HIV特異抗体に基づくHIV予防ワクチン
本発明は、HIVによる感染を予防する及び/又は個体におけるHIV感染症の進行を予防する、HIVワクチンの製造方法に関する。特に本発明は、抗レトロウイルス療法後に選択された存在するHIV−亜型及び変異体に結合する、個体における免疫応答としてのHIV特異抗体の形成を提供する。本発明は、実質的に全てのHIV−アイソフォームを認識しかつ結合することが可能であるHIV特異抗体にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIVによる感染を予防する及び/又は個体におけるHIV感染症の進行を予防する、HIVワクチンの製造方法に関する。特に本発明は、抗レトロウイルス療法後に選択された存在するHIV−亜型及び変異体に結合する、個体における免疫応答としてのHIV特異抗体の形成を提供する。本発明は、実質的に全てのHIV−アイソフォームを認識しかつ結合することが可能であるHIV特異抗体にも関する。
【背景技術】
【0002】
1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)は、ウイルス複製時に生じる変異の蓄積により引き起こされ、更に組換事象によっても引き起こされる、顕著な遺伝子変動性により特徴づけられる[1, 18, 24]。HIV治療の化学療法の失敗は、このHIV−1ウイルス株の高度な変異原性の活性が原因である[8]。種々のコースの抗レトロウイルス療法後の患者において、及び更には複合療法(HAART)後の患者においてであっても、耐性ウイルス変異株が迅速に生じることが早くに示された。これらの耐性ウイルスは、それらのタンパク質の高次構造及び構造に特異的変化を有する。通常HIV−1が現在の治療から逃れることに寄与するそのような変異は、治療条件下での選択の結果として保存され(saved)かつ蓄積される。
【0003】
抗−HIV−1医薬品による治療は、ウイルス複製を完全には停止せず、このことは予め存在する耐性変異の選択及び蓄積、並びに新たな変異の発生及び蓄積を可能にし、その結果ウイルス生存の新たな入口を生じる。従って現存する抗レトロウイルス調製品(NRTI、NNRTI、プロテアーゼインヒビター、融合インヒビター、更にはHAARTのような種々の薬剤の混合物)は全て、耐性ウイルス株が生じかつ繁殖するまで、多少延長された期間にわたりHIV−1複製を遅くすることができるのみである[7]。一般的抗−HIV治療に耐える広く蔓延しているHIV−1耐性変異株は、特にHIV−感染した患者が通常抗レトロウイルス療法を受ける開発途上国において、重大な問題となり始めている[8]。
【0004】
HIV研究の25年の歴史にわたり、HIV免疫療法用のワクチン開発の数種のアプローチが提唱され、かつそれらの実践的結果が検証された。これらのアプローチは、ワクチン活性成分、それらの作用機序及びそのワクチンの製造法に従い、以下のように分類することができる:
1型:モノクローナルHIV−特異抗体−ベースのHIV/AIDSワクチン、
2型:HIV粒子破壊−ベースのワクチン、
3型:HIV−ペプチド−ベースのワクチン、及び
4型:HIVペプチドの遺伝子をコードするDNAプラスミド又はウイルス(アデノ−、アデノ随伴、鶏痘、ワクシニアなど)ベクターワクチン。
【0005】
1型:モノクローナルHIV−特異抗体−ベースのHIV/AIDS治療用ワクチン、中でもmAbとしての中和抗体、又は2〜3種のHIV−中和mAbのカクテル[5, 14, 28]
HIV感染機構について最初に発見されたことは、CD4受容体並びにCCR5及びCXCR4共受容体を介した、リンパ球又は他の宿主細胞へのそれの侵入方法であった。次にHIVエンベロープタンパク質構造が研究され(図10a−b)、gp120ループの3Dの変動性並びにCD4及び共受容体の識別及び吸着のためのgp120−gp41複合体形成の重要な役割が基本原則として設定された。ウイルスenvタンパク質を見つけ、HIV細胞侵入に寄与するそれらのエピトープに結合し、又はCD4受容体及び共受容体上の各ドメイン若しくはエピトープに結合し、その結果段階的HIV感染プロセス若しくは細胞結合を妨害すると理解されるモノクローナル抗体は、HIV中和抗体と称された。
【0006】
抗体−ベースのワクチン開発における大きい問題点は、HIV遺伝子変動性によっても引き起こされ、これは、一部のHIV抗原により誘発された組換抗体は、HIV−1の異なる単離体を中和することが不可能であるということである。免疫化により誘発された抗−HIV−1モノクローナル抗体の大部分は、貧弱な交差−中和活性を有するか又はこれを有さず、かつ典型的には、変異のためにウイルス毎に異なるか又は感染性ビリオンの表面に余り露出されていないかのいずれかである決定基に結合する。中和mAbのいくつかの異形が作出されたが、その後臨床試験が、エンベローブタンパク質gp120及びgp41に対する中和抗体をベースにしたワクチンは、標的HIVタンパク質の表面エピトープの変動性及び変化という同じ理由により、1〜2ヶ月以内に働きを停止する(稀に、これらが開始時から働く場合)ことを示した。
【0007】
説明されたワクチン開発アプローチの欠点は、動物の免疫化のためのウイルス抗原のどちらかの抗体のモノクローナル性の選択である。ウイルス標的−タンパク質の種々の変種に特異的な中和抗体のパネルが作製されるような場合であっても、各mAbは、細菌システムにおける組換モノクローンとして作製される。更に原核生物の組換抗体はそれらの抗原に対する親和性が、動物又はヒトの血清中の未変性のAbと比べ、少なくとも10倍低い。動物において誘発されたポリクローナルHIV−特異的免疫グロブリンは通常、ヒトなどの種々の生物について免疫毒性である。それらを、診断目的に使用することは可能であるが、アナフィラキシー反応の発生機会の多さは、それらの免疫療法適用に関する当然の制約である。ハイブリドーマmAb作製技術は、免疫グロブリンにおける生物学的種の差異の問題点を解決しない。ヒト化mAb又はキメラmAbの作製技術は、非常に面倒であり、かなり時間がかかりかつ費用もかかる。従ってこの技術により、抗−HIV免疫療法のための数十又は数百のmAb異形を作製することは不可能である。
【0008】
2型:HIV粒子破壊−ベースのワクチン[9, 20]。天然のHIVビリオン及びHIVペプチドを使用する発想は、15年以上前に明らかにされ、かついくつかの形で生まれ変わった。中でも、小型ウイルスにとって致死的であるが、ペプチド結合及びタンパク質の高次構造に対する破壊作用が比較的低いことが周知である、β−プロピオラクトン、ソラレン又は類似物質による、HIV粒子の感染性活性の保存が発想された。超遠心分離法による患者の血流由来の未変性ウイルスの濃縮は、一部の免疫化に適用可能なウイルス量を生じることができないことが急速に明らかになり始め、これはかろうじて研究分析のために若干の材料を送達することができる。そのため、この種のワクチンの実際上の変形は、実験室株のインビトロ感染培養、又は初代単離株の感染及びそれらのドナーリンパ球との培養のいずれかである。両方の場合において、免疫化後のHIVタンパク質の免疫応答形成に必要な大量のウイルス粒子を提供するための、数百リットルの発酵槽中での大規模生成が唱えられている。
【0009】
この発想それ自身は完全に悪くはなく、これは他の3種のワクチン型の以前には利点さえ有する。第一に、免疫化のための不活化されたウイルス粒子使用の安全性は、ショ糖ピロー(pillow)勾配における超遠心分離後に、HIV RNAコピーの実時間定量を試みる場合に、より自明のものとなる。ウイルスRNAは大部分、小片に崩壊され、かつショ糖勾配における濃縮後に得られたHIVビリオン又はそれらのタンパク質の実濃度よりも、104〜105より低い数のレベルへと破壊される。第二に、未変性ウイルスタンパク質の獲得は、現存する種々のHIV envタンパク質エピトープを対象とする見込みがよりあるように見える。しかしこの最後の説明は、この種のワクチンが働かない真の理由である。
【0010】
HIV粒子破壊−ベースのワクチン開発は、遺伝子変異選択のインビトロ条件が、動物又はヒト生物における同じプロセスの境界からどの程度異なるかの最良の例である。ウイルスペプチドの分析は、異なるウイルス亜型にのみではなく、同じ患者から単離されたウイルス変異株にさえも特異的である、抗原エピトープの高い変動性を明らかにした。しかし全ての実験室株、中でも高度に感染性のBIIIのA455は、envペプチドの配列の一定でありかつより均質な組成を有する。実験室HIV株に関して質量分析法又は3D構造的方法により分析されたenvペプチドライブラリーの多様性は、単独の一患者から採取した同等物から最大5%である。同じ傾向が、ドナー血液リンパ球又はCD4、CCR5若しくはCXCR4−有するヒト細胞培養物とインビトロで共培養された初代HIV単離株について認められる。これは、ウイルスのインビトロ感染に関する選択条件は、生物における天然のウイルス複製及びビリオン形成プロセスとは非常に異なり、ヒト生物におけるウイルス生存率(survivorship)に関するゲートは、インビトロ培養時よりも95%より広いことを意味する。従って大規模インビトロ生成後の不活化ウイルス粒子を使用し抗−HIVワクチンを調製する全ての試みは失敗し、更には実験室HIV株から供給されたペプチド−ベースのワクチンも失敗した。
【0011】
3型:HIV−ペプチド−ベースのワクチン[3, 6, 13, 15, 27, 33, 36]。この最新型のワクチンは、小型のHIVペプチド、受容体認識及び感染活性に寄与するウイルスタンパク質のより大きいHIVタンパク質偽エピトープの複数の小さい15〜20個のアミノ酸断片、これらの小型ペプチドのパネルを含む。小さいレンチウイルスファミリーのメンバーとして、HIVは、小数のペプチド(合計18)からなり、HIVペプチドワクチンの大部分は、gp120(gp140、gp160)又はgp120及びgp41の両方のenvタンパク質の断片を含有し、残りは、維持が困難な(little easy-to-maintain)マトリックスペプチド及びp24断片を含む。このクラスの他の部分は、HIV生活環に関して天然の提供されたグリコシル化により酵母において生成された完全長envペプチド若しくはそれらの大型断片、又はいわゆる糖質−ベースのHIVワクチンである。HIVペプチドワクチンの一部は、治療的免疫化が意図され、一部は、予防活性を有することが言明されている。
【0012】
しかしこれまで組換HIVペプチドのカクテルも合成15〜20個アミノ酸ペプチドのカクテルも、ウイルス感染及び複製からの防御を提供することができなかった。その主な理由は、どのようにこれらのペプチドが得られたかの原理の分析から明らかにすることができる。組換ペプチド配列は、長いTaq−ポリメラーゼPCR(通常1000〜3000bp)により増幅されたHIVゲノム断片のステージを含む、患者由来のウイルス材料からのRT−PCRにより得られた試料の、又はHIV−特異的プライマーPCR後の患者のリンパ球由来のDNAの配列の自動DNA配列決定の技術、その後の形質転換された大腸菌株コロニーの選択により作製される。現在の技術は、高くないとして平均で多様な変種105〜106から1配列ケースの頻度での、ランダム様式のHIV遺伝子型のモノクローナル選択を基礎としており、それから平均感染性ウイルス力価は1%であり、そのためこれは感染活性のあるウイルスの103〜104コピーである。1個体の患者血液の同じ試料からこの技術で作製された二つの配列の完全なHIVゲノムのデータは、劇的に異なることは、HIVゲノム配列を作製しそれら自身を分析する研究者には周知である。従ってこれらの組換ペプチド又は3〜4種の組換ペプチドのカクテルによる免疫化は、例え真核生物発現システムにおいて適切にグリコシル化された(糖鎖付加された(carbohydrated))としても、現在対処されるべきウイルス変異株の不活化に特異的な免疫応答の形成を提供することはできない。従って、HIVワクチン開発アプローチは、これらの標準とは無関係であり、組換ペプチド配列の情報は、他の方法で作成されなければならない。
【0013】
合成アミノ酸の小型HIVペプチド[27]は、矛盾したアプローチにより作製され−ペプチド結合形成の各サイクルに関して、公知のHIV配列における可能性のあるアミノ酸変種の混合物が添加される場合、数百の変種が自動ペプチドシンセサイザーにおいて混合物として作製されている。envタンパク質の可変領域の多くの変種は、ペプチドシンセサイザーを使用し得ることができる。しかしこれらのペプチドのサイズは、15〜20、最大30個のアミノ酸に限定され、より長いペプチド型は、組換システムにおいてのみ作製が可能である。実際に、小型の合成ペプチド及びそれらのカクテルによる免疫化は、HIV免疫反応について十分に高いが、それへの特異性が低いか若しくはないように追加免疫する。個々に、動物(アカゲザル(Rhesus macaques))の合成HIVペプチド免疫化の試みであっても、標準ELISPOT法により試験されたそれらの血液中にHIV特異抗体が存在しないという不満足な結果を引き出す。恐らくHAARTと組合せた治療目的の組成物としての、現存するペプチド−ベースのHIVワクチンは、若干見込みがあるであろう。しかしペプチドワクチン組成物はひとつも、現在まで免疫化後のHIV感染症−予防作用を示していない。
【0014】
4型:HIVペプチドの遺伝子をコードするDNAプラスミド又はウイルス(アデノ随伴、鶏痘、ワクシニア、レトロウイルスなど)ベクターワクチン[11, 12, 16, 21, 26, 29, 30]。世界中で99の臨床試験に関して承認が得られた55種の抗−HIVワクチン中でほとんどは、DNA−ベースのクラスに属している。しかしひとつの候補だけが、第III相臨床試験を通過し、かつ第IIb相を通過する若干の見込みがある[37, 42]。この種のワクチンを使用する発想は、DNA免疫化は、自己免疫合併症及びアナフィラキシー反応などの即時型副作用を生じないという、健常なバックグラウンドを有し、そのためその臨床適用は、安全かつ容易である。この利点にもかかわらず、全てのウイルス及び非ウイルスDNAワクチンは、それらの実際の抗−HIV有効性の可能性に関して、希望を弱める多くの欠点を含む。
【0015】
DNAは、それ自身いかなる免疫反応も引き起こさないので、このワクチン有効性は、下記の3つの条件の大きさであり、これらは各々同等に重要である:
1)トランスフェクション/感染効率、又はいかに多くの細胞が、一旦適用されたある量のDNAから遺伝物質が供給され得るか;
2)発現レベル、又はどのくらい多くのタンパク質が、1種又は複数の遺伝子コピーを得る細胞において発現されているか;
3)免疫応答の継続、又はいかに長くMHCが、標的化病原体を認識するmAbの誘発を続けるか。
【0016】
インビトロトランスフェクション/感染効率の測定は、細胞が分裂の次サイクルを通過するまでに遺伝子導入後24時間に計測された現在のタンパク質を発現している細胞の割合であり、この割合は、同じ条件で同時に導入された蛍光タンパク質又はLacZを発現している細胞について計測される。非−ウイルス系プラスミドベクターに関して、インビトロ効率は、40〜90%を達成することができるが、同じベクターに関してインビボ静脈内投与は、最良の状態で1〜5%生じる。これらの40〜90%(インビボにおいて1〜5%)から、98〜99%は、2週間後には消滅する一過性又はエピソーム性の発現であり、かつトランスフェクトされた遺伝物質のわずかに1〜2%が、細胞ゲノムに挿入され、長期発現を提供する。プラスミドDNAワクチン[16]の量は、その送達物質−それらにより作製された陽イオン性脂質及びリポソーム、陽イオン性ポリマー(ポリエチレンイミン、ポリリシン)、プルロニック並びにそれらの種々の組合せに関する、最大耐量により制限される。実際に、負帯電したDNAに結合しかつ運搬することができる全ての陽イオン物質は、濃度105〜104M及びそれ以上で高度毒性である。非−ウイルスベクターの発現レベルは、ウイルスベクター発現と比べ、比較的高い。
【0017】
ウイルスDNAベクターの感染効率は可変性であるが、通常インビトロ実験の10〜20%を超えない。しかしウイルスベクターは、遺伝物質の直接ゲノムへの送達を提供するそれらの能力において魅力的となり始めている。そのためインビボ投与に関するウイルスベクターの感染効率は平均2〜5%であるにもかかわらず、標的タンパク質の発現は、主として長期間であり、一過性ではない。従ってウイルスDNAベクターは、治療又は予防目的で免疫応答及び抗−HIV活性の十分な持続を有すると仮定された。
【0018】
しかしウイルスDNAワクチン成分、及びいかにそれらが段階的に作用するかを研究するために、それらの予測される活性様式の制限を観察することができる。臨床試験に入っているDNAベクターの第一のクラスは、アデノウイルス構築物(construction)であった。それらの最新型は既に0とは異なる感染効率を示し、及び免疫化mAb後に誘発された力価は全ての免疫化学法により検出可能であるにもかかわらず、これらは決して単独投与において使用されない。このポイントは、アデノウイルスベクター−ADV[11]、又はアデノ随伴ウイルスベクター−AAV[29]は、予定された免疫化の2週間後のELISA、INF−γELISPOT又はウェスタンブロットアッセイにより通常認識されるタンパク質を送達する比較的低い発現のみを引き起こすことである。任意の組換タンパク質又はタンパク質混合物による標準免疫化の2週間後に抗体力価によりADV及びAAVに関するこれらのデータを比較する場合、ADV及びAAVワクチン接種に関して絶対数は5〜10倍より低いことは明らかになり始める。これらの数に注目し、本研究者らは、可能性のある免疫応答の期間についていくつか結論づけることができる。
【0019】
第III相臨床試験に到達し、かつ2003年10月以降タイにおいて16000名の未感染個体に適用されたただ一つのワクチン組成物は、2種のポックスウイルス(ワクシニアウイルス)−HIVワクチン接種(ALVAC−HIV)後の、プラスミドDNA−gag−pol−envワクチン(AIDSVAX B/E)による並べられたワクチン接種を基にしていた[12]。この特許のデータの検証は、ワクチン接種されたアカゲザルの血液試料由来の誘発された抗体の力価は、各免疫化後1〜3週間増加し、かつワクチン接種の残り1年間は、対照数からプラスのプロットへやや外れていくことを示している[12]。免疫応答の継続は、この場合これをいかにして評価するかという問題である。アデノウイルス及びポックスウイルスは、中でも最大のウイルスファミリーであり、これらは表面上及びウイルスマトリックス内にそれら自身のタンパク質を数百個露出していることも忘れてはならない。これは、投与後短期間(1〜2週間)でブーストされた免疫応答は、高度であるが、ほとんど非特異的であり、かつ加えて非特異性は、副作用として免疫毒性反応を引き起こすということを意味している。
【0020】
ウイルスワクチンの有効性における唯一の例外は、レトロ−(レンチ−)ウイルスベクター−ベースのアプローチである[26]。HIVはそれ自身、レンチウイルスファミリーの良い例である。レトロウイルスベクターは、十分に高い(最大5%)インビボ感染効率を提供し、送達された遺伝子タンパク質の発現は、細胞ゲノムの感染のために安定していない場合にも十分でありかつ長い。レトロウイルスベクターは、癌治療用ワクチンとして、臨床試験において、あらゆる他の遺伝子構築物よりも、著しくより良い抗腫瘍反応を示した。HIVを含む全てのレトロウイルスのみが、それらの治療的適用であっても疑わしく、予防的ワクチン接種は注目に値しないものにするある性質を有し−これは、移動性遺伝エレメントとしてヒトゲノムへ侵入するそれらの能力、並びにある期間後そのカスケードが制御できなくなり始める複数の遺伝的変異を駆動し、種々の細胞及び組織において複数の癌悪性転換を引き起こす能力である。
【0021】
DNA−ベースのHIVワクチンの一般的欠点は、PCR及びモノクローニング後の標準DNA配列決定などの、組換HIVペプチド組成物に関して先に説明された方法と同じ方法で得られた当初のヌクレオチド配列に関するものである。105〜106変種と等しい患者1名の血流中のHIV遺伝的変異の平均数を理解することは真実に近い。ランダム様式のこの方法で得られた一つ又はいくつかの配列データで作製された遺伝的構築体は、同じ患者に関してであってもHIV変異株の大半が基本的には働くことができない。並びに全てのプラスミドDNA及び任意のウイルスベクター−ベースのDNAのHIVワクチンは、単独のenv、pol、gag及びそれらの組合せ領域に関するHIVゲノムの配列をベースにしている。これらの構築物がモノクローナルヌクレオチドHIVゲノム領域の配列からなるようになるまで、HIVワクチン開発は袋小路にある。HIV遺伝的変動性及び変異性を根絶するために、その現存する変異の定量分析を継続し、かつより頻繁に存在する変異株に関する見込みのあるワクチンを製剤することは必要である。
【0022】
先に説明されたように、DNA−ベースのHIVワクチンの有効性に関する他の主な制限は、ウイルス及び非−ウイルスの遺伝子治療用ベクターのインビボ送達に関する不完全な公知の方法に起因した貧弱な免疫応答である。あらゆる種類の抗−感染症免疫化を提供するDNA−ベースのワクチン型の見込みが低いことを理解するための科学者の正確な比較は、以下である。任意のタンパク質又は抗原、及び原核生物大腸菌システムにおいて作出されたそれらの組換連結されたIgG軽鎖−重鎖変形に関する仮定のモノクローナル抗体(mAb)を想定して欲しい。ここで本発明者らは、ELISA、ELISPOT、イムノドットブロット、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡などの、全ての可能な実験室免疫反応アッセイにより、抗原がこれらの2種のmAb型へ結合するための親和性の比較を行うことを試みる。本発明者らが、これらの型がひとつのアッセイに収められた各状況において認めるものは、以下である−組換mAbの親和性は、常に天然の動物モノクローナル抗体の親和性よりも少なくとも10倍低く、更には力価決定時の最小結合活性の差異は、100〜200倍に達し得る。ワクチン免疫原性のインビボ評価に関する同じ状況は、研究者が、動物免疫化に使用されるDNA−ベース組成物及びタンパク質−ベース組成物の活性を分析する場合に、認められる。免疫化された動物の血中の現在の抗原に関するmAbの力価として測定された特異的免疫応答の有効性は、遺伝子ベクターとして送達される抗原の方が、当初のタンパク質−抗原よりも、数倍より低いであろう。DNA変種に関する特異的抗原免疫応答の強度は、その「陽性対照」−タンパク質変種よりも常に5〜20倍より低い。
【0023】
可能性のあるHIVワクチン候補として説明されている、更にひとつの小さい組成物の範疇が存在し−これは樹状細胞ワクチンとも称される。それらの開発は、幹細胞科学を基本にし、かつ樹状細胞ワクチンは、かなり経費が高い(平均患者1名の治療に45000〜60000米ドル)にもかかわらず、適度に十分な治療結果を伴う化学療法又は放射線治療と組合せて、数種類の腫瘍の治療に適用される。しかしいくつかのある種の病理又は微生物を識別しかつ殺傷することがインサイチュにおいて示された樹状細胞−マクロファージ前駆体は、同じ患者の血流に自家的にのみ適用されることができるので、HIV治療、更には感染症予防に関するそれらの効能はかなり疑わしい。マクロファージの「教え(teaching)」に関するウイルスのペプチドを得る場所に関する疑問は、同じであり、組換体は、数年配列が固定され、かつ未変性のものは、単離するために実在しないような高濃度で提供されなければならない。従って樹状細胞適用は、重大な抗−HIVワクチンの候補としては提唱することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
HIV−1大流行の制御の唯一の可能性のある方法は、非−感染個体、特に高リスク群の代表者の免疫化を通じて、HIV−1感染を防止及び/又はその発症を停止することができる、ある種のワクチンである。そのようなワクチンは、個別の天然のHIV−1ペプチドのエピトープの混合物、正確にはウイルス表面上外側にのみ存在する主要なHIV−1エンベロープタンパク質gp120、その断片のエピトープ、及び同じく好適な外側部分を伴うenv gp120−gp41四量体の原料としてのgp41ペプチド及び/又はワクチン接種される個体の免疫系を認識可能なエピトープを含有しなければならない。これらのペプチドは、先に言及された理由(3〜4頁13〜30、1〜20行)のために、ウイルス由来の未変性のものであることはできない。並びに組換ペプチドに関して、正確な配列情報が誘導されなければならない。本発明者らは、以下を基にしたenv配列研究を含む、本特許出願において詳細に特定されたHIVワクチン開発の代替法を開発した。
1)未変性ウイルスペプチドのファージディスプレイリバースパンニング技術による収集及びアフィン(affine)精製;
2)HIV−感染した個体の現在のコホート中の多数の変異株において表されたgp120及びその断片の配列に関する情報を送達する一群のLC−MS法を使用する、未変性ウイルスペプチドの引き続きの定量的かつ配列決定分析;
3)HIV及び真核生物のグリコシル化と同じ組換envペプチド産生のためにリーシュマニア属システムを使用する、天然envペプチドエピトープの再構築;
4)a)必要な免疫ブースト期間の延長、b)免疫毒性の制御:を提供する、免疫原性envペプチドのための立体的に安定したリポソームパッケージング又はビロソームのいずれかのアプローチを使用する、HIV予防ワクチン組成物。
【0025】
現在までに実行されたgp120のプロテオーム解析は稀であり、かつ他のウイルスペプチド及び細胞タンパク質のカクテルから精製された未変性のペプチド変種は存在しないので、不完全であった。十分な吸着能を持つカラムでのウイルスenvペプチドのアフィン吸着によるリバースパンニング技術は、この問題点を解決することができる。HIV感染に対する免疫化のためのワクチン組成物が製造される前に、HIV感染した個体の現在のコホートの大半において提示されているenvペプチドのアイソフォームを選択することが必要である。
【0026】
1名の患者について平均105の遺伝的変種という大きい変動性にもかかわらず、最も採用されかつより高い感染生存率を有する変種の選択が、各感染者において実行される。疫学的変動性のデータは、HIV変異株の蔓延は、縄張り的境界、存在する遺伝子配列に応じた性的−又は注射薬物乱用(IDU)−伝染の個人的接触依存性を有することを証明している。優性の(dominating)ウイルスペプチド変種の数は、遺伝的変種よりも決定的にはるかに小さいが、十分迅速に種々の数の優性に変更することができる。及び優性である感染的に危険な変種であるヌクレオチド配列は、情報を生じず、プロテオーム定量及び配列分析のみ行うことができる。本発明者らが試みたこの方法は、液体クロマトグラフィー、エレクトロスプレーイオン化質量分析である。
【0027】
未変性のgp120 HIVペプチドは、高い免疫原性を有するが、エピトープ同一性を失っていない組換変種について同レベルを維持するためには、同様のグリコシル化を持つ組換システムが必要である。この問題点を解決するためには、細胞培養物、酵母培養物及びリーシュマニア属システムを使用することが可能である。真核細胞培養生成は、大腸菌における1000と比べ平均数1000万(decades of million)であるような多数の自己細胞タンパク質のために、ごくわずかな量の組換ペプチドをもたらす。酵母培養物は、十分な生産を提供するが、酵母における糖合成(carbohydration)は、先に提唱されたように、真核生物及びHIVと非常に似ている訳ではない。従って本発明者らは、誘導性かつ高い発現で、真核生物に典型的なグリコシル化様式を伴うリーシュマニア属システムを選択した。リーシュマニア属において作製されたgp120組換変種は、高度かつ100%のHIV−特異的免疫応答を提供し、次の段階は、感染症発症の防止のためにこの反応を延長することであった。
【0028】
立体的に安定したリポソームを、ペプチドワクチン担体として使用することができる方法には、下記のふたつの可能性がある:ペプチドが、リポソームベシクルの水内容物中に封入されるか、又は活性化された遠位PEG末端に結合され、リポソームの表面上に提示されるかのいずれか。両方の場合において、envペプチドは、迅速なプロテアーゼ切断及び分解から保護され、その結果免疫ブースト期間は延長される。立体的に安定したリポソームは、無毒であり、かつそれら自身無害である。これらのベシクル(visicle)は、内部に数週間又は数ヶ月にわたり装荷された(enloaded)免疫原性ペプチドを保持することができ、かつ一度にではなくこの十分長い期間内にそれらの内容物を次第に放出する(lease)ことができる。このことは、1回のワクチン接種についてより多くのタンパク質量を使用することを可能にする。HCCに関する外来タンパク質とのより長い永久的接触が提供される場合に、より強力かつより長い免疫応答が形成される。予防的HIV感染症の伝染及び発症に関するワクチンの成功は、重要であろう。
【0029】
HIVワクチン候補の分析について留意する最後の点は、それらの有効性の前臨床評価のための適切なインビボモデルが存在しないことである。抗−レトロウイルス化学療法薬の開発を伴う更なる治療によるHIV感染症のモデル作製にチンパンジーを使用しようとする全ての試みは納得できかつ妥当であったが、チンパンジー又はアカゲザルにおいて抗−HIV免疫応答を評価することは、不可能である。類人猿及びサルにおいて誘発される免疫原性反応は、同じ抗原免疫化によりヒトにおいて生じる反応とはスペクトルにおいて極めて異なる。更に例えばチンパンジーは、あらゆるHIV亜型に感染し、ヒトにとって致命的であるウイルス負荷のレベルで、疾患発症症状のささいな徴候を伴わずに数年間幸せに生存することができ、更にはチンパンジー独自のシミアンウイルス感染症が生じる。そのため、抗−HIV免疫原性組成物の試験に関して、通常の実験マウスは、類人猿よりも劣ることはないが、統計学的に有意な数が入手でき、かつより頻繁な血液免疫検定ができる。臨床試験のみが、免疫防御作用が現在の新規HIVワクチンにより提供されるかどうかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1:CD−45モノクローナル抗体、共焦点顕微鏡法により行ったHIV感染したヒトのBリンパ球分析: a、b)HIV−特異的mAb RNA単離物の「良好な」給源; c、d)進行性疾患段階の進行(AIDS)を伴う患者からの比較的「不良な」給源; e)感染した患者の血液由来のT及びBリンパ球、透明度スキャニング。
【0031】
【図2A】図2:本発明の方法の好ましい実施態様に従うファージミドDNAライブラリーの獲得手法のスキーム。
【図2B】図2:本発明の方法の好ましい実施態様に従うファージミドDNAライブラリーの獲得手法のスキーム。
【図2C】図2:本発明の方法の好ましい実施態様に従うファージミドDNAライブラリーの獲得手法のスキーム。
【0032】
【図3】図3:本発明の好ましい実施態様に従うELISA技術による陽性抗体産生クローンの選択を示す略図。
【0033】
【図4】図4:組換ファージライブラリー形成及びパンニング選択。
【0034】
【図5】図5a−b:「ヘッド」上に提示された濃厚化されたHIV envペプチド−特異抗体ライブラリーを伴う、組換ヘルパーM13ファージの構造。走査型プローブ顕微鏡(SPM又はAFM)接触モードは、Nikon Eclipse 2000UをベースにしたNanoWizard(JPK Instruments社, 独国)を用い、スティングカンチレバーCSC17/noAl、共鳴振動数12kHz(MicroMash社, エストニア)で行った。ファージの長さは平均800nm、厚さは40〜50nmであり、HIV−特異的ScFvライブラリーの提示は、1個のファージ粒子につき2〜10抗体分子である;この「ヘッド」の測定されたサイズは、平均200〜250nmである。 a)組換M13ファージ、及び提示されたHIV−特異抗体ライブラリーを伴うその「ヘッド」、 b)対照M13Ko7ヘルパーファージ。
【0035】
【図6】図6a−b:リバースパンニング技術に使用された、アフィニティ超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化されたカラムの構造。走査型プローブ顕微鏡(SPM)接触モードは、スティングカンチレバーCSC17/noAlを伴うNanoWizard接触モードを用いて行った。 a)組換ファージ包埋以前の、超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化された吸着剤、 b)M13 mAb包埋後の、提示された組換ファージHIV−特異的ScFvライブラリーを伴う、超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化された吸着剤。
【0036】
【図7】図7a、b:HIV envペプチドを収集するためのリバースパンニング技術。 a)RPアフィニティカラムから溶離された画分のプロファイル(亜型Aプール単離物、PEG−沈降及びそれに続く20%ショ糖勾配中100000gでの超遠心を、濃縮に使用した)。ピークA及びBは、ポリクローナル抗−HIV抗体を使用するウェスタンブロットにより特異的envペプチドの存在についてチェックした。 b)RPアフィニティカラムから溶離された画分のプロファイル(亜型Aプール単離物、限外濾過を、上清の濃縮に使用した)。ピークは、ポリクローナル抗−HIV抗体を使用するウェスタンブロットによりチェックした。
【0037】
【図8】図8a−b:リバースパンニングカラムからのHIV亜型A envペプチドプールの溶離された画分のSDS−PAGE及びウェスタンブロット(ECL検出): a)1−ハイレンジマーカー;2−画分番号4;3−画分番号5;4−画分番号6;5−画分番号7;6−画分番号8;7−画分番号11;8−画分番号9;−全てのアッセイは、β−メルカプトエタノール(β−ME)と共に調製した。 b)1−画分番号1 β−MEあり;2−画分番号2 β−MEあり;3−HIV−PEG β−MEあり;4−HIV−沈降物 β−MEあり;5−HIV−上清 β−MEあり;6−ハイレンジマーカー;7−画分番号1 β−MEなし;8−画分番号2 β−MEなし;9−画分番号6 β−MEなし;10−HIV−PEG β−MEなし;11−HIV−沈降物 β−MEなし;12−HIV−上清 β−MEなし。
【0038】
【図9A】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。 a) #Al.RU.03.03RU20_06_13_AY500393 MKAKGMQRNYQHLWRWGXMLFWXIIM
【図9B】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9C】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9D】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9E】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。 b) B.RU.04.04RU128005_AY682547 MRARGIRKNYQGLLRWGTLLLGILMI
【図9F】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9G】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9H】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9I】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。 c) #B.RU.04.04RU129005_AY751406 MRAKGTRKNYQRLWRWGIMLLGMLMI
【図9J】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9K】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9L】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【0039】
【図10AB】図10a−d:HIV−1エンベロープペプチドの概略的3D構造 a)gp120コアの概略的3D構造[40, 41] b)gp120 CD4−CCR5結合エピトープの概略的3D構造[24]
【図10C】図10a−d:HIV−1エンベロープペプチドの概略的3D構造 c)CD4−結合ループ形成におけるgp120形質転換の概略的3D構造[22]
