説明

ICカードリーダ

【課題】簡単な装置構成で、ICカードとの非接触通信における待機電力を低減させることが可能なICカードリーダを提供する。
【解決手段】本ICカードリーダ10は、ICカード20との間で非接触通信を行うICカードリーダであって、省電力に関する動作モードを設定する動作モード設定部16と、動作モード設定部16により省電力モードが設定された場合、非接触通信信号を送信するアンテナ11の動作を定期的に停止するよう制御するアンテナ動作制御部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でICカードとの間で通信を行うICカードリーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触ICカードリーダ(以下、単にICカードリーダという)と非接触ICカード(以下、単にICカードという)との間で、様々な非接触通信が行われている。非接触通信は、課金システム、施錠システム、認証システム、電力伝送システムなど、様々な用途で利用されている。
【0003】
上記のICカードリーダは、ICカードとの通信を開始するために、ポーリング処理によりICカードを検知するための検知信号を送信している。この検知信号の送信は、通信の対象となるICカードが検知されるまで継続される。そして、例えばICカードの保有者がICカードをICカードリーダにかざして、両者の距離がある一定距離以下となった場合に、ICカードはICカードリーダからの検知信号を受信する。ICカードがこの検知信号を受信すると、ICカードリーダとICカードの間で通信が開始される。なお、ポーリング処理を含む両者間での通信の通信方式は、ICカードの種類により異なる。
【0004】
従来のICカードリーダとして、ポーリング処理において、通信の対象となるICカードの通信方式として検出された回数が多い通信方式から順に、複数種類の通信方式による応答確認用の通信信号をICカードに送信するものが知られている。これにより、ポーリング処理に用いられる通信方式と通信頻度が高いICカードの通信方式とが早いタイミングで一致する確率が高められる結果、通信頻度が高いICカードの通信方式の検出効率を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−136476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ICカードリーダの周囲にICカードが長時間接近しないなど、非接触通信が長時間開始されない場合には、ICカードリーダは不要な検知信号を送信し続けることになり、ICカードを検知するまでの消費電力(以下、待機電力ともいう)が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ICカードとの非接触通信における待機電力を低減させることが可能なICカードリーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明のICカードリーダは、ICカードとの間で非接触通信を行うICカードリーダであって、省電力に関する動作モードを設定する動作モード設定部と、動作モード設定部により省電力モードが設定された場合、非接触通信信号を送信するアンテナの動作を定期的に停止するよう制御するアンテナ動作制御部と、を備える。
【0009】
また、第2の発明のICカードリーダは、動作モード設定部が、あらかじめ設定された時刻に応じて動作モードを設定する。
【0010】
また、第3の発明のICカードリーダは、動作モードを切り替える動作モード切替スイッチを備え、動作モード設定部が、動作モード切替スイッチによる切り替えに応じて、動作モードを設定する。
【0011】
また、第4の発明のICカードリーダは、人を検知する人感センサを備え、アンテナ動作制御部が、人感センサにより人が検知された場合、アンテナの動作を停止する周期を短縮する。
【0012】
また、第5の発明のICカードリーダは、動作モード設定部により省電力モードが設定されていることを報知する報知部を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ICカードとの非接触通信における待機電力を低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかるセキュリティ管理システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる各動作モードを説明するための図であり、(a)通常モードの場合、(b)省電力モードの場合を示している。
【図3】本発明の実施形態にかかる各動作モードでのアンテナを流れる電流波形の一例を示す図であり、(a)通常モードの場合、(b)省電力モードの場合を示している。
【図4】本発明の実施形態にかかる各動作モードでのアンテナの動作状況の一例を示す図であり、(a)通常モードの場合、(b)省電力モードの場合を示している。
