説明

ICカード用リーダライタ

【課題】 アンテナの機能を併せ持ったフェライトコアにより、磁束を効率よくICカードに供給して外部に漏洩しないようにして、外部への不要輻射ノイズを低減したリーダライタを提供する。
【解決手段】 このリーダライタ110は、ICカード200に備えた図示しないループアンテナを介して、ICカード200との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタ制御部100と、ICカード200への電力用搬送波の伝播と当該ICカード200とのデータの授受を仲介するループコイル9と、少なくとも一部にループコイル9を巻掛け当該ループコイル9から発生した磁界を磁束13として導くフェライトコア14とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード用リーダライタに関し、さらに詳しくは、ICカード用リーダライタから放射する不要輻射ノイズを低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる情報記録媒体が市場に広く出回っている。ICカードは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状、あるいはシート状の形状を備え、カード内にIC(Integrated Circuit)が組み込まれているものを総称した名称である。その中で非接触型ICカード(以下、単にICカードと呼ぶ)は、電鉄の駅への入退場時に使用される定期券或いはプリペイド乗車券として、現在の磁気カード方式に代わり多くの駅の改札で採用されている。また、近年ではあらゆる場所でICカードが使用され、地上の設備ばかりでなく航空機内に備えたリーダライタにより、例えば、免税品をクレジットカードにより買うこともできるようになっている。しかし、ICカードはデータのやり取りを電波で行うため、国内の電波法により送信パワーの強度等が規制され、また電子機器は他機器の誤動作を防ぐための不要輻射ノイズのレベルが各国で規定されている。例えば、国内ではVCCI規格があり、北米ではUL規格、ヨーロッパではVDE規格がそれぞれ設けられ、各国の規格を満たさなければ販売、使用することができない。特に、病院、試験計測室及び航空機内では、機器の誤動作は人命、計測結果等に対して悪影響をもたらす虞があるため、不要輻射ノイズを厳しく抑制する必要がある。
そこで不要輻射ノイズを抑制する従来技術として特許文献1には、漏洩磁束及びデジタルノイズが装置の外部に放射されるのを防止すべく非接触型送受信経路で発生する漏洩磁束をシールドする電磁シールド層、及び(共用)ICカードの内部で発生するデジタルノイズを吸収するデジタルノイズ吸収層との双方がICカードホルダの外側に設けられたリーダライタについて開示されている。
【特許文献1】特開2004−102747公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、カードリーダライタ装置から輻射される不要輻射ノイズを抑制するために、周囲を電磁シールド層とデジタルノイズ吸収層により覆い、発生する不要輻射ノイズを電磁的に減衰させるものである。そのため、本来のリーダライタの部品の他に電磁シールド層とデジタルノイズ吸収層が必要となり、装置のコストが高くなると共に、装置のサイズも大きくなってしまうといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、アンテナの機能を併せ持ったフェライトコアにより、磁束を効率よくICカードに供給して外部に漏洩しないようにして、外部への不要輻射ノイズを低減したリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、ICカードに備えたループアンテナを介して、該ICカードとの間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うICカード用リーダライタにおいて、前記ICカードへの電力用搬送波の伝播と当該ICカードとのデータの授受を仲介するループコイルと、少なくとも一部に該ループコイルを巻掛け当該ループコイルから発生した磁界を磁束として導く磁束導入手段と、を備え、前記磁束導入手段は前記ICカード側のループアンテナに対して少なくとも当該ICカードとの交信を可能とする磁束を供給できる構成を備えていることを特徴とする。
本発明のリーダライタは、アンテナをコイル状にして、そのコイルを磁性材料に巻掛ける。それにより、コイルに発生した磁界は磁性材料に磁束として流れるようになり、磁束が外部に漏洩することを防ぐことができる。従って、この磁束をICカードのループコイルに通過させることにより、リーダライタとICカードとの交信が可能となる。
請求項2は、前記磁束導入手段は、前記ループコイルにより発生された磁束を導くループ状の磁路に、少なくとも前記ICカードを挿通可能な間隙部を備え、当該間隙部に前記ICカードを挿通することにより、当該ICカードに備えられたループアンテナを当該間隙部を伝播する磁束が横切るように構成したことを特徴とする。
磁性材料に流れる磁束を効率よくICカードに取り込むためには、磁性材料の一部をカットして間隙部を形成し、その間隙部にICカードのループアンテナを挿入し、その中を磁束が横切るようにすれば磁束の変化をループアンテナにより起電力に変換することができる。