【図10D】図10a−d:HIV−1エンベロープペプチドの概略的3D構造 d)gp41エクトドメインの構造及び変動性[34]
【0040】
【図11A】図11a−b:下記をコードするHIV envペプチドDNA断片のPCR増幅: a)全gp120、gp120内側及び外部ドメイン、並びにV2、V3及びV4ループ b)全gp41及びgp41エクトドメイン。
【図11B】図11a−b:下記をコードするHIV envペプチドDNA断片のPCR増幅: a)全gp120、gp120内側及び外部ドメイン、並びにV2、V3及びV4ループ b)全gp41及びgp41エクトドメイン。
【0041】
【図12】図12:種々の発現システムにおけるHIV envペプチド及びそれらの断片の生成: a)誘導性発現のgp120内部ドメイン、gp41エクトドメイン、SD−PAGE b)永久発現のgp120、gp41、SDS−PAGE及びECLウェスタンブロット検出
【0042】
【図13】図13:他のタンパク質発現システムにおけるグリコシル化と比較した、リーシュマニア・タレントラエ(Leishmania tarentolae)細胞(LEXSY発現システム)におけるタンパク質のN−グリコシル化のスキーム。レター(letter)(Jena Bioscience社)において、哺乳類細胞及びリーシュマニア・タレントラエにおいて得られたグリコシル化パターンは、糖鎖末端のN−アセチルノイラミン酸の存在のみ異なる;
【0043】
【図14】図14:1kbスタッファー断片を置換する標的遺伝子のクローニング部位を持つ、pLEXSY_I−2ベクターファミリーのマップ。5’odc及び3’odcは、発現プラスミドのSwaIによる線状化後の、宿主染色体への相同組換領域である。L.タレントラエaprtの0.4k−IR由来のutr1、1.4k−IR camCB由来のutr2、及び1.7k−IR由来のutr3は、最適化された遺伝子−フランキング非翻訳領域であり、これは、LEXSY宿主T7−TRにおける標的遺伝子及びマーカー遺伝子の発現のための転写後mRNAプロセシングのためのスプライシングシグナルを提供する。SPは、L.メキシカナ(Leishmania mexicana)分泌された酸性ホスファターゼLMSAP1(7)のシグナルペプチドを、及びH6はヘキサヒスチジンストレッチを意味する。代わりのクローニング戦略は、標的タンパク質のサイトゾル型(c)又は分泌型(s)発現を生じる。サイトゾル型発現の5’挿入部位は、BglII、NcoI、又はSlaIであり、かつ分泌型発現については、SalI又はXbaIである。このスタッファー断片の3’末端で、NheI、MspCI、又はKpnIの制限部位は、C−末端His6ストレッチへの融合を生じるのに対し、NotIクローニング部位の利用は、このHis6ストレッチを無効にする。マーカーとして、ble(ブレオマイシン耐性)遺伝子及びneo(アミノグルコシドリン酸転移酵素)遺伝子が利用可能である(Jena Bioscience社);
【0044】
【図15】図15a−d:HIV env組換ペプチドのクロマトグラフィー精製の工程: a)6Hisp120id1大腸菌発現(SDS−PAGE 5〜20%)、 b)Ni−NTAカラム上の6Hisp120id1の精製、 c)Biosuite Q -PEEK 10um 4.6×50mmカラム(Waters社, 米国)上の6Hisp120id1の精製 d)Superose12 10/300 GL上のゲル濾過クロマトグラフィーによる6Hisp120id1の精製。精製前及び精製後。
【0045】
【図16】図16a−b:HIV env組換ペプチド免疫ブーストのためのリポソームアジュバントの種類: a)ベシクルの水相の内側に装荷された組換HIV envペプチドを伴う、立体的に安定したリポソーム150nm、PEG−400の概略図; b)PEG活性化された遠位端に結合された組換HIV envペプチドを伴う、立体的に安定化されたリポソーム200nm、PEG−2000の概略図。
【0046】
【図17】図17:SSLワクチン成分のガウス及びニコンプ(Nicomp)サイズ分布:ベシクルの平均直径は、155nmである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、本ワクチンによりチャレンジされた個体において誘発された特異化された免疫応答により、その保護活性を提供する、HIV、好ましくはHIV−1亜型A及びBの予防ワクチンを提供する。従って本活性物質は、以下に詳細に説明された複合技術により調製及び選択された組換ポリペプチド/ペプチド混合物である。基本的ワクチン成分は、ウイルスの表面タンパク質及びエンベロープタンパク質並びにそれらの断片により表され、これは好ましい実施態様に従い、グリコシル化の状態が異なるHIVエンベロープタンパク質gp120、gp140、gp160(図1)及びgp41、gp120のV1−V3ループの保存ドメイン、gp120 V1−V5ループの耐性−関連した可変部分に対する抗体、gp41のグリコシル化された変種;HIV−1エンベロープスパイク及びgp41タンパク質の外部部分によるCD4受容体の結合時に高次構造の変化を受ける近位V1/V2及びV3ループを伴う、ウイルスエンベロープタンパク質gp120、gp140、gp160へのCD4結合エピトープ;ウイルスエンベロープタンパク質のCXCR5及びCCR4共受容体結合部位;p24ウイルスペプチドの種々のエピトープ:を含んでなる。
【0048】
これらの組換ポリペプチド及びそれらの混合物は、種々のドナーB−リンパ球mRNAから作製された抗体の組換ファージディスプレイライブラリーを用い、収集され、同定され、かつクローニングされる。各々の作製されたファージ抗体ライブラリーは、組換gp120−、gp41及び未変性のHIV−ポリペプチドの種々のエピトープの結合に対し、好ましくは組換gp140−、gp160−及びp24 HIV−1亜型Aタンパク質上に存在するエピトープの結合に対しても、特異的である。
【0049】
これらの組換ファージ抗体ライブラリーは、検出、分析及び/又は精製の手段として種々の適用において使用されてよい[23]。前記抗体ライブラリーを使用する適用は、免疫検定、免疫ブロット、クロマトグラフィーなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体は、HIV治療及び/又は予防のための新規医薬品の開発に関しても有用である。
本発明の好ましい実施態様においては、M13KO7ファージ上に提示された組換抗体が、HIV予防ワクチンの開発に使用される。
【0050】
ファージミドライブラリーにより展示された抗体断片は、本質的に保存された高次構造のHIVタンパク質エピトープに結合するので、該抗体の標的は、HIV感染症に対するワクチンとして適格であり、チャレンジ時に、個体の免疫系は、これらのエピトープに対する特異的免疫応答を生じるだろうから、すなわち最終的に記憶細胞となる成熟したB細胞及びT細胞はその個体に免疫を伝達することを示す。
【0051】
本発明のHIVワクチンは、組換gp41及びp24 HIV−1亜型Aタンパク質、並びにそれらの断片(実施例3の表9)は本発明の方法により調製された抗体に結合する、gp120、gp140及びgp160の断片、加えて通常の担体及び賦形剤及び任意に免疫刺激剤を含有する。
【0052】
本ワクチンは、任意のHIVウイルス、更には変異したHIVウイルス上に存在し得るエピトープに特異的な、記憶細胞による個体の免疫系を提供することにより、HIV感染症の獲得を防止し、かつ更なる進行も防止するであろう。
【0053】
前記組換タンパク質及び/又は断片は、本発明の方法により得られたHIV−特異抗体により選択された未変性のHIV−1エンベロープタンパク質の結合及び分析により獲得された配列情報を基にしている。
詳細には、エンベロープタンパク質などのタンパク質は、超遠心分離及びウイルス粒子の溶解などの好適な方法により破壊されたウイルス粒子から得られる。
【0054】
好適なタンパク質の選択は、当業者に公知の任意の好適なスクリーニング法により実行されてよい。好ましい実施態様において、この選択は、(i)ウイルスのエンベロープタンパク質の収集のための提示された抗体による組換ファージを使用するファージパンニング、及び/又は(ii)培養のためにプラスチック表面に接着されたHIV−特異抗体のアフィン吸着、及び/又は(iii)カラムに包埋されたHIV−特異抗体による、ウイルスエンベロープタンパク質のアフィンクロマトグラフィー選択のいずれかにより実行されてよい。
【0055】
次工程において、入手されかつ選択された未変性のウイルスタンパク質の配列及び/又はアイソフォームの3D高次構造が、同定されてよい。従って手順は、HIV−1罹患個体の血流中、更にはNRTI、NNRTI及びHAARTの変形などの種々の投与計画で抗レトロウイルス療法を受け取った患者の血流中を循環するgp120、gp41及びp24などの、ウイルスタンパク質の高度に特異的な可変断片及び/又は定常断片の数種の変種の混合物を提供する。
【0056】
前記配列を基に、ウイルスタンパク質の組換ポリペプチド及び/又は断片が作出される。これらの配列は、それらに対する好適な免疫応答を誘導するために免疫系により認識され得るポリペプチドの作製に適した方法を使用することにより得ることができる。
【0057】
前記組換ポリペプチドは、例えばリーシュマニア誘導型発現システムのような真核生物発現システム及び真核生物−様グリコシル化を備える酵母などの、任意の好適な発現システムにおいて得ることができる。
【0058】
本発明のHIV−1 A及びB亜型予防ワクチンの種々の変種の調製のための例証的かつ一般的技術は、以下により詳細に例証されている、工程1−9を含む:
1.HIV−特異的ScFv抗体の断片を含む、ヒト組換IgGファージミドライブラリーの作製(ファージディスプレイ技術);
2.HIV−特異抗体のScFv断片を提示している組換ファージミドライブラリーの濃厚化(バイオパンニング);
3.任意に、PBMC−MT感染法によるインサイチュでの抗レトロウイルス療法ナイーブのウイルス材料の増殖;
4.HIV粒子及びペプチドの濃縮;ウイルス不活化及び破壊;
5.リバースパンニング技術によりファージミドライブラリーを提示しているHIV−特異的組換ScFvによる未変性のHIV envペプチドの収集;並びに
6.任意に、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)法による、envペプチド変動性及び頻度の定量分析及び配列分析;
7.任意に、主要HIV envペプチドのクローニング、及びリーシュマニア・タレントラエにおけるワクチン開発のための組換ペプチドの作製;
8.任意に、組換HIV envペプチドのクロマトグラフィー精製及び3D構造解析;並びに
9.好ましくはワクチン送達のビヒクルとして立体的に安定したリポソーム又はビロソームを使用する、HIV予防ワクチン免疫ブースト組成物の調製。
【0059】
1. HIV−特異的ScFv抗体の断片を含む、ヒト組換IgGファージミドライブラリーの作製(ファージディスプレイ技術);
ここで本発明の方法において、ファージミドライブラリーが、以下を含む段階i)からiii)に従い、工程1)において作製される:
i)各々、HIVに感染した多数の個体から得られたBリンパ球において発現されたIgGの、軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするRNA由来のDNA断片の増幅が、調製される段階;
ii)IgG重鎖の可変領域をコードする核酸に会合されているIgG軽鎖の可変領域をコードする核酸を含むひとつの構築体への、段階i)で得られた軽鎖及び重鎖の二つのDNA断片の集成;
iii)pCANTABファージミドベクターへの形質転換。
【0060】
詳細には、最初に、HIVにより感染していることがわかっており、かつその中にHIV特異抗体が存在することが予想される多くの個体から、B及び/又はTリンパ球が単離される。抵抗性HIV変異株を持つ個体も含まれてよい。これらのB細胞の単離は、任意の公知の技術、例えばロイコフェレーシス、引き続きのリンパ球集団からのB/T細胞の単離[19]などにより実行されてよい。引き続きRNAが、B/Tリンパ球から、例えば論文[23]に例証されたような当該技術分野において周知の技術により、単離される。
【0061】
ScFvライブラリー作製のために、HIV−特異的免疫グロブリンの配列を含むmRNAが単離されることが好ましい。これに関して、Bリンパ球の数は、RNA単離前のHIV−感染者の血液中の、例えば共焦点顕微鏡分析によるCD45 mAb免疫検定により、評価される。図1に示されたデータは、AIDS疾患及び症状の進行した段階の患者の一部は、総単離されたリンパ球に対するBリンパ球の非常に低い比率を有し(図1c、d)、かつ通常低いCD45免疫染色は、高いウイルス負荷及び非常に低いCD4:CD8状態に相関していることを示している。他のもの(図1a、b)とは異なり、これらの患者は、HIV−特異的ファージミドライブラリー作製のコホートに関してかなり不良な供給源である。先行する抗レトロウイルス治療に沿った又はその過程の高いウイルス負荷並びにそれらの頻度は、HIV−特異的ScFvライブラリーを得る機会を制限するものではない。
【0062】
そのように得られた総RNAは、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の定常領域に特異的な、例えばオリゴdTを使用するか、又は好ましい実施態様による、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの使用により、cDNAに転写される。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の異なる定常領域の配列は、当該技術分野において周知であり、その結果cDNAへの転写に好適なプライマーは、容易にデザインすることができる。従って手順は、関心のない材料はその第一工程において排除されるので、RNAプール(複数)中の免疫グロブリン転写産物の最初の選択、及び種々のドナーからの種々のRNA−試料のより容易な取り扱いを可能にする。同じくmRNAをcDNAへ転写する前の種々のドナーからのRNA−プールの組合せも構想され、かつこれはより大きい多様性が得られる(下記参照)ので好ましい。こうして調製されたcDNAの相補体は、当該技術分野において周知の技術により合成される。
【0063】
十分量のDNA断片を調製するために、関心対象の領域は、B/Tリンパ球から得られたmRNA、cDNA又は鋳型としてのcDNAから調製された二本鎖DNAを直接用いて増幅することができる。
【0064】
前記PCR反応に関して、増幅される核酸配列の5’末端及び3’末端にアニーリングする好適なプライマーが使用され、これらは一般に、長さ約10〜40、好ましくは15〜30、より好ましくは20〜30ヌクレオチドである、オリゴヌクレオチドである。
【0065】
リバースプライマーとして、その配列が、免疫グロブリンの定常領域に由来したオリゴヌクレオチドが使用されてよい。好ましくは該リバースオリゴヌクレオチドプライマーは、対応する重鎖のCH1領域に、又はλ型及びκ型軽鎖のCλ又はCκ領域にハイブリダイズする。使用されるフォワードプライマーは、重鎖及び軽鎖の可変領域の反対末端にハイブリダイズする。
【0066】
好ましい実施態様において、一次PCR増幅のためのフォワードプライマー及びリバースプライマーは、V BASEデータ-ベース(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk)から選ばれた、表1から3に示された核酸配列からなる群から選択される。このPCR反応は概して、長さ約750の断片を生じる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
次工程において、段階i)において得られた軽鎖及び重鎖の二つのDNA−断片の、IgG重鎖の可変領域をコードする核酸に会合されているIgG軽鎖の可変領域をコードする核酸を含むひとつの構築体への連結は、各々、IgG軽鎖及び重鎖の可変領域ScFvを含むポリペプチドの発現を可能にする。
【0071】
好ましい実施態様により、可変軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片間の特異的連結を得るために、段階i)において得られた試料の量は、例えば二つのパーツにアリコートとされ、かつ任意に希釈される。次に、mRNAからの増幅によるcDNA、cDNA又はcDNA由来の二本鎖DNAのいずれかにより調製された該DNA断片は、軽鎖又は重鎖に特異的なリンカーと個別に接触されてよく、その結果このリンカーは、各試料パーツ中のみのそれぞれのDNA断片に結合する。すなわち一方のパーツは、軽鎖のみに関するリンカーを有するのに対し、他方のパーツは、重鎖のみに関するリンカーを有するということである。使用されるリンカーは、互いに好適な条件下でのハイブリダイゼーションを可能にし、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含むDNA断片を生じるであろう。再度、これら二つのDNA断片の会合は、これら二つのDNA断片の連結がインフレームで実行され、その結果は軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を持つポリペプチドを生じるであろう。同じ事が、望ましいならば、二つの重鎖及び二つの軽鎖を特異的に得るために実行することができる。表4及び5において、好ましいプライマーが列記されている。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5A】
【表5B】
【0074】
本発明のより好ましい実施態様において、((Gly)4Ser)3ポリペプチドリンカーをコードするリンカー断片が、免疫グロブリンの可変性の重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列に追加される。この重鎖及び軽鎖のリンカーパーツは、互いにアニーリングし、例えばTaqSE DNAポリメラーゼなどの、TaqSE DNAポリメラーゼの存在下でフィルイン反応を刺激する。最後に重鎖及び軽鎖は、それらのDNAリンカー断片パーツを使用し、単独の遺伝子に集成される。
【0075】
従って手順は、免疫グロブリン軽鎖又は重鎖の可変領域をコードする核酸の、各々、当初得られたRNAプール中に存在しない抗原結合部位を形成するために軽鎖及び重鎖の組合せも含む、別の免疫グロブリン軽鎖又は重鎖の可変領域をコードする核酸との無作為連結により、人工的に作製された非常に多くの抗体を得ることを可能にする。示されるように、免疫グロブリンの可変領域上の既に天然に予め形成された抗原結合部位のパーツを使用し、かつそれらを無作為に組合せて、HIVに感染した個体において天然に産生される抗体と比べ、HIVタンパク質に対し増強されかつ一定の結合親和性を示す抗体も作製される。
【0076】
加えて制限部位が、こうして得られたDNA−断片に導入され、これは、例えばクローニング工程などの、後続の適用において有用である。原則として、任意の好適な制限部位が、必要に応じて使用されるが、当業者の知識内でこれはCHO−K1oseの好適なものである。制限部位は、例えば制限部位の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーの使用、又は各々、5’末端及び/若しくは3’末端に組合せられた制限部位の核酸配列を含むアダプター分子の使用などの、当該技術分野において公知のいずれか適当な方法により導入されてよい。
【0077】
本発明の好ましい実施態様において、SfiI及びNotI制限部位が、好ましい実施態様に従い軽鎖及び重鎖核酸配列を含む連結された核酸断片の末端に導入され、そこでこれらの制限部位は、クローニングベクターへの更なるクローニング工程に使用される。SfiI及びNotI制限部位は、各々、該連結された断片(ScFv遺伝子)の5’末端及び3’末端に付加される。これらの特定の制限部位は、抗体遺伝子において非常に低い頻度で生じ、例えば軽鎖及び重鎖核酸配列を含む、得られた連結断片のほとんどが、単独のSfiI/NotI断片としてクローニングされることを可能にする。本発明のより好ましい実施態様において、SfiI及びNotI制限部位は、オリゴヌクレオチドプライマーを介して導入される。好ましい使用されるSfiI−部位−及びNotI−部位−含有するオリゴヌクレオチドプライマーは、論文[21]のプライマー配列を基にデザインされる。軽鎖及び重鎖核酸配列を含む得られた連結断片の末端でのSfiI及びNotI制限部位の導入に有用なプライマーは、表6に示されている。
【0078】
【表6A】
【表6B】
【0079】
軽鎖及び重鎖核酸配列を含む得られた連結断片のクローニング及び発現に関して、当業者に公知のいずれか好適なクローニング及び/又は発現ベクターが使用されてよい。好ましい実施態様において、例えば、pCANTAB 5E.coliファージミドベクターを含む、ファージミドベクターが使用される。
【0080】
ファージミドpCANTAB 5Eは、M13及びCo1E1プラスミドの両複製起点を含み、その結果好都合なことにプラスミドとして増幅されるか、あるいはM13KO7などのヘルパーファージの助けにより、組換M13ファージとしてパッケージされることができる。SfiI及びNotI消化された抗体可変領域遺伝子は、pCANTAB 5Eファージミドベクター内のリーダー配列とM13遺伝子3の本体(main body)の間でクローニングされる。得られる融合タンパク質は、両方の親タンパク質の機能を保持している。g3pリーダー配列は、本タンパク質の大腸菌の内膜/ペリプラスムへの輸送を指示し、そこで主g3pドメインは、該融合タンパク質を該集成ファージの先端へ結合する。pCANTAB 5Eは、クローニングされたScFvとg3pの配列の間の接合部に、アンバー翻訳停止コドンも含む。得られるscFv断片を含むpCANTAB 5Eプラスミド誘導体のプールは、TG1などの、大腸菌supE株の形質転換に使用される。supEにおいて、大腸菌株翻訳は、pCANTAB 5E内のアンバー停止コドンまで続き、そのファージ先端に展示されたScFv−g3p融合タンパク質を作製する。
【0081】
【表7】
NotI制限エンドヌクレアーゼの認識部位は、青色で記し、SfiI制限エンドヌクレアーゼの認識部位は、緑色で記している。
【0082】
HB2151などの非サプレッサー株において、停止コドンが認識され、タンパク質合成は、scFv遺伝子の末端で中断され、かつg3p融合タンパク質は合成されない。この場合、得られるScFvタンパク質は、細胞周辺腔に輸送されるが、これは該遺伝子3ドメインを欠いているので、ファージ粒子には集成されない。むしろ可溶型抗体断片が、ペリプラスム中に蓄積し、かつ延長されたインキュベーション時に、培地に漏出する。従って、HB2151及び類似の大腸菌株は、選択された抗原陽性ファージによる、それらの感染後の可溶型抗体の産生に使用され、かつ現在の適用においては使用することができない。scFvライブラリー作製の工程は、実施例1に示されている。
【0083】
2. HIV−特異抗体のScFv断片を提示している組換ファージミドライブラリーの濃厚化(バイオパンニング);
抗体の発現は、抗原に結合することが可能であるポリペプチドを得るのに適した宿主において得ることができ、及びこうして得られたポリペプチドは、異なるドナーから単離された組換gp120−、gp41−及び未変性のHIV−ポリペプチドと共に得られた。これにより、発現されたポリペプチドが宿主の表面上に発現される場合に、これは有利ではあるが、必須ではない。抗体の発現に適した宿主は、ウイルスシステム、原核細胞及び真核細胞及び/又は細胞培養物を含む。
【0084】
好ましい実施態様において、該抗体の断片は、ファージディスプレイライブラリーを作製するバクテリオファージM13において発現され、これはファージディスプレイ技術の使用のために異なるファージにより各々提示される非常に多数の異なる構築体の展示を可能にする。このファージディスプレイアプローチは、免疫グロブリン遺伝子のクローニング並びに機能性抗体の発現及び検出のための強力なツールである。抗体の可変性の重鎖及び軽鎖断片を、モノクローナル抗体選択の段階を伴わずに、HIV−特異抗体のプール又はライブラリーとしてファージ表面上に展示された融合タンパク質として、得ることができる。このアプローチは、任意の抗原に対する抗体を迅速に見つけ、かつ必要な場合には、他の発現システムにおけるグリコシル化を伴う及び/又は伴わずに、それらの可溶型変種を作製することを可能にする。
【0085】
ファージミドライブラリーパンニングは、多数のクローンの非常に迅速なスクリーニングを可能にするインビトロ技術であり、ここで選択されたHIVポリペプチドへの結合親和性を示しているそれらの表面に抗体を提示しているファージは、組換ファージミドの維持及び更なるスクリーニング工程のための新規ファージの作製のために同定されかつ使用することができる。ファージ−提示している抗体ライブラリーは、抗原−陽性クローンを同定するために、当該技術分野におけるSDS−PAGE、ウェスタンブロット及びELISAスクリーニングのクロスサイクルにより、結合親和性に関して分析することができる。
【0086】
展示されたScFv抗体断片は、それらの抗原−結合能を保持しているので、従って、親和性選択により、特異抗体を発現している組換ファージを濃厚化することは可能である。このアプローチにより、規定された特異性及び親和性の抗体は、集団から迅速に選択される。得られた抗体遺伝子ライブラリーは、抗原結合能を改善するように、スクリーニングされる。この技術の工程は、パンニングと称され、HIV−特異的ScFv断片を提示しているファージが、引き続き:
i)組換gp120−、gp140−、gp160−、gp41 HIV−1亜型A及びB envペプチド、
ii)種々のHIV−感染ドナーから単離された未変性のHIV envポリペプチド:
に結合し、かつ収集されることを含む。好ましい実施態様において、先に列記された全てのポリペプチドに結合親和性を示すファージライブラリーが選択されるので、展示された抗体の数は、107〜1012から102〜103へと減少する。該ポリペプチドの特異的組換HIVポリペプチドとの独立した接触サイクルのために、ここでこれらのポリペプチドの配列は、(i)公知であり、かつ(ii)一定であり、並びに異なるドナーから単離された未変性のHIV−ポリペプチドにより、ここでこれらのポリペプチドにおいて変異が生じ、抗体を選択することが可能であり、これは本質的に公知のHIV変異体全てに結合し、このことは本抗体は、本質的に該HIVポリペプチド上の一定の高次構造を認識することができることを指摘している。
【0087】
従って手順は、ファージの表面上に提示されたHIV−特異的組換抗体ライブラリーを誘導し、かつ感染した個体からのものの巨大なプールから選択されることを可能にし、これらは、二つの異なる方法:
i)標準バイオパンニング手法[4]
ii)固形状態の固定された未変性のHIVペプチドのニトロセルロースメンブレンでの包埋:により、例えこれらのポリペプチドにおいて変異が生じても、選択されたHIVポリペプチドへの結合親和性を示す。
【0088】
第一の方法に従い、i)組換ファージ作製のために、M13KO7ヘルパーファージ4×1010pfuを添加し、1時間のプレインキュベーション、並びに100μg/mlアンピシリン及び50μg/mlカナマイシンの存在下、37℃で、250rpmで攪拌しながら12時間のインキュベーションの間に、対数期形質転換されたTG1大腸菌培養物が調製された(典型的ファージは、1010〜1011アンピシリン−導入単位/mlを生じた)。ファージは、他のプラスチック表面には、非特異的に吸着するので、ポリプロピレンチューブが推奨される。
【0089】
その後PEG沈降を行う。細菌培養物を、1000gで10分間遠心し、上清を収集し、冷却する。上清に、1/5v/v冷溶液、20%PEG/2.5M NaClを添加し、0℃で60分間インキュベーションし、その後Beckman JA-20ローターにおいて10000gで、4℃で20分間遠心する。上清は廃棄する。ペレット(これは容易に視認できないことがある)を、0.01%チメロサールを含む2×YT培地16ml中に再懸濁する。本発明者らは、上清が貯蔵される(4℃で)場合には、これを0.45μmフィルターを通らせ濾過することを推奨した。この組換ファージを含有する溶液は、パンニングに使用する。
【0090】
PEG沈降及びファージパンニングのサイクルは、一部のファージディスプレイ組換抗体調製品は不安定であるので、レスキュー後できる限り直ぐに実行されなければならない。最小培地プレートから対数期TG1細胞コロニーを、2×YT培地5mlに移し、250rpmで振盪しながら、37℃で一晩インキュベーションする。次に新鮮な2×YT培地10mlに、この一晩培養物100μlを接種し、かつ250rpmで振盪しながら、37℃で、この培養物のA600が0.3に到達するまで、インキュベーションする。
【0091】
25cm2組織培養フラスコを、例えばPBS又は0.05M Na2CO3(pH9.6)などの、好適な緩衝液中に10μg/mlに希釈された抗原5mlでコーティングする。抗原によるコーティングは、室温で1〜2時間、又は4℃で一晩行うことができる。プレートのコーティングの条件、すなわち緩衝液並びにインキュベーションの温度及び時間は、抗原によって決まり、かつ該新規組換体が由来した当初のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のために使用される免疫検定の条件に類似していなければならない。抗原のコーティング濃度は、所望の組換ファージ抗体の親和性(抗原−結合能)に応じて変動することができる。高親和性抗体について、低親和性抗体よりも、より少ない量の抗原が必要である。しかし特異的親和性を伴う抗体の単離のためには、溶液−ベースの選択のほうが、選択に使用される抗原の量を、より正確に制御することができるので、固相選択よりも好ましい。
【0092】
このフラスコを、PBSで3回洗浄し、各洗浄後にはこれを完全に空にする。次にこのフラスコを、フラスコ表面上のあらゆる残存する部位をブロックするために、ブロッキング緩衝液で完全に満たし、室温で1時間インキュベーションする。このフラスコを、PBSで再度3回洗浄し、各洗浄後にはこれを完全に空にする。
【0093】
保存剤として0.01%チメロサール又は0.01%アジ化ナトリウムを含有するブロッキング緩衝液を、新たに調製する。PEG−沈降された組換ファージ16mlを、ブロッキング緩衝液(保存剤を含有する)14mlで希釈し、かつ室温で10〜15分間インキュベーションする。パンニング工程時に、非−特異的疎水性タンパク質−タンパク質相互作用が、未変性M13ファージタンパク質と一部の抗原の間で生じることがある。この相互作用は、Triton X−100が希釈されたファージ上清に最終濃度0.1%で添加された場合に、低下することができる。あるいは、グリシン又はトリプシン溶液による特異的結合ファージの溶離を行うことができる。希釈された組換ファージ20mlをフラスコに注ぎ、かつ37℃で2時間インキュベーションする。次にこのフラスコを空にし、PBS 30〜50mlで20回、及び0.1%Tween 20含有するPBSで20回洗浄する(洗浄瓶は、洗浄液の分注にうまく働く)。各回、フラスコは完全に空にする。
【0094】
対数期のTG1細胞全量10ml(工程1参照)を、フラスコ又はパンニング容器に加え、37℃で1時間インキュベーションする。1時間後、10mlの細胞懸濁液の100μlを取り出す。それらから、2×YT培地中に、細胞懸濁液の10倍希釈液を調製する(1:10、1:100、1:1000)。未希釈細胞100μl及び各希釈物100μlを、個別のSOBAGプレート上に、滅菌したガラス製スプレッダーを使用し、配置する。乾燥した場合、これらのプレートは倒置し、30℃で一晩インキュベーションする。これらのコロニーがインキュベーション後に採取するには余りにも小さい場合は、このプレートを、30℃で更に4〜8時間放置することができる。これらのSOBAGプレートは、以下のように操作することができる:a)細胞をプレートからこすりとり、ストック培養物を作製する。このプレートを、2×YT培地5mlに浸し、滅菌したガラス製スプレッダーで細胞を培地へこすりとる。グリセロールを最終濃度15〜30%となるよう添加し、−70℃で貯蔵する。b)このプレートを密封し、後日レスキューするために、4℃で最高2週間貯蔵する。
【0095】
[25]ii)から改変された第二の方法に従い、未変性のHIVペプチドの混合物を、10%SDS−PAGEゲル上を泳動させ、引き続きウェスタン転写緩衝液(25mMトリス、193mMグリシン、及び20%メタノール)中で、ニトロセルロースメンブレン上に電気的に転写する。この抗原の位置は、メンブレンをポンソーレッド又はクマシーブリリアントブルーのいずれかで染色することにより決定される。タンパク質バンドを含むメンブレンの7×30mm2切片を切り出し、10%ブタゼラチン、5×1011 CFU/mlヘルパーファージと共に、4℃で一晩インキュベーションすることによりブロックする。ブロック後、このメンブレンを、結合緩衝液(5%ゼラチン、3×1011 CFU/mlヘルパーファージ、0.5M NaCl)に移し、scFvファージミド抗体ライブラリー1012 CFUを添加する。ファージライブラリーは、メンブレンと共に、4℃で4時間、穏やかに揺動しながらインキュベーションする。このメンブレンを、PBS、0.1%Tween 20で6回(各洗浄につき容量100ml)、及びPBSで6回(各洗浄につき容量100ml)洗浄する。あるいは、これらのスポットを、0.1%Tween 20を含有するPBS(PBST)で5分間かけて3回、25%グリセロール含有する10%MPBSで20分間かけて5回、及び最後にPBSで5分間かけて3回洗浄する。タンパク質バンドを含むメンブレンを、レーザーブレードで切り出し、ファージを、100mM TEAにより、室温で10分間かけて溶離する。中和後、溶離されたファージ粒子を、ゼラチン−ブロットされたメンブレン又はゼラチン−コーティングされたイムノチューブと共に、室温で30分間インキュベーションする。その後上清を、TG1を感染するために使用する。ファージは、先に説明されたように、次の選択ラウンドのために大腸菌から調製される。
【0096】
3. PBMC−MT法による抗レトロウイルス療法ナイーブ患者のウイルス材料単離体の増殖;
HIVは、CD4−CCR5−CXCR4受容体が濃厚化された細胞培養物においてうまく増殖することができることは公知であるが、実際にはこの方法には多くの制約がある。第一に、患者由来の未変性ウイルス材料又はインビトロ感染症の実験室株の感染力価は、種々の方法(リアルタイムRT PCR、p24 ELISAなど)で測定された総ウイルス濃度の1〜2%より多くなることはない。このことは、例えば、感染材料中のウイルスコピーの数が105である場合、研究者がインビトロ増殖から分析することができる最初のコピー数は、わずかに103であり、残りの102の当初のHIVの可能性のある異形は、分析から外れるということを意味する。第二に、インビトロ感染選択を通過したHIV変異株の数は、最良の場合において、当初の103個からの数個の配列変種であり、従って実験室ウイルス株は、HIV遺伝子及びペプチドの変動性の実際の状況を決して表していない。第三に、HAART又は他の抗レトロウイルス療法で治療した患者由来のHIV は、インビトロで増殖する能力を失っており、従って抵抗性HIV変異株は、インビトロにおいて培養することができない。第二に、本発明者らの未変性ウイルス培養実験は、下記の場合に、最良の結果が得られることを証明している:
i)HIV−感染患者のリンパ球を、説明されたように[19]、フィコール−プラーク溶液を使用する、ヘパリン処理した新鮮な血液由来の健常ドナーのリンパ球と共にインキュベーションする。ロシア連邦領土に広がったHIV−1亜型Aに関して、HIV−感染したリンパ球が、説明されたような[19]健常ドナーの新鮮血液から単離された単球と共にインキュベーションされる場合に、ほとんどの場合において、感染はうまくいくことは、留意する価値がある。
ii)濃度0.25×106/mlで調製されたHIVとのインキュベーションのために使用されるMT−2又はMT−4又は任意の他の株化細胞(CCR5F−CEM、PM−I、HeLa、U937など)は、その後、RPMI−1640培地の総容量50mlまでの添加、及び425gで10分間の遠心により、2回収集されるHIV−繁殖された同数の単球と共培養する。細胞混合物は、IL−2 10μl/mlを添加したCL培地中に再懸濁し、25cm2組織培養フラスコ中で直立した位置で37℃でインキュベーションする。ウイルス−含有培地は、培養培地の半量を取り出し、これを同量の新鮮培地(RPMI+10%FCS)と交換することにより、3〜4日毎に収集する。
