説明

HIVに対する抗体の検出および識別に有用な抗原構築物

【課題】ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)M群、HIV-1 O群およびヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)に対する抗体の検出および識別のためのイムノアッセイにおける試薬として有用な新規抗原構築物、抗原の調製に有用なポリヌクレオチド、DNAクローン、発現ベクター、形質転換宿主細胞に関する。
【解決手段】HIV-1分離株HAM112から得た単離されたHIV-1 O群envポリペプチド、ならびに(a)HIV-1 O群envポリペプチドおよびHIV-1 M群envポリペプチドのそれぞれの1以上の融合体を含む抗原構築物、および(b)追加的なO群配列を含有する他の抗原構築物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、一般に、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)M群、HIV-1 O群およびヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)に対する抗体の検出および識別のためのイムノアッセイに関する。より詳しくは、本発明は、そのようなアッセイにおける試薬として有用な新規抗原構築物ならびにそのような抗原の調製に有用なポリヌクレオチド、DNAクローン、発現ベクター、形質転換宿主細胞などに関する。
【0002】
患者におけるHIV感染の検出およびウイルス型の特徴づけは、典型的には、アッセイにおいて試薬として使用する抗原と患者の血清中の循環抗体との高度に特異的な相互作用に基づくイムノアッセイを用いて行なう。いくつかの抗原とは反応するがその他の抗原とはより低い程度でしか反応しない又は全く反応しない患者の抗体の免疫反応性は、存在するHIVの型および亜型の同定を可能にする。
【0003】
現在のところ、「M」および「O」群と称されるHIV-1の2つの主要な系統発生群が存在する(G. Meyersら, Human Retroviruses and AIDS 1995, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, NM (1995))。さらに、HIV-1 M群分離株は、互いに系統発生的にほぼ等距離にある亜群(A〜J)に分類される。M群分離株が世界的に優勢である。HIV-1 O群の配列に関する最初の報告は、これらのウイルスが、他のHIV-1亜群と同程度に密接に、チンパンジーウイルスと関連していることを示した。例えば、L.G. Gurtlerら, J. Virology 68:1581-1585 (1994); M. Vanden Haeseveldeら, J. Virology 68:1586-1596 (1994); De Leysら, J. Virology 64:1207-1216 (1990); DeLeysら, 米国特許第5,304,466号; L.G. Gurtlerら, 欧州特許公開第591914 A2号を参照されたい。O群配列は、現在までに記載されているHIV-1配列のなかで最も分岐している。HIV-1 O群株はアフリカ中西部(カメルーン、赤道ギニア、ナイジェリアおよびガボン)に地域流行性を示すが、O群分離株に感染した患者は、現在では、ベルギー、フランス、ドイツ、スペインおよび米国で確認されている。例えば、R. DeLeysら, 前掲; P. Charneauら, Virology 205:247-253 (1994); I. Loussert-Ajakaら, J. Virology 69:5640-5649 (1995); H. Hamplら, Infection 23:369-370 (1995); A. Masら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 12:1647-1649 (1996); M. Petersら, AIDS 11:493-498 (1997)およびM.A. Rayfieldら, Emerging Infectious Diseases 2:209-212 (1996)を参照されたい。
【0004】
HIV-1 M群の血清学の大部分は、発現されるウイルスタンパク質(抗原)(特に、コアおよびエンベロープ(env)領域を含むもの)のアミノ酸配列により特徴づけられる。この急速に突然変異するウイルスの種々の株間の場合と同様に、これらの抗原は構造的および機能的に類似しているが、該抗原は、ある特定の抗原に対する特異性において類似しているが同一ではない抗体を惹起する分岐(divergent)アミノ酸配列を有する。
【0005】
HIV-1感染の検出のための中心的血清学的標的の1つは、分子量41,000の膜貫通タンパク質(TMP)である糖タンパク質41(gp41)である。gp41は、HIVに関して血清反応陽性であるとみなされた個体において、強力かつ持続的な抗体応答を惹起する高度に免疫原性のタンパク質である。このタンパク質に対する抗体は、血清変換時に最初に出現するもののうちの1つである。エイズの無症候性患者またはその臨床段階を示す患者における抗gp41抗体のほぼ普遍的な存在により示されるとおり、gp41に対する免疫応答は、該疾患の経過の全体にわたり比較的強力なまま維持されるらしい。gp41に対する抗体応答のかなりの割合は、gp41内の十分に特徴づけられている免疫優性領域(IDR)に対するものである。
【0006】
アフリカからの個体において最初に見出されたウイルスであるHIV 2型(HIV-2)による感染は、現在では、最初の流行地域である西アフリカ以外の人々においても確認されており、西アフリカに住んだことがあるヨーロッパ人またはこの地域からの人々と性的関係を持ったことがあるヨーロッパ人において報告されている。例えば、A.G. Saimotら, Lancet i:688 (1987); M.A. Reyら, Lancet i:388-389 (1987); A. Wernerら, Lancet i:868-869 (1987); G. Bruckerら, Lancet i:223 (1987); K. Marquartら, AIDS 2:141 (1988); CDC, MMWR 37:33-35 (1987); 著者不明, Nature 332:295 (1988)を参照されたい。HIV-2によるエイズの症例は世界中で実証されている。HIV-1およびHIV-2株は、それらのコア抗原中に複数の共通のエピトープを有するが、これらの2つのウイルスのエンベロープ糖タンパク質は、それよりはるかに低い交差反応性を有することが、血清学的研究において示されている(F. Clavel, AIDS 1:135-140 (1987))。該エンベロープ抗原のこの限られた交差反応性は、HIV-1に関する現在利用可能な血清学的アッセイが、HIV-2に対する抗体を有する個体からの或る血清と反応しなない理由を説明すると考えられる(F. Denisら, J. Clin. Micro. 26:1000-1004 (1988))。最近発行された米国特許第5,055,391号は、HIV-2ゲノムをマッピングしており、該ウイルスを検出するためのアッセイを提供している。
【0007】
これらのウイルス株の大部分は、商業的に入手可能な診断試験を用いて容易に同定され特徴づけられる。しかしながら、HIV-1(M群)および/またはHIV-2に対する抗体の検出のために設計された現在入手可能なイムノアッセイがHIV-1 O群に対する抗体の存在を検出し得るのかに関して、懸念が生じている(I. Loussert-Ajakaら, Lancet 343:1393-1394 (1994); C.A. Schableら, Lancet 344:1333-1334 (1994); L. Gurtlerら, J. Virol. Methods 51:177-184 (1995))。現在のところ、アフリカ中西部以外の患者でHIV-1 O群分離株に感染している者はほとんど見出されていないが、保健当局は、他の地域にもこの亜型が出現することを懸念している。
【0008】
そのため、単独で又は他の抗原と組合せてすべてのHIV-1(M群およびO群)およびHIV-2分離株および/または感染の認識を可能にする、イムノアッセイにおける使用に適した新規抗原が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5304466号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第591914号明細書
【特許文献3】米国特許第5055391号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】G. Meyersら, Human Retroviruses and AIDS 1995, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, NM (1995)
【非特許文献2】L.G. Gurtlerら, J. Virology 68:1581−1585 (1994)
【非特許文献3】M. Vanden Haeseveldeら, J. Virology 68:1586−1596 (1994)
【非特許文献4】De Leysら, J. Virology 64:1207−1216 (1990)
【非特許文献5】P. Charneauら, Virology 205:247−253 (1994)
【非特許文献6】I. Loussert−Ajakaら, J. Virology 69:5640−5649 (1995)
【非特許文献7】H. Hamplら, Infection 23:369−370 (1995)
【非特許文献8】A. Masら, AIDS Res. Hum. Retroviruses 12:1647−1649 (1996)
【非特許文献9】M. Petersら, AIDS 11:493−498 (1997)
【非特許文献10】M.A. Rayfieldら, Emerging Infectious Diseases 2:209−212 (1996)
【非特許文献11】A.G. Saimotら, Lancet i:688 (1987)
【非特許文献12】M.A. Reyら, Lancet i:388−389 (1987)
【非特許文献13】A. Wernerら, Lancet i:868−869 (1987)
【非特許文献14】G. Bruckerら, Lancet i:223 (1987)
【非特許文献15】K. Marquartら, AIDS 2:141 (1988)
【非特許文献16】CDC, MMWR 37:33−35 (1987)
【非特許文献17】著者不明,Nature 332:295 (1988)
【非特許文献18】F. Clavel, AIDS 1:135−140 (1987)
【非特許文献19】F.Denisら, J. Clin. Micro. 26:1000−1004 (1988)
【非特許文献20】I. Loussert−Ajakaら, Lancet 343:1393−1394 (1994)
【非特許文献21】C.A. Schableら, Lancet 344:1333−1334 (1994)
【非特許文献22】L. Gurtlerら, J. Virol. Methods 51:177−184 (1995)
【発明の概要】
【0011】
ある種のポリペプチドまたはそれらの組合せが、HIV-1 O群および他のHIVの感染の検出に特に有用であることを、本発明において見出した。したがって、本発明の第1の態様においては、HIV-1 O群分離株HAM112の完全長env領域を表す図1の配列(配列番号61)より実質的になるアミノ酸配列を有する単離されたHIV-1 O群envポリペプチドを開示する。同様に、前記完全長ポリペプチドの免疫反応性部分を含んでなる単離されたHIV-1 O群envポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを開示する。
【0012】
本発明の第2の態様においては、第2 HIV-1 O群envポリペプチドと融合した第1 HIV-1 O群envポリペプチドを含んでなる抗原構築物を開示する。好ましくは、そのような抗原構築物の第1ポリペプチドはgp120ポリペプチドであり、該第2ポリペプチドはgp41ポリペプチドであり、所望により、該gp41ポリペプチドの疎水性領域の部分が、組換え産物として発現される場合の発現が促進されるように欠失している。また、前記抗原構築物のなかで好ましいのは、該第1および第2 HIV-1 O群envポリペプチドの少なくとも1つがHIV-1 O群分離株HAM112に由来するもの、および該第1ポリペプチドがHIV-1 O群分離株HAM112のgp120タンパク質の免疫反応性部分を含むものである。
【0013】
前記O群env構築物においては、該第1ポリペプチドは、図1に示す配列(配列番号61)の残基1〜520より実質的になるアミノ酸配列またはその免疫反応性部分を有していてもよい。短縮された好ましい第1ポリペプチドは、図1の配列(配列番号61)の残基476〜520より実質的になるアミノ酸配列を有するものである。前記ポリペプチドのいずれかと同様に、本発明の構築物中で使用する第2ポリペプチドは、HIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の免疫反応性部分であってもよく、所望により、HIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の疎水性領域の部分は該第2ポリペプチドに存在していなくてもよい。特に、該欠失部分は、図1の配列(配列番号61)の残基690〜715より実質的になるアミノ酸配列を有するgp41の部分であってもよい。
【0014】
前記の第2ポリペプチドは、好ましくは、図1の配列(配列番号61)の残基521〜873またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有する。より詳しくは、第2ポリペプチドは、図9(配列番号52)の残基47〜373より実質的になるアミノ酸配列を有していてもよく、より好ましくは、該アミノ酸配列は、図7(配列番号48)の残基47〜245より実質的になるものであってもよく、より一層好ましくは、該アミノ酸配列は、図5(配列番号58)の残基47〜215より実質的になるものであってもよい。本発明のO群env構築物の代表例としては、構築物pGO-8PL、pGO-8CKS、pGO-9PL、pGO-9CKS、pGO-11PLおよびpGO-11CKSならびにそれらの任意の誘導体、変異体および類似体が挙げられる。
【0015】
本発明のもう1つの態様においては、少なくとも1つのO群envポリペプチドと少なくとも1つのHIV-1 M群envポリペプチドとの融合体を含んでなる抗原構築物、より好ましくは、
(a)第1 HIV-1 O群envポリペプチド、
(b)第2 HIV-1 O群envポリペプチド、
(c)第1 HIV-1 M群envポリペプチド、および
(d)第2 HIV-1 M群envポリペプチド
の融合体を含む抗原構築物を開示する。前記構築物中のHIV-1 M群ポリペプチドはB亜型のHIV-1分離株に由来するものであってもよく、好ましくは、少なくとも1つはHIV-1 M群分離株HXB2Rに由来する。これらのO群/M群env構築物のいずれかにおいては、HIV-1 O群配列の少なくとも1つはHIV-1 O群分離株HAM112に由来するものであってもよい。
【0016】
より詳しくは、該第1 O群envポリペプチドおよび該第1 M群envポリペプチドは共にgp120ポリペプチドであってもよく、該第2 O群envポリペプチドおよび該第2 M群envポリペプチドは共にgp41ポリペプチドであってもよい。発現を増強するために、gp41ポリペプチドの少なくとも1つの疎水性領域の部分を欠失させることが可能である。前記に含まれる抗原構築物は、
(a)該第1 HIV-1 O群envポリペプチドが、HIV-1 O群分離株HAM112のgp120タンパク質の免疫反応性部分を含み、
(b)該第2 HIV-1 O群envポリペプチドが、HIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の免疫反応性部分を含み、
(c)該第1 HIV-1 M群envポリペプチドが、B亜型の第1 HIV-1 M群分離株のgp120タンパク質の免疫反応性部分を含み、
(d)該第2 HIV-1 M群envポリペプチドが、B亜型の第2 HIV-1 M群分離株のgp41タンパク質の免疫反応性部分を含むものである。これらのうちで好ましいのは、B亜型の第1および第2 HIV-1 M群分離株構築物が同じでありHIV-1 M群分離株HXB2Rである構築物、およびHIV-1 M群分離株HXB2Rのgp41タンパク質の疎水性領域の部分が該第2 HIV-1 M群envポリペプチドに存在しない構築物である。
【0017】
好ましいO群/M群env構築物には、(a)該第1 HIV-1 M群envポリペプチドが、図12の配列(配列番号108)の残基251〜292より実質的になるアミノ酸配列を有し、(b)該第2 HIV-1 M群envポリペプチドが、図12の配列(配列番号108)の残基293〜599またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有するものが含まれる。特に好ましいのは、該第2 HIV-1 M群envポリペプチドが、図12の配列(配列番号108)の残基293〜492より実質的になるアミノ酸配列を有するものである。
【0018】
また、該第1 HIV-1 O群envポリペプチドが、図1の配列(配列番号61)の残基1〜520またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有する前記O群/M群env構築物も好ましく、特に、図1の配列(配列番号61)の残基476〜520より実質的になるアミノ酸配列を有する第1 HIV-1 O群envポリペプチドを含むものも好ましい。該第2 HIV-1 O群envポリペプチドは、図1の配列(配列番号61)の残基521〜873またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有するものであってもよく、所望により、HIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の疎水性領域の部分は該第2 HIV-1 O群envポリペプチドに存在していなくてもよい。好ましい構築物は、そのような第2 HIV-1 O群envポリペプチドが、図9(配列番号52)の残基47〜373より実質的になるアミノ酸配列を有するものであり、より好ましいのは、該第2 HIV-1 O群envポリペプチドが、図7(配列番号48)の残基47〜245より実質的になるアミノ酸配列を有するものであり、より一層好ましいのは、該第2 HIV-1 O群envポリペプチドが、図5(配列番号58)の残基47〜215より実質的になるアミノ酸配列を有するものである。本発明のO群/M群env構築物の代表例としては、構築物pGO-12CKS、pGO-13CKSおよびpGO-14PLならびにそれらの誘導体、変異体および類似体が挙げられる。
【0019】
本発明の更にもう1つの態様においては、第1 HIV-1 envポリペプチド、第2 HIV-1 envポリペプチドおよび少なくとも1つの追加的HIV-1ポリペプチドの融合体を含む抗原構築物(特に、そのような各HIV-1 envポリペプチドがHIV-1 O群ポリペプチドであるもの)を開示する。この構築物の第1 HIV-1 O群envポリペプチドはgp120ポリペプチドであってもよく、該第2 HIV-1 O群envポリペプチドはgp41ポリペプチドであってもよい。より詳しくは、この構築物の第1 HIV-1 O群envポリペプチドはHIV-1 O群分離株HAM112のgp120タンパク質の免疫反応性部分を含んでいてもよく、該第2 HIV-1 O群envポリペプチドはHIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の免疫反応性部分を含んでいてもよい。
【0020】
これらの構築物のうち、該第1 HIV-1 O群envポリペプチドが、図1の配列(配列番号61)の残基1〜520またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有するものが好ましく、より好ましいのは、該第1 HIV-1 O群envポリペプチドが、図1の配列(配列番号61)の残基476〜520より実質的になるアミノ酸配列を有するものである。該第2 HIV-1 O群envポリペプチド(これは、図1の配列(配列番号61)の残基521〜873またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有していてもよく、所望により、HIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の疎水性領域の部分が該第2 HIV-1 O群envポリペプチドに存在していなくてもよい)に関しては、その第2 HIV-1 O群envポリペプチドが、図9(配列番号52)の残基47〜373より実質的になるアミノ酸配列を有するものが好ましい。より一層好ましいのは、図7(配列番号48)の残基47〜245より実質的になるアミノ酸配列を有する第2 HIV-1 O群envポリペプチドを有するもの、特に、該アミノ酸配列が、図5(配列番号58)の残基47〜215より実質的になるものである。
【0021】
これらのいずれかの構築物における追加的HIV-1ポリペプチドは、O群envポリペプチドであってもよいが、それは、HIV-1 MもしくはO群またはHIV-2のいずれかからの免疫原性ポリペプチド(env、gag、pol、逆転写酵素および調節および他のウイルス成分を含む)であってもよいと意図される。いずれの場合においても好ましいのは、該追加的HIV-1 O群ポリペプチドがHIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の免疫反応性部分を含む構築物である。また、該追加的HIV-1 O群ポリペプチドが、図1の配列(配列番号61)の残基521〜873またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有するもの(所望により、HIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の疎水性領域は該追加的HIV-1 O群ポリペプチドに存在していなくてもよい)も好ましい。より一層好ましいのは、該追加的HIV-1 O群envポリペプチドが、図9(配列番号52)の残基47〜373より実質的になるアミノ酸配列を有する構築物であり、特に好ましいのは、該追加的HIV-1 O群envポリペプチドが、図7(配列番号48)の残基47〜245より実質的になるアミノ酸配列を有するもの、特に、該追加的HIV-1 O群envポリペプチドが、図5(配列番号58)の残基47〜215より実質的になるアミノ酸配列を有するものである。最も好ましいのは、図17(配列番号120)の残基250〜281より実質的になるアミノ酸配列を有するHIV-1 O群のいわゆる免疫優性領域(IDR)を該追加的HIV-1 O群envポリペプチドとして有する構築物である。前記構築物の代表例としては、pGO-15CKSおよびpGO-15PLならびにそれらの任意の誘導体、変異体および類似体が挙げられる。
【0022】
本発明の更にもう1つの態様においては、第2 HIV-2 envポリペプチドと融合した第1 HIV-2 envポリペプチドを含んでなる抗原構築物(特に、該第1 HIV-2 envポリペプチドがgp120ポリペプチドであり、該第2 HIV-2 envポリペプチドがgp36ポリペプチドであるもの)を開示する。そのような構築物のなかで好ましいのは、
(a)該第1 HIV-2 envポリペプチドが、図11の配列(配列番号55)の残基248〜307またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有し、
(b)該第2 HIV-2 envポリペプチドが、図11の配列(配列番号55)の残基308〜466またはその一部より実質的になるアミノ酸配列を有するものである。本発明のHIV-2構築物の代表例としては、pHIV-210(配列番号55)ならびにその任意の誘導体、変異体および類似体が挙げられる。
【0023】
本発明の追加的な態様は、前記抗原構築物のいずれかをコードするポリヌクレオチド(該ポリヌクレオチドは、所望により、適当な宿主内での発現を指令しうる制御配列に結合していてもよく、および/または、該発現宿主に適したコドンの偏りを与えるように修飾されているコード配列を有していてもよい)を含む。本発明の更に他の態様は、そのようなポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクター、およびそれにより形質転換された宿主細胞(特に、該宿主は大腸菌(Escherichia. coli)である)を含む。
【0024】