請求項3は、前記間隙部は、当該間隙部に挿通するICカードに備えられたループアンテナの少なくとも一部を覆うように構成されていることを特徴とする。
間隙部はその端部の表面積から磁束が放射されるため、表面積が小さいと磁束密度は高くなるが、ICカードのループアンテナはある程度の表面積を持っているため、ループアンテナと磁束との距離が離れる可能性が高くなる。その結果、ループアンテナに発生する起電力を低くしてしまう。そこで本発明では、ループアンテナの表面積に可能な限り均一に磁束が通過するように、ループアンテナの少なくとも一部を覆うように構成する。
【0005】
請求項4は、前記磁束導入手段は、フェライト若しくは磁気抵抗の少ない材質により構成されていることを特徴とする。
磁束導入手段は磁性材料により構成される。磁性材料としては、保磁力が大きい磁性粉末を焼結したフェライトなどが好ましい。また磁路の磁気抵抗が高いとその分磁束が熱として消費され、ICカードに供給する磁束を減少させてしまう。そこで、磁性材料としては磁気抵抗の少ない材質が好ましい。
請求項5は、前記磁束導入手段のループ状の磁路に巻掛けたループコイル側と前記間隙部との間に第1の磁界遮蔽手段を備えたことを特徴とする。
磁束導入手段の材質がフェライトの場合、空気中に比べて透磁率が大きいので磁束はほとんど外部に漏洩することなく流れる。しかし、ループコイルの部分とリーダライタからは外部に電磁波が漏洩する。そこで本発明では、ループコイルとリーダライタから漏洩する電磁波を遮蔽する第1の磁界遮蔽手段を、ループコイルと間隙部の間に設けるものである。
請求項6は、前記第1の磁界遮蔽手段と、前記ループコイル、磁束導入手段及び前記リーダライタの全てを覆う第2の磁界遮蔽手段とを同時に備えたことを特徴とする。
第1の磁界遮蔽手段をループコイルと間隙部の間に設けても、完全に遮蔽することはできない。また、磁束導入手段や間隙部からも少なからず漏洩磁界が存在する。またリーダライタからは高周波による電磁波が漏洩している。そこで本発明では、これらの漏洩電磁界を確実に遮断するために、第1の磁界遮蔽手段に加えて、ループコイル、磁束導入手段及びリーダライタの全てを覆う第2の磁界遮蔽手段を備えるものである。
【0006】
請求項7は、前記磁束導入手段に設けられた前記間隙部の近傍に、当該間隙部に挿通するICカードとの共振周波数のずれを補正する補正手段を更に備えたことを特徴とする。
磁性材料にループコイルを巻掛けてICカードとの交信を行う場合、本来のループコイルから送信される周波数が若干ずれる可能性がある。それによりICカードとの共振周波数がずれるので、そのずれを補正する必要がある。そこで本発明では、ずれを補正するために間隙部の近傍に共振周波数のずれを補正する補正手段を更に備えるものである。
請求項8は、前記補正手段は、前記ICカードとの共振周波数のずれを補正するに足るインダクタンスを有するコイル又は金属板であることを特徴とする。
リーダライタの共振回路はインダクタとコンデンサにより構成される並列共振回路である。そこで補正手段としてインダクタの値を補正するために、所定の相互インダクタンスを有するコイルを配置するものである。
請求項9は、前記第1の磁界遮蔽手段及び第2の磁界遮蔽手段は、導体により構成されていることを特徴とする。
一般的にICカードに使用される周波数は13.56MHzの短波である。従って、磁束導入手段とループアンテナ間の結合は磁界成分と電界成分とを併せ持つ電磁波による磁界結合が主となる。しかし、リーダライタには装置全体を制御するCPUやループコイルに高周波電流を供給する高周波発振器などが搭載されている。従って、この部分はデジタルノイズを放射する。このデジタルノイズの高域成分は、VHF帯からUHF帯にも及ぶ。更にICカードはアースレスの状態に維持されているので、この高域成分は磁界成分と電界成分とを併せ持つ電磁波成分が主である。この電磁波成分を減衰させるには磁界成分又は電界成分のどちらか一方を減衰させることにより可能である。そこで本発明では、電界成分が導体中を透過しにくいことから金属板でシールドするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、磁束導入手段は、ICカード内に備えられたループアンテナに対して少なくとも当該ICカードとの交信を可能とする磁束を供給できる構成を備えているので、漏洩磁界を低減し、且つ発生した磁界による磁束を効率よくICカードに供給することができる。
また請求項2では、磁性材料の一部をカットして間隙部を形成し、その間隙部にICカードのループアンテナを挿入し、その中を磁束が通過するようにするので、磁束を効率よくループアンテナに通過させることができる。
また請求項3では、ループアンテナの少なくとも一部を覆うように間隙部を構成するので、ループアンテナの表面積に可能な限り均一に磁束を通過させることができる。
また請求項4では、磁束導入手段は、フェライト若しくは磁気抵抗の少ない材質により構成されているので、漏洩磁界を減少させ且つ磁束を効率よくループアンテナに通過させることができる。
また請求項5では、第1の磁界遮蔽手段をループコイルと間隙部の間に設けるので、ループコイルとリーダライタから漏洩する電磁波をある程度遮蔽することができる。