【0097】
ウイルス感染活性の有効性は、細胞死及びシンシチウム形成の顕微鏡分析並びに同じくp24 ELISA試験によって、制御される。収穫された培養培地は、3000rpm(1000g)で15分間の遠心により、細胞を透明化し、−80℃で貯蔵する。
【0098】
4. HIVペレットの濃縮(限外濾過、超遠心分離による)、ウイルス不活化及び破壊;
ウイルス粒子を約20重量%含有するストック溶液を、血漿又は培養上清から作製する。最初に、上清を、3000rpm(1000g)で15分間遠心し、次に得られた上清を、13200rpm(16000g)で次の15分間遠心する。20%ショ糖の試料総容積の約半量を、超遠心チューブの底に積層し(ショ糖溶液の密度は1.16−1.18g/sm3である)、その後レトロウイルス粒子を含有する上清を、このチューブの上方に注ぐ。チューブを、38000rpmで、MLS−50ローターOptima MAX, Beckmann(160000g)で、1時間35分遠心する[19]。ペレットを、少量の培養培地(例えばRPMI1640)に溶解する。
【0099】
HIVの不活化
HIVペレットの溶解及びHIVタンパク質の獲得
第一の方法を、論文[1]に説明されたように行う。HIV溶解緩衝液(放射線免疫沈降緩衝液)の組成は、20mMトリス−Cl、pH8.0、120mM NaCl、2mM EDTA、0.5%デオキシコール酸、0.5%NP−40、2μg PMSF、10μg/mlアポプロテイン、10μg/mlペプスタチンAを含有する。界面活性剤の添加後、磁気スターラーの上で低温加熱(50℃)しながら、穏やかに混合する。
【0100】
第二の方法は、質量分析及び結晶解析のためのペプチドの混合物の調製に関する標準である。得られたHIV−1タンパク質混合物のpHは、2N HClにより2.5に調節し、0.15%(wt/vol)ブタペプシン(Sigma Chemical社, セントルイス, MO)と共に37℃で4時間インキュベーションする。80℃で15分間加熱することにより、加水分解を停止し、その後pHを、2M NaOHの添加により、7.5〜8に調節する。その後加水分解したタンパク質混合物を、10kDa加水分解メンブレン及びペプシンにより限外濾過し、残りの加水分解されないタンパク質を除去する。濾過された加水分化されたタンパク質混合物は、凍結乾燥し、−80℃で貯蔵する。
【0101】
5.リバースパンニング技術によりファージミドライブラリーを提示しているHIV−特異的組換ScFvによる未変性のHIV−1 envペプチドの収集;
抗原ファージを提示したライブラリーを使用するワクチン開発のためにファージディスプレイ技術を使うアプローチは、論文[35]において曖昧に説明されている。組換ファージScFvライブラリーカラム包埋の手法を開始する前に、M13提示されたライブラリーを、改変されたウェスタンブロット法により特異性に関してチェックする。プローブを、勾配SDS−PAGEで泳動し、引き続きニトロセルロース上に電気的に転写する[25]。この抗原スポットを、1%Tween 20を含有するPBS中に1時間最初に浸し、ブロットされたタンパク質を再生する。これらのメンブレンを、PBS中の4%ゼラチン溶液により、37℃で2時間更にブロックし、ファージ1012 CFU/ml(4%ゼラチン溶液中1.5% BSAと室温で30分間プレインキュベーションする)と共に室温で1時間インキュベーションする。その後メンブレンを、PBS、0.1%Tween 20で3回、及びPBSで3回洗浄し、5%スキムミルク/PBS中のHRP−複合された抗−M13の1:8000希釈物と共に室温で1時間インキュベーションし、ファージ結合を検出する。PBS/0.1%Tween 20により3回及びPBSにより3回洗浄後、これらのバンドを、ECL検出(Amersham社)により可視化する。TPBS−ブロットによる過剰な洗浄後、これらのメンブレンを、ECL試薬中で1分間インキュベーションする。各メンブレンは引き続き、Hyperfilm−ECLと共にインキュベーションし、現像する。
【0102】
組換mAbは通常、その生物から単離された未変性の抗体と比べ、約10〜30%の親和性を示す。しかしウイルス変異株の各コホートに関する個体(患者)のパネルのファージディスプレイ技術から作製された、HIV−特異的mAb(ファージミドライブラリー)は、抗−HIV−1予防ワクチンの開発のための主要なHIV env及び他のペプチド及びタンパク質を選択するのに十分である(図7a、b、8a、b)。
【0103】
組換ファージ作製を提示しているファージミドライブラリーに関して、M13KO7ヘルパーファージがTG1大腸菌一晩培養物へ添加され、1時間プレインキュベーションされ、並びに100μg/mlアンピシリン及び50μg/mlカナマイシンの存在下、37℃で12時間インキュベーションされる(典型的ファージ収量は、1010〜1011アンピシリン−導入単位/ml)。この培養物を、1000gで10分間遠心し、上清を収集しかつ冷却する。その後PEG8000/NaCl(20%PEG/2.5M NaCl)溶液の1/5v/vを上清に添加し、氷中で1時間インキュベーションし、その後10000g、4℃で20分間遠心し、沈殿を形成する。このペレットを、LB又は10mMトリスHCl(pH8.0)に溶解し、0.45μmを通して濾過する。組換ファージは、0.01%チメロサールを添加する場合は、4℃で貯蔵することができる。
【0104】
i)不動化されたM13−特異的mAbによる超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ活性化されたクリオゲル(Protista Biotechnology社)クロマトグラフィーカラムでの包埋
M13−特異的mAbは、超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ-活性化されたクリオゲル(Protista Biotechnology社)に包埋する。このために、乾燥吸着剤を、0.5M 0.1M NaHCO3(pH8.3)を含有するNaCl緩衝液中に再懸濁する。M13−特異的mAbは、同じ緩衝液中に濃度10mg/mlとなるよう溶解し、該吸着剤へ添加し、室温で1時間機械的に攪拌しながらインキュベーションする。インキュベーション後、この吸着剤を、同じ0.1M NaHCO3(pH8.3)/0.5M NaCl緩衝液の5容量で洗浄する。非特異的反応基をブロックするために、この吸着剤を、0.1Mトリス−HCl緩衝液(pH8.0)又は1Mエタノールアミン(pH8.0)と共に、室温で2時間インキュベーションし、その後5mlクロマトグラフィーカラムに調節する。
【0105】
両方の方法に関して、gp120、gp140、gp160及びそれらの断片、gp41、p24に特異的な第一のファージM13粒子は、先に説明されたように得られた(段階4)加水分解されたHIV−1ペプチド混合物と共に、37℃で40分間インキュベーションする。その後ファージ粒子を、不動化されたM13ファージ-特異抗体の助けにより、いずれかで包埋する。
【0106】
包埋されたM13−特異的mAbを伴う調製された超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化されたクリオゲルカラムは、0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液で平衡とし、その後同じ緩衝液中の組換M13を、液体クロマトグラフィーシステムActaPrime Plus(GE Healthcare社)を用い、速度0.5ml/分で、5時間かけて調節する。その後このカラムを、同じ0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液の5容量で洗浄する。
【0107】
組換ファージの包埋は、走査型プローブ顕微鏡法(原子力顕微鏡)により検査する。うまく包埋されたファージHIV−特異的ScFvライブラリーを伴うクリオゲルは、図6bに示されており、対照の超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化されたクリオゲルカラム構造は、図6aに示されている。
【0108】
0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液中で加水分解されたHIV−1ペプチド混合物は、包埋されたアフィンカラムに、速度0.5ml/分で5時間かけて注がれる。その後このカラムを、同じ0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液の5容量で洗浄する。
【0109】
HIVペプチドに結合するファージは、0.1M グリシン(pH2.2)勾配により溶離される。得られた画分は、ファージ−抗原複合体が完全に再調節されるまで、0.001M PMSFの存在下、グリシン溶離緩衝液中、室温で5時間インキュベーションされる。
【0110】
このHIVペプチドは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Waters社)を用い、分析し[2]かつ精製する。分析用逆相HPLCを、Symmetry C18カラム(5μm、4.6mm×150mm、流量0.5ml/分)を装着したWaters 1525 HPLCシステム上で行う。分取用逆相HPLCを、Waters 1525 HPLCシステム上で、Symetry C−18カラム(10μm、5.0cm×25cm)及びWaters UV検出器を用いて行う。水/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリルの直線勾配を、結合したペプチドの溶離に使用する。
【0111】
6. 液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)法による、envペプチド変動性及び頻度の定量分析及び配列分析;
未変性のHIV−1ペプチドを、リバースパンニングHIV−特異的ファージライブラリー由来の試料の給源として収集する。envペプチドの定量的選択、質量分布及び特徴決定は、一次元液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS−MS分析)により行う。
【0112】
論文[10]に類似しているように見えるSDS−PAGEゲルからのタンパク質ストリップ、及びペプチド質量フィンガープリントとして同定されない2Dからの単独のスポットを、Esquire 6000プラス装置(Bruker Daltonics社, ブレーメン, 独国)を用いるエレクトロスプレーイオン化四重極質量分析装置によるトラップ法により分析する。これらの試料の捕捉は、低速クロマトグラフィーシステムUltimate LC Packing及び試料選択装置Famos LC Packing(Dionx社, CA, 米国)オンラインレジメンから提供される。このクロマトグラフィーパーツは、二つの縦列に(consequently)連結されたカラムで、それらの間に電磁バルブを備えるものからなる。第一のカラム(100μm×3sm)は、大きい細孔直径の、C8類似体の疎水性ポリマー相Poros R2を備え、これは試料の濃縮及び脱塩のために使用される。第二のカラム(75μm×25sm)は、粒度5μm、細孔直径300Å、C18類似体のPhenomex吸着剤を備え、これはトリプシン処理されたペプチドの脱塩された混合物の分離のために使用される。クロマトグラフィー分離の条件は、以下である:200μl/分で、スプリッター前の実際の排出(exaust)速度900nl/分、及び分離時200nl/分。5%から60%までの溶液B(75%アセトニトリル、25%イソプロパノール、0.1%ギ酸)の直線勾配で、48分間にわたるペプチド分離を行う。
【0113】
全ての測定は、300〜2500m/zの間で行われ、捕捉質量最適化は700と等しい。電荷数が2以上、かつ強度が閾値よりも高いイオンが、タンデム実験に使用される。得られた質量−プリントは、MASCOT検索システムへ送付される。この検索は、プロテオームデータ−ベースを介して試行され、結果は、ペプチドアイデンティフィケーションの確認のためのソフトウェア複合体Scaffold 01-07-00 (http://www.proteomesoftware.com)により検証される。95%を超えるアイデンティフィケーション予測値(identification expectancy)を持つペプチドは、最終スケジュールに入れる。全ての観測されたペプチド質量は、計算された平均質量と0.5Da以内で合致する。
【0114】
これらのチャートは、envタンパク質分子におけるポリペプチド配列の疎水性断片(Y軸正の指標)及び親水性断片(負の指標)の分布を表している(図3)。
onf:信頼性(0=低い、9=高い)
Pred:推定された二次構造(H=ヘリックス、E=鎖、C=コイル)
AA:標的配列
疎水性アミノ酸相対指数:
【0115】
【数1】
【0116】
【数2A】
【数2B】
【数2C】
【0117】
7. 主要HIV envペプチドのクローニング及びリーシュマニア・タレントラエにおけるワクチン開発のための組換ペプチドの作製;
HIV生活環は、ヒト、サル又は齧歯類において生じ、かつそのタンパク質のグリコシル化は、哺乳類代謝に近い。真核生物発現システムは、酵母システム、糸状菌を含むが、昆虫、哺乳類及び/又は植物からの細胞培養物も含む。gp120及びgp41は両方とも、それらの外部ドメインにおいて高度にグリコシル化される。発現された断片又はタンパク質のグリコシル化が望ましい場合、発現は、真核生物システム、例えば酵母、哺乳類細胞培養物、リーシュマニア細胞培養物、バキュロウイルス発現培養物において実行されなければならない。CHO−K1(チャイニーズハムスター細胞)又はCos−7(アフリカミドリザル腎上皮細胞)などの哺乳類細胞における発現は可能であるが、哺乳類細胞は細胞代謝における数百万のタンパク質を有するので、その組換物の発現はかなり低く、かつ作製された組換体は、クロマトグラフィーによる単離が難しい。結果的に本発明者らは、リーシュマニア・タレントラエをenvペプチド産生システムとして選択した。
【0118】
定量的質量分析後に、そのプール中の圧倒的多数を提示しているgp120変種を、配列決定し、かつクローニングに進める。多数の刊行物に示されたように、gp41配列異形は、HIV−特異的免疫応答にとっては重要ではない(図10d、実施例4)。gp41グリコシル化レベル及びgp120へのカップリングは、その配列変動性よりもHIV−特異抗体の誘発にとって重要であるので[31]、本発明者らは、クローニングのための標準成分として、患者コホートからの1種の変種の遺伝子のみを採取することを考えた。得られたgp120タンパク質配列を基に、gp120 envペプチド遺伝子をコードする対応するプロウイルスのDNA断片を、特異的プライマー対(表8)を使用し、患者のリンパ球cDNAマトリックスから、2段階入れ子型PCRにより増幅する。プライマーそれ自身及びそれらのセットは、LC−MS分析の結果を基に変化することができる。
【0119】
gp120及びgp41の全ペプチド、gp120内部ドメイン及びgp120外部ドメイン、gp41エクトドメインをコードするDNA断片のクローニングを行うことは可能である(図10a、b、cのgp120構造を参照のこと)。gp120、gp41及びそれらの主要ドメインをコードするHIV−1 DNA断片のPCR増幅スキームは、図11a、bに示されている。env gp120、gp41及びそれらのドメインの増幅のためのプライマーのセットは、表8に示されている。制限部位は、クローニングベクター変種に従い選択され、NcoIに関してピンク色で、XbaIに関して青色で、NotIに関してオレンジ色で、NheIに関して緑色で印をつけている。どの領域が、各場合の最良の免疫化の結果のためのクローニングに最も適しているかは、かなり当該技術分野で重要であり、又は経験のある研究者の選択による。
【0120】
【表8】
・120Forプライマーは、gp120内部ドメインの増幅のためのフォワードプライマーとして使用され、41Forプライマーは、gp41エクトドメインの増幅のためのフォワードプライマーとして使用される。
【0121】
ワクチン開発のための組換タンパク質製造に関する発現システムの選択に関して、いくつかの特徴が重要である。それらの発現は:i)誘導性;ii)同様にグリコシル化されるか又は継代される哺乳類翻訳後修飾でなければならない。
【0122】
i)誘導性発現は、組換ペプチドの妥当な量及び濃度を達成するために必要である。誘導性システムにおいて図12に示されたように、組換タンパク質の発現は、SDS−PAゲル電気泳動の走査により可視化できる(図12a)。細胞が非誘導性発現ベクターによりトランスフェクションされる場合、通常これは、SDS−PAGEにおいては明白ではないので、これはウェスタンブロットにより検出されなければならない(図12b)。
【0123】
ii)ワクチン接種ために作製された組換ペプチドのグリコシル化は、可能な限りウイルス宿主−真核生物リンパ球細胞に関する天然の典型にマッチしなければならない。数百万のそれら自身のタンパク質の中で真核細胞培養物において組換タンパク質の十分な産生を得ることは、困難でありかつ経費がかかる。そのため、酵母株、昆虫細胞又は真核細胞の寄生システムにおいて、HIV−1エンベロープタンパク質(gp120、gp41及び全gp160)の生成を試行することが可能である。本発明者らの考えた選択肢は、トリパノソーマ原虫宿主のリーシュマニア・タレントラエであり、これは容易な操作で真核生物タンパク質の発現/フォールディング/修飾型を組合せ、かつ哺乳類に対し病原性でもない。この発現システムの主な利点は、標的タンパク質の哺乳類型の翻訳後修飾、例えばグリコシル化、リン酸化又はプレニル化などである(図13)。
【0124】
最も簡便な方法は、Jena Bioscience社により設計されたLEXSYcon2発現キット及びLEXSinduce2発現キットからの、pLEXSYベクターファミリーにおけるHIV−1エンベロープタンパク質のクローニングである。トリパノソーマ原虫において、mRNAは、遺伝子間領域内のトランススプライシング及びポリアデニル化により、個々のmRNAへ転写後プロセシングされる、ポリシストロン性前駆体として転写される。これらの種におけるタンパク質発現の調節は、RNAレベルについて主に生じ、かつ遺伝子間領域の構造により影響を受けることがある。pLEXSYベクターにおいて、L.タレントラエにおける異種タンパク質の発現に関して最適化された遺伝子間領域が使用される(Jena Bioscience社)。
【0125】
pLEXSY−2ベクターは、発現カセットの染色体18S rRNA座(ssu)への組込み後に、分泌シグナルペプチド(図14のSP)を伴う又は伴わずのいずれかで、標的タンパク質の構成的発現を可能にする。従って同じベクターを、サイトゾル型発現又は分泌型発現のいずれかのために、ORFのクローニングに使用することができる。これらのベクター上にコードされたLmSAPシグナルペプチドは、リーシュマニア・メキシカナの分泌された酸性ホスファターゼ(lmsap1)の遺伝子に由来する。標的HIV−1タンパク質のORFのこのシグナルペプチドへのインフレーム融合は、LEXSY宿主における分泌型発現を可能にするが、このシグナルペプチド−コード配列の5’末端での任意の制限部位へのクローニングは、サイトゾル型発現を生じるであろう。
【0126】
標的遺伝子のpLEXSY発現ベクターへの挿入
pLEXSY−2ベクターは、1kbスタッファー断片の置換により、標的遺伝子カセットの方向性のある挿入を可能にする。得られたライゲーション混合物は、リーシュマニア配列に忍容性のあるコンピテント大腸菌細胞(Stbl2、Stbl4、XL−1、XL−10、SUREなど)の形質転換に使用される。この組換大腸菌クローンの選択は、アンピシリンにより実行される。大腸菌における構築後、この発現プラスミドは、SwaIによる完全な消化により線状とされ、その後標的遺伝子を伴うこの発現カセットは、相同組換によりLEXSY宿主P10の染色体18S rRNA ssu座に組込まれる。標的遺伝子挿入部位に先行する大腸菌における転写及び/又は翻訳に関するシグナルは存在せず、その結果大腸菌における遺伝子発現の欠如は、大腸菌にとって毒性であるタンパク質の構築体の作製にとって利点である。
【0127】
HIV−1エンベロープシグナルペプチドにより支持された構成性サイトゾル型発現又は構成性分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチド、gp120及びgp41をコードするgp120、gp41及び全env遺伝子)は、NcoI(フォワード)及びNheI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され(表8)、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、NcoI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
【0128】
pLEXSY−2ベクターからのLmSAPシグナルペプチドにより保証された構成的分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチドパーツを欠いている、gp120、gp41及び全env遺伝子)は、XbaI(フォワード)及びNheI(リバース)を含むプライマーにより増幅され(表7)、XbaI/NheIにより消化され、pLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、XbaI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、XbaI/NotIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
注意:前述のXbaI、NcoI、NheI及びNotI制限部位は、前の(former)SU由来のHIV−1亜型A1 env遺伝子に関しては稀である。pLEXSY−2ベクターのマップは、図14に示されている。LEXSinduce2発現キットは、pLEXSY_I−neo2(アミノグルコシドリン酸転移酵素をコードする)を備え、LEXSY宿主T7−TRにおけるテトラサイクリン−誘導性バクテリオファージ−T7ポリメラーゼ−駆動した発現に適している。
【0129】
組換タンパク質発現
pLEXSY_I−2ベクターは、分泌シグナルペプチドを伴う又は伴わずのいずれかで、標的タンパク質の誘導性発現を可能にする。従って同じベクターを、誘導性サイトゾル型発現又は誘導性分泌型発現のいずれかのために、ORFのクローニングに使用することができる。これらのベクター上にコードされたLmSAPシグナルペプチドは、リーシュマニア・メキシカナの分泌された酸性ホスファターゼ(lmsap1)の遺伝子から誘導される。標的タンパク質のORFのこのシグナルペプチドへのインフレーム融合は、LEXSY宿主における分泌型発現を可能にするが、このシグナルペプチド−コード配列の5’末端での任意の制限部位へのクローニングは、サイトゾル型発現を生じるであろう(図5)。pLEXSY_I−2ベクターファミリーは、本発現カセットのリーシュマニア・タレントラエT7−TRレシピエント株の染色体オルニチンデカルボキシラーゼ(odc)座への組込み後の標的タンパク質の誘導性発現を保証し、これは宿主RNAポリメラーゼIの制御下で、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ及びTETリプレッサーを構成的に発現する。第一のクローニング工程において、本標的遺伝子は、T7プロモーター/TETオペレーター配置の下流でpLEXSY_I−2ベクターに挿入可能である制限部位を含むリンカー配列と共に、供給される。これらのベクターは、標的遺伝子挿入部位の側方に位置する最適化された非翻訳領域を含み、これは転写後mRNAプロセシングのためのスプライシングシグナルを提供する。大腸菌における構築後、本発現プラスミドは線状とされ、相同組換により、LEXSY宿主T7−TRのodc座に組込まれる。
【0130】
HIV−1エンベロープシグナルペプチドにより保証されたテトラサイクリン誘導性サイトゾル型発現又はテトラサイクリン誘導性分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチド、gp120及びgp41をコードする、gp120、gp41及び全env遺伝子)は、NcoI(フォワード)及びNheI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、NcoI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
【0131】
該ベクター由来のLmSAPシグナルペプチドにより保証されたテトラサイクリン誘導性分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチドパーツを欠いている、gp120、gp41及び全env遺伝子)は、XbaI(フォワード)及びNheI(リバース)を含むプライマーにより増幅され、XbaI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、XbaI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、XbaI/NotIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
【0132】
NcoI/NheI又はNcoI/NotI部位においてpLEXSYベクターファミリーにクローニングされた全HIV−1 env遺伝子、又は固有のシグナルペプチドを欠き、代わりpLEXSYベクター由来のLmSAPシグナルペプチドに融合されているHIV−1 env遺伝子(XbaI/NheI若しくはXbaI/NotI部位でpLEXSYベクターにクローニングされる)は、プラスミド構築体の作製に使用することができ、特にgp120配列の、種々のHIV−1ウイルス株から得られた他のgp120配列変種による迅速な置換が可能である。この目的のために追加のXbaI部位が、位置特異的変異誘発により、gp120末端とgp41始端の間でenv遺伝子配列に導入される。その後、pLEXSY::HIV−1 envプラスミド構築体が、NcoI/XbaI(全env遺伝子が、NcoI/NheI若しくはNcoI/NotI部位でクローニングされる場合)又はXbaI単独(その固有のシグナルペプチドを欠いたHIV−1 envが、XbaI/NheI若しくはXbaI/NotI部位においてクローニングされる場合)により消化され、gp120配列が除去される。得られたプラスミド誘導体は、NcoI(フォワード)又はXbaI(フォワード)及びXbaI(リバース)部位を含むプライマーでの、PCR増幅により、他のHIV−1ウイルス変異株から得られた、gp120配列のクローニングに適している。
【0133】
LEXSY−2宿主及び発現株の培養
リーシュマニア属は、下記の二段階で、好気性条件下で増殖する:鞭毛を持つ前鞭毛型(昆虫宿主における野生型)及び脊椎動物宿主における無鞭毛型。インビトロにおいて、T7−TR LEXSY−2宿主の両方の段階は、複合培地(LEXSY BHI、若しくはLEXSY YS)又は化学的に規定された培地(合成LEXSY培地)中で、暗所、26℃で培養することができる。培地は、LEXSY BHI粉末37g/lから調製され、オートクレーブ処理され(琥珀色)、最大6ヶ月間貯蔵される。使用前に、細菌感染の防止のために、培地には、5μg/mlヘミン、及び100μg/mlペニシリン及び50μg/mlストレプトマイシンが補充される。この培地は、暗所で4℃で貯蔵され、補充後2週間以内に使用される。複合培地への血清の添加は不要であり、ウシ胎仔血清は、L.タレントラエの増殖を増強しない。前記宿主又はLEXSY株の増殖阻害の場合、細胞は2000gで5分間遠心し、新鮮培地中に慎重に再懸濁し、かつインキュベーションを継続する。この株は、1:10〜1:50の割合で通常希釈される連続懸濁培養物として維持することができる。最良の結果は、中程度(mid-late)増殖相(OD 2〜3;8×107〜1.4×108細胞/ml)時の接種により得られる。株維持に関して、10ml培養物を、月曜日及び金曜日に1:20で希釈し、かつTCフラスコを直立してインキュベーションすることが都合がよい。細胞生存能は、運動している鞭毛を持つ運動型前鞭毛型として顕微鏡下で目視可能であり;死滅細胞は、丸形であるか又は破壊された形状であり、これらは運動しない。
【0134】
組換タンパク質発現培養は、懸濁培養のための、培養容量10〜200mlの通気した組織培養(TC)フラスコ、又は約140rpmでインキュベーター内で攪拌され、培養容量50ml〜1Lのエレンマイヤーフラスコにおいて、又は最大100Lの標準バイオリアクターにおいて行うことができる。ベクターpLEXSY−neo2に関する組換体の選択は、50μg/mlネオマイシンの存在下で行う。
【0135】
LEXSY宿主株及びLEXSY発現株は、20%グリセロール中で、−80℃で、少なくとも1年間貯蔵することができる。オートクレーブにかけたグリセロール(80%)容量の1/4及び中増殖相からのLEXSY BHI*培地中で増殖した培養物4〜8×107細胞/ml(OD 1.2〜1.8)の容量の3/4を、15mlファルコン管に加え、グリセロールと混合し、滅菌したクリオバイアルに分注する。バイアルは、室温で10分間維持し、その後水の入った氷上で1時間、−20℃でしばらくの間維持し、長期間貯蔵のために−80℃に移す。グリセロールストックの再活性化に関して、クリオバイアルを、氷上で解凍し、その内容物を、補充培地10個に注ぎ、直立の通気フラスコにおいて、26℃で静止位置で、培養物が不透明となるまで2日間、インキュベーションする。
【0136】
LEXSY宿主トランスフェクションのための発現プラスミドの調製
大腸菌から得られた標的遺伝子を含む発現プラスミド1〜5μgを、SwaIにより完全に消化する。作製された大腸菌パーツを示している2.9kbp断片、及びLEXSY宿主の染色体ssu座に組み込まれるべき標的遺伝子を伴う線状化された発現カセットを示しているより大きい断片を、アガロースゲルで泳動する。より大きい断片の発現カセットは、アガロースゲル抽出キットを用いて単離する。酵素及び緩衝塩は、PCR精製キットにより除去することができる。あるいは、この消化物をエタノールにより沈殿し、70%エタノールにより洗浄し、かつ最大50μlの滅菌2回蒸留水又は10mMトリス(pH8)/トランスフェクションへ再溶解する。
【0137】
LEXSY宿主株の電気穿孔法によるトランスフェクション
効率的トランスフェクションのために、L.タレントラエ予備培養物を、10ml LEXSY BHI培地中に1:20で接種し、組織培養(TC)フラスコ中で直立して、26℃でインキュベーションし、予備培養の2日後、10ml培地中に1:10で希釈し、同じ条件で一晩インキュベーションする。増殖培養物は、6×107細胞/ml(OD 1.4、波長550〜600nm、3%ホルマリン)含有しなければならず;これらの細胞は、生存し、かつ液滴状の形状であることは、顕微鏡により確証される。細胞は、2000g、室温で5分間遠心し、上清の1/2量を除去する。このペレットは、残留する培地中に再度懸濁し(108細胞/ml)、水の入った氷上に10分間放置する。最大50μlの水又はトリス緩衝液中0.1〜5μg形質転換しているDNAは、並行したチューブ中で水の入った氷上に直ちに配置する。予め氷冷した細胞350μlを、DNAの入ったチューブに加え、気泡を避けるために水の入った氷上のd=2mmの電気穿孔キュベットに移す。電気穿孔のパラメータは、450V、450μF、パルス時間5〜6ミリ秒である。電気穿孔後、キュベットを、氷に、正確に10分間戻す。その後電気穿孔された細胞を、キャピラリーにより、10ml LEXSY BHIへ移し、26℃で一晩インキュベーションする(約20時間、OD 0.3〜0.4)。
【0138】
トランスジェニックLEXSY株の選択
発現株の確立のために、下記の二つの方法を、並行して慣習的に使用することが可能である。染色体の組込みのためにデザインされた線状化された発現カセットによるトランスフェクション後、クローン性又は非クローン性選択に由来した培養物を比較した場合、同様の発現レベルが、繰り返し認められる。しかし、環状発現プラスミドのトランスフェクションは、クローン性選択を必要とし、その理由は、これらのエピソームは、不均質様式で増幅しかつ最終的にゲノムへ組込む傾向があるからである。環状DNAによるトランスフェクション後の、懸濁培養液中の非クローン性選択は、通常低下した発現レベルを生じる。
【0139】
固形培地上への播種によるクローン選択
LEXSY 宿主細胞は、新たに調製したカンテンプレート上で選択する。トランスフェクションされた10mlのo/n培養物から2mlのバッチを1〜4個採取し、残りの培養物は、非クローン性選択のために並行して使用する。細胞は、2000g、20℃で5分間遠心し、そのペレットは、残渣培地50〜100μl中に再懸濁し、再懸濁した細胞は、50μg/mlネオマイシンが補充された新たに調製されたLEXSY BHIカンテン上にカンテンの表面上に、配置されたニトロセルロースフィルター上に細胞を画線する方法により播種される。播種は、これらのメンブレン上で直接1%カンテン上よりもより容易であり、細胞の遊走(swarming)は消滅する。それ以外に、メンブレン上の播種は、例えば蛍光スキャニング又は所与の標的タンパク質に特異的検出法による、クローン性集団の発現プロファイルの試験のために、フィルターを持ち上げることができる。プレートは、パラフィルムで密封され、26℃で逆さまで(bottom up)インキュベーションする。
【0140】
播種後5〜7日目に、小さい限定されたコロニーが出現し始め、播種後7〜9日目に、コロニーが直径1〜2mmまで増殖した時点で、これらをピペットチップを用い、96−ウェルプレート中の選択増殖培地0.2mlに移し、1日インキュベーションした後−24−ウェルプレート中の選択培地1mlへ移すことができる。26℃で更に24〜48時間インキュベーションした後、その培養物を、TCフラスコ中の選択培地10mlに増殖し(expand)、評価及び凍結保存に使用することができる。
【0141】
懸濁培養における選択
トランスフェクション実験から得た10ml o/n培養物が、わずかに不透明になり始めた(OD600 0.4、約107細胞/ml;通常電気穿孔の約20時間後)直後に(4.4.参照)、ネオマイシン50μg/mlを添加し、インキュベーションを26℃で7日間継続する。組換細胞は、顕微鏡下で運動型であり、液滴様の形状であり、かつ「曇った」懸濁培養物として増殖するのに対し、陰性対照中の細胞は、選択時に、死滅し始め、顕微鏡下で鞭毛を伴わない、球形又は不規則な形状のように見える。通常、選択の7日目の1:10接種割合のネオマイシンを含む新鮮な培地への1回の連続転移は、抗生物質−抵抗性組換株化細胞の不透明な培養物を得るのに十分である。
【0142】
ゲノム組込み及び組換envペプチド発現の確認
本発現カセットのssu座への組込みは、鋳型としてトランスジェニック株のゲノムDNAを使用する、診断的PCR又は配列決定により確認することができる。pLEXSY I−2ベクター診断的PCR(アニーリング温度55℃)は、抗生物質耐性カセットフォワードプライマー及びodcリバースプライマーP1510により行う(表9)。本発現カセットのodc座への組込みは、対照反応においては認められない特徴的断片(各々、1.9又は2.0kbp)を生じる。加えて、odcフォワードプライマーA1304及びaprtリバースプライマーA1715(標的遺伝子の5’utr内にハイブリダイズする)により、診断的PCR(アニーリング温度60℃)を行うことができる。本発現カセットのodc座への組込みは、特徴的1.1kbp断片を生じるが、対照反応においては得られず、ここで鋳型は、LEXSY宿主株の発現プラスミド又はゲノムDNAである。
【0143】
組換LEXSY株における標的タンパク質の発現は、細胞抽出物の、又は分泌型発現の場合は上清のアリコートの、SDS−PAGE及びウェスタンブロットにより評価する。最適な発現を得るために、任意に種々のテトラサイクリン濃度、各個別のタンパク質の培養条件及び収穫時間での、平均1μg/mlのテトラサイクリン発現の誘導にキャリブレーションされる。
【0144】
【表9】
【0145】
8.組換HIV envペプチドの生成及びクロマトグラフィー精製
