、それに保存するウォームスタート情報には最新のものとひとつ前のものを保存し、最新のウォームスタート情報に異常が検出された場合は、一つ前の古いウォームスタート情報を使用可能にする。
【0026】
CPU12は、GPS端末10が再起動された時に、FLASH−ROM13に保存されているウォームスタート情報を取り出して、GPSユニット11に設定する。
【0027】
したがって、GPSユニット11に保存されているウォームスタート情報は、CPU12側に取込んで、内蔵のFLASH−ROM13へ保存するため、GPS端末の停止時にGPSユニット11ヘの電源を供給する必要がなく、蓄電池が不要となる。
【0028】
また、ウォームスタート情報の保存は、GPS端末の起動中は、定期的に行うことが可能であるため、新しいウォームスタート情報の保存と、GPS測位環境にあった収集時間の設定が可能となる。
【0029】
また、FLASH−ROM13に保存するウォームスタート情報は2面持ちとして、最新の情報とひとつ前の情報を保存し、最新のウォームスタート情報に異常が検出された場合は、一つ古いウォームスタート情報を使用するため、安定したウォームスタート情報を供給できるようなる。
【0030】
(実施形態2)
図2は、本実施形態を示すウォームスタート情報管理方式の要部構成図である。同図は、実施形態1の機能に加えて、GPS端末に搭載されているCFスロットにCFメモリカード14をセットし、このCFメモリカード14にはFLASH−ROM13に保存したウォームスタート情報をCPU12の処理で保存できるようにする。そして、CFメモリカード14に保存したウォームスタート情報は、他のGPS端末10AのCFスロットにセットして、CFメモリカード内のウォームスタート情報を内部のFLASH−ROM13に書込みできるようにする。
【0031】
したがって、CFメモリカード14を使って、GPS端末10から最新のウォームスタート情報を収集し、そのウォームスタート情報を別のGPS端末10AのFLASH−ROM13に保存することが可能であるため、初回の起動およびウォームスタート情報が古くなったのGPS端末であっても、起動中だった他のGPS端末と同等の短い時間でのGPS衛星捕捉が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1のウォームスタート情報管理方式の要部構成図。
【図2】実施形態2のウォームスタート情報管理方式の要部構成図。
【図3】移動体管理システムの概略図。
【符号の説明】
【0033】
10、10A 移動体GPS端末
20 移動体通信システム
30 サーバ
11 GPSユニット
12 CPU(コンピュータ)
13 不揮発性メモリ
14 CFメモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSユニットに保存するウォームスタート情報を使ってGPS衛星の捕捉および測位を行う移動体GPS端末において、
前記GPSユニットに保存されているウォームスタート情報を不揮発性メモリに定期的に保存しておき、この情報を再起動時にGPSユニットに書き込んでGPS衛星の捕捉および測位に使用するウォームスタート情報管理手段を備えたことを特徴とするGPS端末のウォームスタート情報管理方式。
【請求項2】
前記不揮発性メモリは2面構成とし、ウォームスタート情報管理手段はウォームスタート情報の最新のものとひとつ前のものを前記不揮発性メモリに保存しておくことを特徴とする請求項1に記載のGPS端末のウォームスタート情報管理方式。
【請求項3】
不揮発性メモリに保存されるウォームスタート情報は、CFメモリカードに取り込んで他の移動体GPS端末の不揮発性メモリに保存可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載のGPS端末のウォームスタート情報管理方式。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−92623(P2009−92623A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266236(P2007−266236)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】