また請求項6では、第1の磁界遮蔽手段に加えて、ループコイル、磁束導入手段及びリーダライタ本体の全てを覆う第2の磁界遮蔽手段を備えたので、磁界成分と電界成分とを併せ持つ電磁波成分を確実に遮断することができる。
また請求項7では、間隙部の近傍に共振周波数のずれを補正する補正手段を更に備えるので、リーダライタとICカードの共振周波数を合わせることができる。
また請求項8では、補正手段として、所定の相互インダクタンスを備えたコイルを配置するので設置が容易となり、間隙部の距離を少なくすることができる。
また請求項9では、第1の磁界遮蔽手段及び第2の磁界遮蔽手段は、金属により構成されているので、電界成分が導体中を透過することを遮断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、一般的なICカード用リーダライタ制御部の構成を示すブロック図である。このICカード用リーダライタ制御部(以下、単にリーダライタ制御部と呼ぶ)100は、リーダライタ制御部100との間でデータの授受を行ってシステム全体を制御するPC50によって制御される。リーダライタ制御部100は、外部のPC50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ制御部100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループコイル9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないICカードとの電力用搬送波とデータの授受をするループコイル9と、後述する磁束導入部110、120、130、140を備えて構成されている。
次に、本構成によるリーダライタ制御部100の動作を説明する前に、ICカードの構成を先に説明しておく。図2は、ICカードの構成を示すブロック図である。本実施形態のICカード200は、リーダライタ制御部100からの電力用搬送波によりデータの授受をするループアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、ループアンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、ICカード200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0009】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ制御部100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、ICカード200に供給する電力供給用信号と、それを変調したポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループコイル9から磁束として磁束導入部110、120、130、140に供給される。次に、ICカード200を磁束導入部110、120、130、140に挿通すると、ループアンテナ20が電力供給用信号を受信し、電力生成回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、ICカード200内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してループアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ制御部100がループコイル9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してICカード200が規格に合致したICカードであると認識する。
【0010】
図3(a)は本発明の第1の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。このリーダライタ110は、ICカード200に備えたループアンテナ20を介して、ICカード200との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタ制御部100と、ICカード200への電力用搬送波の伝播と当該ICカード200とのデータの授受を仲介するループコイル9と、少なくとも一部にループコイル9を巻掛け当該ループコイル9から発生した磁界を磁束13として導くフェライトコア(磁束導入手段)14とを備えて構成される。尚、フェライトコア14は、ループコイル9により発生された磁束13を導くループ状の磁路に、少なくともICカード200を挿通可能な間隙部15を備え、当該間隙部15にICカード200を挿通することにより、当該ICカード200に備えられたループアンテナ20を当該間隙部15を伝播する磁束17が横切るように構成されている。また、間隙部15は、当該間隙部15に挿通するICカード200に備えられたループアンテナ20の少なくとも一部を覆うように構成されている。また本実施形態では、ループコイル9から発生した磁界を磁束13として導く手段としてフェライトコア14を使用したが、磁気抵抗の少ない材質であれば他の材質でも構わない。