本発明のもう1つの態様においては、試験サンプル中のHIV-1に対する抗体の検出方法であって、
(a)本発明の少なくとも1つの抗原構築物と該試験サンプルとを一緒にして混合物を得、
(b)該抗原に対して免疫学的に反応性であり該サンプル中に存在しうる抗体と該抗原との複合体の形成に適した条件下、該混合物をインキュベートし、
(c)形成したいずれかの複合体の存在を検出する工程を含んでなる方法を開示する。該方法の1つの実施形態においては、工程(c)における複合体の存在の検出を、シグナル生成化合物が結合している本発明の追加的抗原構築物を使用して行なう。もう1つの実施形態においては、特異的結合ペアの第1メンバーが結合している本発明の追加的抗原構築物を使用して、さらに、シグナル生成化合物が結合している特異的結合ペアの第2メンバーを含む指示試薬を使用して、検出を行なう。もう1つの実施形態においては、工程(c)における複合体の存在の検出を、工程(b)において形成した複合体に対する抗体(該抗体にはシグナル生成化合物が結合している)を使用して行なう。さらにもう1つの実施形態においては、工程(c)における複合体の存在の検出を、特異的結合ペアの第1メンバーが結合している工程(b)において形成した複合体に対する抗体を使用して行なう(そのような検出は、さらに、シグナル生成化合物が結合している特異的結合ペアの第2メンバーを含む指示試薬の使用を必要とする)。
【0025】
本発明の最後の態様においては、本発明の抗原構築物を含んでなる、HIV-1に対する抗体の検出のためのイムノアッセイキットを開示する。そのような構築物は、捕捉試薬または指示試薬として使用することができる。あるいは、該抗原構築物は、特異的結合ペアの第1メンバーに結合していてもよく、該キットは、シグナル生成化合物に結合した特異的結合ペアの第2メンバーを含む指示試薬をさらに含んでいてもよい。
【0026】
以下の発明の詳細な記載においては、後記で説明する添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、HIV-1 O群分離株HAM112からのenvタンパク質の推定アミノ酸配列(配列番号61)を示す。
【図2】合成HIV-1 O群env gp120/gp41遺伝子構築物を得るために用いる方法を示す。図中、pGO-8インサート=Osyn-5’〜Osyn-P3’、pGO-9インサート=Osyn-5’〜Osyn-O3’、pGO-11インサート=Osyn-5’〜Osyn-M、およびH=示されているとおりに欠失しているHIV-1 O群の疎水性領域である。
【図3A】pGO-9PL/DH5αおよびpGO-9CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図3B】pGO-9PL/DH5αおよびpGO-9CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図3C】pGO-9PL/DH5αおよびpGO-9CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図3D】pGO-9PL/DH5αおよびpGO-9CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図4A】pGO-11PL/DH5αおよびpGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図4B】pGO-11PL/DH5αおよびpGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図4C】pGO-11PL/DH5αおよびpGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図4D】pGO-11PL/DH5αおよびpGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図4E】pGO-11PL/DH5αおよびpGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図4F】pGO-11PL/DH5αおよびpGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図4G】pGO-11PL/DH5αおよびpGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。
【図5】pGO-8PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号58)を例示する。
【図6】pGO-8CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号60)を示す。
【図7】pGO-9PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号48)を例示する。
【図8】pGO-9CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号50)を示す。
【図9】pGO-11PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号52)を例示する。
【図10】pGO-11CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号54)を示す。
【図11】pHIV-210組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号55)を例示する。
【図12】pGM-1CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号108)を例示する。
【図13】pGO-12CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号91)を例示する。CKS/ポリリンカー、HIV-1 M群分離株HXB2Rからのenv gp120/gp41、およびHIV-1 O群分離株HAM112からのenv gp120/gp41に対応する残基が示されている。
【図14】pGO-13CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号93)を例示する。CKS/ポリリンカー、HIV-1 M群分離株HXB2Rからのenv gp120/gp41、およびHIV-1 O群分離株HAM112からのenv gp120/gp41に対応する残基が示されている。
【図15】pGO-14PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号95)を例示する。HIV-1 M群分離株HXB2Rからのenv gp120/gp41、およびHIV-1 O群分離株HAM112からのenv gp120/gp41に対応する残基が示されている。
【図16】pGO-15CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号97)を例示する。CKS/ポリリンカー、HIV-1 O群分離株HAM112からのenv gp120/gp41、4アミノ酸のリンカー、およびHAM112分離株からのgp41 IDRの第2コピーに対応する残基が示されている。
【図17】pGO-15PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号120)を例示する。HIV-1 O群分離株HAM112からのenv gp120/gp41、4アミノ酸のリンカー、およびHAM112分離株からのgp41 IDRの第2コピーに対応する残基が示されている。
【図18】HIVPL-31(M群陽性)を含む血清ならびに血清番号14283、189404、193Ha、14791、267HaおよびESP-1(すべてO群陽性)のパネルでM群抗原pTB319ならびにO群組換え抗原pGO-9CKS、pGO-11PL、pGO-12CKS、pGO-14PLおよびpGO-15CKSのそれぞれの反応性を試験するコート化(coated)ビーズイムノアッセイ(後記実施例14で説明する)において得られた結果を示す。
【図19】HIVPL-31(M群陽性)を含む血清ならびに血清番号14283、189404、193Ha、14791、267HaおよびESP-1(すべてO群陽性)のパネルでM群抗原pTB319ならびにO群組換え抗原pGO-9CKS、pGO-11PL、pGO-12CKS、pGO-14PLおよびpGO-15CKSのそれぞれの反応性を試験するコート化(coated)ビーズイムノアッセイ(後記実施例14で説明する)において得られた結果を示す。
【図20】HIVPL-31(M群陽性)を含む血清ならびに血清番号14283、189404、193Ha、14791、267HaおよびESP-1(すべてO群陽性)のパネルでM群抗原pTB319ならびにO群組換え抗原pGO-9CKS、pGO-11PL、pGO-12CKS、pGO-14PLおよびpGO-15CKSのそれぞれの反応性を試験するコート化(coated)ビーズイムノアッセイ(後記実施例14で説明する)において得られた結果を示す。
【図21】HIVPL-31(M群陽性)を含む血清ならびに血清番号14283、189404、193Ha、14791、267HaおよびESP-1(すべてO群陽性)のパネルでM群抗原pTB319ならびにO群組換え抗原pGO-9CKS、pGO-11PL、pGO-12CKS、pGO-14PLおよびpGO-15CKSのそれぞれの反応性を試験するコート化(coated)ビーズイムノアッセイ(後記実施例14で説明する)において得られた結果を示す。
【図22】HIVPL-31(M群陽性)を含む血清ならびに血清番号14283、189404、193Ha、14791、267HaおよびESP-1(すべてO群陽性)のパネルでM群抗原pTB319ならびにO群組換え抗原pGO-9CKS、pGO-11PL、pGO-12CKS、pGO-14PLおよびpGO-15CKSのそれぞれの反応性を試験するコート化(coated)ビーズイムノアッセイ(後記実施例14で説明する)において得られた結果を示す。
【図23】HIVPL-31(M群陽性)を含む血清ならびに血清番号14283、189404、193Ha、14791、267HaおよびESP-1(すべてO群陽性)のパネルでM群抗原pTB319ならびにO群組換え抗原pGO-9CKS、pGO-11PL、pGO-12CKS、pGO-14PLおよびpGO-15CKSのそれぞれの反応性を試験するコート化(coated)ビーズイムノアッセイ(後記実施例14で説明する)において得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な記載)
本発明の単離されたポリペプチドの1つの実施形態においては、HIV-1 O群分離株HAM112のenvタンパク質のアミノ酸配列を図1(配列番号61)に示す。この場合の「単離(された)」は、そのようなポリペプチドが、該タンパク質の実質的に純粋な調製物にまで、通常はin situで存在する他のウイルスまたは細胞成分に対して比較的に精製されていることを意味すると意図される。そのようなポリペプチドは、アッセイ試薬として、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造のために、ワクチンの製造などにおいて使用することができる。
【0029】
また、前記ポリペプチドの免疫反応性部分または断片も有用と考えられる。「免疫反応性」は、宿主内で免疫応答を惹起しうる及び/又は特異的に抗体と反応しうる程度の長さの部分を意味し、好ましくは、そのような部分的ポリペプチドは、5アミノ酸長以上である。また、本発明で用いる「部分(一部)」なる語は、末端トランケート化配列、および介在配列の除去により短縮された配列の両方をさすことに注意すべきである。
【0030】
前記のポリペプチドおよび一部は、それをコードするポリヌクレオチドの発現により最良に産生されるであろう。これらはまた、例えば、遺伝暗号の縮重、コドンの偏り(該ポリペプチドを発現する宿主細胞に有利なもの)、および生じるタンパク質における同類アミノ酸置換によるそれらの配列の変異性を許容する。さらに、ある与えられたHIV-1分離株または他の系統発生単位の間で(そしておらくそれらの中においても)、ある程度の配列変異が生じると予想される。そのため、本発明のポリペプチドおよび構築物は、前記配列と配列が同一であるものだけでなく、その示されている配列より実質的になるアミノ酸配列を有するものも含む(この場合の「実質的になる」なる語は、実質的に同じままである構造的および機能的特徴を有する変異ポリペプチドを包含する意である)。好ましくは、そのような変異体(または「類似体」)は、図1の参照配列に対して80%以上の配列相同性(「同一性」)を有する。この点において、アミノ酸配列の「類似性」を判定するための技術は、当技術分野でよく知られている。一般に、「類似性」は、アミノ酸が、同一であるか、または類似した化学的および/または物理的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する場合、適当な位置における2以上のポリペプチドの厳密なアミノ酸対アミノ酸の類似(comparison)を意味する。したがって、いわゆる「類似性の割合(%)」は、比較するポリペプチド配列の間で決定することができる。また、核酸およびアミノ酸配列の同一性を判定するための技術は、当技術分野でよく知られており、その遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定し(通常は、cDNA中間体を介して)、それにコードされるアミノ酸配列を決定し、これともう1つのアミノ酸配列とを比較することを含む。一般に、「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、それぞれ、厳密なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の一致を意味する。2以上のポリヌクレオチド配列は、2以上のアミノ酸配列の場合と同様に、それらの「同一性(%)」を決定することにより比較することができる。Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8(Genetics Computer Group, Madison, WIから入手可能)において入手可能なプログラム、例えばGAPプログラムは、それぞれ、2つのポリヌクレオチド間の同一性、ならびに2つのポリペプチド配列間の同一性および類似性の両方を計算する能力を有する。配列間の同一性または類似性を計算するための他のプログラムが、当技術分野で公知である。
【0031】
本発明のもう1つの実施形態においては、抗HIV-1抗体の検出における使用に適した抗原構築物を提供する。後記でさらに詳しく説明するとおり、そのような構築物は、組換え手段により、合成ペプチドなどとして製造することができる。さらに、それらは、それらを製造する方法および/または宿主細胞に応じて、グリコシル化または非グリコシル化されうる。そのため、本発明の抗原構築物は、糖タンパク質を含むかのように称されるが(例えば、「gp120ポリペプチド」)、細菌宿主(大腸菌(E. coli))内で発現され従って非グリコシル化形態であるものを含むと意図される。
【0032】
前記の構築物は種々の配列の融合体である(すなわち、該構築物は、例えば共発現、連結または逐次合成により、種々のエピトープ含有配列を結合させることにより得られる)ことに注意すべきである。また、発現(CKS)ポリリンカーおよび他のリンカー配列などの他のポリペプチド配列を結合させたり、所望により、それらを本発明の構築物に含めてもよい。それらの種々のポリペプチド配列の順序は、それほど重要ではない。したがって、該ポリペプチドおよびそれらのエピトープは、便宜上、再編成されているかもしれない。その他の修飾も可能である。例えば、ある領域、例えばgp41疎水性領域(それの不存在下では、残りのポリペプチド部分の発現が増強されることが判明している)のランダム突然変異もしくは部位特異的突然変異誘発または更には欠失(除去または省略)が可能である。いずれの場合も、これらの修飾を受けたポリペプチドは、ほとんど同一あるか実質的に変更されているかにかかわらず、それらのそれぞれの起源から「誘導された(それに由来する)」と称されることが可能であり、得られたポリペプチドは「誘導体」と称されることが可能である。
【0033】
本発明の更にもう1つの態様においては、試験サンプル中の抗HIV-1抗体の検出において本発明の構築物を使用するアッセイ方法を提供する。そのような方法は、生物学的試料の直接的な試験を可能にするが、該アッセイ方法はまた、予め加工された試料、例えば血清、溶解細胞および抽出物またはそれらから得た調製物(例えば、濃縮、希釈、分離、固定および/または固定化による)の試験が可能となるように修飾することができる。また、所望のアッセイ様式(アッセイフォーマット)に応じて、該抗原構築物を、例えば標識、固相上などへの固定化、他のアッセイ試薬との共役により、そのようなアッセイでの使用のために修飾することができる。
【0034】
本明細書で用いる一定の用語は特別の意義を有すると意図される。特に示さない限り、後記の用語は以下の意義を有するものとする。
【0035】
「プライマー」なる語は、標的ヌクレオチド配列に相補的であり該標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズさせるのに使用する特定のオリゴヌクレオチド配列を意味する。それは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素により触媒されるヌクレオチドの重合の開始点として働く。
【0036】
本発明で用いる「ポリヌクレオチド」なる語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を意味する。この用語は、該分子の一次構造のみをさす。したがって、該用語は、二本鎖および一本鎖のDNAならびに二本鎖および一本鎖のRNAを含む。また、それは、該ポリヌクレオチドのメチル化体またはキャップ形成体などの修飾体、および非修飾形態を含む。
【0037】
「コード(されている)(コード化)」は、ポリペプチド配列が核酸配列にコードされていることを意味する。また、該配列にコードされているポリペプチドで免疫学的に同定可能なポリペプチド配列も含まれる。したがって、本発明で特許請求する「ポリペプチド」、「タンパク質」または「アミノ酸」配列は、後記で特定する特定のポリペプチドまたはアミノ酸配列に対して少なくとも約60%の類似性、好ましくは少なくとも約70%の類似性、最も好ましくは約80%の類似性を有する。
【0038】
本明細書では互換的に用いることがある「組換えポリペプチド」または「組換えタンパク質」なる語は、本来的に又は操作により、天然において伴われているポリペプチドの全部または一部が伴われていないポリペプチド、および/または、天然で結合しているポリペプチド以外のポリペプチドに結合しているポリペプチドを意味する。組換え又はコード化ポリペプチドまたはタンパク質は、必ずしも、示されている核酸配列から翻訳されるわけではない。また、それは、化学合成または組換え発現系の発現を含む任意の方法で得ることができる。
【0039】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書中では互換的に用い、共有結合および/または非共有結合で結合したアミノ酸の分子鎖を示す。これらの用語は、特定の長さの該産物を意味するものではない。したがって、ポリペプチドの定義には、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質が含まれる。これらの用語は、該ポリペプチドの翻訳後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。また、タンパク質の断片、類似体、突然変異または変異タンパク質、融合タンパク質などが、ポリペプチドの意義に含まれる。
【0040】
特定されているポリペプチドの「断片」は、その特定されているポリペプチドに由来する少なくとも約3〜5アミノ酸、より好ましくは少なくとも約8〜10アミノ酸、より一層好ましくは少なくとも約15〜20アミノ酸を含むアミノ酸配列を意味する。
【0041】
本発明で用いる「合成ペプチド」なる語は、当業者によく知られている方法で化学的に合成することが可能な、任意の長さのアミノ酸の重合形態を意味する。これらの合成ペプチドは、種々の用途において有用である。
【0042】
「精製(された)ポリペプチド」は、関心のあるポリペプチドが天然において伴われている細胞成分を実質的に含まない(すなわち、その約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約90%以上を含有しない)関心のあるポリペプチドまたはその断片を意味する。精製方法は当技術分野で公知である。
【0043】
「単離(された)」なる語は、該物質が、その元の環境(例えば、それが天然に生じるものである場合には天然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きた動物中に存在する天然に生じるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、天然系中の共存物質の一部または全部から分離されている同じポリヌクレオチドまたはDNAまたはポリペプチドは、単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部となることが可能であり、および/または、そのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部となることが可能であり、それらもまた、該ベクターまたは組成物がその天然環境の一部でないため単離されている。
【0044】
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞系」、「細胞培養」および単細胞体として培養される微生物または高等真核細胞系を示す他のそのような用語は、組換えベクターまたは他の導入DNAのレシピエントとして使用しうる又は使用されている細胞を意味し、トランスフェクトされた元の細胞の元の後代(original progeny)を含む。
【0045】
本発明で用いる「レプリコン」は、細胞内でポリヌクレオチド複製の自律単位として挙動するプラスミド、染色体、ウイルスなどの任意の遺伝要素を意味する。
【0046】
「ベクター」は、別のポリヌクレオチドセグメントが結合しているレプリコンであり、例えば該結合セグメントの複製および/または発現を引き起こす。
【0047】
「制御配列」なる語は、それが結合しているコード配列の発現を引き起こすために必要なポリヌクレオチド配列を意味する。そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物では、そのような制御配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位およびターミネーターを含み、真核生物では、そのような制御配列は、一般に、プロモーター、ターミネーター、および場合によってはエンハンサーを含む。したがって、「制御配列」なる語は、発現するために存在することを要する全成分を最低限含むと意図され、また、存在すれば有利である追加的な成分(例えば、リーダー配列)を含んでいてもよい。
【0048】
「作動的に結合」は、記載されている成分が、それらの意図される様態で機能しうる関係で存在している状況を意味する。したがって、例えば、コード配列に「作動的に結合」している制御配列は、該制御配列に適合しうる条件下で該コード配列の発現が達成されるように連結されている。
【0049】
「コード配列」は、適当な調節配列の制御下に配置された場合に、mRNAに転写されポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。該コード配列の境界は、5’末端の翻訳開始コドンと、3′末端の1以上の翻訳停止コドンとにより定められ、それらを含む。コード配列には、mRNA、cDNAおよび組換えポリヌクレオチド配列を含めることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
「免疫学的に同定可能」なる語は、示されているポリペプチド中に存在しそれに特有なエピトープおよびポリペプチドの存在を意味する。免疫学的同一性は、抗体結合および/または結合における競合により判定することができる。これらの技術は、当業者に公知であり、本明細書にも記載されている。また、エピトープの特有性は、エピトープをコードするポリヌクレオチド配列に関するGenBankなどの公知データバンクのコンピューター検索により、また、他の公知タンパク質とのアミノ酸配列の比較により判定することができる。
【0051】
本発明で用いる「エピトープ」は、ポリペプチドの抗原決定基を意味する。エピトープは、該エピトープに特有の空間コンホメーションにおいて3個のアミノ酸を含むことが可能である、と考えられる。一般に、エピトープは、少なくとも5個のそのようなアミノ酸よりなり、通常、それは、少なくとも8〜10個のアミノ酸よりなる。空間コンホメーションを調べる方法は、当技術分野で公知であり、例えば、X線結晶解析および二次元核磁気共鳴を含む。
