説明

ICカード用アンテナコイルの形成治具、およびICカード用アンテナコイルの製造方法

【課題】 設備コストを抑え、かつ形成治具の加圧時の変形を軽減し、定盤との良好な平行度を実現する、アンテナコイルを安定に埋め込むことのできる、生産歩留まりを向上させたICカード用アンテナコイルの形成治具、およびICカード用アンテナコイルの製造方法を得ること。
【解決手段】 マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けた治具を、樹脂フィルムに押し付け、通電発熱させ、樹脂フィルム7にアンテナコイルを埋込形成するICカード用アンテナコイル用形成治具において、治具を構成する絶縁ブロック3とガイドブロック1とが、加圧方向に対し並列に配置されて、前記樹脂フィルム7に押し付ける力を、前記ガイドブロック1が受けるICカード用アンテナコイルの形成治具とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードの製造方法に関し、特にマグネットワイヤーを通電発熱させ樹脂フィルムに埋め込むICカード用アンテナコイルの形成治具、およびICカード用アンテナコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマグネットワイヤーの通電発熱を用いたアンテナコイル形成法は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けた治具を用い樹脂フィルムに押し付けた状態でマグネットワイヤーを通電発熱させ、樹脂フィルムにアンテナコイルを埋込み形成する手順がとられる。
【0003】
特許文献1には、アンテナコイルの両端の被覆を除去することなく、コイル両端部に通電用押圧端子を押し当て、ワイヤーの芯部と導通をとり、通電発熱させ、樹脂フイルムに埋め込み固定するICカード用アンテナコイルの形成方法について記載されている。
【0004】
図3は、従来のアンテナコイルの形成治具を示す説明図であり、図3(a)は、形成治具の側面図、図3(b)は、形成治具の裏面図、図3(c)は、図3(b)におけるAA断面図である。図3に示すように、マグネットワイヤー6を誘導するためのガイドピン2A,2B,2C,2Dがガイドブロック11に垂直に配置され、バネによってアンテナコイル形成側に付勢されている。
【0005】
この状態でマグネットワイヤー6は、ガイドピン2A,2B,2C,2Dに従いアンテナコイルのパターン状に巻き付けられ、クランプフィンガー5によってパターンを保持される。また、クランプフィンガー5と並列に通電プローブ4が配置されている。ガイドピン2、クランプフィンガー5、導通プローブ4は、それぞれ絶縁ブロック3によってガイドされ、同時に、導通プローブ4の電圧印加時の漏電を防ぐ。
【0006】
図4は、従来のアンテナコイル形成工程を示す説明図であり、図4(a)は、アンテナコイル6を樹脂フィルム7に埋め込む前の状態の説明図、図4(b)は、アンテナコイル6を樹脂フィルムに埋め込んだ後の状態の説明図である。図4に示すように、定盤9上に樹脂フィルム7を配置しアンテナコイル6を樹脂フィルム7側に向け形成治具を配置する。次に、形成治具のガイドブロック11を定盤9側に押し付け、アンテナコイル6と樹脂フィルム7を挟みこむ。このとき、ガイドピン2A,2B,2C,2D、クランプフィンガー5、導通プローブ4は、形成治具内部に格納される。導通プローブ4は、アンテナコイル6の両端部に食い込みアンテナコイルのワイヤーの芯線部と導通をとる。導通プローブが、前記ワイヤーと十分な導通が得られた後、アンテナコイル6を通電発熱させ、樹脂フィルム7に埋め込み固定する。以上の工程によりアンテナコイルを形成することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−108965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
均一なアンテナコイルの埋め込みを実現するためには、アンテナコイル全体を偏りなく加圧した状態で通電発熱させる必要がある。加圧分布に偏りをもつ埋め込みでは、アンテナコイルと樹脂フィルムとの間の熱伝導に偏りを生じ、アンテナコイルの発熱分布にも偏りが生じ、埋め込み深さにバラツキが発生する。特に、細線のアンテナ形成を行う場合、この影響が顕著に現れ、埋め込みされず、製品歩留を低下させる原因となる。
【0009】