【図5】本発明の実施形態の変形例1にかかる人感センサを備えたセキュリティ管理システムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態のICカードリーダについて、図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
本実施形態では、ICカードリーダと、ICカードリーダとの間で様々な通信を行うICカードと、を有する非接触通信システムが構成される。この非接触通信システムは、所定の料金決済処理を行う課金システム、扉等の施錠/開錠を行うセキュリティ管理システム、特定の人の認証を行う認証システム、などに利用される。本実施形態では、一例として、非接触通信システムをセキュリティ管理システムであるものと想定して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態におけるセキュリティ管理システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すセキュリティ管理システム1は、ICカードリーダ10とICカード20とを備える。ICカードリーダ10は、アンテナ11と、通信処理部12と、制御部13と、設定スイッチ14と、報知部15を備える。また、通信処理部12は、A方式無線部12a、B方式無線部12b、C方式無線部12cの各無線部を備える。また、制御部13は、動作モード設定部16、アンテナ動作制御部17を備える。さらに、ICカードリーダ10は、出入り口の扉等の施錠/開錠を行う電気錠30に接続される。ICカードリーダ10は、通常、1つの扉につき1つ設置される。
【0018】
ICカードリーダ10とICカード20との間では、非接触通信が行われる。例えば、ICカードリーダ10は、内蔵されたアンテナ11を介して、ICカード20との間で電磁誘導による電波を送受信し、ICカード20に記憶させた情報を制御部13により読み取る。
【0019】
アンテナ11は、ICカード20のアンテナ(不図示)との間で、非接触通信用の通信信号の通信(送信、受信の少なくとも一方)を行う。
【0020】
通信処理部12は、1つ以上の通信方式に対応し、制御部13からの制御信号に応じて、特定の通信方式による非接触通信を実行する。A方式無線部12aは、例えばISO14443のTYPE_Aにより規定されているA方式の通信方式による通信処理を行う。B方式無線部12bは、例えばISO14443のTYPE_Bにより規定されているB方式の通信方式による通信処理を行う。C方式無線部12cは、例えばA方式、B方式のいずれとも異なるC方式の通信方式による通信処理を行う。なお、ここでは通信処理部12が実行可能な通信方式は3方式としたが、1つ、2つ、または4つ以上の通信方式を考慮してもよい。複数の無線部12a〜12cを設けた場合には、ICカード20の通信方式を広く受け入れることができ、利便性が向上する。
【0021】
制御部13は、ICカードリーダ20全体の動作を制御する。
例えば、制御部13は、通信処理部12を制御し、省電力化に関する動作モードを設定する動作モード設定部16を有する。動作モードとしては、アンテナ11の動作を継続的に行う通常モード、アンテナ11の動作を定期的に停止する省電力モード、などが考えられる。
【0022】
実際には、制御部13が有するタイマ(不図示)により設定時刻となったことを検出したとき、制御部13は、好適な動作モードを設定することができる。例えば、ICカードリーダ20が一般オフィスに設置された場合、一般オフィスでは夜間時間帯での施錠/開錠の操作回数は少なく、日中時間帯での操作回数が多くなる。そこで、日中時間帯から夜間時間帯になるときに、通常モードから省電力モードへ動作モードを遷移することで、より省電力化を図ることができる。逆に、夜間時間帯から日中時間帯になるときに、省電力モードから通常モードへ動作モードを遷移することで、動作性を向上させることができる。なお、動作モードを遷移する時刻は、あらかじめ設定されてもよい。このように、設定時刻に応じて動作モードを遷移することで、特にあらかじめ人の多い時間帯を推測しやすいオフィスビル等で、省電力性と動作性の両立を図ることができる。
【0023】
また、制御部13は、動作モード設定部16により省電力モードが設定された場合、アンテナ11の動作を定期的に停止するよう制御するアンテナ動作制御部17を有する。
なお、「アンテナ11の動作を定期的に停止するよう制御する」とは、アンテナ11への給電を停止すること、アンテナ11へ給電はされるが、その後通信処理部12によりアンテナ11を介した通信信号の通信は行わないこと、の双方を含む。
【0024】
また、制御部13は、通信処理部12によって、ICカード20からアンテナ11を介して識別情報(例えばユーザID)を読み出す。そして、この識別情報に基づいて、正当な識別情報である場合には制御信号を電気錠30へ出力して扉を開錠し、不当な識別情報である場合には制御信号を報知部15へ出力して管理者へ知らせることができる。