【0052】
「コンホメーションエピトープ」は、免疫学的に認識可能な構造のアミノ酸の特異的な配置を含むエピトープであり、そのようなアミノ酸は、連続的または不連続的な順序で同一ポリペプチド上に存在するか又は異なるポリペプチド上に存在する。
【0053】
ポリペプチド内に含有される特異的エピトープの抗体認識により該ポリペプチドが抗体に結合する場合、該ポリペプチドは抗体に対して「免疫反応性」である。免疫反応性は、抗体結合により、より詳しくは抗体結合の速度論により、および/または、該抗体に対するエピトープを含有する公知ポリペプチドを競合体として用いる結合における競合により測定することができる。ポリペプチドが抗体に対して免疫反応性であるか否かを判定する方法は、当技術分野で公知である。
【0054】
「形質転換」なる語は、宿主細胞内に外因性ポリヌクレオチドを挿入することを意味し、その挿入に用いる方法には無関係である。例えば、直接取込み、形質導入またはf接合が含まれる。外因性ポリヌクレオチドは、非組込みレプリコン(例えば、プラスミド)として維持されることが可能であり、あるいは宿主ゲノム内に組込まれることが可能である。
【0055】
「試験サンプル」なる語は、被検体(例えば、関心のある抗体または関心のある抗原)の起源である個体の身体の成分を意味する。これらの成分は当技術分野でよく知られている。これらの試験サンプルには、本明細書に記載の本発明の方法により試験することができる生物学的サンプルが含まれ、ヒトおよび動物の体液、例えば、全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液、および気道、腸管および尿生殖路の種々の外分泌物、涙、唾液、乳、白血球、骨髄腫など;生物学的流体、例えば、細胞培養上清;固定しうる組織試料;および固定しうる細胞試料が含まれる。
【0056】
「精製(された)産物」は、該産物が通常伴っている細胞構成成分から、また、関心のあるサンプル中に存在しうる他の型の細胞から単離されている産物の調製物を意味する。
【0057】
本発明は、特異的結合メンバーを使用するアッセイを提供する。本発明で用いる「特異的結合メンバー」は、特異的結合ペアのメンバーである。すなわち、2つの異なる分子のうちの一方が、化学的または物理的手段により、もう一方の分子に特異的に結合する。したがって、一般的なイムノアッセイの抗原および抗体特異的結合ペアに加えて、他の特異的結合ペアとして、ビオチンおよびアビジン、炭水化物およびレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクターおよび受容体分子、補因子および酵素、酵素阻害剤および酵素などを含めることができる。さらに、特異的結合ペアには、元の特異的結合メンバーの類似体(例えば、被検体類似体)であるメンバーを含めることができる。免疫反応性特異的結合メンバーには、組換えDNA分子により形成されたものを含む、抗原、抗原断片、抗体および抗体断片(モノクローナルおよびポリクローナルの両方ならびにそれらの複合体)が含まれる。
【0058】
本発明で用いる「捕捉試薬」は、サンドイッチアッセイにおいては該被検体に特異的な、あるいは競合アッセイにおいては指示試薬に特異的な、あるいは間接アッセイにおいては補助的特異的結合メンバー(それ自体は、該被検体に特異的である)に特異的な未標識の特異的結合メンバーを意味する。該アッセイの実施前または該アッセイの実施中に、該捕捉試薬を固相材料に直接的または間接的に結合させて、試験サンプルから固定化複合体を分離できるようにすることが可能である。
【0059】
「指示試薬」は、特異的結合メンバーに共役(「付加」)している、外的手段により検出可能な測定可能なシグナルを生成する能力を有し該シグナルを生成する「シグナル生成化合物」(「標識」)を含む。本発明で用いる「特異的結合メンバー」は、特異的結合ペアのメンバーを意味する。すなわち、2つの異なる分子のうちの一方が、化学的または物理的手段により、もう一方の分子に特異的に結合する。該指示試薬は、特異的結合ペアの抗体メンバーであることに加えて、ハプテン−抗ハプテン系(例えば、ビオチンまたは抗ビオチン、アビジンまたはビオチン、炭水化物またはレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクターまたは受容体分子、酵素補因子および酵素、酵素阻害剤または酵素など)を含む任意の特異的結合ペアのメンバーとなることも可能である。免疫反応性の特異的結合メンバーは、サンドイッチアッセイにおける関心のあるポリペプチド、または競合アッセイにおける捕捉試薬、または間接アッセイにおける補助的特異的結合メンバーのいずれかに結合する能力を有する抗体、抗原または抗体/抗原複合体でありうる。
【0060】
意図される種々の「シグナル生成化合物」(標識)には、発色性物質、触媒(例えば、酵素)、発光性化合物(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、化学発光性化合物(例えば、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウムおよびルミノール)、放射性元素および直接可視標識が含まれる。酵素には、例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼなどが含まれる。個々の標識の選択は、決定的に重要ではないが、それは、それ自体で又は1以上の追加的物質と共にシグナルを生成する能力を有するものであろう。
【0061】
「固相」(「固体支持体」)は、当業者に公知であり、反応トレーのウェルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、ニトロセルロース小片、膜、微粒子(例えば、ラテックス粒子)、ヒツジ(または他の動物の)赤血球およびDuracytes(登録商標)(Abbott Laboratories, Abbott Park, ILから入手可能な、ピルビン酸アルデヒドおよびホルムアルデヒドで「固定」された赤血球)などを含む。「固相」は決定的に重要なものではなく、当業者であれば選択することが可能である。例えば、ラテックス粒子、微粒子、磁性または非磁性ビーズ、膜、プラスチック管、マイクロタイターウェルの壁、ガラスまたはシリコンチップ、ヒツジ(または他の適当な動物の)赤血球およびDuracytes(登録商標)はすべて、適当な具体例である。ペプチドを固相上に固定化するための適当な方法には、イオン、疎水性、共有結合相互作用などが含まれる。本発明で用いる「固相」は、不溶性であるか又は後続の反応で不溶性にすることができる任意の材料を意味する。固相は、捕捉試薬を誘引し固定化するその固有能力に関して選択することができる。あるいは、固相は、捕捉試薬を誘引し固定化する能力を有する追加的な受容体を保有することが可能である。追加的な受容体には、捕捉試薬自体とは反対に荷電した、あるいは捕捉試薬に共役した荷電物質とは反対に荷電した荷電物質を含めることが可能である。あるいはまた、該受容体分子は、特異的結合反応により捕捉試薬を固定化する能力を有し固相上に固定化(付加)されている任意の特異的結合メンバーであってもよい。該受容体分子は、アッセイの実施前またはアッセイの実施中に捕捉試薬が固相材料に間接的に結合するのを可能にする。したがって、固相は、プラスチック、誘導プラスチック、磁性または非磁性金属、試験管のガラスまたはシリコン表面、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップ、ヒツジ(または他の適当な動物の)赤血球、Duracytes(登録商標)および当業者に公知の他の形態であってもよい。
【0062】
検出抗体の接近を許容するのに十分な多孔性と、抗原を結合させる適当な表面親和性とを有する、適当な任意の多孔性材料を、固相が含むことも可能であると意図され、そのような場合も本発明の範囲内に含まれる。多孔性構造が一般に好ましいが、水和化状態のゲル構造を有する材料も使用できる。そのような有用な固体支持体には、ニトロセルロースおよびナイロンが含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載のそのような多孔性固体支持体は、好ましくは、約0.01〜0.5mm、好ましくは約0.1mmの厚さのシートの形態であると意図される。該孔径は、広範囲の値を取ることが可能であり、好ましくは約0.025〜15ミクロン、特に好ましくは約0.15〜15ミクロンである。そのような支持体の表面は、該支持体に対する抗原または抗体の共有結合を引き起こす化学的方法により活性化することができる。しかしながら、一般には、十分には理解されていない疎水性力による多孔性材料上での吸着により、抗原または抗体の不可逆的結合を得る。他の適当な固体支持体は、当技術分野で公知である。
【0063】
本発明は、関心のあるヒト免疫不全ウイルスに由来するポリヌクレオチド配列およびそれにコードされるポリペプチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、mRNAまたはDNAの形態であってもよい。DNA、cDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAの形態のポリヌクレオチドは、本発明の範囲内に含まれる。該DNAは、二本鎖または一本鎖であってもよく、一本鎖である場合には、コード(センス)鎖または非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。該ポリペプチドをコードするコード配列は、本発明で提供するコード配列と同一であってもよく、遺伝暗号の重複または縮重の結果、本発明で提供するDNAと同じポリペプチドをコードする異なるコード配列であってもよい。
【0064】
このポリヌクレオチドは、該ポリペプチドのコード配列のみを含んでいたり、あるいは該ポリペプチドのコード配列と追加的なコード配列(例えば、リーダーまたは分泌配列またはプロタンパク質配列)とを含んでいたり、あるいは該ポリペプチドのコード配列(および所望により追加的なコード配列)と非コード配列(例えば、該ポリペプチドのコード配列の5′および/または3′側の非コード配列)とを含んでいてもよい。
【0065】
また、本発明は、ポリヌクレオチドの欠失、置換または付加などの修飾を含有する変異ポリヌクレオチド、および該変異ポリヌクレオチド配列から生じる任意のポリペプチド修飾体を含む。また、本発明のポリヌクレオチドは、本発明で提供するコード配列の天然に生じる対立遺伝子変異体であるコード配列を有していてもよい。
【0066】
さらに、該ポリペプチドのコード配列は、宿主細胞におけるポリペプチドの発現および分泌を補助するポリヌクレオチド配列(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に、同じリーディングフレームで融合させることができる。リーダー配列を有するポリペプチドはプレタンパク質であり、それは、該ポリペプチドを形成するために宿主細胞により切断されるリーダー配列を有していてもよい。また、該ポリヌクレオチドは、該タンパク質と追加的な5′アミノ酸残基とを含むプロタンパク質をコードしていてもよい。プロ配列を有するタンパク質は、プロタンパク質であり、場合によっては、該タンパク質の不活性形態であってもよい。プロ配列が切断されると、活性タンパク質が残される。したがって、本発明のポリヌクレオチドは、タンパク質をコードしたり、あるいはプロ配列を有するタンパク質をコードしたり、あるいはプレ配列(リーダー配列)とプロ配列とを有するタンパク質をコードしてもよい。
【0067】
また、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列とインフレームで融合したコード配列を有していてもよい。該マーカー配列は、細菌宿主の場合には、該マーカーと融合したポリペプチドの精製をもたらすための、pQE-9ベクターにより供給されるヘキサヒスチジンタグであることが可能であり、あるいは例えば、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞系)を使用する場合には、該マーカー配列は赤血球凝集素(HA)タグであることが可能である。HAタグは、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する。例えば、I. Wilsonら, Cell 37:767 (1984)を参照されたい。
【0068】
本発明はさらに、本発明で提供する推定アミノ酸配列を有するHIV-1ポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドの断片、類似体および誘導体に関する。本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然の精製ポリペプチドまたは合成ポリペプチドであってもよい。そのようなポリペプチドの断片、誘導体または類似体は、該アミノ酸残基の1以上が同類アミノ酸残基または非同類アミノ酸残基(好ましくは、同類アミノ酸残基)で置換されているものであってもよい。そのような置換アミノ酸残基は、遺伝暗号によりコードされていてもコードされていなくてもよい。あるいはそれは、該アミノ酸残基の1以上が置換基を含むものであってもよい。あるいはそれは、該ポリペプチドが別の化合物(例えば、該ポリペプチドの半減期を増加させる化合物、例えばポリエチレングリコール)に融合しているものであってもよい。あるいはそれは、追加的なアミノ酸(例えば、リーダーもしくは分泌配列、または該ポリペプチドの精製のために使用する配列、またはプロタンパク質配列)が該ポリペプチドに融合しているものであってもよい。そのような断片、誘導体および類似体は、本発明の範囲内に含まれる。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは、単離(好ましくは精製)された形態で提供される。
【0069】
したがって、本発明のポリペプチドは、天然に生じるポリペプチドのアミノ酸配列と同じであるか又は1以上のアミノ酸の置換による小さな変異により異なるアミノ酸配列を有していてもよい。該変異は、典型的には、約1〜5アミノ酸の範囲の「同類変化」であることが可能であり、この場合、該置換アミノ酸は、類似した構造的または化学的特性を有する(例えば、ロイシンからイソロイシンへの置換またはトレオニンからセリンへの置換)。これに対して、変異には、非同類変化(例えば、グリシンからトリプトファンへの置換)を含めることができる。また、類似した小さな変異には、アミノ酸の欠失または挿入またはそれらの両方を含めることができる。生物学的または免疫学的活性の変化を引き起こさずに置換し、挿入し又は欠失させるアミノ酸の種類および個数を決定する際の指針は、当技術分野でよく知られているコンピュータープログラム、例えばDNASTARソフトウェア(DNASTAR Inc., Madison WI)を用いて得ることができる。
【0070】
本発明の組換えポリペプチドは、後記に示すとおりに製造できるほかに、その他の多数の方法に従い、種々の宿主細胞および発現ベクターを使用して製造することができる。宿主細胞は、クローニングベクターまたは発現ベクターであることが可能な本発明のベクターで遺伝的に操作(形質導入または形質転換またはトランスフェクト)する。該ベクターは、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であることが可能である。操作された宿主細胞は、プロモーターを活性化し形質転換細胞を選択し又はHIVに由来する(HIV由来)遺伝子を増幅するために必要に応じて改変された通常の栄養培地中で培養することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で既に用いられているものであり、当業者には明らかなものである。
【0071】
本発明のポリヌクレオチドは、組換え技術によるポリペプチドの製造に使用することができる。したがって、ポリペプチドを発現させるためのいずれか1つの種々の発現ビヒクル(特に、ベクターまたはプラスミド)中に該ポリヌクレオチド配列を含めることが可能である。そのようなベクターには、染色体、非染色体および合成DNA配列、例えば、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクター、ウイルスDNA(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルスおよび仮性狂犬病ウイルス)が含まれる。しかしながら、宿主内で増殖可能かつ生存可能である限り、他の任意のプラスミドまたはベクターを使用することも可能である。
【0072】
適当なDNA配列を、種々の方法によりベクター中に挿入することができる。一般には、該DNA配列を、当技術分野で公知の方法により、適当な制限エンドヌクレアーゼ部位内に挿入する。そのような方法および他の方法は、当業者の技量の範囲内であると考えられる。該発現ベクター中のDNA配列は、mRNA合成を指令する適当な発現制御配列(プロモーター)に作動的に結合させる。そのようなプロモータの代表例には、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌(E. coli)lacまたはtrp、ファージλP subLプロモーター、および原核性もしくは真核性細胞またはそれらのウイルス内で遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。発現ベクターはまた、翻訳の開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含有する。該ベクターはまた、発現の増幅のための適当な配列を含むことが可能である。さらに、該発現ベクターは、好ましくは、形質転換宿主細胞の選択のための表現型形質(例えば、真核細胞培養におけるジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、または大腸菌(E. coli)におけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性)を与える遺伝子を含有する。
【0073】
前記の適当なDNA配列と適当なプロモーターまたは制御配列とを含有するベクターを使用して、適当な宿主を形質転換して、該宿主が該タンパク質を発現できるようにすることが可能である。適当な宿主の代表例としては、細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium);ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.);真菌細胞、例えば酵母;昆虫細胞、例えばショウジョウバエおよびSf9;動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、COSまたはBowes黒色腫;植物細胞などが挙げられる。適当な宿主の選択は、本明細書の教示に基づけば当業者の技量の範囲内に含まれると考えられる。
【0074】
より詳しくは、本発明はまた、前記で広く記載されている配列の1以上を含んでなる組換え構築物を含む。該構築物は、本発明の配列が順配向または逆配向で挿入されているベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)を含む。この実施形態の好ましい態様では、該構築物はさらに、該配列に作動的に結合した調節配列(例えば、プロモーターなど)を含む。多数の適当なベクターおよびプロモーターが当業者に公知であり、商業的に入手可能である。以下のベクターを例示する:細菌性:pINCY(Incyte Pharmaceuticals Inc., Palo Alto, CA)、pSPORT1(Life Technologies, Gaithersburg, MD)、pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)pBs、phagescript、psiX174、pBluescript SK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);真核性:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかしながら、宿主内で複製可能で生存可能である限り、他の任意のプラスミドまたはベクターを使用することが可能である。
【0075】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは選択マーカーを有する他のベクターを使用して、所望の任意の遺伝子から選択することができる。2つの適当なベクターとして、pKK232-8およびpCM7が挙げられる。挙げられる個々の細菌性プロモーターには、lacI、lacZ、T3、SP6、T7、gpt、λP sub R、P sub L、およびtrpが含まれる。真核性プロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)前初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネインIが含まれる。適当なベクターおよびプロモーターの選択は、当業者の技量の範囲内に十分に含まれるものである。
【0076】
本発明で用いる宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核細胞、または酵母細胞などの下等真核細胞であることが可能であり、あるいは該宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞であることが可能である。該宿主細胞内への該構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクションまたはエレクトロポレーション(L. Davisら,“Basic Methods in Molecular Biology”, 第2版, Appleton and Lang, Paramount Publishing, East Norwalk, CT [1994])により行なうことができる。
【0077】
宿主細胞内の構築物は、該組換え配列によりコードされる遺伝子産物を産生させるために常法で使用することができる。あるいは、本発明のポリペプチドは、通常のペプチド合成装置により合成的に製造することができる。
【0078】
組換えタンパク質は、適当なプロモーターの制御下、哺乳動物細胞、酵母、細菌または他の細胞内で発現させることができる。また、本発明のDNA構築物に由来するRNAを使用してそのようなタンパク質を製造するために、無細胞翻訳系を使用することができる。原核性または真核性宿主と共に使用するための適当なクローニングおよび発現ベクターは、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)(それを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0079】
本発明のポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、該ベクター中にエンハンサー配列を挿入することにより増強される。エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写を増強する、通常約10〜300bpのシス作用性のDNA要素である。具体例には、複製起点の後期側(bp100〜270)のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。
【0080】
一般には、組換え発現ベクターは、複製起点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー(例えば、大腸菌(E. coli)のアンピシリン耐性遺伝子およびエス・セレビシエ(S. cerevisiae)TRP1遺伝子)、および下流の構造配列の転写を指令するための、高度に発現される遺伝子に由来するプロモーターを含むであろう。そのようなプロモーターは、とりわけ3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α因子、酸性ホスファターゼまたは熱ショックタンパク質などの解糖酵素をコードするオペロンに由来するものであってもよい。該異種構造配列を、翻訳開始配列および終結配列、および好ましくは、周辺腔または細胞外培地中への翻訳タンパク質の分泌を指令しうるリーダー配列と、適当な段階で合体させる。所望により、該異種配列は、所望の特性(例えば、発現された組換え産物の安定化または簡便な精製)を付与するN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードしていてもよい。
【0081】