加圧力分布を平滑化するためには、治具と定盤との平行度、平面度の向上が求められる。しかしながら、従来の製造方法に用いられていた治具は、図3に示すようにガイドピン2A,2B,2C,2D、導通プローブ4、クランプフィンガー5が組み込まれており、それらに絶縁対策を施す必要があるため、絶縁ブロック31を用いている。
【0010】
ここで、絶縁対策として、樹脂を用いた場合について以下に説明する。一般に、絶縁材として用いられる樹脂材は、変形し易い上、金属材に比べ加工精度が得られないため、絶縁層を治具構成に組み込んだ場合、組立締結力による変形や、加圧時の変形が生じ、治具と定盤との良好な平行度、平面度は得がたい。絶縁材としてセラミック材料を用いる方法も考えられるが、治具単価が大きくなり、設備コストの増大を招く。
【0011】
本発明の目的は、設備コストを抑え、かつ形成治具の加圧時の変形を軽減し、定盤との良好な平行度を実現する、アンテナコイルを安定に埋め込むことのできる、生産歩留まりを向上させたICカード用アンテナコイルの形成治具、およびICカード用アンテナコイルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けた治具に樹脂フィルムを押し付け、マグネットワイヤーを通電発熱させることによりアンテナコイルを製造する方法において、治具の絶縁ユニットに、組立締結力や押し付け加圧力が直接伝達しない構成の治具を用いることで、上記の問題を解決するものである。
【0013】
本発明のICカード用アンテナコイルの形成治具は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けた治具を樹脂フィルムに押し付け、マグネットワイヤーを通電発熱させ、樹脂フィルムにアンテナコイルを埋込形成するICカード用アンテナコイル形成方法において、治具を構成する絶縁ユニットが、加圧方向に対し他のユニットの少なくとも一部と並列に配置されることにより、加圧力を分散し、治具自体の変形を抑え、埋め込み面での加圧力分布を平滑にする。
【0014】
また、本発明は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けて前記マグネットワイヤーを樹脂フィルムに押し付け、マグネットワイヤーを通電発熱させ、樹脂フィルムに前記マグネットワイヤーを埋込形成するICカード用アンテナコイルの形成方法に用いる治具において、前記絶縁ユニットは、加圧方向に他のユニットと非接触となる空間を少なくとも1つ設けて配置され、加圧力が絶縁ユニットを経由することなく伝達させることで、治具自体の変形を抑え埋め込み面での加圧力分布を平滑にする。
【0015】
また、本発明は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けた治具を樹脂フィルムに押し付け、マグネットワイヤーを通電発熱させ、樹脂フィルムにアンテナコイルを埋込形成するICカード用アンテナコイル形成方法に用いる治具において、前記治具の構造を単一または複合部材による箱型構造で構成し、その箱型構造体に絶縁ユニットが取り付けられた構成とすることで、治具自体の変形を抑え埋め込み面での加圧力分布を平滑にする。
【0016】
即ち、本発明は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けて前記マグネットワイヤーを樹脂フィルムに押し付け、マグネットワイヤーを通電発熱させ、樹脂フィルムにマグネットワイヤーを埋込形成するICカード用アンテナコイルの形成治具において、前記ICカード用アンテナコイルの形成治具は、前記マグネットワイヤーをアンテナコイル状に保持し、前記マグネットワイヤーに通電する手段を備えた絶縁ユニットと、前記絶縁ユニットを除く他のユニットとで構成され、前記絶縁ユニットが、加圧方向に対し前記他のユニットの少なくとも一部と並列に配置されて、前記樹脂フィルムに押し付ける加圧力を、前記他のユニットが受けるICカード用アンテナコイルの形成治具である。
【0017】
また、本発明は、前記絶縁ユニットは、加圧方向に他のユニットと非接触となる空間を少なくとも1つ設けて配置されているICカード用アンテナコイルの形成治具である。
【0018】
また、本発明は、前記他のユニットは、単一または複合部材による箱型構造であり、前記絶縁ユニットは、前記の箱型構造体に取り付けられているICカード用アンテナコイルの形成治具である。
【0019】
また、本発明は、前記絶縁ユニットは、導通プローブが、マグネットワイヤーの端部の位置に配置されているICカード用アンテナコイルの形成治具である。
【0020】