タンパク質生成に関して、本組換株は、複合LEXSYブロスBHI(Jena Bioscience社)において、OD 600 D2(108細胞/ml)まで増幅される。このタンパク質生成は、新鮮な培地に細胞を移して1時間後の、5mg/l テトラサイクリンの添加により誘導され、かつこの培養物は、MultitronIIインキュベーター−振盪機(Infors AG社, スイス)において130rpmで攪拌しながら26℃で、24〜72時間、ODが約1.8に達するまで、インキュベーションされる。培養物上清中及び細胞中の組換gp120の存在は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS−PAGE)の存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウェスタンブロットにより決定する。N−グリコシル化の存在の確認のために、本発明者らは、培養物上清又は細胞を、N−グリコシダーゼで処理し、かつ処理したタンパク質の電気泳動移動度を分析する。
【0146】
タンパク質を発現しているリーシュマニア細胞は、2500gで10分間遠心し、そのペレットを、20mMトリス(pH8.0)、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM PMSF中に再懸濁する。この細胞溶解液は、20kHzで、超音波処理機を用い、19mm探針による、氷中で1分間10回のパルス適用が、パルス間の間隔2分間で行われる。透明化された上清を収集し、0.45μm細孔メンブレンを通して濾過し、アガロースに結合されかつニッケルで帯電されたニトリロ三酢酸(Ni−NTA)を使用する、不動化された金属イオンを含むクロマトグラフィーカラム(GE Healthcare社)における、組換gp120のアフィニティ精製に使用される。簡単に述べると、このNi−NTAカラムは、20mMトリス(pH8.0)、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM PMSFの緩衝液の3容量で、流量1mL/分ですすがれる(LC Akta Prime Plus社, GE Healthcare社)。次にこのカラムに、流量0.25mL/分を利用し、組換gp120(r−gp120)を含有する濾過した上清が充填される。充填後、このカラムは、洗浄緩衝液(20mMトリス−HCl、500mM NaCl、5mMイミダゾール、pH7.4)の3容量ですすがれる。このr−gp120は、カラム内部のエンテロキナーゼにより切断され、ポリヒスチジン尾部を除去する。この目的のために、Ekの1国際単位(IU)が、10mMトリス−HCl、10mM CaCl2、pH8.0を含む緩衝液中のカラムへ導入され、この切断反応は、25℃で18時間進行される。あるいは、ポリヒスチジン尾部により標的化されたタンパク質は、イミダゾール勾配(150mM NaClを含有する100mMトリス−HCl(pH8.0)中の0〜0.5Mイミダゾール)中で溶離される。タンパク質含有画分はプールされ、限外濾過により濃縮される。画分は、SDS−PAGE/銀染色及び抗−ヒトgp120抗体によるウェスタンブロットにより分析される。r−gp120含有画分は、プールされ、0.1Mトリス−EDTA緩衝液(pH8.0)に対して透析され、標準アプローチ[2]を使用し、同じ緩衝液で平衡とされた陰イオン交換カラム(Q-PEEK 10um AXC Biosuite, Waters社)上に装加される。このタンパク質は、0〜1M NaClの勾配により溶離される。r−gp120含有画分は最終的に、Sephacryl S−200HR(GE-Healthcare社)を使用するゲル濾過により精製される。
【0147】
精製されたrhEPOのN−末端配列決定は、自動エドマン分解により実行される。精製されたタンパク質の濃度は、BCAアッセイにより決定される。タンパク質発現及び精製の種々の段階を通じて得られた画分の分析は、SDS−PAGEにより実行される。本タンパク質バンドは、クマーシーブリリアントブルーR−250又は銀染色により可視化される。
【0148】
a. ワクチン送達のビヒクルとして立体的に安定したリポソームを使用する、HIV予防ワクチン免疫ブースト組成物の調製
最も一般的には「ワクチン」と称される、将来の該疾患と接触する可能性のある症例において、いくつかの細菌又はウイルス感染症に対する特異的免疫応答を提供する目的で、経口(os)、又は皮下、筋肉内、静脈内のいずれかによる投与のための任意の医薬品は、多くの必要要件を満たさなければならない。これらの必要要件の主なものは:
iii)免疫応答が、ある種の病原性微生物又は感染症に対し高度に特異的であること;
iv)免疫応答が、疾患症状の出現を妨げるよう、この特定の感染症の発症と闘うのに十分に強力であること;
v)免疫応答が、長期間、数ヶ月及び数年間持続すること;
vi)前述の全てにもかかわらず、本ワクチンは、ヒト生物に関して反応原性(免疫毒性)でないこと:である。
【0149】
本発明のHIV予防ワクチンの有効性は、これを、免疫賦活剤又は免疫原性担体、例えばアジュバントなどと会合することにより増強される。未変性のHIV envタンパク質混合物に加え、gp120糖鎖付加された組換型は、高度に免疫原性であり、皮下に接種されることを容易に忍容できず、それら自身により強力な免疫反応をもたらす(実施例4)。しかし、全ての純粋なタンパク質に関して、生物におけるそれらの生分解は、迅速であり、かつペプチドが、任意の保存剤若しくはプロテアーゼインヒビターアジュバントと固定されない場合、免疫応答は2〜3週間以内に使い果たされる。本発明者らの最初の考えは、envペプチドを分解から保護し、細網内皮系に不可視であるよう、それらを立体的に安定化されたリポソーム(SSL)にパッケージすることであった。しかしマウスにおける極初期の実験から、SSLは、十分に長いことができるある期間装荷されるか又は結合されたペプチドを保持することができ、かつそれらの急性免疫毒性を減少することができることが見出された。ペプチドに関して、立体的に安定化されたリポソームのプラットフォームは、アントラサイクリンのリポソーム薬剤形状に関して示されたように、低い総免疫毒性及びより良い薬力学(薬剤の適時放出)の利点に順応する。リポソームペプチドは、正に細胞増殖抑制剤又は他の低分子量剤のようにゆっくりSSLの外側で誘発され得る。即時型免疫反応の阻害は、単回投与のためのペプチド用量の増加、及び長い十分にブーストされた免疫化のためのウイルスenvペプチドのMHCとの接合部接触の延長を可能にする。この方法のSSLは、免疫ブーストアジュバントとして及びワクチン送達システムとして同時に活用される。
【0150】
従って本発明の効果的な組成物の具体的製剤は、該製剤が投与される際に被験者において、アジュバントを生分解性、安全かつ有効とするのに適した様式で実行されてよい。二つの考え方が更に説明される:
i)envペプチド混合物は、立体的に安定化されたリポソーム(SSL)に装荷される;
ii)envペプチドは、SSLのPEG−活性化された基に共有的に連結される;
iii)可能性のある構築体(pNL3−4、IRIVなど)のビロソーム上に提示されたenvペプチド。
【0151】
i)立体的に安定化されたリポソーム調製品及びペプチド装荷
立体的に安定化されたリポソームは、リン脂質:コレステロールがおよそ7:3及び0.2〜0.5mol/%ポリエチレングリコール−ジステアロイル(ホスファチジル)エタノールアミン(PEG−DSPE)からなる混合物からの、クロロホルムの真空乾燥法、及び窒素流下でのベシクル形成[40]を用いて調製される。使用される脂質混合物は:DOPC/Chol/DSPE−PEG350、DOPC/Chol/DSPE−PEG400などである(Avanti Polar Lipids社, バーミンガム, AL)。本リポソームの主成分は、ジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)であり、これは卵黄、脳組織又はダイズ豆などの天然の給源から抽出されるか、又は合成により調製することができる。コレステロールは、リポソーム膜内のリン脂質二層を安定化するために必要であり、PE−PEGは、膜の安定性及び硬度を提供し、これは懸濁液中のリポソームが融合及び分解することを防ぎ、かつこれらが数ヶ月間それらのサイズ分布及び漏出を伴わずに内側に装荷された物質を保存することができるようにする。SSL中のPEGの理想的分子量は、400〜700であり、1000〜2000のより長いPEG鎖は、リポソーム膜の硬度が、それらの内容物送達に必要なものよりも高くなり、かつ長いPEG SSL組成物は自己生分解の必要要件を満たさないので、SSLデザインにおいては利点ではない。DSPE−PEGの割合は、望ましい特性のリポソームを得るための細かい調整の主なものである。
【0152】
乾燥脂質は、有機溶媒−クロロホルム又はエタノール-クロロホルム−中で混合され、これらは次に回転蒸発器(Buchi R-200)において蒸発され、薄い脂質フィルムが形成される。リポソーム懸濁液は、溶解した物質(例えば50mM NaH2PO4、400mM NaCl、pH8.0)を含む水性緩衝液中に更に水和され、300〜400rpm、温度+45℃で、30分間の攪拌時に調製される。大型多層ベシクル(MLV、300nm〜1μm)及び小型単層ベシクル(SUV、80〜250nm)の混合物が、生成される。ペプチドなどの任意の水溶性物質の送達に関して、小型単層ベシクルが必要であり、従って超音波処理(600mV、Avanti Polar Lipids社)、及びポリカーボネート0.4〜0.2〜0.1μmメンブレン(Avanti Polar Lipids社)を通るフィルター押出の数回のサイクルが実行される。加えて、0.2〜0.1μmメンブレンを通る無菌条件(層流(laminar)及び無菌のシリンジ、メンブレン及びフラスコ)での押出は、免疫化にそのまま使用できる調製品を生じる。水性懸濁液中のリポソームのサイズ分布及び安定性は、DLS Nicomp−380装置を使用する、動的光散乱レーザーサブミクロン粒子サイズ分析法により決定される(図17)。
【0153】
免疫化のための組換ペプチドの混合物は、脂質フィルムの水和の段階で、リポソーム組成物に導入され−ペプチド混合物は、リン酸緩衝食塩水中に溶解され、リポソームベシクルの内側水相として装荷され始める[40]。押出プロセス後、SSLは、Sephacryl S-200HR及びAkta Prime LCシステム(GE Healthcare社)を使用する、サイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィーにより移行され、かつベシクルの外側に出現した過剰なペプチドは、分離されかつカラム内に留まる。その後SSL懸濁液は、必要ならば透析により濃縮され、免疫化にそのまま使用できるワクチン組成物を含む。
【0154】
SSLワクチン組成物の皮下投与は、MHCリポソームに対し中性の範囲外の(out of neutral)env組換ペプチドの誘発の遅延のために、免疫化作用を阻害することがある。このプロセスは、感熱性リポソーム−tSSLを用いて、調節することができる。tSSLは、特別な量的組合せのメンブレン成分、又はリポソーム膜を温度がある温度、通常40〜45℃に到達すると直ちに融解するようにする、いくつかの追加のリン脂質成分を伴い、他のものから識別される。局所的加熱時に、感熱性リポソームは、破壊され、それらの内容物−ペプチド−は、その組織の外側に負荷される。例えば通常の立体的に安定化されたリポソームは、融解温度約54〜58℃を有し、脂質フィルム形成のための乾燥重量混合物は、ホスファチジルコリン:コレステロール:ジステアロイル−ホスファチジルエタノール−アミン−PEGからなり、その比は、PC:Chol:DSPE−PEG−400について6.85:2.75:0.4(最大0.5)モル/%であり、及びより長いPEG鎖PC:Chol:DSPE−PEG−2000について6.9:2.95:0.15(最大0.25)モル/%である。感熱性リポソームを調製するために、本研究者らは、いくつかのパラメータを変動することができ、第一に混合物中の脂質の比を、各々、コレステロール量を27〜29モル/%から30〜35モル/%に増加し、PE−PEGの割合を2〜5モル/%から1.5〜2モル/%へ減少する。リポソーム膜を柔らかくし、かつそれらの融解温度をより低い温度にシフトする別法は、より短い脂肪酸尾部のリン脂質を使用することであり、これは:ジミリストイル−ホスファチジルコリン(DMPC、C−14)、ジステアロイル−ホスファチジルコリン(DSPC、C−16)、又はDOPCの同等部の代わりに、むしろDMPC若しくはDSPCの30〜40モル/%である。
【0155】
ii)SSLのPEG−活性化された基に結合するenvペプチド;
env組換ペプチド脂質混合物のためのリポソーム担体の第二の型は、ペプチドの結合のために活性化されたより長いDSPE−PEG2000型を表している:PDP−PEG2000−DSPE/Chol/DOPC、マレイミド(フェニルブチレート)−PEG2000−DSPE/Chol/DOPC、p−ニトロフェニル(カルボニル)−PEG2000−DSPE/Chol/DOPC。これらの脂質混合物中のPEG−2000の濃度は、1.5〜2モル/%を超えてはならず、その理由は比較的長いポリエチレングリコールは、比較的短い型よりもより効果的にリポソーム安定性を増大し、かつ同じ濃度は、ワクチン放出には余りにも硬いリポソーム膜及び脂質の有害な生分解を生じるからである。
【0156】
PEGの活性化された遠位端[38]とのペプチド複合の第一の方法は、0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.0〜5.0)中の脂質25〜40mgにつきペプチド1mgの比での、リポソーム懸濁液中のペプチドアミノ基による、p−ニトロフェニル(カルボニル)−PEG−2000−DSPE反応である(総懸濁液量は5.5〜9ml)。反応は、NaOH添加により、pHを7.5〜8.5に上昇することにより終結され、かつ特別なペプチド処理は不要である。
【0157】
マレイミド−PEG−2000−DSPEとの方法[39]は、Trautt試薬(2−イミノチオラン)による先行するペプチドチオール化が必要である。ICO−25 1mgを、Na3BO3及びEDTAを含有するホウ酸緩衝液に溶解し、次に乾燥Trautt試薬50〜70μgを添加し、この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、次に過剰なタンパク質を、PBS(pH8.0)との同時緩衝液交換を伴う限外濾過により洗浄する。サイズ及び装荷された細胞増殖抑制剤濃度が均質であるリポソーム画分は、Sepharose CL−6B(GE Healthcare社, スウェーデン)での液体クロマトグラフィーにより抽出される。
【0158】
PDP−PEG−PE含有リポソームに結合するODN−HIV envペプチド
PDP−ペプチド誘導体の調製のために、ペプチドを、25mM HEPES、140mM NaCl、pH7.4に、濃度10mg/mlで溶解し、次にこのペプチド溶液に、DMF中の25mMスクシンイミジル−4−MPB(SMPB)溶液を、モル比20:1(SMPB:ペプチド)までゆっくり添加し、室温で30分間インキュベーションする。未結合のSMPBは、25mM HEPES、25mM MES、140mM NaCl(pH6.7)緩衝液中での、Sephacryl S−200HRカラム(GE-Healthcare社)を使用するゲル濾過により、比較的低いpHで除去される。
【0159】
PEG鎖の遠位端のピリジルジチオ基は、ジチオスレイトール(DTT)の最終濃度20mMまでの添加、及び室温で30分間のインキュベーションにより、減少される。DTTは、25mM HEPES、25mM MES、140mM NaCl(pH6.7)で溶離されたSephadex G−25カラム上のリポソームの通過により、上昇したpH中で分離される。チオール化されたリポソームは、MPB−ペプチド誘導体と共に、ペプチド/脂質比が約1:1000で、室温で一晩インキュベーションされる。未結合のペプチドは、25mM HEPES、140mM NaCl(pH7.4)により、Sephacryl S−200HRカラムを通りリポソームが通過する、ゲル濾過により除去される。
【0160】
COOH−PEG−PE−リポソームに結合するODN−HIV envペプチド
MES緩衝液(pH4〜5.5)中のHO2C−PEG−PE−含有リポソームの懸濁液の300ul(合計3umol脂質)へ、水中の0.25M 1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド溶液の120ul、及び0.25M N−ヒドロキシスルホスクシンイミド120ulを添加する。この混合物を、室温で10分間インキュベーションし、1M NaOHによりpH7.5に中和する。HIV envペプチド15μMを、活性化されたリポソームへ添加し、この反応混合物を、穏やかに攪拌しながら、4℃で8時間インキュベーションする。ペプチド−結合したリポソームを、PBSにより予め平衡とされたSephacryl S−200HRカラム(GE Healthcare社)上の未結合のペプチドから分離される。空隙容量で溶離されたペプチド-結合したリポソームのピーク画分を収集し、プールし、必要ならば食塩水により必要な容量に希釈する。
【0161】
リポソーム組成物DOPC/DOGS−NTA−Ni/Chol/DSPE−PEG−2000において、envペプチドを、PC尾部とPEG−DSPE尾部の間に定着(settle)されたニッケル−修飾されたリン脂質に結合することも可能である。しかし、DOGS−NTAは、粘膜及び他のB−リンパ球免疫応答を刺激することはわかっているにもかかわらず、envペプチドのPEG位置の下側への隠蔽は、その抗−HIV特異性を弱める。この方法は以下に説明されている。
【0162】
この複合反応において、組換(His)6−ペプチド(10〜80ug)は、総容量50μlのリン酸緩衝液(50mM NaH2PO4、400mM NaCl、pH8)中で、リポソーム(1μM)と一緒に、回転振盪しながら、37℃又は室温で30分間インキュベーションされる[17]。リポソームへのタンパク質複合は、複合反応の終了時の遊離タンパク質の量の測定により、間接的に定量される。未結合のタンパク質は、Microcon−100遠心装置を用いて分離される。遠心分離の前に、このリポソーム−ペプチド混合物は、リン酸緩衝液中に最終容量250μlに希釈される。12,000gで13分間の遠心分離後、濾液20ulを、遊離タンパク質含量について、micro−BCAアッセイを用いてアッセイされる。リポソームに結合したペプチドの量は、使用される総量から遊離タンパク質の量を減算することにより、決定される。このリポソームに結合しているHis−タンパク質の間接定量法は、リポソーム−結合したペプチドが、Sephacryl S−200HRゲルマトリックス(GE Healthcare社)において、遊離タンパク質のサイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィーによる分離後、micro−BCAアッセイを用い直接定量される直接法と比較し、同じ結果を生じる。
【0163】
iii)可能性のある構築体(pNL3−4、IRIVなど)のビロソーム上に提示されたenvペプチド
小型のウイルス及びそれらで構築されたベクターは、envペプチドHIVワクチンの発現及び提示に使用することが可能である。ビロソームは、予防ワクチン技術にあまり適してはおらず、かつHIV−特異的免疫ブースト作用は、いずれの場合にも、ワクチン送達のSSL技術がもたらすものよりも低い。このワクチン組成物は、小型ウイルス表面−ビロソーム−上に発現されたHIV envペプチドのみを含み、ウイルスベクターにおいて送達されたenvペプチドの遺伝子は含まない。アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスのような大型ウイルスは、ビロソームの候補としては良好ではなく、その理由はこれらは、それらのキャプシド上に発現された数百のペプチドを有し、かつこれらは投与後に特異的よりもむしろより非特異的に免疫応答をブーストするからである。ビロソームベクターは、欠損HIV誘導体pNL3−4、マラリア及びA型肝炎ワクチンにより有効性が証明されたインフルエンザベクターIRIV、麻疹ウイルス誘導体、種々の脳炎病原体のαウイルス、黄熱病ウイルスのベクター及びその他の可能性のある変種を含む。
【0164】
本発明のアジュバント及びアジュバント-含有ワクチン組成物が有用に投与される宿主動物は、霊長類に加え、齧歯類又は他の哺乳類を含む。BalbCマウスは、初回免疫応答ブーストバリデーションに使用された。アジュバント装荷している2種のリポソームは、個別に使用され、かつ種々の割合で一緒に混合されることができる。
【0165】
3週齢のBalbCマウスに、該動物にとって純粋なペプチドの投与量20〜50μgが皮下的に免疫化され、乾燥脂質MWのための懸濁液中のアジュバント濃度は、5mg/mlである。各群には、7〜8匹又はそれよりも多いマウスが含まれる。この免疫化は、開始時固形食を摂食しかつ体重11〜14gである動物について3週齢マウスで初回、5週齢になった後2週間2回目、マウスが9週齢になった時1ヶ月後に3回目が実行される。組換gp120及びそのドメイン並びに組換gp41及びそのエクトドメインは、個別に又は一緒に組成物を完成するために使用される。HIV envペプチド抗体の力価は、r−gp120(gp110、gp160)変種、ファージミドライブラリーバイオパンニングに関して先に使用されたr−gp41、更には未変性のHIVタンパク質混合物で、ELISAにより測定される。ELISA試験は、最後の皮下投与後、3日目、14日目及び28日目に行われる。結果の一部は、実施例4に示されている。
【0166】
二つの主要な結論を、マウスの実験から引き出すことができる:
1.BalbCマウスにおいて皮下接種される、gpl20及び全てのその誘導体、組換体に加え未変性のペプチドは、高度に免疫原性であり、かつ強力でHIV−特異的及び延長された免疫応答を誘発する。同じ様式で接種された組換gp41及びそのエクトドメイン変種は、数倍低い力価の特異的モノクローナル及びポリクローナル抗体を誘発する。Ab力価の同じ状況が、HIV−感染したヒト血清中において、及びファージM13上のAbライブラリー提示において認められる。患者において、この状況は、ウイルスエンベロープ中のgp120下流(under)のgp41の内側位置で提供される。しかし、組換タンパク質免疫化による同じ現象は、HIV予防ワクチン開発のために、gp120配列及びその組換体の代表の正しいアイデンティフィケーションが重要であり、かつgp41は、複合ペプチド「材料」として使用されるが、その配列の異形はあまり重要でないという本発明者らの立場を証明する。
【0167】
2.リポソームアジュバント組成物は、ペプチドのみの免疫化よりもより長い期間免疫応答ブーストを提供することができ、かつ同時に即時型免疫毒性反応を縮小することができ、その結果HIV−予防的反応発生のために、ペプチド投与量を増加することができる。
本発明のアジュバント及びワクチン組成物に関する投与量の割合及び好適な剤形は、通常の抗体力価決定技術及び通常の生体有効性/生体適合性プロトコールの使用により、並びに特定のアジュバント型、望ましい治療作用、及び望ましい生体活性期間に応じて、過度な実験をすることなく、当業者により容易に決定されることができる。本ワクチン及びその成分の投与は、皮下注射、経皮、経真皮、鼻腔内及び筋肉内投与などの非経口法を含んでよい。
【0168】
開発されたHIV予防ワクチンは、HIV−抗体ライブラリーがその選択及び作製のために試行された感染者のコホートのHIV変異株から蔓延した感染症に対するその活性に関して、個別化された医薬品に至る途中の工程である。本ワクチンは、単独のかつて開発された組成物として、蔓延しているHIV感染症に対する普遍的武器として働くことはできない。しかし25年間にわたるHIV研究及びAIDSとの戦いで集められた全てのHIV疫学の知識は、その実践的開発に対し多くの支持をもたらすであろう。
【実施例】
【0169】
実施例1:下記電気泳動データは、HIV−特異的ScFv抗体の断片作製を含む、ヒト組換IgGファージミドライブラリーの段階を図示している(ファージディスプレイ技術):
PCR−I結果−対応する部分的Cκ又はCL断片を伴う、κ−及びλ−可変部。
ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
略号:1VL−部分的CL断片を伴うλ可変部
2VL−部分的CL断片を伴うλ可変部
1VK−部分的Cκ断片を伴うκ可変部
1a−10−種々のプライマー対
−VK−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
GeneRuler(商標)、100bp DNAラダー
【化1】
【0170】
PCR−I結果−部分的Cκ断片を伴うκ可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1a−10−種々のプライマー対1VK(2VK、3VK、4VK)
部分的Cκ断片を伴うκ可変部
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化2】
【0171】
PCR−I結果−部分的CL断片を伴うλ可変部、並びに部分的CH1断片を伴うIgM及びIgG重(H)鎖可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1VL−ライブラリー1、部分的CL断片を伴うλ可変部
1VHM(2VHM、3VHM、4VHM)−部分的CH1断片を伴う重鎖可変部(IgM)
1VHG(2VHM、3VHM、4VHM)−ライブラリー1、2、3、4、部分的CH1断片を伴う重鎖可変部(IgG)
1a−10−種々のプライマー対
−VL;−VHG;−VHM−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化3】
【0172】
PCR−II結果−((Gly)4Ser)3をコードする、追加されたリンカー断片を伴う重(H)鎖可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1HG(2HG、3HG、4HG)−ライブラリー1、2、3、4、IgG cDNAプール由来の重鎖可変部;
1HM(2HM、3HM、4HM)−ライブラリー1、2、3、4、IgM cDNAプール由来の重鎖可変部
1a−7a−種々のリンカー−含有するプライマー対
−H−PCR陰性対照
【化4】
【0173】
PCR−II結果−((Gly)4Ser)3をコードする、追加されたリンカー断片を伴うκ−及びλ−可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1K(2K、3K)−ライブラリー1、2、3、κ可変部
1L(2L、3L、4L)−ライブラリー1、2、3、4、λ可変部
1a−8−種々のリンカー−含有するプライマー対
−K及び−L−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化5】
【0174】
PCR−II結果−((Gly)4Ser)3をコードする、追加されたリンカー断片を伴うκ−、λ−、及び重鎖(H)可変部、関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1K(2K、3K、4K)−κ可変部
1L−ライブラリー1、λ可変部
2HG(3HG、4HG)−ライブラリー2、3及び4、IgG cDNAプール由来の重鎖可変部;
3HM(4HM)−ライブラリー3及び4、IgM cDNA プール由来の重鎖可変部
1a−8−種々のリンカー−含有するプライマー対
−K及び−L−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化6】
【0175】
集成されたScFv断片のゲル定量。種々のVH−リンカー−Vkappa ScFv変種(ライブラリー4)
【化7】
【0176】
VH−リンカー−Vkappa ScFv混合物(ライブラリー4由来)の再増幅。ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
κ−100bp VH−リンカー−Vkappa ScFv混合物
【化8】
【0177】
実施例2:組換HIV−特異的ライブラリーに関する特異性定量の結果
a)HIV−1陽性血清による組換mAbクローンのELISA結果
【化9】
【0178】
b)ウイルスペプチドA455選択されたファージライブラリー由来の38種のファージモノクローンのELISA結果(SigmaPlot 10.0統計解析)
【化10】
【0179】
c)組換gp110−、gp160選択されたファージライブラリー由来の26種のファージモノクローンのELISA結果(SigmaPlot 10.0統計解析)
【化11】
【0180】
実施例3:HIV envペプチドの変動性
HIVは、その極めて高いペプチド配列の異原性により、他の病原性ウイルスから区別される。変更された配列ペプチドの3D構造は、非常に異なっており、かつ多くの場合、これらの変更は、ウイルスの抵抗性表現型の出現後の同じ変異により引き起こされる。従ってモノクローナル抗体ライブラリーを使用し、頻繁に合致する変種を収集し、かつ表面ウイルスタンパク質の組換型を得ることが可能である。亜型A及びBに関するHIV envペプチド配列の共通の異形の一部は、以下に示されている。変動性のアミノ酸は青色で、保存性のアミノ酸は赤色で印をつけている。これらの配列のいくつかは、本発明者らの実験室で以前に行われた。
【0181】
【表9A】
【表9B】
【表9C】
【表9D】
【表9E】
【表9F】
【表9G】
【表9H】
【表9I】
【表9J】
【表9K】
【表9L】
【表9M】
【表9N】
【表9O】
【表9P】
【表9Q】
【表9R】
【0182】
実施例4:動物の免疫化の予備的結果(SigmaPlot 10.0統計解析)
体重11〜14gの3週齢のBalbCマウスを、該動物にとって純粋なペプチドの投与量20〜50μgで皮下により免疫化し、脂質濃度MWは5mg/mlであった。この免疫化は、3週齢マウスにおいて行い、それらが5週齢になった後2週間2回目を、マウスが9週齢になった時1ヶ月後に3回目を行った。組換gp120は、組換gp41エクトドメインよりも、平均で5倍高いレベルの免疫応答を誘発した。患者の血清から単離されたヒトポリクローナル抗体を、同濃度の組換gp120及びgp41のELISA染色に使用した場合にも、特異抗体力価の同じ差異が認められた。
【化12】
【0183】
参考文献
【表10A】
【表10B】
【表10C】
【表10D】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIVによる感染を予防する及び/又は個体におけるHIV感染症の進行を予防する、HIVワクチンの製造方法に関する。特に本発明は、抗レトロウイルス療法後に選択された存在するHIV−亜型及び変異体に結合する、個体における免疫応答としてのHIV特異抗体の形成を提供する。本発明は、実質的に全てのHIV−アイソフォームを認識しかつ結合することが可能であるHIV特異抗体にも関する。
【背景技術】
【0002】
1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)は、ウイルス複製時に生じる変異の蓄積により引き起こされ、更に組換事象によっても引き起こされる、顕著な遺伝子変動性により特徴づけられる[1, 18, 24]。HIV治療の化学療法の失敗は、このHIV−1ウイルス株の高度な変異原性の活性が原因である[8]。種々のコースの抗レトロウイルス療法後の患者において、及び更には複合療法(HAART)後の患者においてであっても、耐性ウイルス変異株が迅速に生じることが早くに示された。これらの耐性ウイルスは、それらのタンパク質の高次構造及び構造に特異的変化を有する。通常HIV−1が現在の治療から逃れることに寄与するそのような変異は、治療条件下での選択の結果として保存され(saved)かつ蓄積される。
【0003】
抗−HIV−1医薬品による治療は、ウイルス複製を完全には停止せず、このことは予め存在する耐性変異の選択及び蓄積、並びに新たな変異の発生及び蓄積を可能にし、その結果ウイルス生存の新たな入口を生じる。従って現存する抗レトロウイルス調製品(NRTI、NNRTI、プロテアーゼインヒビター、融合インヒビター、更にはHAARTのような種々の薬剤の混合物)は全て、耐性ウイルス株が生じかつ繁殖するまで、多少延長された期間にわたりHIV−1複製を遅くすることができるのみである[7]。一般的抗−HIV治療に耐える広く蔓延しているHIV−1耐性変異株は、特にHIV−感染した患者が通常抗レトロウイルス療法を受ける開発途上国において、重大な問題となり始めている[8]。
【0004】
HIV研究の25年の歴史にわたり、HIV免疫療法用のワクチン開発の数種のアプローチが提唱され、かつそれらの実践的結果が検証された。これらのアプローチは、ワクチン活性成分、それらの作用機序及びそのワクチンの製造法に従い、以下のように分類することができる:
1型:モノクローナルHIV−特異抗体−ベースのHIV/AIDSワクチン、
2型:HIV粒子破壊−ベースのワクチン、
3型:HIV−ペプチド−ベースのワクチン、及び
4型:HIVペプチドの遺伝子をコードするDNAプラスミド又はウイルス(アデノ−、アデノ随伴、鶏痘、ワクシニアなど)ベクターワクチン。
【0005】
1型:モノクローナルHIV−特異抗体−ベースのHIV/AIDS治療用ワクチン、中でもmAbとしての中和抗体、又は2〜3種のHIV−中和mAbのカクテル[5, 14, 28]
HIV感染機構について最初に発見されたことは、CD4受容体並びにCCR5及びCXCR4共受容体を介した、リンパ球又は他の宿主細胞へのそれの侵入方法であった。次にHIVエンベロープタンパク質構造が研究され(図10a−b)、gp120ループの3Dの変動性並びにCD4及び共受容体の識別及び吸着のためのgp120−gp41複合体形成の重要な役割が基本原則として設定された。ウイルスenvタンパク質を見つけ、HIV細胞侵入に寄与するそれらのエピトープに結合し、又はCD4受容体及び共受容体上の各ドメイン若しくはエピトープに結合し、その結果段階的HIV感染プロセス若しくは細胞結合を妨害すると理解されるモノクローナル抗体は、HIV中和抗体と称された。
【0006】
抗体−ベースのワクチン開発における大きい問題点は、HIV遺伝子変動性によっても引き起こされ、これは、一部のHIV抗原により誘発された組換抗体は、HIV−1の異なる単離体を中和することが不可能であるということである。免疫化により誘発された抗−HIV−1モノクローナル抗体の大部分は、貧弱な交差−中和活性を有するか又はこれを有さず、かつ典型的には、変異のためにウイルス毎に異なるか又は感染性ビリオンの表面に余り露出されていないかのいずれかである決定基に結合する。中和mAbのいくつかの異形が作出されたが、その後臨床試験が、エンベローブタンパク質gp120及びgp41に対する中和抗体をベースにしたワクチンは、標的HIVタンパク質の表面エピトープの変動性及び変化という同じ理由により、1〜2ヶ月以内に働きを停止する(稀に、これらが開始時から働く場合)ことを示した。
【0007】
説明されたワクチン開発アプローチの欠点は、動物の免疫化のためのウイルス抗原のどちらかの抗体のモノクローナル性の選択である。ウイルス標的−タンパク質の種々の変種に特異的な中和抗体のパネルが作製されるような場合であっても、各mAbは、細菌システムにおける組換モノクローンとして作製される。更に原核生物の組換抗体はそれらの抗原に対する親和性が、動物又はヒトの血清中の未変性のAbと比べ、少なくとも10倍低い。動物において誘発されたポリクローナルHIV−特異的免疫グロブリンは通常、ヒトなどの種々の生物について免疫毒性である。それらを、診断目的に使用することは可能であるが、アナフィラキシー反応の発生機会の多さは、それらの免疫療法適用に関する当然の制約である。ハイブリドーマmAb作製技術は、免疫グロブリンにおける生物学的種の差異の問題点を解決しない。ヒト化mAb又はキメラmAbの作製技術は、非常に面倒であり、かなり時間がかかりかつ費用もかかる。従ってこの技術により、抗−HIV免疫療法のための数十又は数百のmAb異形を作製することは不可能である。
【0008】
2型:HIV粒子破壊−ベースのワクチン[9, 20]。天然のHIVビリオン及びHIVペプチドを使用する発想は、15年以上前に明らかにされ、かついくつかの形で生まれ変わった。中でも、小型ウイルスにとって致死的であるが、ペプチド結合及びタンパク質の高次構造に対する破壊作用が比較的低いことが周知である、β−プロピオラクトン、ソラレン又は類似物質による、HIV粒子の感染性活性の保存が発想された。超遠心分離法による患者の血流由来の未変性ウイルスの濃縮は、一部の免疫化に適用可能なウイルス量を生じることができないことが急速に明らかになり始め、これはかろうじて研究分析のために若干の材料を送達することができる。そのため、この種のワクチンの実際上の変形は、実験室株のインビトロ感染培養、又は初代単離株の感染及びそれらのドナーリンパ球との培養のいずれかである。両方の場合において、免疫化後のHIVタンパク質の免疫応答形成に必要な大量のウイルス粒子を提供するための、数百リットルの発酵槽中での大規模生成が唱えられている。