細菌において使用するための有用な発現ベクターは、適当な翻訳開始および終結シグナルと共に所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を、機能的プロモーターに対して作動可能な読取りが一致するように挿入することにより構築する。該ベクターは、該ベクターの維持を保証し、所望により該宿主内での増幅をもたらすための、1以上の形質選択マーカーと複製起点とを含むであろう。形質転換のための適当な原核性宿主には、大腸菌(E. coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、およびシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属およびスタヒロコッカス(Staphylococcus)属内の種々の種が含まれるが、その他の原核性宿主を通常の選択物として使用することも可能である。
【0082】
細菌において使用するための有用な発現ベクターは、選択マーカーおよび細菌性複製起点(よく知られたクローニングベクターpBR322(ATCC37017)の遺伝要素を含むプラスミドに由来するもの)を含む。他のベクターには、PKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden)およびGEM1(Promega Biotec, Madison, WI)が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのpBR322「バックボーン」切片を、適当なプロモーターおよび発現させる構造配列と合体させる。
【0083】
適当な宿主を形質転換し、該宿主を適当な細胞密度まで増殖させた後、選択されたプロモーターを適当な手段(例えば、温度変化または化学的誘導)により抑制解除し、細胞を更に一定期間培養する。細胞は、典型的には、遠心分離により収穫し、物理的または化学的手段により破壊し、得られた粗抽出物を更なる精製のために保存する。タンパク質の発現において使用した微生物細胞は、凍結融解サイクル、音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤の使用を含む簡便な任意の方法で破壊することができる。そのような方法は、当業者によく知られている。
【0084】
組換えタンパク質を発現させるためには、種々の哺乳動物細胞培養系を使用することができる。哺乳動物発現系には、例えば、Gluzman, Cell 23:175 (1981)に記載のサル腎線維芽細胞のCOS-7系、および和合性ベクターを発現する能力を有する他の細胞系(例えば、C127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞系)が含まれる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、適当なプロモーターおよびエンハンサーならびに必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与および受容部位、転写終結配列、5′フランキング非転写配列、および選択マーカー(例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子)を含むであろう。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列(例えば、SV40起点、初期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化部位)を使用して、必要な非転写遺伝要素を得ることが可能である。代表的で有用なベクターには、pRc/CMVおよびpcDNA 3(Invitrogen, San Diego, CAから入手可能)が含まれる。
【0085】
硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーまたはレクチンクロマトグラフィーなどの公知方法により、HIV由来ポリペプチドを組換え細胞培養物から回収し、精製する。精製中に存在するカルシウムイオンを低濃度(約0.1〜5mM)にするのが好ましい(Priceら, J. Biol. Chem. 244:917 [1969])。該ポリペプチドの立体配置を完全なものにする際に、必要に応じて、タンパク質のリフォールディング工程を行なうことが可能である。最後に、最終精製工程として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行なうことができる。
【0086】
本発明のポリペプチドは、高発現細胞系から発現された天然に精製された産物、または化学方合成法により又は原核性もしくは真核性宿主から(例えば、培養における細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞により)組換え技術で得られた産物であってもよい。組換え製造法で使用する宿主に応じて、本発明のポリペプチドは、哺乳動物または他の真核生物の炭水化物でグリコシル化されたり、あるいは非グリコシル化されうる。また、本発明のポリペプチドは、開始メチオニンアミノ酸残基を含むこともあろう。
【0087】
本発明はさらに、グリコシル化が排除された(酵母、昆虫または哺乳動物発現系における該タンパク質の、減少した炭水化物形態の発現は許容される)組換えポリペプチドの修飾形態を含む。グリコシル化部位を不活性化するための公知方法には、米国特許第5,071,972号およびEP 276,846(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明に含まれる他の変異体には、該タンパク質産物の生物活性を減少させる不適当な分子内ジスルフィド架橋の形成を妨げるためにシステイン残基をコードする配列を除去することにより得られるものが含まれる。また、本発明の構築物は、問題のあるプロテアーゼ(例えば、酵母におけるKEX2プロテアーゼ)を含有する系における発現を可能にするためにタンパク質分解プロセシングの部位を除去することにより製造することができる。そのようなプロテアーゼ部位を除去するための公知方法には、EP 212,914に記載のKEX2部位を除去するための1つの方法が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0089】
本発明は、オリゴマー、二量体、三量体およびより高次のオリゴマーの形態の前記ペプチドを含む。オリゴマーは、ペプチド間のジスルフィド結合、ペプチド間の非共有相互作用およびペプチド間のポリエチレングリコール連結を含む(これらに限定されるものではない)いくつかの手段により形成させることができる。
【0090】
オリゴマーを促進しうるペプチドリンカーまたはペプチドに対する前記ペプチドの融合体も、本発明に含まれる。そのようなペプチドには、ロイシンジッパーおよび抗体に由来するペプチド(例えば、“Construction of Immunoglobin Fusion Proteins”, Current Protocols in Immunology, Supplement 4, pgs 10.19.1-10.19.11 (1992) John Wiley and sons, New York, NYに記載のもの)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
出発プラスミドは、入手可能なプラスミドから、公開されている公知方法に従い構築することができる。さらに、記載されているものと同等のプラスミドが、当技術分野において公知であり、当業者には明らかであろう。
【0092】
組換え細胞の均一培養が得られたら、多量の組換え産生タンパク質を、ならし培地から回収し、当技術分野でよく知られているクロマトグラフィー法で分析することができる。多量の分泌タンパク質のもう1つの製造法は、哺乳動物胚の形質転換、およびトランスジェニックウシ、ヤギ、ヒツジなどが産生する乳から該組換えタンパク質を回収することを含む。ポリペプチド、および密接に関連している分子は、タンパク質の精製を容易にするような方法で組換え的に発現させることができる。1つのアプローチは、ヒトポリペプチド上に天然には存在しない1以上の追加的ポリペプチドドメインを含むキメラタンパク質の発現を含む。精製を容易にするそのようなドメインには、固定化された金属上での精製を可能にする金属キレート化ペプチド(例えば、ヒスチジン-トリプトファンドメイン)、固定化された免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGS伸長/アフィニティー精製系(Immunex Corp, Seattle, WA)で使用されるドメインが含まれるが、これらに限定されるものではない。切断可能なリンカー配列、例えばXA因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, CAから入手可能)を該ポリペプチド配列と該精製ドメインとの間に含有させることは、該ポリペプチドの回収に有用かもしれない。
【0093】
前記の組換え抗原は、直接および間接アッセイを含む(それらに限定されるものではない)種々のイムノアッセイ様式において使用されると意図され、本発明の範囲内に含まれる。該抗原をそのような種々の様式に適合させるための手段(例えば、標識または巨大分子への共役、または適当な支持体表面上での固定化によるもの)は、十分に理解されており、当業者によく知られているはずである。
【0094】
例えば、本発明のポリペプチド(それらの断片、誘導体および類似体を含む)またはそれらを発現する細胞は、HIV(および抗体を産生する免疫原)に対する抗体の検出のために使用することができる。これらの抗体は、例えば、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、キメラ、一本鎖およびヒト化抗体およびFab断片、またはFab発現ライブラリーの産物であることが可能である。そのような抗体および断片の産生のためには、当技術分野で公知の種々の方法を用いることができる。
【0095】
さらに、本発明の配列に対応するポリペプチドに対して産生される抗体は、該ポリペプチドを動物に直接注入することにより、あるいは該ポリペプチドを動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギまたはヒト)に投与することにより得ることができる。マウス、ウサギまたはヤギが好ましい。ついで、そのようにして得た抗体は、該ポリペプチド自体に結合することとなる。このように、該ポリペプチドの断片だけをコードする配列でさえ、天然ポリペプチドに結合する抗体を産生させるために使用することができる。ついで、そのような抗体を使用して、そのポリペプチドを含有する疑いのある組織などの試験サンプルから該ポリペプチドを単離することができる。モノクローナル抗体の製造には、連続継代細胞株培養により産生される抗体を与える任意の技術を用いることができる。具体例には、KohlerおよびMilstein, Nature 256:495-497 (1975)に記載のハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、Kozborら, Immun. Today 4:72 (1983)に記載のヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびColeら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc, New York, NY, pp. 77-96 (1985)に記載のヒトモノクローナル抗体を産生させるためのEBV-ハイブリドーマ技術が含まれる。一本鎖抗体の産生のための記載されている技術を、本発明の免疫原性ポリペプチド産物に対する一本鎖抗体を産生させるために適用することができる。例えば、米国特許第4,946,778号(それを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0096】
そのような抗体は、「サンドイッチ」イムノアッセイおよびプローブアッセイを含む種々のアッセイ様式において使用することができる。例えば、前記のモノクローナル抗体または断片は、試験サンプル中のHIV由来ポリペプチドの存在を判定するための種々のアッセイ系で使用することができる。例えば、第1のアッセイ様式では、固相上にコーティングされている、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはその断片、またはこれらの抗体の組合せを、試験サンプルと接触させて、第1混合物を形成させる。この第1混合物を、抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下でインキュベートする。ついで、シグナル生成化合物が結合しているモノクローナルもしくはポリクローナル抗体またはその断片、またはこれらの抗体の組合せを含む指示試薬を、該抗原/抗体複合体と接触させて、第2混合物を形成させる。ついで、この第2混合物を、抗体/抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下でインキュベートする。シグナル生成化合物により生成した測定可能なシグナルを検出することにより、試験サンプル中に存在し固相上に捕捉されたHIV由来ポリペプチド抗原の存在を判定する。試験サンプル中に存在するHIV由来ポリペプチド抗原の量は、生成したシグナルに比例する。
【0097】
あるいは、ポリクローナルもしくはモノクローナルHIV由来ポリペプチド抗体またはその断片またはそのような抗体の組合せ(固体支持体に結合しているもの)、試験サンプル、および指示試薬(シグナル生成化合物が結合している、HIV由来ポリペプチド抗原に特異的に結合するモノクローナルもしくはポリクローナル抗体またはその断片またはこれらの抗体の組合せを含むもの)を接触させることにより、混合物を得る。この混合物を、抗体/抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下でインキュベートする。該シグナル生成化合物により生成した測定可能なシグナルを検出することにより、試験サンプル中に存在し固相上に捕捉されたHIV由来ポリペプチドの存在を判定する。試験サンプル中に存在するHIV由来ポリペプチドタンパク質の量は、生成したシグナルに比例する。
【0098】
もう1つのアッセイ様式では、本発明の少なくとも2つのモノクローナル抗体の1つまたは組合せを、HIV由来ポリペプチドタンパク質に対する抗体の検出のための競合プローブとして使用することができる。例えば、HIV由来ポリペプチドタンパク質(例えば、本明細書に開示の組換え抗原)を、単独で又は組合せて、固相上にコーティングする。ついで、HIV由来ポリペプチド抗原に対する抗体を含有する疑いのある試験サンプルを、シグナル生成化合物と少なくとも1つのモノクローナル抗体とを含む指示試薬と共に、固相に結合している試験サンプルおよび指示試薬または固相に結合している指示試薬のいずれかの抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下でインキュベートする。固相に対するモノクローナル抗体の結合の減少を定量的に測定することができる。
【0099】
さらにもう1つの検出方法では、本発明のモノクローナルまたはポリクローナル抗体のそれぞれを、免疫組織化学的分析による固定組織切片および固定細胞中のHIV由来ポリペプチド抗原の検出において使用することができる。これらの抗体を直接的に標識(例えば、フルオレセイン、金コロイド、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどでの標識)したり又は二次標識化抗種抗体を使用して標識(本明細書に例示する種々の標識)する細胞化学的分析を用いて、疾患の組織病理を追跡することが可能である。
【0100】
さらに、これらのモノクローナル抗体を、CNBr活性化セファロースに類似したマトリックスに結合させて、細胞培養または生物学的組織からの特異的HIV由来ポリペプチドタンパク質のアフィニティー精製(例えば、組換え及び天然HIV由来ポリペプチド抗原およびタンパク質の精製)に使用することができる。
【0101】
また、治療用途または他の同様の用途のためのキメラ抗体の産生にも、モノクローナル抗体を使用することができる。
【0102】
モノクローナル抗体またはその断片は、HIV由来ポリペプチド抗原の検出のために個々に提供されうる。また、該モノクローナル抗体(およびその断片)の組合せを、少なくとも1つのHIV由来ポリペプチド抗体と他のHIV由来ポリペプチド領域に対する抗体(各抗体は、異なる結合特異性を有する)との混合物または「カクテル」中の成分として、一緒に使用することができる。したがって、このカクテルは、HIVのHIV由来ポリペプチドタンパク質に対するモノクローナル抗体と、該HIV由来ポリペプチドゲノムの他の抗原決定基に対する他のモノクローナル抗体とを含むことが可能である。
【0103】
該アッセイ様式で使用しうるポリクローナル抗体またはその断片は、該アッセイで使用するHIV由来ポリペプチド領域または他のHIV由来ポリペプチドタンパク質に特異的に結合すべきである。好ましく使用されるポリクロナール抗体は、ヒト、ヤギ、ウサギまたはヒツジ抗HIV由来ポリペプチドポリクローナル抗体などの哺乳動物に由来するものである。最も好ましくは、該ポリクローナル抗体は、ウサギポリクローナル抗HIV由来ポリペプチド抗体である。該アッセイで使用するポリクローナル抗体は、単独で又はポリクローナル抗体のカクテルとして使用することができる。該アッセイ様式で使用するカクテルは、異なるHIV由来ポリペプチド特異性を有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含むため、それらは、HIV由来ポリペプチドの状態の診断、評価および予後判定ならびにHIV由来ポリペプチドタンパク質の識別および特異性の研究に有用である。
【0104】
組換え抗原の使用により、およびHIV由来ポリペプチドのアミノ酸配列を含有する合成ペプチドまたは精製ペプチドの使用により、アッセイにおいてHIV由来ポリペプチドの検出が可能となると意図され、それが本発明の範囲内に含まれる。また、そのような各HIV由来ポリペプチドの異なるエピトープを定める異なる合成、組換えまたは精製ペプチドを、HIV病態の診断、評価または予後判定のためのアッセイにおいて併用することも、本発明の範囲内に含まれる。この場合、これらのペプチドを1つの固相上にコーティングしたり、あるいはそれぞれ分離したペプチドを、分離した固相(例えば、微粒子)上にコーティングし、ついで、後にアッセイにおいて使用しうるペプチド混合物を形成するように合体させることが可能である。さらに、HIV疾患の診断、評価または予後判定のために、異なるポリペプチドからのエピトープを定める複数のペプチドを併用することができると意図される。ついで、固相上にコーティングされた又は検出可能な標識で標識されたペプチドを、一定量の抗体に関して、患者のサンプルからのペプチドと競合させる。該抗体に対する該合成、組換えまたは精製ペプチドの結合の減少は、患者のサンプル中のHIVにより分泌されたポリペプチドの存在の指標となり、それは今度は、患者におけるHIV遺伝子の存在を示す。アッセイ様式の変形は、当業者に公知であり、本明細書において後に検討する。
【0105】
もう1つのアッセイ様式では、以下のとおり、抗原および/またはHIV由来ポリペプチドに対する抗体の存在を同時アッセイにおいて検出することができる。試験サンプルを、同時に、第1被検体に対する捕捉試薬(該捕捉試薬は、固相に結合した第1被検体に特異的な第1結合メンバーを含む)および第2被検体に対する捕捉試薬(該捕捉試薬は、第2固相に結合した第2被検体に対する第1結合メンバーを含む)と接触させて、混合物を得る。この混合物を、捕捉試薬/第1被検体および捕捉試薬/第2被検体複合体の形成に十分な時間および条件下でインキュベートする。ついで、そのようにして生成したこれらの複合体を、シグナル生成化合物で標識された第1被検体に特異的な結合ペアのメンバーと、シグナル生成化合物で標識された第2被検体に特異的な結合ペアのメンバーとを含む指示試薬に接触させて、第2混合物を得る。この第2混合物を、捕捉試薬/第1被検体/指示試薬複合体および捕捉試薬/第2被検体/指示試薬複合体の形成に十分な時間および条件下でインキュベートする。いずれかの又は両方の固相上で形成した複合体に関して生成したシグナルを、試験サンプル中の1以上の被検体の存在の指標として検出することにより、1以上の被検体の存在を判定する。このアッセイ様式では、組換え抗原、およびそれから産生させたモノクローナル抗体を使用することができる。そのようなアッセイ系は、EP公開第0473065号に、より詳しく記載されている。
【0106】
その他のアッセイ様式では、本明細書に開示するポリペプチドを使用して、試験サンプル中のHIV由来ポリペプチドに特異的な抗体の存在を検出することができる。例えば、試験サンプルを、少なくとも1つの組換えタンパク質が結合している固相と共にインキュベートする。これらを、抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下で反応させる。インキュベーション後、該抗原/抗体複合体を検出する。選択するアッセイ系に応じて、検出を容易にするために、指示試薬を使用することができる。もう1つのアッセイ様式では、試験サンプルを、本明細書に記載のとおりに産生させた組換えタンパク質が結合している固相と接触させ、また、指示試薬で好ましくは標識されている、該タンパク質に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体と接触させる。抗体/抗原複合体の形成に十分な時間および条件下でインキュベーションした後、固相を遊離相から分離し、該標識をHIV由来ポリペプチド抗体の存在の指標として該固相中または該遊離相中で検出する。本明細書に開示する組換え抗原を使用する他のアッセイ様式が意図される。これらは、第1起源からの少なくとも1つの抗原が結合している固相と試験サンプルとを接触させ、抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下で該固相と試験サンプルとをインキュベートし、ついで該固相を標識抗原(該抗原は、同一起源に由来する、あるいは第1起源とは異なる第2起源に由来する)と接触させることを含む。例えば、大腸菌(E. coli)などの第1起源に由来する組換えタンパク質を、固相上の捕捉抗原として使用し、そのように調製された固相に試験サンプルを加え、必要に応じて標準的なインキュベーションおよび洗浄工程の後、異なる起源(すなわち、非大腸菌(E. coli))に由来する組換えタンパク質を指示試薬の一部として使用する。同様に、固相上の組換え抗原と合成ペプチド(指示相中)との組合せも可能である。第1起源からのHIV由来ポリペプチドに特異的な抗原(捕捉抗原として)と、第2起源からのHIV由来ポリペプチドに特異的な抗原とを使用する任意のアッセイ様式が意図される。このように、組換え抗原の種々の組合せ、および合成ペプチド、精製タンパク質などの使用が、本発明の範囲内に含まれる。このようなアッセイおよび他のアッセイは、米国特許第5,254,458号(それは共通の所有権を享受しており、それを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0107】
また、種々の他の固相を使用する他の実施形態も意図され、本発明の範囲内に含まれる。例えば、速い液相免疫化学的反応を行なうために、負に荷電した重合体との固定化可能反応複合体を固定化するためのイオン捕捉法(EP公開第0326100号およびEP公開第0406473号に記載されている)を本発明で使用することができる。固定化可能な免疫複合体は、その負に荷電したポリ-アニオン/免疫複合体と、予め処理されている正に荷電した多孔性マトリックスとの間のイオン相互作用により、該反応混合物の残部から分離され、既に記載されている種々のシグナル生成系(例えば、EPO公開第0273,115号に記載の化学発光シグナルの測定において記載されているもの)を用いて検出される。
【0108】
また、固相が微粒子(磁性または非磁性)を含む微粒子技術を用いる系(例えば、自動化系および半自動化系)での使用に、本発明の方法を適合させることが可能である。そのような系には、例えば、公開されているEPO出願EP 0425 633およびEP 0424634にそれぞれ記載されている系が含まれる。
【0109】