【0025】
設定スイッチ14は、動作モードを切り替えるスイッチ(省電力スイッチなど)である。また、設定スイッチ14は、当該スイッチへのユーザの操作入力に応じた設定情報を制御部7へ出力する。例えば、スイッチ操作に応じて動作モードを切り替えられたことを示す設定情報が、制御部13の動作モード設定部16へ出力される。このとき、動作モード設定部16は、設定スイッチ14からの設定情報(スイッチの切り替え情報)に応じて、通常モードから省電力モード、もしくは、省電力モードから通常モードへ動作モードを遷移させる。設定スイッチ14を用いることで、ユーザが意図したときに任意に動作モードを設定することが可能である。
【0026】
報知部15は、各種情報をユーザ、管理者へ報知する。例えば、報知部15は、現在、動作モードが省電力モードに設定されていることを、音声、音楽等の音情報や、視認可能な表示情報により、ICカード20を保持するユーザへ報知する。また、報知部15は、ICカードリーダ10の管理を行う管理者へ報知すべく、報知情報を外部装置へ送信するようにしてもよい。なお、報知部15は、通常モードに設定されていることを報知することも当然できる。これにより、ユーザは視覚的又は聴覚的に設定された動作モードを容易に認識することができる。
【0027】
次に、ICカードリーダ10によるアンテナ動作制御について説明する。
まず、通信処理部12が無線部12aないし12cのいずれか1つだけを有し、1つの通信方式による通信を行うことを想定する。
【0028】
図2は、各動作モード(通常モード及び省電力モード)を説明するための図である。図2(a)に示す通常モードでは、時間帯によらず常にアンテナ11が動作している状態となる(図2(a)における白塗部分)。一方、図2(b)に示す省電力モードでは、所定時間帯(例えば7:00〜19:00)には常にアンテナ11が動作している状態(図2(b)における白塗部分)となり、この所定時間帯以外(例えば19:00〜7:00)には定期的にアンテナ11の動作が停止している状態(図2(b)における斜線部分)となる。アンテナ11が動作している状態では、ICカードリーダ10はICカード20に対して検知信号の送信(つまり、ICカードリーダ10の周囲に送信要求のあるICカード20が存在するか否かを確認するポーリング)を行っており、アンテナ11が非動作の状態では、ポーリングを行っていない。
【0029】
図3は、各動作モードでのアンテナ11を流れる電流波形の一例を示す図である。ここでは、アンテナ11を流れる電流(平均電流、最低電流)を考慮している。図3(a)に示す通常モードでは、所定期間Tにおける平均電流がα、最低電流がγ程度である。一方、図3(b)に示す省電力モードでは、所定期間Tにおける平均電流がβ(α>β)、最低電流がγ程度である。つまり、省電力モードの方が通常モードよりも消費電力が抑えられている。なお、最低電流γは、通常モードであるか省電力モードであるかに関係なく、ICカードリーダ10本体が電源ONである限り消費する電流を示す。
【0030】
また、省電力モードでは、アンテナ11が動作している期間T1(例えば、200ms)と、アンテナ11が動作していない期間T2(例えば、800ms)とがある。T1期間及びT2期間は、任意の長さである。ただし、T1期間は、ICカードリーダ10が、T1期間の始期に検知信号を受信したICカード20との間で、施錠/開錠を行うための所定の認証処理が完了可能な長さに設定される。アンテナ動作制御部17は、省電力モードにおいてT1期間とT2期間とが交互に繰り返すよう制御する。
【0031】
このように、T1期間とT2期間とを繰り返すよう制御することで、省電力モードでの待機電力を通常モードでの待機電力の40%程度に抑制することができる。特に、ICカードリーダ10が設置される扉数が多いオフィス等では、大幅に待機電力を低減させることができる。
【0032】
次に、通信処理部12が無線部12a〜12cの3つの無線部を有し、3つの通信方式による通信が可能であることを想定する。
【0033】
図4は、各動作モードでのアンテナ11の動作状況の一例を示す図である。図4(a)に示す通常モードでは、通信処理部12は、制御部13からの制御信号に応じて、通信方式を順次変更して非接触通信を行う。なお、各通信方式による通信が可能な期間は、図3(b)と同様に、所定の認証処理に最低必要な期間よりも長い期間T1である。
【0034】
一方、図4(b)に示す省電力モードでは、通信処理部12が通信方式を順次変更して非接触通信を行う期間(つまりアンテナ11が動作している期間T3)と、通信処理部12による非接触通信が不可能である期間(つまりアンテナ11が動作していない期間T4)とがある。なお、期間T3における各通信方式による通信が可能な期間は、図4(a)と同様に、所定の認証処理に最低必要な期間よりも長い期間T1である。また、アンテナ11が動作していない期間T4は、期間T2と同じであってもよいし、異なっていても良い。アンテナ動作制御部17は、省電力モードにおいてT3期間とT4期間とが交互に繰り返すよう制御する。