【0009】
この発想それ自身は完全に悪くはなく、これは他の3種のワクチン型の以前には利点さえ有する。第一に、免疫化のための不活化されたウイルス粒子使用の安全性は、ショ糖ピロー(pillow)勾配における超遠心分離後に、HIV RNAコピーの実時間定量を試みる場合に、より自明のものとなる。ウイルスRNAは大部分、小片に崩壊され、かつショ糖勾配における濃縮後に得られたHIVビリオン又はそれらのタンパク質の実濃度よりも、104〜105より低い数のレベルへと破壊される。第二に、未変性ウイルスタンパク質の獲得は、現存する種々のHIV envタンパク質エピトープを対象とする見込みがよりあるように見える。しかしこの最後の説明は、この種のワクチンが働かない真の理由である。
【0010】
HIV粒子破壊−ベースのワクチン開発は、遺伝子変異選択のインビトロ条件が、動物又はヒト生物における同じプロセスの境界からどの程度異なるかの最良の例である。ウイルスペプチドの分析は、異なるウイルス亜型にのみではなく、同じ患者から単離されたウイルス変異株にさえも特異的である、抗原エピトープの高い変動性を明らかにした。しかし全ての実験室株、中でも高度に感染性のBIIIのA455は、envペプチドの配列の一定でありかつより均質な組成を有する。実験室HIV株に関して質量分析法又は3D構造的方法により分析されたenvペプチドライブラリーの多様性は、単独の一患者から採取した同等物から最大5%である。同じ傾向が、ドナー血液リンパ球又はCD4、CCR5若しくはCXCR4−有するヒト細胞培養物とインビトロで共培養された初代HIV単離株について認められる。これは、ウイルスのインビトロ感染に関する選択条件は、生物における天然のウイルス複製及びビリオン形成プロセスとは非常に異なり、ヒト生物におけるウイルス生存率(survivorship)に関するゲートは、インビトロ培養時よりも95%より広いことを意味する。従って大規模インビトロ生成後の不活化ウイルス粒子を使用し抗−HIVワクチンを調製する全ての試みは失敗し、更には実験室HIV株から供給されたペプチド−ベースのワクチンも失敗した。
【0011】
3型:HIV−ペプチド−ベースのワクチン[3, 6, 13, 15, 27, 33, 36]。この最新型のワクチンは、小型のHIVペプチド、受容体認識及び感染活性に寄与するウイルスタンパク質のより大きいHIVタンパク質偽エピトープの複数の小さい15〜20個のアミノ酸断片、これらの小型ペプチドのパネルを含む。小さいレンチウイルスファミリーのメンバーとして、HIVは、小数のペプチド(合計18)からなり、HIVペプチドワクチンの大部分は、gp120(gp140、gp160)又はgp120及びgp41の両方のenvタンパク質の断片を含有し、残りは、維持が困難な(little easy-to-maintain)マトリックスペプチド及びp24断片を含む。このクラスの他の部分は、HIV生活環に関して天然の提供されたグリコシル化により酵母において生成された完全長envペプチド若しくはそれらの大型断片、又はいわゆる糖質−ベースのHIVワクチンである。HIVペプチドワクチンの一部は、治療的免疫化が意図され、一部は、予防活性を有することが言明されている。
【0012】
しかしこれまで組換HIVペプチドのカクテルも合成15〜20個アミノ酸ペプチドのカクテルも、ウイルス感染及び複製からの防御を提供することができなかった。その主な理由は、どのようにこれらのペプチドが得られたかの原理の分析から明らかにすることができる。組換ペプチド配列は、長いTaq−ポリメラーゼPCR(通常1000〜3000bp)により増幅されたHIVゲノム断片のステージを含む、患者由来のウイルス材料からのRT−PCRにより得られた試料の、又はHIV−特異的プライマーPCR後の患者のリンパ球由来のDNAの配列の自動DNA配列決定の技術、その後の形質転換された大腸菌株コロニーの選択により作製される。現在の技術は、高くないとして平均で多様な変種105〜106から1配列ケースの頻度での、ランダム様式のHIV遺伝子型のモノクローナル選択を基礎としており、それから平均感染性ウイルス力価は1%であり、そのためこれは感染活性のあるウイルスの103〜104コピーである。1個体の患者血液の同じ試料からこの技術で作製された二つの配列の完全なHIVゲノムのデータは、劇的に異なることは、HIVゲノム配列を作製しそれら自身を分析する研究者には周知である。従ってこれらの組換ペプチド又は3〜4種の組換ペプチドのカクテルによる免疫化は、例え真核生物発現システムにおいて適切にグリコシル化された(糖鎖付加された(carbohydrated))としても、現在対処されるべきウイルス変異株の不活化に特異的な免疫応答の形成を提供することはできない。従って、HIVワクチン開発アプローチは、これらの標準とは無関係であり、組換ペプチド配列の情報は、他の方法で作成されなければならない。
【0013】
合成アミノ酸の小型HIVペプチド[27]は、矛盾したアプローチにより作製され−ペプチド結合形成の各サイクルに関して、公知のHIV配列における可能性のあるアミノ酸変種の混合物が添加される場合、数百の変種が自動ペプチドシンセサイザーにおいて混合物として作製されている。envタンパク質の可変領域の多くの変種は、ペプチドシンセサイザーを使用し得ることができる。しかしこれらのペプチドのサイズは、15〜20、最大30個のアミノ酸に限定され、より長いペプチド型は、組換システムにおいてのみ作製が可能である。実際に、小型の合成ペプチド及びそれらのカクテルによる免疫化は、HIV免疫反応について十分に高いが、それへの特異性が低いか若しくはないように追加免疫する。個々に、動物(アカゲザル(Rhesus macaques))の合成HIVペプチド免疫化の試みであっても、標準ELISPOT法により試験されたそれらの血液中にHIV特異抗体が存在しないという不満足な結果を引き出す。恐らくHAARTと組合せた治療目的の組成物としての、現存するペプチド−ベースのHIVワクチンは、若干見込みがあるであろう。しかしペプチドワクチン組成物はひとつも、現在まで免疫化後のHIV感染症−予防作用を示していない。
【0014】
4型:HIVペプチドの遺伝子をコードするDNAプラスミド又はウイルス(アデノ随伴、鶏痘、ワクシニア、レトロウイルスなど)ベクターワクチン[11, 12, 16, 21, 26, 29, 30]。世界中で99の臨床試験に関して承認が得られた55種の抗−HIVワクチン中でほとんどは、DNA−ベースのクラスに属している。しかしひとつの候補だけが、第III相臨床試験を通過し、かつ第IIb相を通過する若干の見込みがある[37, 42]。この種のワクチンを使用する発想は、DNA免疫化は、自己免疫合併症及びアナフィラキシー反応などの即時型副作用を生じないという、健常なバックグラウンドを有し、そのためその臨床適用は、安全かつ容易である。この利点にもかかわらず、全てのウイルス及び非ウイルスDNAワクチンは、それらの実際の抗−HIV有効性の可能性に関して、希望を弱める多くの欠点を含む。
【0015】
DNAは、それ自身いかなる免疫反応も引き起こさないので、このワクチン有効性は、下記の3つの条件の大きさであり、これらは各々同等に重要である:
1)トランスフェクション/感染効率、又はいかに多くの細胞が、一旦適用されたある量のDNAから遺伝物質が供給され得るか;
2)発現レベル、又はどのくらい多くのタンパク質が、1種又は複数の遺伝子コピーを得る細胞において発現されているか;
3)免疫応答の継続、又はいかに長くMHCが、標的化病原体を認識するmAbの誘発を続けるか。
【0016】
インビトロトランスフェクション/感染効率の測定は、細胞が分裂の次サイクルを通過するまでに遺伝子導入後24時間に計測された現在のタンパク質を発現している細胞の割合であり、この割合は、同じ条件で同時に導入された蛍光タンパク質又はLacZを発現している細胞について計測される。非−ウイルス系プラスミドベクターに関して、インビトロ効率は、40〜90%を達成することができるが、同じベクターに関してインビボ静脈内投与は、最良の状態で1〜5%生じる。これらの40〜90%(インビボにおいて1〜5%)から、98〜99%は、2週間後には消滅する一過性又はエピソーム性の発現であり、かつトランスフェクトされた遺伝物質のわずかに1〜2%が、細胞ゲノムに挿入され、長期発現を提供する。プラスミドDNAワクチン[16]の量は、その送達物質−それらにより作製された陽イオン性脂質及びリポソーム、陽イオン性ポリマー(ポリエチレンイミン、ポリリシン)、プルロニック並びにそれらの種々の組合せに関する、最大耐量により制限される。実際に、負帯電したDNAに結合しかつ運搬することができる全ての陽イオン物質は、濃度105〜104M及びそれ以上で高度毒性である。非−ウイルスベクターの発現レベルは、ウイルスベクター発現と比べ、比較的高い。
【0017】
ウイルスDNAベクターの感染効率は可変性であるが、通常インビトロ実験の10〜20%を超えない。しかしウイルスベクターは、遺伝物質の直接ゲノムへの送達を提供するそれらの能力において魅力的となり始めている。そのためインビボ投与に関するウイルスベクターの感染効率は平均2〜5%であるにもかかわらず、標的タンパク質の発現は、主として長期間であり、一過性ではない。従ってウイルスDNAベクターは、治療又は予防目的で免疫応答及び抗−HIV活性の十分な持続を有すると仮定された。
【0018】
しかしウイルスDNAワクチン成分、及びいかにそれらが段階的に作用するかを研究するために、それらの予測される活性様式の制限を観察することができる。臨床試験に入っているDNAベクターの第一のクラスは、アデノウイルス構築物(construction)であった。それらの最新型は既に0とは異なる感染効率を示し、及び免疫化mAb後に誘発された力価は全ての免疫化学法により検出可能であるにもかかわらず、これらは決して単独投与において使用されない。このポイントは、アデノウイルスベクター−ADV[11]、又はアデノ随伴ウイルスベクター−AAV[29]は、予定された免疫化の2週間後のELISA、INF−γELISPOT又はウェスタンブロットアッセイにより通常認識されるタンパク質を送達する比較的低い発現のみを引き起こすことである。任意の組換タンパク質又はタンパク質混合物による標準免疫化の2週間後に抗体力価によりADV及びAAVに関するこれらのデータを比較する場合、ADV及びAAVワクチン接種に関して絶対数は5〜10倍より低いことは明らかになり始める。これらの数に注目し、本研究者らは、可能性のある免疫応答の期間についていくつか結論づけることができる。
【0019】
第III相臨床試験に到達し、かつ2003年10月以降タイにおいて16000名の未感染個体に適用されたただ一つのワクチン組成物は、2種のポックスウイルス(ワクシニアウイルス)−HIVワクチン接種(ALVAC−HIV)後の、プラスミドDNA−gag−pol−envワクチン(AIDSVAX B/E)による並べられたワクチン接種を基にしていた[12]。この特許のデータの検証は、ワクチン接種されたアカゲザルの血液試料由来の誘発された抗体の力価は、各免疫化後1〜3週間増加し、かつワクチン接種の残り1年間は、対照数からプラスのプロットへやや外れていくことを示している[12]。免疫応答の継続は、この場合これをいかにして評価するかという問題である。アデノウイルス及びポックスウイルスは、中でも最大のウイルスファミリーであり、これらは表面上及びウイルスマトリックス内にそれら自身のタンパク質を数百個露出していることも忘れてはならない。これは、投与後短期間(1〜2週間)でブーストされた免疫応答は、高度であるが、ほとんど非特異的であり、かつ加えて非特異性は、副作用として免疫毒性反応を引き起こすということを意味している。
【0020】
ウイルスワクチンの有効性における唯一の例外は、レトロ−(レンチ−)ウイルスベクター−ベースのアプローチである[26]。HIVはそれ自身、レンチウイルスファミリーの良い例である。レトロウイルスベクターは、十分に高い(最大5%)インビボ感染効率を提供し、送達された遺伝子タンパク質の発現は、細胞ゲノムの感染のために安定していない場合にも十分でありかつ長い。レトロウイルスベクターは、癌治療用ワクチンとして、臨床試験において、あらゆる他の遺伝子構築物よりも、著しくより良い抗腫瘍反応を示した。HIVを含む全てのレトロウイルスのみが、それらの治療的適用であっても疑わしく、予防的ワクチン接種は注目に値しないものにするある性質を有し−これは、移動性遺伝エレメントとしてヒトゲノムへ侵入するそれらの能力、並びにある期間後そのカスケードが制御できなくなり始める複数の遺伝的変異を駆動し、種々の細胞及び組織において複数の癌悪性転換を引き起こす能力である。
【0021】
DNA−ベースのHIVワクチンの一般的欠点は、PCR及びモノクローニング後の標準DNA配列決定などの、組換HIVペプチド組成物に関して先に説明された方法と同じ方法で得られた当初のヌクレオチド配列に関するものである。105〜106変種と等しい患者1名の血流中のHIV遺伝的変異の平均数を理解することは真実に近い。ランダム様式のこの方法で得られた一つ又はいくつかの配列データで作製された遺伝的構築体は、同じ患者に関してであってもHIV変異株の大半が基本的には働くことができない。並びに全てのプラスミドDNA及び任意のウイルスベクター−ベースのDNAのHIVワクチンは、単独のenv、pol、gag及びそれらの組合せ領域に関するHIVゲノムの配列をベースにしている。これらの構築物がモノクローナルヌクレオチドHIVゲノム領域の配列からなるようになるまで、HIVワクチン開発は袋小路にある。HIV遺伝的変動性及び変異性を根絶するために、その現存する変異の定量分析を継続し、かつより頻繁に存在する変異株に関する見込みのあるワクチンを製剤することは必要である。
【0022】
先に説明されたように、DNA−ベースのHIVワクチンの有効性に関する他の主な制限は、ウイルス及び非−ウイルスの遺伝子治療用ベクターのインビボ送達に関する不完全な公知の方法に起因した貧弱な免疫応答である。あらゆる種類の抗−感染症免疫化を提供するDNA−ベースのワクチン型の見込みが低いことを理解するための科学者の正確な比較は、以下である。任意のタンパク質又は抗原、及び原核生物大腸菌システムにおいて作出されたそれらの組換連結されたIgG軽鎖−重鎖変形に関する仮定のモノクローナル抗体(mAb)を想定して欲しい。ここで本発明者らは、ELISA、ELISPOT、イムノドットブロット、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡などの、全ての可能な実験室免疫反応アッセイにより、抗原がこれらの2種のmAb型へ結合するための親和性の比較を行うことを試みる。本発明者らが、これらの型がひとつのアッセイに収められた各状況において認めるものは、以下である−組換mAbの親和性は、常に天然の動物モノクローナル抗体の親和性よりも少なくとも10倍低く、更には力価決定時の最小結合活性の差異は、100〜200倍に達し得る。ワクチン免疫原性のインビボ評価に関する同じ状況は、研究者が、動物免疫化に使用されるDNA−ベース組成物及びタンパク質−ベース組成物の活性を分析する場合に、認められる。免疫化された動物の血中の現在の抗原に関するmAbの力価として測定された特異的免疫応答の有効性は、遺伝子ベクターとして送達される抗原の方が、当初のタンパク質−抗原よりも、数倍より低いであろう。DNA変種に関する特異的抗原免疫応答の強度は、その「陽性対照」−タンパク質変種よりも常に5〜20倍より低い。
【0023】
可能性のあるHIVワクチン候補として説明されている、更にひとつの小さい組成物の範疇が存在し−これは樹状細胞ワクチンとも称される。それらの開発は、幹細胞科学を基本にし、かつ樹状細胞ワクチンは、かなり経費が高い(平均患者1名の治療に45000〜60000米ドル)にもかかわらず、適度に十分な治療結果を伴う化学療法又は放射線治療と組合せて、数種類の腫瘍の治療に適用される。しかしいくつかのある種の病理又は微生物を識別しかつ殺傷することがインサイチュにおいて示された樹状細胞−マクロファージ前駆体は、同じ患者の血流に自家的にのみ適用されることができるので、HIV治療、更には感染症予防に関するそれらの効能はかなり疑わしい。マクロファージの「教え(teaching)」に関するウイルスのペプチドを得る場所に関する疑問は、同じであり、組換体は、数年配列が固定され、かつ未変性のものは、単離するために実在しないような高濃度で提供されなければならない。従って樹状細胞適用は、重大な抗−HIVワクチンの候補としては提唱することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
HIV−1大流行の制御の唯一の可能性のある方法は、非−感染個体、特に高リスク群の代表者の免疫化を通じて、HIV−1感染を防止及び/又はその発症を停止することができる、ある種のワクチンである。そのようなワクチンは、個別の天然のHIV−1ペプチドのエピトープの混合物、正確にはウイルス表面上外側にのみ存在する主要なHIV−1エンベロープタンパク質gp120、その断片のエピトープ、及び同じく好適な外側部分を伴うenv gp120−gp41四量体の原料としてのgp41ペプチド及び/又はワクチン接種される個体の免疫系を認識可能なエピトープを含有しなければならない。これらのペプチドは、先に言及された理由(3〜4頁13〜30、1〜20行)のために、ウイルス由来の未変性のものであることはできない。並びに組換ペプチドに関して、正確な配列情報が誘導されなければならない。本発明者らは、以下を基にしたenv配列研究を含む、本特許出願において詳細に特定されたHIVワクチン開発の代替法を開発した。
1)未変性ウイルスペプチドのファージディスプレイリバースパンニング技術による収集及びアフィン(affine)精製;
2)HIV−感染した個体の現在のコホート中の多数の変異株において表されたgp120及びその断片の配列に関する情報を送達する一群のLC−MS法を使用する、未変性ウイルスペプチドの引き続きの定量的かつ配列決定分析;
3)HIV及び真核生物のグリコシル化と同じ組換envペプチド産生のためにリーシュマニア属システムを使用する、天然envペプチドエピトープの再構築;
4)a)必要な免疫ブースト期間の延長、b)免疫毒性の制御:を提供する、免疫原性envペプチドのための立体的に安定したリポソームパッケージング又はビロソームのいずれかのアプローチを使用する、HIV予防ワクチン組成物。
【0025】
現在までに実行されたgp120のプロテオーム解析は稀であり、かつ他のウイルスペプチド及び細胞タンパク質のカクテルから精製された未変性のペプチド変種は存在しないので、不完全であった。十分な吸着能を持つカラムでのウイルスenvペプチドのアフィン吸着によるリバースパンニング技術は、この問題点を解決することができる。HIV感染に対する免疫化のためのワクチン組成物が製造される前に、HIV感染した個体の現在のコホートの大半において提示されているenvペプチドのアイソフォームを選択することが必要である。
【0026】
1名の患者について平均105の遺伝的変種という大きい変動性にもかかわらず、最も採用されかつより高い感染生存率を有する変種の選択が、各感染者において実行される。疫学的変動性のデータは、HIV変異株の蔓延は、縄張り的境界、存在する遺伝子配列に応じた性的−又は注射薬物乱用(IDU)−伝染の個人的接触依存性を有することを証明している。優性の(dominating)ウイルスペプチド変種の数は、遺伝的変種よりも決定的にはるかに小さいが、十分迅速に種々の数の優性に変更することができる。及び優性である感染的に危険な変種であるヌクレオチド配列は、情報を生じず、プロテオーム定量及び配列分析のみ行うことができる。本発明者らが試みたこの方法は、液体クロマトグラフィー、エレクトロスプレーイオン化質量分析である。
【0027】
未変性のgp120 HIVペプチドは、高い免疫原性を有するが、エピトープ同一性を失っていない組換変種について同レベルを維持するためには、同様のグリコシル化を持つ組換システムが必要である。この問題点を解決するためには、細胞培養物、酵母培養物及びリーシュマニア属システムを使用することが可能である。真核細胞培養生成は、大腸菌における1000と比べ平均数1000万(decades of million)であるような多数の自己細胞タンパク質のために、ごくわずかな量の組換ペプチドをもたらす。酵母培養物は、十分な生産を提供するが、酵母における糖合成(carbohydration)は、先に提唱されたように、真核生物及びHIVと非常に似ている訳ではない。従って本発明者らは、誘導性かつ高い発現で、真核生物に典型的なグリコシル化様式を伴うリーシュマニア属システムを選択した。リーシュマニア属において作製されたgp120組換変種は、高度かつ100%のHIV−特異的免疫応答を提供し、次の段階は、感染症発症の防止のためにこの反応を延長することであった。
【0028】
立体的に安定したリポソームを、ペプチドワクチン担体として使用することができる方法には、下記のふたつの可能性がある:ペプチドが、リポソームベシクルの水内容物中に封入されるか、又は活性化された遠位PEG末端に結合され、リポソームの表面上に提示されるかのいずれか。両方の場合において、envペプチドは、迅速なプロテアーゼ切断及び分解から保護され、その結果免疫ブースト期間は延長される。立体的に安定したリポソームは、無毒であり、かつそれら自身無害である。これらのベシクル(visicle)は、内部に数週間又は数ヶ月にわたり装荷された(enloaded)免疫原性ペプチドを保持することができ、かつ一度にではなくこの十分長い期間内にそれらの内容物を次第に放出する(lease)ことができる。このことは、1回のワクチン接種についてより多くのタンパク質量を使用することを可能にする。HCCに関する外来タンパク質とのより長い永久的接触が提供される場合に、より強力かつより長い免疫応答が形成される。予防的HIV感染症の伝染及び発症に関するワクチンの成功は、重要であろう。
【0029】
HIVワクチン候補の分析について留意する最後の点は、それらの有効性の前臨床評価のための適切なインビボモデルが存在しないことである。抗−レトロウイルス化学療法薬の開発を伴う更なる治療によるHIV感染症のモデル作製にチンパンジーを使用しようとする全ての試みは納得できかつ妥当であったが、チンパンジー又はアカゲザルにおいて抗−HIV免疫応答を評価することは、不可能である。類人猿及びサルにおいて誘発される免疫原性反応は、同じ抗原免疫化によりヒトにおいて生じる反応とはスペクトルにおいて極めて異なる。更に例えばチンパンジーは、あらゆるHIV亜型に感染し、ヒトにとって致命的であるウイルス負荷のレベルで、疾患発症症状のささいな徴候を伴わずに数年間幸せに生存することができ、更にはチンパンジー独自のシミアンウイルス感染症が生じる。そのため、抗−HIV免疫原性組成物の試験に関して、通常の実験マウスは、類人猿よりも劣ることはないが、統計学的に有意な数が入手でき、かつより頻繁な血液免疫検定ができる。臨床試験のみが、免疫防御作用が現在の新規HIVワクチンにより提供されるかどうかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1:CD−45モノクローナル抗体、共焦点顕微鏡法により行ったHIV感染したヒトのBリンパ球分析: a、b)HIV−特異的mAb RNA単離物の「良好な」給源; c、d)進行性疾患段階の進行(AIDS)を伴う患者からの比較的「不良な」給源; e)感染した患者の血液由来のT及びBリンパ球、透明度スキャニング。
【0031】
【図2A】図2:本発明の方法の好ましい実施態様に従うファージミドDNAライブラリーの獲得手法のスキーム。
【図2B】図2:本発明の方法の好ましい実施態様に従うファージミドDNAライブラリーの獲得手法のスキーム。
【図2C】図2:本発明の方法の好ましい実施態様に従うファージミドDNAライブラリーの獲得手法のスキーム。
【0032】
【図3】図3:本発明の好ましい実施態様に従うELISA技術による陽性抗体産生クローンの選択を示す略図。
【0033】
【図4】図4:組換ファージライブラリー形成及びパンニング選択。
【0034】
【図5】図5a−b:「ヘッド」上に提示された濃厚化されたHIV envペプチド−特異抗体ライブラリーを伴う、組換ヘルパーM13ファージの構造。走査型プローブ顕微鏡(SPM又はAFM)接触モードは、Nikon Eclipse 2000UをベースにしたNanoWizard(JPK Instruments社, 独国)を用い、スティングカンチレバーCSC17/noAl、共鳴振動数12kHz(MicroMash社, エストニア)で行った。ファージの長さは平均800nm、厚さは40〜50nmであり、HIV−特異的ScFvライブラリーの提示は、1個のファージ粒子につき2〜10抗体分子である;この「ヘッド」の測定されたサイズは、平均200〜250nmである。 a)組換M13ファージ、及び提示されたHIV−特異抗体ライブラリーを伴うその「ヘッド」、 b)対照M13Ko7ヘルパーファージ。
【0035】
【図6】図6a−b:リバースパンニング技術に使用された、アフィニティ超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化されたカラムの構造。走査型プローブ顕微鏡(SPM)接触モードは、スティングカンチレバーCSC17/noAlを伴うNanoWizard接触モードを用いて行った。 a)組換ファージ包埋以前の、超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化された吸着剤、 b)M13 mAb包埋後の、提示された組換ファージHIV−特異的ScFvライブラリーを伴う、超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化された吸着剤。
【0036】
【図7】図7a、b:HIV envペプチドを収集するためのリバースパンニング技術。 a)RPアフィニティカラムから溶離された画分のプロファイル(亜型Aプール単離物、PEG−沈降及びそれに続く20%ショ糖勾配中100000gでの超遠心を、濃縮に使用した)。ピークA及びBは、ポリクローナル抗−HIV抗体を使用するウェスタンブロットにより特異的envペプチドの存在についてチェックした。 b)RPアフィニティカラムから溶離された画分のプロファイル(亜型Aプール単離物、限外濾過を、上清の濃縮に使用した)。ピークは、ポリクローナル抗−HIV抗体を使用するウェスタンブロットによりチェックした。
【0037】
【図8】図8a−b:リバースパンニングカラムからのHIV亜型A envペプチドプールの溶離された画分のSDS−PAGE及びウェスタンブロット(ECL検出): a)1−ハイレンジマーカー;2−画分番号4;3−画分番号5;4−画分番号6;5−画分番号7;6−画分番号8;7−画分番号11;8−画分番号9;−全てのアッセイは、β−メルカプトエタノール(β−ME)と共に調製した。 b)1−画分番号1 β−MEあり;2−画分番号2 β−MEあり;3−HIV−PEG β−MEあり;4−HIV−沈降物 β−MEあり;5−HIV−上清 β−MEあり;6−ハイレンジマーカー;7−画分番号1 β−MEなし;8−画分番号2 β−MEなし;9−画分番号6 β−MEなし;10−HIV−PEG β−MEなし;11−HIV−沈降物 β−MEなし;12−HIV−上清 β−MEなし。
【0038】
【図9A】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。 a) #Al.RU.03.03RU20_06_13_AY500393 MKAKGMQRNYQHLWRWGXMLFWXIIM
【図9B】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9C】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9D】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9E】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。 b) B.RU.04.04RU128005_AY682547 MRARGIRKNYQGLLRWGTLLLGILMI
【図9F】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9G】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9H】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9I】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。 c) #B.RU.04.04RU129005_AY751406 MRAKGTRKNYQRLWRWGIMLLGMLMI
【図9J】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9K】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【図9L】図9a−c:配列決定及び2D分析による、Envシグナルペプチドgp120構造の再構築。
【0039】
【図10AB】図10a−d:HIV−1エンベロープペプチドの概略的3D構造 a)gp120コアの概略的3D構造[40, 41] b)gp120 CD4−CCR5結合エピトープの概略的3D構造[24]
【図10C】図10a−d:HIV−1エンベロープペプチドの概略的3D構造 c)CD4−結合ループ形成におけるgp120形質転換の概略的3D構造[22]
【図10D】図10a−d:HIV−1エンベロープペプチドの概略的3D構造 d)gp41エクトドメインの構造及び変動性[34]
【0040】
【図11A】図11a−b:下記をコードするHIV envペプチドDNA断片のPCR増幅: a)全gp120、gp120内側及び外部ドメイン、並びにV2、V3及びV4ループ b)全gp41及びgp41エクトドメイン。
【図11B】図11a−b:下記をコードするHIV envペプチドDNA断片のPCR増幅: a)全gp120、gp120内側及び外部ドメイン、並びにV2、V3及びV4ループ b)全gp41及びgp41エクトドメイン。
【0041】
【図12】図12:種々の発現システムにおけるHIV envペプチド及びそれらの断片の生成: a)誘導性発現のgp120内部ドメイン、gp41エクトドメイン、SD−PAGE b)永久発現のgp120、gp41、SDS−PAGE及びECLウェスタンブロット検出
【0042】
【図13】図13:他のタンパク質発現システムにおけるグリコシル化と比較した、リーシュマニア・タレントラエ(Leishmania tarentolae)細胞(LEXSY発現システム)におけるタンパク質のN−グリコシル化のスキーム。レター(letter)(Jena Bioscience社)において、哺乳類細胞及びリーシュマニア・タレントラエにおいて得られたグリコシル化パターンは、糖鎖末端のN−アセチルノイラミン酸の存在のみ異なる;
【0043】
【図14】図14:1kbスタッファー断片を置換する標的遺伝子のクローニング部位を持つ、pLEXSY_I−2ベクターファミリーのマップ。5’odc及び3’odcは、発現プラスミドのSwaIによる線状化後の、宿主染色体への相同組換領域である。L.タレントラエaprtの0.4k−IR由来のutr1、1.4k−IR camCB由来のutr2、及び1.7k−IR由来のutr3は、最適化された遺伝子−フランキング非翻訳領域であり、これは、LEXSY宿主T7−TRにおける標的遺伝子及びマーカー遺伝子の発現のための転写後mRNAプロセシングのためのスプライシングシグナルを提供する。SPは、L.メキシカナ(Leishmania mexicana)分泌された酸性ホスファターゼLMSAP1(7)のシグナルペプチドを、及びH6はヘキサヒスチジンストレッチを意味する。代わりのクローニング戦略は、標的タンパク質のサイトゾル型(c)又は分泌型(s)発現を生じる。サイトゾル型発現の5’挿入部位は、BglII、NcoI、又はSlaIであり、かつ分泌型発現については、SalI又はXbaIである。このスタッファー断片の3’末端で、NheI、MspCI、又はKpnIの制限部位は、C−末端His6ストレッチへの融合を生じるのに対し、NotIクローニング部位の利用は、このHis6ストレッチを無効にする。マーカーとして、ble(ブレオマイシン耐性)遺伝子及びneo(アミノグルコシドリン酸転移酵素)遺伝子が利用可能である(Jena Bioscience社);
【0044】
【図15】図15a−d:HIV env組換ペプチドのクロマトグラフィー精製の工程: a)6Hisp120id1大腸菌発現(SDS−PAGE 5〜20%)、 b)Ni−NTAカラム上の6Hisp120id1の精製、 c)Biosuite Q -PEEK 10um 4.6×50mmカラム(Waters社, 米国)上の6Hisp120id1の精製 d)Superose12 10/300 GL上のゲル濾過クロマトグラフィーによる6Hisp120id1の精製。精製前及び精製後。
【0045】
【図16】図16a−b:HIV env組換ペプチド免疫ブーストのためのリポソームアジュバントの種類: a)ベシクルの水相の内側に装荷された組換HIV envペプチドを伴う、立体的に安定したリポソーム150nm、PEG−400の概略図; b)PEG活性化された遠位端に結合された組換HIV envペプチドを伴う、立体的に安定化されたリポソーム200nm、PEG−2000の概略図。
【0046】
【図17】図17:SSLワクチン成分のガウス及びニコンプ(Nicomp)サイズ分布:ベシクルの平均直径は、155nmである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、本ワクチンによりチャレンジされた個体において誘発された特異化された免疫応答により、その保護活性を提供する、HIV、好ましくはHIV−1亜型A及びBの予防ワクチンを提供する。従って本活性物質は、以下に詳細に説明された複合技術により調製及び選択された組換ポリペプチド/ペプチド混合物である。基本的ワクチン成分は、ウイルスの表面タンパク質及びエンベロープタンパク質並びにそれらの断片により表され、これは好ましい実施態様に従い、グリコシル化の状態が異なるHIVエンベロープタンパク質gp120、gp140、gp160(図1)及びgp41、gp120のV1−V3ループの保存ドメイン、gp120 V1−V5ループの耐性−関連した可変部分に対する抗体、gp41のグリコシル化された変種;HIV−1エンベロープスパイク及びgp41タンパク質の外部部分によるCD4受容体の結合時に高次構造の変化を受ける近位V1/V2及びV3ループを伴う、ウイルスエンベロープタンパク質gp120、gp140、gp160へのCD4結合エピトープ;ウイルスエンベロープタンパク質のCXCR5及びCCR4共受容体結合部位;p24ウイルスペプチドの種々のエピトープ:を含んでなる。
【0048】
これらの組換ポリペプチド及びそれらの混合物は、種々のドナーB−リンパ球mRNAから作製された抗体の組換ファージディスプレイライブラリーを用い、収集され、同定され、かつクローニングされる。各々の作製されたファージ抗体ライブラリーは、組換gp120−、gp41及び未変性のHIV−ポリペプチドの種々のエピトープの結合に対し、好ましくは組換gp140−、gp160−及びp24 HIV−1亜型Aタンパク質上に存在するエピトープの結合に対しても、特異的である。
【0049】
これらの組換ファージ抗体ライブラリーは、検出、分析及び/又は精製の手段として種々の適用において使用されてよい[23]。前記抗体ライブラリーを使用する適用は、免疫検定、免疫ブロット、クロマトグラフィーなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体は、HIV治療及び/又は予防のための新規医薬品の開発に関しても有用である。
本発明の好ましい実施態様においては、M13KO7ファージ上に提示された組換抗体が、HIV予防ワクチンの開発に使用される。
【0050】
ファージミドライブラリーにより展示された抗体断片は、本質的に保存された高次構造のHIVタンパク質エピトープに結合するので、該抗体の標的は、HIV感染症に対するワクチンとして適格であり、チャレンジ時に、個体の免疫系は、これらのエピトープに対する特異的免疫応答を生じるだろうから、すなわち最終的に記憶細胞となる成熟したB細胞及びT細胞はその個体に免疫を伝達することを示す。