イムノアッセイにおける走査型プローブ顕微鏡検査法(scanning probe microscopy)(SPM)の使用も、本発明のモノクローナル抗体を容易に適合させることが可能な技術として挙げられる。走査型プローブ顕微鏡検査法、特に原子間力顕微鏡検査法においては、捕捉相、例えば、本発明のモノクローナル抗体の少なくとも1つを固相に付着させ、走査型プローブ顕微鏡を使用して、固相の表面上に存在しうる抗原/抗体複合体を検出する。通常、多数のイムノアッセイ系においては、抗原/抗体複合体を検出するために標識を使用しなければならないが、走査型トンネル顕微鏡検査法を使用すると、そのような標識が不要になる。特異的結合反応をモニターするためのSPMの使用は、多数の方法で実施することが可能である。1つの実施形態では、特異的結合パートナーのメンバーの1つ(本発明のモノクローナル抗体である被検体特異的物質)を、走査に適した表面に結合させる。該被検体特異的物質の結合は、当業者に公知の方法に従って行なう、プラスチックまたは金属表面の固相を含む試験片に対する吸着によるものであってもよい。あるいは、誘導体化プラスチック、金属、シリコン(ケイ素)またはガラスの固相を含む試験片に対する特異的結合パートナー(被検体特異的物質)の共有結合を用いてもよい。共有結合方法は、当業者に公知であり、特異的結合パートナーを試験片に不可逆的に結合させるための種々の手段を含む。該試験片がシリコンまたはガラスである場合には、特異的結合パートナーを結合させる前に、該表面を活性化する必要がある。また、特異的結合パートナーを試験片の表面上に化学的方法で固定化するために、混成電極相互作用を用いることができる。好ましい結合方法は、共有的手段によるものである。特異的結合メンバーの結合の後、非特異的結合を最小限に抑えるために、該表面を血清、タンパク質または他のブロッキング剤などの物質で更に処理することができる。また、アッセイ目的に対する適合性を確認するために、該表面を、製造部位または使用点において走査することができる。走査過程は、試験片の特異的結合特性を変えないと考えられる。
【0110】
本発明は、主として固相の使用に関して開示されているが、本発明の抗体、タンパク質、ペプチドなどの試薬は、非固相アッセイ系においても使用可能であると意図される。これらのアッセイ系は、当業者に公知であり、本発明の範囲内に含まれるとみなされる。
【0111】
本発明を更に、以下の実施例により説明するが、これらの実施例は例示にすぎず、本発明の精神および範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0112】
クローニング方法
遺伝子の構築および配列決定のためのオリゴヌクレオチドは、Abbott Laboratories, Synthetic Genetics(San Diego, CA)またはOligo Etc.(Wilsonville, CA)で合成した。AmpliTaq DNAポリメラーゼおよびUlTma DNAポリメラーゼを含むすべてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬は、特に示さない限り、Perkin-Elmer Corporation(Foster City, CA)から購入し、製造業者の仕様書に従い使用した。PCR増幅はGeneAmp 9600サーマルサイクラー(Perkin-Elmer)上で行なった。特に示さない限り、制限酵素はNew England BioLabs(Bevery, MA)から購入し、消化は製造業者の推奨どおりに行なった。クローニングに使用したDNA断片は、特に示さない限り、アガロース(Life Technologies, Gaithersburg, MD)ゲル上で単離した。
【0113】
所望の断片を切り出し、該DNAをQIAEX IIゲル抽出キットまたはQIAquickゲル抽出キット(Qiagen Inc., Chatsworth, CA)で製造業者の推奨どおりに抽出した。DNAをH2OまたはTE [1mMエチレンジアミン四酢酸 (EDTA; pH8.0; BRL Life Technologies)、10mMトリス (ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸塩 (Tris-HCl; pH8.0; BRL Life Technologies)]に再懸濁した。Stratagene DNA連結キット(Stratagene Cloning Systems, La Jola, CA)を製造業者の推奨どおりに使用して、連結を行なった。連結物は16℃で一晩インキュベートした。
【0114】
MAXEFFICIENCY DH5αコンピテント細胞(BRL Life Technologies)またはEpicurian Coli XL 1-Blueスーパーコンピテント細胞(Stratagene Cloning Systems)を製造業者のプロトコールに従い使用して、細菌の形質転換を行なった。特に示さない限り、形質転換および細菌の再ストリーク(restreak)は、150μg/mlアンピシリン(M1090; MicroDiagnostics, Lombard, IL)を含有するLB寒天(Lennox)プレート上または示されているとおり20mMの最終濃度までグルコースで補足されたLB寒天+アンピシリンプレート上でプレーティングした。すべての細菌のインキュベーション(プレートおよび一晩の培養)は、37℃で一晩(〜16時間)行なった。
【0115】
所望のクローンを同定するための形質転換体のスクリーニングは、ミニプレップDNAの配列決定により及び/又はコロニーPCRにより行なった。特に示さない限り、ミニプレップDNAはQiagen Tip 20 Plasmid Prep KitまたはQiagen QIAwell 8 Plasmid Prep Kitを製造業者の仕様書に従い使用して調製した。コロニーPCRスクリーニングには、個々のコロニーを形質転換プレートから拾い、100μlの無菌H2Oを含有する無菌平底96ウェルプレート(Costar, Cambridge, MA)中のウェル中に移した。該容量の3分の1をもう1つのプレートに移し、4℃で保存した。元の96ウェルプレートを電子レンジに5分間かけて該細胞を破壊した。ついで1μlの容量を鋳型としてPCRチューブに移した。1μlの10×PCRバッファー、1μlの2mM dNTPs、1μl(10pmol)のセンスプライマー、1μl(10pmol)のアンチセンスプライマー、0.08μlのAmpliTaq DNAポリメラーゼ(0.4単位)および4.2μlのH2Oを含有する9μlのPCRマスター混合物を該PCRチューブに加えた。反応は、一般には、94℃で30秒間、50〜60℃(プライマーアニーリング温度による)で30秒間および72℃で60秒間の20〜25サイクルで増幅した。プライマーは該インサートによって異なり、サイクル条件はプライマーアニーリング温度および予想産物の長さに基づいて改変した。サイクリングの後、該反応容量の約1/3を、分析用にアガロースゲル上にローディングした。所望のクローンを含有するコロニーを該トランスファープレートから増殖させた。
【0116】
特に示さない限り、DNA配列決定は自動ABI Model 373A Stretch Sequencer(Perkin Elmer)上で行なった。配列決定反応を、FS TACS Dye Term Ready Reaction Kit(Perkin Elmer)からの試薬および250〜500ngのプラスミドDNAで製造業者の仕様書に従い調製した。Sequencer上へのローディングの前に、反応をCentri-Sepカラム(Princeton Separations, Adelphia, N.J.)上で加工処理した。配列データを、Sequencher 3.0(Gene Codes Corporation, Ann Arbor, MI)およびGene Works 2.45(Oxford Molecular Group, Inc., Campbell, CA)を使用して分析した。
【実施例2】
【0117】
HIV-1 O群分離株HAM112のenv配列の決定
QIAamp Blood Kit(Qiagen)および該製造業者が推奨している方法を用いて、HAM112と称されるHIV-1 O群分離株(H. Hamplら, Infection 23:369-370 [1995])に感染したヒト末梢血単核細胞の培養上清からウイルスRNAを抽出した。RNAを、ヌクレアーゼを含有しない50μl容量の水(5Prime-3Prime, Inc., Boulder, CO)中で溶出し、-70℃で保存した。env領域の配列を得るための方法は、4つの重複env遺伝子断片のcDNA合成およびPCR(ネスティド)増幅を含むものであった。該増幅産物を自動ABI Model 373A Stretch Sequencer上で直接配列決定した。増幅反応は、GeneAmp RNA PCRおよびGeneAmp PCR Kits(Perkin Elmer)を製造業者の概略説明のとおりに使用して行なった。オリゴヌクレオチドプライマーの位置はHIV-1 ANT70 env配列(G. Myersら編, 前掲)に対応する。プライマーenv 10R [ヌクレオチド(nt)791-772; 配列番号62]、env15R(nt 1592-1574; 配列番号63)、env22R(nt 2321-2302; 配列番号64)、env26R(envの3’側nt 250-232; 配列番号65)を、それぞれ断片1〜4のcDNA合成に使用した。逆転写反応物を、42℃で30分間、ついで99℃で5分間インキュベートした。第1ラウンドのPCR増幅は、以下のプライマーの組合せを使用する95℃で30秒間、52℃で30秒間および72℃で1分間の30サイクルよりなるものであった:断片1〜4に関してそれぞれenv1F(envの5’側nt 184-166; 配列番号66)およびenv10R(配列番号62)、env7F(nt 564-586; 配列番号67)およびenv15R(配列番号63)、env12F(nt 1289-1308; 配列番号68)およびenv22R(配列番号64)、env19F(nt 2020-2040; 配列番号69)およびenv26R(配列番号65)。第2ラウンドの増幅(ネスティドPCR)では、以下のプライマーの組合せと共に5μlのそれぞれの第1ラウンドPCR反応物を鋳型として使用した:断片1〜4に関してそれぞれenv2F(envの5’側nt 37-15; 配列番号70)およびenv9R(nt 740-721; 配列番号71)、env8F(nt 631-650; 配列番号72)およびenv14R(nt 1437-1416; 配列番号73)、env13F(nt 1333-1354; 配列番号74)およびenv21R(nt 2282-2265; 配列番号75)、env20F(nt 2122-2141; 配列番号76)およびenv25R(envの3’側nt 111-94; 配列番号77)。第2ラウンドの増幅条件は、第1ラウンドで用いたものと同じであった。断片をアガロースゲル精製し、Quiagen QIAEX II Gel Extraction Kitで抽出した。ネスティドPCRに使用したプライマーと、断片1にはプライマーenv4F(配列番号78)およびenv5R(配列番号79)、断片2にはプライマーenv10F(配列番号80)、env11F(配列番号81)、env11R(配列番号82)、env12F(配列番号68)およびAG1(配列番号87)、断片3にはプライマーenv15F(配列番号83)およびenv19R(配列番号84)、断片4にはプライマーenv22F(配列番号85)およびenv24R(配列番号86)を使用して、断片を直接配列決定した。HIV-1 O群分離株HAM112からのenvの推定アミノ酸配列(配列番号61)を図1に示す。
【実施例3】
【0118】
合成HIV-1 O群env gp120/gp41遺伝子の構築
図2は、合成HIV-1 O群env gp120/gp41遺伝子構築物を得るために用いる方法を示す。該env gp120/gp41配列は、HIV-1 O群分離株HAM112(配列番号61)に基づく。HAM112のenv配列の決定の概要は、前記実施例2に説明されている。env gp120のC末端の45アミノ酸およびenv gp41の327アミノ酸をコードするオリゴヌクレオチドを設計した(ヌクレオチド#1は、該合成遺伝子中のgp120の第1コドンの1番目のものである)。gp41の高度に疎水性(H)の領域(膜貫通領域)を含む天然HAM112 gp41と比べて、該合成遺伝子は26アミノ酸(ヌクレオチド643〜720)の欠失を有する。したがって、構築される完全長合成gp41遺伝子は327アミノ酸である。
【0119】
該合成オリゴヌクレオチドにおいては、大腸菌(E. coli)における組換えタンパク質の発現レベルを増加させるために大腸菌(E. coli)のコドンの偏りに適合するように天然HIV-1コドンを改変した。例えば、M. GouyおよびC. Gautier, Nucleic Acids Research 10:7055 (1982); H. GrosjeanおよびW. Fiers, Gene 18:199 (1982); J. Watsonら編, Molecular Biology of the Gene, 第4版, Benjamin Kumming Publishing Co., pp.440 (1987)を参照されたい。該遺伝子構築方法は、相補性末端を有する一連の重複オリゴヌクレオチド(Osyn-A〜Osyn-L、A〜Lとして記載されている)の合成を含むものであった。アニーリングの際、該末端は該相補鎖の伸長のためのプライマーとして働く。
【0120】
ついで該断片をPCRにより増幅した。この過程(オリゴヌクレオチドの「PCRニッティング(PCR knitting)」)を繰返して、該遺伝子断片を連続的に拡大させる。オリゴヌクレオチドOsyn-5′を、PLベクターpKRR826中へのクローニング用に設計した。発現ベクターpKRR826は、米国特許出願第08/314,570号(それを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載のλPLプロモーターベクターpSDKR816の修飾体である。pKRR826は、温度感受性cIリプレッサー遺伝子を含有するpBR322の高コピー数誘導体である(Benardら, Gene 5:59 [1979])。しかしながら、pKRR826は、翻訳ターミネーターrrnBt1を欠き、λPLおよびλpRプロモーターをpSDKR816に対して逆配向で有する。pKRR826のポリリンカー領域は、Eco RIおよびBam HI制限酵素部位を含有するが、ATG開始コドンを欠く。該遺伝子インサートの5′末端(N末端メチオニンを含む)をEcoRI部位中にクローニングする場合に、最適な発現が得られる。Osyn-5′は、クローニング用のEco RI制限部位と該組換えタンパク質の適切な翻訳開始をもたらすATGコドン(メチオニン)とを含有するように設計した。アンチセンスオリゴヌクレオチドOsyn-O3′(配列番号15)、Osyn-P3′(配列番号16)およびOsyn-M(M)(配列番号14)はそれぞれ、2つの連続した翻訳終結コドン(TAA、TAG)およびBam HI制限部位を含有する。外側プライマーOsyn-5′(配列番号11)およびOsyn-M(M)(配列番号14)を使用した場合には、完全長gp41(327アミノ酸)遺伝子が合成された(pGO-11PL; 配列番号52)。外側オリゴヌクレオチドOsyn-5′(配列番号11)およびOsyn-O3′(配列番号15)は、199アミノ酸のトランケート化gp41産物(pGO-9PL; 配列番号48)を与えた。あるいは、外側オリゴヌクレオチドOsyn-5′(配列番号11)およびOsyn-P3′(配列番号16)は、169アミノ酸長のトランケート化gp41産物を与えた(pGO-8PL; 配列番号58)。
【0121】
また、該合成遺伝子を、CMP-KDOシンテターゼ(CKS)融合タンパク質として発現させた。pKRR826からpJO200への該合成遺伝子のPCR媒介導入(参照により本明細書に組み入れる米国特許出願第572,822号に記載されている)を、別の外側センスオリゴヌクレオチドPCRプライマー(5′末端)Osyn-5′CKS(配列番号25)を使用して行なった。Osyn-5′CKSは、Eco RI制限部位を含有し、発現ベクターpJO200におけるCKSに対する該合成遺伝子インサートのインフレーム融合体を与えた。3′外側プライマー(アンチセンス)Osyn-M(配列番号14)、Osyn-O3′(配列番号15)およびOsyn-P3′(配列番号16)をOsyn-5′CKS(配列番号25)と共に使用して、それぞれpGO-11CKS(配列番号54)、pGO-9CKS(配列番号50)およびpGO-8 CKS(配列番号60)を得た。これらの工程は後記において詳しく説明する。
【0122】
A.合成オリゴヌクレオチドのPCRニッティング
3つのPCR反応(100μl容量)を以下のとおりに調製した。
【0123】
(1)反応1B:AmpliTaq DNAポリメラーゼ(2.5U)および1×バッファー、ならびに40μMの各dNTP(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)、それぞれ25pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-A(配列番号3)およびOsyn-D(配列番号5)およびそれぞれ0.25pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-B(配列番号17)およびOsyn-C(配列番号4)。
【0124】
(2)反応2A:UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファー、ならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、それぞれ25pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-E(配列番号6)およびOsyn-H(配列番号9)およびそれぞれ0.25pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-F(配列番号7)およびOsyn-G(配列番号8)、および
【0125】
(3)反応3A:UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファー、ならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、それぞれ25pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-I(配列番号10)およびOsyn-L(配列番号13)およびそれぞれ0.25pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-J(配列番号18)およびOsyn-K(配列番号12)。
【0126】
増幅は、97℃で30秒間、52℃で30秒間および72℃で60秒間の20サイクルよりなるものであった。ついで反応物を72℃で7分間インキュベートし、4℃に維持した。PCR由来産物1B、2Aおよび3Bを1%アガロースゲル上でゲル単離した。
【0127】
B.反応1Bおよび反応2AからのPCR産物のPCRニッティング
PCR反応を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、24.4pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-5′(配列番号11)、25pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-P3′(配列番号16)および前記実施例3第1A節からのそれぞれ〜10ngのゲル単離1Bおよび1A産物で調製した。サイクリング条件は実施例3第1A節と同じであった。第2ラウンドの増幅を用いて、さらなる所望の産物を得た。これは、49pmolのOsyn-5′(配列番号11)、50pmolのOsyn-P3′(配列番号16)および鋳型としての第1ラウンドからのPCR産物5μlで前記UlTma混合物(100μlの反応容量)を調製することにより行なった。これらの反応物を94℃で90秒間インキュベートし、ついで前記(第3A節)のとおりにサイクルを行なった。Osyn-5′/Osyn-P3′PCR産物を、前記のとおりにゲル単離した。
【0128】
C.Osyn-5′-Osyn-P3′PCR産物のクローニング
Osyn-5′-Osyn-P3′PCR産物を制限エンドヌクレアーゼEco RI+Bam HIで消化し、Eco RI+Bam HIで消化されゲル単離されているベクターpKRR826(前記のとおり)中に連結した。該連結産物を使用してDH5αコンピテント細胞を形質転換した。オリゴヌクレオチドpKRREcoRIフォワード(配列番号38)およびpKRRBamHIリバース(配列番号39)を使用するコロニーPCRにより、所望のクローンを同定した。ミニプレップDNAをpGO-8候補クローンA2の一晩培養から調製し、Osyn-5′-Osyn-P3′プラスミドインサートをオリゴヌクレオチドプライマーpKRREcoRIフォワード(配列番号38)、pKRRBamHIリバース(配列番号39)、41sy-1(配列番号44)および41sy-2(配列番号41)で配列決定した。
【0129】
D.pGO-8候補クローンA2の修飾
100μl容量のPCR反応を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのオリゴヌクレオチドOsyn-5′-修復(配列番号24)、50pmolのOsyn-P3′(配列番号16)および鋳型としての〜1ngのpGO-8候補クローンA2ミニプレップDNA(前記反応から得たもの)で調製した。該反応物を94℃で90秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、50℃で30秒間および72℃で60秒間の20サイクルで増幅した。ついでOsyn-5’修復/Osyn-P3′ PCR産物をゲル単離し、Eco RI+Bam HIで消化した。該消化産物を、Eco RI+Bam HIで消化されたpKRR826ベクター中に連結した。該連結産物を使用してDH5αコンピテント細胞を形質転換した。オリゴヌクレオチドpKRREcoRIフォワード(配列番号38)およびpKRRBamHIリバース(配列番号39)を使用するコロニーPCRにより、所望のクローンを同定した。pGO-8候補クローン6の一晩培養を準備し、ミニプレップDNAを調製した。Osyn-5′修復/Osyn-P3′プラスミドインサートを、オリゴヌクレオチドプライマーpKRREcoRIフォワード(配列番号38)、pKRRBamHIリバース(配列番号39)、41sy-1(配列番号44)および41sy-2(配列番号41)で配列決定した。配列決定の結果に基づき、pGO-8候補クローン#6をpGO-8PL/DHSαと称することにした。配列番号57は、該コード領域のヌクレオチド配列を示す。図5は、pGO-8PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号58)を示す。pGO-8PL組換えタンパク質は、N末端メチオニン、45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 Group O, HAM112分離株)および169アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群HAM112分離株)よりなる。
【0130】
E.pGO-8CKS/XL1の構築
pGO-8CKS/XL1(配列番号59は該コード領域のヌクレオチド配列を示す)は、組換えタンパク質pGO-8CKSをコードしている。図6は、pGO-8CKSのアミノ酸配列(配列番号60)を示す。このタンパク質は、246アミノ酸のCKS/ポリリンカー、45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)および169アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)よりなる。pGO-8CKS/XL1の構築は以下のとおりに行なった。
【0131】
PCR反応(100μl容量)を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのOsyn-5′CKS(配列番号25)、50pmolのOsyn-P3′(配列番号16)および1ngのpGO-8PLクローン#6ミニプレップDNAで調製した。該反応物を94℃で90秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で90秒間の25サイクルで増幅した。ついでOsyn-5′CKS/Osyn-P3′PCR産物をゲル単離した。Eco RI+Bam HIは該Osyn-5′CKS/Osyn-P3′PCR産物およびベクターpJO200を消化した。その消化されたpJO200ベクターをゲル単離し、消化されたOsyn-5′CKS/Osyn-P3′PCR産物に連結した。XL1-Blueスーパーコンピテント細胞を該連結物で形質転換し、20mMグルコースで補足されたLB+アンピシリンプレート100μg/ml上にプレーティングした。コロニーを同じタイプのプレート上での単離のために再ストリークした。クローンpGO-8CKS/XL1の一晩培養をLBブロス+100μg/mlカルベニシリン(Sigma Chemical Co.)+20mMグルコース(Sigma Chemical Co.)中で増殖させた。凍結ストック(0.5mlの一晩培養+0.5mlのグリセロール)を作製し、DNAを配列分析用に調製した。以下のオリゴヌクレオチドを配列決定プライマーとして使用した:CKS-1(配列番号30)、CKS-2(配列番号31)、CKS-3(配列番号32)、CKS-4(配列番号33)、43461(配列番号2)、43285(配列番号1)、41sy-1B(配列番号29)、41sy-2B(配列番号34)、CKS176.1(配列番号19)およびCKS3583(配列番号20)。