図3(b)は図3(a)の等価回路である。例えば、フェライトコア14の間隙部15を除く磁路の長さをl1、断面積をS、透磁率をμとし、間隙部15の間隙の長さをl2、断面積をS0、透磁率をμ0とする。またリーダライタ100から電圧Vの信号が発生した場合、巻き数Nのループコイル9に電流Iが流れたとすると、起磁力=N・I、間隙部15を除く磁路の磁気抵抗R1=l1/μ・S、間隙部15の磁気抵抗R2=l2/μ0・S0となる。従って、フェライトコア14の磁束はφ0=N・I/R1・R2となり、磁気抵抗が少ないほど効率よく磁束φ0がICカード200に供給されるのが解る。即ち、磁気抵抗は磁路の長さl1、2に比例するため、極力フェライトコアを小型化し、間隙部15を狭めることが必要である。
【0011】
図4(a)は本発明の第2の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。このリーダライタ120はフェライトコア14に設けられた間隙部15の近傍(この図では上部)に、間隙部15に挿通するICカード200との共振周波数のずれを補正する補正コイル(補正手段)18を更に備えたものである。即ち、フェライトコア14にループコイル9を巻掛けてICカード200との交信を行う場合、ICカード200のループアンテナ20の共振周波数が若干ずれる可能性がある。そのずれを補正する必要がある。そこで本実施形態では、ずれを補正するために間隙部15の近傍に共振周波数のずれを補正する補正コイル18又は金属板を更に備えるものである。
図4(b)は間隙部15部分の等価回路である。リーダライタ100の共振回路はインダクタL1とコンデンサCにより構成される並列共振回路である。そこで補正手段としてインダクタの値を補正するために、所定の相互インダクタンスMを有するコイルΔL又はLを減少させる金属板を配置するものである。尚、本実施形態では補正用の補正コイル18を間隙部15の上側に配置したが、下側でも構わない。
図5は本発明の第3の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。このリーダライタ130は、フェライトコア14のループ状の磁路に巻掛けたループコイル9側(リーダライタ制御部100を含む側)と間隙部15との間に金属板(第1の磁界遮蔽手段)19を備えるものである。即ち、磁束を導入する手段の材質がフェライトの場合、空気中に比べて透磁率が大きいので磁束13はほとんど外部に漏洩することなく流れる。しかし、ループコイル9の部分とリーダライタ制御部100からは外部に電磁波が漏洩している。そこで本実施形態では、ループコイル9とリーダライタ制御部100から漏洩する電磁波を遮蔽する金属板19を、ループコイル9と間隙部15の間に設けるものである。これにより、ループコイル9とリーダライタ制御部100から放射された電磁波の一部は、金属板19により吸収されて不要輻射ノイズを低減することができる。尚、本実施形態では磁界遮蔽手段として金属板19を使用したが、導体であれば金属に限る必要はない。
【0012】
図6は本発明の第4の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。このリーダライタ140は、金属板19と、ループコイル9、フェライトコア14及びリーダライタ制御部100の全てを覆う金属ケース(第2の磁界遮蔽手段)31とを同時に備えたものである。また、ICカード200を挿入する口に金属シャッタ30を備えてもよい。尚、本実施形態では磁界遮蔽手段として金属板19、金属シャッタ30及び金属ケース31を使用したが、導体であれば金属に限る必要はない。
一般的にICカード200に使用される周波数は13.56MHzの短波である。従って、フェライトコア14とICカード200のループアンテナ20間の結合は磁界成分と電界成分とを併せ持つ電磁波による磁界結合が主となる。しかし、リーダライタ制御部100には装置全体を制御するCPUやループコイル9に高周波電流を供給する高周波発振器などが搭載されている。従って、この部分はデジタルノイズを放射する。このデジタルノイズの高域成分は、VHF帯からUHF帯にも及ぶ。更にICカード200はアースレスの状態に維持されているので、この高域成分は磁界成分と電界成分とを併せ持つ電磁波成分が主である。この電磁波成分を減衰させるには磁界成分又は電界成分のどちらか一方を減衰させることにより可能である。そこで本実施形態では、電界成分が導体中を透過しにくいことから金属板でシールドするものである。
即ち、金属板19をループコイル9と間隙部15の間に設けても、完全に電磁波を遮蔽することはできない。また、フェライトコア14や間隙部15からも少なからず漏洩磁界が存在する。またリーダライタ制御部100からは高周波による電磁波が漏洩している。そこで本実施形態では、これらの漏洩電磁界を確実に遮断するために、金属板19に加えて、ループコイル9、フェライトコア14及びリーダライタ制御部100の全てを覆う金属ケース31を備えるものである。
【0013】
以上の通り本発明によれば、フェライトコア14は、ICカード200内に備えられたループアンテナ20に対して少なくとも当該ICカード200との交信を可能とする磁束を供給できる構成を備えているので、漏洩磁界を低減し、且つ発生した磁界による磁束を効率よくICカード200に供給することができる。
また、フェライトコア14の一部をカットして間隙部15を形成し、その間隙部15にICカード200のループアンテナ20を挿入し、その中を磁束が通過するようにするので、磁束を効率よくループアンテナ20に通過させることができる。
また、ループアンテナ20の少なくとも一部を覆うように間隙部15を構成するので、ループアンテナ20の表面積に可能な限り均一に磁束を通過させることができる。