【0051】
本発明のHIVワクチンは、組換gp41及びp24 HIV−1亜型Aタンパク質、並びにそれらの断片(実施例3の表9)は本発明の方法により調製された抗体に結合する、gp120、gp140及びgp160の断片、加えて通常の担体及び賦形剤及び任意に免疫刺激剤を含有する。
【0052】
本ワクチンは、任意のHIVウイルス、更には変異したHIVウイルス上に存在し得るエピトープに特異的な、記憶細胞による個体の免疫系を提供することにより、HIV感染症の獲得を防止し、かつ更なる進行も防止するであろう。
【0053】
前記組換タンパク質及び/又は断片は、本発明の方法により得られたHIV−特異抗体により選択された未変性のHIV−1エンベロープタンパク質の結合及び分析により獲得された配列情報を基にしている。
詳細には、エンベロープタンパク質などのタンパク質は、超遠心分離及びウイルス粒子の溶解などの好適な方法により破壊されたウイルス粒子から得られる。
【0054】
好適なタンパク質の選択は、当業者に公知の任意の好適なスクリーニング法により実行されてよい。好ましい実施態様において、この選択は、(i)ウイルスのエンベロープタンパク質の収集のための提示された抗体による組換ファージを使用するファージパンニング、及び/又は(ii)培養のためにプラスチック表面に接着されたHIV−特異抗体のアフィン吸着、及び/又は(iii)カラムに包埋されたHIV−特異抗体による、ウイルスエンベロープタンパク質のアフィンクロマトグラフィー選択のいずれかにより実行されてよい。
【0055】
次工程において、入手されかつ選択された未変性のウイルスタンパク質の配列及び/又はアイソフォームの3D高次構造が、同定されてよい。従って手順は、HIV−1罹患個体の血流中、更にはNRTI、NNRTI及びHAARTの変形などの種々の投与計画で抗レトロウイルス療法を受け取った患者の血流中を循環するgp120、gp41及びp24などの、ウイルスタンパク質の高度に特異的な可変断片及び/又は定常断片の数種の変種の混合物を提供する。
【0056】
前記配列を基に、ウイルスタンパク質の組換ポリペプチド及び/又は断片が作出される。これらの配列は、それらに対する好適な免疫応答を誘導するために免疫系により認識され得るポリペプチドの作製に適した方法を使用することにより得ることができる。
【0057】
前記組換ポリペプチドは、例えばリーシュマニア誘導型発現システムのような真核生物発現システム及び真核生物−様グリコシル化を備える酵母などの、任意の好適な発現システムにおいて得ることができる。
【0058】
本発明のHIV−1 A及びB亜型予防ワクチンの種々の変種の調製のための例証的かつ一般的技術は、以下により詳細に例証されている、工程1−9を含む:
1.HIV−特異的ScFv抗体の断片を含む、ヒト組換IgGファージミドライブラリーの作製(ファージディスプレイ技術);
2.HIV−特異抗体のScFv断片を提示している組換ファージミドライブラリーの濃厚化(バイオパンニング);
3.任意に、PBMC−MT感染法によるインサイチュでの抗レトロウイルス療法ナイーブのウイルス材料の増殖;
4.HIV粒子及びペプチドの濃縮;ウイルス不活化及び破壊;
5.リバースパンニング技術によりファージミドライブラリーを提示しているHIV−特異的組換ScFvによる未変性のHIV envペプチドの収集;並びに
6.任意に、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)法による、envペプチド変動性及び頻度の定量分析及び配列分析;
7.任意に、主要HIV envペプチドのクローニング、及びリーシュマニア・タレントラエにおけるワクチン開発のための組換ペプチドの作製;
8.任意に、組換HIV envペプチドのクロマトグラフィー精製及び3D構造解析;並びに
9.好ましくはワクチン送達のビヒクルとして立体的に安定したリポソーム又はビロソームを使用する、HIV予防ワクチン免疫ブースト組成物の調製。
【0059】
1. HIV−特異的ScFv抗体の断片を含む、ヒト組換IgGファージミドライブラリーの作製(ファージディスプレイ技術);
ここで本発明の方法において、ファージミドライブラリーが、以下を含む段階i)からiii)に従い、工程1)において作製される:
i)各々、HIVに感染した多数の個体から得られたBリンパ球において発現されたIgGの、軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするRNA由来のDNA断片の増幅が、調製される段階;
ii)IgG重鎖の可変領域をコードする核酸に会合されているIgG軽鎖の可変領域をコードする核酸を含むひとつの構築体への、段階i)で得られた軽鎖及び重鎖の二つのDNA断片の集成;
iii)pCANTABファージミドベクターへの形質転換。
【0060】
詳細には、最初に、HIVにより感染していることがわかっており、かつその中にHIV特異抗体が存在することが予想される多くの個体から、B及び/又はTリンパ球が単離される。抵抗性HIV変異株を持つ個体も含まれてよい。これらのB細胞の単離は、任意の公知の技術、例えばロイコフェレーシス、引き続きのリンパ球集団からのB/T細胞の単離[19]などにより実行されてよい。引き続きRNAが、B/Tリンパ球から、例えば論文[23]に例証されたような当該技術分野において周知の技術により、単離される。
【0061】
ScFvライブラリー作製のために、HIV−特異的免疫グロブリンの配列を含むmRNAが単離されることが好ましい。これに関して、Bリンパ球の数は、RNA単離前のHIV−感染者の血液中の、例えば共焦点顕微鏡分析によるCD45 mAb免疫検定により、評価される。図1に示されたデータは、AIDS疾患及び症状の進行した段階の患者の一部は、総単離されたリンパ球に対するBリンパ球の非常に低い比率を有し(図1c、d)、かつ通常低いCD45免疫染色は、高いウイルス負荷及び非常に低いCD4:CD8状態に相関していることを示している。他のもの(図1a、b)とは異なり、これらの患者は、HIV−特異的ファージミドライブラリー作製のコホートに関してかなり不良な供給源である。先行する抗レトロウイルス治療に沿った又はその過程の高いウイルス負荷並びにそれらの頻度は、HIV−特異的ScFvライブラリーを得る機会を制限するものではない。
【0062】
そのように得られた総RNAは、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の定常領域に特異的な、例えばオリゴdTを使用するか、又は好ましい実施態様による、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの使用により、cDNAに転写される。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の異なる定常領域の配列は、当該技術分野において周知であり、その結果cDNAへの転写に好適なプライマーは、容易にデザインすることができる。従って手順は、関心のない材料はその第一工程において排除されるので、RNAプール(複数)中の免疫グロブリン転写産物の最初の選択、及び種々のドナーからの種々のRNA−試料のより容易な取り扱いを可能にする。同じくmRNAをcDNAへ転写する前の種々のドナーからのRNA−プールの組合せも構想され、かつこれはより大きい多様性が得られる(下記参照)ので好ましい。こうして調製されたcDNAの相補体は、当該技術分野において周知の技術により合成される。
【0063】
十分量のDNA断片を調製するために、関心対象の領域は、B/Tリンパ球から得られたmRNA、cDNA又は鋳型としてのcDNAから調製された二本鎖DNAを直接用いて増幅することができる。
【0064】
前記PCR反応に関して、増幅される核酸配列の5’末端及び3’末端にアニーリングする好適なプライマーが使用され、これらは一般に、長さ約10〜40、好ましくは15〜30、より好ましくは20〜30ヌクレオチドである、オリゴヌクレオチドである。
【0065】
リバースプライマーとして、その配列が、免疫グロブリンの定常領域に由来したオリゴヌクレオチドが使用されてよい。好ましくは該リバースオリゴヌクレオチドプライマーは、対応する重鎖のCH1領域に、又はλ型及びκ型軽鎖のCλ又はCκ領域にハイブリダイズする。使用されるフォワードプライマーは、重鎖及び軽鎖の可変領域の反対末端にハイブリダイズする。
【0066】
好ましい実施態様において、一次PCR増幅のためのフォワードプライマー及びリバースプライマーは、V BASEデータ-ベース(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk)から選ばれた、表1から3に示された核酸配列からなる群から選択される。このPCR反応は概して、長さ約750の断片を生じる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
次工程において、段階i)において得られた軽鎖及び重鎖の二つのDNA−断片の、IgG重鎖の可変領域をコードする核酸に会合されているIgG軽鎖の可変領域をコードする核酸を含むひとつの構築体への連結は、各々、IgG軽鎖及び重鎖の可変領域ScFvを含むポリペプチドの発現を可能にする。
【0071】
好ましい実施態様により、可変軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片間の特異的連結を得るために、段階i)において得られた試料の量は、例えば二つのパーツにアリコートとされ、かつ任意に希釈される。次に、mRNAからの増幅によるcDNA、cDNA又はcDNA由来の二本鎖DNAのいずれかにより調製された該DNA断片は、軽鎖又は重鎖に特異的なリンカーと個別に接触されてよく、その結果このリンカーは、各試料パーツ中のみのそれぞれのDNA断片に結合する。すなわち一方のパーツは、軽鎖のみに関するリンカーを有するのに対し、他方のパーツは、重鎖のみに関するリンカーを有するということである。使用されるリンカーは、互いに好適な条件下でのハイブリダイゼーションを可能にし、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含むDNA断片を生じるであろう。再度、これら二つのDNA断片の会合は、これら二つのDNA断片の連結がインフレームで実行され、その結果は軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を持つポリペプチドを生じるであろう。同じ事が、望ましいならば、二つの重鎖及び二つの軽鎖を特異的に得るために実行することができる。表4及び5において、好ましいプライマーが列記されている。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5A】
【表5B】
【0074】
本発明のより好ましい実施態様において、((Gly)4Ser)3ポリペプチドリンカーをコードするリンカー断片が、免疫グロブリンの可変性の重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列に追加される。この重鎖及び軽鎖のリンカーパーツは、互いにアニーリングし、例えばTaqSE DNAポリメラーゼなどの、TaqSE DNAポリメラーゼの存在下でフィルイン反応を刺激する。最後に重鎖及び軽鎖は、それらのDNAリンカー断片パーツを使用し、単独の遺伝子に集成される。
【0075】
従って手順は、免疫グロブリン軽鎖又は重鎖の可変領域をコードする核酸の、各々、当初得られたRNAプール中に存在しない抗原結合部位を形成するために軽鎖及び重鎖の組合せも含む、別の免疫グロブリン軽鎖又は重鎖の可変領域をコードする核酸との無作為連結により、人工的に作製された非常に多くの抗体を得ることを可能にする。示されるように、免疫グロブリンの可変領域上の既に天然に予め形成された抗原結合部位のパーツを使用し、かつそれらを無作為に組合せて、HIVに感染した個体において天然に産生される抗体と比べ、HIVタンパク質に対し増強されかつ一定の結合親和性を示す抗体も作製される。
【0076】
加えて制限部位が、こうして得られたDNA−断片に導入され、これは、例えばクローニング工程などの、後続の適用において有用である。原則として、任意の好適な制限部位が、必要に応じて使用されるが、当業者の知識内でこれはCHO−K1oseの好適なものである。制限部位は、例えば制限部位の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーの使用、又は各々、5’末端及び/若しくは3’末端に組合せられた制限部位の核酸配列を含むアダプター分子の使用などの、当該技術分野において公知のいずれか適当な方法により導入されてよい。
【0077】
本発明の好ましい実施態様において、SfiI及びNotI制限部位が、好ましい実施態様に従い軽鎖及び重鎖核酸配列を含む連結された核酸断片の末端に導入され、そこでこれらの制限部位は、クローニングベクターへの更なるクローニング工程に使用される。SfiI及びNotI制限部位は、各々、該連結された断片(ScFv遺伝子)の5’末端及び3’末端に付加される。これらの特定の制限部位は、抗体遺伝子において非常に低い頻度で生じ、例えば軽鎖及び重鎖核酸配列を含む、得られた連結断片のほとんどが、単独のSfiI/NotI断片としてクローニングされることを可能にする。本発明のより好ましい実施態様において、SfiI及びNotI制限部位は、オリゴヌクレオチドプライマーを介して導入される。好ましい使用されるSfiI−部位−及びNotI−部位−含有するオリゴヌクレオチドプライマーは、論文[21]のプライマー配列を基にデザインされる。軽鎖及び重鎖核酸配列を含む得られた連結断片の末端でのSfiI及びNotI制限部位の導入に有用なプライマーは、表6に示されている。
【0078】
【表6A】
【表6B】
【0079】
軽鎖及び重鎖核酸配列を含む得られた連結断片のクローニング及び発現に関して、当業者に公知のいずれか好適なクローニング及び/又は発現ベクターが使用されてよい。好ましい実施態様において、例えば、pCANTAB 5E.coliファージミドベクターを含む、ファージミドベクターが使用される。
【0080】
ファージミドpCANTAB 5Eは、M13及びCo1E1プラスミドの両複製起点を含み、その結果好都合なことにプラスミドとして増幅されるか、あるいはM13KO7などのヘルパーファージの助けにより、組換M13ファージとしてパッケージされることができる。SfiI及びNotI消化された抗体可変領域遺伝子は、pCANTAB 5Eファージミドベクター内のリーダー配列とM13遺伝子3の本体(main body)の間でクローニングされる。得られる融合タンパク質は、両方の親タンパク質の機能を保持している。g3pリーダー配列は、本タンパク質の大腸菌の内膜/ペリプラスムへの輸送を指示し、そこで主g3pドメインは、該融合タンパク質を該集成ファージの先端へ結合する。pCANTAB 5Eは、クローニングされたScFvとg3pの配列の間の接合部に、アンバー翻訳停止コドンも含む。得られるscFv断片を含むpCANTAB 5Eプラスミド誘導体のプールは、TG1などの、大腸菌supE株の形質転換に使用される。supEにおいて、大腸菌株翻訳は、pCANTAB 5E内のアンバー停止コドンまで続き、そのファージ先端に展示されたScFv−g3p融合タンパク質を作製する。
【0081】
【表7】
NotI制限エンドヌクレアーゼの認識部位は、青色で記し、SfiI制限エンドヌクレアーゼの認識部位は、緑色で記している。
【0082】
HB2151などの非サプレッサー株において、停止コドンが認識され、タンパク質合成は、scFv遺伝子の末端で中断され、かつg3p融合タンパク質は合成されない。この場合、得られるScFvタンパク質は、細胞周辺腔に輸送されるが、これは該遺伝子3ドメインを欠いているので、ファージ粒子には集成されない。むしろ可溶型抗体断片が、ペリプラスム中に蓄積し、かつ延長されたインキュベーション時に、培地に漏出する。従って、HB2151及び類似の大腸菌株は、選択された抗原陽性ファージによる、それらの感染後の可溶型抗体の産生に使用され、かつ現在の適用においては使用することができない。scFvライブラリー作製の工程は、実施例1に示されている。
【0083】
2. HIV−特異抗体のScFv断片を提示している組換ファージミドライブラリーの濃厚化(バイオパンニング);
抗体の発現は、抗原に結合することが可能であるポリペプチドを得るのに適した宿主において得ることができ、及びこうして得られたポリペプチドは、異なるドナーから単離された組換gp120−、gp41−及び未変性のHIV−ポリペプチドと共に得られた。これにより、発現されたポリペプチドが宿主の表面上に発現される場合に、これは有利ではあるが、必須ではない。抗体の発現に適した宿主は、ウイルスシステム、原核細胞及び真核細胞及び/又は細胞培養物を含む。
【0084】
好ましい実施態様において、該抗体の断片は、ファージディスプレイライブラリーを作製するバクテリオファージM13において発現され、これはファージディスプレイ技術の使用のために異なるファージにより各々提示される非常に多数の異なる構築体の展示を可能にする。このファージディスプレイアプローチは、免疫グロブリン遺伝子のクローニング並びに機能性抗体の発現及び検出のための強力なツールである。抗体の可変性の重鎖及び軽鎖断片を、モノクローナル抗体選択の段階を伴わずに、HIV−特異抗体のプール又はライブラリーとしてファージ表面上に展示された融合タンパク質として、得ることができる。このアプローチは、任意の抗原に対する抗体を迅速に見つけ、かつ必要な場合には、他の発現システムにおけるグリコシル化を伴う及び/又は伴わずに、それらの可溶型変種を作製することを可能にする。
【0085】
ファージミドライブラリーパンニングは、多数のクローンの非常に迅速なスクリーニングを可能にするインビトロ技術であり、ここで選択されたHIVポリペプチドへの結合親和性を示しているそれらの表面に抗体を提示しているファージは、組換ファージミドの維持及び更なるスクリーニング工程のための新規ファージの作製のために同定されかつ使用することができる。ファージ−提示している抗体ライブラリーは、抗原−陽性クローンを同定するために、当該技術分野におけるSDS−PAGE、ウェスタンブロット及びELISAスクリーニングのクロスサイクルにより、結合親和性に関して分析することができる。
【0086】
展示されたScFv抗体断片は、それらの抗原−結合能を保持しているので、従って、親和性選択により、特異抗体を発現している組換ファージを濃厚化することは可能である。このアプローチにより、規定された特異性及び親和性の抗体は、集団から迅速に選択される。得られた抗体遺伝子ライブラリーは、抗原結合能を改善するように、スクリーニングされる。この技術の工程は、パンニングと称され、HIV−特異的ScFv断片を提示しているファージが、引き続き:
i)組換gp120−、gp140−、gp160−、gp41 HIV−1亜型A及びB envペプチド、
ii)種々のHIV−感染ドナーから単離された未変性のHIV envポリペプチド:
に結合し、かつ収集されることを含む。好ましい実施態様において、先に列記された全てのポリペプチドに結合親和性を示すファージライブラリーが選択されるので、展示された抗体の数は、107〜1012から102〜103へと減少する。該ポリペプチドの特異的組換HIVポリペプチドとの独立した接触サイクルのために、ここでこれらのポリペプチドの配列は、(i)公知であり、かつ(ii)一定であり、並びに異なるドナーから単離された未変性のHIV−ポリペプチドにより、ここでこれらのポリペプチドにおいて変異が生じ、抗体を選択することが可能であり、これは本質的に公知のHIV変異体全てに結合し、このことは本抗体は、本質的に該HIVポリペプチド上の一定の高次構造を認識することができることを指摘している。
【0087】
従って手順は、ファージの表面上に提示されたHIV−特異的組換抗体ライブラリーを誘導し、かつ感染した個体からのものの巨大なプールから選択されることを可能にし、これらは、二つの異なる方法:
i)標準バイオパンニング手法[4]
ii)固形状態の固定された未変性のHIVペプチドのニトロセルロースメンブレンでの包埋:により、例えこれらのポリペプチドにおいて変異が生じても、選択されたHIVポリペプチドへの結合親和性を示す。
【0088】
第一の方法に従い、i)組換ファージ作製のために、M13KO7ヘルパーファージ4×1010pfuを添加し、1時間のプレインキュベーション、並びに100μg/mlアンピシリン及び50μg/mlカナマイシンの存在下、37℃で、250rpmで攪拌しながら12時間のインキュベーションの間に、対数期形質転換されたTG1大腸菌培養物が調製された(典型的ファージは、1010〜1011アンピシリン−導入単位/mlを生じた)。ファージは、他のプラスチック表面には、非特異的に吸着するので、ポリプロピレンチューブが推奨される。
【0089】
その後PEG沈降を行う。細菌培養物を、1000gで10分間遠心し、上清を収集し、冷却する。上清に、1/5v/v冷溶液、20%PEG/2.5M NaClを添加し、0℃で60分間インキュベーションし、その後Beckman JA-20ローターにおいて10000gで、4℃で20分間遠心する。上清は廃棄する。ペレット(これは容易に視認できないことがある)を、0.01%チメロサールを含む2×YT培地16ml中に再懸濁する。本発明者らは、上清が貯蔵される(4℃で)場合には、これを0.45μmフィルターを通らせ濾過することを推奨した。この組換ファージを含有する溶液は、パンニングに使用する。
【0090】
PEG沈降及びファージパンニングのサイクルは、一部のファージディスプレイ組換抗体調製品は不安定であるので、レスキュー後できる限り直ぐに実行されなければならない。最小培地プレートから対数期TG1細胞コロニーを、2×YT培地5mlに移し、250rpmで振盪しながら、37℃で一晩インキュベーションする。次に新鮮な2×YT培地10mlに、この一晩培養物100μlを接種し、かつ250rpmで振盪しながら、37℃で、この培養物のA600が0.3に到達するまで、インキュベーションする。
【0091】
25cm2組織培養フラスコを、例えばPBS又は0.05M Na2CO3(pH9.6)などの、好適な緩衝液中に10μg/mlに希釈された抗原5mlでコーティングする。抗原によるコーティングは、室温で1〜2時間、又は4℃で一晩行うことができる。プレートのコーティングの条件、すなわち緩衝液並びにインキュベーションの温度及び時間は、抗原によって決まり、かつ該新規組換体が由来した当初のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のために使用される免疫検定の条件に類似していなければならない。抗原のコーティング濃度は、所望の組換ファージ抗体の親和性(抗原−結合能)に応じて変動することができる。高親和性抗体について、低親和性抗体よりも、より少ない量の抗原が必要である。しかし特異的親和性を伴う抗体の単離のためには、溶液−ベースの選択のほうが、選択に使用される抗原の量を、より正確に制御することができるので、固相選択よりも好ましい。
【0092】
このフラスコを、PBSで3回洗浄し、各洗浄後にはこれを完全に空にする。次にこのフラスコを、フラスコ表面上のあらゆる残存する部位をブロックするために、ブロッキング緩衝液で完全に満たし、室温で1時間インキュベーションする。このフラスコを、PBSで再度3回洗浄し、各洗浄後にはこれを完全に空にする。
【0093】
保存剤として0.01%チメロサール又は0.01%アジ化ナトリウムを含有するブロッキング緩衝液を、新たに調製する。PEG−沈降された組換ファージ16mlを、ブロッキング緩衝液(保存剤を含有する)14mlで希釈し、かつ室温で10〜15分間インキュベーションする。パンニング工程時に、非−特異的疎水性タンパク質−タンパク質相互作用が、未変性M13ファージタンパク質と一部の抗原の間で生じることがある。この相互作用は、Triton X−100が希釈されたファージ上清に最終濃度0.1%で添加された場合に、低下することができる。あるいは、グリシン又はトリプシン溶液による特異的結合ファージの溶離を行うことができる。希釈された組換ファージ20mlをフラスコに注ぎ、かつ37℃で2時間インキュベーションする。次にこのフラスコを空にし、PBS 30〜50mlで20回、及び0.1%Tween 20含有するPBSで20回洗浄する(洗浄瓶は、洗浄液の分注にうまく働く)。各回、フラスコは完全に空にする。
【0094】
対数期のTG1細胞全量10ml(工程1参照)を、フラスコ又はパンニング容器に加え、37℃で1時間インキュベーションする。1時間後、10mlの細胞懸濁液の100μlを取り出す。それらから、2×YT培地中に、細胞懸濁液の10倍希釈液を調製する(1:10、1:100、1:1000)。未希釈細胞100μl及び各希釈物100μlを、個別のSOBAGプレート上に、滅菌したガラス製スプレッダーを使用し、配置する。乾燥した場合、これらのプレートは倒置し、30℃で一晩インキュベーションする。これらのコロニーがインキュベーション後に採取するには余りにも小さい場合は、このプレートを、30℃で更に4〜8時間放置することができる。これらのSOBAGプレートは、以下のように操作することができる:a)細胞をプレートからこすりとり、ストック培養物を作製する。このプレートを、2×YT培地5mlに浸し、滅菌したガラス製スプレッダーで細胞を培地へこすりとる。グリセロールを最終濃度15〜30%となるよう添加し、−70℃で貯蔵する。b)このプレートを密封し、後日レスキューするために、4℃で最高2週間貯蔵する。
【0095】
[25]ii)から改変された第二の方法に従い、未変性のHIVペプチドの混合物を、10%SDS−PAGEゲル上を泳動させ、引き続きウェスタン転写緩衝液(25mMトリス、193mMグリシン、及び20%メタノール)中で、ニトロセルロースメンブレン上に電気的に転写する。この抗原の位置は、メンブレンをポンソーレッド又はクマシーブリリアントブルーのいずれかで染色することにより決定される。タンパク質バンドを含むメンブレンの7×30mm2切片を切り出し、10%ブタゼラチン、5×1011 CFU/mlヘルパーファージと共に、4℃で一晩インキュベーションすることによりブロックする。ブロック後、このメンブレンを、結合緩衝液(5%ゼラチン、3×1011 CFU/mlヘルパーファージ、0.5M NaCl)に移し、scFvファージミド抗体ライブラリー1012 CFUを添加する。ファージライブラリーは、メンブレンと共に、4℃で4時間、穏やかに揺動しながらインキュベーションする。このメンブレンを、PBS、0.1%Tween 20で6回(各洗浄につき容量100ml)、及びPBSで6回(各洗浄につき容量100ml)洗浄する。あるいは、これらのスポットを、0.1%Tween 20を含有するPBS(PBST)で5分間かけて3回、25%グリセロール含有する10%MPBSで20分間かけて5回、及び最後にPBSで5分間かけて3回洗浄する。タンパク質バンドを含むメンブレンを、レーザーブレードで切り出し、ファージを、100mM TEAにより、室温で10分間かけて溶離する。中和後、溶離されたファージ粒子を、ゼラチン−ブロットされたメンブレン又はゼラチン−コーティングされたイムノチューブと共に、室温で30分間インキュベーションする。その後上清を、TG1を感染するために使用する。ファージは、先に説明されたように、次の選択ラウンドのために大腸菌から調製される。
【0096】
3. PBMC−MT法による抗レトロウイルス療法ナイーブ患者のウイルス材料単離体の増殖;
HIVは、CD4−CCR5−CXCR4受容体が濃厚化された細胞培養物においてうまく増殖することができることは公知であるが、実際にはこの方法には多くの制約がある。第一に、患者由来の未変性ウイルス材料又はインビトロ感染症の実験室株の感染力価は、種々の方法(リアルタイムRT PCR、p24 ELISAなど)で測定された総ウイルス濃度の1〜2%より多くなることはない。このことは、例えば、感染材料中のウイルスコピーの数が105である場合、研究者がインビトロ増殖から分析することができる最初のコピー数は、わずかに103であり、残りの102の当初のHIVの可能性のある異形は、分析から外れるということを意味する。第二に、インビトロ感染選択を通過したHIV変異株の数は、最良の場合において、当初の103個からの数個の配列変種であり、従って実験室ウイルス株は、HIV遺伝子及びペプチドの変動性の実際の状況を決して表していない。第三に、HAART又は他の抗レトロウイルス療法で治療した患者由来のHIV は、インビトロで増殖する能力を失っており、従って抵抗性HIV変異株は、インビトロにおいて培養することができない。第二に、本発明者らの未変性ウイルス培養実験は、下記の場合に、最良の結果が得られることを証明している:
i)HIV−感染患者のリンパ球を、説明されたように[19]、フィコール−プラーク溶液を使用する、ヘパリン処理した新鮮な血液由来の健常ドナーのリンパ球と共にインキュベーションする。ロシア連邦領土に広がったHIV−1亜型Aに関して、HIV−感染したリンパ球が、説明されたような[19]健常ドナーの新鮮血液から単離された単球と共にインキュベーションされる場合に、ほとんどの場合において、感染はうまくいくことは、留意する価値がある。
ii)濃度0.25×106/mlで調製されたHIVとのインキュベーションのために使用されるMT−2又はMT−4又は任意の他の株化細胞(CCR5F−CEM、PM−I、HeLa、U937など)は、その後、RPMI−1640培地の総容量50mlまでの添加、及び425gで10分間の遠心により、2回収集されるHIV−繁殖された同数の単球と共培養する。細胞混合物は、IL−2 10μl/mlを添加したCL培地中に再懸濁し、25cm2組織培養フラスコ中で直立した位置で37℃でインキュベーションする。ウイルス−含有培地は、培養培地の半量を取り出し、これを同量の新鮮培地(RPMI+10%FCS)と交換することにより、3〜4日毎に収集する。
【0097】
ウイルス感染活性の有効性は、細胞死及びシンシチウム形成の顕微鏡分析並びに同じくp24 ELISA試験によって、制御される。収穫された培養培地は、3000rpm(1000g)で15分間の遠心により、細胞を透明化し、−80℃で貯蔵する。
【0098】
4. HIVペレットの濃縮(限外濾過、超遠心分離による)、ウイルス不活化及び破壊;
ウイルス粒子を約20重量%含有するストック溶液を、血漿又は培養上清から作製する。最初に、上清を、3000rpm(1000g)で15分間遠心し、次に得られた上清を、13200rpm(16000g)で次の15分間遠心する。20%ショ糖の試料総容積の約半量を、超遠心チューブの底に積層し(ショ糖溶液の密度は1.16−1.18g/sm3である)、その後レトロウイルス粒子を含有する上清を、このチューブの上方に注ぐ。チューブを、38000rpmで、MLS−50ローターOptima MAX, Beckmann(160000g)で、1時間35分遠心する[19]。ペレットを、少量の培養培地(例えばRPMI1640)に溶解する。
【0099】
HIVの不活化
HIVペレットの溶解及びHIVタンパク質の獲得
第一の方法を、論文[1]に説明されたように行う。HIV溶解緩衝液(放射線免疫沈降緩衝液)の組成は、20mMトリス−Cl、pH8.0、120mM NaCl、2mM EDTA、0.5%デオキシコール酸、0.5%NP−40、2μg PMSF、10μg/mlアポプロテイン、10μg/mlペプスタチンAを含有する。界面活性剤の添加後、磁気スターラーの上で低温加熱(50℃)しながら、穏やかに混合する。
【0100】
第二の方法は、質量分析及び結晶解析のためのペプチドの混合物の調製に関する標準である。得られたHIV−1タンパク質混合物のpHは、2N HClにより2.5に調節し、0.15%(wt/vol)ブタペプシン(Sigma Chemical社, セントルイス, MO)と共に37℃で4時間インキュベーションする。80℃で15分間加熱することにより、加水分解を停止し、その後pHを、2M NaOHの添加により、7.5〜8に調節する。その後加水分解したタンパク質混合物を、10kDa加水分解メンブレン及びペプシンにより限外濾過し、残りの加水分解されないタンパク質を除去する。濾過された加水分化されたタンパク質混合物は、凍結乾燥し、−80℃で貯蔵する。
【0101】
5.リバースパンニング技術によりファージミドライブラリーを提示しているHIV−特異的組換ScFvによる未変性のHIV−1 envペプチドの収集;
抗原ファージを提示したライブラリーを使用するワクチン開発のためにファージディスプレイ技術を使うアプローチは、論文[35]において曖昧に説明されている。組換ファージScFvライブラリーカラム包埋の手法を開始する前に、M13提示されたライブラリーを、改変されたウェスタンブロット法により特異性に関してチェックする。プローブを、勾配SDS−PAGEで泳動し、引き続きニトロセルロース上に電気的に転写する[25]。この抗原スポットを、1%Tween 20を含有するPBS中に1時間最初に浸し、ブロットされたタンパク質を再生する。これらのメンブレンを、PBS中の4%ゼラチン溶液により、37℃で2時間更にブロックし、ファージ1012 CFU/ml(4%ゼラチン溶液中1.5% BSAと室温で30分間プレインキュベーションする)と共に室温で1時間インキュベーションする。その後メンブレンを、PBS、0.1%Tween 20で3回、及びPBSで3回洗浄し、5%スキムミルク/PBS中のHRP−複合された抗−M13の1:8000希釈物と共に室温で1時間インキュベーションし、ファージ結合を検出する。PBS/0.1%Tween 20により3回及びPBSにより3回洗浄後、これらのバンドを、ECL検出(Amersham社)により可視化する。TPBS−ブロットによる過剰な洗浄後、これらのメンブレンを、ECL試薬中で1分間インキュベーションする。各メンブレンは引き続き、Hyperfilm−ECLと共にインキュベーションし、現像する。
【0102】
組換mAbは通常、その生物から単離された未変性の抗体と比べ、約10〜30%の親和性を示す。しかしウイルス変異株の各コホートに関する個体(患者)のパネルのファージディスプレイ技術から作製された、HIV−特異的mAb(ファージミドライブラリー)は、抗−HIV−1予防ワクチンの開発のための主要なHIV env及び他のペプチド及びタンパク質を選択するのに十分である(図7a、b、8a、b)。
【0103】
組換ファージ作製を提示しているファージミドライブラリーに関して、M13KO7ヘルパーファージがTG1大腸菌一晩培養物へ添加され、1時間プレインキュベーションされ、並びに100μg/mlアンピシリン及び50μg/mlカナマイシンの存在下、37℃で12時間インキュベーションされる(典型的ファージ収量は、1010〜1011アンピシリン−導入単位/ml)。この培養物を、1000gで10分間遠心し、上清を収集しかつ冷却する。その後PEG8000/NaCl(20%PEG/2.5M NaCl)溶液の1/5v/vを上清に添加し、氷中で1時間インキュベーションし、その後10000g、4℃で20分間遠心し、沈殿を形成する。このペレットを、LB又は10mMトリスHCl(pH8.0)に溶解し、0.45μmを通して濾過する。組換ファージは、0.01%チメロサールを添加する場合は、4℃で貯蔵することができる。
【0104】
i)不動化されたM13−特異的mAbによる超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ活性化されたクリオゲル(Protista Biotechnology社)クロマトグラフィーカラムでの包埋
M13−特異的mAbは、超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ-活性化されたクリオゲル(Protista Biotechnology社)に包埋する。このために、乾燥吸着剤を、0.5M 0.1M NaHCO3(pH8.3)を含有するNaCl緩衝液中に再懸濁する。M13−特異的mAbは、同じ緩衝液中に濃度10mg/mlとなるよう溶解し、該吸着剤へ添加し、室温で1時間機械的に攪拌しながらインキュベーションする。インキュベーション後、この吸着剤を、同じ0.1M NaHCO3(pH8.3)/0.5M NaCl緩衝液の5容量で洗浄する。非特異的反応基をブロックするために、この吸着剤を、0.1Mトリス−HCl緩衝液(pH8.0)又は1Mエタノールアミン(pH8.0)と共に、室温で2時間インキュベーションし、その後5mlクロマトグラフィーカラムに調節する。
【0105】
両方の方法に関して、gp120、gp140、gp160及びそれらの断片、gp41、p24に特異的な第一のファージM13粒子は、先に説明されたように得られた(段階4)加水分解されたHIV−1ペプチド混合物と共に、37℃で40分間インキュベーションする。その後ファージ粒子を、不動化されたM13ファージ-特異抗体の助けにより、いずれかで包埋する。