【0132】
F.pGO-9PL/DH5αの構築
図3A〜3Dは、pGO-9PL/DH5αの構築にかかわる工程の概要を図示する。pGO-9PL/DH5αは、組換えタンパク質pGO-9PLをコードしている。配列番号47は、pGO-9PL/DH5αのコード領域のヌクレオチド配列を示す。図7は、pGO-9PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号48)を例示する。このタンパク質は、N末端メチオニン、45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)および199アミノ酸のenv gp40(HIV-1 O群, HAM112分離株)よりなる。pGO-9PL/DH5αの構築は以下のとおりに行なった。
【0133】
工程1:100μlのPCR反応を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのOsyn-5′(配列番号11)、50pmolのOsyn-H(配列番号19)および鋳型としての〜2ngのpGO-8候補クローン6ミニプレップDNA(前記実施例3第D節から得たもの)で調製した。該反応物を94℃で120秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、50℃で30秒間および72℃で60秒間の8サイクルで増幅した。
【0134】
工程2:100μlのPCR反応を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのOsyn-5′(配列番号11)、50pmolのOsyn-O3’(配列番号15)および鋳型としての工程1からのPCR反応物で調製した。該反応物を94℃で120秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で60秒間の18サイクルで増幅し、ついで72℃で5分間インキュベートした。
【0135】
ついで該Osyn-5′/Osyn-O3′PCR産物(2A/2B)をゲル単離し、Eco RI+Bam HIで消化した。該消化産物を、Eco RI+Bam HIで消化されたpKRR826ベクター中に連結した。つぎに該連結産物を使用してDH5αコンピテント細胞を形質転換した。pGO-9PL候補クローン3の一晩培養を調製し、ミニプレップDNAを調製した。該Osyn-5′/Osyn-O3′プラスミドインサートを、オリゴヌクレオチドプライマーpKRREcoRIフォワード(配列番号38)、pKRRBamHIリバース(配列番号39)、41sy-1C(配列番号40)、41sy-2(配列番号41)、41sy-3(配列番号42)および41sy-4(配列番号23)で配列決定した。ついでpGO-9PLクローン#3を単離のために再ストリークした。単離されたコロニーを拾い、その一晩培養を増殖させ、凍結ストック(0.5mlのグリセロール+0.5mlの一晩培養)を作製した。該ストックを-80℃で保存した。前記プライマーをプライマーを使用して該配列を確認し、このクローンをpGO-9PL/DH5αと称することにした(配列番号47は該コード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号48はコード領域のアミノ酸配列を示す)。pGO-9PL/DH5αを再ストリークし、一晩培養を増殖させ、ミニプレップDNAを調製した(このプレップをH5と称することにした)。
【0136】
G.pGO-9CKS/XL1の構築
図3A〜3Dは、pGO-9CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。pGO-9CKS/XL1は、組換えタンパク質pGO-9CKSをコードしている。図8は、pGO-9CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号50)を示す。このタンパク質は、246アミノ酸のCKSおよびポリリンカー、およびそれに続く45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)および199アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)よりなる。pGO-9CKS/XL1の構築は以下のとおりに行なった。
【0137】
2つのPCR反応(100μlの容量)を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのOsyn-5′CKS(配列番号25)、50pmolのOsyn-O3′(配列番号15)および鋳型としての1ngのpGO-9PL候補クローン3ミニプレップDNA(前記実施例3第F節から得たもの)で調製した。各反応物を94℃で120秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で120秒間の24サイクルで増幅し、ついで72℃で5分間インキュベートした。ついで該Osyn-5′CKS/Osyn-O3′PCR産物をゲル単離した。該Osyn-5′CKS/Osyn-O3′PCR産物をおよびベクターpJO200をEco RI+Bam HIで消化した。その消化されたpJO200ベクターをゲル単離し、消化されたOsyn-5′CKS/Osyn-O3′PCR産物に連結した。XL1-Blueスーパーコンピテント細胞を該連結物で形質転換し、20mMグルコースで補足されたLB+アンピシリンプレート上にプレーティングした。コロニーを同じタイプのプレート上での単離のために再ストリークした。クローンpGO-9CKS候補クローン4の一晩培養をLBブロス+100μg/mlカルベニシリン(Sigma Chemical Co.)+20mMグルコース(Sigma Chemical Co.)中で増殖させた。凍結ストック(0.5mlの一晩培養+0.5mlのグリセロール)を作製し、DNAを配列分析用に調製した。以下のオリゴヌクレオチドを配列決定プライマーとして使用した:CKS-1(配列番号30)、CKS-2(配列番号31)、CKS-3(配列番号32)、CKS-4(配列番号33)、43461(配列番号2)、43285(配列番号1)、41sy-1B(配列番号29)、41sy-2B(配列番号34)、41sy-3B(配列番号35)、CKS176.1(配列番号19)およびCKS3583(配列番号20)およびpTB-S8(配列番号28)。クローンpGO-9CKS候補クローン4をpGO-9CKS/XL1と称することにした(配列番号49はコード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号50はコード領域のアミノ酸配列を示す)。
【0138】
H.Osyn I-M断片の構築
Osyn-O-M断片を以下のとおりに構築した。100μlのPCR反応を、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(2.5U)、1×バッファー、50μMの各dNTP、50pmolのI-PCR(配列番号26)、50pmolのOsyn-M(配列番号14)および10ngのゲル単離されたPCR断片3A(前記実施例3第A節)を使用して調製した。該反応物を95℃で105秒間インキュベートし、ついでそれを95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で60秒間の15サイクルで増幅し、ついでそれを72℃で7分間維持した。Osyn I-Mと称される該産物をゲル単離し、製造業者が推奨している方法に従いPCR IIベクター(TA Cloning Kit; Invitrogen, San Diego, CA)中にクローニングした。得られた連結産物を使用してDH5αコンピテント細胞を形質転換した。プラスミドミニプレップDNAをクローンIM-6の一晩培養から作製し、該遺伝子インサートを56759(配列番号45)および55848(配列番号46)で配列決定した。
【0139】
I.PCR断片I/6RおよびIM-6Fの合成およびニッティング
これらの操作は以下のとおりに行なった。
【0140】
工程1:以下のPCR反応(100μl容量)を調製した:(a)I/6Rでは、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(2.5U)、1×バッファー、50μMの各dNTP、50pmolのI-PCR(配列番号26)、50pmolのIM-6R(配列番号22)および鋳型としての281ngのクローンIM-6(実施例3第H節から得たもの);(b)6F/Mでは、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(2.5U)、1×バッファー、50μMの各dNTP、50pmolのIM-6F(配列番号21)、50pmolのM-PCR(配列番号27)および鋳型としての281ngのクローンIM-6(実施例3第H節から得たもの)。
【0141】
該反応物を95℃で105秒間インキュベートし、ついで94℃で15秒間、60℃で30秒間、72℃で60秒間の20サイクルで増幅し、ついで72℃で7分間インキュベートした。つぎに該PCR産物I/6Rおよび6F/Mを前記の方法に従いゲル単離した。
【0142】
工程2:PCR反応(100μl容量)を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのI-PCR(配列番号26)、50pmolのM-PCR(配列番号27)、〜50ngのI/6Rおよび〜20ngの6F/Mで調製した。該反応物を95℃で105秒間インキュベートし、ついでそれを94℃で15秒間、55℃で30秒間、72℃で60秒間の20サイクルで増幅し、ついで72℃で7分間インキュベートした。該PCR産物をCentri-sepカラム(Princeton Separations)上で製造業者の指示書に従い加工した。
【0143】
J.pGO-11PL/DH5αの構築
図4A〜4Fは、pGO-11PL/DH5αの構築にかかわる工程の概要を図示する。pGO-11PL/DH5αは、組換えタンパク質pGO-11PLをコードしている。図9は、pGO-11PL組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号52)を示す。このタンパク質は、N末端メチオニン、45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)および327アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)よりなる。pGO-11PL/DH5αは以下のとおりに構築した。
【0144】
実施例3第I節からの最終PCR産物およびpGO-9PLベクター(実施例3第F節からのミニプレップH5)を、Age IおよびBam HIで順次消化した。ついで、消化されたpGO-9PLを仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(BRL Life Technologies)で37℃で15分間処理し、フェノール/クロロホルムで抽出し、NaOAcおよびEtOHで沈殿させた。ついで該ベクター(pGO-9PL)をゲル単離した。消化されたpGO-9PLと消化された該PCR産物とを連結し、該連結産物を使用してDH5αコンピテント細胞を形質転換した。コロニーを単離のために再ストリークした。ついでクローンpGO11-4を同定し、単離のために再ストリークした。pGO11-4の一晩培養を調製して、凍結ストックを得、配列決定用のミニプレップDNAを得た。クローンpGO11-4を以下のオリゴヌクレオチドプライマーで配列決定した:pKRREcoR1フォワード(配列番号38)、pKRRBamHIリバース(配列番号39)、41sy-1C(配列番号40)、41sy-2(配列番号41)、41sy-3(配列番号42)、41sy-4(配列番号23)、41sy-5B(配列番号43)、41sy-5C(配列番号36)および41sy-6B(配列番号37)。該配列決定の結果に基づき、このクローンをpGO-11PL/DH5αと称することにした(配列番号51は該コード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号52はコード領域のアミノ酸配列を示す)。
【0145】
K.pGO-11CKS/XL1の構築
図4A〜4Gは、pGO-11CKS/XL1の構築にかかわる工程の概要を図示する。pGO-11CKS/XL1は、組換えタンパク質pGO-11CKSをコードしている。図10は、pGO-11CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号54)を示す。このタンパク質は、246アミノ酸のCKSおよびポリリンカー、およびそれに続く45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群HAM112分離株)および327アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群HAM112分離株)よりなる。pGO-11CKS/XL1は以下のとおりに構築した。
【0146】
PCR反応(100μl容量)を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのOsyn-5′CKS(配列番号25)、50pmolのOsyn-M(配列番号14)および1ngのpGO11-4(実施例3第J節から得たもの)で調製した。該反応物を94℃で105秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で120秒間の20サイクルで増幅し、ついで72℃で7分間インキュベートした。該Osyn-5′CKS/Osyn-M PCR産物をゲル単離した。つぎに該Osyn-5′CKS/Osyn-M PCR産物およびベクターpJO200をEco RI+Bam HIで消化した。その消化されたpJO200ベクターをゲル単離した。一晩(16℃)の連結を該消化PCR産物で行なった。XL1-Blueスーパーコンピテント細胞を該連結物で形質転換し、20mMグルコースで補足されたLB+アンピシリンプレート上にプレーティングした。コロニーを同じプレート上での単離のために再ストリークした。ついでクローンpGO-11CKSクローン候補2の一晩培養(LBブロス+100μg/mlカルベニシリン+20mMグルコース)調製した。凍結ストック(0.5mlの80グリセロール+0.5mlの一晩培養)および配列分析用のミニプレップDNAを調製した。以下のオリゴヌクレオチドを配列分析用のプライマーとして使用した:CKS-1(配列番号30)、CKS-2(配列番号31)、CKS-3(配列番号32)、CKS-4(配列番号33)、43461(配列番号2)、43285(配列番号1)、41sy-1B(配列番号29)、41sy-2B(配列番号34)、41sy-3B(配列番号35)、41sy-4(配列番号23)、41sy-5C(配列番号36)、41sy-6B(配列番号37)、CKS176.1(配列番号19)、CKS3583(配列番号20)およびpTB-S8(配列番号28)。pGO-11CKSクローン#2をpGO-11CKS/XL1と称することにした。配列番号53は、pGO-11CKS/XL1のコード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号54は、pGO-11CKS/XL1のコード領域のアミノ酸配列を示す。
【実施例4】
【0147】
pHIV-210/XL1-Blueの構築
図11は、pHIV-210組換えタンパク質(配列番号55)のアミノ酸配列を示す。このタンパク質は、247アミノ酸のCKS/リンカー配列、env gp120からの60アミノ酸(#432-491; HIV-2分離株D194.10)および159アミノ酸のenv gp36(#492-650; HIV-2 D194.10)よりなる。pHIV210/XL1-Blueの構築は以下のとおりに行なった。
【0148】
HIV-2分離株D194.10のゲノムDNA[H. Kuhnelら, Nucleic Acids Research 18:6142 (1990)]をEMBL3λクローニングベクター中にクローニングした。H. Kuhnelら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2383-2387 (1989)およびH. Kuhnelら, Nucleic Acids Research 18:6142 (1990)(それらを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。D194.10を含有するλクローン(λA10)をDiagen Corporation(Dusseldorf, Germany)から得た。PCR反応(100μl容量)を、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(3.75単位)、200μMの各dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、0.5μgのプライマー3634(HIV-2分離株D194.10(EMBL受託#X52223)上の7437〜7455位にアニーリングする配列番号88)、0.5μgのプライマー3636(8095〜8077位にアニーリングする配列番号89)、1×PCRバッファーおよび1:50に希釈した5μlのλA10 DNAを使用して調製した。該反応物を94℃で5分間インキュベートし、ついで94℃で1分間、45℃で1分間、72℃で2分間の35サイクルで増幅し、ついで72℃で5分間インキュベートした。該PCR反応物をフェノール/クロロホルム(Boehringer Mannheim Corporation, Indianapolis, IN)で抽出し、該DNAをエタノール(AAPER Alcohol & Chemical Company, Shelbyville, KY)で沈殿させた。該DNAをEcoRI+Bam HIで消化し、1.5%アガロースゲル(SeaKem GTGアガロース, FMC Corporation, Rockland, Maine)上でゲル精製した。800単位のT4 DNAリガーゼ(New England BioLabs)を使用して、該精製産物を、EcoRI+Bam HIで消化されたpJO200ベクター中に連結した。XL 1-Blueスーパーコンピテント細胞(Stratagene)を、製造業者が概要説明しているとおりに2μlの該連結物で形質転換し、アンピシリン(Sigma Chemical Company)で補足されたLBプレート上にプレーティングした。50μg/mlアンピシリン(Sigma)および20mMグルコース(Sigma)で補足されたSuperbroth II培地(GIBCO BRL, Grand Island, NY)中に単コロニーを接種することにより、一晩培養物を樹立した。0.3mlの80%グリセロールを0.7mlの一晩培養物に加えることにより、凍結ストックを得た。混合後、ストックを-70℃で保存した。アルカリ溶解法、ついでPEG沈殿を用いて、該一晩培養物からミニプレップDNAを調製した。7-デアザ-dGTP Reagent KitおよびSequenase Version 2.0(United States Biochemical Corporation, Cleveland, OH)を製造業者の概要説明のとおりに使用して、配列決定反応を行なった。IBIゲル装置を製造業者の推奨どおりに使用して、6%アクリルアミドゲル(GIBCO BRL Gel-Mix 6)上で反応を行なった。配列決定の結果に基づき、pHIV-210クローン#7をpHIV-210と称することにした。pHIV-210コード領域のアミノ酸配列を、配列番号55として示す。
【実施例5】
【0149】
HIV-1 O群組換えgp41 抗原構築物を有する大腸菌(E. coli)株の増殖および誘導
pGO-9CKS/XL1およびpGO-11CKS/XL1の一晩種培養物を、100μg/mlアンピシリンナトリウムで補足された500mlの無菌Excell Terrific Broth(Sigma Chemical Corp., St. Louis Mo.から入手可能)中で調製し、振とうオービタル(orbital)インキュベーター中、32℃または37℃で配置した。種培養からの100μlの接種物を、100μg/mlアンピシリンナトリウムで補足された1リットルの無菌Excell Terrific Brothを含有するフラスコに移した。培養が中期対数増殖に達するまで該培養を37℃でインキュベートし、ついで1mM ITPG(イソプロピルチオガラクトシド)で37℃で3時間誘導した(PLベクター構築物の場合には、培養が中期対数増殖に達するまで該培養をインキュベートし、ついで培養温度を42℃に変化させることにより3時間誘導した)。誘導期の後、細胞を遠心分離によりペレット化し、標準的な技術に従い収穫した。ペレット化細胞を、さらなる加工処理まで-70℃で保存した。
【実施例6】
【0150】
大腸菌(E. coli)内で不溶性封入体として産生されたHIV-1 O群組換えgp41 抗原の単離および可溶化
実施例5から得た凍結細胞を、50mM Tris pH8、10mM Na EDTA、150mM NaCl、8% (w/v)ショ糖、5% Triton X-100(登録商標) (v/v)、1mM PMSFおよび1μMペプスタチンAを含む冷溶解バッファー中でホモジナイズすることにより再懸濁させた。リゾチームを、加工細胞1g当たり1.3mgの濃度で該ホモジネートに加え、得られた混合物を氷上で30分間インキュベートして該細胞を溶解した。封入体を遠心分離により可溶性タンパク質から分離した。これらのペレット化封入体を洗浄し、(1)溶解バッファー、(2)10mM Na EDTA pH8、30% (w/v)ショ糖、および(3)水中で順次ペレット化した。洗浄された封入体を50mM Tris pH8、10mM Na EDTA、150mM NaClおよび3M尿素に再懸濁し、氷上で1時間インキュベートした。ついで該封入体を遠心分離により可溶性タンパク質から分離した。該ペレット化封入体を、7Mグアニジン-HCl、50mM Tris pH8、0.1% (w/v)β-メルカプトエタノール(BME)中で4℃で一晩、完全に可溶化した。該可溶化組換え抗原を遠心分離により清澄化し、0.2μmのフィルターに通過させ、クロマトグラフィーによる精製まで-20℃で保存した。
【実施例7】
【0151】
クロマトグラフィーによる組換えHIV-1 O群 gp41 抗原の精製
実施例6から得た可溶化HIV-1 O群組換えgp41抗原を、以下のとおり、2工程の方法により精製した。不溶性抗原のグアニジン-HCl抽出物を、50mM Tris pH8、8M尿素および0.1% BME (v/v)で平衡化したSephacryl S-300カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を用いて画分を分析した。組換えgp41抗原を含有する画分をプールし、ついで限外濾過により濃縮した。該組換え抗原濃縮物を4% SDS (w/v)および5%BME (w/v)で室温にて3時間処理した。SDSで処理した抗原をさらに、25mM Tris pH8、0.15M NaCl、0.1% v/v BME、0.1% SDS (w/v)で平衡化したSephacryl S-300上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を用いて該画分を分析した。精製組換え抗原を含有する画分をプールし、0.2μmのフィルターに通過させ、-70℃で保存した。
【実施例8】
【0152】
HIV-1 M群抗原の調製
実施例5に記載のとおりに、プラスミドpTB319を含有する細胞を増殖させ、誘導した。細胞を溶解し、封入体を加工した(参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,124,255号の実施例5に記載されているのと実質的に同じ方法で行なった)。ついで該ペレット物質をSDS、リン酸塩(pH6.8)中で可溶化し、ついでS-300カラム上でのクロマトグラフィーに付した。
【実施例9】
【0153】
HIV-2抗原の調製
実施例5に記載のとおりに、pHIV-210/XL1-Blue細胞(前記実施例4)を増殖させ、誘導した。ベンゾナーゼ、リゾチームおよびPMSFで補足されたリン酸塩、MgCl2、Na EDTA、Triton X-100(登録商標)(pH7.4)を含有するバッファーで細胞を溶解した。封入体を遠心分離により可溶性タンパク質から分離した。該ペレットを、蒸留H2O、Triton X-100(登録商標)、デオキシコラート、NaCl、リン酸塩(pH7.0);50mMリン酸塩(pH7.0);尿素、SDS(リン酸塩(pH7.0)中)+BMEで順次洗浄した。タンパク質をSDS、リン酸塩(pH7.0)およびBME中で可溶化し、ついでS300カラム上でのクロマトグラフィーに付した。
【実施例10】
【0154】
HIV-1 M群、HIV-1 O群およびHIV-2の同時検出および識別のための1工程免疫クロマトグラフィーアッセイ
A.試薬の調製