また、磁束を導入する手段は、フェライト若しくは磁気抵抗の少ない材質により構成されているので、漏洩磁界を減少させ且つ磁束を効率よくループアンテナ20に通過させることができる。
また、金属板19をループコイル9と間隙部15の間に設けるので、ループコイル9とリーダライタ制御部100から漏洩する電磁波をある程度遮蔽することができる。
また、金属板19に加えて、ループコイル9、フェライトコア14及びリーダライタ制御部100の全てを覆う金属ケース31を備えたので、磁界成分と電界成分とを併せ持つ電磁波成分を確実に遮断することができる。
また、間隙部15の近傍に共振周波数のずれを補正する補正コイル18又は金属板を更に備えるので、リーダライタ制御部100とICカード200の共振周波数を合わせることができる。
また、補正手段として、所定の相互インダクタンスを備えた補正コイル18を配置するので設置が容易となり、間隙部15の距離を少なくすることができる。
また、金属板19及び金属ケース31は、金属により構成されているので、電界成分が導体中を透過することを遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一般的なICカード用リーダライタの構成を示すブロック図である。
【図2】ICカードの構成を示すブロック図である。
【図3】(a)は本発明の第1の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図、(b)は(a)の等価回路図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図、(b)は間隙部15部分の等価回路図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るリーダライタの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
9 ループコイル、13 磁束、14 フェライトコア、15 間隙部、20 ループアンテナ、100 リーダライタ制御部、110 リーダライタ、200 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードに備えたループアンテナを介して、該ICカードとの間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うICカード用リーダライタにおいて、
前記ICカードへの電力用搬送波の伝播と当該ICカードとのデータの授受を仲介するループコイルと、少なくとも一部に該ループコイルを巻掛け当該ループコイルから発生した磁界を磁束として導く磁束導入手段と、を備え、前記磁束導入手段は前記ICカード側のループアンテナに対して少なくとも当該ICカードとの交信を可能とする磁束を供給できる構成を備えていることを特徴とするICカード用リーダライタ。
【請求項2】
前記磁束導入手段は、前記ループコイルにより発生された磁束を導くループ状の磁路に、少なくとも前記ICカードを挿通可能な間隙部を備え、当該間隙部に前記ICカードを挿通することにより、当該ICカードに備えられたループアンテナを当該間隙部を伝播する磁束が横切るように構成したことを特徴とする請求項1に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項3】
前記間隙部は、当該間隙部に挿通するICカードに備えられたループアンテナの少なくとも一部を覆うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項4】
前記磁束導入手段は、フェライト若しくは磁気抵抗の少ない材質により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項5】
前記磁束導入手段のループ状の磁路に巻掛けたループコイル側と前記間隙部との間に第1の磁界遮蔽手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項6】
前記第1の磁界遮蔽手段と、前記ループコイル、磁束導入手段及び前記リーダライタの全てを覆う第2の磁界遮蔽手段とを同時に備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項7】
前記磁束導入手段に設けられた前記間隙部の近傍に、当該間隙部に挿通するICカードとの共振周波数のずれを補正する補正手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項8】
前記補正手段は、前記ICカードとの共振周波数のずれを補正するに足るインダクタンスを有するコイル又は金属板であることを特徴とする請求項7に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項9】
前記第1の磁界遮蔽手段及び第2の磁界遮蔽手段は、導体により構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のICカード用リーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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