【0106】
包埋されたM13−特異的mAbを伴う調製された超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化されたクリオゲルカラムは、0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液で平衡とし、その後同じ緩衝液中の組換M13を、液体クロマトグラフィーシステムActaPrime Plus(GE Healthcare社)を用い、速度0.5ml/分で、5時間かけて調節する。その後このカラムを、同じ0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液の5容量で洗浄する。
【0107】
組換ファージの包埋は、走査型プローブ顕微鏡法(原子力顕微鏡)により検査する。うまく包埋されたファージHIV−特異的ScFvライブラリーを伴うクリオゲルは、図6bに示されており、対照の超マクロ多孔質モノリス構造のエポキシ−活性化されたクリオゲルカラム構造は、図6aに示されている。
【0108】
0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液中で加水分解されたHIV−1ペプチド混合物は、包埋されたアフィンカラムに、速度0.5ml/分で5時間かけて注がれる。その後このカラムを、同じ0.05Mトリス−HCl(pH8.0)緩衝液の5容量で洗浄する。
【0109】
HIVペプチドに結合するファージは、0.1M グリシン(pH2.2)勾配により溶離される。得られた画分は、ファージ−抗原複合体が完全に再調節されるまで、0.001M PMSFの存在下、グリシン溶離緩衝液中、室温で5時間インキュベーションされる。
【0110】
このHIVペプチドは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Waters社)を用い、分析し[2]かつ精製する。分析用逆相HPLCを、Symmetry C18カラム(5μm、4.6mm×150mm、流量0.5ml/分)を装着したWaters 1525 HPLCシステム上で行う。分取用逆相HPLCを、Waters 1525 HPLCシステム上で、Symetry C−18カラム(10μm、5.0cm×25cm)及びWaters UV検出器を用いて行う。水/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリルの直線勾配を、結合したペプチドの溶離に使用する。
【0111】
6. 液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)法による、envペプチド変動性及び頻度の定量分析及び配列分析;
未変性のHIV−1ペプチドを、リバースパンニングHIV−特異的ファージライブラリー由来の試料の給源として収集する。envペプチドの定量的選択、質量分布及び特徴決定は、一次元液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS−MS分析)により行う。
【0112】
論文[10]に類似しているように見えるSDS−PAGEゲルからのタンパク質ストリップ、及びペプチド質量フィンガープリントとして同定されない2Dからの単独のスポットを、Esquire 6000プラス装置(Bruker Daltonics社, ブレーメン, 独国)を用いるエレクトロスプレーイオン化四重極質量分析装置によるトラップ法により分析する。これらの試料の捕捉は、低速クロマトグラフィーシステムUltimate LC Packing及び試料選択装置Famos LC Packing(Dionx社, CA, 米国)オンラインレジメンから提供される。このクロマトグラフィーパーツは、二つの縦列に(consequently)連結されたカラムで、それらの間に電磁バルブを備えるものからなる。第一のカラム(100μm×3sm)は、大きい細孔直径の、C8類似体の疎水性ポリマー相Poros R2を備え、これは試料の濃縮及び脱塩のために使用される。第二のカラム(75μm×25sm)は、粒度5μm、細孔直径300Å、C18類似体のPhenomex吸着剤を備え、これはトリプシン処理されたペプチドの脱塩された混合物の分離のために使用される。クロマトグラフィー分離の条件は、以下である:200μl/分で、スプリッター前の実際の排出(exaust)速度900nl/分、及び分離時200nl/分。5%から60%までの溶液B(75%アセトニトリル、25%イソプロパノール、0.1%ギ酸)の直線勾配で、48分間にわたるペプチド分離を行う。
【0113】
全ての測定は、300〜2500m/zの間で行われ、捕捉質量最適化は700と等しい。電荷数が2以上、かつ強度が閾値よりも高いイオンが、タンデム実験に使用される。得られた質量−プリントは、MASCOT検索システムへ送付される。この検索は、プロテオームデータ−ベースを介して試行され、結果は、ペプチドアイデンティフィケーションの確認のためのソフトウェア複合体Scaffold 01-07-00 (http://www.proteomesoftware.com)により検証される。95%を超えるアイデンティフィケーション予測値(identification expectancy)を持つペプチドは、最終スケジュールに入れる。全ての観測されたペプチド質量は、計算された平均質量と0.5Da以内で合致する。
【0114】
これらのチャートは、envタンパク質分子におけるポリペプチド配列の疎水性断片(Y軸正の指標)及び親水性断片(負の指標)の分布を表している(図3)。
onf:信頼性(0=低い、9=高い)
Pred:推定された二次構造(H=ヘリックス、E=鎖、C=コイル)
AA:標的配列
疎水性アミノ酸相対指数:
【0115】
【数1】
【0116】
【数2A】
【数2B】
【数2C】
【0117】
7. 主要HIV envペプチドのクローニング及びリーシュマニア・タレントラエにおけるワクチン開発のための組換ペプチドの作製;
HIV生活環は、ヒト、サル又は齧歯類において生じ、かつそのタンパク質のグリコシル化は、哺乳類代謝に近い。真核生物発現システムは、酵母システム、糸状菌を含むが、昆虫、哺乳類及び/又は植物からの細胞培養物も含む。gp120及びgp41は両方とも、それらの外部ドメインにおいて高度にグリコシル化される。発現された断片又はタンパク質のグリコシル化が望ましい場合、発現は、真核生物システム、例えば酵母、哺乳類細胞培養物、リーシュマニア細胞培養物、バキュロウイルス発現培養物において実行されなければならない。CHO−K1(チャイニーズハムスター細胞)又はCos−7(アフリカミドリザル腎上皮細胞)などの哺乳類細胞における発現は可能であるが、哺乳類細胞は細胞代謝における数百万のタンパク質を有するので、その組換物の発現はかなり低く、かつ作製された組換体は、クロマトグラフィーによる単離が難しい。結果的に本発明者らは、リーシュマニア・タレントラエをenvペプチド産生システムとして選択した。
【0118】
定量的質量分析後に、そのプール中の圧倒的多数を提示しているgp120変種を、配列決定し、かつクローニングに進める。多数の刊行物に示されたように、gp41配列異形は、HIV−特異的免疫応答にとっては重要ではない(図10d、実施例4)。gp41グリコシル化レベル及びgp120へのカップリングは、その配列変動性よりもHIV−特異抗体の誘発にとって重要であるので[31]、本発明者らは、クローニングのための標準成分として、患者コホートからの1種の変種の遺伝子のみを採取することを考えた。得られたgp120タンパク質配列を基に、gp120 envペプチド遺伝子をコードする対応するプロウイルスのDNA断片を、特異的プライマー対(表8)を使用し、患者のリンパ球cDNAマトリックスから、2段階入れ子型PCRにより増幅する。プライマーそれ自身及びそれらのセットは、LC−MS分析の結果を基に変化することができる。
【0119】
gp120及びgp41の全ペプチド、gp120内部ドメイン及びgp120外部ドメイン、gp41エクトドメインをコードするDNA断片のクローニングを行うことは可能である(図10a、b、cのgp120構造を参照のこと)。gp120、gp41及びそれらの主要ドメインをコードするHIV−1 DNA断片のPCR増幅スキームは、図11a、bに示されている。env gp120、gp41及びそれらのドメインの増幅のためのプライマーのセットは、表8に示されている。制限部位は、クローニングベクター変種に従い選択され、NcoIに関してピンク色で、XbaIに関して青色で、NotIに関してオレンジ色で、NheIに関して緑色で印をつけている。どの領域が、各場合の最良の免疫化の結果のためのクローニングに最も適しているかは、かなり当該技術分野で重要であり、又は経験のある研究者の選択による。
【0120】
【表8】
・120Forプライマーは、gp120内部ドメインの増幅のためのフォワードプライマーとして使用され、41Forプライマーは、gp41エクトドメインの増幅のためのフォワードプライマーとして使用される。
【0121】
ワクチン開発のための組換タンパク質製造に関する発現システムの選択に関して、いくつかの特徴が重要である。それらの発現は:i)誘導性;ii)同様にグリコシル化されるか又は継代される哺乳類翻訳後修飾でなければならない。
【0122】
i)誘導性発現は、組換ペプチドの妥当な量及び濃度を達成するために必要である。誘導性システムにおいて図12に示されたように、組換タンパク質の発現は、SDS−PAゲル電気泳動の走査により可視化できる(図12a)。細胞が非誘導性発現ベクターによりトランスフェクションされる場合、通常これは、SDS−PAGEにおいては明白ではないので、これはウェスタンブロットにより検出されなければならない(図12b)。
【0123】
ii)ワクチン接種ために作製された組換ペプチドのグリコシル化は、可能な限りウイルス宿主−真核生物リンパ球細胞に関する天然の典型にマッチしなければならない。数百万のそれら自身のタンパク質の中で真核細胞培養物において組換タンパク質の十分な産生を得ることは、困難でありかつ経費がかかる。そのため、酵母株、昆虫細胞又は真核細胞の寄生システムにおいて、HIV−1エンベロープタンパク質(gp120、gp41及び全gp160)の生成を試行することが可能である。本発明者らの考えた選択肢は、トリパノソーマ原虫宿主のリーシュマニア・タレントラエであり、これは容易な操作で真核生物タンパク質の発現/フォールディング/修飾型を組合せ、かつ哺乳類に対し病原性でもない。この発現システムの主な利点は、標的タンパク質の哺乳類型の翻訳後修飾、例えばグリコシル化、リン酸化又はプレニル化などである(図13)。
【0124】
最も簡便な方法は、Jena Bioscience社により設計されたLEXSYcon2発現キット及びLEXSinduce2発現キットからの、pLEXSYベクターファミリーにおけるHIV−1エンベロープタンパク質のクローニングである。トリパノソーマ原虫において、mRNAは、遺伝子間領域内のトランススプライシング及びポリアデニル化により、個々のmRNAへ転写後プロセシングされる、ポリシストロン性前駆体として転写される。これらの種におけるタンパク質発現の調節は、RNAレベルについて主に生じ、かつ遺伝子間領域の構造により影響を受けることがある。pLEXSYベクターにおいて、L.タレントラエにおける異種タンパク質の発現に関して最適化された遺伝子間領域が使用される(Jena Bioscience社)。
【0125】
pLEXSY−2ベクターは、発現カセットの染色体18S rRNA座(ssu)への組込み後に、分泌シグナルペプチド(図14のSP)を伴う又は伴わずのいずれかで、標的タンパク質の構成的発現を可能にする。従って同じベクターを、サイトゾル型発現又は分泌型発現のいずれかのために、ORFのクローニングに使用することができる。これらのベクター上にコードされたLmSAPシグナルペプチドは、リーシュマニア・メキシカナの分泌された酸性ホスファターゼ(lmsap1)の遺伝子に由来する。標的HIV−1タンパク質のORFのこのシグナルペプチドへのインフレーム融合は、LEXSY宿主における分泌型発現を可能にするが、このシグナルペプチド−コード配列の5’末端での任意の制限部位へのクローニングは、サイトゾル型発現を生じるであろう。
【0126】
標的遺伝子のpLEXSY発現ベクターへの挿入
pLEXSY−2ベクターは、1kbスタッファー断片の置換により、標的遺伝子カセットの方向性のある挿入を可能にする。得られたライゲーション混合物は、リーシュマニア配列に忍容性のあるコンピテント大腸菌細胞(Stbl2、Stbl4、XL−1、XL−10、SUREなど)の形質転換に使用される。この組換大腸菌クローンの選択は、アンピシリンにより実行される。大腸菌における構築後、この発現プラスミドは、SwaIによる完全な消化により線状とされ、その後標的遺伝子を伴うこの発現カセットは、相同組換によりLEXSY宿主P10の染色体18S rRNA ssu座に組込まれる。標的遺伝子挿入部位に先行する大腸菌における転写及び/又は翻訳に関するシグナルは存在せず、その結果大腸菌における遺伝子発現の欠如は、大腸菌にとって毒性であるタンパク質の構築体の作製にとって利点である。
【0127】
HIV−1エンベロープシグナルペプチドにより支持された構成性サイトゾル型発現又は構成性分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチド、gp120及びgp41をコードするgp120、gp41及び全env遺伝子)は、NcoI(フォワード)及びNheI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され(表8)、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、NcoI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
【0128】
pLEXSY−2ベクターからのLmSAPシグナルペプチドにより保証された構成的分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチドパーツを欠いている、gp120、gp41及び全env遺伝子)は、XbaI(フォワード)及びNheI(リバース)を含むプライマーにより増幅され(表7)、XbaI/NheIにより消化され、pLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、XbaI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、XbaI/NotIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
注意:前述のXbaI、NcoI、NheI及びNotI制限部位は、前の(former)SU由来のHIV−1亜型A1 env遺伝子に関しては稀である。pLEXSY−2ベクターのマップは、図14に示されている。LEXSinduce2発現キットは、pLEXSY_I−neo2(アミノグルコシドリン酸転移酵素をコードする)を備え、LEXSY宿主T7−TRにおけるテトラサイクリン−誘導性バクテリオファージ−T7ポリメラーゼ−駆動した発現に適している。
【0129】
組換タンパク質発現
pLEXSY_I−2ベクターは、分泌シグナルペプチドを伴う又は伴わずのいずれかで、標的タンパク質の誘導性発現を可能にする。従って同じベクターを、誘導性サイトゾル型発現又は誘導性分泌型発現のいずれかのために、ORFのクローニングに使用することができる。これらのベクター上にコードされたLmSAPシグナルペプチドは、リーシュマニア・メキシカナの分泌された酸性ホスファターゼ(lmsap1)の遺伝子から誘導される。標的タンパク質のORFのこのシグナルペプチドへのインフレーム融合は、LEXSY宿主における分泌型発現を可能にするが、このシグナルペプチド−コード配列の5’末端での任意の制限部位へのクローニングは、サイトゾル型発現を生じるであろう(図5)。pLEXSY_I−2ベクターファミリーは、本発現カセットのリーシュマニア・タレントラエT7−TRレシピエント株の染色体オルニチンデカルボキシラーゼ(odc)座への組込み後の標的タンパク質の誘導性発現を保証し、これは宿主RNAポリメラーゼIの制御下で、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ及びTETリプレッサーを構成的に発現する。第一のクローニング工程において、本標的遺伝子は、T7プロモーター/TETオペレーター配置の下流でpLEXSY_I−2ベクターに挿入可能である制限部位を含むリンカー配列と共に、供給される。これらのベクターは、標的遺伝子挿入部位の側方に位置する最適化された非翻訳領域を含み、これは転写後mRNAプロセシングのためのスプライシングシグナルを提供する。大腸菌における構築後、本発現プラスミドは線状とされ、相同組換により、LEXSY宿主T7−TRのodc座に組込まれる。
【0130】
HIV−1エンベロープシグナルペプチドにより保証されたテトラサイクリン誘導性サイトゾル型発現又はテトラサイクリン誘導性分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチド、gp120及びgp41をコードする、gp120、gp41及び全env遺伝子)は、NcoI(フォワード)及びNheI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、NcoI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、NcoI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
【0131】
該ベクター由来のLmSAPシグナルペプチドにより保証されたテトラサイクリン誘導性分泌型発現に関して、HIV−1エンベロープ遺伝子(シグナルペプチドパーツを欠いている、gp120、gp41及び全env遺伝子)は、XbaI(フォワード)及びNheI(リバース)を含むプライマーにより増幅され、XbaI/NheIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。そのような配置において、本標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチに融合される。他方で、HIV−1エンベロープ遺伝子は、XbaI(フォワード)及びNotI(リバース)部位を含むプライマーにより増幅され、XbaI/NotIにより消化され、かつpLEXSY−2ベクターにおいてクローニングされる。この場合、得られた標的HIV−1タンパク質は、C−末端His6ストレッチを欠いている。
【0132】
NcoI/NheI又はNcoI/NotI部位においてpLEXSYベクターファミリーにクローニングされた全HIV−1 env遺伝子、又は固有のシグナルペプチドを欠き、代わりpLEXSYベクター由来のLmSAPシグナルペプチドに融合されているHIV−1 env遺伝子(XbaI/NheI若しくはXbaI/NotI部位でpLEXSYベクターにクローニングされる)は、プラスミド構築体の作製に使用することができ、特にgp120配列の、種々のHIV−1ウイルス株から得られた他のgp120配列変種による迅速な置換が可能である。この目的のために追加のXbaI部位が、位置特異的変異誘発により、gp120末端とgp41始端の間でenv遺伝子配列に導入される。その後、pLEXSY::HIV−1 envプラスミド構築体が、NcoI/XbaI(全env遺伝子が、NcoI/NheI若しくはNcoI/NotI部位でクローニングされる場合)又はXbaI単独(その固有のシグナルペプチドを欠いたHIV−1 envが、XbaI/NheI若しくはXbaI/NotI部位においてクローニングされる場合)により消化され、gp120配列が除去される。得られたプラスミド誘導体は、NcoI(フォワード)又はXbaI(フォワード)及びXbaI(リバース)部位を含むプライマーでの、PCR増幅により、他のHIV−1ウイルス変異株から得られた、gp120配列のクローニングに適している。
【0133】
LEXSY−2宿主及び発現株の培養
リーシュマニア属は、下記の二段階で、好気性条件下で増殖する:鞭毛を持つ前鞭毛型(昆虫宿主における野生型)及び脊椎動物宿主における無鞭毛型。インビトロにおいて、T7−TR LEXSY−2宿主の両方の段階は、複合培地(LEXSY BHI、若しくはLEXSY YS)又は化学的に規定された培地(合成LEXSY培地)中で、暗所、26℃で培養することができる。培地は、LEXSY BHI粉末37g/lから調製され、オートクレーブ処理され(琥珀色)、最大6ヶ月間貯蔵される。使用前に、細菌感染の防止のために、培地には、5μg/mlヘミン、及び100μg/mlペニシリン及び50μg/mlストレプトマイシンが補充される。この培地は、暗所で4℃で貯蔵され、補充後2週間以内に使用される。複合培地への血清の添加は不要であり、ウシ胎仔血清は、L.タレントラエの増殖を増強しない。前記宿主又はLEXSY株の増殖阻害の場合、細胞は2000gで5分間遠心し、新鮮培地中に慎重に再懸濁し、かつインキュベーションを継続する。この株は、1:10〜1:50の割合で通常希釈される連続懸濁培養物として維持することができる。最良の結果は、中程度(mid-late)増殖相(OD 2〜3;8×107〜1.4×108細胞/ml)時の接種により得られる。株維持に関して、10ml培養物を、月曜日及び金曜日に1:20で希釈し、かつTCフラスコを直立してインキュベーションすることが都合がよい。細胞生存能は、運動している鞭毛を持つ運動型前鞭毛型として顕微鏡下で目視可能であり;死滅細胞は、丸形であるか又は破壊された形状であり、これらは運動しない。
【0134】
組換タンパク質発現培養は、懸濁培養のための、培養容量10〜200mlの通気した組織培養(TC)フラスコ、又は約140rpmでインキュベーター内で攪拌され、培養容量50ml〜1Lのエレンマイヤーフラスコにおいて、又は最大100Lの標準バイオリアクターにおいて行うことができる。ベクターpLEXSY−neo2に関する組換体の選択は、50μg/mlネオマイシンの存在下で行う。
【0135】
LEXSY宿主株及びLEXSY発現株は、20%グリセロール中で、−80℃で、少なくとも1年間貯蔵することができる。オートクレーブにかけたグリセロール(80%)容量の1/4及び中増殖相からのLEXSY BHI*培地中で増殖した培養物4〜8×107細胞/ml(OD 1.2〜1.8)の容量の3/4を、15mlファルコン管に加え、グリセロールと混合し、滅菌したクリオバイアルに分注する。バイアルは、室温で10分間維持し、その後水の入った氷上で1時間、−20℃でしばらくの間維持し、長期間貯蔵のために−80℃に移す。グリセロールストックの再活性化に関して、クリオバイアルを、氷上で解凍し、その内容物を、補充培地10個に注ぎ、直立の通気フラスコにおいて、26℃で静止位置で、培養物が不透明となるまで2日間、インキュベーションする。
【0136】
LEXSY宿主トランスフェクションのための発現プラスミドの調製
大腸菌から得られた標的遺伝子を含む発現プラスミド1〜5μgを、SwaIにより完全に消化する。作製された大腸菌パーツを示している2.9kbp断片、及びLEXSY宿主の染色体ssu座に組み込まれるべき標的遺伝子を伴う線状化された発現カセットを示しているより大きい断片を、アガロースゲルで泳動する。より大きい断片の発現カセットは、アガロースゲル抽出キットを用いて単離する。酵素及び緩衝塩は、PCR精製キットにより除去することができる。あるいは、この消化物をエタノールにより沈殿し、70%エタノールにより洗浄し、かつ最大50μlの滅菌2回蒸留水又は10mMトリス(pH8)/トランスフェクションへ再溶解する。
【0137】
LEXSY宿主株の電気穿孔法によるトランスフェクション
効率的トランスフェクションのために、L.タレントラエ予備培養物を、10ml LEXSY BHI培地中に1:20で接種し、組織培養(TC)フラスコ中で直立して、26℃でインキュベーションし、予備培養の2日後、10ml培地中に1:10で希釈し、同じ条件で一晩インキュベーションする。増殖培養物は、6×107細胞/ml(OD 1.4、波長550〜600nm、3%ホルマリン)含有しなければならず;これらの細胞は、生存し、かつ液滴状の形状であることは、顕微鏡により確証される。細胞は、2000g、室温で5分間遠心し、上清の1/2量を除去する。このペレットは、残留する培地中に再度懸濁し(108細胞/ml)、水の入った氷上に10分間放置する。最大50μlの水又はトリス緩衝液中0.1〜5μg形質転換しているDNAは、並行したチューブ中で水の入った氷上に直ちに配置する。予め氷冷した細胞350μlを、DNAの入ったチューブに加え、気泡を避けるために水の入った氷上のd=2mmの電気穿孔キュベットに移す。電気穿孔のパラメータは、450V、450μF、パルス時間5〜6ミリ秒である。電気穿孔後、キュベットを、氷に、正確に10分間戻す。その後電気穿孔された細胞を、キャピラリーにより、10ml LEXSY BHIへ移し、26℃で一晩インキュベーションする(約20時間、OD 0.3〜0.4)。
【0138】
トランスジェニックLEXSY株の選択
発現株の確立のために、下記の二つの方法を、並行して慣習的に使用することが可能である。染色体の組込みのためにデザインされた線状化された発現カセットによるトランスフェクション後、クローン性又は非クローン性選択に由来した培養物を比較した場合、同様の発現レベルが、繰り返し認められる。しかし、環状発現プラスミドのトランスフェクションは、クローン性選択を必要とし、その理由は、これらのエピソームは、不均質様式で増幅しかつ最終的にゲノムへ組込む傾向があるからである。環状DNAによるトランスフェクション後の、懸濁培養液中の非クローン性選択は、通常低下した発現レベルを生じる。
【0139】
固形培地上への播種によるクローン選択
LEXSY 宿主細胞は、新たに調製したカンテンプレート上で選択する。トランスフェクションされた10mlのo/n培養物から2mlのバッチを1〜4個採取し、残りの培養物は、非クローン性選択のために並行して使用する。細胞は、2000g、20℃で5分間遠心し、そのペレットは、残渣培地50〜100μl中に再懸濁し、再懸濁した細胞は、50μg/mlネオマイシンが補充された新たに調製されたLEXSY BHIカンテン上にカンテンの表面上に、配置されたニトロセルロースフィルター上に細胞を画線する方法により播種される。播種は、これらのメンブレン上で直接1%カンテン上よりもより容易であり、細胞の遊走(swarming)は消滅する。それ以外に、メンブレン上の播種は、例えば蛍光スキャニング又は所与の標的タンパク質に特異的検出法による、クローン性集団の発現プロファイルの試験のために、フィルターを持ち上げることができる。プレートは、パラフィルムで密封され、26℃で逆さまで(bottom up)インキュベーションする。
【0140】
播種後5〜7日目に、小さい限定されたコロニーが出現し始め、播種後7〜9日目に、コロニーが直径1〜2mmまで増殖した時点で、これらをピペットチップを用い、96−ウェルプレート中の選択増殖培地0.2mlに移し、1日インキュベーションした後−24−ウェルプレート中の選択培地1mlへ移すことができる。26℃で更に24〜48時間インキュベーションした後、その培養物を、TCフラスコ中の選択培地10mlに増殖し(expand)、評価及び凍結保存に使用することができる。
【0141】
懸濁培養における選択
トランスフェクション実験から得た10ml o/n培養物が、わずかに不透明になり始めた(OD600 0.4、約107細胞/ml;通常電気穿孔の約20時間後)直後に(4.4.参照)、ネオマイシン50μg/mlを添加し、インキュベーションを26℃で7日間継続する。組換細胞は、顕微鏡下で運動型であり、液滴様の形状であり、かつ「曇った」懸濁培養物として増殖するのに対し、陰性対照中の細胞は、選択時に、死滅し始め、顕微鏡下で鞭毛を伴わない、球形又は不規則な形状のように見える。通常、選択の7日目の1:10接種割合のネオマイシンを含む新鮮な培地への1回の連続転移は、抗生物質−抵抗性組換株化細胞の不透明な培養物を得るのに十分である。
【0142】
ゲノム組込み及び組換envペプチド発現の確認
本発現カセットのssu座への組込みは、鋳型としてトランスジェニック株のゲノムDNAを使用する、診断的PCR又は配列決定により確認することができる。pLEXSY I−2ベクター診断的PCR(アニーリング温度55℃)は、抗生物質耐性カセットフォワードプライマー及びodcリバースプライマーP1510により行う(表9)。本発現カセットのodc座への組込みは、対照反応においては認められない特徴的断片(各々、1.9又は2.0kbp)を生じる。加えて、odcフォワードプライマーA1304及びaprtリバースプライマーA1715(標的遺伝子の5’utr内にハイブリダイズする)により、診断的PCR(アニーリング温度60℃)を行うことができる。本発現カセットのodc座への組込みは、特徴的1.1kbp断片を生じるが、対照反応においては得られず、ここで鋳型は、LEXSY宿主株の発現プラスミド又はゲノムDNAである。
【0143】
組換LEXSY株における標的タンパク質の発現は、細胞抽出物の、又は分泌型発現の場合は上清のアリコートの、SDS−PAGE及びウェスタンブロットにより評価する。最適な発現を得るために、任意に種々のテトラサイクリン濃度、各個別のタンパク質の培養条件及び収穫時間での、平均1μg/mlのテトラサイクリン発現の誘導にキャリブレーションされる。
【0144】
【表9】
【0145】
8.組換HIV envペプチドの生成及びクロマトグラフィー精製
タンパク質生成に関して、本組換株は、複合LEXSYブロスBHI(Jena Bioscience社)において、OD 600 D2(108細胞/ml)まで増幅される。このタンパク質生成は、新鮮な培地に細胞を移して1時間後の、5mg/l テトラサイクリンの添加により誘導され、かつこの培養物は、MultitronIIインキュベーター−振盪機(Infors AG社, スイス)において130rpmで攪拌しながら26℃で、24〜72時間、ODが約1.8に達するまで、インキュベーションされる。培養物上清中及び細胞中の組換gp120の存在は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS−PAGE)の存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動及びウェスタンブロットにより決定する。N−グリコシル化の存在の確認のために、本発明者らは、培養物上清又は細胞を、N−グリコシダーゼで処理し、かつ処理したタンパク質の電気泳動移動度を分析する。
【0146】
タンパク質を発現しているリーシュマニア細胞は、2500gで10分間遠心し、そのペレットを、20mMトリス(pH8.0)、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM PMSF中に再懸濁する。この細胞溶解液は、20kHzで、超音波処理機を用い、19mm探針による、氷中で1分間10回のパルス適用が、パルス間の間隔2分間で行われる。透明化された上清を収集し、0.45μm細孔メンブレンを通して濾過し、アガロースに結合されかつニッケルで帯電されたニトリロ三酢酸(Ni−NTA)を使用する、不動化された金属イオンを含むクロマトグラフィーカラム(GE Healthcare社)における、組換gp120のアフィニティ精製に使用される。簡単に述べると、このNi−NTAカラムは、20mMトリス(pH8.0)、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM PMSFの緩衝液の3容量で、流量1mL/分ですすがれる(LC Akta Prime Plus社, GE Healthcare社)。次にこのカラムに、流量0.25mL/分を利用し、組換gp120(r−gp120)を含有する濾過した上清が充填される。充填後、このカラムは、洗浄緩衝液(20mMトリス−HCl、500mM NaCl、5mMイミダゾール、pH7.4)の3容量ですすがれる。このr−gp120は、カラム内部のエンテロキナーゼにより切断され、ポリヒスチジン尾部を除去する。この目的のために、Ekの1国際単位(IU)が、10mMトリス−HCl、10mM CaCl2、pH8.0を含む緩衝液中のカラムへ導入され、この切断反応は、25℃で18時間進行される。あるいは、ポリヒスチジン尾部により標的化されたタンパク質は、イミダゾール勾配(150mM NaClを含有する100mMトリス−HCl(pH8.0)中の0〜0.5Mイミダゾール)中で溶離される。タンパク質含有画分はプールされ、限外濾過により濃縮される。画分は、SDS−PAGE/銀染色及び抗−ヒトgp120抗体によるウェスタンブロットにより分析される。r−gp120含有画分は、プールされ、0.1Mトリス−EDTA緩衝液(pH8.0)に対して透析され、標準アプローチ[2]を使用し、同じ緩衝液で平衡とされた陰イオン交換カラム(Q-PEEK 10um AXC Biosuite, Waters社)上に装加される。このタンパク質は、0〜1M NaClの勾配により溶離される。r−gp120含有画分は最終的に、Sephacryl S−200HR(GE-Healthcare社)を使用するゲル濾過により精製される。
【0147】
精製されたrhEPOのN−末端配列決定は、自動エドマン分解により実行される。精製されたタンパク質の濃度は、BCAアッセイにより決定される。タンパク質発現及び精製の種々の段階を通じて得られた画分の分析は、SDS−PAGEにより実行される。本タンパク質バンドは、クマーシーブリリアントブルーR−250又は銀染色により可視化される。
【0148】
a. ワクチン送達のビヒクルとして立体的に安定したリポソームを使用する、HIV予防ワクチン免疫ブースト組成物の調製
最も一般的には「ワクチン」と称される、将来の該疾患と接触する可能性のある症例において、いくつかの細菌又はウイルス感染症に対する特異的免疫応答を提供する目的で、経口(os)、又は皮下、筋肉内、静脈内のいずれかによる投与のための任意の医薬品は、多くの必要要件を満たさなければならない。これらの必要要件の主なものは:
iii)免疫応答が、ある種の病原性微生物又は感染症に対し高度に特異的であること;
iv)免疫応答が、疾患症状の出現を妨げるよう、この特定の感染症の発症と闘うのに十分に強力であること;
v)免疫応答が、長期間、数ヶ月及び数年間持続すること;
vi)前述の全てにもかかわらず、本ワクチンは、ヒト生物に関して反応原性(免疫毒性)でないこと:である。
【0149】
本発明のHIV予防ワクチンの有効性は、これを、免疫賦活剤又は免疫原性担体、例えばアジュバントなどと会合することにより増強される。未変性のHIV envタンパク質混合物に加え、gp120糖鎖付加された組換型は、高度に免疫原性であり、皮下に接種されることを容易に忍容できず、それら自身により強力な免疫反応をもたらす(実施例4)。しかし、全ての純粋なタンパク質に関して、生物におけるそれらの生分解は、迅速であり、かつペプチドが、任意の保存剤若しくはプロテアーゼインヒビターアジュバントと固定されない場合、免疫応答は2〜3週間以内に使い果たされる。本発明者らの最初の考えは、envペプチドを分解から保護し、細網内皮系に不可視であるよう、それらを立体的に安定化されたリポソーム(SSL)にパッケージすることであった。しかしマウスにおける極初期の実験から、SSLは、十分に長いことができるある期間装荷されるか又は結合されたペプチドを保持することができ、かつそれらの急性免疫毒性を減少することができることが見出された。ペプチドに関して、立体的に安定化されたリポソームのプラットフォームは、アントラサイクリンのリポソーム薬剤形状に関して示されたように、低い総免疫毒性及びより良い薬力学(薬剤の適時放出)の利点に順応する。リポソームペプチドは、正に細胞増殖抑制剤又は他の低分子量剤のようにゆっくりSSLの外側で誘発され得る。即時型免疫反応の阻害は、単回投与のためのペプチド用量の増加、及び長い十分にブーストされた免疫化のためのウイルスenvペプチドのMHCとの接合部接触の延長を可能にする。この方法のSSLは、免疫ブーストアジュバントとして及びワクチン送達システムとして同時に活用される。
【0150】
従って本発明の効果的な組成物の具体的製剤は、該製剤が投与される際に被験者において、アジュバントを生分解性、安全かつ有効とするのに適した様式で実行されてよい。二つの考え方が更に説明される:
i)envペプチド混合物は、立体的に安定化されたリポソーム(SSL)に装荷される;