1.セレン(Se)コロイド懸濁液を、実質的に以下のとおりに調製した。SeO2を水に0.0625gm/mlの濃度にまで溶解した。ついでアスコルバートを水に0.32gm/mlの濃度にまで溶解し、70℃の水浴中で24時間加熱した。ついで該アスコルバート溶液を水中で0.0065gm/mlにまで希釈した。該SeO2溶液を該希釈アスコルバート溶液に素早く加え、42℃でインキュベートした。吸光度の最大値が、542nm〜588nmの波長において30を超えた時点(最低で42時間後)で、インキュベーションを終了した。該コロイド懸濁液を-2〜8℃に冷却し、ついで保存した。セレンコロイド懸濁液は、Abbott Laboratories, Abbott Park, Illinois(Code 25001)から入手可能である。
【0155】
2.セレンコロイド/抗体共役体を、以下のとおりに調製した。該セレンコロイド懸濁液を、蒸留水中で25(OD 500〜570)の吸光度にまで濃縮した。ついで1M MOPSを10mM(pH7.2)の最終濃度まで加えた。ヒトIgG Fc領域に特異的なヤギ抗体(またはヒトIgG Fc領域に特異的な他の種の抗体)を50mMリン酸バッファーで0.75mg/mlの濃度にまで希釈し、ついで、得られた抗体調製物を、前記のとおりに調製したセレンコロイド懸濁液に、75μg/mlの最終抗体濃度まで、混合しながら加えた。攪拌を40分間続けた。ついで1重量%のウシ血清アルブミン(BSA)を該溶液に加え、該セレンコロイド/抗体共役体溶液を更に15分間攪拌し、5000×gで90分間遠心分離した。この後、該上清の90%を除去し、該ペレットを残りの上清と共に再懸濁した。このセレン-IgG共役体をガラス繊維パッド上にコーティングする直前に、それを共役体希釈剤(1重量%のカゼイン、0.1重量%のTriton X-405(登録商標)および50mM Tris, pH8.2)で1:10に希釈した。
【0156】
3.操作対照試薬を、HIV-1(M群)、HIV-1(O群)およびHIV-2陽性血清の混合物として調製し、該アッセイの陽性対照として別々のストリップ装置上で使用した。
【0157】
4.使用した陰性対照試薬は、該アッセイの陰性対照として別々の試験装置上で正常のヒトで使用されるものであった。
【0158】
B.適用パッドの調製
適用パッド材は、樹脂結合ガラス繊維紙(Lydall)を含む。調製した共役体(前パラグラフ2に記載)の約0.1mlを適用パッドに加える。
【0159】
C.クロマトグラフィー材の調製
すべての試薬を、充填およびデフレクト試薬の噴射(charge and deflect reagent jetting)により、ニトロセルロースメンブレンに適用する。該ニトロセルロースは、感圧接着剤でコーティングされたMYLAR(登録商標)メンブレンにより支持する。
【0160】
試験サンプル捕捉試薬を、(a)HIV-1 O群捕捉試薬(pGO-9/CKS、配列番号50)に関しては、前記のとおりに調製した特異的抗原を0.5mg/mlの濃度にまで噴射希釈剤(1重量%のショ糖、0.9%のNaClおよび5μg/mlのフルオレセインを含有する100mM Tris, pH7.6)で希釈し、(b)HIV-1 M群B亜群捕捉試薬(pTB319、配列番号56)に関して、および(c)HIV-2捕捉試薬(pHIV-210、配列番号55)に関して調製した。0.098μlの第1捕捉試薬(試薬HIV-1 M群B亜群、配列番号56)を該ストリップの所定の捕捉位置に適用し、それは1つの患者用捕捉部位を構成した。同様に、0.098μlの第2捕捉試薬(試薬HIV-1 O群、配列番号50)を該ストリップの所定の捕捉位置に適用し、それは1つの患者用捕捉部位を構成した。そして、0.098μlの第3捕捉試薬(試薬HIV-2、配列番号55)を該ストリップの所定の捕捉位置に適用し、それは1つの患者用捕捉部位を構成した。
【0161】
D.HIVに対する抗体の存在に関する高速アッセイ
試験サンプル血清、全血、唾液および尿サンプル中のHIVに対する抗体の存在に関する高速アッセイを、以下のとおりに行なった。1.5mlのエッペンドルフチューブ中に、5μlの血清および600μlのサンプル溶出バッファー(SEB)(50mM Tris、1%BSA (w/v)、0.4% Triton X-405(登録商標) (v/v)、1.5%カゼイン(w/v)、3%ウシIgG (w/v)、4%大腸菌(E. coli)ライセート(v/v)[pH8.2]を含有)を混合した。この混合物の4滴をSTARハウジングのサンプルウェルに適用した。つぎに1μlの血清または全血をマイクロタイタープレートのウェル中の100μlのSEBに加え、該ニトロセルロースストリップを該ウェル中に加えた。この後、1μlの血清または全血を本発明のサンプルウェルの試験装置中に直接スポットし、4滴のSEBを加えた。唾液を試験する場合には、50または75μlの唾液を、マイクロタイタープレートのウェル中のそれぞれ50μlまたは25μlのSEBに加え、ついで該ニトロセルロース試験ストリップを該ウェルに加えた。尿を試験する場合には、50μlの尿をマイクロタイタープレート中のウェル中の50μlのSEBに加え、該ニトロセルロース試験ストリップを該ウェル中に加えた。あるいは、100μlの尿をマイクロタイタープレートのウェル中で使用し、SEBを使用することなく該ニトロセルロース試験ストリップを加えた。
【0162】
サンプル中のIgGを、該コンジュゲートパッド中のセレン-ヤギ抗ヒトIgGコロイドにより結合させ、該複合体を、該ニトロセルロースメンブレン試験ストリップ[これには予め、正確な滴サイズを用いて容積式分配をもたらすバイオドット装置を使用して、3つの組換え抗原pGO-9 CKS(配列番号50)、pTB319(HIV-1 M群(B亜群)、配列番号56)およびpHIV210(HIV-2、配列番号55)が1mg/mlの濃度で適用されている]の長さに沿ったクロマトグラフィーに付した。ついで該試験装置を室温で2分間インキュベートし、その結果を視覚的に読取った。
【0163】
E.スパイク(spiked)全血アッセイ
1.5mlのエッペンドルフチューブ中に、確認された陽性HIV-1 O群、HIV-1 M群もしくはHIV-2または確認された陰性HIV-1 O群、HIV-1 M群もしくはHIV-2全血試験サンプルからの1μlの血液の等価体を、5μlの確認された陰性HIV-1 O群、HIV-1 M群もしくはHIV-2血清および100μlのSEBに加え、混合した。この混合物を、本発明の試験装置のサンプルウェルに適用した。
【0164】
該サンプル中のIgGを、該コンジュゲートパッド中のセレン-ヤギ抗ヒトIgGコロイドにより結合させ、該複合体を、該ニトロセルロースメンブレン試験ストリップ[これには予め、正確な滴サイズを用いて容積式分配をもたらすバイオドット装置を使用して、3つの組換え抗原pGO-9 CKS(配列番号50)、pTB319(HIV-1 M群(B亜群)、配列番号56)およびpHIV210(HIV-2、配列番号55)が1mg/mlの濃度で適用されている]の長さに沿ったクロマトグラフィーに付した。ついで該試験装置を室温で2分間インキュベートし、その結果を視覚的に読取った。
【0165】
F.結果
抗原1に対する抗体が試験サンプル中に存在する場合には、可視反応が抗原1の捕捉帯域およびアッセイ完了帯域において示されたが、抗原2または抗原3の帯域においては示されなかった。抗原2に対する抗体が試験サンプル中に存在する場合には、可視反応が抗原2の捕捉帯域およびアッセイ完了帯域において示されたが、抗原1または抗原3の帯域においては示されなかった。抗原3に対する抗体が試験サンプル中に存在する場合には、可視反応が抗原3の捕捉帯域およびアッセイ完了帯域において示されたが、抗原1または抗原2の帯域においては示されなかった。また、陰性対照は、抗原1、抗原2および抗原3の帯域においては無反応性である(可視反応を示さない)はずであるが、アッセイ完了帯域においては反応性であるはずである。陽性対照(抗原1、2および/または3に対する既知反応性抗体)は、それが抗原/抗体反応において特異的に結合する適当な抗原の帯域において反応性であるはずである。陽性反応が抗原捕捉帯域の1つにおいては生じたが、アッセイ完了帯域においては生じなかった場合には、結果を無効とみなし、試験を繰返した。
【0166】
(i)血液、尿および唾液中の抗体のアッセイ
3人の患者(患者番号0109、4068および4475で識別する)の血液、尿および唾液を、本明細書に記載の本発明のニトロセルロース固相装置上で、前記のアッセイプロトコールに従い試験した。患者0109、4068および4475のそれぞれの各血液および尿試験サンプルは、抗原1(pTB319; 配列番号56)に対して反応性であった。患者4068および4475の唾液試験サンプルも抗原1に対して反応性であったが、患者0109の唾液試験サンプルは本発明の試験装置において無反応性であった。患者0109の唾液試験サンプルを後で、標準的なEIAにより再試験したところ、それはHIV-1 gp4に対する抗体に対して無反応性であると確認された。このことは、患者0109の唾液試験サンプルについて得られた結果が有効であったことを示している。
【0167】
(ii)HIV抗体に対する陰性サンプルのアッセイ
2つの陰性血清および2つの陰性全血試験サンプル(それぞれは同じ2つの陰性血清でスパイクされたもの)を試験した。サンプルは関連抗原に特異的な抗体を含有しておらず、該試験サンプルは、該試験に関するアッセイ後に陰性であった(すなわち、O、Mまたは2のいずれの位置にも反応を示す可視的バーが存在しないことから示されるとおり、無反応性であった)。試験サンプル反応帯域中の陽性反応バーにより示されるとおり、試験サンプルは各試験装置中に存在した。
【0168】
(iii)HIV-1 M群抗体に関するアッセイ
5つのHIV-1 M群血清および5つの全血サンプル(HIV-1 M群陽性血清でスパイクされたもの)を、10個の装置を使用して試験した。HIV-1 M群抗原帯域の反応線の現像から示されるとおり、HIV-1 M群サンプルは、HIV-1 M群抗原(pTB319)に特異的な抗体を含有することが認められ、試験装置10個中9個のアッセイ完了帯域中に可視反応線が認められた。1つの特定の試験装置においては、HIV-1 M群抗体に関する捕捉帯域中にバンドが存在したが、試験サンプルがアッセイ完了帯域まで到達せず、したがって、この特定のサンプルについては、該アッセイを繰返す必要があった。HIV O群およびHIV-2に関する捕捉試薬に対する交差反応性は認められなかった。
【0169】
(iv)HIV-1 O群抗体に関するアッセイ
2つの確認された陽性HIV-1 O群血清および2つの全血試験サンプル(HIV-1 O群血清でスパイクされたもの)を、さらに4個の装置を使用して試験した。HIV-1 O群抗原捕捉帯域中に陽性バーの結果が認められ、各装置のアッセイ完了帯域中に反応線が認められたことから示されるとおり、HIV-1 O群サンプルは、HIV-1 O群抗原に特異的な抗体を含有することが判明した。HIV-1 M群またはHIV-2捕捉抗原に対する交差反応性は認められなかった(可視的なバーは存在しなかった)。
【0170】
(v)HIV-2抗体に関するアッセイ
さらに10個の試験装置を使用して、確認された5つのHIV-2陽性血清および全血(5つのHIV-2血清でスパイクされたもの)を試験した。HIB-2抗原帯域の反応バーにより示されるとおり、該HIV-2サンプルは、HIV-2抗原(pHIV210)に特異的な抗体を含有することが判明した。これらの試験サンプルとHIV-1 O群またはHIV-1 M群抗原との間で反応は認められず、各装置のアッセイ完了帯域において可視的な反応線が認められた。
【0171】
(vi)HIV-1 M群、HIV-1 O群、HIV-2および陰性サンプルのアッセイ
最後の4個の装置を使用して、HIV-1 M群陽性試験サンプル、HIV-1 O群陽性試験サンプル、HIV-2陽性試験サンプルおよび陰性対照サンプルを試験した。陰性試験血清は、抗原捕捉帯域中のいずれの抗原とも反応しなかった。HIV-1 M群陽性試験サンプルは、HIV-1 M群抗原のみに対して反応性であった。HIV-1 O群陽性試験サンプルは、HIV-1O群抗原のみに対して反応性であった。HIV-2陽性試験サンプルは、HIV-2抗原のみに対して反応性であった。各装置のアッセイ完了帯域中に、可視的な反応線が認められた。
【0172】
使用した5つのHIV-1 M群および2つのHIV-1 O群試験サンプルが、血清陽性サンプル(それらは予め、商業的に入手可能な酵素イムノアッセイ(Abbott #3A77)を用いて試験されており、PCR増幅され、配列決定され、系統発生分析により亜型決定されている)と確認された。使用した5つのHIV-2サンプルは、同じEIAを使用した場合には血清陽性であり、HIV-2ウエスタンブロット試験(Sanofi)を用いてHIV-2陽性サンプルと確認された。
【実施例11】
【0173】
合成HIV-1 M群およびHIV-1 O群ハイブリッド遺伝子の構築
A.pTB319の修飾
プラスミドpTB319(参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,124,255号)は、フレームシフトを引き起こす合成HIV-1 M群gp41遺伝子内の1つの塩基の欠失によるトランケート化gp41組換えタンパク質をコードする。HIV-1 M群およびO群ハイブリッド遺伝子構築物の産生を容易にするために、部位特異的突然変異誘発を用いて、TB319のgp41コード領域内のフレームシフトを排除した。これは、TB319を制限エンドヌクレアーゼRsr IIおよびBst XIで順次消化することにより達成された。合成オリゴヌクレオチドpTB319+A(配列番号98)およびpTB319+T(配列番号99)をアニールさせ、Rsr IIおよびBst XIで消化されたpTB319中に連結した。該連結産物を使用して、スーパーコンピテントXL1-Blue細胞を形質転換し、該細胞を、150μg/mlアンピシリンで補足されたLB寒天プレート上にプレーティングした。プライマーの組合せpTB-S4(配列番号100)/pTB-S7(配列番号101)およびpTB-S4(配列番号100)/63168(配列番号121)を使用するコロニーPCRを用いて、正しく修飾されたクローンを同定した。ミニプレップDNAの調製のために3mMグルコースおよび200μg/mlアンピシリンで補足されたLBブロス中の候補クローンに関して一晩培養を樹立した。オリゴヌクレオチドプライマー43461(配列番号2)、43285(配列番号1)、CKS-1(配列番号30)、CKS-3(配列番号32)、pTB-S1(配列番号102)、pTB-S2(配列番号103)、pTB-S3(配列番号104)、pTB-S4(配列番号100)、pTB-S5(配列番号105)、pTB-S6(配列番号106)、pTB-S7(配列番号101)およびpTB-S8(配列番号28)を使用して、全コード領域を配列決定した。配列決定の結果によれば、クローンpTB319+A-#31(pGMcks-1)は所望のコード領域の配列を有する。ついでこのクローンをpGM-1CKS/XL1(配列番号107は、該コード領域のヌクレオチド配列を示す)と称することにした。図12は、pGM-1CKS組換えタンパク質のアミノ酸配列(配列番号108)を示す。
【0174】
B.pGO-12CKS/XL1の構築
pGO-12CKS/XL1は、組換えタンパク質pGO-12CKSをコードしており、そのアミノ酸配列(配列番号91)を図13に示す。このタンパク質は、42アミノ酸のenv gp120(HIV-1 M群HXB2R分離株)と融合した250アミノ酸のCKS/ポリリンカー、45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)および199アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)よりなる。pGO-12CKS/XL1は以下のとおりに構築した。
【0175】
PCR反応(100μl容量)を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのpTB/O-5′(配列番号109)、50pmolのpGO-9/Kpn(配列番号10)および鋳型としての1ngのpG0-9PL DNA(ミニプレップH5;前記実施例3第F節から得たもの)で調製した。各反応物を94℃で105秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で75秒間の22サイクルで増幅し、ついで72℃で5分間インキュベートした。該pTB/O-5′/pGO-9/Kpn PCR産物をゲル上で単離した。該pTB/O-5′/pGO-9/Kpn PCR産物およびpGM-1CKSプラスミド(前記第A節に記載のもの)を、Asp718(Boehringer Mannheim Biochemicals)およびBst XIで順次消化した。ついで、その消化されたベクターを仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim Biochemicals)で処理し、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。その消化されたPCR産物をCentri-Sepカラム(Princeton Separations)上で精製した。消化されたPCR産物を、消化されホスファターゼ処理されたpGM-1CKSベクター中に16℃で一晩連結した。XL1-Blueスーパーコンピテント細胞を該連結産物で形質転換し、20mMグルコースで補足されたLB+アンピシリンプレート上にプレーティングした。コロニーを同じタイプのプレート上での単離のために再ストリークした。クローンpGO-12CKSクローン#1の一晩培養(LB培地+100μg/mlカルベニシリン+20mMグルコース)を調製した。凍結ストック(0.5mlの80%グリセロール+0.5mlの一晩培養)を作製し、ミニプレップDNAを配列分析用に調製した。以下のオリゴヌクレオチドを配列分析用のプライマーとして使用した:CKS-1(配列番号30)、CKS-2(配列番号31)、CKS-3(配列番号32)、CKS-4(配列番号33)、CKS176.1(配列番号19)、3962(配列番号111)、3965(配列番号113)、pTB-S2(配列番号103)、pTB-S3(配列番号104)、pTB-S4(配列番号100)、pTB-S5(配列番号105)、sy120-S1(配列番号112)、41sy-1B(配列番号29)、41sy-2B(配列番号34)、41sy-4(配列番号23)、pTB-S8(配列番号28)。該配列分析の結果に基づき、pGO-12CKS候補クローン#1をpGO-12CKS/XL1と称することにした(配列番号90は、該コード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号91は、コードされるアミノ酸配列を示す)。
【0176】
C.pGO-13CKS/XL1の構築
pGO-13CKSは、組換えタンパク質pGO-13CKSをコードしており、そのアミノ酸配列(配列番号93)を図14に示す。このタンパク質は、42アミノ酸のenv gp120(HIV-1 M群HXB2R分離株)と融合した250アミノ酸のCKS/ポリリンカー、200アミノ酸のenv gp41(HIV-1 M群HXB2R分離株)、45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)および169アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)よりなる。pGO-13CKS/XL1は以下のとおりに構築した。
【0177】
PCR反応(100μl容量)を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのpTB/O-5′(配列番号109)、50pmolのpGO-8/Kpn(配列番号114)および鋳型としての1ngのpG0-9PL DNA(ミニプレップH5;前記実施例3第F節から得たもの)で調製した。各反応物を94℃で105秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で75秒間の22サイクルで増幅し、ついで72℃で5分間インキュベートした。該pTB/O-5’/pGO-8/Kpn PCR産物をゲル上で単離した。該pTB/O-5′/pGO-8/Kpn PCR産物およびpGM-1CKSプラスミド(前記第A節に記載のもの)を、Asp718(Boehringer Mannheim Biochemicals)およびBst XIで順次消化した。ついで、その消化されたベクターを仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim Biochemicals)で処理し、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。その消化されたPCR産物をCentri-Sepカラム(Princeton Separations)上で精製した。消化されたPCR産物を、消化されホスファターゼ処理されたpGM-1CKSベクター中に16℃で一晩連結した。XL1-Blueスーパーコンピテント細胞を該連結産物で形質転換し、20mMグルコースで補足されたLB+アンピシリンプレート上にプレーティングした。コロニーを同じタイプのプレート上での単離のために再ストリークした。クローンpGO-13CKSクローン#1の一晩培養(LB培地+100μg/mlカルベニシリン+20mMグルコース)を調製した。凍結ストック(0.5mlの80%グリセロール+0.5mlの一晩培養)を作製し、ミニプレップDNAを配列分析用に調製した。以下のオリゴヌクレオチドを配列分析用のプライマーとして使用した:CKS-1(配列番号30)、CKS-2(配列番号31)、CKS-3(配列番号32)、CKS-4(配列番号33)、43461(配列番号2)、43285(配列番号1)、pTB-S1(配列番号102)、pTB-S2(配列番号103)、pTB-S3(配列番号104)、pTB-S4(配列番号100)、pTB-S5(配列番号105)、sy120-S1(配列番号112)、41sy-1B(配列番号29)、41sy-2B(配列番号34)、41sy-4(配列番号23)、pTB-S8(配列番号28)。該配列分析の結果に基づき、pGO-13CKS候補クローン#1をpGO-13CKS/XL1と称することにした(配列番号92は、該コード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号93は、コードされるアミノ酸配列を示す)。
【0178】
D.pGO-14PL/DH5αの構築
pGO-14PL/DH5αは、組換えタンパク質pGO-14PLをコードしており、そのアミノ酸配列(配列番号95)を図15に示す。このタンパク質は、N末端メチオニンおよびそれに続く45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)、42アミノ酸のenv gp120(HIV-1 M群HXB2R分離株)と融合した200アミノ酸env gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)および200アミノ酸のenv gp41(HIV-1 M群HXB2R分離株)よりなる。pGO-14PL/DH5αは以下のとおりに構築した。
【0179】
PCR反応(100μl容量)を、UlTma DNAポリメラーゼ(3U)および1×バッファーならびに1.5mM MgCl2、40μMの各dNTP、50pmolのpTB/Age5′(配列番号115)、50pmolのpGO/B-3′(配列番号116)および鋳型としての1ngのpGM-1CKS DNA(pTB319+A-#31のミニプレップ;前記第A節から得たもの)で調製した。各反応物を95℃で30秒間インキュベートし、ついで94℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で60秒間の22サイクルで増幅し、ついで72℃で5分間インキュベートした。該pTB/Age5′/pGO/B-3′PCR産物をゲル上で単離した。該pTB/Age5′/pGO/B-3′PCR産物およびpGO-9PLプラスミド(前記実施例3第F節から得たもの)をAgeIおよびBam HIで順次消化した。ついで、その消化されたベクターを仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim Biochemicals)で処理し、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。その消化されたPCR産物をCentri-Sepカラム(Princeton Separations)上で精製した。消化されたPCR産物を、消化されホスファターゼ処理されたpGM-1CKSベクター中に16℃で一晩連結した。DH5αコンピテント細胞を該連結産物で形質転換し、LB+アンピシリン(150μg/ml)プレート上にプレーティングした。ベクタープライマーpKRR EccoR1フォワード(配列番号38)およびpKRR BamHIリバース(配列番号39)を使用するコロニーPCRにより、適切なインサートの存在に関してコロニーを分析した。候補クローンを含有するコロニーを同じタイプのプレート上での単離のために再ストリークした。凍結ストックおよびミニプレップDNAを得るために、一晩培養(LB培地+100μg/mlカルベニシリン)を調製した。凍結ストック(0.5mlの80%グリセロール+0.5mlの一晩培養)を作製し、ミニプレップDNAを配列決定用に調製した。以下のオリゴヌクレオチドを配列分析用のプライマーとして使用した:pTB-S1(配列番号102)、pTB-S2(配列番号103)、pTB-S3(配列番号104)、pTB-S4(配列番号100)、pTB-S5(配列番号105)、41sy-1C(配列番号40)、41sy-2(配列番号41)、41sy-3(配列番号42)、41sy-4(配列番号23)、pKRREcoR1フォワード(配列番号38)、pKRR BamH1リバース(配列番号39)。該配列分析の結果に基づき、pGO-14PL候補クローン#11をpGO-14PL/DH5αと称することにした(配列番号94は、該コード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号95は、コードされるアミノ酸配列を示す)。