また、本発明は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けた治具に樹脂フィルムに押し付け、通電発熱させ、樹脂フィルムにアンテナコイルを埋込形成するICカード用アンテナコイルの製造方法において、治具を構成する絶縁ユニットには、前記マグネットワイヤーをアンテナコイル状に保持し、通電する手段を備え、前記絶縁ユニットを除いた他のユニットの少なくとも一部と、加圧方向に対し並列に配置し、前記樹脂フィルムに押し付ける加圧力を、前記他のユニットが受けるICカード用アンテナコイルの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、アンテナコイルを通電発熱させ樹脂フィルムに埋め込み固定するアンテナコイル製造方法において、絶縁部品に加わる力を分散、遮断するような構成の形成治具を用い、加圧時のアンテナと樹脂フィルムとの密着性を高め、埋め込み深さのばらつきを減少させることができる。
【0022】
本発明によれば、設備コストを抑え、且つ、形成治具の加圧時の変形を軽減し、定盤との良好な平行度を実現する、アンテナコイルを安定に埋め込むことのできる、生産歩留まりを向上させたICカード用アンテナコイルの形成治具、およびICカード用アンテナコイルの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るICカード用アンテナコイルの形成治具、およびICカード用アンテナコイルの製造方法について、以下に説明する。
【0024】
本発明のICカード用アンテナコイルの形成治具は、マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けて前記マグネットワイヤーを樹脂フィルムに押し付け、前記マグネットワイヤーを通電発熱させ、樹脂フィルムに前記マグネットワイヤーを埋込形成するICカード用アンテナコイルの形成治具である。絶縁ユニットと前記絶縁ユニットを除いた他のユニット(材質は、アルミなどの金属)とで治具を構成し、絶縁ユニットを加圧方向に対し、少なくとも他のユニットの一部と並列に配置する。並列に配置することにより、前記樹脂フィルムに押し付ける加圧力を、他のユニットが受ける構造としている。
【0025】
これは、絶縁ユニットに、加圧する力を直接加えないようにし、この力は他のユニットの方へ分担させる構造とするものである。
【0026】
前記絶縁ユニットには、アンテナコイル埋め込み用のガイドピンが装着されている。ここで、前記ガイドピンは、ばねによって、絶縁ユニット内にて、圧力を加える方向にて、移動できるように保持されている。このため、形成治具が、樹脂シートと密着した時点では、前記電極ピンの全体が絶縁ユニット内に沈む機構である。
【0027】
ここで、前記絶縁ユニットは、加圧方向に他のユニットと非接触となる空間を少なくとも1つ設けて配置されている。 例えば、絶縁ユニットの加圧方向と垂直な平面部と、他のユニットの加圧面との間に空間を設けて、絶縁ユニットに加わる力が、直接、他のユニットに加わらないようにしている。
【0028】
また、本発明のICカード用アンテナコイル用形成治具は、他のユニットが単一または複合部材による箱型構造であり、前記絶縁ユニットは、前記の箱型構造体に取り付けられている。ここで、前記絶縁ユニットは、箱型構造体の内部の領域の、大部分を占めても良いし、また、箱型構造体の側面に配置されても良い。
【0029】
また、前記絶縁ユニットには、導通プローブが、マグネットワイヤーの端部の位置に配置されており、前記導通プローブから、マグネットワイヤーに、通電される。
【実施例】
【0030】
図1は、本発明の実施例によるICカード用アンテナコイルの形成治具の説明図である。図1(a)は、形成治具の側面図であり、 図1(b)は、形成治具の裏面図であり、図1(c)は、図1(b)におけるAA断面図である。
【0031】
本発明では、絶縁ブロック3がハウジングブロック8に取り付けられおり、更にガイドブロック1と絶縁ブロック3とは接触しない構造となっている。この治具にアンテナコイル6を巻き付け、従来方法と同様に樹脂フィルム7に押し付ける。ここで、前記絶縁ブロック3が、絶縁ユニットに相当し、また、ガイドブロック1、ハウジングブロック8が、他のユニットに相当する。
【0032】
図2は、本発明のICカード用アンテナコイルの製造方法の説明図である。図2(a)は、アンテナコイルを樹脂シートに埋め込む前の状態の説明図、図2(b)は、アンテナコイルを樹脂シートに埋め込んだ後の状態の説明図である。
【0033】