ii)envペプチドは、SSLのPEG−活性化された基に共有的に連結される;
iii)可能性のある構築体(pNL3−4、IRIVなど)のビロソーム上に提示されたenvペプチド。
【0151】
i)立体的に安定化されたリポソーム調製品及びペプチド装荷
立体的に安定化されたリポソームは、リン脂質:コレステロールがおよそ7:3及び0.2〜0.5mol/%ポリエチレングリコール−ジステアロイル(ホスファチジル)エタノールアミン(PEG−DSPE)からなる混合物からの、クロロホルムの真空乾燥法、及び窒素流下でのベシクル形成[40]を用いて調製される。使用される脂質混合物は:DOPC/Chol/DSPE−PEG350、DOPC/Chol/DSPE−PEG400などである(Avanti Polar Lipids社, バーミンガム, AL)。本リポソームの主成分は、ジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)であり、これは卵黄、脳組織又はダイズ豆などの天然の給源から抽出されるか、又は合成により調製することができる。コレステロールは、リポソーム膜内のリン脂質二層を安定化するために必要であり、PE−PEGは、膜の安定性及び硬度を提供し、これは懸濁液中のリポソームが融合及び分解することを防ぎ、かつこれらが数ヶ月間それらのサイズ分布及び漏出を伴わずに内側に装荷された物質を保存することができるようにする。SSL中のPEGの理想的分子量は、400〜700であり、1000〜2000のより長いPEG鎖は、リポソーム膜の硬度が、それらの内容物送達に必要なものよりも高くなり、かつ長いPEG SSL組成物は自己生分解の必要要件を満たさないので、SSLデザインにおいては利点ではない。DSPE−PEGの割合は、望ましい特性のリポソームを得るための細かい調整の主なものである。
【0152】
乾燥脂質は、有機溶媒−クロロホルム又はエタノール-クロロホルム−中で混合され、これらは次に回転蒸発器(Buchi R-200)において蒸発され、薄い脂質フィルムが形成される。リポソーム懸濁液は、溶解した物質(例えば50mM NaH2PO4、400mM NaCl、pH8.0)を含む水性緩衝液中に更に水和され、300〜400rpm、温度+45℃で、30分間の攪拌時に調製される。大型多層ベシクル(MLV、300nm〜1μm)及び小型単層ベシクル(SUV、80〜250nm)の混合物が、生成される。ペプチドなどの任意の水溶性物質の送達に関して、小型単層ベシクルが必要であり、従って超音波処理(600mV、Avanti Polar Lipids社)、及びポリカーボネート0.4〜0.2〜0.1μmメンブレン(Avanti Polar Lipids社)を通るフィルター押出の数回のサイクルが実行される。加えて、0.2〜0.1μmメンブレンを通る無菌条件(層流(laminar)及び無菌のシリンジ、メンブレン及びフラスコ)での押出は、免疫化にそのまま使用できる調製品を生じる。水性懸濁液中のリポソームのサイズ分布及び安定性は、DLS Nicomp−380装置を使用する、動的光散乱レーザーサブミクロン粒子サイズ分析法により決定される(図17)。
【0153】
免疫化のための組換ペプチドの混合物は、脂質フィルムの水和の段階で、リポソーム組成物に導入され−ペプチド混合物は、リン酸緩衝食塩水中に溶解され、リポソームベシクルの内側水相として装荷され始める[40]。押出プロセス後、SSLは、Sephacryl S-200HR及びAkta Prime LCシステム(GE Healthcare社)を使用する、サイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィーにより移行され、かつベシクルの外側に出現した過剰なペプチドは、分離されかつカラム内に留まる。その後SSL懸濁液は、必要ならば透析により濃縮され、免疫化にそのまま使用できるワクチン組成物を含む。
【0154】
SSLワクチン組成物の皮下投与は、MHCリポソームに対し中性の範囲外の(out of neutral)env組換ペプチドの誘発の遅延のために、免疫化作用を阻害することがある。このプロセスは、感熱性リポソーム−tSSLを用いて、調節することができる。tSSLは、特別な量的組合せのメンブレン成分、又はリポソーム膜を温度がある温度、通常40〜45℃に到達すると直ちに融解するようにする、いくつかの追加のリン脂質成分を伴い、他のものから識別される。局所的加熱時に、感熱性リポソームは、破壊され、それらの内容物−ペプチド−は、その組織の外側に負荷される。例えば通常の立体的に安定化されたリポソームは、融解温度約54〜58℃を有し、脂質フィルム形成のための乾燥重量混合物は、ホスファチジルコリン:コレステロール:ジステアロイル−ホスファチジルエタノール−アミン−PEGからなり、その比は、PC:Chol:DSPE−PEG−400について6.85:2.75:0.4(最大0.5)モル/%であり、及びより長いPEG鎖PC:Chol:DSPE−PEG−2000について6.9:2.95:0.15(最大0.25)モル/%である。感熱性リポソームを調製するために、本研究者らは、いくつかのパラメータを変動することができ、第一に混合物中の脂質の比を、各々、コレステロール量を27〜29モル/%から30〜35モル/%に増加し、PE−PEGの割合を2〜5モル/%から1.5〜2モル/%へ減少する。リポソーム膜を柔らかくし、かつそれらの融解温度をより低い温度にシフトする別法は、より短い脂肪酸尾部のリン脂質を使用することであり、これは:ジミリストイル−ホスファチジルコリン(DMPC、C−14)、ジステアロイル−ホスファチジルコリン(DSPC、C−16)、又はDOPCの同等部の代わりに、むしろDMPC若しくはDSPCの30〜40モル/%である。
【0155】
ii)SSLのPEG−活性化された基に結合するenvペプチド;
env組換ペプチド脂質混合物のためのリポソーム担体の第二の型は、ペプチドの結合のために活性化されたより長いDSPE−PEG2000型を表している:PDP−PEG2000−DSPE/Chol/DOPC、マレイミド(フェニルブチレート)−PEG2000−DSPE/Chol/DOPC、p−ニトロフェニル(カルボニル)−PEG2000−DSPE/Chol/DOPC。これらの脂質混合物中のPEG−2000の濃度は、1.5〜2モル/%を超えてはならず、その理由は比較的長いポリエチレングリコールは、比較的短い型よりもより効果的にリポソーム安定性を増大し、かつ同じ濃度は、ワクチン放出には余りにも硬いリポソーム膜及び脂質の有害な生分解を生じるからである。
【0156】
PEGの活性化された遠位端[38]とのペプチド複合の第一の方法は、0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.0〜5.0)中の脂質25〜40mgにつきペプチド1mgの比での、リポソーム懸濁液中のペプチドアミノ基による、p−ニトロフェニル(カルボニル)−PEG−2000−DSPE反応である(総懸濁液量は5.5〜9ml)。反応は、NaOH添加により、pHを7.5〜8.5に上昇することにより終結され、かつ特別なペプチド処理は不要である。
【0157】
マレイミド−PEG−2000−DSPEとの方法[39]は、Trautt試薬(2−イミノチオラン)による先行するペプチドチオール化が必要である。ICO−25 1mgを、Na3BO3及びEDTAを含有するホウ酸緩衝液に溶解し、次に乾燥Trautt試薬50〜70μgを添加し、この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、次に過剰なタンパク質を、PBS(pH8.0)との同時緩衝液交換を伴う限外濾過により洗浄する。サイズ及び装荷された細胞増殖抑制剤濃度が均質であるリポソーム画分は、Sepharose CL−6B(GE Healthcare社, スウェーデン)での液体クロマトグラフィーにより抽出される。
【0158】
PDP−PEG−PE含有リポソームに結合するODN−HIV envペプチド
PDP−ペプチド誘導体の調製のために、ペプチドを、25mM HEPES、140mM NaCl、pH7.4に、濃度10mg/mlで溶解し、次にこのペプチド溶液に、DMF中の25mMスクシンイミジル−4−MPB(SMPB)溶液を、モル比20:1(SMPB:ペプチド)までゆっくり添加し、室温で30分間インキュベーションする。未結合のSMPBは、25mM HEPES、25mM MES、140mM NaCl(pH6.7)緩衝液中での、Sephacryl S−200HRカラム(GE-Healthcare社)を使用するゲル濾過により、比較的低いpHで除去される。
【0159】
PEG鎖の遠位端のピリジルジチオ基は、ジチオスレイトール(DTT)の最終濃度20mMまでの添加、及び室温で30分間のインキュベーションにより、減少される。DTTは、25mM HEPES、25mM MES、140mM NaCl(pH6.7)で溶離されたSephadex G−25カラム上のリポソームの通過により、上昇したpH中で分離される。チオール化されたリポソームは、MPB−ペプチド誘導体と共に、ペプチド/脂質比が約1:1000で、室温で一晩インキュベーションされる。未結合のペプチドは、25mM HEPES、140mM NaCl(pH7.4)により、Sephacryl S−200HRカラムを通りリポソームが通過する、ゲル濾過により除去される。
【0160】
COOH−PEG−PE−リポソームに結合するODN−HIV envペプチド
MES緩衝液(pH4〜5.5)中のHO2C−PEG−PE−含有リポソームの懸濁液の300ul(合計3umol脂質)へ、水中の0.25M 1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド溶液の120ul、及び0.25M N−ヒドロキシスルホスクシンイミド120ulを添加する。この混合物を、室温で10分間インキュベーションし、1M NaOHによりpH7.5に中和する。HIV envペプチド15μMを、活性化されたリポソームへ添加し、この反応混合物を、穏やかに攪拌しながら、4℃で8時間インキュベーションする。ペプチド−結合したリポソームを、PBSにより予め平衡とされたSephacryl S−200HRカラム(GE Healthcare社)上の未結合のペプチドから分離される。空隙容量で溶離されたペプチド-結合したリポソームのピーク画分を収集し、プールし、必要ならば食塩水により必要な容量に希釈する。
【0161】
リポソーム組成物DOPC/DOGS−NTA−Ni/Chol/DSPE−PEG−2000において、envペプチドを、PC尾部とPEG−DSPE尾部の間に定着(settle)されたニッケル−修飾されたリン脂質に結合することも可能である。しかし、DOGS−NTAは、粘膜及び他のB−リンパ球免疫応答を刺激することはわかっているにもかかわらず、envペプチドのPEG位置の下側への隠蔽は、その抗−HIV特異性を弱める。この方法は以下に説明されている。
【0162】
この複合反応において、組換(His)6−ペプチド(10〜80ug)は、総容量50μlのリン酸緩衝液(50mM NaH2PO4、400mM NaCl、pH8)中で、リポソーム(1μM)と一緒に、回転振盪しながら、37℃又は室温で30分間インキュベーションされる[17]。リポソームへのタンパク質複合は、複合反応の終了時の遊離タンパク質の量の測定により、間接的に定量される。未結合のタンパク質は、Microcon−100遠心装置を用いて分離される。遠心分離の前に、このリポソーム−ペプチド混合物は、リン酸緩衝液中に最終容量250μlに希釈される。12,000gで13分間の遠心分離後、濾液20ulを、遊離タンパク質含量について、micro−BCAアッセイを用いてアッセイされる。リポソームに結合したペプチドの量は、使用される総量から遊離タンパク質の量を減算することにより、決定される。このリポソームに結合しているHis−タンパク質の間接定量法は、リポソーム−結合したペプチドが、Sephacryl S−200HRゲルマトリックス(GE Healthcare社)において、遊離タンパク質のサイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィーによる分離後、micro−BCAアッセイを用い直接定量される直接法と比較し、同じ結果を生じる。
【0163】
iii)可能性のある構築体(pNL3−4、IRIVなど)のビロソーム上に提示されたenvペプチド
小型のウイルス及びそれらで構築されたベクターは、envペプチドHIVワクチンの発現及び提示に使用することが可能である。ビロソームは、予防ワクチン技術にあまり適してはおらず、かつHIV−特異的免疫ブースト作用は、いずれの場合にも、ワクチン送達のSSL技術がもたらすものよりも低い。このワクチン組成物は、小型ウイルス表面−ビロソーム−上に発現されたHIV envペプチドのみを含み、ウイルスベクターにおいて送達されたenvペプチドの遺伝子は含まない。アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスのような大型ウイルスは、ビロソームの候補としては良好ではなく、その理由はこれらは、それらのキャプシド上に発現された数百のペプチドを有し、かつこれらは投与後に特異的よりもむしろより非特異的に免疫応答をブーストするからである。ビロソームベクターは、欠損HIV誘導体pNL3−4、マラリア及びA型肝炎ワクチンにより有効性が証明されたインフルエンザベクターIRIV、麻疹ウイルス誘導体、種々の脳炎病原体のαウイルス、黄熱病ウイルスのベクター及びその他の可能性のある変種を含む。
【0164】
本発明のアジュバント及びアジュバント-含有ワクチン組成物が有用に投与される宿主動物は、霊長類に加え、齧歯類又は他の哺乳類を含む。BalbCマウスは、初回免疫応答ブーストバリデーションに使用された。アジュバント装荷している2種のリポソームは、個別に使用され、かつ種々の割合で一緒に混合されることができる。
【0165】
3週齢のBalbCマウスに、該動物にとって純粋なペプチドの投与量20〜50μgが皮下的に免疫化され、乾燥脂質MWのための懸濁液中のアジュバント濃度は、5mg/mlである。各群には、7〜8匹又はそれよりも多いマウスが含まれる。この免疫化は、開始時固形食を摂食しかつ体重11〜14gである動物について3週齢マウスで初回、5週齢になった後2週間2回目、マウスが9週齢になった時1ヶ月後に3回目が実行される。組換gp120及びそのドメイン並びに組換gp41及びそのエクトドメインは、個別に又は一緒に組成物を完成するために使用される。HIV envペプチド抗体の力価は、r−gp120(gp110、gp160)変種、ファージミドライブラリーバイオパンニングに関して先に使用されたr−gp41、更には未変性のHIVタンパク質混合物で、ELISAにより測定される。ELISA試験は、最後の皮下投与後、3日目、14日目及び28日目に行われる。結果の一部は、実施例4に示されている。
【0166】
二つの主要な結論を、マウスの実験から引き出すことができる:
1.BalbCマウスにおいて皮下接種される、gpl20及び全てのその誘導体、組換体に加え未変性のペプチドは、高度に免疫原性であり、かつ強力でHIV−特異的及び延長された免疫応答を誘発する。同じ様式で接種された組換gp41及びそのエクトドメイン変種は、数倍低い力価の特異的モノクローナル及びポリクローナル抗体を誘発する。Ab力価の同じ状況が、HIV−感染したヒト血清中において、及びファージM13上のAbライブラリー提示において認められる。患者において、この状況は、ウイルスエンベロープ中のgp120下流(under)のgp41の内側位置で提供される。しかし、組換タンパク質免疫化による同じ現象は、HIV予防ワクチン開発のために、gp120配列及びその組換体の代表の正しいアイデンティフィケーションが重要であり、かつgp41は、複合ペプチド「材料」として使用されるが、その配列の異形はあまり重要でないという本発明者らの立場を証明する。
【0167】
2.リポソームアジュバント組成物は、ペプチドのみの免疫化よりもより長い期間免疫応答ブーストを提供することができ、かつ同時に即時型免疫毒性反応を縮小することができ、その結果HIV−予防的反応発生のために、ペプチド投与量を増加することができる。
本発明のアジュバント及びワクチン組成物に関する投与量の割合及び好適な剤形は、通常の抗体力価決定技術及び通常の生体有効性/生体適合性プロトコールの使用により、並びに特定のアジュバント型、望ましい治療作用、及び望ましい生体活性期間に応じて、過度な実験をすることなく、当業者により容易に決定されることができる。本ワクチン及びその成分の投与は、皮下注射、経皮、経真皮、鼻腔内及び筋肉内投与などの非経口法を含んでよい。
【0168】
開発されたHIV予防ワクチンは、HIV−抗体ライブラリーがその選択及び作製のために試行された感染者のコホートのHIV変異株から蔓延した感染症に対するその活性に関して、個別化された医薬品に至る途中の工程である。本ワクチンは、単独のかつて開発された組成物として、蔓延しているHIV感染症に対する普遍的武器として働くことはできない。しかし25年間にわたるHIV研究及びAIDSとの戦いで集められた全てのHIV疫学の知識は、その実践的開発に対し多くの支持をもたらすであろう。
【実施例】
【0169】
実施例1:下記電気泳動データは、HIV−特異的ScFv抗体の断片作製を含む、ヒト組換IgGファージミドライブラリーの段階を図示している(ファージディスプレイ技術):
PCR−I結果−対応する部分的Cκ又はCL断片を伴う、κ−及びλ−可変部。
ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
略号:1VL−部分的CL断片を伴うλ可変部
2VL−部分的CL断片を伴うλ可変部
1VK−部分的Cκ断片を伴うκ可変部
1a−10−種々のプライマー対
−VK−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
GeneRuler(商標)、100bp DNAラダー
【化1】
【0170】
PCR−I結果−部分的Cκ断片を伴うκ可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1a−10−種々のプライマー対1VK(2VK、3VK、4VK)
部分的Cκ断片を伴うκ可変部
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化2】
【0171】
PCR−I結果−部分的CL断片を伴うλ可変部、並びに部分的CH1断片を伴うIgM及びIgG重(H)鎖可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1VL−ライブラリー1、部分的CL断片を伴うλ可変部
1VHM(2VHM、3VHM、4VHM)−部分的CH1断片を伴う重鎖可変部(IgM)
1VHG(2VHM、3VHM、4VHM)−ライブラリー1、2、3、4、部分的CH1断片を伴う重鎖可変部(IgG)
1a−10−種々のプライマー対
−VL;−VHG;−VHM−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化3】
【0172】
PCR−II結果−((Gly)4Ser)3をコードする、追加されたリンカー断片を伴う重(H)鎖可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1HG(2HG、3HG、4HG)−ライブラリー1、2、3、4、IgG cDNAプール由来の重鎖可変部;
1HM(2HM、3HM、4HM)−ライブラリー1、2、3、4、IgM cDNAプール由来の重鎖可変部
1a−7a−種々のリンカー−含有するプライマー対
−H−PCR陰性対照
【化4】
【0173】
PCR−II結果−((Gly)4Ser)3をコードする、追加されたリンカー断片を伴うκ−及びλ−可変部、ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1K(2K、3K)−ライブラリー1、2、3、κ可変部
1L(2L、3L、4L)−ライブラリー1、2、3、4、λ可変部
1a−8−種々のリンカー−含有するプライマー対
−K及び−L−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化5】
【0174】
PCR−II結果−((Gly)4Ser)3をコードする、追加されたリンカー断片を伴うκ−、λ−、及び重鎖(H)可変部、関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
1K(2K、3K、4K)−κ可変部
1L−ライブラリー1、λ可変部
2HG(3HG、4HG)−ライブラリー2、3及び4、IgG cDNAプール由来の重鎖可変部;
3HM(4HM)−ライブラリー3及び4、IgM cDNA プール由来の重鎖可変部
1a−8−種々のリンカー−含有するプライマー対
−K及び−L−PCR陰性対照
100bp−GeneRuler(商標)100bp DNAラダー(Fermentas社)
【化6】
【0175】
集成されたScFv断片のゲル定量。種々のVH−リンカー−Vkappa ScFv変種(ライブラリー4)
【化7】
【0176】
VH−リンカー−Vkappa ScFv混合物(ライブラリー4由来)の再増幅。ゲルから切り出した関心対象のバンドには、矢印で印をつけている。
κ−100bp VH−リンカー−Vkappa ScFv混合物
【化8】
【0177】
実施例2:組換HIV−特異的ライブラリーに関する特異性定量の結果
a)HIV−1陽性血清による組換mAbクローンのELISA結果
【化9】
【0178】
b)ウイルスペプチドA455選択されたファージライブラリー由来の38種のファージモノクローンのELISA結果(SigmaPlot 10.0統計解析)
【化10】
【0179】
c)組換gp110−、gp160選択されたファージライブラリー由来の26種のファージモノクローンのELISA結果(SigmaPlot 10.0統計解析)
【化11】
【0180】
実施例3:HIV envペプチドの変動性
HIVは、その極めて高いペプチド配列の異原性により、他の病原性ウイルスから区別される。変更された配列ペプチドの3D構造は、非常に異なっており、かつ多くの場合、これらの変更は、ウイルスの抵抗性表現型の出現後の同じ変異により引き起こされる。従ってモノクローナル抗体ライブラリーを使用し、頻繁に合致する変種を収集し、かつ表面ウイルスタンパク質の組換型を得ることが可能である。亜型A及びBに関するHIV envペプチド配列の共通の異形の一部は、以下に示されている。変動性のアミノ酸は青色で、保存性のアミノ酸は赤色で印をつけている。これらの配列のいくつかは、本発明者らの実験室で以前に行われた。
【0181】
【表9A】
【表9B】
【表9C】
【表9D】
【表9E】
【表9F】
【表9G】
【表9H】
【表9I】
【表9J】
【表9K】
【表9L】
【表9M】
【表9N】
【表9O】
【表9P】
【表9Q】
【表9R】
【0182】
実施例4:動物の免疫化の予備的結果(SigmaPlot 10.0統計解析)
体重11〜14gの3週齢のBalbCマウスを、該動物にとって純粋なペプチドの投与量20〜50μgで皮下により免疫化し、脂質濃度MWは5mg/mlであった。この免疫化は、3週齢マウスにおいて行い、それらが5週齢になった後2週間2回目を、マウスが9週齢になった時1ヶ月後に3回目を行った。組換gp120は、組換gp41エクトドメインよりも、平均で5倍高いレベルの免疫応答を誘発した。患者の血清から単離されたヒトポリクローナル抗体を、同濃度の組換gp120及びgp41のELISA染色に使用した場合にも、特異抗体力価の同じ差異が認められた。
【化12】
【0183】
参考文献
【表10A】
【表10B】
【表10C】
【表10D】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症を予防するHIV−ワクチンを製造する方法であって、
i)HIV−1亜型A又はBに感染した多数の個体から得られたB−リンパ球で発現されるモノクローナル抗体のファージミドライブラリーを作製する工程、
ii)未変性の又は組換HIV−1ペプチドパンニングにより、抗体ファージミドライブラリーを濃厚化する工程、
iii)支持体に結合されたHIV−1ファージミドライブラリーを使用するリバースパンニング手法により、HIV−1ペプチド/ポリペプチド/タンパク質材料を収集する工程、
iv)工程iii)において得られたペプチドの材料の同定及び特徴決定の工程、並びに
v)発現システムにおけるグリコシル化された組換HIV−1 envペプチドの作出において、工程iv)の結果を使用する工程、
(vi)組換HIV−1 envペプチドを精製し、かつワクチン組成物を製造する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
前記HIV材料が得られる個体が、同一又は異なるHIV亜型に感染されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス材料が得られる個体が、抗レトロウイルス療法ナイーブ患者又は抗レトロウイルス療法が施された患者である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
得られるウイルス材料が、支持体に接触される前に増幅される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
種々の異なるHIV特異抗体及び/又は抗体断片を保有する支持体が、ファージミドライブラリー、ペプチドマイクロチップ、又は細菌ライブラリーから選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
ファージミドライブラリーが:
a)HIVに感染した多数の個体から得られたB−リンパ球において発現された免疫グロブリンの、各々、軽鎖及び重鎖の可変領域をコードする核酸由来のDNA−断片を調製する工程;
b)免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA−断片を連結し、免疫グロブリンの、各々、軽鎖及び重鎖の可変領域を含むポリペプチドの発現を可能にし、多数の異なる特異性を作製する工程;
c)ファージミドベクター内の連結された断片をクローニングし、かつバクテリオファージの表面上での発現のために細菌株を形質転換する工程により調製される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)におけるDNA断片の調製が、抗レトロウイルス療法により治療された及び/又はされないHIV−1亜型A及びB感染患者のB−リンパ球から得られたRNA−プールからのcDNAの調製、並びに軽鎖及び重鎖の可変領域の増幅を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記増幅が、表1〜7に列記されたプライマーの組合せのいずれかにより実行される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
得られたscFvファージミド組換抗体が、HAART−又は任意の他の抗レトロウイルス療法を経験した患者において実行された抵抗性HIV変異株に対し特異性がある、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程i)が、異なるドナーから単離された組換gp120−、gp41−及び未変性のHIV−ポリペプチドによる、HIV−特異抗体を結合するパンニング手法における抗体のScFv断片を提示しているファージミドライブラリーの濃厚化を更に含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(iii)における、HIV−1 envペプチド/ポリペプチド/タンパク質の単離が、発明されたリバースパンニング技術を用いて実行される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
工程iv)における、LC質量分析が、HIV−1 gp120及びその標準断片及び可変断片の定量分析、同定及び配列決定のために適用される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
工程v)が、真核生物グリコシル化を伴う好適な宿主において、組換HIV−1ペプチド/ポリペプチド/タンパク質を作製する工程を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
任意の免疫原性刺激因子、アジュバント又は担体の添加/複合により、HIV予防ワクチン組成物を調製することに関与している、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
組換gp41及びgp120 HIV−1亜型A及びB envペプチド/ポリペプチド/タンパク質を含有する、請求項13記載のHIVワクチン。
【請求項16】
立体的に安定化されたリポソーム(SSL)又はビロソーム及びそれらの可能な変種を、アジュバント−担体として更に含有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載のHIVワクチン。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法により取得し得るHIV予防ワクチン。
【請求項18】
請求項16記載のHIVワクチンの使用であって、HIV感染症及びAIDS疾患の罹患及び発症に対し、未感染の個体を免疫化するための使用。
【請求項1】
感染症を予防するHIV−ワクチンを製造する方法であって、
i)HIV−1亜型A又はBに感染した多数の個体から得られたB−リンパ球で発現されるモノクローナル抗体のファージミドライブラリーを作製する工程、
ii)未変性の又は組換HIV−1ペプチドパンニングにより、抗体ファージミドライブラリーを濃厚化する工程、
iii)支持体に結合されたHIV−1ファージミドライブラリーを使用するリバースパンニング手法により、HIV−1ペプチド/ポリペプチド/タンパク質材料を収集する工程、
iv)工程iii)において得られたペプチドの材料の同定及び特徴決定の工程、並びに
v)発現システムにおけるグリコシル化された組換HIV−1 envペプチドの作出において、工程iv)の結果を使用する工程、
(vi)組換HIV−1 envペプチドを精製し、かつワクチン組成物を製造する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
前記HIV材料が得られる個体が、同一又は異なるHIV亜型に感染されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス材料が得られる個体が、抗レトロウイルス療法ナイーブ患者又は抗レトロウイルス療法が施された患者である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
得られるウイルス材料が、支持体に接触される前に増幅される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
種々の異なるHIV特異抗体及び/又は抗体断片を保有する支持体が、ファージミドライブラリー、ペプチドマイクロチップ、又は細菌ライブラリーから選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
ファージミドライブラリーが:
a)HIVに感染した多数の個体から得られたB−リンパ球において発現された免疫グロブリンの、各々、軽鎖及び重鎖の可変領域をコードする核酸由来のDNA−断片を調製する工程;
b)免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA−断片を連結し、免疫グロブリンの、各々、軽鎖及び重鎖の可変領域を含むポリペプチドの発現を可能にし、多数の異なる特異性を作製する工程;
c)ファージミドベクター内の連結された断片をクローニングし、かつバクテリオファージの表面上での発現のために細菌株を形質転換する工程により調製される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)におけるDNA断片の調製が、抗レトロウイルス療法により治療された及び/又はされないHIV−1亜型A及びB感染患者のB−リンパ球から得られたRNA−プールからのcDNAの調製、並びに軽鎖及び重鎖の可変領域の増幅を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記増幅が、表1〜7に列記されたプライマーの組合せのいずれかにより実行される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
得られたscFvファージミド組換抗体が、HAART−又は任意の他の抗レトロウイルス療法を経験した患者において実行された抵抗性HIV変異株に対し特異性がある、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程i)が、異なるドナーから単離された組換gp120−、gp41−及び未変性のHIV−ポリペプチドによる、HIV−特異抗体を結合するパンニング手法における抗体のScFv断片を提示しているファージミドライブラリーの濃厚化を更に含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(iii)における、HIV−1 envペプチド/ポリペプチド/タンパク質の単離が、発明されたリバースパンニング技術を用いて実行される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
工程iv)における、LC質量分析が、HIV−1 gp120及びその標準断片及び可変断片の定量分析、同定及び配列決定のために適用される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
工程v)が、真核生物グリコシル化を伴う好適な宿主において、組換HIV−1ペプチド/ポリペプチド/タンパク質を作製する工程を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
任意の免疫原性刺激因子、アジュバント又は担体の添加/複合により、HIV予防ワクチン組成物を調製することに関与している、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
組換gp41及びgp120 HIV−1亜型A及びB envペプチド/ポリペプチド/タンパク質を含有する、請求項13記載のHIVワクチン。
【請求項16】
立体的に安定化されたリポソーム(SSL)又はビロソーム及びそれらの可能な変種を、アジュバント−担体として更に含有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載のHIVワクチン。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法により取得し得るHIV予防ワクチン。
【請求項18】
請求項16記載のHIVワクチンの使用であって、HIV感染症及びAIDS疾患の罹患及び発症に対し、未感染の個体を免疫化するための使用。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図9L】
【図10AB】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図9J】
【図9K】
【図9L】
【図10AB】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−540674(P2010−540674A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528318(P2010−528318)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008544
【国際公開番号】WO2009/046984
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510098113)テクノロジー インテグレール リミティド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008544
【国際公開番号】WO2009/046984
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510098113)テクノロジー インテグレール リミティド (1)
【Fターム(参考)】
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