【実施例12】
【0180】
C末端に融合したgp41免疫優性領域(IDR)の第2コピーを有するHIV-1 O群env gp120/gp41合成遺伝子の構築
A.pGO-15CKS/XL1の構築
pGO-15CKS/XL1は、組換えタンパク質pGO-15CKSをコードしており、そのアミノ酸配列(配列番号97)を図16に示す。このタンパク質は、45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)と融合した246アミノ酸のCKS/ポリリンカー、199アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)、およびそれに続く4アミノ酸のリンカー(Gly、Gly、Gly、Ser)およびenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)のIDR領域を含む32アミノ酸よりなる。pGO-15CKS/XL1は以下のとおりに構築した。
【0181】
XL1-Blue細胞中で増殖させたプラスミドpGO-11CKS(実施例3第K節で得たもの)を、Age IおよびBam HIで順次消化し、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させた。合成オリゴヌクレオチドsynIDR#2-A(配列番号117)およびsynIDR#2-B(配列番号118)を、製造業者が推奨している方法に従いポリヌクレオチドキナーゼ(Boehringer Mannheim Biochemicals)でキナーゼ処理した。該キナーゼ処理オリゴヌクレオチドをアニールさせ、該二本鎖を、消化(Age I+ Bam HI)されたpGO-11CKSベクターに連結した。スーパーコンピテントXL1-Blue細胞を該連結産物で形質転換し、該細胞を、150μg/mlアンピシリンで補足されたLBプレート上にプレーティングし、一晩インキュベートした。コロニーPCR(プライマー41sy-1B配列番号29およびpTB-S8配列番号28)を用いて、候補クローンを同定した。コロニーを、150μg/mlアンピシリンで補足されたLBプレート上での単離のために再ストリークした。該候補クローンの一晩培養を、100mg/mlカルベニシリンおよび20mMグルコース(Sigma Chemical Co.)で補足された2×LBブロス(Life Technologies, Inc.)中で樹立した。Promega 373 DNA単離キット(Promega Corporation, Madison, WI)を製造業者が推奨している方法に従い使用して、ミニプレップDNAを該一晩培養から調製した。また、該一晩培養を用いて、凍結ストックを得た。細胞をペレット化し、20%グリセロール(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)を含有する2×LBブロスに再懸濁し、-70℃で凍結した。以下のオリゴヌクレオチドプライマーを配列分析に使用した:CKS-1(配列番号30)、CKS-3(配列番号32)、43285(配列番号1)、43461(配列番号2)、41sy-1B(配列番号29)、41sy-2B(配列番号34)、41sy-3B(配列番号35)、41sy-4(配列番号23)およびCKS3583(配列番号20)。配列決定の結果に基づき、候補クローンpGO-15CKS-48をpGO-15CKS/XL1と称することにした(配列番号96は、該コード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号97は、コードされているアミノ酸配列を示す)。
【0182】
B.pGO-15PL/DH5αの構築
pGO-15PL/DH5αは、組換えタンパク質pGO-15PLをコードしており、そのアミノ酸配列(配列番号120)を図17に示す。このタンパク質は、N末端メチオニン、およびそれに続く45アミノ酸のenv gp120(HIV-1 O群, HAM112分離株)、199アミノ酸のenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)、4アミノ酸のリンカー(Gly、Gly、Gly、Ser)およびenv gp41(HIV-1 O群, HAM112分離株)のIDR領域を含む32アミノ酸よりなる。pGO-15PL/DH5は以下のとおりに構築した。
【0183】
PCR反応(100μl容量)を、AmpliTaq DNAポリメラーゼ(2.5U)および1×バッファーならびに40μMの各dNTP、50pmolの41sy-3B(配列番号35)、50pmol pTB-S38(配列番号28)および鋳型としての1ngのpGO-15CKS DNA(候補クローンpGO-15CKS-48のミニプレップ;前記第A節から得たもの)で調製した。該反応物を95℃で30秒間インキュベートし、ついで94℃で20秒間、50℃で30秒間および72℃で60秒間の35サイクルで増幅し、ついで72℃で7分間インキュベートした。該増幅産物を、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen)を用いて精製した。精製された41sy-3B/pTB-S8増幅産物を、Age IおよびBam HIで順次消化し、ついでpGO-9PL(前記実施例3第J節からのAge I+ Bam HIで消化され/ホスファターゼ処理されたベクタープレップ)中に廉潔した。該連結産物を用いてコンピテントDH5α細胞を形質転換し、150μg/mlアンピシリンで補足されたLBプレート上にプレーティングした。プライマー41sy-3(配列番号42)およびpKRR Bam HIリバース(配列番号39)でのコロニーPCR、およびそれに続く、AgeIでの該PCR産物の消化により、候補クローンを同定した。候補クローン#4を単離のために再ストリークした。クローン#4の培養を、100μg/mlカルベニシリン(Sigma Chemical Co.)で補足された2×LBブロス(Life Technologies)中で樹立し、34℃で一晩インキュベートした。Promega 373 DNA Isolation Kit(Promega Corp)を該製造業者の概要説明のとおりに使用して、該一晩培養の一部からミニプレップDNAを調製した。残りの一晩培養をペレット化し、該細胞を、20%グリセロール(J.T. Baker Co.)を含有するTerrificブロスに再懸濁し、-70℃で凍結した。以下のオリゴヌクレオチドプライマーを配列分析に使用した:pKRR EcoR1フォワード(配列番号38)、pKRR Bam HIリバース(配列番号39)、41sy-1C(配列番号40)、41sy-2(配列番号41)、41sy-3(配列番号42)、41sy-3B(配列番号35)および41sy-4(配列番号23)。配列決定の結果に基づき、候補pGO-15PLクローン#4をpGO-15PL/DH5αと称することにした(配列番号119は、該コード領域のヌクレオチド配列を示し、配列番号120は、コードされるアミノ酸配列を示す)。
【実施例13】
【0184】
HIV-1 O群組換えgp41抗原pGO-8PL、pGO-9PL、pGO-12CKS、pGO-14PLおよびpGO-15CKSの調製および精製
実施例5に記載のとおりに、それぞれのHIV-1 O群組換えgp41抗原構築物を含有する大腸菌(E. coli)株を増殖させ、誘導することにより、前記抗原を調製した。得られた凍結細胞を、50mM Tris pH8、10mM Na EDTA、150mM NaCl、8% (w/v)ショ糖、5% Triton X-100(登録商標) (v/v)、1mM PMSFおよび1μMペプスタチンAを含む冷溶解バッファー中でホモジナイズすることにより再懸濁させた。リゾチームを、加工細胞1g当たり1.3mgの濃度で該ホモジネートに加え、氷上で30分間のインキュベーションを行なって該細胞を溶解した。封入体を遠心分離により可溶性タンパク質から分離した。これらのペレット化封入体を洗浄し、1)溶解バッファー、2)10mM Na EDTA pH8、30% (w/v)ショ糖、および3)水中で順次ペレット化した。洗浄された封入体を50mM Tris pH8、10mM Na EDTA、150mM NaClおよび3M尿素に再懸濁し、氷上で1時間インキュベートした。ついで該封入体を遠心分離により可溶性タンパク質から分離した。該ペレット化封入体を、7Mグアニジン-HCl、50mM Tris pH8、0.1% (w/v)β-メルカプトエタノール(BME)中で4℃で一晩、完全に可溶化した。該可溶化組換え抗原を遠心分離により清澄化し、0.2μmのフィルターに通過させた。1Mグアニジン-HClの最終濃度まで水で希釈(1:7)することにより、該可溶化gp41抗原を7Mグアニジン-HCl溶液から沈殿させた。4℃で30分間のインキュベーションの後、沈殿したタンパク質を遠心分離し、50mM Tris pH8、9M尿素、0.1% BME(v/v)中、4℃で一晩、再び可溶化した。
【0185】
つぎに可溶化HIV-1 O群組換えgp41抗原を、以下のとおりに精製した。まず、該組換え抗原を、Q-Sepharose(Pharmacia)またはS-Sepharose(Pharmacia)カラムを使用する陰イオンおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。該可溶化gp41抗原溶液を、50mM Tris pH8、8M尿素および0.1% BME (v/v)で予め平衡化されているQ-SepharoseまたはS-Sepharoseカラム上にローディングした。該gp41抗原を、(1)カラムに直接通過させボイドボリューム中に集めるか、あるいは(2)該カラムマトリックスに結合させた。吸着したら、該gp41抗原を0-1M NaCl勾配により該カラムから溶出した。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を用いて、Q-SepharoseまたはS-Sepharoseカラムからの画分を分析した。該組換えgp41抗原を含有する画分をプールし、ついで限外濾過により濃縮した。該組換え抗原濃縮物を4% SDS (w/v)および5%BME (w/v)で室温にて3時間処理した。SDSで処理した抗原をさらに、25mM Tris pH8、0.15M NaCl、0.1% v/v BME、0.1% SDS (w/v)で平衡化したSephacryl S-300(Pharmacia)カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を用いて、該S-300カラムからの画分を分析した。精製組換え抗原を含有する画分をプールし、0.2μmのフィルターに通過させ、-70℃で保存した。
【実施例14】
【0186】
HIV-1 M群およびO群サンプルに対する組換え抗原の反応性の試験
A.ビーズのコーティング
組換えHIV-1抗原の反応性を調べるために、精製組換え体を1/4インチポリスチレンビーズ上にコーティングした。これらの抗原コート化ビーズを、HIV-1 M群およびO群サンプルに対する反応性を評価するための一連の捕捉アッセイで使用した。
【0187】
組換え抗原を、0.5μg/ml(PBS中)で1/4インチビーズ上にコーティングした。以下の組換え抗原をコーティングした:pTB319(M群)、pGO-9/CKS、pGO-11/PL、pGO-12/CKS、pGO-14/PLおよびpGO-15/CKS(すべてO群)。
【0188】
該組換え抗原を該ビーズ上にコーティングするための方法は、以下のとおりである。各抗原について、35.5gm(〜250)のビーズ(Abbott Laboratories code 93-2556、lot 6840M100)を、水中の15% N-プロパノール中、40℃で30分間洗浄した。すべてのインキュベーションおよび洗浄は、シェーカープラットフォーム上の小さな褐色のガラスジャー中で行なった。該N-プロパノール溶液を吸引除去し、58.25mlの抗原溶液を加え、該ビーズを40℃で2時間インキュベートした。該抗原溶液を吸引除去し、60mlの0.1% Triton X-100溶液(PBS中)を40℃で30分間加えた。ついで該ビーズを60mlのPBSで2回洗浄し、60mlの2%BSA(PBS中)で40℃にて30分間インキュベートした。該BSAを吸引し、該ビーズをPBS中で再び洗浄した。ついで該ビーズを、60mlの0.5%ショ糖(PBS中)中、室温で15分間インキュベートした。15分後、該ショ糖を吸引し、該ビーズを風乾させた。コーティングされたビーズを、乾燥剤入りのポリスチレンボトル中、4℃で保存した。
【0189】
B.アッセイ
組換え抗原でコーティングされたビーズを、Abbott Laboratories 3A11キット(第1世代の間接アッセイ様式)を使用して、種々のサンプルに対する反応性に関して試験した。サンプルを希釈し、ポリスチレントレー中のウェルに加えた。ビーズを加え、該トレーを40℃で1時間インキュベートした。該トレーを、Abbott Laboratories QUICKWASH装置中、水で洗浄した。つぎに該キット共役体(抗ヒトIgG-ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を加え、該トレーを再び40℃で1時間インキュベートした。該トレーを再び洗浄し、300μlの基質溶液(0.02%過酸化水素を含有するクエン酸-リン酸バッファー中1.28mg/mlのo-フェニレンジアミン・HCl)を室温で30分間、各ウェルに加えた。1mlの1N硫酸を加えて反応を停止し、該トレーをAbbott QUANTUM分光光度計中で読取った。
【0190】
この研究に使用したサンプルは、正常なヒト血漿(Abbott Laboratories code 99800、lot 17535M400)(陰性対照として使用)、HIVPL-31(M群陽性血清)および以下のO群陽性血清であった:14283、189404、193Ha、14791、267HaおよびESP-1。正常なヒト血漿対照を除くすべてのサンプルは、1:1,000、1:10,000および1:100,000(キット試料希釈剤中)の3つの希釈度で使用した。各サンプルの各希釈物を、6個のビーズのそれぞれに対して二重に使用し、各希釈物の結果を各ビーズについて平均しプロットした。
【0191】
C.結果
図18〜23に示す前記試験の結果は、本発明の組換え抗原の使用により得られうる感度および選択性における改善を示している。HIV-1 M群組換え抗原(pTB319)でコーティングされたビーズは、M群血清サンプルを検出したが、1つを除くすべてのO群サンプルを検出しなかった。HIV-1 O群組換え抗原(pGO-9/CKS、pGO-11/PLおよびpGO-15/CKS)のみでコーティングされたビーズは、O群血清サンプルを検出したが、HIV-1 M群サンプルの検出においてはより低い感度を示した。ハイブリッドM群およびO群組換え抗原(pGO-12/CKSおよびpGO-14/PL)でコーティングされたビーズは、HIV-1 M群陽性サンプルおよびHIV-1 O群陽性サンプルの両方を検出する能力を有していた。最後に、pGO-15CKS(これは、該タンパク質のカルボキシ末端に組換え手段により結合したgp41のO群免疫優性領域に相当する追加的な配列を有する)は、低力価O群サンプルに対して、より大きな反応性を示した。
【実施例15】
【0192】
O群組換え抗原pGO-9CKSおよびpGO-11CKSを使用するHIV-1 O群感染サンプルに関するアッセイ感度の検討
A.アッセイ
本発明の抗原構築物のイムノアッセイにおける性能を評価するために、組換え抗原pGO-9CKSおよびpGO-11CKSを、HIV-1 M群(B亜型)試薬を含有する4つのHIV-1/HIV-2イムノアッセイに組み入れた。1つのビーズアッセイ(アッセイ1)および微粒子に基づく3つの自動化アッセイ(アッセイ2〜4)を用いて、該構築物を試験した。すべての場合に、HIV-1 O群組換え体を組み入れて(フォーマット(Format)2)および組み入れないで(フォーマット1)、HIV-1 O群感染試料の反応性を評価した。該コート化ビーズ/微粒子を、HIV-1 O群陽性ヒト血清ESP1、189404、193Ha、341Ha、2156およびABB 9/96の複数の希釈物と反応させた。
【0193】
アッセイ(Assay)1では、精製されたpGO-11CKSを、1/4インチポリスチレンビーズ上に該抗原構築物をコーティングすることにより、ビーズに基づく商業的に入手可能なアッセイに組み入れた。該コート化ビーズを、一定範囲の希釈度のHIV-1 O群陽性ヒト血清と反応させ、洗浄し、ついで、ホースラディッシュペルオキシダーゼと共役した精製pGO-9CKSと反応させた。洗浄し、結合pGO-9CKS共役体を未結合pGO-9CKS共役体から分離した後、基質を加え、該アッセイを完了した(実施例14に記載のとおり)。
【0194】
アッセイ2では、精製pGO-11CKSを、該抗原構築物を微粒子上にコーティングすることにより、もう1つの商業的に入手可能なアッセイに組み入れた。該コート化微粒子を、アッセイ1で用いたのと同じ範囲の希釈度のHIV-1 O群陽性ヒト血清と反応させた。ついで該微粒子を洗浄し、ついでビオチン化pGO-9CKSと反応させた。さらに洗浄した後、該微粒子を、アルカリホスファターゼと共役したポリクローナル抗ビオチン抗体と反応させた。基質メチルウンベリフェリルホスファートを加えることにより、該アッセイシグナルを現像した。
【0195】
アッセイ3では、精製pGO-11CKSを、該抗原構築物を微粒子上にコーティングすることにより、もう1つの商業的に入手可能なアッセイに組み入れた。この場合もまた、該コート化微粒子を、アッセイ1で用いたのと同じ範囲の希釈度のHIV-1 O群陽性ヒト血清と反応させた。つぎに該微粒子を洗浄し、ついでビオチン化pGO-9CKSと反応させた。洗浄後、該微粒子を、シグナル生成化合物としてのアクリジニウムと共役した抗ビオチン抗体と反応させた。
【0196】
アッセイ4では、精製pGO-11CKSを、該抗原構築物を磁性微粒子上にコーティングすることにより、展開(developmental)アッセイに組み入れた。アッセイ1の場合と同様、該コート化微粒子を、一定範囲の希釈度のHIV-1 O群陽性ヒト血清と反応させ、洗浄し、ついでアクリジニウムと共役したpGO-9CKSと反応させた。
【0197】
B.結果
前記試験の結果を以下の表1および2に示す。表中のデータは、シグナル/カットオフ(S/CO)比として示されている。フォーマット1は、本発明の抗原構築物の不存在下での通常のアッセイを意味し、フォーマット2は、該HIV-1 O群構築物で補足されたアッセイを意味する。
【0198】
これらのデータから、HIV-1 O群組換え体の添加は、試験した全希釈度のHIV-1 O群感染血清に関するアッセイ感度の有意な増強をもたらすことが認められる。例えば、アッセイ1およびサンプル193Haの場合、フォーマット1を用いた場合には1:10の希釈度において7.14のS/CO比が得られたが、フォーマット2を用いた場合には160倍大きな希釈度(1:1600)において同様のS/CO(7.22)が得られた。この傾向は、試験したアッセイプラットフォームのすべてにわたり維持された。該O群組換え体の有用性は、サンプル2156(これは、該O群組換え体の添加前に4つすべてのアッセイにおいて陰性(S/CO<1)を示した)に関して特に明らかであった。しかしながら、HIV-1 O群構築物の添加により、このサンプル2156は、1:400希釈度における4つすべてのアッセイにおいて陽性を示した。アッセイ1においては、2156は1:5000の希釈度においても依然として陽性であった。このように、前記の直接フォーマットイムノアッセイを用いた場合、組換え試薬pGO-9CKSおよびpGO-11CKSの添加は、HIV-1 O群感染血清に関して、実質的に、より良好な感度を与えることが判明した。
【0199】
【表1】

【0200】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのHIV-1 O群envポリペプチドと少なくとも1つのHIV-1 M群envポリペプチドとの融合体を含んでなる抗原構築物であって、それぞれのポリペプチドが少なくとも5アミノ酸からなるO群又はM群envタンパク質に由来するポリペプチドである抗原構築物。
【請求項2】
(a)第1 HIV-1 O群envポリペプチド、
(b)第2 HIV-1 O群envポリペプチド、
(c)第1 HIV-1 M群envポリペプチド、および
(d)第2 HIV-1 M群envポリペプチド
の融合体を含む、請求項1に記載の抗原構築物。
【請求項3】
該HIV-1 O群配列の少なくとも1つがHIV-1 O群分離株HAM112に由来する、請求項2に記載の抗原構築物。
【請求項4】
該第1 O群envポリペプチドおよび該第1 M群envポリペプチドが共にgp120ポリペプチドであり、該第2 O群envポリペプチドおよび該第2 M群envポリペプチドが共にgp41ポリペプチドである、請求項2に記載の抗原構築物。
【請求項5】
(a)該第1 HIV-1 O群envポリペプチドが、HIV-1 O群分離株HAM112のgp120タンパク質の免疫反応性部分を含み、
(b)該第2 HIV-1 O群envポリペプチドが、HIV-1 O群分離株HAM112のgp41タンパク質の免疫反応性部分を含み、
(c)該第1 HIV-1 M群envポリペプチドが、B亜型の第1 HIV-1 M群分離株のgp120タンパク質の免疫反応性部分を含み、かつ
(d)該第2 HIV-1 M群envポリペプチドが、B亜型の第2 HIV-1 M群分離株のgp41タンパク質の免疫反応性部分を含む、請求項2に記載の抗原構築物。
【請求項6】
(a)該第1 HIV-1 M群envポリペプチドが、図12の配列(配列番号108)の残基251〜292より実質的になるアミノ酸配列からなり、かつ
(b)該第2 HIV-1 M群envポリペプチドが、図12の配列(配列番号108)の残基293〜599またはその一部より実質的になるアミノ酸配列からなる、請求項5に記載の抗原構築物。
【請求項7】
該第2 HIV-1 M群envポリペプチドが、図12の配列(配列番号108)の残基293〜492より実質的になるアミノ酸配列からなる、請求項6に記載の抗原構築物。
【請求項8】
該第1 HIV-1 O群envポリペプチドが、図1の配列(配列番号61)の残基1〜520またはその一部より実質的になるアミノ酸配列からなる、請求項2、4、5、6および7のいずれか1項に記載の抗原構築物。
【請求項9】
配列番号91、配列番号93及び配列番号95よりなる群から選ばれるアミノ酸からなる請求項1に記載の抗原構築物。
【請求項10】
請求項1又は9に記載の抗原構築物をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
試験サンプル中のHIV-1に対する抗体を検出する方法であって、以下の工程を含む方法、
a)請求項1又は9に記載の少なくとも一つの抗原構築物を試験サンプルと組み合わせ、混合物を形成する工程、
b)サンプル中に抗体が存在し、免疫学的に抗原と反応性であれば抗原と抗体が複合体を形成するのに適した条件下で、混合物をインキュベートする工程、及び
c)形成された複合体の存在を検出する工程。
【請求項12】
請求項1又は9に記載の抗原構築物を含むHIV-1に対する抗体を検出するためのイムノアッセイキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−105649(P2012−105649A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272432(P2011−272432)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【分割の表示】特願2008−290382(P2008−290382)の分割
【原出願日】平成10年8月17日(1998.8.17)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】