形成治具の加圧力はハウジングブロック8からガイドブロック1に伝達され、絶縁ブロック3に変形力が付加されることなく、アンテナコイルと樹脂フィルムが挟まれ、加圧される[図2(b)]。以降は従来方法と同様に、アンテナコイルへの通電を行い、その発熱により樹脂フィルムを軟化させアンテナコイルのパターンを樹脂フィルムに埋め込み固定する。
【0034】
ここで、ワイヤー径は、60ミクロンから100ミクロンの間の径である。このような、細いワイヤー径においても、本発明のICカード用アンテナコイルの形成治具は、確実に、細いワイヤーを、アンテナコイルとして、樹脂シートに確実に、均一に埋め込むことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のICカード用アンテナコイルの形成治具およびICカード用アンテナコイルの製造方法は、ICカード用アンテナコイルの製造設備、あるいは、その他、細いワイヤーを、樹脂板に埋め込む工程等の設備の利用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例によるICカード用アンテナコイルの形成治具の説明図。図1(a)は、形成治具の側面図、図1(b)は、形成治具の裏面図、図1(c)は、図1(b)におけるAA断面図。
【図2】本発明のICカード用アンテナコイルの製造方法の説明図。図2(a)は、アンテナコイルを樹脂シートに埋め込む前の状態の説明図、図2(b)は、アンテナコイルを樹脂シートに埋め込んだ後の状態の説明図。
【図3】従来のアンテナコイルの形成治具を示す説明図。図3(a)は、形成治具の側面図、図3(b)は、形成治具の裏面図、図3(c)は、図3(b)におけるAA断面図。
【図4】従来のアンテナコイルの形成工程を示す説明図。図4(a)は、アンテナコイルを樹脂シートに埋め込む前の状態の説明図、図4(b)は、アンテナコイルを樹脂シートに埋め込んだ後の状態の説明図。
【符号の説明】
【0037】
1,11 ガイドブロック
2,2A,2B,2C,2D ガイドピン
3,31 絶縁ブロック
4 導通プローブ
5 クランプフィンガー
6 アンテナコイル
7 樹脂フィルム
8 ハウジングブロック
9 定盤
100 クランプフィンガーの端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付けて前記マグネットワイヤーを樹脂フィルムに押し付けて通電発熱させ、樹脂フィルムにマグネットワイヤーを埋込形成するICカード用アンテナコイルの形成治具において、前記ICカード用アンテナコイルの形成治具は、前記マグネットワイヤーに通電する手段を備えた絶縁ユニットと、前記絶縁ユニットを除く他のユニットとで構成され、前記絶縁ユニットが、加圧方向に対し前記他のユニットの少なくとも一部と並列に配置されて、前記樹脂フィルムに押し付ける加圧力を前記他のユニットが受けることを特徴とするICカード用アンテナコイルの形成治具。
【請求項2】
前記絶縁ユニットは、加圧方向に他のユニットと非接触となる空間を少なくとも1つ設けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のICカード用アンテナコイルの形成治具。
【請求項3】
前記他のユニットは、単一または複合部材による箱型構造であり、前記絶縁ユニットは、前記の箱型構造体に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のICカード用アンテナコイルの形成治具。
【請求項4】
前記絶縁ユニットは、導通プローブが、マグネットワイヤーの端部の位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のICカード用アンテナコイルの形成治具。
【請求項5】
マグネットワイヤーをアンテナコイル状に巻き付け樹脂フィルムに押し付けて通電発熱させ、樹脂フィルムにマグネットワイヤーを埋込形成するICカード用アンテナコイルの製造方法において、絶縁ユニットには、前記マグネットワイヤーをアンテナコイル状に保持し、通電する手段を配置し、前記絶縁ユニットを除いた他のユニットの少なくとも一部と前記絶縁ユニットとを加圧方向に対し並列に配置し、前記樹脂フィルムに押し付ける加圧力を前記他のユニットが受けることを特徴とするICカード用アンテナコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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