【0035】
(変形例1)
図1の非接触通信システム1のICカードリーダ10は、人の存在を検知する人感センサを備えてもよい。図5は、人感センサを備えた非接触通信システムの構成の一例を示すブロック図である。図5に示す人感センサ18としては、赤外線、超音波等を用いたセンサが考えられる。
【0036】
ICカードリーダ10は、動作モード設定部16により省電力モードが設定されている状態で、人感センサ18により人を検知した場合、アンテナ動作制御部17がアンテナ11の動作を停止する周期を短縮する。例えば、図3(b)、図4(b)に示したアンテナ11が動作している期間T1、T3を可能な限り短くしたり、アンテナ11が動作していない期間T2、T4を短くしたりすることで、アンテナ11の動作を停止する周期を短縮する。これにより、省電力化を図りつつ、夜間等人の少ない時間帯に巡回員や清掃員が所定の認証処理を行い易くすることができる。
【0037】
(変形例2)
先に説明したICカード20としては、電源を備えてない構成を想定した。このICカード20は、ICカードリーダ10から電力供給を受けて非接触通信を行うものである。このようなICカード20以外であって、電源を備えて自発的に非接触通信を開始することができるICタグを想定してもよい。つまり、本実施形態のICカード20には、ICタグを含めてもよい。この場合、ICタグの省電力化を図ることもできる。
【0038】
このような本実施形態のICカードリーダ10によれば、ICカード20との非接触通信における待機電力を低減させることが可能である。特に、ICカード20を検知するための特別なセンサを設けずに、簡単な装置構成で、待機電力を低減させることが可能である。
【0039】
さらに、ICカードリーダ10が仮に待機電力を省電力化するために検知信号の送信を一切停止してしまうと、ICカードが接近したときに非接触通信を開始することができない。セキュリティ管理システムでは、基本的に24時間365日稼動をする必要があるため、省電力化とセキュリティの向上の両立が求められる。本実施形態のセキュリティ管理システム1によれば、ICカードリーダ10のアンテナ11が定期的に動作したり動作を停止したりするので、省電力性と動作性の両立を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 セキュリティ管理システム
10 ICカードリーダ
11 アンテナ
12 通信処理部
13 制御部
14 設定スイッチ
15 報知部
16 動作モード設定部
17 アンテナ動作制御部
18 人感センサ
20 ICカード
30 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードとの間で非接触通信を行うICカードリーダであって、
省電力に関する動作モードを設定する動作モード設定部と、
前記動作モード設定部により省電力モードが設定された場合、非接触通信信号を送信するアンテナの動作を定期的に停止するよう制御するアンテナ動作制御部と、
を備えるICカードリーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のICカードリーダであって、
前記動作モード設定部は、あらかじめ設定された時刻に応じて前記動作モードを設定するICカードリーダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のICカードリーダであって、更に、
前記動作モードを切り替える動作モード切替スイッチを備え、
前記動作モード設定部は、前記動作モード切替スイッチによる切り替えに応じて、前記動作モードを設定するICカードリーダ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のICカードリーダであって、更に、
人を検知する人感センサを備え、
前記アンテナ動作制御部は、前記人感センサにより人が検知された場合、前記アンテナの動作を停止する周期を短縮するICカードリーダ。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のICカードリーダであって、更に、
前記動作モード設定部により省電力モードが設定されていることを報知する報知部を備えるICカードリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−170710(P2011−170710A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35202(P2010−35202)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】